JP6044322B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
ただ、上記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
しかし、上記特許文献1〜3に記載される従来の被覆工具は、硬質被覆層中にTiの窒化物相、Alの窒化物相あるいは(TiAl)N系微粒子を分散分布させることによって、耐衝撃性、耐チッピング性を向上させるものであるが、いずれも物理蒸着法によって成膜するものであって、立方晶構造の結晶構造を維持したままで膜中のAl含有量を高めることにより、素地の強度向上を図ることができなかったため、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する合金鋼等の高速断続切削加工では、十分な耐チッピング性を発揮することができないという問題があった。
そこで、本発明は、合金鋼の高速断続切削加工等に供した場合であっても、すぐれた耐チッピング性を発揮するとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とするものである。
なお、この発明では、(Ti,Al)Nと(Ti,Al)CNをまとめて、(Ti,Al)(C,N)で示すことがある。
例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)を反応ガス成分として含有する特定組成の反応ガス中での化学蒸着により、硬質被覆層としての立方晶構造の(Ti,Al)(C,N)層を成膜した後、これを特定の冷却速度範囲となるように急冷し、スピノーダル分解による(Ti,Al)(C,N)層中における第2相のナノ分散を促進すると、
(イ)素地相と分散粒子相とからなる硬質被覆層が形成されること。
(ロ)素地相は、
組成式:(Ti1−UAlU)(CVN1−V)
で表した場合、0.7≦U≦0.95、0≦V≦0.005を満足するとともに、(但し、Uは原子比によるAl含有割合、Vは原子比によるC含有割合をそれぞれ示す。)立方晶構造を有すること。
(ハ)分散粒子相は、立方晶構造であって、微細な平均粒子径を有し、
組成式:(Ti1−αAlα)(CβN1−β)
で表した場合、0.78≦α≦1、0≦β≦0.005を満足すること(但し、αは原子比によるAl含有割合、βは原子比によるC含有割合をそれぞれ示す。)。
(ニ)上記素地相の組成と、上記分散粒子相の組成を比較した場合、(α−U)の値が0.03以上である組成差を有すること。
(ホ)素地相の結晶粒について、平均結晶粒幅Wと平均結晶粒長さLの比として表される平均アスペクト比L/Wの値は2を超える値であって、柱状組織を示すこと。
(ヘ)硬質被覆層の結晶粒について、その{110}面の法線が、工具基体表面の法線とのなす角度を測定し、傾斜角度数分布を求めたところ、工具基体表面の法線に対してなす測定傾斜角が2〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の60%以上の割合を占めること。
本発明者等は、この発明の硬質被覆層が、上記(イ)〜(ヘ)の組成、組織、結晶構造、傾斜角度数分布形態を特徴として備えることを見出したのである。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、または立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、1〜20μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物層あるいはTiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(a)上記硬質被覆層は、素地相と分散粒子相からなり、該素地相は、
組成式:(Ti1−UAlU)(CVN1−V)
で表した場合、Al含有割合UおよびC含有割合V(但し、U、Vは何れも原子比)は、それぞれ、0.7≦U≦0.95、0≦V≦0.005を満足する平均組成を有するとともに、立方晶構造を有し、かつ、柱状組織のTiとAlの複合窒化物相あるいはTiとAlの複合炭窒化物相からなり、
(b)上記分散粒子相は、平均粒子径が10〜100nmであって、硬質被覆層の5〜30面積%を占め、立方晶構造を有し、該分散粒子相は、
組成式:(Ti1−αAlα)(CβN1−β)
で表した場合、Al含有割合αおよびC含有割合β(但し、α、βは何れも原子比)は、それぞれ、0.78≦α≦1、0≦β≦0.005を満足する平均組成を有し、
(c)上記素地相の平均組成と、上記分散粒子相の外側相の平均組成を比較した場合、(α−U)の値が0.03以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記柱状組織の素地相において、基体表面と平行な面内の結晶粒幅の平均値を平均結晶粒幅Wとし、また、基体表面と垂直な方向の結晶粒長さの平均値を平均結晶粒長さLとした場合、平均結晶粒幅Wと平均結晶粒長さLの比L/Wで表される平均アスペクト比が、L/W>2であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 上記硬質被覆層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折像装置を用い、立方晶構造を有する結晶粒の結晶面である(110)面の法線が、工具基体表面の法線方向に対してなす傾斜角を測定し、該測定傾斜角のうち、工具基体表面の法線に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する傾斜角度数分布を求めた時、2〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の60%以上の割合を占めることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 上記硬質被覆層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により蒸着形成することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具の製造方法。」
