しかし、上述の特許文献1に示すエンジンの過給装置では、例えばEGR量(排気還流ガス量)が高い状態にある場合に、乗員の加速要求によりアクセルペダルが急激に踏み込まれると、吸気通路内の酸素が不足することとなり、この結果、燃焼時の空燃比が目標空燃比に対して燃料リッチ側にずれてスモークが発生し易くなるという問題がある。
そこで、空燃比が燃料リッチ側にずれた場合には、吸入空気量を増加させることにより、空燃比を燃料リーン側に補正して目標空燃比に近づけることで、スモークの発生を抑制することが考えられる。
ここで、吸入空気量を増加させるためには、例えば特許文献1の過給装置ではEGR弁を閉方向に制御してEGR量(排気還流ガス量)を減少させることが考えられ、特許文献2の過給装置では排気バイパス弁を閉方向に制御して排気ガスのバイパス量を減少させること等が考えられる。こうすることで、ターボ過給機のタービンに供給される排気ガス量(排気エネルギー)が増大して排気ターボ過給機の過給能力が増加し、吸入空気量が増加することとなる。
ところで、上記特許文献2に示すように、2つの排気ターボ過給機を直列に配置したエンジンの過給装置においては、排気ターボ過給機が1つの場合に比べて、吸気に対する排気のエネルギー回収効率が高いが故に、吸気通路及び排気通路間の差圧が小さくなり、このため、EGR弁と排気バイパス弁とが同じ弁開度であっても、EGR弁を介して吸気通路に還流される排気ガス量の方が、排気バイパス弁を介してバイパスされる排気ガス量に比べて多くなる。つまり、排気バイパス弁を閉方向に制御する方が、EGR弁を閉方向に制御するよりも、ターボ過給機のタービンに供給される排気ガス量(以下、タービン供給排ガス量という)の増大効果が大きい。
そこで、この排気バイパス弁の閉方向制御によるタービン供給排ガス量の増大効果が大きいことを利用して、例えば、乗員の加速要求等により燃焼室内の空燃比が目標空燃比に対して燃料リッチ側にずれた場合には、該排気バイパス弁の閉方向制御によってターボ過給機の過給量を一気に向上させることで、車両の加速性を維持しつつ吸入空気量を増加させてスモークの発生を抑制することが考えられる。
しかしながら、エンジンが高負荷運転状態にあるときに、この排気バイパス弁の閉方向制御を行うと、もともと過給量が多い状態(つまりタービン供給排ガス量が多い状態)にあるにも拘わらずタービン供給排ガス量が一気に増加して過剰になり、この結果、排気通路の上流側(又は下流側)に位置するターボ過給機が排気抵抗として作用して、エンジンのポンピングロスが増加し、延いては燃費が悪化するという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、互いに直列に配設された第1及び第2排気ターボ過給機を備えたエンジンの過給装置に対して、その構成及び制御方法に工夫を凝らすことで、車両の加速性を維持し且つ燃費の悪化を防止しつつ、燃焼室内における燃焼反応に伴う有害ガスの発生、特にスモークの発生を抑制しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、エンジンの燃焼室内の空燃比が目標値に対して燃料リッチ側にある場合に、エンジンの負荷が所定負荷以下のときには排気バイパス弁を閉方向に制御する一方、エンジンの負荷が該所定負荷よりも大きいときには排気ガス還流弁を閉方向に制御するようにした。
具体的には、請求項1の発明では、エンジンの吸気通路に配設されたコンプレッサと排気通路に配設されたタービンとを有する第1排気ターボ過給機と、上記吸気通路における上記第1排気ターボ過給機のコンプレッサよりも上流側に配設されたコンプレッサと、上記排気通路における上記第1排気ターボ過給機のタービンよりも下流側に配設されたタービンとを有する第2排気ターボ過給機と、上記第1排気ターボ過給機又は第2排気ターボ過給機のタービンをバイパスする排気バイパス通路と、上記排気バイパス通路に配設された排気バイパス弁と、上記吸気通路における上記第1排気ターボ過給機のコンプレッサよりも下流側部分と上記排気通路における上記第1排気ターボ過給機のタービンよりも上流側部分とを接続する排気ガス還流通路と、上記排気ガス還流通路に配設された排気ガス還流弁と、上記エンジンの燃焼室内の空燃比に関連する値を検出する空燃比検出手段と、上記排気ガス還流弁及び上記排気バイパス弁の開度を、上記エンジンの運転状態に応じて設定した設定開度にそれぞれ制御する弁開閉制御手段とを備え、上記弁開閉制御手段は、上記エンジンの運転状態が上記排気ガス還流弁を介して排気ガス還流を行う排気ガス還流領域にあり且つ上記空燃比検出手段により検出された値が所定値に対して燃料リッチ側の値となるスモーク発生条件が成立した場合において、上記エンジンの負荷が所定負荷以下のときには、上記排気バイパス弁の開度がその設定開度よりも小さくなるように、上記排気バイパス弁を閉じ側に制御する一方、上記エンジンの負荷が該所定負荷よりも大きいときには、上記排気ガス還流弁の開度がその設定開度よりも小さくなるように、上記排気ガス還流弁を閉じ側に制御する弁開度変更制御を実行するように構成されているものとする。
