JP2018041053A - ディスプレイシート - Google Patents

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【課題】明るく透明で、背景の色変化が少なく、かつ投影した映像だけでなく、ディスプレイシートを透過した先の映像情報を重ねて見ることが可能なディスプレイシートを提供する。【解決手段】微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を有するディスプレイシートであって、微粒子酸化亜鉛が機械的に微粉砕された微粒子酸化亜鉛であり、微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が10〜30nmの範囲にあり、かつ二次粒子径が100〜200nmの範囲にあり、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が59.6〜99.4%の範囲にあり、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が68〜88%の範囲にある。【選択図】図3

Description

本発明は、明るく透明で、背景の色変化が少なく、かつ投影した映像だけでなく、ディスプレイシートを透過した先の映像情報を重ねて見ることが可能なディスプレイシートに関する。
以下、本発明の技術的背景について説明する。
ディスプレイには透明導電膜として酸化亜鉛が用いられる場合がある(非特許文献1、特許文献1)。この場合、酸化亜鉛は粒子ではなく、薄膜として存在しているため、光学的には透明である。酸化亜鉛粒子は一次粒子の大きさが小さい方から大きくなるにつれて、レイリー散乱、ミー散乱、回折散乱、幾何散乱領域に入ることが知られている(非特許文献2)。
一次粒子が高度に分散すると、同文献の図−1にあるように、電子顕微鏡で観察して得られる1次粒子の大きさと、電子顕微鏡を含む他の測定方法で測定した粒子径が近くなってくる。もし一次粒子が凝集して二次粒子が生成してくると、光散乱を用いて粒子径を計測した場合、得られる粒子径は一次粒子の値よりも大きくなってくる。二次粒子が成長すれば、一次粒子の大きさとは別に、光学的には、前記散乱の領域が変化する。非特許文献3によれば、酸化亜鉛の場合、1μm前後の一次粒子径でも、ミー散乱の特性が得られている。酸化亜鉛濃度の濃度が高く、厚さが光の波長(可視光ならば、400〜800nm)より厚い塗膜の場合は、粒子の大きさと共に、膜厚も散乱特性に大きく寄与するため、粒子径がより小さくても膜厚が厚い場合は、ミー散乱や多重散乱が生じるようになる。ミー散乱は、後方散乱と前方散乱が主で側方への散乱が弱い特性があり、画像を投影すると異方性が生じ、側方からの視認性に問題が生じるため、一般的なディスプレイではあまり利用されない光学原理であるのに対し、多重散乱や回折散乱は、ディスプレイに多用されている光学原理である。
特許文献2には、塗膜中に1〜10μmの一次粒子径を持つ各種の粒子を固定した場合に、光拡散膜が得られることが示されている。実施例で用いられているアクリルビーズ、ポリスチレンビーズやシリコーンビーズは液晶ディスプレイでも光拡散膜に多用されているものである。同文献では、視線から見て30度下方の方向から映像を投影した場合に、画像と背景の両方が見えることを示しているが、これらの粒子の光拡散性は強いので、照射する角度をより下方の方向に向けていくと、光路にある光拡散性の粒子数が増えるため、画像の乱れが激しくなり、かつ背景の映像もぼやけてくる特性がでる。また、照射する角度が浅いと、人間の位置が若干変化しただけでも、プロジェクターの光が視界に入ってきてしまう問題がある。
特許文献3、4には、一次粒子はナノ粒子を含む粒子であるが、未粉砕の粒子を配合することで、光拡散性に優れた反射フィルムの特性を有する光学フィルムについての開示がある。このように、粒子の存在状態により、得られる光学特性は大きく変化することが判る。
ヘッドアップディスプレイは、車、眼鏡、航空用などに用いられるが、通常の液晶ディスプレイと異なり、視線方向の背景が見えていることが好ましい。市販品を分析すると、基本的には、金属薄膜を薄く蒸着させたハーフミラーを応用したものが多く用いられている。ハーフミラーは可視光領域において分光スペクトルが平らではないため、映像の鮮明性を求めて膜厚を厚くすると、背景の色が変化してしまう問題がある。また、ハーフミラーは基本的に光の反射を利用しているため、光量が減って暗くなる特性をもっている。プロジェクターは光量の調整が可能であるが、背景の光量は変えられないため、どうしても背景が暗く感じられる問題がある。
