JP2018039594A - 乗客コンベア - Google Patents

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Abstract

【課題】建築物に設置する際、トラスを持ち上げるといった、従来のような作業を強いられることのない準固定構造を有する乗客コンベアを提供すること。
【解決手段】準固定ピン52と、建築物の躯体に設置された受台36に固定され、起立状態の準固定ピン52の径方向の変位を、その下端部で拘束する準固定ピン用プレート48と、円筒部56とフランジ部58を有し、中空部60に準固定ピン52が挿入されたフランジ付スリーブ54とを有し、受台36に掛けられた支承部である延長プレート26は円筒部56に外挿された調整孔62を有しており、調整孔62の径B1は円筒部56の外径A2よりも、準固定ピン用プレート48と延長プレートとの間の相対的な想定ずれ量を見込んだ分(2×C)大きく設定されていて、フランジ部58が延長プレート26に固定されている構成とした。
【選択図】図4

Description

本発明は、エスカレータその他の乗客コンベアに関し、特に、いわゆる準固定構造に関する。
エスカレータは、トラスの両端部に設けられた支持部材各々の一部が、建築物における階上の躯体に固定された受台と階下の躯体に固定された受台にそれぞれ掛けられて、当該建築物に設置されている(階上と階下に掛け渡されている。)。ここで、支持部材の内、受台に掛けられる部分を支承部と称することとする。
地震や強風などにより建築物が揺れると、上下の階間に水平方向の相対的な変位(層間変位)が生じ、両受台の間隔が変化する。このとき、躯体からの外力を受けてトラス等に安全上支障となる変形が生じないよう、一方の支持部材(支承部)を対応する受台に固定し、他方の支持部材(支承部)を対応する受台に対し摺動する状態とした一端固定状態で設置するか、又は、両方の支持部材をそれぞれ対応する受台に対し摺動する状態とした両端非固定状態で設置する旨規定されている〔平成25年国土交通省告示第1046号第1第1項第二号〕。
また、「エスカレータの支持部材と建築物のはり等(躯体)とを固定した部分が、大規模地震時に、トラス等に著しい変形が生じる前に分離して摺動する場合は、非固定部分として扱う(以下「非固定部分(準固定)」と言う)。」旨記載されている〔同第三号に関する解説(「昇降機技術基準の解説 2014年版」の1.3−117ページ:編集 一般財団法人日本建築設備・昇降機センター、一般社団法人日本エレベーター協会)〕。
この準固定を可能とするための構造(以下、「準固定構造」と言う。)として、準固定ピンを用いたものが特許文献1に開示されている。
当該準固定ピンは、円柱部と当該円柱部の一端から同軸上に延出された雄ねじ部とを有している。
受台には、前記雄ねじ部が螺合するねじ孔が開設されたピン取付板が溶接により固定されている。一方、トラスの一端部に固定された支持部材であるアングル材のトラスから水平方向に延出された部分(支承部)には、その厚み方向に貫通する係合孔が開設されている。当該係合孔は、前記円柱部が隙間無く挿入される内径を有している(特許文献1の図4)。
そして、支承部がピン取付板を介して受台に掛けられており、前記準固定ピンが前記雄ねじ側から前記係合孔に挿通されて、当該雄ねじが前記雌ねじ部に螺合すると共に、前記円柱部が前記係合孔に挿入された状態とされている。
上記構成によれば、受台に溶接により固定されたピン取付板に対する支持部材(支承部)の水平方向の相対的な変位が規制される。また、前記準固定ピンは、大規模地震が発生して、水平方向に所定値以上の荷重がかかったときに破断する強度を有するものとされている。準固定ピンが破断すると、上記規制が解除されるため、支持部材(支承部)は、受台に対しピン取付板を介して摺動可能となる。これにより、準固定構造が実現されている。
特開2015−78021号公報
上記準固定構造とするため、ピン取付板は受台に対し、ねじ孔が支承部に開設された係合孔と連通するよう正確に位置決めした後でなければ、溶接により固定することができない。当該位置決めは、受台にピン取付板を載せ、さらに、トラスに固定された支持部材の支承部をピン取付板に重ねた状態でなされる。
