JP2018003285A - 作業機械 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は本発明の一実施形態に係る作業機械の外観を表す斜視図である。本実施形態ではフロント作業装置の先端のアタッチメントとしてバケットを装着した油圧ショベルを作業機械の例として説明する。但し、バケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルやブルドーザ等の他種の作業機械にも本発明は適用され得る。以降、運転席に着いた操作者から見て前側(図1中の左上側)、後側(同右下側)、左側(同左下側)、右側(同右上側)を油圧ショベルの前、後、左、右とし、それぞれ単に前側、後側、左側、右側と記載する。
図2は図1に示した油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置をコントローラユニットとともに示す図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
油圧アクチュエータ31〜34は、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33及び旋回モータ34の総称である。走行モータ35は図2では図示省略してある。ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33及び旋回モータ34のうち複数を挙げる場合に、「油圧アクチュエータ31〜34」、「油圧アクチュエータ31,32」等と総称で記載する場合がある。油圧アクチュエータ31〜35は、油圧ポンプ36から吐出される作動油により駆動される。
油圧ポンプ36は油圧アクチュエータ31〜34等を駆動する作動油を吐出する可変容量型ポンプであり、原動機17により駆動される。本実施形態における原動機17は内燃機関等の燃焼エネルギーを動力に変換するエンジンである。図2では油圧ポンプ36を1個のみ図示しているが、複数個設けられる場合もある。油圧ポンプ36から吐出された作動油は吐出配管36aを流れ、コントロールバルブ41〜44を経由してそれぞれ油圧アクチュエータ31〜34に供給される。油圧アクチュエータ31〜34からの各戻り油は、それぞれコントロールバルブ41〜44を介して戻り油配管36bに流れ込んでタンク38に戻される。吐出配管36aには、吐出配管36aの最高圧力を規制するリリーフ弁(不図示)が設けられている。図2では図示していないが走行モータ35も同様の回路構成で駆動される。下部走行体11の前後の少なくとも一方に排土板を設けた場合、ブレーカ等のアクチュエータを持つアタッチメントをバケット23に代えてフロント作業装置20に装着した場合には、排土板やアタッチメントの油圧アクチュエータも同様の回路構成で駆動される。
コントロールバルブ41〜44のうち、コントロールバルブ41はブームシリンダ用、コントロールバルブ42はアームシリンダ用、コントロールバルブ43はバケットシリンダ用、コントロールバルブ44は旋回モータ用である。走行モータ用のコントロールバルブは図示省略してある。コントロールバルブ41〜44は油圧ポンプ36から対応する油圧アクチュエータに供給される作動油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の流量制御弁であり、それぞれ油圧信号が入力される油圧駆動部45,46を備えている。コントロールバルブ41〜44は油圧駆動部45又は46に油圧信号が入力されると図中で左行又は右行し、油圧信号の入力が停止されるとバネの力で中立位置に復帰する構成である。例えばブームシリンダ用のコントロールバルブ41の油圧駆動部45に油圧信号が入力されると、図2においてコントロールバルブ41のスプールが油圧信号の大きさに応じた距離だけ右行する。これにより、油圧信号に応じた流量でブームシリンダ31のボトム側油室に油圧ポンプ36からの作動油が供給され、油圧信号の大きさに応じた速度でブームシリンダ31が伸長しブーム21が上がる。
パイロットポンプ37はコントロールバルブ41〜44等の制御弁を駆動する作動油を吐出する固定容量型ポンプであり、油圧ポンプ36と同じく原動機17により駆動される。このパイロットポンプ37の吐出配管であるポンプライン37aはロック弁39を通った後、複数に分岐して操作レバー装置51〜54及びフロント制御用油圧ユニット60の各弁に接続している。このポンプライン37aを介してパイロットポンプ37から吐出された作動油が操作レバー装置51〜54に供給される。分岐した複数のポンプライン37aは、特定のコントロールバルブ(本実施形態ではコントロールバルブ41,43)の油圧駆動部に接続している。
