JP2015163424A - 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
このような観点から、化学蒸着法で硬質被覆層を形成することで、Alの含有割合Xを、0.9程度にまで高める技術も提案されている。
しかし、前述した特許文献1,2に記載される被覆工具は、(Ti1−XAlX)N層からなる硬質被覆層が物理蒸着法で成膜され、膜中のAl含有量Xを高めることができないため、例えば、合金鋼の高速断続切削に供した場合には、耐チッピング性が十分でないという課題があった。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層は、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、工具基体表面の法線方向に対する前記立方晶結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、2種以上の複数の相が共存する混合相からなり、該混合相は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、混合相に共存するその他の各相はTiとAlから選ばれる少なくとも1種の元素と、CとNから選ばれる少なくとも一種の元素からなる化合物からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層についてX線回折による結晶構造解析を行った場合、立方晶構造に由来するピークと六方晶に由来するピークとが観察され、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0より大きいことを特徴とする(1)または(3)に記載の表面被覆切削工具。
(5) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を有する上部層と六方晶構造を有する下部層から構成され、前記下部層の平均層厚が0.3〜1.0μmであり、結晶粒の平均粒径Rが0.01〜0.30μmであることを特徴とする(1)、(3)または(4)に記載の表面被覆切削工具。
(6) 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(7) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層が存在することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(8) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明の硬質被覆層におけるTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴う高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となる。したがって、その平均層厚は1〜20μmとすることが好ましく、より好ましくは1〜10μmとする。
また、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体とTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に形成するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の平均合計層厚に関しては、0.1μm未満では層厚が薄いため、長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、一方、平均層厚が20μmより大きくなると、工具基体およびTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層との付着強度が低下し、耐剥離性が低下するため、その平均層厚は0.1〜20μmとするのが望ましい。
上部層として、酸化アルミニウム層を含む場合、酸化アルミニウム層の平均層厚が1μm未満であると、層厚が薄いため長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、酸化アルミニウム層の平均層厚は、1〜25μmとすることが望ましい。
本発明の硬質被覆層の主たる層を構成する(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層は、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値が0.60未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、Xavg(原子比)の値が0.95を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなる。したがって、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値は、0.60以上0.95以下とすることが必要である。
また、前記(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層において、C成分には硬さを向上させ、一方、N成分には高温強度を向上させる作用があるが、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)が0.005を超えると、高温強度が低下する。したがって、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)は、0≦Yavg≦0.005と定めた。
本発明の前記(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角(図1(a)、(b)参照)を測定し、その傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示す場合に、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、立方晶構造を維持したままで高硬度を有し、しかも、前述したような傾斜角度数分布形態によって硬質被覆層と基体との密着性が飛躍的に向上する。
したがって、このような被覆工具は、例えば、ステンレス鋼の高速断続切削等に用いた場合であっても、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられ、しかも、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に傾斜角が12度より大きい結晶面は{100}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{100}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであり、傾斜角区分を0〜12度と定めた。
複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成されている場合に、被削材との摩耗抵抗が軽減し、切削における初期なじみ性が向上し、耐チッピング性が向上するという知見を得た。90度未満の角度が存在すると、該角において切削による負荷が大きくなり、潤滑性が損なわれるため、90度未満の角度を有さないとした。
しかしながら、層厚方向に垂直な面内において該面全体を100%とした時の前記ファセットの面積割合が50%未満であると、前述した本発明に特有の効果が十分に奏されないため好ましくない。したがって、前記ファセットの層厚方向に垂直な面内における面積割合を50%以上と定めた。
本発明の複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を主とする結晶構造であることにより、耐摩耗性が向上するものであるが、六方晶構造の割合が増加するにつれて、複合窒化物または複合炭窒化物層の硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため好ましくない。
そこで、六方晶構造が存在する場合、六方晶構造に対する立方晶構造の比と耐摩耗性との関係について探求したところ、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0を超える場合に、耐摩耗性の改善効果が顕著に表れることが明らかになった。したがって、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}は、3.0より大きくすることが好ましい。
なお、Ic{200}の値はJCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlNに示される同一結晶面{200}の回折角度の間43.59〜44.77°に存在する回折ピークのピーク強度値とし、Ih{200}の値はJCPDS00−025−1133六方晶AlNに示される同一結晶面{200}の回折角度の36.00°に存在する回折ピークのピーク強度とする。
本発明では六方晶構造を有する微粒結晶粒層を、柱状立方晶層の下部層として設けることができるが、これにより、柱状立方晶層との付着強度が向上し、靱性が向上する。六方晶微粒結晶粒層の平均層厚が0.3μm未満であると靱性向上の効果が見られず、1.0μmより大きくなると硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため平均層厚は0.3〜1.0μmとするのが好ましい。また、微粒結晶粒の平均粒径Rが大きくなり過ぎると、上部層の柱状組織の成長を阻害するため好ましくない。したがって、微粒六方晶から成る層の微粒結晶粒の平均粒径Rは0.01〜0.30μmとすることが好ましい。
