JP2018054441A - 絶縁抵抗検出機能を備えたモータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、半導体素子の漏れ電流の影響を受けずに、正確なモータの絶縁抵抗値の測定、及び絶縁劣化検出を可能とするモータ駆動装置を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のモータ駆動装置は、コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部で測定された電圧値を第1の測定結果とし、グループAについてはコンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンし、且つ、グループBについてはコンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部で測定された電圧値を第2の測定結果とし、グループA及びBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を求める。【選択図】図4
Description
本発明は、複数のモータを駆動するモータ駆動装置に関し、特に測定対象以外のモータの絶縁抵抗や、インバータ部の半導体スイッチング素子を経由して流れる漏れ電流の影響を受けない正確なモータの絶縁抵抗測定および絶縁劣化検出機能を備えたモータ駆動装置に関する。
これまでに、DCリンク部の平滑用コンデンサに充電された電圧をモータ巻線(コイル)と大地との間に印加してモータ巻線の絶縁抵抗を検出する機能を備えたモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。特許文献1には、絶縁抵抗検出機能を備えたモータ駆動装置として、交流電源をスイッチで遮断した後に、インバータ部に接続される直流電源(DCリンク部)の平滑用コンデンサの一端を大地に接続し、平滑コンデンサの他端に接続された複数の半導体スイッチング素子を予め定められた順番で1つずつオン状態にすることで、平滑用コンデンサ、大地、モータコイル、オン状態の半導体スイッチング素子から成る閉回路を生成して、この閉回路を流れる電流を、電流検出回路で検出してモータの絶縁抵抗を検出する方法について記載されている。
更に、特許文献1では、複数のモータを駆動する複数のインバータ部を備えたモータ駆動装置の場合に、複数のモータの中から検出対象とする任意のモータを選択して、検出対象として選択したモータが接続されているインバータ部の半導体スイッチング素子のみをオン状態にして、測定対象以外のモータが接続されているインバータ部の半導体スイッチング素子は全てオフ状態のままにすることで、複数のモータの中から検出対象のモータの絶縁抵抗を経由する閉回路を生成して、検出対象のモータの絶縁抵抗を検出する方法について記載されている。
特許文献1に記載の従来技術は、複数のモータを駆動する複数のインバータ部を備えたモータ駆動装置の場合に、インバータ部に元々備わっている半導体スイッチング素子を、複数のモータの中から検出対象のモータを選択するための切り替えスイッチとして利用している。このため、検出対象を切り替えるためのスイッチをモータの数だけ別途設ける必要がない。さらに、複数台のモータに対して1つの検出回路でモータの絶縁抵抗の測定を実現できるため、シンプルな構成、かつ低いコストで実現できる点で優れた方式である。
しかし、特許文献1に記載の従来技術には、複数のモータを駆動する複数のインバータ部を備えたモータ駆動装置において、複数のモータの中から検出対象の特定のモータを選んで絶縁抵抗を測定する場合、検出対象以外のモータにひとつでも絶縁抵抗が低下したものがあると、半導体スイッチング素子の漏れ電流が増大する高温時に測定精度が低下するという問題があった。
一方、特許文献2では、複数のモータの中から検出対象とする任意のモータを選択して測定する場合に、交流電源をスイッチで遮断した後に、インバータに接続される直流電源(DCリンク)の平滑用コンデンサの一方の端子を大地に接続し、検出対象として選択したモータのコイルが接続されているインバータの半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態にするだけでなく、測定対象以外のモータについても、コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子もオンした状態にすることで、オフ状態の半導体スイッチング素子を測定対象のモータの絶縁抵抗を経由する閉回路から追い出して、オフ状態の半導体スイッチング素子の漏れ電流の影響を受けないようにしたモータの絶縁劣化の検出方法について記載されている。
特許文献2は、オフ状態の半導体スイッチング素子の漏れ電流が増大する高温時に測定精度が低下するという、特許文献1のもつ従来技術の問題点を解決している点において優れた方式である。しかし、特許文献2に記載の従来技術においても、測定対象以外のモータに絶縁抵抗値が低いモータが含まれている場合には測定精度が低下するという問題があった。
図1に特許文献2に開示されている従来技術を使用した、2台のモータを駆動する2つのインバータ部を備えたモータ駆動装置の構成を示す。以下に図1の例で2台のモータの中から測定対象として第1モータ1061を選択して第1モータ1061の絶縁抵抗を測定する場合の例について説明する。
従来のモータ駆動装置を利用したモータの絶縁抵抗の測定手順は以下のとおりである。先ず、図1において、全てのインバータ部1051、1052の半導体スイッチング素子(IGBT)10511〜10561、10512〜10562は全てオフ状態にしておいて、第1スイッチ1001をオフして交流電源1002を切り離す。次に、第2スイッチ1009をオンしてDCリンク部1004のマイナス側端子1043を大地に接続する。ここまでの状態のIGBTとモータと大地との間の絶縁抵抗の接続を等価回路で表したのが図2である。
次に、図1において、測定対象として第1モータ1061を選択した結果として、第1モータ1061が接続されている第1インバータ部1051のU相上アームのIGBT10511をオン状態にして、且つ、測定対象外となった第2モータ1062が接続されている第2インバータ部1052部のU相下アームのIGBT10522をオン状態にして、測定対象である第1モータ1061のモータコイル10611〜10631と大地との間の絶縁抵抗を経由する閉回路(図1の点線で示す)を形成して、該閉回路に流れる電流を電流検出部1007で測定する。これと同時に、DCリンク電圧を電圧検出部1008で測定し、測定で得られた電圧値と電流値からモータと大地との間の絶縁抵抗値を求める。
この絶縁抵抗測定時の等価回路を示したのが図3である。図2の状態から第1インバータ部1051の上アームのIGBT(10511、10531、10551)のうちの1つがオン状態に変わり、且つ、第2インバータ部1052の下アームのIGBT(10522、10542、10562)のうちの1つがオン状態に変わるので、図3は図2の第1インバータ部1051の上アームのIGBT(10511、10531、10551)の等価絶縁抵抗値RU−IGBT1と、第2インバータ部1052の下アームのIGBT(10522、10542、10562)の等価絶縁抵抗値RD−IGBT2をショートした等価回路になる。
図2と図3において、RU−IGBT1とRU−IGBT2はそれぞれ第1インバータ部1051と第2インバータ部1052の上アームのIGBT(10511、10531、10551、及び10512、10532、10552)のオフ時の等価絶縁抵抗値、RD−IGBT1とRD−IGBT2はそれぞれ第1インバータ部1051と第2インバータ部1052の下アームのオフ時のIGBT(10521、10541、10561、及び10522、10542、10562)のコレクタとエミッタ間の等価絶縁抵抗値、Rm1とRm2はそれぞれ第1モータ1061と第2モータ1062のモータコイル(10611〜10631、10612〜10632)と大地との間の絶縁抵抗値、Rcは電流検出部1007の分圧抵抗1072と電流検出抵抗1071の直列接続を1個の抵抗で表したものである。
図1のような3相モータを駆動する3相インバータの場合、1つのインバータ部を構成する半導体スイッチング素子(IGBT)は、上アームと下アームそれぞれ3つずつの構成となるが、同一インバータ内の上アーム同士および下アーム同士の3つのIGBTのコレクタ端子とエミッタ端子が、DCリンク部とモータ内部のモータコイルを通じて並列接続されている状態となっている。このことから、図2と図3の等価回路では、それぞれのインバータ部の上アーム同士と下アーム同士のIGBTは、それぞれ3つのIGBTが並列接続された1つの等価絶縁抵抗で表している。
