JP2018168877A - パラレルリンク機構、等速自在継手、およびリンク作動装置 - Google Patents

パラレルリンク機構、等速自在継手、およびリンク作動装置 Download PDF

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直哉 小長井
Naoya Konagai
直哉 小長井
浩 磯部
Hiroshi Isobe
浩 磯部
清悟 坂田
Seigo Sakata
清悟 坂田
祐紀 志村
Yuki Shimura
祐紀 志村
山田 裕之
Hiroyuki Yamada
裕之 山田
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Abstract

【課題】回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間のグリースが外部に漏れることを防止できるパラレルリンク機構を提供する。【解決手段】パラレルリンク機構は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結してなる。各リンク機構は、基端側および先端側の端部リンク部材5と、中央リンク部材とでなる。リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶部T1、および端部リンク部材5と中央リンク部材の回転対偶部は、内径側対偶構成部13,15と外径側対偶構成部16とが軸受12を介して対向する。これら内径側対偶構成部13,15と外径側対偶構成部16の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部19,21が設けられている。【選択図】図6

Description

この発明は、三次元空間において精密で広範な作動範囲の動作を行えるパラレルリンク機構、並びに、このパラレルリンク機構をそれぞれ備え医療機器や産業機器等に用いられる等速自在継手およびリンク作動装置に関する。
医療機器や産業機器等の各種作業装置に用いられるパラレルリンク機構が、例えば特許文献1、2に提案されている。
特開2000−94245号公報 米国特許第5,893,296号明細書
特許文献1のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定すると、リンク長が長くなることにより、機構全体の寸法が大きくなって装置の大型化を招くという問題がある。また、機構全体の剛性が低く、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートにおける可搬重量が小さいものに制限されるという問題もある。
特許文献2のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、4節連鎖の3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結した構成としたことにより、コンパクトでありながら、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作が可能である。
上記4節連鎖のリンク機構を3組以上有する形態のパラレルリンク機構では、従来、機械全体の高剛性化を図るために、各節の回転対偶部に設けられる軸受をサイズアップすることが行われている。しかし、軸受をサイズアップすると回転対偶部も大きくなり、部品間の干渉が起こり易く、作動範囲が狭くなるという問題がある。部品間の干渉を避けようとすると、パラレルリンク機構全体の寸法が大きくなってしまう。
特に、シール付きの軸受は幅寸法が大きく、パラレルリンク機構全体の寸法も大きくなる。そこで、小型化が可能なシールの無い軸受を回転対偶部に使用することで、回転対偶部の軸受をサイズアップした場合にパラレルリンク機構全体の寸法が大きくなることを抑えることが考えられる。しかし、シールの無い軸受を使用すると、軸受内空間の潤滑油が外部に飛散したり、外部からの異物が軸受内に侵入したりする恐れがある。
また、軸受周辺の部材の隙間を狭くして、シールの効果が得られる構成とすることで、軸受の大型化を抑制しつつ、シール性能を確保することも考えられる。しかし、この場合は、部品の機械精度が要求されるため、軸受が高価となる。
この発明の目的は、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間の潤滑剤が外部に漏れることを防止できるパラレルリンク機構を提供することである。
この発明の他の目的は、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間の潤滑剤が外部に漏れたり、外部から軸受内空間に異物が侵入したりすることを防止できるパラレルリンク機構を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間のグリースが外部に漏れることを防止できるパラレルリンク機構を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、コンパクトで軽量な等速自在継手を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、コンパクトで軽量なリンク作動装置を提供することである。
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する。
このパラレルリンク機構において、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記回転対偶部に、前記軸受の軸受内空間に封入された潤滑剤の移動を止める柔軟性構造体が設けられていることを特徴とする。
この構成によると、柔軟性構造体によって軸受空間内の潤滑剤の移動が止められることにより、軸受内空間の潤滑剤が外部へ漏れることが防止される。このため、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間の潤滑剤が外部に漏れることを防止できる。
この発明の他のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有する。
このパラレルリンク機構において、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記内径側対偶構成部と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていることを特徴とする。
前記柔軟性構造体が植毛部である場合には、植毛部の各繊維は、その先端が他方の対向面に接触していても接触していなくてもよい。接触していない場合、繊維の先端と他方の対向面との距離がなるべく狭いことが好ましく、接触している場合は、繊維の先端が他方の対向面に対してなるべく軽接触であることが好ましい。
この構成によると、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に設けられた柔軟性構造体によって、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部との間の隙間が塞がれることにより、軸受内空間の潤滑剤が外部へ漏れることが防止される。詳しくは、軸受内空間における柔軟性構造体の近傍に位置する潤滑剤が、柔軟性構造体に捕捉されて安定状態で保持されることで、柔軟性構造体が軸受内空間と外部とを密封する密封シールとして機能し、潤滑剤の漏れを防止する。また、柔軟性構造体が密封シールとして機能することで、外部から軸受内空間への異物の侵入を防止する。柔軟性構造体が植毛部である場合には、植毛部の各繊維の先端が他方の対向面に接触している場合は密封性が高くなり、接触していない場合はトルクが小さくなる。
上記したように、柔軟性構造体が密封シールとして機能するため、別途にシール部材を設ける必要がなく、回転対偶部の軸受を簡易で安価な構成とすることができる。また、シール部材が無いので、回転対偶部の軸受の幅寸法を小さくできる。これにより、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの可動範囲を広くとることができ、かつ回転対偶部をサイズアップした場合にパラレルリンク機構全体の寸法が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
前記パラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記端部リンク部材に固定され前記軸受の内輪に挿通される軸部と、この軸部に対して前記内輪の軸方向位置を固定する内輪固定部材と、前記軸部の外周に嵌合し前記内輪と前記内輪固定部材との間に介在する間座部材とを有し、前記間座部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていてもよい。
この場合、内輪固定部材と内輪との間に介在する間座部材を利用して柔軟性構造体によるシール構造を構築することができるため、シールのための別部材を設ける必要がなく、コンパクトで安価な構成が可能となる。間座部材の外周面に柔軟性構造体としての植毛部が設けられる場合、外周面の一部に植毛するのではなく、外周面全体に植毛すればよいので、植毛工程が容易となる。
前記パラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記端部リンク部材に固定され前記軸受の内輪に挿通される軸部を有し、この軸部は、外径が前記内輪の内径よりも大きく前記内輪の端面に当接して前記内輪を軸方向に位置決めする段差部を有し、前記軸部の前記段差部と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていてもよい。
軸部の段差部は、内輪の軸方向位置を固定するために必要な部位であり、かつ外径側対偶構成部との径方向の距離が近い部位である。この段差部を利用することで、内輪を固定するための別部材を設置することなく、容易にシール構造を構築することができる。
前記パラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記リンクハブまたは前記中央リンク部材に前記軸受を介して回転可能に連結される回転軸と、前記端部リンク部材に固定され前記回転軸を支持する回転軸支持部材とを有し、前記回転軸支持部材は、前記軸受の外輪よりも外径が大きく形成され、前記回転軸支持部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていてもよい。
上記箇所に柔軟性構造体を設けても、前記同様の作用および効果が得られる。このため、シールのための別部材を設けることなく、安価にシール構造を構築することができる。回転軸支持部材または外径側対偶構成部の平面部に植毛を設けることが可能であるため、植毛工程が容易となり、コスト低減が可能となる。なお、回転軸支持部材を端部リンク部材の本体とは別の部材で構築すると、回転軸支持部材の平面部の全体に植毛することが可能となり、植毛工程がより一層容易になる。
前記回転軸支持部材と前記軸受の内輪との間に、前記回転軸が挿入される貫通孔を有し前記軸受の外輪よりも外径が大きい板状部材が設けられ、この板状部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていてもよい。
前記板状部材を設けることにより、使用する軸受の直径が大きくても、軸部、軸受の内輪を固定する部材や間座部材を軸受の直径に合わせて大きくする必要がない。板状部材で軸受の端面を覆うことで、高剛性でありながら、コンパクトで軽量なパラレルリンク機構を実現することができる。板状部材として、ワッシャ、シム等の既存の部品を使用することで、コスト削減が見込める。
