JP2018034111A - 金属吸着剤 - Google Patents

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良彦 近藤
千明 三戸
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千明 三戸
憲秀 藤原
Norihide Fujiwara
憲秀 藤原
文男 濱田
Fumio Hamada
文男 濱田
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Abstract

【課題】優れた金属吸着能力を有するシクロデキストリン誘導体のポリマー、及び、これを用いた金属吸着剤の提供。
【解決手段】複数のシクロデキストリン誘導体が架橋構造を介して互いに連結されてなるポリマーを含む金属吸着剤であって、前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンの少なくとも一つの水酸基が金属親和性基に置換されてなるものである、金属吸着剤。架橋構造がエピハロヒドリン由来の構造であり、金属親和性基が、アミノ基、アリールスルフィド基又はアリールアルキルスルフィド基から選択された1種以上であることが好ましく、特に好ましくはエチレンジアミン基又はベンジルメルカプタン基である金属吸着剤。特に、好ましくは、水銀の吸着に用いられる金属吸着剤。
【選択図】図2

Description

本願はシクロデキストリン誘導体を用いた金属吸着剤を開示するものである。
シクロデキストリン(CyD)は、D−グルコースがα−1,4−グリコシド結合により環状構造を形成した環状オリゴ糖である。CyDには、D−グルコースの数が6個のα−CyD、7個のβ−CyD、8個のγ−CyDがある。CyDは図1に示すようなバケツ型の円筒形状を有しており、内部が疎水性、外部が親水性を示し、内側の空間に他の有機分子(ゲスト分子)を取り込む(包接する)能力を有していることが知られている。すなわち、内側の空間に他の成分を取り込んで保護しつつ、水に溶け易くする能力を有している。CyDは、特にビスフェノールA等のサイズの大きな分子に対する包接能力に優れている。
CyDの包接能力を維持したままポリマー化することで、水や有機溶媒に対して不溶の複合材料を得る技術も知られている。例えば、特許文献1に、アルカリ条件下でCyDに非晶質ケイ酸を添加し、エピクロロヒドリン存在下でポリマー化したシクロデキストリンポリマー(CDP)が開示されている。CDPは、内側に包接している成分をメタノール等の有機溶媒中で容易に放出することができる。これについては、既に、和光純薬工業(株)にて市販されている。
一方で、シクロデキストリンを誘導体化することで、シクロデキストリンの包接能力を変化させる技術も知られている。例えば、特許文献2に、アルカリチオ基で修飾した置換シクロデキストリンを用いたCDPが開示されており、これにより、サイズの小さなガス状分子に対しても包接能力を発揮する。特許文献2においては、CDPとシリカ含有物質(珪藻土等)とを複合化しており、有機・無機ハイブリッド型の複合材料が開示されているといえる。
このように、CyDの包接能力を利用して種々の有機分子を吸着可能と考えられる。しかしながら、CyDの金属吸着能については十分な検討がなされていない。検討例の一つとして、非特許文献1には、CDPとシリカ含有物質との複合材料に対してセシウム吸着性能を評価した例が示されているが、金属吸着性能については向上の余地がある。特に、有機・無機ハイブリッド型の複合材料とはせずとも、CDP単独で十分な金属吸着性能を発揮できれば、取り扱い性が増すとともに、産業上の利用可能性も増大すると考えられる。
特許第4888879号公報 特許第5892847号公報
Int. J. Soc. Mater. Eng. Resour., 19(1), 32-36, (2013)
上記の背景技術に鑑み、本願では、優れた金属吸着能力を有するシクロデキストリン誘導体のポリマー、及び、これを用いた金属吸着剤を開示する。
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、
