以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置100を説明する分解斜視図である。図2は、レンズ駆動装置100を説明する上方斜視図である。図3は、レンズ駆動装置100を説明する図であって、図3(a)は、図2をZ1側から見た上面図であり、図3(b)は、図2をY2側から見た正面図である。図4(a)は、図2に示すレンズ駆動装置100をZ2側から見て図1に示すベース部材7を省略した底面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す多層基板98を省略した底面図である。図5(a)は、図2に示すレンズ駆動装置100のケース部材H9を省略した斜視図であり、図5(b)は、図5(a)をY2側から見た正面図である。
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置100は、図2及び図3に示すような直方体形状の外観を呈し、図1に示すように、レンズ体(図示していない)を保持可能なレンズ保持部材2を光軸方向KD(図1に示すZ方向)へ移動させる第1駆動機構D1を含む可動ユニットKUと、可動ユニットKUを光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)へ移動可能に支持するサスペンションワイヤ5と、可動ユニットKUの下方に配設されるベース部材7と、可動ユニットKUを光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)へ移動させる第2駆動機構D2と、可動ユニットKUの交差方向CD(光軸方向KDと交差する方向)における位置を検出する検出手段M8と、を備えて構成されている。
他に、本発明の第1実施形態では、レンズ駆動装置100は、図1ないし図4に示すように、図1に示す可動ユニットKU及びサスペンションワイヤ5等を収容するケース部材H9と、図5に示すように、レンズ保持部材2の上方(図5に示すZ1方向)に配設された枠体W9と、を有している。なお、図1及び図2に示す交差方向CD(光軸方向KDと交差する方向)は、説明を分かり易くするため、その一例を示したものである。
また、可動ユニットKUの第1駆動機構D1は、図1、図4(b)及び図5に示すように、レンズ保持部材2の周囲に巻かれて固定された環状の第1コイル13と、第1コイル13の外側に離間して対向して設けられた4つの永久磁石EM(駆動用磁石)と、4つの永久磁石EMが固定される固定部材R6と、を有して構成されている。そして、第1駆動機構D1は、電源から第1コイル13に電流が流されて生じる電磁力と永久磁石EMから発生する磁界とを利用して、レンズ保持部材2を光軸方向KDに沿って移動させるものである。
また、第2駆動機構D2は、図1及び図5に示すように、上述した4つの永久磁石EM(駆動用磁石)と、永久磁石EMの下方(図5に示すZ2方向)に配置される第2コイル23と、を有して構成されている。そして、第2駆動機構D2は、電源から第2コイル23に電流が流されて生じる電磁力と永久磁石EMから発生する磁界とを利用して、可動ユニットKUを交差方向CD(光軸方向KDと交差する方向)へ移動させるものである。なお、本発明の第1実施形態では、第1駆動機構D1の駆動用磁石と第2駆動機構D2の駆動用磁石とを4つの永久磁石EMで好適に共用している。その際には、第1駆動機構D1の第1コイル13を永久磁石EMの側方(外側)に対向して配置するとともに、第2駆動機構D2の第2コイル23を永久磁石EMの下方に対向して配置して、両コイルが干渉しないようにしている。
また、検出手段M8は、図1に示すように、上述した永久磁石EMと、永久磁石EM(検出用磁石)が発生する磁界を検出する磁気検出素子を有する磁気検出部材88と、磁気検出部材88が搭載された多層基板98と、を有して構成されている。そして、検出手段M8は、可動ユニットKU側に配置されて可動ユニットKUの揺動とともに移動する永久磁石EMの磁界の変化を検出して、可動ユニットKUの光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)における位置を検出するようにしている。なお、本発明の第1実施形態では、この検出用磁石として、永久磁石EMの2つを好適に共用して利用している。
以上のように構成されたレンズ駆動装置100は、図示しないレンズ体を接着剤等によってレンズ保持部材2に保持し、撮像素子を実装した実装基板(図示していない)上に取り付けられる。そして、レンズ駆動装置100は、撮像素子に対して焦点距離を調整するために、レンズ体に保持されたレンズを光軸方向KD(図2に示すZ方向)に沿って移動させるとともに、可動ユニットKUの揺動に対して補正を行えるものである。これにより、オートフォーカス機能と手振れ補正機能の2つを有したレンズ駆動装置100を提供することができる。
次に、各構成部品について詳細に説明する。
先ず、レンズ駆動装置100の可動ユニットKUについて説明する。図6は、可動ユニットKUのレンズ保持部材2を説明する図であって、図6(a)は、レンズ保持部材2の上方斜視図であり、図6(b)は、レンズ保持部材2に付勢部材4及び第1駆動機構D1の第1コイル13が装着された上方斜視図である。図7(a)は、レンズ保持部材2の下方斜視図であり、図7(b)は、レンズ保持部材2に付勢部材4及び第1駆動機構D1の第1コイル13が装着された下方斜視図である。
レンズ駆動装置100の可動ユニットKUは、図1に示すように、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2を光軸方向KDに移動可能に支持する付勢部材4と、付勢部材4の一部が固定される上バネ固定部B16及び下バネ固定部B26と、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動させる第1駆動機構D1と、を有して構成されている。なお、上バネ固定部B16及び下バネ固定部B26は、レンズ保持部材2の外側に設けられている。
また、本発明の第1実施形態では、付勢部材4は、図6(b)に示すように、レンズ保持部材2の上部に一方側の部分が固定される上側板ばね4Aと、図7(b)に示すように、レンズ保持部材2の下部に一方側の部分が固定される下側板ばね4Cと、を備えて構成されており、レンズ保持部材2を支持している。また、上側板ばね4Aの他方側の部分が上バネ固定部B16に固定されるとともに、下側板ばね4Cの他方側の部分が後述する下バネ固定部B26に固定される。また、本発明の第1実施形態では、上バネ固定部B16及び下バネ固定部B26は、後述する固定部材R6と一体にして好適に設けられている。なお、上側板ばね4Aは、2つに分割されている。
先ず、可動ユニットKUのレンズ保持部材2は、合成樹脂材の1つである液晶ポリマー(LCP、Liquid Crystal Polymer)等を用い、図6及び図7に示すように、筒状に形成されており、円形形状の内周面と矩形状の外周面とを有する筒部12と、筒部12の上端側(図6に示すZ1側)で外周面から径方向外側に突出した庇部22と、筒部12の下端側(図6に示すZ2側)で外周面から径方向外側に突出した鍔部32と、から主に構成されている。そして、レンズ保持部材2は、図5に示すように、枠体W9の下方(図5に示すZ2方向)でベース部材7の上方(図5に示すZ1方向)に配置されている。
レンズ保持部材2の筒部12には、図示しないレンズ体がその内周面に装着可能であり、接着剤等を用いて、レンズ体がレンズ保持部材2に保持される。また、筒部12の上端側には、図6に示すように、上方に突出する円柱状の凸設部12tが4箇所、光軸に対して均等な位置に設けられている。そして、レンズ駆動装置100が組立てられた際には、図6(b)に示すように、この4箇所の凸設部12t(レンズ保持部材2)と付勢部材4の上側板ばね4A(後述する第1部分14)とが係合されて、この凸設部12tを熱かしめすることにより、上側板ばね4Aのそれぞれの一方側の部分がレンズ保持部材2に固定される。
更に、筒部12の上端側には、図6に示すように、上方に突出する角柱状の絡げ部12kが2箇所に設けられている。そして、第1コイル13のコイル端部のそれぞれが、図5(a)に示すように、この絡げ部12kに巻き付けられて、上側板ばね4Aのそれぞれにはんだ付けされている。なお、図5(a)では、2つのコイル端部と上側板ばね4Aとをはんだ付けした半田HDを一点鎖線で囲まれたクロスハッチングで模式的に示している。
また、庇部22と鍔部32との間の筒部12の外周面には、図7(b)に示すように、外周面の八角形状に沿った形状で、第1コイル13が八角形状(図1を参照)に巻回されている。
また、鍔部32側の底面には、図7(a)に示すように、凹状に窪んだ凹設部32rが4箇所、光軸に対して均等な位置に設けられている。そして、レンズ駆動装置100が組立てられた際には、図7(b)に示すように、この4箇所の凹設部32r(レンズ保持部材2)と付勢部材4の下側板ばね4C(後述する第3部分34)とが対向配置されて、この部分が接着剤で固定されて、下側板ばね4Cの一方側の部分がレンズ保持部材2に固定される。
次に、可動ユニットKUの付勢部材4について説明する。図8は、可動ユニットKUの付勢部材4を説明する図であって、図8(a)は、図1に示す付勢部材4の上側板ばね4AをZ1側から見た上面図であり、図8(b)は、図1に示す付勢部材4の下側板ばね4CをZ2側から見た底面図である。図9(a)は、付勢部材4にサスペンションワイヤ5及び固定部材R6が装着された上方斜視図であり、図9(b)は、図9(a)を下方から見た下方斜視図である。図10(a)は、図8(a)に示すP部分の拡大上面図であり、図10(b)は、図9(a)に示すQ部分の拡大上方斜視図である。なお、図10(b)には、説明を分かり易くするため、サスペンションワイヤ5の上端部と上側板ばね4A(ワイヤ固定部64)とをはんだ付けした半田HDを一点鎖線で囲まれたクロスハッチングで模式的に示している。
可動ユニットKUの付勢部材4は、銅合金を主な材質とした金属板から作製されており、図5(a)に示すように、レンズ保持部材2の筒部12の内周面よりも大径な開口を有し、レンズ保持部材2と枠体W9との間に配設される上側板ばね4Aと、図5(b)に示すように、レンズ保持部材2とベース部材7との間に配設される下側板ばね4Cと、から構成されている。そして、レンズ保持部材2と付勢部材4のそれぞれ(上側板ばね4A、下側板ばね4C)が係合されて、レンズ保持部材2が光軸方向KD(図2に示すZ方向)へ移動可能になるように、レンズ保持部材2を支持している。
