以下、電力変換装置の一実施形態について説明する。
本実施形態では、電力変換装置は非接触電力伝送装置の送電機器に適用されている。すなわち、電力変換装置は、非接触電力伝送装置の一部を構成している。このため、まず非接触電力伝送装置の概要について説明し、その後電力変換装置について説明する。
図1に示すように、非接触電力伝送装置10は、非接触で電力伝送が可能な送電機器11及び受電機器21を備えている。送電機器11は例えば地上に設けられており、受電機器21は例えば車両に搭載されている。送電機器11は、地上側機器とも1次側機器とも言える。受電機器21は、車両側機器とも2次側機器とも言える。
送電機器11は、交流電力を出力可能な電力変換装置12を備えている。電力変換装置12は、例えば外部電源としての系統電源から供給される外部電力としての系統電力を、所望の交流電力、詳細には非接触の電力伝送に適した周波数の交流電力に変換する交流−交流変換を行う。
電力変換装置12から出力された交流電力は、非接触で受電機器21に伝送され、受電機器21に設けられた負荷22に供給される。詳細には、非接触電力伝送装置10は、送電機器11及び受電機器21間の電力伝送を行うものとして、送電機器11に設けられた送電器13と、受電機器21に設けられた受電器23とを備えている。電力変換装置12から出力された交流電力は、送電器13に入力される。
送電器13及び受電器23は磁場共鳴可能に構成されている。詳細には、送電器13は、例えば直列に接続された1次側コイル13a及び1次側コンデンサ13bを含む共振回路を有している。受電器23は、例えば直列に接続された2次側コイル23a及び2次側コンデンサ23bを含む共振回路を有している。両共振回路の共振周波数は同一に設定されている。
かかる構成によれば、送電器13(詳細には1次側コイル13a)及び受電器23(詳細には2次側コイル23a)の相対位置が磁場共鳴可能な位置にある状況において、交流電力が送電器13に入力された場合、送電器13と受電器23とが磁場共鳴する。これにより、受電器23は送電器13からのエネルギの一部を受け取る。すなわち、受電器23は、送電器13から交流電力を受電する。換言すれば、送電機器11は、交流電力が入力される1次側コイル13aを有し、2次側コイル23aを有する受電機器21の2次側コイル23aに非接触で交流電力を送電するものである。
負荷22は、例えば整流器と、車載用蓄電装置とを含む。受電器23によって受電された交流電力は、整流器によって整流されて、車載用蓄電装置に入力される。これにより、車載用蓄電装置の充電が行われる。
次に電力変換装置12について説明する。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置12は、系統電力を直流電力に変換するDC/AC変換回路31と、インバータ回路32と、フィルタ回路33と、電流センサ34と、マイコン35と、を備えている。
DC/AC変換回路31は、例えば、力率を改善させつつ系統電力を直流電力に変換するPFC回路を有している。DC/AC変換回路31によって、系統電力から、所望の電圧(詳細には非接触電力伝送に適した電圧)の直流電力が生成される。なお、DC/AC変換回路31は、系統電力を直流電力に変換することができれば、上記構成に限られない。例えばDC/AC変換回路31は、単に整流回路であってもよいし、PFC回路と、PFC回路によって変換された直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータとを有する構成でもよい。
DC/AC変換回路31は、出力端31a,31bを有しており、当該出力端31a,31bから、変換された直流電力を出力する。なお、本実施形態では、第1出力端31aが高圧側であり、第2出力端31bが低圧側である。すなわち、DC/AC変換回路31の第1出力端31aは、正(+)の出力端であり、DC/AC変換回路31の第2出力端31bは、負(−)の出力端である。
インバータ回路32は、DC/AC変換回路31の出力端31a,31bに接続された入力端32a,32bを備えている。これにより、DC/AC変換回路31によって変換された直流電力がインバータ回路32に入力される。この場合、第1出力端31aに接続された第1入力端32aが高圧側であり、第2出力端31bに接続された第2入力端32bが低圧側となる。つまり、インバータ回路32の第1入力端32aは、正(+)の入力端であり、インバータ回路32の第2入力端32bは、負(−)の入力端である。
インバータ回路32は、DC/AC変換回路31から出力された直流電力を交流電力に変換し、その変換された交流電力を、出力端32c,32dを介して、送電器13(換言すれば1次側コイル13a)に向けて出力する。
フィルタ回路33は、インバータ回路32と送電器13との間に設けられている。フィルタ回路33は、例えばインバータ回路32にて発生したノイズを低減する。これにより、ノイズが低減された交流電力が送電器13に入力されるため、電力変換装置12にて発生したノイズが受電機器21に伝達されることを抑制できる。
また、インバータ回路32が矩形波電圧を出力する構成においては、フィルタ回路33は、インバータ回路32から出力される矩形波電圧の高調波成分を除去することにより、正弦波を生成する。これにより、正弦波に近い交流電圧が送電器13に入力されることになる。
電流センサ(換言すれば電流検出部)34は、インバータ回路32の出力電流Ioutを検出する。本実施形態では、電流センサ34は、インバータ回路32の両出力端32c,32dから出力される出力電流Ioutを検出し、その検出結果をマイコン35に出力する。本実施形態の電流センサ34は、出力電流Ioutの検出結果を、アナログ信号としてマイコン35に出力する。
マイコン35は、例えば、1つ以上のハードウェア回路と、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)とを含む。プロセッサは、例えばCPUとメモリとを含み、メモリは、例えば各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
マイコン35は、少なくともインバータ回路32を制御するものであり、本実施形態ではDC/AC変換回路31とインバータ回路32とを制御する。マイコン35は、複数のポートPo1〜Po5を有しており、複数のポートPo1〜Po5を介して、インバータ回路32及び電流センサ34等といった各種部品と電気的に接続されている。これにより、マイコン35とインバータ回路32等との間で信号のやり取りが可能となっている。
図1に示すように、送電機器11は、温度センサ36を備えている。温度センサ36は、例えば、DC/AC変換回路31、インバータ回路32、フィルタ回路33及び送電器13(1次側コイル13a)の少なくとも1つの温度を検出し、その検出結果をアナログ信号としてマイコン35に出力する。
なお、温度センサ36は、検出対象が複数ある場合には、複数設けられている。すなわち、本実施形態では、温度センサ36は、1又は複数設けられている。また、本実施形態では、温度センサ36は、電力変換装置12とは別に設けられている。
受電機器21は、マイコン35と無線通信可能な受電側コントローラ24を備えている。受電側コントローラ24は、マイコン35に対して各種指令を送信する。マイコン35は、上記各種指令に基づいて、DC/AC変換回路31及びインバータ回路32を制御する。