複数のシクロデキストリン誘導体が架橋構造を介して互いに連結されてなるポリマーを含む金属吸着剤であって、前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンの少なくとも一つの水酸基が金属親和性基に置換されてなるものである、金属吸着剤を開示する。
「複数のシクロデキストリン誘導体が架橋構造を介して互いに連結されてなるポリマー」とは、複数のシクロデキストリン誘導体が架橋剤によって互いに架橋されたものを意味しし、シクロデキストリンと架橋剤とのコポリマーと言い換えることもできる。尚、ポリマーには、シクロデキストリン誘導体由来の単位及び架橋剤由来の単位のほか、それら以外の共重合単位が含まれていてもよい。
「金属親和性基」とは、金属に対する親和性が高く、金属を吸着する性質を有する官能基をいう。例えば、金属との親和性が高い窒素、硫黄、リン及び酸素から選ばれる1種以上の元素を含む官能基である。
「金属吸着」とは、金属単体を吸着する場合のほか、金属イオンを吸着する場合も含む概念である。
本開示の金属吸着剤において、前記架橋構造がエピハロヒドリン由来の構造を有することが好ましい。
本開示の金属吸着剤において、前記金属親和性基が、アミノ基、アリールスルフィド基及びアリールアルキルスルフィド基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。中でも、アミノ基又はアリールアルキルスルフィド基であることがより好ましく、エチレンジアミン基又はベンジルメルカプタン基であることがさらに好ましい。
本開示の金属吸着剤は、例えば、水銀の吸着に好適に用いられる。
また、本開示の金属吸着剤は、有機化合物と金属とを含む廃液の処理に用いることもできる。この場合、本開示の金属吸着剤は、シクロデキストリンの包接能力によって有機化合物を吸着しつつ、金属親和性基によって金属を吸着する。すなわち、有機化合物と金属との双方を一度に吸着可能なハイブリッド型吸着剤として機能し得る。
本開示の金属吸着剤に含まれるシクロデキストリン誘導体のポリマーは、金属親和性基を有する置換シクロデキストリンを重合させてなる。そのため、無機材料と複合化せずとも、当該ポリマー単独で優れた金属吸着性能を発揮する。
シクロデキストリンの構造を説明するための概略図である。 シクロデキストリン誘導体とエピハロヒドリンとのコポリマーの構造を説明するための概略図である。 実施例1、2に係るポリマーのTG−DTA分析結果を示す図である。 実施例1、2に係るポリマーのSEM写真図である。 各種金属吸着剤の水銀吸着性能を比較した図である。
1.金属吸着剤
本開示の金属吸着剤は、複数のシクロデキストリン誘導体が架橋構造を介して互いに連結されてなるポリマーを含む。
1.1.シクロデキストリン誘導体
ポリマーを構成するシクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンの少なくとも一つの水酸基が金属親和性基に置換されてなるものである。金属親和性基は、金属に対する親和性が高く、金属を吸着する性質を有する官能基であればよく、例えば、金属との親和性が高い窒素、硫黄、リン及び酸素から選ばれる1種以上の元素を含む官能基が挙げられる。具体的には、アミノ基、アリールスルフィド基及びアリールアルキルスルフィド基、リン酸基、及び、カルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、アミノ基又はアリールアルキルスルフィド基がより好ましく、エチレンジアミン基又はベンジルメルカプタン基が特に好ましい。シクロデキストリン誘導体において、金属親和性基の量(置換された水酸基の量)については特に限定されるものではない。
1.2.架橋構造
架橋構造としては、シクロデキストリン誘導体を架橋したものであればよい。例えば、アルキル架橋構造、エーテル架橋構造やエステル架橋構造が挙げられる。アルキル架橋構造を形成可能な架橋剤としては、両末端がハロゲン化されたハロゲン化アルキル類が上げられる。エーテル架橋構造を形成可能な架橋剤としては、グリコールエーテル類やエポキシド類が挙げられる。エステル架橋構造を形成可能な架橋剤としては、酸無水物類等が挙げられる。特に、エポキシド類が好ましく、エピハロヒドリンがより好ましい。すなわち、架橋構造としてエピハロヒドリン由来の構造を有することがより好ましい。エピハロヒドリンの具体例としてはエピクロロヒドリンやエピブロモヒドリンが挙げられ、中でもエピクロロヒドリンが好ましい。適当な架橋剤を用いることで、ビーズ状(或いは球状)のポリマーとなり、取り扱い性が向上する。
