JP2018046723A - 回転機制御装置及び回転機制御方法 - Google Patents

回転機制御装置及び回転機制御方法 Download PDF

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Junki Yoshimoto
淳貴 吉本
松山 哲也
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Abstract

【課題】電流制限の精度を確保し易い技術を提供する。【解決手段】電流特定部24は、回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する。電流制限値特定部32は、回転機電流ベクトルの振幅を第1の電流制限値に追従させる場合に負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する。トルク制限値特定部25は、負荷電流ベクトルの振幅を第2の電流制限値に追従させる場合に回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定する。トルク制限部27は、トルク制限部27に与えられた指令トルクの絶対値がトルク制限値未満である場合には指令トルクを修正せず、上記絶対値がトルク制限値以上である場合には上記絶対値をトルク制限値に置き換える。【選択図】図3

Description

本開示は、回転機制御装置及び回転機制御方法に関する。
従来から、回転機の駆動方法として、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)が知られている。直接トルク制御の一例では、まず、回転機の相電流及び相電圧を検出する。次に、相電流及び相電圧から、回転機の電機子鎖交磁束及びトルクを求める。次に、求められたトルクと、指令トルクと、指令磁束振幅と、電気子鎖交磁束の位置とから、指令磁束ベクトルを求める。指令トルク及び指令磁束振幅は、例えば、速度制御装置で求められる。次に、指令磁束ベクトルと、電機子鎖交磁束とから、PWMインバータから回転機に印加されるべき電圧ベクトルを決定する。次に、決定された電圧ベクトルが回転機に印加されるように、PWMインバータのスイッチングを制御する。
特許文献1及び非特許文献2には、ベクトル制御に関連する技術が記載されている。非特許文献1には、直接トルク制御について記載されている。また、非特許文献1には、回転機を流れる電流が上限値を超えないようにする制御(電流制限)についても記載されている。
特開平11−98898号公報
井上、他3名,「永久磁石同期モータを駆動する直接トルク制御のためのトルクと磁束の指令値作成法とトルク制御器のワインドアップ対策」,電気学会論文誌D,130巻,6号,p.777−784(2010年) 新中新二,「固定子鉄損を含む誘導モータの新数学モデルの提案」,電気学会論文誌D,119巻,2号,p.142−150(1999年)
本発明者らの検討によれば、非特許文献1の技術には、電流制限の精度の点で改善の余地がある。
そこで、本開示は、
インバータを用いて、3相回転機の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる回転機制御装置であって、
前記3相回転機の固定子を流れる電流のベクトルである回転機電流ベクトルを検出する電流検出部と、
前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルを用いて、前記一次磁束ベクトルを推定する磁束推定部と、
前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、鉄損抵抗と、を用いて、前記回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する電流特定部と、
第1の電流制限値を用いて、前記回転機電流ベクトルの振幅を前記第1の電流制限値に追従させる場合に前記負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する電流制限値特定部と、
前記負荷電流ベクトルと、前記第2の電流制限値と、推定された前記一次磁束ベクトルと、を用いて、前記負荷電流ベクトルの振幅を前記第2の電流制限値に追従させる場合に前記回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定するトルク制限値特定部と、
前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクの絶対値が前記トルク制限値未満である場合には前記指令トルクを修正せず、前記絶対値が前記トルク制限値以上である場合には前記絶対値を前記トルク制限値に置き換えるトルク制限部と、を備えた回転機制御装置を提供する。
本開示に係る技術によれば、電流制限の精度を確保し易い。
回転機制御装置、インバータ及び3相回転機の接続を説明するための図 dq座標系を説明するための図 αβ座標系を説明するための図 回転機制御装置のブロック図 鉄損を考慮した誘導機の等価回路を示す図 誘導機のベクトル図 回転機電流ベクトル、鉄損電流ベクトル及び負荷電流ベクトルの関係を説明するための図 トルク制御部の内部構成を説明するためのブロック図 負荷電流を説明するための図
(本発明者らによる知見)
非特許文献1の技術では、回転機の固定子を流れる電流ベクトル(回転機電流ベクトル)の振幅の上限値(第1の電流制限値)が定められている。この技術では、回転機電流ベクトルの振幅を第1の電流制限値に追従させる場合に回転機トルクが追従するべきトルク(トルク制限値)が計算される。そして、回転機トルクがトルク制限値を超えないように回転機が制御される。このように、非特許文献1の技術では、トルク制限をかけることによって電流制限をかけようとしている。
非特許文献1の技術では、回転機電流ベクトルと第1の電流制限値とを用いてトルク制限値を計算している。
非特許文献1のトルク制限値は、回転機の固定子鉄損を考慮して計算されたものではない。このため、このトルク制限値を用いた電流制限は、第1の電流制限値からズレた値に回転機電流ベクトルの振幅を追従させる。このズレは、固定子鉄損が大きい場合(回転機の回転数が高い場合等)には大きくなる。
本発明者らは、回転機の固定子鉄損が大きい場合であっても回転機電流ベクトルの振幅を第1の電流制限値に精度よく追従させることができる電流制限(精度のよい電流制限)を検討した。具体的な検討内容は、以下のとおりである。