に特徴を有するものである。
なお、本発明における硬質被覆層は、前述のような複合窒化物層あるいは複合炭窒化物層をその本質的構成とするが、さらに、従来より知られている下部層や上部層などと併用することにより、一層すぐれた特性を創出することができる。
上記(Ti,Al)(C,N)層は、その平均層厚が1μm未満では、基体との密着性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴い、切刃に衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚は1〜20μmと定めた。
分散粒子相は、硬質被覆層を化学蒸着法により形成し、これを冷却する際に、スピノーダル分解によって硬質被覆層の素地内にナノ分散することによって生成する。
この分散粒子相は、変形時の転位の移動を阻止することによって硬質被覆層の強度向上に寄与し、さらに、硬度の上昇にも寄与し、被覆工具の耐摩耗性を高めるとともに靭性を改善する。
つまり、この発明の被覆工具の硬質被覆層は、素地相と、該素地相中に分散分布する分散粒子相によって構成されることにより、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に衝撃的・断続的高負荷が作用する高速断続切削加工に供した場合でも、すぐれた耐チッピング性を有し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することができる。
以下に、素地相、分散粒子相について説明する。
硬質被覆層の素地相は、立方晶構造を有し、かつ、柱状組織として形成され、該素地相の平均組成を、
組成式:(Ti1−UAlU)(CVN1−V)
で表した場合、Al含有割合UおよびC含有割合V(但し、U、Vは何れも原子比)は、それぞれ、0.7≦U≦0.95、0≦V≦0.005を満足することが必要である。
Alの含有割合U(原子比)の値が0.7未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、U(原子比)の値が0.95を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、立方晶構造を維持できず、そのため硬度が低下し耐摩耗性が低下するようになることから、U(原子比)の値は、0.7以上0.95以下とすることが必要である。なお、U(原子比)の値の好ましい範囲は、0.85〜0.9である。
また、素地相において、C成分には層の硬さを向上させ、一方、N成分には層の高温強度を向上させる作用があるが、C成分の含有割合V(原子比)が0.005を超えると、高温強度が低下してくることから、V(原子比)の値は、0.005以下と定めた。
また、素地相は、立方晶構造を有する柱状組織相として形成するが、硬質被覆層の形成に際し、後記する化学蒸着法を採用することによって、立方晶構造を有し、かつ、柱状組織からなる素地相を形成することができる。
素地相の柱状組織に関し、基体表面と平行な面内の結晶粒幅の平均値を平均結晶粒幅Wとし、また、基体表面と垂直な方向の結晶粒長さの平均値を平均結晶粒長さLとした場合、平均結晶粒幅Wと平均結晶粒長さLの比で表される平均アスペクト比L/Wの値が、L/W>2であることが望ましく、これによって、皮膜の耐摩耗性が向上するという効果が発揮される。
これは、素地相の平均アスペクト比が2以上である柱状組織になると、摩擦による結晶粒の脱落が起きにくくなり、脱落した硬質皮膜自体による摩耗が軽減され、耐摩耗性が向上するという理由による。
さらに、この発明の上記硬質被覆層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析した場合、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する傾斜角度数を集計したとき、2〜15度の範囲内の傾斜角区分に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の60%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示す場合に、上記硬質被覆層は、高硬度を示すとともに、上記傾斜角度数分布形態によって一段とすぐれた靭性を発揮する。
したがって、この発明の硬質被覆層は、このような傾斜角度数分布形態を有することが望ましく、このためには、後記する化学蒸着の条件のうち、特に、成膜温度と成膜圧力を、調整することが必要である。
図2に、本発明の被覆工具について測定して求めた傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
既に述べたように、分散粒子相は、立方晶構造を有し、平均粒子径が10〜100nmであって、硬質被覆層の5〜30面積%を占める。
ここで、分散粒子相の平均粒子径が10nm未満では、組織の均一性が高くなりすぎて、変形時の転位の移動を阻止する効果が低下してしまい、一方、平均粒子径が100nmを超えると素地相と分散粒子相の界面の歪が高くなり、界面がクラック発生の起点となり易いことから、硬質被覆層の強度向上を図るためには、分散粒子相の平均粒子径を10〜100nmと定めた。
また、分散粒子相の硬質被覆層に占める面積率が5面積%未満であると、変形時の転位の移動を阻止する効果が少なく、一方、面積率が30面積%を超えると、素地に比して硬質の分散粒子相が増加し靱性が低下傾向を示すようになることから、硬質被覆層の強度向上を図るためには、分散粒子相の面積占有率を5〜30面積%と定めた。
分散粒子相は、立方晶構造の(Ti,Al)(C,N)からなるが、その平均組成を、
