JP2018034317A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】
生産性向上の点から、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができる積層体を提供する。
【解決手段】
支持基材の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体、以下の条件1から条件6のすべてを満たすことを特徴とする、積層体。
条件1:表面層が離型剤を含む。
条件2:支持基材がポリエステルにより構成される。
条件3:積層体の厚みtが30μm以下。
条件4:150℃における、長手方向熱収縮率Sが1.0%以上1.7%以下。
条件5:150℃における、幅方向熱収縮率Sが0.8%以下。
条件6:SとSが下記式を満たす。
< S×0.5
【選択図】なし

Description

本発明は積層体に関するものであり、特に離型フィルムに好適に用いることができる積層体に関するものである。
ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムが、液晶偏光板、位相差板等の光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムとして近年多用されている。
近年、生産性向上の観点から、ある程度高速領域での加工が考えられるが、軽剥離の離型フィルムにおいて、低速領域で低い剥離力を達成するのはもちろんのこと、それを達成しつつ、加工速度を上げてもできるだけ重剥離側の離型フィルムとの剥離力差が縮まらないことを同時に達成することが困難な状況にあった。
仮に、重剥離側離型フィルムと、軽剥離側離型フィルムとの剥離力差が縮まった場合、剥離工程において、粘着層を介して両面に貼り合わされた離型フィルムが同時に剥がれる、あるいは、剥離力差が小さくなるために粘着剤も離型フィルムと一緒に剥がれる等の不具合を生じる場合がある。
かかる問題に対する解決策として、特許文献1では「基材フィルムの少なくとも片面にシリコーン系樹脂皮膜からなる離型層を有し、該シリコーン系樹脂皮膜が、水酸基を有するシリコーンオイルとイソシアネート化合物を反応させて得られるシリコーン化合物を含有してなる離型フィルム」を提案している。
特許文献2では「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコールを含有する塗布層を有し、一方の面に離型層と粘着層とを順次有する積層フィルムであり、前記離型層が、少なくとも1種類以上のアルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂を含有し、少なくとも1種類以上の分子量1000以下のシロキサンを3.0〜15.0重量%含有する積層フィルム」を提案している。
また、粘着剤保護用フィルムとして使われる離型フィルムでは、粘着剤を形成する加工工程において加熱を伴うことが一般的である。近年、要求される品位が高まっていることから、加熱によりシワや反りが起きないことが求められている。
このような課題に対し、特許文献3では「帯状の基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に設けられた第1の樹脂層と、前記基材フィルムの他方の面側に設けられた第2の樹脂層とを備え、前記基材フィルムは、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.5%以下、幅方向で0.2%以下の2軸配向フィルムであることを特徴とする離型フィルム。」を提案している。
また、特許文献4では「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、下記構成要件(1)〜(4)を満たす偏光板離型用二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム。(1)150℃、30分間加熱したときの熱収縮率が長手方向および幅方向とも2.0%以下(2)150℃、30分間加熱したときの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率の差が1.0%以下(3)マイクロ波透過型分子配向計で測定したMOR値が1.80〜2.10(4)フィルム幅方向における配向角の変化量が500mm当り3.0°〜5.0°」を提案している。
特開2005−313601号公報 特開2014-226922号公報 特開2011−37023号公報 特開2015−45880号公報
本発明は、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができることを特徴とする。
本発明が解決しようとする課題は、生産性向上の点から、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができる積層体を提供することにある。上記課題に対し、前述の従来技術は次の状況にある。
まず、特許文献1の技術について、本発明者らが確認したところ、高速剥離、低速剥離のいずれでも剥離力を低減できることを確認したが、加熱処理後の剥離力が大きく上昇するものであった。
さらに、特許文献2の技術について、本発明者らが確認したところ、高速剥離、低速剥離のいずれでも剥離力を低減できることを確認したが、残留接着率が高く、さらに加熱処理後の剥離力が大きく上昇するものであった。
また、特許文献3、4の技術について、本発明者らが確認したところ、搬送に伴う加熱に晒されても、一定の搬送皺抑制効果が見られた。一方、積層体をより薄膜化した場合や、より高温での加熱に晒された場合においては、搬送皺の抑制効果が十分と言えるものではなかった。さらに、特許文献3の技術については、高速剥離、低速剥離のいずれでも剥離力が高くなるものであり、特許文献4の技術については、それ自身が粘着剤に対する剥離特性を有するものではなく、剥離特性に関する技術思想も開示されていないため、離型フィルムとしての評価はできなかった。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
<1>
支持基材の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、以下の条件1から条件6のすべてを満たすことを特徴とする、積層体。
条件1:表面層が離型剤を含む。
条件2:支持基材がポリエステルにより構成される。
条件3:積層体の厚みtが30μm以下。
条件4:150℃における、長手方向熱収縮率Sが1.0%以上1.7%以下。
条件5:150℃における、幅方向熱収縮率Sが0.8%以下。
条件6:SとSが下記式を満たす。
< S×0.5
<2>
以下の条件7および条件8を満たすことを特徴とする、<1>に記載の積層体。
条件7:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率の平均値が15MPa以下。
条件8:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率分布の標準偏差が5MPa以下。
<3>
以下の条件9を満たすことを特徴とする、<1>または<2>に記載の積層体。
条件9:表面層と支持基材の間に中間層を有し、該中間層がアルコキシシランを含む。
<4>
以下の条件10を満たすことを特徴とする、<1>から<3>のいずれかに記載の積層体。
条件10:積層体の長手方向のヤング率Eが3,500MPa以下。
<5>
偏光板用離型フィルムとして用いられることを特徴とする、<1>から<4>のいずれかに記載の積層体。
