JP2018062045A - 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法 - Google Patents

凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018062045A
JP2018062045A JP2016202686A JP2016202686A JP2018062045A JP 2018062045 A JP2018062045 A JP 2018062045A JP 2016202686 A JP2016202686 A JP 2016202686A JP 2016202686 A JP2016202686 A JP 2016202686A JP 2018062045 A JP2018062045 A JP 2018062045A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
workpiece
freeze
fixing
pedestal
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016202686A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6868998B2 (ja
Inventor
淳司 畠山
Junji Hatakeyama
淳司 畠山
鈴木 寛之
Hiroyuki Suzuki
寛之 鈴木
藤縄 正
Tadashi Fujinawa
正 藤縄
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Trio Inc
Original Assignee
Trio Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Trio Inc filed Critical Trio Inc
Priority to JP2016202686A priority Critical patent/JP6868998B2/ja
Publication of JP2018062045A publication Critical patent/JP2018062045A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6868998B2 publication Critical patent/JP6868998B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Auxiliary Devices For Machine Tools (AREA)
  • Jigs For Machine Tools (AREA)

Abstract

【課題】凍結固定用液の過冷却時に台座並びにワークの一側部と他側部で熱収縮の差が生じていても、凍結チャック後において台座並びにワークの全体に熱歪が生じていない状態に凍結固定用液を凝固させることができ、ワークを台座の上面部に凍結チャックすることができること。【解決手段】高い熱伝導性を有する台座7が凍結固定用液6の凝固温度より所要高い温度において、台座7と台座7に載置するワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、台座7が冷却板3に載置された状態で、冷却板3からの冷熱の伝達により、台座7とワークWの全体を凝固温度よりも所要低い凍結固定温度まで過冷却し、凍結固定温度に過冷却した時点より所要時間経過してから、凍結固定用液6に刺激を与えることにより凍結固定用液6を凝固させ、凝固した凍結固定用液6によりワークWを台座7の上面部に凍結チャックする。【選択図】図1

