JP2018020965A - エタノールを含む消毒用組成物及びその製造方法 - Google Patents

エタノールを含む消毒用組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 安全性及び製造コストの点で好適であって、優れた消毒力を備えたエタノールを含む消毒用組成物を提供することを目的とする。【解決手段】 スギ葉に由来する揮発性化合物を含む蒸留物の製造方法であって、(工程1)スギ葉又はその加工物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物を回収する工程、を含むことを特徴とする、スギ葉エタノール蒸留物の製造方法、;前記製造方法によって得られたスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含有してなることを特徴とするエタノールを含む消毒用組成物、;並びに、前記消毒用組成物の製造方法。【選択図】 図4

Description

本発明は、優れた消毒力を備えたエタノールを含む消毒用組成物及びその製造方法に関する。
エタノールは一価の低級アルコールの一種であり、酒類成分や飲食品添加物や工業原料として利用されてきた物質であるところ、その物性として両親媒性を有することから水存在下において細胞膜変性と細胞内圧上昇により優れた細胞溶菌作用を発揮する物質である。また、揮発性が高く、人体接触への安全性が高く、且つ環境負荷が低い性質を備えていることから、医療、公衆衛生、飲食品、農業等の様々分野での消毒殺菌用途に広く利用されている物質である。
消毒用エタノールの利用形態としては、その消毒作用を担保する観点からエタノール含量が一定より高いエタノール水溶液として利用することが一般的である。一般的には65〜90%(v/v)程度のエタノール水溶液を消毒用に利用することが一般的であり、日本薬局方ではエタノール含量76.9〜81.4%(v/v)との規格が定められている。しかし、消毒用エタノールの製造原料としては精製エタノールを利用する必要があり、また上記濃度範囲にある純粋エタノールには酒税法の課税対象となる関係から、製造コストが高くなる傾向がある。また、近年のエタノールの燃料用途への需要の急速な拡大により、合成エタノールと発酵エタノールの双方における原料の安定供給が懸念される。
このような状況において再生エネルギー技術の進展を重視する観点から、間伐材や稲わら等の低価格で再生可能なバイオマス原料からバイオエタノールを生産する技術開発に期待が集まっている。ここで、バイオマス原料からのエタノール生産では、バイオマスの主要成分であるセルロースやヘミセルロース等を酵素により加水分解する糖化工程を行い、生成された単糖から酵母等によりエタノール発酵を行う方法が広く用いられている。
しかし、バイオマス糖化工程における酵素糖化反応は、基質への酵素吸着及び糖化効率等への対応のために大量の酵素投入が必要であり、セルラーゼ等の酵素製剤は高価であることから、バイオマス原料からのバイエタノールの製造コストは高くなる傾向にある(非特許文献1)。
また、消毒用エタノールは高い安全性を有することから幅広い消毒殺菌用途に利用可能である優れた利点を有するところ、次亜塩素酸等の他の消毒剤と比較すると消毒作用の力価としては十分とは言えない場合もある。
そこで、消毒用エタノールに界面活性剤や殺菌剤等を添加して消毒力や殺菌力を向上させる技術が報告されているが(例えば特許文献1、2等参照)、消毒対象への界面活性剤等の添加物の残存の問題が懸念され利用用途が限定的になる傾向がある。
以上の事情が示すように、消毒用エタノールに関する課題としては製造コストを抑制する技術が求められており、また別途の課題としては人体や環境等への安全性を損なうことなくその力価を向上する技術の開発が求められている。
特開2007−1908号公報 特公平4−33226号公報 特許第4345956号公報 特開2014−88331号公報
生物工学会誌、第91巻、第10号、p554−575、2013年、バイオマス利活用の現状と課題
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、安全性及び製造コストの点で好適であって、優れた消毒力を備えたエタノールを含む消毒用組成物を提供することを目的とする。
上記従来技術の状況において本発明者は鋭意研究を重ねたところ、消毒用エタノールを製造する工程において、エタノールを含む水溶液にスギ葉を配合して蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含む溶液を同一工程にて回収する手法を着想した。
本発明者は当該着想に基づいた手法により蒸留エタノールを調製したところ、消毒力に優れた消毒用エタノールが製造できることを見出した。当該製造した消毒用エタノールは、通常の消毒用エタノール消毒力が期待できない50%(v/v)程度以下の低エタノール濃度であっても優れた消毒力を発揮する性質を備えており、エタノールの消毒力が劇的に向上した消毒用組成物となることを見出した。
本発明者は、上記した消毒用エタノールを用いることによって、エタノール配合量を大幅に減じることが可能となることを見出した。即ち、上記消毒用エタノールに関する技術は、エタノールに要する原料コストを大幅に削減可能な技術であると認められた。
また、上記製造工程におけるスギ葉からのエタノール蒸留物は、天然由来の植物成分であり、更に揮発性成分であることから消毒対象に残存しにくい性質を備え、人体や環境に対して安全性に優れた技術であると認められた、即ち、上記消毒用エタノールは幅広い消毒殺菌用途への適用が可能な消毒用組成物であると認められた。
また本発明者は、上記した消毒用エタノールの製造方法においては、スギ葉エタノール蒸留物の蒸留工程とエタノール蒸留工程とを別途の蒸留工程として行うことなく、同一の蒸留工程で実現可能なことを見出した。即ち、上記製造技術は蒸留工程に要するエネルギー及び操作労力を簡略化して実現可能な技術であると認められた。
更に本発明者は、上記消毒用エタノールの製造方法をバイオマス原料からのバイオエタノール製造工程の発酵液にスギ葉を配合して行うことが可能であることを見出した。この点、廃棄対象であるスギ葉自体の有効利用に加えて再生可能エネルギー資源であるバイオマス原料の有効利用の観点においても好適な技術であると認められた。
ここで、本件発明分野に係る関連技術としては、スギ精油成分に関する抗菌作用に関する技術を挙げることができる。
例えば、農園芸用抗菌溶液に関する特許文献3には、「スギ樹皮を含む材部」のメタノール抽出物等に抗菌作用があることが報告されており(特許文献3段落0007等参照)、低級アルコールとしてエタノールを用いても同一効果が得られることが記載されている(特許文献3段落0013参照)。
しかし、本発明者がスギ材粉砕物エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液を調製してその消毒効果を検証したところ、スギ材からのエタノール蒸留物にはエタノールの消毒力向上作用を確認することはできなかった(本願明細書実施例6参照)。
また、口腔疾患の治療剤に関する特許文献4には、スギ葉を「水蒸気蒸留」(常圧蒸留)を行って得た蒸留物に、抗菌作用があることが報告されている(特許文献4段落0027、実施例等参照)。しかし、これに対して本発明に係る上記消毒用エタノールに含まれる有効成分は、スギ葉をエタノール水溶液に配合し「エタノール蒸留」(揮発性の高いエタノール蒸留であるため減圧蒸留)を行って得た蒸留組成物である。
この点、本発明者は両者の蒸留物を調製して組成分析を行ったところ、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物に係るクロマトグラム波形は、比較試料であるスギ葉水蒸気蒸留物とは大きく異なる組成的特性を有し、特徴的な含有化合物ピークを複数含むことを見出した(本願明細書実施例7参照)。更に本発明者は両者の消毒作用を検証したところ、スギ葉水蒸気蒸留物の消毒力向上作用は力価が弱く、低アルコール濃度の水溶液に十分な消毒作用を付与することができなかった(本願明細書実施例9参照)。
更に、ここで本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の消毒力向上作用は、エタノール共存下において溶液全体の「消毒作用」を劇的に向上させる作用であり、短時間の接触によって対象微生物等の殺菌を実現する作用であるところ(本願明細書実施例3〜5参照)、特許文献3及び4におけるスギ精油成分の抗菌作用に関する報告は、いずれも長時間培養条件下にて微生物の「増殖抑制作用」を報告する内容であり、短時間接触条件でのエタノール殺菌に関する技術的思想を開示又は示唆する記載は認められない。
以上に示すように、特許文献3及び4には一部のスギ精油化合物が開示されているところ、その抽出物又は蒸留物を構成する化合物組成は本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物とは全く異なり、エタノール共存下での劇的な殺菌効果は発揮されない。また、特許文献3及び4には短時間接触条件でのエタノール消毒力の向上に関する課題等を開示又は示唆する記載は認められない。
本発明者は上記知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は具体的には以下に記載の発明に関する。
[項1]
スギ葉に由来する揮発性化合物を含む蒸留物の製造方法であって、
(工程1)スギ葉又はその加工物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物を回収する工程、
