JP2018028145A - 銀合金粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼成型導電性ペーストの材料として使用した場合に比較的低い焼成温度でも高い導電性の導電膜を得ることができる安価な銀合金粉末およびその製造方法を提供する。【解決手段】ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を溶解した溶湯を落下させながら、大気中または非酸化性雰囲気中において、水圧30〜200MPaで(好ましくは純水またはアルカリ水である)高圧水を吹き付けて急冷凝固させることにより、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫とからなり、平均粒径が0.5〜20μmであり、熱機械的分析における200℃のときの収縮率が1%以上である銀合金粉末を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、銀合金粉末およびその製造方法に関し、特に、焼成型導電性ペーストの材料として使用するのに適した銀合金粉末およびその製造方法に関する。
従来、太陽電池の電極、低温焼成セラミック(LTCC)を使用した電子部品や積層セラミックインダクタ(MLCI)などの積層セラミック電子部品の内部電極、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタなどの外部電極などを形成する焼成型導電性ペーストの材料として、銀粉などの金属粉末が使用されている。
しかし、銀の融点は961℃と高く、銀粉を比較的低温で焼結する焼成型導電性ペーストに使用する場合には、十分に焼結が進まず、所望の電気特性が得られないおそれがある。また、銀粉は高価であり、さらに安価な金属粉末を使用することが望まれている。
銀よりも焼結温度が低く且つ安価な金属として、銀およびSn、Sb、Zn、Biよりなる群から選ばれた1種または2種以上を主成分とし、かつ600℃以下の融点を有する、薄板状の溶湯急冷材、細線材、微粒材からなるろう材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、導電粒子および樹脂を含む導電性接着剤において、導電粒子の40重量%以上が、実質的に銀とスズからなり且つ銀:スズのモル比が2.5:1.5〜3.5:0.5の銀−スズ粉である導電性接着剤も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭58−6793号公報(第2頁) 特開2002−265920号公報(段落番号0009)
しかし、特許文献1のろう材の微粒材は、粒子径が非常に小さい金属粉末でないため、焼成型導電性ペーストの材料として使用したとしても、焼結温度を十分に低下させることができず400〜500℃の比較的低い温度で焼成すると、良好な導電性を得ることができない。また、特許文献2の導電性接着剤の銀−スズ粉を焼成型導電性ペーストの材料として使用しても、比較的低い焼成温度で高い導電性の導電膜を得ることができない。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、焼成型導電性ペーストの材料として使用した場合に比較的低い焼成温度でも高い導電性の導電膜を得ることができる安価な銀合金粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末において、平均粒径を0.5〜20μmにし、熱機械的分析における200℃のときの収縮率を1%以上にすることにより、焼成型導電性ペーストの材料として使用した場合に比較的低い焼成温度でも高い導電性の導電膜を得ることができる安価な銀合金粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銀合金粉末は、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末において、平均粒径が0.5〜20μmであり、熱機械的分析における200℃のときの収縮率が1%以上であることを特徴とする。
この銀合金粉末は、熱重量分析における200℃のときの重量増加率が0.4%以下であるのが好ましい。また、銀合金粉末中の酸素含有量が1.4質量%以下であるのが好ましく、炭素含有量が0.5質量%以下であるのが好ましい。また、銀合金粉末のBET比表面積が0.1〜3.5m/gであるのが好ましく、タップ密度が2.5g/cm以上であるのが好ましい。
また、本発明による銀合金粉末の製造方法は、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を溶解した溶湯を落下させながら、高圧水を吹き付けて急冷凝固させることを特徴とする。
この銀合金粉末の製造方法において、溶湯が、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を非酸化性雰囲気中において溶解した溶湯であるのが好ましい。また、高圧水が純水またはアルカリ水であるのが好ましく、高圧水が大気中または非酸化雰囲気中において吹き付けられるのが好ましい。
また、本発明による導電性ペーストは、上記の銀合金粉末が有機成分中に分散していることを特徴とする。この導電性ペーストは、焼成型導電性ペーストであるのが好ましい。
さらに、本発明による導電膜の製造方法は、上記の焼成型導電性ペーストを基板上に塗布した後に焼成して導電膜を製造することを特徴とする。この導電膜の製造方法において、焼成を300〜700℃の温度で行うのが好ましい。
なお、本明細書中において、「平均粒径」とは、(ヘロス法によって)レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)をいう。
