JP2018058412A - 車両用灯具 - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば悪天候下の視認性向上に役立ちうる車両用灯具システムを提供する。【解決手段】車両用灯具は、水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム60、および、水平線上またはその近傍で水平方向に延びる輝線を描く第2照明ビーム62を照射可能な車両用灯具であって、車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に第1照明ビーム60を照射し、悪天候時に第2照明ビーム62を照射するよう車両用灯具を制御する制御部を備える。【選択図】図7
Description
本発明は、車両用灯具に関する。
道路の幅方向である第1方向に長く、道路の幅方向及び光源の出射軸の双方に直交する方向である第2方向に短い描画パターンを第2方向に沿って道路上の複数箇所に描画するように、それぞれの描画パターンに対応する複数の光源が配列され、それぞれの光源が独立して点消灯可能に形成された光源モジュールと、光源からの出射光を車両の前方に出射する光学系と、を備えた、路面描画用灯具ユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この路面描画用灯具ユニットによると、歩行者に認識しやすい単純な図形パターンを路面等の所定位置に表示して、ドライバーの死角となる交差道路にいる歩行者等に車両の接近や接近する方向を迅速かつ的確に認識させることができる。
車両前方路面の視認性は降雨時、降雪時、または霧発生時のような悪天候下で種々の要因により低くなる。例えば、降雨時には、自車からの照明光の多くが路面上の水膜によって鏡面反射されるので、路面で拡散反射または再帰反射されて自車に戻る光は少なくなる。そのため路面が見にくくなる。その一方で、対向車からの照明光は水膜で反射され、そうした反射光はグレアを発生させうる。街路灯や標識など様々な周囲の光や構造物の水膜への映り込みも路面視認性に影響しうる。また、降雪時には、積雪により路面と路面以外の場所とを識別しにくくなる。さらに、降雨時および降雪時のみならず、霧発生時に顕著な問題となりうるのは、いわゆる光幕グレアである。雨粒、雪粒、または霧粒によって照明光が乱反射され、反射した光の一部または大半が運転者のほうに戻るため、車両正面に視界不良が生じうる。こうして、歩行者および道路線形の把握が難しくなる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば悪天候下の視認性向上に役立ちうる車両用灯具システムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム、および、水平線上またはその近傍で水平方向に延びる輝線を描く第2照明ビームを照射可能な車両用灯具であって、車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に第1照明ビームを照射し、悪天候時に第2照明ビームを照射するよう車両用灯具を制御する制御部を備える。
車両用灯具は、水平方向に延び鉛直方向に並ぶ複数の輝線にそれぞれ対応する複数の光源を備えてもよい。前記離散的に鉛直方向に移動または拡張する輝線が前記複数の輝線によって表現されるように前記複数の光源の点灯順序が設定されてもよい。
第2照明ビームは、第1照明ビームに対して鉛直方向上方に照射されてもよい。
本発明の別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム、および、ロービーム領域のうちレーンマークを含む少なくとも一部分に点滅単色光を照射する第3照明ビームを照射可能な車両用灯具であって、車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に第1照明ビームを照射し、悪天候時に第3照明ビームを照射するよう車両用灯具を制御する制御部を備える。
車両用灯具は、ヘッドランプのロービームを照射可能であり、第1照明ビームをロービームに対し重畳可能であってもよい。
本発明によれば、例えば悪天候下の視認性向上に役立ちうる車両用灯具システムを提供することができる。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。
