JP2018027040A - ロールベールの成形・保管方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少なく、且つ、ロールベールの円筒形状の変形が少なく、牧草などの飼料材料の歩留まりのよいロールベールの成形・保管方法を提供する。
【解決手段】刈取り又は所定長さに切断した飼料材料を円筒状に圧縮する圧縮工程と、圧縮工程後の円筒状飼料材料をラップネットで包み込んでロールベールを成形する成形工程と、成形工程後のロールベールを運搬・保管する保管工程とを有し、ラップネットは、セルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地であって、当該ラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内であり、且つ、緯方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内である。このラップネットを円筒状飼料材料の外周面に2周以上重ね巻きすることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、畜産業で乾牧草を飼料として使用し、或いはこれを乳酸発酵させてサイレージ飼料として利用するためのロールベールの成形・保管方法に関するものである。
従来から、畜産業においては、夏から秋にかけて収穫した干草や藁などの牧草を乾燥させた乾牧草や、これらの牧草を乳酸発酵させたサイレージを成形・保管して家畜の冬用飼料として活用している。干草や藁などを乾牧草として保管する際には、まず、乾燥した牧草をロールベーダー装置で円筒状に巻込んで圧縮する。次に、この円筒形状が崩れないように、ラップネットで包み込んでロールベールを成形し、運搬・保管する。
一方、干草や藁などの牧草をサイレージとして利用する際には、まず、水分が50〜60%になった牧草をロールベーダー装置で円筒状に巻込んで圧縮する。次に、この円筒形状が崩れないように、ラップネットで包み込んでロールベールを成形する。更に、このロールベールに対して、ラップネットの上からラップフィルムを用いて厳重に密封して運搬・保管する。この状態のロールベール内で牧草が乳酸発酵してサイレージとなる。この方法をロールベールラップサイロという。
このようにして保管した乾牧草やサイレージを飼料として使用する際には、ラップネット及びラップフィルムを除去し、攪拌機を用いて牧草やサイレージを食べやすい状態の飼料とする。
このように、ラップネットは、ロールベールの崩れを防止すると共に、通気性が高く牧草の乾燥にも最適な資材である。一方、ラップフィルムは、ロールベールの強度を向上させると共に、乾牧草での利用の際には空気や水分の浸入を防止し、サイレージでの利用の際にはロールベールを密封して乳酸発酵を促進する最適な資材である。このようなラップネットとラップフィルムを利用してロールベールを成形・保管する方法は、北海道をはじめ全国で普及している。
下記特許文献1或いは下記特許文献2などに示されるラッピングマシンは、ラップフィルムによるロールベールのラッピングを自動で効率良く行うための装置である。一方、ラップネットによるラッピングにおいては、ロールベーダー装置が使用される。
下記特許文献1或いは下記特許文献2などのラッピングマシンやロールベーダー装置で使用されるラップフィルムやラップネットには、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。また、ラップネットには、例えば、経済性などの点から、ポリエチレンフィルムを細長く裁断したスリットヤーンが使用されている。このスリットヤーンは、ラップネットの物性(特に強度)を維持するため延伸された高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムなどから形成されている。
実際の作業において、円筒状に圧縮した乾牧草にラップネットやラップフィルムをラッピングしてロールベールを成形する際には、ロールベーダー装置やラッピングマシンで大きな張力をかけてラッピングする。従って、ラップネット及びラップフィルムによりラッピングされたロールベールの外周には、大きな張力が掛かっており硬くしっかりと固定されている。
このように、運搬・保管・サイレージとして利用する際に有効なラップネットとラップフィルムによるラッピングであっても、その後にロールベールの乾牧草やサイレージを飼料として利用する際には、ラップネット及びラップフィルムを切断・除去して乾牧草やサイレージを解きほぐす作業を行う。その際に、ラップフィルムは、シート状であり取扱い易く除去作業は容易である。これに対して、ラップネットは、強度の強いスリットヤーンが大きな張力で何本も重なってロールベールに巻き付いており、除去作業が難しいという問題があった。
例えば、ラップフィルムを除去した後のロールベールからラップネットを切断除去する際には強い力が必要であり、作業者が誤って刃物により身体を傷つけるという事故が多発している。また、ラップネットの切り残しを乾牧草やサイレージの攪拌時に発見し、これを取り除こうとした作業者が機械に挟まれるという事故も発生している。
また、ラップネットの除去作業の難しさから、除去したラップネットの一部が家畜用飼料の中に混入するという問題があった。このように、家畜用飼料の中にラップネットの一部が混入すると、家畜が飼料と一緒に合成樹脂製のラップネットを食べてしまい、家畜が病気になり、或いは、死んでしまうという問題があった。
更に、除去したラップネット及びラップフィルムには、上述のように、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。従って、これらを産業廃棄物として処分しなければならず、畜産業者にとってその労力と処理コストが大きいという問題があった。
そこで、本発明者は、これまでに上記問題に対処して下記特許文献3に示すラップネットを提供した。このラップネットは、牧草を運搬・保管・サイレージとして利用する際に、ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少ないものである。具体的には、セルロース系繊維からなり、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜が消化することのできるラップネットである。
特開平6−70631号公報 特許第3801618号公報 特許第5892637号公報