すなわち、本発明者らは、回転機電流ベクトルを、鉄損電流ベクトルと負荷電流ベクトルとに分けて考えることにした。鉄損電流ベクトルは、回転機電流ベクトルのうち、固定子鉄損を生じさせる成分である。負荷電流ベクトルは、回転機電流ベクトルのうち、回転機の固定子から回転子へのエネルギー伝達に寄与する成分である。トルクは、固定子鉄損に依存せず、上記エネルギーに依存する。つまり、トルクは、鉄損電流ベクトルに依存せず、負荷電流ベクトルに依存する。これを踏まえると、回転機電流ベクトルではなく負荷電流ベクトルを用いてトルクを計算した方がよい。同様に、回転機電流ベクトルではなく負荷電流ベクトルを用いてトルク制限値を計算した方がよい。同様に、回転機電流ベクトルの振幅が追従するべき値(第1の電流制限値)ではなく負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき値(第2の電流制限値)を用いてトルク制限値を計算した方がよい。
このような検討を通じて、本発明者らは、負荷電流ベクトル及び第2の電流制限値を用いてトルク制限値を特定すれば、固定子鉄損が大きい状況においても精度のよい電流制限が実現されると考えた。本開示に係る技術は、このような考えに基づいたものである。
すなわち、本開示の第1態様は、
インバータを用いて、3相回転機の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる回転機制御装置であって、
前記3相回転機の固定子を流れる電流のベクトルである回転機電流ベクトルを検出する電流検出部と、
前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルを用いて、前記一次磁束ベクトルを推定する磁束推定部と、
前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、鉄損抵抗と、を用いて、前記回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する電流特定部と、
第1の電流制限値を用いて、前記回転機電流ベクトルの振幅を前記第1の電流制限値に追従させる場合に前記負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する電流制限値特定部と、
前記負荷電流ベクトルと、前記第2の電流制限値と、推定された前記一次磁束ベクトルと、を用いて、前記負荷電流ベクトルの振幅を前記第2の電流制限値に追従させる場合に前記回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定するトルク制限値特定部と、
前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクの絶対値が前記トルク制限値未満である場合には前記指令トルクを修正せず、前記絶対値が前記トルク制限値以上である場合には前記絶対値を前記トルク制限値に置き換えるトルク制限部と、を備えた、回転機制御装置を提供する。
第1態様では、負荷電流ベクトル及び第2の電流制限値を用いてトルク制限値を特定する。このようにすれば、固定子鉄損に由来するトルク制限値の誤差が生じ難い。このことは、回転機電流ベクトルの振幅を精度よく第1の電流制限値に追従させる上で有利である。すなわち、第1態様は、精度のよい電流制限をかけることに適している。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、
前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値と、前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、を用いて前記第2の電流制限値を特定する回転機制御装置を提供する。
本開示の第3態様は、第1態様に加え、
前記電流特定部は、前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、前記鉄損抵抗と、を用いて、前記鉄損電流ベクトルと、前記負荷電流ベクトルと、を特定し、
前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値と前記鉄損電流ベクトルとを用いて前記第2の電流制限値を特定する、回転機制御装置を提供する。
本開示の第4態様は、第3態様に加え、
前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値の2乗から前記鉄損電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いた値を1/2乗することによって、前記第2の電流制限値を特定する、回転機制御装置を提供する。
第2〜第4態様によれば、第2の電流制限値が第1の電流制限値に適切に対応づけられ易い。このことは、回転機電流ベクトルの振幅を精度よく第1の電流制限値に追従させる上で有利である。
本開示の第5態様は、第1〜第4態様に加え、
前記鉄損抵抗は、推定された前記一次磁束ベクトルの角速度と同じである基準角速度を用いて特定される、回転機制御装置を提供する。
空調機器等に搭載された回転機は、定格負荷のみならず、部分負荷で運転される場合がある。運転中に負荷が増減すると、回転機の一次磁束ベクトルの角速度は変化し得る。第5態様では、基準角速度(一次磁束ベクトルの角速度と同じ)を用いて鉄損抵抗を特定し、その鉄損抵抗を用いて負荷電流ベクトルを特定し、その負荷電流ベクトルを用いてトルク制限値を特定する。このようにすれば、鉄損抵抗及び負荷電流ベクトルの上記角速度依存性をトルク制限値に正確に反映させ易くなる。これにより、一次磁束ベクトルの角速度が変化する状況においても、回転機電流ベクトルの振幅を第1の電流制限値に高い精度で追従させ易くなる。
本開示の第6態様は、第1〜第5態様に加え、
前記トルク制限値特定部は、前記負荷電流ベクトル及び推定された前記一次磁束ベクトルの内積と、推定された前記一次磁束ベクトルの振幅と、前記第2の電流制限値とを用いて、前記トルク制限値を特定する、回転機制御装置を提供する。
本開示の第7態様は、第6態様に加え、
前記トルク制限値特定部は、
前記内積と、前記3相回転機の極対数と、の積である第1の積を特定する第1部分と、
前記極対数と、推定された前記一次磁束ベクトルの振幅と、前記第2の電流制限値と、の積である第2の積を特定する第2部分と、
前記第2の積の2乗から前記第1の積の2乗を差し引いた値を1/2乗することによって前記トルク制限値を特定する第3部分と、を有する、回転機制御装置を提供する。
第6及び第7態様によれば、トルク制限値が第2の電流制限値に適切に対応づけられ易い。このことは、回転機電流ベクトルの振幅を精度よく第1の電流制限値に追従させる上で有利である。
