JP2018002929A - 粒子、加飾体、インク組成物、インク組成物の製造方法、画像形成方法、およびトナー - Google Patents

粒子、加飾体、インク組成物、インク組成物の製造方法、画像形成方法、およびトナー Download PDF

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大輔 渡邉
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Abstract

【課題】光吸収性が比較的低いバインダーに粒子構造体を保持させた加飾体、およびバインダーを有さない加飾体、のいずれを形成しても、鮮明な色味の構造色を観察できる構造色粒子を提供すること。【解決手段】本発明は、構造色を観察可能な粒子構造体を形成可能な粒子に関する。上記粒子は、コア部と、ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下のシェル部と、を含む。上記粒子の、波長380nm以上780nm以下の光に対する消衰係数が0.1以下であり、かつ、波長380nm以上780nm以下の光に対する屈折率が1.7以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、粒子、加飾体、インク組成物、インク組成物の製造方法、画像形成方法、およびトナーに関する。
カラー画像は、通常、CRT画面や液晶画面などにソフトコピーとして表示するときは、赤、青および緑による加法混色で表示され、プリンタで紙などの記録媒体にハードコピーとして表示されるときは、イエロー、マゼンタおよびシアンによる減法混色で表示される。しかし、減法混色によって表示できるカラー画像の色再現域は、加法混色によって表示できる色再現域よりも狭いことが多い。そのため、ハードコピーとして表示される画像の色再現域を広げるための試みがなされている。
たとえば、より色純度の高いイエロー、マゼンタおよびシアンなどを呈する色材を開発すれば、ハードコピーとして表示される画像の色再現域をより広げることができると考えられる。しかし、これらの色材は光を吸収するため、光のエネルギーによる経時劣化が生じる。また、色ごとに異なる化学構造を有する色材をそれぞれ多量に生産しようとすると製造コストが高くなるため、新たな色材の実用化は容易ではない。
これに対し、均一な粒子径を有する粒子が少なくとも部分的に配列した構造から、構造色を観察できることが知られている(以下、均一な粒子径を有する粒子が少なくとも部分的に配列した構造を単に「粒子構造体」ともいい、構造色を観察可能な粒子構造体を形成可能な粒子を単に「構造色粒子」ともいう。)。粒子構造体は光を吸収しないため、光のエネルギーによる経時劣化が生じにくい。また、粒子構造体は配列する構造色粒子の粒子径を調整するのみで観察される色を変化させることができるため、新たな色材を開発するよりも製造コストを低減させることができると期待される。さらに、粒子構造体から観察される構造色は、従来の染料や顔料と異なり、反射スペクトルがシャープな形状を有するため、色純度(彩度)が高い色を観察可能にできると期待される。
構造色は、観察する角度によって構造色の色味が異なる(以下、単に「画像の角度依存性が高い」ともいう。)ことが知られている。これに対し、特許文献1には、アモルファス構造の粒子構造体からは、観察する角度によらずにほぼ同程度の色味を有する(以下、単に「画像の角度依存性が低い」ともいう。)構造色が観察可能であると記載されている。
構造色粒子が長距離秩序性を有する結晶構造(以下、単に「結晶構造」ともいう。)の粒子構造体を形成すると、画像の角度依存性が高くなる。これは、結晶構造の粒子構造体では、構造色粒子が明確な層を形成しており、入射光が層間で反射して干渉光が生じるため、ブラッグの法則が成立し、干渉によるエネルギーが強まる波長が粒子構造体に入射する光の入射角および粒子構造体から出射する光の出射角(粒子構造体を観察する角度)によって異なるためであると考えられる。
これに対し、構造色粒子がアモルファス構造の粒子構造体を形成すると、画像の角度依存性が低くなる。これは、アモルファス構造の粒子構造体では、構造色粒子が明確な層を形成していないため、入射光が層間で反射することによる干渉光が生じにくく、一方で、入射光が構造色粒子の表面や内部などで反射することによる干渉光が観察される構造色に強く影響するためだと考えられる。つまり、光が構造色粒子に入射する入射角は、光が粒子構造体に入射する光の入射角によって変動しないため、アモルファス構造の粒子構造体において干渉によりエネルギーが強まる波長は、入射角よりも光路長(粒子径)に大きく依存して決定されるためだと考えられる。なお、本明細書において、粒子構造体がアモルファス構造を形成するとは、構造色粒子の配列が短距離秩序性を有することを意味する。
上記アモルファス構造の粒子構造体に入射した光は、上記粒子構造体を構成する構造色粒子の表面または内部などで反射して、粒子構造体から出射する。このとき、上記構造色粒子の様々な位置で反射した光はそれぞれ異なる光路長を有するため、これらの異なる光路長を有する光が干渉して特定の波長のエネルギーが強まった光が粒子構造体から出射される(以下、粒子構造体での干渉により特定の波長のエネルギーが強くなった出射光を、単に「干渉光」ともいう。)。そのため、上記粒子構造体からは、上記干渉によってエネルギーが強まった波長に対応する構造色が観察される。なお、このとき干渉によりエネルギーが強まる波長は粒子径によって定まるため、粒子径を調整することで、赤、青および緑など特定の色に対応する波長のエネルギーが強い光を上記粒子構造体から出射させ、これらの色調を有する構造色を観察可能にすることが可能である。
そのため、粒子構造体を用いれば、たとえばインクやトナーなどによって形成されたハードコピーでも、加法混色によるカラー画像を基材に形成することが可能になり、色再現域を広げることができると期待される(以下、基材に形成された画像を単に「加飾体」ともいう。)。
ところで、粒子構造体から出射される光には、構造色粒子に入射した光または構造色粒子から出射する光が散乱して生じる散乱光も含まれる。この散乱光では、上記干渉光とは異なる波長のエネルギーも強くなっている。そのため、上記干渉光および上記散乱光が同時に加飾体から出射されると、観察される構造色の彩度が低くなるという問題がある。これに対し、特許文献2には、ポリドーパミンまたはその誘導体からなる黒色の構造色粒子が記載されている。また、非特許文献1には、ポリスチレンからなるコア粒子をポリドーパミンからなる黒色のシェル部で被覆した、コアシェル構造の構造色粒子が記載されている。特許文献2および非特許文献1には、これらの構造色粒子から形成した粒子構造体では、上記黒色のポリドーパミンが上記散乱光を吸収するため、彩度の高い構造色が観察できると記載されている。
粒子構造体は、その構造を保持して形状を維持するため、保形材(バインダー)に包含されて保持されることがある。特許文献3には、シリカ粒子から構成される粒子構造体を保持するバインダーに、カーボンブラックなどの色素を含ませることで、おそらくはバインダーに上記散乱光を吸収させて、観察される色相(おそらくは彩度)を調整できると記載されている。
特開2010−58091号公報 特開2015−197554号公報 特開2013−71421号公報
Polymer Preprints, Japan, Vol. 64, No. 2 (2015年)
特許文献3に記載のように、粒子構造体をバインダーで保持することは、粒子構造体を色材として実用化する上で有用であると考えられている。しかし、特許文献2および非特許文献1などに記載されているようなポリドーパミンを含む構造色粒子をバインダーに保持させて形成して加飾体から観察される構造色は、色味が不鮮明になることがあった。
これに対し、粒子構造体の厚みを大きくしてより多くの干渉光を生じさせれば、より鮮明な色味の構造色が観察できると期待される。しかし、粒子構造体の厚みを大きくするためには、多くの構造色粒子を基材上に付着させる必要があるが、構造色粒子をインクやトナーに応用する際に、基材に付着する構造色粒子の数を多くする技術はまだ開発されていない。
また、特許文献3に記載の粒子構造体は、バインダーに保持されることを前提に設計されているが、本発明者らの検討によれば、特許文献3に記載のように、粒子構造体と色素を含むバインダーとを有する加飾体から観察される構造色は、黒味がかかった暗い色になっていた。これは、特許文献3に記載されているバインダーは光吸収性が高く、加飾体に入射する光や粒子構造体から出射する干渉光をバインダーが吸収してしまうため、加飾体から出射する光の光量が少なくなり、観察される構造色の明度が低くなったためと考えられる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、散乱光による彩度の低下を抑制しつつ、バインダーに粒子構造体を保持させた加飾体およびバインダーを有さない加飾体のいずれを形成しても、鮮明な色味の構造色を観察できる構造色粒子、そのような構造色粒子を含む加飾体、そのような構造色粒子を含むインク組成物、そのようなインク組成物の製造方法、そのようなインク組成物を用いる画像形成方法、そのような構造色粒子を含むトナー、そのようなトナーの製造方法、ならびにそのようなトナーを用いる画像形成方法を提供することを、その目的とする。
上記課題は、コア部と、ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下のシェル部と、を含み、波長380nm以上780nm以下の光に対する消衰係数が0.1以下であり、かつ、波長380nm以上780nm以下の光に対する屈折率が1.7以上である、構造色を観察可能な粒子構造体を形成可能な粒子によって解決される。
また、上記課題は、上記粒子および溶媒を含むインク組成物、ならびに上記粒子と溶媒とを混合する工程を含むインク組成物の製造方法、ならびに上記インク組成物を基材の表面に付着させる工程を含む画像形成方法によって解決される。
また、上記課題は、上記粒子を含むトナー、上記粒子を含有する第1の水相液と、熱可塑性樹脂および第1の乳化剤を含有する油相液と、を混合して、油中水(W/O)型エマルションである第1乳化液を調製する工程と、前記第1乳化液と、第2の乳化剤を含有する第2の水相液と、を混合して、水中油中水(W/O/W)型エマルションである第2乳化液を調製する工程と、前記第2乳化液をから粒子状のトナーを分離する工程と、を含む、トナーの製造方法、ならびに像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電部と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写部と、熱圧力の印加により前記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる定着部と、を備える画像形成装置を用いる画像形成方法において、前記像保持体の表面を帯電する工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する工程と、上記トナーで、前記静電潜像をトナー像として現像する工程と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する工程と、熱圧力の印加により前記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる工程と、を含む画像形成方法によって解決される。
本発明により、散乱光による彩度の低下を抑制しつつ、バインダーに粒子構造体を保持させた加飾体およびバインダーを有さない加飾体のいずれを形成しても、鮮明な色味の構造色を観察できる構造色粒子、そのような構造色粒子を含む加飾体、そのような構造色粒子を含むインク組成物、そのようなインク組成物の製造方法、そのようなインク組成物を用いる画像形成方法、そのような構造色粒子を含むトナー、そのようなトナーの製造方法、ならびにそのようなトナーを用いる画像形成方法が提供される。
図1は、本発明の一実施形態における構造色粒子を表す模式図である。 図2は、本発明の他の実施形態における加飾体を表す模式図であり、図2Aはバインダーを有さない加飾体、図2Bはバインダーを有する加飾体を表す模式図である。 図3は、本発明の他の実施形態におけるインク組成物を用いた画像形成方法のフローチャートである。 図4は、本発明の他の実施形態におけるトナーを表す模式図であり、図4Aは水溶性モノマーおよび光重合開始剤を含まないトナー、図4Bは水溶性モノマーおよび光重合開始剤を含むトナーを表す模式図である。 図5は、本発明の他の実施形態におけるトナーを用いて画像を形成するときに、粒子構造体が形成される様子を示す模式図である。 図6は本発明の別の実施形態における画像形成方法に用いることができる画像形成装置の構成を示す模式図である。 図7は本発明の別の実施形態における画像形成方法のフローチャートである。 図8は本発明の別の実施形態における別の画像形成方法のフローチャートである。
特許文献2および非特許文献1に記載されているように、粒子構造体およびバインダーを含む加飾体から観察される構造色の彩度を高めるためには、粒子構造体(構造色粒子)から発生する散乱光をポリドーパミンなどに吸収させることが好ましい。しかし、上記ポリドーパミンは干渉光を吸収して、加飾体から出射される光量を減少させるため、観察される構造色の色味を不鮮明にすることがある。より鮮やかな色味の構造色を観察可能にするためには、上記粒子構造体から出射する干渉光の光量をより多くして、加飾体から出射される光量もより多くすることが好ましい。
本発明者らは、上記知見に基づいて検討を重ね、構造色粒子による光の吸収を抑制し、かつ、バインダーまたは空気と構造色粒子との界面における光の反射率を高くすることで、粒子構造体により多くの干渉光を生じさせれば、ポリドーパミンなどによる光の吸収にもかかわらず、より鮮やかな色味の構造色を観察できるとの着想を得た。