そこで、本発明者は、その後もセルロース系繊維からなるラップネットを用いて更なる改良を重ねた結果、ラップネットの糸使いと目開きの関係を考慮することにより、当初考え得た効果に加え従来のポリエチレンフィルムのスリットヤーンからなるラップネット(以下「PEラップネット」という)の他の問題点を大幅に改善できる顕著な効果を見出した。
まず、従来のPEラップネットの問題点として、ロールベールの円筒形状の変形が挙げられる。PEラップネットは、延伸された高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムなどから形成されており、その強度は強くロールベールに硬く巻付いている。しかし、合成樹脂の粘弾性的挙動により、時間の経過により徐々に伸びが生じてくる。また、サイレージの場合にはロールベールの内部の乳酸発酵により炭酸ガス(CO)が発生して、ロールベールの内部の圧力が増大する。これらのことにより、ロールベールの筒径が膨らんでくる。特に、円筒の中央部の筒径が上下面(断面)付近の筒径よりも膨らんで円筒形状が変形する。これまでは、4〜5%の筒径の膨らみは仕方ないものとされていた。
また、通常のロールベールの保管は、保管面積を節約するためにロールベールの円筒軸を縦方向にして3段積み〜5段積み、場合によってはそれ以上の段積みで行われる。このようにして保管した場合に、ロールベールの円筒形状が変形してくると段積みが崩れるという問題があった。更に、下段のロールベールには上段のロールベールの重量が付加されて益々円筒形状が変形する。従って、長期間の保管においても円筒形状が変形することのないラップネットが求められていた。
また、従来のPEラップネットの別な問題点として、サイレージを作る場合に乳酸発酵する牧草の歩留まりが悪いことが挙げられる。これは、PEラップネットで成形されラップフィルムで被覆されたロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤することによる。この理由は定かではないが、極度に湿潤した牧草は乳酸発酵できず腐敗するなどして飼料として利用できなくなる。特に、北海道や東北の厳冬期においては、長期保管している間に極度に湿潤した牧草が凍ってしまい飼料として利用できなくなる。
更に、従来のPEラップネットの別な問題点として、近年のロールベールでは細かな飼料材料を使用することが挙げられる。例えば、家畜が消化しやすいように干草や藁などの牧草でも従来の切断長ではなく、より細かく細断することが多くなっている。また、牧草以外にトウモロコシの葉などを細断したり磨り潰したりした飼料材料を混合することが多くなっている。中には5mm程度の極細断飼料材料もある。これらの細断・極細断飼料材料でロールベールを成形すると、ラップネットの格子の目開きから飼料材料が脱落して歩留まりが悪くなる。
これは、PEラップネットに限ったものではなく、セルロース系繊維からなるラップネットでも生じる問題であるが、従来の格子の目開きをより細かくする必要がある。しかし、目開きを細かくすれば、PEラップネットの場合、上記のロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤する問題が更にひどくなる。
また、ラップネットの生産効率の低下や糸量増による価格上昇が問題となる。更に、糸量増によりラップネット自体の厚みや重量が増大すると、商品として流通するラップネット・ロール1巻の巻長(従来のPEラップネットは2000m/1巻)が短くなる。これは、従来のロールベーダー装置で使用できるラップネット・ロール1巻の直径に制限があるからであり、ラップネット・ロールの交換が頻繁となりロールベールの成形効率に問題が生じる。
また、理由は異なるが、上述の細断・極細断飼料材料や過乾燥の飼料材料を従来のPEラップネットでロールベールに成形する際には、ロールベール成形速度を落とさなければ良好なロールベールが成形できないという問題があった。
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、牧草を運搬・保管・サイレージとして利用する際に、ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少なく、且つ、ロールベールの円筒形状の変形が少なく、牧草などの飼料材料の歩留まりのよいロールベールの成形・保管方法を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者は、鋭意研究の結果、ラップネットを構成する素材、格子の目開き、巻き付け回数、使用する糸の太さなどの組み合わせを検討することにより、上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係るロールベールの成形・保管方法は、請求項1の記載によると、
刈取り又は所定長さに切断した飼料材料を円筒状に圧縮する圧縮工程と、
圧縮工程後の円筒状飼料材料をラップネットで包み込んでロールベールを成形する成形工程と、
成形工程後のロールベールを運搬・保管する保管工程とを有し、
前記成形工程において、
前記ラップネットは、セルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地であって、
当該ラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.9cm〜3.3cmの範囲内であり、且つ、
緯方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.2cm〜2.6cmの範囲内であって、
当該ラップネットを前記円筒状飼料材料の外周面に2周以上、好ましくは3周以上重ね巻きすることを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記成形工程と前記保管工程との間に、
前記ロールベールの外周面をラップフィルムで巻層して被覆する被覆工程を有し、
前記保管工程において、
前記密閉工程後のロールベールを乳酸発酵させてサイレージ化することを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を編成してなる経編物であって、
編地の長さ方向に並列した綿糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、
前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと綿糸からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、
経糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなり、且つ、
