JP2018021110A - ゴム部材及びその製造方法、並びにタイヤ - Google Patents

ゴム部材及びその製造方法、並びにタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】タイヤ等のゴム物品に用いられた場合に、ゴム物品の氷上性能を向上させることが可能な、ゴム部材を提供する。【解決手段】水増粘物質を有するゴム部材であって、該ゴム部材の表面に、複数の微小凹部が存在し、前記水増粘物質が、前記微小凹部の内表面に配置されており、且つ、前記微小凹部の内表面の平均被覆率が10%以上であり、ここで、前記水増粘物質は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される、ことを特徴とする、ゴム部材。【選択図】図1

Description

本発明は、ゴム部材及びその製造方法、並びにタイヤに関する。
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動性や駆動性を向上させるため、種々の検討が行われている。例えば、特開2014−227487号公報(特許文献1)では、非ゴム成分を除去して高純度化し、且つ、酸性化合物の処理等によりゴム成分のpHを所定範囲に調整した改質天然ゴムと、カーボンブラック等の充填剤とを用いることで、補強性を高めるとともに、スタッドレスタイヤに求められる氷上性能等を改善できることが提案されている。
特開2014−227487号公報
しかしながら、上記従来の技術は、ゴム成分のpHを調整して保存中の分子量の低下を抑制することを狙いとするものであるため、タイヤの氷上性能を抜本的に向上させるのには限界がある。
そこで、本発明の目的は、タイヤ等のゴム物品に用いられた場合に、ゴム物品の氷上性能を向上させることが可能な、ゴム部材を提供することにある。また、本発明の目的は、タイヤ等のゴム物品の氷上性能を向上させることが可能なゴム部材を得ることができる、ゴム部材の製造方法を提供することにもある。更に、本発明の目的は、氷上性能が向上したタイヤを提供することにもある。
すなわち、本発明のゴム部材は、水増粘物質を有するゴム部材であって、該ゴム部材の表面に、複数の微小凹部が存在し、前記水増粘物質が、前記微小凹部の内表面に配置されており、且つ、前記微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率が10%以上であり、ここで、前記水増粘物質は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される、ことを特徴とする。本発明のゴム部材によれば、タイヤ等のゴム物品に用いられた場合に、ゴム物品の氷上性能を向上させることが可能である。
本発明のゴム部材は、更に内部に複数の微小空洞部が存在し、前記水増粘物質が、前記微小空洞部の内表面にも配置されていることが好ましく、このようなゴム部材は、ゴム成分に対し、発泡剤と、水増粘物質及び樹脂を含有する水増粘物質含有有機繊維とを配合してなるゴム組成物を用いて好適に製造することができる。この構成によれば、ゴム部材は、長期にわたってタイヤ等に高い氷上性能をもたらすことができ、また、水増粘物質を過剰に使用する必要がない。
また、本発明のゴム部材は、前記水増粘物質が水酸基を有することが好ましい。これにより、ゴム物品の氷上性能をより向上させることができる。
また、本発明のゴム部材は、前記水増粘物質が、塗布、噴霧又は含浸により前記微小凹部の内表面に配置されていることが好ましい。かかるゴム部材は、配合により水増粘物質を配置させる場合よりも多くの水増粘物質が微小凹部の内表面に配置されており、特にタイヤ等の使用初期における氷上性能を大幅に向上させることができる。
本発明のゴム部材の製造方法は、上述したゴム部材の製造方法であって、加硫したゴムの表面に形成された微小凹部に、水増粘物質を付与する工程を含むことを特徴とする。本発明のゴム部材の製造方法によれば、タイヤ等のゴム物品の氷上性能を向上させることが可能なゴム部材を得ることができる。また、かかる製造方法では、配合により水増粘物質を配置させる場合よりも、容易に水増粘物質を微小凹部の内表面に配置させることができ、また、容易に微小凹部の内表面への水増粘物質の配置量をコントロールすることができる。
本発明のタイヤは、上述したゴム部材をトレッド部に備えることを特徴とする。本発明のタイヤによれば、氷上性能が向上する。
本発明によれば、タイヤ等のゴム物品に用いられた場合に、ゴム物品の氷上性能を向上させることが可能な、ゴム部材を提供することができる。また、本発明によれば、タイヤ等のゴム物品の氷上性能を向上させることが可能なゴム部材を得ることができる、ゴム部材の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、氷上性能が向上したタイヤを提供することができる。
本発明のゴム部材の一実施形態としての、一例のタイヤのトレッド部の表面付近を表す模式断面図である。 本発明のゴム部材の一実施形態としての、一例のタイヤのトレッド部の表面及び内部を表す模式断面図である。 本発明の一実施形態のゴム部材の表面のSEMによる画像を模式的に示す図である。 一比較例のゴム部材の表面のSEMによる画像を模式的に示す図である。
(ゴム部材)
以下に、本発明のゴム部材を、その一実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
