JP2018021638A - 電動アクチュエータ - Google Patents

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卓志 松任
慎介 平野
Shinsuke Hirano
慎介 平野
篤史 池田
Atsushi Ikeda
篤史 池田
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Abstract

【課題】軸受の回転トルクの低減を含む潤滑特性の向上を図り得る電動アクチュエータを提供する。【解決手段】駆動部と、駆動部からの回転運動を駆動部の出力軸と平行な軸方向の直線運動に変換する運動変換機構部と、駆動部から前記運動変換機構部へ駆動力を伝達する駆動力伝達部と、運動変換機構部を支持する複列軸受40を有する運動変換機構支持部とを備える電動アクチュエータであって、複列軸受40は、軌道輪である内輪43および外輪42と、内輪43と外輪42との間に介在する複数の転動体44と、転動体44を保持する保持器77と、軸受内空間に供給される潤滑剤79とを備え、保持器77の転動体44との接触表面以外で潤滑剤79と接触する表面に、繊維材、軟質発泡材、または軟質樹脂材からなる柔軟性構造体89を設けた。【選択図】図12

Description

本発明は、電動アクチュエータに関する。
近年、車両等の省力化、低燃費化のために電動化が進み、例えば、自動車の自動変速機やブレーキ、ステアリング等の操作を電動機の力で行うシステムが開発され、市場に投入されている。このような用途に使用されるアクチュエータとして、電動機の回転運動を直線方向の運動に変換するボールねじ機構を用いた電動リニアアクチュエータがある。
例えば、特許文献1には、図17に示すように、電動モータ100と、ボールねじ200と、電動モータ100の回転運動をボールねじ200に伝達する歯車減速機構500とを主な構成要素とする電動リニアアクチュエータが記載されている。ボールねじ200は、外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸201と、ねじ軸201に外嵌され内周面に螺旋状のねじ溝が形成されたナット202と、両ねじ溝に収容された多数のボール203とを有する。歯車減速機構500は、電動モータ100のモータ軸100aに固定された小径の第1歯車501と、ナット202の外周に設けられ、第1歯車501に噛み合う大径の第2歯車502とを有する。これらの歯車501,502を介して電動モータ100の駆動力がナット202に伝達されると、ナット202が回転し、ねじ軸201が直動運動する。
また、特許文献1に記載の電動リニアアクチュエータにおいては、ナット202を支持するために、2つの転がり軸受600,700が用いられている。一般的に、転がり軸受は、外周に軌道面を有する内輪と、内周に軌道面を有する外輪と、両軌道面間で転動する複数の転動体と、転動体を保持する保持器等で構成されている。また、転がり軸受においては、各軌道面と転動体との間の摩擦を低減するために、内輪と外輪の間の環状空間に潤滑油やグリース等の潤滑剤が供給されている。
特許第5243018号公報
ところで、潤滑剤は転がり軸受における摩擦を低減できる一方で、潤滑剤の撹拌や粘性の影響が転がり軸受に回転トルク、つまり回転抵抗を生じさせる要因となることが知られている。また、潤滑剤としてグリースを用いた場合は、転動体や保持器がグリースを撹拌する撹拌抵抗や、保持器とシール等との間でグリースをせん断するせん断抵抗が転がり軸受の回転トルクとなる。斯かる回転トルクは、回転運動を直線運動に変換する電動アクチュエータの省エネルギー化や高効率化の妨げになるため、回転トルクの低減化は重要な課題である。
そこで、本発明は、軸受の回転トルクの低減を含む潤滑特性の向上を図り得る電動アクチュエータを提供することを目的とする。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、駆動部と、駆動部からの回転運動を駆動部の出力軸と平行な軸方向の直線運動に変換する運動変換機構部と、駆動部から運動変換機構部へ駆動力を伝達する駆動力伝達部と、運動変換機構部を支持する複列軸受を有する運動変換機構支持部とを備える電動アクチュエータであって、複列軸受は、軌道輪である内輪および外輪と、内輪と外輪との間に介在する複数の転動体と、転動体を保持する保持器と、軸受内空間に供給される潤滑剤とを備え、保持器の転動体との接触表面以外で潤滑剤と接触する表面に、繊維材、軟質発泡材、または軟質樹脂材からなる柔軟性構造体を設けたことを特徴とする。なお、上記潤滑剤について「軸受内部空間に供給される」とは、軸受外部から潤滑剤を供給する場合や、予め軸受内部に潤滑剤が供給されて保持されている場合を含む。
このように、保持器に柔軟性構造体を設けることで、軸受機能を損なうことなく、回転トルクの低減を実現することができる。すなわち、柔軟性構造体が保持器表面のうち潤滑剤と接触する表面に設けられていることで、柔軟性構造体によって潤滑剤が保持され、潤滑剤が保持器と共に回転するため、潤滑剤の撹拌や粘性に起因する回転トルクを低減することができる。また、柔軟性構造体によって潤滑剤が保持されるため、潤滑剤漏れも低減できる。また、柔軟性構造体は転動体との接触表面を避けて設けられているため、軸受機能を損なうことなく、潤滑剤保持効果を得ることが可能である。
柔軟性構造体が設けられる箇所は、例えば、保持器の内径面および/または外径面とすることができる。この場合、柔軟性構造体は保持器の転動体との接触表面以外で潤滑剤と接触する表面に設けられるので、上記のように、軸受機能を損なうことなく、柔軟性構造体によって潤滑剤を保持して回転トルクの低減を図ることができる。
柔軟性構造体は、合成樹脂の短繊維を静電吹付け植毛方法によって植毛した繊維植毛部にて構成することができる。静電吹付け植毛方法を採用することで、保持器に対して、多量の短繊維を短時間で密に植毛できる。また、短繊維をエアで接着剤塗布面に吹き付けることで短繊維が吹付け表面に対して傾き、一定の角度で固定されるので、(吹付けしない)静電植毛方法と比べて少ない短繊維量で(低密度で)広い面積を覆うことができる。このため、短繊維量の削減と時間短縮によるコスト低減が期待できる。