架橋剤によってシクロデキストリン誘導体を架橋させる場合、シクロデキストリン誘導体と架橋剤との重合比(モル比)については特に限定されるものではない。シクロデキストリン誘導体同士を少なくとも一つの架橋剤で架橋できるようなモル比であればよい。例えば、シクロデキストリン誘導体1molに対し、架橋剤を10mol以上50mol以下とすることが好ましく、20mol以上40mol以下が最も好ましい。このようにシクロデキストリン誘導体に対して十分な量の架橋剤を用いることで、より強固なポリマーが得られるものと考えられる。
1.3.その他の成分
本開示の金属吸着剤においては、上記ポリマーにおいて、シクロデキストリン誘導体由来の構造単位、及び、架橋構造(架橋剤由来の構造単位)に加えて、所望の効果が奏される範囲内において、その他の共重合単位が含まれていてもよい。その他の共重合体単位によって、金属吸着性能及び有機化合物の吸着性能に加えて、その他の諸性能を発現させることも可能と考えられる。
また、本開示の金属吸着剤においては、上記のポリマーとともに、他の成分が含まれていてもよい。ただし、本開示の金属吸着剤は、シクロデキストリン誘導体のポリマー単独で優れた金属吸着性能を発揮する。それゆえ、従来のように無機材料等と複合化する必要はない。上記のポリマーをそのまま金属吸着剤として使用可能である。
2.金属吸着剤の製造方法
上記のシクロデキストリン誘導体は、公知の方法を応用することにより製造可能である。好ましくは、中間体を介して、シクロデキストリンをシクロデキストリン誘導体にする。例えば、シクロデキストリンの水酸基の一部をパラトルエンスルホン酸クロリドと反応させてトルエンスルホン酸基とし、当該トルエンスルホン酸基をアミンと反応させてアミノ基とする。結果として、シクロデキストリンの水酸基の一部をアミノ基に容易に置換できる。一方、シクロデキストリンの水酸基の一部をヨウ化ナトリウムと反応させてヨウ素基とし、当該ヨウ素基をベンジルメルカプタンと反応させてベンジルメルカプタン基とする。結果として、シクロデキストリンの水酸基の一部をベンジルメルカプタン基に容易に置換できる。
上記のシクロデキストリン誘導体のポリマーは、公知の方法を応用することにより製造可能である。上述の通り、シクロデキストリン誘導体と架橋剤としてエピハロヒドリンとを用いてポリマー(コポリマー)とすればよい。尚、未修飾シクロデキストリンとエピハロヒドリンとを共重合させる方法については、特許文献1にて公知である。本開示のポリマーを製造するにあたっても、この方法を応用すればよい。すなわち、シクロデキストリン誘導体をアルカリ溶液に溶解させ、その後、エピハロヒドリンを加えて、攪拌しながら一定温度で所定時間反応させることで、シクロデキストリン誘導体とエピハロヒドリンとのコポリマーが得られる。コポリマーの形態を図2に概略的に示す。図2に示すように、コポリマーは、シクロデキストリン誘導体がエピハロヒドリンによって架橋されたような構造となる。
特に、シクロデキストリンと架橋剤とを、無機材料の共存下でポリマー化することが好ましい。無機材料としては例えば非晶質ケイ酸が挙げられる。ポリマー化に際して無機材料を共存させることで、上述のビーズ状(又は球状)の硬いポリマーを容易に得ることができる。仮に、無機材料を共存させずにポリマー化を行うと、ゲル状となって硬い固形のポリマーが得られない場合がある。合成時においては無機物質を共存させた場合であっても、ポリマー化完了後に洗浄処理等によって無機材料を容易に除去することができる。このように、最終生成物として有機物のみが存在していれば十分であるところ、本開示の製造方法においては、重合時に敢えて無機材料を共存させており、これにより最終生成物として硬いビーズ状(又は球状)のポリマーが得られ、金属吸着剤として一層取扱い性等に優れたものが得られる。