位置決めの後、平面視で支承部と重なるピン取付板部分を受台に溶接するには、一旦、トラスを持ち上げて、溶接するためのスペースを確保する必要があるが、相当な重量を有するトラスを持ち上げるのは大変な作業となる。
なお、上記した課題は、他の乗客コンベアである傾斜型の動く歩道にも共通する。
本発明は、上記した課題に鑑み、上記したようなトラスを持ち上げるといった作業を強いられることのない準固定構造を有する乗客コンベアを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る乗客コンベアは、トラスの両端部に設けられた第1の支承部と第2の支承部が、建築物における第1の躯体に設置された第1の受台と前記第1の躯体とは高さの異なる第2の躯体に設置された第2の受台に、それぞれ掛けられて、前記第1の躯体と前記第2の躯体の間に掛け渡された乗客コンベアであって、準固定ピンと、前記第1の受台に固定され、起立状態の前記準固定ピンの径方向の変位を、その下端部で拘束する準固定ピン用プレートと、円筒部と当該円筒部の上端部に設けられたフランジ部を有し、中空部に前記準固定ピンが挿入されたフランジ付スリーブとを有し、前記第1の支承部は前記円筒部に外挿された調整孔を有しており、前記調整孔の径は前記円筒部の外径よりも、前記準固定ピン用プレートと前記第1の支承部との間の相対的な想定ずれ量を見込んだ分大きく設定されていて、前記フランジ部が前記第1の支承部に固定されていることを特徴とする。
また、前記準固定ピン用プレートは、厚み方向に開設された挿入孔を有し、前記準固定ピンは、前記挿入孔に挿入されて、径方向の変位が拘束されていることを特徴とする。
あるいは、前記準固定ピン用プレートは、厚み方向に開設された嵌め込み孔を有し、当該嵌め込み孔には、隙間調整スリーブが嵌め込まれていて、前記準固定ピンは、前記隙間調整スリーブの中空部に挿入されて、径方向の変位が拘束されており、前記隙間調整スリーブは、高さの異なる複数の隙間調整スリーブの中から、その上端面と前記フランジ付スリーブの下端面との隙間を最も少なくするものが選択されたものであることを特徴とする。
上記の構成からなる乗客コンベアでは、第1の支承部が掛けられる第1の受台に、起立状態の準固定ピンの径方向の変位を拘束する準固定ピン用プレートが固定されている。前記第1の支承部は、フランジ付スリーブの円筒部に外挿された調整孔を有しており、当該調整孔の径が前記円筒部の外径よりも、前記準固定ピン用プレートと前記第1の支承部との間の相対的な想定ずれ量を見込んだ分大きく設定されている。
よって、前記準固定ピン用プレートに対して前記第1の支承部が相対的にずれたとしても、当該ずれ量が前記想定ずれ量の範囲内であれば、準固定ピン用プレートに拘束された前記準固定ピンを前記フランジ付スリーブの中空部に挿通状態とすることができる。これにより、第1の支承部の第1の受台に対する変位が、前記準固定ピンによって拘束される準固定構造とすることができる。
すなわち、準固定ピン用プレートは、トラスの端部に設けられた第1の支承部に対する正確な位置決めを要することなく、第1の受台に固定することができる関係上、当該固定に先立って、一度、第1の支承部を第1の受台に掛ける必要が無くなるため、従来のような上述したトラスを持ち上げるといった作業を強いられることがない。
(a)は、建築物に設置された状態における実施形態に係るエスカレータの概略構成を示す図であり、(b)は、(a)におけるF部の拡大図である。 (a)は、上記エスカレータの階上側端部およびその近傍を示す平面図であり、(b)は、一部を破断した(a)の正面図である。 (a)はフランジ付スリーブの平面図を、(b)は同正面図を、(c)は同下面図をそれぞれ示している。 (a)は、図2(b)の一部拡大図であり、(b)、(c)は、延長プレートと準固定ピン用プレートが相対的にずれた状態の一例を示す図である。 (a)は、実施形態2における準固定構造を示す図であり、(b)は、当該準固定構造に用いる隙間調整スリーブの断面図であり、(c)は、同平面図である。 (a)は他の例に係るフランジ付スリーブの平面図を、(b)は同正面図を、(c)は同下面図をそれぞれ示している。
以下、本発明に係る乗客コンベアを実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、煩雑さを避けるため、図4、図5(a)において、断面であることを示すハッチングは省略している。