本開示の第8態様は、
インバータを用いて、3相回転機の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる回転機制御方法であって、
前記3相回転機の固定子を流れる電流のベクトルである回転機電流ベクトルを検出する電流検出ステップと、
前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルを用いて、前記一次磁束ベクトルを推定する磁束推定ステップと、
前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、鉄損抵抗と、を用いて、前記回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する電流特定ステップと、
第1の電流制限値を用いて、前記回転機電流ベクトルの振幅を前記第1の電流制限値に追従させる場合に前記負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する電流制限値特定ステップと、
前記負荷電流ベクトルと、前記第2の電流制限値と、推定された前記一次磁束ベクトルと、を用いて、前記負荷電流ベクトルの振幅を前記第2の電流制限値に追従させる場合に前記回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定するトルク制限値特定ステップと、
前記指令トルクを修正するトルク制限ステップであって、前記トルク制限ステップに与えられた前記指令トルクの絶対値が前記トルク制限値未満である場合には前記指令トルクを修正せず、前記絶対値が前記トルク制限値以上である場合には前記絶対値を前記トルク制限値に置き換えるトルク制限ステップと、を備えた回転機制御方法を提供する。
第8態様によれば、第1態様の効果と同じ効果を得ることができる。
回転機制御装置の技術は、回転機制御方法に適用できる。回転機制御方法の技術は、回転機制御装置に適用できる。
本開示の第9態様は、第8態様の回転機制御方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムを提供する。
本開示の第10態様は、第9態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリを提供する。
本開示の第11態様は、第9態様のコンピュータプログラムを実行するプロセッサを提供する。
本開示の第12態様は、
第9態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するプロセッサと、を備えた制御システムを提供する。
(実施形態)
図1に示すように、本開示の実施形態に係る回転機制御装置3は、インバータ(電圧変換回路)2及び3相回転機1に接続され得る。回転機制御装置3は、インバータ2を用いて、3相回転機1の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させるように構成されている。
3相回転機1は、回転子と固定子とを有している。固定子は、3相分の電機子巻線を有している。3相回転機1のU相に対応する電機子巻線をU相巻線と称することがある。3相回転機1のV相に対応する電機子巻線をV相巻線と称することがある。3相回転機1のW相に対応する電機子巻線をW相巻線と称することがある。
インバータ2は、具体的にはPWM(Pulse Width Modulation)インバータである。より具体的には、インバータ2は、直流電源と変換回路とを有している。直流電源は、直流電圧を出力する。変換回路は、PWM制御によって、直流電圧を電圧ベクトル(3相交流電圧)に変換する。インバータ2は、電圧ベクトルを3相回転機1に印加する。
以下では、dq座標系に基づいて回転機制御装置3を説明することがある。また、αβ座標系に基づいて回転機制御装置3を説明することもある。dq座標系及びαβ座標系は、二次元の直交座標系である。dq座標系及びαβ座標系について、図2A及び図2Bを用いて説明する。
図2Aに示すdq座標系は、回転座標系である。d軸及びq軸は、回転子磁束ベクトル(二次磁束ベクトル)の回転速度(角速度)と同じ速度で回転する。反時計回り方向が、位相の進み方向である。d軸は、回転子磁束ベクトル(二次磁束ベクトル)の方向に延びる軸として設定されている。q軸は、d軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。U軸は、U相巻線に対応する。V軸は、V相巻線に対応する。W軸は、W相巻線に対応する。U軸、V軸及びW軸は、回転子が回転しても、回転しない。つまり、U軸、V軸及びW軸は、固定軸である。角度(位相)θは、U軸からみたd軸の進み角である。角度θは、回転子位置又は磁極位置とも称される。
角速度ω2nは、回転子の角速度を表す。角速度ωは、一次磁束ベクトルの角速度又は二次磁束ベクトルの角速度(これらの角速度は同じである)を表す。誘導機のような非同期機の場合は回転子角速度ω2nと角速度ωの間には差があり、すべり周波数と呼ばれる。同期リラクタンスモータ等の同期機では回転子角速度ω2nと角速度ωは等しい。本明細書では、特に断りが無い限り、角度は電気角を意味する。d軸とq軸との間の角度、角度θ、回転子角速度ω2n及び角速度ωは、電気角に基づいた値である。回転子角速度ω2n及び角速度ωの単位はrad/秒である。
図2Bに示すαβ座標系は、固定座標系である。α軸及びβ軸は、固定軸である。反時計回り方向が、位相の進み方向である。α軸は、U軸と同一方向に延びる軸として設定されている。β軸は、α軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。
図1に示すように、回転機制御装置3は、3相回転機1を流れる3相電流(回転機電流ベクトル)i1を検出する。回転機制御装置3には、指令トルクTe *が入力される。回転機制御装置3は、3相電流i1と指令トルクTe *とを用いて、インバータ2を介して3相回転機1を制御する。
(回転機制御装置3の構成)
図3は、本実施形態の回転機制御装置3のブロック図である。図3に示すように、回転機制御装置3は、電流センサ5、3相2相座標変換部22、磁束推定部(一次磁束推定部)23、電流特定部24、電流制限値特定部32、トルク制限値特定部25、トルク推定部26、トルク制限部27、トルク制御部28、磁束指令演算部29、電圧指令演算部30及び2相3相座標変換部31を備えている。
回転機制御装置3の一部又は全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、回転機制御装置3の一部又は全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