また、各図においては、ドライバーが運転席から見たと仮定した車両及び車両用灯具の各方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
図1から図4は、実施の形態に係る路面描画用灯具ユニットを含む車両用灯具を示す。車両用灯具1は、右側前照灯の一例を示すものであり、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、前記開口部を閉塞する透明または半透明の前面カバー3とを備える。ランプボディ2と前面カバー3の内側に形成された灯室Sの内側には、路面描画用灯具ユニット4と、配光パターン形成用の光源ユニット5、エイミングブラケット6、7、スイブルユニット8、複数のエイミングスクリュー9、エクステンションリフレクター10、及び制御装置11が収容される。
図1から図4に示される路面描画用灯具ユニット4は、制御装置11と、光源モジュール12と、光学系である透明な投影レンズ例えばトーリックレンズ13とを有する。光源モジュール12は、金属製のレンズホルダー14と、光源を構成するLEDアレイ15と、一対のリフレクター16、17によって構成される。
図2と図3に示す通り、レンズホルダー14は、中空箱形の本体部14aと、光源支持部14b、複数の放熱フィン14c、軸受部14d、14eによって構成され、本体部14aは、天板14f、底板14g、左右側板14h、14iによって構成される。軸受部14d、14eは、底板14g及び天板14fの外側にそれぞれ形成され、後述する第1及び第2スイブル軸23、24に取り付けられる。光源支持部14bは、天板14f、底板14g、左右側板14h、14iに直交する仕切板として本体部14aの内側に一体に形成される。光源支持部14bの前面14jには、基板15aを介してLEDアレイ15が取り付けられ、光源支持部14bの後面には、互いに平行になるように後方に延出する複数の放熱フィン14cが設けられる。また、本体部14aの前端開口部は、トーリックレンズ13を取り付けられることによって閉塞される。
LEDアレイ15は、トーリックレンズ13の後方焦点近傍に配置され、トーリックレンズ13の後面13aは、図3に示すようにLEDアレイ15に対向する。LEDアレイ15の光は、トーリックレンズ13及び前面カバー3を透過することによって車両前方の路面等に描画パターンを表示する。尚、光源モジュール12に採用する投影レンズには、トーリックレンズ13の他、シリンドリカルレンズ等を採用できるが、トーリックレンズを採用することが最も望ましい。トーリックレンズもシリンドリカルレンズも、道路の幅方向(車両の左右方向)に長く、道路の伸長方向に短い帯状または棒状の描画パターンを表示する点で共通するが、シリンドリカルレンズは、描画パターンの中央に向かって奥行きが徐々に減少するため奥行きが均等な描画パターンを形成出来ないのに対し、トーリックレンズは、道路の伸長方向に奥行きが均等な描画パターンを形成出来るため、より明確な帯状または棒状の描画パターンを表示できる点で望ましい。
LEDアレイ15は、基板15aの前面に上下に配列された複数の白色や緑色等のLED発光素子18〜22からなる組み合わせを左右に複数組配列することで形成される。LED発光素子18〜22は、同一方向に向けて配置され、かつ制御装置11によって独立して点消灯可能に制御される。上下に配列される複数のLED発光素子18〜22の組み合わせは、1組だけ設けられても良いが、道路の幅方向に長い描画パターンを表示するためには、道路の幅方向に十分な光束の光を拡散させるために左右に複数配列することが望ましい。上下5列のLED発光素子18〜22が左右に2組配列されているが、上下に並べるLED発光素子の数及び、左右に並べる組み合わせの数は、この数に限られない。
レンズホルダー14の光源支持部14bには、LED発光素子18〜22の左右両側にリフレクター16、17が設けられる。リフレクター16、17は、光源支持部14bから斜め前方に向かって末広がりとなるように板状に延出し、LED発光素子18〜22を左右両側から覆うように形成される。リフレクター16、17は、LED発光素子18〜22から出射する光をレンズホルダー14の左右側板14h、14iに入射させないように、トーリックレンズ13の後面13aに向けて反射することにより、出射光の左右への拡散を制限する。