図1に示す、本発明のゴム部材の一実施形態としての、一例のタイヤのトレッド部1は、ゴム成分及び他の任意の成分を含むゴム組成物を用いて製造され得るものであって、その表面に複数の微小凹部2が存在し、この微小凹部2のそれぞれの内表面には、水増粘物質3が配置されている。
なお、本発明において「水増粘物質」は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される。
また、ゴム部材が使用時に路面等の外的因子と接触し得ない表面を有する場合、本発明における「ゴム部材の表面」には、当該接触し得ない表面が含まれないこととする。
一般に、例えば車が氷雪路面を走行する際には、該氷雪路面とタイヤとの摩擦熱等によって水膜が生成し、この水膜が、タイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させて、氷上性能を悪化させる原因になっているといわれている。この点に関し、本発明の一実施形態のゴム部材は、表面に複数の微小凹部が存在するため、この微小凹部が排水溝として機能し、水膜を除去してタイヤと氷雪路面との間の摩擦係数の低下を抑制することができる。更に、本発明の一実施形態のゴム部材は、表面に微小凹部が存在するだけでなく、この微小凹部の内表面に水増粘物質が配置されている。そのため、ゴム部材の表面粗さが実質的に高まるとともに、水増粘物質が微小凹部内に浸入した水の中に見かけ上分散し、水の粘度が上昇することで、摩擦係数(静止摩擦係数及び動摩擦係数)の低下がより一層抑制されるので、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。また、本発明のゴム部材は、上述した効果のほか、(1)ゴム成分が極めて疎水性であるため、水増粘物質が存在する微小凹部の方へより多くの水を浸入させることができる、(2)水増粘物質が水膜を切り裂き、微小凹部の排水溝としての機能をより増強させる、(3)氷雪路面と接触し得る水増粘物質の引っ掻き効果、等の効果も奏することができるものと考えられる。
ここで、本発明において「微小凹部」とは、図1にも示す通り、ゴム部材の表面に存在する窪みであって、最大深さ(Dmax)が1〜500μmであり、且つ、ゴム部材の表面の展開視における最長の径(Lmax)が1〜500μmの範囲のものを指すものとする。従って、前記「微小凹部」には、様々な外形のものが含まれる。なお、この「微小凹部」の有無は、例えば、電子顕微鏡により撮影したゴム部材の表面の写真から確認することができる。
また、本発明において、水増粘物質が微小凹部等の内表面に「配置されている」との態様には、水増粘物質が微小凹部等の内表面に強固に固着されている態様及びされていない態様の両方が含まれる。ただし、水増粘物質は、微小凹部等の内表面に強固に固着されていない方が好ましい。
なお、図1では、図示された全ての微小凹部2の内表面に水増粘物質3が配置されているが、本発明の一実施形態のゴム部材は、水増粘物質が、使用により路面等の外的因子と接触し得る表面(以下、「接地対象表面」と称することがある。)に存在する少なくとも1つの微小凹部の内表面に配置されていればよい。但し、所望の作用効果を十分に得る観点から、接地対象表面に存在するより多くの、好ましくは全部の微小凹部の内表面に水増粘物質が配置されていることが好ましい。
本発明の一実施形態のゴム部材の表面における微小凹部の数としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜決定することができるが、ゴム物性を保持しつつタイヤ等の氷上性能を効果的に向上させる観点から、70〜200個/mmであることが好ましく、130〜150個/mmであることがより好ましい。
なお、上記微小凹部の数は、電子顕微鏡により撮影したゴム部材の表面の写真から、一辺1mmの正方形領域を任意に10個選択し、その各領域内で観察される微小凹部の数をカウントし、その平均値として求めることができる。
また、本発明の一実施形態のゴム部材は、図2に示す一例のトレッド部1のように、複数の微小凹部2が表面に存在するだけでなく、その内部に複数の微小空洞部4が存在し、また、微小凹部2の内表面に水増粘物質3aが配置されていることに加え、当該複数の微小空洞部4の内表面にも、水増粘物質3bが配置されていることが好ましい。本発明の一実施形態のゴム部材がこのような態様を有することにより、長年の使用によって表面が摩耗し、それに伴って微小凹部2が消失したとしても、随時その内部に存在する微小空洞部4が新たな微小凹部となって表面に現れ、この新たな微小凹部及びその内表面に配置されている水増粘物質が、排水溝として機能するとともに、ゴム部材の表面粗さを実質的に高めたり、浸入した水の粘度を上昇させて摩擦係数の低下を抑制する。そのため、上記の態様を有する本発明の一実施形態のゴム部材は、長期にわたってタイヤ等に高い氷上性能をもたらすことができる。
なお、本発明の一実施形態のゴム部材においては、微小凹部と微小空洞部とが繋がっている態様を有していてもよい。
ここで、微小空洞部の大きさとしては、特に制限はされないが、内表面上の任意の2点を結ぶ直線のうち最も長いものの長さが、1μm〜10mmであることが好ましい。
そして、上述したような、水増粘物質が微小空洞部の内表面にも配置されている本発明の一実施形態のゴム部材は、水増粘物質が、微小凹部2の内表面及び微小空洞部4の内表面以外の場所、例えば非空洞部5に存在していてもよい。但し、水増粘物質を過剰に使用する必要なく、効率的にタイヤ等の氷上性能を向上させる観点から、非空洞部5に存在する水増粘物質の割合は、より小さい方が好ましい。このようなゴム部材は、例えば、ゴム成分に対し、発泡剤と、水増粘物質及び樹脂を含有する水増粘物質含有有機繊維とを配合してなるゴム組成物を用いることにより、好適に製造することができる。上記のゴム組成物を用いて製造されるゴム部材は、非空洞部に存在する水増粘物質の割合が、ほぼ0である。
