JP2018036516A - 積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ及び眼鏡 - Google Patents

積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ及び眼鏡 Download PDF

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Abstract

【課題】波長400nm〜500nmのブルーライトの透過低減又は遮断が可能であり、長期使用時の耐久性に優れた積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ及び眼鏡を提供する。【解決手段】基材と、一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層と、を有する積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ及び眼鏡である。式中、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、含窒素複素環を形成するための原子団を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Xは、対イオンを表す。【選択図】なし

Description

本開示は、積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ及び眼鏡に関する。
液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)等の画像表示装置又はタッチパネルを搭載した各種ディスプレイを備えた装置を使用する際には、光源を備えたディスプレイの表示画面を目視することになる。近年、画像表示装置等を長時間使用する場合のブルーライトの網膜への影響が注目されている。特に、波長400nm〜500nmのブルーライトは、人間の睡眠を阻害するなどの健康面での懸念が指摘されており、ディスプレイの画面から放射される波長460nmのブルーライトによる網膜への影響は注視されている。
最近では、ブルーライトを吸収させる保護シート、ディスプレイの前面に貼って波長460nm前後のブルーライトを効率的に吸収するフィルタ、又は波長460nm前後のブルーライトを効率的に吸収する機能が付与された眼鏡用レンズ等に対する要求が高まっている。ところが、ブルーライトを吸収する染料は一般に黄色味を帯びているため、染料を含有する保護シート又はフィルタは、黄色に強く着色してしまい、保護シート及びフィルタの色味及び視認性に劣る傾向にあった。
黄色の強い着色を改善する方法として、染料の吸収バンドをシャープにすること、言い換えると半値幅を小さくすることが、着色を弱くし、かつ、効率的にブルーライトをカットする手法として提案されている。半値幅の小さい吸収バンドを得る手法として、染料のJ会合体を利用することが知られている。具体的には、吸収バンドがシャープな染料の例として、オキソノール系色素のJ会合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、マトリクス樹脂中に形成されたシアニン色素、ポリフィリン等の色素のJ会合体を含み、最大吸収ピークの半値幅が5〜30nmの範囲にある色補正層を有する色補正フィルターが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−86926号公報 特開2008−304678号公報
上記のように、従来から色素のJ会合体は吸収バンドがシャープであることが知られ、特許文献1には、オキソノール系色素のJ会合体が開示されているものの、オキソノール系色素のJ会合体は耐久性に劣り、長期に亘って安定に維持できない課題がある。
また、特許文献2に開示されているシアニン色素等のJ会合体は、吸収波長が560nm〜610nmの範囲にあり、既述のような波長400nm〜500nmのブルーライトの透過量調整又は遮断には使用できない。
本発明の実施形態は、上記に鑑みなされたものであり、波長400nm〜500nmのブルーライトの透過低減又は遮断が可能であり、長期使用時の耐久性に優れた積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ、及び眼鏡を提供することを目的とし、この目的を達成することを課題とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、下記一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層と、を有する積層体である。
式中、Z及びZは、それぞれ独立に、含窒素複素環を形成するための原子団を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Xは、対イオンを表す。
<2> シアニン色素は、少なくとも一部がJ会合体である<1>に記載の積層体である。
<3> シアニン色素が、アニオン性である<1>又は<2>に記載の積層体である。
<4> 色素含有層は、更に、親水性樹脂を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載の積層体である。
<5> 色素含有層が、ゾルゲル膜である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の積層体である。
<6> シアニン色素は、下記一般式(II)で表される化合物である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の積層体である。
式中、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。V及びVは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。n1及びn2は、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。n1≧2を満たす場合、2つのVは互いに結合して環を形成していてもよく、n2≧2を満たす場合、2つのVは互いに結合して環を形成していてもよい。Xは、対イオンを表す。
<7> 極大吸収波長における透過率が1%以上30%以下である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の積層体である。
