JP2970245B2 - 水分調整用人工砂 - Google Patents

水分調整用人工砂

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正康 山崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水分調整用人工砂に係
り、特に、固結しにくく、病原菌の発生、増殖や悪臭の
発生を防止することができ、家畜舎及び放牧場における
敷砂等として有効に使用することができる水分調整用人
工砂に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、家畜舎や放牧場の敷砂としては、
山土、川砂等の天然土が使用されているが、山土や川砂
等の天然土は固結し易く、また、家畜の病気や悪臭の発
生を抑制する作用はない。このような用途に用いられる
砂土として、固結しにくく、家畜の病気や悪臭の発生を
抑制できる製品は開発されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】山土や川砂等の天然土
を家畜舎や放牧場の敷砂として用いた場合、雨水や家畜
糞尿等の水分が添加されることによって、敷砂の表層部
が湿潤状態となり、水分、家畜糞尿中の固形分及び天然
土の混合物が生成する。そして、この混合物に、家畜等
の運動等により加重が加えられて締め固められると、当
該部分で固結が起こる。しかして、敷砂の表層部に固結
層が形成されると、当該部分の透水性が悪化し、水はけ
が悪くなる。従来、この水はけの低下が、家畜の病気や
悪臭の発生の原因となり、また、生産者の作業環境の悪
化を引き起こしていた。
【0004】なお、この対策として、薬剤等の散布も考
えられるが、薬剤を散布することは、生産者の作業量及
び薬剤コストの増大を招くという欠点がある上に、消費
者への安全性の確保の面からは、薬剤の使用は好ましい
ことではない。
【0005】本発明は上記従来の問題点を解決し、固結
しにくく、病原菌の発生、増殖や悪臭の発生を防止する
ことができ、家畜舎及び放牧場における敷砂等として有
効に使用することができる水分調整用人工砂を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の水分調整用人
工砂は、カルシア、シリカ及びアルミナを主成分とする
人工砂において、水溶性カルシア分を5重量%以上含
み、該人工砂の可溶性分を溶解して得られる水溶液がア
ルカリ性を示す水分調整用人工砂であって、該水分調整
用人工砂が生石灰及び/又は消石灰をカルシア源とし、
かつ、珪石をシリカ源としてなることを特徴とする。
【0007】請求項2の水分調整用人工砂は、請求項1
において、気孔径1mm以下の気孔の気孔率が10〜7
0%であることを特徴とする。
【0008】請求項3の水分調整用人工砂は、請求項1
又は2において、水中浸漬時の吸水率が20%以上であ
ることを特徴とする。
【0009】請求項4の水分調整用人工砂は、請求項1
ないし3のいずれか1項において、粒径が1〜10mm
であることを特徴とする。
【0010】請求項5の水分調整用人工砂は、請求項1
ないし4のいずれか1項において、絶乾比重が0.1〜
1.0であることを特徴とする。
【0011】請求項6の水分調整用人工砂は、請求項1
ないし5のいずれか1項において、発泡軽量コンクリー
トの廃材よりなることを特徴とする。
【0012】以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明の水分調整用人工砂において、水溶
性カルシア分の割合が5重量%未満であると、その人工
砂の可溶性分を溶解して得られる水溶液(以下「人工砂
水溶液」と称す。)が中性に近付き、アルカリ性を示さ
なくなる。従って、水溶性カルシア分の割合は5重量%
以上、好ましくは5〜10重量%とする。なお、人工砂
水溶液は、10gの水分調整用人工砂に25mlの純水
を加えて撹拌し、1時間放置したものにおいて、pH9
〜11程度のアルカリ性を示すことが好ましい。
【0014】このような水分調整用人工砂において、水
中浸漬時の吸水率が20%未満の場合、或いは、気孔径
1mm以下の気孔の気孔率が10%未満である場合に
は、例えば、家畜舎や放牧場の敷砂として使用した場
合、十分な水分調整能力が得られず、固結が生じる恐れ
がある。この気孔率が70%を超えると、吸水率が上昇
する反面、粒子の強度が低下し、例えば、家畜舎及び放
牧場の敷砂として使用した場合に、家畜の運動等により
破砕され、粉塵発生による作業環境等の悪化を引き起こ
す。
【0015】また、本発明の水分調整用人工砂は、粒径
1〜10mmの範囲に粒度調整したものであることが好
ましい。この範囲に粒度調整することにより、粒度調整
を行わないものに比べて、固結防止効果はより一層向上
する。因みに、粒径が1mm未満の場合、或いは、粒径
が1mm未満のものが混入した場合には、水分調整能力
が低下し、固結が認められる場合がある。逆に、粒径が
10mmを超える場合、或いは、粒径が10mmを超え
るものが混入した場合には、敷砂として利用した際、感
触が悪く、敷砂上に横たわる家畜頭数が激減し、家畜の
健全な生育に悪影響がある。
【0016】また、水分調整用人工砂の絶乾比重が0.