Description

本発明は、ワークを機械加工する際にワークを台座の上面部に凍結チャックする凍結式ワーク固定方法およびこの凍結式ワーク固定方法を実施して機械加工するワーク加工方法に関する。
ワークに対してフライス加工、研削加工、旋削加工、研摩加工、切断加工、ダイシング加工、穴明け加工、彫刻加工などの加工機械は、機械加工を行う場合にワークを加工機械テーブル上にしっかりと固定するワーク固定手段を備えている。
従来、ワークが薄かったり、こわれやすかったり、複雑な形状であったりした場合に、ワークを確実、安定的に固定することができるワークの固定装置として、マグネットチャック、真空チャック、バイスなど機械チャック式に替わり、ワークの材質、形状などの制限がつきまとわない、凍結式ワーク固定装置および方法が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1に開示された凍結式ワーク固定法は、シリコーンオイル又はこれを主成分とする高分子系凝固剤をワークと固定用治具表面の間に介在させ、この状態で高分子系凝固剤の凝固温度よりも低い温度の流体をワーク加工領域に加工液又は冷却気体を供給することにより機械加工におけるワークの凍結固定状態を維持する構成である。
特許文献2に開示された凍結式ワーク固定法は、冷却台と加工物と間の水を介在させ、この水を凍結させることにより冷却台の上面部に氷膜を介して加工物を固定している。そして、例えば−10℃のクーラント液をかけて氷膜が解けないようにして機械加工を行う。
特許第3008344号公報 特開2004−322295号公報
特許文献1、2に開示された凍結式ワーク固定法は、以下のような問題点を有する。
例えば、リングギアに求められる1つの精度に、ギア中心に垂直な仮想平面に対するリングギアの平面加工をした端面の垂直度があり、例えば5μm未満とされる。本発明者は、特許文献1、2に開示された凍結式ワーク固定法を採用したワーク加工方法を実施した。具体的には、まず500mm角の冷却板の上に400mm角の台座を載置し、さらに、台座の上面部に凝固温度が17℃である凍結固定用液を塗布してから、ワークとして300mmφのリングギアを端面が密着するように載置し、冷却板の冷却により台座と凍結固定用液とワークとを冷却し、この冷却に際し、台座の一側部に接触式温度計を接触させ10℃の過冷却温度になったときに、物理的刺激を与えることにより凍結固定用液を凝固させた。次いで、ワークを凍結チャックした台座を冷却板から加工機械テーブル上に移載して固定した。次いで、5℃の加工液を加工領域にかけつつリングギアの上側の端面に対して精密機械加工(平面加工)を行った。
本発明者は、上記精密機械加工したリングギアについて、ギア中心に垂直な仮想平面に対するリングギアの平面加工した端面の垂直度を精密測定した結果、リングギアには、端面における一側部と他側部とに30μmの偏差が生じていたことが分かった。
そこで、本発明者は、30μmという大きな偏差が生じたことについて原因を探求した結果、以下の知見を得られた。
本発明者は、均一な肉厚のワークを載置した台座を冷却板に載置して冷却し、台座の周囲複数箇所に接触式温度計を接触させるとともに、ワークの周囲複数箇所に接触式温度計を接触させて、台座およびワークの温度降下を計測した。すると、台座およびワークが一側部で12℃になったとき、他側部で15℃までしか温度降下していない場合があった。台座およびワークの温度が均一ではない状態が生じる原因は、冷却板内に設けられた冷却液が通る液路が均一に分布して設けられていないことと考えられる。
次いで、本発明者は、肉厚が一側部と他側部で大きく異なるワークを載置した台座を冷却板に載置して冷却し、台座の周囲複数箇所に接触式温度計を接触させるとともに、ワークの周囲複数箇所に接触式温度計を接触させて、台座およびワークの温度降下を計測した。すると、台座およびワークが一側部で10℃になったとき、他側部で15℃までしか温度降下していない場合があった。台座およびワークの温度が均一ではない状態が生じる原因は、上述した、冷却板内に設けられた冷却液が通る液路が均一に分布して設けられていないことに加え、ワークの肉厚が大きく異なることによるものと考えられる。
したがって、従来の凍結チャック方法は、台座とワークの全体の温度が均一ではない状態で凍結チャックを行っていたものであることが判明した。上記のように台座およびワークが一側部で10℃または12℃、他側部で15℃である過冷却状態で、凍結固定用液を凝固させて凍結チャックし、さらに機械加工において、加工領域に5℃のワーク冷却用流体をかけて凍結チャックを保持する場合、台座およびワークの一側部では10℃または12℃から5℃に温度降下し、他側部では15℃から5℃に温度降下することになる。このため、台座およびワークの一側部と他側部とでそれぞれに生じる温度降下に基づく熱収縮量にも偏差が生じ、したがって、凍結チャック後に、台座およびワークの一側部と他側部との間で熱歪を生じ、並びにワークの密着面部の一側部と他側部との間でも熱歪を生じ、凍結固定用液の凝固膜も熱歪を生じていて、これがワークに変形を与えていることになり、変形を与えたワークに精密機械加工を行って、凍結チャックを解除すると、ワークに与えていた熱歪が解消され、ワークに加工誤差として顕在化することが判明した。
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、台座とワークとの密着面部間に介在させる凍結固定用液の過冷却時に台座並びにワークの一側部と他側部で熱収縮の差が生じているにもかかわらず、凍結固定用液の凍結チャック後において台座とワークの全体に熱歪が生じていない状態に凍結固定用液を凝固させることができ、ワークを台座の上面部に凍結チャックすることができる凍結式ワーク固定方法を提供すること、および、この凍結式ワーク固定方法を用いてワークを機械加工することにより加工精度を向上させることができるワーク加工方法を提供することを目的としている。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、上記目的達成のため、高い熱伝導性を有する台座が凍結固定用液の凝固温度よりも所要高い温度において、前記台座と前記台座に載置するワークとの重なり面に前記凍結固定用液を介在させ、前記台座が冷却板に載置された状態で、前記台座と前記ワークの全体を前記冷却板からの冷熱の伝達により、前記凝固温度よりも所要低い凍結固定温度まで過冷却し、前記凍結固定温度に過冷却した時点より所要時間経過してから、前記凍結固定用液に刺激を与えることにより前記凍結固定用液を凝固させ、凝固した前記凍結固定用液により前記ワークを前記台座の上面部に凍結チャックする構成である。
上記構成によれば、本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、冷却板により冷却される台座の一側部と他側部とで温度差が存在する状態の過冷却温度で凍結固定用液を凝固させるのでなく、冷熱が台座全体に十分に伝わるように時間を経過させて台座およびワークに温度差が存在する状態を解消し、台座が全面的に均一な過冷却温度になってから凍結固定用液を凝固させる。このため、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法によれば、凍結チャック後に更なる冷却を行っても、台座とワークの各部位の違いによって熱収縮量に差が生じることが無く、台座の上面部にワークを凍結チャックしている凍結固定用液にも熱歪を生じることが無いから、台座およびワークに熱歪を生じることが無い。したがって、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を用いたワーク加工方法において、ワークに対する加工精度を大幅に向上させることができる。
前記凝固温度よりも所要高い温度は、凝固温度よりも十度ないし十数度高い温度であることが好ましい。
この構成によれば、凍結固定用液の凝固温度と、過冷却温度である凍結チャック温度との差を大きく安定して保持でき、良好な凍結チャックを行なえる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法において、前記台座および前記ワークの全体が均一な凍結固定温度となるように冷却された時点は、前記台座が前記冷却板により冷却され始めたときから一定時間経過した時点とすることができる。