先ず、付勢部材4の上側板ばね4Aは、図8(a)に示すように、分離した2つの部材からなり、ほぼ回転対称に作製されており、配設された際には、外形形状が略矩形状をしている。なお、上側板ばね4Aは、図5(a)に示すように、半田HDにより第1コイル13と電気的に接続されているので、第1コイル13への給電部材としての機能も有している。
また、上側板ばね4Aは、図6(b)及び図8(a)に示すように、レンズ保持部材2に固定された複数(本発明の第1実施形態では4箇所)の第1部分14と、図8(a)及び図9(a)に示すように、第1部分14よりも外周側に位置し上バネ固定部B16に固定された複数(本発明の第1実施形態では4箇所)の第2部分24と、図8(a)に示すように、第1部分14と第2部分24との間に設けられた4箇所の弾性腕部54Aと、第1部分14から延設されて第1部分14同士を繋ぐ繋ぎ部J4と、2箇所の第2部分24同士を繋ぐ桟部S4と、図10に示すように、第2部分24の外側に位置しサスペンションワイヤ5の上端部とはんだ付けされる4箇所のワイヤ固定部64と、第2部分24とワイヤ固定部64との間を繋ぐように設けられた連結部74と、ワイヤ固定部64から内側(光軸側)に向かって突出した板状の突出部84と、を有して構成されている。
先ず、上側板ばね4Aの4箇所の第1部分14は、上側板ばね4Aがレンズ駆動装置100に組み込まれた際には、図6(b)に示すように、第1部分14に設けられた貫通穴にレンズ保持部材2の凸設部12tが挿通され、この4箇所の部分にそれぞれかしめられて、上側板ばね4Aの一方側がレンズ保持部材2に固定されるようになる。
同様にして、上側板ばね4Aの第2部分24は、図9(a)に示すように、第2部分24の4箇所のそれぞれに設けられた2つの貫通穴(全部で8個、図8(a)を参照)に、上バネ固定部B16の突部B16t(後述する)が挿通され、この部分を接着剤で固定することにより、上側板ばね4Aの他方側が固定部材R6側に固定されるようになる。
このようにして、上側板ばね4Aは、図8(a)に示すように、ほぼ点対称の形状に2つの部材が構成されており、レンズ保持部材2に対して第1部分14の4箇所の均等な位置で固定されているとともに、固定部材R6に対して第2部分24の4箇所の均等な位置で固定されている。これにより、レンズ保持部材2をバランス良く支持することができる。
次に、上側板ばね4Aのワイヤ固定部64は、図8(a)に示すように、上バネ固定部B16に固定される第2部分24の外側にそれぞれ位置して4箇所設けられており、この4箇所のワイヤ固定部64のそれぞれには、貫通した孔からなる貫通部64kを有している。そして、図9に示すように、ワイヤ固定部64は、この貫通部64kにサスペンションワイヤ5が挿通されて、図10(b)に示すように、サスペンションワイヤ5の上端部とはんだ付けされる。
次に、上側板ばね4Aの連結部74は、本発明の第1実施形態では、図8(a)及び図10(a)に示すように、第2部分24の離間した2箇所からワイヤ固定部64側に向かうように延出する2つの延出部74eを有して構成されている。そして、この2つの延出部74eは、バネ性を有しており、可動ユニットKUの光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)への移動を可能にしている。
次に、上側板ばね4Aの突出部84は、図8(a)及び図10(a)に示すように、板状で矩形状に形成されており、この2つの延出部74eの間でワイヤ固定部64から内側に向かって突出して設けられている。この突出部84の突出方向は、中心の光軸に向けた方向である。言い換えると、ワイヤ固定部64の貫通部64kと光軸の中心とを結ぶ直線に沿った方向である。そして、この突出部84には、レーザ光を照射することが可能である。
これにより、上側板ばね4Aの突出部84にレーザ光を照射し、突出部84からワイヤ固定部64に熱を伝えることで、上側板ばね4Aのワイヤ固定部64とサスペンションワイヤ5の上端部とをはんだ付けすることが可能となる。このことにより、手はんだ付けを行う場合と比較して、作業性等が向上するとともに、はんだ付け工程での不良を低減することができる。
更に、この突出部84をワイヤ固定部64から内側(光軸側)へ突出する構成としたので、上側板ばね4Aの外形形状が大きくなるのを抑制でき、ひいてはレンズ駆動装置100の外形を小さくすることができる。
また、突出部84には、図8(a)及び図10(a)に示すように、ワイヤ固定部64側に隣り合って形成された細長形状の開口部84kが形成されている。この開口部84kは、貫通穴(貫通した長孔)からなり、突出部84の突出方向と直交する直交方向の寸法(図10(a)に示すWa)が突出方向の寸法よりも大きく形成されている。なお、この開口部84kよりも内側に位置する部分が、前述したレーザ光を照射するレーザ照射部となっている。
これにより、ワイヤ固定部64に半田ペーストを塗布し突出部84にレーザ光を照射してはんだ付けする際に、溶けた半田HDがこの開口部84kにより堰き止められ(図10(b)を参照)、半田HDが突出部84側に広く流れるのを抑制することができる。このため、ワイヤ固定部64の半田量がバラツキ難くなり、ワイヤ固定部64とサスペンションワイヤ5の上端部とのはんだ付けを確実なものとできる。更に、レーザ光が照射される部分(レーザ照射部)にまで半田HDが流れてこないので、レーザ光による半田HDの飛散やレーザ光の乱反射による周辺の合成樹脂材の“焼け”を防止することができる。
更に、本発明の第1実施形態では、図10(a)に示すように、開口部84kが、直交方向における開口部84kの幅寸法(図10(a)に示すWa)が、直交方向における突出部84の縁部(幅方向の端部における左右のそれぞれ)と開口部84kの縁部(直交方向の端部における左右のそれぞれ)との間の幅寸法(図10(a)に示すWb)よりも大きく設定されている。
これにより、この幅広な開口部84kで溶けた半田HDを確実に堰き止めることができる。このため、半田HDが突出部84側に広く流れるのを確実に抑制することができる。そして、開口部84kの幅寸法(Wa)が大きければ大きい程、半田HDの堰き止め効果は向上するが、突出部84からワイヤ固定部64への熱伝導効果が低下するので、その幅寸法(Wa及びWb)のバランスは、それら効果を考慮して適宜決められる。なお、本発明の第1実施形態においては、このバランスを考慮して、開口部84kの直交方向における幅寸法(Wa)を、この開口部84kが形成された部分における突出部84の幅寸法(Wb+Wa+Wb)から開口部84kの幅寸法(Wa)を除いた部分の寸法(Wb+Wb)よりも小さく設定している。
また、本発明の第1実施形態では、図10(a)に示すように、貫通部64kと開口部84kとの間の接続部分の幅が、開口部84kよりも内側に位置する部分における突出部84の幅よりも狭くなっている。これにより、サスペンションワイヤ5を中心として形成される半田フィレットの外形形状(フットプリント)が、この幅が狭くなっている部分により規制されることとなる。このため、半田フィレットが大きく広がるのを防ぐとともに、ワイヤ固定部64の半田量のバラツキを小さくすることができる。なお、図10に示すように、貫通部64kと開口部84kとの間に位置する部分は、ワイヤ固定部64の一部となっている。
しかも、ワイヤ固定部64の半田量のバラツキを小さくすることができるので、貫通部64kを伝わって下方側(裏側)に形成される半田付着領域(バックフィレット)を安定した形状にすることができる。このため、サスペンションワイヤ5への半田HDの影響のバラツキが抑制され、サスペンションワイヤ5のバネ特性に寄与する“有効長さ(有効長)”を安定したものとすることができる。このことにより、手振れ補正の特性を安定させることができる。
次に、付勢部材4の下側板ばね4Cは、図7(b)及び図8(b)に示すように、レンズ保持部材2に固定される複数(本発明の第1実施形態では4箇所)の第3部分34と、図8(b)及び図9(b)に示すように、第3部分34よりも外周側に位置し下バネ固定部B26に固定された複数(本発明の第1実施形態では4箇所)の第4部分44と、図8(b)に示すように、第3部分34と第4部分44との間に設けられた4箇所の弾性腕部54Cと、それぞれ4箇所の第3部分34を繋ぐ連鎖部R4と、を有して構成されている。
そして、下側板ばね4Cは、内側形状が円形状で、外形形状が矩形状をしており、それぞれのお互いが光軸を中心としてそれぞれほぼ点対称に形成されている。これにより、下側板ばね4Cは、第3部分34の4箇所の均等な位置でレンズ保持部材2を支持するとともに、下バネ固定部B26(固定部材R6)に対して第4部分44の4箇所の均等な位置で支えられている。このことにより、レンズ保持部材2をバランス良く支持することができる。
なお、レンズ駆動装置100が組立てられた際には、図7(b)に示すように、第3部分34とレンズ保持部材2の凹設部32r(図7(a)を参照)とが対向配置されて、この部分が接着剤で固定されるとともに、図9(b)に示すように、第4部分44の4箇所のそれぞれに設けられた貫通穴(図8(b)を参照)に、下バネ固定部B26の突部B26t(後述する)が挿通され、この部分が接着剤で固定される。従って、以上のように構成された付勢部材4は、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動可能に支持している。
次に、可動ユニットKUの上バネ固定部B16は、図9(a)に示すように、前述したように、固定部材R6の上部側(具体的には、後述する枠状部56の上側面)に一体にして好適に設けられており、上側板ばね4Aの他方側(第2部分24)が固定される。同様にして、可動ユニットKUの下バネ固定部B26は、図9(b)に示すように、前述したように、固定部材R6の下部側に一体にして好適に設けられており、下側板ばね4Cの他方側(第4部分44)が固定される。
次に、可動ユニットKUの第1駆動機構D1について説明する。図11は、第1駆動機構D1を説明する図であって、図11(a)は、図4(b)に示すレンズ保持部材2及び付勢部材4を省略した底面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す永久磁石EM及び固定部材R6のみを表示した底面図である。図12は、第1駆動機構D1を説明する図であって、図12(a)は、固定部材R6の下方斜視図であり、図12(b)は、固定部材R6に永久磁石EMが装着された下方斜視図である。図13は、図11(b)に示すR部分の拡大底面図である。
