JP2018030738A - セラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミックス基板と、炭化珪素からなる多孔質体にアルミニウム又はアルミニウム合金が含浸されたアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体と、の接合体を製造する方法であって、前記セラミックス基板と前記アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との間に接合材としてアルミニウム合金からなる芯材の両面にマグネシウムを3.0質量%以下含有するろう材層が形成された両面ろうクラッド材を介在させ、非酸化性雰囲気中で接合温度に加熱する。
【選択図】 図1
Description
このようなセラミックス基板とアルミニウム板との接合体を製造する方法において、例えば特許文献1では、接合不良を誘発する酸化被膜等を除去することを目的として、マグネシウムを含む材料からなるろう材を用い真空雰囲気中でろう付け接合する方法が開示されている。
また、特許文献2ではセラミックス基板とアルミニウム板との接合においてアルミニウム板とろう材層との接合界面或いはその近傍にマグネシウムを偏在させた接合方法が開示されている。
さらに、特許文献3では、アルミニウムまたはアルミニウム合金板と窒化アルミニウム板との接合に、Al−Mg−Cu系合金、Al−Mg−Ge系合金、Al−Mg−Si系合金等からなる箔を用いて窒素、水素、不活性ガスによる低酸素雰囲気下で接合することが開示されている。
アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体は、例えば特許文献5又は特許文献6に記載されるように、主に炭化珪素(SiC)からなる多孔質体中にアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金が含浸されてなるアルミニウムと炭化珪素との複合体である。また、セラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合体は、特許文献1〜3に記載されるセラミックス基板とアルミニウム板との接合方法と同様の方法を用いて形成できる。
また、このようなセラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合において、セラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体とでマグネシウムの必要量に違いがあり、各々の最適値に調整することができないという問題もあった。
前記セラミックス基板と前記アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との間に接合材としてアルミニウム合金からなる芯材の両面にマグネシウムを3.0質量%以下含有するろう材層が形成された両面ろうクラッド材を介在させ、非酸化性雰囲気中で接合温度に加熱する。
また、両面ろうクラッド材を介在させ非酸化性雰囲気中において接合することで、真空雰囲気中での接合に比べ短時間で昇温でき接合することができるので、製造コストを削減できる。
なお、上述の非酸化性雰囲気とは窒素ガス雰囲気やアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気をさす。また、マグネシウム含有量が3.0質量%を超えるろう材層は製造が困難である。
このように、接合対象に合わせてろう材層のマグネシウム含有量を適切に調整することで、良好な接合性を維持することができる。
そこで、セラミックス基板側のマグネシウム含有量とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体側のマグネシウム含有量とを各々上記最適値に調整することで、良好な接合性を維持することができる。
第1実施形態は、本発明の製造方法を、図2に示すヒートシンク付パワーモジュール用基板101の製造方法に適用した例について説明する。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板101は、図2に示すように、絶縁層を構成するセラミックス基板10と、このセラミックス基板10の一方の面(図2では上面)に配設された回路層20と、セラミックス基板10の他方の面(図2では下面)に配設されたヒートシンク30とを備える。
含浸されるアルミニウム又はアルミニウム合金としては、純度が99mass(質量)%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)や純度が99.99mass(質量)%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)等の純アルミニウムや、Al:80mass(質量)%以上99.99mass(質量)%以下、Si:0.01mass(質量)%以上13.5mass(質量)%以下、Mg:0.03mass(質量)%以上5.0mass(質量)%以下、残部:不純物、の組成を有するアルミニウム合金を用いることができる。また、ADC12やA356等のアルミニウム合金を用いることもできる。
図1(a)に示すように、セラミックス基板10の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層用アルミニウム板20´の片面にろう材層21が積層された片面ろうクラッド材25を積層し、セラミックス基板10の他方の面に、芯材41の両面にろう材層42,43を積層した両面ろうクラッド材40を介してヒートシンク30を厚さ方向に積層する。
