JP2018048951A - 嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法 - Google Patents

嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法 Download PDF

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新太 丸井
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Abstract

【課題】オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子のような嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価する方法を提供する。【解決手段】嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法であって、平均直径が100μm以下であり表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて切断加工した後、得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせることを特徴とする嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法である。【選択図】図6

Description

本発明は、オレフィン類重合用触媒成分粒子等の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法に関する。
近年、オレフィン類の重合用固体触媒成分として、マグネシウム、遷移金属および電子供与体を必須成分として含むものが数多く提案されており、例えば、塩化マグネシウムやジエトキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物を、アルコキシチタン化合物で全て溶解して均一溶液を形成し、その後析出させてなる遷移金属含有固体触媒が提案されている(例えば、特許文献1(特開昭62−18405号公報)または特許文献2(特開平3−72503号公報)参照)。
特開昭62−18405号公報 特開平3−72503号公報
ところで、上記固体触媒成分をオレフィン重合に供した際の重合性能と、固体触媒成分の内部構造との間には密接な関係があると考えられ、このためにオレフィン類重合用固体触媒成分の内部構造、特に空隙部率と組織部率とを定量的に分析、評価する方法が求められているが、マグネシウムを主成分とする固体触媒成分は嫌気性・禁水性であることから、固体触媒成分の内部情報を分析するために測定試料となる固体触媒成分の粒子を切断した場合には、切断面に種々のダメージが加わり易く、オレフィン類重合用固体触媒成分の内部構造を精度よく調べることは極めて困難であった。
一方、近年の分析機器の目覚ましい進歩により、固体粒子の内部構造を容易に観察できる方法が開発されており、このような方法としては、例えば、測定試料となる固体粒子を真空の試料室内に設置した上で、数nm〜数百nm径に集束した高電圧のガリウムイオンビームを照射し、試料表面から発生する二次イオンを捕捉することで走査イオン像(Scanning Ion Microscope(SIM))像を得る、集束イオンビーム(Focused Ion Beam(FIB))法が挙げられる。FIB法は、SIM像やSEM像を観察しながら試料の任意の部分をイオンスパッタリングすることができるものの、マグネシウムを主成分とする固体触媒成分からなる粒子を測定試料とする場合、鮮明な切断面を得ることができなかった。これは、イオンビーム照射時の熱エネルギーが高く、除熱しきれないために、イオンビームを照射した部位が溶融してしまうためと考えられ、このために、FIB法ではオレフィン類重合用固体触媒成分の内部構造を正確に把握することが困難であり、また、FIB法では一度に加工できる面積が小さく、数μm以上の範囲を切断・解析するには、非常に長い時間を要することから、内部構造を簡便に測定することは困難である。
また、固体粒子の切断装置としては、アルゴンイオンビームを用いるイオンスライサやクロスセクションポリッシャ(Cross section Polisher(CP))等も知られている。これらの装置は、一度に加工可能な面積がFIB法よりも広く、複数の固体粒子について構造を把握するには有効な分析方法である。
一方、上記装置を用いて固体粒子を切断加工する場合、一度に多くの試料を断面加工することを目的として、エポキシ樹脂等の埋設剤に試料を散布し、硬化させてから断面加工することが行われているが、オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子を測定試料としてエポキシ樹脂に埋設し、断面加工を施した後、SEM装置により断面を観察したところ、断面状態は良好とは言い難かった。これは、埋設剤として用いたエポキシ樹脂と、オレフィン類重合用固体触媒成分の構成成分が反応し、固体触媒成分が変質したことによるためと推察された。
上記埋設材としては、エポキシ樹脂以外に例えば炭素ペースト等も考えられるが、ペーストの成分である溶剤中に酸素や水分等、固体触媒成分を変質させうる物質が一定量存在するため、上記問題を解決するには至らなかった。
このような状況下、本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子のような嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価する方法を提供することを目的とするものである。
上述したように、嫌気性・禁水性粒子において精密な断面加工が行えない理由は、埋設剤やペースト等の成分が触媒毒として作用する影響や、加工時の熱ダメージが原因であると推察されたことから、断面加工の際、試料表面に化学的作用が及ばない方法や、熱によるダメージを与えない方法であることが重要であると考えられた。
そこで我々は、大気非暴露型冷却断面加工装置(クライオ型クロスセクションポリッシャ(CCP))に着目するに至った。