この発明のさらに他のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有するパラレルリンク機構において、
前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記軸受の内輪と外輪間の軸受内空間にグリースが充填され、前記軸受の構成部品における前記軸受内空間を向く面の一部に柔軟性構造体が設けられていることを特徴とする。
例えば、前記軸受が、内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の各軌道面を転走する転動体と、前記転動体を保持する保持器とで構成された転がり軸受である場合、前記内輪および前記外輪における前記軌道面の軸方向外側に位置する肩面に前記柔軟性構造体が設けられる。
この構成によると、軸受の構成部品の一部に柔軟性構造体が設けられていることで、軸受内空間のグリースが柔軟性構造体に付着して保持され、グリースが外部へ漏れることが防止される。このため、シール部材が不要となり、回転対偶部の軸受並びに回転対偶部を小型化することができる。その結果、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの可動範囲を広くとることができ、かつ回転対偶部をサイズアップした場合にパラレルリンク機構全体の寸法が大きくなり過ぎることを抑えることができる。
また、軸受内空間のグリースが柔軟性構造体に付着して移動が拘束されるため、グリースの撹拌によるトルク変動を抑制することができる。このため、パラレルリンク機構を動作させるときの消費電力が少なくて済み、ランニングコストが低減する。
さらに、柔軟性構造体にグリースが付着するため、回転対偶部が相対的な揺動運動を行っても、軸受の内輪または外輪の軌道面と転動体との間でグリース潤滑不良が起こり難く、フレッティング等による軸受の早期損傷を防止できる。これにより、パラレルリンク機構全体の長寿命化につながる。加えて、グリース潤滑不良が起こり難いため、グリースを循環させて潤滑不良を防止することを目的として実際の作業時以外にパラレルリンク機構を動作させることが不要になり、メンテナンス性が向上する。
このパラレルリンク機構において、前記軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および前記外輪の各軌道面を転走する転動体と、前記転動体を保持する保持器と、前記内輪または外輪の軸方向端に設けられ、前記前輪と前記外輪間の軸受内空間を密封するシール部材とで構成される転がり軸受であり、前記シール部材における軸方向内側を向く面に、前記転動体の配列ピッチと同ピッチで円周方向の複数箇所に前記柔軟性構造体が設けられていてもよい。
グリース潤滑不良は、内輪および外輪の軌道面と転動体との間で起こり易い。パラレルリンク機構の場合、転動体の動作量が少ないため、転動体のピッチに合わせて柔軟性構造体を設けることで、柔軟性構造体の範囲を最小限にしながらグリース潤滑不良となり易い前記箇所へグリースを供給することができる。このように柔軟性構造体が植毛部である場合には、植毛部の範囲を狭くすると、植毛処理時間や植毛量が少なり、コスト低減につながる。シール部材における軸方向内側を向く面が平面状とした場合、植毛処理が容易になる。
前記複数箇所の柔軟性構造体は、それぞれの径方向範囲の中心が、前記基端側のリンクハブに対し前記先端側のリンクハブが正対する原点位置における前記転動体の径方向中心と一致しているとよい。
この場合、パラレルリンク機構の動作時に、柔軟性構造体にグリースが付着することによって形成されたグリース溜りを転動体が通過する確率が高くなり、グリース潤滑が良好に行われる。
前記複数箇所の柔軟性構造体は、それぞれの径方向範囲の角度が、前記基端側のリンクハブに対して前記先端側のリンクハブが姿勢変更可能範囲の限界まで姿勢変更したときに前記転動体が揺動する角度よりも大きいのが好ましい。
この場合、パラレルリンク機構がどのように動作しても、確実に転動体がグリース溜りを通過する。
この発明の等速自在継手は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸が設けられ、前記先端側のリンクハブに出力軸が設けられている。
前記パラレルリンク機構を用いて等速自在継手として構成した場合も、前記同様の作用効果が得られ、等速自在継手をコンパクトで軽量に構成することができる。
この発明のリンク作動装置は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータが設けられている。
前記パラレルリンク機構を用いてリンク作動装置として構成した場合も、前記同様の作用効果が得られ、リンク作動装置をコンパクトで軽量に構成することができる。
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記回転対偶部に、前記軸受の軸受内空間に封入された潤滑剤の移動を止める柔軟性構造体が設けられているため、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間の潤滑剤が外部に漏れることを防止できる。
この発明の他のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記内径側対偶構成部と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられているため、回転対偶部に設けられる軸受が、簡易で安価な構成であっても、軸受内空間の潤滑剤が外部に漏れたり、外部から軸受内空間に異物が侵入したりすることを防止できる。
この発明のさらに他のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記軸受の内輪と外輪間の軸受内空間にグリースが充填され、前記軸受の構成部品における前記軸受内空間を向く面の一部に柔軟性構造体が設けられているため、回転対偶部に設けられる軸受が、軸受内空間のグリースが外部に漏れることを防止できて、かつ安価で小型化が可能である。
この発明の等速自在継手は、前記パラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸が設けられ、前記先端側のリンクハブに出力軸が設けられているため、コンパクトで軽量に構成することができる。
この発明のリンク作動装置は、前記パラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用アクチュエータを設けられているため、コンパクトで軽量に構成することができる。
この発明の第1の実施形態にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。 同パラレルリンク機構の異なる状態を示す一部を省略した正面図である。 同パラレルリンク機構を3次元的に表わした斜視図である。 図1のIV−IV断面図である。 同パラレルリンク機構の1つのリンク機構を直線で表現した図である。 図4の一部分の拡大図である。 図4の他の一部分の拡大図である。 この発明の第2の実施形態にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。 図8のIX−IX断面図である。 図9の一部分の拡大図である。 図9の他の一部分の拡大図である。 図10とはシール構造が異なる例を示す。 図11とはシール構造が異なる例を示す。 この発明の第3の実施形態にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。 図14のXV−XV断面図である。 同パラレルリンク機構の1つの基端側の端部リンク部材およびその両端周辺部の断面図である。 同端部リンク部材の回転軸支持部材の正面図である。 図16の一部の拡大図である。 図16の他の一部の拡大図である。 第3の実施形態の変形例にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。 同パラレルリンク機構の1つの基端側の端部リンク部材およびその両端周辺部の断面図である。 図21の一部の拡大図である。 図21の他の一部の拡大図である。 植毛部が設けられた軸受の一例の断面図である。 植毛部が設けられた軸受の他の例の断面図である。 図25に示す軸受の側面図である。 端部リンク部材の可動範囲を示す説明図である。 中央リンク部材の可動範囲を示す説明図である。 第1の実施形態にかかるパラレルリンク機構を用いた等速自在継手の一部を省略した正面図である。 第3の実施形態にかかるパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置の一部を省略した正面図である。 図30のXXXI−XXXI断面図である。 同リンク作動装置の端部リンク部材の回転軸支持部材の正面図である。 第1の実施形態にかかるパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1の実施形態]
図1〜図7は、この発明の第1の実施形態にかかるパラレルリンク機構を示す。図1および図2はこのパラレルリンク機構のそれぞれ異なる状態を示す正面図、図3は同パラレルリンク機構1を三次元的に表わした斜視図である。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。図1および図2では、1組のリンク機構4のみが示されている。リンク機構4の数は、4組以上であってもよい。
各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。
パラレルリンク機構1は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造であって、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶、および端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶の中心軸が、基端側と先端側においてそれぞれの球面リンク中心PA,PB(図1、図2)で交差している。また、基端側と先端側において、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じであり、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γ(図3)を持っていてもよいし、平行であってもよい。
図4は図1のIV−IV断面図であって、同図に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の各回転対偶の中心軸O1と、中央リンク部材7と基端側の端部リンク部材5の各回転対偶の中心軸O2と、基端側の球面リンク中心PAとの関係が示されている。つまり、中心軸O1と中心軸O2とが交差する点が球面リンク中心PAである。先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6の形状ならびに位置関係も図4と同様である(図示せず)。図示例では、リンクハブ2(3)と端部リンク部材5(6)の各回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5(6)と中央リンク部材7の各回転対偶の中心軸O2とが成す角度αが90°とされているが、前記角度αは90°以外であっても良い。
