以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である汚泥かき寄せ装置が設置された沈殿池の側断面図である。
図1に示す沈殿池1は、上流壁1aと、下流壁1bと、一対の側壁1cによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。この沈殿池1は、長手方向の一端側(図1では左側)から汚水や雨水といった下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底部1dに沈殿させ、他端側(図1では右側)から排水する。以下、図1における左方向を上流と称し、図1における右方向を下流と称することがある。また、図1において紙面に直交する方向を池幅方向と称することがある。
図1に示すように、この沈殿池1には、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10と、スカム除去装置30と、排水樋40と、汚泥ピット50が設けられている。排水樋40は沈殿池1の下流側部分に設けられており、汚泥ピット50は沈殿池1の上流側部分に設けられている。
本実施形態の汚泥かき寄せ装置10は、沈殿池1の池幅方向の両端部それぞれに設けられ、沈殿池1内を走行する一対の無端チェーン11と、その一対の無端チェーン11の間に掛け渡された複数のフライト板12と、フライト板12が後述するトラフ32に接触することを防止する保護機構13とを備えている。無端チェーン11それぞれは、池底部1dに沿って延在するかき寄せ軌道T1と、沈殿池1の下流側でかき寄せ軌道T1から水面Wに向かって延びた通過軌道T2と、沈殿池1の上流側でかき寄せ軌道T1から水面Wに向かって延びた上流側軌道T3と、水面W側で上流側と下流側を結ぶ水面軌道T4とがつながった周回軌道を形成した環状のチェーンである。水面軌道T4は、水面W近傍で水面にほぼ沿って延在する軌道である。各無端チェーン11の、水面軌道T4に位置している部分(以下の説明では、水面軌道部分11aと称することがある)の池幅方向両側近傍には、水面Wにほぼ沿って延在するガイド部材9が設けられている。このガイド部材9については、後に詳述する。また、通過軌道T2は、トラフ32の下方であって、トラフ32の近傍を通過する軌道である。なお、図1では、無端チェーン11を上記周回軌道で示している。
各軌道T1〜T4の両端部分には、各軌道T1〜T4を接続するスプロケット14〜17が配置されている。これらのスプロケット14〜17は、上記周回軌道よりも内側に配置されている。各スプロケット14〜17には、無端チェーン11の一部が巻き掛けられており、無端チェーン11の、各スプロケット14〜17に巻き掛けられた巻掛部分は、スプロケット14〜17に噛合している。
スプロケット14は、上流側軌道T3と水面軌道T4の接続部分に配置されている。以下の説明では、このスプロケット14を駆動スプロケット14と称することがある。この駆動スプロケット14の中心部分には、駆動軸141が固定されている。駆動軸141は、駆動チェーン211によってモータ21と接続されている。モータ21が回転することで、駆動軸141を介して駆動スプロケット14も回転する。すなわち、駆動スプロケット14は、モータ21の駆動力が伝達され、無端チェーン11を走行させる駆動輪である。モータ21は、図1における時計回り方向と反時計回り方向の両方向に回転可能なモータである。モータ21は、通常は図1における時計回りに回転駆動する。モータ21の時計回り方向の回転にともない、駆動スプロケット14および無端チェーン11も通常は時計回りに走行する。以下、図1における時計回りに無端チェーン11が走行することを正転走行と称する。一方、モータ21はトルクリミッタ機能を有している。例えば、池底部1dを走行している無端チェーン11に取り付けられたフライト板12に異物が噛み込んでしまい、モータ21に過剰な負荷がかかると、トルクリミッタ機能が働き、モータ21は一旦停止する。そして、異物の噛み込みを解除するために、モータ21は少しの時間だけ逆転(図1における反時計回りに回転)する。モータ21の逆転に伴って、無端チェーンは図1において反時計回りに走行(いわゆる、寸逆動作)する。以下、図1において反時計回りに無端チェーン11が走行することを逆転走行と称する。
その他のスプロケット15〜17は、無端チェーン11の走行に伴って回転する従動輪である。従動輪のスプロケット15〜17の中心部分には固定軸151,161,171が通されている。各固定軸151,161,171は軸回りに回転不能に固定配置されている。従動輪のスプロケット15〜17はいずれも、その固定軸151,161,171に対して回動自在である。各スプロケット14〜17は、駆動軸141や固定軸151,161,171を回転軸として回転するものである。以下の説明では、水面軌道T4と通過軌道T2の接続部分に配置されたスプロケット15を中間スプロケット15と称し、その中間スプロケット15に通された固定軸151を中間軸151と称することがある。これらの各スプロケット14〜17のうちの、水面軌道T4の両端部分にある駆動スプロケット14および中間スプロケット15は、本発明にいう回転輪の一例に相当する。