本発明によれば、軸受の回転トルクの低減を含む潤滑特性の向上を図り得る電動アクチュエータを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。 電動アクチュエータの外観斜視図である。 電動アクチュエータの分解斜視図である。 モータケースを開口部側から見た図である。 図1のA−A線で矢視した横断面図である。 減速機構部の分解斜視図である。 軸ケースと、これに取り付けられるロック機構部の分解斜視図である。 図1のB−B線で矢視した横断面図である。 図1のC−C線で矢視した横断面図である。 電動アクチュエータの制御ブロック図である。 電動アクチュエータの制御ブロック図である。 支持軸受の断面図である。 保持器の斜視図である。 静電植毛方法の概略を説明するための図である。 (a)は静電植毛方法によって形成された繊維植毛部の断面図、(b)は静電吹付け植毛方法によって形成された繊維植毛部の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。 従来の電動リニアアクチュエータの縦断面図である。
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータの組み立て状態を示す縦断面図、図2は、前記電動アクチュエータの組み立て状態を示す外観斜視図、図3は、前記電動アクチュエータの分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ1は、駆動力を発生させる駆動部2と、駆動部2からの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部3と、駆動部2から運動変換機構部3へ駆動力を伝達する駆動力伝達部4と、運動変換機構部3を支持する運動変換機構支持部5と、運動変換機構部3の運動を出力する操作部6と、運動変換機構部3の駆動を防止するロック機構部7を主な構成とする。また、駆動部2は、モータ部8と減速機構部9とで構成される。
上記電動アクチュエータ1を構成する各部分は、それぞれケースを有し、各ケース内に構成部品が収容されている。具体的に、モータ部8は、駆動用モータ10を収容するモータケース11を有し、減速機構部9は、減速ギヤ機構16を収容する減速ギヤケース17を有する。また、駆動力伝達部4は、伝達ギヤ機構28を収容する伝達ギヤケース29を有し、運動変換機構支持部5は、支持軸受40を収容する軸受ケース41を有する。そして、モータ部8と減速機構部9、減速機構部9と駆動力伝達部4、駆動力伝達部4と運動変換機構支持部5は、互いにケースごと連結分離可能に構成されている。さらに、軸受ケース41に対しては、軸ケース50が連結分離可能に構成されている。以下、電動アクチュエータ1を構成する各部の詳細な構成について説明する。
モータ部8は、運動変換機構部3を駆動させる駆動用モータ(DCモータ)10と、駆動用モータ10を収容するモータケース11を主な構成とする。モータケース11は、内部に駆動用モータ10が収容される有底円筒状のケース本体12と、ケース本体12の底部12aから外部に突出する突出部13とを有する。突出部13は、ケース本体12の内部空間と連通する孔部13aが形成されている。この孔部13aは、突出部13の外面を覆う樹脂製の封止部材14によって封止されている。
駆動用モータ10は、ケース本体12の開口部12dから内部に挿入された状態で、駆動用モータ10の挿入方向奥側の端面がケース本体12の底部12aに当接する。また、底部12aの中央部には嵌合孔12cが形成されており、この嵌合孔12cに駆動用モータ10の挿入方向奥側の突起10bが嵌合することで、突起10bから突出する出力軸10aの後端(図1の左端部)がモータケース11の底部12aと干渉するのが回避される。さらに、ケース本体12の周壁部12bの内周面は、開口部12d側から底部12a側に向かってテーパ状に縮径しており、駆動用モータ10がケース本体12内に挿入されると駆動用モータ10の挿入方向奥側の外周面が周壁部12bの内周面に接触するように構成されている。このように、駆動用モータ10は、ケース本体12内に挿入された状態で、ケース本体12の内周面との接触と嵌合孔12cとの嵌合によって支持される。
また、モータケース11を開口部12d側から見た図4に示すように、ケース本体12には、駆動用モータ10を動力電源に接続するための一対のバスバー15が取り付けられている。各バスバー15の一端部15aはモータ端子10cに対してかしめて接続され、他端部15bはケース本体12から外部に露出している(図2、図3参照)。この外部に露出するバスバー15の端部15bが動力電源に接続される。
次に、減速機構部9について説明する。
図1に示すように、減速機構部9は、駆動用モータ10の駆動力を減速して出力する減速ギヤ機構16と、減速ギヤ機構16を収容する減速ギヤケース17を主な構成とする。減速ギヤ機構16は、複数の歯車等から成る遊星歯車減速機構18で構成される。なお、遊星歯車減速機構18の詳細な構成については後述する。
減速ギヤケース17には、遊星歯車減速機構18を駆動用モータ10側とは反対側から収容するための収容凹部17aが設けられている。また、減速ギヤケース17には、モータ取付部材としてのモータアダプタ19が取付可能に構成されている。モータアダプタ19は筒状の部材で、その内周面に駆動用モータ10の出力側(図1の右側)の突起10dが挿入されて嵌合される。減速ギヤケース17には、モータアダプタ19が嵌合される嵌合孔17bが形成されており、この嵌合孔17bに対してモータアダプタ19が駆動用モータ10側から挿入されて取り付けられる。
減速ギヤケース17は、モータケース11とこれとは反対側に配置される後述の伝達ギヤケース29に対して嵌合可能に構成されている。減速ギヤケース17のうち、モータケース11側に配置される部分がモータケース11の開口部12d側に内嵌され、伝達ギヤケース29側に配置される部分が伝達ギヤケース29に外嵌される。また、減速ギヤケース17は、モータケース11に対して嵌合された状態でモータアダプタ19と一緒にボルト21(図3、図6参照)によって駆動用モータ10に締結される。減速ギヤケース17の駆動用モータ10側には、減速ギヤケース17とモータケース11とが嵌合された状態で、駆動用モータ10から突出するモータ端子10cおよびこれにかしめられたバスバー15の端部15aとの干渉を回避するための凹部17cが形成されている。また、モータケース11の内周面と嵌合する減速ギヤケース17の外周面(嵌合面)には、Oリング20を装着するための装着溝17dが形成されている。