CCPは、液体窒素等を用いた試料の冷却を伴った切断装置であり、CCPを用いてオレフィン類重合用固体触媒成分を加工する場合、支持板兼徐熱板(シリコンウェハー)上に予め両面炭素テープを設置した上でオレフィン類重合用固体触媒成分を散布すれば、測定試料を樹脂内部に埋設しなくても加工することができ、上記支持板を載置するステージ温度を冷却しながら断面加工することにより加工時の熱ダメージを低減し得ると考えられた。
しかしながら、本発明者等が上記方法について検討したところ、切断面の状態は、上記エポキシ樹脂等に埋設する方法に比較すれば改善するものの、依然として一部溶融したような状態になっており、正確な断面解析を行える状態にはなり得なかった。
上記知見の下、我々がさらに検討したところ、表面を熱伝導性に富む物質で被覆した上で、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて切断加工することにより、嫌気性・禁水性粒子を精密に断面加工し得ること、得られた切断面に対しエネルギー分散型X線検出器(EDS)を2個以上有する走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と粒子切断面のSEM撮影画像を重ね合わせることにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法であって、
平均直径が100μm以下であり表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、
不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて−70℃以下の温度条件下で切断加工した後、
得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせる
ことを特徴とする嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法、
(2)前記嫌気性・禁水性粒子が、マグネシウム、ハロゲンおよびチタンを必須成分として含むオレフィン類重合用固体触媒成分またはその前駆体の粒子である上記(1)に記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法、
(3)前記嫌気性・禁水性粒子の切断面における元素別マッピング解析を、EDS多変量イメージ解析ソフトウェアを用いて行う、上記(1)または(2)に記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法、
(4)前記マッピング解析を行う際に、マグネシウムのK線、炭素のK線、塩素のK線、金のL線および金のM線の中から選択されるいずれか一種以上の特性X線を用いる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法
を提供するものである。
本発明によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子のような嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価する方法を提供することができる。
大気非暴露冷却断面装置で加工した嫌気性・禁水性粒子の切断面(粒子断面加工部位)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の例を示す図である。 嫌気性・禁水性粒子の切断面から発せられる特性X線を1個のエネルギー分散型X線検出器(EDS検出器)で測定する場合の測定方法を説明する図である。 嫌気性・禁水性粒子の切断面から発せられる特性X線を2個のEDS検出器で測定する場合の測定方法を説明する図である。 嫌気性・禁水性粒子の切断面から発せられる特性X線を2個のEDS検出器で測定する場合の測定方法を説明する図である。 EDS検出器の配置例を示す上面図である。 EDS検出器の配置例を示す側面図である。 加速電圧1kVの電子線を二塩化マグネシウムに照射した時のモンテカルロシミュレーション図である。 加速電圧3kVの電子線を二塩化マグネシウムに照射した時のモンテカルロシミュレーション図である。 加速電圧10kVの電子線を二塩化マグネシウムに照射した時のモンテカルロシミュレーション図である。 空隙と組織の閾値を設定した代表的な2値化像である。 主成分波形の強度分布マップを反射電子線像に重ね合わせた画像である。 本発明の実施例1に係る、EDS検出器を2本対角に設置した場合のSEM像と表面部と凹部からの主成分波形重ねた画像である。 本発明の比較例1に係る、EDS検出器を1本設置した場合のSEM像と表面部と凹部からの主成分波形重ねた画像である。
本発明に係る嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法は、
平均直径が100μm以下であり表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、
不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて−70℃以下の温度条件下で切断加工した後、
得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせる
ことを特徴とするものである
本発明において、平均直径が100マイクロメートル(μm)以下の嫌気性・禁水性粒子としては、嫌気性および禁水性を有する粒子、すなわち、空気または酸素の存在下や水分の存在下において、安定状態を維持できず変性する粒子であれば特に制限されない。
嫌気性・禁水性粒子としては、例えば、無機酸化物や金属ハロゲン化合物、樹脂ビーズ等を支持体とし、これにチタン等の遷移金属化合物および必要に応じ内部電子供与性化合物を担持してなるオレフィン重合用固体触媒成分もしくはその前駆体や、該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物等の助触媒および必要に応じ外部電子供与性化合物からなる固体状のオレフィン重合用触媒や、金属酸化物、金属ハロゲン化合物等を支持体とする担持型メタロセン触媒等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記オレフィン類重合用固体触媒成分もしくはその前駆体としては、マグネシウム、ハロゲンおよびチタンを必須成分として含むオレフィン類重合用固体触媒成分もしくはその前駆体を挙げることができる。