3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、図5に示すように、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。図5は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。この実施形態のパラレルリンク機構1は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材7の中央部は、共通の軌道円上に位置している。
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶の中心軸O1(図4)と直角に交わる直線をリンクハブ2,3の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θ(図3)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(図3)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢変更は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの交点Oを回転中心として行われる。図1は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBが同一線上にある状態を示し、図2は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが或る作動角をとった状態を示す。姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Dは変化しない。
各リンク機構4が次の各条件を満たす場合、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。
条件1:各リンク機構4におけるリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6との回転対偶の中心軸O1の角度および長さが互いに等しい。
条件2:リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6との回転対偶の中心軸O1および端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2が、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBで交差する。
条件3:基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しい。
条件4:中央リンク部材7における基端側部分と先端側部分の幾何学的形状が等しい。
条件5:中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係が基端側と先端側とで同じである。
図3に示すように、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3は、その中心部に貫通孔10が軸方向に沿って形成され、外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。これら基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外周面の円周方向に等間隔の位置に、基端側の端部リンク部材5および先端側の端部リンク部材6がそれぞれ回転自在に連結されている。
図4に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2が図示されている。回転対偶部T1については、円周方向3箇所にあるすべてのものが図示され、回転対偶部T2,T3については、1つのリンク機構4のものだけが図示されている。以下で説明する基端側の回転対偶部T1,T2の構成は、先端側の回転対偶部T3,T4(図1、図2)についても言える。
図6は、回転対偶部T1の拡大図である。リンクハブ2の円周方向3箇所(図6は1箇所だけを示す)に、前記軸方向の貫通孔10と外周側とを連通する半径方向に延びる連通孔11が形成され、この連通孔11内に設けられた内側および外側の2つの軸受12により軸部材13が回転自在に支持されている。ここで内側、外側は、球面リンク中心PA(図4)に対する位置関係を指す。軸部材13の外端部はリンクハブ2から突出し、その突出部に端部リンク部材5が連結され、先端ねじ部13aに螺着したナット14によって、端部リンク部材5が間座部材15と共に締付け固定されている。つまり、回転対偶部T1は、リンクハブ2と端部リンク部材5とが、軸受12を介して互いに回転自在に連結されている。
より詳しくは、2つの軸受12はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部材13の内端部分は、軸受12の内輪12aの内周に嵌合した部分13bよりも外径が大きい段差部13cとされ、この段差部13cの段差面13dが内側の軸受12の内輪12aの端面に当接することで、内輪12aを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受12の内輪12aと端部リンク部材5との間には、両端をこれらに接して間座部材15が設けられている。よって、前記ナット14を締め付けることにより、端部リンク部材5および間座部材15を介して内輪12aが前記段差面13dに押し付けられて、内輪12aを締付け固定すると共に、軸受12に対して予圧を付与する。
リンクハブ2における前記連通孔11の周辺部分は、軸受設置部16をなしている。この軸受設置部16の内端部は、軸受12の外輪12bの外周に嵌合した部分である外輪嵌合部16aよりも内径が小さい段差部16bとされ、この段差部16bの段差面16cが内側の軸受12の外輪12bの端面に当接することで、外輪12bを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受12の外輪12bは、軸受設置部16に取り付けた止め輪17によって抜け止めされている。
回転対偶部T1は、軸受12を介して対向する内径側対偶構成部と外径側対偶構成部とで構成される。図示例の内径側対偶構成部は、軸部材13とナット14と間座部材15とからなる。軸部材13は、請求の範囲で言う軸部に該当する。図示例では、軸部である軸部材13が端部リンク部材5とは別部材とされているが、軸部材13は端部リンク部材5と一体に設けられていてもよい。ナット14は、請求の範囲で言う内輪固定部材に該当する。また、外径側対偶構成部は、リンクハブ2の軸受設置部16と止め輪17とからなる。図示例では、軸受設置部16はリンクハブ2の一部とされているが、軸受設置部16はリンクハブ2と別体であってもよい。
前記間座部材15の軸方向外側部分は、前記止め輪17を避けて外径側へ延びたつば状部15aとして形成されており、このつば状部15aの外周面と軸受設置部16の一部である外端部16dとが、隙間18を介して対向している。そして、間座部材15のつば状部15aと軸受設置部16の外端部16dの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体としての植毛部19が設けられている。図示例では、軸受設置部16の外端部16dに植毛部19が設けられているが、逆であってもよい。
前記植毛部19は、複数の繊維を植毛したものである。植毛部19は、繊維の先端が他方の対向面に接触していても接触していなくてもよい。接触していない場合、繊維の先端と他方の対向面との距離がなるべく狭いことが好ましく、接触している場合は、繊維の先端が他方の対向面に対してなるべく軽接触であることが好ましい。一般的に最も好ましいには、繊維の先端が他方の対向面に接触するかしないかの限界の状態である。以下に説明する柔軟性構造体としての植毛部21,31,33,41,43,51,53,61,65,67,107,108,117,118,127,128,137,138についても同様である。これら各植毛部に用いられる繊維の種類、植毛方法等については、後で詳しく説明する。
また、前記軸部材13の段差部13cと前記軸受設置部16の段差部16bとが、隙間20を介して対向している。そして、軸部材13の段差部13cと軸受設置部16の段差部16bの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部21が設けられている。図示例では、軸受設置部16の外端部16dに植毛部19が設けられているが、逆であってもよい。
図7は、回転対偶部T2の拡大図である。端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2は、中央リンク部材7の連通孔23内に内側および外側の2つの軸受24が設けられ、これら軸受24により、端部リンク部材5の先端の軸部25が回転自在に支持されている。軸部25は、端部リンク部材5の他端から外側に延びている。つまり、回転対偶部T2は、端部リンク部材5と中央リンク部材7とが、軸受24を介して互いに回転自在に連結されている。軸受24は、間座部材26を介して、軸部25の先端ねじ部25aに螺着したナット27によって締付け固定されている。
より詳しくは、2つの軸受24はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部25の内端部分は、軸受24の内輪24aの内周に嵌合した部分25bよりも外径が大きい段差部25cとされ、この段差部25cの段差面25dが内側の軸受24の内輪24aの端面に当接することで、内輪24aを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受24の内輪24aは、前記間座部材26に接している。よって、前記ナット27を締め付けることにより、間座部材26を介して内輪24aが前記段差面25dに押し付けられて、内輪24aを締付け固定すると共に、軸受24に対して予圧を付与する。
中央リンク部材7における前記連通孔23の周辺部分は、軸受設置部28をなしている。この軸受設置部28の内端部は、軸受24の外輪24bの外周に嵌合した外輪嵌合部28aよりも内径が小さい段差部28bとされ、この段差部28bの段差面28cが内側の軸受24の外輪24bの端面に当接することで、外輪24bを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受24の外輪24bは、軸受設置部28に取り付けた止め輪29によって抜け止めされている。
回転対偶部T2は、軸受24を介して対向する内径側対偶構成部と外径側対偶構成部とで構成される。図示例の内径側対偶構成部は、軸部25と間座部材26とナット27とからなる。図示例では、軸部25が端部リンク部材5と一体とされているが、軸部25は端部リンク部材5と別体であってもよい。ナット27は、請求の範囲で言う内輪固定部材に該当する。また、外径側対偶構成部は、中央リンク部材7の軸受設置部28と止め輪29とからなる。図示例では、軸受設置部28は中央リンク部材7の一部とされているが、軸受設置部28は中央リンク部材7と別体であってもよい。
前記間座部材26の軸方向先端側部分は、前記止め輪29を避けて外径側へ延びたつば状部26aとして形成されており、このつば状部26aの外周面と軸受設置部28の一部である外端部28dとが、隙間30を介して対向している。そして、間座部材26のつば状部26aと軸受設置部28の外端部28dの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部31が設けられている。図示例では、軸受設置部28の外端部28dに植毛部31が設けられているが、逆であってもよい。
