JP2018027876A - 分相ガラス板 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼結体からなる光取り出し層を形成しなくても、ガラス内に閉じ込められる光を低減し得るガラス板を創案する。【解決手段】本発明の分相ガラス板は、少なくとも第一の相と第二の相を有する分相ガラス板において、板厚が0.05〜0.6mmであることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、分相ガラス板に関し、具体的には、光散乱機能を有する分相ガラス板に関する。
近年、家電製品の普及、大型化、多機能化等の理由から、家庭等の生活空間で消費されるエネルギーが増えている。特に、照明機器のエネルギー消費が多くなっている。このため、高効率の照明が活発に検討されている。
照明用光源は、限られた範囲を照らす「指向性光源」と、広範囲を照らす「拡散光源」とに分けられる。LED照明は、「指向性光源」に相当し、白熱球の代替として採用されつつある。その一方で、「拡散光源」に相当する蛍光灯の代替光源が望まれており、その候補として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)照明が有力である。
有機EL素子は、ガラス板と、陽極である透明導電膜と、電流の注入によって発光するエレクトロルミネッセンスを呈する有機化合物からなる一層又は複数層の発光層を含む有機EL層と、陰極と、を備えた素子である。有機EL素子に用いられる有機EL層として、低分子色素系材料、共役高分子系材料等が用いられており、発光層を形成する場合、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等との積層構造が形成される。このような積層構造を有する有機EL層を、陽極と陰極の間に配置し、陽極と陰極に電界を印加することにより、陽極である透明電極から注入された正孔と、陰極から注入された電子とが、発光層内で再結合し、その再結合エネルギーによって発光中心が励起されて、発光する。
有機EL素子は、携帯電話、ディスプレイ用途として検討が進められており、一部では既に実用化されている。また、有機EL素子を用いた有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の薄型テレビと同等の発光効率を有している。
しかし、有機EL素子を照明用光源に適用するためには、輝度が未だ実用レベルに到達しておらず、更なる発光効率の改善が必要である。
特開2012−25634号公報
輝度低下の原因の一つは、ガラス板と空気の屈折率差に起因して、ガラス板の内部に光が閉じ込められることにある。例えば、1.50の屈折率ndを有するガラス板を用いた場合、空気の屈折率ndは1.00であるため、臨界角はスネルの法則より42°と計算される。よって、この臨界角以上の入射角の光は、全反射を起こし、ガラス板の内部に閉じ込められて、空気中に取り出されないことになる。
上記問題を解決するために、透明導電膜等とガラス板の間に、光取り出し層を形成することが検討されている。例えば、特許文献1には、ソーダガラス板の表面に、ガラスフリットを焼結させた光取り出し層を形成すると共に、光取り出し層内に散乱物質を分散させることにより、光取り出し効率を高めることが記載されている。
しかし、ガラス板の表面に光取り出し層を形成するためには、ガラス板の表面にガラスペーストを塗布する印刷工程が必要になり、この工程は生産コストの高騰を招く。更に、ガラスフリット中に散乱粒子を分散させる場合、散乱粒子自体の吸収により光取り出し層の透過率が低くなる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、焼結体からなる光取り出し層を形成しなくても、ガラス内に閉じ込められる光を低減し得るガラス板を創案することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、分相したガラス板を用いると共に、そのガラス板の板厚を薄くすることにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の分相ガラス板は、少なくとも第一の相と第二の相を有する分相ガラス板において、板厚が0.05〜0.6mmであることを特徴とする。
本発明の分相ガラス板は、少なくとも第一の相と第二の相を有する。このようにすれば、有機EL層からガラス板に入射した光が、第一の相と第二の相の界面で散乱するため、空気中に光を取り出し易くなり、結果として、焼結体からなる光取り出し層を形成しなくても、光取り出し効率を高めることができる。
本発明の分相ガラス板は、板厚が0.05〜0.6mmである。このようにすれば、ガラス板に入射した光が、空気中に効率良く取り出される。
第二に、本発明の分相ガラス板は、分相粒子の平均粒子径が30〜1000nmであることが好ましい。このようにすれば、ガラス板に入射した光が、空気中に効率良く取り出される。ここで、「分相粒子の平均粒子径」は、例えば、分相ガラス板を2体積%のフッ酸溶液により2分間浸漬した後、そのエッチングされた表面を電界放射型走査型電子顕微鏡により観察し、その観察画面内の分相粒子が円形であると仮定した場合の粒子径を画像解析ソフトにより測定した後、そのような測定を同じ観察画面内の10個以上の分相粒子に対して行った上で、その平均値を算出することで評価することができる。
