(本発明の基礎となった知見)
現在、対象物における水分量等の状態を検知する検知装置が求められている。例えば、屋外における路面を対象物とした場合に、路面では、凍結の状態、冠水の状態、積雪の状態、乾燥の状態が存在する。検知装置は、この4つの状態を識別する必要がある。
水には、特有な波長領域で光を吸収する吸収スペクトルが存在する。そこで、本発明者達は、路面の状態を検知する手段として、水の吸収スペクトルに着目した。
光の波長と、水の吸収係数との関係において、水には、例えば、光の近赤外領域(700nm〜2500nmと言われる)において740nm、980nm、1450nm、1940nm付近に光を吸収するピーク(吸収ピーク)が存在している。特に、水の性質として、光の吸収ピークにおいて、光の波長が大きくなるほど、光を吸収し易い。そこで、原理的には、吸収のピーク近傍の波長を含んだ光を路面に照射し、その反射光の多寡によって水や氷の有無を検出することができる。
そこで、例えば、路面が冠水した状態である場合に、水面に入射した光のうち、S偏光は、P偏光に比べて水面で正反射し易い性質がある。つまり、S偏光は、入射角を大きくすればするほど、P偏光よりも反射率が上昇し易い性質がある。一方、P偏光はS偏光に比べて水面で正反射し難い性質がある。つまり、P偏光は、入射角を大きくすればするほど、S偏光ほどは反射率が上昇し難い性質がある。このため、P偏光は、水面に入射した場合、水を透過し、路面で散乱されて、一部の光は光源側に向かう。このような光の性質において、例えば、光源側に受光部を配置した場合では、正反射するS偏光の受光量は、対象物で散乱した光を受光するP偏光の受光量よりも少なくなる。
また、路面が凍結した状態である場合、氷の表面は水表面に比べれば粗面となっているため、路面が冠水した状態に比べると、S偏光もP偏光も表面で散乱される。このため、光源側に受光部を配置した場合では、水に比べれば、S偏光の受光量とP偏光の受光量とに大きな差が出ない。つまり、散乱光におけるS偏光の強度とP偏光の強度との比(S偏光の強度/P偏光の強度)は、凍結の状態では1より小さく、冠水の状態では凍結の状態の時よりもさらに小さくなるため、適切な閾値を設定すれば、冠水の状態と凍結の状態とを識別することが可能となる。このため、水が光を吸収するピーク近傍の波長を含んだ光において、P偏光及びS偏光の割合が略均一なランダム偏光を路面に照射すれば、散乱光の強度と、P偏光及びS偏光の比率とを測定することで路面状態を検知することができると考えられる。
また、路面が乾燥した状態での散乱光の強度を1とすると、積雪の状態では散乱光の強度は1より大きくなる。このため、散乱光の強度を見るだけで路面が乾燥した状態か、積雪の状態かを判断することができる。
なお、対象物で吸収された光を導きだすだけでは、対象物における表面形状の影響や、水以外の吸収物質の影響を受けるため精度の良い検知を行うことができない。このため、これらの影響を抑制する、ニ色分光とよばれる方式を用いることが一般的である。これは、光を吸収する吸収ピークの波長以外に、吸収の少ない波長の光も用いることで、表面形状や水以外の吸収物質の影響を補償する方式である。本実施の形態でも、散乱光の強度の代わりに、光を吸収する吸収ピークの波長と、吸収の少ない波長の光との強度比を用いて水及び氷の存在を検出することが好ましい。
このように、従来の検知装置に対して異なる手段を用いて、対象物の状態(対象物における水分や氷等の有無)を検知したい。また、従来の検知装置において用いられた直線偏光とは異なる偏光を用いて、対象物の状態を精度よく検知したいという要望がある。
そこで、対象物の状態を精度よく検知することができる検知装置を提供することを目的とする。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、「略**」との記載は、「略同一」を例に挙げて説明すると、全く同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「**近傍」との記載においても同様である。
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る検知装置について説明する。
[構成]
まず、本実施の形態に係る検知装置1の構成について図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る検知装置1を示す模式図である。
図1に示すように、検知装置1は、光を対象物に照射し、対象物の状態を検知する装置である。本実施の形態において、対象物とは、例えば、道路の路面である。対象物の状態とは、道路の路面においては、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態である。
検知装置1は、光源3と、受光部4と、偏光分離部5と、波長分離部6と、制御部7と、出力部8と、電源部9と、記憶部11とを備える。光源3、受光部4、偏光分離部5、波長分離部6、制御部7、出力部8、電源部9及び記憶部11は、図示しない筺体に設けられていてもよい。
光源3は、対象物に向けて光を出射するように設けられる発光モジュールである。光源3が出射する光は、S偏光とP偏光との割合が略均一なランダム偏光であり、可視光や赤外光等である。略均一なランダム偏光とは、光における電界の振動方向がランダムであり、様々な方向に振動する成分が存在することを言い、ランダムに振動する成分が単位時間において均一であることを意味している。
本実施の形態では光は、赤外光を用いている。S偏光は、第1波長帯域の光及び第2波長帯域の光である。また、P偏光は、第1波長帯域の光及び第2波長帯域の光である。第2波長帯域の光は、第1波長帯域と異なる波長帯域であり、第1波長帯域よりも水に吸収され難い性質を有する。第1波長帯域の光及び第2波長帯域の光は、水が光を吸収し易い吸収ピーク近傍の波長帯域である。本実施の形態では、光源3の光は、第1波長帯域の一例として波長λ1の光、第2波長帯域の一例として波長λ2の光を用いている。
第1波長帯域の赤外光は、水における、740nm近傍、980nm近傍、1450nm近傍及び1940nm近傍のうちいずれかで吸収波長となる吸収ピークの光である。また、第2波長帯域の赤外光は、第1波長帯域の赤外光よりも波長が短い光である。例えば、第1波長帯域の赤外光が980nm近傍の光である場合は、第2波長帯域の赤外光を800nm近傍の光としてもよい。また、第1波長帯域の赤外光が1940nm近傍の光である場合は、第2波長帯域の赤外光を1550nm近傍の光としてもよい。
光源3としては、例えば、ハロゲンランプなどの連続スペクトル光を出射する光源3を用いることができるが、これに限定されない。例えば、光源3は、LED(Light Emitting Diode)素子、半導体レーザ等の半導体発光素子、または、有機EL(Electro Luminescence)や無機EL等のEL素子等その他の固体発光素子であってもよい。
受光部4は、照射された光が対象物で散乱した光を受光するように、対象物と向かい合うように設けられる。つまり、受光部4は、光源3側に設けられ、光源3の光が対象物で正反射した光を受光するように配置されているのではない。受光部4は、受光した光量に関する情報を生成する。受光部4は、例えば、赤外線センサ等の光センサであるが、カメラであってもよい。
具体的には、受光部4は、光量に関する情報として、情報P1、情報P2及び情報S1を生成し、制御部7に送信する。情報P1は、P偏光フィルタ51及び第1波長分離フィルタ61を通過した、P偏光かつ波長λ1におけるP1偏光強度の光に基づく情報である。情報P2は、P偏光フィルタ51及び第2波長分離フィルタ62を通過した、P偏光かつ波長λ2におけるP2偏光強度の光に基づく情報である。情報S1は、S偏光フィルタ52及び第1波長分離フィルタ61を通過した、S偏光かつ波長λ1におけるS1偏光強度の光に基づく情報である。後述する情報S2は、S偏光フィルタ52及び第2波長分離フィルタ62を通過した、S偏光かつ波長λ2におけるS2偏光強度の光に基づく情報である。本実施に形態では、波長λ1の光は、波長λ2の波長の光よりも水に吸収され易い波長である。つまり、水が光を吸収する吸収ピークにおいて、波長λ1は、波長λ2よりも波長が大きい。なお、波長λ1は、波長λ1近傍の光である。また、波長λ2においても同様である。
偏光分離部5は、対象物と受光部4との間に設けられ、対象物で散乱された光から所定の偏光を分離する機能を有する。偏光分離部5は、例えば、偏光フィルタ、偏光ビームスプリッタ等である。
偏光分離部5は、P偏光フィルタ51と、S偏光フィルタ52とを有する。P偏光フィルタ51は、P偏光の光を透過させる性質を有する。S偏光フィルタ52は、S偏光の光を透過させる性質を有する。P偏光フィルタ51及びS偏光フィルタ52は、図示しない駆動部によって互いの位置を入れ替えるように設けられる。
波長分離部6は、所定の波長領域の光のみを透過させる波長を分離する機能を有する。本実施の形態において、波長分離部6は、偏光分離部5と受光部4との間に設けられるが、対象物と偏光分離部5との間に設けられていてもよい。
波長分離部6は、第1波長分離フィルタ61と、第2波長分離フィルタ62とを有する。第1波長分離フィルタ61は、波長λ1近傍の光を透過させる機能を有する。第2波長分離フィルタ62は、波長λ2近傍の光を透過させる機能を有する。第1波長分離フィルタ61及び第2波長分離フィルタ62においても、図示しない駆動部によって互いの位置を入れ替えるように設けられる。