以下、回転機制御装置3の動作の概要を説明する。電流センサ5によって、U相電流iu及びV相電流ivが検出される。U相電流iuは、3相電流iのU相成分である。V相電流ivは、3相電流iのV相成分である。3相2相座標変換部22によって、U相電流iu及びV相電流ivが、2相電流iαβに変換される。電流特定部24によって、2相電流iαβと、指令2相電圧vαβ *とから負荷電流ベクトルiLαβが求められる。電流制限値特定部32によって、回転機電流制限値Iamと、2相電流iαβと、指令2相電圧vαβ *とから、負荷電流制限値ILamが求められる。磁束推定部23によって、2相電流iαβと、指令2相電圧vαβ *とから、推定磁束Ψαβと、推定磁束Ψαβの位相θsとが求められる。つまり、磁束推定部23によって、電機子鎖交磁束(一次磁束ベクトル、又は、固定子磁束ベクトルとも称する)が推定される。トルク制限値特定部25によって、負荷電流iLαβと、負荷電流制限値ILamと、推定磁束Ψαβとから、トルク制限値Tlimが特定される。トルク推定部26によって、負荷電流iLαβと、推定磁束Ψαβとから、回転機トルクが特定される(推定トルクTeが特定される)。トルク制限部27によって、指令トルクTe *と、トルク制限値Tlimとから、第二の指令トルクTe **が特定される。トルク制御部28によって、第二の指令トルクTe **と、推定トルクTeと、位相θsとから、指令位相θs *が特定される。磁束指令演算部29によって、指令磁束振幅|Ψαβ *|と、指令位相θs *とから、指令磁束ベクトルΨαβ *が特定される。電圧指令演算部30によって、指令磁束ベクトルΨαβ *と、推定磁束Ψαβと、2相電流iαβとから、指令2相電圧vαβ *が特定される。2相3相座標変換部31によって、指令2相電圧vαβ *が、指令3相電圧vuvw *に変換される。指令3相電圧vuvw *は、インバータ2に参照される。このような制御によって、3相回転機1は、回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクが、指令電圧ベクトルvαβ *(vuvw *)、指令磁束ベクトルψαβ *及び第二の指令トルクTe **に追従するように制御される。
本明細書では、2相電流iαβは、実際に3相回転機1を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。同様に、負荷電流ベクトルiLαβ、鉄損電流ベクトルiRαβ、指令2相電圧vαβ *、推定磁束Ψαβ、位相θs、指令位相θs *、推定トルクTe、指令トルクTe *、指令トルクTe **、指令磁束振幅|Ψαβ *|、指令磁束ベクトルΨαβ *及び指令3相電圧vuvw *等も、情報として伝達される値を意味する。
次に、回転機制御装置3の詳細を説明する。
(電流センサ5)
電流センサ(電流検出部)5は、回転機電流ベクトルを検出する。回転機電流ベクトルは、3相回転機1の固定子を流れる電流のベクトルである。本実施形態では、電流センサ5は、U相電流iu及びV相電流ivを検出する。電流センサ5は、U相電流iu及びV相電流ivを出力する。
(3相2相座標変換部22)
3相2相座標変換部22は、3相電流i1を2相電流iαβに変換する。本実施形態では、3相2相座標変換部22は、U相電流iu及びV相電流ivを、α軸電流iα及びβ軸電流iβ(2相電流iαβ)に変換する。α軸電流iα及びβ軸電流iβは、磁束推定部23、電圧指令演算部30及び電流特定部24に与えられる。なお、U相及びV相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように電流センサ5が設けられていてもよい。この場合も、測定された電流に基づいてα軸電流iα及びβ軸電流iβが特定されるように、3相2相座標変換部22が構成され得る。
(電流特定部24)
電流特定部24は、回転機電流ベクトル(2相電流iαβ)と、指令電圧ベクトル(指令2相電圧)vαβ *と、鉄損抵抗と、を用いて、負荷電流ベクトルiLαβを特定する。負荷電流ベクトルiLαβは、回転機電流ベクトルiαβから鉄損電流ベクトル(固定子鉄損電流ベクトル)iRαβを差し引いたベクトルである。負荷電流ベクトルiLαβは、3相回転機1の固定子から回転子へ伝達されるエネルギーに対する固定子鉄損の割合に応じて変化するベクトルである。鉄損電流ベクトルiRαβもまた、上記割合に応じて変化するベクトルである。具体的に、上記割合がゼロであるときは、負荷電流ベクトルiLαβは回転機電流ベクトルiαβと同じであり、鉄損電流ベクトルiRαβはゼロである。上記割合が大きくなればなるほど、負荷電流ベクトルiLαβの位相と回転機電流ベクトルiαβの位相との差が大きくなり、及び/又は負荷電流ベクトルの振幅|iLαβ|=(i 2+i 21/2と回転機電流ベクトルの振幅|iαβ|=(iα 2+iβ 21/2との差が大きくなる。
必要に応じて(例えば、式(21)を用いた制御を行う場合には)、電流特定部24は、回転機電流ベクトル(2相電流iαβ)と、指令電圧ベクトル(指令2相電圧)vαβ *と、鉄損抵抗と、を用いて、鉄損電流ベクトルiRαβと、負荷電流ベクトルiLαβと、を特定することができる。具体的に、電流特定部24は、負荷電流ベクトルiLαβ(及び鉄損電流ベクトルiRαβ)を特定する際に、回転機電流ベクトルiαβ及び鉄損抵抗とともに固定子抵抗を用いる。
具体的には、電流特定部24は、式(1)、(2)、(3)及び(4)を用いて、負荷電流ベクトルiLαβ(負荷電流i,i)と鉄損電流ベクトルiRαβ(鉄損電流i,i)を特定することができる。式(1)及び(2)におけるRaは、3相回転機1の1相当たりの固定子抵抗である。Rcは、3相回転機1の1相あたりの鉄損抵抗である。式(5)に示すように、鉄損抵抗は、角速度ωに依存した式で表される。本実施形態では、鉄損抵抗Rcは、一次磁束ベクトルの角速度ωが大きくなればなるほど大きくなる。式(5)におけるRc0は、渦電流損を示す調整用の抵抗値である。Rc1は、ヒステリシス損を示す調整用の抵抗値である。これらの抵抗値Rc0及びRc1は、鉄損抵抗を同定する際に用いられる。式(1)〜(5)から理解されるように、本実施形態の電流特定部24は、一次磁束ベクトルの角速度ωに応じて変化する鉄損抵抗Rcと、回転機電流ベクトルiαβと、指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)とから、負荷電流ベクトルiLαβを特定する。
Figure 2018046723
