JP2018041715A - 超電導コイル及び超電導機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】クエンチ焼損の抑制が可能な超電導コイルを提供する。
【解決手段】実施形態の超電導コイルは、酸化物超電導層を有する超電導線材を備える。酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有し、上記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素を含む。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、超電導コイル及び超電導機器に関する。
送電ケーブルを除く大半の用途の超電導機器が、磁場中で使用される。送電ケーブルの場合、液体ヘリウムを用いて4K前後での冷却を行うと、冷却コストが莫大になる。そのため、送電ケーブルに用いる超電導体は、高温酸化物超電導体に限られる。
送電ケーブルに用いる超電導体は、Y(イットリウム)系線材である。送電ケーブルに用いる超電導体は、TFA−MOD(MetalOrganic Deposition using TriFluoroAcetates)法で作られたY系線材が大半を占める。
超電導体をコイルに応用する場合、磁場発生の影響を抑え込む超電導限流器などの特殊な場合を除けば、超電導体は磁場にさらされる。超電導体の特性は、磁場下ではローレンツ力などにより低下する。そのため、金属系超電導体は温度4Kで、Bi系超電導体は温度15〜20Kで、Y系超電導体は温度30〜50Kでの利用が想定されている。
超電導をコイルに応用する場合、金属系超電導体を用いて、4Kで利用することが主であった。しかし、超電導コイルを液体ヘリウムに浸漬して用いる場合、浸漬初期に必要なヘリウムは容器の容積の約4倍とされる。例えば、400L(リットル)容器への浸漬に必要なヘリウム量は1600Lとなる。
ヘリウムは価格が高騰しており、今後も更なる高騰が予想される。ヘリウムは岩盤上部に貯留される天然ガスと一緒に産出する。このため、岩盤下部に位置するシェールガス田では産出しない。既に天然ガスと共に産出するヘリウムの量はピークを越えていると考えられ、今後も枯渇が進み価格は高騰すると考えられている。
ヘリウムの価格は、現在でも1Lで5000円程度まで価格が高騰している。例えば、400L容器への浸漬で1600L必要であれば、800万円分のヘリウム代金が必要である。そのため、近年では冷凍機冷却での利用が可能な超電導システムが期待されつつある。冷却コストが大きい4Kではなく、基本的には30K以上の温度での超電導体の使用が期待されている。
超電導コイルは真空による断熱が必要な技術である。真空度が低下すると、冷凍機での冷却維持が困難となりシステム全体が停止する。そのため、真空度維持は超電導応用システムに重要な課題である。
真空度維持に欠かせないのが多数の金属溶接部のシールである。シールが弱まれば真空断熱が維持できず、再度真空引きなどのメインテナンスが必要となる。その場合、維持コストが増大や、システムへの信頼度低下を招く。
金属溶接部は一般論として、低温で振動が加わると劣化が進行し、リーク確率が増大する。金属結合は自由電子の移動で維持される結合で、極低温への冷却で自由電子の移動度は低下し、金属結合が弱まる。特に、4Kで振動を受けるとダメージが大きいと考えられる。それゆえに、超電導コイルにBi系超電導体を15〜20Kで用いるか、あるいは、Y系超電導体を30〜50Kで用いることが望ましい。
高温金属酸化物超電導体とされるBi系超電導体やY系超電導体であるが、磁場中では液体窒素温度以下の低温で使用される。このうち、Bi系超電導体にはさらなる問題点が存在する。Bi系超電導体は線材断面の最小銀比率が60%でありコストが高い。熱処理時に酸素透過が必要であり、強度改善する場合には金などの貴金属が必要であり更にコストが上昇する。それでも、十分な強度を得ることが難しい。このため、コイルに数十トンのフープ力が加わる大型機器に、Bi系超電導体を用いることは困難である。
上記の理由から、Bi系線材は製造撤退が相次ぎ、超電導コイルに用いられる超電導線材はY系線材が大半を占める。
Y系線材に限らず超電導体は一般的に、第2種超電導体であれば磁束線との共存が可能である。磁束線を一部に固定し、磁場中でも超電導特性を発揮させる技術が人工ピン技術である。人工ピンのサイズは応用温度によるが、30K前後では、3nm程度のサイズが必要であると考えられている。
Y系超電導線材における人工ピンの形成であるが、送電ケーブル市場を制覇したTFA−MOD法は、これまでのところ磁場応用では良好な結果が得られていない。有効な人工ピンが形成できず、磁場中で使用されるコイルの試作すらもない状況である。この系では内部にDyなどの人工ピンを形成するが、そのサイズが20−30nmと非常に大きく、人工ピンとして機能しないと考えられる。
巨大なサイズの人工ピンは二つの点で効果が無い。一つは人工ピンの数が少なくなることにより、ピン止め効果が低下することである。電流量を維持するため、人工ピンの線材に占める体積を一定とすると、30nmの人工ピンの数は、3nmの人工ピンの数の1/1000となる。したがって、十分に磁束線が固定できないおそれがある。
もう一つは人工ピンのサイズが大きすぎることにより、ピン止め効果が低下することである。人工ピンのサイズが大きいと内部に磁束線が多数入る。人工ピンの磁束を保持する力は超電導と非超電導の界面にのみ働く。そのため、複数の磁束線が人工ピンに入ればローレンツ力の合計分の応力が加わり、磁束が界面を越える。そのため、十分に磁束線が固定できないおそれがある。
この状況下で、磁場応用として先行して開発がすすめられたのが、Pulsed Laser Deposition(PLD)法やMetal Organic Chemical Vapor Deposition(MOCVD)法などの物理蒸着法である。物理蒸着法では人工ピンが導入しやすく、BaZrO(BZO)人工ピンの導入が盛んである。人工ピンのサイズを3nmに制御しようと多くの努力が払われてきた。そして近年、5nm程度のサイズの人工ピンまで開発されるに至っている。
このBZO人工ピンであるが、コイル応用ではクエンチ焼損事故が多発し、成功例が1つも無いと思われる。しかも、そのクエンチ焼損事故は通電可能な電流値の半分よりも下の電流で起きると言われている。例えば、200Aの通電が可能な超電導線材で、メーカーが100Aまで通電可能としている場合に、80Aの通電でクエンチ焼損事故が起きると言われている。極端な例では最大電流値の25%程度で不安定化するとの報告もある。
このクエンチ焼損事故の原因は、必ずしも明らかになっていない。クエンチ焼損事故が抑制された超電導コイルの実現が期待される。
また、クエンチ焼損事故に至らない場合であっても、発生磁場の均一性が劣り、スペックを満たさない結果も報告される。安定した磁場の発生が可能な超電導コイルの実現も期待される。
M. Rupich, et al., Supercond. Sci. Technol. 23 (2010) 014015 (9pp) P. Mele, et al., Physica C, 468, (2008), 1631-1634
本発明が解決しようとする課題は、クエンチ焼損の抑制が可能な超電導コイル及び超電導機器を提供することにある。
実施形態の超電導コイルは、酸化物超電導層を有する超電導線材を備える。前記酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有し、前記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素を含む。
第1の実施形態の超電導コイルの模式図。 第1の実施形態の超電導線材の模式断面図。 第1の実施形態の酸化物超電導層の透過型電子顕微鏡像。 第1の実施形態の酸化物超電導層のX線回折測定の結果を示す図。 第1の実施形態の酸化物超電導層のX線回折測定の結果を示す図。 第1の実施形態のコーティング溶液作製の一例を示すフローチャート。 第1の実施形態のコーティング溶液から超電導体を成膜する方法の一例を示すフローチャート。 第1の実施形態の代表的な仮焼プロファイルを示す図。 第1の実施形態の代表的な本焼プロファイルを示す図。 第1の実施形態の超電導コイルを製造する方法の一例を示すフローチャート。 第1の実施形態の作用及び効果の説明図。 第1の実施形態の作用及び効果の説明図。 第1の実施形態の作用及び効果の説明図。 第1の実施形態の作用及び効果の説明図。 第1の実施形態の作用及び効果の説明図。 第2の実施形態の作用及び効果の説明図。 第2の実施形態の作用及び効果の説明図。 第4の実施形態の超電導機器のブロック図。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例1の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例2の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例2の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例2の電流電圧特性を示すグラフ。 比較例2の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例1の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。 実施例5の電流電圧特性を示すグラフ。
本明細書中、結晶学的に連続している構造を「単結晶」とみなす。また、c軸の方向の差が1.0度以下の低傾角粒界を含む結晶も「単結晶」とみなすこととする。
本明細書中、PA(Pinning Atom)とは、酸化物超電導層の人工ピンとなる希土類元素である。PAは非超電導ユニットセルを形成する。PAはプラセオジウム(Pr)のみである。
本明細書中、SA(Supporting Atom)とは、人工ピンのクラスター化を促進する希土類元素である。SAの3価のイオン半径はPAの3価のイオン半径よりも小さく、後述するMAの3価のイオン半径よりも大きい。
本明細書中、MA(Matrix Atom)とは、酸化物超電導層のマトリックス相を形成する希土類元素である。
本明細書中、CA(Counter Atom)とは、PAやSAとクラスターを形成する希土類元素である。CAの3価のイオン半径は、MAの3価のイオン半径よりも小さい。
本明細書中、第1世代型の原子置換型人工ピン(1st−ARP:1st−Atom Replaced Pin)とは、MAを含む超電導ユニットセルのマトリックス相中に、PAを含む非超電導ユニットセルが究極分散している形態の人工ピンを意味する。究極分散とは、非超電導ユニットセルがマトリックス相中に単独で存在する形態である。
本明細書中、第2世代型のクラスター化原子置換型人工ピン(2nd−CARP:2nd generation−Clustered Atom Replaced Pin)とは、MAを含む超電導ユニットセルのマトリックス相中に、PAを含むユニットセル、SAを含むユニットセル及びCAを含むユニットセルがクラスター化した形態の人工ピンを意味する。1st−ARPよりも人工ピンのサイズが大きい。
本明細書中、第3世代型のクラスター化原子置換型人工ピン(3rd−CARP:3rd generation−Clustered Atom Replaced Pin)とは、MAを含む超電導ユニットセルのマトリックス相中に、PAを含むユニットセル及びCAを含むユニットセルがクラスター化した形態の人工ピンを意味する。SAを含まない点で2nd−CARPと異なる。
本明細書中、「超電導機器」とは、超電導体を用いる機器の総称である。
以下、実施形態の超電導コイルについて、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の超電導コイルは、超電導線材を備える。超電導線材は、酸化物超電導層を有する。酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有する。上記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素を含む
図1は、本実施形態の超電導コイルの模式図である。図1(a)は断面図、図1(b)は超電導コイルの一部であるパンケーキコイルの斜視図である。
超電導コイル100は、図1(a)に示すように、ボビン(巻枠)12の軸の周りに、図1(b)に示すような4個のパンケーキコイル14a、14b、14c、14dが積層された状態となっている。パンケーキコイル14a、14b、14c、14dは、超電導線材20を渦巻き状に巻くことで形成されている。パンケーキコイル14a、14b、14c、14dの回りは、例えば、エポキシ樹脂等の含浸樹脂層15で覆われている。
本実施形態の超電導コイル100は、鞍型など様々な形状をとることが可能である。また、本実施形態の超電導コイル100は、例えば、重粒子線治療器、超電導磁気浮上式鉄道車両、又は、核融合用試験用コイルなど、多様な用途に用いることが可能である。
図2は、本実施形態の超電導線材の模式断面図である。図2(a)は全体図、図2(b)は超電導線材の拡大模式断面図である。
超電導線材20は、図2(a)に示すように、テープ状の基材22と、中間層24と、酸化物超電導層30と、金属層40とを備える。基材22は、酸化物超電導層30の機械的強度を高める。中間層24は、いわゆる配向中間層である。中間層24は、酸化物超電導層30を成膜する際に、酸化物超電導層30を配向させ単結晶とするために設けられる。金属層40は、いわゆる安定化層である。金属層40は、酸化物超電導層30を保護する。また、金属層40は、超電導線材20の実使用時に、超電導状態が部分的に不安定になった場合でも、電流を迂回させて流す機能を備える。
テープ状の基材22は、例えば、ニッケルタングステン合金などの金属テープである。また、中間層24は、例えば、基材22側から酸化イットリウム(Y)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)である。基材22と中間層24の層構成は、例えば、ニッケルタングステン合金/酸化イットリウム/イットリア安定化ジルコニア/酸化セリウムである。この場合、酸化セリウム上に酸化物超電導層30が形成される。
また、基材22、中間層24として、例えば、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)基板を用いることも可能である。IBAD基板の場合、基材22が無配向層である。また、中間層24は、例えば5層構造から成る。例えば、下の2層が無配向層、その上にIBAD法によって製造された配向起源層、その上に金属酸化物の配向層が2層形成される。この場合、最上部の配向層が、酸化物超電導層30と格子整合する。
酸化物超電導層30は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有する。上記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素、を含む。
以下、第1の元素をPA(Pinning Atom)、第2の元素をSA(Supporting Atom)、第3の元素をMA(Matrix Atom)、第4の元素をCA(Counter Atom)と称する。
本実施形態の酸化物超電導層30は、第2世代型のクラスター化原子置換型人工ピン(2nd−CARP)を含む。
酸化物超電導層30に含まれる希土類元素の種類は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて同定することが可能である。
酸化物超電導層30は、連続したペロブスカイト構造を有する単結晶である。上記ペロブスカイト構造は、例えば、REBaCu7−y(−0.2≦y≦1)(以下、REBCO)で記載される。REが希土類サイトである。
酸化物超電導層30の層厚は、例えば、0.1μm以上10μm以下である。酸化物超電導層30は、例えば、層厚方向において、全て単結晶である。
また、単結晶は、例えば、酸化物超電導層30内の、酸化物超電導層30の基材22側から50nm以上、かつ、酸化物超電導層30の平均層厚の70%以下の範囲内に存在する。単結晶は、酸化物超電導層30の層厚方向の断面において、例えば、500nm×100nm以上のサイズを有する。
