(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンの制御装置を備えたエンジンシステムの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのディーゼルエンジンである。なお、エンジンの具体的種類はこれに限らず、例えば、ガソリンエンジンであってもよい。
エンジンシステムは、エンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排気を車両外部に排出するための排気通路40と、排気通路40を通過する排気の一部を吸気通路30に還流するためのEGR装置50と、排気通路40を通過する排気により駆動される第1ターボ過給機60および第2ターボ過給機70とを備える。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド5と、気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン4とを有している。ピストン4の上方には燃焼室9が形成されている。
シリンダヘッド5には、インジェクタ20が、各気筒2につきそれぞれ1組ずつ設けられている。インジェクタ20は、そのピストン4側の先端部が燃焼室9の中心部を臨むような姿勢で取り付けられている。
インジェクタ20は燃焼室9内に燃料を噴射する。噴射された燃料と空気との混合気は燃焼室9で燃焼し、ピストン4はその燃焼による膨張力で押し下げられて上下に往復運動する。
ピストン4はコネクティングロッドを介してクランク軸7と連結されており、ピストン4の往復運動に応じて、クランク軸7はその中心軸回りに回転する。
シリンダヘッド5には、吸気通路30から供給される空気を各気筒2の燃焼室9に導入するための吸気ポート16と、吸気ポート16を開閉する吸気弁18と、各気筒2の燃焼室9で生成された排気を排気通路40に導出するための排気ポート17と、排気ポート17を開閉する排気弁19とが設けられている。
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31、第1ターボ過給機60のコンプレッサ61、第2ターボ過給機70のコンプレッサ71、インタークーラ35、スロットルバルブ36a、サージタンク37が設けられている。サージタンク37よりも下流側には、各気筒2とそれぞれ個別に連通する独立通路が設けられており、各気筒2には、エアクリーナ31でろ過されて各コンプレッサ61,62によって圧縮された後インタークーラ35によって冷却された空気が、サージタンク37およびこれら独立通路を介して分配される。
なお、吸気通路30には、第2ターボ過給機70のコンプレッサ71をバイパスするコンプレッサバイパス通路33と、この通路33を開閉するバルブ33aが設けられており、このバルブ33aが開弁された場合は、空気は、第2ターボ過給機70のコンプレッサ71により圧縮されることなくインタークーラ35に流入する。
スロットルバルブ36aは、吸気通路30を開閉するものである。スロットルバルブ36aは、吸気通路30のうち、後述するEGR通路51の接続部分よりも上流側に設けられている。
スロットルバルブ36aはバタフライ弁であって吸気通路30の流路と直交する方向に延びる軸回りに回転して、吸気通路30を開閉する。吸気通路30には、スロットルバルブ36aを駆動するためのバルブアクチュエータ36bが設けられており、スロットルバルブ36aはこのバルブアクチュエータ36bによって回転駆動される。バルブアクチュエータ36bは、例えば、電動式であって、供給される電流のDUTY比が変更されることでスロットルバルブ36aの開度を変更する。
図2は、スロットルバルブの周辺を拡大して示した概略断面図である。この図2に示すように、具体的には、スロットルバルブ36aは、図2に鎖線で示す全閉の位置、すなわち、吸気通路30の内側に形成された流路のほぼ全体を塞ぐ位置と、図2に実線で示す全開の位置との間で回転駆動され、スロットルバルブ36aの開度は、これら全閉位置と全開位置との間で連続的に変更される。本実施形態では、スロットルバルブ36aは、全閉位置から図3の矢印Y1で示した方向に82度回転した位置が全開位置となっており、全閉位置を0度として0度から82度の間でその開度が変更可能となっている。
排気通路40には、上流側から順に、第1ターボ過給機60のタービン62と、第2ターボ過給機70のタービン72と、排気中の有害成分を浄化するための複数の浄化装置81〜85とが設けられている。
各ターボ過給機60,70は、タービン62,72が、排気通路40を流れる排気のエネルギーを受けて回転し、これに連動して各タービン62,72に連結されているコンプレッサ61,71が回転することにより、吸気通路30を流通する空気を圧縮(過給)する。
排気通路40には、第1ターボ過給機60のタービン62をバイパスする第1タービンバイパス通路41と、この通路41を開閉するバルブ41aと、第2ターボ過給機70のタービン72をバイパスする第2タービンバイパス通路42と、この通路42を開閉するバルブ42aとが設けられており、各バイパス通路41,42が各バルブ41a,42aにより開閉されることで、排気が各タービン62,72を通過するか、各タービン62,72をバイパスするかが変更される。
例えば、両バルブ41a,42aが開弁されたときは、排気のほとんどはいずれのタービン62,72も通過せず浄化装置81に流れ込み、吸気は過給されることなくエンジン本体1に導入される。
本実施形態では、浄化装置として、上流側から順に、NSC(NOx Storage Catalyst)装置81、DOC装置82、DPF(Disel Particulate Filter、フィルタ)83が設けられるとともに、DPF83のさらに下流にSCR(Selective Catalytic Reduction)装置84、スリップ触媒装置85が設けられている。
