以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
図1に、本発明の実施形態に係る印刷装置1の内部構成を示す。また、図2及び図3に、印刷装置1を、それぞれ横(Y方向)及び上(Z方向)から見た様子を示す。印刷装置1は、図示しない筐体の内部に、図1から図3に示す構成を備える。
印刷装置1は、インクを微滴化し、印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で印刷対象の画像を印刷する、いわゆるインクジェットプリンタである。印刷対象の画像は、印刷時に印刷媒体に描画される画像であって、例えば文字、図形、記号、模様、絵又はこれらの組み合わせ等である。印刷対象の画像は、印刷画像又は印刷パターン等ともいう。
また、印刷装置1は、長尺状の印刷媒体であるテープ3に印刷対象の画像を印刷し、テープ3を適宜の位置で切断してラベルを作成するラベルプリンタである。テープ3は、表面が印刷面であって裏面が粘着面である印刷テープと、粘着面に貼付される剥離テープと、が積層されて形成された印刷媒体である。
なお、図1から図3におけるX方向は、テープ3を搬送する方向(テープ3の長手方向)に相当する。Y方向は、搬送されるテープ3の幅方向(テープ3の短手方向)に相当する。Z方向は、印刷ヘッドからテープ3にインクが吐出(噴出)される方向(テープ3の印刷面に垂直な方向)に相当する。X、Y、Z方向の設定は、以降の図でも同様である。
図1に示すように、印刷装置1は、テープ収納部10と、モータ21と、インクキャリッジ30と、インクカートリッジ31と、キャリッジ搬送部35と、モータ36と、キャップ37と、廃インク受け(インクアブソーバ)38と、を備える。また、図2に示すように、印刷装置1は、ローラ13と、ローラ22と、位置検出ピンP1〜P4と、テープ繰出部16と、フルカット機構17と、ハーフカット機構18と、終端検出センサ25と、始端検出センサ26と、インク受け(インクアブソーバ)28と、を備える。
テープ収納部10は、テープ3を、テープコア12の周りにロール状に巻き回した状態で収納する。図2に示すように、テープ3は、テープカートリッジ11に搭載された状態で、テープ収納部10に収納される。テープカートリッジ11は、テープ3をテープコア12の周りに巻き回した状態で搭載した容器である。なお、理解を容易にするため、図1ではテープカートリッジ11を省略している。テープ収納部10は、ロール状に巻かれたテープ3を保持する保持手段として機能する。
テープ収納部10は、幅又は色等が異なる様々な種類のテープ3を搭載したテープカートリッジ11を、交換可能な状態で収納(装填)することができる。ユーザは、テープ収納部10に収納するテープカートリッジ11を交換することで、様々な種類のテープ3に印刷を実行することができる。
ローラ13は、テープカートリッジ11のテープ繰り出し口に設けられている。ローラ13は、テープカートリッジ11の内部に収納されたテープ3を外部に繰り出す繰り出しローラである。テープカートリッジ11がテープ収納部10にセットされた状態において、印刷が指示されると、ローラ13は、所定の回転速度で回転し、テープカートリッジ11に収納されたテープ3を、ローラ22へと送り出す。
ローラ22は、テープ収納部10に収納されたテープ3を搬送するテープ搬送機構である。ローラ22は、メインローラ又はプラテンローラともいう。ローラ22は、テープカートリッジ11内からローラ13によって送り出されたテープ3を挟持して搬送し、印刷ヘッド32による印刷位置へと供給する。ローラ22は、正転することでテープ3を送出し、逆転することでテープ3を巻き戻すことができる。
ローラ22の回転軸の端部には、少なくとも1個のローラ歯車(図示を省略)が係合されている。ローラ13及びローラ22の一方は、そのローラ歯車がモータ21の駆動軸に取り付けられた駆動歯車(図示を省略)に係合されており、駆動歯車の回転力の伝達によってローラ歯車が回転し、ローラ13及びローラ22の他方は、ローラ13及びローラ22の一方のローラ歯車に直接的或いは間接的に係合したローラ歯車を有し、ローラ13及びローラ22の一方のローラ歯車の回転に応じて回転する。これにより、ローラ13及びローラ22は、連動してテープ3を等しい速度で搬送するため、ローラ13及びローラ22間でテープ3の撚りが生じない。なお、ローラ13及びローラ22の一方のみにモータ21の駆動歯車の回転力を伝達させ、ローラ13及びローラ22の他方は、ローラ13及びローラ22の一方と歯車で係合することなく、ローラ13及びローラ22の一方の回転力に応じて搬送されるテープ3と接触することによって生じる力のモーメントにしたがって回転するようにしてもよい。
インクキャリッジ30は、インクカートリッジ31を着脱可能に収納するインクカートリッジ収納部である。インクカートリッジ31は、インクを充填したインクタンクである。ユーザは、インクタンク内のインク残量が少ない等、必要に応じて、インクキャリッジ30に収納されるインクカートリッジ31を交換することができる。
図2に示すように、インクキャリッジ30は、印刷ヘッド(インクジェットヘッド)32と、ヘッド可動部33と、を備える。印刷ヘッド32は、インクカートリッジ31に充填されたインクを吐出して、テープ3に印刷画像を印刷する印刷機構である。印刷ヘッド32は、印刷手段として機能する。
印刷ヘッド32には、複数のノズルがテープ3の幅方向(Y方向)及び搬送方向(X方向)に沿って配列されている。複数のノズル内のインクは、ヒータによって加熱されることで気泡を生じ、生じた気泡によって、複数のノズルのそれぞれからテープ3へ向けて(−Z方向に)インクが吐出される。このような原理によって、印刷ヘッド32は、テープ3に印刷画像を印刷する。
一例として、印刷ヘッド32の解像度は、1ドット当たり0.0423mmであり、印刷ヘッド32の有効印字幅は、14〜48mmである。テープ3の幅方向(Y方向)における印刷ヘッド32の長さは、テープ3の幅よりも長くなるように設けられている。すなわち、印刷ヘッド32は、1ライン当たり1回のパスで(シングルパス方式で)テープ3に印刷画像を印刷する。
ヘッド可動部33は、図示しないモータの駆動により印刷ヘッド32をテープ3の幅方向(Y方向)に移動させる移動機構と、図示しないモータの駆動により印刷ヘッド32をXY平面内において回転する回転機構と、を含む。ヘッド可動部33は、搬送されるテープ3の位置のずれに応じて、印刷ヘッド32の位置又は向きを変えることによって、印刷位置を調整することができる。
キャリッジ搬送部35は、インクキャリッジ30を左右(Y方向)に移動させる搬送機構である。キャリッジ搬送部35は、Y方向に沿って設けられたキャリッジベルトを備え、このキャリッジベルトにインクキャリッジ30が搭載されている。キャリッジベルトは、モータ36に接続されている。そして、モータ36の駆動によって、インクキャリッジ30を、印刷待機位置、印刷位置及び廃インク位置の間でY方向に沿って往復移動させることができる。
図3に示すように、印刷装置1は、キャリッジ搬送部35におけるインクキャリッジ30が移動する経路の下側に、キャップ37と、廃インク受け(インクアブソーバ)38と、を備える。なお、図3では、理解を容易にするため、インクキャリッジ30及びインクカートリッジ31等の構成については省略している。