酸化物超電導層30は、例えば、2.0×1015atoms/cc以上5.0×1019atoms/cc以下のフッ素と、1.0×1017atoms/cc以上5.0×1020atoms/cc以下の炭素と、を含む。酸化物超電導層30に含まれるフッ素及び炭素は、TFA−MOD法による酸化物超電導層30の成膜に起因する残留元素である。酸化物超電導層30中のフッ素及び炭素は、例えば、単結晶の粒界に存在する。
酸化物超電導層30に含まれるフッ素の濃度は、例えば、2.0×1016atoms/cc以上である。また、酸化物超電導層30に含まれる炭素の濃度は、例えば、1.0×1018atoms/cc以上である。
酸化物超電導層30中のフッ素及び炭素の濃度は、例えば、SIMSを用いて測定することが可能である。
金属層40は、例えば、銀(Ag)や銅(Cu)が母材の金属で、合金である場合もある。また、金(Au)などの貴金属を少量含む場合もある。
図2(b)は酸化物超電導層30の膜上方、すなわちc軸方向から見た拡大模式断面図である。各四角形は単結晶中のユニットセルを示している。
図2(b)では、PAがプラセオジウム(Pr)、SAがサマリウム(Sm)、MAがイットリウム(Y)、CAがルテチウム(Lu)の場合を例示している。酸化物超電導層30は、プラセオジウム(Pr)を含むPBCO、サマリウム(Sm)を含むSmBCO、イットリウム(Y)を含むYBCO、ルテチウム(Lu)を含むLuBCOのユニットセルで構成される。
PrBCO、SmBCO、LuBCOの各ユニットセルを示す四角形は、それぞれPr、Sm、Luが記される。図中空白の四角形は、マトリックス相であるYBCOのユニットセルである。
酸化物超電導層30中で、PrBCO、SmBCO、LuBCOのユニットセルがマトリックス相であるYBCO内で集合体を形成している。この集合体を、クラスターと称する。図2(b)で、太い実線で囲まれる領域が、クラスターである。
PrBCOは、非超電導体である。PrBCOを含むクラスターが、酸化物超電導層30の人工ピンとして機能する。
プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)の3価のイオン半径の関係は、Pr>Sm>Y>Luである。クラスターには、マトリックス相であるYBCOよりも大きな希土類元素を含むPrBCO及びSmBCOと、YBCOよりも小さな希土類元素を含むLuBCOとが集合している。以下、マトリックス相よりも大きな希土類元素を含むユニットセルを大ユニットセル、マトリックス相よりも小さな希土類元素を含むユニットセルを小ユニットセルと称する。
MAを含むユニットセルはマトリックス相である。酸化物超電導層30中に含まれる希土類元素の中で、MAの量が最大となる。例えば、希土類元素の原子数をN(RE)とし、第3の元素であるMAの原子数をN(MA)とした場合に、N(MA)/N(RE)≧0.6である。言い換えれば、酸化物超電導層30中に含まれる希土類元素中のMAのモル比が0.6以上である。
酸化物超電導層30中の、希土類元素の原子数あるいはモル数の量比は、例えば、SIMSによる元素の濃度測定の結果に基づいて算出することが可能である。
図3は、本実施形態の酸化物超電導層30の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。より具体的には、HAADF−STEM(High−Angle Annular Dark Field Scanning TEM)像である。
400万倍の観察像である。図3は、酸化物超電導層30の層厚方向、すなわち、c軸に平行な方向の断面である。酸化物超電導層30中の希土類元素の原子数を100%とした場合に、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)の原子数が4%、4%、8%の試料の断面図である。
図3の観察像から、原子レベルで配向したペロブスカイト構造が確認できる。酸化物超電導層30中に異相は無く、同じ格子定数のユニットセルが並んでいることがわかる。言い換えれば、図3の酸化物超電導層30はペロブスカイト構造の単結晶である。
図3では、層厚方向において、全てペロブスカイト構造の単結晶である。単結晶は、500nm×100nm以上のサイズを有する。
図3中、白の実線枠で示した領域がクラスターである。白の実線枠内の水平方向に並んだ3列の原子の内、上下の2列はバリウム(Ba)サイトの原子である。間に挟まれた1列が希土類サイトの原子である。
白の破線枠で示した領域も、同様に、水平方向に並んだ3列の原子の内、上下の2列はバリウム(Ba)サイトの原子、間に挟まれた1列が希土類サイトの原子である。白の実線枠で示した領域の希土類サイトの原子は、白の破線枠で示した領域の希土類サイトの原子よりも明るさが明るい。
HAADF−STEM像では、原子量が大きい元素がより明るく光る。白の実線枠で示した領域は、イットリウム(Y)より原子量の大きいプラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)が含まれるため、白の破線枠で示した領域よりも明るくなると考えられる。
例えば、酸化物超電導層30のHAADF−STEM像において、バリウムの明るさをI(Ba)、バリウムに挟まれる希土類元素の明るさをI(RE)とした場合に、第1の領域のI(RE)/I(Ba)が、第2の領域のI(RE)/I(Ba)の1.3倍以上となる第1の領域及び第2の領域が存在する。第1の領域がクラスターである。
第1の領域及び第2の領域は、例えば、図3に示すような、水平方向に並ぶ1列の希土類サイトの10原子分と、希土類サイトを挟む上下2列のバリウムサイトのそれぞれ10原子分と、を有する領域である。図3では、白の実線枠が第1の領域、白の破線枠が第2の領域である。
なお、図3のTEM画像からわかるように、バリウムサイトに格子の歪みが生じ、歪みの角度としては1度を超えていると思われる。ただし、図3からもわかるように明らかに隣接する原子間隔はほぼ等しく、結晶としての結合が存在しているとみなせるため、図3の構造は、単結晶であると定義する。
図4、図5は、本実施形態の酸化物超電導層30のX線回折(XRD)測定の結果を示す図である。酸化物超電導層をXRD測定の2θ/ω法で測定した。
図4は、イットリウム以外の希土類元素を含まないYBCOの試料と、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が4%、4%、84%、8%の試料とを測定した結果である。また、図5は、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が1%、1%、96%、2%の試料と、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が2%、2%、92%、4%の試料と、を測定した結果である。
図4では、プラセオジウム、サマリウム、ルテチウムを含んだ試料でも、ピークはYBCOのピークと一致し、その他に明瞭なピークは確認されない。また、プラセオジウム、サマリウム、ルテチウムを含んだ試料でも、ピークの分離は見られない。したがって、プラセオジウム、サマリウム、ルテチウムを含んだ試料も連続したペロブスカイト構造を有する単結晶であることが分かる。
図5においても、ピークの分離は見られない。したがって、プラセオジウム、サマリウム、ルテチウムを含んだ試料は、連続したペロブスカイト構造を有する単結晶であることが分かる。
なお、図4、図5には基板で用いたLAOのピークも出現している。
次に、本実施形態の超電導コイル100の製造方法について説明する。最初に超電導線材20を製造する。テープ状の基材22上に中間層24を形成し、中間層24上に酸化物超電導層30を形成し、酸化物超電導層30上に金属層40を形成する。酸化物超電導層30はTFA−MOD法により形成される。
酸化物超電導層30の形成は、まず、プラセオジウム(Pr)である第1の元素の酢酸塩、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素の酢酸塩、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素の酢酸塩、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素の酢酸塩、バリウム(Ba)の酢酸塩、並びに、銅(Cu)の酢酸塩を含む水溶液を作製する。次に、水溶液を、トリフルオロ酢酸を主に含むパーフルオロカルボン酸と混合して混合溶液を作製し、混合溶液の反応及び精製を行い第1のゲルを作製する。次に、第1のゲルにメタノールを含むアルコールを加えて溶解してアルコール溶液を作製し、アルコール溶液の反応及び精製を行い第2のゲルを作製する。次に、第2のゲルにメタノールを含むアルコールを加えて溶解して、残留水及び残留酢酸の総重量が2重量%以下のコーティング溶液を作製し、基板上にコーティング溶液を塗布してゲル膜を形成する。次に、ゲル膜に400℃以下の仮焼を行い、仮焼膜を形成する。次に、仮焼膜に加湿雰囲気下で725℃以上850℃以下の本焼、及び、酸素アニールを行い、酸化物超電導体膜、すなわち、酸化物超電導層30を形成する。
パーフルオロカルボン酸は、超電導特性を低下させない観点から、トリフルオロ酢酸を98mol%以上含むことが望ましい。
図6は、本実施形態のコーティング溶液作製の一例を示すフローチャートである。以下、第1の元素であるPAがプラセオジウム(Pr)、第2の元素であるSAがサマリウム(Sm)、第3の元素であるMAがイットリウム(Y)、第4の元素であるCAがルテチウム(Lu)である場合を例に説明する。
図6に示すように、イットリウム、プラセオジウム、サマリウム、ルテチウム、バリウム、銅それぞれの金属酢酸塩を準備する(a1)。また、トリフルオロ酢酸を準備する(a2)。次に、準備した金属酢酸塩を水に溶解させ(b)、準備したトリフルオロ酢酸と混合する(c)。得られた溶液を反応・精製し(d)、不純物入りの第1のゲルを得る(e)。その後、得られた第1のゲルをメタノールに溶解し(f)、不純物入りの溶液を作成する(g)。得られた溶液を反応・精製し不純物を取り除き(h)、溶媒入りの第2のゲルを得る(i)。更に、得られた第2のゲルをメタノールに溶解し(j)、コーティング溶液が準備される(k)。
金属酢酸塩としてはREサイト(Y,Pr,Sm,Lu):Ba:Cu=1:2:3で金属塩を混合する。REサイト中のPrの量が0.00000001以上0.20以下となるように混合する。混合・反応以降はSIG(Stabilized Sovent−Into−Gel)法による高純度溶液精製プロセスにより、コーティング溶液中の残留水及び酢酸量は2wt%以下に低減する。本実施形態のSIG法は、PrBCOの分解を防止するため部分安定化を図る溶液の高純度化法であり、PS−SIG(Partially Stabilized Sovent−Into−Gel)法である。Pr/(Y+Pr+Sm+Lu)の量は、例えば、0.0025となるように混合する。
図7は、本実施形態のコーティング溶液から超電導体を成膜する方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、先に調製したコーティング溶液を準備する(a)。コーティング溶液を基板上に、例えば、ダイコート法により塗布することで成膜し(b)、ゲル膜を得る(c)。その後、得られたゲル膜に、一次熱処理である仮焼を行い、有機物を分解し(d)、仮焼膜を得る(e)。更に、この仮焼膜に二次熱処理である本焼を行い(f)、その後、例えば、純酸素アニールを行い(h)、酸化物超電導体膜(h)を得る。
図8は、本実施形態の代表的な仮焼プロファイルを示す図である。常圧下での仮焼では主に200℃以上250℃以下でトリフルオロ酢酸塩を分解する。その温度域への突入防止のため200℃付近では昇温速度を下げる。250℃までの徐昇温で、トリフルオロ酢酸塩から分解された物質はフッ素や酸素を含み、フッ素や酸素は水素結合により膜中に残留しやすい。その物質の除去のために400℃までの昇温を行う。最終温度は350〜450℃が一般的である。こうして酸化物やフッ化物から構成される、半透明茶色の仮焼膜が得られる。
図9は、本実施形態の代表的な本焼プロファイルを示す図である。100℃のtb1までは乾燥混合ガスであるが、そこから加湿を行う。加湿開始温度は100℃以上400℃以下でよい。疑似液層の形成開始が550℃近辺からと思われ、それ以下の温度で加湿し、膜内部に加湿ガスが行き渡り均一に疑似液層が形成されるようにする。
図9では、800℃本焼の代表的な温度プロファイルを示しているが、tb3での温度のオーバーシュートが無いように775℃以上800℃以下は緩やかな昇温プロファイルとなっている。これでも800℃でのオーバーシュートは2〜3℃残り得るが、特に問題にはならない。最高温度での酸素分圧はマトリックス相に依存する。YBCO超電導体焼成の場合は800℃だと1000ppm、それから25℃温度が低下する毎に最適酸素分圧は半分となる。つまり775℃では500ppmであり、750℃では250ppmである。この本焼においてYBCO系の場合はYBaCuが形成される。この時点では超電導体ではない。
最高温度の本焼において、本焼が完了して温度を下げ始める前にtb4で乾燥ガスを流す。加湿ガスは700℃以下で超電導体を分解し酸化物となるため、tb6で酸素アニールを行い、超電導体の酸素数を6.00から6.93とする。この酸素数で超電導体となる。ただしPrBCOだけはペロブスカイト構造であるが超電導体ではない。またPrの価数が不明のため、ユニットセルの酸素数も不明であるが、酸素数は多いと思われる。Prの価数が3と4の間の値をとり、それに応じて酸素の数がユニットセルに増えるためである。酸素アニールの開始温度は375℃以上525℃以下である。その後の温度保持終了後にtb8から炉冷とする。
以上の製造方法により、酸化物超電導層30を含む超電導線材20が製造される。
図10は、本実施形態の超電導線材20から超電導コイル100を製造する方法の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、先に製造した超電導線材20を準備する(a)。次に、ボビン12の軸の周りに超電導線材20を巻き、パンケーキコイル14a、14b、14c、14dを形成する(b)。この状態のパンケーキコイル14a、14b、14c、14dは非含浸コイルである(c)。その後、パンケーキコイル14a、14b、14c、14dを、エポキシ樹脂などの樹脂に含浸する(d)。パンケーキコイル14a、14b、14c、14dの回りに含浸樹脂層15が形成され、含浸コイルとなる(e)。
含浸コイルは非含浸コイルと比較して、機械的強度が高くなる。
以上の製造方法により、本実施形態の超電導コイル100が製造される。
次に、本実施形態の超電導コイル100の作用及び効果について説明する。
本実施形態の超電導コイル100は、クラスター化したPrBCOを人工ピンとして有する超電導線材20を用いる。超電導線材20は、優れた磁場特性を備えるため、磁場中で使用される超電導コイル100の特性が向上する。さらに、この超電導線材20を用いることにより超電導コイル100のクエンチ焼損事故の抑制が可能となる。さらに、この超電導線材20を用いることにより安定した磁場を発生する超電導コイル100が実現される。
まず、最初に本実施形態の超電導線材20による磁場特性の向上について説明する。
本実施形態の超電導線材20は、酸化物超電導層30にマトリックス相のYBCOを含む。非超電導体であるPrBCOを超電導体のSmBCO及びLuBCOと共にマトリックス相中でクラスター化している。このクラスターが原子レベルの人工ピンとして機能し、磁場特性が向上する。
本実施形態の酸化物超電導層30は、PA、SA、MA、CAからなる。SAとCAでクラスター化現象を引き起こす。SAの一部としてPAがクラスターに取り込まれ、クラスター化原子置換型人工ピン(Clustered Atom−Replaced Pin:CARP)が形成される。このクラスター化原子置換型人工ピンにより、磁場特性が向上する。
図11は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図11は、本実施形態の超電導線材20の磁場と臨界電流密度との関係を示す図である。温度77Kでの測定結果を示す。
