特許文献1に記載されたRFシステムにおいては、2以上のフィルタをCA動作させる場合、一のフィルタにおいて、他のフィルタの通過帯域をオープン状態にする必要がある。これにより、CA動作する場合においても、一のフィルタが他のフィルタのインピーダンスの影響を受けずに高周波信号を低損失で伝搬できる。
しかしながら、CA動作させるバンドの組み合わせ多くなり、当該組み合わせが複数存在すると、バンドの組み合わせごとに各フィルタのインピーダンスを調整する必要が生じるため、各フィルタ設計が複雑化し、全てのフィルタのフィルタ特性を最適化することが困難となる。また、CA動作させるバンドの組み合わせ多くなるほど、単極多投型スイッチの選択端子数が多くなるため、単極多投型スイッチが大型化してしまう。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路および通信装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る高周波フロントエンド回路は、アンテナ素子に接続されるアンテナ共通端子と、第1入出力端子および第2入出力端子と、第1端子および第2端子を有し、第1通過帯域を有し、前記第1端子が前記アンテナ共通端子に接続される第1フィルタと、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第2入出力端子との間に配置され、前記第1通過帯域と異なる第2通過帯域を有する第2フィルタと、共通端子および複数の選択端子を有し、前記共通端子が前記第2端子に接続されたスイッチと、前記複数の選択端子のうちの第1選択端子に接続され、前記スイッチと前記第1入出力端子との間に配置された第3フィルタと、を備え、前記第1フィルタを単体で前記アンテナ共通端子側から見た場合の前記第2通過帯域における反射係数は、前記第3フィルタを単体で前記アンテナ共通端子側から見た場合の前記第2通過帯域における反射係数よりも大きい。
分波/合波回路を構成する第1フィルタと第2のフィルタとが、アンテナ共通端子で共通接続された構成の場合、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失は、第2フィルタ単体の挿入損失に加え、第1フィルタのアンテナ共通端子側から見た反射特性の影響を受ける。より具体的には、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失は、第1フィルタの共通端子側から見た第2通過帯域における反射係数が大きいほど減少する。
上記構成によれば、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数が、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きい。ここで、第1フィルタの後段に配置された第3フィルタは、反射特性よりもフィルタ通過特性および減衰特性が重視されるため、第1フィルタと第3フィルタの良好な通過特性を実現可能である。つまり、アンテナ素子と第1フィルタおよび第2フィルタとの間にスイッチを配置することなく、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を効果的に低減できるので、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路を提供することが可能となる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、2以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のうち前記アンテナ共通端子側に配置された1以上の弾性波共振子を単体で前記アンテナ共通端子側から見た場合の前記第2通過帯域における反射係数は、前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のうち前記アンテナ共通端子側に配置された1以上の弾性波共振子を単体で前記アンテナ共通端子側から見た場合の前記第2通過帯域における反射係数よりも大きくてもよい。
複数の弾性波共振子からなるフィルタにおいて、共通端子側から見た反射係数は、共通端子に最近接した1つの弾性波共振子の反射係数が支配的となる。これによれば、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を効果的に低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタの少なくとも一方は、ラダー型のフィルタ構造を有し、前記アンテナ共通端子側に配置された1以上の弾性波共振子は、直列腕共振子および並列腕共振子の少なくとも一方を含んでもよい。
これにより、第1フィルタおよび第3フィルタの低損失性を確保しつつ、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタの少なくとも一方は、縦結合型のフィルタ構造を有してもよい。
これにより、第1のフィルタおよび第3フィルタを、減衰強化等が要求されるフィルタ特性に適応させることが可能となる。
また、前記第2入出力端子は、第2増幅回路に接続され、前記第2フィルタと前記第2増幅回路との間には、フィルタ回路が配置されていなくてもよい。
第2フィルタの後段には、通常、さらに、第2通過帯域に含まれ当該第2通過帯域よりも狭帯域である複数のバンドに対応した複数のフィルタが配置される。しかし、第2フィルタのフィルタ特性よりも高いフィルタ特性を必要としないバンドの信号経路上、つまり第2フィルタと第2増幅回路とに間には、さらなるフィルタ回路が配置されなくてもよい。これにより、高周波フロントエンド回路のさらなる小型化が可能となる。
また、第3入出力端子と、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第3入出力端子との間に配置され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、をさらに備え、前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、および前記第4フィルタは、トリプレクサを構成し、前記第1通過帯域、前記第2通過帯域、および前記第3通過帯域は、ローバンド(LB:698−960MHz)、ミドルバンド(MBa:1710−2200MHz)、ハイバンド(HBa:2300−2690MHz)に適用され、前記第1通過帯域は、前記ローバンド、前記ミドルバンド、および前記ハイバンドのいずれかであってもよい。
これにより、第1フィルタおよび第2フィルタは、LB、MBa、およびHBa対応のトリプレクサに適用される。よって、LB、MBa、およびHBa対応のトリプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、第3入出力端子および第4入出力端子と、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第3入出力端子との間に配置され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第4入出力端子との間に配置され、第4通過帯域を有する第5フィルタと、をさらに備え、前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記第4フィルタ、および前記第5フィルタはクワッドプレクサを構成し、前記第1通過帯域、前記第2通過帯域、前記第3通過帯域、および前記第4通過帯域は、ローバンド(LB:698−960MHz)、ミドルバンド(MBa:1710−2200MHz)、ミドルハイバンド(MHBa:2300−2400MHz)、ハイバンド(HBb:2496−2690MHz)に適用され、前記第1通過帯域は、前記ローバンド、前記ミドルバンド、前記ミドルハイバンド、および前記ハイバンドのいずれかであってもよい。
これにより、第1フィルタおよび第2フィルタは、LB、MBa、MHBaおよびHBa対応のクワッドプレクサに適用される。よって、LB、MBa、MHBaおよびHBa対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、第3入出力端子および第4入出力端子と、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第3入出力端子との間に配置され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第4入出力端子との間に配置され、第4通過帯域を有する第5フィルタと、をさらに備え、前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記第4フィルタ、および前記第5フィルタはクワッドプレクサを構成し、前記第1通過帯域、前記第2通過帯域、前記第3通過帯域、および前記第4通過帯域は、ミドルローバンド(MLB:1475.9−2025MHz)、ミドルバンド(MBb:2110−2200MHz)、ミドルハイバンド(MHBa:2300−2400MHzまたはMHBb:2300−2370MHz)、ハイバンド(HBb:2496−2690MHz)に適用され、前記第1通過帯域は、前記ミドルローバンド、前記ミドルバンド、前記ミドルハイバンド、および前記ハイバンドのいずれかであってもよい。
これにより、第1フィルタおよび第2フィルタは、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサに適用される。よって、MLB、MB、MHBおよびHB対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、第3入出力端子および第4入出力端子と、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第3入出力端子との間に配置され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第4入出力端子との間に配置され、第4通過帯域を有する第5フィルタと、をさらに備え、前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記第4フィルタ、および前記第5フィルタはクワッドプレクサを構成し、前記第1通過帯域、前記第2通過帯域、前記第3通過帯域、および前記第4通過帯域は、ミドルローバンド(MLB:1475.9−2025MHz)、ミドルバンド(MBb:2110−2200MHz)、ミドルハイバンド(MHBa:2300−2400MHzまたはMHBb:2300−2370MHz)、ハイバンド(HBb:2496−2690MHz)に適用され、前記第1通過帯域は、前記ミドルローバンド、前記ミドルバンド、および前記ハイバンドのいずれかであり、前記第2通過帯域は、前記ミドルハイバンドであり、前記第2フィルタと前記第2増幅回路とを接続する信号経路上には、フィルタ回路が配置されていなくてもよい。
これにより、第1フィルタおよび第2フィルタは、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサに適用される。また、MHBaに含まれるバンドの通過特性は、第2フィルタの通過特性で十分である場合には、当該バンドの信号経路上にはフィルタ回路が配置されなくてよい。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、前記第2フィルタと前記第2増幅回路とを接続する信号経路は、Band40a(受信帯域:2300−2370MHz)の送受信を行う経路であってもよい。
これにより、MHBaに含まれるBand40aの通過特性は、第2フィルタの通過特性で十分であるので、Band40aの信号経路上にはフィルタ回路が配置されなくてよい。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、前記第2フィルタと前記第2増幅回路とを接続する前記信号経路は、Band40(受信帯域:2300−2400MHz)の送受信を行う経路であってもよい。
これにより、MHBaに含まれるBand40の通過特性は、第2フィルタの通過特性で十分であるので、Band40の信号経路上にはフィルタ回路が配置されなくてよい。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、さらに、第3入出力端子および第4入出力端子と、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第3入出力端子との間に配置され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、前記アンテナ共通端子に接続され、前記アンテナ共通端子と前記第4入出力端子との間に配置され、第4通過帯域を有する第5フィルタと、を備え、前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記第4フィルタ、および前記第5フィルタはクワッドプレクサを構成し、前記第1通過帯域、前記第2通過帯域、前記第3通過帯域、および前記第4通過帯域は、ミドルローバンド(MLB:1475.9−2025MHz)、ミドルバンド(MBb:2110−2200MHz)、ミドルハイバンド(MHBa:2300−2400MHzまたはMHBb:2300−2370MHz)、ハイバンド(HBb:2496−2690MHz)に適用され、前記第1通過帯域は、前記ミドルローバンド、前記ミドルバンド、および前記ミドルハイバンドのいずれかであり、前記第2通過帯域は、前記ハイバンドであり、前記第2フィルタと前記第2増幅回路とを接続する信号経路上には、フィルタ回路が配置されていなくてもよい。
