上述した一般的なレンチ工具は、四角柱状または六角柱状のレンチ軸部を備えたものでることから、該レンチ軸部を、グレーチング蓋の隣合うメインバー間の隙間に挿通した状態で回動させるためには、該レンチ軸部の対角間の間隔が該メインバー間の間隔よりも短くなければならない。しかし、上記細目タイプのグレーチング蓋では、所望の締付強度を有する四角穴付きボルトや六角穴付きボルトを使用すると、該ボルトの対角間の間隔がメインバーの間隔よりも長い場合があり、この場合には、レンチ工具のレンチ軸部を該メインバーの隙間から挿通して、該メインバーの下方に配した四角穴付きボルトや六角穴付きボルトを螺回操作することができない。そのため、例えば、前記締付強度の四角穴付きボルトや六角穴付きボルトに使用するレンチ工具に応じて、グレーチング蓋の隣合うメインバーの間隔が設定されていた。ところが、こうしてメインバーの間隔が定められると、該メインバーの間隔がレンチ軸部の対角間の間隔よりも狭いグレーチング蓋を使用できないことから、使用できるグレーチング蓋に制限が生じていた。特に、隣合うメインバーの間隔が6mm以下という極細目タイプのグレーチング蓋は、前記締付強度の四角穴付きボルトや六角穴付きボルトに適したレンチ工具を使用できないことから、該極細目タイプのグレーチング蓋が求められる場合であっても、これよりもメインバーの間隔の広いグレーチング蓋を使用しなければならないという問題があった。
一方、上述したようにレンチ軸部の対角間の間隔よりもメインバーの間隔が狭い構成のグレーチング蓋では、四角穴付きボルトや六角穴付きボルトの直上に位置するメインバーの一部を切り取った構成とすることで、該レンチ軸部を備えたレンチ工具を使用可能である。しかし、この構成では、メインバーの一部を切り取った部位の強度低下や剛性低下が懸念されると共に、当該部位に車椅子のタイヤや杖の先端が嵌り込んでしまう虞もある。
こうしたことから、隣合うメインバーの間隔がレンチ軸部の対角の間隔よりも狭いグレーチング蓋にあっても、該メインバーの一部を切り取る構造とすること無く、該メインバーの下方に配した四角穴付きボルトまたは六角穴付きボルトを螺回操作できるレンチ工具が求められていた。本発明は、かかるレンチ工具を提案するものである。
本発明は、溝路の上部に配設された蓋受枠に、所定間隔で並列した複数のメインバーを備えたグレーチング蓋が固定されてなる溝路用通水被覆装置の、施工作業または保全作業に用いられるものであって、該メインバーの下方で上下に並ぶ一対の連結部を連結させる、四角形状または六角形状の多角形穴を有する多角形穴付きボルトを、螺回操作するためのレンチ工具において、長尺杆状のレンチ軸部と、該レンチ軸部の基端部に連結された操作部とから構成されてなるものであって、前記レンチ軸部は、前記多角形穴付きボルトの多角形穴に係脱可能に嵌入される、該多角形穴と同じ多角形の角柱状の係合角形部と、該係合角形部の後端に連成され、該係合角形部の対面間の間隔以下の外径からなり且つ前記メインバーの上下方向幅よりも長い円柱状の挿通杆部とを備え、前記挿通杆部の外径と係合角形部の対面間の間隔とが、前記グレーチング蓋の隣合うメインバーの間隔よりも短く、かつ、該係合角形部の対角間の間隔が、隣合うメインバーの間隔よりも長いことを特徴とするレンチ工具である。
ここで、レンチ工具は、四角穴付きボルトを螺回操作するためのものである場合、レンチ軸部の係合角形部が四角柱状であり、一方、六角穴付きボルトを螺回操作するためのものである場合、該係合角形部が六角柱状である。また、係合角形部は、全ての対面間の間隔が、隣合うメインバーの間隔よりも短く、かつ全ての対角間の間隔が、隣合うメインバーの間隔よりも長い。そして、挿通杆部の外径は、係合角形部の全ての対面間の間隔以下である。