比較形態であるイットリウム以外の希土類元素を含まないYBCOの試料(図11中、バツ印)、本実施形態のプラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が1%、1%、96%、2%の試料(図11中、四角印)、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が2%、2%、92%、4%の試料(図11中、三角印)、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ルテチウムの希土類元素中の割合が4%、4%、84%、8%の試料(図11中、丸印)を測定した結果である。横軸が磁場(T)で縦軸がJc値(MA/cm)である。
図11から明らかなように、本実施形態では、特に3Tを超える領域で、比較形態に対して高い臨界電流密度が得られる。
プラセオジウムの希土類元素中に占める割合(Pr比)は、10ppb(=0.00000001)以上であることが望ましい。10ppb以上であることで、磁場特性の改善効果が得られる。
希土類元素の原子数をN(RE)とし、PAである第1の元素、すなわちプラセオジウムの原子数をN(PA)とした場合に、Pr比はN(PA)/N(RE)と記述できる。したがって、0.00000001≦N(PA)/N(RE)であることが望ましい。
プラセオジウムとサマリウムの総和に対し、プラセオジウムの割合が50%より大きくなるとJc値が低下する。また、プラセオジウムの割合が5%を下回ると、磁場特性改善効果が得られないおそれがある。
したがって、PAである第1の元素の原子数をN(PA)とし、SAである第2の元素の原子数をN(SA)とした場合に、0.05≦N(PA)/(N(PA)+N(SA))≦0.5であることが望ましい。
希土類元素の原子数をN(RE)とし、MAである第3の元素の原子数をN(MA)とした場合に、N(MA)/N(RE)≧0.6であることが望ましい。上記範囲を下回ると、超電導ユニットセルの割合が低下し、十分な超電導特性が得られないおそれがある。
MAである第3の元素の原子数をN(MA)とし、第3の元素に含まれるイットリウムの原子数をN(Y)とした場合に、N(Y)/N(MA)≧0.5であることが望ましい。イットリウム(Y)は材料が比較的安価であるため、超電導線材20のコストを低減することが可能となる。
希土類元素の原子数をN(RE)とし、PAである第1の元素の原子数をN(PA)とし、SAである第2の元素の原子数をN(SA)とした場合に、(N(PA)+N(SA))/N(RE)≦0.2であることが望ましい。また、(N(PA)+N(SA))/N(RE)≦0.1であることがより望ましい。上記範囲を上回ると、超電導ユニットセルの割合が低下し、十分な超電導特性が得られないおそれがある。
PAである第1の元素の原子数をN(PA)とし、SAである第2の元素の原子数をN(SA)、CAである第4の元素の原子数をN(CA)とした場合に、0.8×N(CA)≦N(PA)+N(SA)≦1.2×N(CA)であることが望ましい。上記条件が満たされない場合、クラスターを形成しないPA、SA、又は、CAの数が増大し、超電導特性が低下するおそれがある。
酸化物超電導層30は、2.0×1015atoms/cc以上5.0×1019atoms/cc以下のフッ素と、1.0×1017atoms/cc以上5.0×1020atoms/cc以下の炭素と、を含むことが望ましい。
残留フッ素及び残留炭素は、例えば、15Tを超えるような非常な高磁場で磁場特性を維持する効果があると考えられる。
上記観点から、酸化物超電導層30に含まれるフッ素は、2.0×1016atoms/cc以上であることがより望ましい。また、酸化物超電導層30に含まれる炭素は、例えば、1.0×1018atoms/cc以上であることがより望ましい。
酸化物超電導層中で、PrBCOを含むクラスターが形成されず、PrBCOがYBCOのマトリックス相中で究極分散していると仮定する。究極分散とは、PrBCOが単独のユニットセルとしてYBCOのマトリックス相中に分散している状態である。
Prは3価でペロブスカイト構造を形成し、その後に4価となることでそのユニットセルが非超電導化すると考えられる。その際にPrが入った1/3のペロブスカイトユニットセルは14%程度収縮し、非超電導化すると考えられる。その変形はa/b面内の第1隣接ユニットセルへ伝搬し、その4ユニットセルも非超電導化すると考えられる。こうして、クラスターが形成されず、Prが究極分散した場合には、Pr量の5倍のJc劣化が見られる“5倍劣化現象” (5times degradation phenomenon)が確認される。
次に、本実施形態の超電導コイルのクエンチ焼損事故の抑制効果、及び、発生磁場の安定効果について説明する。
上述のように、物理蒸着法で形成された超電導線材では、クエンチ焼損事故が発生しやすい。その原因は、内部迂回電流(Inner Bypass Current:IBC)ではないかと考えられる。IBCは超電導線材内で電流が蛇行し、磁場形成に寄与しないエネルギーが熱エネルギーとなり、クエンチ焼損事故を起こすことが考えられる。また、IBCにより超電導コイルの発生する磁場が不安定になると考えられる。
IBCは、超電導線材の内部の局所的なCritical Temperature(Tc)の違いで生じると考えられる。超電導線材にTcが異なる個所がある場合、それぞれの場所の局所的Critical Current Density(Jc)値、すなわち局所的Critical Current(Ic)値が異なる。Tcが低下する超電導体ではIBCが必ず形成され、例えば、良好なJcのYBaCu7−x(YBCO)ではTc=90.7Kであるが、Tc=89.7KでもIBCは形成される。
局所的な電流の流れやすさの違いが77Kで生じる場合、例えば30Kでの冷却時も傾向は不変と思われる。同様な構成の超電導体ではJc−B−Tカーブは同じような傾向を示す。そのため、77Kでも30Kでも電流が流れやすいところは流れやすい。逆転する個所はゼロではないが、総じてこの傾向が維持されると思われる。そのため、低温でもIBCが生じると考えられる。
BZO人工ピンはそれ自体が障害物として働き、また周囲の酸素を低減して非超電導化しIBCを形成する。TFA−MOD法の超電導線材であっても放射線照射ではTcが低下している。つまり、TFA−MOD法で作られた超電導線材でも放射線照射によりIBCが形成されると思われる。
IBCの定常状態での測定はかなり難しい。例えば磁場精度で0.01%を要求する超電導線材であれば、電流値の瞬間的な変動も0.01%レベルとなる。もとより超電導体のクエンチは、μVでの測定を行っているため、これよりも数ケタ小さい変位は観測が難しく、IBCの影響を拡大して測定する必要がある。そのためには短時間に電流値を増大させて測定することが有効と思われる。
短時間に電流値を大幅に増加した場合、IBCが存在すればIBCによるノイズの起電力は大きくなり、測定が容易になる。このことからIBCの存在を間接的に測定し、コイルを形成した場合のクエンチ焼損事故の可能性の大小を知ることができると考えられる。
これがIBC間接測定法である。Icまでの電流値は4秒前後で電流を増加させ測定(Ic値の1.25倍の電流値まで5秒で測定)し、Ic値の90%までの電圧の振れをV(IBC)と定義することで比較ができる。
IBC間接測定法では、電圧の振れであるV(IBC)を求める。材料間でV(IBC)を比較することにより、クエンチ焼損事故の可能性の大小を比較できると考える。
V(IBC)計算の定義は次のとおりである。Ic値まで一定時間(ここでは4秒)で電流を増やし、Ic値の90%までのデータで観測される最大電圧Vmaxと最小電圧Vminを用い、測定系のバックグラウンドのノイズである0.20μVを引いた値で求める。すなわち、V(IBC)は、以下の式で示される。
V(IBC)=Vmax−Vmin−0.20
物理蒸着法で製造されたBZO人工ピンを有する超電導線材のIBC間接測定では、極めて大きなV(IBC)が確認される。50K・5TでV(IBC)=36.05μVである。短時間に電流を増やした値であるため超電導転移である1μV/cmとの直接比較はできないが、IBCがクエンチ焼損原因であっても不思議ではない結果と考える。
IBCが、ほとんど発生しない超電導線材も存在する。TFA−MOD法で作られ、内部に直径20nm〜30nmのDy人工ピンが存在する超電導線材である。この超電導線材ではYBCOのペロブスカイト構造が維持され、Tcは90.7Kである。50K・5TでV(IBC)=0.14μVとなり、物理蒸着法の線材の1/250しかないV(IBC)である。
なお、TFA−MOD法で製造されたDy人工ピンを有する超電導線材のV(IBC)が小さい理由であるが、内部のペロブスカイト構造の大半を電流が直進し、Dyに電流がぶつかったときのみ迂回するためと思われる。BZO人工ピンではTcが局所的に異なり、局所的なIcやJcも異なるために電流が常に直進しないと考えられる。IBCの有無は、この直進性電流の有無とも言い換えることができる。
しかし、Dy人工ピンを有する超電導線材では人工ピンの効果はほとんど期待できない。Dyが、本焼時の疑似液相下で自由に成長し、20nm〜30nmのサイズへと成長しているからである。大きすぎて人工ピンとして機能しないのである。
このようにY系超電導線材では、V(IBC)が大きな線材でコイルを形成すると、余計なエネルギーが消失して熱となり、クエンチ焼損事故につながると思われる。また、発生する磁場も安定しないと考えられる。一方で、V(IBC)が小さいTFA−MOD法線材では人工ピン力が期待できないため、磁場特性が向上しない。
そこで、V(IBC)が小さく、かつ、有効な人工ピンを有する超電導線材を作れば、クエンチ焼損事故の抑制が期待できる。また、形成磁場の安定性も期待できる。
図12は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図12は、TFA−MOD法で製造されたDy人工ピンを有する超電導線材の内部構造を示す模式図である。Dyが、YBCOのマトリックス相中に形成されている。Dyは、例えば、直径が20nm〜30nmである。
図12の超電導線材は、YBCOのマトリックス相はペロブスカイト構造を維持し、Tcは90.7Kである。液体窒素中のJc測定では高い値を示す。これは、Tcが低下した部分が少なく、液体窒素温度でも十分に超電導電流が流れることを示している。
TFA−MOD法は本焼時に疑似液相を作りユニットセルが成長する。そのためDyなどの粒子でペロブスカイト構造を組まないものは単独で集まりやすく、大きく成長してしまう。
超電導電流を通電するとほとんどの電流が直線的に流れる。しかし、Dy粒子にぶつかるところでは迂回する。電流の迂回の程度を表すために、電流迂回指数Ibを定義する。電流迂回指数Ibは、IBCが生じることにより、電流が本来流れるべき量からどれだけ少なくなったかを示す指標である。電流迂回指数Ibは、幾何学的に計算できる。
図13は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図13は、人工ピンを有する超電導線材における電流迂回指数Ibの求め方の説明図である。
図13(a)に示すように、人工ピンを、半径Rの球と仮定し、人工ピン間隔をDpとして、人工ピン導入体積比率をRvpとする。
人工ピン導入体積比率Rvpは、以下のように表すことが可能である。
Rvp=(4πR/3)/(πRDp)
=4R/(3Dp)
したがって、人工ピン間隔Dpは、以下のように表すことが可能である。
Dp=4R/(3Rvp)
図13(b)に示す人工ピンの中心からrの位置の電流が人工ピンを迂回するためには、(R−r)の移動が必要である。超電導線材全体での移動距離の平均値(平均移動距離Dm)を求めるために積分を行う。
平均移動距離Dmは、以下のように表すことが可能である。
Dm=(πR/3)/πR=R/3
距離Dp間を電流が進む間に、電流が平均して横に移動する距離が、平均移動距離Dmである。平均電流迂回比率(Rib)は、以下のように算出することが可能である。
Rib=Dm/Dp
=(R/3)/(4R/3Rvp)
=Rvp/4
なお、平均電流迂回比率(Rib)は、電流が線材の延伸方向に単位長さ進んだ場合に、どれだけ延伸方向に垂直な方向に移動するかを示す指標である。Ribは、人工ピンの半径Rに依存せず、人工ピン導入体積比率Rvpにのみ依存することが分かる。
電流迂回指数Ibは、以下のように算出することが可能である。
Ib=1−cosθ
tanθ=Rib=Rvp/4
θ=arctan(Rvp/4)
Ib=1−cos{arctan(Rvp/4)}
電流迂回指数Ibも、人工ピンの半径Rに依存せず、人工ピン導入体積比率Rvpにのみ依存する。電流迂回指数Ibは、実際の電流が角度θを持って進むとき、電流が本来流れるべき量からどれだけ少なくなったかを示す。
極端な場合を例にすると、電流が角度45度に進めば、約29%電流方向の電流が小さくなるため、そのロス量をIbと表す。すなわち、Ib=29%となる。
表1は、人工ピン導入体積比率Rvpに対する電流迂回指数Ibの計算値を示す。
Tcが維持された人工ピンであればRvp=20%でもIb=0.12%でしかない。人工ピン導入体積比率20%でも、この程度の迂回電流量しか発生しない。したがって、IBCの影響は小さく抑えられることになる。
Tcが維持された超電導線材では、迂回電流量は少ない。しかし、上述のように、Dy人工ピンのように人工ピンサイズが大きいと、磁場特性の改善効果が望めない。
図14は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図14は、物理蒸着法で製造されたBaZrO(BZO)人工ピンを有する超電導線材の内部構造を示す模式図である。
BZO人工ピンはペロブスカイト構造であり、人工ピンのサイズは、Dyに比べて小さくすることが可能である。しかしながら、BZOとYBCOとの間の格子ミスマッチが9%程度あるために、BZOとYBCOとの間に空隙が存在する。空隙部分の非超電導性は高くなる。
またYBCOとBZOが隣接した場合には、BZOがYBCOの酸素を抜き取るため、YBCOのJcやTcが低下することが知られている。そのため、図14に示したようなTcの内部分布を有する構造が形成されていると考えられる。図14では、YBCOのマトリックス相中のハッチングの濃い部分がTcの低い領域であり、ハッチングの薄い部分がTcの高い領域である。
Tcが低い領域は同一温度の比較において、Jc値が小さい領域である場合が多い。同一構成の超電導線材では線材内部のJc値の大小は低温でも高温と同じ傾向が維持される。そして、線材内部にJc値の差が存在することは、IBCの形成につながる。
IBCの影響が大きいのは、とりわけJc値に近い大きさの電流を流した場合である。Jc値と比較して小さな電流の場合は、各領域での電流容量が比較的余裕があるためにまっすぐ電流が流れることになる。しかし、Jc値付近で電流を流した場合、線材全体で電流容量に余力のある領域はほとんどなくなり、線材内部での電流迂回の影響が大きくなる。
IBCの影響は、磁場が強いほど大きいことが推測される。図14では電流が右から左に流れる状態を示しているが、個々の電流はそのベクトル方向から外れる。電流方向に流れる成分は、100%より小さくなり、余剰分は熱エネルギーとなりよりクエンチ焼損事故の可能性を増やすと考えられる。
磁場特性の向上とクエンチ焼損事故の抑制を両立させるには、例えば、図12のDy人工ピンを小さく作るか、図14のBZO人工ピンの影響を低減することが考えられる。
しかし、TFA−MOD法の本焼時に、ペロブスカイト構造以外の異相が形成される場合、800℃での液相中の成長となる。このため、粒成長が早く20nm〜30nmよりDy人工ピンを小さくすることは困難である。また物理蒸着法でもペロブスカイト構造を形成しないピンは同様に大きくなる。
一方、BZO人工ピンのようにペロブスカイト構造を作る人工ピンは、格子に隙間ができるか酸素を引き抜いて超電導特性が不均一化する。したがって、BZO人工ピンの超電導特性への影響を低減することも困難である。
図15は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図15は、本実施形態の超電導線材20の内部構造を示す模式図である。
図15は、酸化物超電導層30の、下側が基材22、上側が金属層40となるように観察した拡大模式断面図である。各四角形は単結晶中のユニットセルを示している。単位ユニットセルのc軸長は、a軸長及びb軸長の約3倍である。そのためユニットセルを観察すると図15のように観察される。
