JP2018050639A - 害虫誘引阻止シート - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い防虫効果が得られると共に、人の視覚性を阻害しない色相を有し、高い光透過率を備えた害虫誘引阻止シートを提供する。【解決手段】 黄系統色材と、該黄系統色材と補色関係をなす青系統色材とを含有するように、透光性フィルムを有する害虫誘引阻止シート10を構成する。【選択図】 図1
Description
本発明は、害虫が感応性を示す波長域の光が外部に透光するのを遮断して、光による害虫の積極的な飛来を阻止する害虫誘引阻止シートに関するものである。
一般に、昆虫が光の刺激に対して飛来する走光性を有することは既に知られており、昆虫の走光性の波長特性は、図14に示すように、360〜380nmを中心として、200〜600nmの波長域にあり、この波長域の光に感応して活動する昆虫が多い。このため、従来、害虫対策方法として、夜間の光の波長をコントロールする方法が知られている。すなわち、昆虫の感応する波長域の光を遮断する方法である。
このような波長域を遮断するものとしては、特許文献1によるシートが知られている。この種のシートは、380nm以下の波長の光を実質的に阻止して、400〜480nm以上の波長の光透過率を30%以下とし、520nm以上の波長の光透過率を50%以上とし、580nm以上の波長の光透過は実質的に阻止しないことを特徴とするシートである。ここで、防虫効果を有しながら、人間の視覚性を確保するために、人間の可視光線領域の400〜480nmの波長の光透過率を30%以下とし、さらに520nm以上の波長の光透過率を50%以上としておく必要があると考えられていた。
これに対して、特許文献2には、光学的に透明なまでに微粉砕された黄,オレンジ,青及び黒色顔料から成る群より選ばれる一種以上の顔料を主剤とする合成樹脂カラーチップと、紫外線吸収剤を基材中に含み、波長200〜420nmでは10%以下、波長420〜480nmでは30%以下及び波長480nm以上では20〜50%の光透過率を有する害虫誘引阻止材が開示されている。なお、上述のような昆虫の走光特性や色に対する誘引性については、以下の非特許文献により開示されている。
しかしながら、特許文献1による黄・オレンジ系の色のフィルムやシート等によっては、その色相により、建屋の出入り口の間仕切り等に使用した場合には、日中に建屋外部の昆虫を建屋に誘引してしまう。これは、黄色の反射光が昆虫を誘引するということに起因するものである。
一方、特許文献2による害虫誘引阻止材は、480nm以上の波長においても、光透過率を調整し、なおかつ人間の視覚性を阻害しない程度の明るさとすることによって、昆虫の誘引を大幅に抑制するようにして、さらに防虫効果を高めたものである。この場合、種々の色相で商品化が行なわれたが、人の視覚性を阻害しないという観点からは、グリーン系の色相のものが市場で定着している。このようなグリーン系の色相のフィルムやシート等は、高い防虫効果が得られるものの、可視光においてより透過性を向上させたいという課題は引き続き残っている。
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成により、高い防虫効果が得られると共に、人の視覚性を阻害しない色相を有し、高い光透過率を備えた害虫誘引阻止シートを提供することを目的としている。
上記目的は、本発明の第一の構成によれば、黄系統色材を含み建屋の屋内側の面を構成する第一層の透光性フィルムと、青系統色材を含み建屋の屋外側の面を構成する第二層の透光性フィルムと、を積層して成る、建屋の出入口閉鎖用の害虫誘引阻止シートにより、達成される。
本発明による害虫誘引阻止材は、好ましくは、前記第一層の透光性フィルムが、450nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ550nmを越える波長域における光透過率が80%以上である。
本発明による害虫誘引阻止材は、好ましくは、前記第二層の透光性フィルムが、350nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ400nmを越える波長域における光透過率が50%以上である。
本発明による害虫誘引阻止材は、好ましくは、前記第一層の透光性フィルム及び前記第二層の透光性フィルムに挟まれて、基布層を有する。
上記構成によれば、黄・オレンジ等の黄系統色材による透過光の色を、これと補色関係にある青系統色材による補色光で打ち消すことにより、彩度の低い色相の光を形成することになり、高い防虫効果を得つつ、人間の視覚性を阻害することがない。さらに、日中においても、本害虫誘引阻止材に反射した光は、黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる色相を有することになるので、害虫の誘引が抑制される。黄系統色材を含む第一層と、青系統色材を含む第二層と、を積層して成る場合には、これらを積層することにより、効果的な害虫誘引阻止シートが得られる。