LEDアレイ15から出射した光は、出射軸L1を中心として拡散し、トーリックレンズ13及び前面カバーから車両の前方に出射して、描画パターンを形成する。出射軸L1は、全てのLED発光素子18〜22による光束照射範囲における上下及び左右の中心を通る軸線である。
また、トーリックレンズ13を固定した光源モジュール12は、エイミングブラケット6、7、スイブルユニット8及び複数のエイミングスクリュー9によってランプボディ2に取り付けられる。エイミングスクリュー9は、路面描画用灯具ユニット4及び配光パターン形成用の光源ユニット5に対してそれぞれ3箇所ずつ設けられ、ランプボディ2に取り付けられる。また、3箇所のエイミングスクリューのうち1本は、モーターユニット52によって前後に進退可能に構成されることにより、路面描画用灯具ユニット4及び配光パターン形成用の光源ユニット5をそれぞれ独立して上下に傾動させる。
エイミングブラケット6、7は、板状で一端がエイミングスクリュー9に支持され、他端の軸取付部6a、7aが前方に向かって屈曲する。路面描画用灯具ユニット4の下方に設けられたエイミングブラケット6には、内蔵したモーター等で第1スイブル軸23を回動させるスイブルユニット8が固定される。第1スイブル軸23は、軸取付部6aの孔6bから上方に突出してレンズホルダー14の軸受部14dに固定される。また、路面描画用灯具ユニット4の上方に設けられたエイミングブラケット7の軸取付部7aには、孔7bが設けられる。レンズホルダー14の軸受部14eには、第2スイブル軸24が固定され、第2スイブル軸24は、孔7bを介してエイミングブラケット7の軸取付部7aに回動可能に保持される。
路面描画用灯具ユニット4は、第1及び第2スイブル軸23、24を介し、エイミングブラケット6、7に回動可能に支持され、かつスイブルユニット8の駆動源(モーター等)によって第1スイブル軸23を回動させることにより、第1及び第2スイブル軸23、24の中心軸線L2を中心として左右に揺動する。
次に図5により、制御装置11を説明する。制御装置11は、灯具ECU(電子制御装置)41、ROM42、RAM43を有する。灯具ECU41は、光源制御部44、スイブル制御部45、及びレベリング制御部53を有する。ROM42には、各種制御プログラムが記録され、灯具ECU41は、ROM42に記録された制御プログラムをRAM43において実行し、各種制御信号を生成する。
光源制御部44は、LEDアレイ15の点灯制御回路46を介してLED発光素子18〜22に接続される。スイブル制御部45は、スイブルユニット8の駆動源(図示しないモーター等)を駆動させるスイブル駆動部47に接続される。スイブル駆動部47は、灯具ECU41の制御信号に基づいて、図2に示す第1スイブル軸23を中心軸線L2周りに回動させ、路面描画用灯具ユニット4を左右に揺動させる。レベリング制御部53は、モーターユニット52に接続される。モーターユニット52は、灯具ECU41の制御信号に基づいて、路面描画用灯具ユニット4を上下に揺動させる。
光源制御部44は、上下に配列されたLED発光素子18〜22を、LED発光素子毎に独立して点消灯させるように制御する。また、LED発光素子18〜22の組み合わせが左右に複数組設けられているため、光源制御部44は、左右方向に同列に配置されたLED発光素子を同時にまたは、LED発光素子毎に独立して点消灯させるように制御する。左右に配列されたLED発光素子を独立して点消灯させることは、点灯するLED発光素子の数によって描画パターンの幅を変更出来、または、連続して点灯するLED発光素子の間に消灯部分を形成する(LED発光素子が左右に3組以上配列されている場合に限る)ことによって左右に分割された複数の描画パターンを形成出来る点で望ましい。
また、灯具ECU41には、画像処理装置48、人感センサー49、天候検知部54が接続される。画像処理装置48には、車載カメラ50やインターネット等の通信回線を介して道路監視カメラ51等が接続される。車載カメラ50は、路面描画用灯具ユニット4と共に車両に搭載され、道路監視カメラ51には、交差点に配置される交差点カメラや、道路の近辺に設置された監視カメラ等が含まれる。