緯糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする。
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項3に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記緯糸は、編地の長さ方向に対して下方から上方に伸びて前記独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で当該独立鎖編に挿入され、
更に、上方に伸びて前記独立鎖編とこれに隣接する他の独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で当該他の独立鎖編に挿入されることにより、
前記独立鎖編とこれに隣接する他の独立鎖編とが連結して編地を編成することを特徴とする。
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる絡み織物であって、
経糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなり、且つ、
緯糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする。
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる亀甲網地であって、
糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする。
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法であって、
前記ラップネットは、少なくとも経糸が紙をスリットしたペーパースリットヤーンからなることを特徴とする。
上記請求項1の構成によれば、本発明に係るラップネットは、圧縮工程と成形工程と保管工程とを有している。圧縮工程は、刈取り又は所定長さに切断した飼料材料を円筒状に圧縮する。続く成形工程は、圧縮工程後の円筒状飼料材料をラップネットで包み込んでロールベールを成形する。続く保管工程は、成形工程後のロールベールを運搬・保管する。
ここで、成形工程において使用するラップネットは、セルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地である。このことにより、ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少ない。なお、理由は定かではないが、セルロース100%からなるラップネットを使用することにより、ロールベールの円筒形状が変形することがない。更に、これも理由は定かではないが、セルロース100%からなるラップネットを使用することにより、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤することがなく、また、凍ってしまい飼料として利用できなくなることもないので飼料材料の歩留まりが向上する。
また、上記請求項1の構成によれば、ラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.9cm〜3.3cmの範囲内であり、緯方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.2cm〜2.6cmの範囲内である。このことにより、ラップネットの格子の目開きから飼料材料が脱落することがなく歩留まりが向上する。
また、上記構成によれば、このような目開きのラップネットを円筒状飼料材料の外周面に2周以上、好ましくは3周以上重ね巻きする。このことにより、更に巻かれたラップネットの目開きが重なって格子間隔が狭まり、飼料材料が脱落することがなく歩留まりが向上する。更に、これも理由は定かではないが、上述の目開きと重ね巻を組み合わせることにより、ロールベールの円筒形状が変形することがなく、且つ、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤し凍ることもない。
よって、上記請求項1の構成によれば、牧草を運搬・保管・サイレージとして利用する際に、ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少なく、且つ、ロールベールの円筒形状の変形が少なく、牧草などの飼料材料の歩留まりのよいロールベールの成形・保管方法を提供することができる。
また、上記請求項2の構成によれば、成形工程と保管工程との間に、被覆工程を有している。被覆工程は、ロールベールの外周面をラップフィルムで巻層して被覆する。このことにより、保管工程においてロールベールを乳酸発酵させてサイレージ化する。よって、上記請求項2の構成においても、上記請求項1と同様の効果を発揮すると共に良好なサイレージを製造することができる。
また、上記請求項3の構成によれば、成形工程において使用するラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を編成してなる経編物からなる。経糸は、編地の長さ方向に伸びる複数の独立鎖編を形成する。一方、緯糸は、独立鎖編の各ループと他の独立鎖編の他のループとを連結して編地を形成する。ここで、この編地に使用する経糸は、5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなる。一方、この編地に使用する緯糸は、5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなる。
このように、使用する綿糸の番手を調整することで、ラップネットの格子の目開きを狭めた場合であっても、ラップネットの生産効率の低下や糸量増による価格上昇が抑えられる。また、生産されるラップネット・ロール1巻の巻長が短くなることもなく、従来のロールベーダー装置で使用した場合にラップネット・ロールの交換が頻繁となることもない。よって、上記請求項3の構成においても、上記請求項1又は2と同様の効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記請求項4の構成によれば、ラップネットの編成組織は、緯糸が編地の長さ方向に対して下方から上方に伸びて独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で独立鎖編に挿入される。更に、この緯糸が上方に伸びて隣接する他の独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で当該他の独立鎖編に挿入される。このことにより、独立鎖編とこれに隣接する他の独立鎖編とが連結して編地を編成する。よって、上記請求項4の構成においては、上記請求項3と同様の効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記請求項5の構成によれば、成形工程において使用するラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる絡み織物からなる。ここで、この絡み織物に使用する経糸は、5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなる。一方、この絡み織物に使用する緯糸は、5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなる。