本発明において、嫌気性・禁水性粒子の平均直径は、100μm以下であり、90μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましい。
上記平均直径が100μmを超えると切断加工時の加工時間が長時間化し、粒子内部構造の簡便な分析、評価が困難になる。
嫌気性・禁水性粒子の平均直径の下限は特に制限されないが、通常1μm以上であり、好ましくは5μm以上である。
なお、本出願書類において、嫌気性・禁水性粒子の平均直径は、乾式分散に対応したレーザー回折式粒度分布測定装置を用い、乾燥状態の測定試料を各々2回測定したときの平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)を意味する。
本発明において、嫌気性・禁水性粒子の表面には熱伝導性被膜が設けられている。
熱伝導性被膜の構成成分としては、汎用的で熱伝導性に優れる物であれば特に制限されないが、100(W・m−1・K−1)以上の熱伝導率を有するものが好ましく、110(W・m−1・K−1)以上の熱伝導率を有するものがより好ましく、120(W・m−1・K−1)以上の熱伝導率を有するものがさらに好ましい。
熱伝導性被膜の構成成分の熱伝導率の上限は特に制限されないが、通常、500(W・m−1・K−1)以下である。
熱伝導性被膜の構成成分として、具体的には、炭素、オスミウム、金および白金等から選ばれる一種以上を挙げることができ、オスミウム、金および白金等から選ばれる一種以上が好ましく、金であることが好ましい。
本発明において、嫌気性・禁水性粒子表面に対する熱伝導性膜の形成方法は、特に制限されない。
嫌気性・禁水性粒子表面に対する熱伝導性膜の形成方法としては、チャンバー内に膜形成用物質の昇華ガスまたはプラズマ化したガスを供給し、嫌気性・禁水性粒子表面に熱伝導性物質の薄膜を形成する化学蒸着法(CVD法)や、密閉されたチャンバー内に固体(基盤)などに付着させた嫌気性・禁水性粒子を設置し、真空下または不活性雰囲気下、膜形成用物質(ターゲット)を高温で蒸発させるか飛散(スパッタリング)させ、該粒子表面に付着させて薄膜を形成する物理蒸着法(PVD法)等を挙げることができ、嫌気性・禁水性粒子に化学変化を生じることなく膜形成可能なPVD法により熱伝導性膜を製膜することが好ましい。
上記物理蒸着法(PVD法)としては、直流電圧を2つの電極間にかけグロー放電により膜形成用物質を飛散させるDCスパッタ法、2つの電極の間に交流(高周波)をかけるRFスパッタ法、膜形成用物質(ターゲット)側に磁界を形成し、被蒸着側を高温のプラズマから保護するマグネトロンスパッタ法および、膜形成用物質(ターゲット)や被処理試料とは別の場所でイオンビームを形成してターゲットに照射し、膜形成用物質を飛散させるイオンビームスパッタ法等から選ばれる一種以上を挙げることができ、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
本発明において、熱伝導性被膜は、真空チャンバー内で形成されたものが好ましく、均一な熱伝導性被膜を得る上では、被処理試料を回転させつつ膜形成する機能を具備した蒸着装置を用いて形成されたものであることが好ましい。
熱伝導性被膜が、嫌気性・禁水性粒子を回転させつつ形成されたものである場合、膜形成時における嫌気性・禁水性粒子の回転速度(回転数)に特に制限はないが、100rpm以下が好ましく、70rpm以下がより好ましく、50rpm以下がさらに好ましい。
また、熱伝導性被膜が薄すぎると被膜が連続せず帯電を引き起こす可能性が高く、帯電箇所から高温プラズマが発生し試料を溶融してしまうため、綺麗な断面加工面が得られず、精度よく分析評価を行い難くなる。このため熱伝導性被膜の厚みは、粒子表面を均一に被覆し、かつ切断加工に支障をきたさない厚みであれば特に限定されないが、熱伝導性被膜の厚みは、0.01nm以上が好ましく、0.1nm〜100nmがより好ましく、1〜90nmがさらに好ましい。
嫌気性・禁水性粒子表面の微細構造を観察する上では、熱伝導性被膜の厚みが0.01nm以上であることにより、粒子上に連続した被膜を容易に形成することができ、帯電を抑制して正確な画像を容易に得ることができる。
なお、本出願書類において、熱伝導性被膜の厚みは、嫌気性・禁水性粒子の切断面を走査型電子協顕微鏡で観察したときの、5箇所の厚みの算術平均値を意味する。
本発明において、熱伝導性被膜がPVD法により形成されたものである場合、均一な膜が形成できれば熱伝導性被膜形成時の蒸着時間も特に制限されないが、60分間以内であることが好ましく、45分間以内であることがより好ましく、30分間以内であることがさらに好ましい。
蒸着時間が上記時間内であることにより、十分な膜厚を有する熱伝導性被膜を形成することができ、後述する切断加工時において、高温のプラズマによる熱伝導性被膜の剥がれや帯電を容易に抑制することができる。
本発明において、熱伝導性被膜がPVD法により形成されたものである場合、嫌気性・禁水性粒子表面への熱伝導性物質の塗膜処理は、一度に長時間かけて行ってもよいが、粒子表面に均一に形成された膜を得ようとする場合は、嫌気性・禁水性粒子表面への膜形成を一定時間行った後に嫌気性・禁水性粒子を撹拌し、再び嫌気性・禁水性粒子表面への膜形成を一定時間行うといった工程を2回以上繰り返し行う、いわゆるインターバル法により形成された熱伝導性被膜が好ましい。
インターバル法とは、塗膜処理と撹拌を複数回繰り返す方法であり、一例を挙げると、「一定時間塗膜→塗膜停止・粒子かき混ぜ→一定時間塗膜→塗膜停止・粒子かき混ぜ→一定時間塗膜」等というように、熱伝導性物質を塗膜後、嫌気性・禁水性粒子を撹拌して嫌気性・禁水性粒子中の塗膜未形成部を露出させ、さらに一定時間塗膜形成する操作を、繰り返し行う方法である。
