JP2018024944A - 低熱膨張係数で高い密着性を有する複合体 - Google Patents

低熱膨張係数で高い密着性を有する複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】熱膨張係数の低い複合体の提供。【解決手段】鉄基焼結体にアルミニウム合金を含浸させてなる複合体で、使用する鉄基焼結体を、質量%で、C:0.5〜1.5%、Cu:10〜20%未満を含む組成と、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体とする複合体。これにより、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で含浸した複合体とアルミニウム合金との境界強度が10MPa以上となり、かつ複合体としての熱膨張係数が、室温から200℃までの平均で、14.0×10-6/℃以下の低い熱膨張係数となる複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等の内燃機関に使用されるアルミニウム合金製部材内に補強材として配置されて使用される、鉄基焼結体にアルミニウム合金を含浸させてなる複合体に係り、とくに接合強度の向上、および熱膨張係数の低下に関する。
近年、地球環境の保全という観点から、自動車等の燃費向上が強く要望されてきた。このような要望から、エンジンの軽量化が進められ、アルミニウム合金製エンジンが一般化しつつある。しかし、アルミニウム合金は従来の鋳鉄に比べて強度が低く、とくに高温で高荷重が負荷される部材では、強度が不足するという問題が生じる。また、アルミニウム合金は従来の鋳鉄に比べて、熱膨張係数が高いことなど、自動車用構造部品として材料特性が不足するという問題を残していた。
アルミニウム合金製部材の材料特性を向上させる方法として、例えば、重力鋳造、ダイカスト鋳造などにより、異種材料を鋳包む技術や、異種材料と複合化する技術がある。
例えば、特許文献1には、金型内に金属多孔体を保持して該金型内にアルミニウム合金の溶湯を注入し、その後、加圧力400kg/cm2以上の高圧凝固鋳造法で金属多孔体を鋳包んだアルミニウム合金鋳物素材を成形し、次に、該アルミニウム合金鋳物素材を450〜550℃の温度で1〜10時間加熱保持して金属多孔体とアルミニウム合金との境界にアルミニウムと金属多孔体の金属との化合物層を生成する金属間化合物生成処理を施すアルミニウム合金鋳物の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、金属多孔体とアルミニウム合金との接合強度が高く、しかも耐久性が向上するとしている。
また、特許文献2には、気孔をもつ三次元格子構造を備えた鉄系の多孔質金属焼結体と、多孔質金属焼結体の気孔に含浸して固化した軽金属とを備え、多孔質金属焼結体を構成する金属をマイクロビッカース硬度でHV200〜800に設定した金属焼結体複合材料が記載されている。特許文献2に記載された技術では、重量比で、Cr、Mo、V、W、Mn、Siのうち少なくとも1種が2〜70%、炭素が0.07〜8.2%、不可避の不純物、残部鉄の組成をもつ鉄系原料粉末を用いて形成した粉末成形体を焼結し、気孔をもち体積率が30〜88%の三次元格子構造を備えた気体焼入可能な組成をもつ鉄系の多孔質金属焼結体とし、該多孔質金属焼結体を気体中で冷却する気体焼入れを行ったのち、該多孔質金属焼結体の気孔に軽金属の溶湯を含浸し、固化させて複合体とするとしている。
また、特許文献3には、鉄または鉄系金属をベースとし、これにCrが10〜40重量%含有されてなる金属多孔質予備成形体が記載され、注湯完了から溶湯含浸までに所定のタイムラグが存在する鋳造法で、この金属多孔質予備成形体に溶湯を加圧含浸させて金属複合部材とする技術が記載されている。
また、特許文献4には、軽合金補強用多孔質金属焼結体およびこれを用いた軽合金複合化部材が記載されている。特許文献4に記載された軽合金補強用多孔質金属焼結体は、合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体であって、多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ空孔のうち直径5μmを超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、圧環強さが200MPa以上である軽合金の含浸性に優れた軽合金補強用多孔質金属焼結体である。このような多孔質金属焼結体に、軽合金を含浸させて、複合化部材とすることができる。特許文献4に記載された技術によれば、圧環強度に優れ、鋳包み後の優れた接合性を有する軽合金補強用多孔質金属焼結体を安定して製造できるとしている。