第二層を屋外側の面に備える場合には、屋外側に青系統色材を含む第二層が配置されることになり、黄系統色材を含む第一層が屋外側に露出しない。従って、黄系統色材による黄・オレンジ等の色相が外部から見えないので、日中に害虫が黄系統の色相に誘引されることがなく、建屋外部に害虫のいない環境をつくる。これにより、例えば本害虫誘引阻止シートが設置される建屋の出入り口等の開閉時に、出入り口等から害虫が建屋内に侵入することが効果的に抑制される。
また、黄系統色材を含む第一層が屋内側に向いているので、例えば建屋内では、黄・オレンジ等の黄系統の色相の反射光に誘引される習性のある害虫は、建屋内部の奥に向かって進むようなことがなく、出入り口等に誘導されることになる。さらに、黄系統色材による視覚的に明るい光、すなわち、人が明るく感じる555nm付近の波長の光が屋内側に反射されることになり、建屋内の明るさが向上することになる。
黄系統色材と青系統色材とを単一層内に混合状態で含有している場合には、黄・オレンジ等の黄系統の色と、その補色である青系統の色の染料や透明性の高い顔料を適宜に配合して形成することによって、各色素を分散して含有する単一層から構成される。従って、製造工程が単純化されると共に、より低コストで製造され得る。
黄系統色材が、450nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ550nmを越える波長域における光透過率が80%以上である場合には、青系統色材と組み合わせた状態でも可視光線を含む450nm以下の波長域の光を大幅に遮断することにより、高い防虫効果を得ることができる。また、550nmを越える波長域の光を大部分透過することによって、従来の害虫誘引阻止材よりも透過率が高くなり、明るい視界が得られるので、人間の視覚性を阻害することがない。
青系統色材が、350nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ400nmを越える波長域における光透過率が50%以上である場合には、黄系統色材と組み合わせた状態でも紫外線を含む350nm以下の波長域の光が大幅に遮断されることにより、人間の視覚に対する紫外線による悪影響を排除することができる。また、黄系統色材と同様に、550nmを越える波長域の光をある程度透過することによって、従来の害虫誘引阻止材よりも透過率が高くなり、明るい視界が得られるので、人間の視覚性を阻害することがない。
透光性フィルムに挟まれて、基布層を有する場合には、基布の色やグリッドの大きさにより、外光の反射を適切にコントロールすることが可能となる。
このようにして、本発明によれば、高い防虫効果が得られると共に、人の視覚性を阻害しない色相を有し、光透過性に優れた害虫誘引阻止シートを提供することができる。
図1は、本発明による害虫誘引阻止シートの第一の実施形態を示している。図1において、害虫誘引阻止シート10は、二層構造の透光性フィルムから成り、順次に積層された第一層11及び第二層12から構成されている。ここで、透光性フィルムは、例えば軟質塩化ビニル樹脂から構成されており、後述するように色材を混入した状態で適宜な厚さに成形される。
第一層11は、黄系統色材を含んだ透光性フィルムである。このような黄系統色材を含んだ透光性フィルムは、色素として例えば黄・オレンジ等の黄系統の色の染料や透明性の高い顔料を配合し、透光性フィルムの材料に混入することにより、製造される。
具体的には、黄系統色材は、従来公知の黄・オレンジ等の黄系統色材を使用することによって、450nm以下の波長域の光を遮断することが可能である。さらに、公知の如く、黄色よりもオレンジ色の色材を使用することにより、また色材の濃度を濃く調整することによって、450nm付近の波長域における光透過率をより低く設定することができる。尚、上記光学特性を有していれば、市販の黄系統に着色された透光性フィルムを利用することも可能である。
このような第一層11の試作サンプルS1は、例えば以下に示す組成より構成されており、図2に示す光学特性を有している。図2に示すように、第一層11の試作サンプルS1は、450nm以下の波長域における光透過率が5%以下であり、且つ550nmを越える波長域における光透過率が80%以上である。
S1:黄系統色材を含有する透光性フィルム 0.3mm組成
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
イソインドリノン系黄色顔料 0.4%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
イソインドリノン系黄色顔料 0.4%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