可動ユニットKUの第1駆動機構D1は、レンズ保持部材2を光軸方向KD(図2に示すZ方向)へ移動させる機能を有し、レンズ保持部材2の周囲に巻回されて固定された第1コイル13と、第1コイル13の外側に対向して設けられた4つの永久磁石EMと、4つの永久磁石EMが固定される固定部材R6と、を有して構成されている。
先ず、第1駆動機構D1の第1コイル13は、外周に絶縁被覆(コーティング)が施された金属線材からなり、図7(b)に示すように、レンズ保持部材2の外周に巻回されて形成されている。その際には、第1コイル13は、図7(b)に示すように、庇部22と鍔部32との間に配設されるとともに、図11(a)に示すように、4つの永久磁石EMの内側面EMp(第1コイル13側を向く永久磁石EMの面)と離間して対向配置される。
また、第1コイル13は、図11(a)に示すように、略八角形の環状に形成さており、永久磁石EMの内側面EMpと対向して延在する4つの延在部13qと、隣り合う延在部13q間を繋ぐ屈曲部13rと、を有して構成されている。なお、第1コイル13は、金属線材が巻回されて束ねられた形状となっているが、図1、図4(b)、図7(b)及び図11(a)では、簡略化して、表面を平坦にして示している。
また、第1コイル13は、巻回された金属線材の両端部が電気的に導通可能となっており、前述したように、図5(a)に示すように、コイル端部のそれぞれが上側板ばね4Aのそれぞれとはんだ付けされて電気的に接続されている。
次に、第1駆動機構D1の永久磁石EMは、例えばネオジウム磁石を4つ用い、図11及び図12(b)に示すように、細長い板状をなして形成されており、第1コイル13側を向いている長手方向に延在する内側面EMpと、内側面EMpとは反対側の長手方向に延在する外側面EMqと、を有している。また、永久磁石EMは、光軸を囲むようにして、平行して対向する1組がそれぞれが直交配置されて固定部材R6に固定されている。なお、永久磁石EMは、内側面EMpと外側面EMqとで異なる磁極となるように着磁されている。
次に、第1駆動機構D1の固定部材R6は、合成樹脂材の1つである液晶ポリマー(LCP)等を用い、図11に示すように、平面視して略矩形状で枠形状に形成されており、図12(a)に示すように、永久磁石EMの外側面EMqと対向して外周を形成する対向壁部46と、対向壁部46と直交して形成され上側面を構成する枠状部56と、四隅に形成され枠状部56から下方側に突出した延設部66と、永久磁石EMの内側面EMpと当接可能な位置決め部76と、を有して構成されている。そして、この固定部材R6には、図11に示すように、4つの永久磁石EMが装着され、永久磁石EMの内側面EMpと位置決め部76とが当接して配置されて、位置決め部76に位置決めされた状態で固定部材R6に固定されている。
これにより、永久磁石EMの内側面EMpと固定部材R6の位置決め部76とが当接して位置決めされた状態で、永久磁石EMが固定部材R6に固定されているので、永久磁石EMの厚さがばらついても、永久磁石EMの内側面EMpと第1コイル13と距離のバラツキが抑制されて、永久磁石EMが精度良く配設される。このため、永久磁石EMからの第1コイル13に作用する磁気力が安定し、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動させるための推力も安定することとなる。
先ず、固定部材R6の対向壁部46は、図12(a)に示すように、隣り合う延設部66同士の間に、しかも連続して設けられ、固定部材R6の4辺の外周を形成している。これにより、永久磁石EMを固定する固定部材R6の強度を高めることができる。このため、固定部材R6の変形を抑えられるので、永久磁石EMを精度良く配設することができる。
また、対向壁部46のそれぞれには、図12(a)に示すように、その中央部分に切欠き46kを有している。そして、この切欠き46kを利用して、永久磁石EMが固定部材R6の配設された後でも(図12(b)を参照)、永久磁石EMと固定部材R6とに接着剤を容易に塗布できたり、その接着剤(紫外線硬化型)に紫外線を外側から照射して、接着剤を硬化することもできる。これらのことにより、レンズ駆動装置100を作製する際に、容易に組み立てることができる。
また、本発明の第1実施形態では、図11(b)に示すように、永久磁石EMが固定部材R6に配設された際には、対向壁部46は、永久磁石EMの外側面EMqと対向するようになり、図13に示すように、この外側面EMqと対向壁部46との間に第1隙間6gを有するように構成されている。そして、この第1隙間6gには、接着剤が設けられて、永久磁石EMと固定部材R6とが接着されている。これにより、外側面EMqと対向壁部46との広い面積の部分で、永久磁石EMと固定部材R6とを接着することができる。このため、強い強度で永久磁石EMを固定部材R6に固定でき、落下等の強い衝撃が加えられても、永久磁石EMが固定部材R6から脱落するのを防ぐことができる。
次に、固定部材R6の枠状部56は、図1及び図12(a)に示すように、対向壁部46と直交する平面に矩形状に形成され、固定部材R6の上側面を構成している。そして、前述したように、この枠状部56の四辺から下方側へ延設して対向壁部46が形成されるとともに、枠状部56の四隅から下方側へ突出して延設部66が形成されている。なお、本発明の第1実施形態では、対向壁部46、枠状部56及び延設部66は、連続して一体に形成されている。
また、前述したように、枠状部56の四隅の上面側に上バネ固定部B16が設けられ、図9(a)に示すように、上側板ばね4Aの他方側(第2部分24)が、上バネ固定部B16の突部B16tに挿通されて、固定部材R6に固定されている。
また、本発明の第1実施形態では、永久磁石EMが固定部材R6に配設された際には、図示はしていないが、永久磁石EMの上面EMa(図1を参照)と固定部材R6の枠状部56との間に第2隙間を有して構成されている。
次に、固定部材R6の延設部66は、枠状部56の四隅から下方側へ突出して形成されており、図5(a)に示すように、光軸方向KDに沿うように延びている。また、それぞれの延設部66には、図11及び図12(a)に示すように、対向壁部46と平行に形成された位置決め部76が設けられている。
そして、本発明の第1実施形態では、この延設部66と枠状部56と対向壁部46と位置決め部76とで、四方を囲まれた(二方は開放)収容空間が形成されている。この収容空間には、永久磁石EMが固定部材R6に配設された際に、永久磁石EMの一部、具体的には、永久磁石EMの長手方向(光軸方向KDと交差する方向、図11に示すX方向或いはY方向)における両端側が収容される。そして、永久磁石EMの長手方向の両端側の内側面EMpと位置決め部76とが当接するようになる。これにより、永久磁石EMの長手方向における両端側の内側面EMpの2点で位置決めされることとなり、位置ズレが抑えられる。このことにより、永久磁石EMと第1コイル13との位置決め精度を確保しやすい。
また、延設部66は、図5(b)に示すように、光軸方向KDにおける永久磁石EMの下面EMzと同じ高さ位置にある下端面66pを有して構成されている。これにより、永久磁石EMの光軸方向KD(高さ方向)の寸法がばらついても、延設部66の下端面66pと永久磁石EMの下面EMzを基準として、永久磁石EMを精度良く配設することができる。しかも、永久磁石EMの上面EMaと固定部材R6の枠状部56との間に第2隙間を有するので、永久磁石EMの寸法バラツキをこの第2隙間で吸収することができる。
また、前述したように、延設部66の下部側に下バネ固定部B26が設けられ、図9(b)に示すように、下側板ばね4Cの他方側(第4部分44)が、下バネ固定部B26の突部B26tに挿通されて、固定部材R6に固定されている。
次に、固定部材R6の位置決め部76は、前述したように、図11に示すように、それぞれの延設部66に2つずつ設けられている。そして、隣り合う延設部66の片方の位置決め部76のそれぞれと1つの永久磁石EMの内側面EMpとが当接している。また、この2つの位置決め部76は、第1コイル13の延在部13qの延設方向の外側に位置、言い換えると、第1コイル13の屈曲部13r側の位置に設けられている。このため、永久磁石EMが、第1コイル13の延在部13qの全長に亘って直接対向することとなる。このことにより、第1駆動機構D1による光軸方向KDへの推力を確実なものとすることができる。
また、図12(a)に示すように、光軸方向KDにおける位置決め部76の長さ寸法は、対向壁部46の光軸方向KDの長さ寸法よりも大きく構成されている。これにより、永久磁石EMの位置決め精度に影響を与えることなく、対向壁部46を小さくしかも薄く形成することができる。このことにより、固定部材R6の外形を小さくでき、ひいてはレンズ駆動装置100を小型にすることができる。更には、永久磁石EMを固定部材R6に組み入れる際には、外側から容易に装着し易い。
また、図13に示すように、位置決め部76より内側に位置する部分に、対向壁部46と対向して平行に延出した延壁部66wを有しており、永久磁石EMが固定部材R6に配設された際には、この延壁部66wと永久磁石EMの内側面EMpとの間に第3隙間6sを有するように構成されている。そして、この第3隙間6sには、接着剤が設けられて、永久磁石EMと固定部材R6とが接着されている。これにより、強い強度で永久磁石EMを固定部材R6に固定でき、落下等の強い衝撃が加えられても、永久磁石EMが固定部材R6から脱落するのを防ぐことができる。
以上のようにして、可動ユニットKUは、レンズ保持部材2と付勢部材4(上側板ばね4A及び下側板ばね4C)と第1駆動機構D1(第1コイル13、永久磁石EM及び固定部材R6)とが各々配設されて構成されているので、電源から上側板ばね4Aを介して第1コイル13に電流が流されて生じる電磁力により、電流が流れる方向に対応して第1コイル13に推力が働き、レンズ保持部材2が上下に移動するようになっている。しかも、本発明の第1実施形態では、永久磁石EMが光軸(第1コイル13)を囲んで、四辺にそれぞれ配置されているので、第1コイル13及び永久磁石EMで作り出す光軸方向KDへの駆動力をレンズ保持部材2に対してバランス良く働かせることができる。
