JP2018021110A - ゴム部材及びその製造方法、並びにタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
以下に、本発明のゴム部材を、その一実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
図1に示す、本発明のゴム部材の一実施形態としての、一例のタイヤのトレッド部1は、ゴム成分及び他の任意の成分を含むゴム組成物を用いて製造され得るものであって、その表面に複数の微小凹部2が存在し、この微小凹部2のそれぞれの内表面には、水増粘物質3が配置されている。
なお、本発明において「水増粘物質」は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される。
また、ゴム部材が使用時に路面等の外的因子と接触し得ない表面を有する場合、本発明における「ゴム部材の表面」には、当該接触し得ない表面が含まれないこととする。
なお、上記微小凹部の数は、電子顕微鏡により撮影したゴム部材の表面の写真から、一辺1mmの正方形領域を任意に10個選択し、その各領域内で観察される微小凹部の数をカウントし、その平均値として求めることができる。
なお、本発明の一実施形態のゴム部材においては、微小凹部と微小空洞部とが繋がっている態様を有していてもよい。
なお、この点に関しては、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、非空洞部に存在する水増粘物質の割合」を特定することで、好適なゴム部材の態様を論じる必要があるとも考えられる。しかしながら、ゴム部材が有する水増粘物質の全量を求めるには、著しく過大な時間を要し、実際的でない。以上を踏まえれば、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、非空洞部に存在する水増粘物質の割合」を直接特定することは、技術的に不可能であることが明らかである。
なお、この点に関しては、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質の割合」を特定することで、好適なゴム部材の態様を論じる必要があるとも考えられる。しかしながら、ゴム部材が有する水増粘物質の全量を求めるには、著しく過大な時間を要し、実際的でない。以上を踏まえれば、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質の割合」を直接特定することは、技術的に不可能であることが明らかである。
同様の観点から、ゴム部材の接地対象表面に存在する微小凹部の内表面の平均被覆率が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることも好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、75%以上であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率」とは、ゴム部材の表面の展開視における微小凹部の面積のうち、水増粘物質により覆われている面積の合計の割合の平均値を指すものとする。また、この「微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率」は、例えば、電子顕微鏡により撮影したゴム部材の表面の写真(好ましくは、2値化処理を施したもの)から、微小凹部を任意に10個選択し、その各微小凹部の面積の合計のうち、水増粘物質により覆われている面積の合計の割合を算出して求めることができる。
本発明において用いる水増粘物質は、上述した通り、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質である。この水増粘物質は、ゴム部材の微小凹部の内表面に配置されることで、ゴム部材の表面粗さを実質的に高めたり、浸入した水の粘度を上昇させて摩擦係数の低下を抑制することができると考えられる。ここで、水増粘物質に係る上記粘度は、摩擦係数の低下をより抑制する観点から、500Pa・s以上であることが好ましく、1000Pa・s以上であることがより好ましく、5000Pa・s以上であることが更に好ましく、8000Pa・s以上であることが特に好ましい。一方で、水増粘物質に係る上記粘度は、特に制限されず、50,000Pa・s以下であることが好ましい。
なお、上述したコーンプレート型粘度計による粘度の測定は、例えば、直径60mm、角度0.99°のコーンを用いて行うことができる。
或いは、水増粘物質は、ゲル状であってもよい。
ここで、本明細書において、水増粘物質の「長径」は、水増粘物質の外表面上の任意の2点を結ぶ直線のうち最も長いものの長さを指すものとする。この水増粘物質の「長径」は、例えば、水増粘物質を電子顕微鏡により撮影することで、求めることができる。
無機物質としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイヤモンド、シリカ、ガラス、石膏、方解石、蛍石、正長石、水酸化アルミニウム、アルミナ、銀、鉄、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、クレイ等の無機物質が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、上述したダイヤモンドをはじめとする無機物質は、その表面が任意の官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基など)で修飾されたものであってもよい。