<8> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の積層体を有する透過光調整材である。
<9> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の積層体を有する保護シート材である。
<10> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の積層体を有する眼鏡用レンズである。
<11> <10>に記載の眼鏡用レンズを備えた眼鏡である。
本発明の実施形態によれば、波長400nm〜500nmのブルーライトの透過低減又は遮断が可能であり、長期使用時の耐久性に優れた積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ、及び眼鏡が提供される。
以下、本発明の実施形態に係る積層体、透過光調整材、保護シート材、眼鏡用レンズ、及び眼鏡について、詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本発明の一実施形態の積層体は、基材と、以下に示す一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層と、を有しており、必要に応じて、更に、他の層を有していてもよい。本発明の一実施形態の積層体は、基材と色素含有層とが直接接して配置された態様、又は基材と色素含有層とが他の層を介して配置された態様のいずれであってもよい。
従来から、波長400nm〜500nmのブルーライトの透過量を低減又は遮断するのに用いられるシート及びフィルタが提案されており、例えば特許文献1〜2のように、吸収バンドがシャープな色素のJ会合体を利用することも提案されている。
しかしながら、従来から提案されている技術は、吸収波長が対象光であるブルーライトの波長域から外れているために、所望の遮光効果が得られない場合があるほか、吸収波長がブルーライトの波長域と合致しても耐久性に劣る等の課題が指摘されていた。また、ブルーライトを吸収する染料は一般に黄色味を帯びているが、シート又はフィルタを作製した場合には、シート等に黄色味を強く帯びた着色がないことが望まれる。
上記に鑑み、本発明の一実施形態の積層体は、基材上に配置された色素含有層が特定の色素構造を有するシアニン色素を含有する。以下に示す特定構造のシアニン色素は、単一のメチン基を介して複素環構造を有するモノメチン色素であり、波長400nm〜500nmのブルーライトの透過量を低減又は遮断に適したシャープな吸収波長を有している。そして、シート又はフィルタを作製した場合には、ブルーライトを効率的に吸収するが、黄色の着色が小さく、かつ、耐久性に優れたものとなる。そのため、本発明の一実施形態の積層体は、ブルーライトの透過量を低減又は遮断する必要がある用途(例えば、ブルーライト遮断用のシートもしくはフィルム、眼鏡用レンズ等)に好適である。
また、特定の色素構造を有するシアニン色素は、半値幅の小さいJ会合体を形成しやすく、特に後述するようにゾルゲル膜中でJ会合体を形成しやすい。すなわち、本発明の一実施形態の積層体は、特定の色素構造を有するシアニン色素を含むゾルゲル膜を有する態様とすることができ、ブルーライトのよりシャープな吸収が期待でき、ブルーライトの低減効果及び遮断効果に優れたものとなる。
さらに、色素含有層は、バインダーを用いて形成することができ、バインダーとして、従来のゼラチンではなく、シリケートから形成されるゾルゲル膜を用いた場合には、耐久性により優れたものとなる。
−色素含有層−
本発明の一実施形態の積層体における色素含有層は、一般式(I)で表されるシアニン色素を少なくとも含み、好ましくは親水性ポリマーを含み、必要に応じて、更に、他の成分を含んでいてもよい。
(シアニン色素)
色素含有層は、一般式(I)で表されるシアニン色素の少なくとも一種を含有する。一般式(I)は、単一のメチン基を介して複素環構造を有するモノメチン構造であることで、一般式(I)で表されるシアニン色素は、波長400nm〜500nmのブルーライトの波長域にシャープな吸収波長を有している。
一般式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立に、含窒素複素環を形成するための原子団を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Xは、対イオンを表す。
一般式(I)では、Zが「C−N=C」の両端の炭素原子と結合し、かつ、Zが「C−N−C」の両端の炭素と結合することによって含窒素複素環が形成されている。
含窒素複素環としては、チアゾール核{チアゾール環(例えばチアゾール、4−メチルチアゾール、4−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール)、ベンゾチアゾール環(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、5−ニトロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、6−ブロモベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール、5−カルホキシベンゾチアゾール、5−フェネチルベンゾチアゾール、5−フルオロベンゾチアゾール、5−クロロ−6−メチルベンゾチアゾール、5,6−ジメチルベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5−ヒドロキシ−6−メチルベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール)、ナフトチアゾール環(例えば、ナフト〔2,1−d〕チアゾール、ナフト〔1,2−d〕チアゾール、ナフト〔2,3−d〕チアゾール、5−メトキシナフト〔1,2−d〕チアゾール、7−エトキシナフト〔2,1−d〕チアゾール、8−メトキシナフト〔2,1−d〕チアゾール、5−メトキシナフト〔2,3−d〕チアゾール)}、チアゾリン環(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン、4−ニトロチアゾリン)}、