操作レバー装置51〜54は、それぞれ対応する油圧アクチュエータ31〜34の動作を指示する油圧信号を操作に応じて生成し出力するレバー操作式の操作装置であり、運転室14(図1)に備えられている。操作レバー装置51〜54のうち、操作レバー装置51はブーム操作用、操作レバー装置52はアーム操作用、操作レバー装置53はバケット操作用、操作レバー装置54は旋回操作用である。油圧ショベルの場合、一般に操作レバー装置51〜54は十字操作式のレバー装置であり、前後方向への傾倒操作で1つの油圧アクチュエータの動作を、左右方向への傾倒操作で別の油圧アクチュエータの動作を指示できる構成となっている。従って、4つの操作レバー装置51〜54は2つずつ2つのグループに区分され、各グループで1本のレバー部を共用する。従って、操作レバー装置51〜54のレバー部は右手操作用と左手操作用の合計2本であり、前述したスイッチ7をレバー部に設ける場合、2本のレバー部のうちの少なくとも一方に設けることになる。走行用の操作レバー装置は図示省略してある。
フロント制御用油圧ユニット60は、操作レバー装置51〜53から出力される油圧信号を状況に応じて増減圧し、フロント作業装置20が掘削目標面を越えて掘削等しないようにするためのハードウェアである。フロント制御用油圧ユニット60はコントローラユニット100からの信号で駆動される。
シャトル弁91〜93は高圧選択弁であり、それぞれ2つの入口ポートと1つの出口ポートとを備えている。シャトル弁91の一方の入口ポートはパイロットライン51a1を介してブーム上げ指令用の信号出力弁51aに、他方の入口ポートは信号出力弁を介さずポンプライン37aを介してパイロットポンプ37に接続している。シャトル弁91の出口ポートは、パイロットライン51a2を介してブームシリンダ用のコントロールバルブ41の油圧駆動部45(ブーム上げ側)に接続している。シャトル弁92の一方の入口ポートはパイロットライン53a1を介してバケットクラウド指令用の信号出力弁53aに、他方の入口ポートは信号出力弁を介さずポンプライン37aを介してパイロットポンプ37に接続している。シャトル弁92の出口ポートは、パイロットライン53a2を介してバケットシリンダ用のコントロールバルブ43の油圧駆動部45(バケットクラウド側)に接続している。シャトル弁93の一方の入口ポートはパイロットライン53b1を介してバケットダンプ指令用の信号出力弁53bに、他方の入口ポートは信号出力弁を介さずポンプライン37aを介してパイロットポンプ37に接続している。シャトル弁93の出口ポートは、パイロットライン53b2を介してバケットシリンダ用のコントロールバルブ43の油圧駆動部46(バケットダンプ側)に接続している。
比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63bはノーマルオープンタイプの比例弁であり、消磁されると最大開度となり、コントローラユニット100からの信号により励磁されると信号の大きさに比例して開度を低下させる(閉じてゆく)。これらはいずれも対応する信号出力弁のパイロットラインに設けられており、掘削目標面よりも下側を掘削することを抑制するために、対応する信号出力弁から出力された油圧信号の最大値をコントローラユニット100からの信号に従って制限する役割を果たす。なお、本願明細書において比例電磁弁の「消磁」とは、比例電磁弁をノーマル状態(ノーマルオープンタイプなら最大開度、ノーマルクローズタイプなら最小開度)にする値まで励磁電流の大きさを小さくすることをいい、励磁電流の出力を停止する場合も含む。
比例電磁弁71a,73a,73bはノーマルクローズタイプの比例弁であり、消磁されると最小開度(ゼロ開度)となり、コントローラユニット100からの信号により励磁されると信号の大きさに比例して開度を上昇させる(開いてゆく)。これらはいずれもシャトル弁に繋がるポンプライン37aに設けられており、操作レバー装置をバイパスして操作レバー装置の操作に依存しない油圧信号をコントローラユニット100の信号に従って出力する役割を果たす。比例電磁弁71a,73a,73bからシャトル弁91〜93の他方側の入口ポートに入力される油圧信号は、シャトル弁91〜93の一方側の入口ポートに入力される操作レバー装置51,53からの油圧信号に干渉する。操作レバー装置51,53から出力される油圧信号よりも高圧の油圧信号を出力し得る点で、本願明細書では比例電磁弁71a,73a,73bを増圧用の比例電磁弁と称する。