ゴム成分としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)のみであってもよく、ジエン系合成ゴムのみであってもよく、天然ゴム及びジエン系合成ゴムを併用してもよい。前記ジエン系合成ゴムとしては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施形態のゴム部材は、上述の通り、ゴム成分及び他の任意の成分を含むゴム組成物を用いて製造することができる。また、本発明の一実施形態のゴム部材を製造するにあたっては、少なくとも、ゴム部材の表面に複数の微小凹部を形成させること、及び、前記微小凹部の内表面に水増粘物質を配置させること、が必要である。これらを達成する方法としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、本発明に係るゴム部材の製造方法は、少なくとも、加硫したゴムの表面に形成された微小凹部に、水増粘物質を付与する工程を含む。そして、本発明に係るゴム部材の製造方法によれば、上述した本発明のゴム部材を製造することができる。以下、かかる工程を含む本発明の一実施形態に係るゴム部材の製造方法について、詳細に説明する。
ゴム組成物調製A工程は、ゴム成分に対し、発泡剤と、任意の他の成分とを配合し、混練してゴム組成物を得る工程である。なお、ゴム成分の具体例としては、既述したものと同様である。発泡剤を配合することにより、容易に、ゴム部材の表面に複数の微小凹部を形成させることができ、また、ゴム部材の内部に複数の微小空洞部を形成させることができる。
そして、上述した成分を、常法に従って混練することにより、ゴム組成物を調製することができる。
加硫A工程は、ゴム組成物調製A工程で調製したゴム組成物を加硫して加硫ゴムを得るとともに、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす工程である。この加硫A工程では、配合した発泡剤が発泡してガスが発生し、このガスに起因して加硫ゴムの内部に複数の微小空洞部及び表面に複数の微小凹部が形成される。また、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とすことで、上述の微小空洞部由来の複数の微小凹部が形成された表面をより効果的に得ることができる。なお、加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす方法としては、特に制限はされない。
加硫の方法としては、特に制限されず、ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができる。但し、得られるゴム部材をタイヤのトレッド部に用いる場合には、モールド加硫を行うことが好ましい。加硫の温度としては、特に制限されず、加硫時間等に応じて適宜選択することができるが、所望のゴム物性及び発泡率を得る観点から、100〜200℃が好ましい。また、加硫時間としては、特に制限されず、加硫の温度等に応じて適宜選択することができるが、所望のゴム物性及び発泡率を得る観点から、3〜25分間が好ましい。
なお、前記発泡率(Vs)(%)は、下記式(I):
Vs = (ρo/ρ1−1) × 100 ・・・(I)
[式中、ρ1は加硫ゴムの密度(g/cm3)、ρ0は加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm3)である]により算出することができる。
水増粘物質付与工程は、加硫A工程で得られた加硫ゴムの表面に形成された微小凹部に対し、水増粘物質を(後発的に)付与し、本発明のゴム部材を得る工程である。なお、水増粘物質の具体例としては、既述したものと同様である。
水増粘物質を付与する方法としては、特に制限されず、使用する水増粘物質の種類等に応じて適宜選択することができる。上記方法としては、例えば、人手等により水増粘物質を塗布する方法(塗布法)、エアブラシ等の器具を用いて気体とともに水増粘物質を噴霧する方法(噴霧法)、分散媒中に水増粘物質を分散させてなる液を加硫ゴムに含浸させ、次いで、乾燥する方法(含浸法)、等が挙げられる。これらの方法は、いずれも、配合により水増粘物質を配置させる場合に比べ、容易に水増粘物質を微小凹部の内表面に配置させることができる点、容易に微小凹部の内表面への水増粘物質の配置量(微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率)をコントロールすることができる点で、好ましい。
前記含浸法において使用可能な分散媒としては、乾燥により除去可能なものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、これらの中でも、高い乾燥速度及び安全性を確保する観点から、エタノール、イソプロパノールが好ましい。また、前記含浸法において、液中の水増粘物質の濃度としては、特に制限されず、所望の平均被覆率等に応じて適宜選択することができるが、例えば0.01〜1.0質量%であることが好ましい。更に、前記含浸法における乾燥温度としては、特に制限されず、使用する分散媒の沸点等に応じて適宜選択することができるが、例えば10〜200℃であることが好ましい。また更に、前記含浸法における乾燥時間としては、特に制限はされず、液中の水増粘物質の濃度等に応じて適宜選択することができるが、例えば10〜360分間であることが好ましい。
繊維調製工程は、水増粘物質含有有機繊維を調製する工程であり、この水増粘物質含有有機繊維は、ゴム部材の微小凹部及び微小空洞部の内表面に水増粘物質を配置するために配合されるものである。ここで、前記水増粘物質含有有機繊維は、通常、樹脂と、水増粘物質とを含有してなる。なお、水増粘物質の具体例としては、既述したものと同様である。
ゴム組成物調製B工程は、ゴム成分に対し、発泡剤と、繊維調製工程で調製した水増粘物質含有有機繊維と、任意の他の成分とを配合し、混練してゴム組成物を得る工程である。なお、ゴム組成物調製B工程の具体的な内容は、以下に示す内容を除けば、上述したゴム組成物調製A工程と同様である。
加硫B工程は、ゴム組成物調製B工程で調製したゴム組成物を加硫して加硫ゴムを得るとともに、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とし、本発明のゴム部材を得る工程である。この加硫B工程では、加硫により、水増粘物質含有有機繊維を構成する樹脂が溶融するとともに、配合した発泡剤が発泡してガスが発生する。そして、溶融した樹脂及び水増粘物質が前記ガスを取り囲むように被膜を作り、加硫ゴムの内部に複数の微小空洞部及び表面に複数の微小凹部が形成される。これに加えて、発泡剤からのガス流入の作用により、前記水増粘物質含有有機繊維を構成していた水増粘物質の全量が、被膜の内表面上、具体的には溶融した樹脂により構成される面上に移行し、こうして、微小空洞部の内表面に配置される(付着する)ことが分かっている。そして、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とすことで、上述の微小空洞部由来の複数の微小凹部が形成された表面をより効果的に得ることができる。なお、加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす方法としては、特に制限はされない。