第三に、本発明の分相ガラス板は、屈折率ndが1.51以上であることが好ましい。ここで、「屈折率nd」は、屈折率測定器で測定したd線の値を指す。例えば、まず25mm×25mm×約3mmの直方体試料を作製し、(徐冷点+30℃)から(歪点−50℃)までの温度域を0.1℃/分の冷却速度で徐冷処理した後、屈折率が整合する浸液を浸透させながら、島津製作所社製の屈折率測定器KPR−2000を用いることで測定可能である。従来の有機EL照明等の有機ELデバイスは、ガラス板と透明導電膜等の屈折率差が大きいことに起因して、有機EL層から入射した光がガラス板と透明導電膜等の界面で反射し、光取り出し効率が低下するという問題もあった。具体的に説明すると、透明導電膜の屈折率ndは1.9〜2.0、有機EL層の屈折率nは1.8〜1.9であり、これに対して、ガラス板の屈折率ndは、通常、1.50程度であり、両者の屈折率差が大きかった。そこで、上記のようにガラス板の屈折率ndを規制すれば、ガラス板と透明導電膜等の屈折率差が小さくなるため、有機EL層から入射した光がガラス板と透明導電膜等の界面で反射し難くなる。
第四に、本発明の分相ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜75%、Al 0〜35%、B 0.1〜50%を含有することが好ましい。このようにすれば、分相性と耐失透性を高めることができる。
第五に、本発明の分相ガラス板は、ガラス組成中のSiO、Al及びBの合量が50〜80質量%であることが好ましい。
第六に、本発明の分相ガラス板は、ガラス組成中のLiO、NaO及びKOの合量が5質量%以下であることが好ましい。
第七に、本発明の分相ガラス板は、内部に成形合流面を有すること、つまりオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。
第八に、本発明の分相ガラス板は、有機EL照明に用いることが好ましい。
第九に、本発明の有機ELデバイスは、上記の分相ガラス板を備えてなることが好ましい。
本発明の分相ガラス板は、少なくとも第一の相と第二の相を含む分相構造を有する。そして、本発明の分相ガラス板において、第一の相中のSiOの含有量は、第二の相中のSiOの含有量よりも多いことが好ましい。このようにすれば、第一の相と第二の相の屈折率が相違し易くなり、ガラス板の散乱機能を高めることができる。なお、2体積%のフッ酸溶液に2分間浸漬させた後の試料表面を電界放射型走査型電子顕微鏡で観察すれば、各相の詳細を確認することができる。
本発明の分相ガラス板において、板厚は0.05〜0.6mmであることが好ましい。板厚が小さ過ぎると、ガラス板に入射した光がガラス板の内部で十分に散乱せず、多くの光がガラス板の内部に閉じ込められたままになる。またガラス板が破損し易くなる。よって、板厚は、好ましくは0.08mm以上、特に0.1mm以上である。一方、板厚が大き過ぎると、ガラス板の内部で光の散乱が強くなり過ぎて、後方散乱が支配的になり、光を空気中へ取り出し難くなる。よって、板厚は、好ましくは0.4mm以下、特に0.2mm以下である。
本発明の分相ガラス板において、分相粒子の平均粒子径は30〜1000nmであることが好ましい。分相粒子の平均粒子径が小さ過ぎると、ガラス板に入射した光がガラス板の内部で十分に散乱せず、多くの光がガラス板の内部に閉じ込められたままになる。よって、分相粒子の平均粒子径は、好ましくは50nm以上、80nm以上、100nm以上、120nm以上、特に150nm以上である。一方、分相粒子の平均粒子径が大き過ぎると、ガラス板の内部で光の散乱が強くなり過ぎて、後方散乱が支配的になり、光を空気中へ取り出し難くなる。よって、分相粒子の平均粒子径は、好ましくは900nm以下、特に800nm以下である。
本発明の分相ガラス板において、1μm当たりの分相粒子の平均数密度は0.1〜10個であることが好ましい。1μm当たりの分相粒子の平均数密度が小さ過ぎると、ガラス板に入射した光がガラス板の内部で十分に散乱せず、多くの光がガラス板の内部に閉じ込められたままになる。よって、1μm当たりの分相粒子の平均数密度は、好ましくは0.2個以上、特に0.3個以上である。一方、1μm当たりの分相粒子の平均数密度が大き過ぎると、ガラス板の内部で光の散乱が強くなり過ぎて、後方散乱が支配的になり、光を空気中へ取り出し難くなる。よって、1μm当たりの分相粒子の平均数密度は、好ましくは6個以下、4個以下、2個以下、特に1個以下である。ここで、「1μm当たりの分相粒子の平均数密度」は、例えば、分相ガラスを2体積%のフッ酸溶液により2分間浸漬した後、そのエッチングされた表面の分相粒子を電界放射型走査型電子顕微鏡により観察し、その観察画面から1μm当たりの平均個数を計測することで確認することができる。
本発明の分相ガラス板において、屈折率ndは、好ましくは1.51以上、1.52以上、1.53以上、1.54以上、特に1.55以上である。屈折率ndが低過ぎると、ガラス板と透明導電膜等の界面で光が反射し易くなり、光を空気中に取り出し難くなる。一方、屈折率ndが高過ぎると、耐失透性を高める成分の導入が制限されるため、液相粘度を高めることが困難になる。またガラス板と空気の界面で光が反射し易くなり、光を空気中に取り出し難くなる。よって、屈折率ndは、好ましくは2.30以下、2.00以下、1.80以下、1.70以下、特に1.65以下である。
本発明の分相ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜75%、Al 0〜35%、B 0.1〜50%を含有することが好ましい。以下、上記のように各成分を限定した理由を説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、質量%を意味する。
SiOの含有量が多くなると、溶融性、成形性が低下し易くなり、また屈折率が低下し易くなる。よって、SiOの好適な上限範囲は75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、特に48%以下である。一方、SiOの含有量が少なくなると、ガラス網目構造を形成し難くなり、ガラス化が困難になる。またガラスの粘性が低下し過ぎて、高い液相粘度を確保し難くなる。よって、SiOの好適な下限範囲は30%以上、32%以上、34%以上、36%以上である。