このように、使用する綿糸の番手を調整することで、ラップネットの格子の目開きを狭めた場合であっても、ラップネットの生産効率の低下や糸量増による価格上昇が抑えられる。また、生産されるラップネット・ロール1巻の巻長が短くなることもなく、従来のロールベーダー装置で使用した場合にラップネット・ロールの交換が頻繁となることもない。よって、上記請求項5の構成においても、上記請求項1又は2と同様の効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記請求項6の構成によれば、成形工程において使用するラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる亀甲網地からなる。ここで、この亀甲網地に使用する糸は、5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなる。
このように、使用する綿糸の番手を調整することで、ラップネットの格子の目開きを狭めた場合であっても、ラップネットの生産効率の低下や糸量増による価格上昇が抑えられる。また、生産されるラップネット・ロール1巻の巻長が短くなることもなく、従来のロールベーダー装置で使用した場合にラップネット・ロールの交換が頻繁となることもない。よって、上記請求項6の構成においても、上記請求項1又は2と同様の効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記請求項7の構成によれば、成形工程において使用するラップネットは、少なくとも経糸が紙をスリットしたペーパースリットヤーンからなる。このように、セルロース100%からなる糸が綿糸ではなく、ペーパースリットヤーンからなる糸でラップネットを構成した場合であっても、上記請求項1又は2と同様の効果を発揮することができる。
本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの一実施形態を示す経編物の概略図である。 本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの他の実施形態を示す絡み織物(紗)の概略図である。 本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの他の実施形態を示す絡み織物(変形紗)の概略図である。 本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの他の実施形態を示す絡み織物(絽)の概略図である。 本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの他の実施形態を示す絡み織物(羅)の概略図である。 本発明に係るロールベールの成形・保管方法で使用するラップネットの他の実施形態を示す亀甲網地の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係るロールベールの成形・保管方法は、干草や藁などの乾牧草を飼料として利用する場合、及び、サイレージ(牧草などを乳酸発酵させて作る家畜飼料)を飼料として利用する場合に用いられる。ここで、ロールベールとは、保存用の家畜飼料(粗飼料)として刈り取った牧草などを圧縮して円筒状に巻込んで成形し、これをラップネット或いはラップフィルムなどで被覆したものをいう。日本のロールベールでは直径120cm〜155cm程度のものが多く、海外のロールベールでは直径155cm以上のものがある。直径120cmのロールベールでは、その重量が乾牧草(水分15%程度)で約350kg、サイレージ(水分50%程度)で約450kgにもなる。
本発明において、乾牧草を飼料とする場合には、ロールベールの成形・保管方法は、圧縮工程と成形工程と保管工程とから構成される場合と、圧縮工程と成形工程と被覆工程と保管工程とから構成される場合とに分かれる。一方、サイレージを飼料として利用する場合には、ロールベールの成形・保管方法は、主に圧縮工程と成形工程と被覆工程と保管工程とから構成される。
ここで、圧縮工程では、刈り取った牧草などの飼料材料を乾燥して水分15%程度の状態(乾牧草用)のもの、或いは、水分50〜60%程度の状態(サイレージ用)のものをロールベーラーという専用の装置を使い円筒状に圧縮する。次に、成形工程では、円筒状に圧縮された飼料材料を同じロールベーラー装置を使いラップネットで包み込んでロールベールを成形する。このように、圧縮工程と成形工程は、ロールベーラー装置で連続して行われる。本発明に使用するロールベーラー装置は、従来から使用されているものでよく、本発明においては現有の装置を使用することができる。
成形工程で使用する従来のPEラップネットは、上述のように延伸された高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムなどから形成されたスリットヤーンから編成されている。これに対して、本発明の成形工程においてはセルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地からなるラップネットを使用する。このラップネットの詳細については後述する。乾牧草を飼料として利用する場合には、このラップネットで包み込まれた状態のロールベールを運搬・保管するようにしてもよい。
上述のように、近年のロールベールでは従来よりも細かな飼料材料を圧縮してラップネットで包み込むことが多くなっている。例えば、干草や藁などの牧草でも従来の切断長より細かく細断することが多くなっている。また、牧草以外にトウモロコシの葉などを細断したり磨り潰したりした飼料材料を混合することが多くなっている。これらの飼料材料でロールベールを成形すると、ラップネットの格子の目開きから飼料材料が脱落して歩留まりが悪くなるという問題があった。本発明は、この点についてラップネットの格子の目開きを制御して対応するが、その点については後述する。