を含むことを特徴とする、スギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
[項2]
前記(工程1)に記載の蒸留が減圧蒸留である、項1に記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
[項3]
前記(工程1)に記載の蒸留を行う溶液が、エタノール含有率5%(v/v)以上のエタノールを含む水溶液である、項1又は2に記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
[項4]
前記(工程1)が、スギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含む溶液を回収する工程である、項1〜3のいずれかに記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
[項5]
前記(工程1)に記載の蒸留を行う溶液が、バイオエタノール製造工程におけるエタノール発酵液又は当該発酵に由来するエタノールを含む溶液である、項1〜4のいずれかに記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
[項6]
項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られたスギ葉エタノール蒸留物。
[項7]
下記(A)及び(B)に記載の特徴を有するスギ葉エタノール蒸留物;
(A)下記比較試料とのポリエチレングリコールカラムを用いた昇温条件でのガスクロマトグラフィーによる比較分析を行った場合において、(a−1)下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物よりも短い保持時間を示す主要ピークにて示される化合物を少なくとも2成分含有し、(a−2)下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物の中で最も長い保持時間を示す主要ピーク群のうちの1つとして示される化合物を、下記比較試料の含量より高含有する、
(比較試料)裁断したスギ葉を水蒸気蒸留して得たスギ葉水蒸気蒸留物、
(B)当該スギ葉エタノール蒸留物及び25%(v/v)エタノールを含有してなる水溶液を調製し、実施例3に記載の方法と同様にして大腸菌への消毒試験を行った際に、当該消毒処理後の溶液での生菌数を示す値が1.5×10cfu/mL以下である。
[項8]
項6又は7に記載のスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含有してなることを特徴とする、エタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノール。
[項9]
項6又は7に記載のスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含有してなることを特徴とする、香料組成物、香料剤、又は香粧品。
[項10]
項1〜5のいずれかに記載の前記(工程1)を含むことを特徴とする、エタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノールの製造方法。
本発明により、安全性及び製造コストの点で好適であって優れた消毒力を備えたエタノールを含む消毒用組成物を提供することを可能となる。
本発明により例えば、エタノール含有量を低減したにも関わらず優れた消毒作用を備えたエタノールを含む消毒用組成物の提供が可能となり、製造コスト上の利点を有する消毒用エタノールの提供が可能となる。また、本発明に係る消毒用組成物に含まれるエタノール以外の有効成分は、スギ葉由来の天然植物成分であるため安全性が高く、また揮発性化合物であるため散布後に対象に残存しにくいため、幅広い消毒殺菌用途への使用が可能となる。
更に本発明の一形態によれば、例えば、スギ葉揮発性化合物の蒸留とエタノール蒸留とを同一の蒸留工程で実現可能であるため、エタノールを含む消毒用組成物の製造コストの点で利点を有する。また、本発明に係る消毒用組成物はバイオエタノール製造工程における発酵液から製造することも可能であり、再生可能資源の有効利用の点でも好適である。
更に本発明の一形態によれば、例えば、本発明に係る消毒用組成物は清々しく爽快な香料成分を含有するものであるため、芳香用途への使用も可能である。
実施例3に係る大腸菌に対する消毒試験での生菌数測定結果をコロニー形成単位にて評価した結果図である。
実施例4に係る黄色ブドウ球菌に対する消毒試験での生菌数測定結果をコロニー形成単位にて評価した結果図である。
実施例5に係る酵母に対する消毒試験での生菌数測定結果をコロニー形成単位にて評価した結果図である。
実施例6に係るスギ植物原料の相違を示す比較試験において、大腸菌に対する消毒試験での生菌数測定結果をコロニー形成単位にて評価した結果図である。
実施例7に係る蒸留手法の相違を示す比較試験において、ガスクロマトグラフィー分析にて得られたクロマトグラムを示す結果図である。各図の縦軸はシグナル強度を、横軸は保持時間(分)を示す。図中の符号Sは標準物質のピークを示す。図中の各符号が表す数字はその矢印が示すピークの保持時間を示す。図5A:スギ葉水蒸気蒸留物を分析した結果図。図5B:スギ葉エタノール蒸留物を分析した結果図。
実施例9に係る蒸留手法の相違を示す比較試験において、大腸菌に対する消毒試験での生菌数測定結果をコロニー形成単位にて評価した結果図である。
本発明は、安全性及び製造コストの点で好適であって優れた消毒力を備えたエタノールを含む消毒用組成物及びその製造方法に関するものである。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中において含水エタノール又はエタノール水溶液等の濃度を示す「%」表記は、水溶液におけるエタノール含有率を体積%(%(v/v))として示したものである。
また、本発明に係る製造方法においては、本発明に係る技術的特徴が奏する作用効果を実質的に妨げるものでなければ、下記に記載した工程以外の他の工程を含むことを除外するものではない。また、本発明に係る技術的範囲に関して、必須工程以外については下記工程を全て含む態様に限定されるものではない。
1.スギ葉エタノール蒸留物の製造方法
本発明に係るエタノールを含む消毒用組成物は、スギ葉エタノール蒸留物を有効成分として含有してなる消毒用組成物である。ここで有効成分であるスギ葉エタノール蒸留物は下記に記載の工程により製造することが可能である。
即ち、本発明に係る製造方法は、スギ葉に由来する揮発性化合物を含む蒸留物の製造方法であって、(工程1)スギ葉又はその加工物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物を回収する工程、を含むことを特徴とするスギ葉エタノール蒸留物の製造方法に関するものである。
[植物体原料]
本発明に係る製造方法は、有効成分の蒸留原料である植物体原料として、スギ葉又はその加工物を用いることを特徴とする方法である。ここで「スギ葉」とは、ヒノキ科スギ亜科スギ属(Cryptomeria)に属する植物種の常緑針葉樹の葉を指すものである。現生のスギ属の構成種は1属1種であるため、具体的にはスギ(Cryptomeria japonica)の葉を指すものである。
本発明に係る有効成分の蒸留原料はスギ葉である。原料としてはスギ葉のみを用いることが好適であるが、実際の態様においてはスギ葉を含む植物体であれば良く、例えばスギ葉以外の他の植物体を含むものであっても原料として使用可能である。例えば、スギの枝等を含む状態であっても良い。また、スギ以外の他の種類の植物種の植物体を含むものであっても良い。
ここで、原料として採取するスギ葉の状態としては、若葉、成葉、摘葉した状態の葉、及び比較的新しい枯葉まで、様々な状態にある葉を用いることが可能であるが、好ましくは精油等の揮発性化合物成分の含有割合の高い状態の葉を多く含むものが好適である。好ましくは健全に生育中であるスギ葉の若葉や成葉を用いることが好適である。また、花芽や球果原基等を含むものを採取することも可能である。なお、採取状態としてスギ花粉を形成した雄花を含む状態又は飛散したスギ花粉が付着した状態のものを採取した場合、雄花や付着したスギ花粉を除外する操作や処理をしてから用いることが好適である。
なお、本発明に係る消毒作用効果等とは直接的には関係のない理由であるが、アレルギー物質等の不要な混入を避ける意味では、好ましくはスギ花粉を付けていない時期に採取することが望ましい。
ここで、本発明に係る有効成分の蒸留原料としてスギ葉を実質的に含まないスギ植物体部位を用いた場合、本発明に係る消毒力向上作用を備えた蒸留物を得ることができないため好適でない。
採取したスギ葉又はスギ葉を含む原料は、必要に応じて水等で洗浄して付着物を除去しておくことが好適である。また、保管する場合は、低温、暗所、通風が好適な場所等の植物体の鮮度保管に適した場所にて保管することが望ましい。なお、冷凍等を行うことなく保管する場合では、揮発性化合物の揮発による消失を防止する観点から原料採取後の保管期間は10日以内、好ましくは7日以内とすることが好適である。
また、本発明に係る蒸留原料としては、スギ葉を加工して調製したスギ葉加工物を用いることが可能である。ここには上記スギ葉又はスギ葉を含む原料を加工処理して得たものが含まれる。スギ葉加工物としては例えば、上記スギ葉又はスギ葉を含む原料を裁断、破砕、粉砕、磨砕、擂潰、粉末化、乾燥化、冷凍等を行った処理物が含まれる。