Alは、耐失透性を高める成分であるが、Alの含有量が多過ぎると、分相性が低下し易くなることに加えて、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。また耐酸性が低下し易くなる。よって、Alの好適な上限範囲は35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、12%以下、10%以下、特に9%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.1%以上、3%以上、4%以上、特に5%以上である。
は、分相性を高める成分であるが、Bの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなることに加えて、耐酸性が低下し易くなる。よって、Bの好適な上限範囲は50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、17%以下、特に15%以下であり、好適な下限範囲は0.1%以上、0.5%以上、1%以上、4%以上、7%以上、9%以上、10%以上、11%以上、特に12%以上である。
SiO、Al及びBの合量は、屈折率と耐失透性の観点から、好ましくは50〜80%、52〜74%、54〜70%、特に54〜68%である。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入することができる。
LiO、NaO及びKOは、分相性を高めつつ、高温粘度を低下させる成分であるが、LiO、NaO及びKOの合量が多過ぎると、液相粘度が低下し易くなり、また歪点が低下し易くなる。更に、酸によるエッチング工程において、アルカリ成分が溶出し易くなる。よって、LiO、NaO及びKOの合量の好適な上限範囲は30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%未満である。LiOの好適な上限範囲は20%以下、10%以下、5%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%未満である。NaOの好適な上限範囲は30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%未満である。KOの好適な上限範囲は20%以下、10%以下、5%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%未満である。
MgOは、屈折率、ヤング率、歪点を高める成分であると共に、高温粘度を低下させる成分であるが、MgOを多量に含有させると、液相温度が上昇して、耐失透性が低下したり、密度が高くなり過ぎる虞がある。よって、MgOの好適な上限範囲は30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、特に1%未満である。なお、MgOの好適な下限範囲は0%以上、0.1%以上、0.2%以上、特に0.5%以上である。
CaOは、高温粘度を低下させる成分であるが、CaOの含有量が多くなると、密度が高くなり易く、またガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、CaOの好適な上限範囲は30%以下、20%以下、10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、2%以下、特に1%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.1%以上、特に0.5%以上である。
SrOの含有量が多くなると、屈折率、密度が高くなり易く、またガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、SrOの好適な上限範囲は30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、特に12%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、特に8%以上である。
BaOは、アルカリ土類金属酸化物の中ではガラスの粘性を極端に低下させずに、屈折率を高める成分である。BaOの含有量が多くなると、屈折率が高くなり易く、またBaOの含有量が多過ぎると、密度が上昇し易くなり、またガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、BaOの好適な上限範囲は40%以下、30%以下、26%以下、24%以下、22%以下、特に20%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、1%以上、5%以上、7%以上、10%以上、12%以上、14%以上、特に15%以上である。
ZnOの含有量が多くなると、屈折率が高くなり易いが、密度が上昇し易くなり、またガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、ZnOの好適な上限範囲は20%以下、10%以下、7%以下、5%以下、特に4%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、特に2%以上である。
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの合量は、屈折率と耐失透性を両立させる観点から、好ましくは15〜45%、20〜40%、特に25〜35%である。また質量比(SiO、Al及びBの合量)/(MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの合量)は、屈折率と耐失透性を両立させる観点から、好ましくは1.0〜4.0、1.4〜3.0、特に2.0〜3.0である。