制御部7は、受光部4、光源3、出力部8及び電源部9等に電気的に接続されている。制御部7は、受光部4が受光した光量に関する情報を受信する。制御部7は、この光量に関する情報から、光源3における光の出力を調節してもよい。
制御部7は、判断部71と、電源制御部72とを有する。
判断部71は、制御部7を介して受信した情報P1、情報P2及び情報S1に基づいて、対象物における、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態を判断する。電源制御部72は、光源3が光を出射するように制御する。
電源部9は、例えば、一次電池や二次電池から供給される電源だけでなく、電力系統から供給される電源であってもよい。電源部9は、制御部7に接続され、制御部7を介して出力部8、光源3等の各部に電力を供給する。
出力部8は、例えば、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等のモニタや、音声等を出力するスピーカ等である。出力部8は、判断部71が判断した対象物の状態を出力する。具体的には、出力部8は、判断部71で判断された、対象物における、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態といった情報を出力する。
記憶部11は、制御部7にプロセッサまたはマイクロコンピュータなどが含まれる場合に、制御部7が実行する制御プログラムが記憶される装置である。記憶部11は、例えば、半導体メモリによって実現される。なお、記憶部11には、過去の対象物における、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態に関する過去の情報が格納されていてもよい。
このような検知装置1における、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態を判断する方法について説明する。
対象物における積雪の状態の判断は、情報P2の反射率が閾値以上であるか否かで判断できる。この閾値は、対象物を路面とした場合における、アスファルト、コンクリート、白線、黄線、積雪において、これら路面に光を照射した場合の反射率に基づいて算出されている。各々の反射率は、アスファルトでは約0.11であり、コンクリートでは約0.42であり、白線では約0.63であり、黄線では約0.52であり、積雪では約0.9である。この結果から、本実施の形態では、積雪以外で最も反射率が高い白線の反射率と、積雪の反射率との間の値である閾値を0.8と設定した。なお、この閾値は一例であり、特に限定されず、積雪の状態と積雪の状態以外で最も反射率が高い対象物との間であればよい。判断部71は、情報P2が閾値よりも大きいか否かで、路面が積雪の状態であるか否かを判断する。
対象物における乾燥の状態の判断は、情報P1と情報P2とが近似しているか否かで判断できる。これは、乾燥した状態の対象物に、略均一のランダム偏光が入射した場合、波長λ1の光及び波長λ2の光は、共に同程度の量が対象物で吸収される。このため、対象物での散乱光において、波長λ1の光量と波長λ2の光量とが略同一となる。また、本実施の形態では、情報P1と情報P2とが近似しているとは、情報P1と情報P2との誤差が±20%以内に収まっている場合をいう。例えば、対象物が路面では、路面の素材によって異なるためこの誤差範囲であることが好ましい。
対象物における冠水の状態の判断は、本実施の形態では、S2偏光強度(情報S2)/P2偏光強度(情報P2)が所定値以下であるか否かで判断する。これは、波長λ2の光が水に入射した場合に、S偏光はP偏光に比べて反射率が大きいため、水で散乱した反射光にはP偏光がS偏光よりも多く含まれる。ここで、S2偏光強度(情報S2)/P2偏光強度(情報P2)は、凍結の状態及び冠水の状態では共に1よりも小さくなるが、冠水の状態は凍結の状態よりも更に小さくなる。つまり、S2偏光強度(情報S2)/P2偏光強度(情報P2)は、波長λ2のS偏光と波長λ2のP偏光との比(S2偏光強度における強度にP2偏光強度を除算した値)である。このため、冠水の状態と凍結の状態とを判断するためには、例えば、S2偏光強度(情報S2)/P2偏光強度(情報P2)が所定値以下の状態であるか否かで判断できる。本実施の形態では、所定値を0.9としている。なお、冠水の状態と凍結の状態とを判断するためには、例えば、S1偏光強度(情報S1)/P1偏光強度(情報P1)が所定値以下の状態であるか否かで判断してもよい。
対象物における凍結の状態の判断は、冠水の状態を判断する方法により、S2偏光強度(情報S2)/P2偏光強度(情報P2)が、1以下0.9よりも大きい場合で判断する。
[検知装置の動作]
次に、検知装置1における動作、検知装置1を用いた検知方法、及び検知方法をコンピュータに実行させる検知プログラムの一例について、図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態1に係る検知装置1の動作を示すフローチャートである。
図2に示すように、例えば、P1偏光強度の光を受光部4に受光させる場合、制御部7は、受光部4と対象物との間に、P偏光フィルタ51と第1波長分離フィルタ61とが位置するように、駆動部によって配置させる。そして、制御部7は光源3から光を出射させて、対象物に光が照射される(ステップS1)。対象物に照射された光は、散乱され、一部の光が受光部4に向かう。そして、この光は、P偏光フィルタ51及び第1波長分離フィルタ61を通過して、P1偏光強度の光となり、受光部4で受光される。受光部4は、受光した光量に関する情報P1を生成し、情報P1を制御部7に送信する(ステップS2)。
次に、制御部7は、受光部4から情報P1を受信(取得ステップの一例)し、情報P1を記憶部11に格納する(ステップS3)。
次に、S2偏光強度の光を受光部4に受光させる場合、制御部7は、受光部4と対象物との間に、S偏光フィルタ52と第2波長分離フィルタ62とが位置するように、駆動部によって配置させる。すると、対象物で散乱されて受光部4に向かう光は、S偏光フィルタ52及び第2波長分離フィルタ62を通過して、S2偏光強度の光となり、受光部4で受光される。受光部4は、受光した光量に関する情報S2を生成し、情報S2を制御部7に送信する(ステップS4)。
次に、制御部7は、受光部4から情報S2を受信(取得ステップの一例)し、情報S2を記憶部11に格納する(ステップS5)。
次に、P2偏光強度の光を受光部4に受光させる場合、制御部7は、受光部4と対象物との間に、P偏光フィルタ51と第2波長分離フィルタ62とが位置するように、駆動部によって配置させる。すると、対象物で散乱されて受光部4に向かう光は、P偏光フィルタ51及び第2波長分離フィルタ62を通過して、P2偏光強度の光となり、受光部4で受光される。受光部4は、受光した光量に関する情報P2を生成し、情報P2を制御部7に送信する(ステップS6)。
次に、制御部7は、受光部4から情報P2を受信し、情報P2を記憶部11に格納する(ステップS7)。
次に、制御部7の判断部71は、情報P2が所定の閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS8)。情報P2が閾値よりも大きい場合(ステップS8ではYES)、判断部71は、対象物の状態が積雪の状態であると判断する(ステップS13:積雪判断ステップの一例)。制御部7は、判断部71が判断した積雪の状態であるという内容を出力部8に出力する(ステップS12)。こうして、このフローはスタートに戻り、同様の検知を行う。
なお、ステップS8で、情報P2の代わりに情報S2が所定の閾値よりも大きいか否かを判断してもよい。この場合、S偏光フィルタ52及び第2波長分離フィルタ62を通過させて、S偏光かつ波長λ2であるS2偏光強度の光を取り出し、ステップS6で、受光部4は、受光した光量に関する情報S2を生成し、情報S2を制御部7に送信してもよい。また、ステップS7で、制御部7は、受光部4から情報S2を受信し、情報S2を記憶部11に格納してもよい。
一方、情報P2が閾値以下である場合(ステップS8ではNO)、判断部71は、情報P1と情報P2とが近似しているか否かを判断する(ステップS9)。なお、ステップS9で、情報S1と情報S2とが近似しているか否かを判断してもよい。
具体的には、判断部71は、情報P1と情報P2との誤差が±20%以内に収まっている場合(ステップS9ではYES)、情報P1と情報P2とが近似していると判断し、対象物の状態が乾燥の状態であると判断する(ステップS14:乾燥判断ステップの一例)。この場合、制御部7は、判断部71が判断した乾燥の状態であるという内容を出力部8に出力する(ステップS12)。こうして、このフローはスタートに戻り、同様の検知を行う。
一方、情報P1と情報P2との誤差が±20%以内に収まっていない場合(ステップS9ではNO)、判断部71は、S偏光(情報S2)/P偏光(情報P2)が所定値以下の状態であるか否かを判断する(ステップS10)。なお、ステップS10では、波長λ1の光を使用しても良いが、波長λ1の光よりも波長λ2の光のほうが、水に吸収されにくく、かつ、受光部4に戻ってくる光の強度が大きくなりノイズの影響を受けにくくなるため、波長λ2の光を使用したほうが好ましい。
具体的には、S偏光(情報S2)/P偏光(情報P2)が所定値(本実施の形態では0.9)以下の場合(ステップS10ではYES)、判断部71は、対象物の状態が冠水の状態であると判断する(ステップS15:冠水判断ステップの一例)。そして、制御部7は、判断部71が判断した冠水の状態であるという内容を出力部8に出力する(ステップS12)。こうして、このフローはスタートに戻り、同様の検知を行う。