図15で、内部が空白の四角はマトリックス相の原子(MA:Matrix Atoms)を希土類サイトに持つユニットセルを示す。例えば希土類サイトに入る元素はYなどである。横線で示したものは人工ピンとなる原子(PA:Pinning Atom)である。PAを形成する希土類元素はPrのみである。縦線で示したユニットセルはサポーティング相の原子(SA:Supporting Atoms)であり、例えば、Smなどを使われる。SAだけは無くても成立する場合がある。チェック柄で示されたユニットセルはカウンター相の原子(CA:Counter Atoms)である。例えば希土類サイトにYbなどが使われる。
元素数ではMAは60%を占める。MAの元素の種類は一種類と限られず、Y以外にもGdやHo、Dyなどが使われる場合がある。PA+SA、CAの上限値はそれぞれ20%である。PAとSAはペロブスカイト構造形成時には大きなユニットセルであり、CAは小さなユニットセルである。この大小ユニットセルは、形状異方性により集合化するクラスター化現象により集積する。図15では2か所に集合化した状態を図示している。
図15においてPAのa/b軸方向に隣接したユニットセルが非超電導となり、ある程度のユニットセルが集積したクラスターでは平均で超電導状態が75%低下した人工ピンとなる。空白部分はYBCO超電導体であり、Prに隣接した部分を除けばTcは90.7Kと考えられる。そのため、超電導電流はクラスター化人工ピン(CARP)を除き、図15に示すように線材の延伸方向にまっすぐ流れることになる。よって、磁場特性の向上とクエンチ焼損事故の抑制が実現可能となる。
本実施形態の超電導コイル100では、サイズの小さい人工ピンが含まれるため磁場特性が改善する。また、マトリックス相のTcの低下も抑制できるため、IBCの影響が小さくできる。
IBCは超電導電流が流れる際に、不要な電圧を発生させると同時に、エネルギーロスが熱エネルギーの発生につながり、クエンチ焼損事故の原因を作っているものと思われる。
本実施形態のCARPは、YBCOをMAとした系で、4%Pr(PA)、4%Sm(SA)、8%Lu(CA)を加えてもIBCがほとんど発生しない。上述のように、IBCは直接観測が難しいため、短時間にJc近くまで電流値を増加させ、V(IBC)を検出するIBC間接測定法で調べることができる。
例えば、上記の構成では50K・5TでV(IBC)=0.11μVとなり、かなり小さい値であることがわかる。
なお、V(IBC)は計算されるIc値が大きいと不利である。インダクタンス成分の関与があれば、V(IBC)は電流に比例する。電流は約4秒でIc値まで増大させるため本来の電流成分でない方向に電流が流れる。その電流に印加された磁場でのローレンツ力などでV(IBC)が発生する場合でも、やはり電流値に比例する。したがって、内部迂回電流の影響度If(IBC)(Influence of IBC)は、以下のように、Ic値の商であらわせると考えられる。
If(IBC)=V(IBC)/Ic
クエンチ焼損事故を起こさずコイルが運用できるIf(IBC)がどれだけの値であるのか、現時点では必ずしも特定できない。しかし、Dy人工ピンの超電導線材では、限流器で30回のスイッチ動作の実績がある。また、BZO人工ピンの超電導線材では、コイルに適用した場合にクエンチ焼損事故が見られる。したがって、それぞれの超電導線材のIf(IBC)の間であると考えられる。50K・5TでのIf(IBC)はそれぞれ0.004と0.361であった。
IBC間接測定法は、Ic値まで4秒で電流を増大させV(IBC)を大きくして検知しようと試みる測定である。仮にこの測定方法で100Aで2μVの電圧に抑制できた場合にクエンチ焼損事故が回避できるとしたならば、If(IBC)=0.020が境界値である。本明細書の議論では、この値を暫定の目安として用いる。将来、クエンチ焼損事故とIf(IBC)の関係が明らかになれば、その境界値は明らかになると考えられる。
以上、本実施形態によれば、クエンチ焼損事故の抑制が可能な超電導コイルが実現できる。また、磁場特性が向上し、かつ、安定した磁場の発生が可能な超電導コイルが実現できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の超電導コイルは、第2の元素がネオジウム(Nd)及びサマリウム(Sm)の群の少なくとも一種類であり記第3の元素がイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類であり、第4の元素がエルビウム(Er)及びツリウム(Tm)の群の少なくとも一種類に限定されていること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
本実施形態では、第3の元素であるMAのイオン半径と第4の元素であるCAのイオン半径とのの差が比較的小さいことで、核生成頻度が高くなる。したがって、人工ピンのサイズが小さくなり、特に、低温域での磁場特性に優れた超電導コイルが実現できる。
低温域での磁場特性に優れた超電導コイルを実現する観点から、特に、第2の元素がサマリウム(Sm)であり、第3の元素がイットリウム(Y)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類であり、第4の元素がツリウム(Tm)であることが望ましい。
以下、本実施形態の作用・効果について説明すると共に、CARPの形成モデルについても含めて説明する。
図16は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。図16は、本実施形態の超電導線材20の磁場と臨界電流密度との関係を示す図である。温度30Kでの測定結果を示す。
比較形態であるイットリウム以外の希土類元素を含まないYBCOの試料(図16中、バツ印)、本実施形態のプラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ツリウムの希土類元素中の割合が1%、1%、96%、2%の試料(図16中、黒丸印)、プラセオジウム、サマリウム、イットリウム、ツリウムの希土類元素中の割合が2%、2%、92%、4%の試料(図16中、白丸印)を測定した結果である。横軸が磁場(T)で縦軸がJc値(MA/cm)である。
図16から明らかなように、本実施形態では、比較形態に対して高い臨界電流密度が得られる。
例えば、送電ケーブルや限流器への応用の場合、77K〜50Kの温度領域で磁場特性が改善することが求められる。一方、例えば、重粒子線がん治療機や磁気浮上列車などに用いられる超電導コイルへの応用の場合、30K付近で磁場特性が改善することが求められる。したがって、低温域での磁場特性改善も必要とされる。
低温域で人工ピンとしての効果を発揮させるには、人工ピンのサイズを小さくする必要がある。同じ人工ピン体積を導入した場合でも、サイズが小さいほうが超電導体と隣接する面積が大きくなり、その面でのポテンシャル差が人工ピンの微視的ピン力となるためである。したがって、人工ピンとしてCARPを用いる場合、CARPのサイズを小さくする必要がある。CARPサイズの縮小のために、現在実現されているCARPのサイズを把握し、そのサイズを小さく制御することが必要となる。しかし、CARPのサイズを把握することは困難である。
過去に開発されてきたBaZrO人工ピンは、マトリックス相のYBCOと格子定数が異なるため構造が分離しており、明確な界面が存在する。このため、BZOの位置が特定しやすかった。したがって、サイズの把握も容易であった。
しかし。CARPは従来のBZOとは全く異なる構造であり、連続するペロブスカイト構造の一部が人工ピンを形成する。そのため、TEM観察でもCARPなのかYBCO超電導体なのかの判別が難しく、CARPのサイズの直接観察は極めて困難である。
CARPのサイズの直接観察は困難であるが、ピンサイズ制御技術を用いて、温度30K、磁場1T〜3Tの条件で、小さな磁場特性改善効果が得られている試料がある。従来の報告例を基に考えると、この試料の人工ピンのサイズは15nm〜20nm程度と推測される。したがって、CARPのサイズが15nm〜20nm程度であると類推される。
CARPの存在位置は、TEMにより観察できるCu原子の位置の揺らぎなどから類推し、膜全体に塊状に分布している可能性が高い。その塊状のCARPは、膜中に略均一に分布し、その直径は15nm〜20nmと想定される。したがって、CARP形成モデル(CARP growth model)が理解できれば、そのモデルを応用することで、CARPのサイズ制御が可能となる。
上記のCARPは、クラスター化現象によりPA、SA、及びCAが集積し、PAがa/b面内の隣接4ユニットセルを非超電導化することで形成される。そして、CARP全体が人工ピンとして機能すると推測される。CARPのサイズ制御のためには、どのユニットセルがCARP形成の起点となるかについて知る必要がある。
CARP形成の起点は、CAの可能性が高いと思われる。YBCOのペロブスカイト構造においては、Yサイトに入る元素のイオン半径と、成膜時の最適酸素分圧とに相関がある。最適酸素分圧とは、得られた超電導体のJc値が、液体窒素中で最大となる値である。またその酸素分圧はイオン半径と逆の相関関係にある。
例えば、LaBCOでは最適酸素分圧は0.2ppm、NdBCOでは5ppm、SmBCOでは20ppmである。イオン半径はLa>Nd>Sm>Y>Tm>Yb>Luである。YBCOでは1000ppmである。TmBCO、YbBCO、LuBCOは正確な値は不明ながら2000ppm、3000ppm、4000ppm前後であると考えられる。
元素間の実効的なイオン半径の差は、YBCOの最適酸素分圧と対数的にどれ位差があるかで決まると思われる。YBCOの最適酸素分圧との差はCARPを構成するSmBCOの最適酸素分圧ではYBCOの1/50、すなわち50倍の差がある。TmBCOは2倍、YbBCOは3倍、LuBCOは4倍である。PrBCOのデータは無いが、LaとNdの間に位置し、0.2ppm〜5ppmと推測されるが、1ppm程度と考えられる。YBCOと実効的なイオン半径の差が最も小さいのがCAとなる。イオン半径の差が小さいほど核生成頻度は相対的に高いはずであり、CARP成長の起点がCAである可能性が高い。PAやSAの核生成頻度はCAと比較し低い。
CARPサイズを決める重要な因子は、MAとCAの核生成頻度である。CAの核生成頻度がMAの1/100万である場合、100万個のMAに対し1つCAが成長し、周辺のCARP構成元素が集積する。それらがCARPを形成する。CAがLuの時に、100万個のMAに1つCAが成長すると仮定する。また、CAがTmの時に、1万個のMAに1つCAが成長すると仮定する。
Luが含まれるCARPは1/100万の確率で核生成し、核生成後は周囲のCARP構成元素の濃度が希薄化するまでCARPの構築が進むことになる。すると、かなり大きなCARPができ上がることが容易に推測できる。仮にCARP構成元素が8%であれば、1.25万個のユニットセルから成るCARPが、MAのユニットセル100万個の中に1つできることになる。
一方、Tmの場合は核生成頻度が1/1万である。この場合Lu−CARPが出来る領域に、Tmの核生成が100個作られることを意味している。すなわち1.25万個のユニットセルが、約100等分され、125個のユニットセルから成るCARPが100個形成されることとなる。
図17は、第2の実施形態の作用及び効果を示す図である。図17は、イオン半径の異なるCAを適用した場合のCARPの成長の違いを模式的に示す図である。
図17(a)はCAがTmの場合、図17(b)はCAがLuの場合である。Tmは、Yとのイオン半径差が、Luよりも小さい。このため、TmBCOのユニットセルサイズとYBCOのユニットセルサイズとの差は、YbBCOのユニットセルサイズとYBCOのユニットセルサイズとの差よりも小さく、核生成頻度が大きくなる。
CAがLuの場合、なかなか核生成が起きず、起きた場合は周辺のCARP構成元素が集まってCARPを形成する。このため、図17(b)のように大きなCARPとなってしまう。一方でCAがTmの場合は核生成速度が大きいために多数の核が形成される。多数の核のそれぞれにCARP構成元素が移動してCARPを形成する。それぞれの核に移動するCARP構成元素の量が少ないため、図17(a)に示すように、CARPのサイズはCAがLuの場合と比べて小さくなる。
Pr:Sm:Yb=1:1:2で形成されるCARPは、CARP構成元素量が2倍になっても同じサイズのCARPが形成されることが推測される。試料1としてPr:Sm:Yb=1:1:2(%)、試料2として同比2:2:4(%)の物を成膜したとする。
後者のYb核生成量は前者の2倍なので同一体積内にCARP数は2倍となる。CARP構成元素を取り込める領域は1/2になる。しかし、その領域にCARP構成元素の濃度が2倍あるわけなので、結局は同じCARPサイズとなる。更に一般化して1:1:2のn倍でも同じ結果となる。PA:SA:CA比が同一の場合で総量が異なるものを成膜すると、サイズが同じCARPの個数だけが増加する。
上記のケースで例えば、PA:SA:CA=1:1:2の場合に、CAのみ増やしPA:SA:CA=1:1:8とすると、CARP構成元素の体積は同じであるが(CAの余剰分6%はCARPを形成しない)、核生成数はCA増加前の4倍となる。つまり従来のCAの4倍の個数のCARPが形成されることになる。これにより、Yb系のCARPでは30K・1〜3Tで特性が上がりつつあることが確認できている。以上が、現時点で判明しているCARP形成モデルである。
CARPサイズを小さくする時に、特に有効な手段は、(1)CAのみを増加させる、(2)核生成頻度のより高いCAを使うことである。また核生成数を増加させた場合にCARP構成元素の量により最後のCARPサイズが決まる。現状でのCARP成長モデルにおける、CARPサイズは次のように書き表せる。
D(CP)=k×M(CP)×V(MA)/V(CA)、
上記の式において、各記号の定義は以下のとおりである。
D(CP):CARPの平均直径(Diameter of CARP)
M(CP):CARP構成元素の単位体積当たりのモル数(Mass of CARP)
V(MA):MAの核生成速度(頻度)(Velosity of MA nucleation)
V(CA):CAの核生成速度(頻度)(Velosity of CA nucleation)
k:CARP成長モデルにおける定数(CARP constant)。
D(CP)を小さくして30Kで効果を発揮させるには、M(CP)が同じ量の場合にV(MA)を小さくするか、V(CA)を大きくすればいいことになる。MAに使用可能な元素には限りがあり、Gdを100%MAに用いれば溶液に沈殿が生じやすい。そのためCAの元素を選択し、あるいはCAを混合して用いることがD(CP)を小さくして30Kで特性を改善するカギとなる。
CARPサイズを小さくする手段として上記の(1)を用いる場合、YbをCAに用い効果が確認される。しかし、CA量を増やすことは内部にTcが小さい領域が形成されることでもあり、内部迂回電流増加につながるおそれがある。ただ。現時点では顕著な悪影響は確認できていない。
内部迂回電流による電圧形成を回避したいコイル応用においては、CARPサイズを小さくする手段として上記の(2)の技術のみを用いて30Kで効果を発揮させるほうがより有効であると考えられる。すなわち、PA+SA=CA量を維持したまま、V(CA)を大きくする技術が望まれる。
大きなV(CA)を実現するには、MAとの格子ミスマッチを小さくすればいいことが解っている。CAの核生成頻度はMAとの格子ミスマッチにより決まる。格子ミスマッチゼロ、すなわちMA自身がMA上に核生成する場合に当然ながら速度は最大となる。
しかし格子ミスマッチが大きくなるにつれて核生成頻度、あるいは核生成速度が減少し、7%を超える格子ミスマッチではcube on cubeの成長はしなくなると言われている。すなわち速度ゼロの状態でとなる。
格子ミスマッチが4%、3%、2%となると核生成速度がどの程度増大するのか、具体的な実験結果に関する報告などは無いが、計算科学者の話によれば1%格子ミスマッチが小さくなれば核生成速度がそれぞれ10倍程度上がるのではないかとのことである。
ペロブスカイト構造が形成される時点での厳密な格子定数を直接測定するのはHFガスが発生するTFA−MOD法では難しいと思われる。推測ではあるが、Lu、Yb、TmがYサイトに来た場合の格子ミスマッチは4%、3%、2%と思われる。LuからYbで核生成速度は約10倍、Tmへは100倍程度と思われる。
核生成速度の調整は主にTmをベースにErやYbを加えて行う。Tmで核生成速度が早ければ部分的にYbを混合し、速度が足りなければErを混合する。これにより30Kで特性が高い超電導体が得られる。しかもCARP領域以外はMAで構成されるため内部迂回電流による電圧の乱れは小さい。また、CARPが小さく形成されても内部迂回電流のノイズは小さい。