つまり、構造色粒子に入射した光の一部は構造色粒子によって吸収されるが、この吸収量を減らせば、より多量の光が反射されて、より多量の干渉光を生じることができる。このとき、ベールの法則によれば、構造色粒子の吸収係数が小さいほど、構造色粒子による光の吸収も少なくなる。また、物質の吸収係数は、その物質の消衰係数に比例する。このような観点からは、構造色粒子の消衰係数はより小さいことが好ましい。
また、本発明者らの知見によれば、粒子構造体に入射する光の多くは、粒子構造体を透過するため、干渉光の発生に寄与しない。これに対し、バインダーまたは空気と構造色粒子との界面における光の反射率を高くすれば、干渉光の光量がより多くなり、粒子構造体から出射する干渉光の光量をより多くすることができると考えられる。
なお、バインダーまたは空気と構造色粒子との界面における光の反射率は、バインダーまたは空気と構造色粒子との屈折率差を大きくすることにより、高めることができる。具体的には、光が屈折率n1の物質から屈折率n2の物質に入射するときの反射率Rは、式(1)で求めることができる。
Figure 2018002929
ここで、バインダーとして通常使用されるアクリル樹脂などの屈折率はおおよそ1.5程度であるが、特許文献1、特許文献3、および非特許文献1などで構造色粒子に用いられているシリカおよびポリスチレンの屈折率も、おおよそ1.5程度である。これに対し、構造色粒子に用いられる材料の屈折率をより高くすれば、上記式(1)から明らかなように、バインダーから構造色粒子に入射する光の反射率、および構造色粒子を透過してバインダーに出射する光の反射率、がいずれも高まり、より多くの干渉光を生じることができると考えられる。
なお、空気の屈折率はおよそ1.0であるため、構造色粒子に用いられる材料の屈折率をより高くすれば、バインダーを用いずに加飾体を形成したときでも、空気から構造色粒子に入射する光の反射率、および構造色粒子を透過して空気に出射する光の反射率、がいずれも高まり、従来よりも多くの干渉光を生じることができると考えられる。
1.構造色粒子
上記知見に基づく本発明の一実施形態は、図1に模式的に示すように、コア部110とシェル部120とを有するコアシェル型の、構造色を観察可能な粒子構造体を形成可能な粒子である構造色粒子100に関する。構造色粒子100の、波長380nm以上780nm以下の光に対する消衰係数(以下、単に「消衰係数」ともいう。)は0.1以下であり、波長380nm以上780nm以下の光に対する屈折率(以下、単に「屈折率」ともいう。)は1.7以上である。なお、本明細書において、消衰係数および屈折率は、分光エリプソメータ(たとえば、堀場製作所製、UVISEL)によって25℃において測定して得られる値である。シェル部120は、ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下の、コア部110を被覆する皮膜である。
構造色粒子100の消衰係数が0.1以下であると、構造色粒子100による粒子構造体に入射した光の吸収を少なくして、粒子構造体から出射する干渉光の量をより多くすることができる。粒子構造体から生じる干渉光の量をより多くする観点からは、消衰係数は0以上であってより小さい値であればよく、0.07以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることがさらに好ましい。
構造色粒子100の屈折率が1.7以上であると、アクリル樹脂(屈折率:1.5程度)などの、通常用いられるバインダーから構造色粒子100に入射するに光の反射率が十分に高まり、粒子構造体から出射する干渉光の量をより多くすることができる。また、構造色粒子100の屈折率が1.7以上であると、空気(屈折率:1.0程度)から構造色粒子100に入射する光の反射率が十分に高まり、バインダーを有さない粒子構造体から出射する干渉光の量も、従来よりも多くすることができる。バインダーまたは空気と構造色粒子100との界面における光の反射量を多くして、より多量の干渉光を生じさせる観点からは、構造色粒子100の屈折率は1.9以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましく、2.3以上であることがさらに好ましい。ただし、バインダーまたは空気から構造色粒子100へ入射する光の反射率が高すぎると、構造色粒子100の内部に十分な量の光が入射せず、粒子の内部で反射する光の量が少なくなるため、十分な量の干渉光が生じにくい。そのため、上記構造色粒子100の屈折率は4.0以下であることが好ましい。
1−1.構造色粒子のコア部110
コア部110は、単独で粒子構造体を形成したときに構造色を観察できるものであればよい。
シェル部120の厚みは構造色粒子100の粒子径に対して比較的小さく、シェル部120における光の消衰および屈折の影響は無視できる程度であるので、コア部110の主成分を、消衰係数が0.1以下であり、かつ、屈折率が1.7以上である材料から選択すれば、構造色粒子100の消衰係数および屈折率の調整も容易である。なお、本明細書において主成分とは、コア部を構成する材料のうち、最も含有量が多い成分を意味する。消衰係数が0.1以下であり、かつ、屈折率が1.7以上である材料の例には、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、および酸化ジルコニウムなどが含まれる。なお、光の散乱等を抑制して得られる干渉光の波長帯を小さくする観点からは、コア部110は、実質的に単一の材料からなることが好ましい。
コア部110の形状は、アモルファス構造の粒子構造体を形成することができるものであればよい。粒子構造体を容易に形成させ、かつ、干渉により強まる波長の幅をより小さくする観点からは、コア部110は球形であることが好ましく、たとえば、コア部110のアスペクト比は1.00以上1.20以下であることが好ましく、1.00以上1.15以下であることがより好ましく、1.00以上1.10以下であることがさらに好ましい。なお、上記アスペクト比とは、コア部110の長手方向の長さbと、それに対する短手方向の長さaとの比の(b/a)で表される値である。
なお、コア部110の内部は、中空でもよく、または上記材料で内部が充填されていてもよい。
コア部110の平均粒子径は、粒子構造体を形成したときに構造色を観察可能な大きさであればよく、たとえば、100nm以上500nm以下とすることができる。なお、平均粒子径を上記範囲で適宜調節することで、近赤外線、可視光線および近紫外線の範囲に含まれる波長の光、たとえば、青、緑および赤に対応する波長の光、を干渉により強めることができる。
なお、本明細書において、多数の構造色粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像して得た画像中から任意に選定した100個の構造色粒子におけるコア部110の粒子径(コア部110の長手方向の長さbと、それに対する短手方向の長さaとの平均値((a+b/2)))を実測し、それらの平均値をコア部110の平均粒子径とする。
粒子構造体を形成させやすくし、かつ、干渉により強まる波長の分布をより小さくして観察される構造色の彩度をより高める観点からは、コア部110の粒子径は単分散であることが好ましい。上記観点からは、コア部110のCV(Coefficient of Variation)値は20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、上記CV値とは、多数の構造色粒子の断面をSEMで撮像して得た画像中から任意に選定した300個の構造色粒子におけるコア部110について粒度分布の標準偏差σおよび平均粒子径Dを求めて、(σ/D)×100(%)とした値である。
1−2.構造色粒子のシェル部
シェル部120は、ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、コア部110を被覆する皮膜である。シェル部120の膜厚は、1.0nm以上10.0nm以下である。
シェル部120は、粒子構造体に光が入射したときに生じる散乱光を吸収して、粒子構造体から観察される構造色の彩度を高める。
上記ポリドーパミンとは、ドーパミンモノマーに由来する構成単位が連続した構造を有する化合物である。上記誘導体の例には、上記ドーパミンモノマー由来する構成単位が有するベンゼン環がヒドロキシル基、メチル基、エチル基およびハロゲン原子などの置換基で置換された化合物である。
シェル部120の膜厚が1.0nm以上であると、散乱光を十分に吸収して、粒子構造体から観察される構造色の彩度をより高めることができる。シェル部120の膜厚が10.0nm以下であると、干渉光の過剰な吸収を防ぎ、鮮明な色味の構造色を観察可能にすることができる。観察される構造色の彩度を高め、かつ、色味をより鮮明にする観点からは、シェル部120の膜厚は2.0nm以上8.0nm以下であることが好ましく、2.5nm以上6.0nm以下であることがより好ましく、3.0nm以上5.0nm以下であることがさらに好ましい。
2.加飾体
本発明の別の実施形態は、上述した構造色粒子100から構成される粒子構造体を有する加飾体に関する。
上記加飾体は、粒子構造体の形状を維持できる限りにおいて、図2Aに模式的に示すように、上述した構造色粒子100から構成される粒子構造体210を有するがバインダーを有さない加飾体200であってもよい。一方で、粒子構造体の構造を保持して形状を維持しやすくする観点からは、図2Bに模式的に示すように、加飾体200は、粒子構造体210と、粒子構造体210をその内部に充填して包含するバインダー220とを有することが好ましい。加飾体200は、上記粒子構造体210と任意に有するバインダー220とを支持する基材230をさらに有していてもよい。
上記加飾体は、上述した構造色粒子100から構成される粒子構造体210を有するため、入射光の反射率が高く、より鮮明な構造色を観察することができる。観察される構造色をより鮮明にする観点からは、上記加飾体に白色光を入射させたとき反射率は35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。
2−1.粒子構造体
粒子構造体210は、上記構造色粒子10が少なくとも部分的に配列してなるアモルファス構造の構造体であり、上記構造色粒子10の配列が短距離秩序性を有する構造体である。上記粒子構造体は、所望の色調の構造色が観察可能となる粒子径の構造色粒子100を配列させて形成することができる。
反射する光に光路長差を生じさせやすくし、干渉によるエネルギーの増強をより生じやすくする観点からは、粒子構造体210の厚み(図中Z方向の長さ)は、構造色粒子100が単層とならなければよく、たとえば、200nm以上とすることができる。上記厚みの上限は、粒子構造体210の保形性が保てる範囲であればよく、たとえば、100,000nm以下とすることができる。ただし、構造色粒子100をインクジェットインクに応用する際には、インクの粘度を低くする必要があるため構造色粒子100を厚み方向に積み重ねさせることは難しく、上記厚みを50,000nm以上にすることは難しいと考えられる。また、構造色粒子100をトナーに応用する際には、厚みが数μmのトナー粒子を数層程度に重ね合わせて構造色粒子100を厚み方向に積み重ねさせたとしても、上記厚みを30,000nm以上とすることは難しいと考えられる。
2−2.バインダー
バインダー220は、配列した粒子を保持し、粒子構造体210の形状を維持することができる。バインダー220は、酸化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤および難燃剤を含む、その他の成分を含んでいてもよい。
バインダー220として用いることができる材料の例には、アクリル樹脂、セルロース、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンおよびエポキシなどが含まれる。
バインダー220から構造色粒子100に入射する光の反射率、および構造色粒子100を透過してバインダー220に出射する光の反射率、をいずれも高めて、より多くの干渉光を生じさせる観点からは、バインダー220の屈折率は1.65以下であることが好ましく、1.60以下であることがより好ましく、1.55以下であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、バインダー220と構造色粒子100との間の屈折率の差は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。
光が加飾体に入射する位置からの距離による、構造色粒子100に到達する光量の不必要な減少をより抑制する観点からは、バインダー220の波長380nm以上780nm以下の光に対する吸光度(以下、単に「吸光度」ともいう。)は低いことが好ましく、たとえば0.01以下とすることができる。上記それぞれの構造色粒子100に到達する光量の変化をより少なくする観点からは、バインダー220の吸光度は0.005以下であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。バインダーは、ポリドーパミン、カーボンブラック、ランプブラック、植物黒、骨炭、黒鉛および酸化物系黒色顔料、ニグロシンその他の色材などの光吸収性材料を含んでもよいが、加飾体200に入射した光および粒子構造体210から出射する干渉光の吸収による、観察される構造色の明度の低下を抑制する観点からは、バインダーは、上記光吸収性材料を実質的に含まないことが好ましい。
