JP2015163424A - 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】ステンレス鋼等の高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】基体表面にAl(CH3)3を反応ガス成分として含有する化学蒸着法で成膜された(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層のAlの平均含有割合XavgおよびCの平均含有割合Yavg(Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ所定の含有割合を満足し、該層を構成する結晶粒は、立方晶構造を有するものが存在し、基体表面の法線方向に対する結晶粒の{100}面の法線がなす傾斜角の傾斜角度数分布において0〜12度の範囲内の度数割合が度数全体の45%以上で、該層の表面側から組織観察をした場合に立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状を有し該結晶粒の{100}面で形成されたファセットが、前記面内で全体の50%以上の面積割合を占める。【選択図】図2

Description

本発明は、ステンレス鋼等の高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する高速断続切削加工等で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された基体(以下、これらを総称して基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を物理蒸着法により被覆形成した被覆工具が知られている。このような被覆工具は、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られており、マシニングセンタや複合加工機など、さまざまな用途への利用が進んでいる。
しかしながら、従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、基体表面に、組成式(Al1−X Ti )N(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.60)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり、かつ、前記複合窒化物層について電子線後方散乱回折装置による結晶方位解析を行った場合、表面研磨面の法線方向から0〜15度の範囲内に結晶方位{111}を有する結晶粒の面積割合が50%以上、また、隣り合う結晶粒同士のなす角を測定した場合に、小角粒界(0<θ≦15゜)の割合が50%以上であるような、結晶配列を示す改質(Al,Ti)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する被覆工具が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、TiとAlの複合窒化物、炭窒化物、炭化物を被覆したエンドミルにおいて、硬質被覆層のX線回折における{111}面の回折強度をI(111)、{200}面の回折強度をI(200)とした時にI(200)/I(111)の値が2.0以下とすることにより、ロックウェル硬度50(Cスケール)を越える高硬度スチールの切削加工において、硬質被覆層の密着性ならびに耐摩耗性を改善した被覆工具が開示されている。
しかしながら、前述した特許文献1、2に開示された被覆工具は、物理蒸着法により硬質被覆層を成膜しているため、Alの含有割合Xを0.6以上にはできず、より一段と切削性能を向上させることが望まれている。
このような観点から、化学蒸着法で硬質被覆層を形成することで、Alの含有割合Xを、0.9程度にまで高める技術も提案されている。
例えば、特許文献3には、TiCl、AlCl、NHの混合反応ガス中で、650〜900℃の温度範囲において化学蒸着を行うことにより、Alの含有割合Xの値が0.65〜0.95である(Ti1−XAl)N層を成膜できることが記載されているが、この文献では、この(Ti1−XAl)N層の上にさらにAl層を被覆し、これによって断熱効果を高めることを目的とするものであるから、Xの値を0.65〜0.95まで高めた(Ti1−XAl)N層の形成によって、切削性能へ如何なる影響があるかという点については解明されていない。
さらに、特許文献4には、上部層としてTi1−xAlN、Ti1−xAlC、および/またはTi1−xAlCNでできており、0.65≦x≦0.9、好ましくは0.7≦x≦0.9であり該上部層は100〜1100MPaの間、好ましくは400〜800MPaの間の圧縮応力を有し、TiCN層またはAl層が前記上部層の下に配置された硬質被覆層が化学蒸着法で形成された被覆工具が、すぐれた耐熱性およびサイクル疲労強度を有することが開示されている。
特開2008−264890号公報 特開平9−291353号公報 特表2011−516722号公報 特表2011−513594号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性が求められている。
しかし、前述した特許文献1,2に記載される被覆工具は、(Ti1−XAl)N層からなる硬質被覆層が物理蒸着法で成膜され、膜中のAl含有量Xを高めることができないため、例えば、合金鋼の高速断続切削に供した場合には、耐チッピング性が十分でないという課題があった。
一方、前述した特許文献3,4に記載される化学蒸着法で被覆形成した(Ti1−XAl)N層については、Al含有量Xを高めることができ、また、立方晶構造を形成させることができることから、所定の硬さを有し耐摩耗性にはすぐれた硬質被覆層が得られるものの、基体との密着強度は十分でなく、また、靭性に劣ることから、合金鋼の高速断続切削に供する被覆工具として用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生しやすく、満足できる切削性能を発揮するとは言えない。
そこで、本発明は、ステンレス鋼の高速断続切削等に供した場合であっても、すぐれた耐チッピング性を発揮するとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前述の観点から、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「(Ti1−XAl)(C1−Y)」で示すことがある)からなる硬質被覆層を化学蒸着で被覆形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
WC基超硬合金、TiCN基サーメットまたはcBN基超高圧焼結体のいずれかで構成された基体の表面に、例えば、硬質被覆層として、トリメチルアルミニウム(Al(CH)を反応ガス成分として含有する熱CVD法等の化学蒸着法により成膜されたTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、複合窒化物または複合炭窒化物層を構成する結晶粒中に立方晶構造を有するものが存在し、蒸着時の成膜条件を調整することにより、硬質被覆層が、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、工具基体表面の法線方向に対する前記立方晶結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めるという新規な構成を有する場合に、硬質被覆層の表面と被削材との摩擦抵抗が軽減し、切削時の潤滑性が向上するとともに、すぐれた耐チッピング性を示すようになることを見出した。
したがって、前述のような硬質被覆層を備えた被覆工具を、例えば、合金鋼の高速断続切削等に用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられるとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することができる。