かかる構成によれば、グレーチング蓋のメインバー間で回動不能な係合角形部が係合される多角形穴付きボルトであっても、該メインバー間に挿通杆部を挿通した状態とすることで、螺回操作することができる。すなわち、本発明のレンチ工具は、レンチ軸部の係合角形部を、そのいずれか一対の対面とメインバーの長手方向とを略平行な状態とすることで、グレーチング蓋の上方から該メインバー間の隙間に挿通できる。そして、係合角形部の全体をメインバーの下方に突出させて、レンチ軸部の挿通杆部を該メインバー間に挿通した状態で、該係合角形部を、該メインバーの下方に配した多角形穴付きボルトの多角形穴に嵌入する。この状態で、レンチ軸部は、挿通杆部がメインバー間に挿通され、且つ係合角形部が多角形穴付きボルトに係合されていることから、操作部を介して回動されることにより、該多角形穴付きボルトを螺回させることができる。このように本発明のレンチ工具によれば、対角の間隔がメインバーの間隔よりも長く且つ対面の間隔が該メインバーの間隔よりも短い係合角形部に係合される多角形穴付きボルトを、該メインバーの下方に配して、その螺合と螺合解除とを行い得る。換言すると、上述したメインバーの間隔が係合角形部の対角の間隔よりも短いグレーチング蓋を用いた場合であっても、本発明のレンチ工具を使用することで、所望の締付強度を有する多角形穴付きボルトを螺回操作することができる。さらに、上述したメインバーの間隔が6mm以下の極細目タイプのグレーチング蓋であっても、所望の締付強度の多角形穴付きボルトを本発明のレンチ工具により螺回操作することで、蓋受枠に適正かつ容易に固定でき且つ該固定解除できる。これにより、クライアントから求められている極細目タイプのグレーチング蓋を備えた溝路用通水被覆装置を、提供することもできる。
また、本発明のレンチ工具によれば、上述したように、グレーチング蓋のメインバー間を挿通させて多角形穴付きボルトの螺回操作を行えることから、従来のようにメインバーの一部分を切り取った構造のグレーチング蓋を使用する必要が無い。そのため、メインバーの一部分を切り取る構造により生ずる、該グレーチング蓋の強度低下や剛性低下という問題と、切り取った部分で杖の先端や車椅子のタイヤが嵌まり込むという問題とを、解決できる。
上述した本発明のレンチ工具にあって、レンチ軸部は、挿通杆部の後端に連成された、係合角形部と同じ角柱形状の角形残存部を備えている構成が提案される。ここで、同じ角柱形状とは、断面形状が同じ多角形であることを示す。すなわち、角形残存部は、係合角形部と同じ断面多角形の角柱状である。
かかる構成にあっては、挿通杆部の前後に同じ角柱形状の係合角形部と角形残存部とを備えたものであるから、角柱材を切削加工して挿通杆部を成形することにより、係合角形部と挿通杆部と角形残存部とを有するレンチ軸部を容易に成形できる。また、このように一本の角柱材から形成されるレンチ軸部は、係合角形部と挿通杆部と角形残存部とを同心状に正確に成形し易いことから、比較的長尺であっても、部分的に偏心して回動することが無く、螺回操作を容易かつ安定して行うことができる。
上述した本発明のレンチ工具にあって、レンチ軸部の係合角形部は、特定の一対の対面間の間隔が他の対面間の間隔よりも短いものである構成が提案される。ここで、特定の一対の対面間の間隔は、挿通杆部の外径以上であることから、該挿通杆部の外径は、当該特定の一対の対面間の間隔以下で且つ他の対面間の間隔よりも短くなっている。
かかる構成にあっては、他の対面間の間隔よりも短い間隔の特定の一対の対面を、メインバーの長手方向と略平行な状態として、当該係合角形部を該メインバー間の隙間に挿通させることにより、該係合角形部を一層スムーズに該メインバーの隙間に抜き差しできる。そのため、本構成によれば、メインバーの下方に配した多角形穴付きボルトを螺回操作する作業を、一層容易に実施できる。
本発明のレンチ工具によれば、上述したように、メインバーの間隔が係合角形部の対角の間隔よりも短いグレーチング蓋であっても、メインバーの下方に配した、所望の締付強度を有する多角形穴付きボルトを、容易に螺回操作することができる。これにより、従来よりもメインバーの間隔が狭いグレーチング蓋を使用可能となることから、クライアントから要求される極細目タイプのグレーチング蓋を備えた溝路用通水被覆装置を提供することができる。