酸化防止剤は、上記バインダーの材料の酸化を防止できる公知の物質とすることができる。たとえば、有機材料の酸化を防止できる酸化防止剤の例には、ラジカルを捕捉する作用を有するフェノール系、アミン系、ヒンダードアミン系の化合物、および過酸化物を分解する作用を有する硫黄系またはリン系等の化合物などが含まれる。これらの酸化防止剤は、1つの化合物のみを用いてもよいし、2以上の化合物を併用してもよい。
レベリング剤は、バインダー220の表面張力を調整して、加飾体の製造時にバインダー220を基材230などに塗布する際の、刷毛目、ハジキ、ピンホールおよび浮きまだらなどの発生を抑制することができる公知の物質とすることができる。レベリング剤の例には、表面張力を低下させる作用を有するアクリル系、ビニル系、シリコーン系およびフッ素系の化合物などが含まれる。
帯電防止剤は、バインダー220に導電性を付与できる公知の物質とすることができる。帯電防止剤の例には、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が含まれる。
難燃剤は、バインダー220に難燃性を付与できる公知の物質とすることができる。難燃剤の例には、塩素原子または臭素原子を分子中に含む有機難燃剤、ならびに水酸化物系、リン酸化物系および三酸化アンチモンを含む無機難燃剤などが含まれる。
2−3.基材
基材230の材料は、加飾体に十分な強度を与えうるものであればよく、紙、鋼板などの無機物、PETフィルムなどの有機樹脂などを含む二次元形状の構造物、ならびに樹脂成型体および金属成形体を含む三次元形状の構造物などから、加飾体の用途などに適したものを選択すればよい。
基材230の形状も、粒子構造体210を配置できるものであればよく、加飾体の用途などに適したものを選択すればよい。基材の粒子構造体210を配置させる側の表面形状は、平面状でもよく、粒子構造体210を配置できる限りにおいて、曲面状や段差を有する形状であってもよい。
基材の吸光度は、任意に設定することができる。たとえば、基材側から構造色を観察しないときは、基材の吸光度は2以上とすることができる。
3.インク組成物
本発明のさらに別の実施形態は、上述した構造色粒子100と溶媒とを含むインク組成物に関する。上記インク組成物は、ロールコーターやスピンコーターなどで基材をコートさせて画像を形成するインク組成物でもよいし、インクジェット法などで液滴を吐出して基材上に着弾させて画像を形成する、比較的粘度が低いインク組成物でもよい。
また、上記インク組成物は、水および任意に少量の有機溶剤を液体成分として含有する水性インク、有機溶剤を液体成分として含有するが実質的に水を含有しない溶剤系インク、および基材上で活性光線を照射されることにより重合および架橋して硬化する光重合性化合物を液体成分として含有する活性光線硬化型インクでもよい。
上記インク組成物の全質量に対する構造色粒子100の含有量は、1.0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。構造色粒子100の含有量が上記範囲であると、干渉光の光量を高めて観察される構造色の彩度を十分にすることができ、かつ、組成物の粘度を、たとえばインクジェット法により吐出可能な範囲に、容易に制御することができる。
上記インク組成物が水性インクまたは溶剤系インクであるとき、上記インク組成物は、上述したバインダーの材料となり得る樹脂を含有して、バインダーを有する加飾体を形成できる組成物であってもよいし、上記樹脂を含有せず、バインダーを有さない加飾体を形成する組成物であってもよい。上記樹脂を含有するとき、上記インク組成物は、溶媒中に上記構造色粒子100および上記樹脂を含有する1液性の組成物でもよいし、上記構造色粒子100を含有する組成物と上記樹脂を含有する組成物とをそれぞれ基材上に塗布する2液性の組成物でもよい。なお、上記インク組成物が活性光線硬化型インクであるときは、上記光重合性化合物を重合および架橋させて上記バインダーを形成することができる。
3−1.溶媒
上記溶媒は、公知のインク組成物に通常用いられる溶媒であればよく、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合物、および光重合性化合物などから適宜選択することができる。上記溶媒は、上記バインダーの材料となり得る樹脂、および界面活性剤などのその他の成分をさらに含んでいてもよい。
たとえば、上記インク組成物が水系インクであるときは、上記溶媒は水または水と水溶性有機溶剤との混合物とすることができる。また、上記インク組成物が溶剤系インクであるときは、上記溶媒は上記水系インクに用いられ得る水溶性有機溶剤もしくは非水溶性有機溶剤、またはこれらの混合物とすることができる。また、上記インク組成物が活性光線硬化型インクであるときは、上記溶媒は上記光重合性化合物とすることができ、このとき、上記溶媒は任意に光重合開始剤を含有することができる。
上記水溶性有機溶剤の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールおよびt−ブタノールを含むアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、およびペンタンジオールを含むグリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ヘプタンジオールを含む多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびテトラメチルプロピレンジアミンを含むアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドを含むアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含む複素環化合物、ジメチルスルホキシドを含むスルホキシド、ならびにエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含むグリコールエーテルが含まれる。
上記インク組成物が水系インクであるときの上記水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、インク組成物の全質量に対して5.0質量%以上30質量%以下とすることができる。
上記非水溶性有機溶剤の例には、ペンタン、ヘキサン、i−ヘキサン、ヘプタン、i−ヘプタン、オクタン、i−オクタン、およびデカンを含む炭素数が5以上15以下の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族炭化水素、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、シクロドデセンを含む炭素数が5以上15以下の環状不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−キシレン、m−キシレンおよびp−キシレンを含む炭素数が6以上12以下の芳香族炭化水素、ヘプタノール、ヘキサノール、メチルヘキサノール、エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデシルアルコール、およびラウリルアルコールを含む炭素数が5以上15以下の1価のアルコール、メチル−i−ブチルケトン、ジ−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、およびシクロオクタノンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族ケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸アミル、酢酸−i−アミル、酢酸2−エチルヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸アミル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シクロオクチル、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、およびフタル酸ジブチルを含むエステル化合物、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロペンタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、およびニトロキシレンを含むニトロ化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリルを含むニトリル類、ならびにγ−ブチロラクトン、およびε−カプロラクトンを含むラクトン類が含まれる。
上記インク組成物が溶剤系インクであるときの上記非水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、インク組成物の全質量に対して1.0質量%以上98質量%以下とすることができ、20質量%以上95質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下とすることがさらに好ましい。
上記インク組成物が活性光線硬化型インクであるときの上記光重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーあるいはこれらの混合物のいずれであってもよい。
上記ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
上記単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
上記多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
上記ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、変性(メタ)アクリレートは、高温下でも他のインク成分とより相溶しやすい。さらには、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため画像形成時の印刷物のカールがより生じにくい。
上記カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物が含まれる。
上記インク組成物が活性光線硬化型インクであるときの上記光重合性化合物の含有量は、たとえば、インク組成物の全質量に対して1.0質量%以上97質量%以下とすることができ、30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。
上記光重合開始剤は、前記光重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。たとえば上記インク組成物がラジカル重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、上記インク組成物がカチオン重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
上記光重合開始剤の含有量は、活性光線の照射によってインク組成物が十分に硬化し、かつインク組成物の吐出性を低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1.0質量%以上12質量%以下とすることができる。
上記バインダーの材料となり得る樹脂の例には、バインダー220として用いることができる材料として上述したアクリル樹脂、セルロース、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンおよびエポキシ、ならびにこれらの前駆体などが含まれる。
上記界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類を含むアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類を含むノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類を含むカチオン性界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤、ならびにフッ素系の界面活性剤が含まれる。
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.001質量%以上5.0質量%未満であることが好ましい。
3−2.インクジェット用のインク組成物
上記インク組成物がインクジェット用のインク組成物であるときは、インクジェットヘッドからの吐出を容易にするため、インクの粘度を低くする必要がある。このような粘度が低いインク組成物では、組成物内で構造色粒子が比較的自由に流動できるため、インクジェットヘッドから吐出されて基材に着弾した組成物内で構造色粒子が結晶構造を形成しやすく、そのために画像の角度依存性が高くなることがある。そのため、上記インク組成物がインクジェット用のインク組成物であるときは、画像の角度依存性を低くする観点から、インク組成物にピニング剤を含有させることが好ましい。ピニング剤は、基材に着弾したインク組成物の濡れ広がりを適度に抑制して、構造色粒子の移動を制御して結晶構造の形成を妨げ、上記アモルファス構造の粒子構造体を形成させやすくする。
3−2−1.ピニング剤
上記ピニング剤は、基材に着弾した上記インク組成物の濡れ広がりを適度に抑制できる化合物であればよい。ピニング剤は、インク組成物中に一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
基材に着弾した後のインク組成物の液滴において、ピニング剤は、インク組成物の濡れ広がりを適度に抑制する。これにより、液滴の内部での上記粒子の移動を適度に制御されて、上記アモルファス構造の粒子構造体を形成しやすくなると考えられる。また、ピニング剤は、基材に着弾したインク組成物の液滴の濡れ広がりを抑制するため、形成されるドット径を小さくして、より高精細な画像の形成を容易にする。