TiOは、屈折率を高める成分であるが、TiOの含有量が多くなると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、TiOの好適な上限範囲は20%以下、15%以下、10%以下、特に8%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、1.5%以上、特に2%以上である。
ZrOは、屈折率を高める成分であるが、ZrOの含有量が多くなると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、ZrOの好適な上限範囲は20%以下、10%以下、6%以下、4%以下、3%以下、特に2%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、特に1%以上である。
は、分相性を高める成分であるが、Pの含有量が多くなると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、Pの好適な上限範囲は20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、4%以下、3%以下、特に2.5%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.2%以上、特に1.4%以上である。
La、Nb及びGdは、屈折率を高める成分であるが、これらの含有量が多くなると、密度が高くなり易く、また耐失透性や耐酸性が低下し易くなる。更に原料コストが上昇して、ガラス板の製造コストが高騰し易くなる。よって、La、Nb及びGdの好適な上限範囲は、それぞれ10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
レアメタル酸化物は、屈折率を高める成分であるが、これらの成分の含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり易く、また耐失透性が低下して、高い液相粘度を確保し難くなる。更に原料コストが上昇して、ガラス板の製造コストが高騰し易くなる。よって、レアメタル酸化物の好適な上限範囲は10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。なお、本発明でいう「レアメタル酸化物」は、La、Nd、Gd、CeO等の希土類酸化物、Y、Nb、Taを指す。
清澄剤として、下記酸化物換算で、As、Sb、SnO、Fe、F、Cl、SO、CeOの群から選択された一種又は二種以上を0〜1%導入することができる。特に、清澄剤として、SnO、Fe及びCeOが好ましい。一方、AsとSbは、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、各々の含有量は0.3%未満、0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。ここで、「下記酸化物換算」は、表記の酸化物とは価数が異なる酸化物であっても、表記の酸化物に換算した上で取り扱うことを意味する。
SnOの含有量は、好ましくは0〜1%、0.001〜1%、特に0.01〜0.5%である。
Feの含有量は、好ましくは0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、特に0.001〜0.02%である。
CeOの含有量は0〜6%が好ましい。CeOの含有量が多くなると、耐失透性が低下し易くなる。よって、CeOの好適な上限範囲は5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、特に0.1%以下である。一方、CeOを導入する場合、CeOの好適な下限範囲は0.001%以上、特に0.01%以上である。
PbOは、高温粘性を低下させる成分であるが、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましい。PbOの含有量は0.5%以下、特に0.1%未満が好ましい。
上記成分以外にも、他の成分を合量で好ましくは10%(望ましくは5%、より望ましくは2%)まで導入してもよい。
本発明の分相ガラス板は、以下の特性を有することが好ましい。
歪点は、好ましくは450℃以上、500℃以上、550℃以上、特に600℃以上である。透明導電膜を高温で形成する程、透明性が高く、電気抵抗が低くなり易い。しかし、従来のガラス板は、耐熱性が不十分であるため、透明導電膜を高温で成膜することが困難であった。そこで、歪点を上記範囲とすれば、耐熱性が向上するため、透明導電膜の透明性と低電気抵抗の両立が可能になり、更には有機デバイスの製造工程において、熱処理によりガラス板が熱収縮し難くなる。
高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1450℃以下、1400℃以下、1380℃以下、特に1360℃以下である。このようにすれば、溶融性が向上するため、ガラス板の生産性が向上する。
液相粘度は、好ましくは103.0dPa・s以上、103.2dPa・s以上、103.4dPa・s以上、103.6dPa・s以上、103.8dPa・s以上、特に104.0dPa・s以上である。液相温度は、好ましくは1200℃以下、1150℃以下、1100℃以下、特に1060℃以下である。液相粘度が低過ぎたり、液相温度が高過ぎると、成形時にガラスが失透し易くなり、例えば、オーバーフローダウンドロー法、フロート法等によりガラス板を成形し難くなる。ここで「液相粘度」は、30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶の析出する温度を測定した値を指す。「液相温度」は、液相粘度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