これにより、第1フィルタおよび第2フィルタは、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサに適用される。また、HBbに含まれるバンドの通過特性は、第2フィルタの通過特性で十分である場合には、当該バンドの信号経路上にはフィルタ回路が配置されなくてよい。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、前記第2フィルタと前記第2増幅回路とを接続する前記信号経路は、Band41(受信帯域:2496−2690MHz)の送受信を行う経路であってもよい。
これにより、HBbに含まれるBand41の通過特性は、第2フィルタの通過特性で十分であるので、Band41の信号経路上にはフィルタ回路が配置されなくてよい。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応のクワッドプレクサを含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも高周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタを構成する前記1以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタでは、(1)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するレイリー波、(2)LiTaO3からなる前記圧電体層を伝搬するリーキー波、および(3)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するラブ波、のいずれかを弾性表面波として利用してもよい。
弾性波共振子の共振点および反共振点よりも低周波域における反射損失は、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波、およびLiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波、のいずれかを弾性表面波として利用する場合、他の弾性波を利用する場合よりも小さい。
よって、第1フィルタが高周波側フィルタであり、第2フィルタが低周波側フィルタである場合において、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第3フィルタでは、弾性波共振子がSMR(Solidly Mounted Resonator)またはFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)で構成されてもよい。
これによれば、第1フィルタの反射係数を増大させつつ、第3フィルタの低損失性および通過帯域の急峻性を確保できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも高周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタを構成する前記1以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタでは、弾性波共振子が、前記IDT電極が一方の主面上に形成された前記圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有し、前記第3フィルタでは、弾性波共振子がSMRまたはFBARで構成されてもよい。
弾性波共振子の共振点および反共振点よりも低周波域における反射係数は、音速膜積層構造を有する場合のほうが、弾性波共振子をSMRまたはFBARで構成する場合よりも大きい。
よって、第1フィルタが高周波側フィルタであり、第2フィルタが低周波側フィルタである場合において、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。また、第1フィルタの反射係数を増大させつつ、第3フィルタの低損失性および通過帯域の急峻性を確保できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも低周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタでは、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する、(2)弾性波共振子がSMRで構成される、および(3)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであってもよい。
弾性波共振子の共振点および反共振点よりも高周波域では、バルク波漏洩による不要波が発生し、当該不要波強度は、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する、弾性波共振子をSMRで構成する、および弾性波共振子をFBARで構成する、のいずれかの場合、最も小さくできる。
よって、第1フィルタが低周波側フィルタであり、第2フィルタが高周波側フィルタである場合において、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第3フィルタでは、(1)弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有する、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する、ならびに(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する、のいずれかであってもよい。
これによれば、第1フィルタの反射係数を増大させつつ、第3フィルタを音速膜積層構造とした場合には、第3フィルタの低損失性および良好な温度特性を確保でき、また、第3フィルタにおいてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタの広い帯域幅を確保できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも低周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタでは、弾性波共振子が、前記IDT電極が一方の主面上に形成された前記圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有し、前記第3フィルタでは、(1)LiTaO3からなる前記圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する、または(2)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用してもよい。
弾性波共振子の共振点および反共振点よりも高周波域では、バルク波漏洩による不要波が発生し、当該不要波強度は、音速膜積層構造を採用した場合の方が、LiTaO3のリーキー波を弾性表面波として利用する、またはLiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合よりも小さくできる。
よって、第1フィルタが低周波側フィルタであり、第2フィルタが高周波側フィルタである場合において、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。さらに、第3フィルタにおいてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタの広い帯域幅を確保できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも低周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタでは、LiTaO3からなる前記圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用し、前記第3フィルタでは、LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用してもよい。
弾性波共振子の共振点および反共振点よりも高周波域では、バルク波漏洩による不要波が発生し、当該不要波強度は、LiTaO3のリーキー波を弾性表面波として利用する場合の方が、LiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合よりも小さくできる。
よって、第1フィルタが低周波側フィルタであり、第2フィルタが高周波側フィルタである場合において、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタの第2通過帯域における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。さらに、第3フィルタにおいてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタの広い帯域幅を確保できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも高周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタでは、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する、(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、および(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、前記第3フィルタでは、弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有してもよい。
弾性波共振子として音速膜積層構造を有する場合には、弾性波共振子の共振周波数の0.76倍付近にレイリー波のスプリアスが発生する。よって、第3フィルタを音速膜積層構造とし、第1フィルタを音速膜積層構造としないことにより、第3フィルタの低損失性および良好な温度特性を確保しつつ第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を大きくできる。
よって、第1フィルタが高周波側フィルタであり、第2フィルタが低周波側フィルタである場合において、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも高周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタでは、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する、(2)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する、(3)弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有する、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、ならびに(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、前記第3フィルタでは、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用してもよい。
LiTaO3のリーキー波を弾性波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の0.76倍付近にレイリー波のスプリアスが発生する。よって、第3フィルタではLiTaO3のリーキー波を弾性波として利用し、第1フィルタではLiTaO3のリーキー波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、効果的に大きくできる。
よって、第1フィルタが高周波側フィルタであり、第2フィルタが低周波側フィルタである場合において、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも低周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタでは、(1)弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有する、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する、(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、ならびに(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、前記第3フィルタでは、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用してもよい。
LiNbO3のレイリー波を弾性波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の1.2倍付近に高次モードが発生する。よって、第3フィルタではLiNbO3のレイリー波と弾性波として利用し、第1フィルタではLiNbO3のレイリー波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、効果的に大きくできる。
よって、第1フィルタが低周波側フィルタであり、第2フィルタが高周波側フィルタである場合において、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1通過帯域は前記第2通過帯域よりも低周波側に位置し、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子を含み、前記第1フィルタでは、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する、(2)弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有する、(3)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、ならびに(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、前記第3フィルタでは、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用してもよい。