この構成によれば、台座およびワークの全体が均一な凍結固定温度に温度降下した時点については、予め実験により求められる一定時間経過した時点とすることで、凍結固定用液に刺激を与えるまでの待機時間を固定することができて、温度測定の必要がなく作業を容易化できる。
また本発明に係る凍結式ワーク固定方法において、前記台座が均一な凍結固定温度となるように冷却された時点は、前記台座および前記ワークの各側面部の複数箇所の接触式温度計による測定値が同一値になった時点とすることができる。
この構成によれば、冷却板により室温の台座の冷却を開始し、適当な時間が経過した時点で台座およびワークの各側面部の複数箇所の接触式温度計による測定値が同一値になったことを確認することで、台座が均一な凍結固定温度となるように冷却されたことを確認することができ、この時点以降に凍結固定用液に刺激を与えることにより前記凍結固定用液を凝固させることができる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、前記台座と、前記台座に重ねない状態の前記ワークと、前記台座と前記ワークとの重なり面に介在させる前の前記凍結固定用液とを、前記凝固温度より高いかつ近い温度に予備冷却し、次いで、前記台座と前記ワークとの重なり面に前記凍結固定用液を介在させ、その後に前記冷却板を冷却して、前記ワークを前記凍結固定温度まで冷却する構成とすることができる。
上記構成によれば、凍結式ワーク固定方法は、台座とワークと凍結固定用液とを予め、凍結固定用液の凝固温度より高いかつ近い温度に予備冷却するので、台座の上面部とワークとの密着面に介在する凍結固定用液の過冷却温度を予備冷却しない場合に比べて低くすることが容易になる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、前記冷却板は防振テーブル上に設置することにより前記冷却板に振動が加わらない状態で前記冷却板に載置された前記台座に対し前記過冷却する構成とするのが良い。
上記構成によれば、凍結式ワーク固定方法は、台座とワークの全体が凍結固定温度に過冷却される前に、周辺の機械装置の振動や地震等の予期しない振動によって、凍結固定用液が凝固してしまうことを回避でき、最初から凍結チャック作業をやり直す無駄を回避できる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、前記過冷却の前に、前記台座および前記ワークを風除けカバーで囲む構成とするのが良い。
上記構成によれば、凍結式ワーク固定方法は、台座とワークの全体が凍結固定温度に過冷却される前に、台座とワークとの間に介在する凍結固定用液に空調等の風が当たることで、凍結固定用液が凝固してしまうことを回避でき、最初から凍結チャック作業をやり直す無駄を回避できる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、前記風除けカバーは、前記冷却板に非接触となるように設けるのが良い。
上記構成によれば、凍結式ワーク固定方法は、風除けカバーを台座とワークに被せる際の振動が冷却板に伝わらないことで、凍結固定用液が凝固してしまうことを回避でき、最初から凍結チャック作業をやり直す無駄を回避できる。
本発明に係る凍結式ワーク固定方法は、前記台座は、前記ワークと同一の材質からなるものを使用するか、または前記ワークの線膨張係数および熱伝達率とほぼ同一値の材質からなるものを使用するのが良い。
上記構成によれば、凍結式ワーク固定方法は、凍結固定用液の凍結チャック後、凍結チャック温度よりもさらに低い温度に保ってワーク加工を行う場合に、凍結チャック面方向の熱歪を解消することができる。
本発明に係るワーク加工方法は、上記の凍結式ワーク固定方法により前記ワークを凍結固定した前記台座を、前記冷却板から取り外して加工装置の被加工位置に位置し、かつ前記加工装置に備える作業台上に前記加工装置に備える台座固定手段により前記台座を固定し、前記凍結固定用液の凝固温度よりも低い温度のワーク冷却用流体を前記ワークに当るように供給してワークの凍結固定状態を維持しながら加工工具により加工を行う構成である。
上記構成により、本発明に係る第1のワーク加工方法は、加工装置に凍結式ワーク固定方法を実施する凍結式ワーク固定手段を装備していなくても、ワークに過冷却温度になる液体をかけられるように付属設備を備えることで適用することができ、加工装置とは別に装備する凍結式ワーク固定装置において、上記の凍結式ワーク固定方法により台座の上面部にワークを凍結固定するものであり、かつ台座の上面部に熱収縮による歪が生じていない状態に凍結固定することができるので、台座を、加工装置の被加工位置に固定し、ワークに過冷却温度になる液体を当てて流し凍結固定を保持してワークに機械加工を行うと、台座およびワークの全体に熱収縮による歪が生じていない分だけ、従来の凍結式ワーク加工方法に比べ、一層高精密な加工を実現することができる。
また本発明に係る第2のワーク加工方法は、上記の凍結式ワーク固定方法に用いる前記冷却板であって、前記台座を固定する台座固定手段を付加した前記冷却板を含む冷却手段を備える加工装置の作業台上で、前記ワークを上記の凍結式ワーク固定方法により凍結固定し、引き続いて前記凍結固定用液の凝固温度よりも低い温度のワーク冷却用流体を前記ワークにかけてワークの凍結固定状態を維持しながら加工工具により加工を行う構成である。
上記構成により、本発明に係るワーク加工方法は、被加工位置に凍結式ワーク固定方法を実施する凍結式ワーク固定手段を装備し、およびワークに過冷却温度になる液体をかけられるように付属設備を備える加工装置に適用することができ、凍結式ワーク固定手段において上記の凍結式ワーク固定方法を適用して、台座の上面部にワークを凍結固定し、かつ台座およびワークの全体に熱収縮による歪が生じていない状態に凍結固定することができるので、ワークに過冷却温度になる液体を当てて流し凍結固定を保持してワークに機械加工を行うと、台座およびワークの全体に熱収縮による歪が生じていない分だけ、従来の凍結式ワーク加工方法に比べ、一層高精密な加工を実現することができる。
本発明によれば、台座とワークとの密着面部間に介在させる凍結固定用液の過冷却時に台座並びにワークの一側部と他側部で熱収縮の差が生じているにもかかわらず、凍結固定用液の凍結チャック後において台座とワークの全体に熱歪が生じていない状態に凍結固定用液を凝固させることができ、ワークを台座の上面部に凍結チャックすることができる凍結式ワーク固定方法を提供すること、および、この凍結式ワーク固定方法を用いてワークを機械加工することにより加工精度を向上させることができるワーク加工方法を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を実施する凍結式ワーク固定装置を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を示す工程図である。 本発明の第2の実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を示す工程図である。 本発明の実施の形態に係るワーク加工方法を示す工程図である。
以下、本発明に係る凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法の各実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を実施することができる凍結式ワーク固定装置を示す図である。凍結式ワーク固定装置1は、加工機械と切り離された独立の装置として用意され、台座7と台座7上のワークWとを凍結固定用液6で凍結チャックするための装置であり、冷却板3と、冷却液循環供給手段4と、を備えている。さらに、凍結式ワーク固定装置1は、防振テーブル装置8と、固定枠9と、風除けカバー10とを備えている。