特許文献2に記載の従来技術では、複数のモータを駆動する複数のインバータ部を備えたモータ駆動装置において、測定対象となる特定のモータを選択して絶縁抵抗検出を行う場合に、測定対象以外のモータの絶縁抵抗が電流検出部に並列接続された状態となるために、測定対象モータの絶縁抵抗を経由して流れる測定すべき電流の一部が、電流検出部を通らずに測定対象以外のモータの絶縁抵抗を経由して流れてしまう。そのため、電流検出部で測定した電流値は測定対象モータの絶縁抵抗を経由して流れる電流とは等しくならず、特に測定対象以外のモータに絶縁抵抗値が低下しているモータが含まれている場合には、測定対象とする特定のモータの絶縁抵抗測定の測定精度が大幅に低下するという問題があった。
具体的には、図3から明らかなように、従来技術の問題点は、測定対象以外の第2モータの絶縁抵抗Rm2が電流検出部1007に並列接続された状態となるために、測定対象の第1モータと大地との間の絶縁抵抗Rm1を経由して流れる本来測定すべき電流(図3の点線矢印と一点鎖線の矢印の和)の一部(一点鎖線の矢印)が電流検出部1007を通らないで、測定対象以外の第2モータの絶縁抵抗Rm2を経由して流れてしまう点にある。
このように、特許文献2に記載の従来技術では、測定対象以外のモータの絶縁抵抗が電流検出部に並列接続された状態になってしまうため、測定対象モータの絶縁抵抗の測定精度に測定対象以外のモータの絶縁抵抗値が影響してしまうという根本的な問題がある。そのため、特に測定対象以外のモータに絶縁抵抗値が低下しているモータが含まれている場合に、測定対象とする特定のモータの絶縁抵抗測定の測定精度が大幅に低下するという問題があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、絶縁抵抗が低下したモータを含む複数のモータの中から特定のモータの絶縁抵抗を測定する場合においても、インバータに元々備わっている半導体スイッチング素子を、複数モータの中から特定の測定対象を選択する切り替えスイッチとして使用しながら、測定対象以外のモータの中に絶縁抵抗値が低いモータが含まれている場合においても、測定対象以外のモータの絶縁抵抗を経由して流れる漏れ電流の影響や、半導体スイッチング素子の漏れ電流の影響を受けずに、正確なモータの絶縁抵抗値の測定、および絶縁劣化検出を簡素な構成で可能とするモータ駆動装置を提供することにある。
本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置は、第1スイッチを介して交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流回路を有するコンバータ部と、整流回路によって整流された直流電圧をコンデンサで平滑化する電源部と、コンデンサの正極側端子とモータコイルとの間に接続された上アームの半導体スイッチング素子及びコンデンサの負極側端子とモータコイルとの間に接続された下アームの半導体スイッチング素子のスイッチング動作により、電源部からの直流電圧を交流電圧に変換して複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータ部と、コンデンサの一方の端子を大地に接続する第2スイッチと、コンデンサの一方の端子と大地との間の電圧と、コンデンサの一方の端子と大地との間に流れる電流を測定する電圧及び電流検出部と、コンデンサの両端の電圧を測定する電圧検出部と、複数のインバータ部によって駆動される複数のモータそれぞれの絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗検出部と、を具備するモータ駆動装置であって、絶縁抵抗検出部が、モータの運転を停止し、第1スイッチをオフし、第2スイッチをオンし、全てのモータについて、各モータに接続されているインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部で測定された電圧値を第1の測定結果とし、全てのモータを、グループAとグループBの任意の2つのグループに分けて、グループAのモータについては、各モータに接続されているインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンし、且つ、グループBのモータについては、各モータに接続されているインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部で測定された電圧値を第2の測定結果とし、第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループA及びグループBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を求める、ことを特徴とする。
本発明によれば、複数台のモータから任意のモータを選択して測定する際に、従来に比べてモータの絶縁抵抗の劣化状態を高精度に検出できる。
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置について説明する。図4に本発明の実施例1に係る絶縁抵抗検出部を有するモータ駆動装置の構成図を示す。
まず、本発明の実施例1に係るモータ駆動装置について説明する。図4に本発明の実施例1に係る絶縁抵抗検出部を有するモータ駆動装置の構成図を示す。
本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101は、コンバータ部100と、電源部4と、複数のインバータ部501〜503と、第2スイッチ9と、電圧及び電流検出部7と、電圧検出部8と、絶縁抵抗検出部70と、を有することを特徴とする。
コンバータ部100は、第1スイッチ1を介して交流電源2から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流回路3を有する。
電源部4は、整流回路3によって整流された直流電圧をコンデンサ41で平滑化する。
第1インバータ部501、第2インバータ部502、及び第3インバータ部503は、電源部4(DCリンク部)からの直流電力を半導体スイッチング素子(IGBT)のスイッチング動作で交流電力に変換してモータ61〜63をそれぞれ駆動する。
複数のインバータ部501〜503は、上アームの半導体スイッチング素子(511、531、551、512、532、552、513、533、553)及び下アームの半導体スイッチング素子(521、541、561、522、542、562、523、543、563)を含む。
上アームの半導体スイッチング素子(511、531、551、512、532、552、513、533、553)は、コンデンサ41の正極側端子であるDCリンク部プラス側端子42とモータコイル(611、621、631、612、622、632、613、623、633)との間に接続されている。
下アームの半導体スイッチング素子(521、541、561、522、542、562、523、543、563)は、コンデンサ41の負極側端子であるDCリンク部マイナス側端子43とモータコイル(611、621、631、612、622、632、613、623、633)との間に接続されている。
第2スイッチ9は、コンデンサ41の一方の端子を大地に接続する。
電圧及び電流検出部7は、コンデンサ41の一方の端子と大地との間の電圧と、コンデンサ41の一方の端子と大地との間に流れる電流を測定する。
電圧検出部8は、コンデンサ41の両端の電圧を測定する。
絶縁抵抗検出部70は、モータ61〜63の運転を停止し、第1スイッチ1をオフし、第2スイッチ9をオンし、以下に述べる第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループA及びグループBそれぞれのモータコイルと大地との間の絶縁抵抗値を検出する。
第1の測定結果は、全てのモータ(61〜63)について、各モータに接続されているインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサ41の他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、電圧及び電流検出部7で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部8で測定された電圧値である。
第2の測定結果は、以下のようにして得られる。
まず、全てのモータをグループAとグループBの任意の2つのグループに分けて、グループAとして選択された1つまたは複数のモータについては、各モータに接続されたインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンする。
さらに、残りのグループBの1つまたは複数のモータについては、各モータに接続されたインバータ部の上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンする。
この状態で、電圧及び電流検出部7で測定された電圧値及び電流値と、電圧検出部8で測定された電圧値を第2の測定結果とする。
図4は、1つの電源部4に、第1モータ61を駆動する第1インバータ部501と、第2モータ62を駆動する第2インバータ部502と、第3モータ63を駆動する第3インバータ部503がそれぞれ接続された実施例を示す。Rm1、Rm2、Rm3は、それぞれ第1モータ61、第2モータ62、第3モータ63のモータコイルと大地との間の絶縁抵抗値である。