なお、この点に関しては、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、非空洞部に存在する水増粘物質の割合」を特定することで、好適なゴム部材の態様を論じる必要があるとも考えられる。しかしながら、ゴム部材が有する水増粘物質の全量を求めるには、著しく過大な時間を要し、実際的でない。以上を踏まえれば、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、非空洞部に存在する水増粘物質の割合」を直接特定することは、技術的に不可能であることが明らかである。
また、本発明の一実施形態のゴム部材は、水増粘物質が、微小凹部2の内表面にとりわけ多く配置されていることも好ましい。水増粘物質が微小凹部の内表面に多く配置されているゴム部材は、特にタイヤ等の使用初期における氷上性能を大幅に向上させることができる。なお、微小凹部の内表面に多くの水増粘物質を配置する(ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質の割合を高める)方法としては、例えば、水増粘物質の塗布、噴霧又は含浸が挙げられる。この塗布、噴霧又は含浸は、いずれも、ゴム組成物を加硫して微小凹部を有する加硫ゴムを調製した後に、任意のタイミングで行うことができ、また、微小凹部の内表面に配置させる水増粘物質の量を容易にコントロールすることができるため、本発明のゴム部材の製造を容易なものとすることができる。
なお、この点に関しては、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質の割合」を特定することで、好適なゴム部材の態様を論じる必要があるとも考えられる。しかしながら、ゴム部材が有する水増粘物質の全量を求めるには、著しく過大な時間を要し、実際的でない。以上を踏まえれば、「ゴム部材が有する水増粘物質の全量のうち、微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質の割合」を直接特定することは、技術的に不可能であることが明らかである。
また、本発明の一実施形態のゴム部材は、1個当たりの微小凹部2の内表面に配置されている水増粘物質の量が一定以上である必要がある。より具体的には、ゴム部材の表面に存在する微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率が、10%以上であることを要し、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、75%以上であることが特に好ましい。前記平均被覆率が10%未満であると、タイヤ等の氷上性能を効果的に向上させることができない。
同様の観点から、ゴム部材の接地対象表面に存在する微小凹部の内表面の平均被覆率が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることも好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、75%以上であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率」とは、ゴム部材の表面の展開視における微小凹部の面積のうち、水増粘物質により覆われている面積の合計の割合の平均値を指すものとする。また、この「微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率」は、例えば、電子顕微鏡により撮影したゴム部材の表面の写真(好ましくは、2値化処理を施したもの)から、微小凹部を任意に10個選択し、その各微小凹部の面積の合計のうち、水増粘物質により覆われている面積の合計の割合を算出して求めることができる。
ここで、本発明の一実施形態のゴム部材は、上述した水増粘物質の定義を満たさない物質が微小凹部の内表面に配置されていてもかまわない。但し、氷上性能の効果的な向上の観点から、本発明の一実施形態のゴム部材は、水増粘物質の定義を満たさない物質が微小凹部の内表面に配置されていないことが好ましい。
−水増粘物質−
本発明において用いる水増粘物質は、上述した通り、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質である。この水増粘物質は、ゴム部材の微小凹部の内表面に配置されることで、ゴム部材の表面粗さを実質的に高めたり、浸入した水の粘度を上昇させて摩擦係数の低下を抑制することができると考えられる。ここで、水増粘物質に係る上記粘度は、摩擦係数の低下をより抑制する観点から、500Pa・s以上であることが好ましく、1000Pa・s以上であることがより好ましく、5000Pa・s以上であることが更に好ましく、8000Pa・s以上であることが特に好ましい。一方で、水増粘物質に係る上記粘度は、特に制限されず、50,000Pa・s以下であることが好ましい。
なお、上述したコーンプレート型粘度計による粘度の測定は、例えば、直径60mm、角度0.99°のコーンを用いて行うことができる。
水増粘物質の形状としては、上記水分散液の粘度が20Pa・s以上となっている限り、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒子状、繊維状、層状、テトラポット状等が挙げられる。ここで、水増粘物質の形状については、その量や大きさ等を考慮して、微小凹部の大きさに合わせて適切なものを選択することが重要である。