特開2011−65966号公報 US6804053 B2公報 特開2005−301271号公報 特開2007−102195号公報
三井造船技報 No.194p.1−6(2008−6)映像ディスプレイからみたTFT技術の今後の展望 塗装と塗料‘97・12(No.570)p.27−32超微粒子酸化亜鉛について Ting−Ting Chen等 CrystEngComm,16,p.3341−3347(2014) Size−controlled wurtzite zinc oxide spheres with the characteristics of visible absorption and Mie scattering
本発明は、上記の背景技術に記載するように、明るく透明で、背景の色変化が少なく、かつ投影した映像だけでなく、ディスプレイシートを透過した先の映像情報を重ねて見ることが可能なディスプレイシートを得ることを課題とする。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、下記の事項を発明した。
第1の本発明は、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を有するディスプレイシートにある。
第2の本発明は、微粒子酸化亜鉛が機械的に微粉砕された微粒子酸化亜鉛である上記のディスプレイシートにある。
第3の本発明は、微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が10〜30nmの範囲にあり、かつ二次粒子径が100〜200nmの範囲にある上記のディスプレイシートにある。
第4の本発明は、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が59.6〜99.4%の範囲にあることを特徴とする上記のディスプレイシートにある。
第5の本発明は、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が68〜88%の範囲にあることを特徴とする上記のディスプレイシートにある。
第6の本発明は、微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が5〜100nmである上記のディスプレイシートにある。
第7の本発明は、ディスプレイシートがヘッドアップディスプレイ用途に用いられることを特徴とする上記のディスプレイシートにある。
以上説明するように、本発明のディスプレイシートによれば、明るく透明で、背景の色変化が少なく、かつ投影した映像だけでなく、ディスプレイシートを透過した先の映像情報を重ねて見ることが可能なディスプレイシートを得ることが可能となること、さらに映像を視線方向に対して直交するような大きな角度で照射できるという効果を奏することができる。
本発明のディスプレイシートを用いる際の構成の例 本発明のディスプレイシートを用いる際の構成の例(側面図) 微粒子酸化亜鉛塗工ガラスの分光透過率曲線 微粒子酸化チタン塗工ガラスの分光透過率曲線 微粒子酸化亜鉛濃度7.6%、ディスプレイシートの角度30°の場合の映像投影時のディスプレイシートの様子を撮影した写真の例 ディスプレイシートにやや下方から映像を投影した時のディスプレイシートの様子を撮影した写真の例 酸化亜鉛濃度7.6%および0.8%の場合のディスプレイシートにレーザー光を照射した際の光の散乱の様子を撮影した写真の例 市販製品の分光透過率曲線の例 市販製品の分光透過率曲線の例
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明のディスプレイシートは、それ自体では表示素子を有していない。ここでいうそれ自体では表示素子を有しないとは、液晶やEL素子のように外部からの刺激によって、結晶構造やエネルギー状態が変化する素子を有しないことをいう。
そして本発明は、その表面または内部に微粒子酸化亜鉛を含有する微粒子酸化亜鉛含有光散乱層が固定されていることを特徴とする。本発明のディスプレイシートは2以上の層構造を持ち、具体的には1層以上の微粒子酸化亜鉛含有光散乱層と、可視光領域で透明な硝子、樹脂板や樹脂層からなり、硝子板や樹脂板の表面や、多層構造からなるシート状物の表面または中間層に微粒子酸化亜鉛含有光散乱層が固定されている形状を持つ。本発明のディスプレイシートの微粒子酸化亜鉛含有光散乱層以外の層は、十分に高い透過率で可視光を透過させる層であれば、その材質、厚さ及び形状は限定されない。例えば、合わせガラスの中間樹脂層を微粒子酸化亜鉛含有光散乱層としても良く、ガラスの表面に微粒子酸化亜鉛含有光散乱層をコーティングし、さらにトップコートしたもの等が挙げられる。