<実施形態1>
図1に示すように、実施形態1に係るエスカレータ10は、環状に連結されて循環走行する無端搬送体である複数の踏段12を有する。走行する踏段12の両側には、欄干14が設置されている(図1では、片方の欄干のみを図示している。)。
欄干14は、踏段12の走行路に沿って立設された欄干パネル16を有する。欄干パネル16の外周には、不図示のガイドレールに案内されて循環走行するハンドレール18が設けられている。
前記複数の踏段12や踏段12およびハンドレール18の駆動源である電動機(不図示)等の種々の装置は、トラス20内に組み込まれている。また、欄干14は、トラス20上に組み立てられている。
トラス20の長手方向における両端部には、それぞれ、第1支持部材22と第2支持部材28が固定されている。第1支持部材22は、山形鋼(L字鋼)24と長方形をした鋼板からなる延長プレート26(図2)とが、隅肉溶接(溶接ビードは不図示)によって接合されてなるものである。第2支持部材28も、同様、山形鋼(L字鋼)30と長方形をした鋼板からなる延長プレート32とが、隅肉溶接(溶接ビードは不図示)によって接合されてなるものである。
第1支持部材22は、山形鋼24の一方の辺部がトラス20に隅肉溶接(溶接ビードは不図示)等によって接合されて、トラス20の一端部に固定されている。延長プレート26は、山形鋼24の他方の辺部にその一部を重ねた状態で接合されており、延長プレート26は、前記他方の辺部から水平方向に延出されている。第2支持部材28のトラス20の他端部への固定態様および延長プレート32の山形鋼30との接合態様は、第1支持部材22と同様なので、その説明については省略する。
エスカレータ10が設置される建築物の躯体部分34には、鋼板からなる第1受台36が水平に設置されており、躯体部分34とは高さの異なる(本例では、階下の)躯体部分38には、鋼板からなる第2受台40が水平に設置されている。第1受台36,40の各々は、躯体部分34,38にそれぞれアンカーボルト(不図示)によって固定されている。
エスカレータ10は、第1支持部材22における支承部である延長プレート26が第1受台36に、第2支持部材28における支承部である延長プレート32が第2受台40にそれぞれ掛けられて、階上の躯体部分34と階下の躯体部分38の間に掛け渡されている。
第2受台40には、高さ調整用のシム42が、一又は複数枚積層され、その周囲の一部が隅肉溶接(溶接ビードは不図示)により固定されている。延長プレート32は、シム42を介して第2受台40に掛けられている。シム42は、エスカレータ10が設置される建築物の設計に対する誤差やエスカレータ10の製作誤差によって生じる、第2受台40からの延長プレート32の必要とされる高さのずれを解消するために設けられている。シム42は、上記のように第2受台40に固定されているが、延長プレート32は、シム42に固定されていない(非固定)。これにより、例えば、地震や強風により建築物が揺れて、層間変位が生じると、延長プレート32がシム42上を水平方向に摺動する。これにより、エスカレータ10のトラス20に建築物から掛かる荷重が軽減されて、トラス20の損壊が防止される。
階上の躯体部分34に設置された第1受台36と延長プレート26との間にも、上記した階下におけるのと同様、シム44,46(図2(a))が設けられているのであるが、煩雑になるため、図1、図2(b)、図4、および図5(a)において、シム44,46の図示は省略している。なお、シム44,46(図2(a))もシム42(図1)と同様、その周囲の一部が隅肉溶接によって固定されている。
階下の躯体部分38に対してトラス20に設けた第2支持部材28(延長プレート32)は非固定としたが、階上の躯体部分34に対してトラス20に設けた第1支持部材22(延長プレート26)は、準固定としている。
実施形態1における準固定構造について、図2および図3を参照しながら説明する。図2(a)において、符号44,46で指し示すのが、第1受台36に固定された、延長プレート26の高さ調整用のシム(本例では、長方形をしている)である。