或いは、水増粘物質は、ゲル状であってもよい。
また、水増粘物質の長径としては、上記水分散液の粘度が20Pa・s以上となっている限り、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、100nm未満であることが特に好ましい。水増粘物質の長径が50μm以下であることにより、ゴム部材の微小凹部に配置された場合に、ゴムの表面粗さを十分に高くし、タイヤの氷上性能を効果的に向上させることができる。一方で、水増粘物質の長径は、氷上性能の効果的な向上の観点及び調達容易性の観点から、1.0nm以上であることが好ましい。
ここで、本明細書において、水増粘物質の「長径」は、水増粘物質の外表面上の任意の2点を結ぶ直線のうち最も長いものの長さを指すものとする。この水増粘物質の「長径」は、例えば、水増粘物質を電子顕微鏡により撮影することで、求めることができる。
本発明において用いる水増粘物質は、有機物質であっても無機物質であってもよい。
無機物質としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイヤモンド、シリカ、ガラス、石膏、方解石、蛍石、正長石、水酸化アルミニウム、アルミナ、銀、鉄、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、クレイ等の無機物質が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、上述したダイヤモンドをはじめとする無機物質は、その表面が任意の官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基など)で修飾されたものであってもよい。
有機物質としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。また、有機物質としては、水の粘度を高める観点から、保水材や吸水ポリマーなどの高分子ゲルとして汎用される有機物質も挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、水増粘物質は、水酸基を有することが好ましい。水増粘物質が水酸基を有することで、水酸基同士の特有の相互作用により、微小凹部内に浸入した水の粘度をより高めて、ゴム物品の氷上性能をより向上させることができる。ここで、水酸基を有する水増粘物質としては、セルロース、水酸基で修飾された任意の無機物質、等が挙げられる。
また、水増粘物質は、氷雪路面とタイヤとの間に生成する水膜を除去する効果をより確実に得る観点から、水(例えば、25℃の水)に対して不溶であることが好ましい。
−ゴム成分−
ゴム成分としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)のみであってもよく、ジエン系合成ゴムのみであってもよく、天然ゴム及びジエン系合成ゴムを併用してもよい。前記ジエン系合成ゴムとしては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ゴム部材の製造方法)
本発明の一実施形態のゴム部材は、上述の通り、ゴム成分及び他の任意の成分を含むゴム組成物を用いて製造することができる。また、本発明の一実施形態のゴム部材を製造するにあたっては、少なくとも、ゴム部材の表面に複数の微小凹部を形成させること、及び、前記微小凹部の内表面に水増粘物質を配置させること、が必要である。これらを達成する方法としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、本発明に係るゴム部材の製造方法は、少なくとも、加硫したゴムの表面に形成された微小凹部に、水増粘物質を付与する工程を含む。そして、本発明に係るゴム部材の製造方法によれば、上述した本発明のゴム部材を製造することができる。以下、かかる工程を含む本発明の一実施形態に係るゴム部材の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るゴム部材の製造方法は、例えば、ゴム成分に少なくとも発泡剤を配合してゴム組成物を調製する工程(ゴム組成物調製A工程)と、調製したゴム組成物を加硫するとともに得られた加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす工程(加硫A工程)と、加硫ゴムの表面の微小凹部に水増粘物質を付与する工程(水増粘物質付与工程)とを含む。
−ゴム組成物調製A工程−
ゴム組成物調製A工程は、ゴム成分に対し、発泡剤と、任意の他の成分とを配合し、混練してゴム組成物を得る工程である。なお、ゴム成分の具体例としては、既述したものと同様である。発泡剤を配合することにより、容易に、ゴム部材の表面に複数の微小凹部を形成させることができ、また、ゴム部材の内部に複数の微小空洞部を形成させることができる。
前記発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましい。これら発泡剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記発泡剤の配合量としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して1〜10質量部の範囲が好ましい。