なお、ステップS9で、情報P1と情報P2との大小判定を行い、情報P1が情報P2に100%−20%を乗算した値より小さければ、制御部7は、水での反射率が低いP偏光で、かつ、水に吸収されやすい波長λ1の光である情報P1から、対象物に水が存在していると判断、又は存在している可能性があると判断してもよい。
一方、S偏光(情報S2)/P偏光(情報P2)が所定値(本実施の形態では0.9)よりも大きい場合(ステップS10ではNO)、判断部71は、対象物の状態が凍結の状態(ステップS11:凍結判断ステップの一例)であると判断する。そして、制御部7は、判断部71が判断した凍結の状態であるという内容を出力部8に出力する(ステップS12)。こうして、このフローはスタートに戻り、同様の検知を行う。
[実施の形態1の作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置1、検知方法及び検知プログラムの作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置1は、第1波長帯域の波長λ1の光と、第1波長帯域の波長λ1よりも水に吸収され難い第2波長帯域の波長λ2の光とを対象物に向けて出射する光源3と、対象物で反射又は散乱S偏光及びP偏光を含む光から、少なくともP偏光を分離する偏光分離部5と、対象物で反射又は散乱した光を、偏光分離部5を介して受光する受光部4と、受光部4が受光した光に基づく情報から対象物の状態を判断する制御部7とを備える。そして、光源3から出射する光は、S偏光とP偏光との割合が略均一なランダム偏光である。
この構成によれば、第1波長帯域の波長λ1の光及び第2波長帯域の波長λ2の光と、S偏光及びP偏光とを組み合わせることで、制御部が対象物の状態を判断することができる。
したがって、この検知装置では、直線偏光を用いた対象物の状態を検知する場合とは異なる偏光を用いて、対象物の状態を精度よく検知することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置1において、制御部7の判断部71は、第1波長帯域の波長λ1のS偏光におけるS1偏光強度、及び第1波長帯域の波長λ1のP偏光におけるP1偏光強度と、第2波長帯域の波長λ2のS偏光におけるS2偏光強度又は第2波長帯域の波長λ2のP偏光におけるP2偏光強度とに基づく情報を受光部4から取得する。また、制御部7の判断部71は、S2偏光強度又はP2偏光強度が所定の閾値よりも大きい場合に、対象物が積雪の状態であると判断する。さらに、制御部7の判断部71は、S1偏光強度とS2偏光強度とが略等しい場合又はP1偏光強度とP2偏光強度とが略等しい場合に、対象物が乾燥の状態であると判断する。また、制御部7は、P2偏光強度がS2偏光強度よりも大きい場合、かつ、S2偏光強度に、P2偏光強度を除算した値が所定値以上である場合に、対象物が冠水の状態であると判断する。そして、制御部7の判断部71は、P2偏光強度がS2偏光強度よりも大きい場合、かつ、S2偏光強度における強度に、P2偏光強度を除算した値が所定値未満である場合に、対象物が凍結の状態であると判断する。
この構成によれば、P偏光及びS偏光と、波長λ1及び波長λ2の光との組み合わせから、受光部4は、情報P1、情報P2、情報S1及び情報S2を生成することができる。判断部71は、受光した情報(情報P1、情報P2、情報S1及び情報S2)から、対象物における、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態を判断することができる。このため、対象物の状態を確実に検知することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置1は、さらに、対象物と受光部4との間には、対象物で反射又は散乱された光から、第1波長帯域の波長λ1の光及び第2波長帯域の波長λ2の光を分離する波長分離部6を備える。
この構成によれば、光源3が出射する光から所望の波長の光を取り出すことができる。このため、所望の波長の光を出射する光源3を用意する必要もなく、製造コストの高騰化を抑制することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置1において、光源3が出射する光は、赤外光である。第1波長帯域の波長λ1の赤外光は、水における、740nm近傍、980nm近傍、1450nm近傍及び1940nm近傍のうちいずれかで吸収波長となる吸収ピークの光である。そして、第2波長帯域の波長λ2の赤外光は、第1波長帯域の波長λ1の赤外光よりも波長が短い光である。
この構成によれば、例えば、波長λ1として1940nm近傍の光を選択すれば水の吸収性が高いため、高感度のセンサになる。また、波長λ1として980nm近傍の光を選択すればシリコン製のフォトディテクタを用いることができるという利点がある。
また、本実施の形態に係る検知方法は、検知装置1を用いて対象物の状態を検知する。また、制御部7の判断部71は、第1波長帯域の波長λ1のS偏光におけるS1偏光強度、及び第1波長帯域の波長λ1のP偏光におけるP1偏光強度と、第2波長帯域の波長λ2のS偏光におけるS2偏光強度又は第2波長帯域の波長λ2のP偏光におけるP2偏光強度とに基づく情報を受光部4から取得する取得ステップと、S2偏光強度又はP2偏光強度が所定の閾値よりも大きい場合に、対象物が積雪の状態であると判断する積雪判断ステップと、S1偏光強度とS2偏光強度とが略等しい場合又はP1偏光強度とP2偏光強度とが略等しい場合に、対象物が乾燥の状態であると判断する乾燥判断ステップと、P2偏光強度がS2偏光強度よりも大きい場合、かつ、S2偏光強度に、P2偏光強度を除算した値が所定値以上である場合に、対象物が冠水の状態であると判断する冠水判断ステップと、P2偏光強度がS2偏光強度よりも大きい場合、かつ、S2偏光強度における強度に、P2偏光強度を除算した値が所定値未満である場合に、対象物が凍結の状態であると判断する凍結判断ステップとを含む。
この検知方法においても、本実施の形態に係る検知装置1と同様の作用効果を奏する。
また、本実施の形態に係る検知プログラムは、検知方法をコンピュータに実行させる。
この検知プログラムにおいても、本実施の形態に係る検知装置1と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態1の変形例)
以下、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1について、図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1の変形例に係る検知装置1を備えた車両110を示す模式図である。
実施の形態1の本変形例では、受光部4の一例としてカメラ140を用いている点で、実施の形態1と相違している。
実施の形態1の本変形例における他の構成は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図3に示すように、実施の形態1の本変形例において、検知装置1は、車両110に設けられる。車両110は、車体111と、車輪112と、ハンドル113と、操舵角検知部114と、速度検知部115とを有する。
車体111には、車輪112、ハンドル113、操舵角検知部114及び速度検知部115等が設けられる。車輪112はハンドル113によって操舵される。操舵角検知部114は、車輪112の操舵角を検知するセンサであり、例えば、相対角変化量を測定する舵角センサ等である。操舵角検知部114は、車輪112の操舵角を検知し、検知した操舵角情報(第1情報の一例)を制御部7に送信する。速度検知部115は、車両110の走行速度を検知するセンサであり、例えば、速度検知センサ等である。速度検知部115は、車両110の走行速度を検知し、検知した速度情報(第2情報の一例)を制御部7に送信する。
カメラ140は、光源3が赤外光を出射した際に、対象物を撮像した第1画像(情報の一例)を生成し、制御部7に送信する。この第1画像には、対象物の状態である積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態が映り込む。実施の形態1の本変形例における対象物は、例えば、路面、自動車のラジエータグリル等である。
また、カメラ140は、光源3が可視光を出射した際に、対象物を撮像した第2画像(情報の一例)を生成し、制御部7に送信する。この第2画像は、対象物における通常の画像である。
制御部7は、カメラ140から受信した、第2画像に第1画像に重ねた第3画像を生成し、第3画像を出力部8に出力させる。つまり、出力部8には、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態が付加された、対象物における画像が出力される。
また、カメラ140は、対象物とカメラ140との距離を示す第4画像を生成し、制御部7に送信する。この第4画像は、距離の情報を有する画像である。
制御部7は、カメラ140から受信した、第4画像を第3画像に重ねた、第5画像を生成し、第5画像を出力部8に出力させる。つまり、出力部8には、積雪の状態、乾燥の状態、冠水の状態及び凍結の状態が付加された、対象物における画像に、さらに、対象物とカメラ140との距離を示した情報が付加された画像が出力される。なお、第1画像から第5画像までは、静止画であってもよく、動画像であってもよい。