なお、式(1)及び(2)の固定子抵抗Raを無視することもできる。例えば、3相回転機1の回転数が高い場合には固定子抵抗Raは鉄損抵抗Rcと比べて非常に小さくなる。このため、この場合には、固定子抵抗Raを無視しても、十分な精度で負荷電流i及びiが特定され得る。
一次磁束ベクトルの角速度に代えて、同角速度と同じである別の物理量の角速度を用いることもできる。要するに、鉄損抵抗は、推定された一次磁束ベクトルの角速度と同じである基準角速度を用いて特定され得る。基準角速度としては、一次磁束ベクトルの角速度、二次磁束ベクトルの角速度、指令電圧ベクトルの角速度及び回転機電流ベクトルiαβの角速度が例示される。本実施形態の負荷電流ベクトルiLαβ及び固定子鉄損電流ベクトルiRαβは、基準角速度、回転機電流ベクトルiαβ及び指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)の関数である。
負荷電流ベクトルiLαβ及び固定子鉄損電流ベクトルiRαβの特定の際に、指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)に代えて、検出された回転機電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。すなわち、式(1)の「vα *」を「vα」に置き換え、式(2)の「vβ *」を「vβ」に置き換えることができる。具体的には、電流特定部24は、3相回転機1に印加されている回転機電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて負荷電流iLαβを特定するものであってもよい。
式(5)における一次磁束ベクトルの角速度ωとして、推定値を用いることができる。ωの推定値として、磁束推定部23で得た推定磁束Ψαβの位相θsを時間微分を用いることができる。この時間微分として、1制御周期前に磁束推定部23で得られた推定磁束Ψαβの位相θsから2制御周期前に磁束推定部23で得られた推定磁束Ψαβの位相θsを差し引いた差分を制御周期Tsで割った値を用いることができる。もちろん、基準角速度として、推定値を用いることができる。基準角速度の推定値として、ωの推定値と同様、上記物理量の位相の時間微分を用いることができる。
(磁束推定部23)
磁束推定部23は、指令電圧ベクトル(指令2相電圧)vαβ *を用いて、一次磁束ベクトルを推定する(推定磁束Ψαβを特定する)。本実施形態では、磁束推定部23は、2相電流iαβと、指令2相電圧vαβ *とを用いて、推定磁束Ψαβを特定する。具体的に、磁束推定部23は、式(6)、(7)及び(8)を用いて、推定磁束Ψαβ(推定磁束Ψα,Ψβ)及び推定磁束Ψαβの位相θsを求める。式(6)及び(7)の右辺の積分は、基準時刻(t=0)から現時点までの時間積分を表す。Ψα|t=0は、t=0における推定磁束Ψαの値(初期値)である。Ψβ|t=0は、t=0における推定磁束Ψβの値(初期値)である。推定磁束Ψαβは、電圧指令演算部30及びトルク制限値特定部25に与えられる。位相θsは、トルク制御部28に与えられる。
Figure 2018046723
なお、推定磁束の特定の際に、指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)に代えて、検出された回転機電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。具体的には、磁束推定部23は、指令2相電圧vαβ *に代えて、3相回転機1に印加されている回転機電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて、推定磁束Ψαβを求めるものであってもよい。
(トルク推定部26)
トルク推定部26は、式(9)を用いて、負荷電流ベクトルiLαβと、推定磁束Ψαβ(推定磁束Ψα,Ψβ)と、3相回転機1の極対数Pnとから、回転機トルクを推定する(推定トルクTeを特定する)。
Figure 2018046723
(電流制限値特定部32)
電流制限値特定部32は、回転機電流制限値(第1の電流制限値)Iamを用いて、負荷電流制限値(第2の電流制限値)ILamを特定する。負荷電流制限値ILamは、回転機電流ベクトルiαβの振幅を回転機電流制限値Iamに追従させる場合に負荷電流ベクトルiLαβの振幅が追従するべき値である。回転機電流制限値Iamは、一例では、回転機制御装置3に格納されており、別例では、上位制御装置から与えられる。本実施形態では、回転機電流制限値Iamは定数である。回転機電流制限値Iamは、3相回転機1の定格電流に基づいて定めることができる。一例では、回転機電流制限値Iamは、3相回転機1の電流ベクトルの振幅の定格値の80%〜100%である。ただし、回転機電流制限値Iamは、任意に設定可能である。
本実施形態の電流制限値特定部32は、回転機電流制限値(第1の電流制限値)Iamと、回転機電流ベクトルiαβと、指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)と、を用いて、負荷電流制限値(第2の電流制限値)ILamを特定する。具体的に、この特定では、固定子抵抗Ra及び鉄損抵抗Rcも用いられる。より具体的に、電流制限値特定部32は、式(10)を用いて負荷電流制限値ILamを特定する。なお、(Va *2=(vα *2+vβ *2)である。
Figure 2018046723
以下、図4A及び4Bを参照しながら式(10)について説明する。図4Aは、鉄損を考慮した誘導機の等価回路である。図4Bは、誘導機のベクトル図である。図4A及び図4Bのvaは、3相回転機1に印加される電圧ベクトル(2相電圧)である。i1は、回転機電流ベクトルiαβに対応する。iRは、鉄損電流ベクトルiRαβに対応する。iLは、負荷電流ベクトルiLαβに対応する。i2nは、正規化回転子電流である。ifは、回転子励磁電流である。Ψ1は、固定子鎖交磁束(一次磁束)である。Ψ2nは、正規化回転子磁束(正規化二次磁束)である。先に述べた通り、ω2nは回転子角速度であり、Raは固定子抵抗であり、Rcは鉄損抵抗である。L1tは、総合固定子漏れインダクタンスである。Mnは、正規化相互インダクタンスである。R2nは、正規化回転子抵抗である。Jは、2×2交代行列である。これらのパラメータに関し、式(11)〜(18)が成立する。
Figure 2018046723
式(13)のi2は、回転子電流である。Mは、相互インダクタンスである。L2は、回転子インダクタンスである。式(15)のR2は、回転子抵抗である。式(16)のL1は、固定子インダクタンスである。式(17)のΨ2は、回転子磁束(二次磁束)である。