組成式:(Ti1−αAlα)(CβN1−β)
で表した場合、Al含有割合αおよびC含有割合β(但し、α、βは何れも原子比)は、それぞれ、0.78≦α≦1、0≦β≦0.005を満足することが必要であると同時に、(α−U)の値が0.03以上であることが必要である。
ここで、Uは、既に述べたように、素地相の平均組成を、(Ti1−UAlU)(CVN1−V)で表した場合の、Al含有割合U(但し、Uは原子比)であって、0.7≦U≦0.95である。
これは、次のような理由による。
分散粒子相のAl含有割合αが最大で1の場合には、分散粒子相はAl(CβN1−β)となるが、このAlの窒化物あるいは炭窒化物は、高Al含有となって硬さ,耐酸化性が向上するので、結果として耐摩耗性,耐溶着性が改善され、一方、Al含有割合αが0.78未満になると、平均組成と素地相との関係からAl含有量の差が得られず、強度の向上がえられないため、分散粒子相のAl含有割合αは、0.78≦α≦1と定めた。
なお、分散粒子相のC含有割合βを0≦β≦0.005とすることは、硬質被覆層の素地相の平均組成におけるC含有割合Vと同様な理由による。
さらに、(α−U)の値が0.03未満である場合、即ち、素地相におけるAl含有割合U(あるいは、Ti含有割合1−U)と、分散粒子相におけるAl含有割合α(あるいは、Ti含有割合1−α)との差が小さすぎる場合には、素地相と分散粒子相のそれぞれにおける格子定数の差が小さくなるため、転位の移動を阻止する作用が十分でなくなり、その結果、強度向上効果が小さくなることから、(α−U)の値、即ち、素地相と分散粒子相の組成差、を0.03以上と定めた。
この発明の被覆工具の硬質被覆層は、例えば、以下に述べる化学蒸着法によって(Ti,Al)(C,N)層を蒸着形成した後、所定の冷却速度で急冷することによって、所定の成分組成、組織、平均アスペクト比、傾斜角度数分布形態を備える硬質被覆層を成膜することができる。
化学蒸着するにあたって、反応ガス成分として、Al(CH3)3を添加するとともに、N2H2の添加を微量添加した反応ガス雰囲気で蒸着形成することが特に望ましい。
以下に、化学蒸着の蒸着条件を示す。
反応ガス組成(容量%):
TiCl4 1.5〜3.5%、Al(CH3)3 5〜12.0%、
AlCl3 3.5〜6.0%、NH3 4.0〜8.0%、
N2 6.0〜7.0%、C2H40〜2.0%、N2H2 1〜3%
、残りH2、
反応雰囲気温度: 700〜900 ℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5 kPa、
上記条件の化学蒸着によって成膜した後、冷却速度範囲が0.5〜0.7℃/secの範囲となるように冷却時の圧力と冷却ガス流量を調整することによって急冷すると、本発明で定めた成分組成、組織、平均アスペクト比、傾斜角度数分布形態を備える硬質被覆層が形成される。
硬質被覆相の平均成分組成は、反応ガス組成によって調整され、TiCl4に対するAl(CH3)3,AlCl3の量が増加するとAl含有量が増加する
硬質被覆層の分散粒子相の平均粒子径、占有面積割合は冷却条件と成膜温度によって調整され、温度が高いと分散粒子の平均粒径、面積分率が増加し、冷却速度が遅いと同様の効果が得られる。たとえば、成膜温度900℃以上、且つ冷却速度0.5℃/sec以下になってしまうと分散粒子径が大きくなりすぎてしまう。
平均アスペクト比や傾斜角度数分布形態は成膜温度や成膜圧量の影響をうけて、成膜温度や圧力の増加によって低下する。
したがって、所望の成分組成、組織、平均アスペクト比、傾斜角度数分布形態を得るためには、適切な蒸着条件及び急冷条件を選択することが必要である。
また、本発明被覆工具11〜15については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または上部層を形成した。
なお、本発明被覆工具11〜15と同様に、比較被覆工具11〜15については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または上部層を形成した。
なお、具体的な測定は次のとおりである。
(Ti,Al)(C,N)層における素地相の平均Al含有割合U,平均C含有割合V、分散粒子相の平均Al含有割合α,平均C含有割合βについては、透過型電子顕微鏡を用いて観察視野内の素地相、分散粒子相それぞれをエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によって調査した。素地相の平均Al含有割合U、平均C含有割合Vは5測定の点の平均値を示す。分散粒子相の平均Al含有割合α、平均C含有割合βは5つの粒子の平均値を示す。
表7に、その結果を示す。
具体的な測定手法は、以下のとおりである。
(Ti,Al)(C,N)層の結晶構造については、X線回折装置を用い、Cu−Kα線を線源としてX線回折を行った場合、JCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlN、各々に示される同一結晶面の回折角度の間(例えば、36.66〜38.53°、43.59〜44.77°、61.81〜65.18°)に回折ピークが現れることを確認することによって調査した。
平均アスペクト比は、工具基体表面と水平方向に長さ10μmの範囲に存在する(Ti,Al)(C,N)層の柱状組織(Ti1−UAlU)(CVN1−V)層中の個々の結晶粒の工具基体表面と平行な粒子幅を測定し、測定範囲内に存在する粒子についての平均値を算出することで平均粒子幅W、工具基体表面に垂直な方向の粒子長さを測定し、測定範囲内に存在する粒子についての平均値を算出することで平均粒子長さLを求めた。