また、上記スギ葉又はスギ葉を含む原料の搾汁、搾汁残渣、ピューレ、これらの乾燥物等が含まれる。また、上記スギ葉又はスギ葉を含む原料を予めエタノール又はエタノールを含む水溶液にて抽出した抽出液、濃縮液、乾燥物等のエタノール抽出物等も当該スギ葉加工物に含まれる。ここで抽出操作等については常法にて行うことが可能である。
本発明に係る製法においては、揮発性化合物の揮発消失を防止する観点から、裁断、粉砕、磨砕、擂潰、搾汁、搾汁残渣回収、等の生葉の状態に準じた加工状態のものを用いることが好適である。より好ましくは裁断や粉砕等により1mm〜5cm程度に断片化された生葉に近い加工状態のものを用いることが好適である。
[蒸留工程]
本発明に係る製造方法は、エタノール溶液又はエタノールを含む水溶液に上記植物体原料を含む状態にして蒸留を行うことを特徴とする方法である。
蒸留溶媒
本発明に係る蒸留工程では、エタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留溶媒として用いる。蒸留溶媒に用いる溶液のエタノール濃度としては、実質的にエタノールを含む濃度であれば使用可能であり低濃度であっても有効成分の蒸留回収が可能である。好ましくは5%(v/v)以上、より好ましくは10%(v/v)以上のエタノール含有率のエタノールを含む水溶液であれば好適に使用可能である。当該溶液のエタノール含有率の上限としては特に制限はなく100%(v/v)のものや99.5%(v/v)のものを用いることも可能であるが、原料エタノールを低減する点では60%(v/v)以下、好ましくは50%(v/v)以下のものを使用することが好適である。
ここで蒸留溶媒として用いるエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液としては、水以外の主成分として実質的にエタノールを含む溶液であれば良い。得られた蒸留物の消毒力向上作用や安全性等に実質的に悪影響が無い限りは、他の成分や化合物を含むものであっても良いが、好ましくは水とエタノール以外のものを実質的に含まない溶媒であることが好適である。
本発明に係る蒸留溶媒としては、通常のエタノール原料を用いて調製することが可能である。原料エタノールとしては、発酵エタノール、合成エタノール、バイオエタノール、精製エタノール等の通常のものを使用可能であるが、消毒殺菌用途に応じた安全性を担保できる品質のものを採用することが好適である。
バイオエタノール製造工程を利用する態様
本発明に係る蒸留溶媒としては、バイオエタノールの製造工程におけるエタノール発酵液又は当該発酵液に由来するエタノール含有溶液を蒸留溶媒として用いることが可能である。当該バイオエタノール製造工程での発酵液等を用いる態様としては、詳しくは、バイオエタノールの製造工程において、原料の糖化及びエタノール発酵を行って得た発酵液等を用いることが可能である。
ここでバイオエタノールの製造原料である植物原料としては、エタノール発酵によるエタノール含有溶液が得られるものであれば特に制限なく利用可能であるところ、再生可能資源の有効利用の観点を踏まえると、間伐材や稲わら等の低価格で再生可能なバイオマス原料を用いる製法であることが好適である。
本発明に係る蒸留溶媒として使用可能なバイオエタノール製造工程の発酵液等としては、エタノール含有率が上記範囲であるエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液であれば特に制限なく使用可能である。ここで、本発明に係る蒸留溶媒としては、エタノール発酵液をそのまま蒸留溶媒として用いることが可能である。即ち、一般的なバイオエタノール製造工程においては、製造される発酵液等のエタノール濃度は3〜20%(v/v)程度であるため、得られる発酵液等は本発明に係る蒸留溶媒として好適に使用することが可能となる。
また、本発明に係る蒸留溶媒としては、当該発酵液に由来するエタノール含有溶液を用いることも可能である。ここで当該発酵液に由来するエタノール含有溶液としては、例えば、当該発酵液を濾過、固液分離、精製、蒸留、希釈、pH調整、等の処理を行って得た溶液を挙げることができる。
原料配合
本発明に係る蒸留工程においては、スギ葉を含む植物体原料を蒸留溶媒に配合し、当該原料を含有するエタノール溶液又は当該原料を含有するエタノールを含む水溶液を調製する。
なお、バイオエタノール製造工程においてスギ葉を含む植物体原料を配合するタイミングとしては、エタノール発酵後の発酵液又はこれに由来するエタノール含有溶液等に配合することが好適であるが、エタノール発酵前のバイオマス原料等と一緒に予め配合しておくことも可能である。
本発明における上記植物体原料の配合量としては、蒸留工程後に得られる蒸留物に含まれる有効成分含量が十分に担保される配合量であれば特に制限はない。当該植物体原料の配合量としては、具体的には、植物原料中に含まれるスギ葉の生重量に換算して当該原料溶液全液に対して5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であることが好適である。当該範囲にて上記植物体原料を配合した場合、蒸留物が備える消毒力向上作用が十分なものとなり好適である。なお、配合量の上限としては、蒸留操作の実行が可能な量であれば特に制限はないが、例えば植物原料中に含まれるスギ葉の生重量に換算して当該原料溶液全液に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下を挙げることができる。
植物原料を配合した後の溶液は、当該原料が溶媒中に浸漬した状態等になっていれば良いが、混合操作等を行って溶液中に均質になるようにすることが望ましい。
蒸留条件
本発明に係る蒸留工程においては、上記植物体原料を含有するエタノール溶液又は上記植物体原料を含有するエタノールを含む水溶液に対して蒸留を行う。本発明に係る蒸留工程は、スギ葉揮発性化合物の揮発蒸留を溶媒に含まれるエタノール蒸留と同一工程にて行うことを特徴とする。ここで、当該蒸留を水蒸気蒸留等の他の蒸留手段にて行った場合、本発明に係る消毒力向上作用を奏する蒸留物を得ることができず好適でない。
本発明に係る蒸留は、揮発性の高いエタノールを利用したエタノール蒸留であるため、より低い温度での揮発を促進するために減圧蒸留を行うことが可能となる。本発明に係る蒸留で好適な減圧蒸留としては常圧(大気圧)である1000hPaを半減させた程度の圧力条件であれば十分であるが、好ましくは500hPa以下、より好ましくは300hPa以下、更に好ましくは250hPa以下であることが好適である。下限としては例えば、50hPa以上、好ましくは100hPa以上を挙げることができる。
当該減圧蒸留を行った場合、揮発温度の低下により低温での蒸留が実現される。具体的には10〜90℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは30〜60℃程度での低温蒸留が実現される。なお、ここで水蒸気蒸留を常圧(大気圧)である1000hPaで行った場合、その蒸留温度は通常では100℃程度の高温となる。
回収
本発明に係る蒸留工程は、上記蒸留操作の後に蒸留物を回収する操作を含む方法である。即ち、本発明においては上記蒸留操作により原料溶液から揮発して分離したスギ葉由来揮発性化合物を冷却により液化させて回収する。当該冷却は外気による自然冷却で行うことが可能である。
ここで、本発明に係る蒸留工程においては、スギ葉由来揮発性化合物とエタノールの揮発挙動が類似するため、スギ葉エタノール蒸留物(スギ葉揮発性化合物)は、エタノール蒸留との同一操作により蒸留されたエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液中に回収される。当該態様では同一の蒸留工程にてスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含む溶液を回収することが可能となるため、蒸留工程に要するエネルギー及び操作労力の簡略化が可能となる。
即ち、本発明に係る蒸留工程においては、スギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を同時に回収する操作を含むものとなる。
再蒸留、希釈、精製、その他
本発明においては、上記蒸留工程にて得られたスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含む溶液について各種処理等を行って所望の溶液を調製することが可能である。
例えば、再蒸留操作を行ってスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールの含有率を更に高めた溶液を調製することが可能である。また、再蒸留操作を複数回行ってこれらの含有率を更に濃度を高めた溶液を調製することも可能である。
また、希釈操作を行って、スギ葉エタノール蒸留物及びエタノールの含有率を低減させた溶液を調製することも可能である。ここで、エタノール又は含水エタノールを用いて希釈操作を行った場合、スギ葉エタノール蒸留物の濃度とエタノール濃度を所望の比率になるように調整した溶液とすることも可能である。
本発明におけるスギ葉エタノール蒸留物は、上記蒸留操作により蒸留エタノール中に回収される蒸留組成物である。そのため、当該蒸留物をそのまま消毒用組成物として又は消毒組成物の原料として使用することが可能であるところ、更なる分離操作を行ってスギ葉エタノール蒸留物を精製分離することも可能である。
精製処理としては、蒸留エタノールからの揮発性化合物の分離精製が可能であれば常法の技術を用いて行うことが可能である。例えば、シリカゲル、多孔性セラミック、合成樹脂等を用いた吸着処理により行うことができる。また、カチオン性樹脂又はアニオン性樹脂を用いたイオン交換処理により行うこともできる。また、メンブレンフィルター膜、限外濾過膜、逆浸透膜、電気透析膜、機能性高分子膜等を用いた膜分離処理により行うことができる。
