JP2007037412A - 藻・珊瑚増殖部材 - Google Patents

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哲 野島
Yukio Imaizumi
幸男 今泉
Kosei Tsubota
晃誠 坪田
Toyonobu Hirosaki
豊伸 廣崎
Takuo Shibuya
拓郎 渋谷
Satoshi Goto
聡志 後藤
Takayuki Naganuma
孝之 永沼
Yasushi Iseri
寧 井芹
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Abstract

【課題】本発明は、藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く、藻や珊瑚の増殖効果に優れるとともに、堅牢で機械的強度に優れ耐久性に優れ、さらに廃棄物の有効利用を図ることができ省資源性に優れる藻・珊瑚増殖部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の藻・珊瑚増殖部材は、フライアッシュ,クリンカアッシュ等の石炭灰と、消石灰,ドロマイト,石膏,水酸化マグネシウム,セメント等の無機質結合粉体と、を含有する混合粉体が加圧成形された石炭灰成形体を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、藻類や珊瑚を増殖する藻・珊瑚増殖部材に関するものである。
従来より、海洋沿岸域には、コンブ科やホンダワラ科植物等の大型の海藻で構成される藻場が形成されている。藻場は、魚介類の保護育成或いは藻食動物に餌料を供給する漁場として、さらには沿岸生態系の基盤として、重要な役割を果たしている。そのため、水産生物資源の維持或いは増大を目指した漁場造成の一つである藻場育成が各地で行われており、藻類の増殖部材の研究も行われている。
また、海洋には、珊瑚等の造礁生物が集積・固結して珊瑚礁を形成している。珊瑚礁は多数の穴、クレバス等をつくり豊富な生物が生活する棲み場所を提供するため、海の様々な環境の中で、最も豊富な種類と複雑な種間関係をもった貴重な生物群集を形成している。
しかしながら、近年の海洋汚染、埋立て、土地改良等の開発工事に伴い、珊瑚礁の消失がみられ、珊瑚礁域に生息する造礁珊瑚、魚類等の生物群集が疲弊している。そのため、珊瑚の増殖を目指した技術が開発されている。
従来の技術としては、例えば(特許文献1)に「クリンカアッシュ若しくは石炭殻を主材料とし、これに粘土鉱物質の混合物を形成して得た成形素材を焼結した吸水率10%以上の焼結セラミック成形体を海中に積み重ねて沈設して形成した漁礁」が開示されている。
(特許文献2)には、「サイコロ状の定着基盤に着生させた珊瑚種苗を石炭灰硬化体やコンクリート等で形成された造園ブロックに嵌め込んで固定する珊瑚礁造園法」が開示されている。
特開2000−262179号公報 特開平11−308939号公報
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、クリンカアッシュ若しくは石炭殻と粘土鉱物質との混合物の成形素材を焼結するので、焼結の過程で、クリンカアッシュ、石炭殻、粘土鉱物質が凝結し各々の表面エネルギが減少し表面が緻密化するので、藻や珊瑚の胞子や幼生が定着し難く増殖効果に欠けるという課題を有していた。
(2)焼結するために成形素材を加熱しなければならず、このため多大なエネルギを消費し省エネルギ性に欠けるという課題を有していた。
(3)(特許文献2)に開示の技術は、珊瑚種苗が着生した定着基盤を用いて珊瑚礁を形成するものであるが、珊瑚の増殖に適した定着基盤の材質が開示されていないという課題を有していた。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、機械的強度が高く、またアルカリ成分の溶出量が少なく表面付近の海水のpHが上昇するのを防止できるとともに、自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れ、さらに廃棄物の有効利用を図ることができ省資源性に優れるとともに省エネルギ性に優れる藻・珊瑚増殖部材を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明の藻・珊瑚増殖部材は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の藻・珊瑚増殖部材は、a.石炭灰100重量部と、b.消石灰,ドロマイト,水酸化マグネシウム等の無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部と、を含有する混合粉体が所定形状に加圧成形された構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)石炭灰100重量部と無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部とを含有する混合粉体が加圧成形されているので、無機質結合粉体が空気中等の二酸化炭素で炭酸化されて粒子間を互いに結合させて成形体が表面から硬化し、機械的強度を高め製品得率を高めることができるとともに、表面から炭酸化された成形体を水中に浸漬しても崩壊しないようにでき、さらに藻や珊瑚の増殖効果を高めることができる。
(2)石炭灰を用いているので廃棄物の有効利用を図ることができるとともに、石炭灰は天然の珪酸白土や珪藻土等と同様にシリカとアルミナを主成分とするため、自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れる。
(3)焼成等することなく所定の形状に加圧成形されているだけなので、省エネルギ性に優れる。
(4)加圧成形の圧力、湿度等の成形条件、粉体の種類等によって空隙率、吸水率、比重を自在に制御でき自在性に優れる。