一方、被覆工程では、ラップネットで包み込んだロールベールの外周面を更にラップフィルムで巻層して被覆する。ロールベールをラップフィルムで被覆することにより、ロールベールの内部に空気が侵入することを制御すると共に、ロールベールの内部に雨風が侵入し或いは内部の水分が外部に放出することも制御することができる。乾牧草を飼料として利用する場合には、このラップフィルムで被覆されたロールベールを運搬・保管するようにしてもよい。一方、サイレージを飼料として利用する場合には、続く保管工程においてロールベールの内部で乳酸菌による発酵が進行し栄養価の高いサイレージとなる。
この被覆工程には、ラッピングマシンというという専用の装置を使用する。本発明に使用するラッピングマシンは、従来から使用されているものでよく、本発明においては現有の装置を使用することができる。また、使用するラップフィルムは、本発明においても従来から使用されているポリエチレンなどのフィルムを使用することができる。
保管工程では、成形工程後或いは被覆工程後のロールベールを運搬・保管する。ロールベールの運搬は、トラクターなどで行い被覆したラップフィルムを破損しないようにして行われる。また、保管では牧場にロールベールを放置して保管する場合もあるが、一般にはロールベールの円筒軸を縦方向にして3段積み〜5段積み、場合によってはそれ以上の段積みで保管される。このようにして保管した場合には、上述のようにロールベールの円筒形状が変形して段積みが崩れるという問題があった。更に、下段のロールベールには上段のロールベールの重量が付加されて益々円筒形状が変形する。本発明は、この点についてセルロース100%からなる編織物又は網地からなるラップネットを使用することで対応するものであるが、その点については後述する。
また、従来のPEラップネットで成形しポリエチレンのラップフィルムで被覆したロールベールの保管中において、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤して乳酸発酵できず腐敗して使用できなくなるという問題があった。また、北海道や東北の厳冬期においては、極度に湿潤した牧草が凍ってしまいその部分が利用できなくなるという問題があった。これらの問題により、従来のロールベールではサイレージ化の歩留まりが低くなる。本発明は、この点についてセルロース100%からなる編織物又は網地からなるラップネットを使用することで対応するものであるが、その点については後述する。
次に、本発明で使用するラップネットについて説明する。本発明において、ラップネットは、セルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地からなる。ここで、ラップネットを構成する素材はセルロース100%からなる糸である。セルロース100%からなる糸とは、綿、麻などの天然セルロースからなる糸、レーヨン、キュプラ、ポリノジックまたはテンセルなどの再生セルロースなどからなる糸、及び、紙を細くスリットしたペーパースリットヤーンなどが挙げられる。なお、麻としては、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)などが挙げられる。
このように、ラップネットを構成する素材がセルロース100%からなる糸であることにより、ロールベールからラップネットを除去する際にラップネットの一部が残渣となって乾牧草やサイレージに混入した場合にも、家畜への影響が少ない。即ち、ロールベールを家畜の飼料として利用する場合に、家畜が飼料と一緒にセルロース100%からなるラップネットの一部を食べてしまっても、干草や藁などと同様の成分であり、家畜の体内で消化され家畜への影響が出ることがない。よって、ロールベールからラップネットを除去せずに、ラップネット全体を乾牧草やサイレージと同時に粉砕して家畜の飼料に混合するようにしてもよい。
また、ラップネットを構成する素材がセルロース100%からなる糸であることにより、ロールベールから除去したラップネットは、そのまま土中に埋めて廃棄することができる。或いは、使用後のラップネットを焼却処分にする場合でも、従来の合成樹脂繊維に対して、カーボンニュートラルであり新たにCOを排出することにはならない。よって、使用後のラップネットを廃棄する際の労力と処理コスト、及び、環境への影響が低減できる。
また、理由は定かではないが、セルロース100%からなるからなる糸であることにより、保管中にロールベールの円筒形状が変形することがなく、ロールベールを3段積み〜5段積み、場合によってはそれ以上の段積みで保管した場合にも、ロールベールの円筒形状が変形して段積みが崩れるということがない。更に、これも理由は定かではないが、セルロース100%からなる糸であることにより、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤することがなく、また、凍ってしまい飼料として利用できなくなることもないので飼料材料の歩留まりが向上する。
また、糸が格子状に配列された編織物又は網地とは、格子の目開きのあるネット組織を有するものをいう。このような編織物又は網地としては、格子の目開きがあれば編組織、織組織、或いは網組織などを限定するものではないが、これらの中で、経編物、絡み織物、亀甲網地などを採用することが好ましい。
ここで、経編物とは、編地の長さ方向に並列した経糸群が編地の長さ方向に連続して編目(ループ)を形成する編み方であって、一般的に編地の長さ方向の強度が大きいことを特徴とする。経編物の編成組織としては、シングルデンビー、シングルコード、シングルアトラス、チェーンステッチ(鎖編み)などの基本組織を基にした各種編成組織がある。
本発明においては、経編物の中で、チェーンステッチを採用することがより好ましい(図1参照)。この編成組織は、セルロース100%からなる経糸でチェーンステッチ(鎖編み)を構成し、このチェーンステッチ(鎖編み)にセルロース100%からなる緯糸を挿入した編地とする。チェーンステッチ以外の編成組織においては、経糸で各チェーンステッチが連結しており、使用後のラップネットの除去作業において、連結部分が切れず除去作業が難しくなる場合が考えられる。但し、ラップネットを飼料と共に細かく粉砕して家畜に与える場合には、編成組織はどのようなものであってもよい。
また、経編機としては、ラッシェル編機、トリコット編機などがある。本発明においては、どのような編機を使用してもよいが、一般にラッシェル編機を使用することが生産性等の点で好ましい。
