JP2018035924A - 電気機器用真空断熱パネル - Google Patents

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努 東
弘久 三島
Hirohisa Mishima
弘久 三島
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Takefumi Nakako
武文 仲子
誠一 久保庭
Seiichi Kuboniwa
誠一 久保庭
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【課題】真空断熱パネルの製造直後から一定期間内の熱伝導率の上昇を抑制することにより、製造直後の断熱性能に近い良好な断熱性能を長期にわたって維持すること。【解決手段】無機繊維からなる芯材1をステンレス鋼板製の外包材2で包み込み、その芯材1を包み込んだ外包材2の内部空間3が真空状態とされた真空断熱パネルを製造する方法であって、当該芯材1が含有する水分量を0.05重量%以下とし、前記外包材2の内部空間側となる面の表面粗さRaが0.2μm以下であり、外包材2の内部空間3の圧力を1Pa以下とした状態で当該外包材2の周縁部を溶接により封止する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば飲料物の自動販売機や冷蔵庫、給湯機器等の熱交換器、電気ポット、コピー機等の電気機器に用いられる真空断熱パネルに関する。
近年、地球環境問題である温暖化を抑制することの重要性から、省エネルギー化が望まれており、様々な設備の省エネルギー対応が推進されている。飲料物の自動販売機や冷蔵庫、自動車の冷却容器、給湯機器等の熱交換器、電気ポット等の保温機器に関しては、消費する電気量を抑制するため、内部空間の断熱性能を高め、これによって外部から入り込む熱を遮る遮熱性能も向上させることが試みられている。
断熱性能を向上させる手段としては、真空断熱パネルを用いることが、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示された真空断熱パネルは、無機繊維からなる芯材を、ガス吸着剤とともにガスバリア性フィルムからなるケースに収納し、ケース内部を真空吸引して、開口部をフィルムのヒートシールで封止することで製造されたものである。
特開2004−308691号公報
特許文献1に開示された真空断熱パネルでは、開口部の封止方法として、ヒートシールを採用していることから、当該封止部から水分が透過し真空度が低下して、熱伝導率が上昇するという問題がある。特に自動販売機等は、屋外環境によって長い期間において水分に接する機会が多く、これによって真空断熱パネルの周辺が湿潤環境となり、水分の透過が多くなる。そのため、時間の経過とともに真空度が低下してしまう。
また、ガス吸着剤を外包材内に芯材とともに封入しているので、封止部から透過して内部に入った水分はガス吸着剤に吸着されるため、ある程度の期間は真空度の低下を抑制できるが、ガス吸着剤の吸着量には限度があるため、ある程度の期間を過ぎると真空度が低下し熱伝導率が上昇する。
本発明は、かかる実情に鑑みて創案されたものであり、真空断熱パネルの製造直後から、一定期間内の熱伝導率の上昇を抑制することにより、製造直後の断熱性能に近い良好な断熱性能を長期にわたって維持することが可能な真空断熱パネルを提供することを目的とする。
本発明の真空断熱パネルは、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルであって、前記芯材を加熱して当該芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とし、前記外包材の内部空間側となる面の表面粗さRaが0.2μm以下であり、前記芯材を前記外包材で包み込み、前記芯材を包み込んだ外包材の内部空間の圧力を1Pa以下とした状態で当該外包材の周縁部を溶接により封止したことを特徴とするものである。
本発明の真空断熱パネルの性能劣化は、外包材の封止を溶接で行っているため、水分透過を抑制でき、これによっても経時変化を抑制できる。