ここで、石炭灰としては、石炭火力発電等の石炭を主として使用する微粉炭燃焼ボイラ等の燃焼装置の燃焼ガスに含まれサイクロン,フィルタ等の集塵装置で採取されるフライアッシュ、微粉炭燃焼ボイラ等の燃焼装置の燃焼ガスが空気予熱器,節炭器等を通過する際に落下採取されるシンダアッシュ、微粉炭燃焼ボイラ等の燃焼装置の底部に落下採取されるクリンカアッシュやこれらの混合物等が用いられる。
無機質結合粉体としては、消石灰,ドロマイト,水酸化マグネシウム等の水分の存在下で二酸化炭素を吸収し炭酸塩を形成して硬化するものが用いられる。これらは単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
混合粉体において、無機質結合粉体の含有量が石炭灰100重量部に対し25重量部より少なくなるにつれ無機質結合粉体の量が少なく無機系結合粉体の炭酸化反応による石炭灰粒子間の結合力が小さく成形体の機械的強度が小さくなり割れ易く製品得率が低下する傾向がみられ、70重量部より多くなるにつれ石炭灰の含有量が相対的に少なくなり珊瑚の増殖効果が低下する傾向がみられる。特に、10重量部より少なくなるか100重量部より多くなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
なお、藻・珊瑚増殖部材は、石炭灰と無機質結合粉体とを混合して混合粉体を得る混合工程と、前記混合粉体を減圧下で加圧して所定形状に加圧成形し成形体を得る加圧成形工程と、前記成形体を容器内に収容し前記容器内に導入された二酸化炭素含有ガスに接触させ前記成形体の表面から内部に向かって炭酸化させる炭酸化工程と、を経て製造される。
混合工程において、混合粉体は、含水率が2〜20重量%好ましくは2〜8重量%になるように調整されると好ましい。混合粉体の粒子間の付着力を向上させ、加圧成形工程における成形体の成形性を高め、成形された成形体が割れ難く製品得率を高めることができるからである。
なお、混合粉体の含水率は、混合粉体の質量から混合粉体の乾燥状態における質量を減じた質量(混合粉体に含まれる水の質量)を、その混合粉体の乾燥状態における質量で除し、その結果を百分率で表した値をいう。
含水率が2重量%より少なくなるか8重量%より多くなるにつれ混合粉体の粒子間の付着力が低下し成形体が割れ易く製品得率が低下する傾向がみられる。特に、20重量%より多くなると、この傾向が著しくなるため好ましくない。
なお、加圧流動層ボイラの燃焼ガスに含まれ集塵装置で採取されるフライアッシュ等のように無水石膏成分を多量に含有する石炭灰を用いた場合には、無機質結合粉体と混合する前に、予め水分を散布して二水石膏化したものを乾燥しておく。これにより、混合工程において混合粉体の含水率を最適化する際に、混合粉体が固化することなく石炭灰と無機質結合粉体とを均一に混合することができる。
加圧成形工程において、石炭灰と無機質結合粉体とが混合された混合粉体は、所定の形状に形成され内部が−101〜−80kPa好ましくは−100〜−90kPaに減圧された金型等の成形型内で加圧成形され、成形体が製造される。これにより、短時間で減圧でき生産性に優れるとともに、混合粉体が脱気されるので成形体内に空気が残留し難いため残留した空気が膨張して成形体が破壊し易くなるのを防止でき製品得率を高めることができる。
なお、減圧下の圧力が−100kPaより低くなるにつれ減圧に用いる真空ポンプが大型化するとともに減圧するのに時間を要し生産性が低下する傾向がみられ、−90kPaより高くなるにつれ残留した空気によって成形体の内部に空隙が形成され易く機械的強度が低下するとともに、成形時に成形体の内部に残留した空気が成形後に膨張して成形体が破壊し易くなる傾向がみられる。特に、−80kPaより高くなると、この傾向が著しくなるため好ましくない。
加圧成形工程における加圧成形の圧力は、49〜200MPa好ましくは73〜150MPaが好適に用いられる。成形体を適度に緻密化することができるので、加圧成形直後の成形体の機械的強度をある程度の高さに維持できるとともに、成形体の内部まで二酸化炭素が浸透し易いので、炭酸化工程を経ることにより、成形体の内部まで炭酸化反応を進行させることができ、炭酸化された藻・珊瑚増殖部材の機械的強度を飛躍的に高めることができるからである。
なお、加圧成形の圧力が73MPaより低くなるにつれ成形体が緻密化しないため炭酸化工程を経ても藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が低く破損し易く、また耐摩耗性も向上し難く早期に摩耗し易く耐久性に欠ける傾向がみられ、150MPaより高くなるにつれ成形体にラミネーションが発生し易く製品得率が低下するとともに、成形体が緻密化し炭酸化工程において成形体の内部まで二酸化炭素が浸透し難く成形体内部の炭酸化反応が進行せず、表面の炭酸化層が薄いため藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が低下する傾向がみられる。特に、49MPaより低くなるか200MPaより高くなると、これらの傾向が著しくなるため、いずれも好ましくない。
炭酸化工程において、容器としては、空気中の二酸化炭素濃度よりも高濃度の二酸化炭素含有ガス雰囲気下に成形体を置くことができるようにある程度密封可能なものであれば、特に限定せずに用いることができ、チャンバ等の室、成形体の周囲を覆うようにシートやフィルム等で形成された簡易的な収納容器等を用いることができる。
二酸化炭素含有ガスは常圧下で成形体に接触させたり、加圧した二酸化炭素含有ガスを加圧チャンバ等の中で成形体に接触させたりすることができる。
二酸化炭素含有ガスとしては、工業的に生産された二酸化炭素、工業製品の生産の際に副製品として得られた二酸化炭素、工場や発電所等の燃焼排ガス等が用いられる。なかでも、二酸化炭素含有ガスとして燃焼排ガスを用い、成形体に接触させた後に大気中に放出すれば、温室効果ガスとしての燃焼排ガスを藻・珊瑚増殖部材の生産のために用いることができ、温室効果ガスの有効活用を図ることができ好適である。