図4では3台のモータ61〜63を駆動するモータ駆動装置の例を示しているが、本発明においてモータの台数はこれには限られないことは勿論である。
本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101は、図4に示す通り、コンバータ部100と、コンデンサ41と、第1インバータ部501、第2インバータ部502、及び第3インバータ部503と、絶縁抵抗検出部70と、を具備する点を特徴としている。
コンデンサ41は、整流回路3の出力を平滑化する。
絶縁抵抗検出部70は、第1インバータ部501、第2インバータ部502、及び第3インバータ部503によってそれぞれ駆動される第1モータ61、第2モータ62、及び第3モータ63の絶縁抵抗値Rm1、Rm2、及びRm3をそれぞれ検出する。
本発明の実施例1に係るモータ駆動装置101は、さらに、絶縁抵抗測定のために、コンデンサ41の一端(DCリンク部マイナス側端子43)を大地に接続する第2スイッチ9と、電圧及び電流検出部7(及びその出力をデジタル値に変換するA/Dコンバータ(図示せず))と、電圧検出部8(及びその出力をデジタル値に変換するA/Dコンバータ(図示せず))と、を具備している。
電圧及び電流検出部7は、第2スイッチ9をオンすることでコンデンサ41の一方の端子(例えば、DCリンク部マイナス側端子43)と大地との間に流れる電流とコンデンサ41の一方の端子と大地との間の電圧を測定する。
電圧検出部8は、コンデンサ41の両端の電圧を測定する。
本実施例では、3台のモータ、即ち、第1モータ61、第2モータ62、第3モータ63のうち、測定対象として選択した第1モータ61をグループAとし、測定対象以外の第2モータ62と第3モータ63をグループBとして、グループAの第1モータ61の絶縁抵抗を測定する場合について説明する。
モータの絶縁抵抗測定は以下のようにして行う。図5に本発明の実施例1に係るモータ駆動装置を用いた絶縁抵抗検出方法の処理手順を説明するためのフローチャートを示す。まず、ステップS100において、モータの絶縁抵抗測定時において、絶縁抵抗検出部70は、全てのモータ61〜63の運転を停止し、ステップS101において、全インバータ部の半導体スイッチング素子(511〜561、512〜562、513〜563)を全てオフ状態にする。次に、ステップS102において、第1スイッチ1をオフして交流電源2を遮断する。次に、ステップS103において、第2スイッチ9をオン状態にしてコンデンサ41の一端、図4の例では電源部4のDCリンク部マイナス側端子43を大地に接続する。
この時のIGBTとモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗の接続をIGBTの等価絶縁抵抗を使って等価回路で表したのが図6である。ここでIGBTの等価絶縁抵抗とは、IGBTがオフした状態でIGBTのコレクタとエミッタとの間に印加されている電圧を、オフ状態でコレクタからエミッタに流れる漏れ電流で除算して得られた、オフ状態のIGBTのコレクタとエミッタとの間の等価絶縁抵抗である。
次に、ステップS104において、全てのインバータ部について、上アームか下アームかいずれか一方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータのモータコイルとの間に接続されている方の半導体スイッチング素子をオン状態にして、全てのモータコイルをコンデンサの他方の端子と同電位にする。
上記の図4に示した例では、第1インバータ部501、第2インバータ部502、及び第3インバータ部503の上アームの半導体スイッチング素子であるIGBTを少なくとも1つ以上オン状態にして、全てのモータのモータコイルをコンデンサの他方の端子と同電位にする。
図4の例では、第2スイッチ9で大地に接続するのはコンデンサ41の負極側端子であるDCリンク部マイナス側端子43である。そのため、全てのインバータ部(501、502,503)において、オン状態にするIGBTは、第2スイッチ9を介して大地に接続した方と反対側のコンデンサ41の正極側端子であるDCリンク部プラス側端子42と各モータコイル(611、621、631、612、622、632、613、623、633)との間に接続されている上アームのIGBT(511、531、551)である。
このとき、各インバータ部(501、502,503)でオン状態にするIGBTは、上アームであればU相、V相、W相の3相のうちのどの相のIGBTでもよく、またオン状態にする相は1つだけでもよいし、複数でもよい。
第1インバータ部501でオン状態にするIGBTは、上アームであればU相、V相、W相のうちのどの相のIGBTでもよく、またオン状態にするのは1つだけでもよいし、複数でもよい。なぜなら、モータ各相のコイルはモータ内部で互いに接続されているため、少なくとも1相のIGBTをオン状態にすれば、モータ内部で全ての相のコイルがコンデンサの他方の端子と同電位になるためである。
ここでは、図4に示すように、第1インバータ部501ではU相のIGBT511だけを、第2インバータ部502ではV相のIGBT532だけを、第3インバータ部503ではW相のIGBT553だけをオン状態にしている。
このようにすることで、全てのモータのコイル、即ち第1モータ61のモータコイル(611、621、631)と、第2モータ62のモータコイル(612、622、632)と、第3モータ63のモータコイル(611、621、631)がDCリンク部プラス側端子42と同じ電位になる。
一方、大地は第2スイッチ9を介してDCリンク部マイナス側端子43に接続されているので、コンデンサ41、オン状態である各インバータ部の上アームのIGBT(511、532、553)、各モータのモータコイル(611、621、631、612、622、632、613、623、633)と、大地との間の絶縁抵抗、電圧及び電流検出部7を経由する閉回路が形成される。
次に、ステップS105において、電圧及び電流検出部7で電圧値及び電流値を測定し、電圧検出部8で電圧値を測定し、得られた電流値と電圧値を第1の測定結果とする。
図4の実施例において、「第1の測定結果」を測定する際の等価回路を示したのが図7である。図6の状態から第1インバータ部501と第2インバータ部502と第3インバータ部503の上アームのIGBTの1つ(511、532、553)がそれぞれオン状態に変わる。そのため、図7は図6の第1インバータ部501と第2インバータ部502と第3インバータ部503のそれぞれの上アームのIGBTの等価絶縁抵抗値RU−IGBT1とRU−IGBT2とRU−IGBT3をショートした等価回路になる。
図6と図7において、RU−IGBT1、RU−IGBT2、RU−IGBT3は、それぞれ第1インバータ部501、第2インバータ部502、第3インバータ部503の上アームのIGBTのオフ時の等価絶縁抵抗値である。RD−IGBT1、RD−IGBT2、RD−IGBT3は、それぞれ第1インバータ部501、第2インバータ部502、第3インバータ部503の下アームのオフ時のIGBTの等価絶縁抵抗値である。Rm1、Rm2、Rm3はそれぞれ第1モータ61、第2モータ62、第3モータ63のモータコイルと大地との間の絶縁抵抗値である。Rcは、電圧及び電流検出部7の分圧抵抗と検出抵抗の直列接続を1個の抵抗で表したものである。
図4に示すような3相モータを駆動する3相インバータの場合、1つのインバータを構成する半導体スイッチング素子(IGBT)は、上アームと下アームについてそれぞれ3つずつの構成となる。同一インバータ内の上アーム同士および下アーム同士の3つのIGBTのコレクタ端子とエミッタ端子は、DCリンク部とモータ内部のモータコイルを通じて3つの素子が並列接続されている状態である。このことから、図6と図7の等価回路のように、IGBTの抵抗は、それぞれのインバータの上アーム同士、または下アーム同士の3つのIGBTを並列接続した1つの合成抵抗で表すことができる。
図7の等価回路から明らかな通り、オフ状態の全てのIGBT、具体的には第1インバータ部501と第2インバータ部502と第3インバータ部503の下アームの各IGBTの等価絶縁抵抗値RD−IGBT1、RD−IGBT2、RD−IGBT3は、いずれもDCリンク部プラス側端子とDCリンク部マイナス側端子に直接接続された状態となっている。これらオフ状態のIGBTを経由して流れる漏れ電流は、DCリンク部プラス側端子からDCリンク部マイナス側端子に直接流れるだけで、電圧及び電流検出部7の検出抵抗に流れないため、第1の測定結果に一切影響を与えないことが分かる。従って、測定においては、これらオフ状態のIGBTは無いものとみなすことができる。
このように図7の等価回路から、第1の測定結果に関係しない部分を削除し、元の図4の通り、電圧及び電流検出部7と電圧検出部8を検出抵抗と分圧抵抗を含めて表した等価回路を図8に示す。