本発明は、前述したような研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層は、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、工具基体表面の法線方向に対する前記立方晶結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、2種以上の複数の相が共存する混合相からなり、該混合相は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、混合相に共存するその他の各相はTiとAlから選ばれる少なくとも1種の元素と、CとNから選ばれる少なくとも一種の元素からなる化合物からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層についてX線回折による結晶構造解析を行った場合、立方晶構造に由来するピークと六方晶に由来するピークとが観察され、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0より大きいことを特徴とする(1)または(3)に記載の表面被覆切削工具。
(5) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を有する上部層と六方晶構造を有する下部層から構成され、前記下部層の平均層厚が0.3〜1.0μmであり、結晶粒の平均粒径Rが0.01〜0.30μmであることを特徴とする(1)、(3)または(4)に記載の表面被覆切削工具。
(6) 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(7) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層が存在することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(8) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より具体的に説明する。
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚:
本発明の硬質被覆層におけるTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴う高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となる。したがって、その平均層厚は1〜20μmとすることが好ましく、より好ましくは1〜10μmとする。
また、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体とTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に形成するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の平均合計層厚に関しては、0.1μm未満では層厚が薄いため、長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、一方、平均層厚が20μmより大きくなると、工具基体およびTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層との付着強度が低下し、耐剥離性が低下するため、その平均層厚は0.1〜20μmとするのが望ましい。
上部層として、酸化アルミニウム層を含む場合、酸化アルミニウム層の平均層厚が1μm未満であると、層厚が薄いため長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、酸化アルミニウム層の平均層厚は、1〜25μmとすることが望ましい。
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti1−XAl)(C1−Y)層)の組成:
本発明の硬質被覆層の主たる層を構成する(Ti1−XAl)(C1−Y)層は、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値が0.60未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、Xavg(原子比)の値が0.95を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(Ti1−XAl)(C1−Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなる。したがって、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値は、0.60以上0.95以下とすることが必要である。
また、前記(Ti1−XAl)(C1−Y)層において、C成分には硬さを向上させ、一方、N成分には高温強度を向上させる作用があるが、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)が0.005を超えると、高温強度が低下する。したがって、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)は、0≦Yavg≦0.005と定めた。
なお、通常、物理蒸着法によって前記組成、即ち、Alの平均含有割合Xavg(原子比)が0.60以上0.95以下の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を成膜した場合は、結晶構造は六方晶構造となるが、本発明では、後述する化学蒸着法によって成膜していることから、立方晶構造を維持したままで前述したような組成の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を得ることができる。それにより、硬質被覆層の硬さの低下を回避している。
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti1−XAl)(C1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒結晶面である{100}面についての傾斜角度数分布:
本発明の前記(Ti1−XAl)(C1−Y)層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角(図1(a)、(b)参照)を測定し、その傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示す場合に、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、立方晶構造を維持したままで高硬度を有し、しかも、前述したような傾斜角度数分布形態によって硬質被覆層と基体との密着性が飛躍的に向上する。
したがって、このような被覆工具は、例えば、ステンレス鋼の高速断続切削等に用いた場合であっても、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられ、しかも、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に傾斜角が12度より大きい結晶面は{100}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{100}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであり、傾斜角区分を0〜12度と定めた。
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti1−XAl)(C1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体を100%とした時の面積割合:
複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成されている場合に、被削材との摩耗抵抗が軽減し、切削における初期なじみ性が向上し、耐チッピング性が向上するという知見を得た。90度未満の角度が存在すると、該角において切削による負荷が大きくなり、潤滑性が損なわれるため、90度未満の角度を有さないとした。