遮断弁70はノーマルクローズタイプの電磁駆動式の開閉弁(電磁切換弁)であり、消磁されると全閉し(ゼロ開度となり)、コントローラユニット100からの信号S70を受けて励磁されると開く。この遮断弁70はポンプライン37aにおけるシャトル弁91〜93に繋がる支流の分岐部とロック弁39(図2)との間に設けられている。コントローラユニット100からの指令により遮断弁70が閉じると、操作レバー装置51,53の操作によらない油圧信号の生成、出力が禁止される。
図4はコントローラユニットの機能ブロック図である。同図に示したように、コントローラユニット100は、入力部110、フロント制御部120、指令値制御部130及び出力部170等の機能部を備えている。以下、各機能部について説明する。
入力部110はセンサ類等からの信号を入力する機能部である。この入力部110には、圧力検出器6a,6b、スイッチ7、角度検出器8a〜8c、傾斜検出器8d、測位装置9a,9b、無線機9c等からの信号が入力される。
フロント制御部120は、角度検出器8a〜8c及び傾斜検出器8dの信号を基に、掘削目標面を越えて(掘削目標面の下側を)掘削しないようにフロント作業装置20の動作を制限する制限指令値を演算する機能部である。制限指令値は指令値制御部130に出力される。フロント制御とは、掘削目標面とバケット23の特定点との距離や油圧アクチュエータ31〜33の伸縮速度等によってフロント制御用油圧ユニット60を制御する制御の総称である。例えば、減圧用の比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63bのうちの少なくとも1つを制御し、掘削目標面近傍で油圧アクチュエータ31〜33のうちの少なくとも1つの動作を減速させる制御もフロント制御の1つである。増圧用の比例電磁弁71a,73a,73bのうちの少なくとも1つを制御し、掘削目標面の下側を掘削してしまっている場面で強制的にブーム上げ動作をするブーム自動上げ制御や、バケット23の角度を一定に保ったりする制御もフロント制御に含まれる。その他いわゆるブーム下げ停止制御やバケット増圧制御等も含まれる。また、減圧用の比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63bのうちの少なくとも1つと、増圧用の比例電磁弁71a,73a,73bのうちの少なくとも1つとを複合的に制御するものもフロント制御に含まれる。更には、本願明細書では、フロント作業装置20の描く軌跡を一定の軌跡に制御するいわゆる軌跡制御もフロント制御の1つとする。フロント制御部120の詳細については説明を省略するが、このフロント制御部120には、例えば特開平8−333768号公報や特開2016−003442号公報等の公知技術が適宜適用できる。
図5は指令値制御部の機能ブロック図である。同図に示したように、指令値制御部130は、入力判定部131、記憶部132、距離演算部133、距離判定部134、速度演算部135、速度判定部136及び指令値決定部137を備えている。
入力判定部131は、フロント制御部120から制限指令値が入力されているか否かを判定する機能部である。フロント制御部120は、フロント制御の機能が入り状態の場合、例えばバケット23が下降するブーム下げ動作時のように特定の制御対象動作時には、バケット23が掘削目標面に接近するにつれて比例電磁弁61b等を絞って圧力信号の最大値を制限してゆく。他方、フロント制御の機能が入り状態でも、例えばバケット23が上昇するブーム上げ動作のような特定の制御対象外動作時には、フロント制御部120による比例電磁弁61b等の開度制御は実行されない。従って、フロント作業装置20の特定点(後述)と掘削目標面Sとの距離Dが設定距離D0より大きいときの他、距離Dが設定距離D0以下でも制御対象外動作のときには、フロント制御部120から制限指令値が出力されない。フロント制御部120から制限指令値が出力されるのは例えば、フロント制御の機能が入り状態であること、距離Dが設定距離D0以下であること、制御対象動作が実施されていることの3つの条件が同時に満たされた場合である。入力判定部131は、このような制限指令値の入力の有無を判定する。
記憶部132は各種情報を記憶する機能部であり、設定距離記憶部141、設定速度記憶部142、掘削目標面記憶部143、機体寸法記憶部144、待機指令値記憶部145及び省電力指令値記憶部146を含んでいる。