本発明によれば、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができる積層体を得ることができる。
本発明の実施形態を説明する前に、従来技術の問題点、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することについて、本発明者の視点で考察する。
[本発明と従来技術の比較]
まず、特許文献1に記載の従来技術の積層体が、高速剥離、低速剥離の両条件でも非常に低い剥離力と、高い残留接着率とを両立できない理由は、従来技術では水酸基を有するシリコーンオイルを、イソシアネート化合物と架橋反応させ、表面層に固定化している。シリコーンオイルの固定化により高い残留接着率は得られるが、架橋部の導入により表面層の弾性率が上昇し、特に低速剥離での剥離力が十分ではなかった。
また、特許文献2に記載の技術は、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂と、分子量が1,000以下の低分子量シロキサンとを混合している。低分子量シロキサンは低い剥離力を得るため、移行成分として添加されているものであり、低い剥離力は得られるが残留接着率とトレードオフの関係にあり、両立することはできない。
特許文献3および特許文献4に記載の技術は、積層体の長手方向熱収縮および幅方向熱収縮率を低下する方法であるが、単純に熱収縮率を下げる手法は限界があり、また、効果も限定的であった。そのため、基材をより薄膜化したり、より高温環境に晒した場合、搬送皺の抑制効果は不十分であった。
そこで、本発明者らは粘着剤に対して良好な剥離特性を有し、さらに搬送皺を抑制するため、積層体および離型剤を含む表面層について好ましい態様を見出した。
本発明者らは積層体をより薄膜化した場合や、より高温での加熱に晒された場合において、積層体の長手方向熱収縮率Sと幅方向熱収縮率Sをそれぞれ特定の関係にすることで、搬送皺を抑制できることを見出した。従来、積層体の熱収縮率と搬送皺の関係は議論されており、単純に積層体の熱収縮率を下げることで、搬送皺が解消方向に向かうことは知られている。一方、熱収縮率は積層体の材料構成にも依存するため、単純に積層体の熱収縮率を下げる手法には限度がある(例えば、材料変更をすると本来の用途に不適となる場合がある)。そこで、本発明者らは熱収縮率に関する視点を変え、長手方向熱収縮率と幅方向熱収縮率について、それぞれの関係性(値と比率)に着目した。具体的には、積層体の搬送皺が発生する過程を詳細に観察したところ、長手方向と幅方向は不均一に収縮しているが、それぞれ一定の比率で収縮した場合、搬送皺がほとんど起きないことが分かった。この現象について、積層体の厚み方向をz軸としたxy平面で考察すると、積層体がx軸の一軸方向のみに収縮した場合、材料のポアソン比に応じてy軸方向に少し膨張するが、この膨張を打ち消すようにy軸方向に収縮が起きた場合、綺麗に積層体が収縮するため、積層体の皺発生を抑制することができるためだと考えている。
そこで、本発明者らが検討を進めた結果、積層体の長手方向熱収縮率と幅方向熱収縮率を特定の関係とすることで、搬送皺を抑制できることを見出した。
具体的には、積層体の150℃における長手方向熱収縮率Sを1.0%以上1.7%以下とすること、150℃における幅方向熱収縮率Sを0.8%以下とすること、SとSが「S < S×0.5」の関係式を満たすことが好ましい。
さらに、本発明者らは高速剥離、低速剥離の両条件でも非常に低い剥離力を得る検討を進める上で、積層体が有する表面層表面の弾性率、および弾性率分布に着目した。
表面層は被着体を剥離する際に、被着体の変形に追従して自身が変形することにより剥離エネルギーを下げ、低い剥離力を得ている。表面層の弾性率が低い、すなわち、表面層が非常に柔軟性のある層であることにより被着体の変形に追従しやすく、結果として、より低い剥離力を得ることができる。さらに、表面層表面の弾性率は均一であることが好ましい。弾性率分布の標準偏差が大きいと、弾性率の高い箇所が変形しにくいため、被着体を剥離する際に引っかかりとなり、結果として、剥離力が高くなる。
以上から、表面層表面の弾性率を下げ、弾性率分布の標準偏差を小さくすることで、非常に低い剥離力を得ることができ、好ましい。具体的には、表面層表面の弾性率、および、弾性率分布の標準偏差を一定の値以下にすることが好ましい。
また、本発明者らは、上述した剥離特性および搬送特性を両立するために、積層体における表面層に含まれる表面層用樹脂組成物を形成するための表面層用塗料組成物は、少なくとも2種類の表面層用樹脂前駆体を含むことが好ましいことに着目した。具体的には、一定の値以上の粘度を有する表面層用樹脂前駆体Aと、一定の値以下の粘度を示す表面層用樹脂前駆体Bとを含むことが好ましい。粘度が高い表面層用樹脂前駆体Aは、すなわち、非常に分子量の大きい高分子量材料であり、表面層用樹脂前駆体Aと比較して粘度が低い表面層用樹脂前駆体Bは、すなわち、表面層用樹脂前駆体Aよりも分子量が低い材料である。このように分子量差のある材料を混合することにより、分子量が低い側の成分が可塑剤のように作用し、表面層の弾性率を低くすることができ、低い剥離力が得られるため好ましい。さらに、塗料組成物中、前記表面層用樹脂前駆体Bは一定の割合であることが好ましい。塗料組成物中、表面層用樹脂前駆体Bが一定の割合で存在することにより、前述の効果が得られる。
以上から、表面層用塗料組成物は、少なくとも2種類の表面層用樹脂前駆体を含むことにより、非常に低い剥離力を得ることができ、好ましい。
また、積層体を用いて製造される部材(液晶偏光板、位相差板等)の生産性向上の観点から、剥離力が十分に低いことが重要である。特に、近年では生産性向上の観点から高速生産が求められており、積層体についても、低速領域と高速領域の両方で剥離力が低いことが重要となる。低速領域と高速領域の両方で積層体の剥離力が十分に低い場合、様々な生産速度でも前記部材の製造に積層体を好ましく用いることができるため、前記部材の生産性を向上することが可能となる。
さらに、積層体の硬さと搬送性の関係に着目したところ、積層体の長手方向の硬さを一定以下にすることで、搬送皺をより抑制できることを見出した。これは、積層体の長手方向の硬さを抑制することで、搬送皺の原因となる、長手方向に負荷がかかる際の幅方向の応力を抑制することができ、結果として幅方向の座屈現象を抑制することができるためと考えられる。
具体的には、積層体の長手方向のヤング率Eを3,500MPa以下とすることが好ましい。
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
上記課題、すなわち粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制するために、本発明の積層体は、支持基材の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、以下の条件1から条件6のすべてを満たすことが好ましい。
条件1:表面層が離型剤を含む。
条件2:支持基材がポリエステルにより構成される。
条件3:積層体の厚みtが30μm以下。
条件4:150℃における、長手方向熱収縮率Sが1.0%以上1.7%以下。
条件5:150℃における、幅方向熱収縮率Sが0.8%以下。
条件6:SとSが下記式を満たす。
< S×0.5
長手方向熱収縮率Sおよび幅方向熱収縮率Sの測定方法は後述する。
本発明の積層体について、支持基材がポリエステルにより構成され、表面層が離型剤を含むことにより、例えば光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムとして本発明の積層体を好ましく用いることができる。