本発明によれば、焼成型導電性ペーストの材料として使用した場合に比較的低い焼成温度でも高い導電性の導電膜を得ることができる安価な銀合金粉末およびその製造方法を提供することができる。
実施例1〜3および比較例の銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)における温度に対する膨張率の関係を示す図である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末の熱重量分析(TG)における温度に対する重量増加率の関係を示す図である。 実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のTMAにおける温度に対する膨張率の関係を示す図である。 実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のTGにおける温度に対する重量増加率の関係を示す図である。 実施例2、6および比較例の銀合金粉末のTMAにおける温度に対する膨張率の関係を示す図である。 実施例2、6および比較例の銀合金粉末のTGにおける温度に対する重量増加率の関係を示す図である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのSn由来ピークを示す図である。 実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのSn由来ピークを示す図である。 実施例2、6および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのSn由来ピークを示す図である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのAgSn由来ピークを示す図である。 実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのAgSn由来ピークを示す図である。 実施例2、6および比較例の銀合金粉末のX線回折パターンのAgSn由来ピークを示す図である。 実施例1の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、中央の写真が5,000倍、右側の写真が1,000倍の写真)である。 実施例2の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、中央の写真が5,000倍、右側の写真が1,000倍の写真)である。 実施例3の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、中央の写真が5,000倍、右側の写真が1,000倍の写真)である。 比較例の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、中央の写真が5,000倍、右側の写真が1,000倍の写真)である。 実施例4の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、右側の写真が5,000倍の写真)である。 実施例5の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、右側の写真が5,000倍の写真)である。 実施例6の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、右側の写真が5,000倍の写真)である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末を使用して作製した導電性ペーストを基板上に塗布して大気中において400℃で焼成して得られた導電膜の体積抵抗率を示す図である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末を使用して作製した導電性ペーストを基板上に塗布して窒素雰囲気中において500℃で焼成して得られた導電膜の体積抵抗率を示す図である。 実施例1〜3および比較例の銀合金粉末を使用して作製した導電性ペーストを基板上に塗布して窒素雰囲気中において600℃で焼成して得られた導電膜の体積抵抗率を示す図である。
本発明による銀合金粉末の実施の形態では、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末において、平均粒径が0.5〜20μm(好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.5〜4μm、最も好ましくは0.5〜3μm)であり、熱機械的分析における200℃のときの収縮率が1%以上(好ましくは1.1%以上、さらに好ましくは1.2%以上、最も好ましくは1.3%以上(ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属がビスマスの場合、好ましくは2.0%以上))である。なお、この収縮率は、5%以下であるのが好ましい。このような銀合金粉末は、400〜600℃程度の低温で十分に焼結して高い導電性の導電膜を形成することができる。
なお、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末は、銀粉や(銀より融点が低い錫を合金化して熱収縮開始温度を低くした)銀と錫の合金粉末と比べて、粉末の結晶構造を歪ませることができると考えられ、このような結晶構造の歪みによって粉末の反応性を高めることができると考えられる。また、粉末の平均粒径を0.5〜20μmと小さくすることによって、粉末の表面自由エネルギーを高くして反応性を高めることができると考えられ、それによって粉末の熱収縮開始温度を低くすることができると考えられる。また、このように熱収縮開始温度が低い粉末は、熱収縮開始温度が高い粉末と比べて、(熱収縮開始温度より高温の)焼成温度において融着し易く、焼成によってより強固に焼き締り、高い導電性の導電膜を形成することができると考えられる。