この構成によれば、エンジンの運転領域が上記排気ガス還流領域にある場合において、空燃比検出手段により検出された燃焼室内の空燃比に関連する値が所定値に対して燃料リッチ側の値となったときには(所定条件が成立したときには)、上記弁開閉制御手段により以下の弁開度変更制御が実行される。
すなわち、所定条件が成立した場合に、エンジンの負荷が所定負荷以下のとき(エンジンが低負荷運転状態にあるとき)には、弁開閉制御手段により排気バイパス弁の開度が設定開度に対して小さくなるように(閉方向に)制御される。この結果、排気バイパス弁の開度を設定開度とした場合に比べて、排気バイパス弁を介してバイパスされる排気ガス量が減少し、これに伴い、各排気ターボ過給機のタービン供給排ガス量が増大する。こうして、両排気ターボ過給機の過給能力が向上して吸入空気量が増大することにより、燃焼室内の空燃比が燃料リーン側に変化して、該燃焼室内における燃焼反応により発生するスモーク(煤成分)を抑制することができる。
一方、所定条件が成立した場合に、エンジンの負荷が所定負荷よりも大きいとき(エンジンが高負荷運転状態にあるとき)には、弁開閉制御手段により排気ガス還流弁の開度が設定開度に対し小さくなるように(閉方向に)制御される。この結果、排気ガス還流弁の開度を設定開度とした場合に比べて、排気ガス還流弁を介して吸気通路に還流される排気ガス量が減少し、これに伴い、各排気ターボ過給機のタービン供給排ガス量が増大する。こうして、上記エンジンが低負荷運転状態にある場合と同様に、各排気ターボ過給機の過給能力が向上して吸入空気量が増大するので、燃焼室内における燃焼反応に伴うスモーク(煤成分)の発生を抑制することができる。
また、本発明のように、2つの排気ターボ過給機を直列配置した過給装置では、通常、排気バイパス弁を閉方向に制御する方が、排気ガス還流弁を閉方向に制御するよりも、各ターボ過給機に供給される排気ガス量(排気エネルギー)を増大させる効果が大きい。従って、上述のように、エンジンの低負荷運転時等、吸入空気の過給量が少ない状況においては、上記所定条件の成立とともに排気バイパス弁を閉方向に制御するようにしたことで、排気ガス還流弁を閉方向に制御するようにした場合に比べて、各排気ターボ過給機のタービン供給排ガス量を一気に増加させることができて、車両の加速性を維持しつつ燃焼室内の燃焼反応に伴うスモークの発生を抑制することができる。
また、エンジンの高負荷運転時等、吸入空気の過給量が多い状況(排気空気量が多い状況とも言える)においては、上記所定条件の成立とともに排気ガス還流弁を閉方向に制御するようにしたことで、排気バイパス弁を閉方向に制御するようにした場合に比べて、各排気ターボ過給機のタービン供給排ガス量が必要以上に増加するのを防止することができる。すなわち、該排気ガス量が過剰になることにより、第1排気ターボ過給機が過給機としてよりも排気抵抗として作用するのを防止することができる。これにより、エンジンのポンピングロスを低減して燃費の悪化を防止しつつ、スモークの発生を抑制することが可能となる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記弁開度変更制御は、上記エンジンの負荷が所定負荷以下のときには、上記排気ガス還流弁の開度をその設定開度に維持しつつ上記排気バイパス弁の開度をその設定開度よりも小さくする一方、上記エンジンの負荷が上記所定負荷よりも大きいときには、上記排気バイパス弁の開度をその設定開度に維持しつつ上記排気ガス還流弁の開度をその設定開度よりも小さくするものである。
これにより、上記所定条件が成立した場合に、エンジンが低負荷運転状態にあるときには、弁開閉制御手段により排気バイパス弁が設定開度に対して閉方向に制御される一方で、排気ガス還流弁の開度は設定開度に保たれることとなる。
また、上記所定条件が成立した場合に、エンジンが高負荷運転状態にあるときには、弁開閉制御手段により上記排気ガス還流弁が設定開度に対して閉方向に制御される一方で、排気ガス還流弁の開度は設定開度に保たれることとなる。