LiNbO3のラブ波を弾性波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の1.2倍付近に高次モードが発生する。よって、第3フィルタではLiNbO3のラブ波と弾性波として利用し、第1フィルタではLiNbO3のラブ波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、効果的に大きくできる。
よって、第1フィルタが低周波側フィルタであり、第2フィルタが高周波側フィルタである場合において、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタでは、LiTaO3からなる前記圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用し、前記第1フィルタを構成する前記IDT電極と、前記第3フィルタを構成する前記IDT電極とでは、膜厚またはデューティーが異なってもよい。
LiTaO3のリーキー波を弾性波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の低周波側にレイリー波のスプリアスが発生する。これに対して、第1フィルタと第3フィルタとで、IDT電極の膜厚またはデューティーを異ならせることにより、第1フィルタにおけるレイリー波スプリアスの発生周波数を、第2通過帯域外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を、効果的に大きくでき、第2のフィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタでは、弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された前記圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有し、前記第1フィルタと前記第3フィルタとでは、前記IDT電極の膜厚、前記IDT電極のデューティー、および前記低音速膜の膜厚、のいずれかが異なってもよい。
音速膜積層構造を採用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の低周波側にレイリー波のスプリアスが発生する。これに対して、第1フィルタと第3フィルタとで、IDT電極の膜厚またはデューティーを異ならせることにより、第1フィルタにおけるレイリー波スプリアスの発生周波数を、第2通過帯域外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を効果的に大きくでき、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極と当該IDT電極上に形成された保護膜で構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタでは、(1)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するレイリー波、または(2)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するラブ波、を弾性表面波として利用し、前記第1フィルタと前記第3フィルタとでは、前記IDT電極の膜厚、前記IDT電極のデューティー、および前記保護膜の膜厚、のいずれかが異なってもよい。
LiNbO3のレイリー波、またはLiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側に高次モードが発生する。これに対して、第1フィルタと第3フィルタとで、IDT電極の膜厚、IDT電極のデューティー、または低音速膜の膜厚を異ならせることにより、第1フィルタにおける高次モードの発生周波数を、第2通過帯域外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を効果的に大きくでき、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタでは、弾性波共振子が、IDT電極が一方の主面上に形成された前記圧電体層、前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板、および前記高音速支持基板と前記圧電体層との間に配置され前記圧電体層を伝搬する弾性波音速よりも伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜で構成された音速膜積層構造を有し、前記高音速支持基板はシリコン結晶で構成され、前記第1フィルタと前記第3フィルタとでは、前記圧電体層の膜厚、前記低音速膜の膜厚、および前記高音速支持基板のシリコン結晶方位、のいずれかが異なってもよい。
音速膜積層構造を採用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側に高次モードが発生する。これに対して、第1フィルタと第3フィルタとで、圧電体層の膜厚、低音速膜の膜厚、または高音速支持基板のシリコン結晶方位を異ならせることにより、第1フィルタにおける高次モードの発生周波数を、第2通過帯域外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を効果的に大きくでき、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタを構成する前記2以上の弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層を有する基板と当該基板上に形成されたIDT電極とで構成された弾性表面波共振子であり、前記第1フィルタおよび前記第3フィルタでは、(1)LiTaO3からなる前記圧電体層を伝搬するリーキー波、または(2)LiNbO3からなる前記圧電体層を伝搬するラブ波、を弾性表面波として利用し、前記第1フィルタと前記第3フィルタとでは、前記IDT電極の膜厚が異なってもよい。
LiTaO3のリーキー波またはLiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側にバルク波(不要波)が発生する。これに対して、第1フィルタと第3フィルタとで、IDT電極の膜厚を異ならせることにより、第1フィルタにおけるバルク波の発生周波数を、第2通過帯域外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタの第2通過帯域における反射係数を効果的に大きく小さくでき、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、前記第1入出力端子に接続された第1増幅回路と、前記第2入出力端子に接続された第2増幅回路と、をさらに備えてもよい。
これにより、増幅回路を含む高周波フロントエンド回路において、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失を低減することが可能となる。
また、本発明の一態様に係る通信装置は、前記アンテナ素子で送受信される高周波信号を処理するRF信号処理回路と、前記アンテナ素子と前記RF信号処理回路との間で前記高周波信号を伝達する上記記載の高周波フロントエンド回路と、を備える。
これにより、第2フィルタの第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した挿入損失が低減された小型の通信装置を提供できる。
本発明によれば、CA動作時であっても高周波信号の伝搬損失が低減された小型の高周波フロントエンド回路または通信装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
(実施の形態1)
[1.1 高周波フロントエンド回路の構成]
図1Aは、実施の形態1に係る高周波フロントエンド回路1の回路構成図である。同図に示すように、高周波フロントエンド回路1は、第1フィルタ11と、第2フィルタ12と、第3フィルタ13と、スイッチ21と、アンテナ共通端子101と、入出力端子102および103とを備える。高周波フロントエンド回路1は、アンテナ共通端子101で共通接続された第1フィルタ11および第2フィルタ12を備える複合弾性波フィルタ装置である。
共通端子101は、例えば、アンテナ素子に接続可能であり、入出力端子102および103は、増幅回路を介して高周波信号処理回路に接続可能である。
第1フィルタ11は、第1端子および第2端子を有し、第1端子がアンテナ共通端子101に接続され、第1通過帯域を有するフィルタである。
第2フィルタ12は、アンテナ共通端子101に接続され、アンテナ共通端子101と入出力端子103との間に配置され、第1通過帯域と異なる第2通過帯域を有するフィルタである。
第1フィルタ11および第2フィルタ12は、分波/合波回路を構成している。
スイッチ21は、共通端子21c、選択端子21a(第1選択端子)および21bを有し、共通端子21cが第1フィルタ11の第2端子に接続されたスイッチ回路である。
第3フィルタ13は、選択端子21a(第1選択端子)に接続され、スイッチ21と入出力端子102との間に配置されたフィルタである。
なお、スイッチ21の選択端子21b(第2選択端子)には、第3フィルタと通過帯域が異なるフィルタが接続されていれもよいし、また、増幅回路が直接接続されていてもよい。また、スイッチ21の選択端子の数は3以上であってもよい。また、選択端子21b(第2選択端子)に接続されるフィルタの通過帯域は、第3フィルタの通過帯域と重複していてもよい。この場合であっても、スイッチ21により、第1フィルタ11を通過する高周波信号を、選択端子21aまたは21bを経由する1経路に絞って伝搬させることが可能となる。
また、第2フィルタ12の後段(アンテナ共通端子101と反対側)の回路構成は、第1フィルタ11の後段の回路構成と同じ回路構成であってもよいし、また、スイッチが配置されず第2フィルタ12が増幅回路と直接接続されていてもよい。
図1Bは、実施の形態1に係る高周波フロントエンド回路1の反射特性を説明する図である。同図には、アンテナ共通端子101で共通接続された第1フィルタ11および第2フィルタ12の通過特性、および、第1フィルタ11および第3フィルタ13の反射特性が示されている。ここで、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路1において、第1フィルタ11を単体でアンテナ共通端子101側から見た場合の通過帯域12H(第2通過帯域)における反射係数は、第3フィルタ13を単体で共通端子101側から見た場合の通過帯域12H(第2通過帯域)における反射係数よりも大きい。
なお、第1フィルタと第3フィルタとの周波数関係は、図1Bのように、第1フィルタ11が低周波側であって第2フィルタが高周波側であることに限定されず、第1フィルタ11が高周波側であって第2フィルタが低周波側であってもよい。
[1.2 高周波フロントエンド回路の第1フィルタ、第3フィルタ、またはその両方に起因した第2フィルタの挿入損失低減効果]
図2は、2つのフィルタ(フィルタAおよびフィルタB)をアンテナ共通端子で共通接続した場合の課題を説明する図である。図2に示すように、フィルタA(通過帯域A)およびフィルタB(通過帯域B)が、アンテナ共通端子で共通接続されている分波回路を想定する。この場合における分波回路の挿入損失を考える。
フィルタAにおける通過帯域Aの挿入損失は、フィルタA自体の挿入損失に加え、フィルタBの影響を受けて悪化する。ここで、フィルタAの挿入損失のうちフィルタBに起因した挿入損失は、フィルタBの通過帯域Aにおける反射特性が影響する。より具体的には、フィルタAの挿入損失のうちフィルタBに起因した挿入損失は、アンテナ共通端子で共通接続される前のフィルタBにおいてアンテナ共通端子側からフィルタBを見た場合の反射係数が大きいほど、フィルタAの挿入損失のうちフィルタBに起因した挿入損失は低減する。
共通接続された相手方のフィルタに起因した上記挿入損失を低減する構成を本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路1に適用させる場合、アンテナ共通端子101から入出力端子103へ伝搬する第2通過帯域の高周波信号を、共通接続された相手方のフィルタに起因した挿入損失を抑制して通過させるには、アンテナ共通端子101から入出力端子102へ伝搬しようとする第2通過帯域の高周波信号の反射係数を大きくすることが必要となる。つまり、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減させるには、直列接続された第1フィルタ11および第3フィルタ13をアンテナ共通端子101から見た場合の第2通過帯域における反射係数を大きくしておくことが必要となる。
さらに、複数のフィルタが直列接続されている場合、直列接続されたフィルタのうち、アンテナ共通端子に近接するフィルタのほうが、アンテナ共通端子側から直列接続されたフィルタを見た場合の反射係数への寄与度が高い。つまり、第2フィルタ12の挿入損失のうち共通接続された相手方のフィルタに起因した挿入損失を低減させるには、直列接続された第1フィルタ11および第3フィルタ13のうち、アンテナ共通端子101に近い第1フィルタ11の第2通過帯域における反射係数を大きくしておくことが効果的である。