図2に示すように、第1受台36には、方形をした準固定ピン用プレート48が、例えば、隅肉溶接(溶接ビードは不図示)により接合されて固定されている。準固定ピン用プレート48には、鋼板が用いられる。溶接箇所は、準固定ピン用プレート48の側面と第1受台36の上面との間であって、本例では、前記側面の全周(前記方形の4辺)に亘っている。
準固定ピン用プレート48は、その厚み方向に開設された挿入孔50を有している。
挿入孔50には、鉄鋼材料からなる準固定ピン52が挿入されている。準固定ピン52の径と挿入孔50の径とは、準固定ピン52がスムーズに挿入できると共に、挿入された状態で、挿入孔50に対し準固定ピン52ががたつくことの無い、いわゆる、すきまばめの関係となるよう設定されている。これによって、起立状態の準固定ピン52は、準固定ピン用プレート48によって、径方向の変位が拘束されている。
エスカレータ10は、また、フランジ付スリーブ54を有している。フランジ付スリーブ54は、鉄鋼材料からなる。フランジ付スリーブ54は、図3に示すように、円筒部56と円筒部56の一端部(フランジ付スリーブ54が設置された状態(図2(b))における上端部)に設けられたフランジ部58を有する。フランジ付スリーブ54の中空部60の径は、準固定ピン用プレート48の挿入孔50の径と略同じ大きさである。すなわち、中空部60の径は、準固定ピン52の径との関係において前記すきまばめの関係となるように設定されている。なお、フランジ部58の径A1、円筒部56の外径A2、および、円筒部56の高さA3については後述する。
図4(a)に示すように、延長プレート26は、その厚み方向に貫通した調整孔62を有している。準固定ピン用プレート48の挿入孔50に挿入された準固定ピン52に、フランジ付スリーブ54の中空部60が外挿されていて、フランジ付スリーブ54の円筒部56は、延長プレート26の調整孔62に嵌っている。フランジ部58の径A1(図3(b))は、調整孔62の径よりも大きく設定されているため、フランジ部58が調整孔62に落ち込むことはない。フランジ部58の外周は、延長プレート26上面に隅肉溶接等(溶接ビードは不図示)により固定(接合)されている。
なお、延長プレート26下面と準固定ピン用プレート48上面との間に隙間Gが空いているのは、最上位のシム44,46上面(不図示)の第1受台36上面からの高さの方が、準固定ピン用プレート48の高さ(厚み)よりも高くなっている結果である。隙間Gの大きさは、シム44,46による高さ調整量によって変動する。
上記のように設置されたエスカレータ10における、躯体部分34と第1支持部材22との間の、図1に示す水平方向の隙間をD1とし、躯体部分38と第2支持部材28との間の、図1に示す水平方向の隙間をD2とする。
上記の構成からなるエスカレータ10では、小・中規模地震が発生して層間変位が起きると、躯体部分34と躯体部分38の間の水平方向の距離が変化する。これに伴い、第2支持部材28(の延長プレート32)は、第2受台40に対しシム42を介して摺動し、隙間D2が伸縮する。一方、第1支持部材22(の延長プレート26)は、第1受台36に対し、準固定ピン用プレート48、準固定ピン52、およびフランジ付スリーブ54によって固定されているため、隙間D1は初期のままである。
大規模地震が発生すると、初期の隙間D2の大きさを越えて、躯体部分34と躯体部分38が接近し、隙間D2が無くなり、躯体部分38の一部と第2支持部材28の一部が相対的に衝突する。これにより、トラス20全体は、躯体部分38に押されて躯体部分34に向かって変位しようとする。このとき、準固定ピン52には、フランジ付スリーブ54と準固定ピン用プレート48から水平方向のせん断荷重が作用して、準固定ピン52が破断し、第1支持部材22の第1受台36に対する固定が解除され(非固定となり)、第1支持部材22(の延長プレート26)は、第1受台36に対しシム44,46(図2)を介して摺動可能となる。そして、トラス20は、躯体部分34に向かって、さらに、初期の隙間D1の距離分、変位する余地ができるため、両躯体部分34,38から受ける圧縮荷重によるトラス20の損壊を回避することができる。
以上の説明から明らかなように、準固定ピン52は、中規模地震までは、第1支持部材22(延長プレート26)を第1受台36に対し固定状態に維持し、大規模地震では、破断するようなせん断強さを有する。