3.金属吸着剤の用途
本開示の金属吸着剤は、金属親和性基によって、種々の金属を吸着可能である。特に、水銀等の有害金属の吸着に用いられることが好ましい。
尚、本開示の金属吸着剤は、シクロデキストリンの包接能力によって、金属だけでなく有機化合物も吸着可能である。そのため、例えば、有機化合物と金属とが共存した廃液から有機化合物と金属との双方を一度に吸着除去可能なハイブリッド型の吸着剤としても利用可能である。
以下、実施例においては、シクロデキストリンに対し、金属親和性基としてエチレンジアミン基又はベンジルメルカプタン基を導入し、シクロデキストリン誘導体を構成した。また、当該シクロデキストリン誘導体と架橋剤としてエピクロロヒドリンとを用いてポリマーを構成し、当該ポリマーの水銀吸着性能を評価した。
<実施例1>
1.Mono-6-o-(p-toluenesulfonyl)-β-CyD の合成
下記反応式(A)に示すように、β−CyD(40.0g、35.2mmol、日本食品化工株式会社製セルデックスB−100)をピリジン(400mL、関東化学株式会社製)に溶解し、パラトルエンスルホン酸クロリド(13.5g、70.8mmol、関東化学株式会社製)を加えて室温で2時間反応させた。反応追跡は、順相TLC(展開溶媒;1−ブタノール:エタノール:イオン交換水=5:4:3(体積比)、TLC;silica gel 60F254)で行い、Rf値0.52の目的物とみられるスポットが原料(β−CyD)のスポットより濃くなった時点でイオン交換水(400mL)を加え、反応を停止させた。ピリジンによる刺激臭がしなくなるまで、反応溶液にイオン交換水を加えながら減圧下で濃縮を繰り返した。濃縮後の反応溶液にイオン交換水(400mL)を加えてしばらく静置し、再結晶化させた。吸引濾過し、得られた粗結晶をイオン交換水とアセトンで洗浄した。その後、粗結晶を再びイオン交換水(600mL)に溶解させ、しばらく静置し、再結晶化させた。吸引濾過し、得られた結晶を室温にて減圧乾燥した。生成物は白色固体で、収量は5.69g、収率は12.5%であった。
生成物の構造はH NMRにより同定した。結果は以下の通りである。
1H NMR(300 MHz, DMSO-d6):
δ=4.16-4.51 (6H, m, OH of C6 of CyD)、
4.76-4.83 (7H, d, H of C1 of CyD)、
5.64-5.85 (14H, s, OH of C2 and C3 of CyD)、
7.42-7.43 (2H, d, aromatic-H of benzene)、
7.74-7.77 (2H, d, aromatic-H of benzene)
2.Mono-6-(2-aminoethyl)-amino-6-deoxy-β-CyD (EDA-β-CyD) の合成
下記反応式(B)に示すように、得られたMono-6-o-(p-toluenesulfonyl)-β-CyD(3.37g、2.62mmol)をエチレンジアミン(40mL、関東化学株式会社製)に溶解させ、窒素雰囲気下、70℃で2時間反応させた。反応追跡は順相TLC(展開溶媒;1−プロパノール:イオン交換水:酢酸エチル:28%アンモニア水=5:2:3:3、TLC;silica gel 60F254)で行い、Rf値0.17の目的物とみられるスポットを確認した。反応終了後、反応溶液を減圧下で濃縮し、アセトン再沈した。吸引濾過、減圧乾燥し、得られた粉末を少量のイオン交換水に溶解させた。CM-sephadex C-50を充填したカラム(内径8.5cm、長さ99cm)に注入し、イオン交換水にて不純物を溶出させた後、1%アンモニア水にてRf値0.18の成分を溶出させた。この画分を濃縮し、アセトン再沈した。吸引濾過し、得られた結晶を室温にて減圧乾燥した。生成物は黄白色固体で、収量は1.88g、収率は61.1%であった。
生成物の構造はH NMR及びIRにより同定した。結果は以下の通りである。
1H NMR (300 MHz, D2O):
δ=2.43-2.71 (4H, m, NCH2)、
3.43-3.58 (14H, m, C2H and C4H of CyD)、
3.73-4.02 (28H, m, C3H, C5H and C6H of CyD)、