続いて、運動変換機構部3について説明する。
運動変換機構部3は、ボールねじ22で構成される。ボールねじ22は、回転体としてのボールねじナット23と、直線運動する軸部であるボールねじ軸24と、多数のボール25および循環部材としてのこま26を主な構成とする。ボールねじナット23の内周面とボールねじ軸24の外周面にそれぞれ螺旋状溝23a,24aが形成されている。両螺旋状溝23a,24aの間にボール25が充填され、こま26が組み込まれ、これにより2列のボール25が循環する。
ボールねじナット23は、駆動用モータ10からの駆動力を受けて正方向または逆方向に回転する。一方、ボールねじ軸24は、その後端部(図1の右端部)に設けられた回転規制部材としてのピン27によって回転が規制されている。このため、ボールねじナット23が回転すると、ボール25が両螺旋状溝23a,24aおよびこま26に沿って循環し、ボールねじ軸24が軸方向に進退する。なお、図1は、ボールねじ軸24が最も図の右側へ後退した初期位置に配置された状態を示している。また、ボールねじ軸24は、駆動用モータ10の出力軸10aと平行に配置されており、駆動用モータ10からの回転運動はボールねじ軸24によって出力軸10aと平行な軸方向の直線運動に変換される。ボールねじ軸24の前進方向の先端部(図1の左端部)が、操作対象装置を操作する操作部(アクチュエータヘッド)6として機能する。
続いて、駆動力伝達部4について説明する。
駆動力伝達部4は、駆動部2が有する駆動用モータ10から運動変換機構部3であるボールねじ22へ駆動力を伝達する伝達ギヤ機構28と、伝達ギヤ機構28を収容する伝達ギヤケース29を主な構成とする。伝達ギヤ機構28は、駆動側のドライブギヤ30と、これと噛み合う被駆動側のドリブンギヤ31とを有する。
ドライブギヤ30の回転中心部にはギヤボス32が圧入嵌合されている。ドライブギヤ30は、このギヤボス32を介して伝達ギヤケース29と後述の軸受ケース41の両ケースに装着される2つの転がり軸受33,34によって回転可能に支持される。一方、ドリブンギヤ31は、ボールねじナット23の外周面に圧入嵌合され固定されている。駆動用モータ10からの駆動力が遊星歯車減速機構18を介してドライブギヤ30に伝達されると、ドリブンギヤ31とボールねじナット23が一体的に回転し、ボールねじ軸24が進退する。
伝達ギヤケース29は、内部にドライブギヤ30およびドリブンギヤ31が収容される収容凹部29aを有する。また、伝達ギヤケース29には、ギヤボス32を挿通するための挿通孔29bが形成され、挿通孔29bの内周面には、ギヤボス32を支持する一方の転がり軸受33が装着される軸受装着面29cが形成されている。また、伝達ギヤケース29は、減速ギヤケース17の内周面と嵌合する環状突起29dを有する。この環状突起29dの外周面(嵌合面)には、Oリング35を装着するための装着溝29eが形成されている。また、伝達ギヤケース29の軸受ケース41側の面には、軸受ケース41と嵌合する溝状の嵌合凹部29fが形成されている。
また、伝達ギヤケース29は、ボールねじ軸24の先端部側(図1の左側)へ突出する円筒部29gを有する。この円筒部29gは、伝達ギヤケース29内にドリブンギヤ31が収容され、これにボールねじ22が組み付けられた状態で、ボールねじ軸24の周囲を覆うように配置される部分である。円筒部29gとボールねじ軸24の間には、伝達ギヤケース29内への異物侵入を防止するブーツ36が取り付けられる。ブーツ36は、大径端部36aと小径端部36bとこれらを繋いで軸方向に伸縮する蛇腹部36cで構成されている。大径端部36aが円筒部29gの外周面の取付部位にブーツバンド37によって締め付け固定され、小径端部36bがボールねじ軸24の外周面の取付部位にブーツバンド38によって締め付け固定される。また、円筒部29gには、ブーツ36が伸縮したときに内外で通気させるための通気孔29hが設けられている。また、上記モータケース11には、ブーツ36の周囲に配置されるブーツカバー39が一体に設けられている。
続いて、運動変換機構支持部5について説明する。
運動変換機構支持部5は、運動変換機構部3であるボールねじ22を支持する支持軸受40と、支持軸受40を収容する軸受ケース41を主な構成とする。
支持軸受40は、軸受ケース41と一体に形成されたスリーブ45内に収容され、スリーブ45の内周面に装着された止め輪46で固定されている。また、支持軸受40は、ボールねじナット23の外周面に対して上記ドリブンギヤ31よりもボールねじ軸24の後端側(図1の右側)に圧入嵌合されて固定される。ボールねじナット23の外周面に固定される支持軸受40とドリブンギヤ31は、ボールねじナット23のドリブンギヤ31側に設けられた規制突起23bと、支持軸受40側に装着された規制部材47によって軸方向の移動が規制される。規制部材47は、一対の半円弧状部材で構成され、これらを環状に組み合わせた状態でボールねじナット23の外周面に装着される。さらに、ボールねじナット23の外周面には、規制部材47を保持する押さえ用カラー48と、この押さえ用カラー48の軸方向の脱落を防止する止め輪49が装着される。
軸受ケース41の伝達ギヤケース29側には、伝達ギヤケース29の嵌合凹部29fと嵌合する突条部41aが設けられている。また、軸受ケース41の伝達ギヤケース29側には、軸受ケース41が伝達ギヤケース29と嵌合した状態で、伝達ギヤケース29から突出するギヤボス32の一部が収容されるギヤボス収容部41bが設けられている。このギヤボス収容部41bの内周面には、ギヤボス32を支持する転がり軸受34を装着するための軸受装着面41cが形成されている。
軸受ケース41の伝達ギヤケース29側とは反対側には、ボールねじ軸24の後端部側(図1の右端部側)を収容する有底筒状の軸ケース50がボルト51(図3参照)で締結可能に構成されている。軸ケース50の軸受ケース41との当接面には、Oリング52を装着するための装着溝50aが形成されている。また、軸ケース50の内周面には、ボールねじ軸24に設けられたピン27の両端部が挿入される案内溝50bが軸方向に延在するように形成されている。ピン27の両端部にはそれぞれガイドカラー53が回転可能に装着されており、ボールねじ軸24が軸方向に進退する際、ガイドカラー53が案内溝50bに沿って回転しながら移動する。