ディスプレイシートの厚さは100μm〜2mmの範囲にあることが好ましい。100μm未満では、物理的な強度が弱く、実用上の問題があり、2mmを超えると、ディスプレイシートの角度と視線の方向によって、周囲に対して、ディスプレイシート越しの背景がゆがんで見える問題がある。ディスプレイシートが層構造を持つ場合、ディスプレイシートの光学的なゆがみが観察者に認識されない範囲であれば、その層数に限定はない。本発明のディスプレイシートの形状は特に制限はないが、角を丸めた正方形、長方形や台形等の形状が適している。また、可視光を透過する部材の周囲に構造を補強するための支持体が設けてあっても構わない。ディスプレイシートは光を透過させる必要があるため、2以上の層構造を持つシート全体としての光透過性が、波長500nmにおける透過率として40〜80%の範囲にあることが好ましい。そのため、可視光領域において光透過性が低い材料は本発明においては、全体の透明性に影響を与えない範囲内でのみ用いることができる。
(微粒子酸化亜鉛)
微粒子酸化亜鉛の大きさは、一次粒子径が5〜100nmの範囲にあるものを用いることができ、より好ましくは、10〜30nmの範囲にあるものを用いる。一次粒子径が5nm未満では、光の透過性が高く好ましくない。また、一次粒子径が100nmを超えると、光が散乱しやすく、制御が難しくなるため好ましくない。
本発明で用いる微粒子酸化亜鉛で二次粒子が生成している場合は、二次粒子の大きさは100〜200nmの範囲にあることが好ましい。この範囲であると、光の散乱の制御が容易である。市販の微粒子酸化亜鉛は一般的に凝集しており、二次粒子径が1μmを超える大きさを有しているため、本発明では、これを機械的に粉砕したものを使用する必要がある。機械的な粉砕としては、ビーズミルなどの湿式媒体ミルを用いることが好ましい。
また、ペレット化する場合も、微粒子酸化亜鉛はそのまま市販の粉体の状態で投入した場合では、酸化亜鉛は凝集体として粒子径が大きいまま固定されてしまうため、事前に高分散処理したものを用いてペレット化する必要がある。
(微粒子酸化亜鉛含有光散乱層)
シート状物表面及び/又は2枚のシート状物の間に形成する微粒子酸化亜鉛含有光散乱層は、樹脂バインダー中に分散させた状態で塗工又は印刷する方法、反応性の化合物と共に塗工又は印刷した後、反応を生じさせて固化させる方法、樹脂ペレット中に分散させ、これを押出成型してシート状に加工したものを用いる等の方法で形成することができる。
ここで微粒子酸化亜鉛と共に使用される樹脂としてはアクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等の既知の樹脂又は加熱やエネルギー線により硬化してこれらの樹脂となる反応性化合物を使用することができ、同時に、必要に応じて着色剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、屈折率制御剤等の添加剤を含有させることができる。但し、使用時において照射する光の波長に対して、散乱性や吸収性を有しないことが好ましい。
本発明で言う微粒子酸化亜鉛含有光散乱層とは、可視光領域の光を、散乱の方向を制御し、かつ背景の光が観察者に届くように、観察者の視線方向の透明性も確保する機能を有した層のことを示す。従来型の光拡散層では、光はほとんど異方性を持たずに全方位に拡散することから、このような光の方向によって、別々の制御をすることが難しかったが、光拡散ではなく、異方性のある光散乱を用いることにより、制御が可能となっている。また、光散乱剤として、微粒子酸化亜鉛を用いた理由としては、酸化亜鉛の屈折率は1.9〜2.0であり、屈折率2.7程度の酸化チタンと比べて低く、かつ屈折率1.35−1.6で光拡散材に多用されるポリメタクリル酸メチル樹脂、フッ素樹脂やポリスチレン樹脂と比べて屈折率が高いことにある。光は屈折率の変化点でその方向を変えるため、周囲の環境との屈折率差が大きい程強く曲げることができるが、曲げすぎると直接的には不透明になる他、層の表面だけで光が拡散するような状況になる。酸化亜鉛の屈折率は光を適度に散乱させるのに丁度適した領域にあるため、後述する実験結果も併せて酸化亜鉛を選択している。尚、ナノ粒子の場合は、便覧などで報告されている屈折率と比べてもう少し屈折率が小さい可能性があるため、酸化チタンについては、実験により本発明のディスプレイシートに適合性があるか否かを判断し、適合性がないことを確認している。