また、制御部7は、車輪112の操舵角情報及び車両110の速度情報に応じて、対象物を撮像する位置を変更する。例えば、光源3は、光源3の光軸方向(光を出射する方向)を変更できるように、揺動可能に設けられていてもよい。光源3を揺動する手段としては、駆動機構によって実現することができる。また、この場合、駆動機構は、カメラ140、偏光分離部5及び波長分離部6の姿勢を変更(カメラ140では撮像する位置を変更)するように構成されていてもよい。
対象物を撮像する位置を変更する例としては、制御部7は、車輪112の操舵角が大きくなるに従って、車輪112の操舵角から操舵角検知部114が検知した車両110の進行方向であって、検知装置1から遠い対象物をカメラ140に撮像させる。また、制御部7は、車両110の走行速度が速くなるに従って、検知装置1から遠い対象物をカメラ140に撮像させる。操舵角が大きくなったり、車両110の走行速度が速くなったりすれば、車両110の搭乗者(使用者)がより遠方における対象物の状態を把握したい場合がある。なお、操舵角だけでなく、操舵角の増加率(操舵角の角速度)に従って、検知装置1から遠い対象物をカメラ140に撮像させてもよい。
また、遠い対象物を撮像する一例としては、例えば、車両110における現在の走行時に照射していた光源3の光軸方向を、より水平に近づけるように、現在照射していた光源3から光軸上の対象物までの距離よりも遠い対象物に向けて、光源3の光を照射する。
この検知装置1においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、実施の形態1の本変形例における検知装置1の作用効果について説明する。
上述したように、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1は、さらに、対象物の状態を出力する出力部8を備える。また、光源3は、赤外光と可視光とを出射する。そして、カメラ140は、光源が赤外光を出射した際に、対象物を撮像した第1画像と、光源が可視光を出射した際に、対象物を撮像した第2画像とを生成して制御部7の判断部71に送信する。そして、制御部7の判断部71は、カメラ140から受信した第2画像に第1画像を重ねた第3画像を生成し、第3画像を出力部8に出力する。
これらの構成によれば、対象物における通常の画像に、対象物の状態を付加した第3画像が出力部8に出力されるため、搭乗者に判り易い情報を提供することができる。このため、搭乗者は、対象物の状態を即座に認識して判断することができるため、車両110における危険回避を行い易い。
また、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1において、カメラ140は、第2画像における対象物とカメラ140との距離を示す第4画像を生成して制御部7の判断部71に送信する。制御部7の判断部71は、カメラ140から受信した第4画像を第3画像に重ねた、第5画像を生成し、第5画像を出力部8に出力する。
この構成によれば、第3画像に距離情報が付加された第5画像が出力部8に出力されるため、搭乗者により判り易い情報を提供することができる。このため、搭乗者は、対象物の状態をより即座に認識して判断することができるため、車両110における危険回避をより行い易い。
また、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1は、車両110に搭載される。また、車両110は、ハンドル113によって操舵される車輪112と、車輪112の操舵角を検知する操舵角検知部114と、車両110の走行速度を検知する速度検知部115とを有しする。さらに、操舵角検知部114は、車輪112の操舵角に関する第1情報を制御部7に送信する。また、速度検知部115は、車両110の走行速度に関する第2情報を制御部7に送信する。そして、制御部7は、第1情報及び第2情報に応じて、光源3が照射する方向と対象物を撮像する位置とを変更させるように制御する。
この構成によれば、車両110における走行速度やハンドル113の操舵角に応じて、制御部7が光を照射する方向と対象物を撮像する位置とを変更するため、対象物における適切な位置の状態を検知することができる。
また、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1において、制御部7は、車輪112の操舵角が大きくなるに従って、車輪112の操舵角から操舵角検知部114が検知した車両110の進行方向であって、当該検知装置1から遠い対象物をカメラ140に撮像させる。
この構成によれば、車輪112の操舵角が大きい場合に、遠方の対象物を撮像するため、搭乗者により判り易い情報を提供することができる。このため、搭乗者は、対象物の状態を認識し易い。
また、実施の形態1の本変形例に係る検知装置1において、制御部7は、車両110の走行速度が速くなるに従って当該検知装置1から遠い対象物をカメラ140に撮像させる。
この構成によれば、車両110の走行速度が速い場合に、遠方の対象物を撮像するため、搭乗者により判り易い情報を提供することができる。このため、搭乗者は、対象物の状態を認識し易い。
実施の形態1の本変形例における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係る検知装置200について説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置200の構成について、図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態2に係る検知装置200を示す模式図である。
実施の形態1では1つの光源3が設けられていたが、本実施の形態における検知装置200では2つの光源3が設けられる点で異なる。また、実施の形態1では1つの受光部4が設けられていたが、本実施の形態における検知装置200では第1受光部41及び第2受光部42が設けられる点で異なる。さらに、本実施の形態では、実施の形態1のような波長分離部6を設けていない点で異なる。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図4に示すように、検知装置200は、制御部7、偏光分離部5の他に、第1光源31と、第2光源32と、第1受光部41と、第2受光部42とを有する。なお、本実施の形態では、偏光分離部5は、S偏光とP偏光とを分離可能な偏光ビームスプリッタである。
第1光源31が出射する光は、S偏光とP偏光との割合が略均一なランダム偏光であり、第1波長帯域の光である。本実施の形態では、第1波長帯域の波長は、λ1としている。第2光源32が出射する光は、S偏光とP偏光との割合が略均一なランダム偏光であり、第2波長帯域の光である。本実施の形態では、第2波長帯域の波長は、λ2としている。第1光源31及び第2光源32は、各々の光軸と対象物とが交差するように設けられる。第1光源31及び第2光源32は、実施の形態1と同様の光源3であってもよい。
第1受光部41は、偏光分離部5で分離された光のうち、S偏光を受光する。第2受光部42は、偏光分離部5で分離された光のうち、P偏光を受光する。第1受光部41及び第2受光部42は、受光した光に基づく情報を制御部7に送信する。
制御部7の電源制御部72は、第1光源31が波長λ1の光を出射するように制御し、第2光源32が波長λ1の光を出射するように制御する。電源制御部72は、第1光源31及び第2光源32が互い違いで、交互に点灯及び消灯するように制御する。
図5は、実施の形態2に係る検知装置200を示す模式図である。なお、図5に示すように、偏光分離部5は、実施の形態1と同様のS偏光フィルタ52及びP偏光フィルタ51であってもよい。この場合、実施の形態1と同様に、1つの受光部4でもよい。
この検知装置200においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置200の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置200において、光源3は、第1波長帯域の波長λ1の光を出射する第1光源31と、第2波長帯域の波長λ2の光を出射する第2光源32とを有する。そして、制御部7は、第1光源31と第2光源32とが互い違いで、交互に点灯及び消灯するように制御する。
この構成によれば、第1光源31が波長λ1の光を出射し、第2光源32が波長λ2の光を出射するため、実施の形態1のように波長分離部6を必要としない。このため、光源3の光から波長を分離する構成を設けることなく、対象物を介した波長λ1と波長λ2との光をそれぞれ受光することができる。このため、検知装置200の大型化を抑制することができる。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態2の変形例)
以下、実施の形態2の本変形例に係る検知装置200について、図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2の変形例に係る検知装置200を示す模式図である。
実施の形態2では、実施の形態1と同様、受光部4は、照射された光が対象物で散乱した光を受光するように、光源3側で対象物と向かい合うように設けられるが、図6に示すように、実施の形態2の本変形例では、受光部4は、照射された光が対象物で正反射した光を受光するように設けられる点で相違している。また、実施の形態2では、偏光分離部5によってP偏光とS偏光とに分離していたが、実施の形態2の本変形例では、偏光分離部5はP偏光フィルタ51だけを用いている。つまり、偏光分離部5は、S偏光及びP偏光を含む光から、少なくともP偏光を分離する。