このように、弁開閉制御手段により弁開度変更制御を実行する際に、排気ガス還流弁及び排気バイパス弁のうち閉方向制御を行わない方の弁を設定開度に保つようにしたことで、弁開度変更制御の実行によるタービン供給排ガス量の増大効果を確実に得ることができる。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記弁開閉制御手段は、上記所定条件が成立した場合において、排気ガス還流率が所定比率以上であるときに、上記弁開度変更制御を実行するように構成されているものとする。
この構成によれば、スモークが発生し易い状況、つまり排気ガス還流率の高い状況においてのみ、弁開閉制御手段による弁開度変更制御を実行することができる。これにより、排気ガス還流弁や排気バイパス弁が、排気ガス還流率が低いにも拘わらず不必要に作動することにより、該各弁の耐久性が悪化するのを防止することができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの過給装置によると、エンジンの燃焼室内の空燃比が目標値に対して燃料リッチ側にある場合において、エンジンが低負荷運転状態にあるときには排気バイパス弁を閉方向に制御する一方、エンジンが高負荷運転状態にあるときには排気ガス還流弁を閉方向に制御するようにしたことで、車両の加速性を維持し且つ燃費の悪化を防止しつつ、燃焼室内における燃焼反応に伴うスモークの発生を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る過給装置を採用したエンジン1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されたディーゼルエンジンであって、複数の気筒2(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4と、シリンダブロック3の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン9とを有している。このエンジン1の各気筒2内には、ピストン5が往復動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン5の頂面には深皿形燃焼室6が形成されている。このピストン5は、コンロッド7を介してクランク軸8と連結されている。
上記シリンダヘッド4には、各気筒2毎に吸気ポート12及び排気ポート13が形成されているとともに、これら吸気ポート12及び排気ポート13の燃焼室6側の開口を開閉する吸気弁14及び排気弁15がそれぞれ配設されている。
また、上記シリンダヘッド4には、燃料を噴射するインジェクタ20と、エンジン1の冷間時に吸入空気を暖めて燃料の着火性を高めるためのグロープラグ25とが設けられている。上記インジェクタ20は、その燃料噴射口が燃焼室6の天井面から該燃焼室6に臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室6に燃料を直接噴射供給するようになっている。尚、インジェクタ20は、燃料供給管21を介して不図示のコモンレールに連結されていて、該燃料供給管21及びコモンレールを介して不図示の燃料タンクから燃料が供給されるように構成されている。余剰燃料は、リターン管22を通じて燃料タンクへ戻される。
上記エンジン1の一側面には、各気筒2の吸気ポート12に連通するように吸気通路30が接続されている。この吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されており、このエアクリーナ31で濾過した吸入空気が吸気通路30及び吸気ポート12を介して各気筒2の燃焼室6に供給される。
上記吸気通路30におけるエアクリーナ31の下流側近傍には、吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ32が配設されている。また、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒2の吸気ポート12にそれぞれ接続されている。
