JP2018053320A - α+β型チタン合金熱間押出形材およびその製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金熱間押出形材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】0.2%耐力880MPa以上、伸び16%以上を兼備する針状組織のTi−Al−V系α+β型チタン合金熱間押出形材を提供する。
【解決手段】質量%で、Al:5.5〜6.8%、V:3.5〜4.5%、Fe:0.05〜0.30%を含有し、C:0.08%以下、N:0.05%以下、O:0.20%以下、H:0.015%以下であり、その他の元素が0.10%以下で且つそれら元素の合計が0.40%以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物であり、押出形材の長手方向に垂直な断面の組織は針状組織であり、さらに、針状組織は、Al濃度が押出形材全体における含有量C Alに対し1.06×C Al以上、かつ、V濃度が押出形材全体における含有量C に対し0.6×C 以下であるアスペクト比10以下、外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5〜30μmの偏析部が分散しているα+β型チタン合金熱間押出形材。
【選択図】図4

Description

本発明は、α+β型チタン合金熱間押出形材およびその製造方法に関する。
チタン合金は高い比強度と優れた耐食性を活かして、航空機の骨材や構造部材、ゴルフフェースクラブヘッドやメガネのフレーム等の民生品用途、インプラント等の医療用途等、様々な分野で使用されてきている。
その中でも、α+β型チタン合金は強度・延性バランスが良く、破壊靭性に優れることから、宇宙航空機産業を中心に多用されてきた。特に、高強度を必要とする用途向けには、α相中に置換型固溶して室温および高温で固溶強化させる安価な元素であるAl、およびβ安定化元素であり凝固偏析しにくいVを添加した、α+β型チタン合金が、長年使用されてきている。このAl、Vを主要含有元素としたα+β型チタン合金は、今や実用チタン合金の約8割を占める、最も使用量の多いチタン合金である。
このようなα+β型チタン合金の中でもTi−6Al−4Vは、主に航空機分野を主用途として長年使用されている。最近、更なる低燃費化のために機体への炭素繊維強化複合材(CFRP)の適用比率が高まってきたことに伴い、チタン合金の使用割合も上昇しており、今後もさらに上昇することが見込まれている。これは、従来、航空機分野で使用されていたアルミニウム合金は、CFRPとの接触で異種金属接触腐食が生じる、CFRPとの熱膨張率の差が大きく、飛行中と地上での温度差(約100℃)に起因してずれや緩み等を生じやすいという問題があるのに対して、チタン合金はCFRPと接触しても異種金属接触腐食は起こらず、熱膨張率もアルミニウム合金に比べてCFRPに近いためである。さらに、高い比強度特性や耐食性を活かし、自動車等のエンジン部品への適用も検討されている。
しかし、α+β型チタン合金を航空機や自動車等に適用していくには、様々な問題がある。例えば、最近、航空機メーカーは、燃費改善のための軽量化を進めている。このような部品を軽くすることは、それ自身の重量の軽減に加えて、他の部位への接触部における負荷や摩擦力の減少を通じて、他の部位の小型軽量化や機体性能の向上が可能になる。軽量化の方法には、高い強度が得られる複雑形状の追及、低比強度合金の使用、および組織制御による強度、延性バランスの上昇等がある。さらに、LCC(Low Cost Carrier)の台頭により機体の価格競争も激しくなっていると考えられ、より安価なチタン合金製素材の要求も強い。
特に、Al、Vを主要含有元素としたα+β型チタン合金は、このような航空機向け用途の中で骨材やシートレール、カーゴレール等の形材として使用されることもある。形材には複雑な断面形状を有するものもあり、従来は、大断面の鍛造品や極厚材を切削加工することにより成形、製造されてきた。高い強度・延性バランスを必要とする用途向けには、α+β型チタン合金をβ変態点温度以下で鍛造等の強加工を行い、金属組織を等軸組織に制御し、切削加工により成形する。β変態点温度以下で強加工を行うことにより、金属組織を等軸組織とし、必要とする引張特性、特に高い耐力を実現していた。
しかし、最近、航空機向け部品の製造コスト削減ニーズが高まる中、最終製品に近い断面形状を有し長尺の形材を製造することにより、歩留りおよび生産性の向上が期待される。そのため、高能率で複雑な断面形状に成形を行えるという特徴を有する、熱間での押出加工による形材の製造技術が開発されてきている。
押出加工には、間接押出法、静水圧押出法等の方法があり、ユージンセジュルネ法はその一つである。この方法では、VAR(真空アーク溶解)2回溶解やEB(電子ビーム)溶解+VARしたインゴットを鍛造して製造したビレットを素材とする。図1のようにコンテナ1に素材(ビレット5)を挿入し、ステム2に油圧による荷重を付与してダミーブロック3を介してビレット5を押出方向11に押し、ダイス4を通過させて様々な断面形状に成形することで、長尺の形材6を得ることが可能となる。