ちなみに、図2等においては、フィルタ回路33から負荷22までを包括して電源負荷40として示す。電源負荷40は、等価的には、両コイル13a,23a等を含む誘導性負荷41と、両コンデンサ13b,23b等を含む容量性負荷42とを有している。誘導性負荷41は、両コイル13a,23a間の相互インダクタンス成分を含む。
次に、インバータ回路32の構成、及び、マイコン35等について説明する。
図2に示すように、インバータ回路32は、固定相ハーフブリッジ回路51とシフト相ハーフブリッジ回路52とを有するフルブリッジ回路50を備えている。固定相ハーフブリッジ回路51とシフト相ハーフブリッジ回路52とは並列に接続されている。本実施形態では、固定相ハーフブリッジ回路51が「第1ハーフブリッジ回路」に対応し、シフト相ハーフブリッジ回路52が「第2ハーフブリッジ回路」に対応する。
固定相ハーフブリッジ回路51は、互いに直列に接続された第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2それぞれに並列に接続されている第1還流ダイオードD1及び第2還流ダイオードD2とを有している。
シフト相ハーフブリッジ回路52は、互いに直列に接続された第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4と、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4それぞれに並列に接続されている第3還流ダイオードD3及び第4還流ダイオードD4とを有している。
各スイッチング素子Q1〜Q4は、例えばn型のパワーMOSFETで構成されている。第1スイッチング素子Q1のドレインは、第1入力端32aに接続されており、第2スイッチング素子Q2のソースは、第2入力端32bに接続されている。第1スイッチング素子Q1のソースと、第2スイッチング素子Q2のドレインとは、固定相接続線LN1によって接続されている。固定相接続線LN1が「第1ハーフブリッジ回路の接続線」に対応する。
第3スイッチング素子Q3のドレインは、第1入力端32aに接続されており、第4スイッチング素子Q4のソースは、第2入力端32bに接続されている。第3スイッチング素子Q3のソースと、第4スイッチング素子Q4のドレインとは、シフト相接続線LN2によって接続されている。これにより、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の接続体、及び、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4の接続体に対して直流電力が入力される。シフト相接続線LN2が「第2ハーフブリッジ回路の接続線」に対応する。
還流ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4のソース−ドレイン間に対して逆並列に接続されている。詳細には、還流ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4のソースからドレインに向かう方向が順方向となるように設けられている。
なお、本実施形態では、還流ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4の寄生ダイオード(ボディダイオード)である。但し、これに限られず、還流ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4とは別に専用に設けられている構成でもよい。
固定相接続線LN1は、インバータ回路32の第1出力端32cに接続されており、インバータ回路32の第1出力端32cは、フィルタ回路33を介して、送電器13の第1入力端(換言すれば1次側コイル13aの第1端)に接続されている。シフト相接続線LN2は、インバータ回路32の第2出力端32dに接続されており、当該インバータ回路32の第2出力端32dは、フィルタ回路33を介して、送電器13の第2入力端(換言すれば1次側コイル13aの第2端)に接続されている。
かかる構成によれば、両スイッチング素子Q1,Q2が交互にON/OFFし、且つ、両スイッチング素子Q3,Q4が交互にON/OFFすることによって、インバータ回路32の入力端32a,32bから入力される直流電力が交流電力に変換される。そして、その変換された交流電力が、インバータ回路32の両出力端32c,32dから出力され、送電器13に入力される。
図2に示すように、インバータ回路32は、スイッチング素子Q1〜Q4を駆動させるゲートドライバ61〜64を備えている。ゲートドライバ61〜64は、スイッチング素子Q1〜Q4のゲートに接続されている。ゲートドライバ61〜64は、マイコン35からの信号に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4がON状態となるON信号又はスイッチング素子Q1〜Q4がOFF状態となるOFF信号を出力する。詳細には、ゲートドライバ61〜64は、マイコン35からHI信号が入力された場合にはON信号を出力する一方、マイコン35からLOW信号が入力された場合にはOFF信号を出力する。
なお、ON信号とは、スイッチング素子Q1〜Q4の閾値電圧以上の電圧を有する信号であり、OFF信号とは、スイッチング素子Q1〜Q4の閾値電圧未満の電圧を有する信号である。
本実施形態では、マイコン35は、両ハーフブリッジ回路51,52をフェーズシフト方式で制御する。
詳細には、図2に示すように、マイコン35は、固定相ハーフブリッジ回路51の制御に用いられる固定相クロック信号CLK1を出力する固定相クロック回路71と、固定相クロック信号CLK1が出力される固定相出力ポートPo1とを備えている。固定相クロック信号CLK1、固定相クロック回路71、固定相出力ポートPo1がそれぞれ、「第1クロック信号」、「第1クロック回路」、「第1出力ポート」に対応する。
固定相クロック信号CLK1は、予め定められた周波数(好ましくは非接触の電力伝送に適した周波数)の矩形波のパルス信号であり、詳細には予め定められた周期でHI信号とLOW信号とに交互に切り替わる信号である。
固定相出力ポートPo1は、第1ゲートドライバ61に接続されているとともに、インバータ回路32に設けられた固定相NOT回路73を介して第2ゲートドライバ62に接続されている。これにより、第1ゲートドライバ61には、固定相クロック信号CLK1がそのまま入力される一方、第2ゲートドライバ62には、固定相クロック信号CLK1の反転信号が入力される。したがって、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とのON/OFF関係は反転する。詳細には、固定相クロック信号CLK1がLOW信号である場合、第1スイッチング素子Q1はOFF状態となり、第2スイッチング素子Q2がON状態となる一方、固定相クロック信号CLK1がHI信号である場合、第1スイッチング素子Q1はON状態となり、第2スイッチング素子Q2がOFF状態となる。すなわち、第1スイッチング素子Q1のON/OFF波形と、第2スイッチング素子Q2のON/OFF波形とは逆位相となっている。
同様に、マイコン35は、シフト相ハーフブリッジ回路52の制御に用いられるシフト相クロック信号CLK2を出力するシフト相クロック回路72と、シフト相クロック信号CLK2が出力されるシフト相出力ポートPo2とを備えている。シフト相クロック信号CLK2、シフト相クロック回路72、シフト相出力ポートPo2がそれぞれ、「第2クロック信号」、「第2クロック回路」、「第2出力ポート」に対応する。