内部迂回電流による電圧の乱れであるが、BZO人工ピンでは巨大な電圧の乱れが確認されている。Ybで作ったCARP、すなわちYb−CARPではその電圧ノイズは1/300程度しかない。この小さな電圧ノイズは、超電導電流が一定距離移動後にどれだけ進行方向からずれた位置に移動させられるかによると思われる。電流の進行方向と垂直な方向にどれだけ移動させられたかの比率に関連すると思われる。
表1で計算結果が示された通り、Rvp=8%でのIb=0.020%でしかない。しかもこの値は人工ピンを球と仮定した場合の半径Rに依存しない値である。つまり理論的にCARPはピンサイズが小さくなっても内部迂回電流が増えない、ノイズを増やさない人工ピンだと思われる。
上記の計算から、CAに少なくともTmやErを含んだものを作り、MAがYであればクラスター化により30Kでの特性改善が期待できる。そして、そのCARPが含まれた超電導線材は理論的に大きな電圧ノイズが発生しない。この新しい構造のCARP入り超電導線材を用いてコイルを作れば、クエンチしにくい超電導コイルができる。
(第3の実施形態)
本実施形態の超電導コイルは、超電導線材を備える。超電導線材は、酸化物超電導層を有する。酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有する。上記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第2の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第3の元素を含む。
本実施形態の超電導コイルは、酸化物超電導層30が、第1の実施形態のSA(Supporting Atom)を含まない点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
本実施形態の酸化物超電導層30は、第3世代型のクラスター化原子置換型人工ピン(3rd−CARP)を含む。
本実施形態の酸化物超電導層30は、PA、MA、CAからなる。第1の元素がPA(Pinning Atom)、第2の元素がMA(Matrix Atom)、第3の元素をCA(Counter Atom)である。
MAの平均サイズを調整し、直接PAとCAのイオン半径平均をMAに近づけることにより、クラスターが形成され人工ピンとなる。
本実施形態の酸化物超電導層30は、超電導ユニットセルであるSAが存在しないため、人工ピンサイトのポテンシャルは完全な非超電導体と同等となる。このため、ピン力は理論上最大となる。
なお、希土類元素の原子数をN(RE)とし、MAである第2の元素の原子数をN(MA)とした場合に、N(MA)/N(RE)≧0.6であることが望ましい。上記範囲を下回ると、超電導ユニットセルの割合が低下し、十分な超電導特性が得られないおそれがある。
また、第2の元素の原子数をN(MA)とし、MAである第2の元素に含まれるイットリウムの原子数をN(Y)とした場合に、N(Y)/N(MA)≧0.5であることが望ましい。イットリウム(Y)は材料が比較的安価であるため、酸化物超電導体のコストを低減することが可能となる。
また、希土類元素の原子数をN(RE)とし、PAである第1の元素の原子数をN(PA)とした場合に、0.00000001≦N(PA)/N(RE)であることが望ましい。上記範囲を下回ると、十分な磁場特性改善効果が得られないおそれがある。
また、希土類元素の原子数をN(RE)とし、PAである第1の元素の原子数をN(PA)とした場合に、N(PA)/N(RE)≦0.2であることが望ましい。また、N(PA)/N(RE)≦0.1であることがより望ましい。上記範囲を上回ると、超電導ユニットセルの割合が低下し、十分な超電導特性が得られないおそれがある。
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態同様、クエンチ焼損事故の抑制が可能な超電導コイルが実現できる。また、磁場特性が向上し、かつ、安定した磁場の発生が可能な超電導コイルが実現できる。
(第4の実施形態)
本実施形態の超電導機器は、第1の実施形態又は第2の実施形態の超電導コイルを備えた超電導機器である。以下、第1の実施形態、第2の実施形態、又は第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
図18は、本実施形態の超電導機器のブロック図である。本実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器200である。
重粒子線治療器200は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、照射系56、制御系58を備える。
入射系50は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器52に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系50は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
シンクロトロン加速器52は、入射系50から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器52に、第1の実施形態又は第2の実施形態の超電導コイル100が用いられる。
ビーム輸送系54は、シンクロトロン加速器52から入射された炭素イオンビームを照射系56まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系54は、例えば、偏向電磁石を有する。
照射系56は、ビーム輸送系54から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系56は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第1の実施形態又は第2の実施形態の超電導コイル100が用いられる。
制御系58は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、及び、照射系56の制御を行う。制御系58は、例えば、コンピュータである。
本実施形態の重粒子線治療器200は、シンクロトロン加速器52及び回転ガントリーに、第1の実施形態又は第2の実施形態の超電導コイル100が用いられる。したがって、クエンチ焼損事故が抑制され高い信頼性が実現される。また、超電導コイル100は、安定した磁場の発生が可能あるため、精度の高いイオンビームの患部への照射が実現可能である。
以下、実施例について説明する。
以下の実施例においては多数の金属酢酸塩を混合して溶液やペロブスカイト構造の超電導体を作成している。ペロブスカイト構造のY系超電導体は、Yサイト(希土類サイト)にY又はランタノイド族の元素が入り、その他はBaとCuである。その比率は1:2:3となる。そのためYサイトに用いられる金属元素に着目し、次のように記載する。
Yサイトの元素には4種類の元素(一部は3種類の元素)が以下の実施例では用いられる。人工ピンを作り出すPA、それを補助するSA。マトリックス相となるMA。最後にイオン半径が小さく、クラスターを形成するのに必要なCAである。PAはPrしかない。SAはNd、Sm、Eu、Gdを用いることができる。MAはTb、Dy、Ho、Yを用いることができる。CAにはEr、Tm、Yb、Luを用いることができる。なお3rd−CARPとしてGdはMAの一部として用いることも可能である。
大部分の実施例においてはモル数(原子数)でPA=SAとなり、かつPA+SA=CAとなる。全体からPA+SA+CAを除いた量はMAに等しい。PA+SA+MA+CA=100%である。例えば、4%Pr(PA)、4%Sm(SA)、84%Y(MA)、8%Lu(CA)という混合比があったとする。それを本明細書では4%Pr4%Sm−Y−8%Luと記載する。ただしクラスター部の大元素と小元素の数が同じ量である、PA+SA=CAの場合、CAの量は省略して記載するものとし、4%Pr4%Sm−Y−Luと記載する。更にPA=SAの場合で、かつSAが1種類の場合はその量も省略するものとする。すなわち、上記の場合、4%PrSm−Y−Luと記載することとする。この記載は4%Pr4%Sm−84%Y−8%Luを示している。
元素はランタノイド族の原子番号が小さいものから記載し、PA、SA、MA、CAの順で記載する。MAでYを使う場合、Yは最後に記載する。PA+SA、MA、CAはバーでつなぐ。すなわち4%Pr4%Sm−Y−Luと記載する。SAが無いものも存在するが、その場合でPA+SA=CAである時にも、CAの量は省略できる。例えば、4%Pr−Y−4%Luの場合、4%Pr−Y−Luと記載する。
(比較例1)
比較例1として、TFA−MOD法で製造されたDy人工ピンを有する超電導線材を評価した。超電導線材部分は幅4mmであり、膜厚は約2μmと推定される。その超電導線材を3cmに切断し、両端部に電流端子を付けた。また、超電導線材の内側に1cm間隔で2個の電圧端子を取り付けた。試料は冷凍機冷却の装置中に設置し、磁場を印加して電流電圧測定(IV測定)を行い、IBC間接測定法によりV(IBC)やIf(IBC)を求めた。
測定は、温度50Kで磁場1T〜15T、温度30Kで5T〜15Tの条件で行った。
V(IBC)とIf(IBC)の測定結果を表2に示す。なお、バックグラウンドのノイズ(delta VBG)は観測結果から0.20μVとした。
図19、図20、図21、図22、図23、図24は、比較例1の電流電圧特性を示すグラフである。図19、図20、図21、図22は、温度50Kの測定、図23、図24は、温度30Kの測定である。黒丸がIc値に達したとみなしたデータポイントである。
図19、図20、図21、図22のグラフからわかるようにV(IBC)が低い安定した結果であった。ただし、表2から見ると、If(IBC)は、磁場の上昇と共に数値が上がる、すなわち悪化していることがわかる。
50K・5TではIf(IBC)=0.004で極めてゼロに近い安定した結果である。しかし、その数値は磁場強度と共に増え、12.5Tでは暫定的な境界値である0.020を超えた0.031となっている。逆に言えば、10Tまでは0.019以下であり、境界値以下であることがわかる。
30KのIf(IBC)の測定結果は、50Kとほぼ同じ結果であった。15Tでは多少改善して見えるものの、他は、ほば同じといって良い結果であった。30Kで大幅に改善することがないこともわかった。
図23、図24の電流電圧特性の測定結果は、Ic値で補正していないために変化があるようにも見えるが、If(IBC)の値をとれば、あまり変化がないことがわかった。IBCの影響は、高温でより顕著に見られるとも考えられたが、50Kと30Kでは、差が確認されなかった。
(比較例2)
比較例2として、比較例1のDy人工ピンを有する超電導線材にかえて、物理蒸着法で製造されたBZO人工ピンを有する超電導線材を評価した。超電導線材部分は幅4mmであり、膜厚は約1μmと推定される。その超電導線材を3cmに切断し、両端部に電流端子を付けた。また、超電導線材の内側に1cm間隔で2個の電圧端子を取り付けた。試料は冷凍機冷却の装置中に設置し、磁場を印加してIV測定を行い、比較例1と同様、V(IBC)やIf(IBC)を求めた。
測定は、温度50Kで磁場1T〜15Tの条件で行った。
V(IBC)とIf(IBC)の測定結果を表2に示す。図25、図26、図27、図28は、比較例2の電流電圧特性を示すグラフである。黒丸がIc値に達したとみなしたデータポイントである。
図25、図26、図27、図28のグラフから明らかように、50Kでは2Tから明らかに電圧の乱れであるV(IBC)が観測される。表2で見たIf(IBC)も暫定境界値とする0.020を下回るのは1Tの0.013のみで、2T以上では大きく数値が悪化していた。そして50K・5Tでは0.361と、ほぼバックグラウンドのノイズに近かった比較例1の100倍近い大きな数値となっていた。
比較例2の超電導線材は磁場強度の増加と共にIf(IBC)は増加し続け、12.5Tでは3.08に達している。IBCの影響によりコイルがクエンチ焼損事故を発生している可能性が、この測定結果からも間接的にうかがい知ることができる。
比較例2の超電導線材でも、少なくとも30KでIf(IBC)が劇的に改善するとは思われず、If(IBC)は30Kでも0.020を大きく超えたままである可能性が高い。このことがクエンチ焼損事故につながっているのではないかと推測される。
比較例1の超電導線材が限流器で成功していることを考慮すれば、If(IBC)≦0.020の超電導線材を作れば、IBCの影響を抑制でき、製品として成功しうる可能性が有る。これは、言い換えれば、Tc=90.7Kの超電導体を作り、そのTcを維持しながら人工ピンを内部に形成することと同じ意味でもある。
IBCの影響を抑制した材料を開発しても、それを長尺線材化して実際にコイル化し、実測してIc値近くまで電流を流せるまで4〜5年はかかるとみられる。しかしながらIf(IBC)の数値が、比較例1の超電導線材並みであり、かつ、人工ピンとしての機能を果たす材料であれば、コイルのクエンチ焼損事故を防ぎながら安定的なシステムができると考えられる。
(実施例1)
まず、図6に示されるフローチャートに従い、2種類の超電導体用コーティング溶液を合成及び精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Lu(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.01:0.01:0.96:0.02:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質1Mi−1%PrSm−Y−Lu(実施例1で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
同様に金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Lu(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの各水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.02:0.92:0.04:2:3、及び0.04:0.04:0.84:0.08:2:3でイオン交換水中に溶解したものを準備し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質1Mi−2%PrSm−Y−Lu、1Mi−4%PrSm−Y−Luを得た。
得られた半透明青色の物質1Mi−1%PrSm−Y−Lu、1Mi−2%PrSm−Y−Lu、1Mi−4%PrSm−Y−Lu中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質1Mi−1%PrSm−Y−Lu、1Mi−2%PrSm−Y−Lu、1Mi−4%PrSm−Y−Luをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応及び精製を12時間行うと半透明青色の物質1M−1%PrSm−Y−Lu(実施例1で説明する物質、Y−based Material without impurity)、1M−2%PrSm−Y−Lu、1M−4%PrSm−Y−Luがそれぞれ得られた。
半透明青色の物質1M−1%PrSm−Y−Lu、1M−2%PrSm−Y−Lu、1M−4%PrSm−Y−Luをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液1Cs―1%PrSm−Y−Lu(実施例1、Coating Solution for Y−based superconductor)、1Cs―4%PrSm−Y−Luをそれぞれ得た。コーティング溶液1Cs―1%PrSm−Y−Lu、1Cs―2%PrSm−Y−Lu、1Cs―4%PrSm−Y−Luを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行った。
次に、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行った。次に、図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行った。超電導膜1FS−1%PrSm−Y−Lu(実施例1、Y−based Film of Superconductor)、1FS−2%PrSm−Y−Lu、1FS−4%PrSm−Y−Luをそれぞれ得た。