第1の測定結果を測定する際の等価回路は図8の通り、コンデンサ41の両端に、全てのモータの絶縁抵抗値の合成抵抗Rm123と、電圧及び電流検出部7の検出抵抗71と分圧抵抗72の直列接続を接続した1つの閉回路だけのシンプルな回路となる。ここで、合成抵抗Rm123は、具体的には、第1モータと第2モータと第3モータのそれぞれの絶縁抵抗Rm1とRm2とRm3を並列接続した合成抵抗である(図7の一点鎖線で囲んだ部分)。
第1の測定結果として、電圧検出部8でコンデンサ41の両端の電圧VPN1(DCリンク電圧)を測定し、電圧及び電流検出部7でDCリンク部マイナス側と大地(GND)間の電圧VGN1と検出抵抗71を流れる電流Ir1とを測定すれば、全てのモータの絶縁抵抗値の合成抵抗Rm123にかかる電圧はVPN1−VGN1であり、合成抵抗Rm123に流れる電流はIr1であるから、第1の測定結果より、全てのモータの絶縁抵抗値の合成抵抗Rm123の値を、(VPN1−VGN1)/Ir1として正確に求めることが出来る。
このようにして第1の測定結果から得られる、全てのモータの絶縁抵抗値の合成抵抗値は、原理的にインバータの半導体スイッチング素子の絶縁抵抗の影響も受けず、かつ、他のモータの絶縁抵抗の影響も受けない正確な測定が可能であることは、第1の測定結果を測定する際の等価回路(図8)からも明らかである。
図9に、コンデンサ41の両端の電圧を測定する電圧検出部8の測定回路と、第2スイッチ9をオンすることでコンデンサ41の一方の端子と大地との間に流れる電流とコンデンサ41の一方の端子と大地間の電圧を測定する電圧及び電流検出部7の測定回路の具体的な構成例を示す。
図9の通り、電圧及び電流検出部7と電圧検出部8は、どちらも検出抵抗の端子間に生じる電圧を測定する回路と検出抵抗に直列に接続された分圧抵抗で構成されている。
図9に示す測定回路では、検出抵抗と分圧抵抗の抵抗値は既知であるので、検出抵抗の両端に生じる電圧のみを得ることができれば、検出抵抗の抵抗値から検出抵抗を流れる電流値を求める電流測定回路として使用することもできるし、抵抗の分圧比から分圧抵抗と検出抵抗の直列接続の両端の電圧を求める電圧測定回路として使用することもできる。
従って、図9に示す測定回路を電圧及び電流検出部7に使用する場合には、検出抵抗に生じる両端の電圧の測定だけで、第2スイッチ9をオンすることでコンデンサ41の一方の端子と大地との間に流れる電流の測定と、コンデンサ41の一方の端子と大地間の電圧の測定の両方を兼ねることができる。
このように、電圧及び電流検出部7に使用する測定回路は、測定回路を構成する各部品の抵抗値が既知であれば、電流値か電圧値のいずれか片方を検出するだけで、残りの他方を求めることができるので、そのような測定回路を使用しても構わない。
勿論、電圧及び電流検出部7の測定回路として、電圧検出回路と別にホール素子などを使用した電流検出回路を別に設けて、電流と電圧を別々の回路でそれぞれ測定しても良い。
一方、電圧検出部8では図9の回路を検出抵抗の直列接続の両端の電圧を求める電圧測定回路としてのみ使用している。
なお、電圧及び電流検出部7の回路と電圧検出部8の回路の検出抵抗は、どちらも1次側の回路に接続されている。そのため、絶縁アンプ20を使用して検出抵抗の両端の電圧を2次電位に変換した検出電圧をA/Dコンバータ21に入力してデジタル値に変換している(ステップS105)。
A/Dコンバータ21は絶縁抵抗検出部70からの指令を受けたタイミングでA/D変換動作を行う。デジタル値に変換された測定値は、第1の測定結果として絶縁抵抗検出部70に読み込まれ、絶縁抵抗検出部70での演算で各グループのモータの絶縁抵抗の算出に使用される(ステップS108)。
次に、ステップS106において、全てのモータをグループAとグループBの2つのグループに分けて、各グループ分けに応じて各インバータ部の半導体スイッチング素子のオン/オフ状態を変更する。
グループAのモータが接続されているインバータ部については、上アームか下アームかいずれか一方の半導体スイッチング素子のうち、コンデンサの他方の端子とモータのモータコイルとの間に接続されている方の半導体スイッチング素子をオン状態にして、グループAのモータのモータコイルをコンデンサの他方の端子と同電位にする。
図4の実施例では、第2スイッチ9で大地に接続するのはコンデンサ41の負極側端子であるDCリンク部マイナス側端子43である。そのため、グループAの第1モータ61が接続されている第1インバータ部501のIGBT(511〜561)のうち、オン状態にするIGBTは、第2スイッチ9を介して大地に接続した方と反対側のコンデンサ41の正極側端子であるDCリンク部プラス側端子42とモータコイル(611、621、631)との間に接続されている上アームのIGBT(511、531、551)である。
第1インバータ部501でオン状態にするIGBTは、上アームであればU相、V相、W相のうちのどの相のIGBTでもよく、またオン状態にするのは1つだけでもよいし、複数でもよい点は、ステップS104の時と同様である。ここでは、図5に示すように、上アームのU相のIGBT511だけをオン状態にしている。
一方、グループBのモータが接続されているインバータ部については、上アームと下アームのうちのいずれか一方のうち、コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている方の半導体スイッチング素子をオン状態にして、グループBのモータのモータコイルは全てコンデンサの一方の端子と同電位にする。
上述の通り図4の例では、第2スイッチ9を介して大地に接続するのはDCリンク部マイナス側端子43である。そのため、グループBのモータが接続されている第2インバータ部502と第3インバータ部503においてオン状態にするIGBTは、DCリンク部マイナス側端子43に接続されている下アームのIGBTである。
第2インバータ部502と第3インバータ部503において、オン状態にするIGBTは下アームであればU相、V相、W相のうちのどの相のIGBTでもよく、またオン状態にする相は1つだけでもよいし、複数の相でもよい。
ここでは第2インバータ部502については下アームのV相のIGBT542をオン状態にし、第3インバータ部503については下アームのW相のIGBT563をオン状態にしている。
このようにすることで、グループBのモータである第2モータ62と第3モータ63のモータコイル(612、622、632、613、623、633)の電位はDCリンク部マイナス側端子43と同じ電位となる。
このようにグループAのモータが接続されているインバータ部と、グループBのモータが接続されているインバータ部の両方について、それぞれ所定の半導体スイッチング素子をオン状態にしておいて、次に、ステップS107において、コンデンサの一端と大地との間を流れる電流とコンデンサの一端と大地間の電圧を電圧及び電流検出部で測定すると同時に、コンデンサの両端の電圧を電圧検出部で測定する測定動作を行い、第2の測定結果を得る。
図4の実施例において、「第2の測定結果」を測定する際の等価回路を示したのが図10である。
図6の状態からグループAである第1インバータ部501の上アームのIGBTの1つ(511)がオン状態になり、グループBの第2インバータ部と第3インバータ部の下アームのIGBTの1つ(542、563)がそれぞれオン状態に変わる。
そのため、図10は図6の第1インバータ部501の上アームのIGBTの等価絶縁抵抗値RU−IGBT1と第2インバータ部502と第3インバータ部503の下アームのIGBTの等価絶縁抵抗値RD−IGBT2とRD−IGBT3をショートした等価回路になる。
図10の等価回路から明らかな通り、オフ状態の全てのIGBT、具体的には第1インバータ部501の下アーム、第2インバータ部502及び第3インバータ部503の上アームの各IGBTの等価絶縁抵抗値RU−IGBT1、RD−IGBT2、RD−IGBT3は、いずれもDCリンク部プラス側端子とDCリンク部マイナス側端子に直接接続された状態となっている。
これらオフ状態のIGBTを経由して流れる漏れ電流は、DCリンク部プラス側端子からDCリンク部マイナス側端子に直接流れるだけで、電圧及び電流検出部7の検出抵抗に流れないので、第2の測定結果に一切影響を与えないことは明らかであり、第1の測定結果の測定時と同様に、第2の測定結果の測定においても、これらオフ状態のIGBTは無いものとみなすことができる。
このように図10の等価回路から第2の測定結果の測定に関係しない部分を削除し、元の図4の通り、電圧及び電流検出部7と電圧検出部8を検出抵抗と分圧抵抗を含めて表した等価回路を図11に示す。
第2の測定結果を測定する際の等価回路は図11の通り、コンデンサ41の両端に、グループAのモータの絶縁抵抗RmAと、電圧及び電流検出部7の検出抵抗71と分圧抵抗72の直列接続が接続されているのに加えて、電圧及び電流検出部7の検出抵抗71と分圧抵抗72の直列接続にグループBのモータの絶縁抵抗RmBが並列に接続された回路となる。