ここで、加硫B工程の具体的な内容は、上述した加硫A工程と同様である。
本発明のタイヤは、上述したゴム部材を、トレッド部に備えることを特徴とする。かかるタイヤによれば、上述したゴム部材を少なくともトレッド部に用いているため、氷上性能が向上する。従って、本発明のタイヤは、スタッドレスタイヤ、特に乗用車用スタッドレスタイヤとして用いることが好ましい。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム部材をトレッド部に用いる以外特に制限はされず、常法に従って製造することができる。
表1に示す配合処方で、常法に従ってゴム組成物を調製した。このゴム組成物を用いてタイヤのトレッド部(未加硫)を作製し、適所に配設して、生タイヤを作製した。この生タイヤを、165℃で20分間の条件でモールド加硫し、加硫したタイヤを得た。
なお、後述する表4に、各例において選択した配合処方を示す。
*2 旭カーボン株式会社製、「カーボンN220」、アグロメレートは100nm以上である
*3 日本シリカ工業株式会社製、「ニプシル−VN3」、アグロメレートは100nm以上である
*4 大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック6C」
*5 ジベンゾチアジルジスルフィド
*6 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*7 ジニトロソペンタメチレンテトラミン
*8 尿素
なお、後述する表4に、各例において選択した微小物質及びその付与方法を示す。
*11 Degssa社製、湿式シリカ、VN3グレード
*12 Degssa社製、湿式シリカ、VN2グレード
*13 ポッターズ・バロティーニ株式会社製、「EMB10」
*14 ユニチカ株式会社製、「ユニビーズ」
*15 25℃の水への溶解性
*16 対象となる物質の濃度が23質量%となるように調製した水分散液の、コーンプレート型粘度計(コーンの直径60mm、角度0.99°)により測定される25℃、せん断速度0.02/sにおける粘度
Vs=(ρ0/ρ1−1)×100 ・・・(I)
[式中、ρ1は加硫ゴムの密度(g/cm3)であり、ρ0は加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm3)である。]
得られたタイヤのトレッドセンター部から、その接地対象表面を含むゴム片を切り取り、このサンプルの表面及び切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。そして、トレッド部の接地対象表面における微小凹部の有無、及び、トレッド部の内部における微小空洞部の有無を確認した。
更に、SEMで撮影したトレッド部の接地対象表面の写真から、微小凹部を任意に10個選択し、その各微小凹部の面積の合計のうち、微小物質により覆われている面積の合計の割合を算出し、微小凹部の内表面における微小物質の平均被覆率(%)を求めた。これらの結果を表4に示す。
得られたタイヤを装着した乗用車を、一般のアスファルト路上において200km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上性能に優れることを示す。結果を表4に示す。
まず、表5に示す樹脂と、上述の表2に示す微小物質とを準備した。
*18 株式会社クラレ製、「クラロン K−11」
*19 JIS K 7215に準拠し、デュロメータD硬さを測定した値
なお、後述する表8に、各例において選択した繊維を示す。
これらの結果を表8に示す。
2 微小凹部
3 水増粘物質
3a 微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質
3b 微小空洞部の内表面に配置されている水増粘物質
4 微小空洞部
5 非空洞部
Claims (6)
- 水増粘物質を有するゴム部材であって、
該ゴム部材の表面に、複数の微小凹部が存在し、
前記水増粘物質が、前記微小凹部の内表面に配置されており、且つ、
前記微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率が10%以上であり、
ここで、前記水増粘物質は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される、
ことを特徴とする、ゴム部材。 - 請求項1に記載のゴム部材であって、
更に内部に複数の微小空洞部が存在し、前記水増粘物質が、前記微小空洞部の内表面にも配置されており、
ゴム成分に対し、発泡剤と、水増粘物質及び樹脂を含有する水増粘物質含有有機繊維とを配合してなるゴム組成物を用いて製造される、ゴム部材。 - 前記水増粘物質が水酸基を有する、請求項1又は2に記載のゴム部材。
- 塗布、噴霧又は含浸により、前記水増粘物質が前記微小凹部の内表面に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム部材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム部材の製造方法であって、
加硫したゴムの表面に形成された微小凹部に、前記水増粘物質を付与する工程を含むことを特徴とする、ゴム部材の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム部材をトレッド部に備えることを特徴とする、タイヤ。
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