ワークWは、材質、形状、および寸法等を問わない。例えば、ワークWは、鉄系、銅系、アルミニウム系、チタン系等の金属製の物、プラスチック系、ガラス系、カーボン系、セラミック系、木質系、あるいはこれらの2種以上の複合材、水晶、ダイヤモンド、CBN、ルビー、サファイヤ等の鉱物製の物であってよい。ここで、ワークとは加工対象物としての本来のワークに限定されず、抜き代材を装着したものを含むものである。
台座7は、高い熱伝導性を有する金属材料より選ばれる。ここで、高い熱伝導性を有する金属材料とは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス、その他の金属を含む。台座7は、高い熱伝導性の他に、防錆性を有し、下面部と上面部とが高精密に平行で、変形不容易な厚さの板状に形成されている。台座7は、凍結チャックに対して有利であるために上面部が極微細な粗さを有している。
台座7は、特に、ワークWが多数でありかつ同一の金属材料である場合であって、凍結チャック温度よりも例えば5℃だけさらに低い温度のワーク冷却用流体をワークWに当るように供給してワークWの凍結固定状態を維持しながら加工工具により機械加工を行う場合には、該ワークWと同一の金属材料で形成されるか、またはワークWの線膨張係数および熱伝達率とほぼ同一値の金属材料で形成されることが望ましい。このような台座7の材料選択の理由は、上記の凍結チャックの後のワーク加工時に、凍結チャック温度よりもさらに5℃だけ冷却されることで、台座7とワークWの線膨張係数および熱伝達率が大きく異なっていると、台座7の凍結チャック面方向の収縮寸法と、ワークWの凍結チャック面方向の収縮寸法とに差が生じて、これに起因して、台座7とワークWの少なくともいずれかに凍結チャック面に面方向に沿った熱歪が発生し、加工精度を低下させることにつながる可能性があることを回避するためである。
凍結固定用液6は、凝固点が水のそれよりも高く、表面張力が水よりも小さく、良好な撥水性を備え、化学的に安定で毒性がない高分子系凝固剤であることが好ましい。本実施の形態に係る凍結固定用液6は、常温に近い温度、例えば17℃が凝固温度であるシリコーンオイル又はこれを主成分とする高分子系凝固剤を用いる。この高分子系凝固剤は、液状物、粘度調整剤を混入したクリーム状(バター状)ないしペースト状物、液状物と粘度調整剤を混入したクリーム状物ないしペースト状物、液状の高分子系凝固剤とクリーム状ないしペースト状の高分子系凝固剤との併用のいずれであってもよい。この高分子系凝固剤としては、例えば、低分子シリコーンオイルないし環状シリコーンオイル、環状ポリジメチルシロキサン、環状ジメチルシリコーンオイルなどと称されるシリコーンオイル、あるいはこれを主成分とするものなど挙げられる。クリーム状ないしペースト状物は、簡便にはシリコーンオイルに粘度調整剤(増ちょう剤)を配合することで得られるものである。クリーム状ないしペースト状の高分子系凝固剤はワークWと台座7との密着面を含む外部周面までに塗着するのが凍結チャック力を効果的に発揮する。
冷却板3は、台座7を載置する平滑でかつ水平である上面部を有するとともに、内部に冷却循環通路2を有するとともに負圧吸着式の台座固定手段5を有する。冷却液循環供給手段4は、冷却板3内の冷却循環通路2に冷却液を循環供給して冷却板3を冷却するようになっている。
負圧吸着式の台座固定手段5は、一端が冷却板3の側面部に開通され、他端側が複数に枝分かれして冷却板3の上面部に開通された通気孔5aと、この通気孔5aの一端と連通接続された負圧発生手段(例えば真空ポンプ)5bとからなる。なお、台座固定手段5は、負圧吸着式に限定されず電磁マグネット吸着による台座固定機能を有する構成、あるいは冷却板3の上面部に付設された機械チャック式により台座固定機能を有する構成としても良い。図1に示す凍結式ワーク固定装置1が加工機械の作業テーブルに装備される場合には、加工時に冷却板3上の台座7が位置ずれすることが無いように、冷却板3に台座固定手段5が付設されている必要があるが、加工機械と切り離された凍結式ワーク固定装置にあっては、台座に加工負荷がかからないから、凍結式ワーク固定装置1の冷却板3には台座固定手段5が付設されていなくても良い。
冷却液循環供給手段4は、冷却循環通路2に対して供給する冷却液の供給量を可変制御できるように構成されている。冷却板3は、防振テーブル装置8上に載置され冷却循環通路2に冷却液の循環が行われない状態で、上面に載置される台座7およびワークWと共に予備加熱される構成である。具体的には、冷却板3(または防振テーブル装置8のテーブル)の内部にヒータ(図示しない)がモールドされ、台座7の冷却を開始する前に必要に応じて、ヒータの熱で冷却板3と、台座7に載置されるワークWと、台座7とワークWとの密着面間に塗布される凍結固定用液6と、同一の所要温度に予備加熱される構成である。台座7の側面部の測定温度とワークWの上面部の測定温度とが同一になれば、予備加熱温度に平行した状態と判断できる。
予備加熱温度は、凍結固定用液6の凝固温度を例えば17℃とすると、これよりも例えば8℃ないし18℃高い、25℃の室温ないし35℃となるようにセットされる。セット完了後は、ヒータによる予備加熱が打ち切られ、冷却板3の冷却を開始されるようになっている。したがって、台座7と、ワークWと、凍結固定用液6は、25℃の常温ないし35℃のスタート温度から冷却されるようになっている。なお、冷却液循環供給手段4が設備される室内の温度が空調設備により25℃ないし30℃に保たれるときは、冷却板3の冷却を開始する前のヒータによる予備加熱は行われない。
そして、冷却スタート温度から第1の冷却時間が経過すると、凍結固定用液6の凝固温度よりも十数℃低い温度、例えば6℃になるように冷却されるようになっている。第1の冷却時間が経過時点は、冷却液循環供給手段4の冷却液の循環量の関数として予め実験により求めることができる。
凍結式ワーク固定装置1は、防振テーブル装置8上に冷却板3が載置される構成である。防振テーブル装置8は、詳細を図示しないが、例えば、ベースと、ベースに支えられ水平な二次元方向(水平面内)に移動可能なテーブルと、ベースとテーブルとを連結するように並列に設けられたばねおよびダンパーと、を備え、ベースに作用することがある振動をばねおよびダンパーで減衰することにより、テーブルを静止状態に保持するように構成されている。
固定枠9は、振動が防振テーブル装置8のテーブルに伝わらないよう、該テーブルと切り離されかつテーブルを取り巻いて設けられている。風除けカバー10は、台座7が例えば矩形である場合、該矩形よりも一回り大きい矩形の筒壁部と、筒壁部の上部を閉じている上面部と、上面部に設けられた把手部10aと、を備え、台座7と該台座7上に重ねられるワークWに風が当ることを避けるために固定枠9上に載置される。風除けカバー10は、透明な樹脂製の成形体であり、外部から台座7およびワークWを見ることができ刺激を与えることにより凍結固定用液6の凍結が行われる様子を観察できるようになっている。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を示す工程図であり、図1に示す凍結式ワーク固定装置を使用して実施できる。この凍結式ワーク固定方法は、冷却スタート温度セット工程(ステップS21)と、塗布工程(ステップS22)と、冷却工程(ステップS23)と、時間待ち工程(ステップS24)と、凝固工程(ステップS25)と、を有する。なお、事前に台座7とワークWの表面の、油分と水分等を除去する洗浄工程を有する。
この凍結式ワーク固定方法は、台座7とワークWとを重ね、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、台座7が冷却板3に載置された状態で、冷却板3にモールドされたヒータ(図示しない)に通電して、冷却板3と、冷却板3に載置する台座7と、台座7に載置するワークWと、が均一な予備加熱温度となるよう、具体的には、凍結固定用液6の凝固温度(例えば17℃)よりも高い25℃ないし35℃となるように予備加熱し、次いで、冷却板3の冷却を開始し、第1の冷却時間を経過させることにより、冷却板3を凍結固定用液6の凝固温度よりも所要低い凍結固定温度となるよう、具体的には、6℃まで過冷却し、次いで、第2の冷却時間を経過させることにより、冷却板3と台座7とワークWの全体を、6℃に安定するように冷却し、引き続いて、第2の冷却時間を経過後に、凝固温度よりも低い冷却温度となっている凍結固定用液6に刺激を与えることにより凍結固定用液6を一瞬で凝固させ、凝固した凍結固定用液6によりワークWを台座7の上面部に凍結チャックするワーク固定方法である。
