JP2018044233A - 絶縁性アルミニウム合金部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁性、放熱性及び耐電圧性に優れる絶縁性アルミニウム合金部材の提供を目的とする。【解決手段】本発明の絶縁性アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金から構成される基材と、この基材の表面に積層されるポーラス構造の酸化皮膜と、この酸化皮膜の表面及び内面を被覆し、ポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜とを備え、上記酸化皮膜の表面の平均ポア径が5nm以上50nm未満である。上記酸化皮膜の平均ポア径が上記基材と反対側から基材側に向かって増大するとよい。上記酸化皮膜の平均ポア径が50nm未満である部分の平均厚みとしては0.1μm以上10μm以下が好ましい。上記基材が、Mg:3.5質量%超6.5質量%以下、Cu:0.02質量%以上4.0質量%以下、Fe:0質量%以上0.05質量%以下、Si:0質量%以上0.05質量%以下、並びに残部:Al及び不可避的不純物である組成を有するとよい。【選択図】なし
Description
本発明は、絶縁性アルミニウム合金部材に関する。
例えば、CPU(Central Processing Unit)、パワーデバイス、LED(Light Emitting Diode)、太陽電池等の半導体や液晶の支持部材等には、高い絶縁性、放熱性及び耐電圧性が要求される。このような特性が要求される部材の素材としては、アルミナ(Al2O3)、窒化珪素(Si3N4)、窒化アルミ(AlN)等のセラミックスが使用されている。しかしながら、これらの素材は、非常に高価であると共に割れ易いという不都合がある。
そこで、アルミニウム合金の表面に絶縁皮膜を形成したアルミニウム合金部材が検討されており、陽極酸化皮膜にスピンオンガラス膜を皮膜すること(特開2011−233874号公報参照)や、シロキサン結合を含む絶縁層を用いること(特開2011−100816号公報参照)などが提案されている。
しかし、上記アルミニウム合金部材は、いずれも耐電圧性の検討が不十分であり、十分な耐電圧性を有するとはいい難い。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、絶縁性、放熱性及び耐電圧性に優れる絶縁性アルミニウム合金部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、アルミニウム合金から構成される基材と、この基材の表面に積層されるポーラス構造の酸化皮膜と、この酸化皮膜の表面及び内面を被覆し、ポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜とを備え、上記酸化皮膜の表面の平均ポア径が5nm以上50nm未満である絶縁性アルミニウム合金部材である。
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、耐電圧性を低下させる空気を含むポーラス構造の酸化皮膜を備えるが、この酸化皮膜の表面及び内面(孔内)が絶縁性に優れるポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜で被覆されるので、絶縁性及び放熱性と共に、単位厚み当たりの耐電圧を高めることができる。さらに、当該絶縁性アルミニウム合金部材は、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm未満であるので、上記絶縁皮膜の形成材料を酸化皮膜内に保持し易い。その結果、当該絶縁性アルミニウム合金部材によれば、絶縁皮膜を容易かつ確実に形成することができるので、生産性を高めつつ耐電圧性を著しく高めることができる。ここで、「酸化皮膜の表面」は、基材と反対側の表出面を指す。
上記酸化皮膜の平均ポア径が上記基材と反対側から基材側に向かって増大するとよい。このように平均ポア径を基材側に向かって増大させることで、絶縁皮膜の形成材料をより確実に酸化皮膜内に保持できる。その結果、生産性及び耐電圧性の向上効果を促進することができる。
上記酸化皮膜の平均ポア径が50nm未満である部分の平均厚みとしては、0.1μm以上10μm以下が好ましい。このように平均ポア径が50nm未満の部分の平均厚みを上記範囲とすることで、酸化皮膜の強度を維持しつつ、生産性を向上することができる。
上記基材が、Mg:3.5質量%超6.5質量%以下、Cu:0.02質量%以上4.0質量%以下、Fe:0質量%以上0.05質量%以下、Si:0質量%以上0.05質量%以下、並びに残部:Al及び不可避的不純物である組成を有するとよい。このような組成を有する合金を基材に用いることで、耐熱性、耐電圧性及び生産性を向上することができる。
上記絶縁皮膜のポリシロキサンがアルキル基を含むとよい。このように絶縁皮膜がアルキル基を含むポリシロキサンを主成分とすることで、半導体等における漏れ電流を低減することができる。
なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、例えば50質量%以上含まれる成分を意味する。「平均ポア径」とは、厚み方向と垂直な面における複数のポア径(孔の径)の平均値を意味する。