実施の形態2の本変形例において、検知装置200は、皮膚の水分量を検知するにあたり、おおよそ、皮膚における角質層(約10μm〜20μm)の水分量を知ることに最適である。この角質層の水分量により皮膚の状態(保湿の状態、乾燥の状態、肌荒れ等)を検知することができる。つまり、皮膚の比較的浅い部分の水分量の多寡で、皮膚の状況を検知することができる。そこで、本実施の形態では、P偏光だけを用いる。
実施の形態2の本変形例における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図6に示すように、制御部7は、式1を用いて情報P1及び情報P2から水分量と相関のある指数Aを算出する(中村睦子、中内茂樹著「近赤外分光画像で見る化粧品の保湿効果」 光学、2010年 39巻 11号 P529−P533参照)。
ここで、指数Aは、対象物が乾燥した状態で0となり、対象物が有する水分量が多くなればなるほど0より大きくなることを表す指標である。
制御部7は、算出した指数Aから、記憶部11に格納されている計算式やテーブルに従って、対象物の水分量を演算する。例えば、計算式やテーブルは、皮膚と水分量との光量比から導かれた検量線であってもよい。
この検知装置200では、身体に装着することで、皮膚の水分量(皮膚における水分の状態)を検知することができる。この場合、人体の皮膚が対象物となる。検知装置200では、受光部4が皮膚(皮膚の表面と皮膚の内部)で反射した光を受光し、制御部7が、受光部4を介して得た光の強度から、皮膚の水分量を算出する。
皮膚に入射した光は、皮膚の表面で反射される光と、皮膚の内部(約10μm〜約20μm)まで入射して散乱された光とがある。皮膚の内部で散乱した光は、皮膚の表面で反射する光が正反射する方向とは異なる方向に、大部分の光が出射してしまう。また、皮膚で反射した光のうちP偏光が受光されるため、皮膚の表面での反射が少なくなる。このため、この検知装置200では、皮膚の表面から少し内部まで入った反射光を受光することで、皮膚の水分量だけを検知することが可能となる。
なお、皮膚の状態を検知するにあたり、P偏光を用いているが、これは必須ではなく、S偏光を用いてもよい。また、対象物の状態の水分量を検知すればよく、凍結の状態を検知することは、必須ではない。
[検知装置の動作]
次に、検知装置200における動作の一例について、図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態2の変形例に係る検知装置200の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、使用者は、皮膚における水分量を検知するために、検知装置200を身体に装着する。そして、検知装置200に格納されている専用のプログラムを起動させる。
例えば、P1偏光強度の光を受光部4に受光させる場合、制御部7が第1光源31から波長λ1の光を出射させるため、皮膚に光が照射される(ステップS21)。皮膚に照射された光は、散乱され、一部の光がP偏光フィルタ51側に向かう。そして、この光は、P偏光フィルタ51を通過して、P1偏光強度の光となり、受光部4で受光される。受光部4は、受光した光量に関する情報P1を生成し、情報P1を制御部7に送信する(ステップS22)。そして、制御部7は第1光源31を消灯させる。
次に、制御部7は、受光部4から情報P1を受信し、情報P1を記憶部11に格納する(ステップS23)。
次に、P2偏光強度の光を受光部4に受光させる場合、制御部7が第2光源32から波長λ2の光を出射させるため、皮膚に光が照射される(ステップS24)。皮膚に照射された光は、散乱され、一部の光がP偏光フィルタ51側に向かう。そして、この光は、P偏光フィルタ51を通過して、P2偏光強度の光となり、受光部4で受光される。受光部4は、受光した光量に関する情報P2を生成し、情報P2を制御部7に送信する(ステップS25)。そして、制御部7は第2光源32を消灯させる。
次に、制御部7は、受光部4から情報P2を受信し、情報P2を記憶部11に格納する(ステップS26)。
次に、制御部7は、式1を用いて、情報P1及び情報P2から水分量と相関のある指数Aを算出する(ステップS27)。なお、情報P1と情報P2とが等しくなるように、あらかじめ第1光源31と第2光源32との出力を調節すれば、指数Aは、対象物が乾燥の状態にある場合に0となり、対象物の水分量が増加するにしたがって0よりも大きくなる。
次に、制御部7は、算出した指数Aから、記憶部11に格納されている計算式やテーブルに従って水分量を演算する(ステップS28)。
次に、制御部7は、ステップS28で得た水分量を出力部8に出力させる(ステップS29)。こうして、このフローはスタートに戻り、同様の検知を行い続ける。
実施の形態2の本変形例における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態3)
以下、本実施の形態に係る検知装置300について説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置300の構成について、図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態3に係る検知装置300を示す模式図である。
実施の形態2では光源3の光を直接、対象物に照射していたが、本実施の形態では走査ミラー310(反射板の一例)を介して対象物に光を照射する点で異なる。
また、本実施の形態では、カメラ140とP偏光フィルタ51との間に、入射した光を散乱させる散乱板150が設けられる点で、実施の形態2の変形例と異なる。
なお、実施の形態2の変形例と同様に、カメラ140は、照射された光が対象物で正反射した光を受光するように設けられる。本実施の形態では、受光部4の一例としてカメラ140を用いている。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図8に示すように、走査ミラー310は、光源3からの光を、対象物の異なる場所に配光するように、揺動可能な鏡である。走査ミラー310は、例えば、2つのガルバノミラーを組み合わせた鏡を使用してもよい。具体的には、制御部7は、第1光源31から光が出射されると、走査ミラー310を揺動させながら、光源3からの光を反射させて、対象物に照射する光を走査させる。走査ミラー310の揺動は、駆動機構を有する揺動部311により行われる。この光の走査は、対象物における所定の範囲内を照射するように、走査ミラー310が揺動する。
なお、本実施の形態では、走査ミラー310を揺動させているが、第1光源31及び第2光源32を揺動させる構成でもよい。
なお、散乱板150と受光部4との間に、ND(Neutral Density)フィルタを備えてもよい。そして、カメラ140は、散乱板150及びNDフィルタを介した光を受光してもよい。
この検知装置300では、第1光源31及び第2光源32から出射した光は、走査ミラー310で反射、及び対象物で散乱し、P偏光フィルタ51及び散乱板150を介してカメラ140で受光される。具体的には、走査ミラー310を介して対象物で反射した光は、P偏光だけがP偏光フィルタ51を透過し、散乱板150に入射して散乱される。そして、カメラ140は、散乱板150で散乱された光を検出する。また、散乱板150には、対象物で反射した以外の光である、対象物で散乱した光も入射する。散乱板150を介して出射した光は、反射光による強度の高い輝点と、対象物で散乱した光による強度の低い輝点とが存在する。制御部7は、カメラ140から得た情報のうち、強度の高い輝点の情報だけを記憶してもよい。
この検知装置300においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置300の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置300は、さらに、光源3からの光を対象物に向けて反射する走査ミラー310と、走査ミラー310で反射した光を対象物に走査させるように、走査ミラー310及び光源3の少なくとも一方を揺動させる揺動部311とを備える。
この構成によれば、走査ミラー310及び光源3の少なくとも一方を揺動させない構成に比べ、対象物の状態をより広域な範囲で検知することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置300は、さらに、対象物と受光部4との間に、光を散乱させる散乱板150を備える。そして、受光部4は、散乱板150を介した光を受光する。
この構成によれば、制御部7は、反射光による強度の高い輝点や、対象物で散乱した光による強度の低い輝点等を認識する。このため、制御部7は、対象物における水分量の分布を検知することができる。
特に、本実施の形態に係る検知装置300において、受光部4は、カメラ140である。そして、カメラ140は、散乱板150を介した光を受光する。
この構成によれば、反射光による強度の高い輝点や、対象物で散乱した光による強度の低い輝点等を画像情報として認識する。このため、制御部7は、強度の高い輝点と強度の低い輝点を表した、対象物における水分量を示す画像情報から検知することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置300は、散乱板150と受光部4との間に、NDフィルタを備えてもよい。そして、カメラ140は、散乱板150及びNDフィルタを介した光を受光してもよい。