オキサゾール核{オキサゾール環(例えば、オキサゾール、4−メチルオキサゾール、4−ニトロオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール)、ベンゾオキサゾール環(例えば、ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5−メチルベンゾオキサゾール、5−ブロモベンゾオキサゾール、5−フルオロベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、5−ニトロベンゾオキサゾール、5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、5−カルボキシベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、6−クロロベンゾオキサゾール、6−ニトロベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、5−エトキシベンゾオキサゾール)、ナフトオキサゾール環(例えば、ナフト〔2,1−d〕オキサゾール、ナフト〔1,2−d〕オキサゾール、ナフト〔2,3−d〕オキサゾール、5−ニトロナフト〔2,1−d〕オキサゾール)}、オキサゾリン環(例えば、4,4−ジメチルオキサゾリン)}、
キノリン核{キノリン環(例えば、2−キノリン、3−メチル−2−キノリン、5−エチル−2−キノリン、6−メチル−2−キノリン、6−ニトロ−2−キノリン、8−フルオロ−2−キノリン、6−メトキシ−2−キノリン、6−ヒドロキシ−2−キノリン、8−クロロ−2−キノリン)}、などを挙げることができる。
及びZを含む含窒素複素環としては、吸収特性と高い耐久性の点で、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、又はナフトオキサゾール環が好ましい。
及びRにおけるアルキル基としては、炭素数18以下の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル)、及び炭素数18以下の無置換アルキル基が置換基で置換された置換アルキル基(炭素数18以下の置換アルキル基)が挙げられる。
炭素数18以下の置換アルキル基としては、置換基として例えば、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、及び臭素)、ヒドロキシ基、炭素数8以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシエルボニル、フェノキシカルボニル、及びベンジルオキシカルボニル)、炭素数8以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、及びフェネチルオキシ)、炭素数15以下の単環式アリールオキシ基(例えば、フェノキシ及びp−トリルオキシ)、炭素数8以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ及びプロピオニルオキシ)、炭素数8以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、及びベンゾイル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、モルホリノカルボニル、及びピペリジノカルボニル)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルホニル、及びピペリジノスルホニル)、炭素数15以下のアリール基(例えば、フェニル、4−クロルフェニル、4−メチルフェニル、及びα−ナフチル)などで置換された、炭素数18以下のアルキル基が挙げられる。
及びRにおけるアルキル基の中でも、無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、及びプロピル)、アルコキシ基で置換された置換アルキル基(例えば、メトキシエチル)、スルホアルキル基(例えば、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、及び4−スルホブチル)が好ましい。
Xは、シアニン色素のイオン電荷を中性にするために必要である場合、陽イオン又は陰イオンの存在又は不存在を示すために構造中に含められている。シアニン色素が陽イオンもしくは陰イオンを有すること、又は正味のイオン電荷を持つことは、助色団及び置換基に依存する。
典型的な陽イオンは、アンモニウムイオン及びアルカリ金属イオンであり、例えば、ナトリウム(Na)イオン、カリウム(K)イオン、テトラメチルアンモニウム(N(CH )イオン、テトラブチルアンモニウム(N(C )イオンが挙げられる。
一方、典型的な陰イオンは、無機陰イオン又は有機陰イオンのいずれでもよく、例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
なお、シアニン色素は、カチオン色素、ベタイン色素、アニオン色素の3種類に分類される。発色団としては、アンモニウム型カチオンであるが、N位置換基(一般式(I)中のR,R)の荷電数により、シアニン色素本体の荷電が変化する。
例えばR及びRが荷電を持たない置換基の場合、荷電はアンモニウム部位のみとなるため、シアニン色素本体が1価のカチオンであり、対イオンXが1価のアニオン(例えばX=I)であるカチオン色素となる。逆に、R及びRの一方のみがアニオン荷電を持つ置換基である場合、シアニン色素本体の荷電は中和され、対イオンは存在しないベタイン色素となる。
一方、R及びRがいずれもアニオン荷電を持つ置換基である場合、シアニン色素本体が1価のアニオンであり、対イオンXが1価のカチオン(例えばX=Naイオン)であるアニオン色素となる。本発明の実施形態では、J会合体を形成しやすくなる観点から、アニオン性の色素であることが好ましい。
一般式(I)で表されるシアニン色素のうち、下記一般式(II)で表されるシアニン色素が好ましい。一般式(II)で表されるシアニン色素は、ブルーライトに対してよりシャープな吸収波長を有している。
一般式(II)において、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。V及びVは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Xは、対イオンを表す。
なお、R、R、及びXは、一般式(I)におけるR、R、及びXと同義であり、好ましい態様も同様である。