フライト板12は、無端チェーン11の周回軌道全周にわたって、周方向に均等あるいは略均等に間隔をあけて取り付けられている。沈殿池1の池底部1dには、池底部1dに沿って沈殿池1の長手方向に延在する池底レール23が固定されている。無端チェーン11に取り付けられたフライト板12は、かき寄せ軌道T1では池底レール23にガイドされて走行する。また、沈殿池1の下流側であって池底部1dから所定の高さ位置には、池底部1dとほぼ平行であって沈殿池1の長手方向に延在する下流側リターンレール25が固定されている。この下流側リターンレール25は、一対の側壁1cに固定された下流側台座251に取り付けられている。無端チェーン11が正転走行している場合、無端チェーン11に取り付けられたフライト板12は、通過軌道T2における下流側では下流側リターンレール25にガイドされて走行する。さらに、図1ではほとんどの部分がガイド部材9で隠されているが、沈殿池1の上流側であって水面W近傍には、水面Wに沿って沈殿池1の長手方向に延在する上流側リターンレール24が固定されている。この上流側リターンレール24は、一対の側壁1cに固定された上流側台座241に取り付けられている。無端チェーン11に取り付けられたフライト板12は、水面軌道T4では上流側リターンレール24にガイドされて走行する。
無端チェーン11が正転走行すると、フライト板12が池底部1dに沿ったかき寄せ軌道T1を下流側から上流側に向かって走行し、池底部1dに沈殿した汚泥は、フライト板12によって上流側の汚泥ピット50にかき寄せられる。池底部1dに沈殿した汚泥を沈殿池1の下流端から上流に設けられた汚泥ピット50までかき寄せる必要があることから、かき寄せ軌道T1は、池底部1d長手方向のほぼ全長に渡って延在した軌道になっている。汚泥ピット50にかき寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池1の外部に排出される。
図2は、図1のA部を拡大した部分拡大図である。
図2に示すように、スカム除去装置30は、堰31と、トラフ32を備えている。トラフ32は、側面視で上端部分が開口したコの字形状をした構造体であり、その下端部分は水面Wより下に位置している。トラフ32は、沈殿池1を池幅方向に横切って、沈殿池1の外部に設けられた図示しないスカムピットまで延在している。トラフ32の上流側壁321には、沈殿池1の水面W付近の水を呑み込む呑込口322が設けられている。この呑込口322の下端部分よりも高い所定の水位が、沈殿池1の最低水位になる。堰31は、下端を回動中心にしてトラフ32に対して回動自在に、接続部材33によってそのトラフ32に接続されている。この堰31は、上端が水面Wよりも上に位置する堰止状態と、上端が水中に没した呑込状態との間で状態変化するものである。図2に示す堰31は堰止状態である。堰31は、堰止状態では沈殿池1内の水が呑込口322からトラフ32内に流入するのを阻止するものである。この堰止状態にある堰31は、不図示の駆動機構によってその上端が押し下げられると下端を回動中心にして回動し、呑込状態になる。
沈殿池1の水面Wにはスカムが浮遊している。無端チェーン11が正転走行すると、フライト板12が水面軌道T4を上流側から下流側に向かって走行し、沈殿池1の水面Wに浮遊するスカムは、堰31に向けてフライト板12によって移送される。堰31が呑込状態にある時、スカムは、沈殿池1内の水とともに堰31の上端を越えてトラフ32内に流入する。水面軌道T4は、トラフ32や排水樋40などの構造物を避けた上で、トラフ32よりも上流側に配置する必要があることから、水面軌道T4が延在する距離は、かき寄せ軌道T1が延在する距離よりも短い。
トラフ32の内側底面は、沈殿池1の外部にある図示しないスカムピットに向けて下方へ傾斜している。スカムが混入したスカム混入水は、トラフ32の内側を流れてスカムピットに到達する。また、スカムと汚泥とが除去された沈殿池1内の水は、トラフ32の下をくぐって排水樋40に流れ込み、排水樋40から図示しない排水路に流れ、沈殿池1の外部に排水される。
保護機構13は、一対の保護レール18と、保護レール18を揺動自在に支持する支軸19と、保護レール18の揺動範囲を規制する規制軸20とを備えている。保護レール18は、通過軌道T2とトラフ32の間で、池幅方向に交差する交差方向に延在する側面視で弓形をしたレール部材である。この保護レール18は、無端チェーン11の、通過軌道T2を走行している部分に取り付けられたフライト板12とトラフ32とが接触することを防止するものである。各保護レール18には、支軸19が通された軸受181が固定されている。各保護レール18は、支軸19を揺動中心軸として揺動自在にその支軸19に支持されている。また、各保護レール18の一端部分(図2では左端部分)には、規制軸20が通されている。
図3は、保護機構を示す平面図である。なお、この図3には無端チェーン11及びフライト板12も示されている。
図3に示すように、各保護レール18は、沈殿池1の一対の側壁1c近傍であって、フライト板12の池幅方向の端面よりも池幅方向中央寄りにそれぞれ配置されている。なお、保護レール18の池幅方向の配置位置は、保護レール18とフライト板12とが平面視で重なる位置であれば、他の位置に配置してもよく、例えば平面視で無端チェーン11と重なる位置に配置してもよい。支軸19の長手方向の両端部分は、沈殿池1の各側壁1cにそれぞれ固定されている。沈殿池1の各側壁1cには、池幅方向に凹んだ溝部201aが形成された規制ガイド201が固定されている。各溝部201aには、規制軸20の両端部分が挿入されている。図2に示すように、溝部201aは、側面視で略扇形を成している。この溝部201aによって規制軸20の移動範囲が規制されることで、保護レール18の揺動範囲が規制されている。
保護レール18の重心は、支軸19よりも一端側部分(図2では左側部分)に存在しており、また、保護レール18の一端部分に通されている規制軸20および保護レール18は、水よりも比重の大きい素材(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。したがって、保護レール18の重量と規制軸20の重量それぞれは、支軸19を揺動中心軸として、保護レール18を図2において反時計回りに揺動させる方向に作用している。すなわち、保護レール18には、保護レール18の重量と規制軸20の重量によって、保護レール18の支軸19よりも一端側部分が無端チェーン11に向かって回転する回転モーメントが生じている。
