以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1はワイパ装置を搭載した車両を示す概要図を、図2はワイパモータの出力軸側を示す平面図を、図3はコネクタユニットが装着されたギヤケースを示す斜視図を、図4はコネクタユニットのホルダ部材側を示す斜視図を、図5はコネクタユニットのコネクタ部材側を示す斜視図を、図6はホルダ部材の他側面側から見た差し込み工程の説明図を、図7はホルダ部材の一側面側から見た位置決め工程の説明図を、図8はホルダ部材の他側面側から見た折り曲げ工程の説明図を、図9はブラシが発生した熱の伝達経路を説明する断面図をそれぞれ示している。
図1に示すように、車両10の前方側には、フロントウィンドシールド11が設けられている。また、フロントウィンドシールド11の車両前方側には、ワイパ装置12が設けられている。そして、ワイパ装置12は、フロントウィンドシールド11の表面に付着した雨水や埃等を払拭して、これにより運転者の視界を良好に確保する。
ワイパ装置12は、運転席側と助手席側とで一対のワイパアーム13を備えている。これらのワイパアーム13の基端側は、車両10に設けられた一対のワイパ軸14にそれぞれ固定されている。一対のワイパアーム13の先端側は、一対のワイパ軸14を揺動中心として揺動される。
ワイパ装置12は、モータ装置としてのワイパモータ15を備えている。ワイパモータ15は1つのみ設けられ、当該1つのワイパモータ15により一対のワイパアーム13が揺動駆動される。ワイパモータ15は出力軸16を備えており、当該出力軸16と一対のワイパ軸14との間にはリンク機構17が設けられている。そして、ワイパモータ15を駆動させると出力軸16の回転運動がリンク機構17により揺動運動に変換される。これにより、一対のワイパ軸14が揺動駆動されて、ひいては一対のワイパアーム13の先端側がフロントウィンドシールド11上で揺動される。
一対のワイパアーム13の先端側には、ワイパブレード18がそれぞれ装着されている。一対のワイパブレード18は、フロントウィンドシールド11の表面に弾性接触されている。そして、ワイパモータ15により各ワイパアーム13を揺動駆動させると、各ワイパブレード18は、フロントウィンドシールド11の表面の所定の払拭範囲19を往復払拭動作する。これにより、フロントウィンドシールド11に付着した雨水等が綺麗に払拭される。
図2に示すように、ワイパモータ15は、モータ部20とギヤ部30とを備えている。これらのモータ部20およびギヤ部30は、一対の固定ねじS1(図示では1つのみ示す)によって互いに固定されている。具体的には、モータ部20のヨーク21とギヤケース31のモータ固定部MFとが、互いに一対の固定ねじS1によって連結されている。
モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板等を深絞り加工することで有底筒状に形成されたヨーク(モータケース)21を備えている。ヨーク21の内壁には、断面が略円弧形状に形成された複数の永久磁石22(図示では2つのみ示す)が固定されている。複数の永久磁石22の内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してアーマチュア23が回転自在に設けられている。アーマチュア23の回転中心にはアーマチュア軸(回転軸)24が固定されており、アーマチュア軸24はアーマチュア23とともにヨーク21の内部に回転自在に収容されている。
アーマチュア軸24の軸方向一端側(図中左側)は、ヨーク21の底部に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。アーマチュア軸24の軸方向他端側(図中右側)は、ギヤ部30を形成するギヤケース31の内部に配置されている。アーマチュア軸24の軸方向他端側には、減速機構33を形成するウォームギヤ25が一体に設けられ、当該ウォームギヤ25は、減速機構33を形成するウォームホイール34の歯部34a(詳細図示せず)に噛み合わされている。
アーマチュア軸24の軸方向に沿うウォームギヤ25とアーマチュア23との間には、アーマチュア23に巻装されたコイル26に電気的に接続されたコンミテータ(整流子)27が固定されている。コンミテータ27の外周部分には、3つのブラシ28(図示では2つのみ示す)が摺接され、これにより各ブラシ28に駆動電流を供給することで、コンミテータ27を介してコイル26に駆動電流が供給される。よって、アーマチュア23に電磁力が発生して、ひいてはアーマチュア軸24が所定の回転数および回転方向で回転される。