図3に示すように、上記モータケース11、減速ギヤケース17、伝達ギヤケース29、軸受ケース41の各ケースの半径方向外側周辺には、これらを組み立て締結するためのボルト54を挿通するボルト挿通孔11a,17e,29i,41dが設けられている。
さらに、伝達ギヤケース29と軸受ケース41の両方の半径方向外側周辺には、組立てられた電動アクチュエータ1を設置場所に取付けるための貫通孔29j,41eが設けられている。
ここで、図1、図5および図6に基づき遊星歯車減速機構18について説明する。
図5は、図1のA−A線で矢視した横断面図、図6は、遊星歯車減速機構18の分解斜視図である。
遊星歯車減速機構18は、リングギヤ55と、サンギヤ56と、複数の遊星ギヤ57と、遊星ギヤキャリア58(図1参照)と、遊星ギヤホルダ59(図1参照)から構成される。リングギヤ55は、軸方向に突出する複数の凸部55aを有し、減速ギヤケース17の収容凹部17aには凸部55aと同数の係合凹部17fが設けられている(図1参照)。減速ギヤケース17の係合凹部17fにリングギヤ55の凸部55aを位相合わせして組み込むことで、リングギヤ55が減速ギヤケース17に対して回り止めされて収容される。
リングギヤ55の中央にサンギヤ56が配置され、サンギヤ56には駆動用モータ10の出力軸10aが圧入嵌合される。また、リングギヤ55とサンギヤ56との間には各遊星ギヤ57がこれらと噛み合うように配置されている。各遊星ギヤ57は、遊星ギヤキャリア58と遊星ギヤホルダ59によって回転可能に支持されている。遊星ギヤキャリア58はその中央部に円筒部58aを有し、円筒部58aはギヤボス32の外周面と転がり軸受33の内周面との間に圧入嵌合されている(図1参照)。なお、他方の転がり軸受34の内周面とギヤボス32の外周面との間には、環状のカラー75が装着されている。
上記の如く構成された遊星歯車減速機構18は、駆動用モータ10が回転駆動すると、駆動用モータ10の出力軸10aに連結されたサンギヤ56が回転し、これに伴って各遊星ギヤ57が自転しながらリングギヤ55に沿って公転する。そして、この遊星ギヤ57の公転運動により遊星ギヤキャリア58が回転する。これにより、駆動用モータ10の回転が減速されてドライブギヤ30に伝達され、回転トルクが増加する。このように、遊星歯車減速機構18を介して駆動力が伝達されることで、ボールねじ軸24の出力が大きく得られるようになり、駆動用モータ10の小型化を図ることが可能である。
続いて、図1、図7および図8に基づき、ロック機構部7について説明する。図7は、軸ケース50と、これに取り付けられるロック機構部7の分解斜視図、図8は、図1のB−B線で矢視した横断面図である。
ロック機構部7は、ロック部材60と、滑りねじナット61と、滑りねじ軸62と、ロック部材固定板63と、ロック用モータ(DCモータ)64と、ばね65を主な構成とする。ロック機構部7の組み立ては、まず、ロック部材60を、滑りねじナット61に対してロック部材固定板63を介してボルト84(図7参照)で締結する。次いで、ロック用モータ64を、軸ケース50に設けられたホルダ部66内に収容し、ホルダ部66から突出するロック用モータ64の出力軸64aに滑りねじ軸62を取り付ける。そして、滑りねじ軸62の外周にばね65を配置すると共に、ロック部材60が取り付けられた滑りねじナット61を滑りねじ軸62に対して螺合して装着する。このようにして、ロック機構部7の組み立てが完了する。
ホルダ部66は、有底筒状に形成され、その底部66aとは反対側にキャップ67が装着されている。ロック用モータ64がホルダ部66内に挿入され、キャップ67を装着した状態で、ロック用モータ64は、ホルダ部66の底部66aとキャップ67の内面に当接する。また、この状態で、ロック用モータ64の出力側(図1の左側)の突起64bがホルダ部66の底部66aに形成された嵌合孔66cに嵌合する。ロック用モータ64の本体外周面とホルダ部66の周壁部66bの内周面はいずれも円筒形ではない同形状に形成されているため、ホルダ部66の周壁部66b内にロック用モータ64が挿入されることで、ロック用モータ64の回転が規制される。このように、ホルダ部66にロック用モータ64が収容されることで、ホルダ部66によってロック用モータ64が保持され、ロック機構部7全体が保持される。また、キャップ67には、ロック用モータ64のモータ端子64dに接続されるケーブル68を挿通するための孔部67aが形成されている(図8参照)。
軸ケース50のホルダ部66が設けられた部分とこれに対向する軸受ケース41の部分には、それぞれロック機構収容凹部66d,41fが形成され、軸受ケース41側のロック機構収容凹部41fには貫通孔41gが形成されている。図1に示すように、軸ケース50が軸受ケース41に取り付けられた状態で、ロック機構収容凹部66d,41f内には、ホルダ部66から突出するロック用モータ64の出力軸64a、滑りねじ軸62、滑りねじナット61、ロック部材固定板63、ばね65およびロック部材60の一部が収容され、貫通孔41g内には、ロック部材60の先端部側が挿入される。また、軸ケース50が軸受ケース41に取り付けられた状態では、ばね65がホルダ部66の底部66aとロック部材固定板63との間で軸方向に圧縮され、この圧縮されたばね65によってロック部材60は前進する方向(図1の左側)へ常時付勢されている。
ロック部材60が前進する方向にはドライブギヤ30が配置されており、ドライブギヤ30にはロック部材60の先端部が係合可能な係合孔30aが形成されている。図1のC−C線で矢視した横断面図である図9に示すように、係合孔30aは、ドライブギヤ30の周方向に渡って複数設けられている。ロック部材60はこれらの係合孔30aのうちのいずれかに係合されることで、ドライブギヤ30の回転が規制される。また、各係合孔30aの入口部には傾斜面30bが形成されており、この傾斜面30bに沿ってロック部材60が係合孔30aにスムーズに挿入される。
軸受ケース41には、ロック状態を検知するためのロックセンサ69が装着されている(図8参照)。ロックセンサ69は、板バネ等の弾性部材で構成された接触子69aを有しており、ロック部材60が前進して係合孔30aに係合されると(ロック状態になると)、ロック部材60が接触子69aを押すことで、ロック状態となったことが検知される。