図4Bから理解されるように、i1はiRとiLのベクトル和である(iαβはiRαβとiLαβのベクトル和である)。|iL2=|i1−iR2という関係式が成立する。この関係式を式(19)に従って変形する。変形後の関係式から、負荷電流ベクトルの振幅|iL|=ILに関する式(20)が得られる。なお、(Va2=(vα 2+vβ 2)であり、(Ia2=(iα 2+iβ 2)である。式(20)から、回転機電流ベクトルがiαβでありかつ回転機電圧ベクトルがvαβであるときにおいて、回転機電流ベクトルiαβの振幅をIamに追従させるべき場合には、負荷電流ベクトルの振幅をIL=1/RC((vα 2+vβ 2)−2(R1+Rc)(vαα+vββ2+(R1+Rc2am 21/2に追従させればよいことが分かる。式(10)は、振幅ILをILamとして用いようというものである。なお、式(10)〜(20)の理解には非特許文献2が役立つので参照されたい。
Figure 2018046723
なお、式(10)では、式(20)とは異なり、「vα」及び「vβ」ではなく「vα *」及び「vβ *」を用いている。ただし、負荷電流制限値ILamの特定の際に、指令電圧ベクトル(指令2相電圧vαβ *)に代えて、検出された回転機電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。具体的には、電流制限値特定部32は、指令2相電圧vαβ *に代えて、3相回転機1に印加されている回転機電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて、負荷電流制限値ILamを求めるものであってもよい。
なお、式(10)の固定子抵抗Raを無視することもできる。例えば、3相回転機1の回転数が高い場合には固定子抵抗Raは鉄損抵抗Rcと比べて非常に小さくなる。このため、この場合には、固定子抵抗Raを無視しても、十分な精度で負荷電流制限値ILamが特定され得る。
また、式(10)を用いた制御は、3相回転機1が誘導機ではなく同期機である場合も適用可能である(図4Aの電磁負荷の部分が変わるが、式(10)は成立する)。
変形例の電流制限値特定部32は、回転機電流制限値(第1の電流制限値)Iamと鉄損電流ベクトルiRαβとを用いて、負荷電流制限値(第2の電流制限値)ILamを特定する。具体的に、電流制限値特定部32は、回転機電流制限値Iamの2乗から鉄損電流ベクトルiRαβの振幅の2乗を差し引いた値を1/2乗することによって、負荷電流制限値ILamを特定する。つまり、電流制限値特定部32は、式(21)を用いて負荷電流制限値ILamを特定する。変形例は、図4Cに示すような、iαβはiRαβとiLαβのベクトル和でありかつiRαβとiLαβとが直交するという関係が概ね成立するときに、好適に採用され得る。つまり、変形例は、(i 2+i 21/2≒((iα 2+iβ 2)−(i 2+i 2))1/2のときに、好適に採用され得る。変形例は、例えば、3相回転機1が誘導機でありかつ負荷が小さいときに、好適に採用され得る。
Figure 2018046723
本実施形態の電流制限値特定部32及び変形例の電流制限値特定部のいずれによっても、負荷電流制限値ILamを回転機電流制限値Iamに適切に対応づけることができる。
(トルク制限値特定部25)
トルク制限値特定部25は、負荷電流ベクトルiLαβと、負荷電流制限値(第2の電流制限値)ILamと、推定された一次磁束ベクトル(推定磁束Ψαβ)と、を用いて、トルク制限値Tlimを特定する。トルク制限値Tlimは、負荷電流ベクトルiLαβの振幅を負荷電流制限値ILamに追従させる場合に回転機トルク(の絶対値)が追従するべき値である。具体的に、トルク制限値特定部25は、負荷電流ベクトルiLαβ及び推定磁束Ψαβの内積と、推定磁束Ψαβの振幅と、負荷電流制限値ILamとを用いて、トルク制限値Tlimを特定する。
本実施形態のトルク制限値特定部25は、無効電力成分特定部(第1部分)152と、皮相電力成分特定部(第2部分)153と、有効電力成分特定部(第3部分)154とを有している。
無効電力成分特定部(第1部分)152は、推定磁束Ψαβ及び負荷電流ベクトルiLαβから、無効電力に関する成分TQを特定する。式(22)に示すように、無効電力成分TQは、推定磁束Ψαβ及び負荷電流ベクトルiLαβの内積と、3相回転機1の極対数Pnとの積(第1の積)である。
Figure 2018046723
皮相電力成分特定部(第2部分)153は、推定磁束Ψαβの振幅|Ψαβ|=(Ψα 2+Ψβ 21/2と、負荷電流制限値ILamとから、皮相電力に関係する成分TAを特定する。式(23)に示すように、皮相電力成分TAは、極対数Pnと、推定磁束Ψαβの振幅|Ψαβ|と、負荷電流制限値ILamと、の積(第2の積)である。
Figure 2018046723
有効電力成分特定部(第3部分)154は、無効電力成分TQ及び皮相電力成分TAから、トルク制限値Tlimを特定する。具体的に、有効電力成分特定部154は、式(24)に示すように、皮相電力成分TAの2乗から無効電力成分TQの2乗を差し引いた値を1/2乗することによってトルク制限値Tlimを特定する。
Figure 2018046723
以上のように、トルク制限値特定部25は、負荷電流制限値ILamを用いてトルク制限値Tlimを特定する。このようにすれば、以下の理由で、トルク制限値Tlimが適切に特定され易い。すなわち、負荷電流制限値ILamは、負荷電流ベクトルiLαβの振幅が追従するべき値である。このため、負荷電流制限値ILamは、負荷電流ベクトルiLαβと同様、3相回転機1の固定子鉄損ではなく回転機の固定子から回転子へのエネルギー伝達に対応する。トルク制限値Tlimは、回転機トルクが追従するべき値である。このため、トルク制限値Tlimは、回転機トルクと同様、3相回転機1の固定子鉄損ではなく上記エネルギー伝達に対応する。このように、負荷電流制限値ILam及びトルク制限値Tlimは、いずれも上記エネルギー伝達に対応する。このため、負荷電流制限値ILamを用いてトルク制限値Tlimを特定すれば、トルク制限値Tlimに固定子鉄損に由来する誤差が生じ難い。
また、トルク制限値特定部25によれば、トルク制限値Tlimを運転状態に応じて逐次更新することが可能となる。
(トルク制限部27)
トルク制限部27は、(第1の)指令トルクTe *から、(第2の)指令トルクTe **を特定する。具体的に、トルク制限部27は、式(25)により、指令トルクTe *を求める。すなわち、トルク制限部27は、指令トルクを修正可能である。指令トルクTe *は、例えば速度制御装置から与えられる。
Figure 2018046723