シフト相クロック信号CLK2は、固定相クロック信号CLK1と同一周波数の矩形波のパルス信号であり、詳細には固定相クロック信号CLK1と同一周期でHI信号とLOW信号とに交互に切り替わる信号である。
シフト相出力ポートPo2は、第3ゲートドライバ63に接続されているとともに、インバータ回路32に設けられたシフト相NOT回路74を介して第4ゲートドライバ64に接続されている。これにより、第3ゲートドライバ63には、シフト相クロック信号CLK2がそのまま入力される一方、第4ゲートドライバ64には、シフト相クロック信号CLK2の反転信号が入力される。したがって、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とのON/OFF関係は反転する。
以上の通り、マイコン35は、両クロック信号CLK1,CLK2を出力することにより、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を交互にON/OFFさせるとともに、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4を交互にON/OFFさせることができる。
マイコン35は、固定相クロック信号CLK1に対するシフト相クロック信号CLK2の位相差δθを制御(換言すれば変更)することにより、出力電流Ioutを制御する電流制御部75を備えている。
図3(a)及び図3(b)に示すように、電流制御部75は、固定相クロック信号CLK1に対してシフト相クロック信号CLK2が位相差δθの分だけ遅れた状態で両クロック信号CLK1,CLK2が出力されるように両クロック回路71,72を制御する。
かかる構成によれば、図3(c)に示すように、インバータ回路32の出力電圧Voutの波形は、0Vとなる期間を介して、正電圧と負電圧とに交互に切り替わる矩形波となる。
詳細には、両クロック信号CLK1,CLK2がLOW信号である場合、又は、両クロック信号CLK1,CLK2がHI信号である場合、出力電圧Voutは0Vとなる。
固定相クロック信号CLK1がHI信号、且つ、シフト相クロック信号CLK2がLOW信号である場合、すなわち第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がON状態、且つ、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がOFF状態である場合、出力電圧Voutは正電圧となる。
一方、固定相クロック信号CLK1がLOW信号、且つ、シフト相クロック信号CLK2がHI信号である場合、すなわち第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がON状態、且つ、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がOFF状態である場合、出力電圧Voutは負電圧となる。
上記のような出力電圧Voutが電源負荷40に印加されることにより、電源負荷40に出力電流Ioutが流れる(図2、図3(e)及び図3(f)参照)。
ここで、図2の矢印Aに示すように、インバータ回路32の第1出力端32cから、電源負荷40を通って、第2出力端32dに向かう出力電流Ioutを正とする。一方、図2の矢印Bに示すように、インバータ回路32の第2出力端32dから、電源負荷40を通って、第1出力端32cに向かう出力電流Ioutを負とする。
かかる構成においては、正電圧期間及び負電圧期間は、位相差δθに応じて変動する。詳細には、正電圧期間及び負電圧期間は、位相差δθが小さくなるほど短くなり、位相差δθが大きくなるほど長くなる。そして、インバータ回路32の出力電流Ioutは、正電圧期間及び負電圧期間に応じて変動するものであり、詳細には正電圧期間及び負電圧期間が長くなるほど高くなり易い。このため、位相差δθを制御することにより、インバータ回路32から出力される交流電力の電力値を制御できる。
ちなみに、受電側コントローラ24は、非接触の電力伝送の条件が成立した場合に、マイコン35に対して送電要求指令と要求電力値を通知する。マイコン35は、送電要求指令を受信したことに基づいて、DC/AC変換回路31を動作させる。また、マイコン35は、要求電力値に対応する位相差δθに設定した両クロック信号CLK1,CLK2の出力を開始することにより、インバータ回路32を動作させる。これにより、インバータ回路32から、要求電力値に対応した交流電力の出力が開始される。
図3(a)〜図3(c)に示すように、両クロック信号CLK1,CLK2の立ち上がり及び立ち下がりと、出力電圧Voutの立ち上がり及び立ち下がりとは同期している。
詳細には、両クロック信号CLK1,CLK2がLOW信号である状況から固定相クロック信号CLK1が立ち上がる(すなわちLOW信号からHI信号に切り替わる)と、出力電圧Voutが正電圧に立ち上がる。そして、固定相クロック信号CLK1がHI信号、且つ、シフト相クロック信号CLK2がLOW信号である状況からシフト相クロック信号CLK2が立ち上がる(すなわちLOW信号からHI信号に切り替わる)と、出力電圧Voutが正電圧から0Vに立ち下がる。
また、両クロック信号CLK1,CLK2がHI信号である状況から固定相クロック信号CLK1が立ち下がる(すなわちHI信号からLOW信号に切り替わる)と、出力電圧Voutが負電圧に立ち上がる。そして、固定相クロック信号CLK1がLOW信号、且つ、シフト相クロック信号CLK2がHI信号である状況からシフト相クロック信号CLK2が立ち下がる(すなわちHI信号からLOW信号に切り替わる)と、出力電圧Voutが負電圧から0Vに立ち下がる。
ちなみに、固定相クロック信号CLK1の立ち上がり及び立ち下がりに基づいて、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON/OFFの切り替えが行われる。このため、固定相クロック信号CLK1の立ち上がり及び立ち下がり時は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON/OFFの切り替え時とも言える。
同様に、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がり及び立ち下がりに基づいて、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のON/OFFの切り替えが行われる。このため、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がり及び立ち下がり時は、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のON/OFFの切り替え時とも言える。
なお、実際には、各スイッチング素子Q1〜Q4のON/OFFの切り替え時には、デッドタイムが設定されている。詳細には、例えば第1ゲートドライバ61及び第2ゲートドライバ62は、マイコン35からの入力信号の切り替わりに同期して、デッドタイムに亘って第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2にOFF信号を出力し、その後切り替わった入力信号に対応した信号を出力する。第3ゲートドライバ63及び第4ゲートドライバ64についても同様である。
ここで、図3(e)及び図3(f)に示すように、固定相クロック信号CLK1の立ち上がり時における出力電流Ioutの瞬時値を第1ターンON電流Ia1とし、固定相クロック信号CLK1の立ち下がり時における出力電流Ioutの瞬時値を第2ターンON電流Ia2とする。