人感センサー49は、道路上における歩行者の検出データを灯具ECU41に送り、車載カメラ50及び道路監視カメラ51は、車両近辺に存在する歩行者等に関する撮影データを画像処理装置48に送る。人感センサー49によって道路上の歩行者が検出され、または画像処理装置48の解析結果によって道路上の歩行者等の映像等が得られた場合、灯具ECU41は、道路上の歩行者や他車両のドライバーに注意を促すための所定の描画パターンを路面等の所定の位置に描画するように、LEDアレイ15の点灯制御回路46、スイブル駆動部47、及びモーターユニット52を制御する。
天候検知部54は、車両周囲の現在の天候を表す天候情報を生成し、天候情報を表す信号を出力するよう構成されている。天候情報は、車両周囲の現在の天候が通常の天候(例えば晴れまたは曇り)であるか、または車両周囲の現在の天候が悪天候(例えば雨、雪、または霧)であるかのいずれかを少なくとも表す。
例えば、天候検知部54は、車両周囲の天候を検知する天候センサ(例えば雨滴センサまたは霧センサ)を備え、天候センサの検知結果から天候情報を生成してもよい。天候検知部54は、車両周囲の天候に応じて手動または自動で操作される機器(例えばワイパ)を備え、当該機器の操作状態(例えばワイパのオンオフ)またはそれを表す信号が天候情報とみなされてもよい。例えば、ワイパがオフである場合に天候情報は車両周囲の現在の天候が通常の天候であることを表し、ワイパがオンである場合に天候情報は車両周囲の現在の天候が悪天候であることを表してもよい。あるいは、天候検知部54は、車両周囲の天候を表す情報を外部から受信するよう構成され、受信した外部からの情報から天候情報を生成してもよい。前方情報取得装置(例えば車載カメラ50)が天候検知部54の一部であってもよく、天候検知部54は、画像解析を行うことにより車両周囲の天候を特定し、天候情報を生成してもよい。また、天候検知部54は、天候センサの検知結果、機器の操作状態、外部情報、および車両前方情報のうち少なくとも2つの組合せに基づいて天候情報を生成してもよい。
図6は、実施の形態に係る第1照明ビーム及び第2照明ビームを例示する図である。図7は、実施の形態に係る第1照明ビーム及び第2照明ビームそれぞれによって描出される輝線を例示する図である。
車両用灯具1は、水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム60、および、水平線上またはその近傍で水平方向に延びる輝線を描く第2照明ビーム62を照射可能であるよう構成されている。
図示されるように、複数の光源すなわちLED発光素子18〜22から発せられた光線L18〜L22は、トーリックレンズ13を通過して車両前方へと向かう。各光線L18〜L22の鉛直方向の角度幅は例えば1度程度である。光線L18〜L22はそれぞれ、対応する輝線M18〜M22を車両前方に形成する。輝線M18〜M22は、水平方向に延び鉛直方向に並ぶ。輝線M18〜M22は、鉛直方向に互いに離間して配置される。LED発光素子18〜22と対応する輝線M18〜M22とはトーリックレンズ13によって配列順序が上下に反転している。
第1照明ビーム60は、上側4行のLED発光素子18〜21により照射され、第2照明ビーム62は、最下行のLED発光素子22により照射される。よって、第1照明ビーム60は、下側4本の輝線M18〜M21により形成される。第2照明ビーム62は、最上方の輝線M22により形成される。
このように、第2照明ビーム62は、第1照明ビーム60に対して鉛直方向上方に照射される。第2照明ビーム62は、水平線(図におけるH−H線)上またはその近傍で水平方向に延びる輝線M22を描く。第2照明ビーム62により描出される輝線M22は、第1照明ビーム60により描出される輝線M18〜M21のうち鉛直方向に最上方に位置する輝線M21よりも上方に位置する。言い換えれば、第1照明ビーム60により描出される輝線M18〜M21はいずれも水平線よりも鉛直方向に下方に位置する。
後述のように、第1照明ビーム60は通常の天候時に照射されるから、LED発光素子18〜21は、通常用の光源として設けられている。第2照明ビーム62は悪天候時に照射されるから、LED発光素子22は、悪天候用の光源として設けられている。