さらに、上記吸気通路30におけるエアフローセンサ32とサージタンク33との間には、第1排気ターボ過給機61のコンプレッサ61aと第2排気ターボ過給機62のコンプレッサ62aとが配設されており、第1排気ターボ過給機61のコンプレッサ61aの方が第2排気ターボ過給機62のコンプレッサ62aよりも下流側に位置する。これら両コンプレッサ61a,62aの作動により吸入空気の過給を行う。そして、吸気通路30には、第1排気ターボ過給機61のコンプレッサ61aをバイパスする吸気バイパス通路64が接続され、この吸気バイパス通路64には、該吸気バイパス通路64へ流れる空気量を調整するための吸気バイパス弁65が配設されている。尚、本実施形態では、第2排気ターボ過給機62のコンプレッサ62aをバイパスするバイパス通路は設けられてはいないが、このようなバイパス通路を設けるとともに、該バイパス通路に吸気バイパス弁65と同様の弁を設けるようにしてもよい。
さらにまた、上記吸気通路30における第1排気ターボ過給機61のコンプレッサ61aとサージタンク33との間には、上流側から順に、上記両コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、両コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気の圧力を検出する吸気圧力センサ36と、上記各気筒2の燃焼室6への吸入空気量を調節する吸気絞り弁37とが配設されている。
上記エンジン1の他側面には、各気筒2の燃焼室6からの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。この排気通路40の上流側の部分は、各気筒2毎に分岐して排気ポート13の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。この排気マニホールドよりも下流側の排気通路40に、上記第1排気ターボ過給機61のタービン61bと第2排気ターボ過給機62のタービン62bとが配設されており、第1排気ターボ過給機61のタービン61bの方が第2排気ターボ過給機62のタービン62bよりも上流側に位置する。これらタービン61b,62bが排気ガス流により回転し、これらタービン61b,62bの回転により、該タービン61b,62bとそれぞれ連結された上記コンプレッサ61a,62aがそれぞれ作動する。
そして、排気通路40には、第1排気ターボ過給機61のタービン61bをバイパスする第1排気バイパス通路67と、第2排気ターボ過給機62のタービン62bをバイパスする第2排気バイパス通路69とが接続されている。第1排気バイパス通路67には、該第1排気バイパス通路67へ流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ68(第1排気バイパス弁)が配設され、第2排気バイパス通路69には、該第2排気バイパス通路69へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ70(第2排気バイパス弁)が配設されている。
上記排気通路40における上記第2排気ターボ過給機62のタービン62bよりも下流側には、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置43が配設されている。この排気浄化装置43は、酸化触媒部43a、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタという)43b及びリーンNOx触媒部43cで構成されており、上流側から、この順に並んでいる。酸化触媒部43a及びフィルタ43bは1つのケース内に収容され、リーンNOx触媒部43cは、酸化触媒部43a及びフィルタ43bを収容するケースとは別のケース内に収容されている。尚、排気通路40の下流端(リーンNOx触媒部43cよりも下流側)には、サイレンサー48が設けられている。
上記酸化触媒部43aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した酸化触媒を有していて、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO2及びH2Oが生成する反応を促すものである。また、上記フィルタ43bは、排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。尚、フィルタ43bに酸化触媒をコーティングしてもよい。