NSC装置81は、NOx吸蔵還元触媒81aが内蔵された触媒装置であり、排気中のNOxを吸蔵して外部への排出を抑制する。
また、NSC装置81は、還元剤が供給されることで吸蔵しているNOxを還元して無害なN2に変化させる。具体的には、後述するECU100は、NSC装置81に吸蔵されているNOxの量を推定する。そして、ECU100は、この推定量が所定量以上になると、NSC装置81に吸蔵されているNOxを還元するために、気筒2内の混合気の空気過剰率λをリッチ(1未満)にして排気に未燃の燃料を含有させ、この未燃の燃料を還元剤としてNSC装置81に供給するDeNOx制御を実施する。このDeNOx制御によって、NSC装置81には未燃の燃料が還元剤として供給され、これによりNSC装置81に吸蔵されているNOxは還元する。
DOC装置82は、酸化触媒82aが内蔵された触媒装置である。
DPF83は、排気中の煤等の粒子状物質を捕集可能なフィルタであり、排気中の煤等を捕集して外部への排出を抑制する。
このDPF83に捕集された煤は、DPF再生制御の実施によって適宜除去される。具体的には、ECU100は、DPF83に捕集されている煤の量を推定する。そして、ECU100は、この煤の推定量が所定量以上になると、この煤を燃焼除去するために、気筒2内の混合気の空気過剰率λをリッチ(1未満)にして排気に未燃の燃料を含有させ、この未燃の燃料をDPF83内で燃焼させる再生制御を実施する。
SCR装置84は、尿素が分解されて生じたアンモニアの供給を受けてNOxを還元する触媒84aが内蔵された触媒装置である。本実施形態では、排気通路40のうちDPF83とSCR装置84の間の部分に、尿素を添加する尿素インジェクタ49が設けられており、この尿素インジェクタ49からSCR装置84に向けて尿素が供給される。
スリップ触媒装置85は、酸化触媒85aが内蔵された触媒装置である。スリップ触媒装置85は、主として、SCR装置84から排出されたアンモニアを酸化して無害化する。
EGR装置50は、排気の一部を吸気側に還流するためのものである。EGR装置50は、排気通路40における第2タービン62よりも上流側の部分と、吸気通路30のうちインタークーラ35よりも下流側の部分とを接続するEGR通路51を備えており、このEGR通路51を介して一部の排気(未満、EGRガスという場合がある)を吸気側に還流させる。
本実施形態では、図2に示すように、EGR通路51の下流側の先端部分の外側面に開口孔が形成されており、この開口孔が形成された先端部分が吸気通路30の内側に挿入されている。そして、この開口孔を通してEGRガスがEGR通路51から吸気通路30に流入するようになっている。
EGR通路51は、その途中で第1EGR通路51aと第2EGR通路51bとに分岐している。第1EGR通路51aには、EGRクーラ55が設けられており、この第1EGR通路51aを通過するガスはEGRクーラ55により冷却される。第1EGR通路51a、第2EGR通路51bにはそれぞれ各通路51a,51bを開閉する第1EGRバルブ52a、第2EGRバルブ52bが設けられており、これらEGRバルブ52a,52bの開閉によって、EGRガスの還流量が変更されるとともに、EGRガスの経路、すなわち第1EGR通路51aと第2EGR通路51bの両方の通路を通してEGRガスを還流させるかあるいはどちらの通路を通してEGRガスを還流させるかが変更される。以下、適宜、このEGRガスの経路をEGR経路といい、第1EGR通路51aを通してEGRガスを還流させる経路を第1経路、第2EGR通路51bを通してEGRガスを還流させる経路を第2経路という。
(2)制御系
次に、図3を用いて、エンジンシステムの制御系について説明する。当実施形態のエンジンシステムは、車両に備わるECU(エンジン制御ユニット、スロットル制御手段、EGR制御手段)100によって制御される。ECU100は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM、I/F等から構成されるマイクロプロセッサである。
ECU100には、各種センサからの情報が入力される。例えば、ECU100は、エンジン回転数センサSE1、エアフローセンサSE2、吸気圧センサ(吸気圧検出手段)SE3、スロットル開度センサSE4、第1EGR開度センサSE5、排気酸素濃度センサSE6、エンジン水温センサSE7、アクセル開度センサSE8、車速センサSE9等と電気的に接続されており、これらのセンサSE1〜SE9等からの入力信号を受け付ける。
エンジン回転数センサSE1は、クランク軸7の回転数をエンジン本体の回転数すなわちエンジン回転数として検出するセンサであり、シリンダブロック3に取付けられている。エアフローセンサSE2は、吸気通路30を通過する吸気の流量を検出するセンサであり、吸気通路30のうちエアクリーナ31と第1ターボ過給機60のコンプレッサ61との間に取付けられている。吸気圧センサSE3は、吸気通路30のうちスロットルバルブ36aの下流側の圧力を吸気圧として検出するセンサであり、サージタンク37に取付けられている。すなわち、本実施形態では、吸気通路30のうちEGR通路51の接続部分からエンジン本体1までの間の部分の圧力が吸気圧として検出される。スロットル開度センサSE4、第1EGR開度センサSE5は、それぞれ、スロットルバルブ36aの開度、第1EGRバルブ52aの開度を検出するセンサである。排気酸素濃度センサSE6は、排気通路40を流通する排気の酸素濃度を検出するセンサである。エンジン水温センサSE7は、エンジン本体1を冷却するためのエンジン冷却水の温度を検出するセンサである。アクセル開度センサSE8、車速センサSE9は、それぞれ、アクセルペダル(不図示)の開度、車速を検出するセンサである。
ECU100は、SE1〜SE9等の各種センサからの入力信号に基づいて種々の演算等を実行しつつ、インジェクタ20、スロットルバルブ36a、第1EGRバルブ52a、第2EGRバルブ52b等の各部を制御する。