図2および図3に示すように、ギヤ部30は、ギヤケース31を備えている。ギヤケース31は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することで略バスタブ形状に形成され、底壁部31aと側壁部31bとを備えている。なお、ギヤケース31の大きく開口された第1開口部31cは、プラスチック等の樹脂材料よりなるギヤカバー(図示せず)によって密閉されている。また、ウォームホイール34は、第1開口部31cからギヤケース31の内部に組み込まれる。
ギヤケース31の内部には、ギヤ機構としての減速機構33が回転自在に収容されている。減速機構33は、外周部分に歯部34aが形成されたウォームホイール34を備えており、このウォームホイール34の歯部34aには、アーマチュア軸24に設けたウォームギヤ25が噛み合わされている。つまり、減速機構33は、アーマチュア軸24により回転される。ここで、減速機構33は、ウォームギヤ25およびウォームホイール34よりなるウォーム減速機となっている。
ウォームホイール34の回転中心には、出力軸16の基端側が固定されている。出力軸16はアーマチュア軸24の軸方向と交差する方向(直交する方向)に延ばされており、出力軸16の先端側はギヤケース31の外部に配置されている。出力軸16の先端側にはリンク機構17(図1参照)が連結されており、これにより出力軸16の回転力がリンク機構17に伝達される。
ここで、アーマチュア軸24の回転は、ウォームギヤ25を介してウォームホイール34に伝達される。このとき、アーマチュア軸24の回転数が所定の回転数に減速され、高トルク化された回転力が出力軸16から出力される。よって、ワイパモータ15は小型でありながら高出力が可能であり、車両10への搭載性に優れたモータ装置となっている。
図3に示すように、ギヤケース31の底壁部31aには、出力軸16(図2参照)を回動自在に支持するボス部35が一体に設けられている。ボス部35は、出力軸16の軸方向に延びる略円筒形状に形成され、その径方向内側には軸受(図示せず)が装着されている。これにより、出力軸16はがたつくこと無くスムーズに回動可能となっている。
また、ボス部35の軸方向に沿うギヤケース31の外部にある部分には、図2に示すようにゴムキャップRBが装着されている。これにより、出力軸16とボス部35との間が密閉されて、ひいてはギヤケース31の内部への雨水等の進入が抑制される。
ギヤケース31の外部で、かつボス部35の周囲には、3つの取付脚36が一体に設けられている。これらの取付脚36は、ワイパモータ15を、車両10(図1参照)のボディ等の固定対象物に固定するために設けられ、各取付脚36には、それぞれ固定ボルト(図示せず)がねじ結合されるようになっている。
図2に示すように、底壁部31aの出力軸16とウォームギヤ25との間には、ギヤケース31の内外を連通する空気孔37が設けられている。空気孔37の直径寸法は極小さく設定(約2mm程度)され、雨水や埃等を通さずに空気のみを通すよう構成されている。ここで、雨水等の通過をより確実に防止するために、空気孔37の入口部分に、空気の通過を許容する一方で水分の通過を規制する繊維膜(不織布やフェルト等)を設置するのが望ましい。なお、空気孔37は、密閉されたギヤケース31に、所謂呼吸機能を持たせるために設けている。
図3に示すように、ギヤケース31の側壁部31bの一部には、第1開口部31cよりも小さく開口された第2開口部31dが設けられている。この第2開口部31dは、ギヤケース31のヨーク21との連結部分に設けられ、かつアーマチュア軸24(図2参照)の軸方向に沿って開口されている。そして、第2開口部31dには、コネクタユニット40が装着されている。
コネクタユニット40は、ヨーク21とギヤケース31との間に設けられている。より具体的には、コネクタユニット40は、ギヤケース31の第2開口部31dを閉塞するようにして、ギヤケース31のモータ固定部MFの内側に配置されている。そして、ワイパモータ15を組み立てた状態で、ヨーク21(図2参照)によって抜け止めがなされている。