本発明において、嫌気性・禁水性粒子が表面に熱伝導性被膜を有することにより、熱伝導性被膜を有さない状態に比較して、粒子表面と大気中の水分や酸素との接触を低減することができる。
一方、熱伝導性被膜形成後、嫌気性・禁水性粒子は密閉容器内で保存することが好ましく、密閉容器内に保存した状態で後述する断面加工装置や走査型電子顕微鏡へ移動させ、大気中の水分や酸素との接触を極力避けることが好ましい。
本発明においては、測定対象として嫌気性・禁水性粒子の表面に熱伝導被膜を設けたものを使用することによって、大気中の水分や酸素との接触を低減することができるばかりか、後述する切断加工時において、高温のプラズマによる帯電を容易に抑制して、加工面の溶融を抑制し、その内部構造を精度よく分析することができる。
本発明においては、平均直径が100μm以下であり、表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて切断加工する。
大気非暴露型冷却断面加工装置としては、公知の装置を適宜使用することができ、例えば、日本電子(株)製IB−19520CCP等を挙げることができる。
また、切断加工時における不活性雰囲気としては、真空雰囲気、窒素ガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、ネオンガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等から選ばれる一種以上を挙げることができ、真空雰囲気であることが好ましい。
不活性雰囲気が真空雰囲気である場合、真空度が10-4Pa以内であることが好ましい。
断面加工は、表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を−70℃以下の温度条件下に冷却しながら行い、加工時の雰囲気温度は、−100℃以下であることが好ましく、−120℃以下であることがより好ましい。
上記温度条件下で断面加工を施すことにより、嫌気性・禁水性粒子に対する熱ダメージを抑制しつつ精度よく断面加工を施すことができる。
断面加工時の加速電圧は、10kV以下であることが好ましく、7kV以下であることがより好ましく、5kV以下であることがさらに好ましい。
本発明において、熱伝導性膜形成後の嫌気性・禁水性粒子を断面加工する際は、加工時に発生する熱による粒子へのダメージをより低減することが望ましく、係るダメージを低減する方法としては、例えば、表面に熱伝導被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を予め冷却した後に切断加工する方法や、間欠加工する方法(切断加工と加工停止を繰り返す方法)を挙げることができ、これらを併用する方法が好ましい。
間欠加工する方法を実施する場合、全加工時間が長時間化して簡潔な処理を行い難くなることから、間欠加工時間は、全加工時間に対し、半分以下とすることが好ましい。
本発明においては、測定対象として嫌気性・禁水性粒子の表面に熱伝導被膜を設けたものを使用することによって、大気中の水分や酸素との接触を低減することができるばかりか、切断加工時において、高温のプラズマによる帯電を容易に抑制して、加工面の溶融を抑制し、その内部構造を精度よく分析することができる。
本発明においては、上記切断加工後、得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせる。
本発明において、測定対象となる切断加工された試料粒子は、断面加工部に熱伝導性物質を被覆した上で、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いた分析に供してもよい。
上記熱伝導性物質としては、オスミウム、金、白金等から選ばれる一種以上を挙げることができる。試料粒子が断面加工部に伝導性物質の被膜を有することにより、断面加工部の観察時にチャージアップ等に起因する観察画像の不鮮明化を抑制することができる。
断面加工部に設ける熱伝導性被膜の厚みは、被膜が厚すぎると断面加工部位の微細構造を覆い隠してしまい、精度よい分析評価ができないため、0.1〜30nmであることが好ましく、0.1〜20nmであることがより好ましく、0.1〜15nmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、上記断面加工部に設けられる熱伝導性被膜の厚みも、走査型電子顕微鏡で観察したときの、5箇所の厚みの算術平均値を意味する。
本発明において、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を構成する走査型電子顕微鏡は特に制限されず、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を有する走査型電子顕微鏡や、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を挙げることができ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)が好ましい。
FE−SEMを用いて切断面(粒子断面加工部位)を観察する際、高真空モードと低真空モードがあるが、低真空モードで観察することが好ましい。
低真空モードで観察することにより、プラスイオンが試料に帯電した電子を中和し、嫌気性・禁水性粒子を帯電させることなく観察することができる。
電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて切断面(粒子断面加工部位)を観察する場合、加速電圧は、嫌気性・禁水性粒子の帯電を抑制するため、10kV以下であることが好ましく、7kV以下であることがより好ましく、5kV以下であることがさらに好ましい。
FE−SEMを用いて切断面(粒子断面加工部位)の表面観察を行う場合、二次電子を用いると放電を起こし、異常コントラストが発生することがあるため、反射電子を用いることが好ましい。
このようにして観察された粒子断面加工部位のSEM撮影画像例を図1に示す。
図1において、白色で示された部位が、組織部(平面部)を示し、黒色示された部位が、凹部を示している。