本発明のディスプレイシートの可視光透過率を分光光度計を用いて計測した場合、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmでの透過率が68〜88%の範囲にあると、直下から映像を投影した場合であっても、明るく透明で、背景の色変化が少なく、かつ投影した映像だけでなく、ディスプレイシートを透過した先の映像情報を重ねて見る条件に適合してくる。ここで、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の500nmにおける透過率が88%以上では、投影した映像がぼやけて視認性が悪くなる問題があり、68%未満では、ディスプレイシートを透過した先の映像情報が投影した映像情報に隠れてしまい、背景の視認性が悪くなる問題がある。また、波長を500nmと定めた理由は、後述するレーザー照射試験により、緑色レーザーの散乱形態を用いると本発明のディスプレイシートの特性が把握しやすいことが分かったため、緑色光の波長である500〜570nmの範囲において、透過率の差がより明確な500nmの波長を選択した。次に、塗工法を用い、塗工液中の固形分40質量%、金属アプリケーターのギャップを25μm、速度5mm/秒の速度の各条件で透明な硝子板に塗工した場合において、上記透過率の条件に入る微粒子酸化亜鉛含有光散乱層中の微粒子酸化亜鉛の濃度を調べたところ4.5〜12.0重量%の範囲が挙げられ、より好ましい範囲としては6.2〜10.0重量%が挙げられた。尚、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の厚さを薄くして、その分微粒子酸化亜鉛の濃度を上げたり、逆に微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の厚さを厚くして、その分、微粒子酸化亜鉛の濃度を下げたりすることが可能であり、基本的には光の透過率で見るべきである。本発明のディスプレイシートでは、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層は、ガラスや樹脂板などの表面や中間に固定されていることが好ましい。ディスプレイシートの微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の厚さとしては、1〜100μmの範囲が好ましいが特に限定されない。
(ディスプレイシートの製造方法)
本発明のディスプレイシートの製造方法としては、ガラス板や樹脂シートの微粒子酸化亜鉛含有光散乱層側の面に、必要に応じてコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の手段による親水性化の処理を行う。このような親水性化の処理は、その後に形成する微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を密着性良く形成させたり、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を形成するための組成物が液状である場合、この組成物を塗布したときに、これを弾くことによって、不均一であったり、抜けがあるような微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を形成してしまうことを防止するためである。
(ディスプレイシートの使用)
本発明のディスプレイシートの使用は、図3に例示するように、ディスプレイシート1にプロジェクターまたはそれに類する光投影機2を用いて、コンピューター3のデータを投影した際に、目4からディスプレイシートの延長線上に存在する背景5の情報がディスプレイシートを透過して見えることに特徴がある。図4は図1の側面図であるが、水平面6からの垂直線1Bとディスプレイシートが成す角度である設置角を1A、水平面6からの垂直線とプロジェクターまたはそれに類する光投影機2が投影する方向とが成す角度である設置角を2Aとした際に、本発明のディスプレイシートは2Aの角度を大変小さくできる特徴がある。例えば、2Aの値として12度を設定した場合、1Aの好ましい範囲は20〜30度となり、これも小さい設置角で済む特徴がある。これは車や航空用などスペースが限定されている場所での使用を考えると、有用な特性である。尚、2Aとして12度を設定した場合、1Aは40度以上の大きな値をとることも可能性であるが、プロジェクターまたはそれに類する光投影機から投影された映像が、視線の上方ではなく、視線方向や視線より下方に向かうため、自動車用途などでは、不必要な光が歩行者などに向かう可能性があるため、好ましくない。