コネクタユニット40は、図4および図5に示すように、ホルダ部材50とコネクタ部材60とを備えている。これらのホルダ部材50およびコネクタ部材60は、溶融したプラスチック材料等を射出成形することで、それぞれ所定形状に形成されている。
図4に示すように、ホルダ部材50は略円板形状に形成され、その径方向内側には、アーマチュア軸24およびコンミテータ27(図2参照)が貫通される貫通孔51が設けられている。一方、ホルダ部材50の径方向外側には、3つの係合凸部52が設けられている。これらの係合凸部52は、ホルダ部材50の周方向に等間隔(120°間隔)で設けられ、第2開口部31dに設けられた3つの係合凹部31e(図3参照)にそれぞれ係合される。これにより、ホルダ部材50のギヤケース31に対するがたつきが防止される。
また、図4に示すように、ホルダ部材50の厚み方向(軸方向)に沿うコネクタ部材60側(図中下側)には一側面53が設けられている。さらに、ホルダ部材50の厚み方向(軸方向)に沿うコネクタ部材60側とは反対側(図中上側)には他側面54が設けられている。ホルダ部材50の一側面53には、図7に示すように、ホルダ部材50に対する板ばね70の位置決めを行う位置決め突起(凸部)53aが一体に設けられている。この位置決め突起53aは、断面形状が略台形形状(非円形形状)に形成されている。これにより、位置決め突起53aの断面形状と同じ形状に形成された板ばね70の位置決め穴72aが、位置決め突起53aに対して相対回転不能とされ、がたつくこと無く係合される。
また、図6に示すように、ホルダ部材50には、板ばね70に設けられた一対の貫通部73a,74aがそれぞれ貫通される一対の貫通孔53bが形成されている。これらの貫通孔53bは、3つの板ばね70に対応して、ホルダ部材50の周方向に沿う3箇所に配置されている。また、図6に示すように、貫通孔53bは、ホルダ部材50の周方向に沿う位置決め突起53aの両側に、1つずつ配置されている。ここで、各貫通孔53bは、板ばね70の各貫通部73a,74aの断面形状と略同じ断面形状に形成され、これにより、各貫通部73a,74aが各貫通孔53bの内部でがたつかないようにしている。
さらに、図7に示すように、ホルダ部材50の一側面53には、複数の係合爪53c(図示では1つのみ示す)が一体に設けられている。これらの係合爪53cは、3つの係合凸部52に対応して3つ設けられ、コネクタ部材60(図中上方)に向けて突出されている。そして、各係合爪53cは、コネクタ部材60に設けられた3つの係合凹部61f(図5参照)にそれぞれ係合される。これにより、ホルダ部材50の一側面53側が、コネクタ部材60に対して3箇所で固定される。
図4に示すように、ホルダ部材50の他側面54には、電子部品としての3つのキャパシタCPと、電子部品としての2つのチョークコイルCCとが装着されている。また、ホルダ部材50の他側面54側には、それぞれ板ばね70を介して、共通ブラシ28a,低速用ブラシ28b,高速用ブラシ28cが配置されている。そして、これらのキャパシタCP,チョークコイルCC,3つのブラシ28a〜28cは、それぞれホルダ部材50の周方向に略等間隔で配置されている。すなわち、これらの部品は、ホルダ部材50の周方向に分散して設けられている。
これにより、図5に示すように、各部品を電気的に接続するための複数の溶接部Wをそれぞれ離して配置でき、溶接作業を容易に行えるようにしている。なお、共通ブラシ28aおよび低速用ブラシ28bを介して通電すると、ワイパモータ15は低速で回転駆動される。また、共通ブラシ28aおよび高速用ブラシ28cを介して通電すると、ワイパモータ15は高速で回転駆動される。
キャパシタCPおよびチョークコイルCCは、それぞれ雑音防止素子であり、各ブラシ28a〜28cが発生する電気ノイズ(ブラシノイズ)を吸収するものである。これにより、電気ノイズがワイパモータ15の外部に放散されるのを防止している。
また、キャパシタCPの接続部分L1(図7参照),チョークコイルCCの接続部分L2(図5参照),各ブラシ28a〜28cの接続部分L3(図7の網掛け部分参照)は、ホルダ部材50の一側面53側に集約して配置されている。ここで、板ばね70は、黄銅等の導電材料からなり、ブラシホルダとしての機能に加えて、各ブラシ28a〜28cに駆動電流を供給する機能も備えている。すなわち、各ブラシ28a〜28cを電気的に接続するための接続部分L3は、板ばね70に設けられることになる。なお、図6ないし図9におけるブラシは、3つあるブラシ28a〜28cのうちの1つを示しており、各ブラシ28a〜28cは、ホルダ部材50に対する配置箇所が異なるだけで、その固定構造等の全てが同じ構造となっている。