分相温度は、好ましくは700℃以上、800℃以上、850℃以上、900℃以上、950℃以上、1000℃以上、特に1100℃以上である。また、分相粘度は、好ましくは109.0dPa・s以下、108.0dPa・s以下、107.0dPa・s以下、特に103.5〜106.0dPa・sである。このようにすれば、ガラスが分相し易くなり、オーバーフローダウンドロー法、フロート法等により分相構造を有するガラス板を成形し易くなる。ここで、「分相温度」は、ガラス片を白金ボートに入れ、1400℃でリメルトした後、白金ボートを温度勾配炉に移し、温度勾配炉中で30分間保持した時に、明確な白濁が認められる温度を指す。「分相粘度」は、分相温度におけるガラスの粘度を白金引き上げ法で測定した値を指す。なお、本発明の分相ガラス板は、別途の熱処理工程により分相粒子の平均数密度が制御されていることが好ましいが、成形工程及び/又は徐冷工程で分相粒子の平均数密度を制御してもよく、これらの工程以外、例えば溶融工程で分相粒子の平均数密度を制御してもよい。なお、分相構造は、ガラス組成、成形条件、徐冷条件、熱処理条件等により制御することができる。
本発明の分相ガラス板は、少なくとも一方の表面に未研磨面を有すること(特に、少なくとも一方の表面の有効面全体が未研磨面であること)が好ましい。ガラスの理論強度は、非常に高いが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラス板の表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。よって、ガラス板の表面を未研磨にすれば、本来の機械的強度を損ない難くなるため、ガラス板が破壊し難くなる。また、研磨工程を簡略化又は省略し得るため、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。
少なくとも一方の表面(特に未研磨面)の表面粗さRaは0.01〜1μmが好ましい。表面粗さRaが大きいと、その表面に透明導電膜等を形成する場合、透明導電膜の品位が低下して、均一な発光を得難くなる。表面粗さRaの好適な上限範囲は1μm以下、0.8μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下、0.1μm以下、0.07μm以下、0.05μm以下、0.03μm以下、特に10nm以下である。
本発明の分相ガラス板は、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を製造することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面になるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。なお、オーバーフローダウンドロー法以外にも、スロットダウンドロー法を採用することができる。このようにすれば、薄肉のガラス板を作製し易くなる。
上記成形方法以外にも、例えば、リドロー法、フロート法、ロールアウト法等を採用することができる。特に、フロート法では、大型のガラス板を効率良く成形することができる。
本発明の分相ガラス板は、少なくとも一方の表面を粗面化面としてもよい。粗面化面を有機EL照明等の空気と接する側に配置すれば、ガラス板の散乱効果に加えて、粗面化面の無反射構造により、有機EL層から放射した光が有機EL層内に戻り難くなり、結果として、光の取り出し効率を高めることができる。粗面化面の表面粗さRaは、好ましくは10Å以上、20Å以上、30Å以上、特に50Å以上である。粗面化面は、フッ酸によるエッチング、サンドブラスト等で形成することができる。また、リプレス等の熱加工により、ガラス板の表面に粗面化面(凹凸面)を形成してもよい。このようにすれば、ガラス表面に正確な無反射構造を形成することができる。凹凸面の形状は、屈折率ndを考慮しながら、その間隔と深さを調整すればよい。
また、大気圧プラズマプロセスにより粗面化面を形成することもできる。このようにすれば、ガラス板の一方の表面の平滑な表面状態を維持した上で、他方の表面に対して、均一に粗面化処理を行うことができる。また、大気圧プラズマプロセスのソースとして、Fを含有するガス(例えば、SF、CF)を用いることが好ましい。このようにすれば、フッ酸系ガスを含むプラズマが発生するため、粗面化面を効率良く形成することができる。
更に、ガラス板の成形時に、少なくとも一方の表面に粗面化面(凹凸面)を形成することもできる。このようにすれば、別途独立した粗面化処理が不要になり、粗面化処理の効率が向上する。
なお、ガラス板に粗面化面を形成せずに、所定の凹凸形状を有する樹脂フィルムをガラス板の表面に貼り付けてもよい。なお、凹凸形状の表面粗さRaは、好ましくは10Å以上、20Å以上、30Å以上、特に50Å以上である。
本発明の分相ガラス板は、切断加工後に、熱処理されてなることが好ましい。熱処理温度は、好ましくは800〜1100℃、特に900〜1000℃である。また熱処理時間は、好ましくは1〜30時間、特に2〜15時間である。このようにすれば、分相粒子の平均数密度と平均粒子径を適正な範囲に制御し易くなる。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1は、試料No.1〜5を示している。
まず、表1に記載のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、得られたガラスバッチをガラス溶融炉に供給して1400℃で7時間溶融した。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板の上に流し出し、平板形状に成形した後、歪点から室温までの温度域を10時間かけて降温することにより徐冷処理を行った。最後に、得られたガラス板について、必要に応じて加工を行い、種々の特性を評価した。