また、両面ろうクラッド材40は、芯材41の両面にろう材層42,43がクラッドされた構成とされている。芯材41は、厚さが0.05mm〜0.6mmの範囲内のアルミニウム合金(A3003)とされ、ろう材層42,43は、厚さが5μm〜100μmの範囲内のAl‐Si‐Mg系ろう材とされる。
そして、両面ろうクラッド材40のろう材層42,43のうち、セラミックス基板10側のろう材層42には、マグネシウム(Mg)が0.01質量%以上1.5質量%以下の範囲内で含有され、ヒートシンク30側のろう材層43には、マグネシウムが0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内で含有されている。なお、片面ろうクラッド材25のろう材層21のマグネシウム含有量は0.01質量%以上1.5質量%以下の範囲内とされる。
なお、本発明において、セラミックス基板10とヒートシンク30との接合に用いるろう材として、両面ろうクラッド材40を用いていることにより、単一の箔に比べて、両側のろう材層42,43のマグネシウム含有量を多くすることが可能である。しかし、マグネシウム含有量が3.0質量%を超えると、クラッド材製造工程において圧延性が極端に悪くなり、クラッド材製造が困難となる。
例えば、セラミックス基板10をSi3N4(窒化珪素)、回路層用アルミニウム板20´のアルミニウム、及びヒートシンク30に含浸されるアルミニウムを、アルミニウム合金(A3003)で形成する場合、マグネシウムの最適な含有量は、セラミックス基板10側のろう材層42が0.05質量%で、回路層用アルミニウム板20´側及びヒートシンク30側のろう材層43が1.5質量%とするとよい。
この製造方法のように、両面ろうクラッド材40を用いてセラミックス基板10とヒートシンク30とを接合してヒートシンク付パワーモジュール用基板101を製造するので、両面ろうクラッド材40の両面のろう材層42,43のマグネシウム含有量を同一に設定しておくこともできるし、異なる含有量に設定しておくこともできる。このため、セラミックス基板10側のマグネシウム含有量とヒートシンク30側のマグネシウム含有量とを各々最適値に調整しておくことができ、セラミックス基板10とヒートシンク30とを良好に接合することができる。
また、非酸化性雰囲気中で接合することで、真空引き工程が不要なことや昇温時間の短縮など真空雰囲気中の接合に比して接合時間が短縮され製造コストが削減できる。
ヒートシンク付セラミックス基板201は、セラミックス基板10とヒートシンク30とを備え、セラミックス基板10とヒートシンク30との間が、薄いアルミニウム合金層44を介して接合されている。そして、このヒートシンク付セラミックス基板201は、例えばセラミックス基板10の上面にパワーモジュール(図示略)をグリスを介して押圧して保持することにより、パワーモジュールの冷却器として使用される。
セラミックス基板10は、第1実施形態と同様に例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl2O3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用い、厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定される。
図4(a)に示すように、セラミックス基板10とヒートシンク30とを両面ろうクラッド材40を介して積層する。この際、両面ろうクラッド材40は、セラミックス基板10側にマグネシウムの含有量が少ないろう材層42が当接される向きで厚さ方向に積層する。そして、その積層体を、積層方向に加圧した状態で、常圧の窒素ガス(N2)等の非酸化性雰囲気下で加熱して接合し、ヒートシンク付セラミックス基板201を製造する。なお、この場合の加圧力としては、例えば0.01MPa〜0.6MPa、接合温度としては640℃以下好ましくは610℃〜620℃の範囲に加熱して接合する。
このヒートシンク付セラミックス基板201においても、セラミックス基板10側のろう材層42のマグネシウム含有量とヒートシンク30側のろう材層43のマグネシウム含有量とを各々最適値に調整することができるので、良好な接合を確保しつつ製造コストを削減して製造することができる。
回路層用金属板50´及び金属層用金属板60´は、アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体により平板状に形成されており、例えば、全体として厚さが3.0mm〜5.0mmの範囲内に設定され、被覆層が設けられる場合、被覆層の厚さは、全体の厚さの10%〜30%とされる。
図6(a)に示すように、セラミックス基板10の両面に、両面ろうクラッド材40を介して回路層用金属板50´及び金属層用金属板60´を積層する。この際、両面ろうクラッド材40は、セラミックス基板10側にマグネシウムの含有量が少ないろう材層42が当接される向きで厚さ方向に積層する。そして、この積層体を、積層方向に加圧した状態で、常圧の窒素ガス(N2)等の非酸化性雰囲気下で加熱して接合することにより、パワーモジュール用基板301を製造する。なお、この場合の加圧力としては、例えば0.01MPa〜0.6MPa、接合温度としては640℃以下好ましくは610℃〜620℃の範囲に加熱して接合する。
このパワーモジュール用基板301においても、セラミックス基板10側のろう材層42のマグネシウム含有量と、回路層用金属板50´及び金属層用金属板´60側のろう材層43のマグネシウム含有量とを各々最適値に調整することができるので、良好な接合を確保しつつ製造コストを削減して製造することができる。