また、図4に示すように、ホルダ部材50の他側面54には、板ばね70の抜け止め部73b,74bが露出された状態で配置されている。そして、各ブラシ28a〜28cに対応したそれぞれの抜け止め部74bには、伝熱部材80が覆い被さるようにして装着されている。ここで、伝熱部材80は、例えば、シリコーンを主成分とした柔軟材料からなり、その熱伝導率は2.1(W/mk)とされ、空気の熱伝導率0.0241(W/mk)よりも大きくなっている。すなわち、伝熱部材80は熱伝導性に優れた弾性材料により形成されている。
そして、図9に示すように、ワイパモータ15を組み立てた状態で、伝熱部材80は、各板ばね70の抜け止め部74bとギヤケース31との間に、若干弾性変形された状態で挟持されている。したがって、伝熱部材80は、各板ばね70とギヤケース31との双方に密着されて、各ブラシ28a〜28cで発生した熱を効率良くギヤケース31に伝達させることができる。さらには、伝熱部材80は柔軟性を有するため、ホルダ部材50のギヤケース31内でのがたつきも確実に防止される。
図4および図5に示すように、コネクタ部材60は、略円板状に形成された第1ベース部61と、当該第1ベース部61の外周部分に一体に設けられた第2ベース部62と、を備えている。第1ベース部61は、ホルダ部材50と同様の円環状に形成され、その板厚は、ホルダ部材50よりも若干厚くなっている。そして、第1ベース部61の径方向内側には、アーマチュア軸24およびコンミテータ27(図2参照)が貫通される貫通孔61aが設けられている。
また、第1ベース部61の径方向外側には、3つの係合凸部61bが設けられている。これらの係合凸部61bは、第1ベース部61の周方向に等間隔(120°間隔)で設けられ、ホルダ部材50の各係合凸部52に重ねられている。これにより、各係合凸部61bにおいても、第2開口部31dに設けられた3つの係合凹部31e(図3参照)にそれぞれ係合される。よって、コネクタ部材60のギヤケース31に対するがたつきが防止される。
図5に示すように、第1ベース部61の厚み方向(軸方向)に沿うホルダ部材50側とは反対側(図中上側)には一側面61cが設けられている。また、第1ベース部61の厚み方向(軸方向)に沿うホルダ部材50側(図中下側)には他側面61dが設けられている。また、第1ベース部61の他側面61dには、図9に示すように、ホルダ部材50の位置決め突起53aが係合される複数の位置決め凹部(凹部)61eが設けられている。つまり、位置決め凹部61eは、各位置決め突起53a(各板ばね70)に対応して3つ設けられている。
ここで、各位置決め凹部61eの断面形状は、各位置決め突起53aと同様の略台形形状(非円形形状)に形成されている。これにより、各位置決め突起53aは、各位置決め凹部61eに対してがたつくこと無く係合される。ただし、上述とは逆に、第1ベース部61の他側面61dに凸部を設け、ホルダ部材50の一側面53に凹部を設けるようにしても良い。この場合、他側面61dの凸部に、板ばね70の位置決め穴72aを相対回転不能に係合させるようにする。
さらに、図5に示すように、第1ベース部61には、ホルダ部材50に設けられた3つの係合爪53c(図7参照)が係合される3つの係合凹部61fが設けられている。これらの係合凹部61fは、3つの係合凸部61bに対応して3つ設けられ、第1ベース部61の軸方向に貫通して設けられている。
また、第1ベース部61の他側面61d側には、図5および図9に示すように、複数の第1ターミナルTM1が装着されている。これらの第1ターミナルTM1は、黄銅等の導電材料によりそれぞれ所定形状に形成されている。そして、各第1ターミナルTM1は、キャパシタCPの接続部分L1(図7参照),チョークコイルCCの接続部分L2(図5参照),各ブラシ28a〜28cの接続部分L3(図7の網掛け部分参照)を、第1ベース部61の一側面61c側に配置された複数の導電線CLを介してそれぞれ電気的に接続している。これにより、ホルダ部材50および第1ベース部61に、ワイパモータ15の電気回路が形成される。