また、特許文献5には、軽金属合金鋳包み性に優れた鉄系焼結体が記載されている。特許文献5に記載された鉄系焼結体は、質量%で、C:0.5〜2.5%、Cu:5〜40%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、空孔と、基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、室温から200℃までの平均熱膨張係数が13.5×10-6/℃以下、表面粗さがRzで10〜100μmである鉄系焼結体である。特許文献5に記載された鉄系焼結体では、鉄系焼結体の表面がショットブラスト処理を施されてなり、上記した表面粗さRzを有するとしている。また、特許文献5に記載された鉄系焼結体では、空孔を含むが、互いに独立または断続して存在する空孔として、軽金属合金の浸透による鉄系焼結体の特性劣化を防止できるとしている。
特公平02−30790号公報 特開平08−319504号公報 特開2001−276961号公報 特開2003−73755号公報 特開2004−204298号公報
しかし、特許文献1に記載された技術では、金属間化合物生成処理を施す必要があり、製造工程が複雑になるうえ、製造コストが高騰するという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、気体焼入れが可能なように、Cr、Mo、V等の合金元素を多量に含有する必要があり、金属焼結体複合材料としては、高価で経済的に不利となるという問題があった。また、特許文献3、4に記載された技術では、アルミニウム合金を金属多孔質予備成形体の内部まで十分に含浸させるためには、金属多孔質予備成形体を高温に予熱しておくことが必要になるという問題があった。
また、特許文献4、5に記載された技術では、複合体の形状因子やアルミニウム合金製部材の肉厚によってとくに薄肉部で、接合強度にバラツキが生じ、所望の密着性を確保できないという問題や、リサイクル性に劣るという問題があった。また、特許文献5に記載された技術では、ショットブラスト処理を施しており、製造コストの高騰を招くという問題もあった。
さらに、最近では、自動車車体重量の軽減、燃費向上という観点から、各自動車部材のコンパクト化が要望され、しかも各部材には、更なる機能向上が要望されている。とくに、小型化されたエンジンブロックとクランクシャフトとのクリアランス低減としては、エンジンブロック内のより狭いスペースにコンパクトに配置し、低い熱膨張係数と高い界面(接合)強度とを兼備することが強く要望されている。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、アルミニウム合金製部材の強度向上のため部材内に補強材として配置されて使用される、鉄基焼結体にアルミニウム合金を含浸させてなる複合体であって、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下と低い熱膨張係数を有し、かつ複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界強度が10MPa以上と高く、低い熱膨張係数と高い接合強度とを兼備する複合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、アルミニウム合金製部材内における複合体とアルミニウム合金との境界(界面)強度に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、まず、複合体に使用する鉄基焼結体を、Cuを含有し、基地をパーライトとしたうえで、基地中に遊離Cu相が分散した組織を有する鉄基焼結体とし、さらに鉄基焼結体の空孔を連続空孔とし、さらにショットブラスト処理を施すことなく、鉄基焼結体表面を、JIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzで10〜60μmの範囲の比較的粗い表面性状を有する多孔質鉄基焼結体とすることに想到した。使用する鉄基焼結体を、このような多孔質鉄基焼結体とすることにより、アルミニウム合金製部材内に配置し、アルミニウム合金を含浸させた際に、高い接合強度を有する複合体とすることができ、しかも、このような複合体は、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下と低い熱膨張係数を有することを見出した。
なお、この理由については、現時点では、明確になっていないが、本発明者らは、次のように考えている。CuとAlとは反応して化合物を作りやすい。そのため、Cuを含有しかつ基地相中に遊離Cuが分散した組織を有する多孔質鉄基焼結体では、空孔内面にも遊離Cuが分散し、多孔質鉄基焼結体の空孔にアルミニウム合金を含浸させた際に、開口した空孔内面に分散した遊離CuとAlとが反応して、焼結体の空孔内へのアルミニウム合金の含浸性が向上し、複合体としての接合強度が増加するものと考えられる。さらに、連続した空孔とし、ショットブラスト処理を施さないことにより連続した空孔の閉塞もなく、アルミニウム合金が深くまで含浸しやすくなったこと、さらに、表面粗さを比較的粗くすることにより、アルミニウム合金の含浸がしやすくなったこと、などが複雑に作用した結果であると考えている。なお、このような複合体は、C、Cu以外に合金元素を含有することなく、比較的安価に上記した高い接合強度と、かつ上記した低い熱膨張係数を兼備する複合体とすることができる、という利点がある。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鉄基焼結体にアルミニウム合金が含浸してなる複合体であって、前記鉄基焼結体が、質量%で、C:0.4〜1.5%、Cu:10%以上20%未満を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体であり、前記含浸してなる複合体が、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で該含浸した複合体と前記アルミニウム合金との境界強度が10MPa以上となることを特徴とする複合体。