≪第1段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH3 6〜10%、TiCl4 0.5〜1.5%、 AlCl3 3〜5%、N2 6〜11%、 残りH2、
反応雰囲気温度: 800〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下で粒状六方晶の(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層を蒸着形成し、
≪第2段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH3 2〜6%、TiCl4 0.1〜0.5%、 AlCl3 0.5〜2.5%、N2 10〜15%、 Al(CH3)3 0〜0.5%、 残り:H2、
反応雰囲気温度: 800〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜3kPa、
という条件下でガス組成および反応雰囲気温度を変化させて柱状立方晶の所定の目標層厚の(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層の蒸着形成を行う。柱状立方晶を有し表面に多角形状を有する層のみを成膜する場合は上記の第2段階条件で蒸着する。
つぎに、本発明の被覆工具を、実施例に基づき具体的に説明する。
なお、本発明被覆工具6〜13については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または表7に示される上部層を形成した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、次のとおりである。
(a)前記工具基体Aおよびaを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、また、カソード電極(蒸発源)として、所定組成のAl−Ti合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつAl−Ti合金からなるカソード電極とアノード電極との間に200Aの電流を流してアーク放電を発生させ、装置内にAlおよびTiイオンを発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Al−Ti合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表8に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層を蒸着形成し、
参考例被覆工具14,15を製造した。
ついで、前述した本発明被覆工具1〜15の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)を測定した。
また、硬質被覆層表面を、走査電子顕微鏡を用いて観察し、その観察画像の画像解析することにより、{100}面配向している結晶粒の{100}で表される等価な結晶面で形成された90度未満の角度を有さない多角形状を有するファセットの前記観察画像全体を100%とした時の面積割合(β)を測定した。
なお、図2に本発明被覆工具について測定した{100}面の傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
また、図3(a)に本発明被覆工具の硬質被覆層表面の走査電子顕微鏡による観察画像の一例を示し、図3(b)にその模式図を示す。
硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(Secondary‐Ion‐Mass‐Spectroscopy:SIMS)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavgは深さ方向の平均値を示す。
表7にその結果を示す。
また、硬質被覆層の結晶構造についても、本発明被覆工具1〜15と同様にして、調査した。表8に、その結果を示す。
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 955min−1、
切削速度: 375m/min、
切り込み: 1.0mm、
一刃送り量: 0.10mm/刃、
切削時間: 8分、
表9に、前記切削試験の結果を示す。
なお、本発明被覆工具19〜28については、表3に示される形成条件で、表12に示される下部層および/または表13に示される上部層を形成した。
なお、本発明被覆工具19〜28と同様に、比較例被覆工具19〜28については、表3に示される形成条件で、表12に示される下部層および/または表14に示される上部層を形成した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、実施例1に示される条件と同様の条件を用いた。
ついで、前記の本発明被覆工具16〜30の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)および観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表13に、その結果を示す。
表14に、その結果を示す。
切削条件1:
被削材:JIS・SCM435の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:5分、
(通常の切削速度は、220m/min)、
切削条件2:
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:310m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:5分、
(通常の切削速度は、180m/min)、
表15に、前記切削試験の結果を示す。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、実施例1に示される条件と同様の条件を用い、前記工具基体の表面に、表19に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)層を蒸着形成し、参考例被覆工具40を製造した。
ついで、前記の本発明被覆工具31〜40の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合Xavg、平均C含有割合Yavg、XRDにおける立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角0〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)ならびに観察画像面全体に対するマーキングされたファセットの面積全体の面積割合(β)を求めた。さらに、硬質被覆層の結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表18に、その結果を示す。
表19に、その結果を示す。
被削材: JIS・SCr420(硬さ:HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 235m/min、
切り込み: 0.12mm、
送り: 0.1mm/rev、
切削時間: 5分、
表20に、前記切削試験の結果を示す。
これに対して、比較例被覆工具1〜13,16〜28、31〜39、参考例被覆工具9,10,14、15、40については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (8)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層は、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測される立方晶結晶相が存在し、電子線後方散乱回折装置を用いて、複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で90度未満の角度を有さない多角形状のファセットを有し該ファセットが前記結晶粒の{100}で表される等価な結晶面のうちの一つに形成され該ファセットが前記層厚方向に垂直な面内において全体の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、2種以上の複数の相が共存する混合相からなり、該混合相は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、混合相に共存するその他の各相はTiとAlから選ばれる少なくとも1種の元素と、CとNから選ばれる少なくとも一種の元素からなる化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層についてX線回折による結晶構造解析を行った場合、立方晶構造に由来するピークと六方晶に由来するピークとが観察され、立方晶構造の{200}によるピーク強度Ic{200}と六方晶構造の{200}によるピーク強度Ih{200}とのピーク強度比Ic{200}/Ih{200}が3.0より大きいことを特徴とする請求項1または3に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、立方晶構造を有する上部層と六方晶構造を有する下部層から構成され、前記下部層の平均層厚が0.3〜1.0μmであり、結晶粒の平均粒径Rが0.01〜0.30μmであることを特徴とする請求項1、3または4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
- 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層が存在することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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