この構成によれば、NDフィルタが、散乱板150で強度の高い輝点と、強度の低い輝点とが分離した光から、強度の高い輝点の光だけを通過させる。このため、対象物における水分量を示す画像情報から確実に検知することができる。
特に、カメラ140の代わりに単一画素の受光部4を用いて散乱板150全面の光強度を検知することができるようにしてもよい。この場合、NDフィルタを設けるだけで、散乱板150の光から強度の高い光だけを通過させることができる。このため、簡易な構成で、対象物の水分量を確実に検知することができる。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態4)
以下、本実施の形態に係る検知装置400について説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置400の構成について、図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態4に係る検知装置400を示す模式図である。
本実施の形態では、反射ミラー410を設け、反射ミラー410と対象物とを介して反射等した光を受光するという点で、実施の形態2に対して相違する。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図9に示すように、実施の形態2における、第1光源31、第2光源32、制御部7、記憶部11、電源部9、偏光分離部5、第1受光部41及び第2受光部42の他に、本実施の形態では、検知装置400は、さらに、筺体420と、反射ミラー410とを備える。
筺体420は、第1光源31、第2光源32、制御部7、記憶部11、電源部9、偏光分離部5、第1受光部41、第2受光部42及び反射ミラー410等を収容した箱状の部材である。
第1光源31及び第2光源32は、対象物に向けて光が照射されるように、筺体420に設けられる。
反射ミラー410は、対象物に対して向かい合うように設けられる。具体的には、反射ミラー410は、第1光源31及び第2光源32からの光が対象物と反射ミラー410との間で、それぞれ1回以上反射するように設けられる。なお、第1光源31及び第2光源32における各々の光軸は、反射ミラー410に向いていてもよい。つまり、反射ミラー410と対象物との間で、それぞれ1回以上の反射が行われればよい。なお、対象物においては、拡散した光を受光部4が受光してもよい。
このような検知装置400では、第1光源31及び第2光源32とから出射した光は、透光板430と対象物との間を、それぞれ1回以上反射しながら第1受光部41及び第2受光部42側に進行する。第1受光部41及び第2受光部42は、反射ミラー410と対象物との間で反射等が行われた後の光を、偏光分離部5を介して受光する。
この検知装置400においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置400の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置400は、さらに、光を反射する反射ミラー410と、反射ミラー410、光源3、受光部4、偏光分離部5及び判断部71を収容した筺体420とを備える。そして、反射ミラー410は、対象物と向かい合う状態で、反射ミラー410と対象物との間で、それぞれ1回以上の反射が起こるように筺体420に設けられる。
この構成によれば、対象物に光が繰り返し入射するため、対象物の状態をより正確に検知することができ、検知性能の信頼性及び感度を高めることができる。特に、対象物において微量の水分を検知する場合において好適である。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態4の変形例)
以下、実施の形態4の本変形例に係る検知装置400について、図10を用いて説明する。
図10は、実施の形態4の変形例に係る検知装置400を示す模式図である。
実施の形態4の本変形例では、反射ミラー410と対象物との間に透光板430を設けている点で、実施の形態4に対して相違する。
実施の形態4の本変形例における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図10に示すように、実施の形態4の本変形例において、検知装置400は、例えば、車両におけるラジエータグリル等に設けられる。検知装置400は、第1光源31、第2光源32、制御部7、記憶部11、電源部9、偏光分離部5、第1受光部41及び第2受光部42の他に、さらに、光を透光させる透明な透光板430を有している。
透光板430は、筺体420の外周面から露出した状態で筺体420に設けられる。透光板430は、筺体420から露出している面である境界面431を有している。境界面431には、雪や雨等が付着する。実施の形態4の本変形例における対象物とは、透光板430に付着した雨や雪等である。なお、透光板430は、入射した光の吸収率が0でなくとも、波長λ1と波長λ2とに対する吸収率がほぼ同じであれば、どのような透光板430を用いても構わない。
第1光源31及び第2光源32は、透光板430の反射ミラー410側から入射し、境界面431で反射するように設けられている。
このような検知装置400では、第1光源31及び第2光源32から出射した光は、透光板430と反射ミラー410との間を反射しながら第1受光部41及び第2受光部42側に向かって進行する。具体的には、透光板430に入射した光は、透光板430の反射ミラー410側から入射して透光板430内部を透過し、透光板430の境界面431で反射して反射ミラー410に向かう。そして、同様の反射を繰り返して第1受光部41及び第2受光部42側に向かう。なお、透光板430の反射ミラー410側の面には、境界面431で反射した光が、透光板430の反射ミラー410側の面で反射が起こらないように、無反射コーティングをしておくことが好ましい。この場合、透光板430の境界面431と反射ミラー410とで好適に反射が繰り返される。
例えば、透光板430の境界面431に雪や雨等が付着した場合、境界面431に入射した光は、一部の光は境界面431で乱反射されるが、他の一部の光は透光板430の境界面431で屈折する。また、雪や雨などが境界面431に付着していない場合は、境界面431で正反射される。こうして、この検知装置400では、境界面431に付着した対象物を検知することができる。なお、例えば、境界面431に氷の膜ができる場合があるため、表面を粗面にして乱反射することができるように構成していてもよい。また、例えば、水であれば、外部との界面が略平坦になるため、界面で正反射されたりする。
この検知装置400においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、実施の形態4の本変形例における検知装置400の作用効果について説明する。
上述したように、実施の形態4の本変形例に係る検知装置400は、さらに、対象物が付着する境界面431を有し、光を透光させる透光板430を備える。そして、透光板430は、透光板430と反射ミラー410との間で、それぞれ1回以上の反射が起こるように、境界面431が筺体420から露出するように設けられる。
この構成によれば、透光板430の境界面431に光が繰り返し入射するため、透光板430の境界面431を検出面することができ、検知性能の信頼性及び感度を高めることができる。
特に、透光板430の境界面431と反射ミラー410とで多重反射させることで、検知装置400を小型化することができる。
実施の形態4の本変形例における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態5)
以下、本実施の形態に係る検知装置500について、図11を用いて説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置500の構成について、図11を用いて説明する。
図11は、実施の形態5に係る検知装置500を示す模式図である。
本実施の形態では、反射ミラー410及び透光板430の代わりにライトガイド530(透光部の一例)を備えた点で、実施の形態4に対して相違する。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
検知装置500は、第1光源31、第2光源32、制御部7、記憶部11、電源部9、偏光分離部5、第1受光部41及び第2受光部42の他に、さらに、ライトガイド530を備える。
ライトガイド530は、入射面531と、出射面532と、境界面533とを有し、長尺な透光性の部材である。ライトガイド530の一端側には、入射面531から光が入射するように、第1光源31及び第2光源32が設けられる。ライトガイド530の他端側には、偏光分離部5、第1受光部41及び第2受光部42が設けられ、出射面532から出射する光を受光する。ライトガイド530は、境界面533が筺体420の外周面から露出するように設けられる。ライトガイド530は、例えば、多成分ガラス、石英、プラスチック等の樹脂等で構成されていてもよく、液体ライトガイドであってもよい。なお、境界面533においても、表面を粗面にして乱反射することができるように構成していてもよい。
例えば、検知装置500を車両に用いる場合では、境界面533に雪や雨等が付着し、検知装置500を人体における皮膚の水分量を検知するために使用する場合では、境界面533に皮膚が接触する。