生産性の観点から、本発明の積層体の厚みtが30μm以下であると好ましいが、より好ましくは25μm以下であり、特に好ましくは22μm以下である。本発明の積層体の厚みtを特定の値以下とすることで、本発明の積層体や、本発明の積層体を光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムとして用いた際、生産性が向上するため好ましい。
搬送性の観点から、本発明の積層体は、150℃における長手方向熱収縮率Sが1.0%以1.7%以下であることが好ましいが、より好ましくは1.0%以上1.5%以下である。また、同様に、150℃における幅方向熱収縮率Sが0.8%以下であることが好ましい。さらに、前記Sと0.5の積「S×0.5」よりもSが小さいことが好ましい。SおよびSがこれら3つの関係を満たすことで、本発明の積層体の搬送性を高めることができる。
およびSが前記3つの関係を満たすことで、前述の効果により、例えば本発明の積層体を光学用フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムといて用いた際、搬送性が向上するため好ましい。一方、SおよびSが前記3つの関係を満たさない場合、特に積層体が薄膜であると、粘着剤塗布などのいわゆる後加工工程においてフィルムにシワや凹凸などのムラが発生する場合があり、光学用フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムとして不適となる場合がある。
およびSが前記3つの関係を満たすためには、例えば積層体に用いる支持基材の製造工程における加熱条件や延伸倍率を調整し、積層体とした後に各熱収縮率が上記範囲となるように調整する方法や、積層体を後加熱処理することで可能となる。
さらに、剥離性の観点から、以下の条件7および条件8を満たすことが好ましい。
条件7:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率の平均値が15MPa以下。
条件8:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率分布の標準偏差が5MPa以下。
表面層表面の弾性率、表面層表面の弾性率分布の標準偏差の測定方法は後述する。
剥離力の観点から、本発明の積層体は、表面層表面の弾性率の平均値が15MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは10MPa以下であり、特に好ましくは8MPa以下である。弾性率は外部負荷への応答性を表し、弾性率の平均値を一定以下にすることで、剥離力を低くすることができる。
表面層表面の弾性率が小さいと、被着体の変形に追従して表面層も変形しやすく、剥離に必要なエネルギーを下げることができるため、剥離力を低くすることができる。弾性率が低いほどこの効果は大きいが、転写性などの観点からある程度の架橋構造を有する必要があるため、弾性率の平均値の下限値は1MPa程度と考えられる。一方で、弾性率の平均値が15MPaより大きくなると、表面層の変形が発生しにくいため、被着体の変形量が大きくなり、剥離力が高くなる場合がある。
表面層表面の弾性率の平均値を15MPa以下とするためには、例えば表面層に用いられる樹脂組成物を、後述の表面層用樹脂組成物とすることで可能となる。
また、本発明の積層体は、前記表面層表面の弾性率分布の標準偏差が、5MPa以下であることが好ましいが、より好ましくは4.5MPa以下であり、特に好ましくは4.0MPa以下である。弾性率分布の標準偏差を特定の値以下にすることで、剥離力を低くすることができる。ここでいう標準偏差とは、弾性率分布の広がり幅、すなわち、弾性率のばらつきを示す。算出方法については後述する。
弾性率分布の標準偏差が小さいと、表面層表面の弾性率が均一であり、被着体を剥離する際に引っかかりとなる箇所がないため、剥離力を低くすることができ好ましい。標準偏差が小さいほどこの効果は大きいが、現実的には2MPa程度と考えられる。一方で、標準偏差が5MPaより大きくなると、弾性率のばらつきが多く、弾性率が高い箇所が引っかかりとなり、剥離力が高くなる場合がある。
表面層表面の弾性率分布の標準偏差を5MPa以下とするためには、例えば表面層に用いられる樹脂組成物を、後述の表面層用樹脂組成物とすることで可能となる。
さらに、付加機能の観点から、以下の条件10を満たすことが好ましい。
条件10:表面層と支持基材の間に中間層を有し、該中間層がアルコキシシランを含む。
付加機能付与、すなわち、離型性の安定性向上、支持基材と表面層間の密着性向上、オリゴマーブロック性付与、帯電防止性付与、耐溶剤性付与などの観点から、本発明の積層体は中間層を有し、該中間層がアルコキシシランを含むことが好ましい。
前記中間層およびアルコキシランの詳細、中間層の形成方法については後述する。
さらに、以下の条件10を満たすことが好ましい。
条件10:積層体の長手方向のヤング率Eが3,500MPa以下。
積層体の搬送性の観点から、本発明の積層体は長手方向のヤング率Eが3,500MPa以下であることが好ましい。積層体の長手方向のヤング率Eが低いと、搬送皺を抑制することができる。
積層体の長手方向のヤング率Eが低いと、前述の効果により、本発明の積層体を光学用フィルム製造時に用いる粘着剤保護用離型フィルムとして用いた際、搬送性が向上するため好ましい。積層体の長手方向のヤング率が低いほどこの効果は大きいが、支持基材がポリエステルにより構成されるため、下限値は500MPa程度と考えられる。一方で、ヤング率が3,500MPaを超える場合、特に積層体を薄膜化した場合に搬送性が低下する場合がある。
積層体の長手方向のヤング率を3,500MPa以下とするためには、例えば支持基材の製造工程で延伸倍率を上げることや、積層体の後加熱処理を行うことで可能となる。
さらに、本発明の積層体は、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができるため、偏光板用離型フィルムとして好ましく用いることができる。
以下、本発明の実施の形態の詳細に説明する。
[積層体、および表面層]
本発明の積層体は、支持基材の少なくとも一方の面に、前述の条件を満たす表面層を有するものであればよく、支持基材の両方の面に表面層を有してもよいし、表面層の支持基材への密着性、帯電防止性、耐溶剤性等を付与するため支持基材と表面層の間に1層以上の中間層を設けてもよい。
前述の表面層の厚みは、10nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがより好ましい。表面層を上記範囲とすることで、生産性を低下させにくく、安定した剥離性能を実現させることができる。
本発明の積層体の表面層は、前述の条件を満たすことができれば特に限定されないが、本発明の表面層用樹脂組成物により形成されていることが好ましく、本発明の表面層用塗料組成物を後述する積層体の製造方法により、塗布、乾燥、硬化することにより形成することが好ましい。
ここで本発明における「層」とは、前記積層体の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位との構成元素の組成、粒子等の含有物の形状、厚み方向の物理特性が不連続な境界面を有することで区別される有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(FT- IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS、EPMA、EELS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚さを有する部位を指す。