また、錫は酸化し易い金属であるため、銀と錫の合金粉末は、耐酸化性が不十分であるが、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属(第3金属元素)と銀と錫の合金粉末は、銀と錫の合金粉末と比べて、耐酸化性を高くすることができる。なお、粉末の製造の容易性の観点から、第3金属元素としてビスマス、インジウムまたは亜鉛の1種の金属を使用するのが好ましく、粉末の熱収縮開始温度の低下や耐酸化性の向上の観点から、第3金属元素としてビスマスを使用するのが好ましい。
また、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属(第3金属元素)と銀と錫の合金粉末は、製造の際の各構成金属の仕込み量によって、銀と錫と第3金属元素の合金粉末のみの形態で存在するのではなく、その合金粉末と、銀と錫の合金粉末と、銀粉(銀単相の金属粉末)、錫粉(錫単相の金属粉末)と、第3金属元素が任意の割合で固溶した金属粉末などの混合粉末の状態で存在する場合もある。この合金粉末において、銀と錫と第3金属元素の合計に対する銀の割合は、合金粉末の導電性および製造コストの観点から、好ましくは20〜90質量%であり、さらに好ましくは30〜85質量%であり、最も好ましくは40〜80質量%である。また、銀と錫と第3金属元素の合計に対する錫の割合は、合金粉末の熱収縮開始温度の低下や耐酸化性の向上の観点から、好ましくは9〜78質量%であり、さらに好ましくは12〜68質量%であり、最も好ましくは18〜58質量%である。また、銀と錫と第3金属元素の合計に対する第3金属元素の割合は、合金粉末の熱収縮開始温度の低下や耐酸化性の向上の観点から、好ましくは0.01〜50質量%であり、さらに好ましくは0.015〜10質量%であり、最も好ましくは0.015〜8質量%(第3金属元素がビスマスの場合、好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは0.8〜5質量%)である。なお、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属(第3金属元素)と銀と錫の合金粉末は、不可避不純物として、微量の銅、鉄、ニッケル、ナトリウム、カリウム、カルシウム、酸素、炭素、窒素、リン、ケイ素、塩素などを含んでもよい。
上記の銀合金粉末は、熱重量分析における200℃のときの重量増加率が好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.3%以下、最も好ましくは0.2%以下である。このような銀合金粉末は、耐酸化性が高く且つ400〜600℃程度の低温で十分に焼結して高い導電性の導電膜を形成することができる。
上記の銀合金粉末中の酸素含有量は、好ましくは1.4質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下、最も好ましくは1.25質量%以下である。このように銀合金粉末中の酸素含有量が低ければ、400〜600℃程度の低温で十分に焼結して高い導電性の導電膜を形成することができる。
また、上記の銀合金粉末中の炭素含有量は、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。なお、銀合金粉末中の炭素含有量が低いと、焼成型導電性ペーストの材料として使用した場合に、焼成の際に炭素分から二酸化炭素などのガスが発生し難く、焼成型導電性ペーストを基板に塗布した後に焼成して導電膜を形成する場合に、基板との密着性に優れた導電膜を形成することができる。
また、上記の銀合金粉末のBET比表面積は、好ましくは0.1〜3.5m/g、さらに好ましくは0.5〜3m/g、最も好ましくは1〜2.5m/gである。銀合金粉末のタップ密度は、好ましくは2.5g/cm以上、さらに好ましくは3g/cm以上であり、7g/cm以下であるのが好ましい。
なお、上記の銀合金粉末の形状は、球状やフレーク状などの様々な粒状の形状のいずれの形状でもよく、形状が揃っていない不定形状でもよい。
上述した銀合金粉末の実施の形態は、本発明による銀合金粉末の製造方法の実施の形態により製造することができる。
本発明による銀合金粉末の製造方法の実施の形態では、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を溶解した(好ましくは962〜約1600℃の)溶湯を落下させながら、(好ましくは、大気中または(アルゴンや窒素などの)非酸化性雰囲気中において水圧30〜200MPaで純水または(pH8〜12の)アルカリ水である)高圧水を吹き付けて急冷凝固させる。
高圧水を吹き付ける、所謂水アトマイズ法によって、ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末を製造すると、粒子径が小さい銀合金粉末を得ることができる。この合金粉末は、同じ方法で製造した銀と錫の合金粉末と比べて、粉末の結晶構造を歪ませることができると考えられ、このような(粒子径が小さい)銀合金粉末の結晶構造の歪みによって、焼成型導電性ペーストの材料に使用した場合に、粉末の熱収縮開始温度を低くすることができると考えられる。このように熱収縮開始温度が低い粉末は、熱収縮開始温度が高い粉末と比べて、(熱収縮開始温度より高温の)焼成温度において融着し易く(例えば、500℃程度の低温でも十分に焼結して)、高い導電性の導電膜を形成することができると考えられる。