(2−1)基本制御
ECU100によるインジェクタ20、スロットルバルブ36a、第1EGRバルブ52a、第2EGRバルブ52bの基本的な制御について次に説明する。
(インジェクタ)
まず、インジェクタ20の基本的な制御を説明する。
ECU100は、アクセル開度、車速、ギア段等に基づいて、インジェクタ20の噴射パターンおよびインジェクタ20の噴射量(インジェクタ20から噴射する燃料量)を算出する。すなわち、本実施形態では、インジェクタ20は多段噴射が可能であり、運転条件に応じてその噴射パターンが変化するように構成されている。なお、本実施形態では、現在のギア段は、ECU100が、車速とエンジン回転数とに基づいて算出する。
具体的には、ECU100は、アクセル開度等に基づいて、運転者から要求されている車両の加速度を算出し、これに基づいてエンジントルクの目標値である目標エンジントルクすなわちエンジン負荷を算出する。次に、ECU100は、エンジン回転数とエンジン負荷とに基づいて噴射パターンを決定する。具体的には、エンジン回転数とエンジン負荷とに対する噴射パターンのマップが予めECU100に記憶されており、ECU100はこのマップから現在のエンジン回転数とエンジン負荷とに対応する噴射パターンを抽出する。次に、ECU100は、決定した噴射パターンとエンジン負荷とに基づいて噴射量を決定する。具体的には、噴射パターン毎に燃焼効率が予め求められてECU100に記憶されており、ECU100は決定した噴射パターンに対応する燃焼効率とエンジン負荷とに基づいて噴射量を決定する。
(EGRバルブ)
次に、図4のフローチャートを用いて、第1EGRバルブ52a、第2EGRバルブ52bの基本的な制御を説明する。
まず、ECU100は、ステップS1にて、エンジン回転数およびエンジン負荷等を読み込む。
次に、ECU100は、ステップS2にて、気筒2内の酸素の濃度である筒内酸素濃度を推定する。例えば、ECU100は、吸気量、排気酸素濃度等に基づいて、この筒内酸素濃度を推定する。
次に、ECU100は、ステップS3にて、エンジン回転数およびエンジン負荷等に基づいて、気筒2内の混合気(燃焼前の混合気)の酸素濃度である吸気酸素濃度の目標値を設定する。例えば、ECU100は、エンジン回転数およびエンジン負荷に対して、NOxおよび煤の発生を適正に抑えることができる吸気酸素濃度を予めマップで記憶しており、このマップから現在のエンジン回転数とエンジン負荷とに対応する値を抽出する。
次に、ECU100は、ステップS4にて、エンジン回転数とエンジン負荷とエンジン水温とに基づいてEGR経路を決定する。
本実施形態では、ECU100に、予め図5および図6のマップが記憶されている。これら図5、図6のマップは、エンジン回転数とエンジン負荷とについてEGR経路を定めたマップであって、図5のマップはエンジン本体1が完全暖機した状態でのマップ、図6のマップはエンジン本体1が完全暖機前の状態でのマップである。
図5に示すように、本実施形態では、エンジン本体1が完全暖機状態にある場合は、エンジン回転数およびエンジン負荷が極めて低い運転領域A1においてEGR経路は第2経路のみとされる。また、これよりもエンジン回転数およびエンジン負荷が高い運転領域A2にでは、EGR経路は第1経路と第2経路との両方とされ、これよりもエンジン負荷およびエンジン回転数が高い運転領域A3では、EGR経路は第1経路のみとされる。そして、エンジン回転数およびエンジン負荷が高い運転領域A4では、EGRガスの還流が停止される。
一方、図6に示すように、エンジン本体1が完全暖機前の場合は、エンジン回転数およびエンジン負荷が高い運転領域B2においてEGRガスの還流は停止される。そして、運転領域B2以外の運転領域B1ではEGR経路は第2経路のみとされる。
ECU100は、まず、エンジン水温に応じて図5のマップと図6のマップとのいずれを採用するかを決定する。具体的には、ECU100は、エンジン水温が予め設定された温度以上であってエンジン本体1が完全暖機している場合は図5のマップを採用し、他の場合は図6のマップを採用する。次に、ECU100は、採用したマップに基づいて、現在のエンジン回転数とエンジン負荷とに対応するEGR経路を決定する。
次に、ステップS5にて、ECU100は、ステップS3で設定した目標吸気酸素濃度、ステップS2で算出した筒内酸素濃度の推定値に基づいて、EGRバルブの開度の目標値である目標EGRバルブ開度を設定する。
このとき、ステップS4にてEGR経路として採用されなかった経路に対応するEGRバルブの開度の目標値は0(全閉)とされる。そして、ECU100は、EGR経路として採用された経路に対応するEGRバルブの開度の目標値を目標吸気酸素濃度と筒内酸素濃度の推定値とに基づいて設定する。本実施形態では、ECU100は、筒内酸素濃度の推定値が目標吸気酸素濃度となるように、筒内酸素濃度の推定値と目標吸気酸素濃度との偏差、および、排気酸素濃度等に基づいて目標EGRバルブ開度を設定する。
その後、ECU100は、ステップS6にて、EGRバルブの開度をステップS5で設定した目標EGRバルブ開度に制御する。具体的には、EGRバルブの開度が目標EGRバルブ開度となるように、EGRバルブを駆動するアクチュエータに駆動信号を送信する。
(スロットルバルブ)
次に、図7のフローチャートを用いて、スロットルバルブ36aの基本的な制御を説明する。
まず、ECU100は、ステップS11にて、エンジン本体1が停止しているか否かを判定する。
ステップS11の判定がYESであってエンジン本体1が停止している場合は、ECU100はステップS12に進み、スロットルバルブ36aの開度を全閉(0度)として処理を終了する。このように、本実施形態では、エンジン本体1が停止するとスロットルバルブ36aは全閉とされる。
一方、ステップS11の判定がNOであってエンジン本体1が稼働している場合は、ECU100は、ステップS13に進み、エンジン回転数等の運転状態を読み込む。
