JP2018043326A5 - - Google Patents

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この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TiAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
前記TiとAlの複合窒化物層中には、前記Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域が、少なくとも、工具基体表面の法線とのなす角度が30度以下の方向に存在し
前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域の平均幅Wは、30〜500nmであり、
前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域が、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める平均面積割合Stは3〜50面積%であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域のTi成分の平均組成をXとした場合、前記TiとAlの複合窒化物層におけるTi成分の平均組成xと前記Xは、(x+0.01)≦X≦(x+0.05)の関係を満足することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
)前記TiとAlの複合窒化物層は、立方晶構造の結晶粒と六方晶構造の結晶粒の混合組織からなり、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める立方晶構造の結晶粒の平均面積割合Sは30面積%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
上記の工具基体1〜2のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示すAIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、AIP装置内に、所定組成のTi−Al合金ターゲット(カソード電極)を配置し、
まず、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を表2に示す温度に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ、Ti−Al合金ターゲット(カソード電極)に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す窒素圧とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体の温度を表2に示す温度範囲内に維持し、Ti−Al合金ターゲット(カソード電極)に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させ、表2に示す直流の低バイアス電圧を工具基体に対して表2に示す所定時間印加して、ついで表2に示す上昇速度に沿うように、横軸を時間、縦軸をバイアス(−V)としたグラフに表した際に直線状もしくは階段状に順次バイアス電圧を上昇させ、ついで、表2に示す直流の高バイアス電圧を印加して、TiAlN層を成膜することにより、表4に示す目標平均層厚、Ti成分の平均組成x、立方晶構造の結晶粒の平均面積割合S、所定の高Ti帯状領域(Ti成分の平均組成X、平均幅W、平均面積割合St)を有する本発明被覆工具1〜(以下、本発明工具1〜という)をそれぞれ製造した。
上記で作製した本発明工具1〜および比較例工具1〜10のTiAlN層について、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定し、5ヶ所の測定値の平均値から、平均層厚を算出した。
また、TiAlN層におけるTi成分の組成を、TEM−EDSにより3箇所の膜厚方向に0.4μm以上、基体表面に平行な方向に1μm以上の視野範囲で測定し、その測定値の平均値を、TiAlN層のTi成分の平均組成xとして求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
また、本発明工具1〜および比較例工具1〜10のTiAlN層について、TEM−EDSにより、TiAlN層における高Ti帯状領域の存在の有無を確認するとともに、高Ti帯状領域が存在する場合には、該領域におけるTi成分の平均組成X、該領域の平均幅W、該領域がTiAlN層の縦断面に占める平均面積割合Stを求めた。
具体的には、図1に示すようなTiAlN層の縦断面について、少なくとも500nm程度の帯状の幅が入る視野で測定したTEM−EDSによる測定像において、基体表面の法線とのなす角が30度以下である直線上の複数の測定点におけるTi成分の組成を測定し、該測定値が(x+0.01)以上(x+0.05)以下の範囲内にあるか否かによって、該直線が高Ti帯状領域に属するか直線であるか否かを判定する。
ついで、前記直線が高Ti帯状領域に属する直線であると判定された場合には、該直線に直交する方向にTi成分の組成を測定し、測定したTi成分の組成が、(x+0.01)≦X≦(x+0.05)の関係から外れる位置を、高Ti帯状領域の境界として特定する。
ついで、前記で特定された高Ti帯状領域の複数位置においてTi成分の組成を測定し、これらを平均することによって、高Ti帯状領域におけるTi成分の平均組成Xを求める。
ついで、前記で特定された高Ti帯状領域の輪郭を確定し、複数位置における幅を測定し、これらを平均することによって、高Ti帯状領域の平均幅Wを求める。
さらに、前記で求めた高Ti帯状領域の輪郭から、測定視野の面積中に存在する高Ti帯状領域の合計面積を求めることにより、TiAlN層の縦断面に占める高Ti帯状領域の平均面積割合Stを算出する。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
また、本発明工具1〜および比較例工具1〜10のTiAlN層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用いて、TiAlN層全体に占める立方晶構造の結晶粒の平均面積割合Sを求めた。
具体的には、工具基体表面に垂直な方向のTiAlN層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射し、工具基体と水平方向に長さ100μm、工具基体表面と垂直な方向の断面に沿って層厚以下の距離の測定範囲内について0.01μm/stepの間隔で、電子線後方散乱回折像を測定し、個々の結晶粒の結晶構造を解析することで、立方晶構造の結晶粒の面積割合を測定した。
上記測定を5箇所の測定範囲で行い、これらの平均値として、TiAlN層全体に占める立方晶構造の結晶粒の平均面積割合Sを算出した。
表4、表5に、その値を示す。
Figure 2018043326
Figure 2018043326
次いで、本発明工具1〜および比較例工具1〜10について、以下の条件で、高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SCM445幅100mm、長さ365mmのブロック材、
切削速度: 360 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
一刃送り量: 0.2 mm/刃、
切削時間: 8分、
表6に、試験結果を示す。
Figure 2018043326

Claims (3)

  1. WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
    組成式:(TiAl1−x)N
    で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
    前記TiとAlの複合窒化物層中には、前記Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域が、少なくとも、工具基体表面の法線とのなす角度が30度以下の方向に存在し
    前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域の平均幅Wは、30〜500nmであり、
    前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域が、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める平均面積割合Stは3〜50面積%であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記Ti成分の組成が相対的に高い帯状領域のTi成分の平均組成をXとした場合、前記TiとAlの複合窒化物層におけるTi成分の平均組成xと前記Xは、(x+0.01)≦X≦(x+0.05)の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記TiとAlの複合窒化物層は、立方晶構造の結晶粒と六方晶構造の結晶粒の混合組織からなり、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める立方晶構造の結晶粒の平均面積割合Sは30面積%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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