本発明にかかる実施例を添付図面に従って説明する。先ず、本発明にかかるレンチ工具51,71を用いる対象である溝路用通水被覆装置11について、説明する。
溝路1は、断面略U字形に形成されたU字溝からなる複数の溝路部材2を、地盤の所定深さ位置に一列状に埋設して構築される。そして、図1,2に示すように、溝路1には、その上部開口を通水可能に覆う溝路用通水被覆装置11が配設される。
上記の溝路用通水被覆装置11は、溝路1を構成する左右の側壁4a,4bに固定された蓋受枠12と、該蓋受枠12に乗載されたグレーチング蓋13とを備えてなる。蓋受枠12は、左右の支持枠15a,15bと、両支持枠15a,15bを連結する複数の連結梁16とを備え、一方の支持枠15aが、側壁4aに乗載される水平片部21aと、該水平片部21aの外側端から垂直状に起立する垂直片部22aとから構成されており、該水平片部21aは、側壁4aの上面幅と略同じ幅となっている。また、他方の支持枠15bは、外側端部が側壁4bに乗載される幅広の水平片部21bと、該水平片部21bの内側端から垂直状に起立する垂直片部22bとから構成されており、該垂直片部22bが溝路1の上部に配置される。この他方の支持枠15bは、その垂直片部22bが、前記一方の支持枠15aの垂直片部22aと所定間隔をおいて対向配置され、溝路1の一方の側壁4a寄りに位置する。こうして配置された両垂直片部22a,22bの間に通水部9が形成され、該通水部9を除く溝路1の上部開口が、他方の支持枠15bの水平片部21bにより遮蔽されている。
こうした両支持枠15a,15bは、鉄鋼又はステンレス鋼からなる板状の金属材を素材として形成されており、その長さは、一列状をなす複数の溝路部材2の長手方向に相当する所定の長さとなっている。尚、支持枠15a,15bは、水平片部21a,21bと垂直片部22a,22bとを、一枚の金属板を断面L形に折り曲げ加工させて形成されたものでもよいし、二枚の金属板を溶接によって断面L形となるように接合されたものであってもよい。
左右の支持枠15a,15bは、該支持枠15a,15bの長手方向に所定間隔で配設された複数の連結梁16によって連結される。各連結梁16は、強度に優れた金属製の角パイプからなり、溝路1を構成する左右の側壁4a,4bの外側面5,5間の幅よりも若干長い所定長で形成されている。各連結梁16は、支持枠15a,15bの水平片部21a,21bの上面に当接して配設され、両支持枠15a,15bの垂直片部22a,22bに夫々開口形成された貫通孔(図示せず)を貫通した状態で、該水平片部21a,21bの上面または水平片部21a,21bと該貫通孔の孔縁とに溶接によって接合されている。尚、こうして左右の支持枠15a,15bを移動不能に連結した各連結梁16は、その左右両端部が、溝路1の側壁4a,4b上に、各支持枠15a,15bの水平片部21a,21bを介して乗載されている。
各連結梁16の両端部には、溶接により接合された固定杆17,17が、溝路1の側壁4a,4bの外側面5,5よりも若干外方で、該外側面5,5に沿って夫々下方に垂設されている。各固定杆17,17には、先端が溝路1の側壁4a,4bの外側面5,5に圧接可能な固定螺子18,18が夫々外側方から螺合されている。そして、これら固定螺子18,18を締付方向に螺回操作して、各固定螺子18,18の先端部を側壁4a,4bの外側面5,5に圧接させることにより、その緊締作用を介して、左右の支持枠15a,15bおよび連結梁16を溝路1の側壁4a,4bに固定する。