また、前記軸部25の段差部25cと前記軸受設置部28の段差部28bとが、隙間32を介して対向している。そして、軸部25の段差部25cと軸受設置部28の段差部28bの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部33が設けられている。図示例では、軸受設置部28の外端部28dに植毛部33が設けられているが、逆であってもよい。
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2について説明した。先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部T4は回転対偶部T1と同じ構造であり、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3は回転対偶部T2と同じ構成であるため、回転対偶部T3,T4の説明は省略する。
[植毛について]
次に、柔軟性構造体としての植毛部に用いられる繊維の種類、その植毛方法植毛方法等について説明する。
植毛部は、短繊維を植毛して形成される。植毛方法としては、静電植毛、静電吹付け植毛等を採用できる。静電植毛は、加工素材に接着剤を塗布し、高電圧電極により静電界を作り、その静電吸引力で短繊維を接着剤に立毛させる技術である。静電植毛の特長は、複雑形状でも容易にかつ均一に加工することができること、金属、プラスチック、紙等の植毛対象物の材質を選ばないこと等が挙げられる。静電吹付け植毛は、静電植毛とほぼ同じ原理であるが、短繊維をエアで接着層に吹き付けることで、短繊維が基材表面に対して傾き、一定の角度で固定される特徴がある。静電吹付け植毛は、静電植毛と比べて植毛密度が低いことから、少量の短繊維で植毛することができる。このため、量産の場合、短繊維の削減と時間短縮によるコスト削減が期待できる。
植毛に用いる短繊維としては、植毛用短繊維として使用可能であれば特に限定されず、例えば、(1)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ビニロン等の合成樹脂繊維、(2)カーボン繊維、グラスファイバー等の無機繊維、(3)レーヨン、アセテート等の再生繊維や、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの植毛用繊維のうち合成樹脂繊維は、油による膨潤や溶解等が生じ難く化学的に安定であり、均質な繊維を多量に生産することができ、安価に入手することができるため、植毛に用いるのに適する。中でも、ポリアミド繊維は、耐衝撃性や耐摩耗性に優れているため、より好ましい。
短繊維の形状としては、植毛部の形成箇所において、軸受機能に悪影響を与えるような他部材との干渉がない形状であれば特に限定されない。具体的な形状としては、例えば、長さ0.5〜2.0mm、太さ0.5〜50デシテックスのものが好ましく、植毛部の短繊維の密度としては、植毛した面積あたりに繊維の占める割合が1〜30%が好ましい。短繊維の形状としてストレートやベンド(先端部が曲がった形状)があり、断面形状は円形や多角形状がある。ベンド形状は、ストレート形状と比較して、油を多く保持することができる。多角形状断面の短繊維を利用することで、円形断面の短繊維よりも大きな表面積とすることができ、油の表面張力を大きくすることができる。それぞれの特性に合わせて、短繊維の形状を選定することが好ましい。
接着剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等を主成分とする接着剤が挙げられる。例えば、ウレタン樹脂溶剤系接着剤、エポキシ樹脂溶剤系接着剤、酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤、アクリル酸エステル‐酢酸ビニル共重合体系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂系エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系エマルジョン接着剤、ポリエステル系エマルジョン接着剤、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系接着剤等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、本発明の各実施形態においては、柔軟性構造体として、植毛部が形成されている例を示したが、柔軟性構造体として、軟質発泡材または軟質樹脂材を用いてもよい。軟質発泡材としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン、フェノール、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴムを発泡したものが挙げられる。軟質樹脂材としては、コルク材、ゴム板材、ポリエチレンや塩化ビニルなどの軟質シートが挙げられる。
[パラレルリンク機構の作用]
上記構成のパラレルリンク機構1の作用について説明する。
各リンク機構4における4つの回転対偶部T1〜T4に軸受12,24を設けた構造とすることにより、各回転対偶部T1〜T4での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上することができる。
この軸受12,24を設けた構造では、軸受12,24に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶部T1〜T4のがたつきを抑えることができ、基端側のリンクハブ2側と先端側のリンクハブ3側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,24の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
軸受12,24として、例えばアンギュラ玉軸受が用いられている。アンギュラ玉軸受は、小型でかつ剛性の高い軸受であるため、モーメント荷重が作用し、コンパクトな構成を要求されるパラレルリンク機構1の回転対偶部T1〜T4に設置される軸受12,24に最適である。また、小型のアンギュラ玉軸受は標準品でシール付きのものは少なく、従来はパラレルリンク機構に使用することが難しかったが、植毛部19,21,31,33によるシール構造を構築することで小型のアンギュラ玉軸受を使用することが可能になる。場合によっては、アンギュラ玉軸受以外の玉軸受を用いてもよく、あるいはころ軸受を用いてもよい。
図6に示すように、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の軸受設置部16に軸受12を埋設状態で設けたことにより、パラレルリンク機構1全体の外形を大きくすることなく、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外形を拡大することができる。そのため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を他の部材に取付けるための取付スペースの確保が容易である。
このパラレルリンク機構1では、各回転対偶部T1〜T4における内径側対偶構成部と外径側対偶構成部間の隙間18,20,30,32に、植毛部によるシール構造が構築されている。
この植毛部によるシール構造は、植毛部19,21,31,33によって前記隙間18,20,30,32を塞ぐことによって、軸受12,24の軸受内空間の潤滑剤が外部へ漏れることが防止される。詳しくは、軸受12,24の軸受内空間における植毛部19,21,31,33の近傍に位置する潤滑剤が、植毛部19,21,31,33の繊維に捕捉されて安定状態で保持されることで、植毛部19,21,31,33が軸受12,24の内部と外部とを密封する密封シールとして機能し、潤滑剤の漏れを防止する。
また、植毛部19,21,31,33が密封シールとして機能することで、外部から軸受12,24の軸受内空間への異物の侵入を防止する。植毛部19,21,31,33の各繊維の先端が他方の対向面に接触している場合は密封性が高くなり、接触していない場合はトルクが小さくて済む。
上記したように、植毛部19,21,31,33が密封シールとして機能するため、別途にシール部材を設ける必要がなく、回転対偶部T1〜T4の軸受12,24を簡易で安価な構成とすることができる。また、シール部材が無いので、回転対偶部T1〜T4の軸受を12,24小型化することが可能である。これにより、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとることができ、かつ回転対偶部T1〜T4をサイズアップした場合にパラレルリンク機構1全体の寸法が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
具体的には、回転対偶部T1〜T4の内径側対偶構成部の一部をなす間座部材15,26と外径側対偶構成部である軸受設置部16,28の外端部16d,28dの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部19,31が設けられた構成としている。間座部材15,26は、軸受12,24の内輪12a,24aを内輪固定手段であるナット14,27で締付け固定する場合に、内輪12a,24aに対して均一に荷重がかかるように、一般的に内輪12a,24aとナット14,27との間に設けられる部品である。このように、必要不可欠な部品である間座部材15,26を利用して植毛部19,31によるシール構造を構築することができるため、シールのための別部材を設ける必要がなく、コンパクトで安価な構成が可能となる。
間座部材15,26と軸受設置部16,28の外端部16d,28dの各対向面のうち、間座部材15,26の外周面に植毛部が設けられる場合、部品の一部にだけ植毛するのではなく、間座部材15,26の外周面全体に植毛すればよいので、植毛工程が容易となる。
また、回転対偶部T1〜T4における内径側対偶構成部の一部をなす軸部材13または軸部25の段差部13c,25cと外径側対偶構成部である軸受設置部16,28の段差部16b,28bの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部21,33が設けられた構成としている。段差部13c,25cは、間座部材15,26との協働で軸受12,24の内輪12a,24aを軸方向の両側から挟み込んで固定するために必要な部位である。また、軸部材13または軸部25の段差部13c,25cは、軸受設置部16,28の段差部16b,28bとの径方向の距離が近い部位である。この段差部13c,25cを利用することで、内輪12a,24aを固定するための別部材を設置することなく、容易にシール構造を構築することができる。
[第2の実施形態]
図8ないし図11は、この発明のパラレルリンク機構の異なる実施形態を示す。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に対して端部リンク部材5,6をそれぞれ回転自在に支持する軸受12(図9)を外輪回転タイプとしたものである。形状の違いは除き基本的な構成は、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と構成が同じ箇所については、第1の実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