第二層12は、青系統色材を含んだ透光性フィルムである。このような青系統色材を含んだ透光性フィルムは、例えばブルー・バイオレット等の青系統の色の染料や透明性の高い顔料を配合し、透光性フィルムの材料に混入することにより、製造される。尚、上記光学特性を有していれば、市販の青系統に着色された透光性フィルムを利用することも可能である。
このような第二層12の試作サンプルS2は、例えば以下に示す組成により構成されており、図3に示す光学特性を有している。図3に示すように、第二層12の試作サンプルS2は、350nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ400nmを越える波長域における光透過率が50%以上であり、波長600nm付近で60%程度の光透過率を有している。
S2:青系統色材を含有する透光性フィルム 0.3mm組成
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
銅フタロシアニン系青色顔料 0.04%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
銅フタロシアニン系青色顔料 0.04%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
そして、このようにして製造された第一層11及び第二層12が、接着等により互いに積層され固定されることにより、害虫誘引阻止材10が完成する。
本実施形態による害虫誘引阻止材10は、このように構成されており、以下のように作用する。害虫誘引阻止材10は、第一層11と第二層12が互いに積層されていることにより、透過光は、第一層11及び第二層12の光学特性を重ねた光学特性を備えることになる。即ち、害虫誘引阻止材10に入射した光は、第一層11による黄・オレンジ等の黄系統の色相を、第二層12による青系統の色相と掛け合わせ、相互の補色作用によって打ち消し合うことにより、彩度の低い色相を形成して、害虫誘引阻止材10を透過する。その際、入射光は、第一層11により、450nm以下の波長域の光が大幅に遮断される。同時に、入射光は、第一層11により550nmを越える波長域で80%以上透過し、且つ第二層12により400nmを超える波長域で50%以上透過することにより、人間の視覚性を阻害せずに、明るい視界を提供する。
具体的には、前述した試作サンプルS1と、試作サンプルS2を組み合わせて、試作サンプルS3を作製した。
すなわち、第一層11として試作サンプルS1を、第二層12として試作サンプルS2を使用し、これらを貼り合わせることにより、試作サンプルS3としての害虫誘引阻止材10を作製した。この試作サンプルS3は、図4に示す光透過率を有し、また図5に示す光反射率を有している。
透過光に関しては、図4に示すように、450nm以下の波長域で5%以下の光透過率であることから、十分に高い防虫効率が得られると共に、500nmを越える波長域で、50%以上の光透過率であることから、人間の視覚性を阻害することがないことが確認される。
また、反射光に関しては、人間の目で見ても両面の色相が異なることは容易に確認できるが、図5に示すように、第一層11側の表面では符号Aで示す特性曲線が得られ、また第二層12側の表面では、符号Bで示す特性曲線が得られた。この場合、特に第二層12としての試作サンプルS2側の面において、黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる波長であることが分かる。従って、日中に害虫を誘引してしまう黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる色相を有することになるので、害虫の誘引が抑制される。
次に、このような害虫誘引阻止材10は、設置の際に、以下のようにして設置することにより、防虫効果がより一層高められる。即ち、例えば図6に示すように、本害虫誘引阻止材10が、建屋20の出入り口21において、この出入り口21を閉鎖するようにカーテン状に吊り下げて設置され、建屋の出入口閉鎖用建具を構成する。その際、青系統色材を含む第二層12が建屋20の屋外側を向くように、即ち黄系統色材を含む第一層11が外側に露出しないように、害虫誘引阻止材10が設置される。
このように設置された建屋の出入口閉鎖用建具によれば、建屋20内から害虫誘引阻止材10を介して外部に漏れ出る光は、害虫誘引阻止材10の光学特性に基づいて、450nm以下の波長域の光が5%以下となり、害虫誘引の原因となる波長域の光が殆ど含まれないので、特に夜間において、建屋から漏れ出る光に害虫が誘引されることを大幅に抑制できるため、建屋外部に害虫のいない環境をつくることができる。これにより、出入り口21から建屋20内に害虫が侵入することも抑制され、高い防虫効果が得られることになる。また、550nmを越える波長域の光が50%以上あるため、十分な明るさが得られ、人間の視覚性を阻害するようなことがない。すなわち、建物外から建物内を視認することが容易である。