本発明の絶縁性アルミニウム合金部材は、絶縁性、放熱性及び耐電圧性に優れる。
以下、本発明に係る絶縁性アルミニウム合金部材の実施形態について説明する。
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金から構成される基材と、この基材の表面に積層されるポーラス構造の酸化皮膜と、この酸化皮膜の表面及び内面を被覆し、ポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜とを備える。
<基材>
当該絶縁性アルミニウム合金部材の基材は、アルミニウム合金から構成され、例えばアルミニウム合金の圧延により得られる板材である。このアルミニウム合金の組成は特に限定されないが、放熱性、耐電圧性及び生産性の観点から、Mg及びCuを含有することが好ましい。具体的には、上記基材は、Mg:3.5質量%超6.5質量%以下、Cu:0.02質量%以上4.0質量%以下、Fe:0質量%以上0.05質量%以下、Si:0質量%以上0.05質量%以下、並びに残部:Al及び不可避的不純物である組成を有するとよい。以下、上記基材(アルミニウム合金)の各成分について説明する。
当該絶縁性アルミニウム合金部材の基材は、アルミニウム合金から構成され、例えばアルミニウム合金の圧延により得られる板材である。このアルミニウム合金の組成は特に限定されないが、放熱性、耐電圧性及び生産性の観点から、Mg及びCuを含有することが好ましい。具体的には、上記基材は、Mg:3.5質量%超6.5質量%以下、Cu:0.02質量%以上4.0質量%以下、Fe:0質量%以上0.05質量%以下、Si:0質量%以上0.05質量%以下、並びに残部:Al及び不可避的不純物である組成を有するとよい。以下、上記基材(アルミニウム合金)の各成分について説明する。
[Mg(マグネシウム)]
Mgは、上記基材の強度を向上させる元素であり、強度を高くすることで基材の厚みを薄くすることができることから、結果としてMgにより上記基材の放熱性を高める(熱抵抗を小さくする)ことができる。また、Mg含有量が多いほど、アルミニウム合金の陽極酸化速度が速くなり、生産性が向上する。上記基材におけるMgの含有量は、3.5質量%超が好ましく、3.6質量%以上がより好ましい。一方、Mgの含有量の上限としては、6.5質量%が好ましく、6.0質量%がより好ましい。Mgの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性及び生産性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Mgの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金に圧延割れが発生し易くなり、圧延が困難になるおそれがある。
Mgは、上記基材の強度を向上させる元素であり、強度を高くすることで基材の厚みを薄くすることができることから、結果としてMgにより上記基材の放熱性を高める(熱抵抗を小さくする)ことができる。また、Mg含有量が多いほど、アルミニウム合金の陽極酸化速度が速くなり、生産性が向上する。上記基材におけるMgの含有量は、3.5質量%超が好ましく、3.6質量%以上がより好ましい。一方、Mgの含有量の上限としては、6.5質量%が好ましく、6.0質量%がより好ましい。Mgの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性及び生産性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Mgの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金に圧延割れが発生し易くなり、圧延が困難になるおそれがある。
[Cu(銅)]
Cuは、Mgと同様、上記基材の強度を向上させる元素であり、基材の放熱性に寄与する。また、Mgとの共存により強度向上効果が増大する。上記基材がMgを含む場合のCuの含有量の下限としては、0.02質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましい。上記基材がMgを含まない場合のCuの含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、Cuの含有量の上限としては、4.0質量%が好ましく、3.0質量%がより好ましい。Cuの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Cuの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金の強度が高くなり過ぎて圧延が困難になるおそれがある。
Cuは、Mgと同様、上記基材の強度を向上させる元素であり、基材の放熱性に寄与する。また、Mgとの共存により強度向上効果が増大する。上記基材がMgを含む場合のCuの含有量の下限としては、0.02質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましい。上記基材がMgを含まない場合のCuの含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、Cuの含有量の上限としては、4.0質量%が好ましく、3.0質量%がより好ましい。Cuの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Cuの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金の強度が高くなり過ぎて圧延が困難になるおそれがある。