得られた溶液については、濾過、固液分離、精製、pH調整等の各処理を行うことも可能であり、再度の蒸留、希釈、精製等を再度行うことも可能である。また、本発明に係る作用効果に実質的に悪影響が無い限りは、酸化防止剤、色素剤、香料剤、pH調整剤、増粘多糖類、その他添加素材等を配合することも可能であるが、消毒殺菌用途の汎用性を踏まえると余分な成分を含まない方が好適である。
本段落に記載した各処理は最終段階だけでなく、各処理前や処理間に適宜行うことも可能である。また、所望の処理を組み合わせて行うことも可能であり、所望の処理を複数回行うことも可能である。
2.スギ葉エタノール蒸留物
本発明においては、上記段落1.に記載の製造方法によりスギ葉エタノール蒸留物を得ることができる。本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の特徴は次の通りである。なお、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物としては、本発明に係る技術的特徴が奏する作用効果を実質的に妨げるものでなければ、下記に記載した特徴以外の他の特徴を含むことを除外するものではない。
本発明に係る「スギ葉エタノール蒸留物」とは、スギ葉を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液について蒸留操作を行って回収した蒸留物を指すものである。当該蒸留物は上記段落1.に記載の蒸留条件においてはエタノールと同様の揮発挙動を示すため、蒸留エタノール溶液又は蒸留エタノールを含む水溶液中に一緒に回収される。即ち、スギ葉エタノール蒸留物としては、原料であるスギ葉に対して蒸留溶媒としてエタノールを実質的に含む溶液を用いての蒸留物であれば当該エタノール蒸留物に含まれる。また、植物体原料としてはスギ葉を含むものであれば良く、スギ葉以外の他の植物体を含むものを用いて得た蒸留物も含まれる。
[組成的特徴]
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、上記段落1.に記載の条件にてスギ葉をエタノール蒸留した場合に得られるスギ葉由来揮発性化合物で構成される組成的特徴を備えた蒸留組成物である。本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、原料及び蒸留操作の組み合わせが新規であり、得られる製造物であるスギ葉エタノール蒸留物は新規の組成的特徴を備えた組成物である。
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物を構成する含有化合物の組成は、先行技術であるスギ葉水蒸気蒸留物と比較してその組成的特徴が大きく異なる。具体的には、スギ葉エタノール蒸留物を構成する揮発性化合物の組成的特徴としては、スギ葉水蒸気蒸留物には含まれない又は検出限界以下である揮発性化合物の主要成分を2成分以上含む組成的特徴を有する。
即ち、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物としては、組成的特徴に関して下記(i)に記載の特徴を有する;
(i)下記比較試料とのポリエチレングリコールカラムを用いた昇温条件でのガスクロマトグラフィーによる比較分析を行った場合において、下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物よりも短い保持時間を示す主要ピークにて示される化合物を少なくとも2成分、より好ましくは2成分含有する。
なお、当該揮発性化合物として具体的には、本願明細書実施例7に記載の条件と同様にしてGC分析を行った場合において、保持時間2.4分及び3.9分のピークに相当する化合物を指す。当該成分は当該蒸留物の構成化合物の中では相対的に揮発温度が低い物質であると推定される。
また、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、スギ葉水蒸気蒸留物に含まれるスギ葉由来揮発性化合物の中で以下に示す揮発性化合物の主要成分の1つを、スギ葉水蒸気蒸留物よりも高含量する組成的特徴を有する。
即ち、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物としては、組成的特徴に関して下記(ii)に記載の特徴を有する;
(ii)下記比較試料とのポリエチレングリコールカラムを用いた昇温条件でのガスクロマトグラフィーによる比較分析を行った場合において、下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物の中で最も長い保持時間を示す主要ピーク群のうちの1つとして示される化合物を、下記比較試料の含量より高含有する。
なお、当該揮発性化合物として具体的には、本願明細書実施例7に記載の条件と同様にしてGC分析を行った場合において、保持時間15.7分のピークに相当する化合物を指す。当該成分は当該蒸留物の構成化合物の中では相対的に揮発温度が高い物質であると推定される。
また、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、スギ葉水蒸気蒸留物に含まれるほとんどの揮発性化合物を含まない又は低含量でしか含まない組成的特徴を有する。
即ち、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物としては、組成的特徴に関して下記(iii)に記載の特徴を有する;
(iii)下記比較試料とのガスクロマトグラフィーによる比較分析を行った場合において、下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物の揮発性化合物を示す主要ピークにて示される多くの化合物を含まない又は下記比較試料の含量より低含量でしか含まない。
当該化合物として具体的には、本願明細書実施例7に記載の条件と同様にしてGC分析を行った場合において、保持時間6.3分〜13.1分の間のピークに相当する化合物であって、比較試料中の揮発性化合物の最大ピークに対して1/4以上、好ましくは1/5以上、より好ましくは1/7以上のシグナル強度のピークが示す化合物を指す。また、当該化合物として具体的には、本願明細書実施例7に記載の条件と同様にしてGC分析を行った場合において、保持時間6.3分〜13.1分の間のピークに相当する化合物であって、保持時間12.6分のピークに相当する化合物以外の化合物を指す。
ここで上記(i)〜(iii)に記載の「比較試料」としてはスギ葉水蒸気蒸留物を指す。具体的には次のものを指す。
(比較試料)裁断したスギ葉を水蒸気蒸留して得たスギ葉水蒸気蒸留物。より具体的には、裁断したスギ葉20gに水蒸気を通して100℃にて1000hPa条件で水蒸気蒸留し、揮発して分離したスギ葉由来揮発性化合物を冷却により液化させて回収したスギ葉水蒸気蒸留物。
また、本明細書中「主要ピーク」という用語は、ノイズとは明らかに区別されてシグナルとして検出されたメジャーピークを意味する。具体的には本願明細書実施例7において明確なシグナルとして検出されたピークを指す。ここで微小なマイナーピークについては、ノイズとの判別確実性を考慮して主要ピークには含めないことが好適である。
ここで、本発明に係る蒸留物に関して、消毒力向上作用を奏するスギ葉エタノール蒸留物の組成的特徴を本発明者が本願実施例にて解明したところ、その原因化合物である特定物質の同定までは現時点では不明である。ここで、本願出願時における当該状況において原因化合物の同定等を行うためには、更なる化合物スクリーニング実験や質量分析装置等の分析装置等が必要であり、特許出願の迅速性と勘案して分析に時間を要する。
従って、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物に関する発明においては、請求項中の文言に物を生産する工程を含むものであっても、当該記載のみによって発明内容を不明確とする技術的特徴には該当しないものと認められる。
[作用効果]
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、エタノール共存下においてそのエタノールの消毒作用を劇的に向上させる作用を発揮する蒸留組成物である。即ち、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物を、エタノールを含む溶液に含有する状態とすることによって、当該溶液全体が優れた消毒用組成物として機能させることが可能となる。
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の有効成分としては、スギ葉エタノール蒸留物が有する化合物組成によって奏される作用と推定される。特にはスギ葉水蒸気蒸留物には含まれないスギ葉エタノール蒸留物に特徴的に含まれる上記(i)及び/又は(ii)に記載の揮発性化合物によって奏される作用と推定される。
ここで、先行技術であるスギ材エタノール蒸留物には、本発明に係る消毒力向上作用が全く認められないことから(本願明細書実施例6参照)、また本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の有効成分はスギ葉に特有に含まれる揮発性化合物によって奏される作用であると認められる。
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物が奏する効果は、エタノール溶液又はエタノールを含む水溶液に含有させた状態にした場合において、エタノールの消毒作用を劇的に向上させて短時間の接触によって対象微生物等の殺菌を達成可能とする作用である。即ち、本発明にて発揮される消毒力向上作用は、対象微生物との短時間の接触による殺菌作用の増強作用であって、長時間の接触培養によって発揮される増殖抑制による抗菌作用とは異なる作用機序を介して発揮される作用であると認められる(本願明細書実施例3〜5参照)。