[表面層用樹脂組成物]
本発明における表面層用樹脂組成物は、前述の本発明の積層体の表面層に好ましい樹脂組成物を指す。表面層、または表面層用樹脂組成物として前述の条件を満たすことができればその組成は特に限定されないが、離型剤を含むことが好ましい。ここで、離型剤とは表面層表面の表面エネルギーを低下させる効果を持つ材料である。本発明の積層体は例えば偏光板用離型フィルムとして用いられる場合、表面層の上に粘着剤が塗布され、さらに当該粘着剤の上に偏光板等が貼合され、最終的に表面層と粘着剤の界面で剥離が行われる。本発明の場合、表面層に含まれる離型剤は表面層と粘着剤の界面で剥離が行われる際に、表面層表面の表面エネルギーを低下させ、表面層と粘着剤の剥離性を向上するために用いられる。離型剤は積層体の表面層の表面エネルギーを低下させる効果を持つ材料であれば特に限定されないが、例えば、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などが挙げられ、優れた離型性や耐熱性からシリコーン系樹脂がより好ましく、特に硬化型シリコーン系樹脂が好ましい。
硬化型シリコーン系樹脂には、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに、加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮重合反応型」、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させる「ラジカル付加型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」があり、いずれを用いてもよいが、生産性、剥離力の観点から、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型が好ましい。
本発明における表面層用樹脂組成物は、好ましくは後述する表面層用塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することにより形成することができる。後述するように、表面層用塗料組成物を準備し、当該表面層用塗料組成物を支持基材(または中間層)上に塗布し、乾燥−硬化させることにより、表面層用樹脂組成物(離型剤を含む)とし、表面層を形成する方法も好ましい態様である。このような表面層の形成方法により、表面層が表面層用樹脂組成物(離型剤を含む)を含むことになる。
[表面層用塗料組成物、表面層用樹脂前駆体]
本発明における表面層用塗料組成物は、前述の積層体の表面層、もしくは表面層用樹脂組成物を形成することができる室温にて液体の性状を示す混合物であり、少なくとも後述する積層体の製造方法によって、表面層用樹脂組成物を形成可能な材料(以降これを表面層用樹脂前駆体、または単に樹脂前駆体と呼ぶ)と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、さらに溶媒、粒子、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
表面層用塗料組成物は、前述の条件を満たすことができればその組成は特に限定されないが前述のように離型性や耐熱性の観点から、離型剤となるシリコーン系樹脂、特に硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」、「縮重合反応型」、「ラジカル付加型」、「カチオン重合型」の樹脂前駆体、および重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましい。
また、本発明における表面層用塗料組成物は、樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bとを含むことが好ましい。樹脂前駆体Aは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンαとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβとを含むことが好ましい。また、樹脂前駆体Aは、樹脂前駆体Aが固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で、10,000(mPa・s)以上の粘度を有するものであることが好ましい。一方、樹脂前駆体Bは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンX(以下、単にXと呼ぶこともある)とアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンY(以下、単にYと呼ぶこともある)とを含むことが好ましい。また、樹脂前駆体Bは、樹脂前駆体Bが固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で、5,000(mPa・s)以下の粘度を有するものであることが好ましい。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンα、およびXの具体例としては、例えば分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。本発明に用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンα、オルガノハイドロジェンポリシロキサンXは、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
前記アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβ、およびYの具体例としては、例えば分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。本発明に用いられるアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβ、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYは、異なるものであることが好ましい。また、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβと、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYは、固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で粘度差があることが好ましく、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβの粘度は10,000(mPa・s)以上、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYの粘度は5,000(mPa・s)以下であることが好ましい。
付加反応型シリコーン樹脂前駆体と触媒の具体例としては、例えばオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを含むものが好ましく、信越化学工業(株)社製のKS−3650、KS843、KS847、KS847H、KS847T、X62−2829、KS838、PL-50T、東レ・ダウコーニング(株)社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、SRX212、などが挙げられる。
