JP2018019630A - 細胞培養容器、細胞培養方法、細胞培養容器の製造方法及び細胞培養容器の製造装置 - Google Patents
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Description
例えば実験室で好適に用いられる容器として、ゆがみのない平らな底面を有するペトリディッシュ(シャーレ)や培養フラスコが知られている。このうちペトリディッシュは、フタを用いて容器内を密閉することも可能であり、ベントタイプのフタにはリブが設けられてガス抜き/非ガス抜きポジションを選択可能なようになっている。また、ペトリディッシュと同様に底面が平らな培養フラスコも、培養面が均一性・平滑性に優れているので顕微鏡観察時に良好な視界が得られる利点もある。
しかしながら一般的な細胞培養バッグでは培養液を注入すると培養面となる底面が平坦でなくなるという問題から、例えば特許文献1のごとき細胞培養用トレイ状容器が提案されている。すなわち、特許文献1で開示された細胞培養用トレイ状容器は、第1の容器壁が透明で単一の平面状の底面を有する凹部と該凹部の周縁に形成されたフランジ状部を有し、第2の容器壁が気体透過性を有して変形可能な柔軟性を有する構成となっている。
すなわち、例えばiPS細胞などに代表される接着培養系細胞においては、細胞の増殖度合は面積の広狭に依存するため、単純に平坦な培養面を確保するだけでは不十分であって可能な限り培養面を平坦で広範囲とする必要がある。特に再生医療等に用いる事を目的とした細胞などは大変貴重なものであり、その培養には多大な時間と費用を要することから高い効率性も求められる。
また、播種した後で底面に沈殿する細胞が密度的に均一に分布し、且つ培地の栄養分が全ての細胞に均一に行き渡るように、培地の液厚は広範囲で均一であることが望ましい。
しかしながら特許文献1を含めた従来タイプの細胞培養容器には上記した課題に関する認識や示唆は一切ない。
図1は本発明の実施形態にかかる細胞培養容器10の外観斜視図を示している。
細胞培養容器10は、フィルムベースの軟包材を材料として袋状に形成された可撓性を有する細胞培養用の容器である。この細胞培養容器10は、細胞の培養に好適なガス透過性を有し、かつ内容物を確認できるように、その一部又は全部が透明性を有していることが好ましい。
より具体的には、第2容器壁2が具備するガス透過性については、JIS K 7126のガス透過度試験方法に準拠して、試験温度37℃で測定した酸素の透過度が、5000mL/(m2・day・atm)以上であるのが好ましい。すなわち、第2容器壁2のガス透過性は、第1容器壁1のガス透過性と等しく設定されていてもよい。また、第2容器壁2を構成するフィルムは、細胞培養の進行状況や細胞の状態などを確認できるように一部又は全部が透明性を有しているのが好ましく、さらには第1容器壁1と同じ材料で構成されていてもよい。
また、培養液の液厚が均一で平坦な培養面をできる限り広く確保するという思想の下では、立ち上がり部2bの幅は狭ければ狭いほどよく、周縁部のシール領域の幅も狭ければ狭いほどよい。
これにより、ポート3と第2容器壁2との間で隙間が生じることが抑制され、培養空間Sから培養液が漏れてしまうことが防止される。
そしてさらに好ましくは、図3に示すように、第1容器壁1の表面、第2容器壁2の天面(中央部2c)、及びポート3の底面は、互いに平行となっていてもよい。換言すれば、本実施形態のポート3の底面(第1容器壁1と接触する接触面)は、第1容器壁1の表面と同一平面となっていることが好ましい。これにより、更に効率的に比較的少量の培養液を培養空間Sの隅々まで行き渡らせることが可能となる。
次に、図4を用いて本実施形態における細胞培養容器10の製造方法及び製造装置について説明する。
すなわち細胞培養容器10は、以下でそれぞれ説明する押圧部材21、拘束部材22、載置台23、加熱装置24および流体導入装置25を含む細胞培養容器の製造装置を用いて、次に示す各工程を経て製造される。
なお、上記した周縁部2aを拘束可能な限りにおいて拘束部材22の形状に特に制限はないが、第2容器壁2の周縁を過不足なく拘束する形状が好ましく、さらにはR1に相当する領域も含む周縁4辺すべてを拘束する形状が望ましい。また、本実施形態では拘束部材22を用いて拘束したが、第1容器壁1の平坦性が確保されるのであれば拘束部材22は適宜省略してもよい。
なお、本実施形態の加熱装置24としては、例えばニクロム線などの公知の抵抗加熱手段などが挙げられ、典型的には押圧部材21の内部に該加熱装置24を設置することができる。また、載置台23の内部に加熱装置24を設置する態様としてもよく、加熱装置24は載置台23と押圧部材21の少なくとも一方を加熱する態様でもよい。
なお、押圧部材21などに更に冷却装置を具備しておき、押圧部材21を加熱した後であって第2容器壁2を押圧している最中にこの冷却装置を用いて押圧部材21を冷却してもよい。
従来の細胞培養容器は、細胞の培養面となる底面の一部分のみが平らとなる形状も散見されるが、細胞の培養面を最大限確保する思想は皆無であり、更に培養空間における培養液の均質拡散性を確保することに至ってはその課題の提示やその構成の示唆すらも一切存在しなかった。より具体的には、図5(b)に示すごとき従来手法により製造された細胞培養容器は、平面方向(XY平面)において培養液が一様に広がることができず、容器の隅部分は培養液が行き渡らないので、良好な培養空間とは成り得ない。また、高さ方向(Z方向)においても反りを有するため培養液の濃淡が全面的に生じてしまっている。