図4の実施例では、第1モータ61をグループAとし、それ以外の第2モータ62と第3モータ63をグループBとしてグループ分けしているので、図11におけるRmAは図4や図10の第1モータ61の絶縁抵抗Rm1と等しくなり、図11におけるRmBは図4や図10における第2モータと第3モータの絶縁抵抗Rm2とRm3を並列接続した合成抵抗となる(図10の一点鎖線で囲んだ部分)。
次にステップS108において、第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループAとグループBの絶縁抵抗値を計算する。
以下に、第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループAとグループBの絶縁抵抗値を計算する実施例について説明する。
第2の測定結果を測定する際の図11の等価回路において、図11に示した通りグループAのモータの絶縁抵抗RmAを流れる電流値をIrA、グループBのモータの絶縁抵抗RmBを流れる電流値をIrB、電圧及び電流検出部7の検出抵抗を流れる電流値をIr2とする。
図11の節点(node)Gについて、キルヒホッフの第一法則を適用すると、1つの節点に接続している全ての枝から流れ込む電流の和は0であるから、以下の関係式が得られる。
また、IrAとIrBとIr2はそれぞれ、測定結果2のVPN2とVGN2および、グループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBと、電圧及び電流測定部の検出抵抗71と分圧抵抗72の直列接続の抵抗値Rcを用いて表すと、以下の関係式が得られる。
これを使って上式(1)を書き換えると、以下の式(2)が得られる。
式(2)を整理すると、以下の式(3)が得られる。
ここで、RmAとRmBの並列接続の合成抵抗をRmABとすると、RmABはRmAとRmBを使って以下の式(4)で表される。
式(3)に式(4)を代入すると、以下の式(5)が得られる。
式(5)を整理すると、グループAのモータの絶縁抵抗RmAを計算する式(6)が得られる。
ここでRmABは、グループAのモータの絶縁抵抗RmAとグループBのモータの絶縁抵抗RmBの並列接続の合成抵抗であるが、これは全てのモータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗値に等しい。
そもそも全てのモータをグループAとグループBの2つのグループに分けたのであるから、グループAのモータの絶縁抵抗RmAとグループBのモータの絶縁抵抗RmBの並列接続の合成抵抗が全モータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗になることは明らかである。
全モータの絶縁抵抗値、言い換えると、グループAのモータの絶縁抵抗RmAとグループBのモータの絶縁抵抗RmBの並列接続の合成抵抗であるRmABは、先に測定した第1の測定結果と図8の等価回路から、以下の関係式(7)で表される。
Ir1は、電圧及び電流検出部7の検出抵抗71と分圧抵抗72を直列接続した合成抵抗をRcを用いて表すと、以下の式(8)が得られる。
式(7)に式(8)を代入すると、第1の測定結果から全モータの絶縁抵抗値RmABを計算する式(9)が得られる。
第1の測定結果より得られたVPN1とVGN1を上式(9)に代入して算出されたRmABの値を、上式(6)に代入すると、グループAのモータの絶縁抵抗値RmAが得られる。
グループAのモータの絶縁抵抗値RmAが得られれば、残るグループBの絶縁抵抗値RmBも求めることができる。全モータの絶縁抵抗値RmABと、グループAのモータの絶縁抵抗値RmAと、グループBの絶縁抵抗値RmBの関係は上記式(4)の関係式で表されるから、式(4)を変形すると、グループBの絶縁抵抗値RmBを計算する式(10)が得られる。
上記の計算の実施例では、第1の測定結果を用いて全モータの絶縁抵抗値RmABを一旦求めておいて、次にその全モータの絶縁抵抗値RmABと第2の測定結果を用いて、グループAとグループBのモータの絶縁抵抗RmAとRmBをそれぞれ計算する方法について説明した。
しかしながら、全モータの絶縁抵抗値RmABを求める計算を行わずに、RmABの値を第1の測定結果の変数と見做して、第1の測定結果と第2の測定結果を直接使用してグループAとグループBのモータの絶縁抵抗RmAとRmBを直接計算で求めてもよい。
図4の実施例では、全3台のモータについて、測定対象として選択した第1モータ61をグループAとし、それ以外の第2モータ62と第3モータ63をグループBとして測定しているので、グループAのモータの絶縁抵抗RmAとして第1モータ61の絶縁抵抗Rm1の値と、グループBのモータの絶縁抵抗RmBとして第2モータ62と第3モータ63の絶縁抵抗Rm2とRm3を並列接続した合成抵抗が測定結果として得られる。
本発明ではグループAとグループBの両方の絶縁抵抗値を正確に測定することができるので、複数モータの中から任意の1つのモータを測定対象として選択して絶縁抵抗値を測定する場合には、測定対象の1つのモータをグループAとして、それ以外をグループBにしてもよいし、反対に測定対象の1つのモータをグループBとして、それ以外をグループAとしてもよい。
また、図4の実施例では、グループAのモータは1つであるが、グループAとグループBのモータは、それぞれ1つでも複数でも構わない。同じグループのモータが複数の場合、得られる絶縁抵抗値の値は、同じグループの複数のモータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗となる。
測定後は、第2のスイッチをオフ状態に戻し、全てのインバータの全てのIGBTをオフ状態に戻しておく(ステップS109)。
本実施例では、第1の測定結果を得る時も第2の測定結果を得る時も測定時には必ずモータが接続されている全てのインバータ部について、上アームまたは下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうちの、片方に接続されている半導体スイッチング素子をオン状態にしている。これは、全てモータについて、モータコイルの少なくとも1相の端子をDCリンク部プラス側端子及びDCリンク部マイナス側端子のうちのいずれか一方の端子に接続するためである。
従って、DCリンク部の片側とモータコイルとの間に、半導体スイッチング素子が複数直列に接続されているマルチレベルインバータの場合には、DCリンク部の片側とモータコイルとの間で直列接続されている複数の半導体スイッチング素子を全てオン状態にすればよい。
なお、第1の測定結果を得る時も第2の測定結果を得る時も、電圧及び電流検出部7での電圧及び電流の測定と、電圧検出部8でのコンデンサ両端の電圧の測定は同じタイミングで測定値を得ることができるように実施する。これは測定中にコンデンサ4の電圧が徐々に低下してくるためで、図7と図8、及び図10と図11の等価回路において各部の電圧と電流の関係が成り立つためには同じタイミングでの各部の電流値、及び電圧値が必要となるからである。
以上、説明したモータの絶縁抵抗測定に関する処理は、全てモータ駆動装置101の絶縁抵抗検出部70によって実行される。図4の実施例では、「絶縁抵抗検出部」70をマイクロコンピュータで実現しており、マイクロコンピュータが図5の例に示すようなフローチャートに従って適切なタイミングで指令を出すことで、各インバータ部の半導体スイッチング素子のオン/オフ動作、第1スイッチ1と第2スイッチ9のオン/オフ動作、電圧検出部8と電流検出部7のA/Dコンバータ21のA/D変換動作の指令と変換データの読み込み、測定対象のモータの絶縁抵抗値の算出など、測定に必要な処理を行っている。
以上の一連の処理を順次実行することにより、測定対象の絶縁抵抗値を検出することができる。
このようにして測定されたグループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBは、従来技術の問題点であった、オフ状態のインバータの半導体スイッチング素子の絶縁抵抗の影響を受けて測定精度が低下する問題や、測定対象以外のモータの絶縁抵抗の影響を受けて測定精度が低下する問題が原理的に発生しないため、精度の高い絶縁抵抗値の測定が可能となる点が本発明の最大の特徴である。
第1の測定結果と第2の測定結果が、オフ状態のインバータの半導体スイッチング素子の絶縁抵抗の影響を原理的に受けない点については、図7、図8、図10及び図11の等価回路で示す通り、オフ状態の半導体スイッチング素子(IGBT)を経由して流れる漏れ電流は、DCリンク部プラス側端子からDCリンク部マイナス側端子に直接流れるだけで、電圧及び電流検出部7の検出抵抗に流れないため、測定結果に一切影響を与えないことから明らかである。
また、複数のモータを駆動するモータ駆動装置において、複数のモータの中から任意のモータを選択して絶縁抵抗値を測定する場合に、従来技術では測定対象のモータと測定対象以外のモータの2つのグループに分けた上で、測定対象以外のモータを測定回路から切り離したり、測定に影響が出ないように接続を変更したりして、測定回路中に測定対象以外のモータが存在しないものと見做して、測定対象モータの絶縁抵抗値のみを測定しているが、実際には測定回路の中に測定対象モータだけでなく測定対象以外のモータも接続されており、測定対象以外のモータの絶縁抵抗値の影響を受けて、測定対象モータの絶縁抵抗の測定精度が悪くなるという根本的な問題があった。