図9に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2が図示されている。回転対偶部T1については、円周方向3箇所にあるすべてのものが図示され、回転対偶部T2については、1つのリンク機構4のものだけが図示されている。以下に説明する基端側の回転対偶部T1,T2の構成は、先端側の先端側の回転対偶部T3,T4についても言える。
図10は、回転対偶部T1の拡大図である。リンクハブ2の円周方向の3箇所(図6は1箇所だけを示す)に軸部35が形成され、各軸部35の外周に、内側と外側の2つの軸受12を介して端部リンク部材5が回転自在に支持されている。ここで内側、外側は、球面リンク中心PA(図9)に対する位置関係を指す。2つの軸受12は、端部リンク部材5に形成された連通孔34内に設けられ、間座部材36を介して、軸部35の先端ねじ部35aに螺着したナット37によって締付け固定されている。つまり、回転対偶部T1は、リンクハブ2と端部リンク部材5とが、軸受12を介して互いに回転自在に連結されている。
より詳しくは、2つの軸受12はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部35の内側端は、軸受12の内輪12aの内周に嵌合した部分35bよりも外径が大きい段差部35cとされ、この段差部35cの段差面35dが内側の軸受12の内輪12aの端面に当接することで、内輪12aを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受12の内輪12aは、前記間座部材36に接している。よって、前記ナット37を締め付けることにより、間座部材36を介して内輪12aが前記段差面35dに押し付けられて、内輪12aを締付け固定すると共に、軸受12に対して予圧を付与する。
端部リンク部材5における前記連通孔34の周辺部分は、軸受設置部38をなしている。この軸受設置部38の内端部は、軸受12の外輪12bの外周に嵌合した部分である外輪嵌合部38aよりも内径が小さい段差部38bとされ、この段差部38bの段差面38cが内側の軸受12の外輪12bの端面に当接することで、外輪12bを軸方向に位置決めしている。
また、端部リンク部材5の軸受設置部38は、その外側面から突出して基端が外輪嵌合部38aの一部となる環状のつば状部38dを有しており、外輪嵌合部38aに外輪12bが嵌合した状態で前記つば状部38dを内径側へかしめることで、外輪12bを締まり嵌めとし、またはつば状部38dの外輪12bよりも突出した部分である先端部38daの基端を外輪12bの端面に係合させることで、前記段差部38bとかしめ部分の間で外輪12bを軸方向に抜け止めした状態に位置決めしている。
回転対偶部T1は、軸受12を介して対向する内径側対偶構成部と外径側対偶構成部とで構成される。図示例の内径側対偶構成部は、リンクハブ2の軸部35と間座部材36とナット37とからなる。図示例では、軸部35が基端側のリンクハブ2と一体とされているが、軸部35はリンクハブ2と別部材であってもよい。ナット14は、請求の範囲で言う内輪固定部材に該当する。また、外径側対偶構成部は、端部リンク部材5の軸受設置部38からなる。図示例では、軸受設置部38は端部リンク部材5の一部とされているが、軸受設置部38は端部リンク部材5と別体であってもよい。
前記間座部材36の軸方向先端側部分は、外輪12aとの接触を避けて外径側へ延びたつば状部36aとして形成されており、このつば状部36aの外周面と軸受設置部38の一部である前記先端部38daの内周面とが、隙間40を介して対向している。そして、間座部材36のつば状部36aと軸受設置部38の先端部38daの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部41が設けられている。図示例では、軸受設置部38の先端部38daに植毛部41が設けられているが、逆であってもよい。
また、前記軸部35の段差部35cの外周面と前記軸受設置部38の段差部38bの内周面とが、隙間42を介して対向している。そして、軸部35の段差部35cと軸受設置部38の段差部38bの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部43が設けられている。図示例では、軸受設置部38の段差部38bに植毛部43が設けられているが、逆であってもよい。
図11は、回転対偶部T2の拡大図である。端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2は、端部リンク部材5の連通孔44内に内側と外側の2つの軸受24が設けられ、これら軸受24により中央リンク部材7の軸部45が回転自在に支持されている。軸部45は、中央リンク部材7の一端から内側に延びている。つまり、回転対偶部T2は、端部リンク部材5と中央リンク部材7とが、軸受24を介して互いに回転自在に連結されている。軸受24は、間座部材46を介して、軸部45の先端ねじ部45aに螺着したナット47によって締付け固定されている。
より詳しくは、2つの軸受24はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部45の外端部は、軸受24の内輪24aの内周に嵌合した部分45bよりも外径が大きい段差部45cとされている。この段差部45cは2段の段差45ca,45cbを有し、1段目の段差45caの段差面45dが内側の軸受24の内輪24aの端面に当接することで、内輪24aを軸方向に位置決めしている。2段目の段差45cbは別部材としてもよい。例えば、2段目の段差45cbをリング部材とし、その内周面を1段目の段差45caの外周面に嵌合させて固定してもよい。また、外側の軸受24の内輪24aは、前記間座部材46に接している。よって、前記ナット47を締め付けることにより、間座部材46を介して内輪24aが前記段差面45dに押し付けられて、内輪24aを締付け固定すると共に、軸受24に対して予圧を付与する。
端部リンク部材5における前記連通孔44の周辺部分は、軸受設置部48をなしている。この軸受設置部48の内端部は、軸受24の外輪24bの外周に嵌合した部分である外輪嵌合部48aよりも内径が小さい段差部48bとされ、この段差部48bの段差面48cが外側の軸受24の外輪24bの端面に当接することで、外輪24bを軸方向に位置決めしている。
また、端部リンク部材5の軸受設置部48は、その外側面から突出して基端が外輪嵌合部48aの一部となる環状のつば状部48dを有しており、外輪嵌合部48aに外輪24bが嵌合した状態で前記つば状部48dを内径側へかしめることで、外輪24bを締まり嵌めとし、またはつば状部48dの外輪24bよりも突出した部分である先端部48daの基端を外輪12bの端面に係合させることで、前記段差部48bとかしめ部分の間で外輪24bを軸方向に抜け止めした状態に位置決めしている。
回転対偶部T2は、軸受24を介して対向する内径側対偶構成部と外径側対偶構成部とで構成される。図示例の内径側対偶構成部は、端部リンク部材5の軸部45と、間座部材47とナット47とからなる。図示例では、軸部45が端部リンク部材5と一体とされているが、軸部45は端部リンク部材5と別部材であってもよい。ナット47は、請求の範囲で言う内輪固定部材に該当する。また、外径側対偶構成部は、中央リンク部材7の軸受設置部48からなる。図示例では、軸受設置部48は中央リンク部材7の一部とされているが、軸受設置部48は中央リンク部材7と別体であってもよい。
前記間座部材46の外周面と軸受設置部48の段差部48bの内周面とが、隙間50を介して対向している。そして、間座部材46と軸受設置部48の段差部48bの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部51が設けられている。図示例では、軸受設置部48の段差部48bに植毛部51が設けられているが、逆であってもよい。
また、前記軸部45の段差部45cの外周面と前記軸受設置部48の先端部48daの内周面とが、隙間52を介して対向している。そして、軸部45の段差部45cと軸受設置部48の先端部48daの各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部53が設けられている。図示例では、軸受設置部48の先端部48daに植毛部53が設けられているが、逆であってもよい。
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2について説明した。先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部T4は回転対偶部T1と同じ構造であり、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3は回転対偶部T2と同じ構成であるため、回転対偶部T3,T4の説明は省略する。
[第2の実施形態の異なるシール構造]
図12は、回転対偶部T1の異なるシール構造を示す。このシール構造は、軸受12を挟んで内外両側にある2つのシール部の両方が、図10に示すシール構造と異なっている。
外側のシール部は、間座部材36のつば状部36aにおける内側を向く面に植毛部61が設けられている。この植毛部61が設けられた面は軸受24の端面と対向しており、植毛部61が、間座部材36のつば状部36aと軸受24の外輪24bとの間の隙間を塞ぐように作用する。この場合も、図10に示すシール構造と同様の作用および効果が得られる。
また、内側のシール部は、リンクハブ2における外側を向く面であるリンクハブ側対向面62と、端部リンク部材5の軸受設置部38における段差部38bの端面からなるリンク部材側対向面63との間に、隙間64が形成されている。そして、リンクハブ側対向面62とリンク部材側対向面63のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部65が設けられている。図示例では、リンクハブ側対向面62に植毛部65が設けられているが、逆であってもよい。この場合も、図10に示すシール構造と同様の作用および効果が得られる。
図13は、回転対偶部T2の異なるシール構造を示す。このシール構造は、軸受24を挟んで内外両側にある2つのシール部のうち内側のシール部は、図11のシール構造と同じである。但し、図13の例では、図11の例とは異なり、間座部材46と軸受設置部48の段差部48bの各対向面のうち、間座部材46側の対向面に植毛部51が設けられている。
外側のシール部は、中央リンク部材7の段差部45cの段差45cbにおける内側を向く面に植毛部67が設けられている。この植毛部67が設けられた面は軸受24の端面と対向しており、植毛部67が、中央リンク部材7と軸受24の外輪24bとの間の隙間を塞ぐように作用する。この場合も、図11に示すシール構造と同様の作用および効果が得られる。
[第3の実施形態]
図14〜図18は、この発明のパラレルリンク機構の第3の実施形態を示す。このパラレルリンク機構1は、基本的な構成は第1の実施形態と同じである。構成が同じ箇所については、第1の実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
図14、図15に示すように、このパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2は、中央部に円形の貫通孔70a(図15)を有する平板状の土台70と、この土台70の貫通孔70aの周囲に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材71とで構成される。貫通孔70aの中心は、基端側のリンクハブ2の中心軸QA上に位置する。各回転軸連結部材71には、軸心が基端側のリンクハブ2の中心軸QAと交差する回転軸72が回転自在に連結されている。この回転軸72に、基端側の端部リンク部材5の一端が連結される。