換言すると、準固定ピン52は、フランジ付スリーブ54と準固定ピン用プレート48から、地震に起因する所定以上のせん断荷重が作用しないときは破断せず、前記所定以上のせん断荷重が作用すると破断する大きさのせん断強さを有している。これにより準固定構造が実現されている。
上記の準固定構造を有するエスカレータ10の建築物への設置手順の概略について、図1、図2および図4(a)を適宜参照しながら説明する。なお、図1、図2および図4(a)は、第1受台36に対し準固定ピン用プレート48が、設計上定められた規定位置に固定された(溶接された)状態を示している。
(i)階上側の第1受台36にシム44,46(図2)を、階下側の第2受台40にシム42(図1)をそれぞれ必要な分載置(積層)する。載置されたシム42,44,46の各々は、後述する工程(iii)の後の適当なタイミングで対応する受台に固定する。
(ii)準固定ピン用プレート48を、第1受台36に対し、前記規定位置を目標に溶接(不図示)によって固定する。なお、工程(i)と工程(ii)とは、実行順を逆にしても構わない。
(iii)第1支持部材22の延長プレート26を第1受台36に、第2支持部材28の延長プレート32を第2受台40に、それぞれ、シム44,46、シム42を介して掛け、第1支持部材22および第2支持部材28を、それぞれ躯体部分34、38(第1受台36、第2受台40)に対して位置決めする。これにより、エスカレータ10(トラス20)は、躯体部分34と躯体部分38との間に掛け渡される。
(iv)準固定ピン用プレート48の挿入孔50に準固定ピン52を挿入する。
(v)起立状態の準固定ピン52にフランジ付スリーブ54の中空部60を外挿し、円筒部56を調整孔62に、フランジ部58が延長プレート26の上面に当接するまで落とし込む(嵌め込む)。
(vi)フランジ部58の外周を延長プレート26上面に隅肉溶接等(溶接ビードは不図示)により固定(接合)する。
(vii)準固定ピン52が準固定ピン用プレート48およびフランジ付スリーブ54から抜け出してしまうのを防止するため、念のために、準固定ピン52の上端部側面の周方向における一部をフランジ部58の上面に溶接する(溶接痕については不図示)。
ここで、工程(ii)において、準固定ピン用プレート48は、前記規定位置を目標に固定するものの、僅かなずれが生じる場合があり、また、工程(iii)の終了時において、トラス20の製作誤差等に起因して第1支持部材22(延長プレート26)の前記規定位置に対するずれが生じる場合がある。すなわち、準固定ピン用プレート48と延長プレート26との間に水平方向における相対的なずれが生じる場合がある。
このずれが生じると、従来のように支持部材に直接、準固定ピンの挿入孔を開設している場合、当該挿入孔と準固定ピン用プレート48の挿入孔50もずれてしまって、準固定ピンを前記挿入孔と挿入孔50に同時に挿入できなくなる。
そこで、実施形態1では、第1支持部材22(延長プレート26)に調整孔62を開設し、調整孔62に嵌る円筒部56を有するフランジ付スリーブ54を介して、準固定ピン52を第1支持部材22で径方向の変位を拘束し、かつ、調整孔62の径B1は、円筒部56の外径A2よりも、所定の大きさ分、大きく設定することとした。
この所定の大きさ分について、図4を参照しながら説明する。図4(a)は、上記したように、第1受台36に対し準固定ピン用プレート48が前記規定位置に固定された状態を示している。この状態では、躯体部分34(第1受台36)に対し位置決めされた第1支持部材22(延長プレート26)の調整孔62の軸心Xに、準固定ピン用プレート48の挿入孔50の軸心が一致しており、ひいては、フランジ付スリーブ54の中空部60の軸心および円筒部56の軸心も調整孔62の軸心Xに一致している。
準固定ピン用プレート48を第1受台36に固定する際、手作業で位置決めをする関係上、前記規定位置から僅かながらずれてしまう場合がある。また、上記工程(iii)において、第1支持部材22(延長プレート26)を躯体部分34(第1受台36)に位置決めする際、トラス20の製作誤差等に起因し、延長プレート26が第1受台36に対して(前記規定位置に対して)ずれてしまう場合がある。すなわち、準固定ピン用プレート48と第1受台36との間に水平方向における相対的なずれが生じる場合がある。