特許文献2に記載の従来技術の場合では、測定対象以外のモータの絶縁抵抗が電流検出部に並列接続された状態になるために、測定対象モータの絶縁抵抗を経由して流れる電流の一部が、電流検出部を通らずに測定対象以外のモータの絶縁抵抗を経由して流れてしまうために、測定対象モータの絶縁抵抗の測定精度が悪くなるという問題があった。
これに対し、本発明では、全てのモータをグループAとグループBの任意の2つのグループに分けた上で、グループAのモータの絶縁抵抗値と、グループBのモータの絶縁抵抗値の両方を測定対象と見做して、グループAのモータの絶縁抵抗値と、グループBのモータの絶縁抵抗値の両方が測定回路に接続されることを前提に測定を行っている点が従来技術と根本的に異なる点である。
本発明では、グループAのモータの絶縁抵抗値と、グループBのモータの絶縁抵抗値の2つを最初から測定対象と見做して測定を行っており、測定対象が2つであるために、第1の測定結果と第2の測定結果の2回分の測定結果が必要となるものの、測定対象以外のモータの絶縁抵抗値の影響で測定精度が悪くなるという問題は原理的に発生しない点が本発明の最大の特徴である。
また、本発明では、グループ分けを変更しながらモータの絶縁抵抗値の測定を複数回行う場合、最初のグループ分けにおける1回目のモータ絶縁抵抗の測定においては、第1の測定結果と第2の測定結果を得るために2回の測定を実施しなければならない。しかしながら、その後に続けて、新たなグループ分けで2回目以降のモータ絶縁抵抗の測定を実施する場合には、最初のグループ分けでの1回目のモータ絶縁抵抗の測定で得られた第1の測定結果を、2回目以降のモータ絶縁抵抗の測定におけるグループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBの計算に使用して、2回目以降のモータの絶縁抵抗の測定では、第1の測定結果を得るための測定を省いてもよい。
理由は短時間のうちにモータの絶縁抵抗値の測定を複数回行う場合においては、全てのモータの絶縁抵抗の合成抵抗値、即ち、第1の測定結果は、1回目の測定時と、2回目以降の測定時とで変わらず同じであると見做すことができるためである。
一般的に工作機械などに組み込まれたモータの絶縁劣化は、常に切削液やクーラントなどの液体に晒される環境で使用される工作機械のモータなどにおいて、モータ内部に少しずつ切削液やクーラントなどの液体が浸入することにより、モータコイルと大地との間の絶縁抵抗値が何年もの時間をかけて徐々に低下していく現象であって、続けて複数回測定を行なう短時間の間に、各モータの絶縁抵抗値が測定結果に影響を与えるレベルで変化することはないと考えられる。
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るモータ駆動装置を用いた絶縁劣化検出処理の手順を説明するためのフローチャートを図12に示す。
次に、本発明の実施例2に係るモータ駆動装置を用いた絶縁劣化検出処理の手順を説明するためのフローチャートを図12に示す。
グループAおよびグループBを構成するモータの組合せ、即ちモータのグループ分けを変更しながら複数回モータの絶縁抵抗を測定する場合には、図12に示す通り、先ず絶縁抵抗検出部70が第1の測定結果を得るための測定処理を行い、測定で得られた第1の測定結果を絶縁抵抗検出部70で記憶しておく(ステップS200〜S205)。続けて、各インバータ部の半導体スイッチング素子のオン/オフ状態をグループ分けに応じて変更して、絶縁抵抗検出部70が第2の測定結果を得るための測定処理を行い、第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBを計算で求める(ステップS206〜S208)。ここまで最初のグループ分けにおける1回目の測定において各ステップで実行される内容は、第1の測定結果を2回目以降の測定のために記憶しておく点以外は実施例1と同様である。
次に、更に測定を続ける場合には、グループAおよびグループBを構成するモータの組合せ、即ちモータのグループ分けを変更し(ステップS210)、その上で、2回目以降の測定を行う、具体的には、変更されたグループ分けに応じて、各インバータ部の半導体スイッチング素子のオン/オフ状態を変更して、絶縁抵抗検出部70が第2の測定結果を得るための測定だけを行い、新たなグループ分けにおけるグループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBを計算で求める(ステップS206〜S208)。
2回目以降のモータの絶縁抵抗の測定で、グループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBを求める計算に使用される第1の測定結果は、最初のグループ分けにおける1回目のモータの絶縁抵抗の測定で得られた値であるが、第2の測定結果の方は2回目以降にそれぞれのグループ分け後のモータ絶縁抵抗の測定で得られた値である点に注意されたい。
このように続けて次のモータ絶縁抵抗の測定を行う場合には、モータのグループ分けを変更する毎にステップS206〜S210の処理を繰り返し実行し、最後のモータの測定が終わって、続けて次の測定を行なう必要がなくなったらステップS209からS211に移行して測定を終了する。
本発明の実施例2に係るモータ駆動装置の構成は、実施例1に係るモータ駆動装置の構成と同様である。本発明の実施例2に係るモータ駆動装置について図4で説明する。
本実施例では、図4のシステムにおいて、第1モータ61、第2モータ62、第3モータ63の3台のモータうちの任意の1台を測定対象とした測定を、測定対象として選択するモータを1台ずつ切り替えながら3回実施することで、3台全てのモータについて、それぞれ個々のモータの絶縁抵抗を測定する。
具体的には、グループAのモータを1回目の測定では第1モータ61に、2回目の測定では第2モータ62に、3回目の測定では第3モータ63として、合計3回の測定を実施することにより、それぞれの測定で得られたグループAの絶縁抵抗値RmAとして、第1モータ61、第2モータ62、第3モータ63の絶縁抵抗値、Rm1、Rm2、Rm3をそれぞれ測定している。
図12のフローチャートに従い、上記の3回の測定を続けて実行したときの、それぞれのグループ分けと処理内容を表1に示す。表1に示す通り、最初の1回目の測定だけは、第1の測定結果を得る測定(図12のステップS200〜S205)と、第2の測定結果を得る測定(図12のステップS206〜S208)の両方を実行し、得られた第1の測定結果と第2の測定結果からRmAを算出する。
続けて、2回目の測定を行うので、図12のステップS209とS210に従い、グループAとするモータを第1モータ61から第2モータ62に変更した上で2回目の測定を行う。2回目の測定では第2の測定結果を得る測定(図12のステップS206〜S208)しか実施されず第1の測定結果は実施されない代わりに、第1の測定結果は1回目の測定で得られた値を使用して絶縁抵抗値を計算する。3回目の測定についても2回目同様の処理となるが、3回目が最後の測定となるので、3回目の測定(図12のステップS206〜S208)の後に、図12のステップS209とS211に従い測定終了となる。
本実施例では、絶縁抵抗検出部70のマイクロコンピュータに、表1に示したグループ分けと順番で3回モータの絶縁抵抗測定を実行することにより、3台の全てモータについて、それぞれの絶縁抵抗値を測定するという処理があらかじめプログラムされており、必要な処理は全て絶縁抵抗検出部70のマイクロコンピュータの処理によって行なっている。しかしながら、何回目の測定でどのようなグループ分けでモータ絶縁抵抗値の測定を行うかという指示を、外部の上位コントローラから、絶縁抵抗検出部70のマイクロコンピュータに対して指令してもよい。
また、本実施例では、1台の測定対象のモータの絶縁抵抗測定を測定する方法として、測定対象として選択した1台のモータをグループAとし、残りの2台のモータをグループBとする測定を実行することによって、得られたグループAの絶縁抵抗値RmAから、測定対象とした選択した1台のモータの絶縁抵抗値を得ている。しかしながら、本発明ではグループAのモータの絶縁抵抗値とグループBのモータの絶縁抵抗値の両方とも等しく正確に測定ができる特徴があることから、測定対象として選択した1台のモータをグループBとし、残りの2台をグループAとして測定対象モータの絶縁抵抗値を求めても良い。
また、図4のモータ駆動装置の構成で、3台の全てのモータを1台ずつ順番に測定する場合について説明した。しかしながら、必ずしも全てのモータについて測定を行う必要はないのであって、絶縁抵抗を測定する必要がないモータがある場合は、絶縁抵抗を測定する必要があるモータの測定が全て終われば、測定を終了してもよい。