及びVにおける置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜10の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等)、炭素数1〜18の置換アルキル基(例えば、ベンジル、α−ナフチルメチル、2−フェニルエチル、トリフルオロメチル)、炭素数2〜8のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル)、炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ)、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、モルホリノカルボニル、ピペリジノカルボニル)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルホニル、ピペリジノスルホニル)、カルボキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ)、炭素数1〜10のアルキルチオ基(例えば、エチルチオ)、炭素数1〜5のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル)、スルホン酸基、炭素数6〜15のアリール基(例えば、フェニル、トリル、4−ブロモフェニル)、炭素数3〜15のヘテロアリール基(例えば、2−チエニル)が好ましい。
上記の中でも、V及びVにおける置換基としては、J会合性及び耐久性の点で、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びアルコキシ基がより好ましい。
上記の一般式(I)又は(II)で表されるシアニン色素の具体例を以下に示す。但し、本発明の実施形態においては、下記の具体例に制限されるものではない。
なお、具体例中、「Me」はメチルを、「Et」はエチルを、「Ph」はフェニルを、「benzo」はベンゾ(構造中のベンゼン環に縮環したベンゼン環)を、それぞれ表す。
シアニン色素は、少なくとも一部がJ会合体の形態で色素含有層に含有されていることが好ましい。層中のシアニン色素は、一部がJ会合体を形成してもよいし、全部がJ会合体を形成していてもよい。J会合体を形成していると、シアニン色素の吸収バンドがよりシャープになる。すなわち、半値幅が小さくなるので、黄着色を弱くしつつ、かつ、波長400nm〜500nmの短波長域のブルーライトを効果的に遮断することができる。
J会合体とは、色素単量体での極大吸収波長よりも長波長側にシフトした吸収を示す状態を指し、色素同士がずれた配列状態をとっている。J会合体の吸収波長の半値幅は、色素単量体の半値幅より小さい値を示す。J会合体となった場合の半値幅が小さくなる理由は、必ずしも明らかではないが、フォノン−エキシトン相互作用により色素の振動構造が抑制されるためと考えられる。
シアニン色素のJ会合体が呈する吸収波形において、極大吸収ピークの半値幅が30nm以下であることが好ましい。半値幅が30nm以下と狭い範囲であることは、特定の波長の光を選択的に吸収し得ることを示す。
なお、半値幅とは、半値全幅(FWHM;Full Width at Half Maximum)のことであり、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定し、吸収波形のうち極大の吸光度の半分の値をとる2つの波長の差として求められる。
また、シアニン色素のJ会合体の極大吸収波長としては、400nm〜500nmの範囲が好ましく、410nm〜490nmの範囲がより好ましく、430nm〜470nmの範囲が更に好ましく、450nm〜470nmの範囲が特に好ましい。
極大吸収波長は、分光光度計により測定される値であり、具体的には、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて測定することができる。
一般式(I)で表されるシアニン色素の色素含有層中における含有量としては、色素含有層の全固形分に対して、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましい。シアニン色素の含有量が0.05質量%以上であると、波長400nm〜500nmのブルーライトの透過量を低減又は遮断するのに好適である。また、シアニン色素の含有量が10質量%以下であると、黄着色を支障を来たさない程度に抑えることができる。
(親水性樹脂)
色素含有層は、更に、マトリックスとして親水性樹脂を含むことが好ましい。色素含有層が親水性樹脂を含むことで、基材上に成膜しやすく、シアニン色素を固定化しやすい。
親水性樹脂としては、解離性基を有する樹脂が好ましく、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ−4−スルホン酸スチレンなどが挙げられる。
解離性基を有する樹脂を含有すると、親水性樹脂中においてシアニン色素がJ会合体を形成しやすくなり、色素含有層を形成した場合のブルーライトの吸収ピークがシャープになる。また、シアニン色素が樹脂中に含まれた層が形成されるので、耐久性の良好な色素含有層が期待される。
親水性樹脂の色素含有層中における含有量としては、色素含有層に含まれるシアニン色素の全固形分に対して、1質量%〜99質量%が好ましく、10質量%〜98質量%がより好ましい。親水性樹脂の含有量が10質量%以上であると、シアニン色素がJ会合体を形成しやすく、ブルーライトの吸収ピークがシャープになる。また、親水性樹脂の含有量が98質量%以下であると、ブルーライトの吸収が強くなる点で有利である。
(他の成分)
色素含有層は、必要に応じて、更に、例えば、粘着剤、粘着付与剤、ゴム成分、溶媒、充填剤、界面活性剤(ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等)、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の他の成分を含んでいてもよい。
色素含有層が、親水性樹脂を含有する塗布液を用いて形成される場合、塗布液は溶媒を含むことができる。溶媒としては、水又は有機溶剤が挙げられる。溶媒は、塗布液に含まれる各成分の溶解性又は分散性、及び塗布性を満足できればよい。水としては、イオン交換水等が挙げられ、有機溶剤としては、アルコール(メタノール、エタノール等)、エステル、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素等が挙げられる。
また、色素含有層が、親水性樹脂を含有する塗布液を用いて形成される場合、塗布液には、必要に応じて、重合性化合物、重合開始剤、増感剤、光重合開始剤の安定性に寄与する光安定剤、熱重合禁止剤、凝集防止剤、等の他の成分が含まれていてもよい。