ところで、α+β型チタン合金の金属組織は、前述のように、高い強度・延性バランスを必要とする用途向けには、β変態点温度以下で鍛造等により強加工を行い、金属組織を等軸組織に制御することで、必要とする高い引張特性を実現してきた。しかし押出成形の場合、α+β型チタン合金はβ変態点(Tβ)を200℃以上下回る温度域では熱間変形抵抗が急激に高くなるため、熱間押出で組織を等軸組織に制御するためには、高い押出荷重を付加できる大型の押出プレスが必要となり、設備コストが高くなる。したがって、ビレットをβ変態点温度近傍、あるいはβ変態点温度以上に加熱して押出加工を行う。
ビレット加熱温度がβ変態点温度より低い場合、押出中に工具との接触によりビレット表層の温度がβ変態点温度よりも著しく低下するために押出荷重が大きくなり、押出設備への負荷が大きくなる。その結果、押出不能となる場合がある。さらに、押出可能であった場合も、表層は温度低下のために延性が低くなり、押出中に割れや疵などの欠陥が生じる可能性がある。そのため、一般にα+β型チタン合金の押出では、低い押出荷重で製造でき、表面欠陥が生じにくいように、ビレットをβ変態点温度以上に加熱して押出し、押出後の形材の組織は針状組織に制御する。
ビレット加熱温度がβ変態点温度より高い場合、β変態点温度以上の温度で保持されることで押出後の形材は針状組織を有し、等軸組織に比べて強度・延性バランスが劣るという問題がある。さらに、β変態点温度以上で保持される時間が長くなると、β粒が成長するために強度・延性バランスはより低下する。
このように、押出加工を行って得られる針状組織を呈する形材は、押出温度の制御が難しく、押出温度が高すぎれば引張特性が低下する、押出温度が低すぎれば表面欠陥や、押出荷重が高く、押出不能になるという問題がある。
強度と延性を向上させる方法として、以下のような技術が開示されている。
特許文献1には、粒状α+針状(α+β)組織を有するTi−6Al−4V合金を、加工中もβ変態点温度を超えないようにα+β温度域で押出加工し、高強度、高靭性で、かつ長手方向の寸法変動の小さく表面疵が少ない形材を製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法においては押出中も温度がβ変態点温度を超えないために押出荷重が高く、大きなプレス力が必要なため、製造は難しい。
特許文献2には、α+β型チタン合金をα+β温度域もしくはβ単相温度域に加熱して押出加工を施した後、α+β温度域に加熱してから強制冷却する溶体化処理を行い、次いで、時効処理を行う2段階の熱処理を施して、強度、延性ともに優れた形材を製造する方法が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されているα+β型チタン合金は、耐力880MPa以上、全伸び16%以上の高強度、高延性を実現するために、実施例では実質的に2%程度のSnの添加を必須とし、Zr、Mo等の高価な添加元素が必要である。
特許文献3には、微細な等軸α+β組織を呈するα+β型チタン合金ビレットをβ変態点温度以上で押出加工し、5℃/秒以上で急冷した後、焼鈍することでα+β域で押出加工を行った形材と同等の強度、延性を有する熱間押出形材を製造する方法が記載されている。しかしながら、微細なα+β組織を有するα+β型チタン合金ビレットを得るためには、複数回にわたる熱間鍛造が必要であるために生産性が低く、エネルギー原単位が高くなるという問題がある。さらに、押出後に形材の冷却速度5℃/秒以上を得るためには強制冷却を行う必要があるが、長尺材や形材の断面積が大きい場合には、全長および形材内部にわたる冷却速度の制御が難しいことから、押出形材の長手方向全体に目的とする組織や材質特性が得られないという問題がある。また、特許文献2と同様に、耐力880MPa以上、全伸び16%以上の高強度、高延性を実現するために、実施例では実質的に2%程度のSnの添加を必須とし、Cu等の高価な添加元素も必要である。
特許文献4には、α+β型チタン合金ビレットをβ変態点温度以上に加熱した後、表層をα+β域まで冷却してからビレットを押出加工する方法が提案されている。この方法では、押出時、ビレット中心付近の内部がβ変態点温度以上に加熱されているために熱間変形抵抗が小さく、小さい押出力で押出加工が可能であり、かつ、得られる形材は表面層が等軸α+β組織を有するため高強度であるとされる。しかしながら、このようにビレット断面内で温度勾配を設けて加熱する方法は温度制御が難しいという問題がある。また、わずかな断面内の温度の違いにより変形の程度がばらつくために、安定した形状が得られないと共に、製品の内部と外部で著しい特性差が生じるという問題がある。さらに、内部が変態β組織であるので、強度が十分ではない。
特許文献5には、α+β型チタン合金ビレットを、押出比を含む一次式によって計算されるα+β域の温度範囲に加熱して押出加工を行うことにより、押出中に生じる加工熱によって後続の熱処理を省略可能な製造方法が開示されている。また、十分な延性を確保するためにチタン合金中に不可避に含まれる不純物であるFeを、0.05%未満という低水準まで低減させている。
特許文献6には、α+β型チタン合金ビレットを、押出比を含む一次式により計算されるα+β域の温度で押出加工を行うことで組織制御を行い、疲労強度に優れた形材を製造する方法が記載されている。また、この方法によって、任意の断面における一次α相の面積率が5〜80%であると共に、その一次α相のうち80%以上の一次α粒の長径の方向が、チタン合金押出形材の押出方向に対して±15°以内の角度範囲内に収まっており、且つ、二次α相の平均短径が0.1μm以上であるα+β型チタン合金押出形材が記載されている。しかしながら、このような組織制御を行うには、押出中の金属の流れを制御し、押出中に加えられる加工の方向、量を緻密に制御する必要があり、特に異方性の強い六方細密構造を有するα相が含まれるTi−6Al−4Vを押し出す場合には、ビレットおよび製品の形状が著しく制限される。さらに、押出中も温度がβ変態点温度を超えないように押出を行うために押出荷重が高く、大きなプレス力が必要なため、製造は難しい。