図2に示すスタート温度セット工程(ステップS21)は、風除けカバー10を取り外し、冷却板3上に台座7とワークWとを重ね、冷却板3にモールドされたヒータ(図示しない)に通電して、冷却板3と台座7とワークWとを25℃ないし35℃となるように予備加熱する工程である。スタート温度セット工程の存在意義は、次の塗布工程(ステップS22)において、台座7とワークWとの重なり面に介在させる凍結固定用液6を塗布して直ぐに凝固してしまうことを回避するためである。
塗布工程(ステップS22)は、予備加熱されたワークWを外して、台座7の上面部とワークWの下面の一方または両方に凍結固定用液6を塗布し、ワークWを台座7に重ね、風除けカバー10を被せる工程である。この塗布工程では、凍結固定用液6が25℃ないし35℃となる。
冷却工程(ステップS23)は、冷却板3の冷熱開始から第1の冷却時間を経過させることにより、台座7およびワークWの全体を冷却板3からの冷熱の伝達により6℃に過冷却する工程である。
時間待ち工程(ステップS24)は、第1の冷却時間の経過後、さらに第2の冷却時間を経過させることにより、冷却板3と台座7とワークWの全体を、6℃に安定するように冷却する工程である。第2の冷却時間は、第1の冷却時間の経過時点より台座7およびワークWの全体が6℃の均一な凍結固定温度となるように冷却された時間経過時点までの時間である。時間待ち工程(ステップS24)は、台座7が凍結固定温度に過冷却した時点と、凍結固定用液6に刺激を与えることにより凍結固定用液6を凝固させる時点との間に設定する待機時間のことである。
第2の冷却時間は、例えば、冷却板3の上面部に第1の接触温度計を接触させるとともに、台座7の上面部の周方向等間隔となる複数箇所のそれぞれに第2の接触温度計を接触させ、さらにワークWの周方向等間隔となる複数箇所のそれぞれに第3の接触温度計を接触させ、第1の接触温度計が6℃になってから、全ての第2の接触温度計並びに全ての第3の接触温度計が6℃に冷却されたときまでの時間経過を計測する方法を採用することで時間計測することができる。
凝固工程(ステップS25)は、時間待ち工程(ステップS24)の経過後に、凍結固定用液6に刺激を与えることにより凍結固定用液6を凝固させ、台座7の上面にワークWを凍結固定する工程である。冷却板3の側面部に軽い衝撃を与えるだけで、凍結固定用液6に刺激を与えることができて、凍結固定用液6を凝固させることができる。また、風除けカバー10を取り外して、台座7の上面に塗布され台座7とワークWとの密着面からはみ出ている凍結固定用液6に対して、例えば釘などの先端部を突き当てることで、凍結結晶の核を作ることにより刺激を与え凍結固定用液6を凝固させてもよい。
なお、冷却工程(ステップS23)では、凍結固定用液6の凝固温度17℃よりも例えば5℃低い12℃の過冷却温度にしてもよく、時間待ち工程(ステップS24)では、上記の12℃の過冷却温度を凍結固定温度となるように、上記の12℃の過冷却温度が台座7およびワークWの全体に及ぶように、時間の経過を待つことにしてもよい。ただし、凍結固定温度を12℃に設定した場合には、凍結チャック後に台座7を冷却板3から取り外して加工装置の作業テーブルに取り付け、ワーク冷却用流体をかける時間の経過の前に、凍結固定用液6の凝固温度よりも高くなる可能性があるので、凍結固定用液6の過冷却温度はできるだけ低い方がよく、上述した例では6℃としている。したがって、12℃の過冷却温度で凍結し、その後に、6℃にしてから、台座7を冷却板3から取り外す手法を排除しない。
加工装置12によるワークWに対する機械加工として、平面研削、成形研削、クリープ研削、円筒研削などの各種研削加工、旋削加工、研摩加工、切断加工、スライス加工、ダイシング加工、ミーリング加工、溝加工、穴明け加工、彫刻など態様を問わず適用可能である。
本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法によれば、図2に示す時間待ち工程(ステップS24)を設けるので、冷却板3により冷却される台座7とワークWの少なくともいずれかの一側部と他側部とで温度差が存在する状態での過冷却温度で凍結固定用液を凝固させるのでなく、冷熱が台座7とワークWの全体に十分に伝わるように時間を経過させて台座7とワークWの全体に温度差が存在する状態を解消し、台座7とワークWの全体が均一な過冷却温度になってから凍結固定用液6を凝固させる。このため、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法によれば、凍結チャック後に更なる冷却を行っても、台座7とワークWの各部位の違いによって熱収縮量に差が生じることが無く、台座7の上面部にワークWを凍結チャックしている凍結固定用液6にも熱歪を生じることが無いから、ワークWに熱歪を生じることが無い。したがって、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を用いたワーク加工方法において、ワークWに対する加工精度を大幅に向上させることができる。
また、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法によれば、図2に示す冷却スタート温度セット工程(ステップS21)を設けるので、凝固工程(ステップS25)における凍結固定用液6を凝固温度よりも十分低い温度の過冷却とすることができる。さらに、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法によれば、防振テーブル8を設置すること、台座7およびワークWを風除けカバー10で非接触となるように囲むことによっても、凍結固定用液6を凝固温度よりも十分低い温度の過冷却とすることができる。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を示す工程図であり、図1に示す凍結式ワーク固定装置を使用して実施できる。この凍結式ワーク固定方法は、塗布工程(ステップS31)と、ワークセット工程(ステップS32)と、冷却工程(ステップS33)と、時間待ち工程(ステップS34)と、凝固工程(ステップS35)と、を有する。
図3に示す工程図では、図1に示す凍結式ワーク固定装置を備えている部屋が空調管理され凍結固定用液6の凝固温度よりも高い例えば25℃ないし30℃の室温に保たれていて、台座7とワークWが室温下に置かれることにより、台座7とワークWもほぼ室温に保たれていることを前提としており、このため、図2に示す冷却スタート温度セット工程(ステップS21)がなく、塗布工程(ステップS31)の後に、ワークセット工程(ステップS32)がある点に特徴がある。
この凍結式ワーク固定方法は、室温に保たれている台座7とワークWとを重ね、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、台座7を冷却板3に載置し、台座7とワークWとに風除けカバー10が被った状態として、冷却板3の冷却を開始し、第1の冷却時間を経過させることにより、冷却板3を凍結固定用液6の凝固温度よりも所要低い凍結固定温度である6℃まで過冷却し、次いで、第2の冷却時間を経過させることにより、冷却板3と台座7とワークWの全体を、6℃に安定するように冷却し、引き続いて、第2の冷却時間を経過後に、凝固温度よりも低い冷却温度となっている凍結固定用液6に刺激を与えることにより凍結固定用液6を一瞬で凝固させ、凝固した凍結固定用液6によりワークWを台座7の上面部に凍結チャックするワーク固定方法である。
この凍結式ワーク固定方法において、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、台座7を冷却板3に載置するまでの工程である塗布工程(ステップS31)とワークセット工程(ステップS32)は、手順に以下の3つの方法がある。