このような検知装置500では、第1光源31及び第2光源32とから出射した光は、ライトガイド530の入射面531から入射し、ライトガイド530内で反射をしながら透光し、第1受光部41及び第2受光部42側に向かって進行する。
この検知装置500においても、図2に示すフローチャートと同様の動作が行われる。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置500の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置500は、さらに、対象物が付着する境界面533を有し、光を透光させるライトガイド530を備える。ライトガイド530は、光源3から入射した光を、偏光分離部5を介して受光部4に導く。
この構成によれば、ライトガイド530の境界面533に光が繰り返し入射するため、ライトガイド530の境界面533を検出面とすることができ、検知性能の信頼性及び感度を高めることができる。
特に、ライトガイド530内で多重反射させることで、検知装置500を小型化することができる。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態6)
以下、本実施の形態に係る検知装置600について説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置600の構成について、図12を用いて説明する。
図12は、実施の形態6に係る検知装置600を備えた車両610を示す模式図である。
実施の形態1の変形例では車両110の進行方向に向けて光源3の光を照射して対象物の状態を検知していたが、本実施の形態では、車両610の下方側(対象物側)及びその周辺に向けて光源3の光を照射して対象物の状態を検知する点等で異なる。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1の変形例等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図12に示すように、車両610は、検知装置600と、筒体630とを有し、例えば、検知装置600及び筒体630をエンジンルームに収容している。なお、本実施の形態では、検知装置600及び筒体630は、車両610のエンジンルームに設けられているが、これに限定されず、車両610下側の対象物を検知さえすれば、如何様に設けられていてもよい。
検知装置600は、筒体630の一端側に配置されている。つまり、検知装置600は、筒体630に対して対象物とは反対側に設けられている。検知装置600は、筒体630を介して車両610下側の対象物を検知する。なお、本実施の形態では、対象物は、例えば道路の路面である。
検知装置600は、検知範囲内の対象物の状態を検知する。この検知範囲は、対象物の状態を検知することができる範囲であり、主に、対象物に光が照射される範囲である。検知範囲は、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物である。具体的には、検知範囲は、車両610直下及び車両610直下周囲における対象物である。本実施の形態では、検知範囲の一例として、筒体630の他端側から出射し、対象物に照射された光の範囲としている。
筒体630は、検知装置600の光源3が照射する光と、対象物で反射又は散乱した光とを案内する管状をなしている。本実施の形態では、筒体630が鉛直方向に対して傾斜した状態で車体に設けられているが、鉛直方向と略平行に設けられていてもよい。
筒体630は、長尺な筒であり、案内孔631と、一端側開口631aと、他端側開口631bとを有する。案内孔631は、長手方向に延びるように形成されている。案内孔631は、一端側から他端側まで貫通している。案内孔631の一端側が一端側開口631aであり、案内孔631の他端側が他端側開口631bである。本実施の形態では、一端側が上側であり、他端側が下側である。一端側開口631a近傍には、検知装置600が光を出射及び受光(筒体630を介して対象物の状態を検知)できるように設けられている。他端側開口631bは、対象物側と向かい合い、車両610の外部と連続している。
案内孔631を形成する面は、光を反射する光反射面であり、例えば、鏡面反射する面である。
なお、本実施の形態では、筒体630は、断面が円形の円筒状をなしているが、筒状であればよく、多角形状等をなしていてもよい。また、筒体630の径は略一定であるが、検知装置600から遠ざかるに従って次第に大径になってもよい。つまり、筒体630の対象物側が大径であり、筒体630の検知装置600側が小径であってもよい。
このような検知装置600を用いて対象物の状態を検知する場合、検知装置600の光源3は、筒体630の案内孔631を通過して(介して)対象物に光を照射する。そして、検知装置600の受光部4は、対象物で反射又は散乱した光を筒体630の案内孔631を通過して(介して)受光する。こうして、対象物の状態を検知する。検知装置600における動作については、実施の形態1等と同様でありその説明を省略する。
図13は、実施の形態6に係る車両支援システムの車両610を示すブロック図である。図14は、実施の形態6に係る車両支援システムを示す模式図である。
検知装置600は、図14に示すように、車両610に搭載される車両支援システムを構成していてもよい。車両支援システムでは、一例として3台の車両610を示しているが、台数は特に限定されない。
図13に示すように、検知装置600は、光源3、制御部7、記憶部11、電源部9の他に、通信部640を有している。通信部640は、他の車両610と通信を行うことが可能なアンテナ等を有する装置である。
図13及び図14に示すように、制御部7は、通信部640を介して同一道路を走行している他の車両610から位置情報を逐次、共有し合ってもよい。例えば、制御部7は、同一道路を走行している後続の車両610に向けて、車両610下方及び車両610の下方の周辺における対象物の状態に関する情報を、通信部640を介して送信してもよい。本実施の形態では、例えば、先頭の車両610の検知装置600が検知した対象物の状態に関する情報を、後続の2台の車両610に送信してもよい。そして、後続の2台の車両610は、通信部640を介して受信し、この情報を出力部8に出力してもよい。また、後続の2台の車両610は、通信部640を介してさらに後続の車両610に、対象物の状態に関する情報を送信してもよい。この場合、後続の車両610は、先頭の車両610から対象物の状態に関する情報を得ることができるため、車両610における危険回避をより行い易くなる。なお、後続の各々の車両610も、対象物の状態を検知する。
また、検知装置600は、カーナビなどに設けられている車載用アンテナを用いて後続の車両610と通信を行ってもよい。このため、通信部640は、検知装置600の必須の構成要件ではない。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置600の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置600において、当該検知装置600が対象物の状態を検知する検知範囲は、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物である。
この構成によれば、車両610下側の対象物の状態を検知するため、車両610の進行方向に向けて光を照射する場合に比べ、検知範囲と検知装置600との距離を短くすることができる。このため、車両610のピッチングによる検知範囲の位置ズレを小さくすることができる。
また、本実施の形態に係る検知装置600において、車両610には、光源3の光を照射する方向に延びる筒体630が設けられる。そして、検知装置600は、筒体630を介して対象物の状態を検知する。
この構成によれば、検知装置600は、筒体630を介して対象物の状態を検知するため、車両610の下面に検知装置600を直接取り付ける場合に比べて、対象物から遠ざかっている。このため、車両610の走行中に発生する、泥跳ね等により光の照射や受光ができなくなったり、石跳ね等により検知装置600が故障してしまったりする等の不具合を抑制することができる。
また、この検知装置600では、筒体630が車両610の下方に位置する対象物と他端側開口631bとが向かい合っているため、降雨や降雪の環境下であっても、筒体630の案内孔631に水や雪などが詰まり難い。このため、検知装置600の誤検知を抑制することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置600において、筒体630の内面は、光を反射する光反射面を有する。
この構成によれば、筒体630の光反射面が光を反射するため、筒体630を通過する際における光の利用効率が低下し難い。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態6の変形例)
以下、本実施の形態に係る検知装置601について、図15を用いて説明する。
図15は、実施の形態6の変形例に係る検知装置601を備えた車両610を示す模式図である。
実施の形態1の変形例では、車両110の進行方向に向けて光源3の光を照射して対象物の状態を検知するが、実施の形態6の本変形例では、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に向けて光源3の光を照射して対象物の状態を検知する点等で異なる。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1の変形例等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図15の一点鎖線は、車両610の前側(車両610の進行方向側)及び後側(車両610の進行方向とは反対側)を区切る線であり、車両610の長さ方向における略中央を通過する線である。