4.92-4.99 (7H, s, C1H of CyD)
IR (KBr) cm-1:1079 (C-N), 2924 (C-H), 3342 (N-H and O-H)
3.Mono-6-(2-aminoethyl)-amino-6-deoxy-β-CDP (EDA-β-CDP) の合成
下記反応式(C)に示すように、8.42mol/L水酸化ナトリウム水溶液(7.6mL)にEDA-β-CyD(2.03g、1.73mmol)を溶解し、その後、非晶質ケイ酸(2.04g、33.9mmol、東ソー・シリカ株式会社製)を加えた。溶解後、エピクロロヒドリン(1.24mL、15.8mmol、関東化学株式会社製)をゆっくりと加え、320rpmで攪拌しながら50℃で7時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、反応溶液を吸引濾過した。濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後、得られた粉末を80℃にて減圧乾燥した。生成物は黄白色粉末で、収量は2.06gであった。
尚、非晶質ケイ酸を加えたのは以下の理由による。すなわち、非晶質ケイ酸を添加しないでポリマー化を実施すると、ゲル状になり、硬い固形のポリマーが得られなかった。そのため、合成時において非晶質ケイ酸を共存させ、その後、非晶質ケイ酸を除去するものとした。後述するように、生成物である黄白色粉末において非晶質ケイ酸は実質的に含まれていない。
生成物の構造はIRにより同定した。結果は以下の通りである。
IR (KBr) cm-1:1079 (C-N), 2923 (C-H), 3364 (N-H and O-H)
<実施例2>
1.Mono-6-deoxy-6-iodo-β-CyD の合成
下記反応式(D)に示すように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(200mL、関東化学株式会社製)にMono-6-o-(p-toluenesulfonyl)-β-CyD(12.9g、10.0mmol)を溶解させた後、ヨウ化ナトリウム(7.58g、50.6mmol、関東化学株式会社製)を添加し、80℃で5時間反応させた。反応追跡は順相TLC (展開溶媒;1−BuOH:EtOH:HO=5:4:3、TLC;silica gel 60F254)で1時間ごとに行った。Rf値が0.51の目的物と見られるスポットが濃くなってきたところで反応終了とし、減圧下で濃縮した後、アセトン(400mL)にて再沈し、未反応のヨウ化ナトリウムを除去した。吸引ろ過し、得られた粗生成物を少量のDMFに溶解させ、再度アセトン(400mL)にて再沈した。その後、吸引ろ過、減圧乾燥し、白色粉末を得た。粗収量は14.8gであり、H NMRの測定結果より目的物以外にも不純物が存在していると考えられたが、ここでは精製せずに次の実験に用いた。
H NMRの測定結果は以下の通りである。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):
δ=4.45-4.57 (6H, m, OH of C6 of CyD)、
4.83-4.89 (7H, d, H of C1 of CyD)、
5.62-5.80 (14H, s, OH of C2 and C3 of CyD)、
7.10-7.13 (2H, d, aromatic-H of benzene)、
7.46-7.49 (2H, d, aromatic-H of benzene)
2.Mono-6-deoxy-6-(α-toluenethiol)-β-CyD (Benzyl-β-CyD) の合成