また、左右の支持枠15a,15bには、夫々の垂直片部22a,22b間に、長手方向に所定間隔をおいて複数の乗載梁26が配設されている。各乗載梁26は、金属製の角パイプからなり、両端部が、各垂直片部22a,22bに夫々開口形成された取付孔(図示せず)に嵌入された状態で、該取付孔の孔縁に溶接を介して接合されている。乗載梁26は、上記したグレーチング蓋13が乗載されるものであり、該グレーチング蓋13を乗載した状態で、該グレーチング蓋13の上面が支持枠15a,15bの垂直片部22a,22bの上端と略同じ高さ位置となるように、上下方向配設位置を定めて該垂直片部22a,22bに配設されている。さらに、こうした乗載梁26は、複数個で一個のグレーチング蓋13を支えるように、該グレーチング蓋13の長さよりも短い所定間隔で長手方向に配設されている。そして、乗載されたグレーチング蓋13の両端寄りに位置する二個の乗載梁26には、略水平方向に沿った連結板片27が溶接を介して、該乗載梁26の下面に接合されている。ここで、本実施例にあっては、二個の乗載梁26に配設された連結板片27が、夫々にグレーチング蓋の両端方へ向けて各乗載梁26から突出するように設けられている。そして、連結板片27には、乗載梁26から突出した部位に、螺子孔28(図3,6参照)が形成されている。
一方、上述したグレーチング蓋13は、図1〜3に示すように、上述した乗載梁26に乗載されて、対向する両垂直片部22a,22b間に形成された通水部9を被覆する。グレーチング蓋13は、鉄鋼又はステンレス鋼からなる金属材によりに形成されており、溝路1の長手方向に沿う複数のメインバー31と、該メインバー31に直交する適数本のクロスバー32と、該クロスバー32に沿って各メインバー31の両端部に配設されたサイドバー33とから構成され、複数のメインバー31が所定間隔wをおいて並列状に配設されている。ここで、本実施例のグレーチング蓋13は、極細目タイプのものであり、隣合うメインバー31の間隔wが6mmに設定されたものである。さらに、グレーチング蓋13には、乗載梁26に乗載された状態で、両端寄りの二個の乗載梁26に夫々接合された連結板片27の直上に位置するように、断面略U形状の連結枠片35が下方に突出するように設けられている。連結枠片35は、略水平方向に沿った板状の底面部35aと、該底面部35aの両端から夫々起立する側部35bとを備え、各側部35bの上端がメインバー31の下端に溶接を介して接合されている。そして、連結枠片35の底面部35aには、隣合うメインバー31の直下となる部位に、該メインバー31の長手方向に沿って長孔状の透孔36が開口形成されている(図6,9参照)。こうした連結枠片35は、その上下方向高さが、上記した乗載梁26と略同じ高さに設定されており、グレーチング蓋13を乗載梁26に乗載した状態で、該連結枠片35の底面部35aが連結板片27の直上に位置する。そして、この状態で、連結枠片35の透孔36が、連結板片27の螺子孔28に重なる。この透孔36と螺子孔28とが重なった状態で、六角穴付きボルト41を、上方から該透孔36を挿通させて螺子孔28に螺合させる。そして、六角穴付きボルト41を締付方向に螺回操作して螺子孔28と締結させることにより、連結枠片35と連結板片27とを連結させ、該連結を介して、グレーチング蓋13を蓋受枠12に連結して固定できる。ここで、連結枠片35の底面部35aとメインバー31との間には、六角穴付きボルト41を連結板片27に螺合させる際に上下移動可能な間隙が形成されており、該間隙内に六角穴付きボルト41の頭部42が収容される。
このようにグレーチング蓋13を、蓋受枠12の乗載梁26に乗載して、上下に並んだ該グレーチング蓋13の連結枠片35の底面部35aと該蓋受枠12の連結板片27とを、六角穴付きボルト41で締結することで、蓋受枠12にグレーチング蓋13を固定できる。また、この固定状態で、六角穴付きボルト41を締結解除することにより、グレーチング蓋13を、蓋受枠12から取り外すことも可能である。尚、本実施例にあって、蓋受枠12の連結板片27とグレーチング蓋13の連結枠片35とが、本発明にかかる一対の連結部に相当する。
以下に、本発明にかかる実施例1,2のレンチ工具51,71について,夫々説明する。