そこで、想定される最大ずれ量(準固定ピン用プレート48と第1受台36との間における水平方向の相対的な最大ずれ量)を見込んだ分、調整孔62の径を円筒部56の外径よりも大きく設定している。想定される最大ずれ量を、図4(a)に示すように、調整孔62の軸心Xを中心とする、調整孔62の径方向の距離Cとする。調整孔62の径をB1、円筒部56の外径をA2とすると、B1=A2+2×Cの関係に、調整孔62の径B1が設定されている。
このようにすることで、距離Cの範囲内であれば、例えば、図4(b)に示すように、延長プレート26が準固定ピン用プレート48に対し、相対的に、紙面に向かって右向きにずれたとしても、準固定ピン用プレート48の挿入孔50とフランジ付スリーブ54の中空部60の両方に準固定ピン52を挿入することができるため、準固定構造を完成させることができる。
また、図4(c)に示すように、延長プレート26が、準固定ピン用プレート48に対し、相対的に、紙面に向かって左向きにずれたとしても、ずれ量が距離Cの範囲内であれば、同じく、準固定構造を完成させることができる。
なお、言うまでもなく、延長プレート26が準固定ピン用プレート48に対し、相対的に、紙面に垂直な方向にずれた場合でも同様に準固定構造を完成させることができる。要は、準固定ピン用プレート48と延長プレート26が前記規定位置からずれたとしても、すなわち、両者の間に相対的なずれが生じたとしても、当該ずれ量が距離Cの範囲内であれば、準固定構造を完成させることができるのである。
距離Cは、例えば、5mmに設定される。すなわち、調整孔62の径は円筒部56の外径よりも10mm大きく設定される。なお、設定すべき距離Cの大きさは、経験的に容易に求め得るものである。
以上説明したように、実施形態1に係るエスカレータ10によれば、想定される範囲であれば、延長プレート26が準固定ピン用プレート48に対し、相対的にずれたとしても準固定構造を完成させることができる。よって、準固定ピン用プレート48の第1受台36への固定(溶接)に先立って、一旦、トラス20を躯体部分34(第1受台36)と躯体部分38(第2受台40)との間に掛け渡して、支持部材22(延長プレート26)に対する準固定ピン用プレート48の正確な位置決めをする必要が無くなる。これにより、上述したトラスを持ち上げるといった従来必要とされる作業を強いられることなく、準固定構造を完成させることができる。
また、エスカレータの仕様よって、準固定ピンに要求されるせん断強さ、すなわち、準固定ピンの径が異なってくる。この場合、実施形態1によれば、エスカレータ10の主要な構成部材である第1支持部材22(延長プレート26)の調整孔62は変更することなく、すなわち、第1支持部材22は変更することなく、フランジ付スリーブ54の中空部60の径、準固定ピン用プレート48の挿入孔50の径を変更するだけで対応することができる。
なお、フランジ部58の径A1は、調整孔62の径B1と距離Cとの関係において、A1>(B1+2×C)の大きさであることが好ましい。このように径A1の大きさを設定しておけば、準固定ピン用プレート48が前記規定位置から許容される最大距離(距離C)ずれたとしても、フランジ部58の外周面の周方向におけるいずれの部位においても、延長プレート26と溶接できるからである。
また、フランジ付スリーブ54の円筒部56の長さA3(図3(b))は、延長プレート26の厚みB2(図4(a))と同じか、厚みB2よりも若干短いのが好ましい。長さA3が厚みB2よりも長いと、第1支持部材22(延長プレート26)の第1受台36上面からの高さ調整の結果、隙間G(図4(a))が無くなった場合、フランジ付スリーブ54の下端面が準固定ピン用プレート48の上面に当接し、長さA3と厚みB2の差分(A3−B2)だけ、フランジ部58の下面が延長プレート26の上面から離れてしまう。そうすると、フランジ部58と延長プレート26との溶接による接合に支障が生じるからである。