距離演算部133は、入力部110を介して入力された角度検出器8a〜8cの検出信号を基にフロント作業装置20の特定点Pと掘削目標面Sとの距離Dを演算する機能部である。距離Dの演算の例については後で説明する。
距離判定部134は、距離演算部133で演算された特定点Pと掘削目標面Sとの距離Dが設定距離記憶部141から読み出した設定距離D0よりも大きいか否かを判定する機能部である。
速度演算部135は、入力部110を介して入力された圧力検出器6a,6bの信号を基に特定の油圧アクチュエータ、本例ではブームシリンダ31の動作速度V(伸縮速度)を演算する機能部である。例えば、速度演算部135には、ブームシリンダ用のコントロールバルブ41の流量特性(流通させる作動油の流量と開度の関係等)を記憶した記憶部が含まれている。コントロールバルブ41の開度は圧力検出器6a,6bで検出されたコントロールバルブ41への油圧信号の大きさと対応する関係にある。このことに基づき、コントロールバルブ41の流量特性と圧力検出器6a,6bの信号とを基にブームシリンダ31の動作速度Vが速度演算部135で演算される。なお、速度演算部135では、圧力検出器6a,6bの信号のうち大きい方を選択して演算の基礎としてブームシリンダ31の動作速度を演算する。どちらの信号を演算の基礎としたかにより、演算される動作速度Vが、ブームシリンダ31の伸長速度であるのか収縮速度であるのかが区別される。言うまでもないが、例えばブーム下げ指令用の圧力信号を検出する圧力検出器6bの信号を基に演算された動作速度Vは、ブーム下げ動作に対応するブームシリンダ31の収縮速度である。そして、ブームシリンダ31の収縮方向を動作速度Vの正方向にとり、伸長速度は負の速度として扱う。
速度判定部136は、速度演算部135で演算されたブームシリンダ31の動作速度Vが設定速度記憶部142から読み出した設定速度V0よりも大きいか否かを判定する機能部である。
指令値決定部137は、比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63b,71a,73a,73bに対する指令信号の指令値を決定し、出力部170に出力する機能部である。指令値は、フロント制御部120から入力された制限指令値、待機指令値記憶部145から読み出した待機指令値、省電力指令値記憶部146から読み出した省電力指令値のうちからの選択により決定される。具体的には、次の第1〜第3の場合に状況を場合分けして指令信号を選択する。
(第1の場合)入力判定部131でフロント制御部120から制限指令値が入力されていると判定された場合;
(第2の場合)第1の場合及び第3の場合以外の場合;
(第3の場合)制限指令値が入力されていない場合であって、距離判定部134で特定点Pと掘削目標面Sとの距離Dが設定距離D0より大きいと判定され、かつ速度判定部136で動作速度Vが設定速度V0より大きいと判定された場合:
第1の場合には制限指令値、第2の場合には待機指令値、第3の場合には省電力指令値を指令値として選択する。
図6は減圧用の比例電磁弁の指令信号と開度との関係を表す特性図である。同図に示したように、減圧用の比例電磁弁(例えば比例電磁弁61b)は、電磁駆動部に入力される指令信号(本実施形態では励磁電流)が大きいほど絞り込まれて開度が減少する。i1及びi3(>i1)の間の範囲で指令値の大きさが変化すると、比例電磁弁の開度が指令信号の大きさに比例して変化する。つまり、指令値i1は比例電磁弁の開度変化を伴う範囲(以下、開度調整域と記載する)で最大開度に対応する指令値、指令値i3は開度調整域で最小開度(本実施形態ではゼロ開度)に対応する指令値である。指令値i1よりも小さい範囲は消磁状態であり、比例電磁弁の開度は最大のまま不変である。指令値i3よりも大きい範囲では、比例電磁弁の開度は最小のまま不変である。待機指令値は、比例電磁弁の最大開度及び最小開度の間で設定した中間開度に対応する励磁電流の指令値i2である。中間開度は最大開度及び最小開度の間で任意に選択することができ、例えば最大開度と最小開度の平均値が例示できる。i2は比例電磁弁毎に固有の異なる値を設定しても良い。また、待機時の指令信号の指令値をi2に設定するのは比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63bの少なくとも1つであり、全部である必要は必ずしもない。