本発明においては、走査型電子顕微鏡に備えられた2個以上のエネルギー分散型X線検出器(EDS検出器)を用いて元素別マッピング解析を行う。
図2に示すように、従来のエネルギー分散型X線(EDS)解析においては1個のEDS検出器を用い、粒子表面(平面部、図2の「I」部分)、粒子凹部(図2の「II」部分)およびエッジ部(平面部と粒子凹部の境界部、図2の「III」部分)からそれぞれ発する特性X線を観測、解析しているが、粒子凹部など表面よりも奥から発生する特性X線(図2に示す粒子凹部IIから発生する特性X線「2」等)は、励起距離が長いので検出器に届き難く、また、粒子内を透過中に吸収されたりすることから、検出感度が著しく低い。
このように、1個のEDS検出器から得られる情報は、粒子表面(平面部)、粒子凹部、エッジ部全体の平均値として表されるが、粒子表面(平面部)、粒子凹部、エッジ部からの特性X線の観測強度は各々異なり、粒子表面(平面部)やエッジ部から発生する特定X線の高い検出感度が、粒子凹部の著しく低い感度と相殺される為、正確な情報を得ることが難しかった。
図3に、粒子表面から発生する特性X線スペクトル(図3の左下図)と、粒子凹部から発生する特性X線スペクトル(図3の右下図)とを示す。
図3の下図に示すように、特性X線ピークが二以上存在する場合、粒子表面(平面部、図3の「I」部分)および粒子凹部(図3の「II」部分)から発生する特性X線を比較すると、粒子凹部から発生した特性X線は平面部から発生する特性X線より脱出深さ距離が長くなるため、試料粒子自身による吸収をより強く受ける低エネルギー側のピークが、高エネルギー側のピークと比較してより小さく検出される。
また、図3や図4の下図に示すような特性X線ピークが二以上存在する場合は、エッジ部(図4の「III」部分)の穴側から発生するX線(図4に示す特性X線「3」)を、図4の右側に記載のEDS検出器で収集すると、X線の脱出深さ距離は短くなるため、試料粒子による吸収が少なくなり低エネルギー側のピークがより強調される波形となる。
一方、エッジ部の穴側とは反対側から発生したX線(図4に示す特性X線「4」)を、図4の左側に記載のEDS検出器で収集すると、X線の脱出深さ距離が長くなるため、試料粒子自身による吸収が大きくなり高エネルギー側のピークがより強調された波形となる。
従って、粒子表面(平面部)、粒子凹部、エッジ部の解析を行うためには、図5および図6に示すように、上部から観察したときに、測定粒子(SEM鏡筒)と2個のEDS検出器とを測定粒子(SEM鏡筒)を介して一直線上に、すなわち、測定粒子を介して反対位置に(測定粒子(SEM鏡筒)を介して180°対向する位置に)同じ立体角のEDS検出器を各々配置して、特性X線スペクトルを同時収集することにより、エッジ部分のスペクトルの吸収による影響をある程度相殺することができ、またエッジ部分の向きの方向によって分析結果に生じる違いを軽減することができる。
また、2個のEDS検出器を測定粒子を介して180°対向する位置に設置することで、1個の検出器を用いた場合よりも検出感度を向上させることができる。
このため、エネルギー分散型X線検出器(EDS検出器)を2個以上使用して元素別マッピング解析を行うと、嫌気性・禁水性粒子の内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価することができる。
上記元素別マッピング解析は、EDS多変量イメージ解析ソフトウェアを用いて行うことが好ましく、このようなイメージ解析ソフトウェアとしては、サーモフィッシャーサイエンフィティフィック社製NORANTM7システムのCOMPASS等を挙げることができる。
上記EDS多変量イメージ解析ソフトウェアは、両極端なスペクトル波形を、各主成分波形として抽出する特徴が有るので、平面部スペクトルと凹部スペクトルの2種類の主成分波形を抽出することができ、その結果、得られる信号のうち、表面部からの主成分波形と、凹部からの主成分波形を分離抽出することが可能となることから、嫌気性・禁水性粒子の内部構造をより簡便かつ精度よく分析、評価することができる。
本発明において、元素の励起距離等を考慮して、EDS検出器により同一元素から2種の特性X線ピークを分離して検出する必要がある。本発明において検出される特性X線としては、測定対象となる嫌気性・禁水性粒子の構成成分由来のものであれば特に制限されないが、オレフィン重合用固体触媒成分の構成元素に由来する特性X線であることが好ましい。
測定対象となる嫌気性・禁水性粒子が塩化マグネシウムおよび内部電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒成分である場合は、塩化マグネシウムを構成するマグネシウムや塩素、固体触媒成分を構成する炭素や酸素といった元素に由来する特性X線であることが好ましい。
上記特性X線として、具体的には、マグネシウムのK線、塩素のL線、炭素のK線、酸素のK線等が挙げられ、マグネシウムのK線、塩素のL線および炭素のK線の中から選択される一種以上が好ましい。
また、本発明において、断面加工部位に熱伝導性被膜を形成した上で表面観察を行う場合は、上記特性X線は、断面加工部位に設けた熱伝導性被膜の構成元素に由来する特性X線であってもよい。
上記特性X線として、具体的には、オスミウムのL線およびM線、金のL線およびM線、白金のL線およびM線から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明においては、上記表面観察により得られた粒子切断面のSEM撮影画像と元素別マッピング解析結果とを重ね合わせることにより、粒子切断面における各成分元素の分布、面積割合情報等が得られ、各成分元素の面積割合から、粒子切断面における組成情報を得ることができる。
また、本発明においては、粒子切断面における空隙部率(上述した粒子凹部の存在割合)および組織部率(上述した粒子表面(平面部)の存在割合)情報を得ることができる。
なお、本出願書類において、粒子表面(平面部)はエッジ部を含まないものとする。
本発明において、粒子の断面加工部位における空隙部率と組織部率は、特性X線の粒子表面(平面部)からの主成分波形と、粒子凹部からの主成分波形を分離抽出し、ピークの比を算出することにより求めることができる。