図15に示すように、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物において、車両610の進行方向側が第1領域E1であり、車両610の進行方向と反対側が第2領域E2である。第1領域E1及び第2領域E2は、互いに異なる範囲である。実施の形態6の本変形例において、検知装置601が対象物の状態を検知する検知範囲は、第2領域E2である。なお、図15では、検知装置601の検知範囲を破線で示し、この検知範囲は、第2領域E2の一部が含まれる。
検知装置601は、車両610後方側(車両610の進行方向とは反対側)に設けられている。具体的には、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物において、検知装置601は、車両610の後方側の対象物の状態を検知するように設けられている。つまり、検知装置601は、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物である第2領域E2を検知するように、車両610に設けられている。なお、検知装置601は、車両610の下方の全域を検知してもよい。
なお、検知装置601は、第2領域E2における対象物の状態を検知するが、さらに、第1領域E1における対象物の状態を検知してもよい。
このような実施の形態6の本変形例に係る検知装置601において、車両610の下方及び車両610の下方の周辺に位置する対象物は、車両610の進行方向側の第1領域E1と、第1領域E1と異なり、車両610の進行方向とは反対側の第2領域E2とを有する。そして、当該検知装置601の検知範囲は、第2領域E2である。
このように、第2領域E2を検知するために検知装置601を車両610の後方側に配置すれば、車両610走行中に発生する、泥跳ね等により照射や受光ができなくなったり、石跳ね等により検知装置601が故障してしまったりする等の不具合をより抑制することができる。
また、車両610がリヤビューカメラを備える場合、車両610が後方移動(バック)する際に、後輪が走行する範囲の対象物の状態を検知することもできる。
特に、検知装置601は、車輪112から離間した位置に設けることが好ましい。
実施の形態6の本変形例における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態7)
以下、本実施の形態に係る検知装置700について説明する。
[構成]
本実施の形態に係る検知装置700の構成について、図16及び図17の(a)を用いて説明する。
図16は、実施の形態7に係る検知装置700を備えた車両710を示す模式図である。図17の(a)は、実施の形態7に係る検知装置700と車輪112とを示す模式図である。図17の(a)で示す直線の矢印は、車輪112の回転方向に沿った接線方向を示している。
実施の形態1の変形例では車両110の進行方向に向けて光源3の光を照射して対象物の状態を検知していたが、本実施の形態では、車両710の車輪112に向けて光源3の光を照射して車輪112の状態を検知する点等で異なる。
本実施の形態における他の構成は、実施の形態1の変形例等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図16及び図17の(a)に示すように、検知装置700は、車両710の車輪112の外周端面(走行時に対象物と接触する面(表面の一例))における状態を検知するように、車輪112を収納するタイヤハウスに設けられている。検知装置700は、例えば、タイヤハウスを形成するフェンダライナに設けられている。車輪112は、軸心O周りで回転する車軸に接続されたホイールと、ホイールの外周に設けられたタイヤとを有する。なお、検知装置700の配置位置は、車輪112の外周端面における状態を検知すればよいため、本実施の形態の配置に限定されない。
検知装置700は、車輪112表面の状態を検知するように車両710に設けられる。検知装置700における光源3の光を照射する方向は、図17の(a)に示すように、車両710の略進行方向に向いている。具体的には、検知装置700の光源3は、車輪112の回転方向に沿った接線方向に沿って光を照射する。
[比較例]
図17の(b)は、比較例に係る検知装置700’と車輪112’とを示す模式図である。図17の(b)で示す直線の矢印は、車輪112の回転方向に沿った接線方向を示している。
図17の(b)に示すように、検知装置700’は、光源3の光を照射する方向が車輪112’の回転方向に沿った接線方向と相対するように設けられている。この場合では、車輪112’の回転時に車輪112’の回転方向に沿った接線方向に向かって、車輪112’に付着した泥、石等が向かう。このため、泥跳ね等により照射や受光ができなくなったり、石跳ね等により検知装置700’が故障してしまったりする等の不具合が生じる。
[作用効果]
次に、本実施の形態における検知装置700の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る検知装置700において、対象物は、車輪112である。そして、検知装置700は、車輪112表面の状態を検知するように車両710に設けられる。
この構成によれば、検知装置700を車輪112に近い位置に配置することができるため、実施の形態1の変形例のように車両110の進行方向に向けて光源3の光を照射する場合に比べ、光源3の光出射出力を小さくすることができる。このため、検知装置700の省エネルギー化を実現することができる。
また、この検知装置700は、車輪112におけるタイヤと、タイヤに付着している水分等を識別するだけでよいため、複雑な材質からなるアスファルトとアスファルトに付着している水分等との識別に比べて、高精度な識別精度を必要としない。このため、この検知装置700おける製造コストの高騰化を抑制することができる。
特に、この検知装置700を車両710に用いれば、路面とタイヤとの間の水分等の有無を検知することができるため、タイヤのグリップ力をより正確に把握することができる。例えば、車両710走行中に凍結した路面、積雪した路面等から乾燥した路面に移り変わった際でも、タイヤが路面の影響を受けて濡れている場合なども把握することができる。
また、本実施の形態に係る検知装置700において、光源3は、車輪112の回転方向に沿った接線方向に沿って光を照射する。
この構成によれば、図17の(b)のように、車輪112の回転時に、車輪112の回転方向に沿った接線方向に向かって、車輪112に付着した泥、石等が検知装置700に当たり難い。このため、泥跳ね等により照射や受光ができなくなったり、石跳ね等により検知装置700が故障してしまったりする等の不具合が生じ難い。
本実施の形態における他の作用効果についても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
(その他変形例等)
以上、本発明に係る検知装置、検知方法及び検知プログラムについて、各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態において、受光部が対象物で散乱した光を受光できるように、図1等のように光源側に受光部を配置した構成では、受光部は、対象物で正反射した光を受光する場合に比べ、検知装置の大型化を抑制することができる。
また、上記実施の形態における水において、水面でのP偏光の反射率は、入射角が53.1°の時に0となるため、出射した光における対象物への入射角を53.1°付近に設定すると、散乱した光のP偏光の強度とS偏光の強度との比を大きくすることができる。この場合、検知装置の検出精度を上げることができる。
また、上記実施の形態において、出力部は、凍結の状態、冠水の状態、積雪の状態、乾燥の状態を表示するだけでなく、文字、映像等の出力を行う表示部であってもよい。また、出力部は、スピーカ等を介して、音声の出力を行ってもよい。この場合、検知装置が車両に適用されると、車両における周囲の対象物の状態を検知するため、制御部が出力部を介して搭乗者に周囲状況を知らせることで、安全走行支援を行うことができる。
また、上記実施の形態において、検知装置を車両に適用する場合、車両が停止して搭乗者が降車する際に、出力部は、車両における周囲の対象物の状況を知らせてもよい。この場合、凍結等による降車時における搭乗者の転倒などを抑制することができる。
また、上記実施の形態において、検知装置を車両に適用する場合、制御部は、車両の運転状況や搭乗者のシートベルト装着状況などの情報を取得してもよい。そして、出力部は、シートベルト装着がされていない場合に、その旨を知らせてもよい。
また、上記実施の形態において、人体の皮膚の水分量を検知する場合、制御部は、検知した皮膚の水分量を記憶部に格納してもよい。そして、制御部は、過去に検知したデータを基に、データの比較を行い、その結果を出力してもよい。
また、上記実施の形態において、検知装置を人体における皮膚の水分量を検知するために使用してもよい。つまり、実施の形態2の変形例以外の検知装置においても使用することができる。
以上、本発明の一つまたは複数の態様について、各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。