一方で、直列接続された第1フィルタ11および第3フィルタ13の反射特性を上記のように向上させつつ、直列接続された第1フィルタ11および第3フィルタ13の通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を要求仕様等に応じて確保する必要がある。フィルタ構成によっては、反射特性と上記フィルタ特性とは両立しないケースがある。
以上の観点から、発明者らは、直列接続された第1フィルタ11および第3フィルタ13において、反射特性に影響の大きい第1フィルタ11では反射係数を大きくすることを優先させ、反射特性に影響の小さい第3フィルタ13では、通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を確保する構成をとることを見出した。
本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路1の構成によれば、第1フィルタ11の第2通過帯域における反射係数が、第3フィルタ13の第2通過帯域における反射係数よりも大きい。ここで、後段に配置された第3フィルタ13は、反射特性よりもフィルタ通過特性および減衰特性が重視されるため、アンテナ共通端子101側から第1フィルタ11、スイッチ21、および第3フィルタ13を見た場合の第2通過帯域における反射係数を、第3フィルタ13のフィルタ特性を劣化させずに、より効果的に大きくできる。これにより、アンテナ素子と第1フィルタ11および第2フィルタ12で構成される分波/合波回路との間にスイッチを配置することなく、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を効果的に低減できるので、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性を維持できる小型の高周波フロントエンド回路1を提供することが可能となる。
なお、第1フィルタ11の第2通過帯域における反射係数は、0.9以上であることが好ましい。
また、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路1において、アンテナ共通端子101で共通接続されたフィルタは、第1フィルタ11および第2フィルタ12の2つに限定されず、3つ以上のフィルタがアンテナ共通端子101で共通接続されていてもよい。
[1.3 変形例に係る分波/合波回路の構成]
図3Aは、実施の形態1の変形例1に係る分波回路の回路構成図である。同図には、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路の分波/合波回路に適用されるトリプレクサの回路構成が例示されている。
本変形例に係る高周波フロントエンド回路は、分波/合波回路として、アンテナ共通端子101に接続されたLB(ローバンド:698−960MHz)フィルタ11Lと、MBa(ミドルバンド:1710−2200MHz)フィルタ11M1と、HBa(ハイバンド:2300−2690MHz)フィルタ11H1とを備える。
つまり、変形例1に係る高周波フロントエンド回路は、第1フィルタ11および第2フィルタ12のほか、さらに、アンテナ共通端子101に接続され、第3通過帯域を有する第4フィルタを備える。ここで、実施の形態1に係る第1フィルタ11は、本変形例におけるLBフィルタ11L、MBaフィルタ11M1、およびHBaフィルタ11H1のいずれか任意の1つに相当する。
図3Bは、実施の形態1の変形例2に係る分波回路の回路構成図である。同図には、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路の分波/合波回路に適用されるクワッドプレクサの回路構成が例示されている。
本変形例に係る高周波フロントエンド回路は、分波/合波回路として、アンテナ共通端子101に接続されたLB(ローバンド:698−960MHz)フィルタ11Lと、MBa(ミドルバンド:1710−2200MHz)フィルタ11M1と、MHBa(ミドルハイバンド:2300−2400MHz)フィルタ11MH1と、HBb(ミドルハイバンド:2496−2690MHz)フィルタ11H2とを備える。
つまり、変形例2に係る高周波フロントエンド回路は、第1フィルタ11および第2フィルタ12のほか、さらに、アンテナ共通端子101に接続され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、第4通過帯域を有する第5フィルタとを備える。ここで、実施の形態1に係る第1フィルタ11は、本変形例におけるLBフィルタ11L、MBaフィルタ11M1、MHBaフィルタ11MH1、およびHBbフィルタ11H2のいずれか任意の1つに相当する。
図3Cは、実施の形態1の変形例3に係る分波回路の回路構成図である。同図には、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路の分波/合波回路に適用されるクワッドプレクサの回路構成が例示されている。
本変形例に係る高周波フロントエンド回路は、分波/合波回路として、アンテナ共通端子101に接続されたMLB(ミドルローバンド:1475.9−2025MHz)フィルタ11L1と、MBb(ミドルバンド:2110−2200MHz)フィルタ11M2と、MHBa(ミドルハイバンド:2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)フィルタ11MH1と、HBb(ミドルハイバンド:2496−2690MHz)フィルタ11H2とを備える。
つまり、変形例3に係る高周波フロントエンド回路は、第1フィルタ11および第2フィルタ12のほか、さらに、アンテナ共通端子101に接続され、第3通過帯域を有する第4フィルタと、第4通過帯域を有する第5フィルタとを備える。ここで、実施の形態1に係る第1フィルタ11は、本変形例におけるMLBフィルタ11L1、MBbフィルタ11M2、MHBaフィルタ11MH1、およびHBbフィルタ11H2のいずれか任意の1つに相当する。
[1.4 変形例4に係る高周波フロントエンド回路の構成]
図4は、実施の形態1の変形例4に係る通信装置3の回路構成図である。同図には、本実施の形態に係る通信装置3が示されている。通信装置3は、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と、高周波信号処理回路(RFIC)40とで構成されている。
高周波フロントエンド回路2は、アンテナ共通端子101と、分波回路10および14と、スイッチ21および22と、フィルタ回路15と、増幅回路30とを備える。
分波回路10は、アンテナ共通端子101に接続され、ローパスフィルタ10A(通過帯域:699−960MHz)およびハイパスフィルタ10B(通過帯域:1475.9−2690MHz)で構成されている。
分波回路14は、ハイパスフィルタ10Bに接続され、MLBフィルタ11A(1475.9−2025MHz)、MBbフィルタ11B(2110−2200MHz)、MHBaフィルタ11C(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)、およびHBbフィルタ11D(2496−2690MHz)で構成されている。
スイッチ21は、スイッチ21A、21C、および21Dで構成されている。スイッチ22は、スイッチ22A、22B、22C、および22Dで構成されている。
フィルタ回路15は、フィルタ13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13j、および13kで構成されている。
増幅回路は、LNA31、32、33、34、35、および36で構成されている。
分波回路14は、高周波信号の周波数帯域を、4つの周波数帯域群に分割する。より具体的には、MLBフィルタ11AはBa(バンドa)、Bb(バンドb)、Bc(バンドc)、Bd(バンドd)、およびBe(バンドe)の信号を通過させ、MBbフィルタ11BはBp(バンドp)の信号を通過させ、MHBaフィルタ11CはBf(バンドf)およびBg(バンドg)の信号を通過させ、HBbフィルタ11DはBh(バンドh)、Bj(バンドj)、およびBk(バンドk)の信号を通過させる。
スイッチ21Aは、共通端子がMLBフィルタ11Aに接続され、各選択端子が、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)に接続されている。
スイッチ21Cは、共通端子がMHBaフィルタ11Cに接続され、各選択端子が、フィルタ13f(Bf)および13g(Bg)に接続されている。
スイッチ21Dは、共通端子がHBbフィルタ11Dに接続され、各選択端子が、フィルタ13h(Bh)、13j(Bj)、および13k(Bk)に接続されている。
スイッチ22Bは、共通端子がLNA31に接続され、各選択端子がMBbフィルタ11Bおよびフィルタ13dに接続されている。
スイッチ22Aは、共通端子がLNA32に接続され、各選択端子がフィルタ13c、13b、および13eに接続されている。
スイッチ22Dは、共通端子がLNA33に接続され、各選択端子がフィルタ13k、13h、および13jに接続されている。
スイッチ22Cは、共通端子がLNA34に接続され、各選択端子がフィルタ13fおよび13gに接続されている。
なお、MLBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)は、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。MBbフィルタ11B(2110−2200MHz)は、Bpの各通過帯域を包含している。MHBaフィルタ11C(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)は、フィルタ13f(Bf)および13g(Bg)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。HBbフィルタ11D(2496−2690MHz)は、フィルタ13h(Bh)、13j(Bj)、および13k(Bk)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。
高周波信号処理回路(RFIC)40は、LNA31〜36の出力端子に接続され、アンテナ素子から各バンドの受信信号経路を介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号を、後段のベースバンド信号処理回路へ出力する。RF信号処理回路40は、例えば、RFICである。また、高周波信号処理回路(RFIC)40は、使用されるバンドに応じて、制御信号S1A、S1C、S1D、S2A、S2B、S2C、およびS2Dを、それぞれ、スイッチ21A、21C、21D、22A、22B、22C、および22Dに出力する。これにより、各スイッチは信号経路の接続を切り替える。
上記構成を有する通信装置3において、例えば、スイッチ21A、21Cおよび21Dを切り替えることにより、MLB(1475.9−2025MHz)、MBb(2110−2200MHz)、MHBa(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)、およびHBb(2496−2690MHz)から、それぞれ1バンドを選択することにより、CA動作が可能である。
ここで、実施の形態1に係る高周波フロントエンド回路1の構成を、本変形例に係る高周波フロントエンド回路2に適用することができる。つまり、高周波フロントエンド回路1における第1フィルタ11および第3フィルタ13の組み合わせとして、(1)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13a(Ba)、(2)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13b(Bb)、(3)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13c(Bc)、(4)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13d/13e(Bd/Be)、(5)MHBaフィルタ11Cおよびフィルタ13f(Bf)、(6)MHBaフィルタ11Cおよびフィルタ13g(Bg)、(7)HBbフィルタ11Dおよびフィルタ13h(Bh)、(8)HBbフィルタ11Dおよびフィルタ13j(Bj)、HBbフィルタ11Dおよびフィルタ13k(Bk)が挙げられる。また、第2フィルタ12として、MLBフィルタ11A、MBbフィルタ11B、MHBaフィルタ11C、およびHBbフィルタ11Dの少なくとも1つが挙げられる。
例えば、第1フィルタ11および第3フィルタ13の組み合わせとして、(1)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13a(Ba)が選択され、第2フィルタ12として、MBbフィルタ11Bが選択された場合には、MLBフィルタ11Aの2110−2200MHz(MBbフィルタ11Bの通過帯域)における反射係数が、フィルタ13aの2110−2200MHz(MBbフィルタ11Bの通過帯域)における反射係数よりも大きく小さく設定される。
また、例えば、第1フィルタ11および第3フィルタ13の組み合わせとして、(1)MLBフィルタ11Aおよびフィルタ13a(Ba)が選択され、第2フィルタ12として、MBbフィルタ11B、MHBaフィルタ11C、およびHBbフィルタ11Dの3フィルタが選択された場合には、MLBフィルタ11Aの2110−2200MHz(MBbフィルタ11Bの通過帯域)、2300−2400MHzまたは2300−2370MHz(MHBaフィルタ11Cの通過帯域)、および2496−2690MHz(HBbフィルタ11Dの通過帯域)における反射係数が、フィルタ13aの2110−2200MHz、2300−2400MHzまたは2300−2370MHz、および2496−2690MHzにおける反射係数よりも大きく設定される。