沈殿池1に無端チェーン11が最初に設置された初期状態では、無端チェーン11は、適度な張力(例えば100kgf)が付与された状態で各スプロケット14〜17に巻き掛けられている。図2の実線は、その初期状態を示している。一方、無端チェーン11は、無端チェーン11のなじみやクリープ現象などによって経年変化が生じ、伸びてしまうことがある。図2の2点鎖線は無端チェーン11が伸びた状態を示している。
保護レール18は、無端チェーン11に取り付けられたフライト板12のうちのいずれか1枚或いは複数枚(ここでは2枚)と周回軌道の外側から接触している。この保護レール18は、初期状態では無端チェーン11の張力により周回軌道の外側に向かって押され、周回軌道の外側(トラフ32側)に退避した退避位置にある。ただし、保護レール18は、保護レール18とトラフ32とが接触しないように規制ガイド201によって揺動範囲が規制されており、退避位置にある保護レール18とトラフ32の間には隙間が設けられている。また、トラフ32とフライト板12の間に保護レール18が介在しているので、フライト板12とトラフ32の間には所定の間隔が維持される。すなわち、保護レール18によって、フライト板12とトラフ32とが接触することが防止されている。
無端チェーン11が走行すると、無端チェーン11の、かき寄せ軌道T1に位置している部分に、フライト板12が汚泥をかき寄せることで生じる走行負荷が加わる。無端チェーン11が正転走行している場合、無端チェーン11の、かき寄せ軌道T1および上流側軌道T3に位置している部分では、上記走行負荷に応じた張力が発生している。一方、無端チェーン11の、通過軌道T2および水面軌道T4に位置している部分では、初期状態で無端チェーン11に付与された張力は無端チェーン11が伸びることにより低下する。
無端チェーン11が伸びた状態では、図2の2点鎖線に示すように、保護レール18は、無端チェーン11の伸びに追従して支軸19を揺動中心軸として揺動し、無端チェーン11の周回軌道の外側からフライト板12に接触している。さらに、保護レール18における、フライト板12との接触部分は、保護レール18に生じている回転モーメントによって周回軌道の内側に向けて進出することで、フライト板12を押し込んで無端チェーン11に張力を付与している。また、通過軌道T2にあるフライト板を保護レール18が周回軌道の内側に押し込むことで、無端チェーン11は中間スプロケット15側に押し付られている。これにより、無端チェーン11が中間スプロケット15から離間し難くくなり、地震や地震によるスロッシングなどが発生した場合でも、無端チェーン11が中間スプロケット15から脱輪してしまうことはある程度抑制される。
図4は、無端チェーンを逆転走行させた様子を示す概略図である。
図4に示すように、モータ21の逆転により、無端チェーン11の、通過軌道T2および水面軌道T4に位置している部分は、駆動スプロケット14に引っ張られてたるみのない緊張状態になる。この緊張状態では、無端チェーン11の、通過軌道T2に位置する部分の張力は、正転走行時に保護レール18が無端チェーン11に付与していた張力を超えて大きくなっている。このため、保護レール18は、無端チェーン11の、通過軌道T2に位置している部分に取り付けられたフライト板12に押し返されて周回軌道の外側に揺動範囲の限界まで退避している。保護レール18の揺動範囲は、規制ガイド201によってトラフ32と接触することのない範囲に規制されているので、保護レール18とトラフ32とが衝突することは防止される。また、フライト板12も、保護レール18によってトラフ32との間に所定の間隔が維持されるので、逆転走行した場合でもフライト板12とトラフ32とが衝突することはない。なお、緊張状態では、無端チェーン11のたるみは上流側軌道T3に生じている。
無端チェーン11の、通過軌道T2および水面軌道T4に位置している部分が緊張状態になると、無端チェーン11の、正転走行時に中間スプロケット15に巻き掛けられていた巻掛部分の下流側部分は中間スプロケット15から離間し、正転走行時よりも上方に移動する。脱輪防止のためのガイド部材を上記巻掛部分に設ける場合には、この上方への移動も考慮して、逆転走行時に上記下流側部分が接触しない範囲にガイド部材を設ける必要がある。
図5は、図1のB部を拡大した部分拡大図である。図5では、紙面に直交する方向が、池幅方向になる。
無端チェーン11は、リンク部材110を連結ピン111で連結した金属製のチェーンである。なお、無端チェーン11として樹脂製のチェーンを用いてもよい。図5に示すように、本実施形態では、駆動スプロケット14に無端チェーン11が巻き掛けられている巻掛角度は約90度である。また、中間スプロケット15に無端チェーンが巻き掛けられている巻掛角度は約45度である。ただし、上述したように、無端チェーン11が逆転走行しているときには、中間スプロケット15への無端チェーン11の巻掛角度は、図5に示した巻掛角度よりも減少する。スプロケット14〜17に巻き掛けられる無端チェーン11の巻掛角度は、歯飛びや脱輪を防ぐ意味で大きい方が好ましい。中間スプロケット15の巻掛角度が小さいのは、上述したように、かき寄せ軌道T1が延在する距離よりも水面軌道T4が延在する距離の方が短いためである。また、スロッシングは、水面W近傍で最も液面が変動する現象である。このため、無端チェーン11は、水面軌道T4端部に存在し、かつ巻掛角度の小さい中間スプロケット15に巻き掛けられた巻掛部分で脱輪しやすい。