本発明の真空断熱パネルの製造は、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルを製造するものを前提とし、前記芯材を加熱して当該芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とする工程と、前記芯材を前記外包材で包み込む工程と、前記芯材を包み込んだ外包材の内部空間の圧力を1Pa以下とした状態で当該外包材の開口部を溶接により封止する封止工程の方法で実施できる。
本発明に係る真空断熱パネルによれば、製造直後の断熱性能に近い良好な断熱性能を長期にわたって維持することができる可能性が高まる。
真空断熱パネルの分解図である。 真空断熱パネルの製造工程の概略を示す図である。 含有する水分量が異なる複数の芯材をそれぞれ使用した真空断熱パネルの熱伝導率の経時変化を示すグラフである。
以下、真空断熱パネルの実施形態について説明する。この実施形態に係る製造方法によって製造される真空断熱パネルは、例えば図1に示すように、芯材1をステンレス鋼板製の外包材2で包み込み、その芯材1を包み込んだ外包材2の内部空間3を真空状態としたものである。
芯材1は、製造して出来上がった真空断熱パネル10の外包材2が大気圧によって圧潰しないように、内側から外包材2を支持するものである。この芯材1には無機繊維が使用される。無機繊維としては、グラスウール、セラミックファイバー等が例示される。この芯材1には、バインダーを一切含まないものを使用することが望ましい。バインダーを含む芯材を使用すれば、経時的に芯材からアウトガスが発生し、断熱性能が経時的に悪化するおそれがあるからである。
外包材2は、2枚の外包板2A,2Bで構成されている。これらの外包板2A,2Bには、ステンレス薄鋼板が使用される。2枚の外包板2A,2Bは、周縁部の形状およびサイズが一致している。少なくとも一方の外包板2Bに膨出部4が形成されており、2枚の外包板2A,2Bの周縁部を揃えて重ね合わせることで、一方の外包板2Bの膨出部4の凹側面と、もう一方の外包板2Aとの間に内部空間3が形成される。外包板2Aと2Bで構成される内部空間3内側の外包板表面の表面粗さRaは0.2μm以下であり、この内部空間3に芯材1が収容される。図面に例示する2枚の外包板2A,2Bは、厚さ方向から視て矩形状のものとなっている。
外包材2の内部空間3側となる面の表面粗さRaを規制するのは、外包材2の内部空間3側の表面に吸着する水分に関連する。つまり、表面粗さRaが大きい表面ほど、見掛け表面積よりも実際の表面積は大きいから、外包材2の内部空間3側の面の表面粗さが大きいほど、真空断熱パネル10の内部空間に持ち込まれる水分量は増えるためである。表面粗さRaを0.2μm以下とする理由については後述する。
この実施形態における真空断熱パネル10の製造は、芯材1が含有する水分を取り除く水分除去工程と、芯材1を外包材2で包み込む芯材包込工程と、外包材2を溶接する溶接工程と、で主に実施されている。
水分除去工程においては、芯材1を加熱処理することにより、芯材1が含有する水分を水分量が0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)となるまで取り除く。なお、芯材1の水分量を0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)とする理由については後に詳述する。
芯材包込工程においては、芯材1の含有水分量が前記の値以下となり、芯材1の温度が所定温度まで低下した後に、芯材1を外包板2Bの膨出部4の凹側に収容して、2枚の外包板2A,2Bの周縁部を揃えて重ね合わせる。これにより、芯材1が外包板2で包み込まれた状態となる。
溶接工程について、図2を用いて説明する。溶接工程は、外包材2の周縁部の一部に開口部6を設けるために行う第1溶接工程と、真空中で行い、内部空間3を真空状態に保ったまま、第1溶接工程で設けた開口部を封止するために行う第2溶接工程に分けられる。第一溶接工程は、大気中で行うことができる。
溶接方法としては、シーム溶接、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接など公知の溶接方法を用いることができる。ただし、外包板2A,2Bが薄いステンレス鋼板である場合は、シーム溶接を用いることが好ましい。これは、外包板2A,2Bが薄いステンレス鋼板であるため、膨出部を絞り加工により形成した場合は、周縁部にしわが生じていることがあり、しわが生じている周縁部を溶接により接合すると、2枚の外包板2A,2Bの隙間において溶接不良が発生する可能性が高いためである。溶接不良としては、溶け落ち等が挙げられる。そのため、外包板2A,2Bの上下から加圧しつつ溶接することが可能なシーム溶接を用いて、しわを潰しながら隙間なく溶接することが好ましい。