図5に示すように、第2ベース部62は、略長方形の板状に形成されている。第2ベース部62の一側面61c側には、略ボックス形状に形成されたコネクタ接続部62aが一体に設けられている。コネクタ接続部62aの内部には、黄銅等の導電材料により長尺の棒状に形成された複数の第2ターミナルTM2の一端側が配置されている。これらの第2ターミナルTM2は、第2ベース部62の内部にインサート成形により埋設されている。また、図4に示すように、各第2ターミナルTM2の他端側は、第2ベース部62の他側面61d側に配置されている。
図4に示すように、複数の第2ターミナルTM2のうちの3つは、第2ベース部62の他側面61d側において、3つのコンタクトプレートCNとされる。これらのコンタクトプレートCNは、アーマチュア軸24(図2参照)の軸方向に延在され、その先端側にはそれぞれ接点CTが設けられている。そして、これらの接点CTは、ウォームホイール34(図2参照)の表面に装着されたリレープレート(図示せず)上を摺接するようになっている。これにより、リレープレートがスイッチング部材として機能し、ウォームホイール34の回転位置に応じてワイパモータ15(出力軸16)の回転方向が切り換えられたり、ワイパモータ15が停止されたりする。
ここで、第2ベース部62の他側面61d側には、各コンタクトプレートCNの背面側を支持する支持壁62bが設けられている。これにより、各コンタクトプレートCNの先端側に設けた各接点CTを、リレープレートに対して安定して摺接させることができる。
また、図4に示すように、第2ベース部62の他側面61d側には、電子部品であるサーキットブレーカCBが設けられている。このサーキットブレーカCBは、ワイパモータ15の運転状態が異常の時(異常高温時等)において、ワイパモータ15への通電を遮断することで、ワイパモータ15を保護するようになっている。
なお、コネクタ接続部62aには、車両10側に設けられた外部コネクタCO(図2参照)が接続され、当該外部コネクタCOには、車両10に搭載された車載コントローラ(図示せず)が電気的に接続されている。
また、図4および図5に示すように、第2ベース部62の第1ベース部61側とは反対側(図中右側)には、突片62cが一体に設けられている。この突片62cには、ギヤケース31にねじ結合される固定ねじS2(図3参照)が挿通されている。これにより、コネクタ接続部62aのギヤケース31に対するがたつきが確実に抑えられる。
次に、板ばね70の詳細構造について、図面を用いて説明する。
図6ないし図8に示すように、板ばね70は、導電性に優れた黄銅等よりなる板材をプレス加工等することで長尺に形成されている。板ばね70の長手方向一側には本体部71が設けられ、板ばね70の長手方向他側には固定部72が設けられている。
本体部71の先端側(図6中上側)には、ブラシ28(図6ないし図8では低速用ブラシ28b,図9では高速用ブラシ28c)が、本体部71を貫通するようにしてかしめ固定されている。これにより、ブラシ28は、本体部71に対してがたつくこと無く固定され、かつ電気的に接続される。
また、本体部71の先端側で、本体部71の長手方向と交差する幅方向両側には、それぞれ補強部71aが設けられている。これらの補強部71aは、本体部71の端部を垂直に折り曲げて形成され、本体部71を補強している。これにより、ブラシ28の本体部71への固定時において、本体部71が歪むのを防止している。
固定部72には、位置決め穴72aが設けられている。この位置決め穴72aは、ホルダ部材50の一側面53に設けられた位置決め突起53aの断面形状と同じ形状の穴とされ、位置決め突起53aが相対回転不能に挿通される。すなわち、位置決め穴72aを設けることで、板ばね70のホルダ部材50に対する誤組み付けを防止している。
また、固定部72は、コネクタ部材60にホルダ部材50を組み付けた状態で、図9に示すように、ホルダ部材50の一側面53と第1ベース部61の他側面61dとの間に挟持されている。よって、板ばね70のホルダ部材50およびコネクタ部材60に対するがたつきが、より抑えられている。
さらに、図6に示すように、固定部72には、第1固定爪73と第2固定爪74とが設けられている。これらの固定爪73,74は、固定部72の長手方向と交差する幅方向に沿う両側に配置され、本体部71に設けた各補強部71aと同様に、固定部72の幅方向両側を垂直に折り曲げて形成されている。よって、各固定爪73,74は、固定部72を補強する機能を備えている。