また、ゴム組成物調製A工程では、前記発泡剤とともに、発泡助剤を併用することが好ましい。前記発泡助剤としては、尿素、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。発泡剤とともに発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
更に、ゴム組成物調製A工程では、上述したゴム成分に、任意の他の成分、例えば、硫黄等の加硫剤、ステアリン酸等の加硫助剤、ジベンゾチアジルジスルフィドやN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等の加硫促進剤、亜鉛華等の加硫促進助剤、老化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を配合することができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、上述した成分を、常法に従って混練することにより、ゴム組成物を調製することができる。
−加硫A工程−
加硫A工程は、ゴム組成物調製A工程で調製したゴム組成物を加硫して加硫ゴムを得るとともに、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす工程である。この加硫A工程では、配合した発泡剤が発泡してガスが発生し、このガスに起因して加硫ゴムの内部に複数の微小空洞部及び表面に複数の微小凹部が形成される。また、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とすことで、上述の微小空洞部由来の複数の微小凹部が形成された表面をより効果的に得ることができる。なお、加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす方法としては、特に制限はされない。
加硫の方法としては、特に制限されず、ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができる。但し、得られるゴム部材をタイヤのトレッド部に用いる場合には、モールド加硫を行うことが好ましい。加硫の温度としては、特に制限されず、加硫時間等に応じて適宜選択することができるが、所望のゴム物性及び発泡率を得る観点から、100〜200℃が好ましい。また、加硫時間としては、特に制限されず、加硫の温度等に応じて適宜選択することができるが、所望のゴム物性及び発泡率を得る観点から、3〜25分間が好ましい。
前記加硫ゴムの発泡率(Vs)は、3〜40%が好ましく、5〜35%がより好ましい。発泡率が3%以上であることにより、氷雪路面上の水を除去することができる微小凹部及び微小空洞部の体積が小さくなり過ぎて、排水性能が低下するのを抑制することができ、一方、40%以下であることにより、微小凹部及び微小空洞部の数が多くなり過ぎてタイヤの耐久性が低下するのを抑制することができる。
なお、前記発泡率(Vs)(%)は、下記式(I):
Vs = (ρ/ρ−1) × 100 ・・・(I)
[式中、ρは加硫ゴムの密度(g/cm)、ρは加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm)である]により算出することができる。
−水増粘物質付与工程−
水増粘物質付与工程は、加硫A工程で得られた加硫ゴムの表面に形成された微小凹部に対し、水増粘物質を(後発的に)付与し、本発明のゴム部材を得る工程である。なお、水増粘物質の具体例としては、既述したものと同様である。
水増粘物質を付与する方法としては、特に制限されず、使用する水増粘物質の種類等に応じて適宜選択することができる。上記方法としては、例えば、人手等により水増粘物質を塗布する方法(塗布法)、エアブラシ等の器具を用いて気体とともに水増粘物質を噴霧する方法(噴霧法)、分散媒中に水増粘物質を分散させてなる液を加硫ゴムに含浸させ、次いで、乾燥する方法(含浸法)、等が挙げられる。これらの方法は、いずれも、配合により水増粘物質を配置させる場合に比べ、容易に水増粘物質を微小凹部の内表面に配置させることができる点、容易に微小凹部の内表面への水増粘物質の配置量(微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率)をコントロールすることができる点で、好ましい。
前記噴霧法において使用可能な器具としては、例えば、AIRTEX社製エアブラシ「メテオ」、タミヤ社製エアブラシ「74541」等が挙げられる。また、前記噴霧法において使用可能な気体としては、空気、窒素、酸素、プロパン等が挙げられ、これらの中でも、良好な付着性を得る観点から、プロパンが好ましい。
前記含浸法において使用可能な分散媒としては、乾燥により除去可能なものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、これらの中でも、高い乾燥速度及び安全性を確保する観点から、エタノール、イソプロパノールが好ましい。また、前記含浸法において、液中の水増粘物質の濃度としては、特に制限されず、所望の平均被覆率等に応じて適宜選択することができるが、例えば0.01〜1.0質量%であることが好ましい。更に、前記含浸法における乾燥温度としては、特に制限されず、使用する分散媒の沸点等に応じて適宜選択することができるが、例えば10〜200℃であることが好ましい。また更に、前記含浸法における乾燥時間としては、特に制限はされず、液中の水増粘物質の濃度等に応じて適宜選択することができるが、例えば10〜360分間であることが好ましい。
なお、塗布法、噴霧法、含浸法のいずれにおいても、得られるゴム部材の微小凹部以外の表面に水増粘物質が配置され得るが、この水増粘物質は、除去してもよいし、しなくてもよい。