キャップ37は、印刷ヘッド32からのインクの吐出不良を抑制するために、ノズルの吐出口に封をする部材である。ノズルの吐出口が空気中に露出すると、インクの乾燥又は増粘等によってノズル詰まりを起こす。これを回避するため、通常の待機時(非印刷時)には、インクキャリッジ30は、キャップ37の位置にあり、印刷ヘッド32のインクが乾燥しないように、ノズルのインク吐出口にキャップ37が被さっている。
廃インク受け38は、印刷ヘッド32から吐出された廃インクを吸収する部材である。廃インクとは、印刷ヘッド32に設けられたノズルの吐出不良の原因となり得るため、印刷に用いずに廃棄するインクをいう。インクキャリッジ30は、印刷前に廃インク受け38上に移動し、廃インクを廃インク受け38に吐出(スピット)する。これにより、印刷待機中に硬化した吐出口付近のインクが取り除かれて、ノズルがクリーニングされる。
印刷時には、図1に示すように、インクキャリッジ30は、キャリッジ搬送部35によって駆動され、テープ3の搬送経路の上へと移動する。言い換えると、キャリッジ搬送部35は、印刷開始が指示されると、インクキャリッジ30を、キャップ37がある印刷待機位置から、廃インクを吐出するために廃インク受け38上の位置を経由して、テープ3上の印刷位置へと移動させる。
図2に戻って、インク受け28は、テープ3の搬送経路の下側であって、印刷ヘッド32の真下の位置に設けられている。インク受け28は、テープ3への印刷時において印刷ヘッド32から吐出されたインクのうちのテープ3に付着しなかったインクを受ける。
終端検出センサ25及び始端検出センサ26は、テープ3の裏面に向けて光を出射する発光素子と、センサ対象物であるテープ3の裏面に当たって反射した光を受光する受光素子と、を有する反射型光学センサである。
終端検出センサ25は、テープ搬送経路における印刷位置の手前側に設置されており、テープ3の終端(後端)がこの終端検出センサ25の位置に到達したことを検出する。これにより、テープ収納部10に収納されたテープ3が無くなったことが検出される。これに対して、始端検出センサ26は、テープ搬送経路における印刷位置よりも後ろ側に設置されており、テープ3の始端(先端)がこの始端検出センサ26の位置に到達したことを検出する。このようなテープ3の始端の検出は、印刷開始位置等を決定するための基準となる。
テープ繰出部16は、印刷画像が印刷されたテープ3を、印刷装置1の筐体の外部に繰り出す。テープ繰出部16には、フルカット機構17と、ハーフカット機構18と、が組み込まれている。フルカット機構17は、テープ3の印刷テープと剥離テープとを共に幅方向に切断するフルカット手段である。ハーフカット機構18は、テープ3の印刷テープのみを切断し、剥離テープを切断しないハーフカット手段である。印刷が終了すると、設定により必要に応じてハーフカット機構18が作動して適宜ハーフカットを行い、フルカット機構17が作動してテープ3が幅方向に切断され、1枚のテープ状のラベルが作成される。
位置検出ピンP1〜P4は、ローラ22によって搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出するための部材である。位置検出ピンP1〜P4は、それぞれ、ローラ22によって搬送されるテープ3の適正位置に対する幅方向(Y方向)における位置のずれに応じて、テープ3の幅方向に位置が変化する部材である。位置検出ピンP1〜P4は、X−Y平面における断面形状が互いに径の等しい円形である円柱形状を有している。
図4に、テープ3の搬送経路における位置検出ピンP1〜P4の設置位置を示す。4本の位置検出ピンP1〜P4は、ローラ22によってテープ3が搬送される経路における、印刷ヘッド32よりも上流側の位置であって、ローラ22と印刷ヘッド32との間に、設置される。なお、図4においてテープ3上の斜線を付した部分は、印刷ヘッド32によって印刷画像が印刷された領域を示している。以降の図でも同様である。
より詳細に説明すると、図5〜図7に示すように、一対の位置検出ピンP1,P2及び一対の位置検出ピンP3,P4は、それぞれテープ3が搬送される方向(X方向)における異なる位置において、テープ3を挟み込む位置に設置されている。位置検出ピンP1,P2は、テープ3が搬送される経路における第1の位置においてテープ3を挟むように設置されている、第1の一対の部材である。位置検出ピンP3,P4は、テープ3が搬送される経路における第2の位置においてテープ3を挟むように設置されている、第2の一対の部材である。ローラ22によって搬送されるテープ3は、一対の位置検出ピンP1,P2の間と一対の位置検出ピンP3,P4の間とを通った後、印刷ヘッド32による印刷位置に搬送される。図5〜図7中の線Lは印刷ヘッド32の印刷可能な1ライン分の位置である。
図5に、テープ3及び4本の位置検出ピンP1〜P4を上(Z方向)から見た様子を示す。4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3に向けて(図5に示す矢印の向きに)微弱な力を加えながら、テープ3の幅方向における縁に接している。具体的に説明すると、位置検出ピンP1,P3は、テープ3の幅方向における一方側の縁(一方の側端)に接しており、位置検出ピンP2,P4は、テープ3の幅方向における他方側の縁(他方の側端)に接している。なお、図5に示す点線は、テープ3の幅方向の中心線を示している。以降の図でも同様である。
4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3の搬送方向(X方向)には固定されており、テープ3の幅方向(Y方向)にのみ移動する。相対的に大きい幅のテープ3が搬送される場合には、4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3の側端に押されてテープ3の外側に向けて移動する。これに対して、相対的に小さい幅のテープ3が搬送される場合には、4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3に向けた微弱な力によってテープ3の内側に向けて移動する。このように、4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3の側端に接するように、テープ3の幅に合わせて幅方向に移動する。
4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、テープ3の位置又は向きがずれることによってテープ3が幅方向に移動すると、その移動に伴って幅方向に移動する。
第1の例として、テープ3の位置が幅方向にずれた場合、4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、図6に示すように移動する。図6は、ローラ22によって搬送されるテープ3の位置が、位置検出ピンP1,P3が設置された側(+Y方向)にずれた場合の例を示している。
図6に示す例の場合、テープ3の一方の側端に接している位置検出ピンP1,P3は、テープ3に押されて+Y方向に移動する。且つ、テープ3の他方の側端に接している位置検出ピンP2,P4は、テープ3の移動に追従して+Y方向に移動する。このように、テープ3がその向きを変えずに幅方向に平行移動した場合、4つの位置検出ピンP1〜P4は、同じ向きに同じ量の距離を移動する。