以上、本発明では、1回のモータの絶縁抵抗値の測定のために、第1の測定結果を得る測定と、第2の測定結果を得る測定の2回の測定処理が必要となる。しかしながら、短時間のうちに続けて複数回モータの絶縁抵抗値の測定を行う場合には、図12のフローチャートに示す通り、2回目以降の測定では、第1の測定結果を得る測定処理を省いて、第2の測定結果を得る測定処理だけを実施すればよい。そのため、モータ絶縁抵抗を測定するための測定処理の回数は測定回数の2倍にはならず、測定回数プラス1回の測定処理だけで済むので、測定処理の回数が多くならずに測定時間が長くならないという特徴がある。
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係るモータ駆動装置を用いた絶縁劣化検出処理の手順を説明するためのフローチャートを図13に示す。
次に、本発明の実施例3に係るモータ駆動装置を用いた絶縁劣化検出処理の手順を説明するためのフローチャートを図13に示す。
モータの絶縁抵抗検出機能を備えたモータ駆動装置は工作機械などに組み込まれて、主に工場の生産現場で機械の保守および保全活動に活用されている。
工場の生産現場での機械の保守および保全活動において重要となるのは、先ず最初に機械に使用されている複数の全てのモータについて、絶縁抵抗値が低下して絶縁劣化しているモータがないか調査するという作業である。
調査の結果、機械に使用されている複数の全てのモータについて、絶縁劣化しているモータがない、即ち、全てのモータの絶縁抵抗値が基準値以上で問題ない、ということが確認できればよく、この場合はそれぞれのモータの絶縁抵抗値を調べる必要はない。
一方、調査の結果、機械に使用されている全てのモータの中に絶縁劣化しているモータがある、即ち、全てのモータの中で絶縁抵抗値が基準値以下になっているものが少なくとも1台はある場合には、どのモータがどの程度絶縁劣化しているかを特定するために、各モータの絶縁抵抗値の測定作業が続けて必要となる。
本発明は、最初に行う第1の測定結果から、全てのモータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗値を求めることにより、先ず最初に絶縁抵抗値が低下して絶縁劣化しているモータがないかを確認することができる。ここで、全てのモータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗値が基準値以上で、全てのモータについて絶縁劣化しておらず問題ないことが確認できれば、これ以上測定を行う必要はなく、この時点で測定を終了することができる。
一方、第1の測定結果から得られた全てのモータの絶縁抵抗を並列接続した合成抵抗値が基準値以下であった場合には、どのモータがどの程度絶縁劣化しているかを特定するために、各モータの絶縁抵抗値の測定のために第2の測定結果を得る測定処理のみを続けて実行すればよい。
このように本発明の各処理の実施手順が、まさに実際の保全活動での作業の順番に合致しているため、無駄の無い測定がしかも高い精度で実施できる点が、本発明の特徴である。
本発明の実施例3の具体的な処理の実施例について、図13のフローチャートで説明する。先ず絶縁抵抗検出部70が第1の測定結果を得るための測定処理を行い、測定で得られた第1の測定結果を絶縁抵抗検出部70が読み込む(ステップS300〜S305)。続けて、絶縁抵抗検出部70において第1の測定結果を用いて、全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値を計算する(ステップS306)。
第1の測定結果を用いて全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値を計算する方法については、これまでに説明済なのでここでは繰り返さない。次にステップS307において、絶縁抵抗検出部70が全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値が基準値以上か判定する。
第1の測定結果より得られる全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値は、全てのモータの絶縁抵抗値を並列接続した合成抵抗値であることは、これまでの図7と図8の等価回路の説明からも明らかである。従って、第1の測定結果より得られた全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値が基準値よりも大きい場合には、全てのモータの絶縁抵抗値は基準値よりも大きいと見做すことができる。
基準値については、ステップS306を行う絶縁抵抗検出部70に予め設定しておくが、外部から基準値を変更できるようにしておいてもよい。なお基準値の値については、モータの絶縁劣化が発生していると判定すべき絶縁抵抗値の上限値、若しくは、絶縁劣化が発生していると判断される絶縁抵抗値の下限値に設定することで、全てのモータの絶縁抵抗値が基準値以上で問題ないレベルか、或いは、全てのモータの中に絶縁劣化が発生しているモータが少なくとも1台は含まれているかを判定することができる。
ここで、第1の測定結果より得られた全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値が基準値よりも大きい場合には、絶縁劣化が発生しているモータは1台も無く、全てのモータの絶縁抵抗値が問題ないレベルであることが確認できるので、これ以上測定を行う必要はなく、図12に示す通りステップS313に飛んで測定を終了する。
一方、第1の測定結果より得られた全モータの絶縁抵抗値の合成抵抗値が基準値よりも小さい場合には、全モータの中に絶縁抵抗値が基準値よりも小さい絶縁劣化が発生したモータが少なくとも1台は含まれているので、どのモータがどの程度絶縁劣化が進行しているかを確認するために、続けて各モータの絶縁抵抗値の測定を行う。
具体的には、グループAとグループBのグループ分けを行なった上で、各インバータ部の半導体スイッチング素子のオン/オフ状態をグループ分けに応じて変更して、絶縁抵抗検出部70が第2の測定結果を得るための測定処理を行い、第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループAのモータの絶縁抵抗RmAと、グループBのモータの絶縁抵抗RmBを計算で求める(ステップS308〜S316)。
ここで使用される第1の測定結果は、ステップS300〜S305において、全てのモータの絶縁抵抗の合成抵抗値を求めるために測定された値であり、使用される第2の測定結果は、グループ分けをした上でステップS300〜S305において測定された値である。
本実施例では、絶縁抵抗値が基準値よりも小さいモータがどれかを特定する必要から、全てのモータについて、それぞれの絶縁抵抗が測定し終わるまで、グループ分けを切り替えながらステップS308〜S312の処理を繰り返す。全てのモータの絶縁抵抗値の測定が終了して、どのモータの絶縁抵抗がどの程度低下しているかを特定できれば、これ以上測定を続ける必要はなく、ステップS313に移行して測定を終了する。
本実施例では、全てのモータの絶縁抵抗値を測定し終えるまで、ステップS308〜S312の処理を繰り返したが、必ずしも全てのモータそれぞれについて絶縁抵抗値を測定する必要はない。
実際の機械の保全活動において、個々のモータの絶縁抵抗値を測定する必要があるのは、絶縁抵抗値が基準値を下回った絶縁劣化が発生しているモータであり、絶縁抵抗値が基準値以上のモータについては、モータの絶縁抵抗値が基準値以上という事が分かればそれだけで十分であり、そのモータの絶縁抵抗値を調べる必要はないからである。
例えば、最初にある1台のモータの絶縁抵抗値をグループAとし、残りのモータをグループBとして測定した結果、基準値を下回ったグループAの絶縁抵抗値と、基準値を上回ったグループBのモータの絶縁抵抗値が得られた場合には、全てのモータのなかで基準値よりも絶縁抵抗値が小さいモータは、グループAのモータだけであることは明らかであり、基準値を下回ったグループAの具体的な絶縁抵抗値の値も得られたのだから、これ以上の測定は必要なく、この1回の測定だけで終了してもよい。
従来技術も含めて、このように測定対象の1台のモータを1台ずつ切り替えて測定を行う方法だと、絶縁劣化しているモータが、少ない測定回数で測定対象に当たった場合には、少ない測定回数で絶縁劣化しているモータを見つけることができる。反対に、絶縁劣化しているモータが、最後まで測定対象に当たらない場合には、結果的に全てのモータについて個々の絶縁抵抗値を測定しないと絶縁劣化したモータが特定できない場合も出て来くる。その結果、全体のモータ数が多い場合には測定回数が多くなったりして一定とはならないという問題がある。
そこで、本発明の実施例3では、絶縁抵抗検出部70が、絶縁抵抗値を測定する毎に、絶縁抵抗検出部70で全数検出した各モータの絶縁抵抗値を測定した時の日付および時刻に関する情報と共に記録しておき、全てのモータをグループAとグループBの2つのグループに分ける際に、記録から絶縁抵抗値が低いと予想されるモータ、例えば、日付が近い前回の測定結果から、最も絶縁抵抗値が低かったモータの1つを、グループAまたはグループBとして絶縁抵抗値を測定する。このようにすることにより、少ない測定回数で、どのモータが絶縁劣化していて絶縁抵抗値はいくつか、また、どのモータと絶縁劣化していないかを確認することができる。