ここでは、図2を参照しながら、シーム溶接を用いて第一溶接工程、第二溶接工程を行う手順を説明する。
図2(a)は、第一溶接工程の説明図である。芯材1を外包板2Bの膨出部4の凹側に収容し、2枚の外包板2A,2Bの周縁部を揃えて重ね合わせた状態の周縁部に対し、シーム溶接により外包板の板厚方向に加圧しながら、外包板2の4辺の周縁部のうち3辺(7a、7b、7c)に対し、それぞれに直線状にシーム溶接を行って封止する。その結果、周縁部の1辺が開口部6として残ることになる。この第一溶接工程は、大気中で行うことができる。
第二溶接工程は、真空中で行う必要がある。これは、開口部6を経由して内部空間3を排気し、圧力1Pa以下の真空状態とするためである。そこで、真空チャンバー内にシーム溶接機を設置した装置を用意し、この装置の中で開口部6に対して真空中においてシーム溶接を行うことによって封止部7dを形成すれば、本発明の真空断熱パネルを製造することができる。
<芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とする理由>
つぎに、芯材1が含有する水分量を0.05重量%以下とする理由について説明する。
図3に、芯材1が含有する水分量をどの程度まで除去すれば、ある程度の断熱性能を維持することができるかを調査した結果示す。この図は、含有する水分量が異なる複数のグラスウールからなる芯材1をそれぞれ使用した真空断熱パネルを複数試作し、試作直後の熱伝導率と、熱伝導率の経時変化が概ね止まる3ヶ月後の熱伝導率とを調査した結果を示している。一般的に世の中で使用されている高性能な真空断熱材の、製造直後の熱伝導率の平均的なレベルである熱伝導率5mW/m・Kを許容熱伝導率の上限とした場合、この熱伝導率を満足するものは、芯材1の含有する水分量が0.05重量%程度であることがこの調査結果からわかる。なお、芯材1が含有する水分量の測定には、京都電子工業株式会社製の電量滴定式カールフィッシャー水分計を使用した。
この調査結果により、グラスウールからなる芯材1の含有水分量を0.02重量%まで除去することにより、長期間良好な断熱性能を維持することが可能な真空断熱パネル10を製造できることが確認できる。また、ある程度の熱伝導率の経時変化はあるものの、最終的には熱伝導率が5mW/m・K以下におさまることを期待できる芯材1の含有水分量として、0.05重量%が上限であることがわかる。このことから、本実施形態においては、芯材1の含有水分量を0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)とした。
(実施例1)
以下、真空断熱パネル10の具体的な実施例について説明する。芯材1を包み込む外包材2を構成する外包板2A,2Bには、寸法が220mm×220mm×厚さ100μmのステンレス箔(SUS304)を用いた。ステンレス箔(SUS304)は、表面粗さRaが、それぞれ0.05μm、0.10μm、0.20μm、0.30μm、0.40μmの5種類のものを準備した。また、一方の外包板2Bには、プレス成形の絞り加工により、190mm×190mm×高さ5.0mmの膨出部4を設けた。
また、芯材1には、約1200g/mのグラスウールを用いた。そして、このグラスウールを、あらかじめ大気雰囲気の電気炉に挿入して、温度200℃、3時間の加熱処理を行ったのち、炉から取り出し、すみやかに室温(20℃)、相対湿度30%のデシケータに移して30分間保持する冷却処理を行った。この加熱処理と冷却処理の条件は、予備実験を行って、この芯材1が含有する水分量が0.03〜0.04重量%となるように決定した条件である。
その後、冷却処理後の芯材1をデシケータから取り出し、外包板2A、芯材1、外包板2Bの順に重ね合わせた。このとき芯材1は、外包板2Bに設けられている膨出部4の内部に隙間なく充填されるように収容した。そして、外包板2Aの周縁部と外包板2Bの周縁部を、大気中でシーム溶接によって加圧しながら溶接して接合した。このシーム溶接は、矩形の外包板2A,2Bの3辺の外周に沿ってシーム溶接を3回に分けて、それぞれ直線状に溶接し、残りの1辺を開口部として残した。