第2の例として、水平面(XY平面)内におけるテープ3の搬送方向がずれた場合、4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、図7に示すように移動する。図7は、ローラ22によって搬送されるテープ3の向きが、印刷ヘッド32に近くなるほど+Y方向にずれた場合の例を示している。
図7に示す例の場合、位置検出ピンP2,P3は、テープ3に押されてそれぞれ−Y方向及び+Y方向(テープ3の外側に向けて)に移動する。且つ、位置検出ピンP1,P4は、テープ3の移動に追従してそれぞれ−Y方向及び+Y方向(テープ3の内側に向けて)に移動する。このように、テープ3がその向きを変えて斜行した場合、テープ3の搬送経路における第1の位置に設置された一対の位置検出ピンP1,P2と、テープ3の搬送経路における第2の位置に設置された一対の位置検出ピンP3,P4とは、異なる向きに、又は異なる量の距離を移動する。
多くの場合、ローラ22によって搬送されるテープ3のずれは、図6に示したような、その位置が幅方向に平行移動することによる位置のずれと、図7に示したような、その向きを変えることによる向きのずれと、が混合している。なお、図6及び図7において、点線は、テープ3の位置がずれていない場合におけるテープ3及び位置検出ピンP1〜P4を示している。
4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれは、自身の位置を検出する機能を有する。4本の位置検出ピンP1〜P4の位置に基づいて、テープ3の幅方向における位置、及びテープ3の向きを検出することができる。
続いて図8を参照して、印刷装置1の制御に係る構成について説明する。図8に示すように、印刷装置1は、中央制御回路(制御部)2、電源回路5、USB(Universal Serial Bus)制御回路40、Bluetooth(登録商標)モジュール・WLAN(Wireless Local Area Network)モジュール41、表示デバイス43、表示制御回路47、メモリ制御回路48、UI(ユーザインターフェイス)制御回路49、テープ搬送制御回路51、ヘッド制御回路52及びキャリッジ制御回路53を備える。制御部2には、終端検出センサ25と、始端検出センサ26と、位置検出ピンP1〜P4と、が接続されている。
中央制御回路2(以下、「制御部2」という。)は、CPU(Central Processing Unit)を含む回路である。制御部2は、命令及びデータを転送するための伝送経路であるバスを通じて印刷装置1内の各回路と接続され、印刷装置1のシステム全体を統括制御する。なお、図8では、各回路のほとんどは制御部2とのみ接続されているが、各回路同士がバスを通じてデータを通信することも可能である。
電源回路5は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、各回路に必要な電源を作り出して供給する。例えばテープ搬送制御回路51、ヘッド制御回路52及びキャリッジ制御回路53等の各回路は、電源回路5から電力を得て動作する。
テープ搬送制御回路51は、モータ21の駆動を制御するモータドライバを備え、テープ3の搬送を制御する。テープ搬送制御回路51は、制御部2から出力された駆動信号を受け取り、駆動用の電力をモータ21に供給する。テープ搬送制御回路51は、モータ21が1−2相励磁駆動等のステッピングモータの場合、モータ21に出力した駆動信号のパルス数を数えることにより、モータ21をどれだけ回転させたかを判別する。そして、テープ搬送制御回路51は、この回転数に基づいて、テープ3の搬送距離を判別し、モータ21がサーボモータの場合、PWM(Pulse Width Modulation)駆動信号のデューティー比に基づいてテープ3の搬送距離を判別する。
テープ搬送制御回路51は、終端検出センサ25及び始端検出センサ26における検出信号を制御部2から受け取ることによって、テープ収納部10に収納されたテープ3の有無及びテープ3の印刷開始位置等の情報を取得する。例えば、テープ搬送制御回路51は、始端検出センサ26によってテープ3の始端を検出すると、ローラ22の回転を逆転させてテープ3を巻き戻すことで、テープ3の始端を印刷開始位置にセットする。
ヘッド制御回路52は、印刷時における印刷ヘッド32からのインクの吐出を制御する。ヘッド制御回路52は、制御部2から出力された印刷データ(印刷すべき画像を示す画像データ)と印刷信号とを受け取って、内部に設けられたドライバICにて、印刷ヘッド32の通電ドットを制御する。これにより、ヘッド制御回路52は、印刷ヘッド32にインクを吐出させ、印刷を実行させる。また、ヘッド制御回路52は、ヘッド可動部33に駆動信号を送信して、印刷ヘッド32の位置及び向きを変更する。
キャリッジ制御回路53は、モータ36の駆動を制御するモータドライバを備え、キャリッジ搬送部35におけるインクキャリッジ30の搬送を制御する。キャリッジ制御回路53は、制御部2から出力された駆動信号を受け取り、駆動用の電力をモータ36に供給する。キャリッジ制御回路53は、モータ36に出力した駆動信号に基づいてモータ36をどれだけ回転させたかを判別する。そして、キャリッジ制御回路53は、この回転数に基づいて、インクキャリッジ30の搬送距離を判別する。
表示制御回路47は、表示デバイス43へのデータ転送等を制御する。表示デバイス43は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等を備えた表示手段である。表示制御回路47は、表示情報を制御部2から取得して、表示デバイス43に表示させる。
メモリ制御回路48は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリ(記憶手段)を備える。ROMは、例えばNAND型フラッシュメモリ等であって、制御部2が各種処理を行うために使用する各種プログラム及びデータを記憶している。RAMは、例えばDDR(Double Data Rate)メモリ等であって、制御部2が各種処理を行うことにより生成又は取得する各種データを一時的に記憶する。
UI制御回路49は、キーボード、マウス、リモコン、ボタン又はタッチパネル等の入力デバイス(入力手段)に接続されている。UI制御回路49は、入力デバイスを介してユーザの操作入力を受け付ける入力受付手段として機能する。UI制御回路49は、受け付けた操作入力を示す情報を制御部2に供給する。
USB制御回路40は、印刷装置1とは独立した外部機器であるPC(Personal Computer)44と印刷装置1との間のUSBによる通信を制御する。PC44は、USB制御回路40を介して印刷装置1に印刷データ等を送信する。Bluetooth(登録商標)モジュール・WLANモジュール41は、印刷装置1が外部機器と無線通信するためのモジュールである。ユーザは、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、携帯端末を介して各種データを印刷装置1に送信することができる。また、PC44は、USB制御回路40の替わりにBluetooth(登録商標)モジュール・WLANモジュール41を介して印刷装置1に印刷データ等を送信しても良い。
