JP2018047819A - 車両の前部パネル構造 - Google Patents

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遼太 山本
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Abstract

【課題】衝突後半の歩行者の頭部の加速度の再度の上昇を抑制して、歩行者の頭部を保護する。【解決手段】フロントパネル10は、表面側の樹脂パネル11と、裏面側の弾性シート12とを備える。樹脂パネル11は、比較的靭性の低い樹脂材料で形成された板状部材である。弾性シート12は、樹脂パネル11よりも剛性が低く、非常に破断伸びが大きい材料で形成された弾性シート12であって、樹脂パネル11の後面11aに層状に重ねられ、樹脂パネル11に対して接着されて固定される。車両1と歩行者とが衝突した際、樹脂パネル11によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを衝突直後に発生させて、樹脂パネル11が破断して歩行者の頭部の加速度が低下した後、弾性シート12によって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収する。【選択図】図2

Description

本発明は、車両の前部パネル構造に関する。
特許文献1には、ボンネットフード構造体が記載されている。このボンネットフード構造体は、アルミニウム材料又は鋼材からなる表層と、この表層の裏面に配置され弾性率が20〜130GPaの材料(炭素鋼、ステンレス鋼、銅、又はチタン等)からなる補強層と、この補強層と表層の間に配置され弾性率が0.01〜6GPaの材料(熱硬化性樹脂、熱可撓性樹脂等)からなる中間層と、からなる。この構造によって、加速度を高めて衝突エネルギーの吸収性能を高めるとともに、ショートストローク化を実現する。
特開2011−148419号公報
特許文献1に記載のボンネットフード構造体では、衝突体が衝突した衝突初期には、アルミニウム又は鋼材からなる表層が変形を開始するまで衝突体の加速度が上昇し、表層が変形し始めると加速度が低下する。すなわち、衝突初期に歩行者の頭部の加速度のピーク(以下、初期ピークと称する)を発生させることにより、衝突エネルギーの吸収性能を高めている。しかし、表層がアルミニウム又は鋼材からなるので、徐々に表層が変形しなくなり、表層の変形量が限界に達した際に加速度が大きく上昇してしまうおそれがある。このように、衝突初期に歩行者の頭部の加速度に初期ピーク発生させた後の衝突後半に、歩行者の頭部の加速度が再度上昇するので、歩行者の頭部を十分に保護できないおそれがある。
そこで、本発明は、衝突後半の歩行者の頭部の加速度の再度の上昇を抑制して、歩行者の頭部を保護することが可能な車両の前部パネル構造の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、車両の前部に固定的に支持されて外部に露出する車両の前部パネル構造であって、樹脂製の板状部材と弾性シート材とを備える。弾性シート材は、板状部材に層状に重ねられた状態で板状部材に対して固定される。
上記構成では、樹脂製の板状部材を備えるので、車両と歩行者とが衝突して歩行者の頭部が車両の前部のパネルに衝突(以下、単に衝突という)した際に、樹脂製の板状部材によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを衝突直後に発生させて、衝突後の早期に頭部のエネルギーを低下させることができる。
また、樹脂製の板状部材であるので、アルミニウムや鋼材の板状部材に比べて破断し易い。このため、板状部材との衝突によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを発生させた後に板状部材が破断するように、板状部材の板厚等を設定し易い。
また、板状部材には、板状部材よりも破断伸びが大きい弾性シート材が層状に重ねられ固定されているので、板状部材との衝突によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを発生させた後に板状部材が破断すると、歩行者の頭部の加速度が低下し、その後、弾性シートによって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収することができる。
このように、衝突直後に樹脂製の板状部材によって頭部の加速度に初期ピークを発生させて、その後、板状部材が破断して弾性シートによって頭部のエネルギーを吸収するので、衝突後半の再度の加速度の上昇を抑制することができる。