炭酸化工程における容器内の湿度は、50〜100%好ましくは55〜100%が好適に用いられる。無機質結合粉体が水の存在下で炭酸化される炭酸化反応が起こり易く、成形体内の無機質結合粉体が表面から確実に炭酸化されるため、藻・珊瑚増殖部材の機械的強度を高め製品得率を高めることができるからである。
容器内の湿度を50〜100%好ましくは55〜100%にする手段としては、上記の範囲に保たれた二酸化炭素含有ガスを容器内に導入する手段、容器内を上記の範囲に加湿する手段等を用いることができる。
なお、容器内の湿度が55%より低くなるにつれ、炭酸化反応が起こり難く無機質結合粉体の炭酸化に斑ができ、成形体のいくつかのものに炭酸化が不十分なものが現れ、製品得率が低下する傾向がみられる。特に、容器内の湿度が50%より低くなると、この傾向が著しくなるため好ましくない。
また、炭酸化工程において、炭酸化反応が開始されると反応生成物として水が得られ、生成された水を用いて炭酸化反応が進行する。このため、容器内の湿度は炭酸化反応の開始時に上記の範囲であればよく、反応が開始された後は、容器内の湿度を上記の範囲よりも低湿度にすることもできる。
炭酸化工程における容器内の温度は、0〜90℃好ましくは0〜50℃が好適に用いられる。無機質結合粉体が炭酸化される発熱反応である炭酸化反応の反応速度が大きく、炭酸化工程において成形体と二酸化炭素含有ガスとの接触時間を短縮でき生産性を高めることができるからである。
なお、炭酸化工程における容器内の温度が0℃より低くなるにつれ成形体が含有する水分が凍結膨張して破損し易くなる傾向がみられるため、好ましくない。50℃より高くなるにつれ炭酸化反応の反応速度が低下し、炭酸化工程において成形体と二酸化炭素含有ガスとの接触時間が長くなり生産性が低下する傾向がみられる。特に、90℃より高くなると、この傾向が著しいため好ましくない。
炭酸化工程において、成形体と二酸化炭素含有ガスとの接触時間は、二酸化炭素含有ガスの二酸化炭素濃度、成形体の厚さ等にもよるが、2〜8時間好ましくは2〜5時間が好適に用いられる。接触時間が2時間より短くなると、成形体の表面から内部に向かって炭酸化して形成された炭酸化層が薄いため、藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が低く割れ易くなるため、好ましくない。接触時間が5時間より長くなるにつれ成形体に形成された炭酸化層が深さ方向に進行する速度が遅くなり接触時間に比して藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が高まらず生産性が低下する傾向がみられ、特に8時間より長くなると、この傾向が著しいため好ましくない。
藻・珊瑚増殖部材は、金型により平板状,波板状,凹凸板状等の所定の形状に形成することができ、珊瑚礁の岩盤,防波堤,離岸堤,突堤,テトラポット等の消波ブロック等に固定して用いることができる。また、表面に所定の大きさの窪みや凹凸を形成することができる。また、コンクリート製や鋳鉄製等でブロック状や塊状等に形成された沈錘体に固定し、沈錘体とともに海底に沈めて用いることもできる。また、海底や筏等に係留して用いることもできる。
なお、藻・珊瑚増殖部材の厚さ方向に貫通した貫通孔部を形成しておくのが好ましい。これにより、岩盤,消波ブロック,沈錘体等に藻・珊瑚増殖部材を固定する際、岩盤,消波ブロック,沈錘体等にボルト等の棒状部材の一端部を固定し、形成された貫通孔部に棒状部材を挿通して固定することができる。また、海底や筏等に係留する際も、貫通孔部にワイヤやロープ等の係留部材を繋着し、容易に係留させることができる。
板状に形成した藻・珊瑚増殖部材をスペーサ等で所定間隔をあけて2〜10段の多段に配置して、藻・珊瑚増殖礁を製造することができる。段数は、設置場所の潮流等の影響によって、適宜選択することができる。
この場合の藻・珊瑚増殖部材の厚さは8〜14mmが好適に用いられる。厚さが8mmより薄くなるにつれ機械的強度が低下し割れ易くなる傾向がみられ、14mmより厚くなるにつれ藻・珊瑚増殖礁が厚くなり大型化するとともに、珊瑚は藻・珊瑚増殖部材間の隙間に定着し易いため増殖効果が向上する傾向がみられず好ましくない。
スペーサ等で形成される藻・珊瑚増殖部材間の間隔は、4〜15mmが好適に用いられる。間隔が4mmより狭くなるにつれ潮流が入り込み難く珊瑚が定着し難くなる傾向がみられ、15mmより広くなるにつれ珊瑚が定着し難く増殖効果が低下することが確認されている。
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の藻・珊瑚増殖部材であって、表面から内部に向かって炭酸化された炭酸化層を有し、前記炭酸化層が、2〜10mm又は全体の厚さに対して10〜50%の深さに形成された構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)成形体内の消石灰等の水溶性の無機質結合粉体が、成形直後から空気中の二酸化炭素を吸収して水に難溶の炭酸カルシウム等の炭酸塩となって硬化した炭酸化層を形成する。このため、成形体は機械的強度を増していき、さらに炭酸化層が、2〜10mm又は全体の厚さに対して10〜50%の深さに形成されているので、成形体の機械的強度を高めることができるとともに、未反応の消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制して表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができる。また、有害物質等が溶出するのも抑制でき、環境保全性に優れる。
(2)表面に所定の深さの難溶性の炭酸化層が形成されており硬度が高いので、切削,切断,穿孔等の加工を施す際、水等の切削剤を用いて湿式で加工しても、所望する箇所だけが正確に加工され、周囲には影響を与えず泥状になって崩壊することがなく加工性に優れる。