次に、絡み織物とは、地糸と捩り糸(もじりいと)の2本又は3本以上の複数の経糸が緯糸と絡み合った織物であって、紗(しゃ)、絽(ろ)、羅(ら)などがある。紗(しゃ)は、緯糸1本ごとに隣同士の2本の経糸を1組として絡ませている(図2及び図3参照)。絽(ろ)は、奇数(3本、5本、7本)段の平織又は綾織を組織したあと、隣同士の2本の経糸を絡めさせ繰り返している(図4参照)。羅(ら)は、3本以上の奇数の経糸が互いに絡んでいる(図5参照)。本発明においては、絡み織物の中で、紗(しゃ)を採用することがより好ましい(図2及び図3参照)。紗(しゃ)は、絡み織物の中でも織組織が単純で高速の自動織機で生産することができる。
次に、亀甲網地とは、隣同士の経糸が交互に絡み合って6角形の亀甲目をもつ網地であって、生産性に優れている(図6参照)。
次に、ラップネットの格子の目開きについて説明する。本発明においては、上述のように細かく細断した飼料材料の歩留まりを良好なものとするために、所定の目開きとすることが好ましい。具体的な目開きは、経方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.9cm〜3.3cmの範囲内、更に好ましくは2.0cm〜3.0cmの範囲内とする。また、緯方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.2cm〜2.6cmの範囲内、更に好ましくは1.5cm〜2.2cmの範囲内とする。
更に、本発明に係る被覆工程においては、ロールベールの円筒周に対するラップネットの重ね巻きの回数を2周以上、好ましくは3周以上、更に好ましくは2.5周から4周の範囲内とする。ラップネットをロールベールの円筒周に重ね巻きした場合には、ラップネットが重なって目開きが更に細かくなり、ロールベールから脱落する飼料材料が減少してロールベールの歩留まりが向上する。
また、目開きと重ね巻きの回数を上述のように組み合わせることにより、ラップネットによるロールベールの締め付け圧が適正なものとなり、ロールベールの形状が安定して円筒形状の変形が抑えられる。また、ロールベールを3段積み〜5段積み、場合によってはそれ以上の段積みで保管した場合にも、ロールベールの円筒形状が変形して段積みが崩れるということがない。更に、理由は定かではないが、目開きと重ね巻きの回数を上述のように組み合わせることにより、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤することがなく、また、凍ってしまい飼料として利用できなくなることもないので飼料材料の歩留まりが向上する。なお、これらの効果は、従来のPEラップネットでは認められなかった効果であり、セルロース100%からなるラップネットを使用することによる顕著な効果といえる。
次に、ラップネットに使用する糸の種類及び太さについて説明する。本発明において、ラップネットが経編物又は絡み織物の場合には、経糸及び緯糸ともに綿糸であることが好ましい。綿糸は、綿短繊維を紡績したものであり従来のPEラップネットに使用されるポリエチレンフィルムからなるスリットヤーンに比べ、粘弾性的挙動により時間の経過により徐々に伸びてくるということがない。更に、綿糸は親水性でありロールベールから水分を吸収して膨張し太くなり、ロールベールの締め付け圧が増大する。よって、PEラップネットに比べ、綿糸からなるラップネットでは、ロールベールの形状が安定して円筒形状の変形が抑えられ、段積みが崩れるということがない。
ここで、綿糸を使用した場合の経糸の太さは、5番手〜15番手、好ましくは7番手〜13番手の綿の単糸、10番手〜40番手、好ましくは15番手〜30番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜40番手、好ましくは15番手〜30番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることがよい。また、綿糸の撚り係数、追撚の有無、撚セットの有無などは、特に限定するものではないが、これらを調整することにより、より細い糸で強い強度と低コストを実現することができる。経糸がこのような太さであれば、上述の格子の目開きによるラップネットの経糸密度との関係から、ロールベールの締め付け圧が適正なものとなり強度が弱く切れる又は伸びるということがない。
また、経糸がこのような太さであれば、ロールベールの厚みと重量が大きくなり商品として流通するラップネット・ロール1巻の巻長(従来のPEラップネットは2000m/1巻)が短くなることがない。このことにより、本発明においても、従来のロールベーダー装置を使用することができ、生産ロールの交換が頻繁となりロールベールの成形効率が従来よりも下がるということがない。
一方、綿糸を使用した場合の緯糸の太さは、5番手〜20番手、好ましくは10番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手、好ましくは20番手〜40番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手、好ましくは20番手〜40番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることがよい。なお、単糸に替えて同程度の強度を有する双糸又は引き揃え糸を使用するようにしてもよい。また、綿糸の撚り係数、追撚の有無、撚セットの有無などは、特に限定するものではないが、これらを調整することにより、より細い糸で強い強度と低コストを実現することができる。緯糸がこのような太さであれば、経糸間の接続を安定して維持することができ、ロールベールの円筒形状を維持することができる。また、過度に太くならず、ロールベールからラップネットを除去する際に作業効率が良い。
また、緯糸がこのような太さであれば、ロールベールの厚みと重量が大きくなり商品として流通するラップネット・ロール1巻の巻長(従来のPEラップネットは2000m/1巻)が短くなることがない。このことにより、本発明においても、従来のロールベーダー装置を使用することができ、生産ロールの交換が頻繁となりロールベールの成形効率が従来よりも下がるということがない。
一方、ラップネットが亀甲網地の場合にも、糸(この場合には経糸のみ使用)が綿糸であることが好ましい。綿糸を使用する理由は上述の経編物又は絡み織物の場合と同じである。ここで、綿糸を使用した場合の糸の太さは、5番手〜15番手、好ましくは7番手〜13番手の綿の単糸、10番手〜40番手、好ましくは15番手〜30番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜40番手、好ましくは15番手〜30番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることがよい。糸がこのような太さであれば、上述の格子の目開きによるラップネットの経糸密度との関係から、ロールベールの締め付け圧が適正なものとなり強度が弱く切れる又は伸びるということがない。