第1の手順として、台座7の上面部とワークWの下面の一方または両方に凍結固定用液6を塗布してから台座7にワークWを載置することにより、または台座7にワークWを載置してから台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を注入することにより、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、次いで台座7を冷却前の冷却板3に載置する。この手順によれば、台座7を冷却板3に載置してから冷却板3を冷却開始するので、台座7が所定の過冷却温度になるまで時間を要し、台座7を冷却板3に載置してから凍結固定用液6に刺激を与えて凍結固定用液6を凝固させるまでの時間が長くなるが、台座7の冷却時の温度経過を冷却板3の冷却時の温度経過にほぼ一致させることができる。このため、冷却板3の冷却時の温度経過を予め測定することで、台座7が均一な凍結固定温度となるように冷却されたことを確認することができる。
第2の手順として、台座7を冷却前の冷却板3に載置し、次いで、台座7の上面部とワークWの下面の一方または両方に凍結固定用液6を塗布してから台座7にワークWを載置することにより、または台座7にワークWを載置してから台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を注入することにより、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させる。この手順によれば、台座7を凍結固定温度に冷却された冷却板3に載置するので、台座7の上面が所定の過冷却温度になるまで時間を短縮させることができ、台座7を冷却板3に載置してから凍結固定用液6に刺激を与えて凍結固定用液6を凝固させるまでの時間を短くすることができて、作業性が向上する。
第3の手順として、台座7と、台座7に重ねない状態のワークWと、台座7とワークWとの重なり面に介在させる前の凍結固定用液6とを、凝固温度より高いかつ近い温度に予備冷却し、次いで、台座7とワークWとの重なり面に凍結固定用液6を介在させ、その後に冷却板3を冷却して、ワークWを凍結固定温度まで冷却する。この手順によれば、凍結式ワーク固定方法は、台座7とワークWと凍結固定用液6とを予め、凍結固定用液6の凝固温度より高いかつ近い温度に予備冷却するので、台座7の上面部とワークWとの密着面に介在する凍結固定用液6の過冷却温度を予備冷却しない場合に比べて低くすることが容易になる。第3の手順を採用する場合には、図2に示す塗布工程(ステップS22)の前に、台座7とワークWと凍結固定用液6とを上記予備冷却する予備冷却工程が入る。
図4は、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を取り入れた第1のワーク加工方法を示す図である。
本実施の形態に係るワーク加工方法は、図1に示す凍結式ワーク固定装置を用い、図2または図4に示す工程図を用いて上記に説明した第1または第2の凍結式ワーク固定方法により、台座7上にワークWを凍結固定する。次いで、台座7を冷却板3から取り外し図3に示す加工装置12の作業台12aに載置する。作業台座7に備えられた真空ポンプ5aを含む負圧吸着式の台座固定手段により台座7を固定し、加工装置12に備えたワーク冷却用流体供給手段12cにより凍結固定用液の凝固温度6℃よりも低い温度、例えば4〜5℃のワーク冷却用流体13をワークWに当るように供給してワークWの凍結固定状態を維持しながら加工工具12bにより機械加工を行う。なお、台座固定手段は、作業台12aの上層部に電磁マグネット吸着による台座固定機能を有する構成、あるいは作業台12aの上面部の周囲に付設される機械チャック式により台座固定機能を有する構成としても良い。
第1のワーク加工方法によれば、加工装置12に凍結式ワーク固定方法を実施する凍結式ワーク固定手段を装備していなくても、ワークWに過冷却温度になるワーク冷却用流体をかけられるように付属設備を備えることで適用することができ、加工装置12とは別に装備する凍結式ワーク固定装置において、上記の凍結式ワーク固定方法により台座7の上面部にワークWを凍結固定するものであり、かつ台座7とワークWの全体に熱収縮による歪が生じていない状態に凍結固定することができるので、台座7を、加工装置12の被加工位置に固定し、ワークWに過冷却温度になる液体を当てて流し凍結固定を保持してワークに機械加工を行うと、台座7とワークWの全体に熱収縮による歪が生じていない分だけ、従来の凍結式ワーク加工方法に比べ、一層高精密な加工を実現することができる。
[実施例]
段落番号0007に記載した30μmの偏差が生じたリングギアについて、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法および第1のワーク加工方法を適用して再度機械加工し測定した。
すなわち、室温において、500mm角の冷却板の上面と300mmφのリングギア(ワーク)の下面に凝固温度が17℃であるシリコーンオイルからなる高分子系凝固剤を塗布してから、冷却板上にリングギアを重ね、冷却板の冷却を開始し、台座とワークの各側面部の4か所に接触式温度計を次々に接触させ、全ての測定温度がいずれも6℃の過冷却温度になったことを確認し、凍結固定用液に物理的刺激を与え凝固させた。次いで、ワークを凍結チャックした台座を冷却板から加工機械テーブル上に移載して固定し、5℃のワーク冷却用流体を加工領域にかけつつリングギアの上面に対して精密機械加工(平面加工)を行った。次いで、リングギアを取り外し、ギア中心に垂直な仮想平面に対するリングギアの平面加工した端面の垂直度を精密測定した。その結果、リングギアの端面における一側部と他側部とに1μmの偏差が生じていた。この偏差は機械精度に起因するものと考えられる。
次に、本実施の形態に係る凍結式ワーク固定方法を取り入れた第2のワーク加工方法について説明する。
第2のワーク加工方法で使用する加工装置については、図4に示す加工装置12に準ずるものであり、図示しない。第2のワーク加工方法で使用する加工装置は、図4に示す加工装置12の作業台12aに図1に示す凍結式ワーク固定装置を備え、さらに図4に示すワーク冷却用流体供給手段12cを備えている。
したがって、第2のワーク加工方法では、図1に示す凍結式ワーク固定装置を用いずに、加工装置に備えている凍結式ワーク固定装置を用いて台座上にワークを凍結固定する。次いで、ワーク冷却用流体供給手段により凍結固定用液の凝固温度6℃よりも低い温度、例えば4〜5℃のワーク冷却用流体をワークに当るように供給してワークの凍結固定状態を維持しながら加工工具により機械加工を行う。
第2のワーク加工方法によれば、被加工位置に凍結式ワーク固定方法を実施する凍結式ワーク固定手段を装備し、およびワークに過冷却温度になる液体をかけられるように付属設備を備える加工装置12に適用することができ、凍結式ワーク固定手段において上記の第1または第2の凍結式ワーク固定方法を適用して、台座7の上面部にワークWを凍結固定し、かつ台座7とワークWの全体に熱収縮による歪が生じていない状態に凍結固定することができるので、ワークに過冷却温度になる液体を当てて流し凍結固定を保持してワークに機械加工を行うと、台座7とワークWの全体に熱収縮による歪が生じていない分だけ、従来の凍結式ワーク加工方法に比べ、一層高精密な加工を実現することができる。
本発明によれば、台座とワークとの密着面部間に介在させる凍結固定用液の過冷却時に台座およびワークの一側部と他側部で熱収縮の差が生じているにもかかわらず、凍結固定用液の凍結チャック後において台座とワークの全体に熱歪が生じていない状態に凍結固定用液を凝固させることができ、ワークを台座の上面部に凍結チャックすることができるという効果を有し、凍結式ワーク固定方法、およびこの凍結式ワーク固定方法を用いるワーク加工方法全般に優れる。
1 凍結式ワーク固定装置(冷却手段)
3 冷却板
5 台座固定手段
6 凍結固定用液
7 台座
8 防振テーブル
10 風除けカバー
12 加工装置
12a 作業台
12b 加工工具
12c ワーク冷却用流体供給手段
13 ワーク冷却用流体
W ワーク