(2)鉄基粉末と、銅粉末と、黒鉛粉末と、潤滑剤粉末と、を混合し混合粉としたのち、該混合粉を金型に充填し加圧成形して圧粉体とし、ついで該圧粉体を焼結して所定形状の鉄基焼結体とし、ついで該鉄基焼結体をアルミニウム合金に鋳包み、該鉄基焼結体の空孔にアルミニウム合金が含浸してなる複合体とする複合体の製造方法において、前記鉄基粉末を、60メッシュの篩を通過し(−60メッシュ)、350メッシュの篩を通過しない(+350メッシュ)粒度分布に調整した鉄基粉末とし、前記銅粉末を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量に対する質量%で、10%以上20%未満となるように配合し、前記黒鉛粉を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量に対する質量%で、0.4〜1.5%となるように配合し、前記圧粉体の加圧成形条件および/または焼結条件を調整して、前記鉄基焼結体が、質量%で、C:0.4〜1.5%、Cu:10%以上20%未満を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体とし、前記含浸してなる複合体を、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で該含浸した複合体と前記アルミニウム合金との境界強度が10MPa以上である複合体とすることを特徴とする複合体の製造方法。
(3)(2)において、前記潤滑剤粉末を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量100質量部に対する質量部で、0.3〜3.0質量部となるように配合することを特徴とする複合体の製造方法。
(4)(1)において、前記多孔質鉄基焼結体が、該多孔質鉄基焼結体の肉厚方向に1つ又は複数の貫通孔を有し、該貫通孔が、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである表面性状の内面を有することを特徴とする複合体。
(5)(2)または(3)において、前記多孔質鉄基焼結体が、該多孔質鉄基焼結体の肉厚方向に1つ又は複数の貫通孔を有し、該貫通孔が、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである表面性状の内面を有する焼結体であることを特徴とする複合体の製造方法。
本発明によれば、複合体として室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下と低い熱膨張係数を有し、さらにアルミニウム合金製部材内にアルミニウム合金に鋳包まれた状態でアルミニウム合金を含浸した複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界(界面)強度が10MPa以上と高い接合強度を有し、密着性に優れ、低い熱膨張係数と高い接合強度とを兼備する複合体を比較的安価に、しかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、部材をコンパクト化しても所望の接合強度を有する複合体とすることが容易にでき、自動車等の軽量化、燃費向上をさらに促進できるという効果もある。また、本発明によれば、廃棄に際して粉砕後の磁気選別による鉄系材料の除去が可能で、しかも、Fe、C、Cu以外の合金元素を含有することがなく、他の元素の汚染がなくリサイクル性に優れるという効果もある。また、Fe、Cuはアルミニウム合金の含有元素の1つであり、アルミニウム合金中に混入しても大きな問題とはならず、アルミニウム合金系材料のリサイクルも可能で、リサイクル性にも優れるという効果もある。また、本発明によれば、内燃機関のジャーナル部の鉄系シャフトとのクリアランス低減に効果がある。
実施例に使用したアルミニウム合金性部材と鋳包まれた鉄基焼結体(複合体)の形状を模式的に示す概略説明図である。 実施例に使用したアルミニウム合金性部材と鋳包まれた鉄基焼結体(複合体)の形状の他の一例を模式的に示す概略説明図である。
本発明複合体は、鉄基焼結体にアルミニウム合金が含浸してなる複合体であり、そして、本発明複合体では、鉄基焼結体を多孔質鉄基焼結体とする。