ここで、炭酸化層の深さが2mmより浅くなるにつれ藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が低下し割れ易く製品得率が低下する傾向がみられ、10mmより深くなるにつれ炭酸化工程における二酸化炭素含有ガスとの接触時間が長くなり生産性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
また、炭酸化層の深さが片面から全体の厚さに対して10%より浅くなるにつれ藻・珊瑚増殖部材の機械的強度が低下し割れ易く製品得率が低下する傾向がみられるため、好ましくない。なお、全体の厚さに対して50%の深さの炭酸化層とは、厚さ方向の断面の全てが炭酸化されていることをいう。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の藻・珊瑚増殖部材であって、前記石炭灰の一部又は全部が、アルカリ処理されゼオライト化されている構成を有している。
(1)藻の増殖に有用とされる鉄イオンをゼオライト化された石炭灰に担持させることで、着生した藻類の増殖を促進させることができる。
ここで、石炭灰は、水酸化ナトリウム水溶液,水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いて処理することによりゼオライト化することができる。
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の藻・珊瑚増殖部材であって、表面に、JIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線要素の平均高さが0.1〜0.5mm、平均長さが1〜5mmの凹凸が形成された構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)表面に平均高さが0.1〜0.5mm、平均長さが1〜5mmの凹凸が形成されているので、凹凸に藻の胞子や珊瑚の幼生が引っ掛かり易く定着性を高めることができる。
ここで、JIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線要素の平均高さとしては、基準長さにおける輪郭曲線要素の高さZtの平均値であり、平均長さとしては、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXsの平均である。凹凸の平均長さが1mmより小さくなるか5mmより大きくなるにつれ、潮流に流されてくる藻の胞子や珊瑚の幼生が凹凸間に定着し難くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。また、凹凸の平均高さが0.1mmより低くなるか0.5mmより大きくなるにつれ、この場合も同様に、潮流に流されてくる藻の胞子や珊瑚の幼生が引っ掛かり難く定着し難くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
表面の凹凸は、加圧成形するために用いる金型等の成形型の表面に所定の大きさの凹凸を形成しておくことで、加圧成形の際に成形体の表面に転写されて形成させることができる。
以上のように、本発明の藻・珊瑚増殖部材によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)無機質結合粉体が空気中等の二酸化炭素で炭酸化されて成形体が表面から硬化し、機械的強度を高め製品得率を高めることができるとともに、表面から炭酸化された成形体を水中に浸漬しても崩壊しないようにでき、さらに藻や珊瑚の増殖効果に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
(2)石炭灰を用いているので廃棄物の有効利用を図ることができるとともに、石炭灰は天然の珪酸白土や珪藻土等と同様にシリカとアルミナを主成分とするため、自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
(3)焼成等することなく所定の形状に加圧成形されているだけなので、省エネルギ性に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
(4)加圧成形の圧力、湿度等の成形条件、粉体の種類等によって空隙率、吸水率、比重を自在に制御でき自在性に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)機械的強度を高めることができるとともに、未反応の消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制して表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果に優れるとともに有害物質等の溶出も抑制でき環境保全性に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
(2)切削,切断,穿孔等の加工を施す際、水等の切削剤を用いても泥状になって崩壊することがなく加工性に優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)藻の増殖に有用とされる鉄イオンをゼオライト化された石炭灰に担持させることで、着生した藻類の増殖を促進させることができる藻類の増殖性にも優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)凹凸に藻の胞子や珊瑚の幼生が引っ掛かり易く定着性に優れ、藻や珊瑚の増殖効果の優れた藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材の斜視図であり、図2は図1のA−A線における断面写真であり、図3は図2に示す藻・珊瑚増殖部材の断面の模式図である。
図中、1は平板状に形成された本発明の実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材、2は二酸化炭素含有ガスの接触によって無機質結合粉体が炭酸化されて表面から内部に向かって所定の深さで形成された炭酸化層(図2において黒っぽく見える部分)、3は二酸化炭素含有ガスが浸透せずに未反応の無機質結合粉体が残る藻・珊瑚増殖部材1の内部の未反応層(図2において白っぽく見える部分)である。なお、本実施の形態においては、炭酸化層2の深さdは、2〜10mm、又は、藻・珊瑚増殖部材1の厚さtに対して20〜40%に形成されている。