また、本発明における表面層用塗料組成物は、樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bとを含むことが好ましく、樹脂前駆体Aの具体例としては、例えばLTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、樹脂前駆体Bの具体例としては、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、などが挙げられる。
縮重合反応型シリコーン樹脂前駆体と触媒の具体例としては、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンと有機錫触媒を含むものが好ましく、例えば東レダウコーニング(株)社製SRX290やSYLOFF23が挙げられる。
ラジカル付加型シリコーン樹脂前駆体と触媒の具体例としては、アルケニル基を含むオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含むオルガノポリシロキサンと光重合触媒を含むものが好ましく、例えば東レ・ダウコーニング(株)社製BY24−510H及びBY24−544などが挙げられる。
カチオン重合型シリコーン樹脂前駆体と触媒の具体例としては、エポキシ基を含むオルガノポリシロキサンと、オニウム塩開始剤を含むものが好ましく、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TPR6501、UV9300及びXS56−A2775などが挙げられる。
本発明における表面層用塗料組成物の固形分濃度は、特にこれに限定されるものではないが、表面層用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、支持基材もしくは後述する中間層上でハジキが発生しやすくなる場合があり、他方10質量%を超えると表面が粗くなる場合がある。
[中間層]
本発明の積層体では、支持基材と表面層間の層間密着性向上や、積層体の帯電防止、表面層の耐溶剤性や、支持基材からの低分子量成分の表面移行を抑制する(以降、オリゴマーブロック性とする)観点から、支持基材と表面層の間に1層以上の中間層を設けてもよい。
中間層の形成方法は、上記の目的を達する中間層が形成できれば、その形成方法は特に限定されない。支持基材の製膜途中で後述する中間層用塗料組成物を塗布したフィルムを作成後、別の工程で表面層を塗布してもよく、支持基材の製膜後、中間層用塗料組成物を支持基材に塗布−乾燥−巻き取りを行い、次いで表面層を塗布−乾燥−巻き取り(逐次塗布)を行ってもよいが、好ましくは、中間層用塗料組成物を塗布、溶媒除去後、直ちに表面層を塗布することが、支持基材と表面層間の密着性、塗膜品位の面から好ましい。
中間層の乾燥塗布厚みは、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上200nm以下、さらに好ましくは20nm以上100nm以下である。塗布厚みが10nmnm以上500nm以下であると、表面層の本来の目的である離型性能が安定し、かつ中間層によって付与したい機能、即ち支持基材と表面層間の密着性向上、オリゴマーブロック性、帯電防止性、耐溶剤性と優れた塗膜品位を得ることができるため好ましい。
[中間層用塗料組成物]
中間層用塗料組成物は、支持基材上に塗布、乾燥することで、アルコキシシランを含む中間層を形成することができれば特に限定されないが、前述の支持基材と表面層の密着性を付与する目的からは、中間層用塗料組成物のアルコキシシランは、(メタ)アクリロキシアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシラン、アミノアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコキシシランを含み、支持基材上に塗布、乾燥することで、その加水分解縮合物を形成できる組成物であることが好ましい。
ここで「アルコキシシラン」とは、Si−O−Siからなるシロキサン骨格を繰り返し単位としたセグメントが、1次元から4次元に規則的またはランダムに連なることができる化合物を指す。さらにSiに有機基がついていてもよい。
本発明におけるアルコキシシランは、化学式1または化学式2で示される化合物で、nは0〜3の整数、mは0〜2の整数、Rは(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、フェニル基、アミノ基等、Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基が好ましい。
Figure 2018034317
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また、本発明におけるアルコキシシランはアルコキシシランの加水分解縮合物であることが好ましい。加水分解縮合物とは化学式3にその一例が示されるもので、Rは(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、フェニル基、アミノ基、水酸基等、Rは炭素数1から4のアルキル基が好ましい。すなわち、アルコキシシランの加水分解縮合物とは上記アルコキシシランのアルコキシ基(OR)が部分的に加水分解してシラノール基(Si−OH)になると共に、シラノール縮合することにより、シロキサン結合(Si−O−Si)を形成したものを指す。
Figure 2018034317
アルコキシシランの具体例は、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランなどがある。
前記アルコキシシランの加水分解物の縮合体としては、前述のアルコキシシラン、もしくはシランカップリング材の加水分解物の2量体以上の縮合体で、いわゆるシリコーンオリゴマー、シリコーンレジン、シロキサンポリマーなどを指す。
また、中間層用塗料組成物のアルコキシシランは、(メタ)アクリロキシアルコキシシランやエポキシアルコキシシランを用いることがより好ましい。
中間層用塗料組成物は上記アルコキシシランに加えて、表面層の密着性向上や耐溶剤性付与の観点から有機金属化合物を含有してもよい。有機金属化合物としては、アルミニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、鉄、インジウムなどの金属の有機酸塩、キレート化合物、アルコキシド、およびそのオリゴマーが好ましく、特に有機アルミニウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、(MeO)Al、(EtO)Al、(n−Pro)Alなどのアルミニウムアルコラート、ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸、安息香酸などのアルミニウム塩、アルミニウムアルコラートにアセト酢酸エステルまたはジアルキルマロネートを反応させて得られるアルミニウムキレート、アルミニウムオキサイドの有機酸塩、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。さらに有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムキレート化合物が好ましい。具体的には、有機アルミニウム化合物として、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートヒス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