ここでいう「多孔質鉄基焼結体」は、質量%で、C:0.4〜1.5%、Cu:10%以上20%未満を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を基本組成とし、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体をいう。
まず、鉄基焼結体の組成の限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は単に%で記す。
C:0.4〜1.5%
Cは、焼結体の強度、硬さを増加させる元素であり、本発明では所望の強度確保および基地を被削性に富むパーライト組織とするために0.4%以上の含有を必要とする。一方、1.5%を超える含有は、炭化物が粗大化し、かえって被削性が低下する。このため、Cは0.4〜1.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.6〜1.0%である。
Cu:10%以上20%未満
Cuは、固溶して焼結体の強度を増加させるとともに、遊離Cu相として基地相中に分散し、空孔の開口面にも分散して、空孔にアルミニウム合金が含浸する際に、アルミニウム合金と反応して鉄基焼結体とアルミニウム合金との接合強度を増加させる作用を有する。Cu含有量が10%未満では、ダイキャスト鋳造でアルミニウム合金を含浸させても、遊離Cu相量が少なすぎて所望の複合化を達成できない。一方、20%以上と多量に含有すると、複合体の強度等の機械的特性の低下が著しくなるとともに、複合体の熱膨張係数が所望の値を超えて大きくなる。このため、Cuは10%以上20%未満の範囲に限定した。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
さらに、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、上記した組成に加えてさらに、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織を有する。
本発明で使用する多孔質鉄基焼結体の基地は、パーライトとする。基地組織のなかで、パーライト基地は、切削性が良好でかつ熱伝導性が高いため、複合化に有利となる。このため、本発明で使用する鉄基焼結体の基地をパーライトに限定した。
さらに、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、上記した基地中に遊離Cu相が分散した組織を有する。遊離Cu相は、複合体製造時に空孔内に含浸するアルミニウム合金と反応して、アルミニウム合金と鉄基焼結体とを強固に接合させる作用を有し、複合体としての接合強度を増加させる。なお、遊離Cu相の分散量は、鉄基焼結体のCu含有量、あるいはさらに含まれる合金元素量に応じて決定されるため、とくに限定する必要はない。本発明で使用する多孔質鉄基焼結体の組成範囲では固溶限以上のCuを含有しており、Cuは遊離Cu相として多く分散される。
さらに、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、空孔率が体積率で15〜30%の焼結体とする。
空孔率:15〜30%
空孔率が、15%未満では、アルミニウム合金で鉄基焼結体を鋳包むとき、あるいはアルミニウム合金を含浸させるときに、アルミニウム合金の溶湯が空孔内に含浸せず、接合強度が低下する。一方、30%を超えると、空孔が多すぎて強度が低下しすぎて、部材強度の低下を招く。また、熱膨張係数が所望の値を超えて大きくなる。このため、使用する鉄基焼結体の空孔率は体積率で15〜30%の範囲に限定した。なお、好ましくは17〜28%である。
なお、ここで言う「空孔率」は、全空孔率であり、アルキメデス法で測定した密度から換算して求めるものとする。
また、本発明複合体で使用する多孔質鉄基焼結体は、空孔内にアルミニウム合金を含浸させるために、空孔が連続して存在する必要がある。ここでいう「空孔が連続して存在する」とは、全空孔量に対する連続した空孔量の比率(={(連続した空孔量)/(全空孔量)}×100%)が50%を超える場合をいうものとする。「全空孔量」とは、アルキメデス法で測定した密度から換算して求めるものとする。また、「連続した空孔量」は、焼結体を液状のワックス等中に60min間浸漬しワックス等を浸透させ、浸透前後の重量変化量から換算しその量を求め、連続した空孔量とする。
さらに、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである表面性状を有する鉄基焼結体とする。なお、JIS B 0601(1982)に規定するRzは、断面曲線によるうねりと粗さを含む表面性状を表し、密着性(密着面積)の指標として望ましい。ショットブラスト処理を施すと、表面付近の空孔が閉塞され、連続した空孔量が減少し、所望の連続した空孔量の比率を確保できなくなる。このため、上記した表面粗さRzは、ショットブラスト処理を施さない、焼結のまま状態での値とする。
鉄基焼結体表面の表面粗さRzが10μm未満では、鉄基焼結体を鋳包む際に十分な表面積が得られず、アルミニウム合金との密着性が不足する。一方、表面粗さRzが60μmを超えると、寸法精度が不足し、最表面に割れが発生しやすくなる。このため、使用する多孔質鉄基焼結体は、表面粗さRzが10〜60μmである表面性状を有する鉄基焼結体とする。