[Fe(鉄)]
Feは耐電圧性を低下させる原因となるAl−Fe系金属間化合物を生成することから、Feの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるFeの含有量の上限としては、0.05質量%が好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。Feの含有量が上記上限を超える場合、Al−Fe系金属間化合物のサイズや個数が増大するおそれがある。なお、Feの含有量の下限は、0質量%である。
Feは耐電圧性を低下させる原因となるAl−Fe系金属間化合物を生成することから、Feの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるFeの含有量の上限としては、0.05質量%が好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。Feの含有量が上記上限を超える場合、Al−Fe系金属間化合物のサイズや個数が増大するおそれがある。なお、Feの含有量の下限は、0質量%である。
[Si(ケイ素)]
Siは耐電圧性を低下させる原因となるMg−Si系金属間化合物を生成することから、Siの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるSiの含有量の上限としては、0.05質量%が好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。Siの含有量が上記上限を超える場合、Mg−Si系金属間化合物のサイズや個数が増大するおそれがある。なお、Siの含有量の下限は、0質量%である。
Siは耐電圧性を低下させる原因となるMg−Si系金属間化合物を生成することから、Siの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるSiの含有量の上限としては、0.05質量%が好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。Siの含有量が上記上限を超える場合、Mg−Si系金属間化合物のサイズや個数が増大するおそれがある。なお、Siの含有量の下限は、0質量%である。
[残部]
基材は、上述した各元素以外にAl(アルミニウム)及び不可避的不純物を残部として含有する。また、残部(任意の成分)としては、例えばCr(クロム)やZn(亜鉛)を含むことができる。
基材は、上述した各元素以外にAl(アルミニウム)及び不可避的不純物を残部として含有する。また、残部(任意の成分)としては、例えばCr(クロム)やZn(亜鉛)を含むことができる。
[Cr(クロム)]
Crは、再結晶粒の微細化により上記基材の強度を向上させる元素であり、基材の放熱性に寄与する。上記基材におけるCrの含有量の下限としては、0.02質量%が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.04質量%がさらに好ましい。一方、Crの含有量の上限としては、0.1質量%が好ましく、0.08質量%がより好ましく、0.07質量%がさらに好ましい。Crの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Crの含有量が上記上限を超える場合、晶出物の粗大化を招くおそれがある。
Crは、再結晶粒の微細化により上記基材の強度を向上させる元素であり、基材の放熱性に寄与する。上記基材におけるCrの含有量の下限としては、0.02質量%が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.04質量%がさらに好ましい。一方、Crの含有量の上限としては、0.1質量%が好ましく、0.08質量%がより好ましく、0.07質量%がさらに好ましい。Crの含有量が上記下限より小さい場合、放熱性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、Crの含有量が上記上限を超える場合、晶出物の粗大化を招くおそれがある。
[Zn(亜鉛)]
Znはアルミニウム合金中に均一に固溶するため耐電圧性に影響を与えないが、多く含まれると析出核が大きくなってエッチング処理時に欠陥が形成されるため、Znの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるZnの含有量の上限としては、0.5質量%が好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。Znの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金のエッチング時に表面に欠陥が形成されるおそれがある。なお、Znの含有量が0.002質量%未満となると、アルミニウム合金が極めて高価となるため、Znの含有量の下限としては、0.002質量%が好ましい。