要するに、トルク制限部27は、トルク制限部27に与えられた指令トルクTe *の絶対値がトルク制限値Tlim未満である場合には、指令トルクTe *を修正しない。つまり、第2の指令トルクTe **として第1の指令トルクTe *を出力する。上記絶対値がトルク制限値Tlim以上である場合には、上記絶対値をトルク制限値Tlimに置き換える。つまり、第2の指令トルクTe **としてトルク制限値Tlimを出力する。
(トルク制御部28)
トルク制御部28は、推定トルクTeと、第2の指令トルクTe **と、位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図5に示すように、本実施形態のトルク制御部28は、トルク誤差演算部40と、位相補正量演算部38と、加算部36とを有している。トルク誤差演算部40は、推定トルクTeと指令トルクTe **との差であるトルク誤差ΔT(=Te **−Te)を特定する。位相補正量演算部38は、ΔTをゼロに収束させるための比例積分制御によって、位相補正量ΔθS *を特定する。加算部36は、位相θSと位相補正量ΔθS *との合計θS *(=θS+ΔθS *)を求める。なお、推定トルクTeに代えて、トルクの検出値を用いることもできる。
(磁束指令演算部29)
磁束指令演算部29は、指令磁束振幅|Ψαβ *|と、指令位相θs *とから、指令磁束ベクトルΨαβ *を特定する。指令磁束ベクトルΨαβ *は、電機子鎖交磁束が追従するべきベクトルである。具体的に、磁束指令演算部29は、式(26)及び(27)を用いて指令磁束ベクトルΨαβ *を求める。指令磁束ベクトルΨαβ *は、電圧指令演算部30に与えられる。本実施形態では、指令磁束振幅|Ψαβ *|は、速度制御装置から与えられる。テーブルによって、指令トルクTe **から指令磁束振幅|Ψαβ *|を特定することもできる。
Figure 2018046723
(電圧指令演算部30)
電圧指令演算部30は、指令磁束ベクトルΨαβ *と推定磁束Ψαβとの差と、2相電流iαβとから、指令2相電圧vαβ *(指令α軸電圧vα *及び指令β軸電圧vβ *)を特定する。本実施形態では、電圧指令演算部30は、式(28)を用いて、指令2相電圧vαβ *を求める。式(28)におけるTsは、制御周期(サンプリング周期)である。なお、3相回転機1が高速回転しているときは、固定子抵抗Raに基づく電圧降下が非常に小さい。このため、電圧指令演算部30は、式(28)の右辺第2項を無視して、指令磁束ベクトルΨαβ *と推定磁束Ψαβとの差から、指令2相電圧vαβ *を特定するように構成されていてもよい。指令2相電圧vαβ *は、2相3相座標変換部31に与えられる。
Figure 2018046723
(2相3相座標変換部31)
2相3相座標変換部31は、指令2相電圧vαβ *を、指令3相電圧vuvw *に変換する。その後、指令3相電圧vuvw *に対応する電圧ベクトルが、インバータ2によって生成され、3相回転機1に印加される。
(負荷電流ベクトルについての補足)
負荷電流ベクトルについて、補足する。3相回転機1の特性は、図6に示す等価回路により説明され得る。固定子損失回路51は、固定子の損失を表現するものである。固定子負荷回路52は、固定子側からみた損失のない負荷を表現するものである。vαβは、3相回転機1に印加される電圧ベクトル(2相電圧)である。iαβは3相回転機1の固定子を流れる電流のベクトル(回転子電流ベクトル)である。iRαβは、鉄損抵抗Rcを流れる等価的な電流のベクトル(鉄損電流ベクトル)である。vLαβは、負荷に印加される負荷電圧ベクトルである。固定子損失回路51及び固定子負荷回路52から構成されるベクトル等価回路について、式(29)〜(31)が成立する。
Figure 2018046723
式(29)〜(31)から、式(1)及び(2)が導かれる。また、詳細な説明は省略するが、式(5)に示すように鉄損抵抗RcをRc0、Rc1及びωを用いて表現することは、渦電流損は一次磁束ベクトル(鎖交磁束ベクトル)の振幅の2乗と角速度の2乗の積に比例し、ヒステリシス損は一次磁束ベクトルの振幅の2乗と角速度の積に比例するという理論とも整合する。
回転機においては、固定子と回転子は電磁的に結合している。固定子に印加された電気エネルギーは、この電磁結合により回転子に伝達される。図6を用いて説明すると、固定子負荷回路52に流れ込む負荷電流ベクトルiLαβが、回転子へのエネルギー伝達に寄与する。本発明者らの検討によれば、回転機電流ベクトルiαβを鉄損電流ベクトルiRαβと負荷電流ベクトルiLαβとに分離し、負荷電流ベクトルiLαβを用いてトルク制限値Tlimを計算すれば、回転子へのエネルギー伝達に寄与しない鉄損の影響を避けつつ、精度のよい制御が可能となる。
なお、負荷電流ベクトルiLαβを用いて指令2相電圧vαβ *を特定することもできる。しかし、本実施形態の電圧指令演算部30は、2相電流iαβを用いて指令2相電圧vαβ *を特定する。式(28)から理解されるように、このようにすれば、2相電圧vαβ *を、2相電流iαβ及び固定子抵抗Raに基づく電圧降下と、磁束の時間微分とにより容易に特定できるというメリットがある。すなわち、本実施形態では、トルク制限値Tlimの特定に負荷電流ベクトルiLαβを反映させる一方で指令2相電圧vαβ *を2相電流iαβを用いて特定することで、トルク制限値Tlimの特定精度と指令2相電圧vαβ *の特定容易性の両方を確保している。
本明細書の回転機制御装置3について説明した事項は、モータ制御装置としても、発電機制御装置としても適用できる。両方の場合において、制御の態様は実質的に同じであるためである。
従来の技術では、3相回転機の鉄損の割合が大きい場合には、直接トルク制御に電流制限を組み合わせた制御を精度よく行うことは難しい。しかし、本開示に係る技術によれば、3相回転機の鉄損の割合が高い場合であっても、直接トルク制御に電流制限を組み合わせた制御を精度よく行うことができる。
本開示に係る技術は、同期電動機、同期発電機、誘導電動機及び誘導発電機等の回転機に適用できる。それらの回転機は、冷暖房装置又は給湯機に使用されるヒートポンプ式冷凍装置に適合したものである。
1 3相回転機
2 インバータ
3 回転機制御装置
5 電流センサ
22 3相2相座標変換部
23 磁束推定部(一次磁束推定部)
24 電流特定部
25 トルク制限値特定部
26 トルク推定部
27 トルク制限部
28 トルク制御部
29 磁束指令演算部
30 電圧指令演算部
31 2相3相座標変換部
32 電流制限値特定部
36 加算部
38 位相補正量演算部
40 トルク誤差演算部
51 固定子損失回路
52 固定子負荷回路
