JP2018029530A - 畜舎用滑り止め材 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで従来、斯かる畜舎の通路等に撒いて、これら転倒等を防止するための滑り止め材が提供されているが、その内容は、主に軽量発泡コンクリートの製造時に副次的に供されるコンクリート粉体(以下ALC粉体と言う)を主成分とするものである。
しかしこれらは、a)ALC粉体には消毒効果がないため、これを補うおうと一般に消毒剤が添加されるが、これらは牛の乳頭や蹄に炎症を起こす等の弊害を招く虞がある。b)ALC粉体は比重の小さな軽量体であるため、風に飛ばされ易く、畜舎全体に粉体が舞ってしまい、牛等に害を及ぼす危惧がある。c)又、その滑り止め機能も満足なものではなく、水分の多いときには滑りを惹起する虞がある、等の問題を抱えている。
尚、従来、クリンカアッシュが地盤の締め固め工法に利用された例(特許文献1)や、培養土の再生方法に利用された例(特許文献2)等が存在するが、いずれも滑り止め材に利用されたものではない。
水酸化ドロマイトの存在は、強いアルカリとして作用し、殺菌作用による消毒、消臭効果を発揮する。
このクリンカアッシュ粉粒体と水酸化ドロマイト微粉末とを、その合計100質量部に対しそれぞれ50〜65質量部及び35〜50質量部を混合させた混合体とすると、優れた滑り止め効果が発揮されると同時に満足な消毒・消臭効果が得られる。
使用後の廃棄物を牧草地等に散布すると、吸水作用及び殺菌作用等からそのままでぬかるみ防止と消毒効果を発揮する。
鹿沼土、赤玉土を30質量部以下の範囲で添加すると、滑り止め効果を維持しつつ、経済的効果を高めることができる。
その成分は、シリカ(SiO2)(40〜75wt%)とアルミナ(Al2O3)(15〜35wt%)が主成分で、ここに若干の酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が加わって成る。赤熱状態から急冷して水洗した為、化学的には安定な性状を有している。
物理的には、礫分28〜56%、砂分36〜83%程度を含んで構成される。電子顕微鏡的には、径0.2〜20μm程度の細孔が1クラム当たり0.148cm2の多数にわたり存在する多孔質を形成している。
その他、クリンカアッシュは、後述する如く、破砕性、締め固め性、摩擦性等についても優れた特性を有する。又、クリンカアッシュの多孔性は、透水性、通気性、保水性、保肥性を備えたものとなる。
その成分割合は、例えば、(Ca(OH)2)が50〜55%、(Mg(OH)2)が15〜20%となる。
この水酸化ドロマイトには、強アルカリとしての性状があり、後述する如く、クリンカアッシュとの併用により、適切な消毒・消臭作用が発揮される。
上記防滑材としての性能を備えたクリンカアッシュと、消毒・消臭としての性能を備えた水酸化ドロマイトとの相乗作用を狙いとしたものである。
その配合比を上述の通りとしたのは、両者の合計100質量部に対し、水酸化ドロマイトを35質量部より少なくしたのでは消毒・消臭効果が満足に得られないからであり、一方、50質量部以内で優れた滑り止め効果が確認されたからである。
先ず、本発明の主材となるクリンカアッシュは、上述の如く、礫分28〜56%、砂分36〜83%程度を含んで、滑り止め材としての充分な硬質性を備えている。
しかし、一方でこの硬質性が過度になると、蹄や皮膚等に強い刺激を与えてしまい、炎症等の虞がある。
これに対し本発明クリンカアッシュは、内部に多数の空隙を備えた多孔性等により、その破砕強度は自然砂の1/5〜1/10程度の小さい値を示し、比較的粒子の破砕が起こり易く、過度な硬性を防ぐものとなる。
加えて、上述の如く、クリンカアッシュでもその粒径の大きなものは蹄の割れ目等に侵入すると炎症の虞があるが、本発明ではその粒径を3mm以下とすることで、この懸念を一掃することができる。
更に、このクリンカアッシュは、表面が凹凸の角張った形態で、摩擦係数が自然土と比べて最大で6倍の値を示すものとなる。これは内部に多数の間隙を備えた形状の複雑な粒子であることからリブ効果等が発揮されるものと推察される。
これら、締め固め性能に優れ又摩擦係数が大なることは、本発明滑り止め材にあって負荷に対する強い抗力の源となるものであり、優れた滑り止め機能を発揮するものとなる。
斯くして、本発明滑り止め材は、牛等の畜産動物の歩行等に対し、これを散布することで優れた防滑作用を発揮する。
<試験1>
試験方法:<滑り止め効果>
クリンカアッシュと水酸化ドロマイトの配合比を、合計を100質量部としたとき、(a)30質量部、(b)40質量部、(c)50質量部、(d)60質量部、(e)従来品の5つのタイプのものを用意し、その滑り止め効果、及び殺菌効果を測定した。