Znはアルミニウム合金中に均一に固溶するため耐電圧性に影響を与えないが、多く含まれると析出核が大きくなってエッチング処理時に欠陥が形成されるため、Znの含有量は小さいほど好ましい。上記基材におけるZnの含有量の上限としては、0.5質量%が好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。Znの含有量が上記上限を超える場合、アルミニウム合金のエッチング時に表面に欠陥が形成されるおそれがある。なお、Znの含有量が0.002質量%未満となると、アルミニウム合金が極めて高価となるため、Znの含有量の下限としては、0.002質量%が好ましい。
上記基材が板状の場合、上記基材の平均厚みとしては、例えば0.1mm以上30mm以下とすることができる。
上記基材は、例えばアルミニウム合金を溶解及び鋳造する工程と、鋳造により得られた鋳塊を400℃以上600℃以下で均質化処理する工程と、均質化した鋳塊を冷間圧延する工程と、冷間圧延により得られた板材を250℃以上450℃以下で焼鈍す工程と、焼鈍しした板材を加工する工程と、切断した板材の表面をエッチングにより研削する工程とを備える方法により製造することができる。
なお、当該絶縁性アルミニウム合金部材は、基材の表面全体に酸化皮膜を備えてもよいが、放熱性の観点から、半導体等の設置や他の部材との接合を行う部分として、酸化皮膜が積層されない部分を備えることが好ましい。このような構成としては、例えば当該絶縁性アルミニウム合金部材が基材の一方の面のみに酸化皮膜を備え、基材の他方の面には酸化皮膜を備えない(基材の他方の面が表出している)構成が挙げられる。
<酸化皮膜>
上記酸化皮膜は、上記基材の表面に形成されたポーラス構造の皮膜である。つまり、上記酸化皮膜は、上記基材を構成するアルミニウム合金部材の表層を陽極酸化処理することで形成され、骨格に酸化アルミニウムを主成分として含む。
上記酸化皮膜は、上記基材の表面に形成されたポーラス構造の皮膜である。つまり、上記酸化皮膜は、上記基材を構成するアルミニウム合金部材の表層を陽極酸化処理することで形成され、骨格に酸化アルミニウムを主成分として含む。
上記酸化皮膜は、例えばシュウ酸、ギ酸等の有機酸、又はリン酸、クロム酸、硫酸等の無機酸を含む溶液(電解液)を用いた公知の陽極酸化により得られ、陽極酸化に用いた電解液の成分を含む。これらの中でもシュウ酸又はシュウ酸とリン酸とを含む電解液を用いることが好ましい。つまり、上記酸化皮膜はシュウ酸に由来する成分を含むとよく、リン(P)をさらに含むとよい。
酸化皮膜がシュウ酸に由来する成分を含むことで、高温における耐クラック性を向上することができる。また、酸化皮膜がリンを含むことで、後述する絶縁皮膜が酸化皮膜に複合し易くなる。
上記酸化皮膜は、上記陽極酸化処理に起因する複数の孔を有する。これらの孔は、軸の向きが上記酸化皮膜の厚み方向であり、酸化皮膜の表面まで到達する。つまり、上記酸化皮膜は表面に複数の開口を有する。
上述のように、酸化皮膜の表面の平均ポア径は5nm以上50nm未満である。酸化皮膜の表面の平均ポア径の上限としては、45nmが好ましく、40nmがより好ましい。一方、酸化皮膜の表面の平均ポア径の下限としては、10nmが好ましい。酸化皮膜の表面の平均ポア径が上記上限を超えると、絶縁皮膜の形成材料を保持し難くなり、絶縁皮膜の形成が困難となるおそれがある。逆に、酸化皮膜の表面の平均ポア径が上記下限より小さいと、絶縁皮膜の形成材料が上記酸化皮膜内部に侵入し難くなるおそれがある。
上記酸化皮膜の平均ポア径が上記基材と反対側から上記基材側に向かって増大するとよい。これにより、絶縁皮膜の形成材料をより確実に酸化皮膜内に保持できる。平均ポア径は、段階的に増大してもよいし、連続的に増大してもよい。
平均ポア径が段階的に増大する構造は、陽極酸化処理における電解電圧を段階的に大きくすることで得られる。一方、平均ポア径が連続的に増大する構造は、陽極酸化処理における電解電圧を時間と共に連続的に増加させることで得られる。なお、酸化皮膜は、平均ポア径が段階的に増大する部分と、連続的に増大する部分との両方を有してもよい。
酸化皮膜の平均ポア径が基材側に向かって増大する場合、酸化皮膜の平均ポア径が50nm未満である部分(以下、「微小ポア径部」ともいう)の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましい。一方、微小ポア径部の平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましく、6μmがさらに好ましい。微小ポア径部の平均厚みが上記下限より小さいと、酸化皮膜の強度が低下するおそれがある。逆に、微小ポア径部の平均厚みが上記上限を超えると、酸化皮膜形成時の電圧を小さくする必要が生じ、生産性が低下するおそれがある。
酸化皮膜の基材からの距離が0.2μmである面Aにおける平均ポア径の下限としては、40μmが好ましく、50μmがより好ましく、55μmがさらに好ましい。一方、上記面Aにおける平均ポア径の上限としては、100μmが好ましく、90μmがより好ましく、80μmがさらに好ましい。上記面Aにおける平均ポア径が上記下限より小さいと、絶縁皮膜の形成材料の保持量が低下し、絶縁皮膜の形成が困難になるおそれがある。逆に、上記面Aにおける平均ポア径が上記上限を超えると、酸化皮膜の強度が低下するおそれがある。