図9に、印刷装置1の機能的な構成を示す。印刷装置1は、機能的に、印刷データ取得部110と、テープ搬送部120と、印刷実行部130と、テープ位置検出部140と、印刷ヘッド補正部150と、を備える。
印刷データ取得部110は、テープ3に印刷すべき印刷データを取得する。印刷データは、テープ3の印刷面に描画する印刷画像を示す画像データ、印刷枚数及び印刷面上における縦横の印刷サイズ等の情報を含むデータである。印刷データは、例えばPC44において、予めインストールされたプリンタドライバを介してユーザからの操作指示を受け付けることによって生成されるものでもよく、メモリ制御回路48内に予め記憶された印刷データでもよい。印刷データにおける画像データは、文字、記号、ロゴ、キャラクタ、マーク、写真等の画像データを含む。
印刷データ取得部110は、テープ3に印刷すべき文字、図形、記号、絵又はこれらの組み合わせ等を示す印刷画像を示す印刷データを、USB制御回路40又はBluetooth(登録商標)モジュール・WLANモジュール41等を介して、PC44から取得する。このように、印刷データ取得部110は、制御部2が、USB制御回路40又はBluetooth(登録商標)モジュール・WLANモジュール41等と協働することにより、実現される。印刷データ取得部110は、印刷データ取得手段として機能する。
テープ搬送部120は、印刷媒体であるテープ3を搬送する。テープ3は、ロール状に巻かれた状態でテープ収納部10に収納されている。テープ搬送部120は、ロール状に巻かれたテープ3をテープ収納部10から巻き出して、テープ3の長手方向(すなわちX方向)へ向けて、搬送する。
具体的に説明すると、テープ搬送部120は、テープ搬送制御回路51によるモータ21の駆動によってローラ13及びローラ22を回転させて、テープ収納部10にロール状に巻かれた状態で収納されたテープ3を繰り出すとともに繰り出したテープ3を予め定められた速度で搬送し、印刷ヘッド32による印刷位置へと送り出す。このように、テープ搬送部120は、制御部2の制御のもと、テープ搬送制御回路51が、ローラ13、モータ21及びローラ22等と協働することにより、実現される。テープ搬送部120は、搬送手段として機能する。
印刷実行部130は、印刷データ取得部110によって取得された印刷データに従って、テープ搬送部120によって搬送されるテープ3に印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷実行部130は、ヘッド制御回路52を介して印刷ヘッド32を制御し、印刷ヘッド32からテープ3の印刷面にインクを吹き付けることによって、印刷画像を印刷する。このように、印刷実行部130は、制御部2の制御のもと、ヘッド制御回路52が印刷ヘッド32と協働することにより、実現される。印刷実行部130は、印刷実行手段として機能する。
テープ位置検出部140は、テープ搬送部120によって搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出する。搬送されるテープ3の位置のずれとは、例えば図6に示したように、テープ3が搬送される位置が本来あるべき位置よりもテープ3の幅方向(Y方向)にシフトすることを意味する。搬送されるテープ3の向きのずれとは、例えば図7に示したように、テープ3が搬送される向きが、水平面(XY平面)内において、本来あるべき向きに対してどちらか一方側に傾くことを意味する。
テープ位置検出部140は、搬送されるテープ3に接するように設置された4本の位置検出ピンP1〜P4の位置を取得する。そして、テープ位置検出部140は、取得した4本の位置検出ピンP1〜P4のそれぞれの位置が時間に伴って変化する量を評価することによって、搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出する。このように、テープ位置検出部140は、制御部2が、位置検出ピンP1〜P4と協働することによって実現される。テープ位置検出部140は、検出手段として機能する。
以下、図10を参照して、水平面(XY平面)内における位置座標を用いて説明する。図10に示すように、位置検出ピンP1の位置座標を(Xa,Ya1)と表し、位置検出ピンP2の位置座標を(Xa,Ya2)と表し、位置検出ピンP3の位置座標を(Xb,Yb1)と表し、位置検出ピンP4の位置座標を(Xb,Yb2)と表す。位置検出ピンP1,P2及び位置検出ピンP3,P4は、それぞれ、テープ3が搬送される方向における第1の位置Xa及び第2の位置Xbに設置されている。位置検出ピンP1〜P4は、テープ3が搬送される方向には固定されているため、第1の位置Xa及び第2の位置Xbは変化しない。
テープ位置検出部140は、一対の位置検出ピンP1,P2の位置に基づいて、第1の位置Xaにおけるテープ3の幅方向における位置を検出し、一対の位置検出ピンP3,P4の位置に基づいて、第2の位置Xbにおけるテープ3の幅方向における位置を検出する。具体的に説明すると、テープ位置検出部140は、テープ3の幅方向における位置として、テープ3のY方向における中心位置(以下、「テープ3の位置」という。)を検出する。
上記のような座標系において、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置は、一対の位置検出ピンP1,P2の中間の位置(Ya1+Ya2)/2であり、第2の位置Xbにおけるテープ3の位置は、一対の位置検出ピンP1,P2の中間の位置(Yb1+Yb2)/2である。テープ位置検出部140は、4本の位置検出ピンP1〜P4の位置座標を取得し、取得した位置座標から、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と、第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2と、を計算する。
テープ位置検出部140は、第1の位置Xaにおいて検出したテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と、第2の位置において検出したテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2と、の差に基づいて、搬送されるテープ3の幅方向における位置のずれと、搬送されるテープ3の向きのずれと、を検出する。以下、3つの場合に分けて説明する。
(1)第1に、搬送されるテープ3の位置と向きとが共にずれていない場合、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と、第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2とは、どちらも規定の位置Y0に等しくなる。規定の位置Y0とは、印刷ヘッド32がテープ3に正しく印刷可能な、テープ3の幅方向における中心位置であり、図5に示す点線におけるY座標値に相当する。規定の位置Y0は、予め定められており、ROM等のメモリに記憶されている。