次に、ECU100は、ステップS14にて、読み込んだ運転状態に基づいて吸気絞り制御を実施するか否かを判定する。
吸気絞り制御は、エンジン本体1に流入する吸気の量を小さくするべくスロットルバルブ36aの開度を比較的小さい(閉じ側の)開度にする制御であり、ステップS12の判定がYESの場合、ECU100は、ステップS15に進んでスロットルバルブ36aの開度を最小開度に設定して処理を終了する。
上記の最小開度は、全閉(0度)よりも大きい開度であって、エンジン本体1の稼働中(後述するスロットル閉弁制御の実施時を除く)にスロットルバルブ36aが制御される開度のうち最も小さい開度である。この最小開度は、例えば、5度程度に設定されている。
吸気絞り制御は、アイドル運転時、DPF再生制御の実施時、DeNOx制御の実施時に、それぞれ実施される。
具体的には、アイドル運転時は、ターボ過給機60,70の過給能力が小さいこと等に伴って排気の圧力が低くなるためEGRガスが還流しにくくなる。そこで、本実施形態では、アイドル運転時に吸気絞り制御を実施し、これにより吸気圧を小さく抑えてEGRガスの還流を促進する。
また、DPF再生制御では、上記のように気筒内の混合気の空気過剰率λをリッチ(1未満)にする必要があるとともに、DPF83内で煤が燃焼除去されるようにDPF83内の温度ひいては排気の温度を高く維持する必要がある。そこで、本実施形態では、DPF再生制御時に吸気絞り制御を実施して、気筒2に流入する新気の量を少なく抑える。
また、同様に、DeNOx制御時においても気筒2内の混合気の空気過剰率λをリッチにし、かつ、NSC装置81内の温度ひいては排気の温度を高くする必要がある。そこで、本実施形態ではDeNOx制御時にも吸気絞り制御を実施して、気筒2に流入する新気の量を少なく抑える。
一方、ステップS14の判定がNOの場合、すなわち、アイドル運転時、DPF再生制御実施時およびDeNOx制御実施時のいずれでもなく吸気絞り制御の実施が不要な場合は、ECU100はステップS16に進みスロットルバルブ36aの開度を全開として処理を終了する(後述するスロットル閉弁制御を除く)。
このように、本実施形態では、エンジンの稼働中であって吸気絞り制御の実施時およびスロットル閉弁制御の実施時を除く通常の運転時には、スロットルバルブ36aの開度は全開とされる。特に、本実施形態では、これら吸気絞り制御実施時およびスロットル閉弁制御実施時を除き、エンジン稼働中は、気筒2内に燃料が供給されている場合と、気筒2内への燃料の供給が停止されるフューエルカット運転の場合とのいずれにおいても、スロットルバルブ36aは全開とされる。
(2−2)スロットル閉弁制御
次に、ECU100によって実施されるスロットル閉弁制御について説明する。
スロットル閉弁制御は、スロットルバルブ36aが固着して適切に稼働できなくなるのを回避するための制御である。すなわち、図8に示すように、エンジンの稼働に伴って、吸気通路30の内周面のうちスロットルバルブ36aが設けられた部分の周辺には燃焼ガスに含まれる煤Cが堆積していく。特に、本実施形態のように、吸気通路30にEGR通路51が接続されている場合には、図8の矢印Y2に示すように、EGR通路51から吸気通路30にEGRガスが導入されるため、EGRガスに含まれる煤Cがスロットルバルブ36aの周辺に堆積しやすい。そして、この堆積した煤Cがエンジン停止時等に冷えて固まると、スロットルバルブ36aが固着する、あるいは、スロットルバルブ36aの適正な稼働が阻害されるという問題が生じる。
ここで、上記のように、本実施形態では、エンジン停止時においてスロットルバルブ36aが全閉とされる。そのため、このエンジン停止時に、図8の実線で示した状態から鎖線で示した状態のように、堆積している煤Cにスロットルバルブ36aを衝突させて煤Cを除去することができる。しかしながら、エンジンの停止機会が少ない場合等では、エンジン停止時にスロットルバルブ36aを全閉にするだけでは堆積した煤Cを十分に除去できないおそれがある。そこで、本実施形態では、エンジン本体1の稼働中であってもスロットルバルブ36aを全閉に向けて閉弁するスロットル閉弁制御を実施する。
スロットル閉弁制御の手順を、図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、ECU100は、ステップS21にて、スロットル閉弁制御の実施要求があるか否か、すなわち、スロットルバルブ36a周辺に煤Cが所定量以上堆積しており、これを除去する必要があるかどうかを判定する。
煤Cの体積量は車両の走行距離にほぼ比例することが分かっている。そこで、本実施形態では、ステップS22において、前回スロットルバルブ36aを全閉にしてから(エンジンを停止してから、または、前回スロットル閉弁制御を実施してから)車両の走行距離が予め設定された基準距離以上になったか否かを判定し、この判定がYESであれば、スロットルバルブ36a周辺に煤Cが所定量以上堆積したと推定してスロットル閉弁制御の実施要求があるとする。上記基準距離は、エンジン本体の排気量等に応じて適宜設定されればよいが、例えば40kmに設定される。
ステップS22の判定がNOであってスロットル閉弁制御の実施要求がない場合は、ステップS40に進み、通常の制御を実施する。すなわち、図7のフローチャートのステップS11に進む。
一方、ステップS21の判定がYESであってスロットル閉弁制御の実施要求がある場合はステップS22に進む。
ステップS22では、フューエルカット運転時(減速F/C時)か否か、すなわち、エンジン本体1の稼働中で、かつ、インジェクタ20から気筒2内への燃料の供給が停止されているか否かを判定する。
ステップS22の判定がNOであって、フューエルカット運転時ではない場合は、ステップS40に進む。
一方、ステップS22の判定がYESであってフューエルカット運転時である場合は、ステップS23に進む。