本発明に係る消毒力向上作用は、スギ葉エタノール蒸留物をエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液に含有させた状態にした場合において発揮される。
例えば、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物としては下記に記載の特徴を有する;
当該スギ葉エタノール蒸留物及び25%(v/v)エタノールを含有してなる水溶液を調製し、実施例3に記載の方法と同様にして大腸菌への消毒試験を行った際に、当該消毒処理後の溶液での生菌数を示す値が1.5×10cfu/mL以下(比較試験の1万分の1以下)、好ましくは1.5×10cfu/mL以下(比較試験の10万分の1以下)、より好ましくは1.5×10cfu/mL以下(比較試験の100万分の1以下)を挙げることができる。最も好ましくは0cfu/mL(滅菌状態)であることが最適である。
なお、ここで比較試験とは実施例3の試料3−1である25%(v/v)エタノール水溶液のみを使用した試験を指す。
本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、スギ葉エタノール蒸留物からなる又は含有してなるエタノール消毒作用向上用組成物の形態として利用することが可能である。また、当該組成物をエタノール消毒作用向上剤として利用することも可能である。
ここで、エタノール消毒作用向上用組成物の形態としては、エタノールを含む溶液に添加が可能な形態であれば特に制限はなく採用することが可能である。当該組成物形態としては上記段落1.に係る蒸留工程で回収又は調製された液体状又はこれに準じた粘性液状、ペースト状、ゲル状等であることが好適である。また、上記段落1.にてスギ葉エタノール蒸留物を分離精製した場合は、液体状だけでなく固体状や粉末状等の形状を採用することが可能である。
エタノール消毒作用向上用組成物の用法としては、当該組成物をエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液に含有した状態にすることによって、その溶液のエタノール消毒作用の向上効果が発揮され、高い消毒力が実現される。
また、本発明においては、上記作用効果が発揮される工程を特徴とするエタノールの消毒作用向上方法に関する発明とすることも可能である。
また、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、上記消毒力向上作用に加えて優れた芳香作用を奏する蒸留組成物である。具体的には、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、その組成的特徴から清々しく爽快な匂い特性を備えた組成物である。
ここで、先行技術であるスギ葉水蒸気蒸留物にもスギ由来の揮発性化合物が含まれるところ、当該蒸留物には爽やかな芳香効果は認められず逆に不快臭を伴う臭気を発する。この点、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物が備える芳香作用は、当該蒸留物を構成する含有化合物の組成的特徴によって奏される作用効果であると認められる。
3.消毒用組成物
本発明に係るエタノールを含む消毒用組成物は、上記段落1.に記載の製造工程にて得られたスギ葉エタノール蒸留物を有効成分として含有してなる消毒用組成物である。
[配合等]
本発明に係る消毒用組成物は、上記段落1.に記載の製造工程にて得られたスギ葉エタノール蒸留物、及び、エタノール、を含有してなることを特徴とする消毒用組成物に関するものである。好ましくは前記スギ葉エタノール蒸留物、エタノール、及び水を含有してなることを特徴とする消毒用組成物に関するものである。
本発明に係る消毒用組成物は、エタノールを含む消毒用組成物であって消毒殺菌用途に利用する組成物を指すものである。具体的にはエタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノール等を指すものである。
本発明に係る消毒用組成物に含まれるエタノールの原料としては、好ましくは上記段落1.の蒸留工程にてスギ葉由来の揮発性化合物と一緒に蒸留及び回収した蒸留エタノールを利用することが好適である。当該態様では同一の蒸留工程でスギ葉揮発化合物の蒸留とエタノール蒸留とが実現可能となるため、蒸留工程に要するエネルギー及び操作労力の簡略化が可能となる。
また、本発明においては、消毒用組成物の調製時においてエタノールを別途に配合することも可能である。当該別途に配合するエタノールは、スギ葉エタノール蒸留物を含有する蒸留エタノール溶液又は蒸留エタノールを含む水溶液に更に配合することも可能である。また、蒸留エタノールと分離精製したスギ葉エタノール蒸留物に対して配合することも可能である。
ここで、本発明に係る消毒用組成物に配合するエタノールとしては、例えば、発酵エタノール、合成エタノール、バイオエタノール、精製エタノール等の通常のものを使用することが可能であるが、消毒殺菌用途に応じた安全性の担保が可能な品質のものを採用することが好適である。
本発明に係る消毒用組成物に含有されるエタノール濃度としては、低濃度であっても特に制限はないところ、通常の消毒用エタノール等において消毒力が期待できない50%(v/v)程度以下の低エタノール濃度であっても優れた消毒力を発揮する性質を備えており、エタノールの消毒力が劇的に向上した消毒用組成物となる。
ここで、消毒用エタノールとして一般的には、65〜90%(v/v)程度のエタノール水溶液を消毒用に利用することが一般的であり、日本薬局方ではエタノール含量76.9〜81.4%(v/v)との規格が定められている。
この点で、本発明に係るエタノールを含む消毒用組成物は、一般的な消毒用エタノールよりもエタノール含量を大幅に削減した場合であっても優れた消毒作用を発揮することが可能であり、エタノール含有率が少ない消毒用組成物の実現が可能となる。
即ち、本発明に係る消毒用組成物に含有されるエタノール濃度の下限としては例えば10%以上、より好ましくは20%(v/v)以上、更に好ましくは25%(v/v)以上、特に好ましくは30%(v/v)以上であることが好適である。
本発明に係る消毒用組成物におけるエタノール濃度の上限としては、特に制限なく高濃度のものを使用可能であるが、エタノールの物性の点で水存在下の方が細胞膜変性と細胞内圧上昇が発揮されやすくなるため、一定より低いエタノール濃度の水溶液であることが好適である。好ましくは99.5%(v/v)以下、より好ましくは90%(v/v)以下、更に好ましくは85%(v/v)以下であることが望ましい。
また、本発明に係る消毒用組成物としては、上記理由により水を含む組成物であることが望ましい。水の含有率としては、消毒用組成物を構成するエタノール及びスギ葉エタノール蒸留物以外の構成が水であることが望ましい。
本発明に係る消毒用組成物におけるエタノールの濃度調製手段としては、具体的には蒸留操作、エタノール添加操作、水等での希釈操作等によって所望のエタノール濃度の溶液を調製して得ることが可能である。
本発明に係る消毒用組成物は、スギ葉エタノール蒸留物を有効成分として含有してなる消毒用組成物である。スギ葉エタノール蒸留物としては、上記段落1.に記載の条件にてスギ葉をエタノール蒸留した場合に得られるスギ葉由来揮発性化合物を含んでなる蒸留組成物を挙げることができる。
本発明に係る消毒用組成物におけるスギ葉エタノール蒸留物の含有率としては、本発明に係る消毒用組成物のエタノール濃度が低濃度の場合であっても優れた消毒作用を発揮する含有率であれば特に制限なく採用することが可能である。例えば、本発明に係る消毒用組成物としては、下記に記載の力価を発揮するようにスギ葉エタノール蒸留物を含むことが望ましい。
ここで当該消毒作用の力価の基準としては、消毒用組成物におけるエタノール濃度を25%(v/v)として本願明細書実施例3に記載の方法と同様にして大腸菌への消毒試験を行った際に、当該消毒処理後の溶液での生菌数を示す値が1.5×10cfu/mL以下(比較試験の1万分の1以下)、好ましくは1.5×10cfu/mL以下(比較試験の10万分の1以下)、より好ましくは1.5×10cfu/mL以下(比較試験の100万分の1以下)となる力価を挙げることができる。最も好ましくは0cfu/mL(滅菌状態)となる力価であることが最適である。ここで比較試験とは実施例3の試料3−1である25%(v/v)エタノール水溶液のみを使用した試験を指す。
本発明に係る消毒用組成物の形態としては、消毒剤又は消毒用エタノール等として利用可能な形態であれば特に制限はないが、エタノールの消毒作用の発揮を考慮すると液体状であることが好適である。また、用途に応じては液体状に準じた粘性液状、ペースト状、ゲル状等を採用することも可能である。
なお、本発明に係る消毒用組成物としては、スギ葉エタノール蒸留物とエタノールを含む溶液を別々に分けた物品とし、使用前に又は使用時に両者を混合する消毒用キットの形態を採用することもできる。
また、本発明に係る消毒用組成物としては、本発明に係る作用効果に実質的に悪影響が無い限りは、酸化防止剤、色素剤、香料剤、pH調整剤、増粘多糖類、その他添加素材等を配合することも可能である。また、本発明に係る消毒用組成物に他の殺菌成分やイソプロパノールを配合することも可能である。但し、消毒殺菌用途の汎用性を踏まえると余分な成分を含まない方が好適である。