上記した多孔質鉄基焼結体にアルミニウム合金が含浸してなる複合体は、空孔内にはアルミニウム合金が含浸した複合体であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で含浸した複合体とアルミニウム合金との境界強度が10MPa以上となる複合体である。また、この複合体はアルミニウム合金を含浸させても、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下である。なお、室温から200℃までの平均熱膨張係数は好ましくは13.5×10-6/℃以下である。
つぎに、本発明複合体の好ましい製造方法について説明する。
鉄基粉末と、Cu粉末と黒鉛粉末とあるいはさらに合金用粉末とを、混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して所定形状の圧粉体とする。そして、得られた圧粉体を焼結して鉄基焼結体とする。なお、鉄基粉末(鉄粉)とCu粉末とに代えて、Fe−Cu合金粉末としてもよい。なお、Fe−Cu合金粉末は、鉄粉の周囲にCuを部分的に合金化した粉末を含んでもよい。また、Cu粉あるいはFe−Cu合金粉の配合量は、鉄基焼結体のCu含有量となるように、調整することはいうまでもない。
なお、鉄基粉末は、60メッシュの篩を通過し(以下、60メッシュアンダー、あるいは−60メッシュともいう)、350メッシュの篩を通過しない(以下、350メッシュオーバー、または+350メッシュともいう)粒度分布に調整した粉末とする。
+60メッシュの粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下する。一方、−350メッシュの粒子が存在すると、連続した空孔となりにくく、アルミニウム合金の含浸性が低下する。なお、―60〜+100メッシュの粒子が全粉末の40%未満であれば、所望の空孔率を有する圧粉体とするためには有利となる。
上記したような粒度分布を有する鉄基粉末を、Cu粉末、黒鉛粉末、潤滑剤粉末と、ともに混合し、混合粉とする。
黒鉛粉末は、鉄基焼結体のC含有量を調節するために配合する。配合比率は、混合粉全量に対する質量%で、0.4〜1.5%とすることが好ましい。配合率が0.4%未満では、所望の強度を確保しにくくなる。また、配合率が1.5%を超えると、炭化物が粗大化し、強度が低下する。また、黒鉛粉の粒径は0.1〜10μmとすることが好ましい。粒径が0.1μm未満では取り扱いが困難となり、一方、10μmを超えると、均一分散が困難となる。
また、潤滑剤粉末は、圧粉成形時の成形性を向上し、圧粉密度を増加させるために混合粉中に配合する。混合粉中の配合量は、混合粉全量(鉄基粉末、Cu粉末、黒鉛粉末、の合計量)100質量部に対し0.3〜3.0質量部とすることが好ましい。なお、潤滑剤粉末としては、ステアリン酸亜鉛等の常用の潤滑剤粉末とすることが好ましい。
このような混合粉を、金型に装入し加圧成形して、所定形状に略等しい形状の圧粉体とする。圧粉体の成形方法はとくに限定する必要はないが、成形プレス等を用いることが好ましい。なお、加圧成形に際しては、上記した所望の焼結体組織となるように、焼結条件との関連で、加圧成形条件を調整することが好ましい。
加圧成形された圧粉体は、ついで、焼結され、所定形状の鉄基焼結体とされる。なお、上記した所望の焼結体組織となるように、焼結条件を調整することはいうまでもない。
ここで、焼結は、焼結温度:1000〜1200℃で、不活性ガス雰囲気、あるいは非酸化性雰囲気中等で行うことが好ましい。
このようにして得られた焼結体は、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織を有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体となる。
さらに、このようにして得られた多孔質鉄基焼結体を、アルミニウム合金製部材を形成する鋳型の対応部位に装着し、その鋳型にアルミニウム合金溶湯を注入し、高圧ダイキャストあるいは溶湯鍛造して、多孔質鉄基焼結体を鋳包んだアルミニウム合金製部材とすることが好ましい。このようにして得られたアルミニウム合金製部材では、多孔質鉄基焼結体は空孔にアルミニウム合金を含浸させた複合体となっている。あるいは、このようにして得られた多孔質鉄基焼結体にアルミニウム合金溶湯を高圧ダイキャスト、溶湯鍛造等を用いて含浸させ、複合体としてもよい。
なお、高圧ダイキャスト等で鋳型に注入するアルミニウム合金は、例えばADC12等の常用のアルミニウム合金がいずれも適用できる。
このようにして得られた複合体は、空孔にアルミニウム合金が含浸して、複合体としての熱膨張係数が室温から200℃までの平均で14.0×10−6/K以下であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態でアルミニウム合金を含浸させた複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界(界面)強度が10MPa以上となる複合体となる。