図7は増圧用の比例電磁弁の指令信号と開度との関係を表す特性図である。同図に示したように、増圧用の比例電磁弁(例えば比例電磁弁71a)は、電磁駆動部に入力される指令信号(本実施形態では励磁電流)が大きいほど開度が増加する。i5及びi6(>i5)の範囲で指令信号の大きさが変化すると、比例電磁弁の開度が指令信号の大きさに比例して変化する。つまり、指令値i5は比例電磁弁の開度調整域で最小開度に対応する指令値、指令値i6は開度調整域で最大開度に対応する指令値である。指令値i5よりも小さい範囲は消磁状態であり、比例電磁弁の開度は最小のまま不変である。指令値i6よりも大きい範囲では、比例電磁弁の開度は最大のまま不変である。省電力指令値は、減圧用及び増圧用の比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63b,71a,73a,73bの電磁駆動部に対して開度調整域で印加する励磁電流の最小値よりも低く設定した励磁電流値である。従って、減圧用の比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63bについては、図6において指令値i1よりも小さな指令値i0(<i1)が省電力指令値として設定される。増圧用の比例電磁弁71a,73a,73bについては、図7において指令値i5よりも小さな指令値i4(<i5)が省電力指令値として設定される。省電力指令値i0,i4は、それぞれ指令値i1,i5より小さい範囲で任意に選択することができ、0(ゼロ)に設定しても良い。i0,i4は異なる値でも同じ値でも良く、比例電磁弁毎に固有のi0,i4を設定しても良い。また、消磁時の指令信号の指令値をi0又はi4に設定するのは比例電磁弁61b,62a,62b,63a,63b,71a,73a,73bの少なくとも1つであり、全部である必要は必ずしもない。
図8は距離演算部によるフロント作業装置の特定点と掘削目標面との距離の演算方法の説明図である。図8ではフロント作業装置20の動作平面(ブーム21等の回動軸に直交する平面)を直交方向(ブーム21等の回動軸の延在方向)から見ている。油圧アクチュエータ31〜33については繁雑防止のため図示省略してある。
Y=L1・cosα+L2・cos(α+β)+L3・cos(α+β+γ)…(2)
L1はブーム21とアーム22の回動支点間の距離、L2はアーム22とバケット23の回動支点間の距離、L3はバケット23の回動支点と特定点Pとの距離である。αはY軸(原点から上側に延びる部分)とブーム21とアーム22の回動支点を通る直線l1(原点からアーム22の回動支点側に延びる部分)との挟角である。βは直線l1(アーム22の回動支点から原点と反対側に延びる部分)とアーム22とバケット23の回動支点を通る直線l2(アーム22の回動支点からバケット23の回動支点側に延びる部分)との挟角である。γは直線l2(バケット23の回動支点からアーム22の回動支点と反対側に延びる部分)と特定点Pを通る直線l3との挟角である。
まず、指令値制御部130の処理を考慮から外してレバー操作に対する油圧アクチュエータの基本的な動作を説明する。
例えば操作レバー装置51でブーム下げ操作が行われた場合、ブーム下げ指令用の信号出力弁51bが操作量に応じて開き、パイロットライン51b1を介してブームシリンダ用のコントロールバルブ41の油圧駆動部46に油圧信号が入力される。これによりブームシリンダ31が収縮し、ブーム下げ動作が実行される。フロント制御の機能が入り状態の場合、バケット23の掘削目標面との距離や下降速度によっては、フロント制御部120から出力される制限指令値により比例電磁弁61bの開度が抑えられ、油圧信号の最大値が制限される。比例電磁弁61bの開度で規定される制限値を超えている場合、油圧信号はパイロットライン51b1を流通する過程で比例電磁弁61bにより制限値に減圧される。その結果、操作量に応じた本来の速度よりもブーム下げ動作が減速され、掘削目標面よりも下側にバケット23が進入することが抑制される。他のパイロットラインに圧力信号を出力する操作(アームクラウド、アームダンプ、バケットクラウド、バケットダンプの各操作)についても同様である。
例えば操作レバー装置51でブーム下げ操作が行われた場合、ブーム下げ指令用の信号出力弁51bが操作量に応じて開く。フロント制御機能が切り状態の場合、バケット23の位置等で比例電磁弁61bの開度は変化せず、操作レバー装置51の操作量に対応してブームシリンダ用のコントロールバルブ41の油圧駆動部46に圧力信号が入力される。これにより、比例電磁弁61bの開度変化の影響を受けることなく、単にレバー操作に応じてブーム下げ動作が実行される。他のパイロットラインに圧力信号を出力する操作(アームクラウド、アームダンプ、バケットクラウド、バケットダンプの各操作)についても同様である。