本実施形態では、無端チェーン11の周回方向に連結された20個のリンク部材110おきに、ステー1101が設けられたリンク部材110が配置されている。フライト板12は、池幅方向に延在した断面コ字状の板部材である。上述のごとく、無端チェーン11は、池幅方向両端部それぞれに配置されたものである。池幅方向一端側に配置された無端チェーン11と、同方向他端側に配置された無端チェーン11は、互いに同じ周回軌道を形成している。フライト板12の池幅方向の両端部分それぞれは、池幅方向両端部それぞれに配置された無端チェーン11におけるリンク部材110に設けられたステー1101に、取付部材1102を介して取り付けられている。したがって、無端チェーン11に取り付けられた総てのフライト板12の数より、無端チェーン11が有する総ての連結ピン111の数の方が多い。本実施形態では、フライト板12が取り付けられている周回軌道における間隔は約3mであり、連結ピン111の周回軌道における間隔は約15cmである。なお、無端チェーン11によって形成される周回軌道は、図5に示す無端チェーン11の隣り合う連結ピン111を結んだ軌跡が相当する。
無端チェーン11の水面軌道部分11aにおける池幅方向両側には、水面軌道部分11aとは間隔をあけてガイド部材9が設けられている。このガイド部材9は、水面軌道部分11aの動きを抑制する部材である。図5に示すように、ガイド部材9は、駆動軸141の軸心の真上から中間軸151の軸心の真上まで水面Wにほぼ沿って延在している。すなわち、ガイド部材9の延在方向の長さは、駆動軸141と中間軸151の軸間距離と同一である。このガイド部材9は、一対の側壁1cそれぞれに固定された複数の上流側台座241に取り付けられている。
図6は、図5に示す無端チェーンの一部とガイド部材の一部を上方から見た平面図である。
図6に示すように、無端チェーン11を構成するリンク部材110は、池幅方向(図6では左右方向)に対向する一対のリンク板112が、池幅方向に延在した貫通孔を有するバレル部113によってつながった部材である。すなわち、無端チェーン11は、貫通孔が設けられた複数のリンク部材110と複数の連結ピン111とを有し、リンク部材110どうしの貫通孔に連結ピン111を挿通してリンク部材110どうしを連結してなるものである。連結ピン111は、隣り合う2つのリンク部材の貫通孔どうしを合わせた状態で、これらの貫通孔に挿入され、一対のリンク板112の外側で、連結ピン111の抜け止め防止用のナット115で固定されている。ナット115で固定された連結ピン111は、リンク板112に対して回転不能である。このナット115は、連結ピン111の延在方向の位置を規制するための位置規制部材である。連結ピン111は、両端部分それぞれに、ナット115からリンク部材110とは反対方向である外側へさらに突出した突出部111aを有している。本実施形態における突出部111aは、本発明の突出部の一例に相当する。この突出部111aの径は、リンク部材110の貫通孔の直径以下である。なお、ナット115に代えて、連結ピン111の一端側に、貫通孔の径より大きな径の頭部を設けておき、他端側には、貫通孔の径より長い、抜け止め防止ピンを配置した態様であってもよい。こうすることによっても、連結ピン111の延在方向の位置が規制される。また、抜け止め防止ピンは、連結ピン111がリンク板112に対して回転することを規制する回り止めピンとしても機能する。この態様では、連結ピン111は、上記頭部からさらに外側へ突出した突出部を有し、抜け止め防止ピンからもさらに外側へ突出した突出部を有している。
各スプロケット14〜17の歯は、一対のリンク板112の間に入り込む。駆動軸141とともに回転する駆動スプロケット14では、歯の回転方向下流側の縁がバレル部113に係合することで駆動スプロケット14の回転駆動力がリンク部材110に伝わり、無端チェーン11が周回軌道を走行する。
図6に示すように、連結ピン111が延在する軸方向は、池幅方向と平行、あるいは略平行である。ガイド部材9は、水面軌道部分11aの池幅方向両側に配置されている。このガイド部材9は、上下方向(図6では紙面に対して直交する方向)の断面が上下を逆さまにしたL字状の板部材である。以下の説明では、ガイド部材9の、上下方向を厚み方向とする部分を上方向規制部91と称し、池幅方向を厚み方向とする部分を池幅方向規制部92と称する。図6では、上方向規制部91の面が示されている。
図6に示す無端チェーン11が有する総ての連結ピン111の突出部111aは、ガイド部材9が配置された位置では、上から見たときにガイド部材9に重なる位置までリンク部材110から突出している。なお、連結ピン111の両端部それぞれに設けられた突出部111aは、上方向規制部91と突出部111aの径方向に間隔をあけて配置されているが、この点については後述する。
また、図6に示すガイド部材9の池幅方向規制部92は、水面軌道部分11aにある連結ピン111の両端部それぞれに設けられた突出部111aとは池幅方向に間隔S1をあけて配置されている。この間隔S1は、無端チェーン11が通常に走行しているときには、連結ピン111の端面111bが池幅方向規制部92と当接しない範囲で、狭い間隔になるように設計されている。すなわち、本実施形態における池幅方向規制部92は、地震による揺れやスロッシングによって無端チェーン11が通常に走行している範囲を超えて池幅方向に揺れ動いたときに、連結ピン111の端面111bが当接するように配置されたものである。本実施形態では、全ての連結ピン111に突出部111aを設けている。水面軌道部分11aにあるそれらの突出部111aとガイド部材9によって、水面軌道部分11aの池幅方向への動きが抑制される。従って、地震によるスロッシングが発生しても、水面軌道部分11aが大きく揺れ動くことがなくなる。これにより、水面軌道部分11aの揺れによる強い力が無端チェーン11の巻掛部分に伝わって無端チェーン11の巻掛部分が駆動スプロケット14或いは中間スプロケット15から脱輪してしまうことを防止できる。