本発明における中間層用塗料組成物の固形分濃度は、特にこれに限定されるものではないが、中間層用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、基材フィルム上でハジキが発生しやすくなる場合があり、他方10質量%を超えると表面が粗面化する場合がある。
[その他の塗料組成物添加剤]
前述の表面層用塗料組成物と中間層用塗料組成物は溶媒を含んでもよく、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。
溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
さらに、積層体に帯電防止性をする目的から、表面層、中間層は各種帯電防止材料を含有してもよい。帯電防止剤としてはアンモニウム基含有化合物に代表されるカチオン系帯電防止剤、ポリエーテル化合物、シロキサン化合物に代表されるノニオン系化合物、フッ素系化合物、スルホン酸化合物に代表されるアニオン系化合物、ベタイン化合物に代表される両性化合物等のイオン導電性高分子化合物や、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどのπ電子共役系の高分子化合物、イオン性液体などが挙げられる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、表面層用塗料組成物および中間層用塗料組成物にレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、等を加えてもよい。これにより、表面層はレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤等を含有することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。特に、本発明の積層体に用いられる支持基材はポリエステルにより構成されることが好ましい。ここで、ポリエステルにより構成されるとは、支持基材全体を100質量%としたとき、ポリエステルを50質量%以上含むことをいう。なお、支持基材におけるポリエステルの含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルムが挙げられるが、特に積層体に使用される支持基材としては、機械的強度、耐熱性、熱寸法安定性および耐薬品性に優れ、且つ経済的である二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
また、支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
支持基材の表面には、前記表面層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
また、支持基材の表面には、本発明の表面層とは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、特に易接着層を設けることが好ましい。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の表面に形成される前記表面層は、塗料組成物を支持基材、または中間層を設けた支持基材上に塗布することにより形成する方法が好ましい。また、表面層と支持基材と表面層の間に中間層を設ける場合も同様に、支持基材上に中間層用塗料組成物を塗布することにより形成する方法が好ましい。
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法またはダイコート法が塗布方法としてより好ましい。
塗布に次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線照射により紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100mW/cm以上3,000mW/cm以下が好ましく、200mW/cm以上2,000mW/cm以下がより好ましく、300mW/cm以上1,500mW/cm以下がさらに好ましい。また、紫外線照射を行う際に紫外線の積算光量が、100mJ/cm以上3,000mJ/cm以下が好ましく、200mJ/cm以上2,000mJ/cm以下がより好ましく、300mJ/cm以上1,500mJ/cm以下がさらに好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[積層体の後加熱処理]
本発明の積層体において、長手方向熱収縮率S、幅方向熱収縮率S、およびそれらの関係が重要であるが、これらの特性を好ましい範囲に設計する方法の一つとして、積層体の後加熱処理が挙げられる。積層体の熱収縮率の変化は後加熱処理の温度および時間に依存し、例えば温度としては80℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以上180℃以下であり、特に好ましくは120℃以上160℃以下である。また、後加熱処理の時間としては、好ましくは5分以下であり、より好ましくは3分以下であり、特に好ましくは2分以下である。
なお、積層体の各熱収縮率を好ましい範囲に設計する方法は後加熱処理に限定されるものではなく、例えば、積層体に使用する支持基材の熱収縮率を予め調整しておく方法などが挙げられる。
[用途例]
本発明の積層体は、良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができる点を活かし、離型フィルムとして好適に用いることができる。また本発明の積層体は、光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用の離型フィルムとして、好適に用いることができ、さらに本発明の積層体は偏光板用離型フィルムとして特に好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
[エポキシアルコキシシラン化合物]
〔エポキシアルコキシシラン化合物1〕
エポキシアルコキシシラン化合物1として、BY24-846B(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
[(メタ)アクリロキシアルコキシシラン化合物]
〔(メタ)アクリロキシアルコキシシラン化合物1〕
(メタ)アクリロキシアルコキシシラン化合物1として、OFS-6030(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
[アルミニウムキレート化合物]
〔アルミニウムキレート化合物1〕
アルミニウムキレート化合物1として、BY24-846E(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
[シリコーン樹脂前駆体A]
〔シリコーン樹脂前駆体A1〕
シリコーン樹脂前駆体A1として、LTC761(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
〔シリコーン樹脂前駆体A2〕
シリコーン樹脂前駆体A2として、KS847H(信越化学工業株式会社製)を使用した。
[シリコーン樹脂前駆体B]
〔シリコーン樹脂前駆体B1〕
シリコーン樹脂前駆体B1として、LTC303E(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
[白金触媒]
〔白金触媒1〕
白金触媒1として、SRX212(東レ・ダウコーニング株式会社製)を使用した。
〔白金触媒2〕
白金触媒2として、PL-50T(信越化学工業株式会社製)を使用した。
[中間層塗料組成物の作成]
[中間層用塗料組成物1]