次に、レンズ駆動装置100のサスペンションワイヤ5について説明する。サスペンションワイヤ5は、導電性を有し且つ弾性に優れた金属材料を用いており、上端部が上側板ばね4A(ワイヤ固定部64)とはんだ付けされているとともに、下端部がベース部材7(後述する鍍金部7m)にはんだ付けされている。そして、サスペンションワイヤ5は、上側板ばね4Aを介して、可動ユニットKUの光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)への移動を可能に支持している。なお、金属材料として、例えば銅合金等を用いており、断面が直径50μm程度の円形で、弾性に寄与する有効長が3mm程度である。
次に、レンズ駆動装置100のベース部材7について説明する。図14は、ベース部材7を説明する図であって、図14(a)は、ベース部材7にサスペンションワイヤ5が装着された上方斜視図であり、図14(b)は、図14(a)を下方から見た下方斜視図である。図15(a)は、図14(a)に示すS部分の拡大上方斜視図であり、図15(b)は、図14(b)に示すT部分の拡大下方斜視図である。なお、図14及び図15には、説明を分かり易くするため、サスペンションワイヤ5の下端部とベース部材7(鍍金部7m)とをはんだ付けした半田HDを一点鎖線で囲まれたクロスハッチングで模式的に示している。図16(a)は、図14(a)のベース部材7に磁気検出部材88及び接着剤(図中に示すAD)を示した上方斜視図であり、図16(b)は、図16(a)に更に多層基板98を配設した上方斜視図である。なお、図16(b)には、多層基板98の裏面側(下面)に実装された磁気検出部材88を破線で示している。
レンズ駆動装置100のベース部材7は、レンズ保持部材2や固定部材R6と同じ合成樹脂材の1つである液晶ポリマー(LCP)等を用いて射出成形して作製されており、図14に示すように、外形が矩形状の板状形状で形成され、その中央部分に円形状の開口を有する環状形状に形成されている。そして、ベース部材7は、枠状を成した基部17と、ベース部材7の上面側に設けられた接着剤配置部37と、ベース部材7の角部に位置する薄肉部57と、を有して構成されている。
先ず、ベース部材7の基部17には、図14及び図15に示すように、上面、下面17u及び側面に立体的に配線された導電部7cが設けられている。この導電部7cは、後述する多層基板98に設けられた第2コイル23と導通接続されている。
また、ベース部材7の上面側には、図14に示すように、下方に窪んだ凹部7rが2箇所設けられており、この凹部7rには、図16(a)に示すように、多層基板98に搭載された磁気検出部材88が収容される。これにより、レンズ駆動装置100は、磁気検出部材88の厚み分(高さ分)に相当する高さを低くすることができる。
また、ベース部材7の下面17u側には、図14(b)に示すように、外部機器との接続のための端子T9が複数個設けられている。この端子T9のそれぞれは、図示していない撮像素子を実装した実装基板の電極ランドと電気的に接続され、実装基板の電極ランドから電力等を供給できるとともに、磁気検出部材88(検出手段M8)からの信号を取り出すこともできる。また、電極ランドに接地することもできる。具体的には、端子T9は、導電部7c、サスペンションワイヤ5、上側板ばね4Aを介して、第1駆動機構D1の第1コイル13に電気的に接続されているとともに、導電部7c、多層基板98を介して、第2駆動機構D2の第2コイル23に電気的に接続されている。また、端子T9は、導電部7c、多層基板98を介して、磁気検出部材88に電気的に接続されている。
次に、ベース部材7の接着剤配置部37は、図14(a)に示すように、基部17の上面側に4箇所設けられており、周囲に環状の溝部37mを有する形状になっている。この接着剤配置部37には、図16(a)に示すように、接着剤(AD)が塗布される。そして、図16(b)に示すように、多層基板98がベース部材7の上面側に載置されて、この接着剤(AD)によって、多層基板98がベース部材7に固定される。その際には、接着剤配置部37は、多層基板98に設けられた第2コイル23のそれぞれに対応した位置となる。これにより、第2コイル23の部分の浮きを防止し、第2コイル23と永久磁石EMとの距離を適切に保つことができる。また、接着剤配置部37が周囲に環状の溝部37mを有しているので、多層基板98とベース部材7とを貼り合わせる際に、余分な接着剤(AD)が環状の溝部37mに収容されることとなる。このため、適切な接着剤(AD)の厚みで貼り合わせることができるとともに、接着剤(AD)が多層基板98の外部にはみ出し難くすることができる。
次に、ベース部材7の薄肉部57は、図14ないし図16に示すように、厚さ寸法(Z方向の寸法)が基部17よりも小さく形成されており、図5(b)及び図15(b)に示すように、薄肉部57の下面57vが、基部17の下面17uよりも上方(図5(b)に示すZ1方向)に位置して、図15(b)に示すように、薄肉部57(下面57v)と基部17(下面17u)とは段差を有して繋がっている。すなわち、薄肉部57の下面57vと基部17の下面17uとの間には、段差が設けられている。
そして、この段差を構成している壁部57wは、薄肉部57側を臨むように設けられている。また、壁部57wは、薄肉部57の下面57vに対して、垂直(約90°)に形成された垂直壁を有している。なお、薄肉部57の下面57vと基部17の下面17uとが部分的にテーパ面で繋がっていても良い。
また、薄肉部57には、図16に示すように、サスペンションワイヤ5が挿通される貫通孔7hと、貫通孔7hの周囲及び貫通孔7hの内面に形成された金属皮膜からなる鍍金部7mと、を有している。ここで、貫通孔7hの周囲とは、貫通孔7hと隣り合う薄肉部57の下面57vまたは上面の部分を含んでいる。そして、貫通孔7hの周囲の鍍金部7mは、少なくとも薄肉部57の下面57vに形成されていれば良いが、本発明の第1実施形態においては、薄肉部57の下面57vと上面の両方に設けられている。
また、薄肉部57の下面57vの全面には、鍍金部7mと同じ金属皮膜が形成されているとともに、壁部57wにも鍍金部7mと同じ金属皮膜が形成されている。そして、この下面57vの金属皮膜は、壁部57wの全域に形成された金属皮膜と連続している。
そして、サスペンションワイヤ5が貫通孔7hに挿通されて、サスペンションワイヤ5の下端部が、鍍金部7mにはんだ付けされている。これにより、サスペンションワイヤ5がベース部材7に固定されることとなる。このため、従来例のフィルム基材であるFPC933と比較して、サスペンションワイヤ5がFPCと比較して剛性のあるベース部材7に確実に固定される。このことにより、サスペンションワイヤ5を安定して支持することができ、手振れ補正のための光軸方向KDと交差する交差方向CDの制御を安定させることができる。なお、このベース部材7は、サスペンションワイヤ5の下端部を支持する支持部材としての機能を有している。また、薄肉部57は、厚さ寸法が基部17より小さいため、『薄肉部』と呼称しているが、上端部が上側板ばね4Aにはんだ付けされたサスペンションワイヤ5を支持するのに充分な剛性を有した厚さに形成されている。
また、この鍍金部7mではんだ付けされると、貫通孔7hの上部には、図15(a)に示すように、サスペンションワイヤ5を取り囲むように上部半田フィレットが形成されるとともに、貫通孔7hの下部には、図15(b)に示すように、サスペンションワイヤ5を取り囲むように下部半田フィレットが形成される。なお、詳細な図示はしていないが、上部半田フィレットが下部半田フィレットよりも小さく形成されている。これにより、ベース部材7の上方に配設された可動ユニットKUを支持するサスペンションワイヤ5における、ばね特性に寄与する有効長を長くすることができる。このため、ばね特性が向上し、製品性能を向上させることができる。
また、前述したように、厚さ寸法が基部17よりも小さく形成された薄肉部57に貫通孔7hを設けた構成としたので、貫通孔7hの内面に形成された鍍金部7mの表面積を狭くすることができる。このため、貫通孔7hの内面に充填される半田HDの量を少なくすることができ、はんだ付けの際に、半田HDに加える熱量を少なくすることができる。このことにより、ベース部材7へのダメージを抑制することができる。更に、半田フィレット(上部半田フィレット及び下部半田フィレット)がこの薄肉部57に形成されるので、基部17の厚さ寸法内に半田フィレットを収めることができる。このため、全体の厚みを薄くすることができる。
また、本発明の第1実施形態では、薄肉部57の下面57vと壁部57wの少なくとも垂直壁の部分にも、鍍金部7mと同じ金属皮膜が形成されている。このため、サスペンションワイヤ5の下端部をはんだ付けする際に、例えばレーザ光を照射して行う場合、仮に、フラックスや半田HDが飛散して下面57v及び壁部57wに当たったとしても、下面57v及び壁部57wのベース部材7を構成する合成樹脂材が焦げるのを抑制することができる。更に、半田ペースト或いは半田HDに当たったレーザ光が乱反射して、仮に、その一部が壁部57wに当たったとしても、壁部57wのベース部材7を構成する合成樹脂材が焦げるのを抑制することができる。
また、下面57v及び壁部57wに金属皮膜が形成されているので、この部分の金属皮膜によって、放熱することができる。更には、壁部57wから基部17に形成された端子部にかけて(場合によっては端子T9迄)金属皮膜を繋げることで、この部分の金属皮膜と端子部によって、余分な熱を放熱することができる。これらのことにより、薄肉部57に与えられる熱量をより少なくすることができ、ベース部材7へのダメージをより抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態では、金属皮膜の最表面側の層が金で形成されている。このため、例えば腐食しにくく、耐環境性に優れているとともに、はんだ付け性も良好である。なお、本発明の第1実施形態の金属皮膜は、金の下層に、ニッケル及び銅からなる2層の皮膜が形成されている。
また、レーザ照射してはんだ付けを行う場合には、金によるレーザ光の反射率が高い(約95%)ので、半田HDに当たったレーザ光が乱反射して、仮に、その一部が薄肉部57の下面57vや壁部57wに当たったとしても、確実に反射される。このため、薄肉部57や壁部57wに与えられる熱量をより一層少なくすることができ、ベース部材7へのダメージをより一層抑制することができる。