一方、第1支持部材22(延長プレート26)の第1受台36上面からの高さ調整の結果、隙間G(図4(a))が相当に大きくなった場合、準固定ピン52にはせん断力に加え、曲げモーメントが大きく作用することとなる。この場合、準固定ピン52のせん断強さによって設定している破断荷重にばらつきが生じてしまう。そこで、円筒部56の長さA3(図3(b))の異なるフランジ付スリーブ54を複数個準備しておき、トラス20を設置した後、準固定ピン用プレート48上面から延長プレート26上面までの高さE(図4(a))を測定し、前記複数個のフランジ付スリーブ54の中から、円筒部56の長さA3が高さE以下で、かつ、最も高さEに近いものを選択して用いることとしても構わない。これにより、可能な限り隙間Gを小さくすることができる。なお、前記複数個のフランジ付スリーブ54の円筒部56の長さA3は、例えば、1mm間隔で異なるものとする。
<実施形態2>
実施形態1における上記の例では、隙間G(図4(a))を可能な限り小さくするため、フランジ付スリーブ54の円筒部56の長さA3(図3(b))の異なるものを複数個準備することとした。これに対し、実施形態2では、図5に示すように、隙間調整スリーブ64を用いることとした。なお、図5(a)は、実施形態1の図4(a)に対応するものであり、図5(a)において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明については省略するか、必要に応じて言及するに止める。
隙間調整スリーブ64は、図5(b)、図5(c)に示すように、円環状をしている。隙間調整スリーブ64の内径H1は、実施形態1の準固定ピン用プレート48の挿入孔50の径と同じ大きさに設定される。
隙間調整スリーブ64の外径H2は、フランジ付スリーブ54の円筒部56の外径A2(図4(a))以下に設定される。
隙間調整スリーブ64は、その高さH3が、準固定ピン用プレート68の厚みKと同じものの他、厚みKよりも大きく設定されたものが複数個準備されている。高さH3の違いは、例えば、1mmとすることができる。
準固定ピン用プレート68には、実施形態1の準固定ピン用プレート48(図2、図4)と同じサイズの鋼板が用いられる。準固定ピン用プレート68には、準固定ピン用プレート48の挿入孔50と中心を同じくする位置に嵌め込み孔70が開設されている。嵌め込み孔70の径は、隙間調整スリーブ64の外径H2との関係で、隙間調整スリーブ64を嵌め込み孔70にスムーズに挿入できると共に、挿入された状態で、挿入孔50に対し隙間調整スリーブ64ががたつくことの無い、いわゆる、すきまばめの関係となるように設定されている。
実施形態2のエスカレータにおいて、準固定ピン用プレート68が、第1受台36に隅肉溶接(溶接ビードは不図示)によって固定され、シム44,46(図2(a))による高さ調整が終了して、トラス20(図1等)が第1受台36と第2受台40の間に掛け渡されると、隙間Gの大きさLを測定する。
そして、前記複数個準備した隙間調整スリーブ64の中から、高さH3が、準固定ピン用プレート68の厚みKと隙間Gの大きさLの合計(K+L)以下で、かつ、最も当該合計(K+L)に近いものを選択する。
そして、選択した隙間調整スリーブ64を、調整孔62を通して、嵌め込み孔70に嵌め込み、準固定ピン52を隙間調整スリーブ64の中空部66に挿入する。これにより、
準固定ピン用プレート68は、起立状態の準固定ピン52の径方向の変位を、隙間調整スリーブ64を介して拘束する。起立状態の準固定ピン52にフランジ付スリーブ54の中空部60を外挿し、円筒部56を調整孔62に、フランジ部58が延長プレート26の上面に当接するまで落とし込む(嵌め込む)。そして、フランジ部58の外周を延長プレート26上面に隅肉溶接等(溶接ビードは不図示)により固定(接合)する。また、準固定ピン52が隙間調整スリーブ64およびフランジ付スリーブ54から抜け出してしまうのを防止するため、念のために、準固定ピン52の上端部側面の周方向における一部をフランジ部58の上面に溶接することとしても構わない。
以上説明した実施形態2に係るエスカレータによって奏される効果は、実施形態1の場合と同様なのでその説明については省略する。
以上、本発明に係る乗客コンベアを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施形態では、第1支持部材22と第2支持部材28をそれぞれ山形鋼24,30と延長プレート26,32で構成したが、支持部材は山形鋼のみで構成することとしても構わない。この場合、トラス20に固定される一辺部とは反対の、トラス20から水平に延びる他辺部が支承部となり、当該他辺部に、フランジ付スリーブ54の円筒部56が嵌る調整孔が開設される。