以上の構成によれば、CA動作させるバンドの数が多くなっても、分波回路14およびフィルタ回路15の反射特性の関係を、実施の形態1における第1フィルタ11および第3フィルタ13の反射特性の関係となるよう設定することにより、例えば3GPP規格に規定されている全てのCA組み合わせに対応させることが可能となる。また、分波回路14およびフィルタ回路15の反射特性の関係を設定しておくことで、後段のフィルタ回路15に対応するバンドを容易に変更することが可能となる。よって、仕向け地ごとに最適なバンド構成のモジュールを簡素化された回路設計で提供できる。
なお、本変形例では、アンテナ素子からの高周波信号を受信して高周波信号処理回路40へ伝達する、受信用の高周波フロントエンド回路を例示したが、送信用または送受信用の高周波フロントエンド回路であってもよい。送信用の高周波フロントエンド回路の場合には、増幅回路30はパワーアンプで構成される。また、送受信用の高周波フロントエンド回路の場合には、フィルタ回路15は、各バンドに割り当てられたデュプレクサで構成される。
[1.5 変形例5に係る高周波フロントエンド回路の構成]
図5Aは、実施の形態1の変形例5に係る高周波フロントエンド回路2Aの回路構成図である。本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Aは、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と比較して、フィルタ13gおよび13kが配置されていない点が異なる。以下、本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Aについて、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
高周波フロントエンド回路2Aにおいて、MHBaフィルタ11Cの通過帯域が2300−2370MHzである場合には、例えば、MHBaフィルタ11Cの後段に配置されるB40a(Bgに相当:通過帯域2300−2370MHz)の通過帯域と一致している。一方、MHBaフィルタ11Cの後段に配置されるフィルタ13fは、例えば、B30(通過帯域2350−2360MHz)に対応しており、MHBaフィルタ11Cの通過帯域2300−2370MHzに含まれる。ここで、B40aの信号の通過特性は、MHBaフィルタ11Cの通過特性で十分であるので、B40aの信号経路上にはフィルタ13gを配置する必要がない。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応の分波回路14(クワッドプレクサ)を含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性が可能な、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、高周波フロントエンド回路2Aにおいて、MHBaフィルタ11Cの通過帯域が2300−2400MHzである場合には、例えば、MHBaフィルタ11Cの後段に配置されるB40(Bgに相当:通過帯域2300−2400MHz)の通過帯域と一致している。一方、MHBaフィルタ11Cの後段に配置されるフィルタ13fは、例えば、B30(通過帯域2350−2360MHz)に対応しており、MHBaフィルタ11Cの通過帯域2300−2400MHzに含まれる。ここで、B40の信号の通過特性は、MHBaフィルタ11Cの通過特性で十分であるので、B40の信号経路上にはフィルタ13gを配置する必要がない。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応の分波回路14(クワッドプレクサ)を含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性が可能な、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
また、高周波フロントエンド回路2Aにおいて、HBbフィルタ11Dの通過帯域は2496−2690MHzとなっており、HBbフィルタ11Dの後段に配置されるB41の通過帯域と一致している。一方、HBbフィルタ11Dの後段に配置されるフィルタ13hは、例えば、B38(通過帯域2570−2620MHz)に対応しており、HBbフィルタ11Dの通過帯域2496−2690MHzに含まれる。また、HBbフィルタ11Dの後段に配置されるフィルタ13jは、例えば、B7(通過帯域2620−2690MHz)に対応しており、HBbフィルタ11Dの通過帯域2496−2690MHzに含まれる。ここで、B41の信号の通過特性は、HBbフィルタ11Dの通過特性で十分であるので、B41の信号経路上にはフィルタ13kを配置する必要がない。よって、MLB、MBb、MHBaおよびHBb対応の分波回路14(クワッドプレクサ)を含む構成において、CA動作時であっても低損失な信号伝搬特性が可能な、より小型の高周波フロントエンド回路を実現できる。
[1.6 変形例6に係る高周波フロントエンド回路の構成]
図5Bは、実施の形態1の変形例6に係る高周波フロントエンド回路2Bの回路構成図である。本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Bは、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と比較して、送信(Tx)バイパス経路が付加されている点が異なる。以下、本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Bについて、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
高周波フロントエンド回路2Bは、アンテナ共通端子101と、分波回路10(ローパスフィルタ10A、ハイパスフィルタ10B)および14(MLBフィルタ11A、MBbフィルタ11B、MHBaフィルタ11C、HBbフィルタ11D)と、スイッチ21(スイッチ21E、スイッチ21C、スイッチ21D)および22(図示せず)と、フィルタ回路15(フィルタ13a−13k)と、増幅回路30(図示せず)とを備える。
スイッチ21は、スイッチ21E、21C、および21Dで構成されている。
スイッチ21Eは、共通端子がMLBフィルタ11Aに接続され、各選択端子が、送信(Tx)バイパス経路、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)に接続されている。
送信(Tx)バイパス経路は、MLB/LMBに属するバンドの送信信号を伝搬する経路であって、例えば、バンドa、バンドb、バンドc、バンドd、およびバンドeの少なくとも1つの送信帯域の信号を伝搬する経路である。
なお、MLBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)は、送信(Tx)バイパス経路を伝搬する送信通過帯域、および、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。MBbフィルタ11B(2110−2200MHz)は、Bpの各通過帯域を包含している。MHBaフィルタ11C(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)は、フィルタ13f(Bf)および13g(Bg)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。HBbフィルタ11D(2496−2690MHz)は、フィルタ13h(Bh)、13j(Bj)、および13k(Bk)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。
上記構成により、送信(Tx)バイパス経路、スイッチ21E、MLBフィルタ11A、ハイパスフィルタ10B、およびアンテナ共通端子101を結ぶ信号経路を、送信信号経路として使用することが可能となる。
上記構成によれば、MLB/LMBに属する送信信号と、MB、MHB、HBに属する受信信号とを、アンテナ共通端子101に接続されるアンテナで、CA動作させることも可能となる。つまり、アンテナ共通端子101に接続されるアンテナを、受信用としてだけでなく、送受共用のアンテナとして使用できる。
なお、本変形例では、送信(Tx)バイパス経路がMLB/LMB内のバンドを切り替えるスイッチ21Eに接続された構成としたが、送信(Tx)バイパス経路がMHB内のバンドを切り替えるスイッチ21C、または、HB内のバンドを切り替えるスイッチ21Dに接続された構成であってもよい。
[1.7 変形例7に係る高周波フロントエンド回路の構成]
図5Cは、実施の形態1の変形例7に係る高周波フロントエンド回路2Cの回路構成図である。本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Cは、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と比較して、送信フィルタを含む送信(Tx)経路が付加されている点が異なる。以下、本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Cについて、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
高周波フロントエンド回路2Cは、アンテナ共通端子101と、分波回路10(ローパスフィルタ10A、ハイパスフィルタ10B)および14(MLBフィルタ11A、MBbフィルタ11B、MHBaフィルタ11C、HBbフィルタ11D)と、スイッチ21(スイッチ21F、スイッチ21C、スイッチ21D)および22(図示せず)と、フィルタ回路15(フィルタ13a−13kおよび送信フィルタ13t)と、増幅回路30(図示せず)とを備える。
スイッチ21は、スイッチ21F、21C、および21Dで構成されている。
スイッチ21Fは、共通端子がMLBフィルタ11Aに接続され、各選択端子が、送信(Tx)経路、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)に接続されている。スイッチ21Fは、共通端子と2以上の選択端子とを同時に接続することが可能なスイッチである。
送信(Tx)経路には、送信フィルタ13tが配置されている。
なお、MLBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)は、送信フィルタ13t、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。MBbフィルタ11B(2110−2200MHz)は、Bpの各通過帯域を包含している。MHBaフィルタ11C(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)は、フィルタ13f(Bf)および13g(Bg)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。HBbフィルタ11D(2496−2690MHz)は、フィルタ13h(Bh)、13j(Bj)、および13k(Bk)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。
上記構成により、送信(Tx)経路、スイッチ21F、MLBフィルタ11A、ハイパスフィルタ10B、およびアンテナ共通端子101を結ぶ送信信号経路と、アンテナ共通端子101、ハイパスフィルタ10B、MLBフィルタ11A、スイッチ21F、および、フィルタ13a〜13eのいずれか、を結ぶ受信信号経路とを同時に使用することが可能となる。これにより、同一バンドにおいて同時送受信をすることも可能となる。また、アンテナ共通端子101に接続されるアンテナを、受信用としてだけでなく、送受共用のアンテナとして使用できる。
さらに、上記送信(Tx)経路が、高周波フロントエンド回路2Cと異なる高周波フロントエンド回路にも接続されるような構成が想定され、この場合、高周波フロントエンド回路2Cと、当該異なる高周波フロントエンド回路との2系統で、2つのアンテナによる、いわゆる2アップリンクによる送信動作をすることが可能となる。
なお、本変形例では、送信(Tx)経路がMLB/LMB内のバンドを切り替えるスイッチ21Fに接続された構成としたが、送信(Tx)経路がMHB内のバンドを切り替えるスイッチ21C、または、HB内のバンドを切り替えるスイッチ21Dに接続された構成であってもよい。
[1.8 変形例8に係る高周波フロントエンド回路の構成]
図5Dは、実施の形態1の変形例8に係る高周波フロントエンド回路2Dの回路構成図である。本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Dは、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と比較して、デュプレクサを含む送受信(Tx/Rx)経路が付加されている点が異なる。以下、本変形例に係る高周波フロントエンド回路2Dについて、変形例4に係る高周波フロントエンド回路2と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
高周波フロントエンド回路2Dは、アンテナ共通端子101と、分波回路10(ローパスフィルタ10A、ハイパスフィルタ10B)および14(MLBフィルタ11A、MBbフィルタ11B、MHBaフィルタ11C、HBbフィルタ11D)と、スイッチ21(スイッチ21G、スイッチ21C、スイッチ21D)および22(図示せず)と、フィルタ回路15(フィルタ13a−13k)と、増幅回路30(図示せず)とを備える。
スイッチ21は、スイッチ21G、21C、および21Dで構成されている。
スイッチ21Gは、共通端子がMLBフィルタ11Aに接続され、各選択端子が、送受信(Tx/Rx)経路、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)に接続されている。