超電導膜1FS−1%PrSm−Y−Lu、1FS−4%PrSm−Y−LuをそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定し、結果を図4、図5に示す。図4、図5からYBCO(00n)ピークとほぼ同じ位置に1本だけピークが得られることが確認された。また良好なピーク強度も確認されており、添加した希土類元素が分離することなく連続したペロブスカイト構造を形成している証拠の一つでもある。
次に超電導膜1FS−2%PrSm−Y−Luの高倍率TEM観察結果を図3に示す。図3からわかるように、連続したペロブスカイト構造が全体に維持された構造が示されている。格子定数はYBCOとほぼ同じであるため、Pr、Sm、Luが希土類サイトに組み込まれて連続したペロブスカイト構造を形成していることが確認できる結果である。
図3はHAADF−STEM像であり、原子量が大きいと明るく光る。3列の規則正しい水平方向の模様は、明るい2列がBaであり、残りが希土類である。実線枠枠内は両端の明るいBaに比べ中央部が明るく、破線部枠内では暗い。このことは、実線枠内部でPr、Sm、Luが集合化しているクラスターが形成されていることを示している。
超電導膜1FS−1%PrSm−Y−Lu、1FS−4%PrSm−Y−Luをそれぞれ液体窒素中に設置し、誘導法により自己磁場下での超電導特性を測定すると、Jc値はそれぞれ6.3、6.2MA/cm(77K,0T)であった。このJc値は比較的良好である。PrBCOが究極分散したことによる5倍劣化現象は、上記の試料では特に後者の1FS−4%PrSm−Y−LuでJc値が20%低下していれば確認できるはずであるが、確認されなかった。原子置換型人工ピンがクラスター化して集合化し、ところどころに集積している結果を示していると考えられる。
超電導膜1FS−1%PrSm−Y−Lu、1FS−2%PrSm−Y−Lu、1FS−4%PrSm−Y−Luをそれぞれ、77Kで1〜5Tの磁場中でJc値を測定した結果を図11に示す。図の横軸は磁場で単位はT、縦軸はJc値で対数軸である。
いずれの試料でも1TではYBCO以下のJc値であるが、3Tでほぼ同等の値となり、5Tで改善していることがわかる。CARPで磁場特性が改善したことを示している。
FS−4%PrSm−Y−Luについて、IBCの影響を調べるために50Kで1〜15T、30Kでは5〜15TでJc−B−T測定を行った。その結果を表2、並びに、図29、図20、図31、図32、図33、図34に示す。図29、図30、図31、図32、図33、図34中、黒丸がIc値に達したとみなしたデータポイントである。
図29、図30、図31、図32は、50KでのV(IBC)を調べた結果である。電圧の揺れは、15Tまでほとんど確認されない。試料は220nm厚しかないため、その影響を補正するためにIf(IBC)を調べてまとめた結果が表2である。表2からわかるのは、If(IBC)≦0.020となるのは50Kでは10Tまでである。これは比較例1の超電導線材とほぼ同じ結果である。
比較例1の超電導線材とほぼ同じ結果となったのは、MAであるYBCO超電導体がTc=90.7Kを維持してIBCの影響が少なかったからと思われる。しかも、実施例1の超電導体では人工ピンの効果を示すJc−B測定において、磁場特性が改善している結果も示されている。この実験結果は、IBCの影響を避けながら磁場特性の向上が実現できたことを示している。
図33、図34は、30KでのV(IBC)を調べた結果である。図33、図34の結果が示すのは、電圧の揺れが少なく安定した結果である。電流値の影響を補正したIf(IBC)を比較すると表2から、30Kにおいては10TまでIf(IBC)≦0.020であることが分かった。比較例1の超電導線材と同様に安定しているのは、比較例1と同じような構造を有し、90.7KのTc値が得られているためと思われる。
CARPはDy人工ピンと比較してもIBCの影響が同等か、より影響力が少ないと思われる構造である。なおかつ、Dy人工ピンは、磁場特性の向上効果が無いが、CARPでは磁場特性の向上効果がある。そして、CARPを有する超電導線材をコイル化し、超電導機器に搭載すれば、安定した動作が期待でき、クエンチ焼損事故の可能性が大幅に低減できると考えられる。
Y系超電導線材でこれまでCARPは実現してこなかった。それは、PrBCOとYBCOの焼成条件があまりに異なるためである。最適酸素分圧はそれぞれ1ppmと1000ppmであり、物理蒸着法では確実に片方が分解する条件である。またバルク体の超電導体作成でも同一のペロブスカイト構造を共有してCARPの構造を実現することは困難である。片方が成膜する条件は、もう片方が分解する条件であるからである。
TFA−MOD法でも、CARPの構造を作るのは簡単ではない。溶液中に不純物が少しでも存在すれば、本焼時に片方の物質の成膜条件で成膜したときにもう片方の物質が分解してしまうためである。加えて、人工ピンのサイズ調整にはクラスター化現象を使うことが望ましい。意図的にYBCOにPrBCOとLuBCOなどを混合したり、サポート元素としてSmBCOを混合したりした例は無い。量産性と実績のあるTFA−MOD法で初めて磁場特性を有するCARPが導入され、かつ、If(IBC)が低くクエンチ焼損事故の可能性が低い超電導体が形成されたと考えられる。
(実施例2)
まず、図6に示されるフローチャートに従い、2種類の超電導体用コーティング溶液を合成及び精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Tm(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.01:0.01:0.96:0.02:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質2Mi−1%PrSm−Y−Tm(実施例2で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
同様に金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Yb(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.01:0.01:0.84:0.02:2:3でイオン交換水中に溶解したものを準備し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質2Mi−1%PrSm−Y−Ybを得た。
得られた半透明青色の物質2Mi−1%PrSm−Y−Tm、2Mi−1%PrSm−Y−Yb中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質2Mi−1%PrSm−Y−Tm、2Mi−1%PrSm−Y−Ybをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応及び精製を12時間行うと半透明青色の物質2M−1%PrSm−Y−Tm(実施例2で説明する物質、Y−based Material without impurity)、2M−1%PrSm−Y−Ybがそれぞれ得られた。
半透明青色の物質2M−1%PrSm−Y−Tm、2M−1%PrSm−Y−Ybをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液2Cs―1%PrSm−Y−Tm(実施例2、Coating Solution for Y−based superconductor)、2Cs―1%PrSm−Y−Ybをそれぞれ得た。コーティング溶液2Cs―1%PrSm−Y−Tm、2Cs―1%PrSm−Y−Ybを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行った。
次に、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行った。図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行った。超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tm(実施例2、Y−based Film of Superconductor)、2FS−1%PrSm−Y−Ybをそれぞれ得た。
超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tm、2FS−1%PrSm−Y−YbをそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定し、YBCO(00n)ピークとほぼ同じ位置に1本だけピークが得られることが確認された。また良好なピーク強度も確認されており、添加した希土類元素が分離することなく連続したペロブスカイト構造を形成していると考えられる。
超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tm、2FS−1%PrSm−Y−Ybをそれぞれ液体窒素中に設置し、誘導法により自己磁場下での超電導特性を測定すると、Jc値はそれぞれ6.1、6.0MA/cm(77K,0T)であった。このJc値は比較的良好なJc値であると考えられる。PrBCOが究極分散したことによる5倍劣化現象は、上記の試料では5%低下に相当するため確認は難しい。しかし、後述する磁場特性を見るとクラスター化が起きているものと考えられる。
超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tm、2FS−1%PrSm−Y−Ybをそれぞれ、60Kで1〜5Tの磁場中でJc値を測定し、60KにおいてJc値の改善が確認できている。
超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tmについて、IBCの影響を調べるために50Kで1〜15T、30Kでは5〜15TでJc−B−T測定を行った。超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Tmは50K、30K共に、7T以下でIf(IBC)≦0.20が満たされる結果が得られた。超電導膜2FS−1%PrSm−Y−Ybは8T以下でIf(IBC)≦0.20が満たされる結果が得られた。
CAがLuの場合と効果のでる磁場強度域が少し異なるものの、IBCの影響を避けながら人工ピンとしての磁場特性向上効果が確認できた。特にLuにTmやYbを用いると核生成頻度が高くなり、より低温で磁場特性向上効果があることが実験結果からわかっている。
また、IBCの影響も少ないことからこれらの超電導線材をコイルとしてシステムに組み込むと、クエンチ焼損事故が生じにくい安定した超電導応用システムを作り上げることができると考えられる。IBCの影響が少ないコイルでは、磁場の安定性も優れると見られ、高い磁場精度が要求されるシステムへの応用にも有利である。
CAサイトがLuからTmやYbに代わっても、CARPの効果が維持され、クエンチ焼損事故が生じしにくいコイルが形成されるであろうことが分かった。
(実施例3)
まず、図6に示されるフローチャートに従い、超電導体用コーティング溶液を合成及び精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Gd(OCOCH、Y(OCOCH、Tm(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.48:0.48:0.02:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質3Mi−2%Pr−GdY−Tm(実施例3で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
得られた半透明青色の物質3Mi−2%Pr−GdY−Tm中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質3Mi−2%Pr−GdY−Tmをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応及び精製を12時間行うと半透明青色の物質3M−2%Pr−GdY−Tm(実施例3で説明する物質、Y−based Material without impurity)がそれぞれ得られた。
半透明青色の物質3M−2%Pr−GdY−Tmをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液3Cs―2%Pr−GdY−Tm(実施例3、Coating Solution for Y−based superconductor)をそれぞれ得た。コーティング溶液3Cs―2%Pr−GdY−Tmを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行った。
次に、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行った。次に、図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行った。超電導膜3FS−2%Pr−GdY−Tm(実施例3、Y−based Film of Superconductor)をそれぞれ得た。
超電導膜3FS−2%Pr−GdY−TmをXRD測定の2θ/ω法で測定し、YBCO(00n)ピークからやや低角側に1本だけピークが得られることが確認された。また良好なピーク強度も確認されており、添加した希土類元素が分離することなく連続したペロブスカイト構造を形成していると考えられる。
超電導膜3FS−2%Pr−GdY−Tmをそれぞれ液体窒素中に設置し、誘導法により自己磁場下での超電導特性を測定すると、Jc値はそれぞれ5.7MA/cm(77K,0T)であった。このJc値は比較的良好なJc値である。PrBCOが究極分散したことによる5倍劣化現象は、上記の試料では10%低下に相当するが、そこまでのJc低下は見られない。CARPが形成されているものと思われる。
超電導膜3FS−2%Pr−GdY−Tmをそれぞれ、77Kで1、5Tの磁場中でJc値を測定し、77KにおいてJc値が1.3倍となる改善効果が確認できている。
超電導膜3FS−2%Pr−GdY−Tmについて、IBCの影響を調べるために50Kで1〜15T、30Kでは5〜15TでJc−B−T測定を行った。超電導膜3FS−2%Pr−GdY−Tmは50Kでは6T以下で、30Kでは7T以下でIf(IBC)≦0.020が満たされる結果が得られた。
実施例3は、MAがGdとYで構成される形であり、第2の実施形態で説明した3rd−CARPと呼ばれる人工ピンである。人工ピン力は期待されたほどは得られていないため、条件が不足している可能性が有るものの、クエンチ焼損事故を起こしにくい超電導体が形成できたと思われる。これをコイルに組込み、またそのコイルを超電導機器に組み込むことにより、クエンチ焼損事故が生じにくく、磁場の乱れが少ない超電導応用機器システムが構築できると考えられる。
(実施例4)
まず、図6に示されるフローチャートに従い、超電導体用コーティング溶液を合成及び精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Yb(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.10:0.10:0.60:0.20:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合及び攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応及び精製を12時間行った。半透明青色の物質4Mi−10%PrSm−Y−Yb(実施例4で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
得られた半透明青色の物質4Mi−10%PrSm−Y−Yb中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質4Mi−10%PrSm−Y−Ybをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応及び精製を12時間行うと半透明青色の物質4M−10%PrSm−Y−Yb(実施例4で説明する物質、Y−based Material without impurity)がそれぞれ得られた。