(2)上記実施形態では、フランジ付スリーブ54のフランジ部58は円環状をしているが、これに限らず、図6に示すフランジ付スリーブ72のように、フランジ部76は、軸心Mから円筒部74の径方向と平行に放射状に延びる複数の(本例では、6個の)突片76A,76B,76C,76D,76E,76Fを含むものとしても構わない。
(3)上記実施形態では、準固定ピン用プレート48,68は、方形の板状をしているが、これに限らず、円形や楕円形、あるいは多角形の板状であっても構わない。
(4)上記実施形態では、準固定ピンとして、全体的に円柱状をしたストレートピン(準固定ピン52)を用いたが、準固定ピンは、これに限らず、例えば、上記特許文献1に開示されたような準固定ピンを用いても構わない。すなわち、準固定ピンを円柱部と当該円柱部の一端から同軸上に延出された雄ねじ部を有するものとしても構わない。
この場合には、準固定ピン用プレートには、前記雄ねじ部が螺合するねじ孔(雌ねじの切ってある孔)を設け、フランジ付スリーブの中空部の径を前記円柱部が挿入される大きさに設定する。
(5)上記実施形態では、階上の躯体部分34に設置された第1受台36に対して第1支持部材22を準固定とし、階下の躯体部分38に設置された第2受台40に対して第2支持部材28を非固定としたが、この逆にしても構わない。すなわち、階上の躯体部分に設置された受台に対し、対応する支持部材を非固定とし、階下の躯体部分に設置された受台に対し、対応する支持部材を準固定としても構わない。
(6)上記実施形態では、本発明に係る乗客コンベアを、エスカレータを例に説明したが、本発明に係る乗客コンベアは、環状に連結された複数のパレットからなる無端搬送体やゴムベルトからなる無端搬送体を循環走行させて乗客を搬送する動く歩道であって、傾斜配置される傾斜型の動く歩道にも適用可能である。
本発明に係る乗客コンベアは、例えば、地震や強風などによって大きな層間変位が生じ得る高層の建築物に設置されるエスカレータに好適に利用可能である。
10 エスカレータ
20 トラス
26,32 延長プレート
48 準固定ピン用プレート
52 準固定ピン
54 フランジ付スリーブ
56 円筒部
58 フランジ部
60 中空部
62 調整孔

Claims (3)

  1. トラスの両端部に設けられた第1の支承部と第2の支承部が、建築物における第1の躯体に設置された第1の受台と前記第1の躯体とは高さの異なる第2の躯体に設置された第2の受台に、それぞれ掛けられて、前記第1の躯体と前記第2の躯体の間に掛け渡された乗客コンベアであって、
    準固定ピンと、
    前記第1の受台に固定され、起立状態の前記準固定ピンの径方向の変位を、その下端部で拘束する準固定ピン用プレートと、
    円筒部と当該円筒部の上端部に設けられたフランジ部を有し、中空部に前記準固定ピンが挿入されたフランジ付スリーブと、
    を有し、
    前記第1の支承部は前記円筒部に外挿された調整孔を有しており、
    前記調整孔の径は前記円筒部の外径よりも、前記準固定ピン用プレートと前記第1の支承部との間の相対的な想定ずれ量を見込んだ分大きく設定されていて、
    前記フランジ部が前記第1の支承部に固定されていることを特徴とする乗客コンベア。
  2. 前記準固定ピン用プレートは、厚み方向に開設された挿入孔を有し、前記準固定ピンは、前記挿入孔に挿入されて、径方向の変位が拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
  3. 前記準固定ピン用プレートは、厚み方向に開設された嵌め込み孔を有し、
    当該嵌め込み孔には、隙間調整スリーブが嵌め込まれていて、
    前記準固定ピンは、前記隙間調整スリーブの中空部に挿入されて、径方向の変位が拘束されており、
    前記隙間調整スリーブは、高さの異なる複数の隙間調整スリーブの中から、その上端面と前記フランジ付スリーブの下端面との隙間を最も少なくするものが選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
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