分散粒子相の面積分率については、透過型電子顕微鏡を用いて、1μm×1μmの範囲で存在する分散粒子相の面積分率を特定した。分散粒子の平均粒径については透過型電子顕微鏡を用いて、1μm×1μmの測定範囲内に存在する粒子について、各々の面積を算出し、円と仮定した際の直径を粒径とし、それらの平均値を算出した。分散相の結晶構造については同様に透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折図形を解析することにより同定した。
また、(Ti,Al)(C,N)層の傾斜角度数分布については、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物層からなる(Ti,Al)(C,N)層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、工具基体と水平方向に長さ100μmに亘り(Ti,Al)(C,N)層について0.1μm/stepの間隔で、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより、2〜15度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。
また、硬質被覆層の平均層厚は、走査型電子顕微鏡を用い断面測定を行い、5ヶ所の平均値を求め、その平均値を硬質被覆層の平均層厚とした。
表7に、その結果を示す。
表8に、その結果を示す。
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 943 min−1、
切削速度: 370 m/min、
切り込み: 1.2 mm、
一刃送り量: 0.12 mm/刃、
切削時間: 8分、
表9に、上記切削試験の結果を示す。
なお、本発明被覆工具31〜35については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層および/または上部層を形成した。
なお、比較例被覆工具31〜35については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層および/または上部層を形成した。
また、その結晶構造、組織(柱状、分散粒子相の平均粒子径,平均アスペクト比)、傾斜角度数分布形態をそれぞれ測定によって求めた。
表12に、その結果を示す。
また、その結晶構造、組織(柱状、分散粒子相の平均粒子径,平均アスペクト比)、傾斜角度数分布形態をそれぞれ測定によって求めた。
表13に、その結果を示す。
被削材: JIS・SCM415(硬さ:HRC62)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 0.12 mm、
送り: 0.12mm/rev、
切削時間: 4分、
表14に、上記切削試験の結果を示す。
これに対して、比較例被覆工具1〜15、21〜35については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (4)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、または立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、1〜20μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物層あるいはTiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(a)上記硬質被覆層は、素地相と分散粒子相からなり、該素地相は、
組成式:(Ti1−UAlU)(CVN1−V)
で表した場合、Al含有割合UおよびC含有割合V(但し、U、Vは何れも原子比)は、それぞれ、0.7≦U≦0.95、0≦V≦0.005を満足する平均組成を有するとともに、立方晶構造を有し、かつ、柱状組織のTiとAlの複合窒化物相あるいはTiとAlの複合炭窒化物相からなり、
(b)上記分散粒子相は、平均粒子径が10〜100nmであって、硬質被覆層の5〜30面積%を占め、立方晶構造を有し、該分散粒子相は、
組成式:(Ti1−αAlα)(CβN1−β)
で表した場合、Al含有割合αおよびC含有割合β(但し、α、βは何れも原子比)は、それぞれ、0.78≦α≦1、0≦β≦0.005を満足する平均組成を有し、
(c)上記素地相の平均組成と、上記分散粒子相の平均組成を比較した場合、(α−U)の値が0.03以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記柱状組織の素地相において、基体表面と平行な面内の結晶粒幅の平均値を平均結晶粒幅Wとし、また、基体表面と垂直な方向の結晶粒長さの平均値を平均結晶粒長さLとした場合、平均結晶粒幅Wと平均結晶粒長さLの比L/Wで表される平均アスペクト比が、L/W>2であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 上記硬質被覆層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折像装置を用い、立方晶構造を有する結晶粒の結晶面である(110)面の法線が、工具基体表面の法線方向に対してなす傾斜角を測定し、該測定傾斜角のうち、工具基体表面の法線に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する傾斜角度数分布を求めた時、2〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の60%以上の割合を占めることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 上記硬質被覆層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により蒸着形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
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