さらに、建屋20の出入り口21において、害虫誘引阻止材10の第二層12が外側に向いて設置されているので、害虫誘引阻止材10の外側面に反射する光は、黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる波長なので、日中に第二層12の反射光によって害虫が誘引されることがなくなる。
また、建屋20の出入り口21において、害虫誘引阻止材10の第一層11が内側に向いて配置されていることによって、害虫誘引阻止材10の内側面で反射する光は、黄・オレンジ等の黄系統の波長域を含むことになり、建屋20内に侵入した害虫は、出入り口21に向かって誘引され、建屋20内の奥深く侵入することが抑制され得る。さらに、この反射光により建屋20内が明るく感じられるため、人間の視覚性を高めることになる。
図7は、本発明による建屋の出入口閉鎖用建具を構成する害虫誘引阻止材の第二の実施形態の構成を示している。図7において、害虫誘引阻止材30は、一層構造の透光性フィルムから成り、黄系統色材及び青系統色材を混合状態で含んだ透光性フィルムである。ここで、黄系統色材及び青系統色材は、第一の実施形態による害虫誘引阻止材10における第一層11及び第二層12にそれぞれ混入される黄系統色材及び青系統色材とほぼ同じである。
このような害虫誘引阻止材30の試作サンプルS4は、例えば以下に示す組成により構成されており、その光透過率及び光反射率は、図8及び図9に示すようになっている。
S4:第二の実施形態(一層構造の透光性フィルム) 0.6mm組成
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
イソインドリノン系黄色顔料 0.2%重量部
銅フタロシアニン系青色顔料 0.02%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
ポリ塩化ビニル樹脂 100%重量部
フタル酸系可塑剤 40%重量部
Ba/Zn系安定剤 2.0%重量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.2%重量部
イソインドリノン系黄色顔料 0.2%重量部
銅フタロシアニン系青色顔料 0.02%重量部
アクリル系加工助剤 1.0%重量部
害虫誘引阻止シート30の試作サンプルS4は、透過光に関しては、図8に示すように、450nm以下の波長域で5%以下の光透過率であることから、十分に高い防虫効率が得られると共に、500nmを越える波長域で、50%以上の光透過率であることから、人間の視覚性を阻害することがないことが確認される。この光透過率特性は、図4に示した試作サンプルS3とほぼ同様である。
また、反射光に関しては、図9に示すように、450nm以下の波長域で5%程度の光反射率であると共に、500nmを越える波長域で、12%程度の光反射率である。これを図5と比較すると、500nm以下は黄、500nm以上は青に近いことが分かる。このことから、黄系統色の色相でないことが分かる。よって、日中、害虫の誘引が抑制される。
このような構成の害虫誘引阻止シート30によれば、透過光に関しては図1に示した害虫誘引阻止シート10と同様に作用すると共に、一層構造であることから、貼り合わせ工程も必要なく、工程が簡略化されると共に、短時間で製造可能となり、容易に且つ低コストで製造され得る。
上述した第一の実施形態の害虫誘引阻止シートにおいて、第一層と第二層との間に補強用の網目状の布(基布)が挟まれて構成されてもよい。このような場合にも本発明の効果が発揮されることは明らかであり、特に、網目状の部分は光を透過せず反射するので、上述の説明のうち、透過光は抑えられ、反射に関する効果が強くなる。
具体的には、前述した試作サンプルS1と、試作サンプルS2との間に補強用の網目状の布(基布)を挟み込むことで、基布層を設け、試作サンプルS5を作製した。この基布の色は白に近いグレーである。すなわち、第一層11として試作サンプルS1を、第二層12として試作サンプルS2を使用し、これらの間に補強用の網目状の布(基布)を挟み込んで、貼り合わせることにより、試作サンプルS5としての害虫誘引阻止シート10を作製した。この試作サンプルS5は、図10に示す光透過率を有し、また図11に示す光反射率を有している。
透過光に関しては、図10に示すように、450nm以下の波長域で5%以下の光透過率であることから、十分に高い防虫効率が得られると共に、500nmを越える波長域で、40%以上の光透過率であることから、図4に示す試作サンプルS3に比べると透過率が下がるものの、人間の視覚性を阻害することがないことが確認される。