特開昭61−193719号公報 特開昭61−284560号公報 特開昭63−223155号公報 特公平5−2405号公報 特許第2932918号公報 特許第5592818号公報
上記先行技術によるα+β型チタン合金熱間押出形材は、いずれも、Al、V以外の添加元素を使用するか、不可避的不純物として含まれるFeをごく低い含有量まで低減させるか、針状組織以外の組織として耐力と伸びの両立を実現している。しかしながら、Al、V以外の添加元素の使用や、Feの低減にはコストがかかるので、好ましくない。そこで本発明は、加熱温度がβ変態点近傍ではあるが、合金組織が針状組織であり、0.2%耐力880MPa以上、伸び16%以上の高い強度、延性バランスを有する、安価なTi−Al−V系α+β型チタン合金熱間押出形材およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)α+β型チタン合金熱間押出形材であって、質量%で、Al:5.5〜6.8%、V:3.5〜4.5%、Fe:0.05〜0.30%を含有すると共に、C:0.08%以下、N:0.05%以下、O:0.20%以下、H:0.015%以下であり、その他の元素が0.10%以下で且つそれら元素の合計が0.40%以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物であり、押出形材の長手方向に垂直な断面の組織は針状組織であり、さらに、前記針状組織は、Al濃度CAlが押出形材全体における含有量C Alに対し1.06×C Al以上、かつ、V濃度Cが押出形材全体における含有量C に対し0.6×C 以下であるアスペクト比10以下、外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5〜30μmの偏析部が分散していることを特徴とするα+β型チタン合金熱間押出形材。
(2)前記分散した偏析部の合計面積は、断面積全体の10%以上を占め、前記分散した各偏析部のAl最高濃度Cmax Alが1.1×C Al以上、かつ、V最低濃度Cmin が0.5×C 以下であることを特徴とする(1)に記載のα+β型チタン合金熱間押出形材。
(3)α+β温度域で面積減少率50%以上の加工を行った(1)に記載の成分を有するビレットを、β変態点温度をTβとし、ビレット表面および中心の温度を(Tβ−500)〜(Tβ−300)℃に、表面と中心の温度差が50℃以下になるように予加熱し、その後、通電加熱もしくは誘導加熱により1.5℃/s以上の昇温速度で(Tβ−200)〜(Tβ−50)℃に加熱し、その後、押出加工を施すことにより成形すると同時に、押出加工の加工熱により加工終了時点でビレット温度をTβ〜(Tβ+80)℃に加熱し、押出加工後に室温まで放冷することを特徴とする、(1)又は(2)に記載のα+β型チタン合金熱間押出形材の製造方法。
本発明によれば、比較的安価な成分組成のTi−Al−V系α+β型チタン合金熱間押出形材を、部位による機械的特性の差が小さい針状組織とした上で、0.2%耐力880MPa以上、伸び16%以上の高い強度、延性バランスを有することができる。
また、α+β温度域で面積減少率50%以上の加工を行った請求項1に記載の成分を有するビレットを、β変態点温度をTβとし、ビレット表面および中心の温度を(Tβ−500)〜(Tβ−300)℃に、表面と中心の温度差が50℃以下になるように予加熱し、その後、通電加熱もしくは誘導加熱により1.5℃/s以上の昇温速度で(Tβ−200)〜(Tβ−50)℃に加熱し、その後、押出加工を施すことにより成形すると同時に、押出加工の加工熱により加工終了時点でビレット温度をTβ〜(Tβ+80)℃に加熱し、押出加工後に室温まで放冷し、(Tβ−500)〜(Tβ−50)℃で熱処理を行うことにより、上記本発明の熱間押出形材とすることができる。
ユージンセジュルネ法における押出プレス機の模式図である。 α+β型チタン合金の組織形態を示す顕微鏡写真である。 本発明の成分偏析を持つ針状組織を示す顕微鏡写真である。 本発明の成分偏析を有する針状組織のEPMA分析結果を示す図である。 押出形状とミクロ観察、引張試験片採取位置を示す断面図である。
α+β型チタン合金は、β変態点と呼ばれる温度以上ではβ単相、β変態点温度以下の温度ではα相とβ相が存在する。α+β型チタン合金の組織形態を図2に示す。HCP構造を持つα相と、BCC構造をもつβ相から成り、α相は、AlやO等のα安定化元素濃度が高く、β相はVやFe等のβ安定化元素濃度が高い。
針状組織(図2(A))は、β変態点温度以上に加熱した場合に生じる組織あり、β変態点温度以上の温度で1つの粒であったβ粒の境界に粒界αが生成し、β粒内には複数のコロニーと呼ばれるα相とβ相が層状に並んだ組織が形成されている。この組織形態では、転位の運動は主にコロニー境界によって妨げられる。
等軸組織(図2(B))は、β変態点温度以下で強加工した場合に生じる組織であり、初析α粒と変態β(α相とβ相が層状に並んだ部分)からなる。この組織形態では、転位の運動は、初析α粒同士もしくは初析α粒と変態β相の境界によって妨げられる。