図9は指令値制御部による指令値の決定手順を表すフローチャートである。運転中、指令値制御部130は図9の手順(ステップS101〜S107)を所定の処理サイクル(例えば0.1s)で繰り返し実行している。
指令値制御部130は図9の手順を開始すると、まずステップS101で入力部110を介して、角度検出器8a〜8c、圧力検出器6a,6bの各信号を距離演算部133に入力する。この例では掘削目標面Sと機体との位置関係は既知の情報として説明するが、前述したように地球座標系で機体と掘削目標面Sの位置関係を演算する場合には、合わせて測位装置9a,9bや無線機9c、傾斜検出器8dの信号も入力する。
制限指令値の入力があると入力判定部131で判定された場合、指令値制御部130はステップS102からステップS103に手順を移す。制限指令値が入力される状況では、掘削目標面Sと特定点Pとの距離Dは設定距離D0以下である。ステップS103では、入力判定部131から制限指令値の入力有の判定信号を受け、指令値決定部137でフロント制御部120からの制限指令値が指令値として選択されて出力部170に出力される。この場合、制限指令値の大きさの指令信号が出力部170から出力され、対応する比例電磁弁の電磁駆動部に出力される。ステップS103の手順を終えたら、指令値制御部130は図9の手順を一旦終了し、次のサイクルを開始してステップS101の処理を実行する。
制限指令値の入力がないと入力判定部131で判定された場合、指令値制御部130はステップS102からステップS104に手順を移す。ステップS104では、距離演算部133で掘削目標面Sと特定点Pとの距離Dが、速度演算部135でブームシリンダ31の動作速度Vが演算される。演算された距離Dは距離演算部133から距離判定部134に入力され、動作速度Vは速度演算部135から速度判定部136に入力される。
ステップS102,S104,S105の手順を実行し、D>D0でかつV<V0の条件が満たされない場合、指令値制御部130はステップS105からステップS107に手順を移す。ステップS107では、入力判定部131、距離判定部134及び速度判定部136の判定信号を基に、待機指令値記憶部145から読み出した待機指令値が指令値決定部137で指令値として選択されて出力部170に出力される。この場合、待機指令値の大きさの指令信号が出力部170から出力され、各比例電磁弁は中間開度で待機した状態となる。ステップS107の手順を終えたら、指令値制御部130は図9の手順を一旦終了し、次のサイクルを開始してステップS101の処理を実行する。
4−1.応答性低下の抑制
本実施形態では、フロント制御部120で制限指令値が生成されない場面で比例電磁弁(比例電磁弁61b等)を次の制限指令値の入力に備えて待機させておくとき、待機指令値の指令信号を出力することで比例電磁弁を中間開度にしておく。この状態でフロント制御部120から制限指令値が入力されたとしても、比例電磁弁のスプールの移動距離は、最大でも比例電磁弁を中間開度から最大開度又は最小開度にする距離である。これにより比例電磁弁を最小開度にする位置から最大開度にする位置まで一気にスプールを駆動させる場面がなくなり、平均して操作に対する応答性を向上させることができる。従って、操作に対する応答性の低下を抑制することができ、ひいてはフロント作業装置20の動作精度の低下を抑制することができる。
本実施形態では、特定点Pが掘削目標面Sから設定距離D0を超えて離れていて、ブームシリンダ31が設定速度V0を超える速度で収縮していない場合、減圧用及び増圧用の比例電磁弁(比例電磁弁61b,71a等)に省電力指令値の指令信号を出力する。つまり掘削目標面Sからバケット23が遠く、フロント作業装置20の動作状況を考慮しても直ちにバケット23が掘削領域から外れる恐れがないような場合、省電力指令値の指令信号を出力して比例電磁弁を消磁させる。図6及び図7で説明したように、省電力指令値(i0,i4)は開度調整域で最小の指令値(i1,i5)よりも更に小さい値である。これにより、消磁に対応する指令信号の指令値を開度調整域の最小値に設定した場合に比べて、特定点Pが掘削目標面Sから一定以上離れていてフロント制御用の比例電磁弁が制御されることがない場面に比例電磁弁に流す励磁電流を抑えることができる。従って、本実施形態によれば消費電力を抑制してエネルギー効率を向上させることができる。