上記リーンNOx触媒部43cは、排気ガス中のNOxを吸蔵して還元浄化するNOx吸蔵還元型触媒を有していて、例えば、バリウムを主成分とし、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、ランタン等のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類と、白金等の化学反応触媒作用を有する貴金属とが担持されたNOx吸蔵材を内装する。このリーンNOx触媒部43cは、排気ガスの空燃比状態が理論空燃比よりもリーンな状態で排気中のNOxを吸蔵する一方、そのようにして吸蔵したNOxを空燃比状態のリッチ化に応じて放出して、そのNOxを排気ガス中のCO及びHCと酸化還元反応させて酸素と窒素とに分解する。また、排気の空燃比が理論空燃比近傍にあるときには、HC、CO及びNOxを略完全に浄化する。
本実施形態のエンジン1は、ディーゼルエンジンであるため、全運転領域で、空燃比を理論空燃比よりも大きくする(λ>1)リーン運転を行う。このリーン運転を継続すると、リーンNOx触媒部に吸蔵されるNOx量が増加していき、やがて飽和状態になって、NOxの浄化能力が低下する。これを防止するために、吸蔵したNOxを酸素と窒素とに分解放出させてNOx吸蔵能力を回復させるべく、空燃比のリッチ化を行う。具体的には、リーンNOx触媒部43cに吸蔵されるNOx量は、エンジン回転数やエンジン負荷等のエンジン1の運転状態に基づいて、予め作成したNOx量排出マップにより推定することができ、その推定したNOx量の積算値が、予め設定した設定量以上になったときに、排気ガスの空燃比をリーン運転時の空燃比よりもリッチ化する(例えば理論空燃比とするか、又はそれ以上にリッチとする)。このリッチ化は、上記吸気絞り弁37を閉方向に変更して空気量を減量することで行う。そして、リッチ化時間が所定時間を経過したときに、空燃比を元のリーンの状態に復帰させる。尚、上記所定時間は、リッチ化の度合いとの関係で、吸蔵しているNOx全て(上記設定量)が還元放出される時間に設定される。
上記排気浄化装置43におけるフィルタ43bの上流側及び下流側には、フィルタ43bに流入する直前及び流出した直後の排気ガスの圧力をそれぞれ検出する上流側及び下流側圧力検出部45,46が設けられ、これら上流側及び下流側圧力検出部45,46には、該両圧力検出部45,46の差圧を検出する差圧センサ47が接続されている。この差圧は、フィルタ43bに捕集された微粒子量(つまり捕集量)に対応しており、差圧が大きいほど捕集量が多いことになる。この捕集量が多くなると、フィルタ43bが目詰まりすることになり、これを防止するために、捕集量が所定量(例えば最大捕集量の70%)以上になったとき、つまり、上記差圧が該所定量に対応する所定値になったときに、微粒子を燃焼させてフィルタ43bを再生する。このフィルタ43bを再生するために、排気浄化装置43の酸化触媒部43aに未燃燃料を供給し、この未燃燃料の酸化反応熱によりフィルタ43bの温度を上昇させて、該フィルタ43bに捕集された微粒子を燃焼除去する。酸化触媒部43aへの未燃燃料の供給は、燃焼室6での燃焼を意図した、圧縮行程上死点付近で燃料を噴射する主噴射よりも遅れた時期(膨張行程又は排気行程)に燃料を噴射するポスト噴射によって行う。このポスト噴射は、複数回に分けての分割噴射が好ましい。尚、ポスト噴射を行う際には、後述の排気ガス還流弁51を全閉状態にして、ポスト噴射による燃料が吸気通路30へ流れないようにすることが好ましい。
上記吸気通路30における上記サージタンク33と吸気絞り弁37との間の部分(つまり第1排気ターボ過給機のコンプレッサよりも下流側部分)と、上記排気通路40における上記排気マニホールドと第1排気ターボ過給機のタービンとの間の部分(つまり第1排気ターボ過給機のタービンよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するための排気ガス還流通路50によって接続されている。この排気ガス還流通路50には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するための排気ガス還流弁51と、排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52とが配設されており、排気通路40における第2排気ターボ過給機62よりも下流側で排気浄化装置43よりも上流側には、排ガス中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ49(空燃比検出手段)が配設されている。