テープ位置検出部140は、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2とを、それぞれ規定の位置Y0と比較する。比較の結果、規定の位置Y0との差がそれぞれテープ位置検出部140の検出誤差の範囲内であれば、テープ位置検出部140は、搬送されるテープ3の位置と向きとが共にずれていないと判定する。
(2)第2に、搬送されるテープ3の位置はずれているが、その向きはずれていない場合、テープ3は、図6に示したように幅方向に平行移動している。この場合、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2とはどちらも規定の位置Y0から外れ、且つ、これら2つの位置は等しくなる。
そのため、テープ位置検出部140は、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2とがどちらも規定の位置Y0とはテープ位置検出部140の検出誤算の範囲を超えて異なり、且つ、これら2つの位置がテープ位置検出部140の検出誤差の範囲内で互いに等しい場合に、搬送されるテープ3の位置がずれていると判定する。
(3)第3に、搬送されるテープ3の向きがずれている場合、テープ3は、図7に示したように斜行している。この場合、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2との少なくとも一方が規定の位置Y0からテープ位置検出部140の検出誤算の範囲を超えて外れ、且つ、これら2つの位置はテープ位置検出部140の検出誤算の範囲を超えて互いに異なる。
そのため、テープ位置検出部140は、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2との少なくとも一方が規定の位置Y0とはテープ位置検出部140の検出誤算の範囲を超えて異なり、且つ、これら2つの位置がテープ位置検出部140の検出誤算の範囲を超えて互いに異なっている場合に、搬送されるテープ3の向きがずれていると判定する。
このように、搬送されるテープ3の位置又は向きがずれている場合、補正をせずに印刷すると、テープ3上の印刷位置が正常な位置からずれて、印刷ずれが生じる。例えば、搬送されるテープ3の位置が幅方向にずれている場合、印刷画像は、修正しない限りテープ3上に幅方向にずれて印刷される。また、搬送されるテープ3の向きがずれている場合、印刷画像は、修正しない限りテープ3上に斜めに傾斜されて印刷される。
このような印刷ずれを回避するため、印刷ヘッド補正部150は、テープ位置検出部140によって検出されたテープ3の位置又は向きのずれに応じて、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正する。具体的に説明すると、印刷ヘッド補正部150は、テープ位置検出部140によってテープ3の位置又は向きの少なくとも一方がずれていることが検出された場合、印刷ヘッド32を幅方向に移動させる、又は、印刷ヘッド32を回転させることによって、印刷ヘッド32の位置又は向きを、搬送されるテープ3の位置又は向きのずれに合わせる。
テープ3を補正せずに印刷ヘッド32を補正するのは、テープ3はローラ22によって挟まれて搬送されているため、テープ3の位置又は向きがずれたとしても、印刷ヘッド32の位置を変えることなくテープ3を動かして補正することが難しいからである。
テープ位置検出部140によってテープ3の位置又は向きがずれていることが検出されると、印刷ヘッド補正部150は、4本の位置検出ピンP1〜P4の位置に基づいて、印刷ヘッド32の位置又は向きの補正値を計算する。
具体的に説明すると、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32の向きの補正値として、印刷ヘッド32の回転角度θを計算する。回転角度θは、第1の位置Xaと第2の位置Xbと間の距離(XbーXa)と、第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Ya1+Ya2)/2と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Yb1+Yb2)/2との差と、の逆正接(arctan)を計算することで、下記(A)式のように計算される。
θ=arctan[{(Yb1+Yb2)/2−(Ya1+Ya2)/2}/(Xb−Xa)] …(A)
また、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32の位置の補正値として、印刷ヘッド32の目標位置座標(Xh,Yh)、及び位置補正量ΔYを計算する。テープ3の位置ズレがない場合、目標位置座標(Xh,Yh)は、図5における線Lとテープ3の幅方向の中心線とが交差するXY平面座標値である。印刷ヘッド32の目標位置座標(Xh,Yh)は、テープ位置検出部140によって検出された第1の位置Xaにおけるテープ3の位置(Xa,(Ya1+Ya2)/2)と第2の位置Xbにおけるテープ3の位置(Xb,(Yb1+Yb2)/2)とを外挿した位置に相当する。そのため、印刷ヘッド32の幅方向における目標位置Yhは、4本の位置検出ピンP1〜P4の座標を用いて、下記(B)式のように計算される。
Yh=(Xh−Xa)*tanθ+(Ya1+Ya2)/2
={(Yb1+Yb2)/2−(Ya1+Ya2)/2}*(Xh−Xa)/(Xb−Xa)+(Ya1+Ya2)/2 …(B)
更に、印刷ヘッド32の位置補正量ΔYは、印刷ヘッド32の位置Yhと規定の位置Y0との差として、下記(C)式のように定められる。テープ3の位置及び向きがずれていない場合には、印刷ヘッド32の幅方向における位置Yhは規定の位置Y0に等しいため、位置補正量ΔYは0になる。
ΔY=Yh−Y0
={(Yb1+Yb2)/2−(Ya1+Ya2)/2}*(Xh−Xa)/(Xb−Xa)+(Ya1+Ya2)/2−Y0 …(C)
このようにして補正値として回転角度θ、目標位置Yh及び位置補正量ΔYを計算すると、印刷ヘッド補正部150は、計算した補正値に従って、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正する。具体的に説明すると、印刷ヘッド補正部150は、ヘッド可動部33に駆動信号を送信し、ヘッド可動部33を駆動させることで、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正する。印刷ヘッド補正部150は、制御部2の制御のもと、ヘッド制御回路52がヘッド可動部33と協働することにより、実現される。印刷ヘッド補正部150は、補正手段として機能する。
図11に、印刷ヘッド32の位置を幅方向に補正する場合の例を示す。図11に示すように、搬送されるテープ3の向きがずれずにテープ3の幅方向における位置がずれた場合、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32の幅方向における位置を補正する。
具体的に説明すると、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32を幅方向に位置補正量ΔYの距離だけ動かし、規定の位置Y0から目標位置Yhに移動させる。これにより、印刷ヘッド32の幅方向における中心位置は、テープ3の幅方向における中心位置と合致する。なお、図11に示すように搬送されるテープ3の向きがずれていない(回転角度θ=0)場合には、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32を回転させない。