次に、レンズ駆動装置100の第2駆動機構D2について説明する。図17は、第2駆動機構D2を説明する図であって、図17(a)は、図16(b)に永久磁石EMを配設した上方斜視図であり、図17(b)は、図17(a)をY1側から見た背面図である。なお、図17(b)には、多層基板98の裏面側(下面)に実装された磁気検出部材88を破線で示している。
レンズ駆動装置100の第2駆動機構D2は、図17に示すように、第1駆動機構D1でも利用した4つの永久磁石EMと、4つの永久磁石EMの下方に離間してそれぞれ配置される4つの第2コイル23と、を有して主に構成されている。そして、外部機器の電源から端子T9を介して第2コイル23に電流が流されて生じる電磁力と永久磁石EMから発生する磁界とを利用して、可動ユニットKUを交差方向CD(光軸方向KDと交差する方向)へ移動させる機能を有している。なお、永久磁石EMについて前述したので、ここでは詳しい説明を省略する。
第2駆動機構D2の第2コイル23は、図16(b)に示すように、多層基板98に設けられ、導電層が多層に形成されたこの多層基板98を利用して、渦巻状のコイルパターンが複数層積層して構成している。そして、前述したように、この多層基板98がベース部材7に固定されているので、この複数の第2コイル23は、ベース部材7に支持されることとなる。なお、云うまでもないが、各層に形成されたパターン間の接続はスルーホールで行っている。また、それぞれの第2コイル23は、多層基板98の下面に形成された電極端子(図示していない)と導通しており、この電極端子とベース部材7の導電部7cとがはんだ付けされ、電気的に接続されている。
また、第2コイル23は、図16(b)に示すように、矩形の枠状をした多層基板98のそれぞれの辺部に沿った方向に長手方向を有する形状を成している。そして、レンズ駆動装置100が組立てられた際には、図17(a)に示すように、4つの第2コイル23のそれぞれは、4つの永久磁石EMのそれぞれと対向して配設されるとともに、永久磁石EMの長手方向と第2コイル23の長手方向とが一致した位置に配設される。
また、この4つの第2コイル23の長手方向は、図16(b)に示すように、隣同士が互いに直交する位置に配置されている。つまり、レンズ保持部材2を挟んで対向する一方の一対の第2コイル23がX方向と平行な方向で配置されているともに、他方の一対の第2コイル23がY方向と平行な方向で配置されている。これにより、それぞれの一対の第2コイル23に電流を流して、可動ユニットKUをX方向とY方向に駆動させることができる。
また、第2コイル23は、図16(b)に示すように、光軸方向KDから見た平面視において、レンズ保持部材2を挟んで対向する一対のそれぞれが同じサイズでしかも点対称に設けられている。このため、第2コイル23に電流を流した際に、可動ユニットKUを回転させるような力が発生せず、光軸と交差する方向(交差方向CD)へバランス良く適切に駆動できる。
また、前述したように、永久磁石EMは、固定部材R6(延設部66)の下端面66pを基準として永久磁石EMの下面EMzが精度良く配設されているので、ベース部材7に固定された多層基板98に形成された第2コイル23と、永久磁石EMの下面EMzと、の距離のバラツキが抑制されてている。このため、第2コイル23から永久磁石EMに作用する磁気力が安定することとなる。このことにより、交差方向CDの推力のバラツキを抑制することができ、可動ユニットKUを安定して駆動することができる。
次に、レンズ駆動装置100の検出手段M8について説明する。検出手段M8は、図1に示すように、上述した4つの永久磁石EMの内の2つと、永久磁石EM(検出用磁石)が発生する磁界を検出する磁気検出素子を有する磁気検出部材88と、磁気検出部材88が搭載された多層基板98と、を有して構成されている。そして、検出手段M8は、可動ユニットKUの光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)における位置を検出する機能を有している。なお、永久磁石EMについて前述したので、ここでも詳しい説明を省略する。
先ず、検出手段M8の磁気検出部材88は、磁界の変化で電気抵抗が変化する磁気抵抗効果素子、例えば巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子という)を用いている。また、磁気検出部材88は、4つの端子部を外側に露出して、熱硬化性の合成樹脂材を用いて、この磁気検出素子(磁気抵抗効果素子)を内蔵したパッケージで形成されている。
また、磁気検出部材88は、2つの磁気検出素子を用いており、図17(b)に示すように、多層基板98の下面に搭載(実装)され、多層基板98を挟んで2つの永久磁石EMと対向している。そして、磁気検出部材88は、可動ユニットKU側に配設され固定部材R6に固定された永久磁石EMが発生した磁界を検知し、可動ユニットKUの交差方向CD(光軸方向KDと交差する方向)への移動による磁界の向きの変化を検出することができる。この際に、磁気検出素子が下面に搭載された多層基板98における第2コイル23がベース部材7の導電部7cと導通接続されているので、従来例のようなフレキシブルプリント基板(FPC933)が不要となる。このため、磁気検出素子と永久磁石EMとの距離を近づけることができるとともに、磁気検出素子が板状で剛性のある多層基板98に安定して搭載される。このことにより、磁気検出素子による検出精度を高めることができ、光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)の制御が安定したものとなる。
また、磁気検出部材88(磁気検出素子)は、図16(b)に示すように、隣り合った2つの第2コイル23の長手方向における延長線上に設けられているので、第2コイル23が発生する磁界の影響を磁気検出素子が受け難いこととなる。例えば、第2コイル23の下側に磁気検出素子があると、第2コイル23に流れる電流によって発生する磁界の影響を受けて検出の精度が悪くなる。
次に、検出手段M8の多層基板98は、多層のプリント配線板(PWB、printed wiring board)を用いて、矩形枠状に形成さており、レンズ保持部材2の中央部を挟んで対向するように配置された2つの基板によって構成されている。これにより、母基板から多層基板98を作製する際に、1つの繋がった基板(リング状の基板)で形成されている場合と比較して、分割された基板を歩留まり良く得ることができる。このため、1つの母基板からの取り個数が増え、多層基板98の作製コストを抑制することができる。
また、分割された1つの多層基板98の方には、2つの磁気検出素子がまとめて搭載されている。このため、磁気検出部材88(磁気検出素子)を実装する際に、全ての基板にそれぞれ実装せずに、最小限の基板にだけ実装すれば良い。このため、生産性を良くすることができる。
以上のように構成された検出手段M8は、可動ユニットKU、ひいてはレンズ保持部材2の交差方向CDにおける位置を検出することができる。そして、レンズ駆動装置100は、検出手段M8からの信号情報に基づいて、第2コイル23に電流を流すことで、レンズ保持部材2の位置を補正することができる。
次に、レンズ駆動装置100の枠体W9について説明する。枠体W9は、ポリブチレンテレフタレート(PBT、polybutyleneterephtalate)等の合成樹脂材を用い、図1に示すように、中央に矩形状の開口を有し略矩形形状をなした環状の部材である。
また、枠体W9の四隅には、図1に示すように、それぞれ2組の貫通した孔W9k(合計8個)が設けられており、枠体W9がレンズ駆動装置100に組み込まれた際には、図5(a)に示すように、上バネ固定部B16の突部B16tが挿通される。そして、この部分を接着剤で固定することにより、枠体W9と上バネ固定部B16とで挟持された上側板ばね4Aの他方側(第2部分24)を固定部材R6側に固定されるようになる。
最後に、レンズ駆動装置100のケース部材H9について説明する。ケース部材H9は、非磁性の金属材料からなる金属板を用いて切断加工、絞り加工等を行い作製されており、図1に示すような外形が箱状に形成されて、図3(a)に示すような略矩形状(平面視して)をしている。そして、ケース部材H9は、可動ユニットKU、サスペンションワイヤ5、第2駆動機構D2、検出手段M8及び枠体W9を覆うようにして、それらの部材を収容して、ベース部材7に固定されている。なお、ケース部材H9とベース部材7とは、接着剤によって固定されている。
次に、以上に構成されたレンズ駆動装置100の動作について簡単に説明する。
先ず、レンズ駆動装置100の可動ユニットKUにおいては、第1コイル13の両端部が上側板ばね4A、サスペンションワイヤ5及びベース部材7の導電部7cを介して給電用の端子T9に電気的に接続されているため、端子T9から第1コイル13に電流を流すことができる。一方、永久磁石EMからの磁束は、永久磁石EMを発して第1コイル13を通過し、永久磁石EMに戻るものとなっている。
この初期状態から、一方の端子T9側から第1コイル13に電流を流すと、第1コイル13にはフレミングの左手の法則に従って、光軸方向KDであるZ1方向からZ2方向へ向かう電磁力が発生する。そして、レンズ保持部材2がZ2方向に移動することとなる。一方、他方の端子T9側から第1コイル13に電流を流すと、光軸方向KDであるZ2方向からZ1方向へ向かう電磁力が発生し、レンズ保持部材2がZ1方向に移動することとなる。このように、第1コイル13に電流を流すことで、第1コイル13に発生する電磁力により、レンズ駆動装置100は、可動ユニットKUの付勢部材4に支持されながら、図示しないレンズ体をレンズ保持部材2と一体にして、光軸方向KD(図2に示すZ方向)に沿って移動させることが可能となる。
また、レンズ駆動装置100の第2駆動機構D2においては、4つの第2コイル23のそれぞれが多層基板98及びベース部材7の導電部7cを介して給電用の端子T9に電気的に接続されているため、端子T9から第2コイル23に電流を流すことができる。一方、永久磁石EMからの磁束は、永久磁石EMを発して第2コイル23を通過し、永久磁石EMに戻るものとなっている。