以下、ロック機構部7の動作について説明する。
ロック用モータ64に電力が供給されていない状態では、ロック部材60はばね65によって前進した位置に保持されており、ロック部材60の先端部がドライブギヤ30の係合孔30aに係合したロック状態にある。この状態から、ボールねじ軸24の駆動を開始するために駆動用モータ10に電力が供給されると、ロック用モータ64にも電力が供給され、ロック用モータ64はロック部材60を後退させる方向に駆動する。これにより、滑りねじ軸62が回転し、一方、滑りねじナット61は貫通孔41gに対するロック部材60の平板状先端部の挿入によって回転が規制されているため、滑りねじ軸62が回転すると、滑りねじナット61がばね65の付勢力に抗して後退し、これと一体的にロック部材60も後退する。これにより、ロック部材60の先端部がドライブギヤ30の係合孔30aから離脱し、ロック状態が解除される。こうして、ボールねじ軸24を駆動させている間は、ロック部材60が後退した位置に保持され、ドライブギヤ30がロックされない状態に保持される。
その後、駆動用モータ10への電力供給が遮断され、ボールねじ軸24の駆動が停止すると、ロック用モータ64への電力供給も遮断される。これにより、ロック部材60を後退させておくための駆動力が生じなくなるため、ロック部材60はばね65によって前進する方向へ押し動かされる。そして、ロック部材60の先端部がドライブギヤ30の係合孔30aに係合することでロック状態となり、ドライブギヤ30の回転が規制される。
このように、ロック部材60によってドライブギヤ30の回転が規制されることで、ボールねじ軸24が進退しない状態で保持される。これにより、操作対象装置側からボールねじ軸24側へ外力が入力されたとしても、ボールねじ軸24の位置を所定の位置に保持しておくことができる。斯かる構成は、特に位置保持が必要なアプリケーションに電動アクチュエータを適用する場合に好適である。
本実施形態では、ロック用モータ64を駆動させることにより、ロック部材60を後退させるようにしているが、反対に、ロック部材60を前進させるために、ロック用モータ64を駆動させてもよい。また、ロック用モータ64を正逆回転させることで、ロック部材60を前進させたり後退させたりすることも可能である。
本実施形態の電動アクチュエータ1には、ボールねじ軸24のストロークを検出するためのストロークセンサ70が搭載されている(図2、図3参照)。ストロークセンサ70はセンサベース71に取り付けられ、センサベース71はモータケース11とブーツカバー39の間の外周面に設けられたセンサケース76にボルト72で締結固定されている。一方、ボールねじ軸24のブーツ36で覆われる部分の外周面には、センサターゲットとしての永久磁石73が取り付けられている(図1参照)。本実施形態では、永久磁石73は、周方向の一部で切り離された円筒状の弾性部材74を介してボールねじ軸24に取り付けられている。ボールねじ軸24が進退すると、ストロークセンサ70に対する磁石73の位置が変化し、これに伴って変化する磁力線の向きをストロークセンサ70によって検出することで、ボールねじ軸24の軸方向位置を把握することができる。
続いて、図10に基づき、ストロークセンサ70を用いたフィードバック制御について説明する。
図10に示すように、目標値が制御装置80に送られると、制御装置80のコントローラ81から駆動用モータ10に制御信号が送られる。なお、この目標値は、例えば、車両上位のECUに操作量が入力された際に、その操作量に基づいてECUが演算したストローク値である。
制御信号を受け取った駆動用モータ10は回転駆動を開始し、この駆動力が上記遊星歯車減速機構18、ドライブギヤ30、ドリブンギヤ31、ボールねじナット23を介してボールねじ軸24に伝達されて、ボールねじ軸24が前進する。これにより、ボールねじ軸24の先端部側(アクチュエータヘッド側)に配置される操作対象装置が操作される。
このとき、ストロークセンサ70によってボールねじ軸24のストローク値(軸方向位置)が検出される。ストロークセンサ70によって検知された検出値は制御装置80の比較部82に送られ、検出値と上記目標値との差分が算出される。そして、検出値が目標値と一致するようになるまで、駆動用モータ10を駆動させる。このように、ストロークセンサ70によって検出されたストローク値がフィードバックされてボールねじ軸24の位置が制御されることで、本実施形態の電動アクチュエータ1を、例えば、シフトバイワイヤに適用した場合、シフト位置を確実にコントロールすることができる。
次に、図11に基づき、ストロークセンサ70に代えて圧力センサ83を用いた場合のフィードバック制御について説明する。
図11に示すように、この場合は、操作対象装置に圧力センサ83が設けられている。車両上位のECUに操作量が入力されると、ECUは要求される目標値(圧力指令値)を演算する。この目標値が制御装置80に送られ、コントローラ81から駆動用モータ10に制御信号が送られると、駆動用モータ10は回転駆動を開始する。これにより、ボールねじ軸24が前進し、ボールねじ軸24の先端部側(アクチュエータヘッド側)に配置される操作対象装置が加圧操作される。
このときのボールねじ軸24の操作圧力は、圧力センサ83により検出され、この検出値と目標値に基づいて、上記ストロークセンサ70を用いる場合と同様に、ボールねじ軸24の位置がフィードバック制御される。このように、圧力センサ83によって検出された圧力値がフィードバックされてボールねじ軸24の位置が制御されることで、本実施形態の電動アクチュエータ1を、例えば、ブレーキバイワイヤに適用した場合、ブレーキの液圧を確実にコントロールすることができる。
以下、本実施形態の電動アクチュエータ1が備える上記支持軸受40の構成について詳しく説明する。
図12は、支持軸受40の断面図である。
図12に示すように、支持軸受40は、内周面に軌道面42aが形成された外側軌道輪である外輪42と、外周面に軌道面43aが形成された内側軌道輪である内輪43と、これらの軌道面42a,43aの間に介在する転動体である複数のボール44と、各ボール44を保持する保持器77とを主な構成要素としている。また、外輪42と内輪43との軸方向両端開口部には、環状のシール部材78が設けられ、外輪42と内輪43とシール部材78とで構成される軸受内空間には、潤滑剤としてのグリース79が封入(供給)されている。