図12に、印刷ヘッド32の位置と向きとをどちらも補正する場合の例を示す。図12に示すように、搬送されるテープ3の向きがずれた場合、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32の幅方向における位置と向きとをどちらも補正する。
具体的に説明すると、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32を幅方向に位置補正量ΔYの距離だけ動かし、規定の位置Y0から目標位置Yhに移動させる。これに加え、印刷ヘッド補正部150は、印刷ヘッド32を、位置ズレがない場合の印刷ヘッド32における規定の位置Y0に相当する位置を回転中心としてテープ3が傾いた向きに回転角度θだけ回転させる。これにより、印刷ヘッド32の幅方向における中心位置がテープ3の幅方向における中心位置と合致し、且つ、印刷ヘッド32の向きがテープ3の向きと合致する。
このように、印刷ヘッド補正部150は、搬送されるテープ3の位置又は向きがずれると、それに追従して印刷ヘッド32の位置又は向きを補正する。これにより、テープ3が搬送されている最中に搬送ずれが生じたとしても、テープ3と印刷ヘッド32との間の相対的な位置関係を維持することができる。そのため、テープ3上の適切な位置に印刷画像を印刷することができる。また、4本の位置検出ピンP1〜P4はテープ搬送方向の上流に位置するため、テープ3上の印刷すべき位置が印刷ヘッド32のインク吐出位置である線Lに到達する前に、印刷ヘッド補正部150が補正することができるので、補正が遅れて所望の印刷位置に印刷できないといったことがない。
以上のような印刷装置1において実行される印刷処理の流れについて、図13に示すフローチャートを参照して、説明する。
印刷開始前に、ユーザは、所望のテープ3を搭載したテープカートリッジ11を、予めテープ収納部10に収納(装填)しておく。このような状態において、印刷データ取得部110として機能する制御部2が、ユーザがテープ3への印刷を所望する画像を示す画像データ(印刷データ)及び印刷開始の指示を、UI制御回路49、又はPC44からUSB制御回路40を介して取得すると、図13に示す印刷処理は開始する。
印刷処理が開始すると、制御部2は、テープ3の搬送を開始する(ステップS1)。
具体的に説明すると、制御部2は、印刷開始の指示を取得すると、キャリッジ制御回路53を介してモータ36を駆動させて、キャップ37の位置で待機していたインクキャリッジ30を、廃インク受け38上の位置を経由して、図4に示したように、テープ3の搬送経路の上へと移動させる。インクキャリッジ30が廃インク受け38上の位置にある時には、制御部2は、ヘッド制御回路52を介して印刷ヘッド32を制御して、廃インク受け38に廃インクを吐出させて、印刷ヘッド32をクリーニングする。
そして、制御部2は、テープ搬送制御回路51を介してモータ21を駆動させて、ローラ13及びローラ22を回転させる。これにより、制御部2は、ロール状に巻かれたテープ3をテープ収納部10から巻き出して、テープ3の搬送を開始する。ステップS1において、制御部2は、テープ搬送部120として機能する。
テープ3の搬送を開始すると、制御部2は、印刷ヘッド32による印刷位置(インク吐出位置)に、テープ3上の印刷開始位置をセットする(ステップS2)。具体的に説明すると、制御部2は、搬送されているテープ3の始端を始端検出センサ26によって検出すると、規定ステップだけローラ22を逆転させることで、テープ3の始端を印刷ヘッド32の真下に配置する。このようにして、制御部2は、印刷開始位置として、テープ3の始端を印刷ヘッド32による印刷位置にセットする。
印刷開始位置をセットすると、制御部2は、搬送されるテープ3のずれを検出したか否かを判定する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部2は、搬送されるテープ3に接するように設置された4本の位置検出ピンP1〜P4の位置を取得する。そして、制御部2は、取得した4本の位置検出ピンP1〜P4の位置に基づいて、図6に示したようにテープ3が搬送される位置の幅方向(Y方向)にシフトしているか、図7に示したようにテープ3が搬送される向きが傾いているか、又は、テープ3の位置と向きとがどちらもずれていないかを判定する。ステップS3において、制御部2は、テープ位置検出部140として機能する。
搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出した場合(ステップS3;YES)、制御部2は、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正するための補正値を計算する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部2は、搬送されるテープ3の向きがずれている場合、向きの補正値として、上述した(A)式に従って、印刷ヘッド32の回転角度θを計算する。また、制御部2は、搬送されるテープ3の幅方向における位置がずれている場合、位置の補正値として、上述した(B)式及び(C)式に従って、印刷ヘッド32の目標位置Yh及び位置補正量ΔYを計算する。
補正値を計算すると、制御部2は、計算した補正値に従って、印刷ヘッド32を補正する(ステップS5)。具体的に説明すると、制御部2は、ヘッド可動部33を駆動させて、印刷ヘッド32を幅方向に位置補正量ΔYだけ移動させる。これに加えて、制御部2は、搬送されるテープ3の向きがずれている場合には、印刷ヘッド32をテープ3がずれた向きに回転角度θだけ回転させる。ステップS4及びステップS5において、制御部2は、印刷ヘッド補正部150として機能する。
これに対して、ステップS3において、搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出しなかった場合(ステップS3;NO)、印刷ヘッド32を補正する必要はないため、制御部2は、ステップS4及びステップS5の処理をスキップする。
続いて、制御部2は、印刷を実行する(ステップS6)。具体的に説明すると、制御部2は、ヘッド制御回路52を介して印刷ヘッド32を制御して、印刷ヘッド32からインクを吐出することにより、印刷が指示された印刷画像を、搬送されているテープ3の印刷面に印刷する。ステップS6において、制御部2は、印刷実行部130として機能する。
印刷を実行している間、制御部2は、印刷ヘッド32による印刷位置が、テープ3上の印刷終了位置に達したか否かを判定する(ステップS7)。具体的に説明すると、制御部2は、指示された印刷画像を印刷するのに必要な長さ分、印刷開始位置からテープ3を搬送したか否かを判定する。指示された印刷画像を印刷するのに必要な長さ分、印刷開始位置からテープ3を搬送していない場合、制御部2は、印刷位置が印刷終了位置に達していないと判定する。