また、本発明の他の実施形態に係るゴム部材の製造方法として、上述した「本発明の一実施形態に係るゴム部材の製造方法」と、後述する「他のゴム部材の製造方法」とを組み合わせた方法、具体的には、後述する繊維調製工程、ゴム組成物調製B工程及び加硫B工程と、上述した水増粘物質付与工程とを含む方法、も挙げられる。
なお、本発明のゴム部材は、上記の製造方法以外にも、例えば、水増粘物質含有有機繊維を調製する工程(繊維調製工程)と、ゴム成分に少なくとも発泡剤及び前記水増粘物質含有有機繊維を配合してゴム組成物を調製する工程(ゴム組成物調製B工程)と、調製したゴム組成物を加硫するとともに得られた加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす工程(加硫B工程)とを含む方法(「他のゴム部材の製造方法」と称することがある。)によっても、製造することもできる。この方法によれば、配合により、水増粘物質を微小凹部の内表面に配置させることができる。
−繊維調製工程−
繊維調製工程は、水増粘物質含有有機繊維を調製する工程であり、この水増粘物質含有有機繊維は、ゴム部材の微小凹部及び微小空洞部の内表面に水増粘物質を配置するために配合されるものである。ここで、前記水増粘物質含有有機繊維は、通常、樹脂と、水増粘物質とを含有してなる。なお、水増粘物質の具体例としては、既述したものと同様である。
前記樹脂は、融点又は軟化点が、ゴム組成物の加硫時における該ゴム組成物が達する最高温度、即ち加硫最高温度よりも低いことが好ましい。発泡剤を含有するゴム組成物中に水増粘物質含有有機繊維が配合されている場合、当該水増粘物質含有有機繊維を構成する樹脂は加硫中に溶融又は軟化し、一方、ゴムマトリクス中で加硫中に発泡剤から発生したガスは、加硫反応が進行したゴムマトリクスに比べ、繊維を構成していた溶融又は軟化した樹脂の内部に留まる傾向がある。ここで、上記樹脂の融点又は軟化点が加硫最高温度よりも低ければ、ゴム組成物の加硫時に該樹脂が速やかに溶融又は軟化し、微小空洞部を効率的に形成することができる。
このような樹脂の具体例としては、結晶性高分子樹脂、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等によりこれらの融点を適当な範囲に制御したもの、等が挙げられる。これら結晶性高分子樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高分子の中でも、汎用性及び入手容易性の観点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な観点で、ポリエチレン(PE)がより好ましい。一方、水増粘物質が粘度を増加させる対象である水を微小凹部内により多く引き寄せる観点では、水酸基を有する樹脂、例えばポリビニルアルコールがより好ましい。
なお、前記樹脂の融点又は軟化点は、ゴム組成物の加硫最高温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度が190℃に設定されている場合には、樹脂の融点又は軟化点としては、通常190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
ここで、前記水増粘物質含有有機繊維は、水増粘物質を、樹脂100質量部に対して0.5〜200質量部含有することが好ましい。該水増粘物質の含有量が0.5質量部以上であることにより、得られるゴム部材がタイヤ等の氷上性能を大幅に向上させることができ、一方、200質量部以下であることにより、高い紡糸操業性を維持することができる。
また、前記水増粘物質含有有機繊維は、平均径が10〜100μmであることが好ましい。前記平均径が10μm以上であることにより、より確実に樹脂及び水増粘物質から紡糸することができ、また、100μm以下であることにより、ゴム組成物中の水増粘物質含有有機繊維の配合部数が高くなり過ぎるのを回避することができる。
更に、前記水増粘物質含有有機繊維は、平均長さが0.5〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。前記平均長さが0.5mm以上であることにより、より容易に微小凹部及び微小空洞部を形成することができ、また、20mm以下であることにより、繊維の硬度が高くなり過ぎず十分に混練することができる。
前記水増粘物質含有有機繊維の調製方法としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶融紡糸法、ゲル紡糸法、溶液紡糸法等が挙げられる。例えば、溶融紡糸法では、押出機中で原料の樹脂を加熱・溶融した後、水増粘物質を分散させ、次いで紡糸ノズルより押し出された繊維の束を紡糸筒内で引き伸ばしつつ空気流により冷却して固化させ、その後、油剤を付与して1本にまとめ、巻き取ることにより、水増粘物質含有有機繊維を調製することができる。また、溶液紡糸法では、原料の樹脂を溶解したポリマー溶液に水増粘物質を分散させ、これを紡糸ノズルより押し出し、脱溶媒等を行うことにより繊維化して、水増粘物質含有有機繊維を製造することができる。
−ゴム組成物調製B工程−
ゴム組成物調製B工程は、ゴム成分に対し、発泡剤と、繊維調製工程で調製した水増粘物質含有有機繊維と、任意の他の成分とを配合し、混練してゴム組成物を得る工程である。なお、ゴム組成物調製B工程の具体的な内容は、以下に示す内容を除けば、上述したゴム組成物調製A工程と同様である。