Claims (11)

  1. 高い熱伝導性を有する台座が凍結固定用液の凝固温度よりも所要高い温度において、前記台座と前記台座に載置するワークとの重なり面に前記凍結固定用液を介在させ、
    前記台座が冷却板に載置された状態で、前記冷却板からの冷熱の伝達により、前記台座と前記ワークの全体を前記凝固温度よりも所要低い凍結固定温度まで過冷却し、
    前記凍結固定温度に過冷却した時点より所要時間経過してから、
    前記凍結固定用液に刺激を与えることにより前記凍結固定用液を凝固させ、
    凝固した前記凍結固定用液により前記ワークを前記台座の上面部に凍結チャックすることを特徴とする凍結式ワーク固定方法。
  2. 前記凝固温度よりも所要高い温度とは、凝固温度よりも十度ないし十数度高い温度であることを特徴とする請求項1に記載の凍結式ワーク固定方法。
  3. 前記台座および前記ワークの全体が均一な凍結固定温度となるように冷却された時点は、前記台座が前記冷却板により冷却され始めたときから一定時間経過した時点とすることを特徴とする請求項1または2に記載の凍結式ワーク固定方法。
  4. 前記台座および前記ワークの全体が均一な凍結固定温度となるように冷却された時点は、前記台座および前記ワークの各側面部の複数箇所の接触式温度計による測定値が同一値になった時点とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法。
  5. 前記台座と、前記台座に重ねない状態の前記ワークと、前記台座と前記ワークとの重なり面に介在させる前の前記凍結固定用液とを、前記凝固温度よりも十度ないし十数度高い温度から予備冷却を開始して前記凝固温度に近い降下温度に予備冷却し、次いで、前記台座と前記ワークとの重なり面に前記凍結固定用液を介在させ、その後に前記冷却板を冷却して、前記ワークを前記凍結固定温度まで冷却することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法。
  6. 前記冷却板は防振テーブル上に設置することにより前記冷却板に振動が加わらない状態で前記冷却板に載置された前記台座に対し前記過冷却することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法。
  7. 前記過冷却の前に、前記台座および前記ワークを風除けカバーで囲むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法。
  8. 前記風除けカバーは、前記冷却板に非接触となるように設けることを特徴とする請求項7に記載の凍結式ワーク固定方法。
  9. 前記台座は、前記ワークと同一の材質からなるものを使用するか、または前記ワークの線膨張係数および熱伝達率とほぼ同一値の材質からなるものを使用することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法により前記ワークを凍結固定した前記台座を、前記冷却板から取り外して加工装置の被加工位置に位置し、かつ前記加工装置に備える作業台上に前記加工装置に備える台座固定手段により前記台座を固定し、前記凍結固定用液の凝固温度よりも低い温度のワーク冷却用流体を前記ワークに当るように供給してワークの凍結固定状態を維持しながら加工工具により加工を行うことを特徴とするワーク加工方法。
  11. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法に用いる前記冷却板であって、前記台座を固定する台座固定手段を付加した前記冷却板を含む冷却手段を備える加工装置の作業台上で、前記ワークを請求項1ないし9のいずれか1項に記載の凍結式ワーク固定方法により凍結固定し、引き続いて前記凍結固定用液の凝固温度よりも低い温度のワーク冷却用流体を前記ワークにかけてワークの凍結固定状態を維持しながら加工工具により加工を行うことを特徴とするワーク加工方法。
JP2016202686A 2016-10-14 2016-10-14 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法 Active JP6868998B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016202686A JP6868998B2 (ja) 2016-10-14 2016-10-14 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016202686A JP6868998B2 (ja) 2016-10-14 2016-10-14 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018062045A true JP2018062045A (ja) 2018-04-19
JP6868998B2 JP6868998B2 (ja) 2021-05-12