用いたシーム溶接機は、単相交流式で、上側電極は、直径が100mm、厚さ4mmの円盤状であり、電極先端の曲率は20Rとした。下側電極は、厚さ4mmのブロック状である。上側電極と下側電極は、いずれもクロム銅製である。溶接条件は、加圧力:150N、溶接速度:1m/min、溶接電流:1.6kA、通電時間のon/off比は3ms/2msとした。
次に、3辺を溶接した被溶接材とシーム溶接機を真空チャンバー内に持ち込み、真空チャンバーを真空ポンプに接続して外包板2A,2Bの内部空間の圧力が1Pa以下になるまで真空排気したのち、そのまま真空中で開口部を溶接して封止した。
製造した真空断熱パネルの性能評価として、熱伝導率を評価した。次の環境下での熱伝導率の経時変化を測定して行った。
まず、製造直後の真空断熱パネルの熱伝導率を測定し、そのあと、真空断熱パネルを、高温環境と低温環境の両方を繰り返す環境負荷試験に供した。詳しくは、真空断熱パネルを80℃の温度環境で12時間保持したあと、−15℃の温度環境で12時間保持し、その後は、これらの温度環境を12時間毎に交互に繰り返す温度サイクルを形成した。この環境負荷試験を開始して60日経過した時点で真空断熱パネルを取り出し、熱伝導率を測定した。熱伝導率の測定後には、再び、上記環境負荷試験を継続した。その後も60日経過ごとに同様に真空断熱パネルを取り出し、熱伝導率を測定し、環境負荷試験を継続した。
熱伝導率の評価は、英弘精機社製の熱伝導率測定装置HC−074/200を用い、真空断熱パネルの中央部の平均温度が25℃となる条件で、ステンレス箔の表面粗さRaが異なる複数の真空断熱パネルについて熱伝導率を測定した。詳細には、ステンレス箔の表面粗さRaが同じ真空断熱パネル3体についてその平均値を求めて、ステンレス箔の表面粗さRaごとの熱伝導率とした。
表1に、真空断熱パネルの製造直後から、環境負荷試験60日ごとの時点における熱伝導率の測定結果を示す。
Figure 2018035924
この表1から、外包材に用いたステンレス鋼板の表面粗さRaが小さいほど、製造直後からの日数が経過しても熱伝導率の増大が小さいことが明らかである。特に、ステンレス鋼板の表面粗さRaが最も小さい0.05μmの真空断熱パネル(表1中にNo.Aで示すもの)は、製造直後の熱伝導率と比較して、180日後における熱伝導率が殆ど増加しておらず、断熱性能の劣化という点ではきわめて優秀な真空断熱パネルであった。
ステンレス鋼板の表面粗さRaが最も小さい0.05μmの真空断熱パネル(表1中にNo.Aで示すもの)以外の真空断熱パネルは、製造直後から180日後までの間にそれぞれ熱伝導率の増大が認められるものの、どの真空断熱パネルも熱伝導率が大きく増大しているのは製造直後から60日後までの間であり、その後の変化は小さく熱伝導率は安定している。このことは、製造直後から60日後までに、外包材に使用するステンレス鋼板の表面に吸着して持ち込まれた水分の大部分が、真空断熱パネルの温度上昇によってガス分子となって真空断熱パネルの内部空間に放出されたためである。
また、製造直後から60日以降は、熱伝導率の上昇が非常に小さい。これは、本発明の真空断熱パネルは、外包材2Aと2Bの周縁部の接合にヒートシールを用いるのでなくシーム溶接によって接合したため、周縁部から真空断熱パネルの内部に水分が浸入しなかったことが分かる。すなわち、溶接構造は、真空断熱パネルの断熱性能を長期間に渡って維持するために有効である。
さらに、表1に示した結果から、外包材2の内部空間3側の面の表面粗さRaは、熱伝導率の変化が小さい点を考慮すると、0.2μm以下であることが指標となる。
本発明を実施することにより製造された真空断熱パネルは、飲料物の自動販売機や冷蔵庫、給湯機器等の熱交換器、電気ポット、コピー機等の電気機器に好適に用いられる。
1 芯材
2 外包材
3 内部空間
4 膨出部
6 開口部
10 真空断熱パネル

Claims (1)

  1. 無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルであって、
    前記芯材が含有する水分量が0.05重量%以下で、
    前記外包材の内部空間側となる面の表面粗さRaが0.2μm以下であり、
    前記芯材を包み込んだ外包材の内部空間の圧力が1Pa以下であり、
    外包材の周縁部を溶接により封止したことを特徴とする電気機器用真空断熱パネル。
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