印刷位置が印刷終了位置に達していない場合(ステップS7;NO)、制御部2は、印刷処理をステップS3に戻し、ステップS3からステップS7までの処理を再度実行する。言い換えると、制御部2は、テープ3の位置ずれを検出し、補正値を計算して、印刷ヘッド32の位置を補正しながら、印刷を実行する。制御部2は、このような印刷ヘッド32の位置を補正する処理を、印刷ヘッド32が1ライン分の印刷を実行する度に繰り返す。
最終的に、印刷位置が印刷終了位置に達すると(ステップS7;YES)、制御部2は、印刷を終了する(ステップS8)。このようにして、制御部2は、テープ3上における印刷開始位置から印刷終了位置までの領域に、指示された印刷画像を印刷する。
印刷を終了すると、制御部2は、印刷ヘッド32を初期化する(ステップS9)。具体的に説明すると、制御部2は、印刷中に印刷ヘッド32の位置を補正した場合には、ヘッド可動部33を駆動させて、印刷ヘッド32の位置を初期位置に移動させる。更に、制御部2は、印刷中に印刷ヘッド32の向きを補正した場合には、ヘッド可動部33を駆動させて、印刷ヘッド32の向きを初期の向きに戻す。
印刷ヘッド32を初期化すると、制御部2は、テープカット位置までテープ3が搬送されたかを判定する(ステップS10)。具体的に説明すると、制御部2は、印刷を終了した後、テープ搬送制御回路51を介して更にテープ3を搬送させる。そして、制御部2は、テープ3上の印刷終了位置が、フルカット機構17の位置まで達したか否かを判定する。テープカット位置までテープ3が搬送されていない場合(ステップS10;NO)、制御部2は、ステップS10に留まり、テープ3の搬送を続ける。
最終的に、テープカット位置までテープ3が搬送されると(ステップS10;YES)、制御部2は、テープ3の搬送を停止する(ステップS11)。具体的に説明すると、制御部2は、テープ搬送制御回路51を介してモータ21及びローラ22等の駆動を停止させて、テープ収納部10に収納されたテープ3の搬送を停止する。
テープ3の搬送を停止すると、制御部2は、テープ3をカットする(ステップS12)。具体的に説明すると、制御部2は、フルカット機構17を駆動させて、テープ3をカットする。以上によって、図13のフローチャートに示した印刷処理は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る印刷装置1は、テープ搬送部120によって搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出し、テープ3の位置又は向きのずれに応じて、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正する。これにより、テープ3の搬送ずれに伴って生じる印刷ずれを抑えることができるため、印刷対象の画像をテープ3に精度良く印刷することができる。
本実施形態に係る印刷装置1は、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正するため、テープ3が幅方向にシフトしてずれた場合でも、又はテープ3が搬送される向きがずれた場合でも、テープ3の搬送ずれを柔軟に吸収することができる。また、印刷ヘッド32が移動又は回転可能な範囲内であれば、比較的大きな搬送ずれに対しても、印刷ヘッド32の位置又は向きを補正することができ、印刷対象の画像をテープ3上の正確な位置に印刷することができる。
また、本実施形態に係る印刷装置1は、テープ3の搬送経路における第1の位置及び第2の位置に設置された二対の位置検出ピンP1〜P4によって、テープ3の位置及び向きのずれを検出する。二対の位置検出ピンP1〜P4を用いることで、簡易な構成でずれを検出することができる。また、二対の位置検出ピンP1〜P4を印刷ヘッド32による印刷位置よりも上流側に設置していることで、印刷ヘッド32による印刷が開始される前に、テープ3の搬送ずれを検出して印刷ヘッド32を補正することができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、テープ位置検出部140は、テープ3の幅方向に位置が変化する部材である4本の位置検出ピンP1〜P4によって、搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出した。しかしながら、本発明において、テープ位置検出部140は、位置検出ピンP1〜P4以外の手段によって、搬送されるテープ3の位置又は向きのずれを検出しても良い。
例えば、発光部と受光部とを備えた光学センサを搬送されるテープ3の側端部に設置し、テープ位置検出部140が、発光部から発せられた光を受光部が受信したか、又はテープ3の側端部に遮られて受信できなかったによって、テープ3の幅方向における位置のずれを検出しても良い。テープ3の搬送経路における第1の位置と第2の位置とにそれぞれ光学センサを設置し、テープ位置検出部140が、第1の位置において検出した位置のずれと第2の位置において検出した位置のずれとの差に基づいて、テープ3の向きのずれを検出しても良い。
上記実施形態では、テープ位置検出部140は、テープ搬送部120によって搬送されるテープ3の位置のずれと向きのずれとをどちらも検出した。しかしながら、本発明において、テープ位置検出部140は、テープ搬送部120によって搬送されるテープ3の位置のずれと向きのずれとのうちのどちらか一方のみを検出するものであっても良い。
例えば、印刷装置1の構造上、テープ3の向きがずれることが起こり難い場合、テープ位置検出部140は、テープ3の幅方向における位置のずれのみを検出し、印刷ヘッド補正部150は、テープ位置検出部140によって検出された位置のずれに応じて、印刷ヘッド32の位置を補正する。或いは、印刷装置1の構造上、テープ3が幅方向にシフトすることが起こり難い場合、テープ位置検出部140は、テープ3が搬送される向きのずれのみを検出し、印刷ヘッド補正部150は、テープ位置検出部140によって検出された向きのずれに応じて、印刷ヘッド32の位置及び向きを補正する。このように、搬送されるテープ3の位置のずれと向きのずれとのうちのどちらか一方のみを検出することができれば、テープ3の搬送ずれに起因する印刷ずれを抑えて、印刷対象の画像をテープ3に精度良く印刷することができる。
テープ位置検出部140がテープ3の位置のずれと向きのずれとのうちのどちらか一方のみを検出する場合には、二対の位置検出ピンP1〜P4のうちの、一対の位置検出ピンP1,P2のみ、一対の位置検出ピンP3,P4のみ、又は、いずれか1つの位置検出ピンのみが設置されていれば良い。言い換えると、テープ3の搬送経路における1つの位置にのみ位置検出ピンが設置されていれば、テープ位置検出部140は、その位置検出ピンからテープ3の位置のずれと向きのずれとのうちのどちらか一方を検出することができる。
上記実施形態では、印刷装置1は、印刷データ取得部110を備え、自装置の外部の機器であるPC44から印刷データを取得した。しかしながら、印刷データを生成して印刷装置1に送信する外部の機器は、PC44に限らず、スマートフォン又はタブレット等の端末機器であっても良い。また、本発明に係る印刷装置は、印刷データを外部の機器から取得しなくても良い。例えば、印刷装置は、自装置内の記憶部に印刷データを記憶しておき、この記憶部から印刷データを取得しても良い。