以下の材料を混合し、2プロパノール/トルエン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度4質量%の中間層用塗料組成物1を得た。
・エポキシアルコキシシラン化合物1 5質量部
・(メタ)アクリロキシアルコキシシラン化合物1 5質量部
・アルミニウムキレート化合物1 1質量部。
[表面層用塗料組成物の作製]
[表面層用塗料組成物1]
以下の材料を混合し、n-ヘプタン/トルエン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の表面層用塗料組成物1を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A1 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B1 3質量部
・白金触媒1 0.1質量部。
[表面層用塗料組成物2]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の表面層用塗料組成物2を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A2 10質量部
・白金触媒2 0.1質量部。
[表面層用塗料組成物3]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の表面層用塗料組成物3を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A1 5質量部
・シリコーン樹脂前駆体B1 5質量部
・白金触媒1 0.1質量部。
[支持基材]
[支持基材A1]
組成を表1の通りとして、原料を、酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を280℃で溶融し、短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への予熱温度85℃で1.5秒間予熱を行い、延伸温度115℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸前半温度115℃、延伸中盤温度135℃、延伸後半温度145℃で幅方向に3.3倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理温度230℃で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み23μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これを支持基材A1とした。
[支持基材A2]
組成を表1の通りに変更した以外は、支持基材A1と同様にして厚み19μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これを支持基材A2とした。
[積層体の製造方法]
[積層体の作成方法1]
支持基材上に、中間層用塗料組成物1を、乾燥・硬化後の塗布厚みが0.1(μm)となるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で3秒乾燥硬化した。5分以内に表面層用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが0.1(μm)となるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層体を得た。
[積層体の作成方法2]
支持基材上に、表面層用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが0.1(μm)となるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層体を得た。
[積層体の後加熱処理1]
前記方法で作成した積層体について、150℃で60秒の加熱処理を行った。
[積層体の後加熱処理2]
前記方法で作成した積層体について、140℃で60秒の加熱処理を行った。
[積層体の後加熱処理3]
前記方法で作成した積層体について、130℃で60秒の加熱処理を行った。
各実施例・比較例に対応する上記積層体の作成方法、使用する中間層用塗料組成物、表面層用塗料組成物、行った後加熱処理の組合せを表2に示した。
[積層体の評価]
作成した積層体について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表3に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルにつき場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[表面層の弾性率の測定、および弾性率分布の標準偏差の算出]
積層体の表面層表面について、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
具体的にはPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の校正を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT Modulusチャンネルのデータを表面の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。
測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 3(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値を、表面層表面の弾性率とした。更に得られた弾性率のヒストグラムの各階級値および観測頻度を表計算ソフト「Microsoft Office Excel 2010」に取り込み、STDEVP関数を用いることで、弾性率分布の標準偏差を算出した。
[積層体の厚み]
電子顕微鏡(SEM)を用いて積層体を観察することにより、各層および積層体の厚みを測定した。具体的には、積層体の断面の切片をSEMにより3,000倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ)にて厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を、測定値とした。
[積層体の剥離力]
積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張試験機を用いて300(mm/分)、および、100,000(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値(mN)を測定した。なお、抵抗値(mN)は粘着テープの幅(mm)で除した後に50倍し、粘着テープの幅が50mmに相当する剥離力(mN/50mm)に換算した。測定はそれぞれ引張速度を変えて行い、300(mm/分)の速度で剥離した時をテープ剥離力Rとし、100,000(mm/分)の速度で剥離した時を高速剥離力Rとした。
[積層体の熱収縮率]
積層体を10mm幅×200mm長の矩形に切り出し、試験片とした。なお、200mm長の方向を積層体の長手方向に合わせた試験片、200mm長の方向を積層体の幅方向に合わせた試験片をそれぞれ作成し、前者での評価結果を長手方向熱収縮率S(%)、後者での評価結果を幅方向熱収縮率S(%)とした。
まず、切り出した試験片の200mm長の方向において、各端部から25mmの位置へ幅方向に標線をそれぞれ描き、各標線間の距離が150mmとなるようにした。次に、試験片の一端を熱風オーブンに固定し、もう一端には3gの荷重がかかるように重りを取り付けた。熱風オーブンは予め150℃に加熱しておき、試験片を設置した状態で30分間の加熱処理を行った。その後、熱風オーブンから試験片を取出し、試験片が室温まで冷却されたのを確認後、加熱処理前に付けた各標線間の距離x(mm)を測定した。