下記反応式(E)に示すように、DMF(240mL)にmono-6-deoxy-6-iodo-β-CyD(19.5g、0.0156mol)を溶解させ、反応系を脱気した後、ベンジルメルカプタン(46.5g、0.374mol、東京化成株式会社製) と炭酸水素ナトリウム(26.1g、0.312mol、ナカライテクス株式会社製)を添加し、80℃で2時間反応させた。反応追跡は順相TLC(展開溶媒;1−BuOH:EtOH:HO=5:4:3、TLC;silica gel 60F254)で1時間ごとに行った。2時間後、Rf値が0.48の目的物と見られるスポットが濃くなってきたため反応終了とし、ひだ折りろ紙にて炭酸水素ナトリウムを取り除き、反応溶液をしばらく窒素置換させて臭いを飛ばした。減圧下で濃縮した後、アセトン(500mL)を加熱還流させながら再沈した。吸引ろ過し、得られた粗生成物をメタノールに溶解し、減圧下で濃縮した。この操作をチオールの臭いが少なくなるまで三回繰り返し、アセトン(500mL) にて再沈した。その後、吸引ろ過、減圧乾燥し、白色固体を得た。収量は14.1g、収率は73.0%であった。構造は1H NMRおよびFT-IRして同定した。
生成物の構造はH NMRおよびFT−IRにて同定した。結果は以下の通りである。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):
δ=3.83-3.86 (2H, d, H of methylene)、
4.45-4.56 (6H, m, OH of C6 of CyD)、
4.75-4.85 (7H, d, H of C1 of CyD)、
5.67-5.79 (14H, s, OH of C2 and C3 of CyD)、
7.19-7.33 (5H, m, aromatic-H of benzene)
IR cm-1: 2924 (C-H of CyD), 3332 (association of O-H)
Elemental analytical Calcd. (%) for C49H76O34S・H2O : C, 46.74; H, 6.24.
Found : C, 46.34; H, 6.48.
3.Mono-6-deoxy-6-(α-toluenethiol)-β-CDP (Benzyl-β-CDP)の合成
下記反応式(F)に示すように、Benzyl-β-CyD(2.01g、1.62mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(8.42mol/L、7.25mL)に溶解させた後、非晶質ケイ酸(2.01g)を加えて撹拌した。その後イオン交換水(2.5mL)とエピクロロヒドリン(1.39g、15.1mmol)をゆっくり滴下し、テフロン(登録商標)羽根つき撹拌棒にて320rpmで撹拌しながら50℃で7時間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷し、中和はせずに中性になるまでイオン交換水で充分に洗浄した後、メタノール(500mL)で洗浄した。吸引ろ過し、80℃で減圧乾燥させ、淡黄色固体を得た。収量は2.00gであった。尚、上述したように、非晶質ケイ酸は硬い固体のポリマーを得るための添加剤として機能するものであり、その後、非晶質ケイ酸を除去するものとした。後述するように、生成物である淡黄色固体において非晶質ケイ酸は実質的に含まれていない。
生成物の構造はFT−IRにて同定した。結果は以下の通りである。
IR cm-1: 2925 (C-H of CyD), 3382 (association of O-H)
<分析>
1.熱重量測定-示差熱分析
各誘導体CDPについて、Thermo Plus TG 8120(リガク社製)を用いて、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)測定を行った。結果を図3に示す。図3から明らかなように、いずれの誘導体CDPについても、約300℃から重量の減少が確認され、600℃で100%の重量減少となったことから、各誘導体CDPは有機物のみから構成され、非晶質ケイ酸は実質的に含まれていないことが分かった。
2.走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察および表面スペクトル解析
超高分解能分析走査型電子顕微鏡 SU-70(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて各誘導体CDPの表面観察を行った。結果を図4に示す。図4(A)より、EDA-β-CDPは球状をしており、表面スペクトル解析によりケイ素は確認されなかった。一方、図4(B)より、Benzyl-β-CDPは楕円形のビーズ状をしており、その表面は非常に滑らかであることが確認できた。また、長軸は約200μm、短軸は約140μmであった。さらに、表面スペクトル解析でケイ素が検出されないことを確認した。