一方、錫、ビスマス、インジウムおよび亜鉛は、銀に比べて酸化し易いが、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素などの非酸化性雰囲気中においてビスマス、インジウムまたは亜鉛を錫および銀とともに溶解して水アトマイズ法により銀合金粉末を製造すれば、酸素含有量が低い銀合金粉末を製造することができる。このように酸素含有量が低い銀合金粉末は、酸素含有量が高い銀合金粉末と比べて、熱収縮開始温度が低くなり、導電性が高くなる。また、銀合金粉末中の酸素含有量を低下させるために、溶湯にカーボンブラックや木炭などの還元剤を添加してもよい。
水アトマイズ法によって溶湯から銀合金粉末を製造する際に、溶湯中の各構成金属の仕込み量を調整することによって、銀合金粉末中の銀と錫と第3金属元素(ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属)の割合を調整することができる。なお、亜鉛の沸点は1000℃以下と低く、水アトマイズ法によって溶湯から銀合金粉末を製造する際に一定量の亜鉛が蒸発するので、第3金属元素として亜鉛を使用する場合には、蒸発分を考慮して亜鉛の仕込み量を決定するのが好ましい。
また、水アトマイズ法によって溶湯から銀合金粉末を製造する際に、溶湯の温度と高圧水の圧力を調整することによって、銀合金粉末の平均粒径を調整することができる。例えば、溶湯の温度を高くしたり、高圧水の圧力を高くすることにより、銀合金粉末の平均粒径を小さくすることができる。
また、水アトマイズ法によって溶湯から銀合金粉末を製造する際に、溶湯を落下させながら高圧水を吹き付けて急冷凝固させて得られたスラリーを固液分離し、得られた固形物を乾燥して銀合金粉末を得ることができる。なお、必要に応じて、固液分離して得られた固形物を乾燥する前に水洗してもよいし、乾燥した後に解砕したり、分級して粒度を調整してもよい。
本発明による銀合金粉末の実施の形態は、(銀合金粉末を有機成分中に分散させた)導電性ペーストの材料などに使用することができる。特に、本発明による銀合金粉末の実施の形態は、熱収縮開始温度が低いことから、焼成温度が低い(好ましくは300〜700℃程度、さらに好ましくは400〜600℃程度の低温で焼成する)焼成型導電性ペーストの材料として使用するのが好ましい。なお、本発明による銀合金粉末の実施の形態は、焼成温度が低い焼成型導電性ペーストの材料として使用することができるので、(従来の焼成型導電性ペーストの焼成温度より低温で加熱して導電膜を形成する)樹脂硬化型導電性ペーストの材料として使用してもよい。
本発明による銀合金粉末の実施の形態を(焼成型導電性ペーストなどの)導電性ペーストの材料として使用する場合、導電性ペーストの構成要素として、銀合金粉末と、(飽和脂肪族炭化水素類、不飽和脂肪族炭化水素類、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、エステル類、アルコール類などの)有機溶剤が含まれる。また、必要に応じて、(エチルセルロースやアクリル樹脂などの)バインダ樹脂を有機溶剤に溶解したビヒクル、ガラスフリット、無機酸化物、分散剤などを含んでもよい。
導電性ペースト中の銀合金粉末の含有量は、導電性ペーストの導電性および製造コストの観点から、5〜98質量%であるのが好ましく、70〜95質量%であるのがさらに好ましい。また、導電性ペースト中の銀合金粉末は、Ag−Sn−Bi合金粉末、Ag−Sn−In合金粉末およびAg−Sn−Zn合金粉末の2種以上の混合粉末でもよく、(銀粉、銀と錫の合金粉末、錫粉などの)1種以上の他の金属粉末と混合して使用してもよい。この金属粉末は、本発明による銀合金粉末の実施の形態と形状や粒径が異なる金属粉末でもよい。この金属粉末の平均粒径は、導電性ペーストを400〜600℃程度の低温で焼成するために、0.5〜20μmであるのが好ましい。また、この金属粉末の導電性ペースト中の含有量は、1〜94質量%であるのが好ましく、4〜29質量%であるのがさらに好ましい。なお、導電性ペースト中の銀合金粉末と金属粉末の含有量の合計は、60〜98質量%であるのが好ましい。また、導電性ペースト中のバインダ樹脂の含有量は、導電性ペースト中の銀合金粉末の分散性や導電性ペーストの導電性の観点から、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜6質量%であるのがさらに好ましい。このバインダ樹脂を有機溶剤に溶解したビヒクルは、2種以上を混合して使用してもよい。また、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、導電性ペーストの焼結性の観点から、0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがさらに好ましい。このガラスフリットは、2種以上を混合して使用してもよい。また、導電性ペースト中の有機溶剤の含有量(導電性ペースト中にビヒクルが含まれる場合は、ビヒクルの有機溶剤を含む合計の有機溶剤の含有量)は、導電性ペースト中の銀合金粉末の分散性や導電性ペーストの適切な粘度を考慮して、0.8〜20質量%であるのが好ましく、0.8〜15質量%であるのがさらに好ましい。この有機溶剤は、2種以上を混合して使用してもよい。
このような導電性ペーストは、例えば、各構成要素を計量して所定の容器に入れ、らいかい機、万能攪拌機、ニーダーなどを用いて予備混練した後、3本ロールで本混練することによって作製することができる。また、必要に応じて、その後、有機溶剤を添加して、粘度調整を行ってもよい。また、ガラスフリットや無機酸化物とビヒクルのみを本混練して粒度を下げた後、最後に銀合金粉末を追加して本混練してもよい。