本発明のディスプレイシートは図1のような配置以外にも、背景と目の位置を逆にした配置をとることも可能である。この配置は航空機用など外部からの光の入射方向が定まらないような場合に適している。また、プロジェクターまたはそれに類する光投影機としては、液晶プロジェクター、レーザーを用いた投影機、LED等を用いて特定の模様を投影する投影機などが挙げられるが、画像情報を投影できるものであれば制限はない。また、外界の光量に合わせて、投影する光量を変化させることが可能な装置を用いることが好ましい。夜間など外界の環境の照度が低い時に、投影する光量が多いと、室内で窓ガラスからの反射に伴う映り込みなどが生じるため、危険な場合が想定される。
本発明のディスプレイシートに映像を投影した様子を写真撮影した例を図5に示す。図5では、外界の照度が明るい場合(360lx)と、暗い場合(0.2lx)で背景を白色無地とした場合に、花の映像を投影した際の見え方と、背景に「+++」という白地に黒の文字を記入した用紙を配置した場合の見え方を示している。
写真では背景にピントを合わせているが、目視では、花を通して背景の様子が視認できている。ヘッドアップディスプレイ(以後、HUDという)は、外界の明るさが明るい程、画像の視認性が落ちる問題があり、本発明のディスプレイシートにおいても、その傾向を有している。対策として、外界の照度が明るい場合は、プロジェクター側の出力を強くする等の方法を用いると視認性が改善できる。
本発明のディスプレイシートでは、主に微粒子酸化亜鉛のミー散乱領域を活用している。ガラス基板に濃度の異なる微粒子酸化亜鉛の分散体を含む塗工液を塗布し、その光学特性をレーザー(赤色および/または緑色レーザーが好ましい)を用いて評価してみると、微粒子酸化亜鉛の低濃度領域では、レイリー散乱によりレーザー光が拡散し、結果として、ガラス基板全体がレーザーの色で光るような光学特性を示す。少し濃度を上げていくと、レーザーの照射点を中心にやや光が周辺に拡散した像が得られる。この領域がミー散乱領域になる。さらに濃度を上げていくと、多重散乱の領域に入り、レーザーの照射点を中心に光が周辺に拡散し、ガラス基板もうっすらとレーザーの光で光るようになる。これは既知の各散乱形態における散乱光の異方性と合致している。
尚、青色レーザーは短波長で光が散乱しやすい特性を有し、酸化亜鉛層表面で散乱してしまうため、散乱形態の評価には適していない。また、粒子濃度が高い領域は、みかけ上回折散乱の形態を示している可能性はあるが、本発明では、微粒子粉体が透明体の中に分散固定されたものが、比較的厚い膜厚を有して存在しているケースを対象としているため、ここでは多重散乱として扱う。前記レイリー散乱領域は、透明性が高いので、背景の視認性は極めて良好であるが、投影した画像の情報が周囲に四散してしまい、視認性は悪い。ミー散乱領域は、光の照射方向に対して、後方散乱が主、前方散乱が従の分光特性を示し、側方散乱は弱い。そして、多重散乱領域では、投影した画像の視認性は向上するが、背景の視認性は低下する特性がある。本発明のディスプレイシートではミー散乱領域を用いるが、投影角度からすると、散乱強度が弱いミー散乱の側方散乱を用いているため、効率的には不利になるが、そのために背景の視認性が両立できているところが特徴となっている。
また、ミー散乱は後方散乱が主であるため、機器の配置や投影した映像の光の周囲に与える影響に制限がないような場合、例えば図4で1Aを0度、2Aを40度として、映像を透過で見たような場合では、外界が明るい場合でも、暗い場合と同様に、図6に示すようなクリアな画像が得られる(照射パターンはマイクロソフト社、パワーポイント付属のクリップアートを用いた)。但し、画像がクリアに見える分、背景の視認性は悪くなるため、プロジェクターの光量を低下させ、背景の視認性とのバランスをとることが有用である。このように、本発明のディスプレイシートは、映像の照射角度を任意に変化させることも可能である。このような用途に適した微粒子酸化亜鉛を固定したディスプレイシートは、透過率で規定する場合、微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が、99.4〜59.6%の範囲にあるものが好適であり、さらに好ましくは99.4〜68.0%の範囲である。
図4の配置において、1Aを30度、2Aを12度に設定し、目の代わりにデジタルカメラを試料の中心から20cmの位置に設置し、プロジェクターの代わりに赤、緑、青色レーザーを用いた場合、及び、水平方向に同レーザーを設置した場合において、レーザー光がどのような広がりを見せるかを撮影した例を図7に示す。