上記ピニング剤の例には、加熱した際(たとえば、80℃に加熱した際)の上記インク組成物の粘度をインクジェットヘッドからの吐出可能な範囲に低減させ、かつ、吐出されて基材に着弾して冷却された上記インク組成物の粘度を高くすることができる化合物が含まれる。このとき、ピニング剤は、上記インク組成物を温度変化によって可逆的にゾルゲル相転移させてもよい。
上記インク組成物を温度変化によって可逆的にゾルゲル相転移させるピニング剤の例には、公知のゲル化剤が含まれる。上記ゲル化剤は、分子が水素結合などによって紐状につながった網目状の組織を形成できる網状オルガノゲルでもよいし、板状の結晶体が物理的に組み合わさってなるカードハウス構造を形成できるオイルワックスゲルでもよい。これらのうち、結晶化したゲル化剤による画像の白色化を生じにくくするとともに、網目状の組織によって上記粒子の規則配列を阻害してアモルファス構造を形成させやすくする観点からは、ゲル化剤は網状オルガノゲルであることが好ましい。
網状オルガノゲルの好適な例には、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、1,2−ヒドロキシステアリン酸、アルギン酸とアルカリ金属との塩、金属石鹸、煙霧状無水ケイ酸、ベヘン酸グリセリル、エイコサン二酸グリセリルおよび有機変性粘土鉱物が含まれる。上記以外の網状オルガノゲルの例には、ジベンジリデンソルビトールが含まれる。
上記デキストリン脂肪酸エステルの例には、デキストリンと炭素数が8以上24以下の高級脂肪酸とのエステル、たとえば、2−エチルヘキサン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、およびベヘニン酸デキストリン、ならびにこれらの混合物が含まれる。これらのうち、デキストリンと炭素数が14以上18以下の高級脂肪酸とのエステル、たとえば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリンおよびステアリン酸デキストリン、ならびにこれらの混合物が好ましい。
上記ショ糖脂肪酸エステルの例には、ショ糖と炭素数が12以上22以下の高級脂肪酸とのエステル、たとえば、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、およびショ糖ラウリン酸エステル、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記イヌリン脂肪酸エステルの例には、パルミチン酸イヌリン、2−エチルヘキサン酸イヌリン、ステアリン酸イヌリン、オレイン酸イヌリン、イソパルミチン酸イヌリン、およびイソステアリン酸、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記アルギン酸とアルカリ金属との塩には、アルギン酸リチウム、アルギン酸ナトリウム、およびアルギン酸カリウム、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記金属石鹸の例には、金属と炭素数が12以上22以下の高級脂肪酸との塩が含まれる。上記金属の例には、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、およびカリウムが含まれる。上記高級脂肪酸の例には、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、およびミリスチン酸、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記煙霧状無水ケイ酸の例には、微細な非晶質の無水ケイ酸であり、一次粒子の粒子径がたとえば5〜50nmであるものが含まれる。
上記有機変性粘土鉱物の例には、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、および塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウムが含まれる。
上記ジベンジリデンソルビトールの例には、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトールおよび1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールが含まれる。
オイルワックスゲルの例には、パラフィン、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸および高級アルコールが含まれる。
上記長鎖脂肪酸エステルの例には、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、リノール酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、およびリノール酸アラキジル、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記長鎖脂肪酸の例には、ベヘニン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸、ならびにこれらの混合物が含まれる。
上記高級アルコールの例には、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールならびにこれらの混合物が含まれる。
加熱した上記インク組成物をゾル化しやすくし、インクヘットヘッドのノズルからの上記インク組成物の吐出性をより高める観点からは、ピニング剤は、インクの液体成分よりも低い融点を有する化合物であることが好ましい。上記インクの液体成分は、上記インク組成物が水系インクであるときは水、溶剤系インクであるときは有機溶剤、滑性光線硬化型インクであるときは光重合性化合物の融点とすることができる。
また、好ましいピニング剤は、インクが含有する液体成分の種類によって設定することができる。本発明者らの知見によれば、上記インク組成物が水系インクであるときの好ましいピニング剤は、ショ糖脂肪酸エステルおよびアルギン酸とアルカリ金属との塩であり、上記インク組成物が溶剤系インクであるときの好ましいピニング剤は、デキストリン脂肪酸エステルおよびイヌリン脂肪酸エステルであり、上記インク組成物が滑性光線硬化型インクであるときの好ましいピニング剤は、長鎖脂肪酸エステルである。
また、上記インク組成物が水系インクであるときは、ピニング剤は親水性部位を有することが好ましい。親水性部位を有する網状オルガノゲルの例には、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、1,2−ヒドロキシステアリン酸、金属石鹸、煙霧状無水ケイ酸、ベヘン酸グリセリル、エイコサン二酸グリセリル、および有機変性粘土鉱物が含まれる。親水性部位を有するオイルワックスゲルの例には、高級アルコールが含まれる。
上記インク組成物におけるピニング剤の含有量は、加熱した際(たとえば、80℃に加熱した際)の上記インク組成物の粘度がインクジェットヘッドのノズルから吐出可能な範囲となり、かつ、基材に着弾したインク液滴が所望のドット径に濡れ広がる程度であればよい。例えば、ピニング剤の含有量は、上記インク組成物の全質量に対して0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上7.0質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下とすることがさらに好ましい。
3−2−2.物性
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、上記インク組成物の80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。
上記インク組成物は、40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。インクの相転移温度が40℃以上であると、基材に着弾後、インクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。インクの相転移温度が70℃以下であると、インク温度が通常80℃程度である吐出ヘッドからのインクの射出時にインクがゲル化しにくいため、より安定してインクを射出することができる。
上記インク組成物の80℃における粘度、25℃における粘度および相転移温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。本明細書においては、これらの粘度および相転移温度は、以下の方法によって得られた値である。上記インク組成物を100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。80℃における粘度および25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。相転移温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求める。
3−3.インク組成物の製造方法
上記インク組成物は、たとえば、構造色粒子と、前記溶媒と、任意に用いられる前記ピニング剤および前記その他の成分とを混合、たとえば加熱下において撹拌して混合することにより得ることができる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。
3−4.インクセット
前記インク組成物は、組成が異なる複数のインク組成物を組み合わせて、インクセットとすることができる。
上記複数のインク組成物は、互いに組成が異なる複数種のインク組成物とすることができる。たとえば、粒子構造体を形成したときに青を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むインク組成物と、粒子構造体を形成したときに緑を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むインク組成物と、粒子構造体を形成したときに赤を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むインク組成物、の組み合わせとすることができる。このような組み合わせを含むインクセットは、上記インク組成物を単独または重ねて基材の表面に付着させることで、広い色再現域のフルカラーの画像を形成することができる。
上記複数のインク組成物は、上記粒子以外の組成、具体的には含有する成分の種類が、共通することが好ましい。
4.インク組成物を用いた画像形成方法
本発明のさらに別の実施形態は、上述したインク組成物を用いた画像形成方法に関する。本実施形態に関する画像形成方法は、そのフローである図3に示すように、上記インク組成物を基材の表面に付着させる工程(工程S−310、以下、単に「付着工程」ともいう。)を含む、画像形成方法である。上記画像形成方法は、基材に着弾した上記インク組成物の液体成分を蒸発、基材中へ拡散、または硬化(以下、単に「蒸発等」ともいう。)させて、粒子構造体を含有する画像部を形成する工程(工程S−320、以下、単に「蒸発等工程」ともいう。)をさらに含んでもよい。インク組成物が上述したバインダーの材料となり得る樹脂を含有していないとき、本実施形態に関する画像形成方法は、上記蒸発等工程の後に、バインダーの材料を塗布して固化させる工程(工程S−330、以下、単に「バインダー形成工程」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
4−1.付着工程(工程S−310)
付着工程では、上記インク組成物を基材の表面に付着させる。上記インク組成物は、インクジェット法を含む公知の印刷方法、ならびにバーコート法、スピンコート法、ディップ塗装法、アプリケータ塗装法およびスプレー塗装法を含む公知の塗装方法などによって、基材の表面に付着させることができる。
このとき、互いに組成が異なる複数種の上記インク組成物を基材の表面に付着させてもよい。たとえば、粒子構造体を形成したときに青を観察可能な平均粒子径を有する前記粒子を含む上記インク組成物と、粒子構造体を形成したときに緑を観察可能な平均粒子径を有する前記粒子を含む上記インク組成物と、粒子構造体を形成したときに赤を観察可能な平均粒子径を有する前記粒子を含む上記インク組成物と、を単独または重ねて基材の表面に付着させることで、広い色再現域のフルカラーの画像を形成することができる。
4−1−1.インクジェット法による付着工程
より高精細な画像を形成する観点からは、上記付着工程はインクジェット法による工程であり、インクジェットヘッドのノズルから前記インク組成物を吐出して前記基材の表面に着弾させる工程であることが好ましい。このとき、上述したように、インク組成物はピニング剤を含有することが好ましい。
上記インクジェット法における、インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気−機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型を含む電気−熱変換方式等のいずれでもよい。
吐出安定性をより高める観点からは、上記インク組成物の液滴は、加熱された状態でインクジェットヘッドのノズルから吐出されることが好ましい。吐出される際のインクの温度は、35℃以上100℃以下であるが好ましく、吐出安定性をさらに高める観点からは、35℃以上80℃以下であることがより好ましい。上記観点からは、上記インク組成物の粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下、好ましくは7mPa・s以上15mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以上13mPa・s以下となるようなインク温度において吐出を行うことがさらに好ましい。