上記実施形態では、印刷装置1は、インクジェット方式のプリンタであった。しかしながら、本発明において、印刷装置1は、インクジェット方式に限らず、印刷ヘッドの位置又は向きを変更可能な印刷装置であれば、どのような方式で印刷するものであっても良い。
上記実施形態では、印刷装置1は、長尺状のテープ3を印刷媒体として用いるラベルプリンタであった。しかしながら、印刷装置1は、ラベルプリンタであることに限らず、カット紙等の予めカットされた印刷媒体を搬送して、印刷対象の画像を印刷する方式の印刷装置であっても良い。また、印刷媒体の材質は、紙であることに限らず、例えばフィルム、プラスチック、金属又は繊維等、インクを付着させることができるものであればどのようなものであってもよい。
上記実施形態では、印刷装置1において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、印刷データ取得部110、テープ搬送部120、印刷実行部130、テープ位置検出部140及び印刷ヘッド補正部150のそれぞれとして機能した。しかしながら、本発明において、印刷装置1は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、印刷データ取得部110、テープ搬送部120、印刷実行部130、テープ位置検出部140及び印刷ヘッド補正部150のそれぞれとして機能しても良い。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現しても良いし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた印刷装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る印刷装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した印刷装置1による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る印刷装置として機能させることができる。また、本発明に係る印刷方法は、印刷装置を用いて実施できる。
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネット等の通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信しても良い。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成しても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体に、印刷対象の画像を印刷する印刷手段と、
前記印刷手段よりも前記印刷媒体の搬送方向における上流側に位置し、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体の位置又は向きのずれを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記位置又は向きのずれに応じて、前記印刷手段の位置又は向きを補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
(付記2)
前記検出手段は、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体の幅方向における前記位置のずれを検出し、
前記補正手段は、前記検出手段によって検出された前記幅方向における前記位置のずれに応じて、前記印刷手段の前記幅方向における前記位置を補正する、
ことを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記3)
前記検出手段は、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体の前記向きのずれを検出し、
前記補正手段は、前記検出手段によって検出された前記向きのずれに応じて、前記印刷手段の幅方向における前記位置と、前記印刷手段の前記向きと、を補正する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の印刷装置。
(付記4)
前記検出手段は、前記搬送手段が前記印刷媒体を搬送する経路における第1の位置において、前記印刷媒体の幅方向における前記位置を検出し、前記経路における第2の位置において、前記印刷媒体の前記幅方向における前記位置を検出し、前記第1の位置において検出した前記位置と前記第2の位置において検出した前記位置との差に基づいて、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体の前記幅方向における前記位置と、前記印刷媒体の前記向きのずれと、を検出する、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の印刷装置。
(付記5)
前記第1の位置おいて前記印刷媒体を前記幅方向に挟むように設置され、前記印刷媒体の前記位置のずれに応じて前記幅方向に位置が変化する第1の一対の部材と、
前記第2の位置おいて前記印刷媒体を前記幅方向に挟むように設置され、前記印刷媒体の前記位置のずれに応じて前記幅方向に位置が変化する第2の一対の部材と、
を更に備え、
前記検出手段は、前記第1の一対の部材の前記位置に基づいて、前記第1の位置における前記印刷媒体の前記幅方向における前記位置を検出し、前記第2の一対の部材の前記位置に基づいて、前記第2の位置における前記印刷媒体の前記幅方向における前記位置を検出する、
ことを特徴とする付記4に記載の印刷装置。
(付記6)
ロール状に巻かれた前記印刷媒体を保持する保持手段、
を更に備え、
前記搬送手段は、ロール状に巻かれた前記印刷媒体を前記保持手段から巻き出して搬送する、
ことを特徴とする付記1から5のいずれか1つに記載の印刷装置。
(付記7)
前記印刷手段は、インクジェット方式で、前記印刷媒体に前記印刷対象の画像を印刷する、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の印刷装置。
(付記8)
印刷媒体を搬送し、
搬送される前記印刷媒体に、印刷手段によって印刷対象の画像を印刷し、
前記印刷手段よりも前記印刷媒体の搬送方向における上流側において、搬送される前記印刷媒体の位置又は向きのずれを検出し、
検出した前記位置又は向きのずれに応じて、前記印刷手段の位置又は向きを補正する、
ことを特徴とする印刷方法。
(付記9)
コンピュータを、
印刷媒体を搬送する搬送手段、
前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体に、印刷対象の画像を印刷する印刷手段、
前記印刷手段よりも前記印刷媒体の搬送方向における上流側に位置し、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体の位置又は向きのずれを検出する検出手段、
前記検出手段によって検出された前記位置又は向きのずれに応じて、前記印刷手段の位置又は向きを補正する補正手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。