しかしながら、層厚方向に垂直な面内において該面全体を100%とした時の前記ファセットの面積割合が50%未満であると、前述した本発明に特有の効果が十分に奏されないため好ましくない。したがって、前記ファセットの層厚方向に垂直な面内における面積割合を50%以上と定めた。
立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}:
本発明の複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を主とする結晶構造であることにより、耐摩耗性が向上するものであるが、六方晶構造の割合が増加するにつれて、複合窒化物または複合炭窒化物層の硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため好ましくない。
そこで、六方晶構造が存在する場合、六方晶構造に対する立方晶構造の比と耐摩耗性との関係について探求したところ、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0を超える場合に、耐摩耗性の改善効果が顕著に表れることが明らかになった。したがって、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}は、3.0より大きくすることが好ましい。
なお、Ic{200}の値はJCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlNに示される同一結晶面{200}の回折角度の間43.59〜44.77°に存在する回折ピークのピーク強度値とし、Ih{200}の値はJCPDS00−025−1133六方晶AlNに示される同一結晶面{200}の回折角度の36.00°に存在する回折ピークのピーク強度とする。
微粒六方晶構造を有する層の平均層厚および粒径R:
本発明では六方晶構造を有する微粒結晶粒層を、柱状立方晶層の下部層として設けることができるが、これにより、柱状立方晶層との付着強度が向上し、靱性が向上する。六方晶微粒結晶粒層の平均層厚が0.3μm未満であると靱性向上の効果が見られず、1.0μmより大きくなると硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため平均層厚は0.3〜1.0μmとするのが好ましい。また、微粒結晶粒の平均粒径Rが大きくなり過ぎると、上部層の柱状組織の成長を阻害するため好ましくない。したがって、微粒六方晶から成る層の微粒結晶粒の平均粒径Rは0.01〜0.30μmとすることが好ましい。
本発明の(Ti1−XAl)(C1−Y)層の成膜は、例えば、工具基体もしくはTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層上に、立方晶層のみを成膜する場合は、柱状立方晶を有し表面に多角形組織を有する層を成膜する。粒状六方晶層と柱状立方晶層を成膜する場合は、≪第1段階≫として、粒状六方晶層を成膜した後に、≪第2段階≫として、柱状立方晶を有し表面に多角形組織を有する層を成膜するという、二段階の蒸着法によって行うことができる。
本発明の(Ti1−XAl)(C1−Y)層の成膜は、通常の化学蒸着装置を用い、柱状立方晶単層、もしくは粒状六方晶層と柱状立方晶から成る2層の成膜を以下の条件で行う。
≪第1段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH 6〜10%、TiCl 0.5〜1.5%、 AlCl 3〜5%、N 6〜11%、 残りH
反応雰囲気温度: 800〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下で粒状六方晶の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を蒸着形成し、
≪第2段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH 2〜6%、TiCl 0.1〜0.5%、 AlCl 0.5〜2.5%、N 10〜15%、 Al(CH0〜0.5%、 残り:H
反応雰囲気温度: 800〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜3kPa、
という条件下でガス組成および反応雰囲気温度を変化させて柱状立方晶の所定の目標層厚の(Ti1−XAl)(C1−Y)層の蒸着形成を行う。柱状立方晶を有し表面に多角形状を有する層のみを成膜する場合は上記の第2段階条件で蒸着する。
本発明の被覆工具は、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH)を反応ガス成分として含有する熱CVD法等の化学蒸着法により、組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、立方晶構造の複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層が成膜され、該硬質被覆層は、電子線後方散乱回折装置を用いて、複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に該0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状を有し該結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成されたファセットが、前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めるという本発明に特有の構成により、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用するステンレス鋼などの高速断続切削に用いた場合でも、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
(a)、(b)は、硬質被覆層を構成する(Ti1−XAl)(C1−Y)層における結晶粒の結晶面である{100}面で表される等価な結晶面のうちの一つである(001)面の法線が、基体表面の法線に対してなす傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆工具のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物について作成した{100}面の傾斜角度数分布グラフの一例である。 本発明被覆工具の硬質被覆層表面の走査電子顕微鏡による観察画像の一例を示す。
本発明は、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体などの超硬質工具材料で構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、硬質被覆層が、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、複合窒化物または複合炭窒化物層を構成する結晶粒中に立方晶構造を有するものが存在し、前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状を有し該結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成されたファセットが、前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めているという本発明に特有の構成により、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用するステンレス鋼の高速断続切削に用いた場合でも、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するという効果を奏するものであれば、その具体的な実施の形態は、いかなるものであっても構わない。
つぎに、本発明の被覆工具を、実施例に基づき具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体A〜Dをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の基体a〜bを作製した。