この導電性ペーストをディッピングや(メタルマスク印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの)印刷などにより基板上に所定パターン形状に塗布した後に焼成して導電膜を形成することができる。導電性ペーストをディッピングにより塗布する場合には、導電性ペースト中に基板をディッピングして塗膜を形成し、レジストを利用したフォトリソグラフィなどにより塗膜の不要な部分を除去することによって、基板上に所定パターン形状の塗膜を形成した後、基板上に所定パターン形状の導電膜を形成することができる。なお、塗膜の不要な部分を除去する代わりに、導電膜の不要な部分を除去して、基板上に所定パターン形状の導電膜を形成してもよい。
本発明による銀合金粉末の実施の形態を焼成型導電性ペーストの材料として使用する場合、基板上に塗布した焼成型導電性ペーストの焼成は、大気雰囲気下で行ってもよいし、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素などの非酸化性雰囲気下で行ってもよい。なお、本発明による銀合金粉末の実施の形態は、熱収縮開始温度が低いため、焼成型導電性ペーストの焼成温度を低く(好ましくは300〜700℃程度、さらに好ましくは400〜600℃程度の低温に)することができる。なお、焼成型導電性ペーストの焼成温度を一般的な焼成温度(700〜900℃程度)にしてもよい。また、本発明による銀合金粉末の実施の形態は、耐酸化性に優れているため、焼成型導電性ペーストの焼成を大気雰囲気下で行うことができるので、導電膜の製造コストを低くすることができる。なお、焼成型導電性ペーストの焼成の前に、真空乾燥などにより予備乾燥を行うことにより、焼成型導電性ペースト中の有機溶剤などの揮発成分を除去してもよい。
以下、本発明による銀合金粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
純度99.99質量%のショット銀1.34kgと、純度99.99質量%のショット錫1.64kgと、純度99.99質量%のショットビスマス0.03kgとを窒素雰囲気中において1100℃に加熱して溶解した溶湯をタンディッシュ下部から落下させながら、水アトマイズ装置により大気中において水圧150MPa、水量160L/分で高圧水を吹き付けて急冷凝固させ、得られたスラリーを固液分離し、固形物を水洗し、乾燥し、解砕し、風力分級して、銀合金粉末(Ag−Sn−Bi合金粉末)を得た。なお、高圧水として、純水21.6mに対して苛性ソーダ157.55gを添加したアルカリ水溶液(温度18.4℃、pH10.7)を使用した。
このようにして得られた銀合金粉末について、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
BET比表面積は、BET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用して、測定器内に105℃で20分間窒素ガスを流して脱気した後、窒素とヘリウムの混合ガス(N:30体積%、He:70体積%)を流しながら、BET1点法により測定した。その結果、BET比表面積は1.98m/gであった。
タップ密度(TAP)は、特開2007−263860号公報に記載された方法と同様に、銀合金粉末を内径6mm×高さ11.9mmの有底円筒形のダイに容積の80%まで充填して銀合金粉末層を形成し、この銀合金粉末層の上面に0.160N/mの圧力を均一に加えて、この圧力で銀合金粉末がこれ以上密に充填されなくなるまで銀合金粉末を圧縮した後、銀合金粉末層の高さを測定し、この銀合金粉末層の高さの測定値と、充填された銀合金粉末の重量とから、銀合金粉末の密度を求めて、銀合金粉末のタップ密度とした。その結果、タップ密度は3.2g/cmであった。
酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(株式会社堀場製作所製のEMGA−920)により測定した。その結果、酸素含有量は0.71質量%であった。
炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製のEMIA−220V)により測定した。その結果、炭素含有量は0.01質量%であった。
粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(気流式の乾燥モジュール)))を使用して、分散圧5barで測定した。その結果、累積10%粒子径(D10)は0.6μm、累積50%粒子径(D50)は1.6μm、累積90%粒子径(D90)は3.3μmであった。
合金組成分析は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSPS3520V)によって行った。その結果、合金粉末は、53質量%のSnと0.93質量%のBiを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。
銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)では、銀合金粉末を直径5mm、高さ3mmのアルミナパンに詰めて、熱機械的分析(TMA)装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製のTMA/SS6200)の試料ホルダ(シリンダ)にセットし、測定プローブにより荷重0.147Nで1分間押し固めて作製した測定試料について、200mL/分の流量で窒素ガスを流入しながら、測定荷重980mNで荷重を付与して、常温から昇温速度10℃/分で500℃まで昇温し、測定試料の収縮率(常温のときの測定試料の長さに対する収縮率)を測定した。その結果、100℃のときの収縮率は0.34%(膨張率−0.34%)、150℃のときの収縮率は0.81%(膨張率−0.81%)、200℃のときの収縮率は2.25%(膨張率−2.25%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。