図7では、ミー散乱領域の例として酸化亜鉛濃度が7.6%の場合を、またレイリー散乱領域の例として、酸化亜鉛濃度が0.8%の場合の例を示している。酸化亜鉛濃度が7.6%の場合は、レーザーが試料に当たった部位を中心に散乱光の広がりが見えるのに対して、酸化亜鉛濃度が0.8%の場合は、散乱光の形状が異なることが判る。尚、白黒写真だと判りにくいが、酸化亜鉛濃度0.8%の場合において赤色レーザーと緑色レーザーを照射した場合、ガラス基板が全体に照射したレーザーの色で光っていた。本発明でいう、ミー散乱の判断基準は、簡易的にはこの側方散乱の様子から判断することが好ましく、より詳細には、微粒子酸化亜鉛の濃度の異なる試料を複数用いて、ゴニオフォトメーターを用いて空間的な分光分布を測定し、その結果から、側方散乱の形態を把握して判断することが挙げられる。その際、レイリー散乱とミー散乱の境界はミー散乱と多重散乱との境界よりも判りやすいため、低濃度側から試験することが好ましい。また、レーザー光を用いて散乱形態を調べる場合、短波長の青色レーザーの利用は好ましくない。これは、光は波長が短いほど散乱しやすくなる特性があり、赤色や緑色のレーザーと比べて見かけの散乱特性に違いがでにくいため、判断を誤る可能性があるためである。
微粒子酸化亜鉛以外に、微粒子酸化チタンで同様な特性が得られるのか否かを調べた見たところ、レーザー照射により、レイリー散乱領域とミー散乱領域が観察された。図4の配置において、1Aを30度、2Aを12度に設定した場合では、酸化チタン濃度0.8%では、下から照射した場合も、水平から照射した場合も、共にレイリー散乱領域にあり、特性としては、画像の視認性に問題があった。1.0%、1.5%の領域では、下から照射した場合はミー散乱領域、水平照射はレイリー散乱領域にあった。この領域では、投影画像の視認性が悪かった。また、同じ試料で照射方向により散乱形態が異なった原因としては、酸化チタンの屈折率が高いことと、光路長の違いによるものが原因と思われる。次に、2.0%、4.2%の領域では、2照射方向共にミー散乱領域にあった。この領域では画像の色再現性に問題があり、また4.2%の場合は、波長500nmにおける透過率が38.7%しかなく、背景の情報が得られず、本発明の目的に合致したスクリーンは得られなかった。これらの結果から、酸化チタン(ルチル型)は、本発明の目的には適合しないことが判り、酸化亜鉛が屈折率的に、投影画像の視認性と背景の視認性を両立するのに適した材料であることが判る。
次に、市販のHUD用投影シートとして、日本精機社製コンバイナフィルムを用いて検討を行った。本品を分析電顕にて観察すると、反射面から主にアンチモンと一部亜鉛が観察された。また、フィルムの可視光域の分光透過率曲線は図8のようになった。図8より、本品を透過した光は色が変化すること、また、全体として透過率が低いことから、背景の視認性に欠けることが判る。そこで、図4の配置において、1Aを10、20、30度、2Aを12度に設定して試験したところ、10、20度ではシートに撮影者の姿が映り混んでしまい試験にならず、また30度で外界が明るい場合は投影した画像がほとんど視認できず、暗い場合も色が大きく変化した。また、シートが暗く、背景の視認性も悪かった。これらの結果から、本製品はハーフミラーの特性と類似していると考えられ、ハーフミラーでは、本発明のディスプレイシートに見られるような光学効果が得られないことが判った。
以上の検討結果から、酸化亜鉛を利用したディスプレイ部材は多く開発されているが、ミー散乱に着目した光学効果を応用すると、多重散乱や反射では得られないような機能が発現することが判る。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
酸化亜鉛塗工試料の作成
ガラス板(スマートホン用薄層強化ガラス、硬度9H、iphone6S用)の表面をコロナ放電処理装置にて処理し、親水化した後、2日間放置して、塗工液に適した接触角を持つ表面を生成させた。次いで、平均一次粒子径が20nmで、二次粒子径が100〜200nmであるシリコーン処理微粒子酸化亜鉛のデカメチルシクロペンタシロキサン分散液(湿式ビーズミル粉砕品、大東化成工業社製Daitopersion Zn−50)とイソプロピルアルコールを混合し、これとアクリルシリコーン樹脂のイソプロピルアルコール溶液(信越化学工業社製 KP−541)を混合し、塗工液を得た。塗工液中の固形分比率は40%に設定した。電動式定速塗工機と25μmのギャップを持つ金属製4面アプリケーターを用いて、5mm/秒の速度で塗工液をガラス基板に塗工した後、平滑な場所にて1日間静置し、室温にて溶媒を揮散させた。揮発性成分を除いた固形分中の微粒子酸化亜鉛の割合を、0.8、1.7、2.5、3.4、4.2、5.1、5.9、6.8、7.6、8.5,13.0、17.2%と変化させ、それぞれの試料を作成した。尚、塗工中にアプリケーターの基部に塗工液が侵入したため、最終的に得られた塗工膜の厚さは、光学的計測によればおよそ45μmであった。