この初期状態から、X方向に長い一方の一対の第2コイル23に電流を流すと、X方向に長い第2コイル23には、Y方向に向けた電磁力が発生する。また、Y方向に長い他方の一対の第2コイル23に電流を流すと、Y方向に長い第2コイル23には、X方向に向けた電磁力が発生する。そして、この第2コイル23に発生する電磁力により、サスペンションワイヤ5に支持された可動ユニットKUに対して、X方向或いはY方向に推力を与えることができる。このため、可動ユニットKUを光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)へ移動させることが可能となる。
次に、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置100の製造方法について、図18を用いて説明する。図18は、レンズ駆動装置100の製造方法を説明する図であって、各製造工程を示した説明図である。
本発明の第1実施形態に係わるレンズ駆動装置100の製造方法は、図18に示すように、各部材(図1に示すレンズ保持部材2、第1コイル13、付勢部材4(上側板ばね4A、下側板ばね4C)、永久磁石EM、サスペンションワイヤ5、固定部材R6、ベース部材7、第2コイル23が形成された多層基板98、磁気検出部材88、枠体W9、ケース部材H9)を準備する準備工程PJと、各部材を組立てる組立工程PKと、から構成されている。
また、準備工程PJには、図18に示すように、サスペンションワイヤ5の上端部とはんだ付けされる付勢部材4を作製する付勢部材作製工程JBと、永久磁石EMが固定される固定部材R6を作製する固定部材作製工程JCと、サスペンションワイヤ5の下端部とはんだ付けされるベース部材7を作製するベース部材作製工程JDと、ベース部材7に固定される多層基板98を作製する多層基板作製工程JEと、を有している。なお、他の部材に関してもそれぞれ作製工程JAを有しているが、際だった特徴を有していないので、ここでの詳細な説明は省略する。
また、組立工程PKには、図18に示すように、主に、上側板ばね4Aの貫通部64kにサスペンションワイヤ5を挿通させるワイヤ挿通工程(第1挿通工程K1)と、上側板ばね4Aのワイヤ固定部64に半田ペーストを塗布する塗布工程(第1塗布工程K2)と、ワイヤ固定部64とサスペンションワイヤ5とをはんだ付けするレーザ照射工程(第1レーザ工程K3)と、ベース部材7の貫通孔7hにサスペンションワイヤ5を挿通させるワイヤ挿通工程(第2挿通工程K4)と、ベース部材7の鍍金部7mに半田ペーストを塗布する塗布工程(第2塗布工程K5)と、鍍金部7mとサスペンションワイヤ5とをはんだ付けするレーザ照射工程(第2レーザ工程K6)と、を有している。なお、他にも組立てに関する工程を有しているが、際だった特徴を有していないので、ここでの詳細な説明は省略する。
先ず、準備工程PJについて説明する。
先ず、準備工程PJの作製工程JAでは、液晶ポリマー(LCP)等を射出成形して、筒状に形成されたレンズ保持部材2を作製している。そして、外周に絶縁被覆(コーティング)が施された金属線材をレンズ保持部材2の一方の絡げ部12kに巻き付けて、庇部22と鍔部32との間に形成された外周面に巻回している。巻回が終了したら、他方の絡げ部12kに巻き付けて金属線材を切断し、八角形状の第1コイル13を作製している。
次に、準備工程PJの付勢部材作製工程JBでは、銅合金等の金属板を準備し、複数の金型で複数回の抜き加工を行うことにより、付勢部材4、つまり上側板ばね4Aと下側板ばね4Cを作製している。
そして、上側板ばね4Aを作製する際には、図8(a)に示すような、レンズ保持部材2に固定される第1部分14と、上バネ固定部B16に固定される第2部分24と、第1部分14と第2部分24との間に設けられた弾性腕部54Aと、第2部分24の外側に位置しサスペンションワイヤ5の上端部とはんだ付けされるワイヤ固定部64と、第2部分24とワイヤ固定部64との間を繋ぐように設けられた連結部74と、を有するように、金型の形状を決めておく。また、連結部74が第2部分24の離間した2箇所からワイヤ固定部64側に向かうように延出する2つの延出部74eを有し、2つの延出部74eの間には、ワイヤ固定部64から内側に向かって突出した板状の突出部84が設けられるようにも金型の形状を決めておく。
また、ワイヤ固定部64には、サスペンションワイヤ5を挿通することができる貫通部64kを有するともに、突出部84には、ワイヤ固定部64に隣り合った開口部84kが形成されるようにも金型の形状を決めておく。更に、開口部84kが、突出部84の突出方向と直交する直交方向の寸法が突出方向の寸法よりも大きく形成された貫通穴(貫通した長孔)からなり、直交方向における開口部84kの寸法が、直交方向における突出部84の縁部と開口部84kの縁部との間の幅寸法よりも大きくなり、貫通部64kと開口部84kとの間の部分の幅が、開口部84kよりも内側に位置する部分の突出部84の幅よりも狭くなるようにも金型の形状を決めておく。
また、下側板ばね4Cを作製する際にも、同様にして、図8(b)に示すような、レンズ保持部材2に固定される第3部分34と、下バネ固定部B26に固定される第4部分44と第3部分34と第4部分44との間に設けられた弾性腕部54Cと、それぞれの第3部分34を繋ぐ連鎖部R4と、を有するように、金型の形状を決めておく。なお、上側板ばね4Aと下側板ばね4Cを抜き加工で作製せずに、エッチング加工で作製しても良い。
次に、準備工程PJの作製工程JAでは、ネオジウム等の磁性材料を用い、細長い板状をなした形状に焼結して、永久磁石EMを作製している。そして、同じ形状の永久磁石EMを4つ準備し、永久磁石EMの内側面EMpと外側面EMqとで異なる磁極となるように着磁している。
次に、準備工程PJの作製工程JAでは、銅合金等の金属線を準備し、この金属線を所望の長さに切断することにより、導電性を有し且つ弾性に優れたサスペンションワイヤ5を作製している。
次に、準備工程PJの固定部材作製工程JCでは、液晶ポリマー(LCP)等を射出成形して、平面視して略矩形状で枠形状に形成された固定部材R6を作製している。そして、固定部材R6を作製する際には、金型の形状を予め決めておくことにより、所望の形状を得ることができる。
具体的には、外周を形成する対向壁部46と、上側面を構成する枠状部56と、四隅に形成され枠状部56から下方側に突出した延設部66と、永久磁石EMの第1コイル13側を向く内側面EMpと当接可能な位置決め部76と、有するように、金型の形状を作製する。同様にして、対向壁部46には、中央部分に切欠きを有しているとともに、光軸方向KDにおける対向壁部46の長さ寸法が位置決め部76の長さ寸法より小さく形成されるようにする。
また、永久磁石EMが固定部材R6に収容された際に、対向壁部46と永久磁石EMの外側面EMqとの間に第1隙間6gを有するとともに(図13を参照)、永久磁石EMの下面EMzと延設部66の下端面66pと揃えた場合に、枠状部56と永久磁石EMの上面EMaとの間に第2隙間を有するようにも金型を作製しておく。
また、固定部材R6の枠状部56の上側面には、上側板ばね4Aの他方側(第2部分24)が固定される上バネ固定部B16が形成されるとともに、固定部材R6の延設部66の下部側には、下側板ばね4Cの他方側(第4部分44)が固定される下バネ固定部B26が形成されるように、金型を作製しておく。
次に、準備工程PJのベース部材作製工程JDでは、先ず、液晶ポリマー(LCP)等を射出成形して、導電部7c及び端子T9を支持する第1成形部材を作製する。次に、この第1成形部材にめっきを施すための触媒処理を行う。次に、この第1成形部材を金型にセットして、導電部7c及び端子T9に相当する部分以外を覆うように第2成形部材を射出成形して作製する。これにより、外形が矩形状の板状形状で円形状の開口を有する環状形状に形成され、枠状を成した基部17と、ベース部材7の上面側に設けられた接着剤配置部37と、ベース部材7の角部に位置する薄肉部57と、を有した成形部材が作製される。最後に、第1成形部材が表面に露出した部分に、銅めっき、ニッケルめっき、金めっきの順で、めっき皮膜を形成する。このようにして、上面、下面17u及び側面に導電部7c及び端子T9が立体的に配線されたベース部材7を作製している。
そして、ベース部材7を作製する際には、固定部材R6と同様に、金型の形状を予め決めておくことにより、所望の形状を得ることができる。具体的には、薄肉部57には、サスペンションワイヤ5が挿通される貫通孔7hと、貫通孔7hの周囲及び貫通孔7hの内面に形成された金属皮膜からなる鍍金部7mと、を有するとともに、薄肉部57の下面57vが基部17の下面17uよりも上方に位置するように、金型を作製しておく。
また、ベース部材7を作製する際には、薄肉部57と基部17とは少なくとも一部が段差を有して壁部57wで繋がって形成されており、薄肉部57の下面57v及び壁部57wには、鍍金部7mと同じ金属皮膜でめっきが施されるように、第1成形部材及び第2成形部材を構成しておく。
次に、準備工程PJの多層基板作製工程JEでは、導電層が多層に形成された母基板を用い、母基板に複数個の多層基板98を形成して、分割加工を行うことにより、多層基板98を作製している。この際に、本発明の第1実施形態では、多層基板98がレンズ保持部材2の中央部を挟んで対向するような形状の2つの基板によって構成されているので、1つの繋がった基板で形成されている場合と比較して、母基板に歩留まり良く2つの多層基板98を配置することができる。このため、多層基板98の作製コストを抑制することができる。
また、この多層基板98には、渦巻状のコイルパターンが複数層積層された第2コイル23を作製しておく。その際には、2つの多層基板98が組立てられた際に、光軸方向KDから見た平面視において、レンズ保持部材2を挟んで対向する一対の第2コイル23のそれぞれが同じサイズでしかも点対称に設けられるようにする。これにより、第2コイル23に電流を流した際に、可動ユニットKUを回転させるような力が発生せず、光軸と交差する方向(交差方向CD)へバランス良く適切に駆動できるようになる。
次に、準備工程PJの作製工程JAでは、磁気検出素子(GMR素子)が熱硬化型の合成樹脂でパッケージングされた磁気検出部材88を作製している。その際には、4つの端子部を外側に露出したパターンを有した樹脂パッケージ基材を用い、この樹脂パッケージ基材に磁気検出素子(GMR素子)を搭載し、ワイヤーボンディングで互いの配線を接続した後に、パッケージングしている。