−−親水性樹脂を含有する色素含有層−−
色素含有層が親水性樹脂を含有する場合、親水性樹脂を含む諸成分を溶媒である有機溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、塗布液を基材の所望の領域に塗布する塗布法により、基材上に色素含有層を形成することができる。
また、色素含有層が親水性樹脂を含有する場合、上記の塗布法のほか、仮支持体上に一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層を転写層として有する転写材料を用いて色素含有層を転写する転写法、又は一般式(I)で表されるシアニン色素を溶解した溶液を用いて色素含有層を形成する溶剤染色法により、基材上に色素含有層を形成してもよい。上記の転写法及び溶剤染色法の詳細については、特開平7−13017号公報及び特開2014−47255号公報の記載を参照することができる。
−−ゾルゲル膜−−
色素含有層は、基材上にゾルゲル膜として形成されてもよい。
既述の一般式(I)で表されるシアニン色素は、ゾルゲル膜の形成過程でJ会合体を形成しやすいため、J会合体を含むゾルゲル膜を形成しやすい。既述のように特定構造を有するシアニン色素のJ会合体を含むゾルゲル膜は、波長400nm〜500nmのブルーライトの吸収特性が高く、かつ、長期経時での耐久性に優れている。
ゾルゲル膜中でシアニン色素のJ会合体を得る方法としては、特に、アニオン性のシアニン色素を用いることが好適である。
ゾルゲル膜とは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる元素のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物の膜を指す。アルコキシド化合物は、加水分解及び重縮合により膜形成した後、更に所望により加熱、乾燥されてもよい。
ゾルゲル膜は、基材(例えばプラスチック、ガラス等)との密着性が良好であり、染料を安定に保持することができ、かつ、膜強度が良好になる。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物を原料とするゾルゲル膜は、表面の疎水性に優れ、汚れが付き難くなるという利点も有している。
本発明の一実施形態における色素含有層がゾルゲル膜として形成される場合、ゾルゲル膜としては、例えば、特許第5930833号公報の段落番号0042〜0051又は特許第5868771号公報の段落番号0074〜0087に記載されているゾルゲル硬化物が好適である。
ゾルゲル膜は、例えば、以下の方法で形成されてもよい。
即ち、原料となるアルコキシド化合物を含む液状組成物(ゾルゲル塗布液)を準備又は調製し、ゾルゲル塗布液を基材上に付与して液膜を形成する工程と、液膜中でアルコキシド化合物の加水分解と重縮合の反応(ゾルゲル反応)を起こさせることにより色素含有層を形成する工程と、を少なくとも有する方法により形成されてもよい。
また、上記の方法は、必要に応じて、更に、ゾルゲル塗布液中に溶媒として含まれ得る水を加熱により蒸発させる工程(例えば乾燥工程)を有していてもよい。
上記のゾルゲル塗布液は、アルコキシド化合物を溶媒と混合して調製されてもよい。また、ゾルゲル塗布液は、アルコキシド化合物を含む水溶液を調製し、水溶液を加熱してアルコキシド化合物の少なくとも一部を加水分解及び重縮合させてゾル状態とし、ゾル状態にある水溶液を溶媒と混合して調製されてもよい。
ゾルゲル反応を促進させるため、酸性触媒又は塩基性触媒を併用してもよい。
色素含有層における光の吸収波形において、極大吸収ピークの半値幅は30nm以下であることが好ましい。半値幅が30nm以下と狭い範囲であることは、特定の波長の光を選択的に吸収し得ることを示している。
ここで、半値幅とは、上記と同様に、半値全幅(FWHM)のことであり、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定し、吸収波形のうち極大の吸光度の半分の値をとる2つの波長の差として求められる。
また、色素含有層における極大吸収波長としては、400nm〜500nmの範囲が好ましく、410nm〜490nmの範囲がより好ましく、430nm〜470nmの範囲が更に好ましく、450nm〜470nmの範囲が特に好ましい。
極大吸収波長は、色分光光度計により測定される値であり、具体的には、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて測定することができる。
色素含有層の厚みとしては、特に制限はないが、強度と均一性の観点から、0.1μm〜100μmとすることができ、0.5μm〜50μmが好ましい。
(基材)
本発明の一実施形態の積層体は、基材を備えている。基材としては、ガラス基材、一般的な樹脂基材(例えば、シート、フィルム等)が好適に挙げられる。
基材は、透明性を有する支持体を用いてもよい、
透明性を有する支持体とは、光学的に透明な支持体であること意味し、「透明性」とは、支持体の全光線透過率が85%以上である性質をいい、全光透過率は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
なお、基材の全光透過率は、以下の方法で測定される値である。
基材をUV/visスペクトルメーター(例えば、島津製作所社製のUV/visスペクトルメーターUV3400)を用いて分光スペクトル測定し、全光透過率を測定する。
樹脂基材の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVA)、トリセルロースアセテート(TAC)などが挙げられ、中でも、汎用性の点でPETが好ましい。
樹脂基材は、樹脂を情報によりフィルム状もしくはシート状に成形されたものでもよい。また、樹脂基材として、上市されている市販の樹脂フィルムを使用してもよい。
基材の厚みは、用途、サイズ、強度等の要求又は使用目的等に応じて適宜選択することができる。基材の厚みとしては、一般には5μm〜5000μmであり、5μm〜2500μmが好適である。例えば保護シート材に用いられる基材の場合、厚みは20μm〜500μmが好ましい。
(他の層)
基材には、本発明の一実施形態における効果を損なわない限り、易接着層もしくは粘着層、又はハードコート層等の他の層を有していてもよい。
−−易接着層、粘着層−−
基材の色素含有層を有する側とは反対側に、易接着層又は粘着層を有してもよい。