以上のように構成された実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4は藻・珊瑚増殖部材を成形する加圧成形装置の模式図であり、図5は内部に藻・珊瑚増殖部材が収容された容器の模式図である。
図4において、10は加圧成形装置、11は加圧成形装置10の枠体、12は枠体11の下部に配設された下金型、12aは下金型12に形成された凹部、13は枠体11の上部に配設された油圧式の昇降シリンダ、14は昇降シリンダ13から先端を下方に向けて配設されたシリンダロッド、15はシリンダロッド14の先端に連設され昇降シリンダ13の昇降動作によって下金型12の凹部12aに出入り自在に形成された上金型、16は上部の孔部にシリンダロッド14が嵌挿され下金型12及びシリンダロッド14の先端の上金型15を囲繞する減圧室、16aは減圧室16の上部の孔部とシリンダロッド14との間を気密に保つパッキン、17は減圧室16に連通した真空ポンプ、18は昇降シリンダ13に連通した油圧ポンプ、19は油圧操作盤である。
図5において、20はチャンバ等の室,シートやフィルム等で形成された簡易的な収納容器等のある程度密閉可能に形成された容器である。容器20内には所定の間隔をあけて藻・珊瑚増殖部材1(成形体)が収容されている。21は工業的に生産された二酸化炭素や燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスを容器20内に導入する導入口、22は二酸化炭素含有ガスを容器20からに外部に排気する排気口である。
まず、混合工程において、石炭灰100重量部と、消石灰等の無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部と、を混合して混合粉体を得る。この際、混合粉体の含水率が2〜20重量%好ましくは2〜8重量%になるように、アイリッヒミキサ等を用いて水分を添加し含水率を調整する。
次に、加圧成形工程において、加圧成形装置10の下金型12の凹部12aに所定量の混合粉体を入れる。次いで、真空ポンプ17を用いて減圧室16を−101〜−80kPa好ましくは−100〜−90kPaに減圧した後、油圧操作盤19操作して油圧ポンプ19圧によって昇降シリンダ13を下降させ、シリンダロッド14の先端の上金型15で下金型12の凹部12aに入れられた混合粉体を49〜200MPa好ましくは73〜150MPaの圧力で加圧し、所定形状の成形体を成形する。成形体の成形が終わった後、昇降シリンダ13を上昇させてシリンダロッド14の先端の上金型15を下金型12の凹部12aから抜くとともに、減圧室16内に空気を導入し減圧室16内を大気圧に戻す。次いで、成形された成形体を下金型12の凹部12aから取り出す。
次に、図5に示すように、炭酸化工程において、容器20内に成形された成形体(藻・珊瑚増殖部材)1を所定間隔をあけて収容した後、導入口21から燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスを容器20内に導入する。このときの容器20内は、湿度が50〜100%好ましくは55〜100%、温度が0〜90℃好ましくは0〜50℃になるように調整する。
容器20内に収容された成形体(藻・珊瑚増殖部材)1に二酸化炭素含有ガスを2〜8時間好ましくは2〜5時間接触させ、成形体(藻・珊瑚増殖部材)1の表面から内部に向かって炭酸化させる。これにより、成形体(藻・珊瑚増殖部材)1に所定の深さの炭酸化層2が形成された藻・珊瑚増殖部材が製造される。
以上のような本発明の実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材によれば、以下のような作用が得られる。
(1)石炭灰100重量部と無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部とを含有する混合粉体が加圧成形されているので、無機質結合粉体が空気中等の二酸化炭素で炭酸化されて成形体が表面から硬化し、機械的強度を高め製品得率を高めることができるとともに、表面から炭酸化された成形体を水中に浸漬しても崩壊しないようにでき、さらに藻や珊瑚の増殖効果を高めることができる。
(2)石炭灰を用いているので廃棄物の有効利用を図ることができるとともに、石炭灰は天然の珪酸白土や珪藻土等と同様にシリカとアルミナを主成分とするため、自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れる。
(3)焼成等することなく所定の形状に加圧成形されているだけなので、省エネルギ性に優れる。
(4)成形体内の消石灰等の水溶性の無機質結合粉体が、成形直後から空気中の二酸化炭素を吸収して水に難溶の炭酸カルシウム等の炭酸塩となって硬化した炭酸化層を形成する。このため、成形体は機械的強度を増していき、さらに炭酸化層が、2〜10mm又は全体の厚さに対して10〜50%の深さに形成されているので、成形体の機械的強度を高めることができるとともに、未反応の消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制し表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができる。また、有害物質等が溶出するのも抑制でき環境保全性に優れる。
(5)表面に所定の深さの難溶性の炭酸化層が形成されているので、切削,切断,穿孔等の加工を施す際、水等の切削剤を用いても泥状になって崩壊することがなく、加工性に優れる。