送受信(Tx/Rx)経路には、送信フィルタ13t1および受信フィルタ13r1で構成されたデュプレクサが配置されている。
なお、MLBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)は、送受信(Tx/Rx)経路に配置されたデュプレクサ、フィルタ13a(Ba)、13b(Bb)、13c(Bc)、13d/13e(Bd/Be)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。MBbフィルタ11B(2110−2200MHz)は、Bpの各通過帯域を包含している。MHBaフィルタ11C(2300−2400MHzまたは2300−2370MHz)は、フィルタ13f(Bf)および13g(Bg)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。HBbフィルタ11D(2496−2690MHz)は、フィルタ13h(Bh)、13j(Bj)、および13k(Bk)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。
上記構成により、上記送受信(Tx/Rx)経路、スイッチ21G、MLBフィルタ11A、ハイパスフィルタ10B、およびアンテナ共通端子101を結ぶ信号経路を使用することが可能となる。これにより、上記送受信(Tx/Rx)経路を伝搬する同一バンドの送信信号および受信信号を同時送受信することも可能となる。また、アンテナ共通端子101に接続されるアンテナを、受信用としてだけでなく、送受共用のアンテナとして使用できる。
さらに、上記送受信(Tx/Rx)経路が、高周波フロントエンド回路2Dと異なる高周波フロントエンド回路にも接続されるような構成が想定され、この場合、高周波フロントエンド回路2Dと、当該異なる高周波フロントエンド回路との2系統で、2つのアンテナによる、いわゆる2アップリンクによる送信動作をすることが可能となる。
なお、本変形例では、送受信(Tx/Rx)経路がMLB/LMB内のバンドを切り替えるスイッチ21Gに接続された構成としたが、送受信(Tx/Rx)経路がMHB内のバンドを切り替えるスイッチ21C、または、HB内のバンドを切り替えるスイッチ21Dに接続された構成であってもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1フィルタ11と第2フィルタ12とがアンテナ共通端子で共通接続され、第1フィルタ11と第3フィルタ13とがスイッチを介して直列接続される構成において、反射特性に影響の大きい第1フィルタ11では反射係数を大きくすることを優先させ、反射特性に影響の小さい第3フィルタ13では、通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を確保する構成をとることが好ましいことを説明した。本実施の形態では、上記観点から、第1フィルタ11および第3フィルタ13の構造の組み合わせについて例示する。
本実施の形態において、第1フィルタ11および第3フィルタ13は、弾性波共振子で構成されており、ラダー型のフィルタ構造を有していてもよい。この場合、アンテナ共通端子101側に配置された1以上の弾性波共振子は、直列腕共振子および並列腕共振子の少なくとも一方を含んでいる。これにより、第1フィルタ11および第3フィルタ13の低損失性を確保しつつ、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、第1フィルタ11および第3フィルタ13は、縦結合型のフィルタ構造を有していてもよい。これにより、第1フィルタ11および第3フィルタ13を、減衰強化等が要求されるフィルタ特性に適応させることが可能となる。
また、弾性波共振子の構造としては、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子、SMR(Solidly Mounted Resonator)、およびBAW(Bulk Acoustic Wave)を用いたFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)などが例示される。
ここで、第1フィルタ11および第3フィルタ13のそれぞれは、2以上の弾性波共振子を含み、第1フィルタ11を構成する上記2以上の弾性波共振子のうちアンテナ共通端子101側に配置された1以上の弾性波共振子を単体でアンテナ共通端子101側から見た場合の第2通過帯域における反射係数は、第3フィルタ13を構成する上記2以上の弾性波共振子のうちアンテナ共通端子101側に配置された1以上の弾性波共振子を単体でアンテナ共通端子101側から見た場合の第2通過帯域における反射係数よりも大きくてもよい。
複数の弾性波共振子からなるフィルタにおいて、アンテナ共通端子101側から見た反射係数は、アンテナ共通端子101に最近接した1つの弾性波共振子の反射係数が支配的となる。これによれば、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を効果的に低減できる。
以下では、前段の第1フィルタ11で反射係数を増大させ、後段の第3フィルタで通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を向上させる具体的構成の組み合わせを例示する。
まず、弾性波共振子の構造の一例について説明する。
[2.1 弾性波共振子構造]
図6は、実施の形態2に係るフィルタ共振子を模式的に表す平面図および断面図の一例である。図6では、本実施の形態に係る弾性波共振子(直列腕共振子および並列腕共振子)が、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子である場合を示している。なお、同図には、第1フィルタ11および第3フィルタ13を構成する複数の共振子のうち、1つの弾性波共振子の構造を表す平面摸式図および断面模式図が例示されている。なお、図6に示された弾性波共振子は、上記複数の共振子の典型的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数や長さなどは、これに限定されない。
第1フィルタ11および第3フィルタ13の各共振子は、圧電体層83を有する基板80と、櫛形形状を有するIDT(InterDigital Transducer)電極71aおよび71bとで構成されている。
図6の平面図に示すように、圧電体層83の上には、互いに対向する一対のIDT電極71aおよび71bが形成されている。IDT電極71aは、互いに平行な複数の電極指172aと、複数の電極指172aを接続するバスバー電極171aとで構成されている。また、IDT電極71bは、互いに平行な複数の電極指172bと、複数の電極指172bを接続するバスバー電極171bとで構成されている。複数の電極指172aおよび172bは、X軸方向と直交する方向に沿って形成されている。
また、複数の電極指172aおよび172b、ならびに、バスバー電極171aおよび171bで構成されるIDT電極71は、図7の断面図に示すように、密着層72と主電極層73との積層構造となっている。
密着層72は、圧電体層83と主電極層73との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。密着層72の膜厚は、例えば、10nm程度である。
主電極層73は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。主電極層73の膜厚は、例えば130nm程度である。
保護膜84は、IDT電極71aおよび71bを覆うように形成されている。保護膜84は、主電極層73を外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層であり、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする膜である。保護膜84の膜厚は、例えば30nm程度である。
なお、密着層72、主電極層73および保護膜84を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極71は、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極71は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、保護膜84は、形成されていなくてもよい。
つぎに、基板80の積層構造について説明する。
図6の下段に示すように、基板80は、高音速支持基板81と、低音速膜82と、圧電体層83とを備え、高音速支持基板81、低音速膜82および圧電体層83がこの順で積層された構造(音速膜積層構造)を有している。
圧電体層83は、例えば、42°YカットX伝搬LiTaO3圧電単結晶または圧電セラミックス(X軸を中心軸としてY軸から42°回転した軸を法線とする面で切断したタンタル酸リチウム単結晶またはセラミックスであって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶またはセラミックス)からなる。この場合、弾性波共振子は、リーキー波を弾性波として利用する。
また、圧電体層83は、例えば、128°YカットX伝搬LiNbO3圧電単結晶または圧電セラミックスからなる。この場合、弾性波共振子は、レイリー波を弾性波として利用する。
また、圧電体層83は、例えば、YカットX伝搬LiNbO3圧電単結晶または圧電セラミックスからなる。この場合、弾性波共振子は、ラブ波を弾性波として利用する。
なお、圧電体層83の単結晶材料、カット角、積層構造は、フィルタの要求仕様(通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性)などに応じて、適宜、選択される。
高音速支持基板81は、低音速膜82、圧電体層83ならびにIDT電極71を支持する基板である。高音速支持基板81は、さらに、圧電体層83を伝搬する表面波や境界波の弾性波よりも、高音速支持基板81中のバルク波の音速が高速となる基板であり、弾性表面波を圧電体層83および低音速膜82が積層されている部分に閉じ込め、高音速支持基板81より下方に漏れないように機能する。高音速支持基板81は、例えば、シリコン基板であり、厚みは、例えば200μmである。なお、高音速支持基板81は、(1)窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリコン、サファイア、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、または水晶等の圧電体、(2)アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、またはフォルステライト等の各種セラミック、(3)マグネシアダイヤモンド、(4)上記各材料を主成分とする材料、ならびに、(5)上記各材料の混合物を主成分とする材料、のいずれかで構成されていてもよい。
低音速膜82は、圧電体層83を伝搬する弾性波の音速よりも、低音速膜82中のバルク波の音速が低速となる膜であり、圧電体層83と高音速支持基板81との間に配置される。この構造と、弾性波が本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質とにより、弾性表面波エネルギーのIDT電極外への漏れが抑制される。低音速膜82は、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする膜である。低音速膜82の厚みは、例えば500nm程度である。
基板80の上記音速膜積層構造によれば、圧電基板を単層で使用している従来の構造と比較して、共振周波数および反共振周波数におけるQ値を大幅に高めることが可能となる。すなわち、Q値が高い弾性表面波共振子を構成し得るので、当該弾性表面波共振子を用いて、挿入損失が小さいフィルタを構成することが可能となる。
なお、高音速支持基板81は、支持基板と、圧電体層83を伝搬する表面波や境界波の弾性波よりも、伝搬するバルク波の音速が高速となる高音速膜とが積層された構造を有していてもよい。この場合、支持基板は、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等の各種セラミック、ガラス等の誘電体またはシリコン、窒化ガリウム等の半導体及び樹脂基板等を用いることができる。また、高音速膜は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、DLC膜またはダイヤモンド、上記材料を主成分とする媒質、上記材料の混合物を主成分とする媒質等、様々な高音速材料を用いることができる。
なお、上記説明では、弾性波共振子を構成するIDT電極71は、圧電体層83を有する基板80上に形成された例を示したが、IDT電極71が形成される基板は、圧電体層83の単層からなる圧電基板であってもよい。この場合の圧電基板は、例えば、LiTaO3の圧電単結晶、または、LiNbO3などの他の圧電単結晶で構成される。
また、IDT電極71が形成される基板は、圧電体層83を有する限り、全体が圧電体層からなるものの他、支持基板上に圧電体層が積層されている構造を用いてもよい。
ここで、IDT電極71の設計パラメータについて説明する。弾性表面波共振子の波長とは、図6の中段に示すIDT電極71を構成する複数の電極指172aまたは172bの繰り返し周期である波長λで規定される。また、電極ピッチは、波長λの1/2であり、IDT電極71aおよび71bを構成する電極指172aおよび172bのライン幅をWとし、隣り合う電極指172aと電極指172bとの間のスペース幅をSとした場合、(W+S)で定義される。また、IDT電極の交叉幅Lは、図6の上段に示すように、IDT電極71aの電極指172aとIDT電極71bの電極指172bとのX軸方向から見た場合の重複する電極指長さである。また、各共振子の電極デューティーは、複数の電極指172aおよび172bのライン幅占有率であり、複数の電極指172aおよび172bのライン幅とスペース幅との加算値に対する当該ライン幅の割合であり、W/(W+S)で定義される。