密度は、アルキメデス法で測定した値を指す。
熱膨張係数は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値である。
歪点Psは、ASTM C336−71に記載の方法で測定した値である。なお、歪点が高い程、耐熱性が高くなる。
徐冷点Ta、軟化点Tsは ASTM C338−93に記載の方法で測定した値である。
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・s及び102.0dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。なお、高温粘度が低い程、溶融性に優れる。
液相温度は、30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶の析出する温度を測定したものである。液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法により測定した値である。
分相温度は、ガラス片を白金ボートに入れ、1400℃でリメルトした後、白金ボートを温度勾配炉に移し、温度勾配炉中で30分間保持した時に、明確な白濁が認められる温度を測定したものである。分相粘度は、分相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法により測定した値である。
屈折率ndは、島津製作所社製の屈折率測定器KPR−2000により測定したd線の値である。具体的には、まず25mm×25mm×約3mmの直方体試料を作製し、(徐冷点Ta+30℃)から(歪点Ps−50℃)までの温度域を0.1℃/分の冷却速度で徐冷処理した後、屈折率ndが整合する浸液を浸透させて測定した値である。
実施例1の欄に記載の分相ガラス板(試料No.1〜5)について、表2に記載の板厚に加工し、表2に記載の熱処理温度及び熱処理時間にて熱処理を施した。次に、分相ガラス板を2体積%のフッ酸溶液により2分間浸漬した後、そのエッチングされた表面を電界放射型走査型電子顕微鏡により観察し、その観察画面から1μm当たりの分相粒子の平均数密度を計測した。併せて、その観察画面内の分相粒子が円形であると仮定した場合の粒子径を画像解析ソフト(三谷商事株式会社製WinROOF)の分離図形編集機能により測定した後、そのような測定を同じ観察画面内の10個以上の分相粒子に対して行った上で、その平均値を算出することで分相粒子の平均粒子径を評価した。
表2に記載の熱処理後の分相ガラス板について発光強度比を評価した。まず、分相ガラス板の表面上に、マスクを用いて透明電極層としてITO(厚み100nm)を蒸着させた。続いて、ITO上に、正孔注入層として高分子PEDOT−PSS(厚み40nm)、正孔輸送層としてα−NPD(厚み50nm)、有機発光層としてIr(ppy)を6質量%ドープしたCBP(厚み30nm)、正孔阻止層としてBAlq(厚み10nm)、電子輸送層としてAlq(厚み30nm)、電子注入層としてLiF(厚み0.8nm)、対向電極としてAl(厚み150nm)を形成した後、内部を封止して、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子の発光面に積分球を配置し、波長520nmにおける発光強度(カウント値)を測定した。比較例として、日本電気硝子社製「ОA−10G」(板厚0.7mm)を組み込んで有機EL素子を作製した場合についても同様にして発光強度を測定した。最後に、各試料について、ОA−10Gに対する発光強度比を評価した。
表2から分かるように、試料No.1〜5の各種板厚試料は、適正な分相構造を有し、且つ板厚が小さいため、ОA−10Gよりも高い発光強度比を示した。

Claims (9)

  1. 少なくとも第一の相と第二の相を有する分相ガラス板において、
    板厚が0.05〜0.6mmであることを特徴とする分相ガラス板。
  2. 分相粒子の平均粒子径が30〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の分相ガラス板。
  3. 屈折率ndが1.51以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の分相ガラス板。
  4. ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜75%、Al 0〜35%、B 0.1〜50%を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の分相ガラス板。
  5. ガラス組成中のSiO、Al及びBの合量が50〜80質量%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の分相ガラス板。
  6. ガラス組成中のLiO、NaO及びKOの合量が5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の分相ガラス板。
  7. 内部に成形合流面を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の分相ガラス板。
  8. 有機EL照明に用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の分相ガラス板。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の分相ガラス板を備えてなることを特徴とする有機ELデバイス。
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