第1,第2固定爪73,74の長手方向基端側(図6中下側)には、それぞれ貫通部73a,74aが設けられている。これらの貫通部73a,74aは、板ばね70をホルダ部材50に装着した状態で、それぞれ各貫通孔53bに略隙間無く入り込んでいる。より具体的には、各貫通部73a,74aは、各貫通孔53bを、ホルダ部材50の一側面53から他側面54に向けて貫通している(図8参照)。
また、第1,第2固定爪73,74の長手方向先端側(図6中上側)には、それぞれ抜け止め部73b,74bが設けられている。なお、第1固定爪73には、1つの抜け止め部73bが設けられているが、第2固定爪74には、2つの抜け止め部74bが設けられている。また、抜け止め部73bの幅寸法の方が、抜け止め部74bの幅寸法よりも大きい幅寸法となっている。ここで、図6では、貫通部73a,74aと抜け止め部73b,74bとの境界部分を分かり易くするために、当該境界部分に破線を引いている。
そして、1つの抜け止め部73bおよび2つの抜け止め部74bは、板ばね70をホルダ部材50に装着する際に、それぞれ図6の破線矢印(1)に示すように、各貫通孔53bを通過するようになっている。その後、図8の破線矢印(2),(3)に示すように、抜け止め部73bを第2固定爪74に向けて折り曲げ、一対の抜け止め部74bを第1固定爪73に向けて折り曲げる。これにより、ホルダ部材50の他側面54上において、各抜け止め部73b,74bの先端部が、固定部72(板ばね70)の長手方向と交差する幅方向に沿う中央部Cを超えた位置に配置される。これにより、第1,第2固定爪73,74がホルダ部材50に装着される。したがって、板ばね70のホルダ部材50に対する固定強度を、従前に比して向上させることができる。
また、図8に示すように、固定部72(板ばね70)の幅方向一側に配置された1つの抜け止め部73bと、固定部72(板ばね70)の幅方向他側に配置された2つの抜け止め部74bとは、板ばね70の長手方向に交互に並べられている。より具体的には、板ばね70の長手方向に沿って、抜け止め部74b,抜け止め部73b,抜け止め部74bの順で並べられている。これにより、板ばね70のホルダ部材50に対する固定強度が、より高められている。
図8に示すように、各抜け止め部73b,74bのうちの1つの抜け止め部74bには、伝熱部材80の一側面80aが接触するよう装着されている。そして、この伝熱部材80の他側面80bは、図9に示すように、ワイパモータ15を組み立てた状態で、ギヤケース31に接触されている。ここで、伝熱部材80を、各抜け止め部73b,74bのうちの1つの抜け止め部74bにのみ接触させているが、板ばね70は熱伝導率が比較的大きい黄銅製となっている。したがって、板ばね70に伝わる熱は、伝熱部材80を介してギヤケース31に効率良く伝達される。なお、各抜け止め部73b,74bの全てとギヤケース31との間に、図示の伝熱部材80よりも大きな伝熱部材を設けることもできる。
また、板ばね70の長手方向に沿う本体部71と固定部72との間には、ブラシ28をホルダ部材50の他側面54側に配置させる屈曲部75が設けられている。この屈曲部75は、本体部71を固定部72に対して約70°となるように立ち上げている。このように、屈曲部75を設けることで、ホルダ部材50の一側面53側に固定部72を配置しつつ、ホルダ部材50の他側面54側に各抜け止め部73b,74bおよびブラシ28を配置可能としている。つまり、固定部72と各抜け止め部73b,74bとで、ホルダ部材50を抱え込むようにしている。よって、板ばね70のホルダ部材50に対する十分な固定強度が確保される。
そして、図9に示すように、ブラシ28自身が発生する熱や、ブラシ28が配置される空間SPの高温雰囲気が、破線矢印Hに示すように、板ばね70に伝達される。ここで、空間SPが高温雰囲気になる要因には、ブラシ28に加えて複数の電子部品(キャパシタCPやチョークコイルCC)も熱を発生することが挙げられる。そして、板ばね70に伝達された熱は、固定部72の抜け止め部74bおよび伝熱部材80を介して、ギヤケース31に効率良く伝達される。その後、ギヤケース31に伝達された熱は、外部に放熱される。
なお、図9の一点鎖線で示す基準線Fに倣うようにしてヨーク21が装着される。これにより、第1ベース部61がヨーク21で押圧されて、伝熱部材80が弾性変形される。よって、抜け止め部74bおよびギヤケース31の双方に伝熱部材80が密着される。すなわち、ワイパモータ15の組み立て時において、伝熱部材80の密着不良等が発生することが抑制される。