具体的には、表面からの主成分波形の強度分布マップを反射電子線画像に重ね合わせ、閾値を設定後、平面部だけの2値化像を作成することにより、粒子断面加工部位の空隙部率と組織部率を求めることができる。
本発明において、嫌気性・禁水粒子の空隙部率と組織部率を正確に把握するためには、粒子表面(平面部)および凹部の、2つのマッピングデータを分離する必要があり、このためには、予め、粒子の断面加工部位に存在する主成分の他に、凹部の情報を得る必要があり、凹部の情報を知るためには、電子線が粒子表面からどの位の深さまで到達しているか、予め認識しておく必要がある。
粒子表面からどの位の深さまで電子線が到達しているかは、加速電圧を変化させることによって電子線の入射飛程(焦点深度)を変化させ、モンテカルロシミュレーションの手法を用いて求めることができる。
例えば、二塩化マグネシウム表面においては、加速電圧1kVの電子線を照射した場合、電子線が深さ方向に最大40nmまで到達しており(図7参照)、加速電圧3kVでは最大200nmであり(図8参照)、さらに加速電圧10kVでは最大1,500nmまで到達する(図9参照)。
本発明において、粒子断面加工部位の空隙部率と組織部率とを算出するためには、EDS多変量イメージ解析ソフトウェアを用いることが好ましい。
空隙部と組織部とを把握するためには、凹部の深さ方向を把握し、解析する元素の特性X線を決定した後、粒子表面(平面部)および凹部の、2つのマッピングデータを分離する必要がある。
上記2つのマッピングデータを分離する前の特性X線スペクトルは、試料粒子から実際に発生する主成分スペクトルとはかなり形状が異なる場合があり、例えば、マイナスピークの存在や、強度分布マップにおけるマイナススコアーの発生などにより影響を受ける場合もある。
上記の問題を改善するには、解析用ソフトを用い、EDSスペクトルイメージングデータから対称行列を作成し、その固有値分解を行い、ノイズ以上と判定される固有値を持つ固有ベクトルを使ってデータの再構築を行う、いわゆるEDS多変量イメージ解析を行うことが好ましい。
EDS多変量イメージ解析ソフトウェアとしては、特許文献US6675106、US6584413等にその内容が開示されているサーモフィッシャーサイエンフィティフィック社製COMPASS等を挙げることができ、特に上記COMPASSは、なるべく自然な波形が得られるように、デフォルトで束縛条件(マイナスピークは存在しない、強度分布マップにはマイナススコアーがない)を設けて収束計算を行っているため、信頼度が非常に高い解析ソフトウェアである。
本発明の分析方法において、空隙部率と組織部率の解析に用いる媒体は、EDS多変量イメージ解析を実施できれば特に制限されないが、上記の理由から、解析用ソフトとして、サーモフィッシャーサイエンフィティフィック社製NORANTMシステムのCOMPASSスペクトルフェーズマッピング機能を用いる事が好ましい。
本発明において、空隙部率および組織部率は、粒子表面(平面部)からの主成分波形と、凹部からの主成分波形を、主要ピークの強度比によって分離抽出することにより行われる。
加工断面部位からの、2種類の特性X線からの主成分波形の強度分布マップを反射電子線像に重ね合わせ(図10参照)、閾値を設定後、粒子表面(平面部)だけの2値化像を作成することにより(図11参照)、組織部の面積(平面部の面積)を求め、下記式により、組織部率(面積%)および空隙部率(面積%)を求めることができる。
組織部率(%)={組織部(平面部)の面積÷断面加工部の面積}×100
空隙部率(%)={(断面加工部の面積−組織部の面積)÷断面加工部の面積}×100
なお、図11において、白色で示された部位が、組織部(平面部)を示し、黒色示された部位が、凹部を示している。
本発明によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子のような嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価する方法を提供することができる。
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
(製造例1)
<固体触媒成分の調製>
窒素ガスで充分置換された、撹拌器および還流冷却器を具備した容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム20g、トルエン160mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル4.8mlを装入して懸濁液を形成し、該懸濁液を−5℃まで冷却した。
一方、窒素ガスで充分置換され、撹拌器を具備した容量500mlの丸底フラスコに、予め四塩化チタン40mlおよびトルエン40mからなる混合溶液を−5℃に冷却しておき、該混合溶液中に、上記懸濁液を全量添加した。
懸濁液の添加終了後、−5℃で1時間保持し、その後105℃まで昇温し、105℃で1時間30分間、撹拌しながら反応させた。
反応終了後、撹拌を停止し、固液を分離して上澄み液を抜き出し、次いで、90℃のトルエン200mlを新たに装入、撹拌し、撹拌停止後に固液を分離し、上澄み液を抜き出すことを3回繰り返して洗浄した。
新たにトルエン160mlおよび四塩化チタン40mlを添加し、108℃で1時間撹拌しながら反応させた後、40℃のn−ヘプタン200mlで7回洗浄し、最後にロータリー真空ポンプで減圧乾燥して粉末状の固体触媒成分を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のマグネシウム含有量は21重量%、チタン含有量は2.8質量%、内部電子供与体含有量は18重量%であり、また、得られた固体触媒成分の平均直径は37.8μmであった。
(実施例1)
(1)熱伝導性膜の被膜
(i)蒸着作業用グローブボックスの中に、蒸着用の金ターゲットと回転ステージを具備したイオンスパッター(日本電子(株)製、JFC−1600)を載置し、当該グローブボックスに、製造例1で得られた固体触媒成分、スパチュラ、プラスチック製浅底容器、予め導電性両面テープを貼り付けたシリコンウェハー(タテ5mm×ヨコ10mm×厚さ0.7mm)および密閉型CCP用トランスファーベッセル(日本電子(株)製、型番IB-19520 CCP用)を格納し、グローブボックス内部の窒素置換を充分に行った。