得られた数値を用いて、以下の式で150℃における熱収縮率(%)を算出した。
(熱収縮率)=((150−x)/150)×100。
[積層体のヤング率]
積層体を10mm幅×150mm長の矩形に切り出し、試験片とした。なお、150mm長の方向を積層体の長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
チャック間距離がa(mm)のときのサンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ量x(%)と応力y(N/mm)を算出した。ただし、試験前のサンプル厚みをk(mm)とする。
ひずみ量:x=((a−50)/50)×100
応力:y=b/(k×10)。
上記で得られたデータのうち、応力−ひずみ曲線の立ち上がり部の接線からヤング率E(MPa)を算出した。
[積層体の剥離性]
積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて24時間放置した。次に、貼り合せた粘着テープと積層体を180度方向に手で剥離を行い、以下の基準に則り判定を行った。
10点: 剥離の際、引っ掛かりを感じず剥離できる。
7点: 剥離の際、僅かに引っ掛かりを感じる。
4点: 剥離の際、強めの引っ掛かりを感じる。
1点: その他(剥離できない等)。
[積層体の搬送性]
積層体を150mm幅×250mm長に切り出し、このサンプルを180℃に調整された熱風オーブンに入れ、1分間静地した。その後、サンプルを熱風オーブンから取出し、積層体に発生するシワや凹凸の状態を目視で観察し、以下の基準に則り判定を行った。
10点: シワや凹凸の発生がない。
7点: わずかにシワや凹凸が発生する。
4点: 小さなシワや凹凸が発生する。
1点: その他(大きなシワや凹凸が発生する等)。
[剥離力増加率]
積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、加熱前の剥離力とした。
次に、積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、70℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、加熱後の剥離力とし、以下の式を用いて加熱後の剥離力増加率を求めた。
加熱後の剥離力増加率(%)=A/B×100
A:加熱後の剥離力
B:加熱前の剥離力。
剥離力増加率を以下の基準に則り判定を行った。
10点: 剥離力増加率が120%以下。
7点: 剥離力増加率が120%より大きく、125%以下。
4点: 剥離力増加率が125%より大きく、130%以下。
1点: 剥離力増加率が130%より大きい。
[残留接着率]
積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、70℃、20g/cmの環境下で20時間静置した。その後室温で1時間冷却した後31Bテープを丁寧にはがし、これを再度銅板に貼り合わせて更に1時間静置した後、300m/分の速度で180度剥離した時の抵抗値を測定した。この値を(f)とする。同様の手順を4フッ化エチレン樹脂(東レフィルム加工株式会社製“トヨフロン”(登録商標))に貼り合わせて剥離抵抗値を測定しこの値をブランク値(fo)とした。この結果を以下の数式に当てはめて残留接着率を計算した。計算値が90%以上であれば良好といえる。
残留接着率(%)=(f)/(fo)×100
残留接着率を以下の基準に則り判定を行った。
10点: 残留接着率が98%以上。
7点: 残留接着率が97%以上98%未満。
4点: 残留接着率が96%以上97%未満。
1点: 残留接着率が96%未満。
[耐溶剤性]
積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて1時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、溶剤試験前の剥離力A(mN/50mm)とした。
次に、積層体の表面層表面に対し、トルエン約1mlを染み込ませた綿布(金巾3号)を用意し、学振型摩耗試験機II型(テスター産業(株)製)を用いて、積層体の表面層表面に対して荷重2.9Nで30往復擦過を行った。その後、積層体に付着した溶剤を乾燥させた後、積層体の表面層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて1時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、溶剤試験後の剥離力B(mN/50mm)とした。
得られた数値を用いて、以下の式で試験前後の剥離力保持率(%)を算出した。
(溶剤試験前後の剥離力保持率)=(A/B)×100。
耐溶剤性を以下の基準に則り判定した。
10点: 剥離力保持率が80%以上。
7点: 剥離力保持率が60%以上、80%未満。
4点: 剥離力保持率が30%以上、60%未満。
1点: 剥離力保持率が30%未満。
Figure 2018034317
Figure 2018034317
Figure 2018034317
本発明の積層体は、粘着剤に対して良好な剥離特性を持ち、薄膜でありながら、粘着剤塗工工程等の搬送過程における搬送皺を抑制することができる点を活かし、液晶偏光板、位相差板等の光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用の離型フィルムとして、好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 支持基材の少なくとも一方の面に、表面層を有する積層体であって、以下の条件1から条件6のすべてを満たすことを特徴とする、積層体。
    条件1:表面層が離型剤を含む。
    条件2:支持基材がポリエステルにより構成される。
    条件3:積層体の厚みtが30μm以下。
    条件4:150℃における、長手方向熱収縮率Sが1.0%以上1.7%以下。
    条件5:150℃における、幅方向熱収縮率Sが0.8%以下。
    条件6:SとSが下記式を満たす。
    < S×0.5
  2. 以下の条件7および条件8を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
    条件7:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率の平均値が15MPa以下。
    条件8:原子間力顕微鏡により3μm四方の範囲について測定した、表面層表面の弾性率分布の標準偏差が5MPa以下。
  3. 以下の条件9を満たすことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の積層体。
    条件9:表面層と支持基材の間に中間層を有し、該中間層がアルコキシシランを含む。
  4. 以下の条件10を満たすことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体。
    条件10:積層体の長手方向のヤング率Eが3,500MPa以下。
  5. 偏光板用離型フィルムとして用いられることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の積層体。
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