第1ターンON電流Ia1が「前記第1クロック信号の立ち上がりに対応する前記第1エッジに同期して取得された前記瞬時値」に対応し、第2ターンON電流Ia2が「前記第1クロック信号の立ち下がりに対応する前記第1エッジに同期して取得された前記瞬時値」に対応する。
両ターンON電流Ia1,Ia2は、出力電圧Voutの立ち上がり時(第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON/OFFの切り替え時)における出力電流Ioutの瞬時値である。詳細には、第1ターンON電流Ia1は、出力電圧Voutの正電圧への立ち上がり時における出力電流Ioutの瞬時値であり、第2ターンON電流Ia2は、出力電圧Voutの負電圧への立ち上がり時における出力電流Ioutの瞬時値である。
同様に、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がり時における出力電流Ioutの瞬時値を第1ターンOFF電流Ib1とし、シフト相クロック信号CLK2の立ち下がり時における出力電流Ioutの瞬時値を第2ターンOFF電流Ib2とする。
第1ターンOFF電流Ib1が「前記第2クロック信号の立ち上がりに対応する前記第2エッジに同期して取得された前記瞬時値」に対応し、第2ターンOFF電流Ib2が「前記第2クロック信号の立ち下がりに対応する前記第2エッジに同期して取得された前記瞬時値」に対応する。
両ターンOFF電流Ib1,Ib2は、出力電圧Voutの立ち下がり時(第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のON/OFFの切り替え時)における出力電流Ioutの瞬時値である。詳細には、第1ターンOFF電流Ib1は、出力電圧Voutの正電圧からの立ち下がり時における出力電流Ioutの瞬時値であり、第2ターンOFF電流Ib2は、出力電圧Voutの負電圧からの立ち下がり時における出力電流Ioutの瞬時値である。
ここで、1次側コイル13aと2次側コイル23aとの相対位置は、送電器13に対する車両の位置に応じて変動する。両コイル13a,23aの相対位置が変動すると、インバータ回路32に接続されている電源負荷40のインピーダンス、詳細には誘導性負荷41のインダクタンスが変動する。すると、出力電圧Voutに対する出力電流Ioutの位相θoutも変動する。このため、ターンON電流Ia1,Ia2及びターンOFF電流Ib1,Ib2は、「0」以外の値、すなわち正(+)又は負(−)の値となり得る。
ちなみに、本実施形態の電力変換装置12(インバータ回路32)は、インピーダンスが変動する電源負荷40に交流電力を出力するものと言え、電源負荷40のインピーダンスは、インバータ回路32の出力端から負荷22までのインピーダンスとも言える。
なお、両クロック信号CLK1,CLK2の位相差δθと区別するために、説明の便宜上、以降の説明においては、出力電圧Voutに対する出力電流Ioutの位相θoutを、単に出力位相θoutと言う。
かかる構成においては、上記インバータ回路32において、各スイッチング素子Q1〜Q4のON/OFFの切り替え時に、還流ダイオードD1〜D4のいずれかに対して逆バイアスが印加されることによりリカバリ電流Irが流れ、その結果電力損失(リカバリ損失)が生じる。当該リカバリ損失が過度に大きい場合、インバータ回路32の変換効率の低下や、各スイッチング素子Q1〜Q4にて過度な発熱が生じ得る。
ここで、本発明者らは、ターンON電流Ia1,Ia2又はターンOFF電流Ib1,Ib2とリカバリ損失との間に相関関係があることに着目した。詳細には、本発明者らは、逆バイアスが印加時における出力電流Iout(すなわちターンON電流Ia1,Ia2又はターンOFF電流Ib1,Ib2)が高くなるほどリカバリ損失が大きくなり易いことに着目した。
この点に鑑みて、本電力変換装置12は、ターンON電流Ia1,Ia2又はターンOFF電流Ib1,Ib2に基づいて、出力電流Ioutを制限するか否かの制限判定を行うように構成されている。
以下、電力変換装置12における制限判定に係る構成について説明する。
図2に示すように、マイコン35は、電流センサ34の検出結果が入力される電流検出入力ポートPo3と、電流検出入力ポートPo3から入力される電流センサ34の検出結果をアナログ/デジタル変換するAD変換回路76とを備えている。AD変換回路76によって変換されたデジタル信号は、電流制御部75に入力される。これにより、電流制御部75は、出力電流Ioutをデジタル信号として把握できる。したがって、電流制御部75は、出力電流Ioutの瞬時値と所定の閾値との比較等を行うことができる。
また、電力変換装置12は、両クロック信号CLK1,CLK2が入力されるものであって、当該両クロック信号CLK1,CLK2を用いてトリガ信号TSを生成するトリガ回路80を備えている。トリガ回路80が「トリガ信号生成部」に対応する。
図3(d)に示すように、トリガ信号TSは、周期的にHI信号とLOW信号とに切り替わるクロック信号である。トリガ信号TSは、固定相クロック信号CLK1の立ち上がり及び立ち下がりのうち少なくとも一方(本実施形態では立ち上がり)に同期した固定相エッジED1と、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がり及び立ち下がりのうち少なくとも一方(本実施形態では立ち上がり)に同期したシフト相エッジED2とを有している。すなわち、トリガ信号TSは、固定相クロック信号CLK1の立ち上がりに同期して立ち上がり、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がりに同期して立ち下がるクロック信号である。本実施形態では、固定相エッジED1が「第1エッジ」に対応し、シフト相エッジED2が「第2エッジ」に対応する。
なお、トリガ回路80の具体的な構成は、両クロック信号CLK1,CLK2を用いて上記のようなトリガ信号TSを出力することができれば任意である。
図2に示すように、マイコン35は、トリガ信号TSが入力されるトリガ入力ポートPo4を備えている。トリガ入力ポートPo4は1つである。トリガ入力ポートPo4は、トリガ回路80の出力に接続されている。電流制御部75には、トリガ入力ポートPo4を介して、トリガ信号TSが入力される。
電流制御部75は、インバータ回路32から交流電力の出力されている場合に、トリガ信号TSの立ち上がり及び立ち下がりに同期して、電流センサ34の検出結果、詳細にはAD変換回路76の変換結果を取得する。これにより、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1をデジタル信号として把握する。
電流制御部75は、把握された第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1に基づいて、出力電流Ioutの制限を行うか否かを判定し、出力電流Ioutの制限を行うと判定した場合には出力電流Ioutを制限する。
なお、出力電流Ioutが制限される状況とは、リカバリ損失が過度に大きい状況であるとも言える。このため、出力電流Ioutの制限を行うか否かの制限判定は、リカバリ損失が過度に大きい状況であるか否かの判定とも言える。第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1に基づいて、出力電流Ioutの制限判定を行う電流制御部75が「制限判定部」に対応する。