酸化皮膜の平均厚みの下限としては、8μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方、酸化皮膜の平均厚みの上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましく、80μmがさらに好ましい。酸化皮膜の平均厚みが上記下限より小さいと、耐電圧性が不十分となるおそれがある。逆に、酸化皮膜の平均厚みが上記上限を超えると、耐熱性及び放熱性が不十分となるおそれがある。
酸化皮膜中に存在する最大長さが4μm以上の金属間化合物の単位面積当たりの個数の上限としては、40個/mm2が好ましく、15個/mm2がより好ましく、10個/mm2がさらに好ましい。アルミニウム合金中に存在する金属間化合物が陽極酸化処理中に溶解すること無く、ほぼ金属の状態で陽極酸化皮膜中に取り込まれたものは、耐電圧性を低下させる一因となる。従って、最大長さが4μm以上の金属間化合物の個数を上記上限以下とすることで、耐電圧性を高めることができる。なお、上記金属間化合物としては、例えばAl−Fe系金属間化合物、Mg−Si系金属間化合物、非固溶Cu系化合物等が挙げられる。
<絶縁皮膜>
上記絶縁皮膜は、上記酸化皮膜と複合し、その表面及び内面を被覆する絶縁性の皮膜である。また、この絶縁皮膜はポリシロキサンを主成分とする。なお、絶縁皮膜は、酸化皮膜の表面及び内面を全て被覆する必要はなく、少なくとも一部を被覆すればよいが、表面及び内面全体を被覆することが好ましい。また、絶縁皮膜は、酸化皮膜の孔の内部に充填されていてもよい。酸化皮膜の孔が絶縁皮膜で充填されることで、皮膜応力が圧縮方向となり、耐熱性を向上することができる。
上記絶縁皮膜は、上記酸化皮膜と複合し、その表面及び内面を被覆する絶縁性の皮膜である。また、この絶縁皮膜はポリシロキサンを主成分とする。なお、絶縁皮膜は、酸化皮膜の表面及び内面を全て被覆する必要はなく、少なくとも一部を被覆すればよいが、表面及び内面全体を被覆することが好ましい。また、絶縁皮膜は、酸化皮膜の孔の内部に充填されていてもよい。酸化皮膜の孔が絶縁皮膜で充填されることで、皮膜応力が圧縮方向となり、耐熱性を向上することができる。
上記絶縁皮膜が主成分として含有するポリシロキサンは、水分の付着を防止する観点から、アルキル基、フルオロ基等の疎水性の官能基(疎水基)を含むとよい。また、これらの中でもアルキル基を含むことが好ましい。アルキル基を含むことで、半導体等における漏れ電流を低減することができる。
上記絶縁皮膜は、主成分のポリシロキサン以外に、他の絶縁性成分を含んでもよい。この他の絶縁性分としては、例えばポリシラザン、SiO2等の珪素酸化物、Si3N4等の珪素窒化物、ZrO2等のジルコニウム酸化物、TiO2等のチタン酸化物、TiN等のチタン窒化物、Al2O3等のアルミニウム酸化物、AlN等のアルミニウム窒化物などを挙げることができる。
絶縁皮膜におけるポリシロキサンの含有量の下限としては、90質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、実質的にポリシロキサン以外の他の成分を絶縁皮膜が含有しないことが好ましい。
絶縁皮膜の平均厚み(酸化皮膜の表出面における平均積層厚み)の下限としては、0.001μmが好ましく、0.01μmがより好ましい。一方、絶縁皮膜の平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。絶縁皮膜の平均厚みが上記下限より小さいと、耐電圧性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁皮膜の平均厚みが上記上限を超えると、放熱性が低下するおそれがある。なお、絶縁皮膜の平均厚みは、例えばエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて元素同定を行うことで計測できる。
また、絶縁皮膜の平均厚みdに対する酸化皮膜の平均厚みDの比(D/d)の下限としては、2が好ましく、5がより好ましい。一方、上記比(D/d)の上限としては、100,000が好ましく、50,000がより好ましい。上記比(D/d)が上記下限より小さいと、放熱性が低下するおそれがある。逆に、上記比(D/d)が上記上限を超えると、絶縁皮膜による酸化皮膜の被覆が不十分となるおそれがある。
絶縁皮膜の純水の接触角の下限としては、75°が好ましく、85°がより好ましく、95°がさらに好ましい。一方、絶縁皮膜の純水の接触角の上限としては、160°が好ましく、130°がより好ましい。純水の接触角が上記下限より小さいと、表面に付着する水分量が多くなることで電気抵抗が低下するおそれがある。逆に、純水の接触角が上記上限を超えると、絶縁皮膜の製造が困難になり生産性が低下するおそれがある。なお、「純水の接触角」とは、JIS−R−3257(1999年)に準拠して測定される静的接触角を意味する。
絶縁皮膜で被覆された酸化皮膜の単位厚み当たりの耐電圧の下限としては、75V/μmが好ましく、80V/μmがより好ましい。耐電圧を上記下限以上とすることで、皮膜の厚みを小さくして放熱性を高めつつ、絶縁性及び耐電圧性を高めることができる。
<用途>