吐出安定性をより高め、かつ、上記インク組成物が含有する成分の劣化を抑制する観点からは、上記インク組成物が40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有するときの、インクジェットヘッドに充填されたときの上記インク組成物の温度は、インクの相転移温度より10℃以上30℃以下高い温度となるように調整されることが好ましい。
インクを所定の温度に加熱する方法は特に制限されない。たとえば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクを含むインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドの少なくともいずれかを、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水を含む加熱手段で所定の温度に加熱すればよい。
記録速度を速くし、かつ、高精細な画像を形成できるようにする観点からは、吐出されるインクの液滴量は、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
4−2.蒸発等工程(工程S−320)
蒸発等工程では、基材に付着させた上記インク組成物の液体成分を蒸発等させて、粒子構造体を含有する画像部を形成する。
上記インク組成物が水系インクまたは溶剤系インクであるときは、たとえば、上記インク組成物が付着した基材を静置することで、インクの液体成分を蒸発または基材中に拡散させて、粒子構造体を含有する画像部を形成することができる。このとき、基材を加熱して上記液体成分の蒸発を促進してもよい。
上記インク組成物が活性光線硬化型インクであるときは、基材に付着した上記インク組成物の液滴に活性光線を照射して、インクの液体成分を硬化させることができる。
上記活性光線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線が含まれる。これらのうち、取り扱いの容易さおよび人体への影響の少なさの観点から、紫外線を照射することが好ましい。光源の輻射熱によって上記インク組成物が溶けることによるインクの硬化不良の発生を抑制する観点からは、光源は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
4−3.バインダー形成工程(工程S−330)
バインダー形成工程では、蒸発等工程で形成された粒子構造体に、上記バインダーの材料を塗布して固化させる。バインダーの材料は、上述したアクリル樹脂、セルロース、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンおよびエポキシ、ならびにこれらの前駆体などとすることができる。本工程では、これらの材料を塗布して粒子構造体の内部に浸透させ、その後、加熱乾燥などにより固化させて、バインダーを形成することができる。
5.トナー
本発明のさらに別の実施形態は、上述した構造色粒子100を含むトナーに関する。
ここで、構造色粒子を配列させるためには、画像形成時に構造色粒子がある程度の広さを有する領域を自由に流動する必要があり、そのためには構造色粒子が流動性のある環境下に存在し、かつ、複数のトナーが合一して上記流動性のある環境がある程度の体積になることが好ましい。一方で、構造色粒子が自由に流動しすぎると、長距離秩序性を有する結晶構造が形成されてしまい、画像の角度依存性が高くなってしまうおそれがある。
上記流動性を調整する観点からは、上記トナーは、コアシェル型のトナーにおいて、コア部が構造色粒子と活性光線の照射によって硬化するモノマーとを含む流動性の構成であり、シェル部が熱可塑性樹脂を含む構成であるトナーであることが好ましい。このトナーによれば、記録媒体上で熱圧力を印加することでシェル部を変形させ定着させ、同時にシェル部に覆われた流動性のコア部内で構造色粒子を少なくとも部分的に配列させ、その後活性光線を照射してコア部を硬化させることで、粒子構造体が記録媒体上に定着してなる画像を形成することができる。
具体的には、上記トナーの一実施形態は、図4Aに模式的に示すトナー400のように、構造色粒子100を含有する流動性のコア部430と、シェル部440と、を含む。図4Bに示すように、トナー400は、コア部430に、水溶性モノマー410および光重合開始剤420をさらに含有してもよい。
図5に示すように、トナー400は、記録媒体P上で熱圧力を印加されると、シェル部440を構成する熱可塑性樹脂が軟化および変形して隣り合うトナー同士が合一し、複数のトナー400のコア部430に由来する流動性のコア部430aが上記複数のトナー400のシェル部440に由来する定着樹脂440aに被覆されて、記録媒体Pの表面に定着する。このとき、流動性のコア部430aでは構造色粒子100が移動して部分的に結晶化する。しかし、定着樹脂440aが皮膜または隔壁として作用し、コア部430aでの構造色粒子100の自由な移動を適度に制御するため、長距離秩序を有する結晶構造は形成されず、短距離秩序を有するアモルファス構造の粒子構造体415が形成される。トナー400では、さらに、活性光線を照射することで、水溶性モノマー410が重合および架橋して硬化して粒子構造体415を保持するバインダー430bとなり、粒子構造体415の形状を維持しやすくする。
トナー400は、磁性または非磁性の一成分系トナーであってもよいし、キャリアと組みあわせて現像剤として使用する非磁性の二成分系トナーであってもよい。
トナー400の全質量に対する構造色粒子100の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、7質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。構造色粒子100の含有量が上記範囲であると、干渉光の光量を高めて観察される構造色の彩度を十分にすることができる。
5−1.トナーのコア部
コア部430は、上記構造色粒子100を含有する。コア部430は、水溶性モノマー410および光重合開始剤420をさらに含んでもよい。また、コア部430は、上記各物質を分散させる分散媒としての水を含んでいてもよい。
5−1−1.水溶性モノマー410
水溶性モノマー410は、活性光線の照射によって重合および架橋して硬化するモノマーである。水溶性モノマー410は、後述するトナーの製造時に、第1の水相液の分散媒である水に溶解するものであればよく、たとえば、25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であるものであればよい。水溶性モノマーは、1種類の化合物のみからなってもよく、複数種類の化合物の組み合わせであってもよい。
水溶性モノマー410の例には、スチレンモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、カルボキシ基を有するモノマー、ヒドロキシ基を有するモノマー、ならびに構造中にアミノ基、オキシアルキレン鎖およびシアノ基などの極性を有する構造を有するモノマーが含まれる。
上記スルホン酸基を有するモノマーの例には、スチレンスルホン酸、および2−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸などが含まれる。
上記カルボキシ基を有するモノマーの例には、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、およびマレイン酸モノオクチルエステルなどが含まれる。
上記ヒドロキシ基を有するモノマーの例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
上記構造中にアミノ基を有するモノマーの例には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および3−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
上記構造中にオキシアルキレン鎖を有するモノマーの例には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ならびにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびビスフェノールAジアクリレートなどのエチレンオキサイド変性物またはプロピレンオキサイド変性物などが含まれる。
上記構造中にシアノ基を有するモノマーの例には、(メタ)アクリロニトリルなどが含まれる。
活性光線の照射によってコア部430を十分に硬化させて記録媒体に接着させ、強固な画像を形成させる観点からは、トナー400の全質量に対する水溶性モノマー410の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、7質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
5−1−2.光重合開始剤420
光重合開始剤420は、インク組成物について上述した光重合開始剤と同様とすることができる。
5−2.トナーのシェル部
シェル部440は、熱可塑性樹脂を含む他は、公知のコアシェル型のトナーにおけるシェル部と同様の構成にすることができる。たとえば、シェル部440は、公知の離型剤および荷電制御剤などをさらに含有してもよい。また、シェル部440は、その表面に公知の外添剤が添加されていてもよい。
コア部430を十分に保護し、かつ定着性を高める観点からは、シェル部440の膜厚は、0.05μm以上であることが好ましい。記録媒体上で熱圧力を印加したときに隣り合うトナー粒子のコア部430同士を合一させ、スジの少ない画像を形成する観点からは、シェル部440の膜厚は、1.0μm以下であることが好ましい。
5−2−1.熱可塑性樹脂
上記熱可塑性樹脂は、たとえば従来のトナーにおいて定着樹脂(バインダー)として用いられる熱可塑性樹脂とすればよい。このような熱可塑性樹脂の例には、ビニル樹脂およびポリエステル樹脂が含まれる。
また、上記熱可塑性樹脂は、非晶性の樹脂(たとえばビニル樹脂)の中に結晶性の樹脂(たとえばポリエステル樹脂)を分散させた樹脂であることが好ましい。なお、樹脂が非晶性であるとは、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピーク(融点)が見られないことを意味し、樹脂が結晶性であるとは、上記吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークが見られることを意味する。なお、上記明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークを意味する。
上記ビニル樹脂は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位を有する樹脂である。エチレン性不飽和結合を有するモノマーの例には、スチレン系モノマー、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルケトン化合物、N−ビニル化合物、(メタ)アクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。
上記スチレン系モノマーの例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、およびp−n−ドデシルスチレン、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびマレイン酸などが含まれる。
上記不飽和カルボン酸エステル化合物の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルおよび、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記ビニルエステル化合物の例には、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、およびベンゾエ酸ビニル、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記ビニルエーテル化合物の例には、ビニルメチルエーテルおよびビニルエチルエーテル、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記ビニルケトン化合物の例には、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンおよびビニルヘキシルケトン、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記N−ビニル化合物の例には、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールおよびN−ビニルピロリドン、ならびにこれらの誘導体などが含まれる。
上記ビニル樹脂は、単一のモノマーが重合してなる重合体でもよく、複数種類のモノマーが重合してなる共重合体でもよい。好ましいビニル樹脂の例には、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂などが含まれる。これらのうち、耐熱保管性をより高める観点からは、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。また、架橋構造によって機械的強度および耐熱性を高める観点からは、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーを含む共重合体であることが好ましい。上記多官能モノマーの例には、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびネオペンチルグリコールジ(メタ)クリレートなどが含まれる。