本発明に係る消毒用組成物は、短時間の接触によって殺菌を実現する優れた消毒作用を発揮し、大腸菌等の原核微生物だけでなく細胞壁に覆われた真菌等の真核微生物に対しても適用可能な強力な消毒作用を発揮する組成物として機能する(本願明細書実施例3〜5参照)。
本発明に係る消毒用組成物は、エタノール含有量を低減したにも関わらず優れた消毒作用を備えた消毒用組成物であるため、原料エタノール使用量低減の観点から製造コスト上の利点を有するエタノールを含む消毒用組成物となる。この点は、特に消毒用エタノール製造においてコスト上の利点となる。
また、本発明に係る消毒用組成物は、有効成分が天然由来の揮発性化合物成分であるため安全性が高く消毒対象に残存しにくい性質を備える。そのため、人体や環境に対して安全性に優れ、幅広い消毒殺菌用途への適用が可能な消毒用組成物である。例えば、医薬、食品、公衆衛生、農業等、様々な用途の消毒殺菌用途に用いることが期待される。
本発明に係る消毒用組成物は、消毒作用に加えて優れた芳香作用を奏する蒸留組成物であることから香料組成物としての用途においても好適に使用可能である。即ち、本発明に係る消毒用組成物は、上記段落1.に記載の製造工程にて得られたスギ葉エタノール蒸留物、及び、エタノール、を含有してなることを特徴とする香料組成物、香料剤、又は香粧品の形態とすることが可能である。
また、消毒作用と芳香作用を兼ねた用途への使用も可能である。即ち、芳香作用を備えた消毒用組成物としての利用が可能である。また、消毒作用を備えた香料組成物としての利用も可能である。
[製造方法]
本発明に係る消毒用組成物の製造方法としては、上記段落1.に記載の製造工程にて得られたスギ葉エタノール蒸留物が、エタノールを含む溶液中に含有した状態になる工程を含む方法であれば如何なる方法を採用することが可能である。
即ち、発明に係る消毒用組成物の製造方法としては、(工程1)スギ葉又はその加工物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物を回収する工程、を含むことを特徴とする消毒用組成物の製造方法である。また、本発明では、当該製造方法を、エタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノールの製造方法とすることもできる。
本発明に係る消毒用組成物の製造方法としては、好ましくは上記段落1.の蒸留工程にてスギ葉由来の揮発性化合物と一緒に蒸留及び回収した蒸留エタノールを利用することが好適である。当該態様では、同一の蒸留工程にてスギ葉揮発化合物の蒸留とエタノール蒸留とを実現可能であるため、蒸留工程に要するエネルギー及び操作労力の簡略化が可能となる。
また、本発明に係る消毒用組成物の製造方法としては、予め調製したスギ葉エタノール蒸留物又はスギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノールを含む溶液に対して、別途にエタノールを配合することによって消毒用組成物を調製することも可能である。
また、上記段落1.に記載と同様にして再蒸留、希釈操作(水、エタノール、含水エタノール等)等を行って、スギ葉エタノール蒸留物の濃度とエタノール濃度を所望の比率になるように調整した消毒用組成物として製造することも可能である。
上記工程にて得られた消毒用組成物については、用途に応じて濾過、固液分離、精製、pH調整等の各処理を行うことが可能である。また、本発明に係る作用効果に実質的に悪影響が無い限りは、酸化防止剤、色素剤、香料剤、pH調整剤、増粘多糖類、その他添加素材等を配合することも可能であるが、消毒殺菌用途の汎用性を踏まえると余分な成分を含まない方が好適である。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]『スギ葉エタノール蒸留物を含有する蒸留エタノールの製造』
スギ葉を含むエタノールからの蒸留操作により、スギ葉由来揮発性成分を含む蒸留エタノールを調製した。
(1)「スギ葉の採取」
花粉の付いていない時期(2014年6月中旬)に地上から150〜200cm付近のスギ葉を採取し、ハサミで5mmの長さに裁断した。
(2)「蒸留工程」
10%(v/v)エタノール水溶液200mLの入った1L容量ナス型フラスコに上記(1)に記載の裁断スギ葉を20g加えた。含水エタノールである10%(v/v)エタノール水溶液は通常の試薬エタノール(試薬特級エタノール99.5%、和光純薬株式会社)を水で希釈して用いて調製した。これを60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行って蒸留液を得て、スギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液として回収した。
[実施例2]『バイオエタノール製造工程における応用』
実施例1に記載の製造方法を応用して、バイオエタノール製造工程で得られた発酵液を用いた蒸留操作によりスギ葉由来揮発成分を含む蒸留エタノールを調製した。
(1)「スギ材粉砕物からのバイオエタノール製造」
スギ材を高衝撃付加ミルで粉砕して微粉末状のスギ材粉砕物を調製した。当該スギ材粉砕物を22重量%にて含む0.1モル/L酢酸緩衝液50mLを調製し、懸濁状態にした。ここにメイセラーゼ(Meiji Seikaファルマ株式会社)及びヘミセルラーゼC(天野エンザイム株式会社)をそれぞれ0.12重量%となるように添加し、更にSaccharomyces cerevisiae NBRC0224株を植菌して、30℃で並行複発酵を行ってエタノール濃度5%(v/v)の発酵液を得た。発酵液を60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行い、エタノール濃度20%(v/v)に蒸留濃縮した発酵液を調製した。
(2)「蒸留工程」
上記(1)にて調製した蒸留濃縮後の発酵液200mLを1L容量ナス型フラスコに入れ、実施例1にて調製した裁断スギ葉20gを加えた。これを60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行って蒸留液を得て、スギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液として回収した。
[実施例3]『大腸菌に対する消毒試験』
上記実施例にて製造したスギ葉エタノール蒸留物を含有する蒸留エタノールについて、大腸菌への消毒作用を検証した。
(1)「菌液調製」
Escherichia coli NBRC3972株を乳糖ブイヨン液体培地(日本水産株式会社製)で37℃24時間振盪培養して、大腸菌培養液を調製した。
(2)「消毒試験」
調製した大腸菌培養液0.5mLを、表2に示す含水エタノール溶液4.5mlに添加して30秒間の懸濁による消毒処理を行った。ここで試料3−1である25%(v/v)エタノール水溶液としては、試薬エタノール(試薬特級エタノール99.5%、和光純薬株式会社)を希釈して用いた。試料3−2であるスギ葉エタノール減圧蒸留物を含有する25%(v/v)エタノール水溶液としては、実施例1にて製造したものを用いて調製した。消毒処理後、即座に0.5mLを採取して滅菌水にて希釈することにより消毒処理を停止させた。
(3)「生菌数測定」
上記希釈液を上記(1)に記載の培地組成の寒天培地プレートに塗布して静置培養し、生菌数測定を行って希釈前懸濁液におけるコロニー形成単位に換算した値を算出した。結果を表2及び図1に示した。
その結果、比較試料である25%(v/v)エタノール水溶液(試料3−1)を用いて消毒処理を行った場合、消毒処理後の溶液であるにも関わらず1.5×10cfu/mLに相当する大腸菌の増殖が確認された。即ち、エタノール含有率の低い含水エタノールのみでは消毒作用が不十分であることが確認された。
一方、スギ葉エタノール蒸留物を含有する25%(v/v)エタノール水溶液(試料3−2)を用いた場合、消毒処理後の溶液での生菌数は0cfu/mLであった。即ち、当該試料を用いた消毒処理後の溶液からは大腸菌の増殖が確認されなかった。
以上の結果から、スギ葉エタノール蒸留物はエタノールとの共存条件下において強力な消毒殺菌作用を発揮する組成物であることが示された。ここで、当該消毒作用はエタノールとの共存下での30秒間に大腸菌の増殖を抑制する作用であることから、継続的な培養条件下での増殖抑制による抗菌作用とは異なる作用機序によって奏されるものと考察された。
これらの知見から、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液は、エタノール含有率の低い水溶液であっても強力な消毒剤として利用可能であることが示された。
[実施例4]『食中毒菌に対する消毒試験』
上記実施例にて製造したスギ葉エタノール蒸留物を含有する蒸留エタノールについて、食中毒菌である黄色ブドウ球菌への消毒作用を検証した。
(1)「菌液調製」
Staphylococcus aureus NBRC12732株を液体培地(酵母エキス0.2重量%、ポリペプトン1重量%、硫酸マグネシウム0.01重量%)で37℃24時間振盪培養して、黄色ブドウ球菌培養液を調製した。
(2)「消毒試験」
調製した黄色ブドウ球菌培養液0.5mLを、表3に示す含水エタノール溶液4.5mlに添加して30秒間の懸濁による消毒処理を行った。ここで試料4−1である40%(v/v)エタノール水溶液としては、実施例3と同様に通常の試薬エタノールを希釈して用いた。試料4−2であるスギ葉エタノール蒸留物を含有する40%(v/v)エタノール水溶液としては、実施例1にて製造したものを用いて調製した。消毒処理後、即座に0.5mLを採取して滅菌水にて希釈することにより消毒処理を停止させた。
(3)「生菌数測定」