152 無効電力成分特定部
153 皮相電力成分特定部
154 有効電力成分特定部

Claims (8)

  1. インバータを用いて、3相回転機の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる回転機制御装置であって、
    前記3相回転機の固定子を流れる電流のベクトルである回転機電流ベクトルを検出する電流検出部と、
    前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルを用いて、前記一次磁束ベクトルを推定する磁束推定部と、
    前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、鉄損抵抗と、を用いて、前記回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する電流特定部と、
    第1の電流制限値を用いて、前記回転機電流ベクトルの振幅を前記第1の電流制限値に追従させる場合に前記負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する電流制限値特定部と、
    前記負荷電流ベクトルと、前記第2の電流制限値と、推定された前記一次磁束ベクトルと、を用いて、前記負荷電流ベクトルの振幅を前記第2の電流制限値に追従させる場合に前記回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定するトルク制限値特定部と、
    前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクの絶対値が前記トルク制限値未満である場合には前記指令トルクを修正せず、前記絶対値が前記トルク制限値以上である場合には前記絶対値を前記トルク制限値に置き換えるトルク制限部と、を備えた回転機制御装置。
  2. 前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値と、前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、を用いて前記第2の電流制限値を特定する、請求項1に記載の回転機制御装置。
  3. 前記電流特定部は、前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、前記鉄損抵抗と、を用いて、前記鉄損電流ベクトルと、前記負荷電流ベクトルと、を特定し、
    前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値と前記鉄損電流ベクトルとを用いて前記第2の電流制限値を特定する、請求項1に記載の回転機制御装置。
  4. 前記電流制限値特定部は、前記第1の電流制限値の2乗から前記鉄損電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いた値を1/2乗することによって、前記第2の電流制限値を特定する、請求項3に記載の回転機制御装置。
  5. 前記鉄損抵抗は、推定された前記一次磁束ベクトルの角速度と同じである基準角速度を用いて特定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転機制御装置。
  6. 前記トルク制限値特定部は、前記負荷電流ベクトル及び推定された前記一次磁束ベクトルの内積と、推定された前記一次磁束ベクトルの振幅と、前記第2の電流制限値とを用いて、前記トルク制限値を特定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転機制御装置。
  7. 前記トルク制限値特定部は、
    前記内積と、前記3相回転機の極対数と、の積である第1の積を特定する第1部分と、
    前記極対数と、推定された前記一次磁束ベクトルの振幅と、前記第2の電流制限値と、の積である第2の積を特定する第2部分と、
    前記第2の積の2乗から前記第1の積の2乗を差し引いた値を1/2乗することによって前記トルク制限値を特定する第3部分と、を有する、請求項6に記載の回転機制御装置。
  8. インバータを用いて、3相回転機の回転機電圧ベクトル、一次磁束ベクトル及び回転機トルクを、指令電圧ベクトル、指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる回転機制御方法であって、
    前記3相回転機の固定子を流れる電流のベクトルである回転機電流ベクトルを検出する電流検出ステップと、
    前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルを用いて、前記一次磁束ベクトルを推定する磁束推定ステップと、
    前記回転機電流ベクトルと、前記回転機電圧ベクトル又は前記指令電圧ベクトルと、鉄損抵抗と、を用いて、前記回転機電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定する電流特定ステップと、
    第1の電流制限値を用いて、前記回転機電流ベクトルの振幅を前記第1の電流制限値に追従させる場合に前記負荷電流ベクトルの振幅が追従するべき第2の電流制限値を特定する電流制限値特定ステップと、
    前記負荷電流ベクトルと、前記第2の電流制限値と、推定された前記一次磁束ベクトルと、を用いて、前記負荷電流ベクトルの振幅を前記第2の電流制限値に追従させる場合に前記回転機トルクが追従するべきトルク制限値を特定するトルク制限値特定ステップと、
    前記指令トルクを修正するトルク制限ステップであって、前記トルク制限ステップに与えられた前記指令トルクの絶対値が前記トルク制限値未満である場合には前記指令トルクを修正せず、前記絶対値が前記トルク制限値以上である場合には前記絶対値を前記トルク制限値に置き換えるトルク制限ステップと、
    を備えた回転機制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20240019825A (ko) 2021-09-06 2024-02-14 미쓰비시덴키 가부시키가이샤 전동기 감시 장치 및 전동기 감시 방법

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KR20240019825A (ko) 2021-09-06 2024-02-14 미쓰비시덴키 가부시키가이샤 전동기 감시 장치 및 전동기 감시 방법

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