詳細には、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が予め定められた正の閾値電流Ith1以上であるか否かを判定する。正の閾値電流Ith1は、例えば、第1ターンON電流Ia1が正の閾値電流Ith1である状況下で発生するリカバリ電流Irが予め定められた許容値以内となるように設定されている。
なお、正の閾値電流Ith1は、例えば、位相差δθに応じて変動しない固定値である。但し、これに限られず、正の閾値電流Ith1は、現状の位相差δθによって想定される出力電流Ioutのピーク値に対応させて設定されてもよい。例えば、正の閾値電流Ith1は、上記ピーク値に対して1よりも小さい所定値(例えば「0.1〜0.5」等)を乗算した値でもよい。第1ターンON電流Ia1に基づいて出力電流Ioutの制限判定を行う電流制御部75が「第1制限判定部」に対応する。
電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正の閾値電流Ith1未満である場合には、出力電流Ioutを制限することなく、現状の位相差δθを維持する。
一方、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正の閾値電流Ith1以上である場合には、出力電流Ioutを制限すると判定し、制限動作を実行する。詳細には、電流制御部75は、位相差δθを小さくする、又は、両クロック信号CLK1,CLK2の出力を停止させる。すなわち、電流制御部75は、出力電流Ioutが低くなるように位相差δθを制御する、又は、インバータ回路32の動作を停止させるという制限を行う。
同様に、電流制御部75は、第1ターンOFF電流Ib1が予め定められた負の閾値電流Ith2以下であるか否かを判定する。負の閾値電流Ith2は、例えば、第1ターンOFF電流Ib1が負の閾値電流Ith2である状況下で発生するリカバリ電流Irが予め定められた許容値以内となるように設定されている。なお、負の閾値電流Ith2は、位相差δθに応じて変動しない固定値であってもよいし、位相差δθ等に応じて変動する変動値であってもよい。第1ターンOFF電流Ib1に基づいて出力電流Ioutの制限判定を行う電流制御部75が「第2制限判定部」に対応する。
電流制御部75は、第1ターンOFF電流Ib1が負の閾値電流Ith2よりも高い場合には、出力電流Ioutを制限することなく、現状の位相差δθを維持する。第1ターンOFF電流Ib1が負の閾値電流Ith2よりも高い場合とは、第1ターンOFF電流Ib1が正である場合、又は、第1ターンOFF電流Ib1が負であっても第1ターンOFF電流Ib1の絶対値が負の閾値電流Ith2の絶対値よりも小さい場合である。
一方、電流制御部75は、第1ターンOFF電流Ib1が負の閾値電流Ith2以下である場合には、出力電流Ioutを制限すると判定し、制限動作を実行する。詳細には、電流制御部75は、位相差δθを小さくする、又は、両クロック信号CLK1,CLK2の出力を停止させてインバータ回路32の動作を停止させる。
図2に示すように、本実施形態のマイコン35は、温度センサ36の検出結果が入力される温度検出入力ポートPo5と、温度検出入力ポートPo5から入力される温度センサ36の検出結果をアナログ/デジタル変換するAD変換回路77とを備えている。電流制御部75は、AD変換回路77から取得された温度情報に基づいて、出力電流Ioutを制限するか否かを判定する。出力電流Ioutの制限態様については、上述した通りである。
なお、送電機器11が温度センサ36を複数備えている構成においては、温度検出入力ポートPo5は複数設けられている。すなわち、温度検出入力ポートPo5は、温度センサ36の個数(換言すれば温度検出対象の個数)以上設けられている。
また、図示は省略するが、実際にはマイコン35は、複数のポートPo1〜Po5とは別に、DC/AC変換回路31に対して制御信号を出力するための出力ポートを1又は複数備えている。
次に図3〜図7を用いて、リカバリ損失が発生する状況及び本実施形態の作用について説明する。
まず、図3(e)に示すように、出力電圧Voutに対して出力電流Ioutが第1出力位相θout1だけずれている状況下、詳細には第1ターンON電流Ia1が正となる状況下において、固定相クロック信号CLK1が立ち上がる場合の前後における出力電流Ioutの流れについて図4及び図5を用いて説明する。
図4に示すように、固定相クロック信号CLK1が立ち上がる直前の場合(Q2,Q4:ON、且つ、Q1,Q3:OFF)、第2還流ダイオードD2に順方向の出力電流Ioutが流れている。
その後、固定相クロック信号CLK1が立ち上がると、第1スイッチング素子Q1がON状態となり、第2スイッチング素子Q2がOFF状態となる。これにより、図5に示すように、第1スイッチング素子Q1を通って第1ターンON電流Ia1が流れる。この場合、直前まで順方向に電流が流れていた第2還流ダイオードD2に対して、逆バイアスが印加される。これにより、第2還流ダイオードD2にリカバリ電流Irが流れる。したがって、リカバリ損失が発生する。
上記リカバリ電流Irは、第1ターンON電流Ia1が高くなるほど、高くなる。この点、本実施形態では、第1ターンON電流Ia1が正の閾値電流Ith1以上である場合には、出力電流Ioutが制限されるため、リカバリ損失が小さく又は「0」となる。これにより、リカバリ損失が過度に大きい状態で電力変換が継続されることが抑制される。
次に、図3(f)に示すように、出力電圧Voutに対して出力電流Ioutが第2出力位相θout2だけずれている状況下、詳細には第1ターンOFF電流Ib1が負となる状況下において、シフト相クロック信号CLK2が立ち上がる場合の前後における出力電流Ioutの流れについて図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、シフト相クロック信号CLK2が立ち上がる直前の場合(Q1,Q4:ON、且つ、Q2,Q3:OFF)、第4還流ダイオードD4に順方向の出力電流Ioutが流れている。
その後、シフト相クロック信号CLK2が立ち上がると、第3スイッチング素子Q3がON状態となり、第4スイッチング素子Q4がOFF状態となる。これにより、図7に示すように、第3スイッチング素子Q3を通って第1ターンOFF電流Ib1が流れる。この場合、直前まで順方向に電流が流れていた第4還流ダイオードD4に対して、逆バイアスが印加される。これにより、第4還流ダイオードD4にリカバリ電流Irが流れる。したがって、リカバリ損失が発生する。
上記リカバリ電流Irは、第1ターンOFF電流Ib1が低くなる(絶対値としては大きくなる)ほど、高くなる。この点、本実施形態では、第1ターンOFF電流Ib1が負の閾値電流Ith2以下となる場合には、出力電流Ioutが制限されるため、リカバリ損失が小さく又は「0」となる。これにより、リカバリ損失が過度に大きい状態で電力変換が継続されることが抑制される。
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)電力変換装置12は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路32を備えている。インバータ回路32は、固定相ハーフブリッジ回路51とシフト相ハーフブリッジ回路52とを有するフルブリッジ回路50を備えている。