1未満の場合には、粒子の強度が低下し、家畜の運動に
伴って破砕粉塵が発生し、作業環境等が悪化する。逆
に、該絶乾比重が1.0を超える場合には、家畜舎及び
放牧場等への敷砂の搬入及び入れ替え作業等に対する作
業性が悪化する。従って、水分調整用人工砂の絶乾比重
は0.1〜1.0の範囲であることが好ましい。
【0017】以下に、本発明の水分調整用人工砂の製造
方法の一例を示すが、本発明の水分調整用人工砂の製造
方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0018】本発明の水分調整用人工砂を製造するに
は、まず、珪石、生石灰及び/又は消石灰、セメントを
適量混合し、得られた混合物を発泡剤を含む水に加え、
これを型枠に流し込んで養生することにより、多孔質硬
化体を製造する。この養生に際しては、一次養生後、高
温高圧養生することが望ましい。得られた多孔質硬化体
は、型枠から取り出し、所望の粒度に調整することによ
り本発明の水分調整用人工砂を得ることができる。
【0019】また、本発明における水分調整用人工砂と
しては、上記方法で製造したものの他、発泡軽量コンク
リートの廃材(製造時における不良品や使用済のもの)
を用いることもできる。このようなものを用いることに
より、更に製造原価を低減することが可能であり、製品
の低価格化と産業廃棄物の有効利用の面から有利であ
る。
【0020】
【作用】本発明者らは、従来の敷砂の表層部の固結は、
敷砂からの水分蒸散量よりも敷砂への水分添加量の方が
多いことに起因すること、そして、特定の多孔質である
水分調整用人工砂が、添加された水分を吸水し、更にこ
れを蒸散させ易いという性質を利用して、家畜舎及び放
牧場の敷砂として使用した場合に、敷砂の固結を防止で
きることを見出した。
【0021】ところで、抗菌性に関しては、従来より、
消石灰はpH10〜12の強アルカリ性で殺菌力がある
ため、消毒用に使用されている。これは、消石灰には病
原菌の生体膜を溶かし、その繁殖を抑制する働きがある
ためである(上杉康彦他「石灰石の用途と特性」石灰石
鉱業協会(1986.4.1))。因みに、畜産農家では、敷砂
の下に消石灰を搬入し、消毒用として使用している。
【0022】これに対し、発明者らは、水溶性カルシア
分を5重量%以上含み、人工砂水溶液がアルカリ性を示
す水分調整用人工砂を、家畜舎及び放牧場の敷砂として
使用することにより、消石灰を使用した場合と同様、家
畜の病気発生を抑制できることを見出した。なお、水溶
性カルシア分が5重量%未満の場合、人工砂水溶液は中
性に近付くため、このような作用効果は得られない。
【0023】また、悪臭に関しては、従来より、例えば
家畜糞尿の堆肥化処理においては、嫌気状態にすると、
有機物質が還元反応を起こして低級脂肪酸及び硫黄系悪
臭物質を生成することが知られている(北山輝秀他「悪
臭・炭化水素排出防止技術」(1978.3.10))。これらの
悪臭源は、空気より重いため、畜産施設周辺に漂うこと
に加えて、悪臭の嗅覚のいき値(鼻で感じなくなる濃
度)がアンモニアに比べて非常に低いことから、畜産施
設周辺の最も大きな悪臭原因の一つとなっている。
【0024】これに対し、発明者らは、水分調整能力を
有する水分調整用人工砂が、敷砂表層部に添加された家
畜糞尿中の水分を吸水し、更にこれを蒸散させて適度な
好気状態にすることによって、糞自体の微生物による好
気性発酵を促進し、嫌気性発酵による低級脂肪酸及び硫
黄系等悪臭物質の生成が抑制できることを見出した。な
お、糞が好気性発酵した場合、糞中の尿酸分解によって
アンモニアが発生するが、敷砂中に残留したアンモニア
は、微生物によって硝酸に変えられ、脱臭される。
【0025】本発明は上記の如き知見を基に達成された
ものであり、本発明の水分調整用人工砂は、その水分調
整作用のために固結しにくく、また、アルカリ性による
殺菌力で抗菌作用を示し、かつ、水分調整能力に基く好
気性発酵により悪臭を防止するという優れた効果を奏す
る。
【0026】請求項2、3の水分調整用人工砂によれ
ば、水分調整能力に優れ、作業環境や家畜の生育の面か
らも有効な水分調整用人工砂が提供される。
【0027】請求項5の水分調整用人工砂によれば、高
強度で取り扱い性に優れた水分調整用人工砂が提供され
る。
【0028】請求項6の水分調整用人工砂によれば、廃
材の有効利用により安価な水分調整用人工砂が提供され
る。
【0029】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の
実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】実施例1 粉末の珪石、生石灰、セメントを重量比3:1:1の割
合で混合し、発泡剤0.1重量%を含む水溶液中に添加
混合した。これを型枠に流し込み、常温で2時間一次養
生した後、10気圧、180℃で16時間高温高圧(オ
ートクレーブ)養生して発泡させ、得られた硬化体を型
枠から取り出し、多孔質硬化体を得た。
【0031】得られた多孔質硬化体を粉砕し、粒径を1
〜10mmに調整することにより、本発明の水分調整用
人工砂No. 1〜3を製造した。
【0032】表1及び表2に、この水分調整用人工砂の
化学成分及び物理・化学的性質を示す。表1、2より、
この水分調整用人工砂が、シリカ、カルシア、アルミナ
を主成分とし、適当な気孔率及び吸水率を有しているこ
とが分かる。また、十分な水溶性カルシア分を有し、人
工砂水溶液(10gの水分調整用人工砂に25mlの純
水を加えて撹拌し、1時間放置したもの)のpHが9.