半透明青色の物質4M−10%PrSm−Y−Ybをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液4Cs―10%PrSm−Y−Yb(実施例4、Coating Solution for Y−based superconductor)をそれぞれ得た。
同様にYBCO用コーティング溶液4Cs−Yを調製し、4Cs―10%PrSm−Y−Ybと希釈混合により次の溶液を調製した。4Cs―1%PrSm−Y−Yb、4Cs―1000ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―100ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―10ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―1ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―100ppbPrSm−Y−Yb、4Cs―10ppbPrSm−Y−Yb、4Cs―1ppbPrSm−Y−Ybを得た。
コーティング溶液4Cs―10%PrSm−Y−Yb、4Cs―1%PrSm−Y−Yb、4Cs―1000ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―100ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―10ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―1ppmPrSm−Y−Yb、4Cs―100ppbPrSm−Y−Yb、4Cs―10ppbPrSm−Y−Yb、4Cs―1ppbPrSm−Y−Ybを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行った。
次に、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行った。次に、図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行った。超電導膜4FS−10%PrSm−Y−Yb(実施例4、Y−based Film of Superconductor)、4FS―1%PrSm−Y−Yb、4FS―1000ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppmPrSm−Y−Yb、4FS―10ppmPrSm−Y−Yb、4FS―1ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppbPrSm−Y−Yb、4FS―10ppbPrSm−Y−Yb、4FS―1ppbPrSm−Y−Ybをそれぞれ得た。
超電導膜4FS−10%PrSm−Y−Yb、4FS―1%PrSm−Y−Yb、4FS―1000ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppmPrSm−Y−Yb、4FS―10ppmPrSm−Y−Yb、4FS―1ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppbPrSm−Y−Yb、4FS―10ppbPrSm−Y−Yb、4FS―1ppbPrSm−Y−YbをXRD測定の2θ/ω法で測定した。全ての試料においてYBCO(00n)ピークとほぼ同じ位置にそれぞれ1本ずつピークが得られることが確認された。また、良好なピーク強度も確認されており、添加した希土類元素が分離することなく連続したペロブスカイト構造を形成していると思われる。
超電導膜4FS−10%PrSm−Y−Yb、4FS―1%PrSm−Y−Yb、4FS―1000ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppmPrSm−Y−Yb、4FS―10ppmPrSm−Y−Yb、4FS―1ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppbPrSm−Y−Yb、4FS―10ppbPrSm−Y−Yb、4FS―1ppbPrSm−Y−Ybをそれぞれ液体窒素中に設置し、誘導法により自己磁場下での超電導特性を測定した。Jc値はそれぞれ5.5、5.8、6.0、6.1、6.0、6.2、6.0、6.2、6.1MA/cm(77K,0T)であった。全てのJc値は比較的良好な値であると考えられる。PrBCOが究極分散したことによる5倍劣化現象はみられず、CARPが形成されていると考えられる。
超電導膜4FS−10%PrSm−Y−Yb、4FS―1%PrSm−Y−Yb、4FS―1000ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppmPrSm−Y−Yb、4FS―10ppmPrSm−Y−Yb、4FS―1ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppbPrSm−Y−Yb、4FS―10ppbPrSm−Y−Yb、4FS―1ppbPrSm−Y−Ybをそれぞれ、77Kで1、5Tの磁場中でJc値を測定した。77KにおいてJc値が1.3倍まで改善したのは、Pr量が10ppb以上の場合であった。Pr量が1ppbの時はほぼ1倍で効果が認められなかった。
超電導膜4FS−10%PrSm−Y−Yb、4FS―1%PrSm−Y−Yb、4FS―1000ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppmPrSm−Y−Yb、4FS―10ppmPrSm−Y−Yb、4FS―1ppmPrSm−Y−Yb、4FS―100ppbPrSm−Y−Yb、4FS―10ppbPrSm−Y−Ybについて、IBCの影響を調べるために50Kで1〜15T、30Kでは5〜15TでJc−B−T測定を行った。全ての試料において、50K及び30Kにおいて、10T以下でIf(IBC)≦0.020が確認できた。クラスター量が少なくなる場合においては、IBCの影響が起きないことを示す結果であると思われる。
実施例4の人工ピンは2nd−CARPであるが、クラスター化してIBCの影響力が低減できている。実施例4の超電導体を用いて形成したコイルはクエンチ焼損事故が生じにくく、磁場の安定性に優れている。したがって、クエンチ焼損事故が生じにくく、磁場の安定性に優れ超電導機器ができると考えられる。
(実施例5)
図6に示されるフローチャートに従い、超電導体用コーティング溶液を合成および精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Tm(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.02:0.92:0.04:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合および攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行った。半透明青色の物質5Mi−2%PrSm−Y−Tm(実施例5で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
同様に金属酢酸塩にPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Tm(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの各水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.01:0.01:0.96:0.02:2:3でイオン交換水中に溶解したものを準備し、反応等モル量のCFCOOHと混合および攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行った。半透明青色の物質5Mi−1%PrSm−Y−Tmを得た。
得られた半透明青色の物質5Mi−2%PrSm−Y−Tm、5Mi−1%PrSm−Y−Tm中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質5Mi−2%PrSm−Y−Tm、5Mi−1%PrSm−Y−Tmをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色の物質5M−2%PrSm−Y−Tm(実施例5で説明する物質、Y−based Material without impurity)、5M−1%PrSm−Y−Tmがそれぞれ得られた。
半透明青色の物質5M−2%PrSm−Y−Tm、5M−1%PrSm−Y−Tmをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液5Cs―2%PrSm−Y−Tm(実施例5、Coating Solution for Y−based superconductor)、5Cs―1%PrSm−Y−Tmをそれぞれ得た。
コーティング溶液5Cs―2%PrSm−Y−Tm、5Cs―1%PrSm−Y−Tmを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行い、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行い、図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行い、超電導膜5FS−2%PrSm−Y−Tm(実施例5、Y−based Film of Superconductor)、5FS−1%PrSm−Y−Tmをそれぞれ得た。
超電導膜5FS−2%PrSm−Y−Tm、5FS−1%PrSm−Y−TmをそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定し、YBCO(00n)ピークとほぼ同じ位置にピークが得られることが確認された。
超電導膜5FS−2%PrSm−Y−Tm、5FS−1%PrSm−Y−TmのそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定した。BaCu系複合酸化物の小さな異相が見られるものの、ほぼYBCO(00n)の単一ピークと同じピークが得られた。それぞれのピークは分離せずに1本であった。2θ=46.68度のYBCO(006)ピークからもピークは分離せずに1本で明らかであった。
ピークの強度は十分に強い強度であり、すべての材料がペロブスカイト構造を形成していると推定される。つまり、この系においてYBCOのペロブスカイト構造に、PrBCO、SmBCO、TmBCOが組み込まれていることを示す。
超電導膜5FS−2%PrSm−Y−Tmおよび5FS−1%PrSm−Y−Tmを30K、1〜5Tで、Jc測定を行った結果を図16に示す。図16の上側のデータ(丸印)が当該サンプルである。図16にはCARPを含まないYBCOの測定結果も併せてバツ印と破線で示す。
超電導膜5FS−2%PrSm−Y−TmのCARPは8%である。その分だけ30K・5T近辺では特性が低下することを予想されるが、図16の結果を見てわかるようにYBCOよりも遥かに高いJc値が得られている。YbおよびTmのYに対する格子ミスマッチの本焼時800℃での詳細データは不明ではあるが、それぞれ約3%と約2%ではないかと思われる。この格子ミスマッチ差では、Tmの方がYbよりも約10倍核生成頻度が大きい、あるいは核生成速度が速い可能性がある。
核生成速度が約10倍早ければ、単位体積内のCARP数も約10倍となることをCARP形成モデルが示している。CARPサイズはその3乗根の逆数に比例するため、CARP半径は0.46倍と思われる。Yb過剰型のCARPで効果が見えかけていた状況で、Tmを用いてCARPが一気に小さくなったため、量子磁束がCARPに容易に捕捉されるようになり効果が表れたものと考えられる。
その効果を確認するため、CARP量を半分とした超電導膜5FS−1%PrSm−Y−Tmの磁場中測定結果を併せて図16に示す。図の白丸のデータである。この超電導膜中のCARPは理論的にはサイズが同じで数が半分である。結果もほぼ半分程度ではないかという結果が得られている。厳密な議論をすると、CARPの障害物としての低下量と、5FS−2%PrSm−Y−Tmの中間値と思われるが、その差異は実験誤差に埋もれてわからないと思われる。
この結果からわかるように、CARPはCAにTmやそれよりもMAに近い元素を用いると効果を発揮することが理論的にわかる。それはCARPサイズが、CARP形成モデルで説明がつくからである。核生成頻度とそこに存在する物質量でCARPサイズが決まるため、核生成頻度が大きなMAやCAの組み合わせで効果を発揮するのである。
これまでの実験から、MAに用いることができる物質は単体ではYか、Gdである。しかし混合すれば溶液となることが解っている。これに対するCAはErやTmが良く、一部Ybを加えてサイズを調整することも考えられる。もちろんErよりも原子番号が小さい元素を一部混合して調整することも可能である。この組み合わせで特に実用上重要と思われる30Kでの特性改善が見られている。
以上のように、CARP形成モデルを応用し、30Kで特性が改善する人工ピンが特に形成しやすい組み合わせが判明した。それには主としてCAにErやTmを用いる超電導体であり、MAにはYなどを用いる場合である。またこのモデルに合致した組み合わせであれば効果を発揮すると考えられ、特に30Kでの効果発揮には上記の組み合わせがいいようである。
上記のCARPは別に特徴があり、超電導体のTcが低下しない。また内部迂回電流もほとんど発生しないことが実験データからわかっている。
図34、図35、図36、図37、図38、図39、図40は、実施例5の電流電圧特性を示すグラフである。超電導膜5FS−2%PrSm−Y−TmのJc−B−T測定時の結果を示す。図からわかるようにIV測定時のノイズは極めて低レベルであることが解る。
表2の下側に実施例5のデータを掲載してある。なお50Kのデータは1〜5Tしか測定していない。50Kのデータは全て実験誤差範囲内でゼロとなっている。また30Kも15Tで少し値が大きくなっている以外はほとんどゼロに近い結果である。この結果はCARPの内部迂回電流による電圧が理論的に発生しないというモデルからの推測とも合致している。さらに、この結果はCARPピンサイズが小さくなっても内部迂回電流による電圧がピンサイズに依存しないという理論とも合致する。過去に例が無い人工ピンであることがデータからも裏付けられる。
(実施例6)
図6に示されるフローチャートに従い、超電導体用コーティング溶液を合成および精製する。金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Er(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.02:0.92:0.04:2:3でイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCFCOOHと混合および攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行った。半透明青色の物質6Mi−2%PrSm−Y−Er(実施例6で説明する物質、Y−based Material with impurity)を得た。
同様に金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Tm(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.02:0.92:0.04:2:3でイオン交換水中に溶解したものを準備し、反応等モル量のCFCOOHと混合および攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行った。半透明青色の物質6Mi−2%PrSm−Y−Tmを得た。
更に同様に金属酢酸塩であるPr(OCOCH、Sm(OCOCH、Y(OCOCH、Yb(OCOCH、Ba(OCOCH、Cu(OCOCHの水和物の粉末を用い、金属イオンモル比0.02:0.02:0.92:0.04:2:3でイオン交換水中に溶解したものを準備し、反応等モル量のCFCOOHと混合および攪拌を行い、得られた混合溶液をナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行った。半透明青色の物質6Mi−2%PrSm−Y−Ybを得た。