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、半導体素子等の電子部品に接合することで、耐電圧性及び絶縁性を兼ね備える放熱部材として好適に使用できる。なお、電子部品への接合は、直接接合のほか、銅材、ハンダやロウ材等の接合材などを介して接合することができる。上記銅材としては、銅又は銅合金のほか、アルミニウムと銅又は銅合金とのクラッド材などが挙げられる。また、直接接合の場合は、絶縁被覆を接着剤として使用することができる。
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、半導体素子等の電子部品に接合することで、耐電圧性及び絶縁性を兼ね備える放熱部材として好適に使用できる。なお、電子部品への接合は、直接接合のほか、銅材、ハンダやロウ材等の接合材などを介して接合することができる。上記銅材としては、銅又は銅合金のほか、アルミニウムと銅又は銅合金とのクラッド材などが挙げられる。また、直接接合の場合は、絶縁被覆を接着剤として使用することができる。
<絶縁性アルミニウム合金部材の製造方法>
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、例えばアルミニウム合金から構成される基材を陽極酸化する工程と、陽極酸化により形成された酸化皮膜の表面及び内面をポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜で被覆する工程とを備える方法により製造できる。また、絶縁性アルミニウム合金部材の製造方法は、陽極酸化の前に基材を前処理する工程を備えるとよい。
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、例えばアルミニウム合金から構成される基材を陽極酸化する工程と、陽極酸化により形成された酸化皮膜の表面及び内面をポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜で被覆する工程とを備える方法により製造できる。また、絶縁性アルミニウム合金部材の製造方法は、陽極酸化の前に基材を前処理する工程を備えるとよい。
[前処理工程]
前処理工程は、例えば脱脂工程と、デスマット工程とを有する。脱脂工程では、アルカリ溶液中に基材を浸漬してから水洗する。また、デスマット工程では、脱脂後の基材を酸溶液中に浸漬してから水洗する。
前処理工程は、例えば脱脂工程と、デスマット工程とを有する。脱脂工程では、アルカリ溶液中に基材を浸漬してから水洗する。また、デスマット工程では、脱脂後の基材を酸溶液中に浸漬してから水洗する。
[陽極酸化工程]
陽極酸化工程では、電解液中に浸漬した基材を陽極として電流を流して電解を行うことで、アルミニウム合金を陽極酸化し、その表面に酸化アルミニウムを主体とする酸化皮膜を形成する。
陽極酸化工程では、電解液中に浸漬した基材を陽極として電流を流して電解を行うことで、アルミニウム合金を陽極酸化し、その表面に酸化アルミニウムを主体とする酸化皮膜を形成する。
電解液は、上述のようにシュウ酸及びリン酸を含有することが好ましい。電解液におけるシュウ酸の濃度の下限としては、10g/Lが好ましく、15g/Lがより好ましい。一方、シュウ酸の濃度の上限としては、50g/Lが好ましく、40g/Lがより好ましい。また、電解液におけるリン酸の濃度の上限としては、150g/Lが好ましく、100g/Lがより好ましい。リン酸の濃度の下限は0g/L超である。なお、シュウ酸のみを含む電解液で酸化皮膜を形成し、この酸化皮膜をリン酸溶液に浸漬することでリンを酸化皮膜に導入してもよい。
陽極酸化における電解液の温度は、生産性の観点から設定され、例えば0℃以上50℃以下である。
陽極酸化における電解電圧及び電流密度は、電解液の組成及び温度、基材の組成等により適宜設定される。電解電圧の下限としては、5Vが好ましく、15Vがより好ましい。一方、電解電圧の上限としては、150Vが好ましく、120Vがより好ましい。また、陽極酸化における電流密度の上限としては、100A/dm2が好ましく、30A/dm2がより好ましく、5A/dm2がさらに好ましい。
[絶縁皮膜被覆工程]
絶縁皮膜被覆工程では、絶縁皮膜形成材料を陽極酸化工程で得た酸化皮膜の孔の内部に固定することで、酸化皮膜の表面及び内面を被覆する絶縁皮膜を形成する。具体的な方法としては、無電解のウェットプロセス、CVDなどの化学的気相法、電着などの電気化学的方法等を採用することができる。これらの中でもウェットプロセスが生産性の観点から好ましい。このウェットプロセスとしては、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーンコート等が挙げられる。また、ウェットプロセス等により孔内に導入した形成材料(化合物)に対し加熱、紫外線照射等を行い、高分子化や陽極酸化皮膜との化学結合等の促進を行うとよい。
絶縁皮膜被覆工程では、絶縁皮膜形成材料を陽極酸化工程で得た酸化皮膜の孔の内部に固定することで、酸化皮膜の表面及び内面を被覆する絶縁皮膜を形成する。具体的な方法としては、無電解のウェットプロセス、CVDなどの化学的気相法、電着などの電気化学的方法等を採用することができる。これらの中でもウェットプロセスが生産性の観点から好ましい。このウェットプロセスとしては、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーンコート等が挙げられる。また、ウェットプロセス等により孔内に導入した形成材料(化合物)に対し加熱、紫外線照射等を行い、高分子化や陽極酸化皮膜との化学結合等の促進を行うとよい。
ポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜を形成する材料(ポリシロキサン前駆体)としては、例えばSi−N結合を有するポリシラザンを用いることができる。ポリシラザンを用いた具体的な被覆方法としては、例えばポリシラザンをディップコートにより酸化皮膜に塗布し、その後60℃以上250℃以下の温度で1分以上90分以下乾燥することで、絶縁皮膜を形成することができる。なお、塗布及び乾燥の工程を繰り返すことで、所望の厚みの絶縁皮膜を形成することができる。当該絶縁性アルミニウム合金部材は、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm未満であることで形成材料の保持性に優れるため、塗布回数を低減して生産性を向上できる。なお、乾燥の温度及び時間は繰り返しに伴って徐々に大きくするとよい。
なお、上記ポリシラザンとして、アルキル基を有するものを用いることで、得られるポリシロキサンにアルキル基を導入することができる。また、絶縁皮膜中には変化せずに残ったポリシラザン等のポリシロキサン前駆体が含まれていてもよい。
また、絶縁皮膜の形成材料としてSi−O−Siのシロキサン結合を含むポリシロキサンを酸化皮膜表面にスピンコートし、その後窒素雰囲気下において100℃以上450℃の温度で30分以上90分以下乾燥させてもよい。
<利点>
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、耐電圧性を低下させる空気を含むポーラス構造の酸化皮膜を備えるが、この酸化皮膜の表面及び内面が絶縁性に優れるポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜で被覆されるので、絶縁性及び放熱性と共に、単位厚み当たりの耐電圧を高めることができる。さらに、当該絶縁性アルミニウム合金部材は、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm未満であるので、上記絶縁皮膜の形成材料を酸化皮膜内に保持し易い。その結果、当該絶縁性アルミニウム合金部材によれば、絶縁皮膜を容易かつ確実に形成することができるので、生産性を高めつつ耐電圧性を著しく高めることができる。
当該絶縁性アルミニウム合金部材は、耐電圧性を低下させる空気を含むポーラス構造の酸化皮膜を備えるが、この酸化皮膜の表面及び内面が絶縁性に優れるポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜で被覆されるので、絶縁性及び放熱性と共に、単位厚み当たりの耐電圧を高めることができる。さらに、当該絶縁性アルミニウム合金部材は、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm未満であるので、上記絶縁皮膜の形成材料を酸化皮膜内に保持し易い。その結果、当該絶縁性アルミニウム合金部材によれば、絶縁皮膜を容易かつ確実に形成することができるので、生産性を高めつつ耐電圧性を著しく高めることができる。
<その他の実施形態>
本発明の絶縁性アルミニウム合金部材は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば当該絶縁性アルミニウム合金部材は、基材又は酸化皮膜の表面に接合される他の部材を備えていてもよい。
本発明の絶縁性アルミニウム合金部材は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば当該絶縁性アルミニウム合金部材は、基材又は酸化皮膜の表面に接合される他の部材を備えていてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<絶縁性アルミニウム合金部材の作製>
Mg:4.5質量%及びCu:0.06質量%を含有し、残部がAl(その他の元素が0.01質量%未満)である組成のアルミニウム合金を溶解及び鋳造して鋳塊を得た。この鋳塊に対し500℃の温度で均質化熱処理を行い、板厚が1.5mmになるまで冷間圧延を施し、350℃の温度で焼鈍を行って板材を得た。この板材から、45mm×45mm×1.5mmtの基材を切り出し、表面を50μm研削した。
Mg:4.5質量%及びCu:0.06質量%を含有し、残部がAl(その他の元素が0.01質量%未満)である組成のアルミニウム合金を溶解及び鋳造して鋳塊を得た。この鋳塊に対し500℃の温度で均質化熱処理を行い、板厚が1.5mmになるまで冷間圧延を施し、350℃の温度で焼鈍を行って板材を得た。この板材から、45mm×45mm×1.5mmtの基材を切り出し、表面を50μm研削した。
上記基材を、脱脂工程として、50℃−15%水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬した後、水洗した。次に、デスマット工程として、上記脱脂工程を経た基材を20%硝酸溶液中に室温で15分間浸漬した後、水洗して表面を清浄化した。