また、上記板状部材には、板状部材に所定の大きさ以上の面外荷重が作用した際に破断する易破断部が形成されていてもよい。
上記構成では、樹脂製の板状部材には、板状部材に所定の大きさ以上の面外荷重が作用した際に破断する易破断部が形成されている。このため、板状部材の板厚を厚くすることによって板状部材の質量を確保して頭部の加速度の初期ピークを高めるとともに、易破断部を適切に設定することによって板状部材を所望のタイミングで破断させることができる。このため、歩行者の頭部の加速度の初期ピークの大きさやタイミング等をコントロールし易くなるので、衝突直後に頭部に初期ピークを発生させることによって衝突後の早期に頭部のエネルギーを低下させることができるとともに、初期ピークを発生させた後に加速度を低下させて弾性シートによって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収することができる。
本発明によれば、衝突後半の歩行者の頭部の加速度の再度の上昇を抑制して、歩行者の頭部を保護することができる。
本発明の一実施形態に係る車両の前部の外観斜視図である。 フロントパネルの断面図である。 図2の樹脂パネルを矢印III方向から視た後面図である。 頭部の加速度の波形図である。 他の実施形態に係る車両の外観側面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、図3は、樹脂パネルの溝部を分かり易くするため、図2のフロントパネルから弾性シートを除いた状態で、樹脂パネルを矢印III方向から視た状態を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る前部パネル構造は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に配置されるキャブオーバー型のトラック等の車両1のフロントパネル(前部パネル)10に適用される。
図1及び図2に示すように、フロントパネル10は、表面側(前面側)の樹脂パネル(板状部材)11と、裏面側(後面側)の弾性シート(弾性シート材)12とを備え、キャブ2の前面部のフロントウィンドウ3の下方に配置され、車幅方向に沿って起立した状態で車両1の前面部に固定される。すなわち、フロントパネル10は、樹脂パネル11と弾性シート12とによって形成される2層の前部パネルであり、車両1の前部に固定的に支持されて外部に露出する。
図2及び図3に示すように、樹脂パネル11は、比較的靭性の低い樹脂材料(例えば、純ポリプロピレン樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)等)で形成された板状部材であって、その後面11a側に格子状の溝部(易破断部)13を有する。溝部13は、樹脂パネル11の後面11aから前方へ凹んだ状態で上下方向に延びる複数の縦溝14と、樹脂パネル11の後面11aから前方へ凹んだ状態で車幅方向に延びる複数の横溝15とによって構成され、樹脂パネル11の後面11aの略全域に設けられる。複数の縦溝14は、車幅方向に所定の間隔で並列し、互いに平行となるように配置される。複数の横溝15は、上下方向に所定の間隔で並列し、互いに平行となるように配置される。樹脂パネル11は、後述する弾性シート12よりも剛性及び強度が非常に高い。
樹脂パネル11の板厚は、車両1と歩行者とが衝突して歩行者の頭部が樹脂パネル11に衝突した際に、衝突後の早期(衝突直後)に歩行者の頭部の加速度を上昇させて加速度の初期ピークを発生させるための質量を確保可能な厚さを、実験やシミュレーション等によって求め、求めた厚さに設定される。また、格子状の溝部13の深さ(又は、樹脂パネル11の薄肉の部分の厚さ)は、樹脂パネル11に所定の大きさ以上の面外荷重が作用した際に樹脂パネル11を破断させることが可能な深さ(又は、厚さ)に設定される。上記所定の大きさ以上の面外荷重は、歩行者の頭部の加速度が所望の大きさの初期ピークに達するときの歩行者の頭部から樹脂パネル11に作用する荷重であり、実験やシミュレーション等によって求める。
弾性シート12は、樹脂パネル11よりも剛性が低く、非常に破断伸びが大きい材料(例えば、ゴムやPVB(ポリビニルブチラール)樹脂等)で形成された弾性シート12であって、樹脂パネル11の後面11aに層状に重ねられ、樹脂パネル11に対して接着されて固定される。弾性シート12は、樹脂パネル11の後面11aの略全域に設けられる。弾性シート12の厚さや弾性率は、衝突直後の初期ピーク発生後に樹脂パネル11が破断して歩行者の頭部の加速度が低下した後、歩行者の頭部の加速度を低い加速度に維持して頭部のエネルギーを吸収可能な厚さや弾性率を、実験やシミュレーション等によって求め、求めた値に設定される。