図4の構成における表1の例で説明すると、第3モータ63だけが絶縁抵抗値が低下した絶縁劣化したモータであり、他の第1モータ61と第2モータ62は絶縁抵抗値が高く正常なモータであったとする。このとき、表1のように測定対象の1台のモータを1台ずつ切り替えて測定を行う方法を採用すると、表1の通り3回目の測定まで実施するか、若しくは、1回目と2回目の測定結果から第3モータ63の絶縁抵抗値を計算で求めるようにしないと、絶縁劣化しているモータが第3モータ63であること、その絶縁抵抗値がいくらであるか、第1モータ61と第2モータ62のモータは絶縁抵抗値が高くモータは絶縁劣化していないということを確認することはできない。
そこで、絶縁抵抗検出部70が、絶縁抵抗値を測定する毎に、絶縁抵抗検出部70であるマイクロコンピュータ内蔵のROMに、全検出した各モータの絶縁抵抗値を測定した時の日付および時刻に関する情報と共に記録しておく。その記録の中から、数日前の各モータの絶縁抵抗値の測定結果として、第3モータ63の絶縁抵抗値が低いことが分かれば、表2の通り1回目に、表1の3回目と同じグループ分けでの測定を行えば、1回目の測定だけで、モータが絶縁劣化しているモータが第3モータ63で、その絶縁抵抗値がいくつで、第1モータ61と第2モータ62のモータは絶縁抵抗値が高くモータと絶縁劣化していないということを確認することができる。
本発明のこれまでの実施例は、いずれも、検出抵抗と分圧抵抗の直列接続と検出抵抗両端の電圧を測定する回路を具備した電圧及び電流検出部7を使用している。この構成の電圧及び電流検出部7の動作については、これまでの実施例で説明した通りである。
この電圧及び電流検出部7は、少ない部品構成で電圧と電流の両方を高精度に測定できる特徴があり、シンプルな構成で精度の高い絶縁抵抗の測定を可能とする本発明に適した電圧及び電流検出部である。
1 第1スイッチ
2 交流電源
3 整流回路
4 電源部
7 電圧及び電流検出部
8 電圧検出部
9 第2スイッチ
41 コンデンサ
42 DCリンク部プラス側端子
43 DCリンク部マイナス側端子
61 第1モータ
62 第2モータ
63 第3モータ
70 絶縁抵抗検出部
100 コンバータ部
501 第1インバータ部
502 第2インバータ部
503 第3インバータ部
2 交流電源
3 整流回路
4 電源部
7 電圧及び電流検出部
8 電圧検出部
9 第2スイッチ
41 コンデンサ
42 DCリンク部プラス側端子
43 DCリンク部マイナス側端子
61 第1モータ
62 第2モータ
63 第3モータ
70 絶縁抵抗検出部
100 コンバータ部
501 第1インバータ部
502 第2インバータ部
503 第3インバータ部
Claims (5)
- 第1スイッチを介して交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流回路を有するコンバータ部と、
前記整流回路によって整流された直流電圧をコンデンサで平滑化する電源部と、
前記コンデンサの正極側端子とモータコイルとの間に接続された上アームの半導体スイッチング素子及び前記コンデンサの負極側端子とモータコイルとの間に接続された下アームの半導体スイッチング素子のスイッチング動作により、前記電源部からの直流電圧を交流電圧に変換して複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータ部と、
前記コンデンサの一方の端子を大地に接続する第2スイッチと、
前記コンデンサの一方の端子と大地との間に流れる電流と、前記コンデンサの一方の端子と大地との間の電圧を測定する電圧及び電流検出部と、
前記コンデンサの両端の電圧を測定する電圧検出部と、
前記複数のインバータ部によって駆動される複数のモータそれぞれの絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗検出部と、を具備するモータ駆動装置であって、
前記絶縁抵抗検出部が、モータの運転を停止し、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、全てのモータについて、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、前記電圧検出部で測定された電圧値を第1の測定結果とし、
全てのモータを任意の2つのグループAとグループBに分けて、グループAのモータについては、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンし、且つ、
グループBのモータについては、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、前記電圧検出部で測定された電圧値を第2の測定結果とし、
前記第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループA及びグループBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を検出する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。 - 前記絶縁抵抗検出部が、モータの運転を停止し、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、全てのモータについて、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、前記電圧検出部で測定された電圧値を第1の測定結果として記憶し、
全てのモータを任意の2つのグループAとグループBに分けて、各グループを構成するモータを入れ替えながら、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と前記電圧検出部で測定された電圧値を前記第2の測定結果とする測定を続けて複数回行い、
それぞれのグループ分けで測定されたそれぞれの第2の測定結果と、前記記憶された第1の測定結果を使用して、それぞれのグループ分けにおける、グループA及びグループBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を検出する、請求項1に記載のモータ駆動装置。 - 前記絶縁抵抗検出部が、モータの運転を停止し、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、全てのモータについて、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、前記電圧検出部で測定された電圧値を第1の測定結果として、第1の測定結果を用いて全てのモータの絶縁抵抗の合成抵抗値を求め、
前記合成抵抗値が基準値より小さい場合には、
全てのモータを任意の2つのグループAとグループBに分けて、グループAのモータについては、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの他方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンし、且つ、
グループBのモータについては、各モータに接続されている前記インバータ部の前記上アームまたは前記下アームのいずれか片方の半導体スイッチング素子のうち、前記コンデンサの一方の端子とモータコイルとの間に接続されている半導体スイッチング素子をオンした状態で、前記電圧及び電流検出部で測定された電圧値及び電流値と、前記電圧検出部で測定された電圧値を第2の測定結果とし、
前記第1の測定結果と第2の測定結果を用いて、グループA及びグループBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を検出する、請求項1または2に記載のモータ駆動装置。 - 前記絶縁抵抗検出部が、絶縁抵抗値を測定する毎に、前記絶縁抵抗検出部で全検出した各モータの絶縁抵抗値を測定した時の日付および時刻に関する情報と共に記録しておき、モータの絶縁抵抗値の測定では、前記記録から絶縁抵抗値が低いと予想されるモータの1つを、グループAまたはグループBとしてグループ分けして、グループA及びグループBのモータのコイルと大地との間の絶縁抵抗値を検出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
- 前記電圧及び電流検出部は、検出抵抗と分圧抵抗の直列接続と検出抵抗両端の電圧を測定する回路を具備し、前記検出抵抗の両端の電圧の測定によって、前記検出抵抗の抵抗値から電流値の測定結果と、前記検出抵抗の両端の電圧と検出抵抗と分圧抵抗の抵抗値から電圧値の測定結果を得る、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
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