銀合金粉末の熱重量分析(TG)では、示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー株式会社製のEXATERTG/DTA6300型)により、銀合金粉末を大気中において30℃から昇温速度5℃/分で650℃まで昇温させて計測された重量と加熱前の銀合金粉末の重量の差(加熱により増加した重量)の加熱前の銀合金粉末の重量に対する比率(重量増加率)(%)を測定した。その結果、100℃のときの重量増加率は−0.01%、150℃のときの重量増加率は0.00%、200℃のときの重量増加率は0.07%であり、耐酸化性に優れていた。
[実施例2]
ショットビスマスの代わりに純度99.99質量%のショットインジウムを使用し、アルカリ水溶液の温度を14.3℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn−In合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は1.31m/g、タップ密度は3.2g/cm、酸素含有量は0.51質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.7μm、累積50%粒子径(D50)は1.8μm、累積90%粒子径(D90)は3.6μmであった。また、合金粉末は、54質量%のSnと0.99質量%のInを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.36%(膨張率−0.36%)、150℃のときの収縮率は0.76%(膨張率−0.76%)、200℃のときの収縮率は1.55%(膨張率−1.55%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.03%、150℃のときの重量増加率は0.06%、200℃のときの重量増加率は0.13%であり、耐酸化性に優れていた。
[実施例3]
ショットビスマスの代わりに純度99.99質量%のショット亜鉛を使用し、アルカリ水溶液の温度を13.6℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn−Zn合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は1.51m/g、タップ密度は3.2g/cm、酸素含有量は0.58質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.6μm、累積50%粒子径(D50)は1.7μm、累積90%粒子径(D90)は3.4μmであった。また、合金粉末は、54質量%のSnと0.015質量%のZnを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.35%(膨張率−0.35%)、150℃のときの収縮率は0.71%(膨張率−0.71%)、200℃のときの収縮率は1.33%(膨張率−1.33%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.03%、150℃のときの重量増加率は0.07%、200℃のときの重量増加率は0.18%であり、耐酸化性に優れていた。
[実施例4]
ショット銀の量を1.35kg、ショット錫の量を1.59kg、ショットビスマスの量を0.06kgとした以外は、実施例1と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn−Bi合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は2.88m/g、タップ密度は3.5g/cm、酸素含有量は1.21質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.6μm、累積50%粒子径(D50)は1.6μm、累積90%粒子径(D90)は3.3μmであった。また、合金粉末は、51.2質量%のSnと1.8質量%のBiを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.32%(膨張率−0.32%)、150℃のときの収縮率は0.70%(膨張率−0.70%)、200℃のときの収縮率は2.18%(膨張率−2.18%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.03%、150℃のときの重量増加率は0.07%、200℃のときの重量増加率は0.17%であり、耐酸化性に優れていた。
[実施例5]
ショット銀の量を1.35kg、ショット錫の量を1.56kg、ショットビスマスの量を0.09kgとした以外は、実施例1と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn−Bi合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は1.86m/g、タップ密度は3.4g/cm、酸素含有量は0.97質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.7μm、累積50%粒子径(D50)は1.7μm、累積90%粒子径(D90)は3.6μmであった。また、合金粉末は、50.8質量%のSnと2.7質量%のBiを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.37%(膨張率−0.37%)、150℃のときの収縮率は0.89%(膨張率−0.89%)、200℃のときの収縮率は4.05%(膨張率−4.05%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.01%、150℃のときの重量増加率は0.04%、200℃のときの重量増加率は0.14%であり、耐酸化性に優れていた。