つぎに、これらの工具基体A〜Dおよび工具基体a〜bの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、まず、表4に示される条件で、所定の組成を有する(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚になるまで蒸着形成することにより、表7に示される本発明被覆工具1〜15を製造した。
なお、本発明被覆工具6〜13については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または表7に示される上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体A〜Dおよび工具基体a〜bの表面に通常の化学蒸着装置を用い、表5に示される条件で、比較例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表8に示される比較例被覆工具1〜13を製造した。
参考のため、工具基体Aおよび工具基体aの表面に、従来の物理蒸着装置を用いて、アークイオンプレーティングにより、参考例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表8に示される参考例被覆工具14,15を製造した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、次のとおりである。
(a)前記工具基体Aおよびaを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、また、カソード電極(蒸発源)として、所定組成のAl−Ti合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつAl−Ti合金からなるカソード電極とアノード電極との間に200Aの電流を流してアーク放電を発生させ、装置内にAlおよびTiイオンを発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Al−Ti合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表8に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を蒸着形成し、
参考例被覆工具14,15を製造した。
また、本発明被覆工具1〜15、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14,15の各構成層の縦断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表7および表8に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
ついで、前述した本発明被覆工具1〜15の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)を測定した。
また、硬質被覆層表面を、走査電子顕微鏡を用いて観察し、その観察画像の画像解析することにより、{100}面配向している結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成された90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセットの前記観察画像全体を100%とした時の面積割合(β)を測定した。
なお、図2に本発明被覆工具について測定した{100}面の傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
また、図3(a)に本発明被覆工具の硬質被覆層表面の走査電子顕微鏡による観察画像の一例を示し、図3(b)にその模式図を示す。
なお、前記それぞれの具体的な測定法は次のとおりである。
硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(Secondary‐Ion‐Mass‐Spectroscopy:SIMS)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavgは深さ方向の平均値を示す。
また、硬質被覆層の傾斜角度数分布については、立方晶構造のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、工具基体と水平方向に長さ100μmに亘り硬質被覆層について0.1μm/stepの間隔で、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより、0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)を求めた。
また、硬質被覆層の表面における{100}面配向している結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成された層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセットの面積割合は、走査電子顕微鏡とそれに付随する画像解析ソフトを用いて測定する。具体的には、次のように測定した。まず、硬質被覆層の表面を走査電子顕微鏡で100μm×100μmの範囲にて観察する。そして、観察画像をモニターで観察しながら、90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセット、すなわち、画像面内に観察される結晶面をマーキングし、すべての90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセットについてのマーキングが終わった時点で、観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。
なお、硬質被覆層の結晶構造については、X線回折装置を用い、Cu−Kα線を線源としてX線回折を行った場合、JCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlN、各々に示される同一結晶面の回折角度の間(例えば、36.66〜38.53°、43.59〜44.77°、61.81〜65.18°)に回折ピークが現れることを確認することによって調査した。
表7にその結果を示す。
ついで、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14,15のそれぞれについても、本発明被覆工具1〜15と同様にして、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)ならびに観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。
また、硬質被覆層の結晶構造についても、本発明被覆工具1〜15と同様にして、調査した。表8に、その結果を示す。