変形中、転位は、結晶方位が変化する界面(針状組織:コロニー境界、等軸組織:初析α粒同士もしくは初析α粒と変態β相の境界)において、その運動が妨げられて界面に堆積して応力場を生じる。変形により、前記結晶方位が変化する界面に堆積した転位密度が上昇する、もしくは外力が上昇すると、隣接する結晶に転位が伝播して降伏に至る。このとき、結晶粒径が小さくなるに従い、前記結晶方位が変化する界面に堆積する転位数が減少して、転位が再び伝播するのに必要な外力が大きくなる。そのため、結晶粒径が小さくなると一般に降伏強度が向上する。
針状組織を有するα+β型チタン合金では、コロニー内のα相およびβ相はほぼ同じ結晶方位を持つため、コロニーが結晶粒として振舞う。一方、等軸組織を有するα+β型チタン合金では、初析α粒、および変態βが結晶粒として振舞う。等軸組織は、針状組織に比べて、結晶粒の役割を担う組織単位が小さく、各結晶方位が変化する界面に堆積する転位が少ないため、より高い強度を有する。また、針状組織は、コロニー境界における応力集中が大きいため、容易に空孔(ボイド)が発生するため、等軸組織に比べて延性が低い。
しかしながら、本発明において対象とするα+β型合金の合金組織は、針状組織である。等軸組織は針状組織にくらべて、強度および延性が高いとされているが、α+β型チタン合金を押出加工する際に、押出形材のすべての領域を等軸組織とすることは、押出荷重の観点から難しく、押出中の荷重が高いためにダイスとの摩擦が激しいために、ダイス破損により長手方向で寸法が変動したり、表面に割れや疵が発生したりしやすい。長手方向で寸法が変動することから、長手方向に荷重がかかると部分的に断面積の小さい部分から破壊が進行するため、強度が落ちやすい。また、表面欠陥のため、歩留りが低下する。一方、針状組織は、β単相域加熱して押出することで得られるため、押出中の荷重が低いために押出が比較的容易であり、熱間で延性が上昇するために、ダイスとの摩擦力が小さく、表面欠陥や寸法変動等の問題が少ないため、本発明では、組織は針状組織とした。
本発明者らは、α+β型チタン合金であるTi−6Al−4Vを用いて、針状組織形態に及ぼす押出製造条件について鋭意調査を行った結果、鍛造による等軸組織とほぼ等しい機械的特性を有する「等軸組織的な成分偏析を有する針状組織」が得られる押出製造条件を見出した。
図3に、α+β温度域において鍛錬比3.0以上で鍛造し、等軸組織を有するビレットを押出して製造することにより針状組織とした「等軸組織的な成分偏析を有する針状組織」を有する形材のミクロ写真を示す。図2(A)の針状組織と同様の組織形態を示すが、点線で囲んだ部分に代表される白いエッチングムラが認められる。この部位をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析すると、成分が不均一となっており、成分偏析部となっていることが明らかとなった。EPMA分析は、鏡面仕上げで研磨した試料について、5mm×5mmの範囲を測定画素サイズ0.1μm×0.1μmでEMPAを用いて成分分析を行った。対象元素はAl、VおよびOである。EPMA分析結果を図4に示す。図4より明らかなように、エッチングムラの部分は、通常の部位に比べて、Al濃度が高く、V濃度が低い。このために強度が高く、エッチングの際に腐食速度が遅いため、ミクロ観察においてムラに見える。
押出前の素材であるビレットは、等軸組織(図2(B))を有する。等軸組織において、通常の初析α粒に比べてAl濃度が高く、V濃度が低い初析α粒が混在している。このビレットを、加熱速度の速い誘導加熱等でβ変態点温度直下まで加熱した後、ステム速度50mm/s以上で押出する。このような工程により、ビレットは誘導加熱でβ変態点温度以上まで加熱されていないものの、押出中の加工熱により形材の温度はβ単相温度域まで上昇する。しかし、ステム速度が速いために温度上昇が速く、室温中で放冷されるためにすぐにβ変態点温度以下まで冷却されるため、β単相温度域での保持時間が短い。そのため、金属組織は針状組織を有するものの、OやFeに比べて拡散係数の小さいAlやVは拡散均質化せずにビレットのミクロ偏析が残存する。
このようなミクロな成分偏析部は、通常部に比べて、高Al、低Vであるために原子半径や電子状態が異なることによる内部ひずみが存在し、転位の運動を抑制すると考えられる。そのため、通常の針状組織に比べて転位の運動が抑制され、引張特性が向上する。また、変形による転位が、成分偏析部にある程度分散されて蓄積されるために、コロニー境界や粒界(結晶方位が変化する界面)に集中して蓄積されることを防止するので、延性も向上すると考えられる。
当該発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
本発明の各特定事項について以下詳細に説明する。最初に、成分組成を特定した意義について述べる。
本発明は、Al、Vを主要含有元素とした針状組織のチタン合金、Ti−6Al−4Vの成分(質量%)については、JIS H4650、ASTM B348等でAl:5.50〜6.75%、V:3.50〜4.50%、Fe:0.30%以下、C:0.08%以下、N:0.05%以下、O:0.20%以下、H:0.015%以下を含有し、その他の元素が0.10%以下でかつその他の元素の合計が0.40%以下であることが規定されている。本発明のAl、Vを主要含有元素としたチタン合金も、概ね、公的規格の範囲内の成分を有するものとする。以下、各成分の特定理由について説明する。