[実施例6]
ショット銀の量を1.35kg、ショット錫の量を1.41kg、ショットインジウムの量を0.24kgとした以外は、実施例2と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn−In合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は1.37m/g、タップ密度は3.3g/cm、酸素含有量は0.71質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.7μm、累積50%粒子径(D50)は1.6μm、累積90%粒子径(D90)は3.3μmであった。また、合金粉末は、46.0質量%のSnと7.6質量%のInを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.30%(膨張率−0.30%)、150℃のときの収縮率は0.64%(膨張率−0.64%)、200℃のときの収縮率は1.64%(膨張率−1.64%)であり、200℃より低い温度で収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.04%、150℃のときの重量増加率は0.06%、200℃のときの重量増加率は0.11%であり、耐酸化性に優れていた。
[比較例]
アルカリ水溶液の温度25.9℃、pH10.5とし、ショット銀の量を1.35kg、ショット錫の量を1.65kgとし、ショットビスマスを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀合金粉末(Ag−Sn合金粉末)を得た。
このようにして得られた銀合金粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量、炭素含有量および粒度分布を求め、合金組成分析を行うとともに、熱機械的分析(TMA)並びに熱重量分析(TG)を行った。
その結果、BET比表面積は1.63m/g、タップ密度は3.3g/cm、酸素含有量は0.76質量%、炭素含有量は0.01質量%であり、累積10%粒子径(D10)は0.7μm、累積50%粒子径(D50)は1.8μm、累積90%粒子径(D90)は4.0μmであった。また、合金粉末は、55質量%のSnを含み、残部がAgの銀合金粉末であった。また、銀合金粉末の熱機械的分析(TMA)において、100℃のときの収縮率は0.21%(膨張率−0.21%)、150℃のときの収縮率は0.41%(膨張率−0.41%)、200℃のときの収縮率は0.95%(膨張率−0.95%)であり、200℃より低い温度では収縮率が低い(熱収縮開始温度に達していない)ことがわかった。さらに、銀合金粉末の熱重量分析(TG)において、100℃のときの重量増加率は0.13%、150℃のときの重量増加率は0.26%、200℃のときの重量増加率は0.49%であり、実施例1〜3と比べて耐酸化性が劣っていた。
これらの実施例および比較例の銀合金粉末の原料割合と特性を表1に示し、これらの銀合金粉末の組成と熱機械的分析(TMA)および熱重量分析(TG)の結果を表2に示す。また、実施例1〜3および比較例の銀合金粉末のTMAにおける温度に対する膨張率の関係を図1に示し、実施例1〜3および比較例の銀合金粉末のTGにおける温度に対する重量増加率の関係を図2に示す。また、実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のTMAにおける温度に対する膨張率の関係を図3に示し、実施例1、4、5および比較例の銀合金粉末のTGにおける温度に対する重量増加率の関係を図4に示す。さらに、実施例2、6および比較例の銀合金粉末のTMAにおける温度に対する膨張率の関係を図5に示し、実施例2、6および比較例の銀合金粉末のTGにおける温度に対する重量増加率の関係を図6に示す。
Figure 2018028145
Figure 2018028145
また、実施例および比較例の銀合金粉末について、X線回折分析および電子顕微鏡による観察を行うとともに、実施例1〜3および比較例の銀合金粉末を用いた導電性ペーストを使用して作製した導電膜の特性を評価した。
(X線回折分析および電子顕微鏡による観察)
実施例1〜3および比較例の銀合金粉末と、実施例1、4、6および比較例の銀合金粉末と、実施例2、6および比較例の銀合金粉末について、粉末X線回折装置(株式会社リガク製のMultiflex)を用いて得られたX線回折パターンのSn由来ピークをそれぞれ図7〜図9に示し、それらのX線回折パターンのAgSn由来ピークをそれぞれ図10〜図12に示す。図7〜図9からわかるように、比較例と比べて、実施例1〜6ではSn由来ピークが低角側にシフトしている。また、図10〜図12からわかるように、比較例と比べて、実施例2ではAgSn由来ピークが広角側にシフトし、実施例3ではAgSn由来ピークが低角側にシフトしている。なお、図10〜図12からわかるように、AgSn由来ピークは、比較例と比べて、実施例1〜6では2つのピークの間隔が狭くなっている。このようなAgSn由来ピークのシフトは、Bi、In、Znなどの第3金属がSnやAgSnに固溶して結晶子を歪めたために起こると考えられる。