また、経糸がこのような太さであれば、ロールベールの厚みと重量が大きくなり商品として流通するラップネット・ロール1巻の巻長(従来のPEラップネットは2000m/1巻)が短くなることがない。このことにより、本発明においても、従来のロールベーダー装置を使用することができ、生産ロールの交換が頻繁となりロールベールの成形効率が従来よりも下がるということがない。
次に、実施例により本発明に係るロールベールの成形・保管方法を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、ラップネットの組織として経編地(チェーンステッチ)について説明するものであるが、本発明は、この実施例にのみ限定されるものではない。
まず、本実施例で使用するラップネットを準備した。本実施例においては、ラップネットを構成するセルロース100%からなる経糸として、綿の20番手双糸(20/2)を使用した。この綿糸の糸強度(引張強さ)は、8.4N/1本(860gf/1本)であった。一方、ラップネットを構成するセルロース100%からなる緯糸として、綿の10番手単糸(10/−)を使用した。この綿糸の糸強度(引張強さ)は、8.3N/1本(850gf/1本)であった。なお、糸の引張強伸度(引張強さ及び伸び率)の測定は、JIS−L1013に準拠した。
次に、これらの綿の経糸及び緯糸を用いてラップネットを編成した。本実施例においては、ラップネットの編成にラッシェル編機を使用し、図1に示す編成組織のラップネットを編成した。
ここで、本発明に係るラップネットの編成を具体的に説明する。図1は、本実施例に使用するラップネットの編成組織(経編物)を示す概略図である。図1において、ラップネット10は、経糸1と緯糸2とからなり、この経糸1が編地の基礎を構成するループ20を形成する。
図1においては、4ウェール(タテ方向の畝)×8コース(ヨコ方向の畝)のチェーンステッチからなる編地を示す。各ウェール30及び各コース40は、更に上下左右方向に編成されて広幅長尺の編地を形成する。この図1においては、タテ方向に並列した4本の経糸1が、それぞれ、図示上方に延びながら連続したループ20を形成し、それぞれ独立鎖編からなるウェール30を構成する。
この状態においては、各独立鎖編のウェール30は、それぞれが連結しておらず、編地を構成しない。そこで、経糸群1が各独立鎖編のウェール30を形成すると共に、緯糸2がウェール30の各ループ20と他のウェールの他のループ20とを連結するようにしてラップネットを編成する。
図1において、緯糸2は、図示上方に伸びて、まず、ウェールの連続した2つのループの交絡点(1つのループの上方に凸のニードルループと、その真上のループの下方に凸のシンカーループとの連結するところ)において、これらのループを経由(潜り抜ける)して上方に伸びる。その後、この緯糸2は、隣接する他のウェールの連続した2つのループの交絡点において、これらのループを経由(潜り抜ける)して更に上方に伸びる。その後、この緯糸2は、隣接する元のウェールの連続した2つのループの交絡点において、これらのループを経由(潜り抜ける)して更に上方に伸び、その後も同様に伸びて各ウェールを連結する。
本実施例で編成されたラップネットは、全幅120cm、長さ2000mで1巻のラップネット・ロールとして製作した。このラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が2.5cm、緯方向の間隔が1.9cmであった。このようにして準備したラップネット及び既存のポリエチレン製ラップフィルムを使用して、本実施例においては、北海道地域の牧場で刈り取った牧草(水分50%)をロールベールに成形しサイレージ化を行った。
まず、圧縮工程及び成形工程においては、従来から使用のロールベーダー装置を使用し、円筒形状に圧縮した牧草の円筒外周にラップネットを3周重ね巻きすることにより、ロールベールを成形した。その結果、従来のPEラップネットと同様の高い装置張力にも耐えることができた。次に、被覆工程においては、従来から使用のラッピングマシンを使用し、ラップフィルムによりロールベールの外周全面を被覆した。成形されたロールベールは、長さ120cm、直径155cmであった。また、成形されたロールベールの表面は、十分に硬くまかれており、実用的に満足するものであった。なお、ロールベーダー装置及びラッピングマシンでの作業は、作業性の点では従来から使用のPEラップネットの場合と何ら変わるものではなかった。
次に、トラクターのグローブでロールベールを把持して運搬し、保管場所にロールベールの円筒軸を縦方向にして4段積みして保管した。なお、保管期間は、厳冬期を含め6ヶ月としてサイレージ化を行った。その結果、保管中のロールベールの形状は安定しており、円筒形状の変形が生じることがなく、段積みが崩れるということがなかった。なお、比較のためにPEラップネットで成形したロールベールにおいては、円筒形状の中央部の直径が約5%膨らんでおり、円筒形状の変形が生じていた。
サイレージ化のための6ヶ月保管の中間時点である3ヶ月後(厳冬期)のロールベールからラップフィルム及びラップネットを除去して、内部の牧草の状態を確認した。その結果、ロールベールの円筒外周付近の牧草が極度に湿潤することなく、中央部と同様に全体で乳酸発酵が進んでいた。これに対して、比較のPEラップネットで成形したロールベールにおいては、ロールベールの中央部で乳酸発酵が進んでいたが、円筒外周付近の牧草が極度に湿潤して凍り乳酸発酵が進んでいなかった。
更に、サイレージ化が完了した6ヶ月保管後のロールベールからラップフィルム及びラップネットを除去して、内部の牧草の状態を確認した。その結果、ロールベールの中央部だけでなく円筒外周付近の牧草も良好に乳酸発酵が完了し良好なサイレージが完成していた。よって、サイレージ化の歩留まりは略100%近くあり良好なものであった。これに対して、比較のPEラップネットで成形したロールベールにおいては、ロールベールの中央部で乳酸発酵が完了していたが、円筒外周付近の牧草が湿潤と凍結・解凍により劣化し飼料として使用できない状態であった。よって、比較のPEラップネットで成形したロールベールの歩留まりは略80%であり良好なものとはいえなかった。