易接着層又は粘着層に用いられる接着剤又は粘着剤の種類には、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤の例として、「剥離紙・剥離フィルムおよび粘着テープの特性評価とその制御技術」、情報機構、2004年、第2章に記載のアクリル系粘着剤、紫外線(UV)硬化型粘着剤、シリコーン粘着剤等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤とは、(メタ)アクリルモノマーの重合体((メタ)アクリルポリマー)を含む粘着剤をいう。
粘着剤を含む場合には、更に、粘着付与剤が含まれていてもよい。
(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数4以上の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
粘着剤として使用可能な(メタ)アクリルポリマーは、架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成方法は特に制限されず、2官能(メタ)アクリレートを使用する方法、(メタ)アクリルポリマーに水酸基などの反応性基を導入し、導入した反応性基と反応する架橋剤と反応させる方法などが挙げられる。
(メタ)アクリルポリマーに水酸基などの反応性基を導入し、導入した反応性基と反応する架橋剤と反応させる方法の具体例としては、水酸基、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれる1種以上の活性水素を有する基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(メタ)アクリルポリマーとイソシアネート系架橋剤とを反応させる方法が挙げられる。
粘着剤と併用される(メタ)アクリレートは、一つの(メタ)アクリロイル基が含まれる単官能の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
易接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂接着剤、ポリエステル接着剤、アクリル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリアミド接着剤、シリコーン接着剤等が挙げられ、接着強度がより高いという観点から、ウレタン樹脂接着剤又はシリコーン接着剤が好ましい。
接着剤は、上市されている市販品を使用してもよい。市販品の例としては、東洋インキ社製のウレタン樹脂系接着剤(例えばLIS−073−50U:商品名)が挙げられ、硬化剤(CR−001:商品名、東洋インキ社製)と併用することも好ましい。
接着層又は粘着層の厚みとしては、粘着力とハンドリング性の両立の点で、5μm〜100μmが好ましい。
本発明の一実施形態の積層体は、色素含有層が粘着剤を含有してもよい。
色素含有層が粘着剤を含有する場合、基材上に形成された色素含有層が粘着層として機能する。したがって、積層体を所望とするディスプレイに貼着する場合は、粘着層を兼ねる色素含有層の表面をディスプレイの表面に直接接触させて密着させてもよい。
−−ハードコート層−−
本発明の一実施形態の積層体は、耐傷性を向上させる観点から、基材に配置された色素含有層の上に更にハードコート層を配置してもよい。
ハードコート層は、被着体(画像表示装置等)に積層体を配置した場合の露出面となる最表層として設けられていることが好ましい。ハードコート層が最表面に配置されることで、耐擦傷性がより良好なものとなる。
ハードコート層は、ウェット塗布法又はドライ塗布法(真空成膜)のいずれで形成されてもよいが、生産性に優れるウェット塗布法により形成されることが好ましい。
ハードコート層としては、例えば、特開2013−45045号公報、特開2013−43352号公報、特開2012−232459号公報、特開2012−128157号公報、特開2011−131409号公報、特開2011−131404号公報、特開2011−126162号公報、特開2011−75705号公報、特開2009−286981号公報、特開2009−263567号公報、特開2009−75248号公報、特開2007−164206号公報、特開2006−96811号公報、特開2004−75970号公報、特開2002−156505号公報、特開2001−272503号公報、国際公開第12/018087号、国際公開第12/098967号、国際公開第12/086659号、国際公開第11/105594号に記載のハードコート層を適用することができる。
ハードコート層の厚みとしては、耐擦傷性がより良好となる点で、5μm〜100μmが好ましい。
本発明の一実施形態の積層体は、極大吸収波長における透過率が1%以上30%以下であることが好ましい。極大吸収波長における透過率が1%以上30%以下であると、波長400nm〜500nmの波長領域の光、特にブルーライトの透過量が少なく、又は光の遮断性に優れる。
極大吸収波長における透過率としては、10%以上30%以下がより好ましい。
上記の本発明の一実施形態に係る積層体は、用途として、入射するブルーライトの透過量調整又は遮断する目的で好適に用いることができ、例えば、透過光調整材、保護シート材等として使用することができ、具体的な例として、眼鏡用レンズなどに好適である。
本発明の一実施形態の眼鏡は、既述の本実施形態の眼鏡レンズを備える。
即ち、本実施形態の眼鏡は、既述の本実施形態の眼鏡レンズを適切な眼鏡フレームに装着した構成を有する。
本実施形態の眼鏡は、ブルーライトの透過低減又は遮断性が良好であることから、画像表示装置のディスプレイを観る作業などを長時間行った場合の眼の疲労の軽減が期待できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(実施例1)
シアニン色素I−12(アニオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを、0.1質量%ゼラチン水溶液100ml中に添加し、60℃にて30分間加熱した後、室温で2時間放置してゼラチン水溶液を得た。
得られたゼラチン水溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET;以下同じ。)フィルム上にバー塗布し、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムに対して、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて透過光の吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は462nmであり、極大吸収波長での透過率は20%であり、半値幅は15nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると大幅に薄淡黄色であった。