また、以上のような実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材の製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)減圧下の加圧成形工程で得られた成形体は、成形体内の消石灰等の水溶性の無機質結合粉体が、成形直後から空気中の二酸化炭素を吸収して水に難溶の炭酸カルシウム等の炭酸塩となって硬化する。このため、成形体は機械的強度を増していくが、成形体を容器20内へ収容して強制的に炭酸化させる炭酸化工程を有しているので、無機質結合粉体への二酸化炭素の吸収を促進させて、成形体の機械的強度を短時間で高めることができる。この結果、空気中の二酸化炭素で炭酸化させるために成形体を長期間放置する養生時間や養生場所が不要なため、集約的で生産性に優れるとともに、藻や珊瑚を増殖させる水中に浸漬しても崩壊することがなく、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができる。
(2)原料に石炭灰を用いているので廃棄物の有効利用を図ることができるとともに、石炭灰は天然の珪酸白土や珪藻土等と同様にシリカとアルミナを主成分とするため、自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れる。
(3)炭酸化工程を備えており、成形体が難溶性の炭酸塩で硬化されているので、成形体に切削,切断,穿孔等の加工を施す際、水等の切削剤を用いても泥状になって崩壊することがなく、加工性に優れる。
(4)炭酸化工程を備えているので、成形体の表面に存在する消石灰等の水溶性の無機質結合粉体が二酸化炭素を吸収して水に難溶の炭酸カルシウム等の炭酸塩となって硬化するため、未反応の消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制して表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができる。
(5)成形体は、焼成等することなく加圧成形するだけで所定の機械的強度を得ることができるため、省エネルギ性に優れる。
(6)混合粉体の含水率が2〜20重量%好ましくは2〜8重量%なので、混合粉体の粒子間の付着力を向上させ、加圧成形工程における成形体の成形性を高め、成形された成形体が割れ難く製品得率を高めることができる。
(7)混合粉体が、石炭灰100重量部と無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部とを含有しているので、無機質結合粉体が炭酸化されて成形体が表面から硬化し、機械的強度を高め製品得率を高めることができるとともに、成形体を水中に浸漬しても崩壊しないようにでき、さらに藻や珊瑚の増殖効果を高めることができる。
(8)加圧成形工程において、混合粉体が−101〜−80kPa好ましくは−100〜−90kPaに減圧された金型内で加圧成形されるので、短時間で減圧でき生産性に優れるとともに、成形体内に空気が残留し難いため残留した空気が膨張して成形体が破壊し易くなるのを防止でき製品得率を高めることができる。
(9)加圧成形工程において、加圧成形の圧力が49〜200MPa好ましくは73〜150MPaなので、成形体を適度に緻密化することができるので、加圧成形直後の成形体の機械的強度をある程度の高さに維持できるとともに、成形体の内部まで二酸化炭素が浸透し易いので、炭酸化工程を経ることにより、成形体の内部まで炭酸化反応を進行させることができ、機械的強度を飛躍的に高めることができる。
(10)炭酸化工程において、二酸化炭素含有ガスに成形体が2〜8時間好ましくは2〜5時間接触されているので、生産性に優れるとともに、適度の深さの炭酸化層を形成でき機械的強度を高くでき製品得率を高めることができる。
(11)炭酸化工程における容器内の湿度が50〜100%好ましくは55〜100%であるため、無機質結合粉体が水の存在下で炭酸化される炭酸化反応が起こり易く、成形体内の無機質結合粉体が表面から確実に炭酸化されるため、成形体の機械的強度を高め製品得率を高めることができる。
(12)炭酸化工程における容器内の温度が0〜90℃好ましくは0〜50℃であるため、無機質結合粉体が炭酸化される発熱反応である炭酸化反応の反応速度が大きく、炭酸化工程において成形体と二酸化炭素含有ガスとの接触時間を短縮でき生産性を高めることができる。
(13)炭酸化工程において、成形体に2〜10mmの深さの炭酸化層、又は、前記成形体の厚さに対して20〜40%の深さの炭酸化層が形成されているので、成形体の機械的強度を高めることができるとともに、未反応の消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制して表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができる。また、有害物質等が溶出するのも抑制して環境保全性に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
石炭灰としてフライアッシュ(粒径0.1mm以下の粒子が90重量%以上)100重量部と、無機質結合粉体として消石灰25重量部とを混合した混合粉体を、−100〜−90kPaの減圧下、150MPaの圧力で加圧成形し、縦10cm、横10cm、厚さ1.6cmの板状の成形体を得た。成形体の一方の縦横10cmの表面には、金型の表面に形成した凹凸を転写させて、JIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線要素の平均高さが0.1〜0.5mm、平均長さが1〜5mmの凹凸を形成した(以下、凹凸が形成された表面を凹凸面という。)。他方の縦横10cmの表面は平滑面とした。得られた成形体を容器内に収容し、二酸化炭素含有ガスとして二酸化炭素濃度20〜30%の燃焼排ガスを容器内に3時間導入し、成形体の表面から内部に向かって炭酸化した。なお、容器内に収容された成形体の総体積は、容器の容積の約6%であった。また、容器内の湿度は97%、温度は27℃であった。以上のようにして、板状の実施例1の藻・珊瑚増殖部材を得た。
なお、実施例1の藻・珊瑚増殖部材の断面観察の結果から、炭酸化層の深さは3〜4mmであった。