上記希釈液を上記(1)に記載の培地組成の寒天培地プレートに塗布して静置培養し、生菌数測定を行って希釈前懸濁液におけるコロニー形成単位に換算した値を算出した。結果を表3及び図2に示した。
その結果、比較試料である40%(v/v)エタノール水溶液(試料4−1)を用いて消毒処理を行った場合、消毒処理後の溶液であるにも関わらず1.3×10cfu/mLに相当する黄色ブドウ球菌の増殖が確認された。即ち、エタノール含有率の低い含水エタノールのみでは消毒作用が不十分であることが確認された。
一方、スギ葉エタノール蒸留物を含有する40%(v/v)エタノール水溶液(試料4−2)を用いた場合、消毒処理後の溶液での生菌数は0cfu/mLであった。即ち、当該試料を用いた消毒処理後の溶液からは黄色ブドウ球菌の増殖が確認されなかった。
以上の結果から、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液は、食中毒菌に対する消毒殺菌においても好適に利用可能であることが示された。
[実施例5]『真核微生物に対する消毒試験』
上記実施例にて製造したスギ葉エタノール蒸留物を含有する蒸留エタノールについて、真核微生物である酵母への消毒作用を検証した。
(1)「菌液調製」
Saccharomyces cerevisiae NBRC216株をYPD液体培地(グルコース2重量%、ポリペプトン2重量%、酵母エキス1重量%)で28℃24時間振盪培養して、酵母培養液を調製した。
(2)「消毒試験」
調製した酵母培養液0.5mLを、表4に示す含水エタノール溶液4.5mlに添加して30秒間の懸濁による消毒処理を行った。ここで試料5−1である30%(v/v)エタノール水溶液としては、実施例3と同様に通常の試薬エタノールを希釈して用いた。試料5−2であるスギ葉エタノール蒸留物を含有する30%(v/v)エタノール水溶液としては、実施例1にて製造したものを用いて調製した。消毒処理後、即座に0.5mLを採取して滅菌水にて希釈することにより消毒処理を停止させた。
(3)「生菌数測定」
上記希釈液を上記(1)に記載の培地組成の寒天培地プレートに塗布して静置培養し、生菌数測定を行って希釈前懸濁液におけるコロニー形成単位に換算した値を算出した。結果を表4及び図3に示した。
その結果、比較試料である30%(v/v)エタノール水溶液(試料5−1)を用いて消毒処理を行った場合、消毒処理後の溶液であるにも関わらず2.9×10cfu/mLに相当する酵母の増殖が確認された。即ち、エタノール含有率の低い含水エタノールのみでは消毒作用が不十分であることが確認された。
一方、スギ葉エタノール蒸留物を含有する30%(v/v)エタノール水溶液(試料5−2)を用いた場合、消毒処理後の溶液での生菌数は0cfu/mLであった。即ち、当該試料を用いた消毒処理後の溶液からは酵母の増殖が確認されなかった。
以上の結果から、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物を含有するエタノール水溶液は、真核微生物に属する微生物に対する消毒殺菌においても好適に利用可能であることが示された。
[実施例6]『スギ植物体原料の採取部位による消毒作用の相違』
上記実施例で示されたスギ葉からエタノール蒸留を行って得た蒸留物について、原料としてスギ材を用いて得た蒸留物との消毒作用の効果の相違を比較した。
(1)「スギ材エタノール蒸留物」
実施例2(1)に記載の方法と同様にしてスギ材粉砕物からのエタノール発酵と蒸留を行ってエタノール濃度5%(v/v)の発酵液を調製した。ここで用いたスギ材粉砕物には樹皮が含まれる粉砕物である。
発酵液中にスギ材粉砕物が入った状態のまま60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行い、エタノール濃度20%(v/v)に蒸留濃縮した蒸留液を調製した。これを再度60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行って濃縮した蒸留液を得て、スギ材エタノール蒸留物を含有する50%(v/v)エタノール水溶液として回収した。
(2)「スギ葉エタノール蒸留物」
実施例2(1)に記載の方法と同様にしてスギ材粉砕物からのエタノール発酵と蒸留を行ってエタノール濃度20%(v/v)に蒸留濃縮した発酵液を調製した。ここに実施例1にて調製した裁断スギ葉20gを加え、60℃で170hPaの条件で減圧蒸留を行って蒸留液を得て、スギ葉エタノール蒸留物を含有する50%(v/v)エタノール水溶液として回収した。
(3)「消毒試験及び生菌数測定」
上記(1)及び(2)にて準備した試料について大腸菌に対する消毒試験及び生菌数測定を行った。試験方法は実施例3に記載の方法と同様にして行った。なお、対照としては水を用いて同様の試験を行った。結果を表5及び図4に示した。
その結果、スギ葉エタノール蒸留物を含有する50%(v/v)エタノール水溶液(試料6−2)を用いた場合、消毒処理後の溶液の生菌数は0cfu/mLであった。即ち、試料6−2に係る溶液ではエタノール含有率が低濃度であるにも関わらず、当該消毒処理後溶液における大腸菌の増殖は検出されなかった。
一方、スギ材エタノール蒸留物を含有する50%(v/v)エタノール水溶液(試料6−1)を用いて消毒処理を行った場合、消毒処理後であるにも関わらず5.8×10cfu/mLに相当する大腸菌の増殖が確認された。当該生菌数を示す値は対照である水を用いた処理を行った場合の値とほぼ同等の値であり消毒作用が不十分であることを示す値であった。
以上の結果からスギ材を原料としてエタノール蒸留を行って得た蒸留物では、エタノール消毒作用を向上させる作用効果が全く無い又は検出限界以下で著しく弱いものと認められた。
ここで、スギの樹皮等の材部には抗菌作用を示す精油成分が含まれていることが知られているところ(特許文献3:特許第4345956号公報)、それにも関わらずそのエタノール蒸留物では本発明に係る消毒作用を発揮しなかったことから、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の消毒力向上作用は、蒸留原料としてスギ葉を用いてエタノール蒸留した蒸留物に付与される特有の作用効果であると認められた。また、本発明に係る消毒力向上作用はエタノール共存下における短時間接触での殺菌作用を増強する作用であることから、公知の抗菌成分による増殖抑制作用とは別の作用機序によって奏されるものと認められた。
両者の消毒作用の効果の相違は、蒸留物に含まれる含有化合物の種類及び含有率等の組成的特徴の相違を示す結果と認められた。
[実施例7]『蒸留条件の違いによる組成的特徴の相違』
上記実施例で示されたスギ葉からエタノール蒸留を行って得た蒸留物について、蒸留条件として水蒸気蒸留を行って得た蒸留物との含有化合物の組成的特徴の相違を比較した。
(1)「スギ葉水蒸気蒸留物」
実施例1にて調製した裁断スギ葉20gに直接水蒸気を通して常圧水蒸気蒸留(約100℃、1000hPa)を行って冷却してスギ葉由来精油成分を含む蒸留物を回収し、スギ葉水蒸気蒸留物とした。
(2)「スギ葉エタノール蒸留物」
裁断スギ葉20gについて減圧エタノール蒸留(60℃、170hPa)を行って、冷却してスギ葉由来揮発化合物を含む蒸留物を回収した。基本的な蒸留操作等は実施例1と同様にして行った。
(3)「ガスクロマトクロマトグラフィー分析」
上記(1)及び(2)にて調製した試料についてガスクロマトクロマトグラフィー(GC)による組成分析を行い、得られたクロマトグラム波形の比較解析を行った。当該GC分析は以下に示す装置及び条件にて行った。各試料には標準物質としてn−アミルアルコールを添加し、ポリエチレングリコールカラムを用いた昇温条件にて分析を行った。結果を表6及び図5に示した。
[GC分析に用いた装置及び条件]
装置: 7980A(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム: HP-INNOWax(0.25mm i.d.×60m, 0.25 μm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
キャリアガス:ヘリウム
流量: 1.5mL/分
注入口温度: 200℃
カラム温度: 40℃(5分)→5℃/分→120℃→10℃/分→200℃(5分)
注入方法: 1.5mL/分
注入量: 0.5mL
検出機器: FID
比較分析の結果、上記条件にてスギ葉をエタノール蒸留して得られた蒸留物(試料7−2)には、保持時間2.4分及び3.9分のピークとして示される2つの特徴的な化合物が含まれることが示された。これらのピークは上記条件にてスギ葉を水蒸気蒸留して得られた蒸留物(試料7−1)では全く検出されないことから、当該ピークで示される化合物はスギ葉エタノール蒸留物(試料7−2)において特有の化合物であることが示された。即ち、これら保持時間2.4分及び3.9分のピークを示す化合物は、スギ葉水蒸気蒸留物(試料7−1)には全く存在しない化合物でありスギ葉エタノール蒸留物(試料7−2)に特有の化合物であることが示された。
また、スギ葉エタノール蒸留物(試料7−2)には、保持時間15.7分のピークとして示される化合物を高含量で含むことが示された。当該ピークはスギ葉水蒸気蒸留物(試料7−1)では低含量を示すピーク面積であったことから、当該ピークで示される化合物もスギ葉エタノール蒸留物(試料7−2)において特徴的な化合物であると示唆された。
また、スギ葉水蒸気蒸留物(試料7−1)には、保持時間6.3分〜13.1分の間にてピークを示す化合物を多く含む組成的特徴であることが示されたところ、スギ葉エタノール蒸留物(試料7−2)においてはこれらのピークとして示される化合物を含まない又は低含量でしか含まれない組成的特徴であることが示された。