上記第1排気ターボ過給機61は小型のものであり、第2排気ターボ過給機62は大型のものである。すなわち、第2排気ターボ過給機62のタービン62bの方が第1排気ターボ過給機61のタービン61bよりもイナーシャが大きい。ここで、第1排気ターボ過給機61のT/C効率マップ(タービン61bの回転エネルギーをどれだけコンプレッサ61aによる圧力上昇に変換できるかを示すもの)を、図2に実線で示し、第2排気ターボ過給機62のT/C効率マップを、図2で破線で示す。図2における横軸の「空気流量」は、エアフローセンサ32により検出される空気量であり、縦軸の「圧力比」は、コンプレッサへの流入直前の空気圧力に対するコンプレッサからの流出直後の空気圧力の比である。そして、各排気ターボ過給機毎に描かれている複数の環状の線が、空気流量と圧力比との関係から求まる効率であり、中心側の線ほど効率が高くなる。図2から分かるように、大型の第2排気ターボ過給機62の方が、高効率の領域が広い。
図3に示すように、上記エアフローセンサ32、吸気圧力センサ36、差圧センサ47、及びリニアO2センサ49による各検出値の信号が、エンジン1を制御するエンジン制御ユニット(以下、ECUという)81に入力される。また、ECU81には、それらの他に、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ73、クランク角を検出するクランク角センサ74、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ75、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ76等の各検出値の信号が入力され、これら入力信号に基づいて、インジェクタ20、吸気絞り弁37,排気ガス還流弁51、吸気バイパス弁65、レギュレートバルブ68及びウエストゲートバルブ70を制御する。
上記ECU81は、上記吸気バイパス弁65、レギュレートバルブ68及びウエストゲートバルブ70の各開度を、上記エンジン1の運転状態に応じて設定した開度にそれぞれ制御する。本実施形態では、図4に示す、エンジン回転数とエンジン負荷とをパラメータとするマップにおける低負荷かつ低回転側の領域A(エンジン負荷が所定負荷(エンジ回転数が大きいほど小さくなる)以下の領域)では、第1及び第2排気ターボ過給機61,62の両方を作動させるようにし、こうするために、吸気バイパス弁65及びレギュレートバルブ68は全開以外の開度とし、ウエストゲートバルブ70は全閉状態とする。一方、高負荷かつ高回転側の領域B(エンジン負荷が上記所定負荷よりも大きい領域)では、第1排気ターボ過給機61が排気抵抗になるため、第2排気ターボ過給機62のみを作動させるようにし、こうするために、吸気バイパス弁65及びレギュレートバルブ68は全開状態とし、ウエストゲートバルブ70は全閉状態に近い開度にする。尚、ウエストゲートバルブ70を常に全閉状態にしてもよい(或いは第2排気バイパス通路69及びウエストゲートバルブ70をなくしてもよい)が、過回転を防止するために、上記領域Bでは少し開き気味にしている。
上記領域Aにおける上記吸気バイパス弁65の開度は、エンジン1の運転状態及びアクセル開度により設定される目標吸気圧により決まる。また、レギュレートバルブ68は、図5に示すように、高負荷(高トルク)になるに連れて開度を次第に大きくする。図5において開度が100%のラインよりも高トルク側は、上記領域Bに対応する領域であり、この領域では開度は100%となる。さらに、ウエストゲートバルブ70の開度は、図6のようになる。図6において開度が10%のラインよりも低トルク側は、上記領域Aに対応する領域であり、この領域では開度は0%となる。尚、図5及び図6における実線のラインは、エンジン1に発生する最大トルクラインである。
図4において破線で示すラインを含めてそれよりも低負荷かつ低回転側の領域(上記領域Aを含む)では、排気ガス還流弁51が開かれて、排気ガスの一部が吸気通路30に還流されるようになっている。以下、この領域をEGR領域という。このEGR領域における排気ガス還流弁51の開度は、エンジン1の運転状態に応じて設定される。一方、上記ラインよりも高負荷かつ高回転側では、排気ガス還流弁51が全閉状態とされ、排気ガスの吸気通路30への還流は行われない。
尚、第1及び第2排気ターボ過給機61,62の両方を作動させる領域A、第2排気ターボ過給機のみを作動させる領域B、及びEGR領域を、図2の排気ターボ過給機のT/C効率マップを用いて設定するようにしてもよい。すなわち、上記領域Aに対応する領域が、図7(a)の太線で囲む領域であり、上記領域Bに対応する領域が、図7(b)の太線で囲む領域であり、上記EGR領域に対応する領域が、図7(c)の太線で囲む領域である。これにより、エアフローセンサ32により検出される空気量と、コンプレッサへの流入直前の空気圧力に対するコンプレッサからの流出直後の空気圧力の比との関係から、第1及び第2排気ターボ過給機61,62の両方を作動させるか、第2排気ターボ過給機62のみを作動させるか、或いは、排気ガスの吸気通路30への還流を行うかが決まることになる。