また、実施例1の藻・珊瑚増殖部材の圧縮強度は、JISに準じた方法で測定したところ35N/mmであることがわかった。これはJISで規定されている煉瓦(2種、3種、4種)より圧縮強度が高い(煉瓦2種の規格値は14.71N/mm以上、3種は19.61N/mm以上、4種は29.42N/mm以上。)ことがわかった。
(実施例2)
石炭灰としてクリンカアッシュ(粒径0.1〜1mmの粒子が50重量%、粒径1〜2mm以上の粒子が50重量%)100重量部と、無機質結合粉体として消石灰25重量部とを混合した混合粉体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の藻・珊瑚増殖部材を得た。
(比較例1)
縦10cm、横10cm、厚さ1.6cmの天草陶石製の板状体を比較例1とした。天草陶石製の板状体は、これまでの試験の結果から、珊瑚礁石灰岩とほぼ同じか、それ以上の稚珊瑚の定着が確認された現状では最も優れた藻・珊瑚増殖部材である。
なお、天草陶石製の板状体についても、研削加工によって、一方の縦横10cmの表面にはJIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線要素の平均高さが0.1〜0.5mm、平均長さが1〜5mmの凹凸を形成し凹凸面とし、他方の表面は研磨し平滑面とした。
(供試体の作成)
実施例1及び2、比較例1の藻・珊瑚増殖部材を用いて藻・珊瑚増殖礁としての供試体を作成し、実際に海中に浸漬して藻・珊瑚の定着性試験を行った。
図6は藻・珊瑚の定着性試験のために作成した供試体の斜視図である。
図6において、30は調査のために作成した供試体、1は所定深さの炭酸化層が形成された藻・珊瑚増殖部材、31はコンクリート製等でブロック状に形成された沈錘体、32は沈錘体31の所定箇所に複数立設された鉄筋,棒鋼,管材,ボルト等の棒状部材である。藻・珊瑚増殖部材1は所定箇所に貫通孔部が形成され棒状部材32が挿通されて所定間隔をあけて2枚配置されている。33は棒状部材32が挿通され沈錘体31と藻・珊瑚増殖部材1との間隔、藻・珊瑚増殖部材1,1の間隔を10mmに保持するスペーサ、24は棒状部材32の上部に固定され藻・珊瑚増殖部材1が棒状部材32から外れるのを防止するナット等の固定部材である。
(稚珊瑚の定着性試験)
上述の供試体を用いた稚珊瑚の定着性試験は、沖縄県八重山諸島、石垣島と西表島の間に広がる日本最大の珊瑚礁である石西礁湖のほぼ中心に位置するマルグー(世界測地系WGS−84:24°17.241´N、124°02.046´E)において行った。
実施例1及び実施例2の藻・珊瑚増殖部材(1実施例につき30枚)、比較例1の板状体(30枚)を、リーフ内の水深5mの砂底に予め設置しておいたコンクリート製ブロックの沈錘体31の上面に棒状部材32等を用いて配設固定し、上述の供試体30を形成した。即ち、内径10mmの貫通孔部を実施例1,実施例2,比較例1の藻・珊瑚増殖部材に形成し、該貫通孔部に沈錘体31の上面に立設された複数本のボルト(直径6mm、長さ9cm)からなる棒状部材32を挿通し、藻・珊瑚増殖部材1を沈錘体31の1箇所につき2枚ずつ間隔が10mmになるように重装し、各々15個の供試体30を作製した。なお、各々15個の供試体の内、9個は藻・珊瑚増殖部材の平滑面を下面側(沈錘体31側)にして設置し、6個は藻・珊瑚増殖部材の凹凸面を下面側(沈錘体31側)にして設置した。このときの水温は25℃であった。
周辺海域では、藻・珊瑚増殖部材を設置した翌々日に珊瑚が産卵したのが確認された。また、翌日の日中には、卵が集中して浮遊するいわゆるスリックが諸処で観察された。即ち、実施例1,実施例2,比較例1の藻・珊瑚増殖部材は、珊瑚の幼生の定着する直前に設置されたことになる。この状態で3.5ヶ月間放置した。
3.5ヶ月後、設置した藻・珊瑚増殖部材を回収した。回収した藻・珊瑚増殖部材等を2日間天日乾燥した後、実験施設へ移送した。なお、回収時の水温は29℃であった。
実験施設に移送した藻・珊瑚増殖部材を実体顕微鏡で観察し、下面(沈錘体31側の面)、上面、側面に定着した稚珊瑚の種類毎の数を数えた。その結果を(表1)に示す。
定着した稚珊瑚は、大多数がミドリイシ属、次にアナサンゴモドキ属、残りがハナヤサイサンゴ科であった。いずれもこの海域での優占種である。
実施例1及び2の藻・珊瑚増殖部材に定着した稚珊瑚の数は、比較例1の1.5〜2.5倍であった。
次に、藻・珊瑚増殖部材のどの部位に稚珊瑚が定着するのかを比較した。
図7は供試体30における藻・珊瑚増殖部材の部位と、実施例1,実施例2,比較例1における藻・珊瑚増殖部材に定着した稚珊瑚の部位別密度を示した図である。なお、バーは95%信頼区間を示している。
図7において、A〜Fは供試体30における藻・珊瑚増殖部材の部位を示しており、図7(a)に示すように、Aは2枚重ねた下側の藻・珊瑚増殖部材の下面、Bは下側の藻・珊瑚増殖部材の側面、Cは下側の藻・珊瑚増殖部材の上面、Dは2枚重ねた上側の藻・珊瑚増殖部材の下面、Eは上側の藻・珊瑚増殖部材の側面、Fは上側の藻・珊瑚増殖部材の上面を示している。
図7(b),(c),(d)から明らかなように、藻・珊瑚増殖部材の下面(A,D)に稚珊瑚が多く定着する傾向がみられ、実施例1及び2の密度は比較例1に比べ、1.5〜2倍であった。また、実施例1及び2の藻・珊瑚増殖部材の側面(B,E)の稚珊瑚の密度は比較例1の側面の密度の2倍以上であり、本実施例によれば、側面への稚珊瑚の定着効果も高いことが明らかになった。
なお、上側の藻・珊瑚増殖部材の上面(F)には稚珊瑚は全く定着しなかった。これは、Fの部位には微小海藻が生え易く、またシルト等が溜まり易く、さらにウニのグレージングも受け易い等、稚珊瑚の定着し難い条件が重なるためと推察される。事実、実施例1及び実施例2の藻・珊瑚増殖部材の上面(F)には、藻類が定着していることが確認された。
次に、藻・珊瑚増殖部材の凹凸面の効果について検討した。
図8は上側の藻・珊瑚増殖部材の下面(D)に定着したミドリイシ属の稚珊瑚密度を凹凸面と平滑面について比較した図である。なお、バーは95%信頼区間を示している。