上記ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)とが重合してなる樹脂である。
上記多価カルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、1,2−プロパンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、フマル酸およびメサコン酸などを含む脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを含む脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などを含む芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸およびピロメリット酸などを含む3価以上の多価カルボン酸、ならびにこれらの無水物およびイソフタル酸ジメチルなどのこれらの炭素数1〜3のアルキルエステルなどが含まれる。上記ポリエステル樹脂は、これらの多価カルボン酸のうち、1種のみからなってもよく、2種以上からなってもよい。上記ポリエステル樹脂は、耐熱性が高い非晶性の樹脂とする観点からは、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸またはトリメリット酸に由来する構成単位を有することが好ましい。
上記多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BPA−PO)、などを含む2価の多価アルコール、ならびにグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビタンおよびソルビトールなどを含む3価以上の多価アルコール等が挙げられる。上記ポリエステル樹脂は、これらの多価アルコールのうち、1種のみからなってもよく、2種以上からなってもよい。上記ポリエステル樹脂は、低温定着性が高い結晶性の樹脂とする観点からは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来する構成単位を有することが好ましい。
トナーの定着性をより高める観点から、上記熱可塑性樹脂の軟化点(Tsp)は、70℃以上140℃以下であることが好ましい。
上記軟化点(Tsp)は、たとえば次のようにして測定することができる。
20±1℃、50±5%RH環境下において、試料1.1gをシャーレに入れて平らにならし、12時間以上放置した後、成型器SSP−A(島津製作所製)にて3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円中型の成型サンプルを作製する。次に、24±5℃、50±20%RH環境下において、フローテスタCFT−500D(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの孔(直径1mm、深さ1mm)から直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から上記成型サンプルを押し出す。昇温法の溶融温度測定方法により、オフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、軟化点とする。
トナーの低温定着性をより高める観点から、上記熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、70℃以下であることが好ましい。一方で、トナーの耐熱保管性をより高める観点からは、上記熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、40℃以上であることが好ましい。上記低温定着性および耐熱保管性をいずれも高める観点からは、上記熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、45度以上65℃以下であることが好ましい。
上記ガラス転移点(Tg)は、たとえば次のようにして測定することができる。
試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/minの昇温速度でそれぞれ200℃まで昇温して、150℃を5分間保持する。冷却時には、10℃/minの降温速度で200℃から0℃まで降温して、0℃の温度を5分間保持する。示差走査熱量測定装置(たとえばパーキンエルマー社製、ダイヤモンドDSC)を用いて2回目の加熱時に得られた測定曲線におけるベースラインのシフトを観察し、シフトする前のベースラインの延長線と、ベースラインのシフト部分の最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)とする。
上記熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000以上6000以下であることが好ましく、3500以上5500以下であることがより好ましい。また、上記熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値は、2.0以上6.0以下であることが好ましく、2.5以上5.5以下であることがより好ましい。
上記数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、たとえば次のようにして測定することができる。
試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃において超音波分散機を用いて15分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(たとえば、東ソー株式会社製、HLC−8120GPC及びカラム(たとえば、東ソー株式会社製、TSKguardcolumnおよびTSKgelSuperHZ−M3を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。検量線は、分子量がそれぞれ6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10である10点のポリスチレン標準粒子(Pressure Chemical社製)を測定することにより、作成する。
コア部430を十分に保護し、かつ定着性を高める観点からは、上記熱可塑性樹脂の含有量は、トナーの全質量に対して10質量%以上であることが好ましい。記録媒体上で熱圧力を印加したときに隣り合うトナー粒子のコア部430同士を合一させ、スジの少ない画像を形成する観点からは、上記熱可塑性樹脂の含有量は、トナーの全質量に対して80質量%以下であることが好ましい。
5−2−2.離型剤
上記離型剤は、像保持体の表面に現像されたトナー像の記録媒体の表面への転写(定着分離)を容易にするために用いられる公知の離型剤とすることができる。
このような離型剤の例には、公知のワックス、たとえば、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスなどを含むポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどを含む分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックスおよびサゾールワックスなどを含む長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどを含むジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、およびジステアリルマレエートなどを含むエステル系ワックス、ならびにエチレンジアミンベヘニルアミドおよびトリメリット酸トリステアリルアミドなどを含むアミド系ワックスなどが含まれる。
トナーの定着分離性をより高め、一方で不純物による画質の劣化を抑制する観点からは、上記離型剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下とすることができ、5質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。また、トナーの定着分離性をより高め、一方で不純物による画質の劣化を抑制する観点からは、上記離型剤の含有量は、トナーの全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
5−2−3.荷電制御剤
上記荷電制御剤は、トナーの帯電性を制御するために用いられる公知の荷電制御剤とすることができる。
このような荷電制御剤の例には、グロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、およびサリチル酸金属塩等などが含まれる。
トナーの帯電性を所望の範囲に制御する観点からは、上記荷電制御剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下とすることが好ましい。
5−2−4.外添剤
上記外添剤の例には、トナーの流動性を高めるために用いられる公知の流動化剤、および像保持体からトナーを除去しやすくするために用いられる公知のクリーニング助剤などが含まれる。
上記流動化剤の例には、シリカ微粒子、アルミナ微粒子および酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子、ステアリン酸アルミニウム微粒子およびステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、ならびにチタン酸ストロンチウムおよびチタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子が含まれる。耐熱保管性および環境安定性をより高める観点からは、これらの化合物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、またはシリコーンオイルなどによって光沢処理が行われていることが好ましい。
上記クリーニング助剤の例には、ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリフッ化ビニリデン微粒子、およびポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子が含まれる。
トナーの流動性またはクリーニング性をより高めるなどの効果を付与し、一方で不純物による画質の劣化を抑制する観点からは、上記外添剤の合計の含有量は、トナーの全質量に対して0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
5−3.トナー400の形状
帯電特性をより安定させ、かつ、低温定着性をより高める観点から、トナー400の平均円形度は、0.930以上1.000以下であることが好ましく、0.950以上0.995以下であることがより好ましい。トナー400の平均円形度が上記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。これにより、像保持体などの汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
上記トナー400の平均円形度は、たとえば次のようにして測定することができる。
測定試料を界面活性剤入り水溶液に馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行って上記水溶液に分散させる。その後、Sysmex社製、FPIA−2100などの撮像機器によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で分散液を撮影する。撮影した粒子像から、個々のトナー粒子の円形度を下記式(I)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(I)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
5−4.キャリア
トナー400を二成分系トナーとして用いるときに組み合わされるキャリアは、公知のキャリアとすることができ、たとえば、公知の磁性粒子、上記磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリア、およびバインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリアなどとすることができる。上記磁性粒子の材料の例には、鉄、フェライト、およびマグネタイトなどの金属、ならびに上記金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが含まれる。これらのうち、フェライトが好ましい。
上記キャリアとして用いる粒子または微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、20μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)は、たとえば湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製、ヘロス(HELOS)など)によって測定することができる。
5−5.トナーの製造方法
本発明の他の実施形態は、上述したトナー400の製造方法に関する。上記トナー400は、たとえば二次乳化法によって製造することができる。