ECU81は、エンジン1の運転状態が上記EGR領域におけるEGR率(排気ガス還流率=排気ガス還流量/全排気ガス量)30%以上の領域にあり且つリニアO2センサにより検出された酸素濃度値が所定値(燃焼室内の空燃比(A/F)が1.7に対応する値)に対して燃料リッチ側の値となるスモーク発生条件(所定条件)が成立した場合において、上記エンジンの運転状態が領域A(図4参照)に対応する状態(以下、低負荷運転状態という)にあるときには、上記レギュレートバルブ68の開度をその目標設定開度よりも小さくする一方、上記エンジンの運転状態が領域Bに対応する状態(以下、高負荷運転状態という)にあるときには、上記排気ガス還流弁51の開度をその目標設定開度よりも小さくする弁開度変更制御を実行する。このことで、ECU81が弁開閉制御手段を構成することとなる。
ここで、ECU81における弁開度変更制御処理について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS1では、各種センサからの入力信号を読み込み、次のステップS2で、目標吸気圧並びに排気ガス還流弁51、吸気バイパス弁65、レギュレートバルブ68及びウエストゲートバルブ70の目標開度を設定する。
次のステップS3では、エンジン1の運転状態がEGR領域にあるか否かを判定し、このステップS3の判定がNOであるときには、ステップS4に進んで、排気ガス還流弁51を全閉状態にした後にリターンする。一方、ステップS3の判定がYESであるときには、ステップS5に進んで、排気ガス還流弁51(図8では、EGR弁と記載)の開度を、エンジン1の運転状態に応じた開度(上記設定した目標開度)とし、しかる後にステップS6に進む。
ステップS6では、EGR率が所定比率(本実施形態では30%)以上であるか否かを判定し、この判定がYESであるときには、ステップS7に進み、NOの場合にはリターンする。
ステップS7では、燃焼室内における燃焼時の空燃比(A/F)が、スモークを発生し易い値か否かを判定する。具体的には、ステップS1にて読み込んだリニアO2センサ49からの検出値を基に算出した排気ガス中の酸素濃度値が所定値(本実施形態では燃焼室内の空燃比が1.7に対応する値。以下、スモーク悪化限界値という)に対して燃料リッチ側の値であるか否かを判定し、この判定がYESであるときにはステップS8に進む一方、NOであるときにはリターンする。
ステップS8では、エンジン1が低負荷運転状態にあるか否かを判定し、この判定がYESであるとき(エンジン1が低負荷運転状態にあると判定したとき)にはステップS10に進む一方、この判定がNOであるとき(エンジン1が高負荷運転状態にあると判定したとき)にはステップS9進む。
ステップS9では、排気ガス還流弁51の開度を、ステップS2で設定した目標設定開度よりも小さくなるように補正する。尚、レギュレートバルブ68の設定開度は、補正せずに上記設定した目標設定開度のまま維持する。
ステップS10では、レギュレートバルブ68の開度をその目標設定開度よりも小さくなるように補正する。尚、排気ガス還流弁51の設定開度は、補正せずに上記設定した目標設定開度に維持する。ここで、ステップS9及び10における各弁51,68の補正量は、例えば、ステップS7にて算出した空燃比と、スモーク悪化値との差分値に比例する量とされる。
尚、ステップS10では、レギュレートバルブ68を閉方向に制御するようにしているが、エンジン負荷がかなり低い状態では、上述の如くレギュレートバルブ68が全閉状態になっている場合があり、この場合には、該レギュレートバルブ68の閉方向制御を行わずにリターンするようにしてもよいし、排気ガス還流弁51の閉方向制御を行うようにしてもよい。
以上の如く上記実施形態では、ECU81は、上記エンジン1の運転領域が上記排気ガス還流弁51を介して排気ガス還流を行うEGR領域にあり且つリニアO2センサにより検出された酸素濃度値がスモーク悪化限界値に対して燃料リッチ側の値となるスモーク発生条件(所定条件)が成立した場合(ステップS7の判定がYESの場合)において、上記エンジン1が低負荷運転状態にあるとき(ステップS8の判定がYESのとき)には、上記レギュレートバルブ68の開度をその目標設定開度よりも小さくする(ステップS10の処理を実行する)一方、上記エンジン1が高負荷運転状態にあるとき(ステップS8の判定がNOのとき)には、上記排気ガス還流弁51(EGRバルブ)の開度をその目標設定開度よりも小さくする(ステップS9の処理を実行する)ように構成されている。