以上説明したように、本発明によれば、ラップネットの除去作業が容易で、ラップネットの残渣が飼料に混入した場合でも家畜への影響が少なく、且つ、ロールベールの円筒形状の変形が少なく、牧草などの飼料材料の歩留まりのよいロールベールの成形・保管方法を提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記実施例に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施例においては、ラップネットの組織として経編地(チェーンステッチ)を採用したが、これに限るものではなく他の経編物、或いは、紗、絽、羅などの絡み織物や亀甲網地などを使用するようにしてもよい。
(2)上記実施例においては、ラップネットを構成するセルロース100%からなる経糸として、綿の20番手双糸(20/2)を使用したが、これに限るものではなく、他の番手の双糸、太番手の綿の単糸、或いは、綿の単糸を引き揃えた引き揃え糸などを使用するようにしてもよい。または、綿糸以外のセルロース系繊維からなる糸、或いはペーパースリットヤーンなどを使用するようにしてもよい。
(3)上記実施例においては、ラップネットを構成するセルロース100%からなる緯糸として、綿の10番手単糸(10/−)を使用したが、これに限るものではなく、他の番手の単糸、中番手から細番手の綿の双糸、或いは、綿の単糸を引き揃えた引き揃え糸などを使用するようにしてもよい。または、綿糸以外のセルロース系繊維からなる糸或いはペーパースリットヤーンなどを使用するようにしてもよい。
(4)上記実施例においては、ラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が2.5cm、緯方向の間隔が1.9cmとしたが、これに限るものではなく、飼料材料の脱落による歩留まりを損なわない範囲で、ラップネットの強度、厚み、目付、糸量などを考慮して異なる目開きとするようにしてもよい。
(5)上記実施例においては、ロールベールのラップネットの上からラップフィルムで被覆してサイレージ化を行うようにしたが、これに限るものではなく、ラップフィルムで被覆することなくロールベールを保管するようにしてもよい。
(6)上記実施例においては、ロールベールからラップネットを除去するようにしたが、これに限るものではなく、ロールベールに巻きついたラップネットを経糸も緯糸も含めて細かく切断し、牧草やサイレージと共に飼料として家畜に食べさせるようにしてもよい。
1…経糸、2…緯糸、10…編地、20…ループ、30…ウェール、40…コース、
51、52、53、54…織地、55…網地。

Claims (7)

  1. 刈取り又は所定長さに切断した飼料材料を円筒状に圧縮する圧縮工程と、
    圧縮工程後の円筒状飼料材料をラップネットで包み込んでロールベールを成形する成形工程と、
    成形工程後のロールベールを運搬・保管する保管工程とを有し、
    前記成形工程において、
    前記ラップネットは、セルロース100%からなる糸が格子状に配列された編織物又は網地であって、
    当該ラップネットの格子の目開きは、経方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.9cm〜3.3cmの範囲内であり、且つ、
    緯方向の間隔が0.5cm〜5.0cmの範囲内、好ましくは1.2cm〜2.6cmの範囲内であって、
    当該ラップネットを前記円筒状飼料材料の外周面に2周以上、好ましくは3周以上重ね巻きすることを特徴とするロールベールの成形・保管方法。
  2. 前記成形工程と前記保管工程との間に、
    前記ロールベールの外周面をラップフィルムで巻層して被覆する被覆工程を有し、
    前記保管工程において、
    前記密閉工程後のロールベールを乳酸発酵させてサイレージ化することを特徴とする請求項1に記載のロールベールの成形・保管方法。
  3. 前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を編成してなる経編物であって、
    編地の長さ方向に並列した綿糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、
    前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと綿糸からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、
    経糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなり、且つ、
    緯糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法。
  4. 前記緯糸は、編地の長さ方向に対して下方から上方に伸びて前記独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で当該独立鎖編に挿入され、
    更に、上方に伸びて前記独立鎖編とこれに隣接する他の独立鎖編を構成するループのニードルループと当該ループの真上のループのシンカーループとの交絡点で当該他の独立鎖編に挿入されることにより、
    前記独立鎖編とこれに隣接する他の独立鎖編とが連結して編地を編成することを特徴とする請求項3に記載のロールベールの成形・保管方法。
  5. 前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる絡み織物であって、
    経糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなり、且つ、
    緯糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法。
  6. 前記ラップネットは、綿糸からなる経糸及び緯糸を織成してなる亀甲網地であって、
    糸が5番手〜15番手の綿の単糸、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚り合わせた合撚糸、又は、10番手〜50番手の綿の単糸を2本以上引き揃えて撚りを掛けないまま使用する引き揃え糸からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法。
  7. 前記ラップネットは、少なくとも経糸が紙をスリットしたペーパースリットヤーンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールベールの成形・保管方法。
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