(実施例2)
シアニン色素I−11(カチオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを、メタノール10mlに溶解させた後、0.1質量%ゼラチン水溶液100ml中に添加し、60℃にて30分間加熱した後、室温で2時間放置してゼラチン水溶液を得た。
得られたゼラチン溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布し、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムを、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は455nmであり、極大吸収波長での透過率は25%であり、半値幅は28nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると大幅に淡黄色であった。
(実施例3)
シアニン色素I−9(アニオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを、0.1質量%ゼラチン水溶液100ml中に添加し、60℃にて30分間加熱した後、室温で2時間放置してゼラチン水溶液を得た。
得られたゼラチン水溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布し、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムを、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は440nmであり、極大吸収波長での透過率は25%であり、半値幅は20nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると淡黄色であった。
(実施例4)
シアニン色素I−6(カチオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを、0.1質量%ゼラチン水溶液100ml中に添加し、60℃にて30分間加熱した後、室温で2時間放置してゼラチン水溶液を得た。
得られたゼラチン水溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布し、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムを、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は435nmであり、極大吸収波長での透過率は28%であり、半値幅は30nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると大幅に薄淡黄色であった。
(実施例5)
2.5mlのテトラエトキシシラン(東京化成工業社製)とエタノール50mlとを混合し、これに濃塩酸0.73mlを添加し、室温下1時間撹拌した。次に、シアニン色素I−12(アニオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを添加して3時間撹拌した後、室温で2時間放置してゾルゲル溶液を得た。
得られたゾルゲル溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布し、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムを、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は460nmであり、極大吸収波長での透過率は18%であり、半値幅は16nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると大幅に薄淡黄色であった。
(実施例6)
2.5mlのテトラエトキシシラン(東京化成工業社製)とエタノール50mlを混合し、これに濃塩酸0.73mlを添加し、室温下1時間撹拌した。次に、シアニン色素I−11(カチオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを添加し、3時間撹拌した後、室温で2時間放置してゾルゲル溶液を得た。
得られたゾルゲル溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布して、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムをUV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は455nmであり、極大吸収波長での透過率は28%であり、半値幅は26nmであった。また、保護シートは、外見の色相が黄色味を帯びていたが、色味は比較例1に比べると大幅に薄淡黄色であった。
(実施例7)
2.5mlのテトラエトキシシラン(東京化成工業社製)とエタノール50mlを混合し、これに濃塩酸0.73mlを添加し、室温下1時間撹拌した。次に、シアニン色素I−2(アニオン性色素;既述の一般式(I)で表されるシアニン色素の具体例)0.3mgを添加し、3時間撹拌した後、室温で2時間放置してゾルゲル溶液を得た。
得られたゾルゲル溶液を厚み100μmのPETフィルム上にバー塗布して、塗布膜を真空下で乾燥させて厚み10μmの色素含有層を形成し、保護シート(積層体、保護シート材)を作製した。
色素含有層が形成されたPETフィルムを、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は410nmであり、極大吸収波長での透過率は25%であり、半値幅は18nmであった。また、保護シートは、外見の色味は淡白色であった。
(比較例1)
実施例1において、シアニン色素I−12を、下記のオキソノール色素O−1に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、保護シートを作製し、厚み10μmの色素含有層が形成されたPETフィルムに対して透過光の吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は490nmであり、極大吸収波長での透過率は25%であり、半値幅は28nmであった。また、保護シートは、外見の色相がオレンジ色であった。