上記実施形態では、距離Dが設定距離D0より大きい等の条件を満たした場合に比例電磁弁(比例電磁弁61b,71a等)を消磁させるための励磁電流の値を省電力指令値とする場合を説明した。しかし、比例電磁弁を消磁させるための励磁電流の設定は、フロント制御部120で制限指令値が生成されていない場合に比例電磁弁を中間開度にする主旨には直接関係がない。従って、比例電磁弁を消磁させるための励磁電流は、例えば開度調整域の最小値(i1,i5)に設定しても良い。
Claims (3)
- 車体、前記車体に設けたフロント作業装置、前記フロント作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータ、前記フロント作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器、前記油圧アクチュエータを駆動する作動油を吐出する油圧ポンプ、前記油圧ポンプから対応する油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する複数のコントロールバルブ、対応する油圧アクチュエータの動作を指示する油圧信号を操作に応じて生成する操作レバー装置、前記操作レバー装置に作動油を供給するパイロットポンプ、前記操作レバー装置及び対応するコントロールバルブの油圧駆動部を接続する複数のパイロットライン、前記複数のパイロットラインのうち少なくとも1つに設けた比例電磁弁、並びに前記姿勢検出器の検出信号を基に前記比例電磁弁を制御して前記フロント作業装置の動作を制限する制限指令値を演算するフロント制御部を備えた作業機械において、
前記比例電磁弁の最大開度及び最小開度の間で設定した中間開度に対応する励磁電流である待機指令値を記憶した待機指令値記憶部と、
前記フロント制御部から前記制限指令値が入力されているか否かを判定する入力判定部と、
前記入力判定部で前記制限指令値が入力されていると判定された場合は前記制限指令値を、入力されていないと判定された場合は前記待機指令値記憶部から読み出した前記待機指令値を前記比例電磁弁に対する指令値として決定する指令値決定部と、
前記指令値決定部で決定した前記指令値を基に前記比例電磁弁に指令信号を出力する出力部と
を備えた作業機械。 - 前記比例電磁弁の待機指令値よりも小さく設定された励磁電流である省電力指令値を記憶した省電力指令値記憶部と、
前記姿勢検出器の検出信号を基に前記フロント作業装置の特定点と掘削目標面との距離を演算する距離演算部と、
前記特定点と掘削目標面との距離について予め定めた設定距離を記憶した設定距離記憶部と、
前記距離演算部で演算された前記特定点と掘削目標面との距離が前記設定距離よりも大きいか否かを判定する距離判定部と、
前記距離判定部で前記特定点と掘削目標面との距離が前記設定距離より大きいと判定された場合、前記省電力指令値記憶部から読み出した前記省電力指令値を前記比例電磁弁に対する指令値として決定する前記指令値決定部とを更に備えた請求項1の作業機械。 - 前記比例電磁弁の待機指令値よりも小さく設定された励磁電流である省電力指令値を記憶した省電力指令値記憶部と、
前記姿勢検出器の検出信号を基に前記フロント作業装置の特定点と掘削目標面との距離を演算する距離演算部と、
前記特定点と掘削目標面との距離について予め定めた設定距離を記憶した設定距離記憶部と、
前記距離演算部で演算された前記特定点と掘削目標面との距離が前記設定距離よりも大きいか否かを判定する距離判定部と、
前記操作レバー装置の油圧信号の圧力又は前記姿勢検出器の検出信号を基に前記油圧アクチュエータの動作速度を演算する速度演算部と、
前記油圧アクチュエータの動作速度について予め定めた設定速度を記憶した設定速度記憶部と、
前記速度演算部で演算された前記油圧アクチュエータの動作速度が前記設定速度よりも大きいか否かを判定する速度判定部と、
前記入力判定部で前記制限指令値が入力されていると判定された場合は前記制限指令値を、前記距離判定部で前記特定点と掘削目標面との距離が前記設定距離より大きいと判定され、かつ前記速度判定部で前記油圧アクチュエータの動作速度が前記設定速度より小さいと判定された場合は前記省電力指令値記憶部から読み出した前記省電力指令値を、それ以外の場合は前記待機指令値記憶部から読み出した前記待機指令値を、前記比例電磁弁に対する指令値として決定する前記指令値決定部とを更に備えた請求項1の作業機械。
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