次に、車両1と歩行者とが衝突した際の歩行者の頭部の加速度の経時的な変化(G波形)と、歩行者の頭部の保護との関係について、歩行者の頭部の保護に好適なG波形を表わす図4を参照して説明する。なお、図4の横軸は車両と歩行者の頭部との衝突時からの経過時間を示し、縦軸は歩行者の頭部の加速度を示す。
歩行者の頭部を保護するためには、歩行者の頭部の障害の大きさを示す頭部傷害値HIC(Head Injury Criteria)を所定の基準値(HIC=1000)よりも低く抑える必要がある。頭部傷害値HICは、歩行者の頭部の加速度や頭部が停止するまでの時間等によって算出される。図4に示すG波形では、歩行者の頭部の加速度を、衝突直後に歩行者の頭部が耐え得る範囲内のできるだけ高い値(例えば、200G程度)まで上昇させて、その後すぐに(例えば、衝突時から2ミリ秒以内に)所定の値(例えば、60G〜75G程度)まで低下させて、歩行者の頭部の加速度の初期ピークを衝突直後に発生させている。そして、歩行者の頭部の加速度が上記所定の値まで低下した後は、歩行者の頭部の加速度の変動が抑制されている。このように、衝突直後に高い値の加速度の初期ピークを発生させることにより、衝突後の早期に頭部のエネルギーを大きく低下させることができるので、頭部傷害値HICを抑制することができる。すなわち、図4に示すG波形を実現することによって、頭部傷害値HICを抑制して歩行者の頭部を保護することが理論上可能である。
上記のように構成されたフロントパネル10では、樹脂パネル11を備える。樹脂パネル11の板厚は、車両1と歩行者とが衝突して歩行者の頭部が樹脂パネル11に衝突した際に、衝突直後に歩行者の頭部の加速度の初期ピークを発生させるための質量を確保可能な厚さに設定される。このため、樹脂パネル11によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを衝突直後に発生させて、衝突後の早期に頭部のエネルギーを低下させることができる。
また、樹脂パネル11には、樹脂パネル11よりも破断伸びが大きい弾性シート12が層状に重ねられ固定されている。弾性シート12の厚さや弾性率は、衝突直後の初期ピーク発生後に樹脂パネル11が破断して歩行者の頭部の加速度が低下した後、歩行者の頭部の加速度を低い加速度に維持して頭部のエネルギーを吸収可能な値に設定される。このため、樹脂パネル11が破断して歩行者の頭部の加速度が低下した後(初期ピークの後)、弾性シート12によって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収することができる。
また、樹脂パネル11には、樹脂パネル11に上記所定の大きさ以上の面外荷重が作用した際に破断する格子状の溝部13が形成されている。上記所定の大きさ以上の面外荷重は、歩行者の頭部の加速度が所望の大きさの初期ピークに達するときの歩行者の頭部から樹脂パネル11に作用する荷重である。このため、樹脂パネル11を所望のタイミング(所望の大きさの初期ピークに達するタイミング)で破断させることができる。このように、歩行者の頭部の加速度の初期ピークの大きさやタイミング等をコントロールし易くなるので、衝突直後に頭部に初期ピークを発生させることによって衝突後の早期に頭部のエネルギーを低下させることができるとともに、初期ピークを発生させた後に加速度を低下させて弾性シート12によって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収することができる。
従って、本実施形態によれば、衝突直後に樹脂製の板状部材によって頭部の加速度に初期ピークを発生させて、その後、板状部材が破断して弾性シートによって頭部のエネルギーを吸収するので、衝突後半の再度の加速度の上昇を抑制することができ、頭部傷害値HICを抑制して歩行者の頭部を保護することができる。
また、フロントパネル10は、樹脂パネル11と弾性シート12とによって形成される2層の前部パネルであるので、例えば、アルミニウムや鋼材のパネルに比べて軽量である。
なお、本実施形態では、弾性シート(弾性シート材)12を樹脂パネル11に対して固定したが、これに限定されるものではなく、例えば、樹脂パネル11に対してゴムやPVB等の樹脂材(弾性シート材)を塗布したり又は吹き付けたりした後、乾燥させて固め、結果的に樹脂パネル11に層状に重ねられた状態で樹脂パネル11に対して固定された弾性シート材であってもよい。
また、本実施形態では、フロントパネル10の前面側に樹脂パネル11を設け、後面側に弾性シート12を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、フロントパネル10の後面側に樹脂パネル11を設け、前面側に弾性シート12を設けてもよい。