二次乳化法によれば、(2−1)水溶性モノマー、光重合開始剤および配列したときに構造色を観察可能な粒子を含有する第1の水相液と、熱可塑性樹脂および第1の乳化剤を含有する油相液と、を混合して、油中水(W/O)型エマルションである第1乳化液を調製する工程と、(2−2)上記第1乳化液と、第2の乳化剤を含有する第2の水相液と、を混合して、水中油中水(W/O/W)型エマルションである第2乳化液を調製する工程と、(2−3)上記第2乳化液から粒子状のトナーを分離する工程と、によって、上記トナー400を製造できる。
5−5−1.第1乳化液を調製する工程
本工程では、構造色粒子を含有する第1の水相液を、熱可塑性樹脂および第1の乳化剤を含有する油相液中で乳化させて、W/O型エマルションである第1乳化液を調製する。このようにして得られる第1乳化液では、トナー400のコア部430の材料である上記構造色粒子を含む水滴が油性溶媒中に分散している。トナー400がシェル部50に上述した離型剤および荷電制御剤などを含有するときは、離型剤を上記油相液中に添加しておくことが好ましい。上記第1の水相液には、水溶性モノマーおよび光重合開始剤をさらに含有させてもよい。このとき、第1乳化液では、トナー400のコア部430の材料である上記水溶性モノマー、光重合開始剤および構造色粒子を含む水滴が油性溶媒中に分散している。
第1の水相液が含有する構造色粒子、水溶性モノマーおよび光重合開始剤としては、上述したトナー400のコア部430に含まれる構造色粒子、水溶性モノマーおよび光重合開始剤を用いることができる。トナー400がコア部430に上記構造色粒子、水溶性モノマーおよび光重合開始剤以外の追加の構成要素を含むときは、上記追加の構成要素を第1の水相液に分散または溶解させておく。第1の水相液が含有する水溶性モノマー、光重合開始剤および構造色粒子の量は、上記トナー400に含有させる量に応じて調整すればよい。
上記構造色粒子は、コアシェル型の単分散微粒子を製造する公知の方法、たとえばセリウム、アルミニウム、亜鉛、チタンまたはジルコニウムなどの硝酸塩と尿素とを混合し、析出した構造色粒子の前駆体を焼成してコア部を構成する粒子を作製し、さらにこの粒子を分散させた分散液にドーパミンを混合して撹拌する方法によって、作製することができる。
上記油相液が含有する第1の乳化剤としては、非イオン性界面活性剤などの、W/O型エマルションを調製するために用いられる公知の乳化剤を用いることができる。このような非イオン性界面活性剤の例には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレートなどを含むソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどを含むポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、デカグリセリルトリオレエート、およびヘキサグリセリンポリリシノレートなどを含むモノ、ジまたはポリ−グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン植物油脂肪酸エステルなどを含むポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、高級アルコール、オキサゾリン誘導体、イミダゾリン誘導体、リン酸エステル、脂肪酸アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、ならびに1級、2級および3級のアミン塩などが含まれる。
これらのうち、W/O型エマルションを調製しやすくする観点からは、Hydrophile Lipophile Balance(HLB)値が3以上11以下の乳化剤が好ましい。HLB値が3以上11以下の乳化剤の例には、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが含まれる。
第1の乳化剤の含有量は、第1乳化液の全質量に対して0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
上記油相液が含有する熱可塑性樹脂としては、上述したトナー400のシェル部440に含まれる熱可塑性樹脂を用いることができる。上記油相液が含有する熱可塑性樹脂の量は、上記トナー400に含有させる量に応じて調整すればよい。
上記油相液の溶媒としては、上記熱可塑性樹脂を溶解させることができる油性溶媒であればよく、上記熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。このような油性溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールなどを含むアルキルアルコール系の油性溶剤、べンゾール、トルオール、およびキシロールなどを含む芳香族炭化水素系の油性溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、および酢酸ブチルなどを含むエステル系の油性溶剤、クロロホルム、および二塩化エチレンなどを含む塩素化炭化水素系の油性溶剤、アセトン、ジオキサン、ならびにセロソルブ酢酸エチルなどが含まれる。
上記乳化は、W/O型エマルションを調製するための公知の方法、たとえば、上記油相液に上記第1の水相液を添加しながら、撹拌、超音波、ホモジナイザー、マイクロリアクター、マイクロチャンネルおよび多孔質膜などによって分散させる方法で行うことができる。
5−5−2.第2乳化液を調製する工程
本工程では、上記第1乳化液を、第2の乳化剤を含有する第2の水相液中で乳化させて、W/O/W型エマルションである第2乳化液を調製する。このようにして得られる第2乳化液では、上記構造色粒子を含み、任意に上記水溶性モノマーおよび光重合開始剤を含む水滴が上記熱可塑性樹脂および上記油性溶媒に被覆されてなる油滴が、水性溶媒中に分散している。
第2の水相液が含有する第2の乳化剤としては、上記第1の乳化剤と同様の乳化剤を用いることができる。これらのうち、W/O/W型エマルションを調製しやすくする観点からは、HLB値が8以上18以下の乳化剤が好ましい。HLB値が8以上18以下の乳化剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが含まれる。
第2の乳化剤の含有量は、第2乳化液の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
上記乳化は、W/O/W型エマルションを調製するための公知の方法、たとえば、上記第2の水相液に上記第1乳化液を添加しながら、撹拌、超音波、ホモジナイザー、マイクロリアクター、マイクロチャンネルおよび多孔質膜などによって分散させる方法で行うことができる。
5−5−3.粒子状のトナーを分離する工程
本工程では、上記第2乳化液から粒子状のトナーを分離する。乾燥の前に、上記第2乳化液を加熱または減圧して上記油性溶媒を除去してもよい。
トナーの分離は、濾過などの、エマルションから粒子を分離するための公知の方法によって行うことができる。
5−5−4.外添剤を付与する工程
トナー400が上述した外添剤を含有するとき、本実施形態は、外添剤を付与する工程をさらに有してもよい。外添剤は、上述の工程で分離されて得たトナーと外添剤とをヘンシェルミキサーで混合するなどの公知の方法で、トナーに付与することができる。
5−6.トナーセット
前記トナーは、構造色粒子の粒子径が異なり、異なる色が観察される粒子構造体が形成される異なる複数のトナー400を組み合わせて、トナーセットとすることができる。
たとえば、赤、緑および青を観察可能な粒子構造体が形成される複数のトナー400を含むトナーセットを用いて画像を形成すると、加法混色によるカラー画像を記録媒体上に形成することが可能になり、イエロー、マゼンタおよびシアンによる減法混色によるカラー画像よりも色再現域を広げて、CRT画面や液晶画面などにソフトコピーとして表示される色再現域により近づけることができると期待される。上記トナーセットには、黄(金)などが観察可能な粒子構造体が形成される特色のトナー400を含まれると、光輝性の画像による華やかさおよび豪華さがより演出しやすくなる。
上記複数のトナー400は、互いに組成が異なる複数種のトナーとすることができる。たとえば、粒子構造体を形成したときに青を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むトナーと、粒子構造体を形成したときに緑を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むトナーと、粒子構造体を形成したときに赤を観察可能な平均粒子径を有する構造色粒子を含むトナー、の組み合わせとすることができる。このような組み合わせを含むトナーセットによれば、広い色再現域のフルカラーの画像を形成することができる。
6.トナーを用いた画像形成方法
本発明のさらに他の実施形態は、上述したトナー400を用いて画像を形成する方法に関する。
本実施形態は、トナー400を使用してトナー像を形成する現像部を有することを除けば、トナーを用いる通常の画像形成装置と同様の装置によって行うことができる。トナー400が、コア部430に、上述した水溶性モノマー410および光重合開始剤420をさらに含有するとき、上記装置は、活性光線の照射により記録媒体に定着したトナー像を硬化させる光照射部をさらに備えていてもよい。
具体的には、上記画像形成装置600は、図6に示すように、像保持体610、帯電部620、潜像形成部630、現像部640、転写部650、および定着部660を有する。トナー400が、コア部430に、上述した水溶性モノマー410および光重合開始剤420をさらに含有するとき、画像形成装置600は、光照射部670をさらに備えていてもよい。画像形成装置600は、記録媒体供給部680および記録媒体排出部690などをさらに有してもよい。
また、具体的には、本実施形態に係る画像形成方法は、そのフローである図7に示すように、像保持体の表面を帯電する工程(工程S−710、以下、単に「帯電工程」ともいう。)と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する工程(工程S−720、以下、単に「潜像形成工程」ともいう。)と、前記静電潜像を上記トナー400でトナー像として現像する工程(工程S−730、以下、単に「現像工程」ともいう。)と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する工程(工程S−740、以下、単に「転写工程」ともいう。)と、熱圧力の印加により前記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる工程(工程S−750、以下、単に「定着工程」ともいう。)と、を含む。トナー400が、コア部430に、上述した水溶性モノマー410および光重合開始剤420をさらに含有するとき、本実施形態に係る画像形成方法は、活性光線の照射により前記定着したトナー像を硬化させる工程(工程S−760、以下、単に「硬化工程」ともいう。)をさらに含んでもよい。
なお、トナー400が水溶性モノマー410および光重合開始剤420を含有しないとき、本実施形態に係る画像形成方法は、図8に示すように、バインダーを形成する工程(工程S−770、以下、単に「バインダー形成工程」ともいう。)をさらに含んでもよい。バインダー形成工程は、上記画像形成装置600内にバインダー形成部(不図示)を設けて行ってもよいし、上記画像形成装置600から排出された、粒子構造体が形成された基材に対して、装置外で行ってもよい。なお、バインダーを有さない加飾体を形成するときは、バインダー形成工程は省略することができる。
以下、画像形成装置600の構成に即して、本実施形態の各工程を説明する。
6−1.帯電工程(工程S−710)
像保持体610は、正または負に帯電する有機感光体からなる公知の感光体ドラムとすることができる。感光体ドラムは、たとえばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体である。感光体ドラムは、一定の周速で回転可能に配置され、その周囲に、後述する帯電部620、潜像形成部630および現像部640が、この順番で回転方向に配置される。
帯電部620は、像保持体610の表面を、正または負の極性に、一様に帯電させる。帯電部620は、コロナ帯電器などの非接触型の帯電装置であってもよいし、帯電ローラー、帯電ブラシおよび帯電ブレードなどの帯電部材を感光体ドラムである像保持体610に接触させて帯電させる接触型の帯電装置であってもよい。
6−2.潜像形成工程(工程S−720)
潜像形成部630は、帯電部620によって帯電された像保持体610の表面に静電潜像を形成する。潜像形成部630は、レーザー光源、および上記レーザー光源からのレーザーを像保持体610の表面に結像させる回転ポリゴンミラーを組み合わせたレーザーROS(Raster Output Scanner)装置でもよいし、複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が直線状に配列されたLEDアレイ、および上記LEDアレイからの放射光を像保持体610の表面に結像させるレンズアレイ等を有するLEDプリントヘッドであってもよい。上記帯電された像保持体610の表面の形成すべき画像に応じた部位に、上記レーザーまたは光を照射することで、感光体上に、周囲との電位差により静電潜像が形成される。
6−3.現像工程(工程S−730)