ゴム組成物調製B工程における水増粘物質含有有機繊維の配合量としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜決定することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.5〜30質量部であることが好ましい。前記水増粘物質含有有機繊維の配合量が0.5質量部以上であることにより、加硫ゴムに占める微小凹部及び微小空洞部の体積比率を高めるとともに、十分な量の水増粘物質を微小凹部及び微小空洞部に配置させて、タイヤの氷上性能を効果的に向上させることができ、また、30質量部以下であることにより、ゴム組成物中での水増粘物質含有有機繊維の分散性及びゴム組成物の加工性の低下を抑制することができる。
−加硫B工程−
加硫B工程は、ゴム組成物調製B工程で調製したゴム組成物を加硫して加硫ゴムを得るとともに、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とし、本発明のゴム部材を得る工程である。この加硫B工程では、加硫により、水増粘物質含有有機繊維を構成する樹脂が溶融するとともに、配合した発泡剤が発泡してガスが発生する。そして、溶融した樹脂及び水増粘物質が前記ガスを取り囲むように被膜を作り、加硫ゴムの内部に複数の微小空洞部及び表面に複数の微小凹部が形成される。これに加えて、発泡剤からのガス流入の作用により、前記水増粘物質含有有機繊維を構成していた水増粘物質の全量が、被膜の内表面上、具体的には溶融した樹脂により構成される面上に移行し、こうして、微小空洞部の内表面に配置される(付着する)ことが分かっている。そして、この加硫ゴムの外表面を削ぎ落とすことで、上述の微小空洞部由来の複数の微小凹部が形成された表面をより効果的に得ることができる。なお、加硫ゴムの外表面を削ぎ落とす方法としては、特に制限はされない。
ここで、加硫B工程の具体的な内容は、上述した加硫A工程と同様である。
(タイヤ)
本発明のタイヤは、上述したゴム部材を、トレッド部に備えることを特徴とする。かかるタイヤによれば、上述したゴム部材を少なくともトレッド部に用いているため、氷上性能が向上する。従って、本発明のタイヤは、スタッドレスタイヤ、特に乗用車用スタッドレスタイヤとして用いることが好ましい。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム部材をトレッド部に用いる以外特に制限はされず、常法に従って製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1〜10、比較例1〜7)
表1に示す配合処方で、常法に従ってゴム組成物を調製した。このゴム組成物を用いてタイヤのトレッド部(未加硫)を作製し、適所に配設して、生タイヤを作製した。この生タイヤを、165℃で20分間の条件でモールド加硫し、加硫したタイヤを得た。
なお、後述する表4に、各例において選択した配合処方を示す。
*1 JSR株式会社製、「BR01」、シス−1,4−ポリブタジエン
*2 旭カーボン株式会社製、「カーボンN220」、アグロメレートは100nm以上である
*3 日本シリカ工業株式会社製、「ニプシル−VN3」、アグロメレートは100nm以上である
*4 大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック6C」
*5 ジベンゾチアジルジスルフィド
*6 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*7 ジニトロソペンタメチレンテトラミン
*8 尿素
次に、上述の加硫したタイヤを装着した乗用車を50km以上走行させて表面を馴らし、タイヤの外表面を、所定の厚さだけ均一に削ぎ落とした。そして、比較例1,2以外の例においては、以下の表2に示す微小物質を用意し、以下の表3に示す方法のいずれかにより、この微小物質を、上述の加硫したタイヤのトレッド部の接地対象表面における実質的に全ての微小凹部の内表面に付与した。こうして、ゴム部材をトレッド部に備えるサイズ185/70R13の乗用車用ラジアルタイヤを製造した。
なお、後述する表4に、各例において選択した微小物質及びその付与方法を示す。
*10 株式会社エアブラウン製、「udiamond molt」
*11 Degssa社製、湿式シリカ、VN3グレード
*12 Degssa社製、湿式シリカ、VN2グレード
*13 ポッターズ・バロティーニ株式会社製、「EMB10」
*14 ユニチカ株式会社製、「ユニビーズ」
*15 25℃の水への溶解性
*16 対象となる物質の濃度が23質量%となるように調製した水分散液の、コーンプレート型粘度計(コーンの直径60mm、角度0.99°)により測定される25℃、せん断速度0.02/sにおける粘度
得られたタイヤについて、トレッド部を形成する加硫ゴムの発泡率(Vs)(%)を、下記式(I)により算出した。結果を表4に示す。
Vs=(ρ/ρ−1)×100 ・・・(I)
[式中、ρは加硫ゴムの密度(g/cm)であり、ρは加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm)である。]
また、得られたタイヤについて、ゴム部材としてのトレッド部の表面形態及び内部形態、並びにタイヤの氷上性能を、下記の方法で評価した。
<トレッド部の表面形態及び内部形態>
得られたタイヤのトレッドセンター部から、その接地対象表面を含むゴム片を切り取り、このサンプルの表面及び切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。そして、トレッド部の接地対象表面における微小凹部の有無、及び、トレッド部の内部における微小空洞部の有無を確認した。