また、反射光に関しては、試作サンプルS3と同様、人間の目で見ても両面の色相が異なることは容易に確認できると共に、図11に示すように、第一層11側の表面では符号Cで示す特性曲線が得られ、また第二層12側の表面では、符号Dで示す特性曲線が得られた。この場合、試作サンプルS3と同様、特に第二層12としての試作サンプルS2側の面において、黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる波長であることが分かる。従って、日中に害虫を誘引してしまう黄・オレンジ等の黄系統の色相とは異なる色相を有することになるので、害虫の誘引が抑制される。また、両面共に、図5に示す試作サンプルS3に比べると反射率が上がることがわかる。
さらに、上述した第二の実施形態の害虫誘引阻止材において、一層構造の透光性フィルムの厚み内に補強用の網目状の布(基布)が配置されて構成されてもよい。また、上述した第二の実施形態の害虫誘引阻止シートを積層して二層構造とし、二層の間に補強用の網目状の布(基布)を挟んで構成してもよい。このような場合にも本発明の効果が発揮されることは明らかであり、特に、網目状の部分は光を透過せず反射するので、上述の説明のうち、透過光は抑えられ、反射に関する効果が強くなる。
具体的には、前述した試作サンプルS4の厚みを半分(0.3mm)としたフィルム二枚を積層した二層構造の透光性フィルムの間に補強用の網目状の布(基布)を挟み込むことで、基布層を設け、試作サンプルS6を作製した。この基布の色は白に近いグレーである。この試作サンプルS6は、図12に示す光透過率を有し、また図13に示す光反射率を有している。
透過光に関しては、図12に示すように、450nm以下の波長域で5%以下の光透過率であることから、十分に高い防虫効率が得られると共に、500nmを越える波長域で、40%以上の光透過率であることから、試作サンプルS5と同様、図8に示す試作サンプルS4に比べると透過率が下がるものの、人間の視覚性を阻害することがないことが確認される。
また、反射光に関しては、図13に示すように、450nm以下の波長域で5%程度の光反射率であると共に、500nmを越える波長域で、15%程度の光反射率であることから、図9に示す試作サンプルS4に比べると反射率が上がることが分かる。これを図11と比較すると、500nm以下は黄、500nm以上は青に近いことが分かる。このことから、黄系統色の色相でないことが分かる。よって、日中、害虫の誘引が抑制される。
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、上述した実施形態においては、例として試作サンプルS1〜S4について説明したが、これに限らず、光透過率に関して、450nm以下の波長域の光を大幅にカットし、且つ550nmを越える波長域の光を適度にカットすればよい。また、シートの素材はアクリルやPET、ポリカーボネートなどであってもよい。基布の色について、白に近いグレーのみならず、白、黒、黄、緑等、様々なものを使用することができる。
上述した実施形態においては、図6に関して、害虫誘引阻止シート10は、建屋20の出入り口21にカーテンのように吊り下げられて設置されているが、これに限らず、例えばフィルム,シート状の害虫誘引阻止シート10を、建屋20の窓部等に設けられたガラスの表面に貼り付け等により配置するようにしてもよいことは明らかである。また第一層及び第二層が接着されていなくても、溶着されていたり、別体となって間隔をあけて設置されていたりしていても良い。
以上述べたように、本発明によれば、簡単な構成により、高い防虫効果が得られると共に、人の視覚性を阻害しない色相を有し、高い光透過性を備えた、極めて優れた害虫誘引阻止シートが提供される。
10害虫誘引阻止シート
11第一層
12第二層
20建屋
21出入り口
11第一層
12第二層
20建屋
21出入り口
Claims (4)
- 黄系統色材を含み建屋の屋内側の面を構成する第一層の透光性フィルムと、
青系統色材を含み建屋の屋外側の面を構成する第二層の透光性フィルムと、を積層して成る、
建屋の出入口閉鎖用の害虫誘引阻止シート。 - 前記第一層の透光性フィルムは、450nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ550nmを越える波長域における光透過率が80%以上である、請求項1に記載の害虫誘引阻止シート。
- 前記第二層の透光性フィルムは、350nm以下の波長域における光透過率が5%以下で且つ400nmを越える波長域における光透過率が50%以上である、請求項1または2に記載の害虫誘引阻止シート。
- 前記第一層の透光性フィルム及び前記第二層の透光性フィルムに挟まれて、基布層を有する、請求項2から3のいずれかに記載の害虫誘引阻止シート。
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