実施例1のレンチ工具51は、上記した六角穴付きボルト41を螺回操作するものであり、グレーチング蓋13を蓋受枠12に固定する作業や固定解除する作業に用いられる。ここで、操作対象の六角穴付きボルト41には、「JIS B 1176」に適合するものを用いており、上記した本実施例のグレーチング蓋13を蓋受枠12に固定するに必要な締付強度を発揮できるM8(ねじの呼び径)のものを使用している。この六角穴付きボルト41は、その頭部42の外径が約13mmであり、該頭部42に略正六角形状の六角穴45が上方開口されている。そして、この六角穴45は、その対角間の距離が約6.9mmで且つ対面間の距離が約6mmである。尚、上記した連結板片27の螺子孔28は、この六角穴付きボルト41の螺子部43と螺合する雌螺子が形成されたものであり、連結枠片35の透孔36は、該六角穴付きボルト41の螺子部43を挿通可能とし且つ頭部42を挿通不能とする孔径により形成されている。本実施例にあって、六角穴付きボルト41が、本発明にかかる多角形穴付きボルトに相当し、頭部42の六角穴45が、本発明にかかる多角形穴に相当する。
こうした本実施例の六角穴付きボルト41は、その頭部42の外径(約13mm)が、図3に示すように、グレーチング蓋13のメインバー31の間隔w(約6mm)よりも大きいことから、該メインバー31の隙間を通過させることができない。そのため、グレーチング蓋13を蓋受枠12の乗載梁26に乗載させる前に、六角穴付きボルト41は、その螺子部43が透孔36に挿通されて、その頭部42がメインバー31と連結枠片35の底面部35aとの間隙に収容される(図6参照)。そして、このグレーチング蓋13を蓋受枠12の乗載梁26に乗載した状態で、本実施例1のレンチ工具51を用いて、六角穴付きボルト41を螺回操作する(図6〜8参照)。
実施例1のレンチ工具51は、図4,5に示すように、長尺杆状のレンチ軸部52と、該レンチ軸部52の基端部に連結された操作部53とを備えた略T形状のものである。そして、レンチ軸部52は、先端部分の係合角形部55と、該係合角形部55の後端に連成された挿通杆部56と、該挿通杆部56の後端に連成された角形残存部57とから構成されている。角形残存部57の後端部がレンチ軸部52の基端部であり、該後端部に、比較的長尺な円柱状の操作部53の長手方向中央部が溶接を介して接合されている。尚、操作部53は、円柱状に限らず、レンチ軸部52と同様の六角柱状、または四角柱状などの多角柱状のものを適用することもできる。
係合角形部55は、六角柱状を成し、上記した六角穴付きボルト41の六角穴45に嵌入可能に設けられている。ここで、係合角形部55は、レンチ軸部52の軸線と直交する横断面が、六角穴付きボルト41の六角穴45と同じ六角形状であり、前記六角穴45にスムーズに抜き差しできるように、該六角穴45よりも僅かに小さい寸法(下限許容寸法)で形成されている。本実施例1では、係合角形部55の横断面が正六角形状であり、該横断面における対角間の間隔tが全て同じで且つ対面62,62間の間隔sも全て同じである。そして、本実施例1にあって、係合角形部55は、前記対角間の間隔tが6.9mmよりも僅かに短く(t=6.85mm)、且つ対面62,62間の間隔sが6mmよりも僅かに短い(s=5.95mm)。こうした形状寸法の係合角形部55は、対角間の間隔tが、グレーチング蓋13のメインバー31の間隔wよりも長く、且つ対面62,62間の間隔sが、該メインバー31の間隔wよりも短い。これにより、係合角形部55は、いずれか一対の対面62,62をメインバー31の長手方向と略平行にした状態で、隣合うメインバー31の隙間を挿通可能であると共に、該隙間内で回転不能である(図7,9参照)。また、係合角形部55は、メインバー31の下方で六角穴付きボルト41の六角穴45に嵌入された状態で、該メインバー31と連結枠片35の底面部35aとの間隙内に収まるように、該メインバー31と連結枠片35の底面部35aとの間隔よりも短い所定長さ寸法に設定されている。これにより、係合角形部55は、グレーチング蓋13の上方からメインバー31間に挿入させて下方に突出させることで、該メインバー31と連結枠片35の底面部35aとの間隙内に進入させ得る。