そして、この2つの磁気検出部材88をマウンター機等を用いて、多層基板98の下面に搭載する。その際には、隣り合った2つの第2コイル23の長手方向における延長線上に、磁気検出部材88を搭載するようにして、第2コイル23が発生する磁界の影響を磁気検出素子が受け難いようにしている。
また、分割された1つの多層基板98の方に、2つの磁気検出素子をまとめて搭載(実装)するようにし、最小限の基板にだけ磁気検出部材88(磁気検出素子)を実装して、生産性を良くするようにしている。
また、準備工程PJの作製工程JAでは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を射出成形して、中央に矩形状の開口を有し略矩形形状をなした枠体W9を作製している。そして、枠体W9の四隅には、上バネ固定部B16の突部B16tが挿通される2組の貫通した孔W9kが形成される。
また、準備工程PJの作製工程JAでは、非磁性の金属材料からなる金属板を用い、切断加工、絞り加工等を行い、外形が箱状に形成され略矩形状(平面視して)をしているケース部材H9を作製している。
次に、組立工程PKについて説明する。
先ず、図18に示すように、予め、固定部材R6に永久磁石EMを装着する永久磁石装着工程LAを行っておく。この永久磁石EMを固定部材R6に組み込む際は、平板状の治具の上に、永久磁石EMを載置し、更に固定部材R6を覆うようにして載置する。これにより、永久磁石EMの下面EMzと固定部材R6の延設部66の下端面66pとを同一平面で容易に一致させることができる。このことにより、永久磁石EMを精度良く配設することができる。なお、永久磁石EMの上面EMaと固定部材R6の枠状部56との間に生じる第2隙間の部分には、熱硬化型の接着剤を予め塗布しておく。
また、永久磁石EMが固定部材R6に組み込まれた後に、対向壁部46の切欠き46k(凹形状部)の部分に紫外線硬化型の接着剤を塗布する。この切欠き46kを有することにより、接着剤を容易に塗布することができる。更に、対向壁部46と永久磁石EMの外側面との広い面積の部分で、固定部材R6と永久磁石EMとを接着することができるので、強い強度で永久磁石EMを固定部材R6に固定することができる。
また、紫外線硬化型の接着剤を塗布した後に、永久磁石EMと対向壁部46との間に薄い治具を挿入して、永久磁石EMの内側面EMpを位置決め部76に当接させる。そして、この状態で接着剤に紫外線を照射して、紫外線硬化型の接着剤を硬化させ、永久磁石EMを固定部材R6に固定する。その後、治具を取り除く。
更に、固定部材R6の延壁部66wと永久磁石EM76の内側面EMpとの間に設けられた第3隙間6sの部分に、熱硬化型の接着剤を塗布して、加熱することにより熱硬化型の接着剤を硬化させる。これにより、第2隙間の部分と第3隙間6sの部分で、永久磁石EMと固定部材R6とを強固に固定することができる。これらのことにより、落下等の強い衝撃が加えられても、永久磁石EMが固定部材R6から脱落するのを確実に防ぐことができる。
このようにして、永久磁石EMの厚さがばらついても、永久磁石EMの内側面EMpと固定部材R6の位置決め部76とが当接して位置決めされるので、永久磁石EM(固定部材R6)が組立てられた際に、永久磁石EMの内側面EMpと第1コイル13と距離のばらつきが抑制されて、永久磁石EMが精度良く配設されることとなる。このため、永久磁石EMからの第1コイル13に作用する磁気力が安定し、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動させるための推力も安定することとなる。
次に、図18に示すように、予め、ベース部材7に多層基板98を装着する多層基板装着工程LBを行っておく。この多層基板98をベース部材7に固定する際は、先ず、ベース部材7の溝部37mの内側にある凸状の部分に熱硬化型の接着剤を塗布する。次に、多層基板98をベース部材7上に載置する。その際には、はみ出した接着剤が溝部37mの空間に収容される。最後に、この接着剤を加熱/硬化して、ベース部材7に多層基板98を固定する。
次に、付勢部材装着工程LCを行う。先ず、レンズ保持部材2に上側板ばね4Aの第1部分14を固定する。その際には、第1部分14の貫通穴にレンズ保持部材2の凸設部12tを挿通し、この凸設部12tを熱かしめすることにより、上側板ばね4Aの一方側をレンズ保持部材2に固定する。
次に、永久磁石装着工程LAで作製された固定部材R6(永久磁石EMが装着されている)と枠体W9とで上側板ばね4Aを挟むようにして組み込み、上側板ばね4Aの第2部分24を上バネ固定部B16(固定部材R6)に固定する。その際には、第2部分24の貫通穴及び枠体W9の貫通した孔W9kに上バネ固定部B16の突部B16tを挿通し、この部分を接着剤で固定することにより、上側板ばね4Aの他方側を固定部材R6側に固定する。
次に、下側板ばね4Cを組み込む。その際には、下側板ばね4Cの第3部分34とレンズ保持部材2の凹設部32rとを接着剤で固定するとともに、下側板ばね4Cの第4部分44と下バネ固定部B26(固定部材R6)とを接着剤で固定する。
次に、図18に示すように、ワイヤ挿通工程(第1挿通工程K1)を行う。ワイヤ挿通工程(第1挿通工程K1)では、上側板ばね4Aの貫通部64kにサスペンションワイヤ5を挿通する。これにより、ワイヤ固定部64とサスペンションワイヤ5とを容易に係合することができる。そして、サスペンションワイヤ5を挿通した後に、サスペンションワイヤ5の中間部を治具でクランプして、サスペンションワイヤ5が位置ずれしないようにしている。
次に、図18に示すように、ワイヤ挿通工程(第1挿通工程K1)の後、塗布工程(第1塗布工程K2)を行う。塗布工程(第1塗布工程K2)では、ディスペンサ装置を用いて、上側板ばね4Aの貫通部64kを含むワイヤ固定部64の上面に、半田ペーストを塗布する。これにより、サスペンションワイヤ5の全周に亘って半田ペーストを塗布することができ、次のレーザ照射工程(第1レーザ工程K3)において、サスペンションワイヤ5の全周に亘ってはんだ付けすることができる。
また、この塗布工程(第1塗布工程K2)がワイヤ挿通工程(第1挿通工程K1)の後に行われるので、貫通部64kに半田ペーストが塗布されていない状態で、サスペンションワイヤ5を貫通部64kに挿通することができる。このため、半田ペーストの存在に起因したサスペンションワイヤ5の変形を防止することができる(半田ペーストが塗布された状態で貫通部64kにサスペンションワイヤ5を通すと、サスペンションワイヤ5が変形する虞がある)。
次に、図18に示すように、塗布工程(第1塗布工程K2)の後、レーザ照射工程(第1レーザ工程K3)を行う。レーザ照射工程(第1レーザ工程K3)では、ワイヤ固定部64に繋がっている突出部84にレーザ光を照射する。これにより、上側板ばね4Aの突出部84がレーザ光によって加熱されて、突出部84から突出部84に繋がったワイヤ固定部64に熱が伝導し、ワイヤ固定部64が加熱される。このため、ワイヤ固定部64に塗布された半田ペーストが加熱されて、溶融した半田HDとなり、その後、半田HDが冷却されて、サスペンションワイヤ5の上端部と上側板ばね4Aのワイヤ固定部64とがはんだ付けされることとなる(はんだ付け工程)。このことにより、手はんだ付けを行う場合と比較して、作業性等が向上するとともに、はんだ付け工程での不良を低減することができる。
また、本発明の第1実施形態では、ワイヤ固定部64に隣り合った突出部84に開口部84kを形成しているので、レーザ照射工程(第1レーザ工程K3)において、この開口部84kにより溶けた半田HDが堰き止められ、半田HDが突出部84側に広く流れるのを抑制することができる。このため、ワイヤ固定部64の半田量がバラツキ難くなり、ワイヤ固定部64とサスペンションワイヤ5の上端部とのはんだ付けを確実なものとできる。更に、レーザ光が照射される部分(開口部84kより内側の部分)にまで半田HDが流れてこないので、レーザ光による半田HDの飛散やレーザ光の乱反射による周辺の合成樹脂材の“焼け”を防止することができる。
更に、本発明の第1実施形態では、開口部84kが突出部84の突出方向と直交する直交方向に幅広に形成された貫通した長孔(貫通穴)からなり、この直交方向における開口部84kの幅寸法が突出部84の縁部と開口部84kの縁部との間の幅寸法よりも大きく設定されているので、この開口部84kで半田HDを確実に堰き止めることができる。このため、半田HDが突出部84側に広く流れるのを確実に抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態では、貫通部64kと開口部84kとの間の部分の幅が開口部84kよりも内側に位置する部分の突出部84の幅よりも狭くなっているので、サスペンションワイヤ5を中心として形成される半田フィレットの外形形状(フットプリント)が、この幅が狭くなっている部分により規制されることとなる。このため、半田フィレットが大きく広がるのを防ぐとともに、ワイヤ固定部64の半田量のバラツキを小さくすることができる。なお、はんだ付け工程の後に、サスペンションワイヤ5から治具を外す。
次に、上側板ばね4Aを下側にして本体を反転し、図18に示すように、ワイヤ挿通工程(第2挿通工程K4)を行う。ワイヤ挿通工程(第2挿通工程K4)では、多層基板装着工程LBで作製されたベース部材7(多層基板98が装着されている)を上側から組み込み、ベース部材7の貫通孔7hにサスペンションワイヤ5を挿通する。これにより、ベース部材7とサスペンションワイヤ5とを容易に係合することができる。なお、次の塗布工程(第2塗布工程K5)及びレーザ照射工程(第2レーザ工程K6)において、製造を容易にするため、上側板ばね4Aを下側にして本体を反転したが、必ずしも反転する必要はない。
次に、図18に示すように、ワイヤ挿通工程(第2挿通工程K4)の後、塗布工程(第2塗布工程K5)を行う。塗布工程(第2塗布工程K5)では、ディスペンサ装置を用いて、薄肉部57の下面57v側からベース部材7の貫通孔7h及び貫通孔7hの周囲に位置する鍍金部7mに半田ペーストを塗布する。これにより、サスペンションワイヤ5の全周に亘って半田ペーストを塗布することができ、次のレーザ照射工程(第2レーザ工程K6)において、サスペンションワイヤ5の全周に亘ってはんだ付けすることができる。