図7は、図5のC−C断面図である。したがって、この図7では、紙面奥側が沈殿池の下流側になり、図の左右方向が池幅方向になる。なお、この図7では、中間スプロケット15および中間軸151は図示省略している。
沈殿池1の側壁1cには、無端チェーン11の周回軌道およびフライト板12を避けた位置に上流側台座241が設けられている。水面軌道部分11aの池幅方向両側に配置されたガイド部材9は、この上流側台座241に取り付けられている。
図7には、ガイド部材9が、上下を逆さまにしたL字状の板部材であることが示されている。また、図7に示すように、ガイド部材9の上方向規制部91は、水面軌道部分11aにある連結ピン111の両端部それぞれに設けられた突出部111aとは上方に間隔S2をあけて配置されている。本実施形態では、この間隔S2は、無端チェーン11が通常に走行しているときには、連結ピン111の突出部111aにおける周面が上方向規制部91と当接しない範囲で、狭い間隔となるように設計されている。すなわち、本実施形態における上方向規制部91は、地震による揺れやスロッシングによって無端チェーン11が通常に走行している範囲を超えて上下方向に揺れ動いたときに、突出部111aにおける周面が当接するように配置されたものである。水面軌道部分11aにあるそれらの突出部111aとガイド部材9によって、水面軌道部分11aの上下方向への動きが抑制される。従って、地震によるスロッシングが発生しても、水面軌道部分11aが大きく揺れ動くことがなくなる。これにより、水面軌道部分11aの揺れによる強い力が無端チェーン11の巻掛部分に伝わって無端チェーン11の巻掛部分が駆動スプロケット14或いは中間スプロケット15から脱輪してしまうことを防止できる。
なお、連結ピン111の全てに突出部111aを設けなくても、例えば、突出部111aのある連結ピン111と突出部111aを省略した連結ピン111とを交互に配置してもよい。ただし、突出部111aのある連結ピン111の配置されている間隔が狭いほど、水面軌道部分11aの揺れ動きを小さくできるので、少なくともフライト板12の設けられた間隔よりも狭い間隔をあけて突出部111aのある連結ピン111を配置することが好ましい。
図7にも、ガイド部材9の池幅方向規制部92が、無端チェーン11とは池幅方向に間隔S1をあけて配置されている様子が示されている。地震による揺れやスロッシングよって、水面軌道部分11aは、例えば連結ピン111が斜めになりながら浮き上がったりする等、思いもよらない挙動をとることがある。池幅方向規制部92を設けておくことで、水面軌道部分11aの池幅方向の揺れ動きを抑制し、無端チェーン11がスプロケット14、15から脱輪してしまうことを確実に防止することができる。特に、間隔S2を長めにとっている場合、あるいは上方向規制部91を省略している場合には、池幅方向規制部92は有効である。
以上説明したガイド部材9は、水面軌道部分11aから外れた位置に配置されており、連結ピン111の突出部111aとは、連結ピン111の延在方向にも径方向にも離間している。すなわち、上方向規制部91は、連結ピン111の突出部111aにおける周面に上方向から間隔をあけて対向しており、池幅方向規制部92は、連結ピン111の端面111bに池幅方向から間隔をあけて対向している。
また、上述のごとく、連結ピン111は、ナット115によってリンク部材110に固定されている。連結ピン111の、ナット115から突出先端までの突出長Lは、5mm以上30mm以下であることが好ましい。この突出長Lが、5mm未満であると、連結ピン111の端部が上方向規制部91に当接する長さが短すぎて、水面軌道部分11aの上方向への揺れ動きを抑制することが困難になる。一方、突出長Lが、30mmを超えると、連結ピン111の突出部111aにゴミ等が引っかかって、汚泥のかき寄せに支障をきたす恐れがある。また、ガイド部材9の池幅方向規制部92は、無端チェーン11とは池幅方向に間隔S1をあけて配置されているが、この間隔S1の長さは上記突出長L以下の長さとすることが好ましい。こうしておくことで、地震による揺れやスロッシングによって水面軌道部分11aが揺れ動いたときに、連結ピン111の端面111bが、池幅方向規制部92に池幅方向からより確実に当接するようになる。
上述の説明では、地震による揺れやスロッシングによって水面軌道部分11aが通常に走行している範囲を超えて池幅方向に動くと、連結ピン111の端面111bが池幅方向規制部92に当接するように間隔S1が設けられていた。この連結ピン111の端面111bの代わりにリンク板112がガイド部材9に当接するように間隔S3を定めておいてもよい。すなわち、図7に示すように、ガイド部材9の上方向規制部91は、池幅方向規制部92から90度折れ曲がって先端はリンク板112に対向している。リンク板112と上方向規制部91の先端との池幅方向の間隔S3を、連結ピン111の端面111bと池幅方向規制部92との池幅方向の間隔S1よりも狭い間隔にして、地震による揺れやスロッシングによって水面軌道部分11aが池幅方向に動いたときに、リンク板112が上方向規制部91の先端に当接するようにしてもよい。あるいは、間隔S3と間隔S1を同じ長さにしておいてもよい。