また、挿通杆部56は、円柱状をなし、その外径rが、上記係合角形部55の対面62,62間の間隔s以下の所定径寸法に設定されている。具体的には、挿通杆部56の外径rは、対面62,62間の間隔sよりも僅かに短い寸法(r=5.9mm)としている。さらに、挿通杆部56の長さ寸法が、メインバー31の上下方向幅よりも長い所定長さ寸法に設定されている(図8参照)。そのため、レンチ軸部52は、図8,10ように、係合角形部55をメインバー31の下方に位置させ且つ角形残存部57を該メインバー31の上方に位置させた、挿通杆部56を隣合うメインバー31の隙間に挿通させた状態で、回転可能となっている。
また、角形残存部57は、図4,5に示すように、上記した係合角形部55と同じ断面六角形(横断面の寸法形状が同じ六角形)からなる六角柱をなすものである。そのため、角形残存部57にあっても、係合角形部55と同様に、一対の対面(図示せず)をメインバー31の長手方向と略平行な状態とすることで、隣合うメインバー31の隙間を挿通可能であり、該隙間内で回転不能である。そして、角形残存部57は、一対の対面をメインバー31の長手方向と非平行な状態で、隣合うメインバー31の隙間に挿通不能である。
上記の係合角形部55、挿通杆部56、および角形残存部57は、レンチ軸部52の軸中心線を中心とする同心状に形成されている。これにより、レンチ軸部52では、軸中心線を中心として、係合角形部55と挿通杆部56と角形残存部57とが周方向に回転でき、回転中に各部が偏心しない。
こうしたレンチ軸部52は、鉄鋼又はステンレス鋼からなる六角柱状の金属製棒材を加工することで成形できる。すなわち、係合角形部55(および角形残存部57)の六角柱と同じ寸法形状に成形した金属製棒材を、所定の長さ寸法に切断する。そして、その一端から該係合角形部55の長さ寸法をおいて、他端側へ切削加工することにより、円柱状の挿通杆部56を形成する。ここで、切削加工する長さ寸法により、所定長さの挿通杆部56が形成されると共に、該挿通杆部56の他端側部分が、切削加工されずに残り、角形残存部57となる。このように、レンチ軸部52は、一本の金属製棒材の一部分を切削加工して成形できることから、比較的容易に成形することができると共に、係合角形部55と挿通杆部56と角形残存部57とを同心状に正確に成形できる。この切削加工による製造方法では、例えば、各部位(係合角形部55、挿通杆部56、角形残存部57)を夫々別々に成形した後に溶接する製造方法に比して、該溶接工程を必要とせず、さらに、各部位の中心を合わせる工程も必要としない。そのため、切削加工による製造方法は、溶接による製造方法に比して、成形工程が少なく、成形に要するコストと時間を削減できる。
次に、上述した本実施例1のレンチ工具51の使用態様について説明する。
例えば、上述した溝路用通水被覆装置11を溝路1に配設する施工作業では、溝路1の側壁4a,4bに左右の支持枠15a,15bを夫々配設した後に、該支持枠15a,15bで形成される通水部9を覆うにようにグレーチング蓋13を配設する。グレーチング蓋13の配設作業にあって、該グレーチング蓋13は、図6,9に示すように、各連結枠片35の透孔36に六角穴付きボルト41を挿通させた状態で、支持枠15a,15bの乗載梁26に乗載される。この際に、連結枠片35を、乗載梁26に接合された連結板片27の直上に位置させることで、該連結枠片35の透孔36と連結板片27の螺子孔28とを上下方向に重ねる。