ステップS23では、第1EGRバルブ52aの開度を通常の制御時の開度から漸増させていく。本実施形態では、第1EGRバルブ52aの開度を全開に向けて漸増させていく。
ここで、本実施形態では、通常のフューエルカット運転時(ステップS21での判定がNOとなったときのフューエルカット運転時)には、各EGRバルブ52a,52aが全閉に制御されるようになっている。従って、ステップS22での判定がYESとなると、第2EGRバルブ52aは全閉に制御される。一方、第1EGRバルブ52aは、一旦全閉とされた後(フューエルカット運転時の前に既に全閉とされている場合はその状態から)、徐々に開き側に制御される。
次に、ステップS24にて、第1EGRバルブ52aの開度が予め設定された基準EGR開度E1以上となったか否かを判定する。基準EGR開度E1は全開よりも小さい開度である。
ステップS24の判定がNOであって第1EGRバルブ52aの開度が基準EGR開度E1に到達していない場合はステップS23に戻る。一方、ステップS24の判定がYESであって第1EGRバルブ52aの開度が基準EGR開度E1に到達すると、ステップS25に進む。
このように、本実施形態では、スロットル閉弁制御の開始が決定されてもすぐにはスロットルバルブ36aの閉弁を開始せず、まず、第1EGRバルブ52aを基準EGR開度E1になるまで徐々に開弁させていく。なお、第1EGRバルブ52aは、ステップS24以降のステップの実施中においても全開に向けて開弁されていき、全開になった後は全開状態が維持される。
ステップS25では、スロットルバルブ36aを予め設定された第1スロットル開度ETB1に向けて閉弁する。具体的には、ECU100は、ステップS24の判定がYESとなると、スロットルバルブ36aの開度の目標値である目標スロットル開度を第1スロットル開度ETB1に設定する。そして、この目標スロットル開度が実現されるようにバルブアクチュエータ36bに指令を出す。
第1スロットル開度ETB1は、最小開度よりも大きく且つ全開よりも小さい開度であって、スロットルバルブ36aの開度を変更しても吸気圧がほぼ変化しないいわゆる不感帯領域のうちの最も小さい開度である。すなわち、本実施形態では、スロットルバルブ36aの開度を所定開度未満にすることで初めてスロットルバルブ36aの開度変化に伴って吸気圧が変化するようになっており、第1スロットル開度ETB1はこの所定開度に設定されている。例えば、上記のように82度が全開となるスロットルバルブ36aにおいて、第1スロットル開度ETB1は50度程度に設定される。
次に、ステップS26にて、スロットルバルブ36aの開度(実際のスロットルバルブ36aの開度)であるスロットル開度が第1スロットル開度ETB1未満となったか否かを判定する。
ステップS26の判定がNOの場合は、ステップS25に戻る。このようにして、ECU100は、スロットル開度が第1スロットル開度ETB1に到達するまで目標スロットル開度を第1スロットル開度ETB1に維持してこれに向けてスロットルバルブ36aを閉弁させる。
一方、ステップS26の判定がYESとなるとステップS27に進みスロットルバルブ36aを全閉に向けて閉弁するスロットル閉弁制御を開始する。
ステップS27では、吸気圧(吸気圧センサSE3)で検出した現在の吸気圧を読み込む。
次に進むステップS28では、スロットルバルブ36aの閉弁速度(単位時間あたりのスロットル開度の低下量)の目標値である目標閉弁速度を、ステップS27で読み込んだ吸気圧に基づいて設定する。このとき、吸気圧が高いほど目標閉弁速度は小さい(遅い)値に設定される。
具体的には、各吸気圧に対する目標閉弁速度がそれぞれ予め設定されてECU100にマップで記憶されており、ECU100は読み込んだ吸気圧に対応する値をこのマップから抽出する。本実施形態では、図10に示すように、目標閉弁速度は吸気圧にほぼ比例して小さくなるように設定されている。
次に、ステップS29にて、スロットルバルブ36aを、設定した目標閉弁速度で閉弁させる。具体的には、ECU100は、目標スロットル開度を目標閉弁速度で低減させて、この目標スロットル開度が実現されるようにバルブアクチュエータ36bに指令を出す。
次に、ステップS30にてスロットルバルブ36aが全閉になったか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS31に進む。一方、この判定がNOの場合は、ステップS27に戻りステップS27〜ステップS30を繰り返す。
このようにして、本実施形態では、スロットル開度が第1スロットル開度ETB1未満となってから(ステップS26の判定がYESとなってから)、スロットルバルブ36aが全閉になるまで(ステップS30の判定がYESとなるまで)の間、ECU100は、各時刻において吸気圧を読み込み(ステップS27)、この吸気圧に基づいて目標閉弁速度を算出し(ステップS28)、スロットルバルブ36aをこの目標閉弁速度で閉弁させる(ステップS29)。
ステップS31では、スロットルバルブ36aの駆動力を最大として、スロットルバルブ36aを全閉位置に押し付ける。本実施形態では、バルブアクチュエータ36bの駆動DUTYを100%付近にして、スロットルバルブ36aを全閉位置に押し付ける。
このようにしてスロットルバルブ36aが全閉とされ、さらに、全閉位置に押し付けられることで、スロットルバルブ36aの周辺に体積していた煤Cは除去される。なお、除去された煤Cは、気筒2内に流入して燃焼すること等により除去される。
次に、図11のフローチャートを用いて、スロットル閉弁制御が実施され後、すなわち、フューエルカット状態でスロットルバルブ36aが全閉とされた後、燃料復帰(インジェクタ20からの燃料供給が再開)したときの制御手順について説明する。