固定相ハーフブリッジ回路51は、固定相接続線LN1によって互いに直列に接続された第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2それぞれに対して並列に接続されている第1還流ダイオードD1及び第2還流ダイオードD2と、を備えている。
シフト相ハーフブリッジ回路52は、シフト相接続線LN2によって互いに直列に接続された第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4と、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4それぞれに対して並列に接続されている第3還流ダイオードD3及び第4還流ダイオードD4と、を備えている。
電力変換装置12は、インバータ回路32の出力電流Ioutを検出する電流センサ34と、マイコン35と、トリガ信号TSを生成するトリガ回路80と、を備えている。マイコン35は、クロック信号CLK1,CLK2を出力するクロック回路71,72と、両クロック信号CLK1,CLK2の位相差δθを制御することにより出力電流Ioutを制御する電流制御部75とを備えている。トリガ信号TSは、固定相クロック信号CLK1の立ち上がりに同期した固定相エッジED1、及び、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がりに同期したシフト相エッジED2を有している。
かかる構成において、マイコン35は、クロック信号CLK1,CLK2が出力される出力ポートPo1,Po2と、電流センサ34の検出結果が入力される電流検出入力ポートPo3と、トリガ信号TSが入力されるトリガ入力ポートPo4とを備えている。マイコン35の電流制御部75は、トリガ信号TSの固定相エッジED1及びシフト相エッジED2に同期して、電流センサ34の検出結果である第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得し、その第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1に基づいて、出力電流Ioutの制限を行うか否かを判定する。
かかる構成によれば、リカバリ損失と相関関係がある第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1に基づいて、出力電流Ioutの制限を行うか否かの制限判定が行われる。これにより、リカバリ損失に対応した出力電流Ioutの制限判定を行うことができる。
ここで、トリガ信号TSは、固定相クロック信号CLK1に対応する固定相エッジED1と、シフト相クロック信号CLK2に対応するシフト相エッジED2とを有している。これにより、電流制御部75は、1つのトリガ信号TSで、出力電圧Voutの立ち上がり時の出力電流Ioutである第1ターンON電流Ia1と、出力電圧Voutの立ち下がり時の出力電流Ioutである第1ターンOFF電流Ib1との双方を取得できる。したがって、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得するために必要なマイコン35のポート数が1つで済む。よって、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得するために使用するポート数の削減を図ることができる。
詳述すると、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得する点に着目すれば、例えばマイコン35は、トリガ入力ポートPo4に代えて、固定相クロック信号CLK1が入力される専用の入力ポートと、シフト相クロック信号CLK2が入力される専用の入力ポートとを有することも考えられる。この場合、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得するために必要なポート数、つまり両クロック信号CLK1,CLK2の立ち上がりに同期するために必要なポート数は2つとなる。
これに対して、本実施形態では、両クロック信号CLK1,CLK2の立ち上がりに同期するために必要なポート数は1つ(トリガ入力ポートPo4のみ)である。これにより、使用するマイコン35のポート数を少なくしつつ、リカバリ損失に対応した出力電流Ioutの制限判定を行うことができる。
(2)特に、マイコン35は、温度検出入力ポートPo5といった他のポートを有している。このため、両クロック信号CLK1,CLK2に同期するのに必要なポート数が多くなると、マイコン35のポート数が足りなくなるという不都合が生じ得る。これに対して、本実施形態では、両クロック信号CLK1,CLK2に同期するのに必要なポート数が1つで済み、その分だけ他の用途にポートを使用できる。これにより、上記不都合を抑制できる。
(3)インバータ回路32は、固定相接続線LN1に接続された第1出力端32cと、シフト相接続線LN2に接続された第2出力端32dとを有しており、両出力端32c,32dに電源負荷40が接続される。第1出力端32cから、電源負荷40を通って、第2出力端32dに向かう出力電流Ioutを正とし、第2出力端32dから、電源負荷40を通って、第1出力端32cに向かう出力電流Ioutを負とする。この場合、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1の正負及び絶対値に基づいて、出力電流Ioutの制限判定を行う。かかる構成によれば、電流制限を行う必要がない場合(例えば第1ターンON電流Ia1が負である場合など)において電流制限が行われることを抑制でき、出力電流Ioutの制限判定の精度向上を図ることができる。
(4)電流制御部75は、固定相クロック信号CLK1の立ち上がりに対応した固定相エッジED1に同期して取得された第1ターンON電流Ia1が予め定められた正の閾値電流Ith1以上である場合に、電流制限を行うと判定する。かかる構成によれば、第2還流ダイオードD2にリカバリ電流Irが流れることに起因して過度なリカバリ損失が発生することを抑制できる。
(5)電流制御部75は、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がりに対応したシフト相エッジED2に同期して取得された第1ターンOFF電流Ib1が予め定められた負の閾値電流Ith2以下である場合に、電流制限を行うと判定する。かかる構成によれば、第4還流ダイオードD4にリカバリ電流Irが流れることに起因して過度なリカバリ損失が発生することを抑制できる。
(6)電流センサ34は、検出結果をアナログ信号として出力するものであり、マイコン35は、電流検出入力ポートPo3から入力される電流センサ34の検出結果をアナログ/デジタル変換するAD変換回路76を備えている。電流制御部75は、AD変換回路76の変換結果を取得することにより、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を把握する。かかる構成によれば、電流センサ34がアナログ信号を出力する構成において、電流制御部75が、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1をデジタル信号として把握できる。これにより、電流制御部75が、出力電流Ioutの制限判定を好適に行うことができる。
ここで、仮にマイコン35が、固定相クロック信号CLK1が入力される入力ポートと、シフト相クロック信号CLK2が入力される入力ポートとを有する場合には、電流センサ34の検出結果が入力される電流検出入力ポートPo3も2つ設けるとともに、AD変換回路76も2つ設けることが考えられる。このため、使用するポート数の増加、マイコン35の構成の複雑化といった不都合が懸念される。