このようにグレーチング蓋13を乗載した状態で、レンチ工具51を用いて、六角穴付きボルト41を連結板片27の螺子孔28に螺合させる。すなわち、レンチ軸部52の係合角形部55を、図6,9に示すように、いずれか一対の対面62,62(図5参照)がグレーチング蓋13のメインバー31の長手方向と略平行となる状態として、該グレーチング蓋13の上方から隣合うメインバー31の隙間に挿通させる。そして、係合角形部55を、図7に示すように、メインバー31の下方に突出させて、六角穴付きボルト41の六角穴45に嵌入して係合させると共に、当該レンチ工具51の挿通杆部56を隣合うメインバー31間に挿通した状態で保つ。この状態で、作業者がレンチ工具51を回動操作することにより、六角穴付きボルト41を、乗載梁26の連結板片27に形成された螺子孔28に螺合させる。そして、六角穴付きボルト41と連結板片27とを締め付けることで、図8,10に示すように、該連結板片27と連結枠片35とを連結させ、当該連結を介して、グレーチング蓋13を蓋受枠12に固定できる。尚、六角穴付きボルト41を締め付けた後には、挿入時と同様に、係合角形部55の一対の対面62,62をメインバー31の長手方向と略平行とした状態として、レンチ軸部52をメインバー31の隙間から取り出す。
また、溝路用通水被覆装置11の施工後にメンテナンスや改修などの保全作業をする際にあって、グレーチング蓋13を蓋受枠12から取り外すときにも、上述と同様に、レンチ工具51のレンチ軸部52をメインバー31間に挿通させて六角穴付きボルト41を螺回操作することで、該六角穴付きボルト41と乗載梁26の連結板片27とを螺合解除できる。さらに、その後に再びグレーチング蓋13を取り付ける際には、上述した施工時と同様に、レンチ工具51により作業できる。
このように本実施例1のレンチ工具51によれば、所望の締付強度を有する六角穴付きボルト41を、極細目タイプのグレーチング蓋13の固定に用いた溝路用通水被覆装置11にあっても、メインバー31間の隙間を介して該六角穴付きボルト41を螺回操作して、該グレーチング蓋13を蓋受枠12に固定および固定解除することができる。すなわち、レンチ工具51は、メインバー31の間隔wが係合角形部55の対角の間隔tよりも短いグレーチング蓋13であっても、該メインバー31の下方に配した六角穴付きボルト41を螺回操作することができる。これにより、メインバー31の間隔wが6mm以下の極細目タイプのグレーチング蓋13であっても、該グレーチング蓋13に適した締付強度の六角穴付きボルト41を用いて固定することが可能である。したがって、本実施例1のレンチ工具51を用いる場合には、クライアントから要求される極細目タイプのグレーチング蓋を備えた溝路用通水被覆装置を、提供することができる。尚ここで、レンチ工具51は、メインバー31間の隙間に挿通されて螺回操作できるものであるから、上述した従来構成のようにメインバーの一部分を切り取った構造のグレーチング蓋を要せず、該従来のグレーチング蓋で発生する問題(強度や剛性の低下、および杖の先端などが挟まること等)も無い。
また、レンチ工具51は、六角穴付きボルト41の六角穴45に係合される係合角形部55が、該メインバー31の隙間内で回転不能であり、挿通杆部56を該メインバー31の隙間に挿通させた状態でのみ、該六角穴付きボルト41を螺回操作できるものである。そのため、本実施例1のレンチ工具51によりグレーチング蓋13を固定した状態の六角穴付きボルト41は、一般的に市販されている六角柱状の六角レンチ(挿通杆部56を備えないもの)では螺回操作することができない。これにより、グレーチング蓋13の盗難を防止する効果やいたずらを防止する効果を向上できるという優れた利点もある。
また、本実施例1のレンチ工具51は、上述したように、鉄鋼又はステンレス鋼からなる六角柱状の金属製棒材を切削加工することにより、レンチ軸部52を成形できる。こうした切削加工による製造方法によれば、レンチ軸部52を容易に成形することができると共に、係合角形部55と挿通杆部56と角形残存部57とを同心状に正確に成形し易いことから、比較的長尺であっても、部分的に偏心して回動することが無く、螺回操作を容易かつ安定して行い得るレンチ軸部52を成形できる。