また、この塗布工程(第2塗布工程K5)がワイヤ挿通工程(第2挿通工程K4)の後に行われるので、貫通孔7hに半田ペーストが塗布されていない状態で、サスペンションワイヤ5を貫通孔7hに挿通することができる。このため、半田ペーストの存在に起因したサスペンションワイヤ5の変形を防止することができる(半田ペーストが塗布された状態で貫通孔7hにサスペンションワイヤ5を通すと、サスペンションワイヤ5が変形する虞がある)。
また、ベース部材作製工程JDにおいて、厚さ寸法が基部17よりも小さく形成された薄肉部57に貫通孔7hを設けたので、貫通孔7hの内面に形成された鍍金部7mの表面積を狭くすることができる。このため、この塗布工程(第2塗布工程K5)において、貫通孔7hの内面に充填される半田ペーストの量を少なくすることができる。
次に、図18に示すように、塗布工程(第2塗布工程K5)の後、レーザ照射工程(第2レーザ工程K6)を行う。レーザ照射工程(第2レーザ工程K6)では、半田ペーストにレーザ光を直接照射する。これにより、半田ペーストが直接加熱されて、溶融した半田HDとなり、その後、半田HDが冷却されて、サスペンションワイヤ5の下端部と貫通孔7hの周囲及び貫通孔7hの内面に形成された鍍金部7mとがはんだ付けされることとなる。このため、サスペンションワイヤ5が板状で剛性のあるベース部材7に確実に固定されることとなる。このことにより、従来例のフィルム基材であるFPC933と比較して、サスペンションワイヤ5を安定して支持することができ、手振れ補正のための光軸方向KDと交差する交差方向CDの制御を安定させることができる。また、レーザ光によるスポット加熱方式なので、生産性が良い。なお、レーザ照射工程(第2レーザ工程K6)では、半田ペーストにレーザ光を直接照射するので、レーザ照射工程(第1レーザ工程K3)のレーザ出力よりも小さいレーザ出力で行っている。
また、本発明の第1実施形態では、レーザ照射工程(第2レーザ工程K6)において、ベース部材7の下面(下方)側(可動ユニットKUが配設される側とは反対側)からレーザ光を照射している。これにより、レーザ光の照射により、仮に、フラックスや半田HDが飛散して下面57v及び壁部57wに当たったとしても、下面57vと壁部57wに鍍金部7mと同じ金属皮膜を形成しているので、下面57v及び壁部57wのベース部材7を構成する合成樹脂材が焦げるのを抑制することができる。更に、レーザ光の照射により、半田ペーストに当たったレーザ光が乱反射して、仮に、その一部が壁部57wに当たったとしても、壁部57wのベース部材7を構成する合成樹脂材が焦げるのを抑制することができる。
また、下面57v及び壁部57wに形成された金属皮膜によって、放熱することができる上に、壁部57wから基部17に形成された端子部(導電部7c)にかけて金属皮膜を繋げることで、この部分の金属皮膜と端子部によって、余分な熱を更に放熱することができる。このことにより、薄肉部57に与えられる熱量をより少なくすることができ、ベース部材7へのダメージをより抑制することができる。
更に、本発明の第1実施形態では、塗布工程(第2塗布工程K5)において、貫通孔7hの内面に充填される半田ペーストの量を少なくしているので、このレーザ照射工程(第2レーザ工程K6)において、半田ペーストに加える熱量を少なくすることができ、ベース部材7へのダメージを抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態では、金属皮膜の最表面側の層が金であるので、レーザ照射工程(第2レーザ工程K6)において、はんだ付け性が良好である。また、金によるレーザ光の反射率が高い(約95%)ので、半田ペーストや半田HDに当たったレーザ光が乱反射して、仮に、その一部が薄肉部57の下面57vや壁部57wに当たったとしても、確実に反射される。このため、薄肉部57や壁部57wに与えられる熱量をより一層少なくすることができ、ベース部材7へのダメージをより一層抑制することができる。
最後に、図18に示すように、ケース部材装着工程LDを行う。ケース部材装着工程LDでは、ケース部材H9の内側に接着剤を塗布しておき、可動ユニットKUやサスペンションワイヤ5等を収容するようにして、ケース部材H9をベース部材7に装着する。そして、接着剤を硬化することにより、ケース部材H9とベース部材7とを固定する。
以上のように構成された本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置100における、効果について、以下に纏めて説明する。
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置100は、磁気検出素子が第2コイル23を構成する渦巻状のコイルパターンが複数層積層された多層基板98の下面に搭載されているとともに、多層基板98の第2コイル23がベース部材7の導電部7cと導通接続されているので、従来例のようなフレキシブルプリント基板(FPC)が不要となる。このため、磁気検出素子と永久磁石EMとの距離を近づけることができるとともに、磁気検出素子がFPCよりも剛性のある多層基板98に安定して搭載される。このことにより、磁気検出素子による検出精度を高めることができ、光軸方向KDと交差する方向(交差方向CD)の制御が安定したものとなる。
また、多層基板98がレンズ保持部材2の中央部を挟んで対向するように配置された少なくとも2つの基板によって構成されているので、母基板から多層基板98を作製する際に、1つの繋がった基板(リング状の基板)で形成されている場合と比較して、分割された基板を歩留まり良く得ることができる。このため、1つの母基板からの取り個数が増え、多層基板98の作製コストを抑制することができる。
また、2つの磁気検出素子が多層基板98の分割された基板の1つにまとめて搭載(実装)されているので、磁気検出部材88(磁気検出素子)を実装する際に、全ての基板にそれぞれ実装せずに、最小限の基板にだけ実装すれば良い。このため、生産性を良くすることができる。
また、磁気検出素子が隣り合った2つの第2コイル23の長手方向における延長線上に設けられているので、第2コイル23が発生する磁界の影響を磁気検出素子が受け難いこととなる。例えば、第2コイル23の下側に磁気検出素子があると、第2コイル23に流れる電流によって発生する磁界の影響を受けて検出の精度が悪くなる。また、光軸方向KDから見た平面視において、レンズ保持部材2を挟んで対向するそれぞれ第2コイル23が点対称に設けられているので、第2コイル23に電流を流した際、可動ユニットKUを回転させるような力が発生せず、光軸と交差する方向(交差方向CD)へバランス良く適切に駆動できる。
また、接着剤配置部37が第2コイル23に対応して設けられており、この接着剤配置部37に設けられた接着剤(AD)によって多層基板98がベース部材7に固定されているので、第2コイル23の部分の浮きを防止し、第2コイル23と永久磁石EMとの距離を適切に保つことができる。また、接着剤配置部37が周囲に環状の溝部37mを有しているので、多層基板98とベース部材7とを貼り合わせる際に、余分な接着剤(AD)が環状の溝部37mに収容されることとなる。このため、適切な接着剤(AD)の厚みで貼り合わせることができるとともに、接着剤(AD)が多層基板98の外部にはみ出し難くすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
図19は、レンズ駆動装置100の変形例を説明する図であって、図19(a)は、上側板ばね4Aの変形例3を示す拡大上面図であり、図19(b)は、上側板ばね4Aの変形例4を示す拡大上面図であり、図19(c)は、ベース部材7の変形例6ないし変形例8を示す拡大下方斜視図である。
<変形例1>
上記第1実施形態では、付勢部材4(上側板ばね4A、下側板ばね4C)の他方側が固定される上バネ固定部B16及び下バネ固定部B26を、固定部材R6に一体として設ける構成としたが、これに限るものではなく、それぞれ別体の部材を用いても良い。
<変形例2>
上記第1実施形態では、開口部84kを好適に貫通穴で形成した構成としたが、これに限る訳ではなく、段差を有した凹状部(窪み部)で開口を形成しても良い。
<変形例3><変形例4>
上記第1実施形態では、図10(a)に示すように、サスペンションワイヤ5が挿通される貫通部64kとして、貫通した穴で形成したが、これに限るものではない。例えば、図19(a)に示すように、一部が切り欠かれた切欠き状の貫通部C64kであっても良いし{変形例3}、図19(b)に示すように、U字形状の切欠き状の貫通部D64kであっても良い{変形例4}。
<変形例5>
上記第1実施形態では、サスペンションワイヤ5の下端部を支持する支持部材として、好適にベース部材7を用いたが、これに限るものではない。例えば、多層基板98にサスペンションワイヤ5の下端部を固定して、多層基板98を支持部材としても良い。
<変形例6><変形例7>
上記第1実施形態では、図15(b)に示すように、薄肉部57の下面57vと基部17の下面17uとは垂直壁を有した壁部57wで繋がっている構成としたが、これに限るものではなく、薄肉部57と基部17とは少なくとも一部が段差を有して繋がっている構成でも良い。例えば、図19(c)に示すように、壁部E57wが、薄肉部57の下面57vに対して、斜めに形成された傾斜壁を有した構成でも良いし{変形例6}、薄肉部57と基部17とが、薄肉部57の下面57vから段差を有して繋がっていなく、直接的に繋がっていても良い(図19(c)に示すWP)。
<変形例8>
上記第1実施形態では、図15(b)に示すように、薄肉部57の下面57v及び壁部57wの垂直壁の部分に、鍍金部7mと同じ金属皮膜が形成されている構成としたが、これに限るものではなく、図19(c)に示すように、壁部E57wから基部17の下面17uにかけて金属皮膜(図19(c)に示すMP)が形成されている構成としても良い。これにより、この部分の金属皮膜によって、余分な熱を更に放熱することができ、薄肉部57に与えられる熱量をより少なくすることができる。
<変形例9>
上記第1実施形態では、磁気検出部材88として、GMR素子を好適に用いたが、他に、磁界の変化で電気抵抗が変化するタイプの、MR(Magneto Resistive)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子等であっても良い。また、磁界の変化で電気抵抗が変化するタイプに限らず、例えばホール素子であっても良い。
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。