これに対して、本実施形態では、上述した通り、マイコン35はトリガ信号TSが入力されるトリガ入力ポートPo4を1つ備えていることにより、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1を取得できる。これにより、電流検出入力ポートPo3及びAD変換回路76は1つでよい。よって、上記不都合を抑制できる。すなわち、トリガ信号TSを用いることにより、使用するポート数の削減に加えて、使用するAD変換回路の削減を図ることができる。
(7)電流制御部75は、出力電流Ioutの制限を行うと判定した場合には、出力電流Ioutが低くなるように両クロック信号CLK1,CLK2の位相差δθを制御する、又は、両クロック信号CLK1,CLK2の出力を停止することによりインバータ回路32の動作を停止させる。これにより、リカバリ損失が過度に大きい状況でインバータ回路32による電力変換が継続されることを抑制できる。
(8)電力変換装置12は、受電器23(2次側コイル23a)を有する受電機器21に非接触で交流電力を送電する送電機器11に用いられている。詳細には、送電機器11は、電力変換装置12と、電力変換装置12から出力される交流電力が入力される送電器13(1次側コイル13a)とを備えている。これにより、送電機器11において(1)等の効果を奏する。
ここで、上記送電機器11においては、両コイル13a,23aの相対位置が変動すると、電源負荷40のインピーダンスが変動する。また、仮に、受電機器21が受電器23によって受電された交流電力が入力される負荷22を有し、当該負荷22のインピーダンスが変動する場合には、電源負荷40のインピーダンスが変動する。そして、電源負荷40のインピーダンスが変動すると、出力位相θoutが変動する。すると、出力位相θoutによっては、過度に大きいリカバリ損失が発生し得る。
この点、本実施形態では、出力位相θoutが変動して過度に大きいリカバリ損失が発生し得る状況となった場合には、出力電流Ioutの制限が行われる。これにより、電源負荷40のインピーダンスの変動に好適に対応できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1及び第1ターンOFF電流Ib1の双方を取得する構成であったが、これに限られず、いずれか一方を取得し、出力電流Ioutの制限判定を行う構成でもよい。例えば、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1を取得し、取得された第1ターンON電流Ia1が予め定められた正の閾値電流Ith1以上であるか否かを判定する一方、第1ターンOFF電流Ib1に関する判定を実行しない構成でもよいし、その逆であってもよい。いずれの場合であっても、トリガ信号TSが、固定相エッジED1及びシフト相エッジED2を有しているため、マイコン35としては、固定相クロック信号CLK1の立ち上がり又は立ち下がり、及び、シフト相クロック信号CLK2の立ち上がり又は立ち下がりの双方に対応できる。
○ 図8(a)〜(d)に示すように、トリガ信号TSは、固定相クロック信号CLK1の立ち下がりに同期した固定相エッジED11と、シフト相クロック信号CLK2の立ち下がりに同期したシフト相エッジED12とを有する構成でもよい。この場合、電流制御部75は、固定相エッジED11に同期して第2ターンON電流Ia2を取得し、シフト相エッジED12に同期して第2ターンOFF電流Ib2を取得する。
かかる構成においては、電流制御部75は、第2ターンON電流Ia2及び第2ターンOFF電流Ib2の少なくとも一方に基づいて出力電流Ioutの制限判定を行う。
例えば、図8(e)に示すように、電流制御部75は、第2ターンON電流Ia2が予め定められた負の閾値電流Ith12以下である場合に電流制限を行うと判定する。負の閾値電流Ith12の絶対値は、例えば正の閾値電流Ith1の絶対値と同一の値が考えられるが、これに限られず、任意である。
また、例えば、図8(f)に示すように、電流制御部75は、第2ターンOFF電流Ib2が予め定められた正の閾値電流Ith11以上である場合に電流制限を行うと判定する。正の閾値電流Ith11の絶対値は、例えば負の閾値電流Ith2の絶対値と同一の値が考えられるが、これに限られず、任意である。
○ すなわち、電流制御部75は、両ターンON電流Ia1,Ia2と両ターンOFF電流Ib1,Ib2との4つの瞬時値のうち1又は複数(最大4つ)に基づいて、出力電流Ioutの制限判定を行えばよい。上記4つの瞬時値のうち複数の瞬時値が採用される場合、その組み合わせは任意であり、例えば両ターンON電流Ia1,Ia2に基づく制限判定が行われる構成でもよいし、両ターンOFF電流Ib1,Ib2に基づく制限判定が行われる構成でもよい。なお、4つの瞬時値で制限判定を行う場合のトリガ回路80としては、例えば両クロック信号CLK1,CLK2が入力されるXOR回路等が考えられる。
○ マイコン35のAD変換回路76を省略してもよい。この場合、電流センサ34が、AD変換回路76を有し、デジタル変換された信号をマイコン35に出力するとよい。
○ 電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正である場合には、第1ターンON電流Ia1の絶対値に関わらず、電流制限を行うと判定してもよい。また、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1の絶対値が正の閾値電流Ith1の絶対値以上である場合に電流制限を行うと判定してもよい。すなわち、電流制御部75は、出力電流Ioutの正負に関わらず、絶対値に基づいて制限判定を行ってもよい。要は、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1の正負又は絶対値のいずれかに基づいて制限判定を行ってもよい。第1ターンOFF電流Ib1等についても同様である。
但し、出力電流Ioutの正負を考慮しない場合、リカバリ損失が発生しないにも関わらず電流制限が行われる場合があり得る。この点を考慮すれば、実施形態のように、出力電流Ioutの正負を考慮して、出力電流Ioutの制限判定を行うとよい。
○ 例えば、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正か否かを判定するとともに、第1ターンOFF電流Ib1が予め定められた正の閾値電流Ith21以下か否かを判定してもよい。この場合、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正であり、且つ、第1ターンOFF電流Ib1が正の閾値電流Ith21以下である場合に電流制限を行うと判定してもよい。
この場合、正の閾値電流Ith21は、図8(e)に示すように、現状の位相差δθによって想定される出力電流Ioutのピーク値に対応させて設定されているとよく、例えば当該ピーク値に対して1よりも小さい値(例えば「0.5〜0.9」等)を乗算した値であるとよい。これにより、図8(e)に示すような出力電流Ioutと出力電圧Voutとが第1出力位相θout1だけずれている場合において電流制限を行うことができる。