図7には、図1に示す光源ユニット5によってロービームが照射されるロービーム領域64が例示される。このように、車両用灯具1は、ヘッドランプのロービームを照射可能であり、第1照明ビーム60をロービームに対し重畳可能である。ロービームは、車両の進行方向前方で車両に比較的近い場所を照らす。そうした場所に、歩行者等への車両接近を認識させる輝線標示を提示することができる。
なお、第2照明ビーム62についても、少なくとも部分的にロービームに対し重畳可能であってもよい。あるいは、第2照明ビーム62は、ロービーム領域64外に照射されてもよい。
また、第2照明ビーム62は、第1照明ビーム60と同様に、複数の輝線を描画してもよい。その場合、ある輝線が水平線上で水平方向に延び、他の輝線が水平線上の輝線から鉛直方向(例えば鉛直方向上方)にある程度離間して水平線の近傍で水平方向に延びていてもよい。あるいは、複数の輝線がそれぞれ水平線から鉛直方向にいくらか外れて水平方向に延びていてもよい。例えば、2本の輝線が水平線の両側で水平に延びていてもよい。
図8(a)は、実施の形態に係る第1照明ビームが車両前方に照射される様子を例示し、図8(b)は、実施の形態に係る第2照明ビームが車両前方に照射される様子を例示する。
上述のようにLED発光素子18〜22は独立して制御可能であるため、LED発光素子18〜22の点灯順序は任意に設定可能である。そこで、例えば、LED発光素子18〜21の点灯順序は、離散的に鉛直方向に移動または拡張する少なくとも1本の輝線が、第1照明ビーム60を形成する輝線M18〜M21によって表現されるように、予め設定されてもよい。その場合、制御装置11(例えば、光源制御部44)は、複数の輝線を順次照射することにより離散的に鉛直方向に移動または拡張する輝線が描出されるように、設定された点灯順序に従って複数の光源を制御する。
具体的には例えば、LED発光素子18、19、20、21の順に1つずつ点灯させることにより、輝線M18、M19、M20、M21はこの記載の順に1つずつ描かれる。このようにして、下方から上方へと移動する輝線を表現することができる。路面上では前方に向かって移動する輝線が表示される。図においては輝線の移動を矢印66で表す。なお、逆の順番でLED発光素子18〜21を1つずつ点灯させることによって、上方から下方へと移動する輝線を描くこともできる。また、同時に複数の発光素子を点灯することによって、複数本の移動する輝線を表現することも可能であることも理解されよう。
あるいは、点灯させた発光素子をそのまま点灯させながら発光素子18、19、20、21の順に点灯させることにより、輝線の本数を逐次増加させることもできる。こうして、下方から上方へと拡張する輝線を表現することができる。
なお、発光素子18、19、20、21をすべて同じタイミングで点消灯させ、すべての輝線を同時に描くことも、もちろん可能である。
レベリング制御(例えば、モーターユニット52の駆動)によって、路面描画用灯具ユニット4を上下に動かすことができる。これを利用して、第1照明ビーム60を上下に連続的に移動させてもよい。あるいは、第1照明ビーム60を鉛直方向に所望の角度に定めることができる。なお、同様にして、第2照明ビーム62を上下に連続的に移動させ、または、第2照明ビーム62を鉛直方向に所望の角度に定めることもできる。
このようにして、第1照明ビーム60は、水平方向に細長く延びる細長照明光を時間の経過と共に離散的または連続的に鉛直方向(例えば鉛直方向上方)に移動させることができる。車両用灯具1は、複数の光源を有し、各光源からの発光により鉛直方向に離間した複数の細長照明光を照射可能であり、複数の細長照明光は、時間の経過と共に、第1照明ビーム60として下方の細長照明光から上方の細長照明光を順次照射することができる。
第1照明ビーム60が照射されるとき、第2照明ビーム62用のLED発光素子22は消灯されている。こうして、車両用灯具1の路面描画用灯具ユニット4は、第1照明ビーム60のみを照射することができる。また、LED発光素子22を点灯し、他のLED発光素子18〜21を消灯すれば、図8(b)に示されるように、路面描画用灯具ユニット4は、第2照明ビーム62のみを照射することができる。必要とされる場合には、路面描画用灯具ユニット4は、第1照明ビーム60および第2照明ビーム62を同時に照射してもよい。