本実施形態では、支持軸受40として複列アンギュラ玉軸受を用いている。複列アンギュラ玉軸受は、2列のボール44が、いずれも接触角をもって外輪42の軌道面42aと内輪43の軌道面43aに接触しているため、ラジアル荷重に加えて、両方向のアキシャル荷重を支承できる特性を有する。なお、接触角とは、軸受中心軸に垂直な平面(ラジアル平面)と、軌道面からボールへ伝えられる力の合力の作用線(図1または図12に示す各ボール44の中心を通る一点鎖線)とが成す角度である。また、本実施形態では、複列アンギュラ玉軸受が、各ボール44の上記作用線が半径方向外側で交差するように配置される、所謂背面合わせの構成となっている。このため、モーメント荷重に対しても有利である。
このような複列アンギュラ玉軸受を用いることで、支持軸受40をドリブンギヤ31に対して軸方向の片側(図1では右側)のみに配置しても、ボールねじ22を安定して片持ち支持することができる。また、支持軸受40をドリブンギヤ31に対して軸方向の片側のみに配置することができるので、支持軸受40が配置されない側(図1では左側)においては支持軸受と他の構成部品との干渉を考慮しなくてもよくなるため、部品レイアウトの設計自由度が向上し、小型化も図れるようになる。なお、支持軸受40は、複列アンギュラ玉軸受に限らず、一対の単列のアンギュラ玉軸受を組み合せて使用してもよい。また、アンギュラ玉軸受のほかに、例えば、深溝玉軸受等を用いた他の複列軸受を用いることも可能である。
図13は、上記保持器77の斜視図である。
図13に示すように、本実施形態の保持器77は、冠型に形成されている。詳しくは、保持器77は、環状の本体85を有し、その本体85の軸方向の一方を臨む面(図13における上面)には、ボール44を保持するための凹状のポケット部86が周方向に渡って等ピッチに設けられている。また、隣り合うポケット部86同士の間には、平坦部87が形成され、平坦部87を基準面として各ポケット部86の両側に一対の保持爪88が立ち上がるように設けられている。各ポケット部86の互いに対向する一対の保持爪88は、互いに接近するように湾曲し、保持爪88間でボール44を保持できるように形成されている。
上記の如く構成された保持器77において、本実施形態では、本体85の外径面77aおよび内径面77bに柔軟性構造体89(図13におけるハッチング部)が設けられている。ここでは、柔軟性構造体89は、多数の繊維材(短繊維:パイル)を植毛して成る繊維植毛部で構成されている。このように、本体85の外径面77aおよび内径面77bにそれぞれ柔軟性構造体89が設けられていることで、支持軸受40内に封入されるグリース79が柔軟性構造体89に付着して保持される。これにより、グリース79がせん断を受けることなく保持器77と共に回転するため、撹拌抵抗が生じず、柔軟性構造体89が無い場合と比較して、回転トルクを低減することができる。一般的に、グリースは、せん断を受けると軟化して離油しやすくなり潤滑寿命が短くなるが、本実施形態では、グリース79が柔軟性構造体89に保持されることで、せん断を受けにくく潤滑寿命の長寿命化が図れる。また、グリース79の支持軸受40内での移動も抑制でき、グリース漏れも低減できる。潤滑剤として潤滑油を用いる場合は、柔軟性構造体89に潤滑油を吸収させることで、外部から潤滑油を供給することなく、支持軸受40内に十分な量の潤滑油を保持でき、かつ、グリースのように回転の抵抗となる半固体状の物質が存在しないため、より低トルクとなる。また、必要に応じて、外部からの油供給が不要の構成とすることができ、支持軸受40をコンパクト化できる。
柔軟性構造体89は、グリース79または潤滑油を保持できるように、保持器77の表面のうち、グリース79または潤滑油と接触する表面に設けられる。ただし、保持器77の表面のうち、ボール44と接触する表面に柔軟性構造体89を設けると、回転トルクの増加など、軸受特性に悪影響を与える虞がある。このため、柔軟性構造体89は、ボール44との接触表面以外であってグリース79または潤滑油と接触する表面に設けられる必要がある。本実施形態における保持器77の外径面77aおよび内径面77bは、グリース79と接触し、かつ、ボール44とは接触しない表面である(図12参照)。このように、柔軟性構造体89を、グリース79と接触し、かつ、ボール44とは接触しない保持器77の外径面77aおよび内径面77bに設けることで、軸受機能を損なうことなく、グリース79や潤滑油を保持する効果が得られ、回転トルクの低減を実現することが可能となる。
また、柔軟性構造体89が設けられる箇所は、保持器77の外径面77aのみであってもよいし、保持器77の内径面77bのみであってもよい。また、グリース79と接触し、かつ、ボール44とは接触しない箇所であれば、保持器77の外径面77aおよび内径面77b以外の任意の箇所に柔軟性構造体89を設けてもよい。ただし、ボール44と接触する箇所には植毛のための接着剤は付着しないようにすることが望ましい。接着剤が保持器77のポケット部86に付着すると、ポケット部86の形状が崩れ、ボール44の拘束やボール44と接着剤との接触によりボール44にキズが発生する虞があるからである。一方、柔軟性構造体89が設けられる箇所(表面)がボール44との接触表面以外であれば、そこに形成された繊維材の先端がボール44と接触するのは構わない。むしろ、繊維材の先端のみがボール44と接触することは、ボール44の表面に付着する過多な潤滑剤が繊維材によって掻き取られることで回転トルクの低減が期待できるため好ましい。
柔軟性構造体を構成する繊維材の植毛方法としては、静電植毛方法や静電吹付け植毛方法を採用できる。これらの方法は、保持器の内径面や外径面などの曲面部においても、多量の繊維材を短時間で密に植毛できる点で好ましい。図14に示すように、静電植毛を行うには、まず、植毛対象物97の表面に接着剤98を塗布し、付着させたい短繊維95を電極板96上に置く。そして、植毛対象物97と電極板96に印加すると、高電圧により上下間に電界が発生し、短繊維95に分極が起こる。その結果、短繊維95のマイナス電荷が植毛対象物97に引きつけられ、短繊維95が植毛対象物97上の接着剤98に付着する。その後、乾燥工程や仕上げ工程などを経て、短繊維95が植毛対象物97の表面に固定され、繊維植毛部(柔軟性構造体)が形成される。なお、静電植毛方法において、短繊維を植毛対象物へ飛翔させる方向はいずれの方向であってもよい。例えば、アップ式(短繊維を下方から上方へ飛翔させる方式)、ダウン式(短繊維を上方から下方へ飛翔させる方式)、サイド式(短繊維を横方向に飛翔させる方式)、アップダウン式(アップ式とダウン式とを組み合せて同時に行う方式)などがあるが、いずれの方式を採用してもよい。