フライト板12は、無端チェーン11の周回軌道外側に突出したものであり、突出先端縁12aには、先端シュー121が取り付けられている。また、突出先端縁12aとは反対側の後端縁12bには、リターンシュー122が取り付けられている。先端シュー121およびリターンシュー122は、摩耗した場合に交換可能なように、着脱可能にフライト板12に取り付けられている。かき寄せ軌道T1を通過しているフライト板12は、先端シュー121が池底レール23(図1参照)と摺接することで、池底部に沿って走行していく。また、通過軌道T2の下流側部分を通過しているフライト板12は、リターンシュー122が下流側リターンレール25(図1参照)と摺接することで、下流側リターンレール25に沿って走行していく。さらに、水面軌道T4を通過するフライト板12は、上流側台座241に取り付けられた上流側リターンレール24と摺接することで、上流側リターンレール24に沿って走行していく。なお、上流側リターンレール24は、水面Wに沿って延在しているので、水面軌道T4を通過するフライト板12は、水面Wに沿って走行していく。
なお、これまでの説明では、ガイド部材9は、駆動軸141の軸心の真上から中間軸151の軸心の真上までの間に設けていたが、無端チェーン11の、図5等に示す駆動スプロケット14及び中間スプロケット15の巻掛部分までガイド部材9を延長してもよい。
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。また、既に説明した汚泥かき寄せ装置の説明と重複する説明は省略することがある。
図8は、本実施形態の第1の変形例を示す図である。
第1の変形例では、ガイド部材9を、水面軌道部分11aの池幅方向一端側にのみ配置している。連結ピン111は、ガイド部材9が設けられた側のみナット115から突出した突出部111aを有している。この突出部111aには、ローラ116が設けられている。ローラ116は、弾性材料からなるものであり、連結ピン111に対して回転自在に取り付けられている。なお、ローラ116は、樹脂製あるいは金属製であってもよい。また、上述のごとく、ナット115で固定された連結ピン111は、リンク部材110に対して回転不能である。この連結ピン111に対して回転自在なローラ116を設けたことにより、連結ピン111が上方向規制部91に当接した際の摩擦抵抗が軽減される。
また、この変形例における上方向規制部91は、池幅方向規制部92から90度折れ曲がった後、先端部分91aが連結ピン111に向けてさらに90度折れ曲がっている。この結果、連結ピン111の径よりも大きな径のローラ116は、池幅方向に間隔をあけた状態でガイド部材9によって囲まれていることになる。こうしておくことで、ガイド部材を一方側にしか設けていなくても、水面軌道部分11aの池幅方向どちら側の動きも抑制することができる。なお、上方向規制部91の折れ曲がった先端部分91aと連結ピン111の上下方向の間隔よりも、ローラ116の外周とそれに対向する上方向規制部91の上下方向の間隔の方が狭い。従って、水面軌道部分11aが上方向に動くと、ローラ116が上方向規制部91に当接する。
図9は、本実施形態の第2の変形例を示す図である。
第2の変形例では、上流側リターンレール24を省略し、ガイド部材9の一方に上流側リターンレール24の機能をもたせている。図9に示すように、この変形例のガイド部材9は、池幅方向規制部92の上端から、上方かつ側壁1cに向かって傾斜した傾斜部93と、傾斜部93の上端から側壁1cに向かって水平に伸びた水平部94とが設けられている。水平部94は、フライト板12を水面軌道T4で案内するリターンレールとして作用する。水面軌道T4を通過するフライト板12は、フライト板12に設けられたリターンシュー122が水平部94に摺接することで、水平部94にガイドされて走行する。
なお。この変形例では、上方向規制部91を省略しているので、突出部111aは必ずしも設ける必要はない。すなわち、水面軌道部分11aが池幅方向に動いたときに、ナット115或いはリンク板112が池幅方向規制部92に当接する構成としてもよい。こうすることでも、水面軌道部分11aの池幅方向の動きを池幅方向規制部92によって抑制できる。
この変形例によれば、上流側リターンレール24を省略できるので、汚泥かき寄せ装置10の部品点数を削減し、汚泥かき寄せ装置10のコストを削減することができる。なお、この変形例では、上方向規制部91も省略しているが、上方向規制部91を池幅方向規制部92の上端に溶接などによって取り付けてもよい。
図10は、本実施形態の第3の変形例を示す図である。
第3の変形例では、ガイド部材9を分割し、水面軌道部分11aの延在方向における中央部分はガイド部材9を省略している。分割した一方のガイド部材9は、駆動軸141の軸心の真上から、水面軌道部分11aの池幅方向両側に水面Wにほぼ沿って中間スプロケット15方向に延在している。また、分割した他方のガイド部材9は、中間軸151の軸心の真上から、水面軌道部分11aの池幅方向両側に水面Wにほぼ沿って駆動スプロケット14方向に延在している。各ガイド部材9の延在方向の長さは、連結ピン111が設けられた間隔の約5倍の長さである。この変形例の汚泥かき寄せ装置10によれば、地震によるスロッシングが発生して水面軌道部分11aの延在方向における中央部分が揺れ動いても、その揺れ動きは、ガイド部材9のある部分で抑制されて小さくなる。その結果、無端チェーン11の、駆動スプロケット14または中間スプロケット15への巻掛部分に伝わる揺れの力は弱くなり、無端チェーン11が駆動スプロケット14および中間スプロケット15から脱輪してしまうことが防止できる。