まず、ステップS41にて、ECU100は、スロットルバルブ36aが全閉の状態での燃料復帰であるかどうかを判定する。そして、この判定がYESとなるとステップS42以降を実施する。一方、この判定がNOであればステップS42以降を実施せずに処理を終了する(通常の制御を実施する)。
ステップS42では、ECU100は、スロットルバルブ36aを開弁させる。このとき、ECU100は、スロットル開度が漸増するようにスロットルバルブ36aを徐々に開いていく。
次に、ECU100は、ステップS43にて、吸気圧が予め設定された復帰基準吸気圧P1以上になったか否かを判定する。
ステップS43の判定がNOの場合はステップS42に戻る。すなわち、ECU100は、スロットルバルブ36aの開度を増大させていき、ステップS43の判定がYESとなるのを待つ。
ステップS43の判定がYESとなって吸気圧が復帰基準吸気圧P1まで増加すると、ECU100は、ステップS44に進み、第1EGRバルブ52aを通常の制御時の開度E10に向けて閉弁させる。本実施形態では、このとき、第1EGRバルブ52aの開度を漸減させる。なお、この通常の制御時の第1EGRバルブ52aの開度が全開である場合は、第1EGRバルブ52aの開度は全開に維持される。
ステップS44の制御は、第1EGRバルブ52aの開度が通常の制御時の開度E10に戻るまで続けられ、通常の制御時の開度E10に戻ると第1EGRバルブ52aの制御は通常の制御に戻される。
ステップS44の次はステップS45に進み、ECU100は、スロットルバルブ36aの開度が第1スロットル開度ETB1以上になったか否かを判定する。この判定がNOの場合はステップS45に戻る。すなわち、ECU100は、ステップS41の判定がYESとなってからスロットルバルブ36aを開弁させていき、ステップS45の判定がYESとなるのを待つ。
ステップS45の判定がYESとなってスロットルバルブ36aの開度が第1スロットル開度ETB1に到達すると、ECU100は、ステップS46にて、スロットルバルブ36aの開度を通常の制御時の開度(本実施形態では全開)に向けて開弁する。具体的には、ステップS45の判定が、YESとなると、ECU100は、目標スロットル開度を第1スロットル開度ETB1から全開へステップ的に変化させて、スロットルバルブ36aを早い速度で開弁させる。スロットルバルブ36aが全開となった後は、スロットルバルブ36aの制御についても通常の制御を再開させる。
(3)作用等
上記のスロットル閉弁制御を実施したときの各パラメータの時間変化を図12に示す。図12では、通常の運転状態からフューエルカットがなされ、これに伴ってスロットル閉弁制御が実施された後、加速された場合を例示している。また、図12では、図5に示す運転ポイントX1であって第1EGRバルブ52aおよび第2EGRバルブ61bがそれぞれ全閉とされた運転状態からフューエルカットが行われた場合を例示している。また、図12には、上から順に、車速、噴射量、吸気圧、スロットル開度(実線が実際のスロットル開度、鎖線が目標スロットル開度)、第1EGRバルブ52aの開度(実線が実際の開度、鎖線が目標の開度)の時間変化を示している。
上記のように、本実施形態では、通常の運転状態ではスロットルバルブ36aの開度は全開とされる。そのため、時刻t1のフューエルカットの開始前において、スロットルバルブ36aは全開とされている。
時刻t1にてフューエルカットが行われると、まず、第1EGRバルブ52aの開度が全開に向けて漸増される(ステップS23が実施される)。
次に、時刻t2にて第1EGRバルブ52aの開度が基準EGR開度E1に到達すると(ステップS24の判定がYESとなると)、目標スロットル開度が第1スロットル開度ETB1に設定されて、この第1スロットル開度ETB1に向けてスロットルバルブ36aが閉弁される(ステップS25)。
このとき、スロットルバルブ36aの動きには遅れがあるため、図12の鎖線で示すように時刻t2にて目標スロットル開度はステップ的に全開から第1スロットル開度ETB1に変更されるが、スロットル開度(実際のスロットルバルブ36aの開度)はステップ的には変化せず、実線に示すように第1スロットル開度ETB1に向けて徐々に低下していく。ただし、目標スロットル開度がステップ的に変化することで、スロットルバルブ36aは比較的早い速度で閉弁していく。
ここで、上記のように、全開から第1スロットル開度ETB1までは不感帯領域であり、時刻t2後も吸気圧は時刻t2までとほぼ同じ速度で低下していく。
時刻t3にて、スロットル開度が第1スロットル開度ETB1に到達すると(ステップS26の判定がYESとなると)、スロットルバルブ36aは全閉に向けて目標閉弁速度で閉弁される。上記のように、本実施形態では、各時刻の吸気圧に基づいて目標閉弁速度が設定され、かつ、吸気圧が高いほど目標閉弁速度が小さくなるようになっている。そのため、吸気圧が時間の経過とともに低下するのに合わせて、目標閉弁速度は大きくなっていき、時刻t3以後において、スロットルバルブ36aは、時間が経過するほど早い速度で閉弁される。
不感帯領域を超えていることで時刻t3以後は、スロットル開度が低下に伴って吸気圧は時刻t3以前よりも早い速度で低下する。しかしながら、本実施形態では、時刻t3以後の方が時刻t3以前よりもスロットルバルブ36aの閉弁速度が小さくなるように設定されており、吸気圧は急減せずに緩やかに低下していく。
また、吸気量が多い方がスロットル開度の変化量に対する吸気量の変化量は大きく、これに伴い、吸気圧が高い方がスロットル開度の変化量に対する吸気圧の変化量は大きくなる。これに対して、上記のように、吸気圧が高いほど目標閉弁速度ひいてはスロットルバルブ36aの実際の閉弁速度が小さくされていることで、単位時間あたりの吸気圧の変化量は吸気圧によらずほぼ一定となり、時刻t3以後、吸気圧は、ほぼ一定の速度で低下していく。
時刻t4にてスロットルバルブ36aが全閉になると(ステップS30でYESと判定されると)、図12での図示は省略しているが、スロットルバルブ36aの駆動力は最大とされ(ステップS31)、時刻t5にて燃料復帰されるまでスロットルバルブ36aは全閉位置に押し付けられる。