得られた半透明青色の物質6Mi−2%PrSm−Y−Er、6Mi−2%PrSm−Y−Tm、6Mi−2%PrSm−Y−Yb中には、溶液合成時の反応副生成物である水や酢酸が7wt%程度含まれる。
得られた半透明青色の物質6Mi−2%PrSm−Y−Er、6Mi−2%PrSm−Y−Tm、6Mi−2%PrSm−Y−Ybをそれぞれ、その約100倍の重量に相当するメタノール(図6のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色の物質6M−2%PrSm−Y−Er(実施例6で説明する物質、Y−based Material without impurity)、6M−2%PrSm−Y−Tm、6M−2%PrSm−Y−Ybがそれぞれ得られた。
半透明青色の物質6M−2%PrSm−Y−Er、6M−2%PrSm−Y−Tm、6M−2%PrSm−Y−Ybをメタノール(図6のj)中に溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、それぞれ金属イオン換算で1.50mol/lのコーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−Er(実施例6、Coating Solution for Y−based superconductor)、6Cs―2%PrSm−Y−Tm、6Cs―2%PrSm−Y−Ybをそれぞれ得た。
コーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−Erと6Cs―2%PrSm−Y−Tmを、1:9、2:8、3:7で混合し、コーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6Cs―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6Cs―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tmをそれぞれ得た。
コーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−Tmと6Cs―2%PrSm−Y−Ybを、8:2、6:4、4:6で混合し、コーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6Cs―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6Cs―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%Ybをそれぞれ得た。
コーティング溶液6Cs―2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6Cs―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6Cs―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6Cs―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6Cs―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6Cs―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%Ybを用い、スピンコート法を用い最高回転数2000rpmで成膜を行い、図8に示すプロファイルで400℃以下の純酸素雰囲気で仮焼を行い、図9に示すプロファイルで800℃の1000ppm酸素混合アルゴンガス中で本焼を行い、525℃以下の純酸素中でアニールを行い、超電導膜6FS−2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm(実施例6、Y−based Film of Superconductor)、6FS―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6FS―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6FS―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6FS―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6FS―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%Ybをそれぞれ得た。
超電導膜6FS−2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6FS―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6FS―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6FS―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6FS―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6FS―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%YbをそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定し、YBCO(00n)ピークとほぼ同じ位置にピークが得られることが確認された。
超電導膜6FS−2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6FS―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6FS―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6FS―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6FS―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6FS―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%YbをそれぞれXRD測定の2θ/ω法で測定した。BaCu系複合酸化物の小さな異相が見られるものの、ほぼYBCO(00n)の単一ピークと同じピークが得られた。それぞれのピークは分離せずに1本であった。2θ=46.68度のYBCO(006)ピークからもピークは分離せずに1本で明らかであった。
ピークの強度は十分に強い強度であり、すべての材料がペロブスカイト構造を形成していると推定される。つまりこの系においてYBCOのペロブスカイト構造に、PrBCO、SmBCO、ErBCO、TmBCO、YbBCOが組み込まれていることを示す。
超電導膜6FS−2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6FS―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6FS―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6FS―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6FS―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6FS―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%Ybをそれぞれ、30K、5Tで、Jc測定を行った結果(MA/cm)は、順に2.13、2.39、2.60、1.65、1.44、1.21であった。
TmとYbの格子ミスマッチの議論は先ほどのとおりであり、Yb比率が増えるほどにCARPサイズが拡大し、30K・5Tの特性が低下している傾向が強く出ていた。この結果も核生成速度がCARPサイズを決定するという、CARP形成モデルに沿う結果であった。
一方、ErをTmに少量添加した試料は特性が大幅に上昇していた。これもErの核生成速度がTmと比較してかなり早いことを示しており、CARPサイズが縮小していることを示唆している。それにより30K・5Tの特性が改善したものと思われる。
超電導膜6FS−2%PrSm−Y−0.4%Er3.6%Tm、6FS―2%PrSm−Y−0.8%Er3.2%Tm、6FS―2%PrSm−Y−1.2%Er2.8%Tm、6FS―2%PrSm−Y−3.2%Tm0.8%Yb、6FS―2%PrSm−Y−2.4%Tm1.6%Yb、6FS―2%PrSm−Y−1.6%Tm2.4%Ybの30K・5TでのIV測定時のノイズは、BZO人工ピンを導入した物理蒸着法の超電導膜と比較して約1/100〜1/300であった。ほとんどゼロという結果である。
今回、上記実施例において測定した超電導体の内部に形成されたCARPは、それぞれサイズが異なるものの、超電導電流とCARPによる電流迂回の計算からCARP半径であるRに依存せずに迂回することが理論的にわかっている。その結果からすると全ての内部迂回電流による電圧は1/300前後でなければならないはずであるが、1/100程度の電圧も確認できていた。しかしながらこの電圧レベルはおそらくは実用上問題ないと思われる。
PLD法で成膜されたBZO人工ピン入りの超電導膜は、重粒子線がん治療機に応用するコイル試作において、要求磁場精度である5Tでの0.01%に対して実測値は0.1%と10倍も超える数値となってしまっている。これでは正確に患者の患部に粒子線を照射することができない。
しかし、今回開発のCARPピン入り線材でコイルを作った場合、磁場精度は約100倍改善すると見られており、5Tでの精度が0.001%となる可能性が高い。この技術を長尺線材にしてコイルを作るにはあと数年の歳月が必要なため、現時点では形成される磁場精度は不明ながら、内部迂回電流によるノイズ電圧からはおおよそ100倍の改善が図られると見られている。10倍の精度改善は楽に到達し、実用レベルのY系コイルを初めて提供できる技術となる可能性が高い。
実施形態では、超電導機器として重粒子線治療器を例に説明したが、超電導磁気浮上式鉄道車両、核融合炉などの超電導機器に適用することも可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
20 超電導線材
22 基材
24 中間層
30 酸化物超電導層
40 金属層
100 超電導コイル
200 重粒子線治療器

Claims (17)

  1. 酸化物超電導層を有する超電導線材を備える超電導コイルであって、
    前記酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有し、前記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)及びガドリニウム(Gd)の群の少なくとも一種類の第2の元素、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第3の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第4の元素を含む超電導コイル。
  2. 前記第2の元素がネオジウム(Nd)及びサマリウム(Sm)の群の少なくとも一種類であり、前記第3の元素がイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類であり、前記第4の元素がエルビウム(Er)及びツリウム(Tm)の群の少なくとも一種類である請求項1記載の超電導コイル。
  3. 前記第2の元素がサマリウム(Sm)であり、前記第3の元素がイットリウム(Y)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類であり、前記第4の元素がツリウム(Tm)である請求項1又は請求項2記載の超電導コイル。
  4. 前記酸化物超電導層が、2.0×1015atoms/cc以上5.0×1019atoms/cc以下のフッ素(F)と、1.0×1017atoms/cc以上5.0×1020atoms/cc以下の炭素(C)と、を含む請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  5. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第3の元素の原子数をN(MA)とした場合に、N(MA)/N(RE)≧0.6である請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の超電導コイル。
  6. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第1の元素の原子数をN(PA)とした場合に、0.00000001≦N(PA)/N(RE)である請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の超電導コイル。
  7. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第1の元素の原子数をN(PA)とし、前記第2の元素の原子数をN(SA)とした場合に、(N(PA)+N(SA))/N(RE)≦0.2である請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の超電導コイル。
  8. 前記第1の元素の原子数をN(PA)とし、前記第2の元素の原子数をN(SA)、前記第4の元素の原子数をN(CA)とした場合に、0.8×N(CA)≦N(PA)+N(SA)≦1.2×N(CA)である請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の超電導コイル。
  9. 前記超電導線材は、テープ状の基材と、金属層とを更に備え、
    前記酸化物超電導層は、前記基材と前記金属層との間に存在する請求項1ないし請求項8いずれか一項記載の超電導コイル。
  10. 請求項1ないし請求項9いずれか一項記載の超電導コイルを備える超電導機器。
  11. 酸化物超電導層を有する超電導線材を備える超電導コイルであって、
    前記酸化物超電導層は、希土類元素、バリウム(Ba)、及び、銅(Cu)を含む連続したペロブスカイト構造を有し、前記希土類元素は、プラセオジウム(Pr)である第1の元素、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)の群の少なくとも一種類の第2の元素、並びに、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の群の少なくとも一種類の第3の元素を含む超電導コイル。
  12. 前記酸化物超電導層が、2.0×1015atoms/cc以上5.0×1019atoms/cc以下のフッ素と、1.0×1017atoms/cc以上5.0×1020atoms/cc以下の炭素と、を含む請求項11記載の超電導コイル。
  13. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第2の元素の原子数をN(MA)とした場合に、N(MA)/N(RE)≧0.6である請求項11又は請求項12記載の超電導コイル。
  14. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第1の元素の原子数をN(PA)とした場合に、0.00000001≦N(PA)/N(RE)である請求項11ないし請求項13いずれか一項記載の超電導コイル。
  15. 前記希土類元素の原子数をN(RE)とし、前記第1の元素の原子数をN(PA)とした場合に、N(PA)/N(RE)≦0.2である請求項11ないし請求項14いずれか一項記載の超電導コイル。
  16. 前記超電導線材は、テープ状の基材と、金属層とを更に備え、
    前記酸化物超電導層は、前記基材と前記金属層との間に存在する請求項11ないし請求項15いずれか一項記載の超電導コイル。
  17. 請求項11ないし請求項16いずれか一項記載の超電導コイルを備える超電導機器。
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