(ii)上記グローブボックス内において、固体触媒成分約500mgをプラスチック製浅底容器内に採取した後、このプラスチック製浅底容器をイオンスパッターのステージ上にセットし、到達真空度10Pa以下、印加電圧30mAの条件下、30rpmの速度でステージを回転させつつ、金蒸着を30分間実施した。
(iii)次いで、上記固体触媒成分入りのプラスチック製浅底容器を一旦イオンスパッターから取り出し、浅底容器内の固体触媒成分をスパチュラで混ぜ合わせ、再度イオンスパッターのステージ上にセットし、到達真空度10Pa以下、印加電圧30mAの条件下、30rpmの速度でステージを回転させつつ金蒸着を5分間実施した。
(iv)上記(iii)の一連の操作を計4回繰り返し、固体触媒成分の表面全体に、合計で5回金蒸着を施した。
(2)CCP断面加工
引き続き、上記グローブボックス内において、シリコンウェハー上に貼り付けた導電性両面テープの表面に、上記(1)で得られた金蒸着済みの固体触媒成分を、粒子が重なり合わない程度の量散布し、密閉型CCP用トランスファーベッセルにシリコンウェハーを格納した。
次いで、上記グローブボックスから上記密閉型CCP用トランスファーベッセルを取り出して、CCP断面加工装置(日本電子(株)製、型番IB-19520 CCP)に固定した後、真空度を10-4以下、CCPステージ温度を−120℃以下に維持しつつ、アルゴンイオンビームによる固体触媒成分の断面加工を、加速電圧4.0kVで5時間かけて実施した。
(3)FE−SEM装置による断面観察およびEDS測定
インレンズショットキー形電子銃およびセミインレンズ形対物レンズを有し、あらかじめ2本のEDS検出器(サーモフィッシャーサイエンティフィック製X線マイクロアナライザー、NORANTM System 7 Ultra Dry、有効面積60mm)を、互いにSEM鏡筒を介して反対位置に(SEM鏡筒を介して180°対向する位置に)設置したFE−SEM(日本電子(株)製、型番JSM-7610F)に対し(図12参照)、(2)で得られた断面加工済みの固体触媒成分を、CCP断面加工装置から取り外したトランスファーベッセルごとセットして、加速電圧3kV、拡大倍率3,000倍で、断面加工部の反射電子像による観察を行った。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。
上記の固体触媒成分200粒について金蒸着膜の平均厚みを確認したところ、90nmであった。
次いで、加速電圧3kV、カウント時間30分間、拡大倍率3,000倍の条件で、観察部位におけるスペクトルデータを得、マグネシウムのK線について、EDS多変量イメージ解析ソフトウェア(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、COMPASS)を用い、それぞれ特性X線マッピングを行い、試料表面からの主成分波形の強度分布マップを反射電子線像に重ね合わせ、閾値を設定後、粒子表面(平面部)だけの2値化像(図12参照)を作成することにより、組織部の面積(平面部の面積)を求め、下記式により、組織部率(面積%)および空隙部率(面積%)を求めた。
組織部率(%)={組織部(平面部)の面積÷断面加工部の面積}×100
空隙部率(%)={(断面加工部の面積−組織部の面積)÷断面加工部の面積}×100
なお、図12において、白色で示された部位が、組織部(平面部)を示し、黒色示された部位が、凹部を示している。
上記の解析操作を、断面加工済みの固体触媒成分200粒について同様に行い、平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。結果を表1に示す。
なお、塩化マグネシウム粒子の表面における電子線の焦点深度は、電子線の加速電圧を変化させて測定し、演算用ソフト(エレクトロンフライトシミュレーター バージョン3.1−LV、Small World LLC社製)を用い、モンテカルロシミュレーションにより求めた結果、加速電圧1kVにおける焦点深度は深さ方向に40nm程度であり、加速電圧3kVでは200nm程度、加速電圧10kVでは1,500nm程度であった。
(実施例2)
実施例1で観察した固体触媒成分200粒に代えて、実施例1で観察した粒子とは異なる粒子500粒について解析操作を行った以外は実施例1と同様にして、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で観察した固体触媒成分200粒に代えて、実施例1で観察した粒子とは異なる粒子1500粒について解析操作を行った以外は実施例1と同様にして、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1で観察した固体触媒成分200粒に代えて、実施例1で観察した粒子とは異なる粒子100粒について解析操作を行った以外は実施例1と同様にして、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1で観察した固体触媒成分200粒に代えて、実施例1で観察した粒子とは異なる粒子50粒について解析操作を行った以外は実施例1と同様にして、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(実施例6)
マグネシウムのK線に代えて、塩素のK線を用いて特性X線マッピングを行った以外は、実施例1と同様にして、断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、断面加工済みの固体触媒成分を、蒸着用の金ターゲットと回転ステージを具備したイオンスパッター(日本電子(株)製、JFC−1600)にセットし、断面加工部に対し、到達真空度10Pa以下、印加電圧30mAの条件下、30rpmの速度でステージを回転させつつ15分間の金蒸着をさらに行うとともに、マグネシウムのK線に代えて、金のL線を解析に用い特性X線マッピングを行った以外は、実施例1と同様にして、断面加工(切断)処理、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