(比較例2)
実施例6において、シアニン色素I−11を、上記のオキソノール色素O−1に代えたこと以外は、実施例6と同様にしてゾルゲル膜の作製を行った。
しかし、塩酸溶液にオキソノール色素O−1を添加すると、プロトネーションにより無色の溶液となり、ブルーライトを遮断する保護シートとして機能しないことがわかった。
(評価)
PETフィルム上に色素含有層が形成された保護シートに対して、キセノンランプにて紫外線(UV)を20万luxで70時間照射(370nmの紫外線カットフィルターを装着)した。その後、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定し、下記式から透過率の変化量(%;透過率変化T)を求め、耐光性を評価する指標とした。透過率変化Tの結果は、下記表1に示す。
透過率変化T = UV照射後の透過率(%)−UV照射前の透過率(%)
表1に示すように、一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層を備えた積層体である本発明の実施形態に係る保護シートは、UV照射による透過率の増加幅が小さく抑制される効果が認められた。特に、アニオン性のシアニン色素を用いた場合、カチオン性のシアニン色素に比べて透過率の増加抑制効果に優れていた。
また、色素含有層としてゾルゲル膜を形成した場合、ゼラチンを含有する層とした場合に比べて、透過率の増加がより抑制された。これは、色素単量体より比較的安定なシアニン色素のJ会合体が形成され、J会合体がゾルゲル膜中に存在しているためと推察される。
これに対して、オキソノール色素を用いた比較例では、強い着色があるだけでなく、透過率の増加が著しく発生し、ブルーライトの透過抑制効果に劣っていた。また、比較例2に示すように、オキソノール色素では、ゾルゲル膜を形成しようとした場合に無色の溶液となり、ブルーライトを遮断する保護シートとしての機能を得ることは困難であった。
(実施例8)
実施例1で作製した保護シートの、色素含有層が形成された側とは反対側に、シリコーン系粘着剤(DC7652(商品名)、ダウコーニング社製)を塗布して粘着層を形成した。保護シートの粘着層の表面を、被着体であるディスプレイの前面に接触させて、保護シートをディスプレイに貼り付けたところ、着色による外見上の違和感が生じていないことが確認された。
(実施例9)
実施例5と同様の方法でゾルゲル溶液を用意し、用意したゾルゲル溶液中にガラスレンズを浸漬し、乾燥させて、表面にゾルゲル膜(色素含有層)が形成されたレンズ(積層体)を作製した。
作製されたレンズについて、UV/visスペクトルメーターUV3200(島津製作所社製)にて吸収スペクトルを測定した。
測定の結果、極大吸収波長は460nmであり、極大吸収波長での透過率は10%であり、半値幅は16nmであった。また、レンズは外見上、黄色味を帯びたが、薄淡黄色であった。
(実施例10)
実施例9で作製した色素含有層付きのレンズを金属製フレームに取り付け、眼鏡Aを作製した。作製した眼鏡Aを装着し、以下の評価を行った。
<評価方法>
実施例9において、ゾルゲル溶液中にガラスレンズを浸漬する操作をしなかったこと以外は実施例9と同様のガラスレンズを用いて眼鏡を作製し、比較用の眼鏡Bとした。比較用の眼鏡Bは、ブルーライトの波長域に光の吸収を有しないガラスレンズが取り付けられている。
実施例9で作製したレンズが取り付けられた眼鏡Aと、比較用の眼鏡Bと、の双方を順に装着し、それぞれについて液晶ディスプレイを3時間連続して眺めた場合の疲労感を評価した。
評価は、評価者2名にて行い、2名の結果を平均した値をもとに評価した。
その結果、比較用の眼鏡Bでは疲労感を覚えたのに対し、眼鏡Aでは疲労感が少なかった。実施例9で作製したレンズが取り付けられた眼鏡Aは、比較用の眼鏡Bに比べ、疲労感が著しく低減されることが明らかになった。

Claims (11)

  1. 基材と、下記一般式(I)で表されるシアニン色素を含む色素含有層と、を有する積層体。


    式中、Z及びZは、それぞれ独立に、含窒素複素環を形成するための原子団を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Xは、対イオンを表す。
  2. 前記シアニン色素は、少なくとも一部がJ会合体である請求項1に記載の積層体。
  3. 前記シアニン色素が、アニオン性である請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記色素含有層は、更に、親水性樹脂を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記色素含有層が、ゾルゲル膜である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記シアニン色素は、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体。

    式中、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。V及びVは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。n1及びn2は、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。n1≧2を満たす場合、2つのVは互いに結合して環を形成していてもよく、n2≧2を満たす場合、2つのVは互いに結合して環を形成していてもよい。Xは、対イオンを表す。
  7. 極大吸収波長における透過率が1%以上30%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体を有する透過光調整材。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体を有する保護シート材。
  10. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体を有する眼鏡用レンズ。
  11. 請求項10に記載の眼鏡用レンズを備えた眼鏡。
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