なお、図12に示した例では、第1EGRバルブ52aの開度は、時刻t3から時刻t4までの間で全開に到達する。
時刻t5にて加速が開始されて燃料復帰が行われると(ステップS41の判定がYESとなると)、スロットルバルブ36aの開度が漸増される(ステップS42)。これに伴って、時刻t5後において吸気圧はゆるやかに増加していく。
時刻t6にて吸気圧が復帰基準吸気圧P1まで増加すると(ステップS43の判定がYESとなると)、第1EGRバルブ52aが通常の制御時の開度E10に向けて制御される。図12には、燃料復帰後の通常の制御時における第1EGRバルブ52aの開度E10が全開よりも小さい開度に設定された場合を示しており、時刻t6になると第1EGRバルブ52aは閉じ側に制御される。また、図12に示した例では、第1EGRバルブ52aにも不感帯領域(第1EGRバルブ52aの開度を変更してもEGRガスの流量がほとんど変化しない領域)が設定されて、この領域では早い速度で第1EGRバルブ52aの開度を変化させるようにしており、時刻t6になると、第1EGRバルブ52aは、まず、この不感帯領域分閉弁され、その後徐々に通常の制御時の開度に向けて閉弁される。
時刻t7にてスロットル開度が第1スロットル開度ETB1に到達すると(ステップS45の判定がYESとなると)、スロットルバルブ36aの開度は通常時の開度すなわち全開に制御される。具体的には、目標スロットル開度が全開とされてこれに向けてスロットルバルブ36aの開度が変更される。
以上のように、本実施形態では、フューエルカット運転時であってエンジン本体1が稼働している間にも、スロットルバルブ36aを全閉にするスロットル閉弁制御が実施される。そのため、スロットルバルブ36aを全閉にする機会を多く確保することができ、スロットルバルブ36aの周辺に堆積している煤Cを適切に除去してスロットルバルブ36aの固着を抑制することができる。
しかも、このスロットル閉弁制御において、スロットルバルブ36aの開度が漸減されるため、車両の減速度が急増するのを抑制することができる。すなわち、スロットルバルブ36aの開度が急変すると吸気圧が急減してポンピングロスが急増し、エンジン本体1の回転が急減して車両の減速度が急増するおそれがあるが、これを回避することができる。
さらに、スロットル閉弁制御の実施時において、吸気圧が高い方がスロットルバルブ36aの閉弁速度が小さくなるように制御されることで、上記のように、スロットル閉弁制御時において吸気圧の低下速度をほぼ一定にすることができる。従って、スロットルバルブ36aを全閉にして煤Cを適切に除去しながら、スロットルバルブ36aの閉弁時にポンピングロスおよび車両の減速度が変動するのを抑制して乗り心地を良好にすることができる。
また、吸気圧が低くスロットルバルブ36aの閉弁に伴う吸気圧の急減および車両の減速度の急増が生じ難い場合にはスロットルバルブ36aがより速い速度で閉弁されることで、車両の減速度の急増を抑制しつつスロットルバルブ36aをより早期に閉弁することができる。従って、乗り心地を良好にしながら、スロットルバルブ36aが全閉になるまでの時間を短くしてフューエルカットの時間が短い場合にもスロットルバルブ36aをより確実に全閉にして煤Cの除去を実現することができる。
特に、本実施形態では、過給機60,70が設けられており、吸気圧が高い値に制御される。そのため、スロットルバルブ36aを全閉にしたときの吸気圧の低下量および車両の減速度の変化が大きくなりやすいが、この変化を効果的に小さくすることができる。
また、本実施形態では、エンジン本体1の停止時にもスロットルバルブ36aを全閉にしている。そのため、煤Cの除去の機会をより多くすることができる。
さらに、このエンジン本体1の停止時も含めスロットルバルブ36aを全閉にしてから車両の走行距離が基準距離以上になったときであって煤Cの堆積量が所定量以上になったと推定される場合にのみスロットル閉弁制御が実施されるようになっている。そのため、煤Cを適切に除去しつつ、スロットル閉弁制御の実施機会を少なく抑えてこのスロットル閉弁制御の実施に伴って車両の減速度が増加する機会を少なくすることができる。
また、本実施形態では、スロットル閉弁制御時に、第1EGRバルブ52aが開き側(全閉よりも開き側の開度)に制御される。そのため、スロットル閉弁制御時において、EGRガス量を多くして排気の圧力を小さく且つ吸気の圧力を高くすることができ、ポンピングロスを小さく抑えて減速度が過剰に大きくなるのを抑制することができる。
特に、本実施形態では、第1EGRバルブ52aを開弁させた後にスロットルバルブ36aの閉弁を開始している。そのため、スロットルバルブ36aの閉弁に伴って吸気圧が排気の圧力に対して過剰に小さくなるのを抑制することができ、ポンピングロスをより確実に小さくすることができる。
また、本実施形態では、スロットル閉弁制御の実施に伴ってスロットルバルブ36aを全閉とした後、燃料復帰がなされたときに、スロットルバルブ36aの開度が全開(通常の運転時の開度)に向けて漸増される。そのため、この燃料復帰時においても吸気圧が急変するのを抑制することができ、エンジン本体1および車両の動きが急変するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、スロットル閉弁制御の実施前にスロットル開度を不感帯領域分早期に低減させている。そのため、車両の減速度の急増を抑制しつつ、スロットル開度を早期に全閉に近づけることができる。従って、フューエルカットの時間が短い場合においても、煤Cの除去を実現することができ、この除去の機会を多く確保することができる。
(4)第2実施形態