Al:5.5〜6.8質量%
Alはα安定化元素であり、α相の分率を増加するために添加する元素である。その含有量が5.5質量%未満であればβ相に比べて強度の高いα相の分率が過少になり、十分な強度が得られず、優れた0.2%耐力が得られない。一方、その含有量が6.8質量%を超えて過多になると、延性が劣化すると共に、TiAlが析出することで靭性も劣化し、加工性が低下する。したがって、Alの含有量は、その下限を5.5質量%とし、その上限を6.8質量%とする。より高い0.2%耐力を得るには、下限は6.0質量%が好ましい。
V:3.5〜4.5質量%
Vはβ安定化元素であり、β相の分率を増加するために添加する元素である。すなわち、Vはβ変態点を低下させる作用があり、チタン合金の加工温度を下げることができる。さらに、Vは強度を向上させる作用があり、その含有量が3.5質量%未満であればβ相の分率が過少になると共に、0.2%耐力の低下を招く。一方、その含有量が4.5質量%を越えて過多になると伸びが劣化し、加工性の低下を招くことになる。したがって、Vの含有量は、その下限を3.5質量%とし、その上限を4.5質量%とする。より高い0.2%耐力を得るには、下限は4.0質量%が好ましい。
Fe:0.05〜0.30質量%
Feは、チタンに不可避に含まれる元素であり、0.05質量%未満とするためには製錬コストがかかるので、0.05質量%以上と規定した。また、Feはβ安定化元素であり、添加することでβ変態点を低下させる作用があると共に、0.2%耐力を向上させる作用を持つ。これらの特性を向上させるためにFeを0.05質量%以上添加する。一方、0.30質量%を超えると、延性が低下し、加工性が低下する。
C:0.08質量%以下、N:0.05質量%以下、O:0.20質量%以下
C、N、Oは、チタンに不可避的に含まれる。しかしながら、いずれもα安定化元素であり、積極的に添加することでα相の分率を増加すると共に、0.2%耐力を向上させる作用を持つ。しかしながら、それぞれの元素の含有量が増加すると、延性が低下し、加工性が低下する。したがって、C:0.08質量%以下、N:0.05質量%以下、O:0.20質量%以下とする。
H:0.015質量%以下
H含有量が0.015質量%を越えて過多になると、伸びが低下すると共に、脆い水素化物が形成されてチタン合金は脆化する。そのため、Hの含有量の上限は0.015質量%とする。
その他の元素が0.10質量%以下で、且つ、それら元素の合計が0.40質量%以下
その他の元素は不可避的不純物であり、その殆どがβ安定化元素である。添加することでβ変態点を低下させる作用および固溶強化により0.2%耐力が向上する。しかしながら、単一の元素の含有量が過多になると、Tiと化合物を生成して靭性が低下し、その結果加工性が低下する。また、不可避的不純物の総含有量が過多になると、延性が低下するために加工性が劣化する。したがって、その他の元素の上限は0.10質量%で、且つ、それらの元素の合計は0.40質量%以下に制御する必要がある。
本発明においては、Feを0.05%未満に高度に低減させず、Sn、Mo、Cr等の添加元素を多量に使用せずとも880MPa以上の耐力、16%以上の伸びを実現できることが特徴である。これらの元素を添加すると、原料コストが上昇し、また、添加するための工程がさらに増えるので、好ましくない。なお、本発明のより好ましい耐力は、900MPa以上、伸びは、18%以上である。
続いて本発明の合金組織についての特定事項について述べる。
●押出形材の長手方向に垂直な断面の組織が針状組織
上記のように、本発明の押出形材の組織は針状組織である。押出形材の長手方向に垂直な断面は、針状組織を観察するための代表的な面である。押出形材において、等軸組織としようとすると、押出荷重が高く製造性が低い点、表面欠陥や長手方向の寸法変動といった問題があることから、針状組織とした。
●Alが高く、Vが低いアスペクト比10以下の偏析部が分散
本発明は針状組織中に、Alが周囲より所定量以上高く、かつ、Vが周りより所定量以上低い、特定の形状の偏析部が認められることが大きな特徴である。この偏析部が針状組織中に分散していることにより、粒界や、コロニー境界への転位の蓄積を防止し、割れを防止することにより、強度が向上する。また、転位が粒界やコロニー境界以外に分散されるので、伸びも向上する。
本発明の偏析部の外接長方形の長径と短径との比であるアスペクト比は、10以下である。通常の針状組織においても、コロニー中に層状に交互に形成されるα相、β相が存在する。これらα相ではAl、O、β相ではV、Feが濃化するので、細い層状のα相には、Alが濃化し、Vが希釈された組織は存在するが、このような細い層状のα相組織はアスペクト比が10以上であり、本発明における偏析部には含まれない。
●偏析部のAl濃度CAlが押出形材全体における含有量C Alに対し1.06×C Al以上、かつ、偏析部のV濃度Cが押出形材全体における含有量C に対し0.6×C 以下