つぎに、前記の各種の被覆工具をいずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1〜15、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14,15について、以下に示す、合金鋼の高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験(通常の回転速度、切削速度、切り込み、一刃送り量は、それぞれ、800min−1、200 m/min、1.0mm、0.08mm/刃)を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 955min−1
切削速度: 375m/min、
切り込み: 1.0mm、
一刃送り量: 0.10mm/刃、
切削時間: 8分、
表9に、前記切削試験の結果を示す。

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表10に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体α〜γをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表11に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.09mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体δを形成した。
つぎに、これらの工具基体α〜γおよび工具基体δの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、まず、表4に示される条件で、所定の組成を有する(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚になるまで蒸着形成することにより、表13に示される本発明被覆工具16〜30を製造した。
なお、本発明被覆工具19〜28については、表3に示される形成条件で、表12に示される下部層および/または表13に示される上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体α〜γおよび工具基体δの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表5に示される条件で、比較例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表14に示される比較例被覆工具16〜28を製造した。
なお、本発明被覆工具19〜28と同様に、比較例被覆工具19〜28については、表3に示される形成条件で、表12に示される下部層および/または表14に示される上部層を形成した。
参考のため、工具基体βおよび工具基体γの表面に、従来の物理蒸着装置を用いて、アークイオンプレーティングにより、参考例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表14に示される参考例被覆工具29,30を製造した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、実施例1に示される条件と同様の条件を用いた。
また、本発明被覆工具16〜30、比較例被覆工具16〜28および参考例被覆工具29、30の各構成層の断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表13および表14に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
ついで、前記の本発明被覆工具16〜30の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)および観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表13に、その結果を示す。
ついで、比較例被覆工具16〜28および参考例被覆工具29、30のそれぞれについても、本発明被覆工具16〜30と同様にして、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)および観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表14に、その結果を示す。





つぎに、前記各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具16〜30、比較例被覆工具16〜28および参考例被覆工具29、30について、以下に示す、炭素鋼の乾式高速断続切削試験、鋳鉄の湿式高速断続切削試験を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削条件1:
被削材:JIS・SCM435の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:5分、
(通常の切削速度は、220m/min)、
切削条件2:
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:310m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:5分、
(通常の切削速度は、180m/min)、
表15に、前記切削試験の結果を示す。

原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、TiCN粉末、TiC粉末、Al粉末、Al粉末を用意し、これら原料粉末を表16に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて所定の寸法に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびJIS規格CNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×内接円直径:12.7mmの80°菱形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Zr:37.5%、Cu:25%、Ti:残りからなる組成を有するTi−Zr−Cu合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格CNGA120412のインサート形状をもった工具基体イ〜ニをそれぞれ製造した。

つぎに、これらの工具基体イ〜ニの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3に示される条件で、本発明の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表18に示される本発明被覆工具31〜40を製造した。なお、本発明被覆工具34〜38については、表3に示される形成条件で、表17に示される下部層および/または表18に示される上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体イ〜ニの表面に、通常の化学蒸着装置を用い表4に示される条件で、比較例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表19に示される比較例被覆工具31〜39を製造した。
参考のため、工具基体イの表面に、従来の物理蒸着装置を用いて、アークイオンプレーティングにより、参考例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表19に示される参考例被覆工具40を製造した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、実施例1に示される条件と同様の条件を用い、前記工具基体の表面に、表19に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を蒸着形成し、参考例被覆工具40を製造した。
また、本発明被覆工具31〜40、比較例被覆工具31〜39および参考例被覆工具40の各構成層の断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表18および表19に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
ついで、前記の本発明被覆工具31〜40の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)ならびに観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表18に、その結果を示す。
ついで、比較例被覆工具31〜39および参考例被覆工具40のそれぞれについても、本発明被覆工具31〜40と同様にして、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)ならびに観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表19に、その結果を示す。



つぎに、前記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具31〜40、比較例被覆工具31〜39および参考例被覆工具40について、以下に示す、浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速断続切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
被削材: JIS・SCr420(硬さ:HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 235m/min、
切り込み: 0.12mm、
送り: 0.1mm/rev、
切削時間: 5分、
表20に、前記切削試験の結果を示す。

表7〜9、表13〜15および表18〜20に示される結果から、本発明被覆工具1〜40は、立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)層が成膜され、傾斜角度数分布全体に占めるαの値が45%以上、{100}面配向している結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成された90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセットの表面全体を100%とした時の面積割合が50%以上であることから、ステンレス鋼などの高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例被覆工具1〜13,16〜28、31〜39、参考例被覆工具9,10,14、15、40については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、ステンレス鋼、炭素鋼、鋳鉄などの高速断続切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用に亘ってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (8)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
    前記硬質被覆層は、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
    前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
    前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、電子線後方散乱回折装置を用いて、複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
    また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、2種以上の複数の相が共存する混合相からなり、該混合相は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、混合相に共存するその他の各相はTiとAlから選ばれる少なくとも1種の元素と、CとNから選ばれる少なくとも一種の元素からなる化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層についてX線回折による結晶構造解析を行った場合、立方晶構造に由来するピークと六方晶に由来するピークとが観察され、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0より大きいことを特徴とする請求項1または3に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を有する上部層と六方晶構造を有する下部層から構成され、前記下部層の平均層厚が0.3〜1.0μmであり、結晶粒の平均粒径Rが0.01〜0.30μmであることを特徴とする請求項1、3または4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層が存在することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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