なお、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、所定形状に加工されたうえ、さらに肉厚方向に1つ又は複数の貫通孔を有する焼結体とすることが好ましい。
本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、例えば、鉄系材料のクランクシャフトを軸支するジャーナル部(軸受部)を補強する補強材として、アルミニウム合金製エンジンのシリンダブロック等のアルミニウム合金製部材に鋳包まれ、複合体として、使用される。
シリンダブロックの軸受部を補強する補強材の一般的な形状としては、図1に点線で模式的に示す形状が例示できる。すなわち、補強材は、ジャーナル部(軸受部)の断面半円弧状で中心軸延在方向に沿って連続形成された凹面状の軸受面に対応し、断面半円弧状乃至U字状で、中心軸延在方向に沿って連続する形状の内周面と、内周面以外の外周面とからなる形状を有する。
この場合、鋳包まれる多孔質鉄基焼結体の形状によっては、アルミニウム合金に鋳包まれた状態でアルミニウム合金を含浸させた複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界(界面)強度が不安定になることが懸念される場合がある。例えば、補強材である多孔質鉄基焼結体が、とくに、厚肉でかつ大型である場合に、鋳包み時に、注湯されたアルミニウム合金溶湯の湯回りが、焼結体の位置によって、不均質となることが懸念される。溶湯の湯回りが不均質となると、アルミニウム合金を含浸させた複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界(界面)の強度が不均質となり、境界(界面)強度が低下する箇所が生じる場合がある。
そのような場合には、鋳包まれる多孔質鉄基焼結体を、図2に点線で模式的に示すように、内周面と外周面とを連通する、1つ又は複数の貫通孔が穿設された形状の多孔質鉄基焼結体とすることが好ましい。内周面と外周面とを連通する貫通孔を設けることにより、鋳包み時に注湯されたアルミニウム合金溶湯の湯回りが良好になり、外周面と内周面とで均質に溶湯が供給され、境界強度が向上するとともに境界強度の不均質が解消され易くなる。
上記したシリンダブロックの軸受部を補強する補強材とは異なる内周面、外周面を特定できない一般的な形状の補強材においては、内周面、外周面を連通する貫通孔に代えて、多孔質鉄基焼結体の肉厚方向に貫通孔を穿設することが好ましい。これにより、鋳包み時に注湯されたアルミニウム合金溶湯の湯回りが良好になり、位置によらず均質に溶湯が供給され、境界強度が向上するとともに、アルミニウム合金を含浸させた複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界(界面)の強度の不均質が解消され易くなる。
なお、本発明で使用する多孔質鉄基焼結体は、上記したように、ショットブラスト処理を施すことなく、所望の表面粗さである、JIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzで10〜60μmを呈する表面性状を保持できる。このことは、貫通孔の内面においても同様で、ショットブラスト処理を施すことなく、所望の表面粗さを呈する内面を確保でき、貫通孔の内面へのショットブラスト処理を施す必要はないという利点がある。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
(実施例1)
鉄基粉末として、60メッシュの篩を通過し、350メッシュの篩を通過しない粒度分布に調整した純鉄粉(鉄基粉末)に、Cu粉、黒鉛粉を表1に示す配合量(質量%)で配合し、さらに、潤滑剤粉(潤滑剤粒子粉)を表1に示す配合量(質量部)で配合し、混合機で混合、混錬して混合粉とした。なお、混合粉の平均粒系は150μmとした。なお、平均粒径は、レーザ回折散乱法で測定した粒度分布の累積が50%となる径D50を用いた。
得られた混合粉を、金型に充填し、成形プレスで加圧成形し、図1に点線で示す形状の圧粉体とした。ついで、これら圧粉体に、焼結処理を施し、鉄基焼結体とした。なお、焼結処理は、窒素ガス雰囲気中で1000〜1200℃の範囲の温度で行った。空孔率の調整は成形圧力により行った。
得られた鉄基焼結体について、まず、組成、空孔率を測定し、組織を観察した。
空孔率(体積率)は、アルキメデス法で測定した密度から換算した。なお、焼結体中に存在する空孔が「連続した空孔」であるかを確認した。焼結体を液状のワックス等中に60min間浸漬して、空孔にワックス等を浸透させ、浸透前後の重量変化量から換算してその量を求め、連続した空孔量とし、次式
連続した空孔量の比率(={(連続した空孔量)/(全空孔量)}×100%)
で定義される連続した空孔量の比率を算出し、該値が50を超える場合を「連続した空孔」であると評価した。なお、ここで、「全空孔量」は、アルキメデス法で測定した密度から換算した値を用いた。