図4の配置において、1Aを30度、2Aを12度に設定し、目の代わりにデジタルカメラを試料の中心から20cmの位置に設置し、プロジェクターの代わりに青色(405nm)、緑色(532nm)、赤色(650nm)のレーザーポインター(ZK electric works社製))を用いて照射した際の拡散光の様子を撮影した。
前記拡散光の特性から判断して、下から照射した場合も、水平から照射した場合も、酸化亜鉛濃度0.8〜3.4%の範囲はレイリー散乱が主体であり、下から照射した場合は、酸化亜鉛濃度3.4〜13.0%の範囲はミー散乱が主体で、13.0〜17.2%は多重散乱が主体となっているのに対して、水平方向から照射した場合は、酸化亜鉛濃度3.4〜17.2%の領域でミー散乱領域となっていた。
図4の配置において、1Aを10、20、30度のいずれかとし、2Aを12度に設定して花を撮影した映像を投影し、外界が明るい環境下(照度360lx)で、目視にて判定を行った。投影画像の視認性に優れる、背景の視認性に優れる場合を○、やや優れる場合を△、視認性が悪い場合を×として評価した。結果を表1に示す。投影画像の視認性と背景の視認性が共に○の部分を太枠で囲んでいる。
Figure 2018041053
表1の結果から、投影画像の視認性に優れ、かつ背景の視認性に優れた、両方の特性が両立している領域は、プロジェクターの照射方向と水平方向のいずれもがミー散乱領域にある場合に限られていた。この太線の領域は、本発明のディスプレイシートの目的に良く適合していた。また、特に、プレートの角度が30度、酸化亜鉛濃度が6.8〜8.5%の範囲と、プレートの角度が20度で、酸化亜鉛濃度が6.8%のものは目視上、投影画像の視認性、背景の視認性と、色のバランスが良かった。
実施例2
実施例1で作成した酸化亜鉛8.5%被覆ガラス板の酸化亜鉛被覆面の上にもう1枚の薄層ガラス板を固定することで、ガラス−酸化亜鉛層−ガラスの3層型ディスプレイシートを得た。この試料を前述の方法にて試験したところ、投影画像の視認性に優れ、かつ背景の視認性に優れていた。
比較例1
市販のコンバイナフィルム(日本精機社製)を用いて上記評価試験を実施したところ、投影画像の視認性、背景の視認性共に悪いことが判った。
比較例2
市販のスマートホン利用据え置き型HUD(Mpow社製)を用いて評価を行った。本品の投影面を分析電顕にて調べたところ、両面にクロムが観察されたことから、本品も金属薄膜の反射を利用したハーフミラータイプの光学特性を利用していると考えられる。一方、本品の可視光領域の分光透過率を測定したところ、図9のように、透過率はほぼ10%程度しかなく、背景の視認性は有していなかった。
比較例3
実施例1の微粒子酸化亜鉛分散液の代わりに微粒子酸化チタン分散液(大東化成工業社製Daitopersion Ti−30)を用い、塗工基板を厚さ1mmのアクリル板に変更した以外は、全て実施例1と同様にして酸化チタン濃度1%及び2%の試料を作成した。これらの試料は色の再現性が悪く、かつ投影画像の視認性、背景の視認性に問題があった。
比較例4
実施例1で用いたガラス板を用いて比較例とした。未処理のガラス板は、背景の視認性には優れていたが、投影画像の視認性はなかった。

Claims (7)

  1. 微粒子酸化亜鉛含有光散乱層を有するディスプレイシート。
  2. 微粒子酸化亜鉛が機械的に微粉砕された微粒子酸化亜鉛である請求項1に記載のディスプレイシート。
  3. 微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が10〜30nmの範囲にあり、かつ二次粒子径が100〜200nmの範囲にある請求項1または2に記載のディスプレイシート。
  4. 微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が59.6〜99.4%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイシート。
  5. 微粒子酸化亜鉛含有光散乱層の波長500nmの透過率が68〜88%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレイシート。
  6. 微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が5〜100nmである請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレイシート。
  7. ディスプレイシートがヘッドアップディスプレイ用途に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のディスプレイシート。
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