セラミックス基板(窒化珪素Si3N4(平面サイズ:40mm×40mm、厚さ:0.32mm))の片面(一方の面)に、表1記載の両面ろうクラッド材を介して、表1記載のアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体(平面サイズ:40mm×40mm)を積層し、これらの積層体を積層方向に加圧して窒素ガス(N2)雰囲気下で表1に示す接合温度(積層体表面温度)に昇温し、温度維持時間の間、接合温度に維持することにより、セラミックス基板にアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体を接合した接合体(ヒートシンク付セラミックス基板)を100個ずつ製造した。
また、両面ろうクラッド材は、芯材をアルミニウム合金(A3003、平面サイズ:40mm×40mm、厚さ:0.2mm)とし、ろう材層はAl−Si−Mg系ろう材(平面サイズ:40mm×40mm)とし、ろう材層のMg含有量、Si含有量及び厚さは表1の通りとした。
なお、比較例1においては、ろう材層にAl‐Si系ろう材を用いた。このため、比較例1のろう材層のMg含有量は「0」とした。
(初期の接合性の評価)
各100個の接合体に対し、超音波画像測定機(Insight社製の超音波画像測定機IS‐200)にてセラミックス基板とアルミニウム合金層との接合界面、及びアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体とアルミニウム合金層との接合界面を観察して、これらの接合界面におけるボイド(空孔)の面積を測定した。そして、接合すべき面積に対するボイドの合計面積を各サンプルのボイド率として算出し、100個の平均を平均ボイド率とした。この場合、接合すべき面積は、両面ろうクラッド材の表裏面の面積(40mm×40mm×2=3200mm2)とし、以下の式からボイド率を算出した。
ボイド率(%)={(ボイドの合計面積)/(両面ろうクラッド材の面積)}×100
平均ボイド率が2%未満であったものを「接合性」が「◎」、平均ボイド率が2%以上5%以下のものを「接合性」が「○」、平均ボイド率が5%を超えるものを「接合性」が「×」と評価した。
各100個の接合体に対して、−40℃×5分と150℃×5分の液槽冷熱サイクルを1000サイクル実施した後に、各サンプルについて超音波画像測定機を用いてセラミックスの割れの有無を判定した。なお、冷熱サイクル試験は、エスペック社製の液槽冷熱衝撃装置TSB‐51を用いて行った。そして、冷熱サイクル試験後の100個の接合体について、超音波探傷装置(Insight社製の超音波画像測定機IS‐200)により、セラミックス基板割れの発生の有無を確認し、100個の接合体について、セラミックス基板割れが発生した個数の割合(割れ確率)を算出した。割れ確率は、以下の式から算出した。
割れ確率(%)={(セラミックス割れが発生した個数)/100}×100
割れ確率が0%であったものを「セラミックス基板割れ」が「◎」、5%以下(0%除く)であったものを「セラミックス基板割れ」が「○」、5%を超えたものを「セラミックス基板割れ」が「×」と評価した。
結果を表2に示す。
また、比較例1に示すように、ろう材層のマグネシウム含有量が0では、ボイドが多く発生し、セラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体とが部分的に接合された状態となり、冷熱サイクル試験後の評価において、セラミックス基板の割れが発生した。
20 回路層
20´ 回路層用アルミニウム板
21 ろう材層
25 片面ろうクラッド材
30 ヒートシンク
31 多孔質体
32 被覆層
40 両面ろうクラッド材
41 芯材
42,43 ろう材層
44 アルミニウム合金層
50 回路層
50´ 回路層用金属板
60 金属層
50´金属用金属板
101 ヒートシンク付パワーモジュール用基板(接合体)
201 ヒートシンク付セラミックス基板(接合体)
301 パワーモジュール用基板(接合体)
Claims (3)
- セラミックス基板と、炭化珪素からなる多孔質体にアルミニウム又はアルミニウム合金が含浸されたアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体と、の接合体を製造する方法であって、
前記セラミックス基板と前記アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との間に接合材としてアルミニウム合金からなる芯材の両面にマグネシウムを3.0質量%以下含有するろう材層が形成された両面ろうクラッド材を介在させ、非酸化性雰囲気中で接合温度に加熱することを特徴とするセラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合体の製造方法。 - 前記ろう材層のマグネシウム含有量は、前記セラミックス基板側のろう材層と前記アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体側のろう材層とで異なることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合体の製造方法。
- 前記セラミックス基板側のろう材層のマグネシウム含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下の範囲内であり、前記アルミニウム含浸炭化珪素多孔質体側のろう材層のマグネシウム含有量が0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス基板とアルミニウム含浸炭化珪素多孔質体との接合体の製造方法。
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