1つの基端側の端部リンク部材5およびその両端周辺部を取り出して表わした図16に示すように、前記回転軸72は、外径端に他の部分よりも径が大きい頭部72aを有し、内径端に雄ねじ部72bを有する。図示例では、2個の軸受73を介して回転軸72が回転軸連結部材71に連結されているが、回転軸72を回転軸連結部材71に回転自在に接触させて連結してもよい。軸受73は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。また、軸受73は、回転軸連結部材71に設けられた内径溝74に埋包した状態で設置され、圧入、接着、加締め等の方法で固定してある。他の回転対偶部に設けられる軸受の種類および設置方法も同様である。
基端側の端部リンク部材5の他端には、中央リンク部材7の一端に回転自在に連結された回転軸75が連結される。この中央リンク部材7の回転軸75も、リンクハブ2の回転軸72と同様に、外側端に他の部分よりも径が大きい頭部75aを有し、内側端に雄ねじ部75bを有する。また、図示例では、2個の軸受76を介して中央リンク部材7に連結されているが、回転軸75を中央リンク部材7に回転自在に接触させて連結してもよい。
図14に示すように、先端側のリンクハブ3も、基端側のリンクハブ2と同様に、中央部に円形の貫通孔(図示せず)を有する平板状の先端部材80と、この先端部材80の貫通孔の周囲に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材81とで構成される。貫通孔の中心は、先端側のリンクハブ3の中心軸QB上に位置する。各回転軸連結部材81は、軸心がリンクハブ3の中心軸QBと交差する回転軸82が回転自在に連結されている。このリンクハブ3の回転軸82に、先端側の端部リンク部材6の一端が連結される。先端側の端部リンク部材6の他端には、中央リンク部材7の他端に回転自在に連結された回転軸85が連結される。リンクハブ3の回転軸82および中央リンク部材7の回転軸85も、前記回転軸72,75と同じ形状であり、かつ2個の軸受(図示せず)を介して回転軸連結部材81および中央リンク部材7の他端にそれぞれ回転自在に連結されている。
次に、図16、図17と共に、端部リンク部材5,6の構成について説明する。基端側および先端側の端部リンク部材5,6は同じ構成であるので、ここでは代表して基端側の端部リンク部材5について説明する。
図16に示すように、端部リンク部材5は、1つの湾曲部材90と、この湾曲部材90の両端の外側の側面と内側の側面にそれぞれ固定された計4つの回転軸支持部材91とで構成される。4つの回転軸支持部材91は同一形状である。
湾曲部材90は、例えば金属材料の鋳造品であり、所定の角度α(この例では90°)に湾曲した形状をしている。湾曲部材90の両端には、外側の側面と内側の側面間に貫通する1つのボルト用ねじ孔92と、このボルト用ねじ孔92の両側に位置する2つの位置決め孔93とがそれぞれ設けられている。
回転軸支持部材91は、金属板等の厚さが一定の板状の部材に対して板金加工等の加工をすることで所定の形状に作られる。回転軸支持部材91の形状は、例えば図17に示すように、細長い直線状で、その長手方向の一端が角形に形成され、他端が半円形に形成されている。角形である一端に、湾曲部材90の前記ボルト用ねじ孔92に対応する1つのボルト挿通孔94と、湾曲部材90の前記位置決め孔93に対応する2つの位置決め孔95とがそれぞれ設けられ、半円形である他端に、前記回転軸72,75,82,85が挿入される貫通孔96が設けられている。
湾曲部材90と回転軸支持部材91の固定は、湾曲部材90の位置決め孔93と、外径側および内径側の各回転軸支持部材91の位置決め孔95とに位置決めピン97を挿通して位置決めした状態で、外径側と内径側からそれぞれボルト98を各回転軸支持部材91のボルト挿通孔94に挿通し、そのボルト98のねじ部を湾曲部材90のボルト用ねじ孔92に螺合させることで行う。つまり、外径側および内径側の回転軸支持部材91は、それぞれ個別に、ボルト98により互いに向かい合うように湾曲部材90に固定される。
外径側および内径側の2つの回転軸支持部材91における半円形の他端間には、リンクハブ2の回転軸連結部材71または中央リンク部材7の一端が配置される。回転軸連結部材71(中央リンク部材7)の回転軸72(75)は、回転軸支持部材91の貫通孔96、軸受73(76)の内輪、およびこの内輪と回転軸支持部材91の間に介在させたスペーサ100,101の孔に挿通される。そして、回転軸72(75)の雄ねじ部72b(75b)にナット102を螺着し、回転軸72(75)の頭部72a(75a)と前記ナット102とで外径側、内径側の両回転軸支持部材91、軸受73(76)の内輪、およびスペーサ100,101を挟み付けることで、軸受73(76)に予圧を付与した状態で、回転軸72(75)に端部リンク部材5を連結する。
図18は図16の一部の拡大図であって、リンクハブ2(図15参照)と端部リンク5の回転対偶部T1を示している。回転対偶部T1の内径側対偶構成部は、前記回転軸72と、この回転軸72を支持する一対の回転軸支持部材91の端部91aと、スペーサ100,101と、ナット102とからなる。回転軸支持部材91の端部91aは、軸受73の外輪よりも外径が大きく形成されている。また、外径側対偶構成部は、回転軸連結部材71からなる。
一対の回転軸支持部材91の端部91aの各側面と端部リンク部材5の回転軸連結部材71の両端面は、それぞれ隙間105,106を介して対向している。そして、回転軸支持部材91の端部91aと回転軸連結部材71の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部107,108が設けられている。図示例では、回転軸連結部材71に植毛部107,108が設けられているが、逆であってもよい。
図19は図16の他の一部の拡大図であって、端部リンク5と中央リンク部材7の回転対偶部T2を示している。回転対偶部T2の内径側対偶構成部は、前記回転軸75と、この回転軸75を支持する一対の回転軸支持部材91の端部91aと、スペーサ100,101と、ナット102とからなる。回転軸支持部材91の端部91aは、軸受76の外輪よりも外径が大きく形成されている。また、外径側対偶構成部は、中央リンク部材7における内径溝74の周辺部分である軸受設置部114からなる。
一対の回転軸支持部材91の端部91aの各側面と中央リンク部材7の軸受設置部114の両端面は、それぞれ隙間115,116を介して対向している。そして、回転軸支持部材91の端部91aと中央リンク部材7の軸受設置部114の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部117,118が設けられている。図示例では、軸受設置部114に植毛部117,118が設けられているが、逆であってもよい。
このように内径側対偶構成部と外径側対偶構成部との隙間105,106,115,116を植毛部107,108,117,118によるシール構造とすることにより、前記シール構造と同様の作用および効果が得られる。このため、シールのための別部材を設けることなく、安価にシール構造を構築することができる。
回転軸支持部材91に植毛部を設ける場合、回転軸支持部材91は平板状であるので、平面に植毛を設けることできる。このため、植毛工程が容易となり、コスト低減が可能となる。図示例のように、回転軸支持部材91を端部リンク部材5の湾曲部90とは別の部材で構築されていると、回転軸支持部材91の平面全体に植毛することができ、植毛工程がより一層容易になる。
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2について説明したが、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3、および先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部T4についても同様である。
[第3の実施形態の変形例]
図20〜図23は、前記第3の実施形態の変形例を示す。この変形例のパラレルリンク機構1も、基本的な構成は第3の実施形態と同じであり、構成が同じ箇所については、第3の実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
この変形例のパラレルリンク機構1は、回転対偶部T1〜T4のシール構造が第3の実施形態とは異なる。
回転対偶部T1は、図22に示すように、各回転軸支持部材91の端部91aと軸受73の内輪との間に、板状部材121がそれぞれ設けられている。この板状部材121は、回転軸72が挿入される貫通孔121aを有し、軸受73の外輪よりも外径が大きく形成されている。内径側対偶構成部である各板状部材121の軸方向内側の側面と、外径側対偶構成部である回転軸連結部材71の両端面は、それぞれ隙間125,126を介して対向している。そして、板状部材121と回転軸連結部材71の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部127,128が設けられている。図示例では、回転軸連結部材71に植毛部127,128が設けられているが、逆であってもよい。
回転対偶部T2は、図23に示すように、各回転軸支持部材91の端部91aと軸受76の内輪との間に、板状部材121がそれぞれ設けられている。この板状部材121は、回転軸75が挿入される貫通孔121aを有し、軸受76の外輪よりも外径が大きく形成されている。内径側対偶構成部である各板状部材121の軸方向内側の側面と、外径側対偶構成部である中央リンク部材7の軸受設置部114の両端面は、それぞれ隙間135,136を介して対向している。そして、板状部材121と中央リンク部材7の軸受設置部114の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に植毛部137,138が設けられている。図示例では、板状部材121に植毛部137,138が設けられているが、逆であってもよい。
このように回転軸支持部材91と軸受73,76の内輪との間に板状部材121を設けることにより、使用する軸受73,76の直径が大きくても、回転軸72,75、スペーサ100,101、およびナット102を軸受73,76の直径に合わせて大きくする必要がない。板状部材121の外径寸法を大きくして板状部材121で軸受73,76の端面を覆うことで、高剛性でありながら、コンパクトで軽量なパラレルリンク機構を実現することができる。板状部材121として、ワッシャ、シム等の既存の部品を使用することで、コスト削減が見込める。
以上の各実施形態は、回転対偶部T1〜T4の内径側対偶構成部と外径側対偶構成部の隙間に植毛部が設けられているが、これに代えて、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部との間に介在する軸受の構成部品に植毛部を設けてもよい。以下に、その具体例を示す。
[植毛部が設けられた軸受]
図24は、構成部品に植毛部が設けられた軸受の一例を示す。この軸受140は、前記各実施形態における回転対偶部T1〜T4の軸受12,24,73,76のいずれにも適用することができる。