図15において、(a)に示すのは、静電植毛方法によって形成された繊維植毛部の断面図であり、(b)に示すのは、静電吹付け植毛方法によって形成された繊維植毛部の断面図である。静電吹付け植毛方法は、(吹付けしない)静電植毛方法とほぼ同じ原理であるが、植毛対象物97の表面に対して短繊維95が垂直に植毛される静電植毛方法{図15(a)}とは異なり、静電的な吸引力にて短繊維95が植毛対象物97の表面接着剤層に突き刺さってから、エアの作用により植毛対象物97の表面に対して傾き、一定の角度で固定される特徴がある{図15(b)}。このため、静電吹付け植毛方法によれば、静電植毛方法と比べて少ない短繊維量で(低密度で)広い面積を覆うことができ、特に量産の場合に、短繊維量の削減と時間短縮によるコスト低減が期待できる。
植毛に用いられる短繊維としては、植毛用短繊維として使用可能であれば特に限定されず、例えば、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ビニロンなどの合成樹脂繊維、(2)カーボン繊維、グラスファイバーなどの無機繊維、(3)レーヨン、アセテートなどの再生繊維や、綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。油による潤滑や溶解などが生じにくく化学的に安定であり、均質な繊維を多量に生産することができ、安価に入手することができるため、上記の中でも合成樹脂繊維を用いることが好ましい。
短繊維の形状としては、柔軟性構造体の形成箇所において、軸受機能に悪影響を与えるような他部材との干渉がない形状であれば特に限定されない。具体的な形状としては、例えば、長さ0.5〜2.0mm、太さ0.5〜50デシテックスのものが好ましく、柔軟性構造体の短繊維の密度としては、植毛した面積あたりに繊維の占める割合が10〜30%が好ましい。短繊維の形状としてストレートやベンド(先端部が曲がった形状)があり、断面形状は円形や多角形状がある。ベンド形状ではストレート形状と比較してグリースをより強く保持することができる。多角形状断面の短繊維を利用することで、円形断面の短繊維よりも大きな表面積とすることができ、潤滑剤の表面張力を大きくすることができる。それぞれの特性に合わせて、短繊維の形状を選定することが好ましい。
接着剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを主成分とする接着剤が挙げられる。例えば、ウレタン樹脂溶剤系接着剤、エポキシ樹脂溶剤系接着剤、酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂系エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系エマルジョン接着剤、ポリエステル系エマルジョン接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、本発明に係る柔軟性構造体が適用される保持器は、図12および図13に示すような冠型保持器に限らず、波型保持器などの他の形状の保持器であってもよい。また、保持器の材質については、金属材料や樹脂材料など、任意の材料を採用できる。樹脂製の保持器の場合、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン46樹脂などのポリアミド樹脂を樹脂母材とし、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、他の添加剤を配合した樹脂組成物を用いて形成される。
ここで、上記のような柔軟性構造体を保持器に設ける以外に、保持器の表面粗さを大きく(粗く)することでも、保持器の潤滑剤保持能力を増大させることができると考えられる。しかしながら、保持器が樹脂製であって射出成型によって製造される場合は、金型からの抜き取り性の観点から、保持器の表面粗さを小さくすることが多い。反対に保持器の表面粗さを大きくすると、保持器が金型から抜け難くなり、摩耗によって金型寿命が短くなる。従って、保持器の表面粗さを大きくして潤滑剤保持能力を増大させることは、コストや金型寿命の点で好ましくはない。また、ナイロンなどの樹脂材料は、弾性率が低い材料のため、金属材料のように後加工で保持器の表面を粗くすることも難しい。また、ショットブラストなどで樹脂材料のバリ取りをする処理もあるが、その際の処理では保持器の表面粗さを大きくすることは期待できない。また、保持器が金属製の場合は、プレス加工や切削加工によって保持器を製造した後、後加工によって表面粗さを大きくすることも可能であるが、植毛処理で得られるのと同等以上の潤滑剤保持能力を有する表面積を得ることは困難である。これに対して、本発明のように保持器に柔軟性構造体を設ける方法であれば、保持器が樹脂製であっても金属製であっても容易に潤滑剤保持能力を増大させる加工を行うことが可能である。
また、柔軟性構造体を、上記繊維植毛部に代えて、軟質発泡材または軟質樹脂材にて構成してもよい。ただし、繊維材、軟質発泡材、軟質樹脂材の中でも、グリースを掻き取りやすく、また、転動体接触時の回転トルクへの悪影響を与えにくいことから、繊維材を用いることが好ましい。さらに、繊維材の中でも、合成樹脂の短繊維は、油による膨潤や溶解などが生じにくく化学的に安定であり、均一な品質で多量に生産することができ、安価に入手できることから、柔軟性構造体の構成材料として用いられることが好ましい。柔軟性構造体を、軟質発泡材または軟質樹脂材にて構成する場合は、柔軟性構造体の形成部位に、予め所定形状に形成・加工したものを接着剤などにより接着するようにすればよい。
軟質発泡材としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン、フェノール、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴムを発泡して得られる発泡材が挙げられる。軟質樹脂材としては、コルク材、ゴム板材、ポリエチレンや塩化ビニルなどの軟質シートが挙げられる。また、軟質発泡材または軟質樹脂材を使用しようする場合の接着剤としては、前記短繊維を植毛する際に用いられる接着剤を用いることができる。