また、本実施形態では、樹脂パネル11の後面11aに溝部13を設けたが、これに限定されるものではなく、樹脂パネル11の前面又は両面に溝部13を設けてもよい。
また、本実施形態では、樹脂パネル11に格子状の溝部13を設けたが、溝部13の形状は、これに限定されるものではなく、様々な形状の溝部を設けることができる。また、本実施形態では、樹脂パネル11の全域に溝部13を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、一部の領域のみに溝部13を設けてもよい。
また、本実施形態では、易破断部として溝部13を樹脂パネル11に設けたが、易破断部は、溝に限定されない。易破断部は、例えば、樹脂パネル11に線状に並んだ複数の点状の薄肉部(易破断部)などであってもよい。
また、本実施形態では、樹脂パネル11に易破断部(溝部13)を設けたが、易破断部を設けなくてもよい。すなわち、易破断部を有さない樹脂パネル11と弾性シート12とによって形成された2層のフロントパネル10であってもよい。この場合であっても、樹脂パネル11は、樹脂パネル11であるので、例えば、アルミニウムや鋼材のパネルとは異なり、樹脂パネル11の板厚等を設定して樹脂パネル11を破断させることができる。このため、樹脂パネル11によって歩行者の頭部の加速度の初期ピークを発生させた後、樹脂パネル11を破断させることができ、弾性シート12によって低い加速度で頭部のエネルギーを吸収することができるので、衝突後半の再度の加速度の上昇を抑制することができる。
また、本実施形態では、フロントパネル10を樹脂パネル11と弾性シート12とによって2層に形成したが、樹脂パネル11及び弾性シート12に加え、他の樹脂パネルを弾性シート12の後面側に設け、この他の樹脂パネルと樹脂パネル11とによって弾性シート12を挟み込む3層のフロントパネルであってもよい。
また、本実施形態では、前部パネルを、車両1の前面部に固定されるフロントパネル10に適用したが、これに限定されるものではなく、例えば、前部パネルを、車両1の前面部に回転自在に支持されて車両1の前面部の開口を開閉自在に閉止するフロントリッドに適用してもよい。フロントリッドは、車両1の前面部の開口を閉止してロックされた状態で車両1の前部に固定的に支持される。
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る前部パネル構造を、キャブオーバー型のトラック等の車両1のフロントパネル10に適用したが、他の実施形態として、図5に示すように、乗用車等の車両5のボンネット(前部パネル)20等に適用してもよい。ボンネット20は、車両5の前部に回転自在に支持され、車両5の前部のエンジンルームの開口を開閉可能に閉止する。車両5の前部のエンジンルームの開口を閉止して、車体側にロックされた状態のボンネット20は、車両5の前部に固定的に支持される。すなわち、ボンネット20は、車両5の前部に固定的に支持されて外部に露出する。
1,5:車両
10:前部パネル構造
11:樹脂パネル(板状部材)
12:弾性シート(弾性シート材)
13:溝部(易破断部)

Claims (2)

  1. 車両の前部に固定的に支持されて外部に露出する車両の前部パネル構造であって、
    樹脂製の板状部材と、
    前記板状部材に層状に重ねられた状態で前記板状部材に対して固定された弾性シート材と、を備えた
    ことを特徴とする車両の前部パネル構造。
  2. 請求項1に記載の車両の前部パネル構造であって、
    前記板状部材には、前記板状部材に所定の大きさ以上の面外荷重が作用した際に破断する易破断部が形成されている
    ことを特徴とする車両の前部パネル構造。
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JP2020061088A (ja) * 2018-10-12 2020-04-16 一般財団法人日本自動車研究所 衝突傷害予測モデル作成方法、衝突傷害予測方法、衝突傷害予測システム及び先進事故自動通報システム

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JP7022674B2 (ja) 2018-10-12 2022-02-18 一般財団法人日本自動車研究所 衝突傷害予測モデル作成方法、衝突傷害予測方法、衝突傷害予測システム及び先進事故自動通報システム

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