これにより、エンジン1の高負荷運転時の燃費悪化を防止しつつ、燃焼室内の燃焼反応に伴うスモークの発生を抑制することができる。すなわち、上記実施形態の如く、2つの排気ターボ過給機61及び62を備えた多段式の過給装置においては、レギュレートバルブ68を閉方向に制御する方が、排気ガス還流弁51を閉方向に制御するよりも、各ターボ過給機61,62のタービン61b、62bに供給される排気ガス量(タービン供給排ガス量)を増大させる効果が大きい。
従って、エンジン1が低負荷運転状態にある場合のように吸入空気の過給量が少なくなる状態では、上述のように、スモーク発生条件の成立とともにレギュレートバルブ68を閉方向に制御するようにしたことで、排気ガス還流弁51を閉方向に制御するようにした場合に比べて、各排気ターボ過給機61,62に供給されるタービン供給排ガス量を一気に増加させて乗員の加速要求等を満足させつつ、燃焼室内の燃焼反応に伴うスモークの発生を抑制することができる。
また、エンジンの高負荷運転状態にある場合のように吸入空気の過給量が多くなる状態では、スモーク発生条件の成立とともに排気ガス還流弁51を閉方向に制御するようにしたことで、レギュレートバルブ68を閉方向に制御するようにした場合に比べて、各排気ターボ過給機61,62のタービン供給排ガス量が必要以上に増加するのを防止することができる。すなわち、該タービン供給排ガス量が過剰になることにより、第1排気ターボ過給機61がその過給機能を発揮し難くなり排気抵抗として作用するのを防止することができる。従って、エンジン1のポンピングロスを低減して燃費向上を図りつつ、スモークの発生を抑制することが可能となる。
さらに、上記実施形態では、ECU81は、上記レギュレートバルブ68の閉方向制御を行う際には(ステップS10の処理を実行する際には)、排気ガス還流弁51の開度は変更せずにその目標設定開度に維持するようになっており、また、ECU81は、排気ガス還流弁51(EGRバルブ)の閉方向制御を行う際には(ステップS9の処理を実行する際には)、レギュレートバルブ68の開度を変更せずにその目標設定開度に維持するようになっている。
このように、ECU81により弁開度変更制御を実行する際に、排気ガス還流弁51及びレギュレートバルブ68のうち閉方向制御を行わない方の弁51,68を設定開度に維持するようにしたことで、該弁開度変更制御の実行によるタービン供給排ガス量の増大効果を確実に得ることができる。
さらにまた、ECU81は、排気ガス還流弁51の開度を上記エンジン1の運転状態に応じた目標設定開度に制御した後に(ステップS5の処理を実行後に)、排気ガス還流率が所定比率(上記実施形態では30%)以上になっていれば(ステップS6の判定がYESであれば)、上記弁開度変更制御(ステップS8乃至S10の処理)を実行するようになっている。
これにより、排気ガス還流率が30%以上となる状況、つまりスモークが発生し易い状態においてのみ、ECU81による弁開度変更制御を実行することができる。このため、排気ガス還流弁51やレギュレートバルブ68が、排気ガス還流率が30%未満であるにも拘わらず(スモークが発生し難い状態にあるにも拘わらず)不必要に作動することにより、該各弁51,68の耐久性が失われるのを防止することができる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、2つの排気ターボ過給機61,62を
設けるようにしているが、これに限ったものではなく、排気ターボ過給機61,62を3つ以上設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、エンジン1が高負荷運転状態にあり且つスモーク発生条件が成立した時には、レギュレートバルブ68の閉方向制御を行うようになっているが、これに限ったものではなく、例えばウエストゲートバルブ70の閉方向制御を行うようにしてもよい。この場合には、ウエストゲートバルブ70が排気バイパス弁を構成することとなる。
また、上記実施形態では、第1排気ターボ過給機61を小型のものとし、第2排気ターボ過給機62を大型のものとしているが、これに限ったものではなく、例えば、両排気ターボ過給機61,62の過給能力を同等にするようにしてもよい。