悪天候下の光幕グレア対策として、第2照明ビーム62が照射されるとき、第2照明ビーム62より鉛直方向に上方の領域の全部または一部(例えば水平方向中央部)が、遮光されてもよい。また、当該領域の全部または一部が、第1照明ビーム60が照射される場合に比べて減光されてもよい。
第2照明ビーム62の光源は、LED光源に限られず、レーザ光源であってもよい。レーザ光源はふつうLED光源よりも高輝度であるから、第2照明ビーム62をより明るくすることができる。
図9は、実施の形態に係る車両用灯具の制御方法の一例を示すフローチャートである。図示される制御ルーチンは例えば、制御装置11(例えば、灯具ECU41または光源制御部44、以下同様)によって、走行中に所定のタイミングで繰り返し実行される。
以下に説明するように、制御装置11は、車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に第1照明ビーム60を照射し、悪天候時に第2照明ビーム62を照射するよう車両用灯具1の路面描画用灯具ユニット4を制御する。
図9に示されるように、まず、歩行者、自転車またはその他の照射対象が存在するか否かが判定される(S10)。制御装置11は、車両周囲の状態、例えば、画像処理装置48及び/または人感センサー49からの入力に基づいて、車両前方の道路上における照射対象の有無を検出することができる。照射対象が不存在の場合には(S10のN)、路面描画用灯具ユニット4は消灯される(S12)。すなわち、第1照明ビーム60および第2照明ビーム62のいずれも照射されない。
照射対象が存在する場合には(S10のY)、車両周囲の天候状態が判定される。制御装置11は、天候検知部54からの入力に基づいて、車両周囲が現在悪天候であるか否かを判定する(S14)。車両周囲の現在の天候が通常の天候である場合には(S14のN)、第1照明ビーム60が照射される(S16)。一方、車両周囲の現在の天候が悪天候である場合には(S14のY)、第2照明ビーム62が照射される(S18)。こうして、本ルーチンは終了し、以降同様に繰り返される。
このようにして、歩行者が検出される等、車両前方の道路上に照射対象が存在する場合において、車両周囲の天候が通常の天候から悪天候に変化するとき、制御装置11は、車両用灯具1の路面描画用灯具ユニット4を第1照明ビーム60から第2照明ビーム62に切り替える。逆に、制御装置11は、車両周囲の天候が悪天候から通常の天候に変化するとき、車両用灯具1の路面描画用灯具ユニット4を第2照明ビーム62から第1照明ビーム60に切り替える。
図10(a)は、実施の形態に係る第3照明ビームの一例を示す図である。
車両用灯具1は、第1照明ビーム60(及び/または第2照明ビーム62)に加えて、第3照明ビーム70を照射可能であるよう構成されていてもよい。第3照明ビーム70は、ロービーム領域64のうちレーンマーク72を含む少なくとも一部分に点滅単色光(例えば緑色または黄色)を照射するものであってもよい。第3照明ビーム70は、レーンマーク72のような道路の最も外側の車線境界線およびその周囲の路面領域とともに、道路の側縁部に設置される縁石、デリニエータ、ガードレール等の構造物を照射してもよい。
制御装置11は、車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に第1照明ビーム60を照射し、悪天候時に第3照明ビーム70を照射するよう車両用灯具1を制御してもよい。この場合、制御装置11は、図9に示す制御フローにおいて、第2照明ビーム62に代えて、第3照明ビーム70を適用してもよい。
第3照明ビーム70は、図7および図8(b)に示す第2照明ビーム62と同様に、水平線上またはその近傍で水平方向に延びる輝線を描いてもよい。第3照明ビーム70は、第2照明ビーム62を照射するための光源によって照射されてもよい。
あるいは、第3照明ビーム70は、第1照明ビーム60を照射するための複数の光源のうち少なくとも1つの光源によって照射されてもよい。
第3照明ビーム70として点滅光を用いることにより、人間の目にとって持続時間の長い刺激よりも、適度に短い刺激のほうが明るく感じられるという、ブローカ‐ズルツァー(Broca-Sulzer)効果を利用することができる。第3照明ビーム70の点滅の頻度は例えば、4Hz±1Hzの範囲内にあってもよい。なお、ここで、点滅光は、第3照明ビーム70を照射する光源の点灯と消灯の反復によって形成されることは必須ではなく、点灯と消灯の反復に類する高輝度と低輝度の輝度変化の反復を含みうる。