本発明においては、偏析部のAlの最低濃度とVの最高濃度を規定した。偏析部のAl濃度CAlが押出形材全体における含有量C Alに対し1.06未満、あるいは、V濃度Cが押出形材全体における含有量C に対し0.6を超えていると、転位の移動を防止できず、強度向上、伸びの向上効果が得られない。したがって、上記のように規定した。一方、Alの上限、Vの下限については、全体のAl、Vの範囲が決定されているので、自ずと決定されるものである。あえて記載するならば、Alについては、1.5×C Al以下、Vについては、0.3×C 以上である。偏析部のAl、およびV濃度の決定はEPMA分析により、5mm×5mm範囲を0.1μm×0.1μmの測定画素サイズで行う。
●偏析部は、外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5〜30μm
偏析部は、外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5〜30μmの範囲とすることが必要であり、前記2軸幾何平均径が5μm以上とすることにより、転位の運動が十分に抑制される。一方、30μmを超えると、偏析部の分散数が減少する虞がある。この2軸幾何平均径の上限は、押出素材であるビレットの初析α粒の2軸幾何平均径により決定され、所定の初析α粒の2軸幾何平均径を有するビレットをα+β温度域において面積減少率50%以上で加工を行うことで2軸幾何平均径が30μm以下の押出形材が得られる。
以上が必須の要件であるが、次に好ましい事項について述べる。
●偏析部の合計面積が、断面積全体の10%以上
偏析部の合計断面積は、全体の10%以上が好ましい。偏析部の断面積は10%以上であると、より高い強度と伸びの両立が可能である。
●各偏析部のAl最高濃度Cmax Alが1.1×C Al以上、かつ、V最低濃度Cmin が0.5×C 以下
ある一つながりの偏析部中においても、細かく測定すると、Al濃度、V濃度ともに、均一一定の値をとらない。すなわち、偏析部の縁周辺は比較的Al濃度が低く、偏析部の中央に向かうにしたがってAl濃度が増加する。前記CAlがC Alに対し1.06×C Al以上とは、偏析部の外縁部においてもAl濃度が所定以上に高いことを特定しているが、それに加えて、偏析部中のAl最高濃度の下限をより高めることが好ましい。Vについても同様である。各偏析部のAl最高濃度Cmax Alが1.1×C Al以上、かつ、V最低濃度Cmin が0.5×C 以下とすると、より、強度、伸びの向上効果が増加する。
次に本発明のα+β型チタン合金熱間押出形材の製造方法の発明について、その特定理由について述べる。
●ビレットをα+β温度域において、面積減少率50%以上で加工する理由
α+β域での面積減少率50%未満では、ビレットの組織が所望の微細な等軸組織にできずに、針状組織もしくは延伸した初析α粒と変態β相からなる組織となってしまう。このようなミクロ組織のビレットを押出しても、押出により針状組織とした際に、所定のCAl、Cに偏析した偏析部が得られない。これは、面積減少率50%以下では、初析α粒の外接長方形の短径が短いため、この成分偏析を解消するために必要なAl、およびVの拡散距離が小さく、β変態点温度以上に加熱した際に、偏析が解消してしまうためである。また、成分偏析部が残ったとしても、そのアスペクト比、および円相当直径は通常の針状組織の粒径と同等であり、転位の運動を抑制する効果が十分に得られないため、目的とする強度・延性バランスが得られない。
●予加熱においては、ビレット表面および中心の温度を(Tβ−500)〜(Tβ−300)℃に、表面と中心の温度差が50℃以下になるように予加熱を行う理由
予加熱後のビレット温度が低すぎると、その後に急速加熱を行う際、ビレット中心まで所定の温度以上とするためには、急速加熱後の保持時間を増加する必要が生じ、その結果としてビレット表面の温度が上昇することとなる。予加熱温度下限を(Tβ−500)℃とすることにより、急速加熱後の保持時間を短縮する。
また、予加熱中に、チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上に加熱するとαケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱温度が高くなるほど、また加熱時間が長くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいため押出中のクラックの起点となり、押出製品に割れを生じる。また表面硬化層の研磨作用によりダイスが著しく摩耗するため、押出形材長手方向で断面寸法の変動が大きくなる。さらに、押出後の冷却過程で、形材が熱収縮した際に、表面硬化層から割れが生じる。そこで、αケースの形成が比較的著しくない(Tβ−300)℃をビレットの予加熱温度の上限とした。
さらに、チタンは熱伝導性が悪く、予加熱後に十分にビレットが均熱化されない状態でビレット表面から急速加熱を行ったのでは、ビレット全体が均等に加熱されない。そこで、急速加熱時にビレットの一部が所定の温度に達してからビレット全体が所定の温度に達するまでの時間が短くなるよう、予加熱時のビレット表面と中心の温度差の上限を50℃とした。実際の操業では、温度差は20℃以下が好ましい。
●加熱速度が1.5℃/s以上である理由
加熱速度が低いと、押出後の製品に所定のCAl、Cに偏析した成分偏析部が形成されない。これは、加熱速度が低下すると、β変態点近傍での保持時間が長くなって元素拡散が生じるために、ビレットを等軸組織にすることで生じていた成分偏析が解消してしまうため、十分な偏析が起こらないからである。発明者らは、加熱速度が1.5℃/sを下回る速度で加熱した場合、成分偏析部の外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5μmを下回り、転位の運動を抑制する効果を有する偏析部が十分に得られないために、目標とする強度・延性バランスが得られないことを見出した。