軸受140は、内輪141と、外輪142と、これら内輪141および外輪142の各軌道面141a,142aを転走する転動体143と、この転動体143を保持する保持器144とで構成された転がり軸受である。図示例では、転動体143は玉であり、全体で深溝玉軸受として構成されている。内輪141と外輪142間の軸受内空間145には、グリースが充填されている。具体的には、主に、内輪141および外輪142の各軌道面141a,142aと転動体143との間にグリースが充填されている。
グリースの組成要素である基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油、ポリブテン油、ポリ‐α‐オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油等の炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエステル油、フッ素化油等の非炭化水素合成油等が挙げられる。これらの基油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、グリースの組成要素である増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けん等の金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物、PTFE樹脂等のフッ素樹脂粉末等が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、グリースには、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物等の極圧剤、アミン系、フェノール系、硫黄系化合物等の酸化防止剤、硫黄系、リン系化合物等の摩耗抑制剤、多価アルコールエステル等の防錆剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、エステル、アルコール等の油性剤等が挙げられる。
内輪141の外周面における各軌道面141aの軸方向両側の肩面141b、および外輪142の内周面における各軌道面142aの軸方向両側の肩面142bに、それぞれ植毛部147,148が設けられている。前記肩面141b,142bは、軸受内空間145を向く面である。
このように、軸受140の構成部品の一部である内輪141および外輪142の肩面141b,142bに植毛部147,148を設けることで、軸受内空間145のグリースが植毛部147,148に付着して保持されて、グリースが外部へ漏れることが防止される。このため、シール部材が不要となり、軸受140を小型化することができる。この軸受140をパラレルリンク機構1の回転対偶部T1〜T4に配置した場合、回転対偶部T1〜T4が小型化される。その結果、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとることができ、かつ回転対偶部T1〜T4をサイズアップした場合にパラレルリンク機構1の全体寸法が大きくなり過ぎることを抑えることができる。
また、軸受内空間145のグリースが植毛部に147,148付着して移動が拘束されるため、グリースの撹拌によるトルク変動を抑制することができる。このため、パラレルリンク機構1を動作させるときの消費電力が少なくて済み、ランニングコストが低減する。
さらに、植毛部147,148にグリースが付着するため、回転対偶部T1〜T4が相対的な揺動運動を行っても、軸受140の内輪141または外輪142の軌道面141a,142aと転動体143との間でグリース潤滑不良が起こり難く、フレッティング等による軸受140の早期損傷を防止できる。これにより、パラレルリンク機構1全体の長寿命化につながる。加えて、グリース潤滑不良が起こり難いため、グリースを循環させて潤滑不良を防止することを目的として実際の作業時以外にパラレルリンク機構1を動作させることが不要になり、メンテナンス性が向上する。
図25は、構成部品に植毛部が設けられた軸受の他の例を示す。この軸受150も、前記各実施形態における回転対偶部T1〜T4の軸受12,24,73,76のいずれにも適用することができる。
軸受150は、内輪151と、外輪152と、これら内輪151および外輪152の各軌道面151a,152aを転走する転動体153と、この転動体153を保持する保持器154と、軸受内空間155を密封する一対のシール部材156とで構成される。この軸受150も、全体で深溝玉軸受として構成されている。
前記シール部材156は、基部156aにより、固定側の軌道輪である外輪152の軸端付近に形成された環状溝152bに取り付けられている。シール部材156は、前記環状溝152bに嵌まり込む湾曲形状の基部156aと、この基部156aから内径側へ延びる主部156bと、この主部156bの内径端から軸方向内側に屈曲して屈曲部156cとからなる。主部156bは平板状である。屈曲部156cは、内輪151の軸端付近に形成された環状溝151bと隙間を介して対向している。
そして、前記シール部材156の主部156bの軸方向内側を向く面、すなわち軸受内空間155を向く面に、植毛部157が設けられている。主部156bの軸方向内側を向く面は平面状であるため、植毛処理が容易である。
前記植毛部157は、円周方向の全周に設けられているのではなく、図26に示すように、転動体153の配列ピッチと同ピッチで円周方向に分散して複数箇所に設けられている。各植毛部157の径方向範囲の中心は、原点位置における転動体153の径方向中心と一致させてある。原点位置は、この軸受150をパラレルリンク機構1に組み込んだ場合に、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が正対するときの転動体153の位置を指す。
また、各植毛部157の径方向範囲の角度βは、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3が姿勢変更可能範囲の限界まで姿勢変更したときに転動体157が揺動する角度、すなわち最大折れ角θmax(図27)よりも大きく設定してある。なお、図27は、折れ角θと基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の揺動範囲との関連性から、最大折れ角θmaxを端部リンク部材5の回転角度で表示したものである。折れ角θと基端側の端部リンク部材5に対する中央リンク部材7の揺動範囲との関連性から、折れ角θの最大値を中央リンク部材7の回転角度で表した場合、図28に示すように、折れ角θの最大値はθmax+δとなる。
この構成によると、以下の作用効果が得られる。
グリース潤滑不良は、内輪151および外輪152の軌道面151a,152aと転動体153との間で起こり易い。パラレルリンク機構1の場合、転動体153の動作量は少ないため、転動体153のピッチに合わせて植毛部157を設けることで、植毛部157の範囲を最小限にしながら前記グリース潤滑不良となり易い箇所へグリースを供給することができる。このように植毛部157の範囲を狭くすると、植毛処理時間や植毛量が少なり、コスト低減につながる。
また、各植毛部157の径方向範囲の中心が、原点位置における転動体153の径方向中心と一致しているため、パラレルリンク機構1の動作時に、植毛部157にグリースが付着することによって形成されたグリース溜りを転動体153が通過する確率が高くなり、グリース潤滑が良好に行われる。
さらに、この実施形態では、植毛部157の径方向範囲の角度βが、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ5が姿勢変更可能範囲の限界まで姿勢変更したときに転動体153が揺動する角度よりも大きいため、パラレルリンク機構1がどのように動作しても、確実に転動体153がグリース溜りを通過する。
図29は、図1に示す第1の実施形態のパラレルリンク機構を用いた等速自在継手を示す。この等速自在継手161は、パラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2に、取付板162を介して入力軸163を取付け、かつ先端側のリンクハブ3に、取付板164を介して出力軸165を取り付けたものである。入力軸163および出力軸165の軸心は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAおよび基端側のリンクハブ3の中心軸QBとそれぞれ一致している。
先に説明したように、パラレルリンク機構1において、前記各条件(条件1〜条件5)を満たす場合、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。この例のように、基端側と先端側のリンクハブ2,3にそれぞれ中心軸QA,QBと同軸に入力軸163および出力軸165を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、入力軸163と出力軸165は同じ回転角になって等速で回転する。この等速回転するときの中央リンク部材7の対称面を等速二等分面という。
このため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を共有する同じ幾何学形状のリンク機構4を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構4が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材7が等速二等分面上のみの動きに限定される。これにより、基端側と先端側とが任意の作動角をとっても、入力軸163と出力軸165とが等速回転する。
図30は、図14に示す第3の実施形態のパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置170は、図31に示すように、3組のリンク機構4(図30)のそれぞれに、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を任意に変更する姿勢変更用アクチュエータ171を設けてある。各姿勢変更用アクチュエータ171は、減速機構172を備えたロータリアクチュエータであり、基端側のリンクハブ2の土台70の上面に、回転軸72と同軸上に設置されている。姿勢変更用アクチュエータ171と減速機構172は一体に設けられ、モータ固定部材173により減速機構172が土台70に固定されている。なお、3組のリンク機構4のうち少なくとも2組に姿勢変更用アクチュエータ171を設ければ、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を確定することができる。
減速機構172はフランジ出力であって、大径の出力軸172aを有する。出力軸172aの先端面は、出力軸172aの中心線と直交する平面状のフランジ面174となっている。出力軸172aは、スペーサ175を介して、基端側の端部リンク部材5の外側の回転軸支持部材91Aにボルト176で接続されている。回転軸72は頭部72aの軸方向長さが長く形成され、この頭部72aが減速機構172の出力軸172aに設けられた内径溝177に嵌っている。
端部リンク部材5は、図16に示すものと同様に、1つの湾曲部材90と、この湾曲部材90の両端の外側の側面と内側の側面にそれぞれ固定された計4つの回転軸支持部材91とで構成される。4つの回転軸支持部材91は同一形状ではなく、リンクハブ2との回転対偶部に設けられる外側の回転軸支持部材91Aは、減速機構172の前記フランジ面174と前記スペーサ175を介して結合されるフランジ取付面178を有する。フランジ取付面178は、図32に示すように、出力軸172aのフランジ面174に対応する円形であり、中心部に回転軸72が挿通される貫通孔96が設けられ、この貫通孔96の周囲に、前記ボルト176が挿通される複数のボルト挿通孔179が円周方向に等配で設けられている。