また、第3照明ビーム70として点滅単色光を用いることにより、補色残像効果を利用することができる。補色残像効果によれば、特定の色の光が消えたとき、照射場所にその色の補色または反対色の色が一時的に見られる。例えば、第3照明ビーム70が点滅する緑色光である場合、マゼンダまたは赤色の残像が観察される。第3照明ビーム70が点滅する黄色光である場合、青または青紫色の残像が観察される。
レーンマーク72は通例白色であるので、第3照明ビーム70がレーンマーク72に照射されることにより、例えば緑と赤(または黄色と青)の反復的色変化が白色の背景で生じる。したがって、第3照明ビーム70は、レーンマーク72の視認性を、とりわけ雨天時のような悪天候下で向上することができる。レーンマーク72の視認性向上は、ドライバーにとって車線維持を容易にすることに役立つ。
図10(b)は、実施の形態に係る第3照明ビームの他の例を示す図である。第3照明ビーム70は、図1に示す路面描画用灯具ユニット4および光源ユニット5以外の専用の光源、例えばフォグランプによって、ロービーム領域64内でレーンマーク72に向けて照射されてもよい。
以上説明したように、実施の形態に係る車両用灯具1においては、第1照明ビーム60を照射することにより、移動する輝線を路面に表示して歩行者等に車両の接近を知らせることができる。また、第2照明ビーム62及び/または第3照明ビーム70を照射することにより、悪天候下の視認性向上に役立ちうる車両用灯具を提供することができる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
上述の実施の形態においては、第2照明ビーム62及び/または第3照明ビーム70は、照射対象が存在しかつ悪天候の場合に照射されているが、これに限られない。第2照明ビーム62及び/または第3照明ビーム70は、車両周囲の現在の天候が悪天候である場合に、照射対象が存在するか否かにかかわらず(つまり照射対象の不存在であっても)、照射されてもよい。
1 車両用灯具、 4 路面描画用灯具ユニット、 11 制御装置、 41 灯具ECU、 44 光源制御部、 60 第1照明ビーム、 62 第2照明ビーム、 64 ロービーム領域、 70 第3照明ビーム。
Claims (5)
- 水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム、および、水平線上またはその近傍で水平方向に延びる輝線を描く第2照明ビームを照射可能な車両用灯具であって、
車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に前記第1照明ビームを照射し、悪天候時に前記第2照明ビームを照射するよう前記車両用灯具を制御する制御部を備えることを特徴とする車両用灯具。 - 水平方向に延び鉛直方向に並ぶ複数の輝線にそれぞれ対応する複数の光源を備え、前記離散的に鉛直方向に移動または拡張する輝線が前記複数の輝線によって表現されるように前記複数の光源の点灯順序が設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
- 前記第2照明ビームは、前記第1照明ビームに対して鉛直方向上方に照射されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
- 水平方向に延び離散的または連続的に鉛直方向に移動または拡張する輝線を描く第1照明ビーム、および、ロービーム領域のうちレーンマークを含む少なくとも一部分に点滅単色光を照射する第3照明ビームを照射可能な車両用灯具であって、
車両周囲の状態に基づき、照射対象が存在する場合に前記第1照明ビームを照射し、悪天候時に前記第3照明ビームを照射するよう前記車両用灯具を制御する制御部を備えることを特徴とする車両用灯具。 - 前記車両用灯具は、ヘッドランプのロービームを照射可能であり、前記第1照明ビームを前記ロービームに対し重畳可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
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