また、チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上で保持時間を長くすると、αケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱時間が長くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいため押出中のクラックの起点となり、押出製品に割れを生じる。また表面硬化層の研磨作用によりダイスが著しく摩耗するため、押出形材長手方向で断面寸法の変動が大きくなる。
そこで、転位の運動を抑制して目標とする強度・延性バランスが得られる成分偏析部が残留し、かつ、αケースの形成が著しくない1.5℃/sをビレット加熱速度の下限とした。
●ビレット加熱温度の下限が(Tβ−200)℃である理由
押出加工は高能率で複雑な断面形状に成形を行えるという特徴を有するが、高速度で強加工を行うため、大きな押出荷重が必要である。特に、β変態点を下回る温度域ではα+β型チタン合金の熱間変形抵抗は急激に高くなるため、高い押出荷重を付加できる大型の押出プレスが必要となり、設備コストが高くなる。さらに、α+β型チタン合金では温度低下、特にβ変態点温度以下での熱間押出加工では、熱間延性が急激に低下するため割れ等の表面欠陥が発生しやすく、歩留まりを低下させる原因となる。この時、押出工具と接触したことによる抜熱がある表層部が真先にβ変態点温度以下に温度低下しやすく、割れや傷が発生しやすくなる。
一方、ビレット加熱温度が低すぎると、後述する押出中の加工熱量があっても押出後の温度がβ変態点温度に満たないため、所望の針状組織が得られない。
以上から、熱間変形抵抗がそれほど大きくなく、局部的な温度低下があっても押出中に割れや傷が発生せず、加工熱により押出後β変態点温度に達する(Tβ−200)℃をビレット加熱温度の下限とした。
●ビレット加熱温度の上限が(Tβ−50)℃である理由
ビレット加熱温度の上昇に従い、押出後の製品の成分偏析部の面積率が低下する。これは、押出後の製品の温度が上昇してβ単相温度域に保持される時間が長くなり、元素拡散が生じるためである。発明者らは、ビレットを(Tβ−50)℃を超えて加熱して押出すると、所定のCAl、Cに偏析した偏析部が得られず、成分偏析部の外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5μmを下回り転位の運動を抑制する効果を有する偏析部が十分に得られないために、目標とする強度・延性バランスが得られないことを見出した。
また、チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上に加熱するとαケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱温度が高くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいため押出中のクラックの起点となり、押出製品に割れを生じる。また表面硬化層の研磨作用によりダイスが著しく摩耗するため、押出形材長手方向で断面寸法の変動が大きくなる。
そこで、転位の運動を抑制して目標とする強度・延性バランスが得られる成分偏析部が残留し、かつ、αケースの形成が著しくない(Tβ−50)℃をビレット加熱の上限温度とした。
●押出加工の加工熱より押出後の温度をTβ〜(Tβ+80)℃に加熱する理由
押出加工の加工熱(加工発熱)により、押出後の温度をTβ〜(Tβ+80)℃の温度範囲に加熱することにより、本発明の偏析部を有する針状組織とする。Tβ℃未満では、合金組織に針状組織以外の等軸組織が残る。一方、(Tβ+80)℃を超えると、元素拡散により、所定の偏析部が形成されない。加工熱を上昇させてビレット温度を上昇させるためには押出加工の加工速度を速く、押出比を高くすればよい。耐力と伸びを向上させるより好ましい温度は、(Tβ+50)℃以下である。具体的に上記の温度とするためには、たとえば、ステム速度としては、50〜100mm/s、押出比でいえば、8〜18で押出加工することが挙げられる。
また、押出後はβ変態点温度近傍より急速に放冷されているため、各相中の成分が不安定であり、押出や急激な温度変化による歪も残留している。そこで、成分安定化、押出による加工歪の除去などを目的に、偏析部が解消しない程度に焼鈍を施すことが望ましい。具体的な温度範囲は、(Tβ−500)〜(Tβ−50)℃が好ましい。
真空アーク2回溶解して得られるφ700mm、重さ5トンで表1に示す成分組成のTi−6Al−4Vインゴットを、α+β温度域で面積減少率60%で熱間鍛造し、得られたビレットの表面酸化層を切削して、押出用ビレットとした。
このビレットを、Arガス雰囲気で、表2に示した予加熱条件(表面予加熱温度695℃、中心予加熱温度700℃、表面と中心の温度差が5℃)、昇温条件(昇温速度)、押出比、押出温度(押出前温度、押出直後温度)でビレット加工から図5に示す凸型断面形状に押出加工までを行った。なお、予加熱後の昇温は通電加熱により行い、押出の際のステム速度はすべて80mm/sで行った。本実施例では、押出比を変えることで押出直後温度を目的の温度に制御したが、ステム速度を変えて、押出直後温度を制御してもよいし、押出比とステム速度の両者を制御することにより押出直後温度を制御してもよい。押出後、室温まで放冷し、その後、この熱間押出形材を700℃で歪除去焼鈍を施した。ここで、用いたTi−6Al−4Vのβ変態点温度Tβは約1000℃である。