3.比表面積の算出
各種CDPの比表面積をBELSORP 18SP-V(日本ベル社製)を用いて、窒素吸着吸着量より算出を試みたが、両方のCDPともに窒素吸着量は乏しく、最大でEDA-β-CDPが約2.0mL/g、Benzyl-β-CDPで約1mL/gであった。この結果より窒素分子が入り込む空隙や穴が存在しないものと推測される。
<水銀吸着実験>
標準金属水溶液(1000ppm、関東化学株式会社製)を10ppmに調製して、評価用の水銀含有水溶液とした。50mL遠沈管にEDA-β-CDP またはBenzyl-β-CDP を0.1gと10ppm水銀含有水溶液(Hg(II)溶液を20mLとを入れ、室温にて300ストローク/minで1min、10min、30min、1h、3h、6h、12h、24h振とうさせた。振とう後、ひだ折り濾紙を用いて濾過した。ろ液における金属濃度をICP発光分析装置にて測定し、EDA-β-CDP およびBenzyl-β-CDP における水銀吸着率を算出した。結果を図5に示す。
尚、比較のため、未修飾-β-CyDを用いてポリマー化したβ-CDP、特許文献2に開示された従来の珪藻土含有β-CDPについても同様の測定を実施した。結果を図5に示す。
図5から明らかなように、EDA-β-CDPでは約80%、Benzyl-β-CDPでは約25%の水銀吸着率が確認された。特に、EDA-β-CDPは従来の珪藻土含有β-CDPと比較しても優れた水銀吸着能を示した。何も修飾していないβ-CDPでは吸着がみられなかったことより、導入した修飾基が吸着サイトとなっているものと考えられる。また、EDA-β-CDP及びBenzyl-β-CDPのどちらも振とう時間10分で平衡に達し、振とう時間を増加させても吸着率に大きな変化はみられなかった。一方で、珪藻土含有β-CDPでは時間変化にともない吸着率の増加がみられたことより、吸着剤が有する吸着能を最大限に利用するには長時間を要することが示唆された。これらの結果より、実施例1に係るEDA-β-CDP、実施例2に係るBenzyl-β-CDPは、短時間で最大限の吸着能を利用することができ、特許文献2に開示された珪藻土含有β-CDPより優れた金属吸着剤であると考えられる。
本開示の金属吸着剤は、シクロデキストリンの包接能力によって、金属だけでなく有機化合物も吸着可能である。そのため、例えば、有機化合物と金属とが共存した廃液から有機化合物と金属との双方を一度に吸着除去可能なハイブリッド型の吸着剤としても利用可能である。

Claims (6)

  1. 複数のシクロデキストリン誘導体が架橋構造を介して互いに連結されてなるポリマーを含む金属吸着剤であって、
    前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンの少なくとも一つの水酸基が金属親和性基に置換されてなるものである、
    金属吸着剤。
  2. 前記架橋構造がエピハロヒドリン由来の構造を有する、
    請求項1に記載の金属吸着剤。
  3. 前記金属親和性基が、アミノ基、アリールスルフィド基及びアリールアルキルスルフィド基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
    請求項1又は2に記載の金属吸着剤。
  4. 前記金属親和性基が、エチレンジアミン基又はベンジルメルカプタン基である、
    請求項1又は2に記載の金属吸着剤。
  5. 水銀の吸着に用いられる、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属吸着剤。
  6. 有機化合物と金属とを含む廃液の処理に用いられる、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属吸着剤。
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