なお、各ガイド部材9の延在方向の長さは、周回軌道に沿って隣り合う突出部111aが設けられた連結ピン111の間隔より長ければよい。これは、地震による揺れやスロッシングによって水面軌道部分11aが動いたときに、突出部111aを設けた連結ピン111がどの位置にあっても、突出部111aがガイド部材9に当接させるためである。ただし、各ガイド部材9の延在方向の長さが長いほど、水面軌道部分11aの揺れ動きをより抑制できる。従って、ガイド部材9の延在方向の長さは、できるだけ長い方が好ましい。
この変形例では、ガイド部材9を2つに分割したが、ガイド部材9を3つ以上に分割してもよい。3つ以上に分割した場合、水面軌道部分11aが延在する中央付近にもガイド部材9を設けることが好ましい。ガイド部材9を水面軌道部分11aの中央付近に設けることで、地震による揺れやスロッシングによって生じる水面軌道部分11aの振幅を中央付近で分断して振幅を小さくすることができる。
図11は、本実施形態の第4の変形例を示す図である。この図11では、上流側リターンレール24を省略している。
第4の変形例では、ガイド部材9の延在方向の長さを短くしている。ガイド部材の延在方向の一端面9aは、駆動軸141の軸心より距離D1だけ中間軸151側に位置している。また、ガイド部材の延在方向の他端面9bは、中間軸151の軸心より距離D2だけ駆動軸側に位置している。地震によるスロッシングが発生したときに、ガイド部材9の各端面9a、9bと巻掛部の間にある無端チェーン11が、その距離D1、D2に応じた振幅で揺れ動いてしまう。これらの距離D1、D2が長い距離である場合、ガイド部材9の各端面9a、9bと巻掛部の間にある無端チェーン11における揺れ動きが大きくなり、無端チェーン11が駆動スプロケット14および中間スプロケット15から脱輪してしまう虞が生じる。すなわち、これらの距離D1、D2が短い距離であるほど、ガイド部材9の各端面9a、9bと巻掛部の間にある無端チェーン11における揺れ動きを小さくできるので、距離D1、D2は、例えばフライト板12の設けられた間隔よりも短い間隔とすることが好ましい。また、距離D1、D2は、突出部111aを設けた連結ピン111の間隔よりも短い間隔とすることがより好ましい。
次に、他の実施形態の汚泥かき寄せ装置について説明する。以下の説明でも、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。また、先の実施形態の汚泥かき寄せ装置の説明と重複する説明は省略することがある。
図12は、他の実施形態を示す図であり、(a)は水面軌道部分にある無端チェーンとガイド部材を上方から見た図、(b)は(a)に示す無端チェーンとガイド部材を側方から見た図である。なお、図12(a)では、フライト板12およびそのフライト板12の取付部材1102を図示省略している。
先の実施形態では、連結ピン111に突出部111aを設けていたが、この他の実施形態の汚泥かき寄せ装置10では、無端チェーン11のリンク部材110に突出部110aを設けている。本実施形態における突出部110aは、本発明の突出部の一例に相当する。この無端チェーン11は、樹脂製のいわゆるノッチチェーンである。図12(a)に示すように、この無端チェーン11を構成する複数のリンク部材110それぞれは、池幅方向(図12(a)では上下方向)に対向する一対のリンク板112が、池幅方向に延在した貫通孔を有するバレル部113によってつながった部材である。各リンク部材110は連結ピン111で連結されている。連結ピン111は、一端側に貫通孔の径より大きな径の頭部111dが設けられ、他端側に貫通孔の径よりも小さな径の小径部111eが設けられている。図12(b)に示すように、頭部111dは、切欠き部が2箇所設けられた小判形をしており、その切欠き部がリンク部材110に設けられた周り止め部110bと係合している。この係合により、連結ピン111は、リンク部材110に対して回転不能になっている。また、図12(a)に示す小径部111eには、馬蹄形の止め輪71が嵌め込まれている。連結ピン111は、止め輪71と頭部111dによって連結ピン111が延在する軸方向への移動が規制されている。
図12(b)に示すように、リンク部材110には、ノッチ部110fが設けられている。図示省略するが、本実施形態の駆動スプロケット14はピン付きスプロケットである。ノッチ部110fに、ピン付きスプロケットに設けられたピンが係合することでピン付きスプロケットの回転駆動力がリンク部材110に伝わり、無端チェーン11は周回軌道を走行する。
図12(a)に示すように、一対のリンク板112それぞれには、リンク板112の外側に向かって突出した平面視で略台形状をした突出部110aが設けられている。この突出部110aは、リンク板112と一体に成形されたものである。無端チェーン11が有する総てのリンク部材110の突出部110aは、ガイド部材9が配置された位置では、上から見たときにガイド部材9に重なる位置までリンク部材110から突出している。ガイド部材9の池幅方向規制部92は、無端チェーン11とは池幅方向に間隔S1をあけて配置されている。この間隔S1は、無端チェーン11が通常に走行しているときには、突出部110aの突出端面が池幅方向規制部92と当接しない範囲で、狭い間隔となるように設計されている。すなわち、本実施形態における池幅方向規制部92は、地震による揺れやスロッシングによって無端チェーン11が通常に走行している範囲を超えて池幅方向に動いたときに、リンク部材110の突出部110aの突出端面が当接するように配置されたものである。