組織は、鉄基焼結体から組織観察用試験片を採取し、プレス方向断面を研磨し、ナイタール液で腐食して組織を現出し、光学顕微鏡で観察し、基地相組織の同定、遊離Cu相の存在の有無を測定した。遊離Cu相の分散量は、研磨のままの状態で、EPMAを用いて面分析により、面積率を算出し、分散量とした。
また、得られた鉄基焼結体の表面粗さを測定した。得られた鉄基焼結体の外表面を測定面として、触針式表面粗さ計を用い、JIS B 0601(1982)の規定に準拠して、表面粗さRzを測定した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2018024944
Figure 2018024944
Figure 2018024944
本発明で使用可能な多孔質鉄基焼結体(本発明例)はいずれも、所定範囲の組成と、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体となっている。一方、本発明の範囲を外れる鉄基焼結体である比較例は、組成が本発明範囲を外れているか、空孔率が所望の範囲を外れ、連続した空孔となっていないか、表面粗さが本発明範囲を外れている。
得られた鉄基焼結体を、アルミニウム合金製部材を形成する鋳型の所定位置に装着し、鋳型内にアルミニウム合金(ADC12)溶湯をダイキャストで高圧注入し、図1に示す所定形状のアルミニウム合金製部材とした。まず、得られたアルミニウム合金製部材について部材を切断し、断面中央付近を光学顕微鏡で観察し内部欠陥として、「未含浸」の有無を調査した。欠陥ありを「×」、欠陥なしを「○」として評価した。
得られたアルミニウム合金製部材から、鉄基焼結体にアルミニウム合金を含浸してなる複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界部を含む引張試験片(大きさ:5mm×10mm×長さ30mm)を採取した。なお、引張試験片の採取位置は、図1に示すa〜eの5箇所の境界部とし、引張試験片の採取方向は、試験片の軸に対し垂直に境界面を含む方向とした。これら引張試験片を用いて、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さ(境界強度)を測定した。なお、引張強さ(境界強度)が10MPa以上である場合を「○」とし、それ以外は「×」として評価した。
また、得られた部材から、鉄基焼結体にアルミニウム合金が含浸してなる複合体を試験片(大きさ:2mm×2mm×長さ20mm)として採取し、熱膨張測定装置により室温から200℃までの平均熱膨張係数を測定した。なお、平均熱膨張係数が14.0×10−6/℃以下である場合を「○」、それ以外を「×」として評価した。
得られた結果を表4に示す。
Figure 2018024944
本発明例の複合体はいずれも、内部欠陥もなく、アルミニウム合金との境界強度も測定位置に関係なく10MPa以上で、複合体としての接合強度が高く、しかも複合体としての熱膨張係数が14.0×10−6/℃以下と、鉄系材料の熱膨張係数と同等の値を示している。一方、本発明の範囲を外れる複合体(比較例)は、内部欠陥があるか、アルミニウム合金との境界強度が測定位置によりばらついているか、あるいはアルミニウム合金との境界強度がすべて10MPa未満であるか、あるいは熱膨張係数が大きくなっており、内燃機関の稼動時に熱膨張による騒音、振動を発生する危険性が増大している。
(実施例2)
表1に示す混合粉No.fを、金型に充填し、成形プレスで、表3に示す焼結体No.7と同じ条件で加圧成形し、図2に点線で示す形状の圧粉体とした。また、表1に示す混合粉No.jを、金型に充填し、成形プレスで、表3に示す焼結体No.14と同じ条件で加圧成形し、図2に点線で示す形状の圧粉体とした。ついで、これら圧粉体に、焼結体No.7、焼結体No.14と同じ条件で焼結熱処理を施し鉄基焼結体No.N7、No.N14とした。
得られた焼結体No.N7およびNo.N14について、実施例1と同様に、組成、空孔率を測定し、組織を観察した。また、さらに実施例1と同様に、得られた鉄基焼結体の表面粗さを測定した。得られた結果を表5に示す。
Figure 2018024944
上記したように焼結体No.N7は、実施例1の焼結体No.7と、また焼結体No.N14は、実施例1の焼結体No.14と、それぞれ同じ混合粉を使用し、同じ加圧成形条件および同じ焼結熱処理条件を施されており、得られた鉄基焼結体No.N7およびNo.N14(本発明例)はいずれも、実施例1の焼結体No.7、焼結体No.14と同じ、所定範囲の組成と、所定範囲の空孔率で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが所定範囲内である多孔質鉄基焼結体となっている。
さらに、得られた鉄基焼結体No.N7、No.N14を用い、アルミニウム合金製部材を形成する鋳型の所定の位置に装着し、鋳型内にアルミニウム合金(ADC12)溶湯をダイキャストで高圧注入し、図2に示す所定形状のアルミニウム合金製部材とした。なお、図2に示す所定形状のアルミニウム合金製部材では、図1に示す所定形状のアルミニウム合金製部材に比べて、内周面と外周面とを連通する貫通孔を1つ多く穿設した多孔質鉄基焼結体を使用した。