表2中の下線が付されたものは本発明の範囲外である。
表3中の下線が付されたものは本発明の範囲外である。なお、表3中のC Al、C は、それぞれ、使用した合金の表1におけるAl、V含有量である。
<引張試験>
この熱間押出形材の図5に示すフランジからASTM E8 ハーフサイズ引張試験片(平行部φ6.35mm、ゲージ長25mm)を得た。強度として、0.2%耐力を、伸びとして、全伸びを測定した。
<組織観察試験>
形材は、図5に示す4箇所より採取した組織観察試験片の断面のそれぞれ5視野を50倍の倍率で写真撮影した。CAl、C、Cmax Al、Cmin については、EPMAにより、5mm×5mm範囲の視野を5箇所とり、平均して求めた。なお、Cmax Al、Cmin は、測定した各偏析部のピーク値、ボトム値を平均したものである。
形材の品質について得られた結果を表3にまとめた。表2、3において、比較例である試験番号7〜9はビレットの昇温速度が遅いために、β変態点温度近傍での保持時間が長く、Al、Vが拡散して成分偏析が弱まり、所定の偏析部が得られず、耐力、引張強度、および伸びが低かった。また、比較例である試験番号10〜12は押出前の温度が高すぎたので、Al、Vが拡散して均質化し、所定の偏析部が得られず、耐力が低いものにとどまった。
比較例である試験番号13〜15は押出後の温度が高すぎたので、Al、Vの成分偏析が弱まり、所定の偏析部が得られず、強度、および伸びともに低いものにとどまった。また、比較例である試験番号19〜21は、ビレットの加工における面積減少率が小さいために、ビレットは等軸組織を有するものの、初析α粒はアスペクト比10以上で、かつ、円相当直径が30μm以上であった。押出後の成分偏析部の形状も、この初析α粒に準じた形となった。さらに、試験番号19では、Alの成分偏析が弱かった。このような偏析部が転位の運動を抑制する効果は小さいため、強度、伸びともに低いものにとどまった。
比較例である、試験番号16〜18は押出前および押出後の温度をα+β温度域としたため、等軸組織を有し、高い耐力、引張強度、および伸びを示した。ただし、押出では、押出前および押出後の断面積を小さく設計し、押出荷重を押さえた。また、押出後の形材の表面には、疵や割れが散見され、実生産は不可能と考えられる。
一方、本発明のα+β型チタン合金熱間押出形材は、所定の偏析部を有しているため、高強度と高い伸びを兼備できた。この結果により、どの部位においても、本発明の組織を有する針状組織とすることにより、強度および伸びを向上させることができることがわかる。
本発明によれば、最終形状に近い、安価な成分組成で、針状組織を有するα+β型チタン合金押出形材において、高い耐力と伸びを兼備できる。したがって、材料コスト、設備コストを削減できるので、産業上特に有用である。また、本発明のα+β型チタン合金熱間押出形材は、耐力および伸びが優れているので、航空機等の用途に特に有用である。
1 コンテナ
2 ステム
3 ダミーブロック
4 ダイス
5 ビレット
6 形材
11 押出方向

Claims (3)

  1. α+β型チタン合金熱間押出形材であって、質量%で、Al:5.5〜6.8%、V:3.5〜4.5%、Fe:0.05〜0.30%を含有すると共に、C:0.08%以下、N:0.05%以下、O:0.20%以下、H:0.015%以下であり、その他の元素が0.10%以下で且つそれら元素の合計が0.40%以下であり、残部がTiおよび不可避的不純物であり、押出形材の長手方向に垂直な断面の組織は針状組織であり、さらに、前記針状組織は、Al濃度CAlが押出形材全体における含有量C Alに対し1.06×C Al以上、かつ、V濃度Cが押出形材全体における含有量C に対し0.6×C 以下であるアスペクト比10以下、外接長方形の長径と短径の2軸幾何平均径が5〜30μmの偏析部が分散していることを特徴とするα+β型チタン合金熱間押出形材。
  2. 前記分散した偏析部の合計面積は、断面積全体の10%以上を占め、前記分散した各偏析部のAl最高濃度Cmax Alが1.1×C Al以上、かつ、V最低濃度Cmin が0.5×C 以下であることを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金熱間押出形材。
  3. α+β温度域で面積減少率50%以上の加工を行った請求項1に記載の成分を有するビレットを、β変態点温度をTβとし、ビレット表面および中心の温度を(Tβ−500)〜(Tβ−300)℃に、表面と中心の温度差が50℃以下になるように予加熱し、その後、通電加熱もしくは誘導加熱により1.5℃/s以上の昇温速度で(Tβ−200)〜(Tβ−50)℃に加熱し、その後、押出加工を施すことにより成形すると同時に、押出加工の加工熱により加工終了時点でビレット温度をTβ〜(Tβ+80)℃に加熱し、押出加工後に室温まで放冷することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のα+β型チタン合金熱間押出形材の製造方法。
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