次に、前処理後の基材に対し陽極酸化を行った。具体的には、シュウ酸(35g/L)とリン酸(10g/L)との混合溶液を電解液として用い、液温を17℃に保持し、電解電圧を5V〜100Vで変化させることで、基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した。なお、実施例1、3、4及び比較例1では、陽極酸化皮膜のポア径が表面から基材側に向かって2段階で大きくなるように調整し、実施例2では3段階で大きくなるように調整した。また、実施例5では陽極酸化皮膜のポア径が連続的に大きくなるように調整し、比較例2ではポア径を変化させず一定とした。
得られた陽極酸化皮膜の断面に対し走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、この陽極酸化皮膜の平均厚み、表面の平均ポア径、酸化皮膜の基材からの距離が0.2μmである面Aにおける平均ポア径、及び微小ポア径部(酸化皮膜の平均ポア径が50nm未満である部分)の平均厚みを測定した。この結果を表1に示す。また、この陽極酸化皮膜中の最大長さが4μm以上の金属間化合物の単位面積当たりの個数が3個/mm2以下であることを確認した。
次に、得られた陽極酸化皮膜をポリシラザン溶液中へ3分間ディップすることによりポリシラザンを塗布し、基材の表面が鉛直方向と平行になるように保持し自然乾燥させた。自然乾燥中に垂れ出し、基材下部にたまったポリシラザンはクリーンワイプで取り除いた。乾燥後、真空オーブンで90℃で30分間乾燥させた。この乾燥後、再度ポリシラザンを同じ手順で塗布し、自然乾燥させた。この操作の後、再度真空オーブンで200℃で60分の乾燥を行い、絶縁皮膜を形成した。上記ポリシラザンとしては、全モノマーユニットにおいてモノマーユニットを構成しているSi原子に2つのメチル基が結合され、さらにN原子に1つのメチル基が結合されている化合物を用いた。
得られた絶縁皮膜について、原料のポリシラザンがシリカ(ポリシロキサン)に変化していること、及び一連の熱処理後でもメチル基が存在することをフーリエ変換赤外分光分析装置(FT−IR)により確認した。また、絶縁皮膜を被覆した陽極酸化皮膜の純水との接触角が75°以上であることを確認した。さらに、陽極酸化皮膜の断面に対し電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、陽極酸化皮膜の表面及び内面に形成された絶縁皮膜の平均厚みが1μm未満であることを確認した。
<耐電圧性の評価>
作製した絶縁性アルミニウム合金部材に対し、φ14mm×15mmtの純銅にRが2mmのR部を設けた電極を用い、交流電圧を徐々に印加していき、電流量が5mA以上となった時点の電圧を酸化皮膜の平均厚みで除したものを単位厚み当たりの耐電圧とした。この結果を表1に示す。この耐電圧は、80V/μm以上が優、75V/μm以上80V/μm未満が良、75V/μm未満が不良と判断できる。
作製した絶縁性アルミニウム合金部材に対し、φ14mm×15mmtの純銅にRが2mmのR部を設けた電極を用い、交流電圧を徐々に印加していき、電流量が5mA以上となった時点の電圧を酸化皮膜の平均厚みで除したものを単位厚み当たりの耐電圧とした。この結果を表1に示す。この耐電圧は、80V/μm以上が優、75V/μm以上80V/μm未満が良、75V/μm未満が不良と判断できる。
表1から、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm未満である実施例1〜5は、耐電圧が75V/μm以上となり、耐電圧性に優れることが示された。さらに、微小ポア径部の平均厚みが6μm以下の実施例2〜4は、耐電圧性が80V/μm以上と特に優れている。一方で、酸化皮膜の表面の平均ポア径が50nm以上の比較例1、2は、酸化皮膜を絶縁皮膜で十分に被覆することができず、その結果、耐電圧性が不十分であった。
本発明の絶縁性アルミニウム合金部材は、絶縁性、放熱性及び耐電圧性に優れるので、半導体や液晶の支持部材等として好適に使用できる。
Claims (5)
- アルミニウム合金から構成される基材と、
この基材の表面に積層されるポーラス構造の酸化皮膜と、
この酸化皮膜の表面及び内面を被覆し、ポリシロキサンを主成分とする絶縁皮膜と
を備え、
上記酸化皮膜の表面の平均ポア径が5nm以上50nm未満である絶縁性アルミニウム合金部材。 - 上記酸化皮膜の平均ポア径が上記基材と反対側から基材側に向かって増大する請求項1に記載の絶縁性アルミニウム合金部材。
- 上記酸化皮膜の平均ポア径が50nm未満である部分の平均厚みが0.1μm以上10μm以下である請求項2に記載の絶縁性アルミニウム合金部材。
- 上記基材が、
Mg:3.5質量%超6.5質量%以下、
Cu:0.02質量%以上4.0質量%以下、
Fe:0質量%以上0.05質量%以下、
Si:0質量%以上0.05質量%以下、並びに
残部:Al及び不可避的不純物
である組成を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁性アルミニウム合金部材。 - 上記絶縁皮膜のポリシロキサンがアルキル基を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の絶縁性アルミニウム合金部材。
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