また、実施例1〜3および比較例の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、中央の写真が5,000倍、右側の写真が1,000倍の写真)をそれぞれ図13〜図16に示し、実施例4〜6の銀合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(左側の写真が10,000倍、右側の写真が5,000倍の写真)をそれぞれ図17〜図19に示す。
(導電膜の特性の評価)
実施例1〜3および比較例の銀合金粉末の各々を80質量%と、ガラスフリット(旭硝子株式会社製のASF−1100B)5質量%と、ビヒクル(テルピネオール(TPO)中に40質量%のアクリル樹脂BR−105(三菱レイヨン株式会社製))10質量%と、溶剤(TPO(和光純薬工業株式会社製))5質量%を混練して導電性ペーストを作製し、これらの導電性ペーストをアルミナ基板上に厚さ20μmになるように塗布した後、大気中において(ピーク温度400℃で10分間(In−Out20分間)に設定したベルト炉により)400℃で焼成して作製した導電膜の体積抵抗率を求めた。これらの導電膜について、比較例の体積抵抗率を1とした場合のそれぞれの体積抵抗率を図20に示す。
また、作製した導電性ペーストを使用して、窒素雰囲気中において(ピーク温度500℃で10分間(In−Out20分間)に設定したベルト炉により)500℃で焼成した以外は、上記と同様の方法により、導電膜を作製して体積抵抗率を求めた。これらの導電膜について、比較例の体積抵抗率を1とした場合のそれぞれの体積抵抗率を図21に示す。
さらに、作製した導電性ペーストを使用して、窒素雰囲気中において(ピーク温度600℃で10分間(In−Out20分間)に設定したベルト炉により)600℃で焼成した以外は、上記と同様の方法により、導電膜を作製して体積抵抗率を求めた。これらの導電膜について、比較例の体積抵抗率を1とした場合のそれぞれの体積抵抗率を図22に示す。
図20〜図22からわかるように、実施例1〜3では、比較例と比べて、高い導電性の導電膜を得ることができる。これは、実施例1〜3の銀合金粉末では、比較例の銀合金粉末と比べて、200℃のときの収縮率が高い(熱収縮開始温度が低い)ので、焼成温度における導電性ペースト中の銀合金粉末が融着し易く、高い導電性の導電膜が得られると考えられる。
本発明による銀合金粉末は、太陽電池の電極、低温焼成セラミック(LTCC)を使用した電子部品や積層セラミックインダクタなどの積層セラミック電子部品の内部電極、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタなどの外部電極などを形成するために、低温で焼結する焼成型導電性ペーストの材料として利用して、高い導電性の導電膜を得ることができる。

Claims (14)

  1. ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫の合金粉末において、平均粒径が0.5〜20μmであり、熱機械的分析における200℃のときの収縮率が1%以上であることを特徴とする、銀合金粉末。
  2. 前記銀合金粉末の熱重量分析における200℃のときの重量増加率が0.4%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の銀合金粉末。
  3. 前記銀合金粉末中の酸素含有量が1.4質量%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の銀合金粉末。
  4. 前記銀合金粉末中の炭素含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀合金粉末。
  5. BET比表面積が0.1〜3.5m/gであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の銀合金粉末。
  6. タップ密度が2.5g/cm以上であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の銀合金粉末。
  7. ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を溶解した溶湯を落下させながら、高圧水を吹き付けて急冷凝固させることを特徴とする、銀合金粉末の製造方法。
  8. 前記溶湯が、前記ビスマス、インジウムおよび亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の金属と銀と錫を非酸化性雰囲気中において溶解した溶湯であることを特徴とする、請求項7に記載の銀合金粉末の製造方法。
  9. 前記高圧水が純水またはアルカリ水であることを特徴とする、請求項7または8に記載の銀合金粉末の製造方法。
  10. 前記高圧水が大気中または非酸化性雰囲気中において吹き付けられることを特徴とする、請求項7乃至9のいずれかに記載の銀合金粉末の製造方法。
  11. 請求項1乃至6のいずれかに記載の銀合金粉末が有機成分中に分散していることを特徴とする、導電性ペースト。
  12. 前記導電性ペーストが焼成型導電性ペーストであることを特徴とする、請求項11に記載の導電性ペースト。
  13. 請求項12の焼成型導電性ペーストを基板上に塗布した後に焼成して導電膜を製造することを特徴とする、導電膜の製造方法。
  14. 前記焼成を300〜700℃の温度で行うことを特徴とする、請求項13に記載の導電膜の製造方法。

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