実施例2のレンチ工具71は、上述した実施例1と同様、略T形状をなすものであり、グレーチング蓋13を蓋受枠12に固定する六角穴付きボルト41を螺回操作するものである。このレンチ工具71にあって、レンチ軸部72の係合角形部75は、図11,12に示すように、一対の対面82a,82a間の間隔s1が、他の対面82b,82b間の間隔s2に比して僅かに短く、かつ挿通杆部56の外径rと同じ寸法となっている。ここで、一対の対面82a,82aが、本発明にかかる特定の一対の対面に相当する。尚、本実施例2は、係合角形部75の一対の対面82a,82aが異なる以外は上述した実施例1と同じであり、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を適宜省略した。
本実施例2の係合角形部75は、横断面が正六角形の六角柱の一対の対面を、切削加工することにより成形することが可能である。こうして成形された係合角形部75は、一対の対面82a,82a間の間隔s1が、挿通杆部56の外径rと同じ5.9mmであり、他の対面82b,82b間の間隔s2が5.95mmである。尚、本実施例2の係合角形部75は、厳密に言えば、横断面が正六角形でないが、前記間隔s1と間隔s2との差が極僅かであることから、略正六角形と言える。
こうした本実施例2のレンチ工具71は、図13に示すように、一対の対面82a,82a間をメインバー31の長手方向と略平行にした状態で、隣合うメインバー31の隙間に一層容易に挿通され得る。これは、当該一対の対面82a,82a間の間隔s1をメインバー31の長手方向と略平行にした状態では、隣合うメインバー31の隙間とのクリアランスが、他の対面82b,82bを該長手方向と略平行とした場合に比して広くなるためである。
本実施例2のレンチ工具71にあっても、上述した実施例1の構成と同様の作用効果を奏し得る。さらに、一対の対面82a,82a間をメインバー31の長手方向と略平行にした状態で隣合うメインバー31の隙間に挿通させることにより、レンチ軸部72の係合角形部75を該隙間に一層容易に挿通させ得ることから、該係合角形部75を該隙間に抜き挿し易くなり、六角穴付きボルト41を螺回操作する作業性が一層向上する。
本発明にあっては、上述した実施例1,2に限定されるものではなく、これら実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
例えば、上述した実施例1,2のレンチ工具51,71は、六角穴付きボルト41を螺回操作するものであるが、四角穴付きボルトを螺回操作するレンチ工具であっても良い。かかるレンチ工具は、四角穴付きボルトの四角穴と同じ四角形の四角柱状の係合角形部と、該係合角形部の対面間の間隔以下の外径からなる挿通杆部と、該係合角形部を同じ四角柱状の角形残存部とからなるレンチ軸部を備えたものである。係合角形部の対面間の間隔および対角間の間隔と、隣合うメインバーの間隔との関係は、上述した実施例1,2と同様に設定できる。こうしたレンチ工具によれば、上述した実施例の六角穴付きボルト41に代えて四角穴付きボルトを使用した溝路用通水被覆装置にあって、該実施例1,2と同様に該四角穴付きボルトを螺回操作できることから、該実施例1,2と同様の作用効果を奏し得る。
また、上述した実施例1,2のレンチ工具51,71は、レンチ軸部52の基端部に円柱状の操作部53の長手方向中央部が溶接されてなる略T形状のものであるが、これに限らず、様々な形態のものを適用できる。例えば、レンチ軸部52の基端部に円柱状の操作部53の一端部が溶接されてなる略L形状のものであっても良い。または、操作部が、杆状でなく、他の形状(例えば、略円環状等のハンドル形状)のものであっても良い。
また、上述した実施例1,2では、レンチ軸部52が角形残存部57を備えた構成であるが、その他の構成として、レンチ軸部が係合角形部と挿通杆部とからなる構成としても良い。