[2.2 弾性波共振子構造_低域1における反射係数]
以下、第1フィルタ11で反射係数を増大させ、第3フィルタ13で通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を向上させる具体的構成の組み合わせを例示する。
図7Aは、実施の形態2の変形例2に係る高周波フロントエンド回路の低域1における反射特性を説明する図である。同図の下段に示すように、弾性波共振子のインピーダンス特性において、インピーダンスが極小値となる共振点、および、インピーダンスが極大値となる反共振点が確認される。ここで、共振点よりも低周波側の領域(図7Aの低域1)では、弾性波共振子の構造に応じてインピーダンスが異なり、当該インピーダンスの大小に応じて反射特性の優劣が存在する。より具体的には、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波、および(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波、のいずれかを弾性表面波として利用する構造、ならびに(4)上記音速膜積層構造、の方が、SMRまたはFBARよりも、低域1における反射係数損失が大きい。
図7Bは、実施の形態2に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構成の組み合わせを表す図である。
上記反射係数の関係より、第1フィルタ11の第1通過帯域が、第2フィルタ12の第2通過帯域よりも高周波側に位置する場合、図7Bに示すように、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路において、第1フィルタ11では、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波、および(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波、のいずれかを弾性表面波として利用する構造としてもよい。
これにより、高周波フロントエンド回路において、第1フィルタ11の第2通過帯域(第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、第3フィルタ13の第2通過帯域(第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
一方、第3フィルタ13では、弾性波共振子がSMRまたはFBARで構成されてもよい。
これにより、第1フィルタ11の構成により第2フィルタ12の反射係数を増大させつつ、第3フィルタ13の上記構成により、第2フィルタ12の低損失性および通過帯域の急峻性を確保できる。
また、図7Bに示すように、第1フィルタ11を構成する弾性波共振子のそれぞれは、上述した音速膜積層構造を有し、第3フィルタ13では、弾性波共振子がSMRまたはFBARで構成されてもよい。
これにより、高周波フロントエンド回路において、第1フィルタ11の第2通過帯域(第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、第3フィルタ13の第2通過帯域(第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数よりも大きくすることが可能となる。よって、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。第1フィルタ11の構成により第2フィルタ12の反射係数を増大させつつ、第3フィルタ13の上記構成により、第2フィルタ12の低損失性および通過帯域の急峻性を確保できる。
[2.3 弾性波共振子構造_高域1におけるバルク波漏洩]
図8Aは、実施の形態2の変形例1に係る高周波フロントエンド回路の高域1におけるバルク波漏洩を説明する図である。同図の下段に示すように、弾性波共振子の反共振点よりも高周波側の領域(図8Aの高域1)では、バルク波漏洩(不要波)によるインピーダンスの変化が発生し、当該インピーダンスの変化に応じて反射特性の優劣が存在する。より具体的には、高域1でのバルク波漏洩による反射損失は、小さい方から順に、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性波として利用する構造、SMR、FBAR、(2)音速膜積層構造、(3)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性波として利用する構造、(4)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性波として利用する構造、となる。
図8Bは、実施の形態2の変形例1に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構成の組み合わせを表す図である。
上記反射損失の優劣順位により、第1フィルタ11の第1通過帯域が、第2フィルタ12の第2通過帯域よりも低周波側に位置する場合、図8Bに示すように、高周波フロントエンド回路の低周波側の第1フィルタ11では、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造、(2)弾性波共振子がSMRで構成される、および(3)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであってもよい。
これにより、高周波フロントエンド回路において、低周波側の第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、第3フィルタ13の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数よりも大きくすることが可能となる。よって、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
一方、第3フィルタ13は、(1)上記音速膜積層構造、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造、および(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造、のいずれかを有していてもよい。
これにより、第1フィルタ11の構成により第1フィルタ11の反射係数を増大させつつ、第3フィルタ13を音速膜積層構造とした場合には、第3フィルタ13の低損失性および良好な温度特性を確保できる。また、第3フィルタ13においてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタ13の広い帯域幅を確保できる。
また、第1フィルタ11では、弾性波共振子が、上記音速膜積層構造を有し、第3フィルタ13では、(1)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造、または(2)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造を有していてもよい。
これにより、高周波フロントエンド回路において、低周波側の第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、第3フィルタ13の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数よりも大きくすることが可能となる。よって、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。さらに、第3フィルタ13においてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタ13の広い帯域幅を確保できる。
また、第1フィルタ11では、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造を有し、第3フィルタ13では、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造を有していてもよい。
よって、高周波フロントエンド回路において、低周波側の第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、第3フィルタ13の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数よりも大きくすることが可能となる。これにより、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。さらに、第3フィルタ13においてLiNbO3によるラブ波を弾性表面波として利用した場合には、第3フィルタ13の広い帯域幅を確保できる。
[2.4 弾性波共振子構造_低域2におけるスプリアス]
図9Aは、実施の形態2の変形例2に係る高周波フロントエンド回路の低域2におけるスプリアスの発生を説明する図である。同図の下段に示すように、弾性波共振子の共振点よりも低周波側の領域(図9Aの低域2)では、特に、上記音速膜積層構造、または、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性波として利用する構造において、共振周波数の0.76倍付近にレイリー波のスプリアスが発生する。このスプリアス発生によりインピーダンスが変化し、当該インピーダンスの変化に応じて反射係数が小さくなる。
図9Bは、実施の形態2の変形例2に係る第1フィルタおよび第3フィルタの構成の組み合わせを表す図である。
第1フィルタ11の第1通過帯域が、第2フィルタ12の第2通過帯域よりも高周波側に位置する場合、図9Bに示すように、第1フィルタ11は、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造、(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、および(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、第3フィルタ13は、弾性波共振子が、上記音速膜積層構造を有していてもよい。
つまり、第3フィルタ13を音速膜積層構造とし、第1フィルタ11を音速膜積層構造としないことにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、大きくできる。よって、高周波フロントエンド回路において、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、図9Bに示すように、第1フィルタ11は、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造、(2)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造、(3)上記音速膜積層構造、(4)弾性波共振子がSMRで構成される、および(5)弾性波共振子がFBARで構成される、のいずれかであり、第3フィルタ13は、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造を有していてもよい。
つまり、第3フィルタ13ではLiTaO3のリーキー波を弾性波として利用し、第1フィルタ11ではLiTaO3のリーキー波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、大きくできる。よって、高周波フロントエンド回路において、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
[2.5 弾性波共振子構造_高域2における高次モード]
図10Aは、実施の形態2の変形例3に係る高周波フロントエンド回路の高域2における高次モードの発生を説明する図である。同図の下段に示すように、弾性波共振子の共振点よりも高周波側の領域(図10Aの高域2)では、特に、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造、または、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造において、共振周波数の1.2倍付近に高次モードが発生する。この高次モード発生によりインピーダンスが変化し、当該インピーダンスの変化に応じて反射係数が小さくなる。
図10Bは、実施の形態2の変形例3に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構成の組み合わせを表す図である。
第1フィルタ11の第1通過帯域が、第2フィルタ12の第2通過帯域よりも低周波側に位置する場合、図10Bに示すように、第1フィルタ11は、(1)上記音速膜積層構造、(2)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造、(3)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造、(4)SMR、および(5)FBAR、のいずれかを有し、第3フィルタ13は、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造を有していてもよい。
つまり、第3フィルタ13ではLiNbO3のレイリー波と弾性波として利用し、第1フィルタ11ではLiNbO3のレイリー波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、大きくできる。よって、高周波フロントエンド回路において、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、図10Bに示すように、第1フィルタ11は、(1)LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波を弾性表面波として利用する構造、(2)上記音速膜積層構造、(3)LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用する構造、(4)SMR、および(5)FBARのいずれかを有しており、第3フィルタ13では、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用する構造を有していてもよい。