上記第1実施形態では、目標閉弁速度すなわち固着制御実施時のスロットル開度の閉弁速度を吸気圧に基づいて設定した場合について説明したが、これに代えて、この閉弁速度をギア段に基づいて設定してもよい。この場合には、ギア段が高いほどスロットル開度の閉弁速度(目標閉弁速度)を大きくする(ギア段が低いほどスロットル開度の閉弁速度を小さくする)。例えば、図13に示すように、ギア段の段数に比例して閉弁速度(目標閉弁速度)を大きい値に設定する。
この第2実施形態においても、スロットルバルブ36aを全閉にする機会を確保しながら、スロットル閉弁制御の実施時における車両の減速度の変動を抑制して乗り心地を良好にすることができる。
具体的には、ギア段が低い方が、エンジン回転数の変動に伴う車速の変動は大きくなる。従って、上記のようにギア段が低いほどスロットル開度の閉弁速度が小さくされ、これにより、ギア段が低いほど、吸気圧の変化量ひいてはポンピングロスおよびエンジン回転数の変動が小さくされることで、ギア段が低い場合において車速の変動が大きくなるのを抑制することができる。そして、ギア段が高く車速の変動が小さく抑えられる場合において、スロットルバルブ36aをより早期に全閉にすることができる。また、スロットル閉弁制御の実施途中でギア段が変化した場合において、吸気圧および車両の減速度が急変するのを抑制することができる。従って、乗り心地を良好にしつつより適切にスロットルバルブ36a周辺の煤Cを除去することができる。
(5)第3実施形態
上記第1実施形態および第2実施形態に代えて、スロットルバルブ36aの閉弁速度をスロットル開度に基づいて設定してもよい。この場合には、スロットル開度(実際のスロットル開度である実スロットル開度)が大きいほどスロットル開度の閉弁速度(目標閉弁速度)を大きくする(スロットル開度が小さいほどスロットル開度の閉弁速度を小さくする)。例えば、実スロットル開度と目標閉弁速度とを図14に示す関係とする。
この第2実施形態においても、スロットルバルブ36aを全閉にする機会を確保しながら、スロットル閉弁制御の実施時における車両の減速度の変動を抑制して乗り心地を良好にすることができる。
具体的には、スロットル開度が小さい方が、スロットル開度の変化に対する吸気量の変化量ひいては吸気圧の変化量は大きくなりやすい。そのため、スロットル開度が大きいほどスロットル開度の閉弁速度すなわち単位時間あたりのスロットル開度の変化量が小さくされることで、スロットル開度が小さい場合において吸気圧ひいてはポンピングロスおよび車両の減速度の変動を小さくすることができるとともに、スロットル開度が大きく吸気圧の変化量ひいては車両の減速度が小さく抑えられる場合において、スロットルバルブ36aをより早期に全閉にすることができる。そして、スロットル閉弁制御の実施途中において、スロットル開度が変化しても車両の減速度を一定に維持することができる。従って、乗り心地を良好にしつつより適切にスロットルバルブ36a周辺の煤Cを除去することができる。
(6)他の変形例
上記第1〜第3実施形態では、それぞれ、スロットルバルブ36aの閉弁速度を、吸気圧とギア段とスロットル開度とのいずれか一つのパラメータに基づいて設定した場合について説明したが、これらのパラメータのうちの2つのパラメータあるいはこれら3つのパラメータに基づいて閉弁速度を設定してもよい。
例えば、ギア段に基づいて閉弁速度を設定した後、この閉弁速度を吸気圧に基づいて補正するというように、所定のパラメータに基づいて閉弁速度を設定した後、他のパラメータに基づいてこれを補正するようにしてもよい。
また、各パラメータと閉弁速度との具体的な関係は、図10、図13、図14に示したものに限らない。
また、上記実施形態では、スロットル閉弁制御において、まず、第1EGRバルブ52aの開弁を開始した後に、スロットルバルブ36aの閉弁を開始する場合について説明したが、これらを同時に開始させてもよい。すなわち、フューエルカット運転が開始された時点で第1EGRバルブ52aを開弁させるとともにスロットルバルブ36aの閉弁を開始させてもよい。
また、上記実施形態では、スロットル閉弁制御の実施時において、第2EGRバルブ52bではなく、第1EGRバルブ52aを開弁させた場合について説明したが、これらバルブ52a,52bの少なくとも一方が通常の制御時の開度よりも開弁されればよい。
ただし、高負荷等の排気の温度が高い状態でフューエルカットおよびスロットル閉弁制御が実施された場合に第2EGRバルブ52bを開弁させると、第2EGRバルブ52bに高温の排気が導入されてしまい好ましくない。これに対して、第1EGRバルブ52aには、EGRクーラ55で冷却された後の比較的低温の排気が導入される。そのため、スロットル閉弁制御の実施時に第1EGRバルブ52aのみを開弁させるようにすれば、これらバルブ52a,52bの信頼性を確保することができる。
また、スロットル閉弁制御の実施時において第1EGRバルブ52aを通常の制御時の開度よりも開弁させる制御は省略してもよい。ただし、この制御を実施すれば、上記のように、スロットル閉弁制御の実施時にポンピングロスをより小さく抑えることができる。
また、過給が行われて吸気圧が高い状態でスロットルバルブ36aを全閉にする場合の方が、吸気圧が低い状態でスロットルバルブ36aを全閉にする場合よりも、吸気圧の低減量が大きくなってエンジン本体1の減速度が急増しやすい。そこで、上記実施形態では、フューエルカット前の運転状態によらずスロットル閉弁制御を実施するか否かが決定される場合について説明したが、これに代えて、フューエルカットのうち過給が行われている状態からのフューエルカット運転時、詳細には、バルブ41a,42aの少なくとも一方が閉弁している状態からのフューエルカット運転時にのみ、スロットルバルブ36aをその閉弁速度を吸気圧等に応じて変更しつつ全閉にする上記スロットル閉弁制御を実施し、他のフューエルカット運転時には吸気圧等によらず一定の速度、かつ、比較的早い速度でスロットルバルブ36aを全閉にするようにしてもよい。このようにすれば、効果的にエンジン本体1の減速度の急増を抑制することができる。