また、本発明が適用される支持軸受に封入されるグリースまたは潤滑油は、一般的に転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。潤滑油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。これらの潤滑油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
グリースを構成する基油としては、上記の潤滑油が挙げられる。また、グリースを構成する増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、PTFE樹脂などのフッ素系樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、潤滑剤には、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗抑制剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの固体潤滑剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。
潤滑剤の封入量は、所望の潤滑特性を確保できる範囲であれば特に限定されないが、軸受内空間における静止空間体積の50%〜80%(体積比率)程度とすることが好ましい。本発明では、柔軟性構造体の形成により、グリースの撹拌抵抗の低減が図れるため、潤滑剤封入量を上記範囲としながらも、回転トルクの低減が図れる。
図16は、本発明の他の実施形態に係る電動アクチュエータ1である。
図16に示す電動アクチュエータ1は、図1に示す電動アクチュエータ1と比べて、減速機構部9をなくして、モータ部8と駆動力伝達部4を直接連結し、軸ケース50を、ロック機構部7を取り付けるホルダ部66のないものに取り換えている。この場合、駆動部2はモータ部8のみで構成されている。また、駆動用モータ10の出力軸10aは、減速機構部9がないので、ギヤボス32に圧入嵌合し、ギヤボス32を支持する伝達ギヤケース29側の転がり軸受33は省略している。また、駆動用モータ10が取り付けられるモータアダプタ19は、嵌合する相手部材が減速ギヤケース17から伝達ギヤケース29に変わるので、相手部材の嵌合形状に合った別の形状のものに換えている。その他の構成は、図1に示す実施形態と同様である。なお、図16に示す実施形態の電動アクチュエータ1は、駆動用モータ10からの駆動力が減速機構部9を介さずに駆動力伝達部4に直接伝達される以外、図1に示す実施形態と基本的に同様に制御されて動作するので、制御および動作に関する説明は省略する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。前述の実施形態では、支持軸受40にシール部材78が設けられているが、本発明は、シール部材78の有無は問わず適用でき、シール部材78が設けられていない開放型の軸受であっても、同様に柔軟性構造体を設けることで潤滑剤保持効果が得られる。
また、上記運動変換機構部3は、ボールねじ22に限らず、滑りねじ装置であってもよい。ただし、回転トルクを低減して、駆動用モータ10を小型化する観点からすれば、ボールねじ22の方が好適である。また、上記減速機構部9は、遊星歯車減速機構18以外の減速機構でもよい。また、本発明に係る電動アクチュエータは、二輪車を含む自動車用の電動パーキングブレーキ機構や、電動油圧ブレーキ機構、電動シフト切替機構、電動パワーステアリングのほか、2WD/4WD電動切替機構、船外機用(船舶推進機用)の電動シフト切替機構などにも適用可能である。
1 電動アクチュエータ
2 駆動部
3 運動変換機構部
4 駆動力伝達部
5 運動変換機構支持部
6 操作部
7 ロック機構部
8 モータ部
9 減速機構部
10 駆動用モータ
10a 出力軸
40 支持軸受
42 外輪
43 内輪
44 ボール(転動体)
77 保持器
77a 外径面
77b 内径面
79 グリース(潤滑剤)
89 柔軟性構造体

Claims (3)

  1. 駆動部と、前記駆動部からの回転運動を前記駆動部の出力軸と平行な軸方向の直線運動に変換する運動変換機構部と、前記駆動部から前記運動変換機構部へ駆動力を伝達する駆動力伝達部と、前記運動変換機構部を支持する複列軸受を有する運動変換機構支持部とを備える電動アクチュエータであって、
    前記複列軸受は、軌道輪である内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の転動体と、前記転動体を保持する保持器と、軸受内空間に供給される潤滑剤とを備え、
    前記保持器の前記転動体との接触表面以外で前記潤滑剤と接触する表面に、繊維材、軟質発泡材、または軟質樹脂材からなる柔軟性構造体を設けたことを特徴とする電動アクチュエータ。
  2. 前記柔軟性構造体が、前記保持器の内径面および/または外径面に設けられている請求項1に記載の電動アクチュエータ。
  3. 前記柔軟性構造体が、合成樹脂の短繊維を静電吹付け植毛方法によって植毛した繊維植毛部にて構成される請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
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CN108317181A (zh) * 2018-04-13 2018-07-24 无锡民联汽车零部件有限公司 具有形变检测功能的双沟球汽车轴承
WO2020004379A1 (ja) * 2018-06-29 2020-01-02 Ntn株式会社 電動アクチュエータ
CN111288135A (zh) * 2020-02-18 2020-06-16 燕山大学 一种节能型活塞式稀油润滑电伺服作动器
JP2020133761A (ja) * 2019-02-20 2020-08-31 住友重機械工業株式会社 駆動装置

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