6と、十分なアルカリ性を示していることが分かる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】また、表3に水分調整用人工砂No. 1〜3
の粒度構成と、比較のために用いた天然砂の粒度構成を
示すと共に、これらをそれぞれ鶏舎の敷砂として使用し
たときの、使用前、使用後の土壌硬度測定結果を示す。
表3より、本発明の水分調整用人工砂が、天然砂より硬
化しにくいことが分かる。また、水分調整用人工砂No.
1〜3を比べると、粒径が1mm未満のものの含有量が
少ないほど硬化しにくいことが分かる。
【0036】
【表3】
【0037】また、水分調整用人工砂No. 2と天然砂に
ついて、鶏舎の敷砂として使用した前後のpH値と悪臭
の有無を調べ、結果を表4に示した。なお、pH値はい
ずれも10gの砂に25mlの純水を加えて撹拌し、1
時間放置したもののpHを測定した。表4より、本発明
の水分調整用人工砂では、使用後でも敷砂下層部のpH
値が高いことが分かる。天然砂使用後は、下水臭に似た
悪臭を発していたが、本発明の水分調整用人工砂の場合
は、使用後も悪臭はなかった。更に、病気の発生もなか
った。
【0038】
【表4】
【0039】また、水分調整用人工砂No. 2について、
シェークフラスコ法により抗菌性試験を行ない、結果を
表5に示した。試験は、表5に示す2種類の菌をそれぞ
れ添加した75mlのリン酸緩衝液に、水分調整用人工
砂No. 2をそれぞれ0.75g添加して30℃にて15
0rpmで振盪し、その生菌数の経時変化を測定し、水
分調整用人工砂No. 2を添加していないもの(ブラン
ク)と比較した。表5より、本発明の水分調整用人工砂
は、抗菌性も備えていることが明らかである。
【0040】
【表5】
【0041】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の水分調整用
人工砂によれば、水分調整機能に優れる上に、殺菌性、
抗菌性、悪臭分解性にも優れた水分調整用人工砂が提供
される。このような本発明の水分調整用人工砂は、家畜
舎や放牧場等の敷砂として用いることにより、その表層
の固結を防止すると共に、家畜の病気発生や家畜の糞尿
等による悪臭発生を防止し、衛生状態及び作業環境の向
上を図ると共に、家畜の生育を良好なものとすることが
可能となり、安全かつ安価に家畜の飼育を行なうことが
できる。
【0042】もちろん、本発明の水分調整用人工砂は、
家畜舎等の敷砂に限らず、病原菌の繁殖を嫌う分野、吸
水を必要とする分野、悪臭の防止を必要とする分野等に
おいて、幅広く利用することができる。
【0043】請求項2、3の水分調整用人工砂によれ
ば、水分調整能力に優れ、作業環境や家畜の生育の面か
らも有効な水分調整用人工砂が提供される。
【0044】請求項5の水分調整用人工砂によれば、高
強度で取り扱い性に優れた水分調整用人工砂が提供され
る。
【0045】請求項6の水分調整用人工砂によれば、廃
材の有効利用により安価な水分調整用人工砂が提供され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 亀井 健 福岡県北九州市八幡西区洞南町1番地1 三菱マテリアル株式会社 九州事業所 内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01K 1/015 C04B 38/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシア、シリカ及びアルミナを主成分
    とする人工砂において、水溶性カルシア分を5重量%以
    上含み、該人工砂の可溶性分を溶解して得られる水溶液
    がアルカリ性を示す水分調整用人工砂であって、 該水分調整用人工砂が生石灰及び/又は消石灰をカルシ
    ア源とし、かつ、珪石をシリカ源としてなることを特徴
    とする水分調整用人工砂。
  2. 【請求項2】 請求項1において、気孔径1mm以下の
    気孔の気孔率が10〜70%であることを特徴とする水
    分調整用人工砂。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、水中浸漬時の
    吸水率が20%以上であることを特徴とする水分調整用
    人工砂。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項におい
    て、粒径が1〜10mmであることを特徴とする水分調
    整用人工砂。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項におい
    て、絶乾比重が0.1〜1.0であることを特徴とする
    水分調整用人工砂。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項におい
    て、発泡軽量コンクリートの廃材よりなることを特徴と
    する水分調整用人工砂。
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