更に、SEMで撮影したトレッド部の接地対象表面の写真から、微小凹部を任意に10個選択し、その各微小凹部の面積の合計のうち、微小物質により覆われている面積の合計の割合を算出し、微小凹部の内表面における微小物質の平均被覆率(%)を求めた。これらの結果を表4に示す。
ここで、参考までに、実施例1におけるサンプルの表面のSEMによる画像の模式図を図3に示し、比較例2におけるサンプルの表面のSEMにて観察される画像の模式図を図4に示す。これらの図から、2値化処理を施すことで、微小凹部の内表面におけるナノ物質の平均被覆率が分かる。
<タイヤの氷上性能>
得られたタイヤを装着した乗用車を、一般のアスファルト路上において200km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上性能に優れることを示す。結果を表4に示す。
(実施例11〜18、比較例8,9)
まず、表5に示す樹脂と、上述の表2に示す微小物質とを準備した。
*17 日本ポリエチレン株式会社製、「HY 442」
*18 株式会社クラレ製、「クラロン K−11」
*19 JIS K 7215に準拠し、デュロメータD硬さを測定した値
上述の通り準備した樹脂と微小物質とを用い、表6に示す配合処方で、通常の溶融紡糸法に従って繊維(微小物質含有繊維)を調製した。また、調製した各繊維について無作為に20箇所選択し、光学顕微鏡を用いて径及び長さを測定し、その平均値を求めたところ、いずれの繊維も、平均径が30μmであり、平均長さが2mmであった。
なお、後述する表8に、各例において選択した繊維を示す。
上述の通り調製した繊維を用い、表7に示す配合処方で常法に従って混練を行い、配合した繊維が一定方向に配列したゴム組成物を調製した。次いで、このゴム組成物を用いてタイヤのトレッド部(未加硫)を作製し、適所に配設して、生タイヤを作製した。この生タイヤを、165℃で10分間の条件でモールド加硫し、加硫したタイヤを得た。なお、各ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度は、いずれも165℃であった。
*20 表6に記載の繊維から選択されたもの
次に、上述の加硫したタイヤを装着した乗用車を50km走行させて表面を馴らし、タイヤの外表面を、所定の厚さだけ均一に削ぎ落とした。こうして、ゴム部材をトレッド部に備えるサイズ185/70R13の乗用車用ラジアルタイヤを製造した。
得られたタイヤについて、上記と同様の方法で、トレッド部を形成する加硫ゴムの発泡率(Vs)(%)を算出し、トレッド部の接地対象表面における微小凹部の有無、トレッド部の内部における微小空洞部の有無、及び微小凹部の内表面における微小物質の平均被覆率(%)を求め、更に、タイヤの氷上性能を評価した。
これらの結果を表8に示す。
表4及び表8から、複数の微小凹部が存在し、且つ、水増粘物質がこの微小凹部の内表面に配置されており、平均被覆率が10%以上である実施例のゴム部材は、例えばゴム物品としてのタイヤの氷上性能を向上させることができることが少なくとも分かる。
本発明によれば、タイヤ等のゴム物品に用いられた場合に、ゴム物品の氷上性能を向上させることが可能な、ゴム部材を提供することができる。また、本発明によれば、タイヤ等のゴム物品の氷上性能を向上させることが可能なゴム部材を得ることができる、ゴム部材の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、氷上性能が向上したタイヤを提供することができる。
1 トレッド部
2 微小凹部
3 水増粘物質
3a 微小凹部の内表面に配置されている水増粘物質
3b 微小空洞部の内表面に配置されている水増粘物質
4 微小空洞部
5 非空洞部

Claims (6)

  1. 水増粘物質を有するゴム部材であって、
    該ゴム部材の表面に、複数の微小凹部が存在し、
    前記水増粘物質が、前記微小凹部の内表面に配置されており、且つ、
    前記微小凹部の内表面における水増粘物質の平均被覆率が10%以上であり、
    ここで、前記水増粘物質は、その濃度が23質量%となるように水分散液を調製したときに、コーンプレート型粘度計により測定される該水分散液の25℃、0.01/s〜0.1/sのうちの任意のせん断速度における粘度が、20Pa・s以上となる物質と定義される、
    ことを特徴とする、ゴム部材。
  2. 請求項1に記載のゴム部材であって、
    更に内部に複数の微小空洞部が存在し、前記水増粘物質が、前記微小空洞部の内表面にも配置されており、
    ゴム成分に対し、発泡剤と、水増粘物質及び樹脂を含有する水増粘物質含有有機繊維とを配合してなるゴム組成物を用いて製造される、ゴム部材。
  3. 前記水増粘物質が水酸基を有する、請求項1又は2に記載のゴム部材。
  4. 塗布、噴霧又は含浸により、前記水増粘物質が前記微小凹部の内表面に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム部材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム部材の製造方法であって、
    加硫したゴムの表面に形成された微小凹部に、前記水増粘物質を付与する工程を含むことを特徴とする、ゴム部材の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム部材をトレッド部に備えることを特徴とする、タイヤ。
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