図8から、フライアッシュを用いて作製した実施例1の藻・珊瑚増殖部材では、凹凸面と平滑面でミドリイシ属珊瑚の定着密度に有意差がみられ(p=0.0121)、凹凸面の密度が高いという結果が得られた。しかし、実施例2や比較例1では有意差がみられなかった。クリンカアッシュは粒径0.1〜1mmの粒子が50重量%、粒径1〜2mm以上の粒子が50重量%の粒度分布をしているため、クリンカアッシュを用いて作製した実施例2の藻・珊瑚増殖部材の表面は、クリンカアッシュの粒度分布によって自然な凹凸が形成されており、このため凹凸面と平滑面で有意差が現れなかったものと推察される。
また、フライアッシュで作製した実施例1の藻・珊瑚増殖部材に最も多くの稚珊瑚が定着し、次いでクリンカアッシュで作製した実施例2の藻・珊瑚増殖部材に稚珊瑚が定着することがわかった。比較例1との間にはいずれも有意差がみられた(実施例1ではp=0.0002、実施例2ではp=0.0001)。
なお、実施例1、実施例2の藻・珊瑚増殖部材は、潮流のある海中に3.5ヶ月沈められていても、ひびや割れ等の外観上の異常は発生していないことが目視確認された。
以上のように本実施例によれば、現状では稚珊瑚の定着性が最も優れているといわれている天草陶石と比較しても、藻の胞子や珊瑚の幼生が遥かに定着し易く増殖効果に優れるとともに、海中に長期間浸漬されても崩壊することなく機械的強度が高く、さらに廃棄物の有効利用を図ることができ省資源性に優れるとともに省エネルギ性に優れた藻・珊瑚増殖部材が得られることが明らかになった。
(藻・珊瑚増殖部材が浸漬された海水のpH測定)
藻・珊瑚増殖部材が浸漬された海水のpHを測定するために、昭和48年環境庁告示第48号に準拠して検液を作成した。まず、実施例1の藻・珊瑚増殖部材を破砕し、さらに粒径0.2〜0.5mm程度に粉砕した。次に、粉砕された藻・珊瑚増殖部材100gに対して海水1Lを加えたものを200回/分、6時間連続振とうした。これをろ過(ろ紙:GS25)し、ろ液を採取し検液として、そのpHを測定した。この結果、検液のpHは10であった。
なお、同様にして、消石灰が浸漬された海水のpH、ポルトランドセメントで形成された板状体の粉砕物が浸漬された海水のpHを測定したところ、消石灰が浸漬された検液のpH=12.4、ポルトランドセメントが浸漬された検液のpH=12.8であった。また海水のpHは8であった。
以上のように本発明の藻・珊瑚増殖部材によれば、消石灰等のアルカリ成分が海水に溶出するのを抑制して、藻・珊瑚増殖部材の表面付近の海水のpHが上昇するのを防止でき、珊瑚等の定着及び増殖効果を高めることができることが明らかになった。
本発明は、藻類や珊瑚を増殖する藻・珊瑚増殖部材に関し、機械的強度が高く、またアルカリ成分の溶出量が少なく表面付近の海水のpHが上昇するのを防止できるとともに自然環境に馴染み易く藻の胞子や珊瑚の幼生が定着し易く増殖効果に優れ、さらに廃棄物の有効利用を図ることができ省資源性に優れるとともに省エネルギ性に優れる藻・珊瑚増殖部材を提供することができる。
実施の形態1における藻・珊瑚増殖部材の斜視図 図1のA−A線における断面写真 図2に示す藻・珊瑚増殖部材の断面の模式図 藻・珊瑚増殖部材を成形する加圧成形装置の模式図 内部に藻・珊瑚増殖部材が収容された容器の模式図 藻・珊瑚の定着性試験のために作成した供試体の斜視図 供試体における藻・珊瑚増殖部材の部位と、藻・珊瑚増殖部材に定着した稚珊瑚の部位別密度を示した図 ミドリイシ属の稚珊瑚密度を凹凸面と平滑面について比較した図
符号の説明
1 藻・珊瑚増殖部材
2 炭酸化層
3 未反応層
10 加圧成形装置
11 枠体
12 下金型
12a 凹部
13 昇降シリンダ
14 シリンダロッド
15 上金型
16 減圧室
16a パッキン
17 真空ポンプ
18 油圧ポンプ
19 油圧操作盤
20 容器
21 導入口
22 排気口
30 供試体
31 沈錘体
32 棒状部材
33 スペーサ
34 固定部材

Claims (4)

  1. a.石炭灰100重量部と、b.消石灰,ドロマイト,水酸化マグネシウム等の無機質結合粉体10〜100重量部好ましくは25〜70重量部と、を含有する混合粉体が所定形状に加圧成形されていることを特徴とする藻・珊瑚増殖部材。
  2. 表面から内部に向かって炭酸化された炭酸化層を有し、前記炭酸化層が、2〜10mm又は全体の厚さに対して10〜50%の深さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の藻・珊瑚増殖部材。
  3. 前記石炭灰の一部又は全部が、アルカリ処理されゼオライト化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の藻・珊瑚増殖部材。
  4. 表面に、JIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線要素の平均高さが0.1〜0.5mm、平均長さが1〜5mmの凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の藻・珊瑚増殖部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100865873B1 (ko) * 2008-02-04 2008-10-29 석성기업주식회사 수지구조체를 이용한 인공어초구조물과 그 제조방법
KR101154438B1 (ko) 2009-10-12 2012-06-15 주식회사 기성 탄산화 바닥재 제조방법
JP2018029530A (ja) * 2016-08-25 2018-03-01 有限会社 長浜商店 畜舎用滑り止め材
CN109775856A (zh) * 2019-03-12 2019-05-21 中国水产科学研究院渔业机械仪器研究所 一种控制草型湖泊水草覆盖面积的复合鱼礁系统与构建方法

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