得られたアルミニウム合金製部材から、実施例1と同様に、鉄基焼結体にアルミニウム合金を含浸してなる複合体と部材を構成するアルミニウム合金との境界部を含む引張試験片(大きさ:5mm×10mm×長さ30mm)を採取した。なお、引張試験片の採取位置は、図2に示すa〜eの5箇所の境界部とし、引張試験片の採取方向は、試験片の軸に対し垂直に境界面を含む方向とした。これら引張試験片を用いて、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さ(境界強度)を測定した。なお、引張強さ(境界強度)が10MPa以上である場合を「○」と評価した。さらに、引張強さ(境界強度)が10MPa以上でかつ、複合体No.N7の場合は実施例1における複合体No.7の同位置における引張強さ(境界強度)と、複合体No.N14の場合は実施例1の複合体No.14の同位置における引張強さ(境界強度)と、比べて、高い場合を「◎」として評価した。
得られた結果を表6に示す。
Figure 2018024944
図2に示す所定形状のアルミニウム合金製部材では、図1に示す所定形状のアルミニウム合金製部材に比べて、内周面と外周面とを連結する肉厚方向に貫通する貫通孔を1つ多く穿設した多孔質鉄基焼結体を使用し、貫通孔を穿設することの効果を確認した。表6から、得られた複合材No.N7、No.N14はいずれも、内部欠陥もなく、アルミニウム合金との境界強度も10MPa以上で、複合体としての接合強度が高く、しかも複合体としての熱膨張係数が14.0×10−6/℃以下と、鉄系材料の熱膨張係数と同等の値を示している。しかも、得られた複合材No.N7、No.N14はいずれも、貫通孔を穿設した近傍の接合強度がいずれも、「◎」と貫通孔を穿設していない複合材No.7、No.14の同位置の接合強度に比べて高くなっており、内周面と外周面とを連通する貫通孔を穿設することにより接合強度が向上することが確認できる。

Claims (3)

  1. 鉄基焼結体にアルミニウム合金が含浸してなる複合体であって、
    前記鉄基焼結体が、質量%で、C:0.4〜1.5%、Cu:10%以上20%未満を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
    体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、
    ショットブラスト処理を施すことなくJIS B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体であり、
    前記含浸してなる複合体が、
    室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で該含浸した複合体と前記アルミニウム合金との境界強度が10MPa以上となること
    を特徴とする複合体。
  2. 鉄基粉末と、銅粉末と、黒鉛粉末と、潤滑剤粉末と、を混合し混合粉としたのち、該混合粉を金型に充填し加圧成形して圧粉体とし、ついで該圧粉体を焼結して所定形状の鉄基焼結体とし、ついで該鉄基焼結体をアルミニウム合金に鋳包み、該鉄基焼結体の空孔にアルミニウム合金が含浸してなる複合体とする複合体の製造方法において、
    前記鉄基粉末を、60メッシュの篩を通過し(−60メッシュ)、350メッシュの篩を通過しない(+350メッシュ)粒度分布に調整した鉄基粉末とし、前記銅粉末を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量に対する質量%で、10%以上20%未満となるように配合し、前記黒鉛粉を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量に対する質量%で、0.4〜1.5%となるように配合し、
    前記圧粉体の加圧成形条件および/または焼結条件を調整して、前記鉄基焼結体が、質量%で、C:0.4〜1.5%、Cu:10%以上20%未満を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で空孔率:15〜30%で、かつ空孔が連続して存在し、基地がパーライトで、該基地中に遊離Cu相が分散した組織とを有し、ショットブラスト処理を施すことなくJIS Z B 0601(1982)の規定に準拠した表面粗さRzが10〜60μmである多孔質鉄基焼結体とし、
    前記含浸してなる複合体を、室温から200℃までの平均熱膨張係数が14.0×10-6/℃以下であり、アルミニウム合金に鋳包まれた状態で該含浸した複合体と前記アルミニウム合金との境界強度が10MPa以上である複合体とすること
    を特徴とする複合体の製造方法。
  3. 前記潤滑剤粉末を、鉄基粉末と銅粉末と黒鉛粉末との合計量100質量部に対する質量部で、0.3〜3.0質量部となるように配合することを特徴とする請求項2に記載の複合体の製造方法。
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