この構成のリンク作動装置170は、姿勢変更用アクチュエータ171をロータリアクチュエータとし、この姿勢変更用アクチュエータ171の減速機構172の出力軸172aをフランジ出力タイプとしたことにより、パラレルリンク機構1に直接、姿勢変更用アクチュエータ171を設置することができる。そのため、駆動機構部が簡素な構造となり、安価なリンク作動装置170を実現できる。減速機構を設けずに、姿勢変更用アクチュエータ171の出力軸171aをフランジ出力タイプとしてもよい(図示せず)。
図33は、図1に示す第1の実施形態のパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置181は、パラレルリンク機構1と、このパラレルリンク機構1を支持する基台182と、パラレルリンク機構1を作動させる2つ以上の姿勢変更用アクチュエータ183と、これら姿勢変更用アクチュエータ183を操作するコントローラ184とを備える。
基台182は縦長の部材であって、その上面にパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2が固定されている。基台182の上部の外周にはつば状の駆動源取付台185が設けられ、この駆動源取付台185に前記姿勢変更用アクチュエータ183が垂下状態で取付けられている。姿勢変更用アクチュエータ183はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取り付けたかさ歯車186と基端側のリンクハブ2の軸部材13に取り付けた扇形のかさ歯車187とが噛み合っている。
このリンク作動装置181は、コントローラ184を操作して姿勢変更用アクチュエータ183を回転駆動することで、パラレルリンク機構1を作動させる。詳しくは、姿勢変更用アクチュエータ183が回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車186,187を介して軸部材13に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変更する。それにより、先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が定まる。姿勢変更用アクチュエータ183を設けるリンク機構4の数を2組以上としたのは、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢を確定するのに必要なためである。3組すべてのリンク機構4に姿勢変更用アクチュエータ183を設けてもよい。
パラレルリンク機構1を作動させるための姿勢変更用アクチュエータ183の回転駆動は、コントローラ184に設けた操作具(図示せず)により手動で行なってもよく、またはコントローラ184に設けた設定器(図示せず)によって定められた設定量となるように、制御手段188により自動制御で行ってもよい。制御手段188は、コントローラ874内に設けてもよく、またはコントローラ184の外部に設けてもよい。
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…パラレルリンク機構
2…基端側のリンクハブ
3…先端側のリンクハブ
4…リンク機構
5…基端側の端部リンク部材
6…先端側の端部リンク部材
7…中央リンク部材
12…軸受
12a…内輪
12b…外輪
13…軸部材(軸部、内径側対偶構成部)
13c…段差部
14…ナット(内輪固定部材)
15…間座部材(内径側対偶構成部)
16…軸受設置部(外径側対偶構成部)
19,21…植毛部(柔軟性構造体)
24…軸受
24a…内輪
24b…外輪
25…軸部
25c…段差部
26…間座部材(内径側対偶構成部)
27…ナット(内輪固定部材)
28…軸受設置部(外径側対偶構成部)
31,33…植毛部(柔軟性構造体)
35…軸部
35c…段差部
36…間座部材(内径側対偶構成部)
37…ナット(内輪固定部材)
38…軸受設置部(外径側対偶構成部)
41,43…植毛部(柔軟性構造体)
45…軸部
45c…段差部
46…間座部材(内径側対偶構成部)
47…ナット(内輪固定部材)
48…軸受設置部(外径側対偶構成部)
51,53…植毛部(柔軟性構造体)
61,63…植毛部(柔軟性構造体)
67…植毛部(柔軟性構造体)
107,108…植毛部(柔軟性構造体)
117,118…植毛部(柔軟性構造体)
121…板状部材
121a…貫通孔
127,128…植毛部(柔軟性構造体)
137,138…植毛部(柔軟性構造体)
140…軸受
141…内輪
141a…軌道面
141b…肩面
142…外輪
142a…軌道面
142b…肩面
143…転動体
144…保持器
145…軸受内空間
147,148…植毛部(柔軟性構造体)
150…軸受
151…内輪
151a…軌道面
152…外輪
152a…軌道面
153…転動体
154…保持器
155…軸受内空間
156…シール部材
157…植毛部(柔軟性構造体)
161…等速自在継手
163…入力軸
165…出力軸
170…リンク作動装置
171…姿勢変更用アクチュエータ
181…リンク作動装置
183…姿勢変更用アクチュエータ
T1,T2,T3,T4

Claims (13)

  1. 基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有するパラレルリンク機構において、
    前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記回転対偶部に、前記軸受の軸受内空間に封入された潤滑剤の移動を止める柔軟性構造体が設けられていることを特徴とするパラレルリンク機構。
  2. 基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有するパラレルリンク機構において、
    前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記内径側対偶構成部と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられていることを特徴とするパラレルリンク機構。
  3. 請求項2に記載のパラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記端部リンク部材に固定され前記軸受の内輪に挿通される軸部と、この軸部に対して前記内輪の軸方向位置を固定する内輪固定部材と、前記軸部の外周に嵌合し前記内輪と前記内輪固定部材との間に介在する間座部材とを有し、前記間座部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられているパラレルリンク機構。
  4. 請求項2または請求項3に記載のパラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記端部リンク部材に固定され前記軸受の内輪に挿通される軸部を有し、この軸部は、外径が前記内輪の内径よりも大きく前記内輪の端面に当接して前記内輪を軸方向に位置決めする段差部を有し、前記軸部の前記段差部と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられているパラレルリンク機構。
  5. 請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構において、前記内径側対偶構成部は、前記リンクハブまたは前記中央リンク部材に前記軸受を介して回転可能に連結される回転軸と、前記端部リンク部材に固定され前記回転軸を支持する回転軸支持部材とを有し、前記回転軸支持部材は、前記軸受の外輪よりも外径が大きく形成され、前記回転軸支持部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられているパラレルリンク機構。
  6. 請求項5に記載のパラレルリンク機構において、前記回転軸支持部材と前記軸受の内輪との間に、前記回転軸が挿入される貫通孔を有し前記軸受の外輪よりも外径が大きい板状部材が設けられ、この板状部材と前記外径側対偶構成部の各対向面のうち、少なくともどちらか一方の対向面に柔軟性構造体が設けられているパラレルリンク機構。
  7. 基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有するパラレルリンク機構において、
    前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶部、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶部、前記中央リンク部材と前記先端側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記先端側の端部リンク部材と前記先端側のリンクハブの回転対偶部の少なくとも1つは、内径側対偶構成部と外径側対偶構成部が軸受を介して対向し、前記軸受の内輪と外輪間の軸受内空間にグリースが充填され、前記軸受の構成部品における前記軸受内空間を向く面の一部に柔軟性構造体が設けられていることを特徴とするパラレルリンク機構。
  8. 請求項7に記載のパラレルリンク機構において、前記軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の各軌道面を転走する転動体と、前記転動体を保持する保持器とで構成された転がり軸受であり、前記内輪および前記外輪における前記軌道面の軸方向外側に位置する肩面に前記柔軟性構造体が設けられたパラレルリンク機構。
  9. 請求項7に記載のパラレルリンク機構において、前記軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および前記外輪の各軌道面を転走する転動体と、前記転動体を保持する保持器と、前記内輪または外輪の軸方向端に設けられ、前記前輪と前記外輪間の軸受内空間を密封するシール部材とで構成される転がり軸受であり、前記シール部材における軸方向内側を向く面に、前記転動体の配列ピッチと同ピッチで円周方向の複数箇所に前記柔軟性構造体が設けられたパラレルリンク機構。
  10. 請求項9に記載のパラレルリンク機構において、前記複数箇所の柔軟性構造体は、それぞれの径方向範囲の中心が、前記基端側のリンクハブに対し前記先端側のリンクハブが正対する原点位置における前記転動体の径方向中心と一致するパラレルリンク機構。
  11. 請求項10に記載のパラレルリンク機構において、前記複数箇所の柔軟性構造体は、それぞれの径方向範囲の角度が、前記基端側のリンクハブに対して前記先端側のリンクハブが姿勢変更可能範囲の限界まで姿勢変更したときに前記転動体が揺動する角度よりも大きいパラレルリンク機構。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸が設けられ、前記先端側のリンクハブに出力軸が設けられた等速自在継手。
  13. 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に制御する姿勢制御用アクチュエータが設けられたリンク作動装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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