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、ブラシ28を備えた板ばね70の第1,第2固定爪73,74を、ホルダ部材50を一側面53から他側面54に向けて貫通する貫通部73a,74aと、ホルダ部材50の他側面54上で先端部が板ばね70の長手方向と交差する幅方向に沿う中央部Cを超えた位置に配置される抜け止め部73b,74bと、から形成し、抜け止め部74bとギヤケース31との間に、ブラシ28の熱を板ばね70を介してギヤケース31に伝達する伝熱部材80を設けた。
これにより、ブラシ28周辺の部品点数の削減を図ることができるとともに、板ばね70のホルダ部材50に対する固定強度を向上させて静粛性を向上させることができる。また、板ばね70を、伝熱部材80を介してギヤケース31に接触させたので、ブラシ28が発生する熱を効率良く外部に放熱することができる。
また、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、板ばね70の幅方向に沿う両側に第1,第2固定爪73,74が設けられ、板ばね70の幅方向一側にある抜け止め部73bと、板ばね70の幅方向他側にある抜け止め部74bとが、板ばね70の長手方向に交互に並べられているので、これにより、板ばね70のホルダ部材50に対する固定強度をより高めることができ、ワイパモータ15の静粛性をより向上させることができる。
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、ホルダ部材50の一側面53側に、外部コネクタCOが接続されるコネクタ接続部62aを備えたコネクタ部材60が設けられ、ホルダ部材50とコネクタ部材60との間に、板ばね70の長手方向他側が挟持されているので、これにより、板ばね70のホルダ部材50に対する固定強度をさらに高めることができ、ワイパモータ15の静粛性をさらに向上させることができる。
また、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、ホルダ部材50に位置決め突起53aを設け、コネクタ部材60に位置決め突起53aが係合される位置決め凹部61eを設け、板ばね70の長手方向他側に位置決め突起53aが挿通される位置決め穴72aを設け、位置決め突起53aの断面形状および位置決め穴72aの形状を、互いの相対回転を不能とする略台形形状(非円形形状)とした。これにより、板ばね70のホルダ部材50に対する誤組み付けを防止しつつ、板ばね70のホルダ部材50に対するがたつきを、より確実に抑えることが可能となる。
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、板ばね70に、ブラシ28をホルダ部材50の他側面54側に配置させる屈曲部75を設け、ホルダ部材50の他側面54に、複数の電子部品(キャパシタCPおよびチョークコイルCC)を設けた。これにより、キャパシタCPの接続部分L1,チョークコイルCCの接続部分L2,各ブラシ28a〜28cの接続部分L3を、ホルダ部材50の一側面53側に集約することができ、これらの電気的な接続作業(溶接作業)を容易に行うことが可能となる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、モータ装置としてのワイパモータ15を、フロントウィンドシールド11を払拭するワイパ装置12に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、リヤガラスを払拭するリヤワイパ装置にも適用することができる。
また、上記実施の形態においては、本発明に係るモータ装置を、ワイパモータ15に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、パワーウィンド装置のモータ装置やスライドドア開閉装置のモータ装置等、ギヤ機構を有する他のモータ装置にも適用することができる。ここで、ギヤ機構としては、減速機構33(図2参照)に限らず、アーマチュア軸(回転軸)の回転運動を揺動運動に変換するセクタギヤ等を備えた運動変換機構であっても良い。この運動変換機構を備えたモータ装置の例としては、車載用のリヤワイパ装置が挙げられる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。