図12(b)に示すように、リンク部材110の池幅方向両側それぞれに設けられた突出部110aは、ガイド部材9の上方向規制部91とは、上下方向に間隔S2をあけて配置されている。この間隔S2は、無端チェーン11が通常に走行しているときには、突出部110aの上面が上方向規制部91と当接しない範囲で、狭い間隔となるように設計されている。すなわち、この実施形態における上方向規制部91は、地震による揺れやスロッシングによって無端チェーン11が通常に走行している範囲を超えて上方向に動いたときに、リンク部材110の突出部110aの上面が当接するように配置されたものである。
図12(b)には、ステー1101が設けられたリンク部材110も示されている。このステー1101が設けられたリンク部材110は、無端チェーン11の周回方向に連結された20個のリンク部材110おきに配置されている。このステー1101には、取付部材1102を介してフライト板12が取り付けられている。
先の実施形態と同様に、本実施形態でも、地震による揺れやスロッシングによって無端チェーン11が通常に走行している範囲を超えて動いたときに、水面軌道部分11aに位置しているリンク部材110に設けられた突出部110aがガイド部材9に当接する。これにより、水面軌道部分11aが大きく揺れ動くことが防止され、無端チェーン11の巻掛部分が駆動スプロケット14或いは中間スプロケット15から脱輪することを防止できる。
以上、説明した汚泥かき寄せ装置10によれば、地震や地震によるスロッシングが発生しても無端チェーン11が駆動スプロケット14および中間スプロケット15から脱輪することを防止できる。
なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。
これまでに説明した第1の汚泥かき寄せ装置は、受け入れた水に含まれている汚泥が池底部に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底部に沈殿した汚泥を池幅方向に延在するフライト板によってかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記フライト板が間隔をあけて複数取付けられ、前記池底部に沿って延在するかき寄せ軌道と水面側で延在する水面軌道とがつながった周回軌道を走行する無端チェーンと、
前記水面軌道の両端部分に配置され、それぞれに前記無端チェーンの一部が巻き掛けられ中心軸を回転中心にして回転する2つの回転輪と、
前記無端チェーンの、前記水面軌道に位置する部分の近傍で、水面に沿って配置されたガイド部材とを備え、
前記無端チェーンは、前記池幅方向に突出した突出部を前記周回軌道に沿って間隔をあけて複数配置したものであり、
前記ガイド部材は、前記無端チェーンの、前記水面軌道に位置する部分に設けられた前記突出部の上方に該突出部とは上下方向に間隔をあけて該突出部に重なるように配置され、前記2つの回転輪のうちの一方の回転輪の軸心の真上から他方の回転輪の軸心の真上まで延在しているものであることを特徴とする。
上記第1の汚泥かき寄せ装置によれば、無端チェーンの、水面軌道に位置する部分に設けられた突出部は、上方に動くことをガイド部材によって抑制される。突出部が上方に動くことが抑制されることで、地震によるスロッシングが発生しても、上記部分の上方への動きが抑制され、該部分が上下方向に大きく揺れ動くことを防止できる。これにより、上記部分の両端に配置された回転輪の巻掛部分に、上記部分の揺れによる強い力が伝わることがなくなり、その回転輪から無端チェーンが脱輪してしまうことが防止される。
また、上記突出部は、前記フライト板が取り付けられた間隔よりも狭い間隔をあけて前記周回軌道に沿って複数配置したものであってもよい。
これまでに説明した第2の汚泥かき寄せ装置は、受け入れた水に含まれている汚泥が池底部に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底部に沈殿した汚泥を池幅方向に延在するフライト板によってかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記フライト板が間隔をあけて複数取付けられ、前記池底部に沿って延在するかき寄せ軌道と水面側で延在する水面軌道とがつながった周回軌道を走行する無端チェーンと、
前記水面軌道の両端部分に配置され、それぞれに前記無端チェーンの一部が巻き掛けられ中心軸を回転中心にして回転する2つの回転輪と、
水面に沿って設けられ、前記無端チェーンの、前記水面軌道に位置する部分の近傍で、該部分とは池幅方向に間隔をあけて該部分に対向して配置されたガイド部材とを備え、
前記無端チェーンは、前記池幅方向に突出した突出部を前記周回軌道に沿って間隔をあけて複数配置したものであり、
前記ガイド部材は、前記2つの回転輪のうちの一方の回転輪の軸心の真上から他方の前記回転輪の軸心の真上まで延在しているものであることを特徴とする。
上記第2の汚泥かき寄せ装置によれば、無端チェーンの、水面軌道に位置する部分が、池幅方向に動くことがガイド部材によって抑制される。上記部分の池幅方向への動きが抑制されることで、地震によるスロッシングが発生しても、該部分の池幅方向に大きく揺れ動くことを防止できる。これにより、上記部分の両端に配置された回転輪の巻掛部分に、上記部分の揺れによる強い力が伝わることがなくなり、その回転輪から無端チェーンが脱輪してしまうことが防止される。
また、上記第2の汚泥かき寄せ装置において、前記無端チェーンは、前記池幅方向に突出した突出部を前記周回軌道に沿って間隔をあけて複数配置したものであり、
前記ガイド部材は、前記2つの回転輪の中心軸の間に配置された部分の長さが隣り合う該突出部の間隔以上の長さを有するものであってもよい。
こうすることでも、無端チェーンの、水面軌道に位置する部分の両端に配置された回転輪から地震によるスロッシングの影響で無端チェーンが脱輪してしまうことを防止できる。