つまり、第3フィルタ13ではLiNbO3のラブ波と弾性波として利用し、第1フィルタ11ではLiNbO3のラブ波を弾性波として利用しないことにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を、大きくできる。よって、高周波フロントエンド回路において、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
[2.6 弾性波共振子構造パラメータの調整]
図11Aは、実施の形態2に係る第1フィルタ11の高次モードによる反射損失の劣化を表すグラフである。同図に示すように、アンテナ共通端子101(Port1)から見た第1フィルタ11の反射損失は、共振点の高域側において、高次モードにより増大する(図11Aの破線領域)。ここで、高次モードにより反射損失が増大する周波数を、弾性波共振子の構造パラメータを変化させることにより、高周波側または低周波側へシフトさせることが可能である。または、弾性波共振子の構造パラメータを変化させることにより、高次モードにより反射損失の増大を抑制することが可能である。
この観点から、発明者らは、反射特性に影響の大きい第1フィルタ11では、構造パラメータを変化させることで高次モードやスプリアスなどの発生周波数を第2フィルタ12の通過帯域外へとシフトさせ、反射特性に影響の小さい第3フィルタ13では、通過特性、減衰特性、温度特性、および帯域幅などのフィルタ特性を確保するために構造パラメータを最適化することを見出した。
図11Bは、実施の形態2の変形例4に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構造を異ならせるパラメータを表す図である。
第1フィルタ11を構成する弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層83を有する基板80と当該基板上に形成されたIDT電極71とで構成された弾性表面波共振子である。第1フィルタ11および第3フィルタでは、図11Bに示すように、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波を弾性表面波として利用し、第1フィルタ11を構成するIDT電極71と、第3フィルタ13を構成するIDT電極71とでは、電極膜厚またはデューティーが異なる。
LiTaO3のリーキー波を弾性波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の低周波側にレイリー波のスプリアスが発生する。これに対して、第1フィルタ11と第3フィルタ13とで、IDT電極71の電極膜厚またはデューティーを異ならせることにより、第1フィルタ11におけるレイリー波スプリアスの発生周波数を、第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を大きくでき、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、第1フィルタ11および第3フィルタ13では、図11Bに示すように、弾性波共振子が上記音速膜積層構造を有し、第1フィルタ11と第3フィルタ13とでは、IDT電極71の電極膜厚、IDT電極71のデューティー、および低音速膜82の膜厚、のいずれかが異なってもよい。
音速膜積層構造を採用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の低周波側にレイリー波のスプリアスが発生する。これに対して、第1フィルタ11と第3フィルタ13とで、IDT電極71の電極膜厚またはデューティーを異ならせることにより、第1フィルタ11におけるレイリー波スプリアスの発生周波数を、第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(低周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を大きくでき、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
図11Cは、実施の形態2の変形例5に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構造を異ならせるパラメータを表す図である。
第1フィルタ11および第3フィルタ13を構成する弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層83を有する基板80と当該基板上に形成されたIDT電極71と当該IDT電極71上に形成された保護膜84で構成された弾性表面波共振子である。低周波側の第1フィルタ11および第3フィルタ13では、図11Cに示すように、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するレイリー波、または、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用し、第1フィルタ11と第3フィルタ13とでは、IDT電極71の電極膜厚、IDT電極71のデューティー、および保護膜84の膜厚、のいずれかが異なる。
LiNbO3のレイリー波、またはLiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側に高次モードが発生する。これに対して、第1フィルタ11と第3フィルタ13とで、IDT電極71の電極膜厚、IDT電極71のデューティー、または低音速膜82の膜厚を異ならせることにより、第1フィルタ11における高次モードの発生周波数を、第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を大きくでき、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
また、第1フィルタ11および第3フィルタ13では、図11Cに示すように、弾性波共振子が上記音速膜積層構造を有し、高音速支持基板81はシリコン結晶で構成され、第1フィルタ11と第3フィルタ13とでは、圧電体層83の膜厚、低音速膜82の膜厚、および高音速支持基板81のシリコン結晶方位、のいずれかが異なってもよい。
音速膜積層構造を採用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側に高次モードが発生する。これに対して、第1フィルタ11と第3フィルタ13とで、圧電体層83の膜厚、低音速膜82の膜厚、または高音速支持基板81のシリコン結晶方位を異ならせることにより、第1フィルタ11における高次モードの発生周波数を、第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を大きくでき、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
図12は、実施の形態2の変形例6に係る第1フィルタ11および第3フィルタ13の構造を異ならせるパラメータを表す図である。
第1フィルタ11および第3フィルタ13を構成する弾性波共振子のそれぞれは、圧電体層83を有する基板80と当該基板上に形成されたIDT電極71とで構成された弾性表面波共振子である。第1フィルタ11および第3フィルタ13では、LiTaO3からなる圧電体層を伝搬するリーキー波、または、LiNbO3からなる圧電体層を伝搬するラブ波を弾性表面波として利用し、第1フィルタ11と第3フィルタ13とでは、IDT電極71の電極膜厚が異なる。
LiTaO3のリーキー波またはLiNbO3のラブ波を弾性表面波として利用する場合には、弾性波共振子の共振周波数の高周波側にバルク波(不要波)が発生する。これに対して、第1フィルタ11と第3フィルタ13とで、IDT電極71の電極膜厚を異ならせることにより、第1フィルタ11におけるバルク波の発生周波数を、第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)外へとシフトさせることが可能となる。これにより、第1フィルタ11の第2通過帯域(高周波側の第2フィルタ12の通過帯域)における反射係数を大きくでき、第2フィルタ12の第2通過帯域における挿入損失のうちの、第1フィルタ11、第3フィルタ13、またはその両方に起因した挿入損失を低減できる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、アンテナ共通端子に接続された分波回路と、当該分波回路の後段に配置された各バンドに対応したフィルタとで構成された高周波フロントエンド回路の低損失化および小型化を実現する構成を説明する。
図13Aは、実施の形態3に係る高周波フロントエンド回路6の回路構成図である。同図に示された高周波フロントエンド回路6は、アンテナ共通端子101と、LBフィルタ11Lと、MBフィルタ11Mと、HBフィルタ11Hと、B3用のフィルタ13bと、B30用の13fと、LNA31、32および34とを備える。
LBフィルタ11L、MBフィルタ11M、およびHBフィルタ11Hは、アンテナ素子に接続される分波回路である。
LBフィルタ11Lは、ローバンド帯(例えば2GHz以下)を通過帯域とする低域通過側フィルタである。
HBフィルタ11Hは、ハイバンド帯(例えば2.3GHz以上)を通過帯域とする高域通過側フィルタである。
MBフィルタ11Mは、Band66(2110−2200MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
フィルタ13bは、Band3(1805−1880MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
フィルタ13fは、Band30(2350−2360MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
ここで、Band66の通過帯域(2110−2200MHz)は、Band1の通過帯域(2110−2170MHz)およびBand4の通過帯域(2110−2155MHz)を含む関係にある。
これにより、Band1およびBand4の信号伝搬経路を、Band66の信号伝搬経路で共用させることが可能となる。つまり、MBフィルタ11MからLNA31までの信号経路上を、Band1およびBand4の高周波信号が伝搬する。
なお、上記回路構成において、CA動作をする組み合わせとしては、Band1とBand3とのCA動作、および、Band4とBand30とのCA動作である。つまり、周波数帯域が重複するBand1とBand4とはCA動作しない。
図13Bは比較例に係る高周波フロントエンド回路600の回路構成図である。Band1とBand3とのCA動作、および、Band4とBand30とのCA動作を実現する回路構成としては、従来、比較例に係る高周波フロントエンド回路600が提示されていた。高周波フロントエンド回路600は、アンテナ共通端子101と、スイッチ21と、B1用のフィルタ13p、B3用のフィルタ13b、B4用のフィルタ13p、およびB30用のフィルタ13fと、LNA31、32、31、および34とを備える。この構成において、スイッチ21に切り替えにより、Band1とBand3とのCA動作、または、Band4とBand30とのCA動作が選択される。
このようなCA動作を実施する場合、比較例に示すように、B1用のフィルタ13pとB4用のフィルタ13pとを別途用意し、スイッチ21により切り替えることで対応することが一般的である。しかしながら、Band1とBand4とは、通過帯域が大きく重複しているため、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路6のように、広帯域のMBフィルタ11Mを用いることでフィルタを共用化できる。これに対して、比較例では、占有面積上で無駄が生じている。
つまり、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路6によれば、Band1およびBand4の高周波信号を、Band66を通過帯域とするMBフィルタ11Mで共用化できる。これにより、複数バンドの通過帯域を1つのバンドパスフィルタで実現することで、省スペース化が達成される。さらに、Band1およびBand4の高周波信号が通過するフィルタの数を低減できるため、高周波信号の伝搬損失を改善できる。
(その他の変形例など)
以上、本発明の実施の形態に係るマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置について、実施の形態およびその変形例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態および変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高周波フロントエンド回路および通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
例えば、上記説明では、マルチプレクサとして、2つの受信信号経路が共通端子で共通接続された2分波/合波回路を例に説明したが、本発明は、例えば、送信経路および受信経路の双方を含む回路や3つ以上の信号経路が共通端子で共通接続された分波/合波回路についても適用することができる。
また、マルチプレクサが有する各フィルタにおいて、さらに、入出力端子および接地端子などの各端子の間に、インダクタやキャパシタが接続されていてもよいし、抵抗素子などのインダクタおよびキャパシタ以外の回路素子が付加されていてもよい。