なお、上記した実施形態においては、iPS細胞などの接着細胞を例にして説明したが、本発明はこの例に限られるものではない。すなわち、本発明は、造血細胞や腹水細胞などの浮遊細胞向けの培養容器やその製造方法及び製造装置並びに細胞培養方法に適用してもよい。実際上、浮遊細胞の静置培養においても広範囲で均一に細胞を分布させたいニーズがあり、接着細胞も播種後に底面に沈殿して接着するまでは浮遊細胞とほぼ同じ態様をとるからである。
図6は、本実施形態で説明したポート3の変形例である。
上記で説明した実施形態のポート3は、第2容器壁2と接する面(上面)が曲面であったが、本発明はこの態様に限られず種々のポートの形状を採用することができる。
図7は、本実施形態で説明したポート3のその他の変形例である。
すなわち、上記実施形態および変形例1で説明したポート3の底面はいずれも平面状となっており、第1容器壁1のうちポート3と接触する領域(ポート3と接触する周縁部1a)の外表面は、このポート3と接触する領域以外の外表面と同一平面であった。
しかしながら本発明はこの態様に限られず、図7に示すように、第1容器壁1は、少なくともポート3と接触する領域以外で平面状となっていればよい。
このような場合にも、第1容器壁1はポート3と接触する領域以外で平面状となっているので、上記した本発明の効果を奏することが可能となっている。
なお、上記においては細胞培養の用途として説明をしたが、例えば液体などを出来るだけ平坦な面を底面として貯蔵したい場合など、本発明の容器は細胞培養用途以外の他の用途に用いてもよい。
2 第2容器壁
3、4、5 ポート
10 細胞培養容器
21 押圧部材
22 拘束部材
23 載置台
24 加熱装置
25 流体導入装置
Claims (10)
- ガス透過性を有して底面となる第1容器壁と、
前記第1容器壁の周縁部で接触するとともに、前記周縁部より内側で前記第1容器壁に対して張り出した膨出形状を有する第2容器壁と、
前記第1容器壁と前記第2容器壁の膨出形状で囲まれる培養空間に通じるポートと、
を含み、
前記第1容器壁は、少なくとも前記ポートと接触する領域以外で平面状となっていることを特徴とする細胞培養容器。 - 前記第2容器壁のうち前記培養空間を形成する天面が平面状である請求項1に記載の細胞培養容器。
- 前記第1容器壁と前記第2容器壁の厚み比が実質的に1である請求項1又は2に記載の細胞培養容器。
- 前記第2容器壁はガス透過性を有するフィルムであり、
前記第1容器壁のガス透過性と前記第2容器壁のガス透過性は実質的に等しい請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養容器。 - 前記第1容器壁と2容器壁は同じ材料で構成されてなる請求項4に記載の細胞培養容器。
- 前記第1容器壁の表面と前記第2容器壁の天面とが互いに平行となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養容器。
- 前記ポートのうち前記第1容器壁と接触する接触面が前記第1容器壁の表面と同一平面である請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養容器。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、
前記第2容器壁に対して前記第1容器壁が下方となるように前記第1容器壁を載置しつつ、前記ポートを介して細胞と培養液を注入することを特徴とする細胞培養方法。 - ガス透過性を有するフィルムからなる第1容器壁と、前記第1容器壁に対向して配置される第2容器壁とを重ねた状態で載置台に前記第1容器壁を載置する工程と、
前記第2容器壁の中央部が開放された状態で、前記第1容器壁および前記第2容器壁の周縁部を拘束部材で押圧する工程と、
前記拘束部材で前記周縁部を押圧した状態で、前記第1容器壁と前記第2容器壁との間に流体を導入する工程と、
前記第2容器壁の中央部に対して押圧部材で押圧しながら少なくとも前記押圧部材を加熱する工程と、
を有することを特徴とする細胞培養容器の製造方法。 - 平面状のフィルムからなる第1容器壁と前記第1容器壁の周縁部で接触するとともに前記第1容器壁に対して張り出した膨出形状を有する第2容器壁とを含む細胞培養容器の製造装置であって、
前記第1容器壁を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記前記第1容器壁及び前記第2容器壁の間の空間に流体を導入する流体導入装置と、
前記載置台に対して進退可能に配置されて、前記空間に前記流体が導入された前記第2容器壁を加圧する押圧部材と、
前記押圧部材を加熱する加熱装置と、
前記載置台に対向して配置されて、当該載置台に載置された前記第2容器壁の周辺を拘束する拘束部材と、を含み、
前記拘束部材で前記第2容器壁を拘束しながら前記加熱装置で前記押圧部材を加熱しつつ、前記流体導入装置で前記第1容器壁と前記第2容器壁の間の空間に前記流体を導入することを特徴とする細胞培養容器の製造装置。
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