すなわち、出力電流Ioutと出力電圧Voutとが第1出力位相θout1だけずれている場合、第1ターンOFF電流Ib1が出力電流Ioutのピーク値からずれるため、第1ターンOFF電流Ib1が低くなる。そして、第1ターンON電流Ia1が正である状況下では、第1ターンOFF電流Ib1が低くなるほど、第1ターンON電流Ia1が高くなり易い。このため、第1ターンOFF電流Ib1がピーク値に対してどの程度低くなっているかを判定することにより、第1ターンON電流Ia1がどれだけ高いか(換言すればリカバリ損失が過度に発生しているか)を把握できる。
○ 同様に、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が正の閾値電流Ith21以下か否かを判定するとともに、第1ターンOFF電流Ib1が負か否かを判定してもよい。この場合、電流制御部75は、第1ターンON電流Ia1が予め定められた正の閾値電流Ith21以下であり、且つ、第1ターンOFF電流Ib1が負である場合に電流制限を行うと判定してもよい。これにより、図8(f)に示すような出力電流Ioutと出力電圧Voutとが第2出力位相θout2だけずれている場合に電流制限を行うことができる。
○ マイコン35は、電流制御部75が電流制限を行うと判定したことに基づいて、DC/AC変換回路31の動作を停止させてもよい。この場合であっても、電力変換装置12からの交流電力の出力は停止する。
○ フィルタ回路33を省略してもよい。
○ 電流センサ34は、電力変換装置12に含まれていたが、これに限られず、温度センサ36のように、電力変換装置12とは別に設けられていてもよい。
○ 温度センサ36は、電力変換装置12とは別に設けられていたが、これに限られず、電流センサ34のように、電力変換装置12に含まれていてもよい。この場合、温度センサ36は、例えばDC/AC変換回路31、インバータ回路32及びフィルタ回路33の少なくとも1つの温度を検出すればよい。
○ 1次側コイル13aと1次側コンデンサ13bとは直列接続に限られず、並列接続であってもよい。2次側コイル23aと2次側コンデンサ23bとについても同様である。また、1次側コンデンサ13b及び2次側コンデンサ23bの少なくとも一方を省略してもよい。
○ 電力変換装置12は、系統電力に代えて外部蓄電装置からの直流電力を、交流電力に変換するものでもよい。この場合、DC/AC変換回路31を省略してもよいし、DC/AC変換回路31に代えて、DC/DCコンバータを設けてもよい。
○ 電力変換装置12の適用対象は、送電機器11に限られず、任意である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を有する電力変換装置であって、前記インバータ回路は、第1ハーフブリッジ回路及び第2ハーフブリッジ回路を有するフルブリッジ回路を備え、前記第1ハーフブリッジ回路及び前記第2ハーフブリッジ回路はそれぞれ、接続線によって互いに直列に接続された2つのスイッチング素子、及び、当該各スイッチング素子に並列に接続されている2つの還流ダイオードを有し、前記電力変換装置は、前記インバータ回路の出力電流を検出する電流センサと、前記第1ハーフブリッジ回路の制御に用いられる第1クロック信号を出力する第1クロック回路、及び、前記第2ハーフブリッジ回路の制御に用いられる第2クロック信号を出力する第2クロック回路を有し、前記第1クロック信号と前記第2クロック信号との位相差を制御することにより前記インバータ回路の出力電流を制御するフェーズシフト制御を行うマイコンと、を備え、前記マイコンは、前記第1クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方に同期して、前記電流検出入力ポートから入力される前記電流センサの検出結果を取得し、その取得された前記インバータ回路の出力電流の瞬時値に基づいて、前記インバータ回路の出力電流の制限を行うか否かを判定する第1制限判定部、及び、前記第2クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方に同期して、前記電流検出入力ポートから入力される前記電流センサの検出結果を取得し、その取得された前記インバータ回路の出力電流の瞬時値に基づいて、前記インバータ回路の出力電流の制限を行うか否かを判定する第2制限判定部、の少なくとも一方を備えていることを特徴とする電力変換装置。
上記技術思想に着目すれば、トリガ回路80を省略し、マイコン35に、固定相クロック信号CLK1が入力される専用の入力ポートと、シフト相クロック信号CLK2が入力される専用の入力ポートとの双方を設けてもよい。なお、上記技術思想に対応する課題は、リカバリ損失に対応した出力電流の制限判定を行うことができる電力変換装置を提供することである。
(ロ)直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を有する電力変換装置であって、前記インバータ回路は、第1ハーフブリッジ回路及び第2ハーフブリッジ回路を有するフルブリッジ回路を備え、前記第1ハーフブリッジ回路及び前記第2ハーフブリッジ回路はそれぞれ、接続線によって互いに直列に接続された2つのスイッチング素子、及び、当該各スイッチング素子に並列に接続されている2つの還流ダイオードを有し、前記電力変換装置は、前記インバータ回路の出力電流を検出する電流センサと、前記第1ハーフブリッジ回路の制御に用いられる第1クロック信号を出力する第1クロック回路、及び、前記第2ハーフブリッジ回路の制御に用いられる第2クロック信号を出力する第2クロック回路を有し、前記第1クロック信号と前記第2クロック信号との位相差を制御することにより前記インバータ回路の出力電流を制御するフェーズシフト制御を行うマイコンと、前記第1クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方に同期した第1エッジと、前記第2クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方に同期した第2エッジとを有するトリガ信号を生成するトリガ信号生成部と、を備え、前記マイコンは、前記第1クロック信号が出力される第1出力ポートと、前記第2クロック信号が出力される第2出力ポートと、前記電流センサの検出結果が入力される電流検出入力ポートと、前記トリガ信号が入力されるトリガ入力ポートと、前記トリガ入力ポートから入力される前記トリガ信号の前記第1エッジ及び前記第2エッジの少なくとも一方に同期して、前記電流検出入力ポートから入力される前記電流センサの検出結果を取得する取得部と、を備えていることを特徴とする電力変換装置。
上記技術思想に対応する課題は、以下の通りである。
フェーズシフト制御が行われる構成では、スイッチング素子のON/OFFの切り替え時に還流ダイオードに逆バイアスが印加され、リカバリ損失が生じる。当該リカバリ損失は、第1ハーフブリッジ回路のスイッチング素子のON/OFFの切り替え時、又は、第2ハーフブリッジ回路のスイッチング素子のON/OFFの切り替え時におけるインバータ回路の出力電流の瞬時値に応じて変動する。このため、上記瞬時値を把握したい場合がある。一方、インバータ回路を制御するマイコンのポート数は有限であるため、上記瞬時値を把握するために使用するポート数は少ない方が好ましい。
本技術思想の目的は使用するマイコンのポート数を少なくしつつ、第1ハーフブリッジ回路のスイッチング素子のON/OFFの切り替え時、及び、第2ハーフブリッジ回路のスイッチング素子のON/OFFの切り替え時におけるインバータ回路の出力電流の瞬時値を把握できる電力変換装置を提供することである。