以上の結果から、原料としてスギ葉を用いてエタノール蒸留と行った場合と水蒸気蒸留を行った場合とでは、得られる蒸留物の組成的特徴が両者で全く異なることが示された。
具体的には、スギ葉エタノール蒸留物に含まれるスギ葉由来揮発成分として、上記条件でのGC分析の際にスギ葉水蒸気蒸留物には含まれない保持時間の短い特徴的な2成分を含むことが示された。当該成分は当該蒸留物の構成化合物の中では相対的に揮発温度が低い物質であると推定される。
また、スギ葉エタノール蒸留物に含まれるスギ葉由来揮発成分として、上記条件でのGC分析の際に最も保持時間の長い化合物群の1成分を高含有することが示された。当該成分は当該蒸留物の構成化合物の中では相対的に揮発温度が高い物質であると推定される。
更に、スギ葉エタノール蒸留物は、スギ葉水蒸気蒸留物に多く含まれる揮発温度が中程度と推定され且つ最大ピークに対して1/5以上のシグナル強度のピークにて示される化合物成分を含まない又は大幅に低減された組成的特徴であることが示された。
[実施例8]『蒸留条件の違いによる芳香作用の相違』
上記実施例で示されたスギ葉エタノール蒸留物の芳香作用について、蒸留条件として水蒸気蒸留を行って得た蒸留物との相違を比較した。
(1)「スギ葉水蒸気蒸留物」
実施例7(1)にて調製したスギ葉水蒸気蒸留物を用いて、エタノール含有率50%(v/v)のスギ葉水蒸気蒸留物を含むエタノール水溶液を調製した。
(2)「スギ葉エタノール蒸留物」
実施例7(2)にて調製したスギ葉エタノール蒸留物を用いて、エタノール含有率50%(v/v)のスギ葉エタノール蒸留物を含むエタノール水溶液を調製した。
(3)「香気特性に関する官能評価」
上記(1)及び(2)にて調製した試料について4名のパネラーにより香気特性に関する官能検査を行った。結果を表7に示した。
その結果、スギ葉エタノール蒸留物(試料8−2)については全てのパネラーが好ましい爽やかな好適な香気である旨の評価を示した。詳しくは、スギ葉エタノール蒸留物は、爽やかな香り、オレンジ様の香り、爽快な香り等の好適印象の香りを備えた組成物である旨の評価を示した。
一方、スギ葉水蒸気蒸留物(試料8−1)については全てのパネラーが好ましくない不快な臭気である旨の評価を示した。詳しくは、スギ葉水蒸気蒸留物は、刺激臭等の不快な印象の臭いを備えた組成物である旨の評価を示した。
以上の結果から、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物は、人間が爽やかで好ましいと感じる香気特性を備えた組成物であることが示され、香料剤や香粧品等の芳香用途としても使用可能な香料組成物であることが示された。
ここで、スギ葉水蒸気蒸留物にもスギ由来揮発成分が含まれるところ、当該蒸留物にはスギ葉エタノール蒸留物のような爽やかな芳香効果は認められず、その香気特性は逆に不快臭を伴うものとなった。当該知見から、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物が備える芳香作用は、スギ葉を原料としてエタノール蒸留した蒸留物に付与される特有の作用効果であると認められた。
両者の香気特性の相違は、含有化合物の種類及び含有率等の組成的特徴の相違を示す結果と認められ、上記実施例のクロマトグラム比較の結果を支持する結果であった。
[実施例9]『蒸留条件の違いによる消毒作用の相違』
上記実施例で示されたスギ葉エタノール蒸留物について、蒸留条件として水蒸気蒸留を行って得た蒸留物との消毒作用の効果の相違を比較した。
(1)「スギ葉水蒸気蒸留物」
実施例7(1)にて調製したスギ葉水蒸気蒸留物を用いて、エタノール含有率25%(v/v)のスギ葉水蒸気蒸留物を含むエタノール水溶液を調製した。
(2)「スギ葉エタノール蒸留物」
実施例7(2)にて調製したスギ葉エタノール蒸留物を用いて、エタノール含有率25%(v/v)のスギ葉エタノール蒸留物を含むエタノール水溶液を調製した。
(3)「消毒試験及び生菌数測定」
上記(1)及び(2)にて調製した試料について大腸菌に対する消毒試験及び生菌数測定を行った。試験方法は実施例3に記載の方法と同様にして行った。結果を表8及び図6に示した。
その結果、スギ葉エタノール蒸留物を含有する25%(v/v)エタノール水溶液(試料9−2)を用いた場合、消毒処理後の溶液の生菌数は0cfu/mLであった。即ち、試料9−2に係る溶液ではエタノール含有率が低濃度であるにも関わらず、当該消毒処理後溶液における大腸菌の増殖は検出されなかった。
一方、スギ葉水蒸気蒸留物を含有する25%(v/v)エタノール水溶液(試料9−1)を用いて消毒処理を行った場合、消毒処理後であるにも関わらず1.2×10cfu/mLに相当する大腸菌の増殖が確認された。当該生菌数を示す値は消毒作用が不十分であることを示す値であった。
以上の結果からスギ葉を原料として水蒸気蒸留を行って得た蒸留物では、エタノール消毒作用を向上させる作用効果がとても弱く、溶液全体が奏する消毒力は十分でないものと認められた。
ここで、スギ葉には抗菌作用を示す精油成分が含まれていることが知られているところ(特許文献4:特開2014−88331号公報参照)、それにも関わらずその水蒸気蒸留物では本発明に係る消毒作用を発揮しないことから、本発明に係るスギ葉エタノール蒸留物の消毒力向上作用は、蒸留条件としてエタノール蒸留を行った場合に付与される特有の作用効果であると認められた。また、本発明に係る消毒力向上作用はエタノール共存下における短時間接触での殺菌作用を増強する作用であることから、公知の抗菌成分による増殖抑制作用とは別の作用機序によって奏されるものと認められた。
両者の消毒作用の効果の相違は、含有化合物の種類及び含有率等の組成的特徴の相違を示す結果と認められ、上記実施例のクロマトグラム比較の結果を支持する結果であった。
本発明は、医療、公衆衛生、飲食品、農業等の様々分野での消毒殺菌用途に広く利用されることが期待される。また、本発明は、再生可能資源の有効利用の点で好適に利用されることが期待される。
S: 標準物質
2.4: 保持時間 2.4分
3.9: 保持時間 3.9分
6.3: 保持時間 6.3分
13.1: 保持時間13.1分
15.7: 保持時間15.7分

Claims (10)

  1. スギ葉に由来する揮発性化合物を含む蒸留物の製造方法であって、
    (工程1)スギ葉又はその加工物を含有するエタノール溶液又はエタノールを含む水溶液を蒸留して、スギ葉エタノール蒸留物を回収する工程、
    を含むことを特徴とする、スギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
  2. 前記(工程1)に記載の蒸留が減圧蒸留である、請求項1に記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
  3. 前記(工程1)に記載の蒸留を行う溶液が、エタノール含有率5%(v/v)以上のエタノールを含む水溶液である、請求項1又は2に記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
  4. 前記(工程1)が、スギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含む溶液を回収する工程である、請求項1〜3のいずれかに記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
  5. 前記(工程1)に記載の蒸留を行う溶液が、バイオエタノール製造工程におけるエタノール発酵液又は当該発酵に由来するエタノールを含む溶液である、請求項1〜4のいずれかに記載のスギ葉エタノール蒸留物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られたスギ葉エタノール蒸留物。
  7. 下記(A)及び(B)に記載の特徴を有するスギ葉エタノール蒸留物;
    (A)下記比較試料とのポリエチレングリコールカラムを用いた昇温条件でのガスクロマトグラフィーによる比較分析を行った場合において、(a−1)下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物よりも短い保持時間を示す主要ピークにて示される化合物を少なくとも2成分含有し、(a−2)下記比較試料に含まれるスギ葉由来揮発性化合物の中で最も長い保持時間を示す主要ピーク群のうちの1つとして示される化合物を、下記比較試料の含量より高含有する、
    (比較試料)裁断したスギ葉を水蒸気蒸留して得たスギ葉水蒸気蒸留物、
    (B)当該スギ葉エタノール蒸留物及び25%(v/v)エタノールを含有してなる水溶液を調製し、実施例3に記載の方法と同様にして大腸菌への消毒試験を行った際に、当該消毒処理後の溶液での生菌数を示す値が1.5×10cfu/mL以下である。
  8. 請求項6又は7に記載のスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含有してなることを特徴とする、エタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノール。
  9. 請求項6又は7に記載のスギ葉エタノール蒸留物及びエタノールを含有してなることを特徴とする、香料組成物、香料剤、又は香粧品。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載の前記(工程1)を含むことを特徴とする、エタノールを含む消毒用組成物、エタノールを含む消毒剤、又は消毒用エタノールの製造方法。
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