Family

ID=61967098

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016202686A Active JP6868998B2 (ja) 2016-10-14 2016-10-14 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6868998B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021170059A1 (zh) * 2020-02-27 2021-09-02 东莞长盈精密技术有限公司 冰冻定位装置和冰冻定位方法
CN116571794A (zh) * 2023-05-31 2023-08-11 南京航空航天大学 柔性装夹制冷一体化的多工位冷冻砂型卧式加工中心

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0778796A (ja) * 1993-07-12 1995-03-20 Toshiba Corp 半導体装置の製造方法およびその製造装置
JP3008344B2 (ja) * 1997-02-17 2000-02-14 禧享 垂水 凍結式ワーク固定法および凍結式ワーク固定装置
JP2004322295A (ja) * 2003-04-28 2004-11-18 Niigata Tlo:Kk 凍結チャック用冷却システム
JP2006123067A (ja) * 2004-10-28 2006-05-18 Denso Corp ワーク固定方法およびそれを用いた機械加工方法
JP2008284615A (ja) * 2007-05-15 2008-11-27 Niigata Machine Techno Co Ltd 工作機械におけるワーク冷却装置
JP2012024881A (ja) * 2010-07-22 2012-02-09 Toyota Motor Corp 加工装置による被加工物の加工方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0778796A (ja) * 1993-07-12 1995-03-20 Toshiba Corp 半導体装置の製造方法およびその製造装置
JP3008344B2 (ja) * 1997-02-17 2000-02-14 禧享 垂水 凍結式ワーク固定法および凍結式ワーク固定装置
JP2004322295A (ja) * 2003-04-28 2004-11-18 Niigata Tlo:Kk 凍結チャック用冷却システム
JP2006123067A (ja) * 2004-10-28 2006-05-18 Denso Corp ワーク固定方法およびそれを用いた機械加工方法
JP2008284615A (ja) * 2007-05-15 2008-11-27 Niigata Machine Techno Co Ltd 工作機械におけるワーク冷却装置
JP2012024881A (ja) * 2010-07-22 2012-02-09 Toyota Motor Corp 加工装置による被加工物の加工方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021170059A1 (zh) * 2020-02-27 2021-09-02 东莞长盈精密技术有限公司 冰冻定位装置和冰冻定位方法
CN116571794A (zh) * 2023-05-31 2023-08-11 南京航空航天大学 柔性装夹制冷一体化的多工位冷冻砂型卧式加工中心
CN116571794B (zh) * 2023-05-31 2024-04-19 南京航空航天大学 柔性装夹制冷一体化的多工位冷冻砂型卧式加工中心

Also Published As

Publication number Publication date
JP6868998B2 (ja) 2021-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10818524B2 (en) Expanding method and expanding apparatus
JP2018062045A (ja) 凍結式ワーク固定方法およびワーク加工方法
KR970706941A (ko) 동결 척 식 기계 가공법
CN103792119B (zh) 一种用于金相制样的模具和金相制样方法
CN106695109B (zh) 镍铬靶材组件的制造方法
JP2015036448A (ja) 円筒形セラミックス体の加工方法および円筒形スパッタリングターゲット
JP3934476B2 (ja) レーザ割断加工において冷凍チャッキングを使用した割断方法および装置
JP5631160B2 (ja) ワークのダイシング装置及びワークのダイシング方法
JP3120201B2 (ja) 加工装置のチャック装置
JP5790330B2 (ja) 加工装置
JP2019072829A (ja) 中空軸の製造方法及び製造装置
US20190084104A1 (en) Method and an assembly
JP4506492B2 (ja) 融解・凝固式ワーク固定剤およびそれを用いた機械加工方法
JP2004237408A (ja) 工具クランプ装置
Fritsche et al. Analysis of the thermal impact on gamma titanium aluminide by grinding with internal coolant supply based on experimental investigation and transient thermal simulation
JP3665724B2 (ja) 冷凍チャック装置
JPH07308848A (ja) 弾性材または軟質材の除去加工方法
JP2007030106A (ja) 切削具の焼嵌ホルダーへのセット方法および焼嵌装置
JP2016120544A (ja) ワーク加工機
Pasternak et al. Hybrid clamping technology for flexible micro machining
JP2005074603A (ja) ツールホルダへの工具取付装置
JP2008077962A (ja) ホットプレート
Qian et al. Study of roughness variation during fixed abrasive polishing based on KDP in anhydrous environment
JP2003251539A (ja) ワークの固定方法およびワークの加工方法
Klingauf Work piece clamping with one casting.

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161019

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190802

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200717

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200929

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210406

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210413

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6868998

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250