滑り止め効果は、(b)、(c)のタイプの試料を調製し、(e)を加え、混合粉体をコンクリート通路の上に撒き、その上を(牛に換わって)人が足で踏んで、滑りやすさの状態を1〜5の段階で評価し、これを表1に記した。評価の数値は、良いものから順番に1〜5の表示とした。
<試験結果>
上記(a)〜(d)のタイプの試料を調製し、搾乳牛の糞便(80g)に重量比5%(=4g)を添加し、25℃で1時間放置した。その放置後の糞便5gを採取し、水溶液を作成して、そのpHを測定し、これを表2に記した。
<試験結果>
消毒効果にあっては、pH値を選別の手段とした。30質量部では9.9の弱いアルカリでしかなかったが、40質量部、50質量部ではpH=11と強いアルカリ性を示し、60質量部ではpH=11.3と頗る強いアルカリ性を示した。
上記試験結果に基づいて、滑り止め効果では50質量部以下を適正な値と判断し、殺菌効果では30質量部と40質量部の間の35質量部以上を適正な値と判断した。
この結果、クリンカアッシュ粉粒体と水酸化ドロマイト微粉末とを、その合計100質量部に対しクリンカアッシュを50〜65質量部及び水酸化ドロマイトを35〜50質量部とすることが適正である旨の結論が得られた。
又、この範囲では粉っぽさもなく、水酸化ドロマイトの飛翔の心配も解消された。
<試験2>
試験方法:搾乳牛の糞便(200g)に重量比5%(=10g)の試料(対照、本発明品、従来品)を加え、25℃で1時間放置し、その1時間放置後の糞便5gを採取し、滅菌水で各濃度に希釈後、培養検査を実施した。培地はペトリフィルムACプレート(一般生菌)、ECプレート(大腸菌群)を使用した。37℃で24時間及び48時間経過後コロニー数を計測した。
従来品とは、主に軽量発泡コンクリート(ALC)を製造する際に生じる微粉末を利用したもので、その微粉末を散布して畜舎等の滑り止め材として用いるものをいう。
対照とは、糞便等に試料を何ら添加しないで、そのまま試験に供したものをいう。
上記試験1及び試験2はいずれも岡山県総合畜産研究所において実施した。
即ち、一般生菌数にあっては、対照が3.8E+06(cfu/g)であった場合において、従来品では2.7E+06(cfu/g)と殺菌倍率が7/10で減少率が2パーセントに過ぎないのに対し、本発明品では、8.8E+04と殺菌倍率が3/130で減少率が25パーセントとなり、大幅な減少が認められた。
又、大腸菌群数にあっても、対照が2.7E+03(cfu/g)であった場合において、従来品が2.6E+03(cfu/g)と殺菌倍率が57/59で減少率が0パーセントであったのに対し、本発明品では、<0.0E+01(cfu/g)と殺菌倍率が>1000で減少率が100パーセントとなり、完全な殺菌効果が確認された。
すると、湿気等の水分吸収により水酸化イオンが発生し、そのアルカリ作用で一般生菌が減少し、大腸菌群も抑制されるものと考えられ、このとき、クリンカアッシュの内部間隙の存在とその間隙周囲に配される水酸化ドロマイトの存在形態が、普遍的で継続的なアルカリ作用の発揮に有利に働くものと推察される。
このpH11以上の値は、口蹄疫ウイルスにも有効な値である。
即ち、雨後のぬかるみは牧場パドックの作業性を悪化させるだけでなく、牛の蹄病、乳房炎等を誘発する虞があるが、クリンカアッシュの吸水性等からぬかるみの水分を吸収し、水酸化ドロマイトの殺菌作用から消毒効果が期待できる。又、散布後にあって、従来品は土を固くする懸念があったが、本発明の空隙率の高いクリンカアッシュには、転圧に対する強い抵抗性が認められ、固い土壌となるのを回避する作用が発揮される。保肥性に優れた性格からも、補助肥料となる。
その配合比は、クリンカアッシュ粉粒体と水酸化ドロマイト微粉末の合計100質量部に対し、30質量部以下が適当な値となる。鹿沼土、赤玉土は弱酸性の性状で、30質量部以上ではアルカリ性が弱まる傾向となるからである。
Claims (2)
- 粒径3mm以下のクリンカアッシュ粉粒体と水酸化ドロマイト微粉末とを、その合計100質量部に対しクリンカアッシュを50〜65質量部及び水酸化ドロマイトを35〜50質量部混合させて成ることを特徴とする畜舎用滑り止め材。
- 請求項1の滑り止め材に、粒径3mm以下のクリンカアッシュ粉粒体と水酸化ドロマイト微粉末の合計100質量部に対し、粒径3mm以下の鹿沼土及び/又は赤玉土の粒状体を30質量部以下添加して成ることを特徴とする畜舎用滑り止め材。
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