なお、上記の固体触媒成分200粒について、断面加工部に設けた金蒸着膜の平均厚みを確認した所、49nmであった。
(実施例8)
実施例7において、断面加工部に対し15分間の金蒸着を行うことに代えて5分間の金蒸着を行った以外は、実施例7と同様にして、断面加工(切断)処理、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
なお、上記の固体触媒成分200粒について、断面加工部に設けた金蒸着膜の平均厚みを確認した所、20nmであった。
(実施例9)
実施例1において、CCPステージ温度−90℃で断面加工を行った以外は、実施例1と同様にして断面加工(切断)処理、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。断面加工部に溶融等は確認されず、鮮明度の高い観察結果を得ることができた。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、FE−SEMに備えるEDS検出器(サーモフィッシャーサイエンティフィック製X線マイクロアナライザー、NORANTM System 7 Ultra Dry、有効面積60mm)を、2個から1個に変更した以外は(図13参照)、実施例1と同様にして、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。結果を表1に示す。
図13において、白色で示された部位が、組織部(平面部)を示し、黒色示された部位が、凹部を示している。
(比較例2)
実施例1において、粒子表面に(1)熱伝導性膜の被膜を行うことなくそのまま(2)CCP断面加工を施した以外は、実施例1と同様にして断面加工(切断)処理、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。
断面加工部を観察したところ、一部が溶融した状態が確認された。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、CCPステージ温度−50℃で断面加工を行った以外は、実施例1と同様にして断面加工(切断)処理、FE−SEM装置による断面観察およびX線スペクトルデータの解析を行い、固体触媒成分の平均組織率(%)および平均空隙率(%)を求めた。
断面加工部を観察したところ、一部が溶融した状態が確認された。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜実施例9においては、平均直径が100μm以下であり表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて切断加工した後、 得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせて粒子内部を分析していることから、嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価し得ることが分かる。
一方、表1より、比較例1においては、走査型電子顕微鏡に設けるエネルギー分散型X線検出器の個数を1個にしていることから、実施例1および実施例6〜実施例9との比較から明らかなように、組織部率および空隙部率を精度よく測定し得ないことが分かる。
また、表1より、比較例2においては、粒子表面に熱伝導性膜の被膜を行うことなくそのままCCP断面加工を施していることから、断面加工部の一部が溶融してしまい、実施例1および実施例6〜実施例9との比較から明らかなように、組織部率および空隙部率を精度よく測定し得ないことが分かる。
さらに、表1より、比較例3においては、−50℃で断面加工を行っていることから、断面加工部の一部が溶融してしまい、実施例1および実施例6〜実施例9との比較から明らかなように、組織部率および空隙部率を精度よく測定し得ないことが分かる。
本発明によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分からなる粒子のような嫌気性・禁水性粒子に対し、粒子切断面へのダメージを抑制しつつ、その内部構造を簡便かつ精度よく分析、評価する方法を提供することができる。

Claims (4)

  1. 嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法であって、
    平均直径が100μm以下であり表面に熱伝導性被膜を有する嫌気性・禁水性粒子を、
    不活性雰囲気下、大気非暴露型冷却断面加工装置を用いて切断加工した後、
    得られた切断面に対し、エネルギー分散型X線検出器を2個以上有する走査型電子顕微鏡を用いて元素別マッピング解析を行い、得られた元素別マッピング解析結果と、粒子切断面のSEM撮影画像とを重ね合わせる
    ことを特徴とする嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法。
  2. 前記嫌気性・禁水性粒子が、マグネシウム、ハロゲンおよびチタンを必須成分として含むオレフィン類重合用固体触媒成分またはその前駆体の粒子である請求項1に記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法。
  3. 前記嫌気性・禁水性粒子の切断面における元素別マッピング解析を、EDS多変量イメージ解析ソフトウェアを用いて行う、請求項1または請求項2に記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法。
  4. 前記マッピング解析を行う際に、マグネシウムのK線、炭素のK線、塩素のK線、金のL線および金のM線の中から選択されるいずれか一種以上の特性X線を用いる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の嫌気性・禁水性粒子内部の分析方法。
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