現像部640は、上記トナー100、またはトナー100とキャリアとを組み合わせた現像剤、を収容する現像容器を備える。現像部640は、たとえば、上記現像容器の開口部に回転可能に配置されている現像ローラーおよび撹拌等によってトナーを帯電させる撹拌装置などを備えてもよい。上記現像容器の内部に収容され、必要に応じて撹拌装置などによって帯電されたトナー100が、現像ローラーによって上記像保持体610に向けて搬送されると、トナー100が上記静電潜像に静電的に付着して、静電潜像がトナー像として像保持体610の表面に現像される。上記トナー像は、各色を呈すべき領域に、呈される色味に対応する粒子径を有する構造色粒子を含有するトナー100が付着して形成された像である。後述する定着部による定着および光照射部による活性光線の照射により、粒子構造体が形成されて色味が観察可能となるため、上記トナー像から呈すべき色味が観察可能である必要はない。
カラー画像を形成するときは、画像形成装置600は、たとえば粒子構造体が形成されたときに赤、緑および青の各色を観察可能なトナー100をそれぞれの現像容器に収容する複数の現像部640を有する。このとき、画像形成装置600は、粒子構造体が形成されたときに黄を観察可能なトナー100を現像容器に収容する現像部640をさらに有してもよい。また、画像形成装置600は、粒子構造体が形成されたときに黄を観察可能なトナー100を現像容器に収容する現像部640を単独で有して、または染料または顔料などを含有する従来のトナーを現像容器に収容する現像部と組み合わせて、有していてもよい。このとき、画像形成装置600は、各色のトナー像が形成される複数の像保持体610を有し、それぞれの像保持体610から記録媒体または後述する二次転写ローラー653にトナー像を重畳して転写してもよい。
6−4.転写工程(工程S−740)
転写部650は、上記像保持体610の表面に現像されたトナー像を記録媒体の表面に転写する。転写部650は、搬送されてきた記録媒体と上記トナー像が形成された像保持体610とを圧接して上記トナー像を像保持体610から記録媒体に直接転写する転写ローラーを有する一段階式の転写ユニットでもよいし、一または複数の像保持体610の表面に現像されたトナー像が一次転写される転写ベルト651、転写ベルト651を支持し回転させつつ上記像保持体610に圧接して上記トナー像を一次転写させる一次転写ローラー652、および記録媒体を支持しつつ上記転写ベルト651に圧接して転写ベルト651の表面に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写ローラー653を有する二段階式の転写ユニット(図6参照)でもよい。上記各転写ローラーは、トナーと逆の電荷をかけて転写を容易にする構成でもよい
6−5.定着工程(工程S−750)
定着部660は、転写部650によって記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させる。たとえば、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱および加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。上記加熱および加圧によって、隣り合うトナー400のシェル部440に含まれる熱可塑性樹脂同士を融合させてシェル部を変形させて定着樹脂440aとし、トナー100を記録媒体の表面に定着させる。同時に定着樹脂440aに覆われた流動性のコア部430a内で構造色粒子100が少なくとも部分的に配列して粒子構造体が形成されはじめる。
定着部660による定着時の温度および圧力は、従来のトナーを定着するときの温度および圧力と同等の範囲から適宜選択することができる。
6−6.硬化工程(工程S−760)
光照射部670は、定着したトナー像に活性光線を照射して水溶性モノマー410を重合および架橋させて硬化させ、構造色粒子100が部分的に配列してなる粒子構造体415を保持してその形状を維持するバインダー430bを形成する。なお、粒子構造体415は、活性光線の照射前に形成されていてもよいし、活性光線の照射によって水溶性モノマー410が重合および架橋するときに形成されていってもよい。
構造色粒子による結晶構造の形成を抑制し、画像の角度依存性を低くする観点からは、活性光線は、トナー像の定着後0.001秒以上5.0秒以下の間に照射されることが好ましく、0.001秒以上2.0秒以下の間に照射されることがより好ましい。
上記活性光線は、たとえば、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などとすることができるが、紫外線が好ましい。
光源の輻射熱によって上記バインダーが溶けることによる硬化不良を生じにくくする観点からは、光照射部670は、LEDを光源とすることが好ましい。LED光源は、370nm以上410nm以下の波長を有する紫外線の画像表面におけるピーク照度が0.5W/cm以上10W/cm以下となるように設置され、1W/cm以上5W/cm以下となるように設置することがより好ましい。輻射熱がインクに照射されることを抑制する観点からは、記録媒体に転写されたトナー像に照射される光量は1500mJ/cm未満であることが好ましい。
6−7.バインダー形成工程(工程S−770)
本工程では、上記定着工程において形成された粒子構造体に、上述したバインダーの材料を塗布して固化させる。バインダーの材料は、上述したアクリル樹脂、セルロース、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンおよびエポキシ、ならびにこれらの前駆体などとすることができる。本工程では、これらの材料を塗布して粒子構造体の内部に浸透させ、その後、加熱乾燥などにより固化させて、バインダーを形成することができる。
6−8.その他
記録媒体供給部680は、たとえば、給紙カセット681または不図示の手差しトレイ、記録媒体を取り出すピックアップローラー682、取り出された記録媒体を用紙搬送路に送り出す給紙ローラー683、684および685、ならびに記録媒体を一時待機させた後に所定のタイミングで供給するレジストローラー686を備えた構成とすることができる。
記録媒体排出部690は、排紙ローラー691などを備えて、画像が形成された記録媒体を画像形成装置600の外部に排出する構成とすることができる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、様々な構造色粒子を作製して、これらの構造色粒子をバインダーの中に含ませたときに観察される構造色の反射率および鮮やかさを評価した。
1.構造色粒子の作製
以下の手順により、液中に分散している構造色粒子1〜構造色粒子12を作製した。
1−1.構造色粒子1
0.5Lの尿素水溶液(4.0mol/L)を密閉容器内で、100℃で6時間に加熱した後、室温まで冷却した。200mLの硝酸セリウム水溶液(0.8mol/L)に純水を加えて9.5Lとし、90℃に加熱した後、上記尿素水溶液を、1L/minの添加速度で添加して、混合液を得た。上記混合液を90℃で90分加熱撹拌した後、液中に析出した酸化セリウム粒子の前駆体をメンブランフィルターで分離した。上記分離した前駆体を600℃で焼成して酸化セリウム粒子を得た。上記酸化セリウム粒子を、分散液中の含有量が0.1質量%となるように1000gの水に分散させ、この分散液に10gのトリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)と0.5gのドーパミン塩酸塩を添加して室温で20時間撹拌した後、遠心分離によって精製して、酸化セリウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子1を作製した。
1−2.構造色粒子2
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液を塩化アルミニウム水溶液(0.8mol/L)に変更し、ドーパミン塩酸塩の添加量を0.5gから0.7gに変更し、さらに焼成温度を600℃から1000℃に変更した以外は同様にして、酸化アルミニウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子2を作製した。
1−3.構造色粒子3
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液を塩化亜鉛水溶液(0.8mol/L)に変更し、ドーパミン塩酸塩の添加量を0.5gから0.3gに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛からなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子3を作製した。
1−4.構造色粒子4
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液を塩化チタン水溶液(0.8mol/L)に変更し、焼成温度を600℃から1000℃に変更した以外は同様にして、酸化チタンからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子4を作製した。
1−5.構造色粒子5
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液を塩化ジルコニウム水溶液(0.8mol/L)に変更し、焼成温度を600℃から1000℃に変更した以外は同様にして、酸化ジルコニウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子5を作製した。
1−6.構造色粒子6
上記構造色粒子1の作製において、ドーパミン塩酸塩の添加量を0.5gから0.3gに変更した以外は同様にして、酸化セリウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子6を作製した。
1−7.構造色粒子7
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液と尿素水溶液との混合液を加熱撹拌する時間を120分にした以外は同様にして、酸化セリウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子7を作製した。
1−8.構造色粒子8
上記構造色粒子1の作製において、硝酸セリウム水溶液と尿素水溶液との混合液を加熱撹拌する時間を60分にした以外は同様にして、酸化セリウムからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子8を作製した。
1−9.構造色粒子9
1295gのエタノールおよび1008gのエチルシリケートをフラスコに仕込んで得られる第1の溶液を調製し、30℃に保温した。また、188gのエタノール、1865gの蒸留水、および250gのアンモニア水を別のフラスコに仕込んで得られる第2の溶液を調製し、30℃に保温した。その後、第2の溶液を第1の溶液に添加し、300rpmで撹拌して、単分散シリカ粒子が分散したシリカ分散液を得た。上記シリカ分散液を、分散液中の上記シリカ粒子の含有量が0.1質量%となるように1000gの水に分散させ、この分散液に10gのTrisと0.5gのドーパミン塩酸塩を添加して室温で20時間撹拌した後、遠心分離して、シリカからなるコア部をポリドーパミンからなるシェル部が被覆してなる構造色粒子9を作製した。
1−10.構造色粒子10
27.35gのスチレンモノマー、752.15gの水、および0.14gのp−スチレンスルホン酸ナトリウムを、4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度計を取り付けた1000mL容量セパラブルフラスコに投入して、攪拌しつつ窒素雰囲気下で温度70℃にて40分間攪拌した。その後、あらかじめ水に溶解させた過硫酸カリウム1.08gを上記セパラブルフラスコに投入し、常温で6時間静置して、スチレンとp−スチレンスルホン酸ナトリウムとが共重合してなる構造色粒子10を作製した。
1−11.構造色粒子11
800mLの水、200mLのメタノール、12gのTris、および1.2gのドーパミン塩酸塩をナスフラスコに投入して互いに溶解させ、室温にて20時間撹拌した後、遠心分離してポリドーパミンからなる構造色粒子11を作製した。
1−12.構造色粒子12
焼成して酸化セリウム粒子へのドーパミン塩酸塩による処理を行わなかった以外は上記構造色粒子1の作製と同様にして、酸化セリウムからなるコア部を有するが、シェル部を有さない構造色粒子12を作製した。
2.構造色粒子の評価
上記構造色粒子1〜構造色粒子12の屈折率、消衰係数、平均粒子径およびCV値を以下の方法で測定した。
2−1.屈折率および消衰係数
透明被膜形成用マトリックスの一種であるポリメタクリル酸メチル樹脂と、樹脂を溶解可能な溶媒(例えばN−メチルピロリドン)と、上記構造色粒子1〜構造色粒子12のコア粒子(ドーパミン塩酸塩を添加する前の分散液に含まれる粒子)それぞれとを、溶媒および構造色粒子が樹脂に対して所定の体積分率になるように混合し、被膜形成用塗料を作製した。上記塗料をスピンコーターによって基板上に塗工して塗膜を形成し、塗膜の屈折率および消衰係数を、分光エリプソメータ(堀場製作所製、製品名UVISEL)を用いて測定した。溶媒および構造色粒子のコア粒子の体積分率を数種類変化させて得た数個の屈折率値を、横軸が構造色粒子のコア粒子の体積分率、縦軸が屈折率となるようにグラフ上にプロットした。グラフ上にプロットされた点を直線で近似し、構造色粒子の体積分率が100%になる点まで上記近似直線を外挿し、その点における屈折率値をその構造色粒子のコア粒子の屈折率とした。消衰係数についても同様に近似直線を作成し、同様に外挿して得られる消衰係数値をその構造色粒子のコア粒子の消衰係数とした。
なお、本実施例においては、シェル部の厚みは構造色粒子の粒子径に対して比較的小さく、シェル部における光の消衰および屈折の影響は無視できる程度であるので、コア粒子の屈折率および消衰係数をその構造色粒子の屈折率および消衰係数とした。
2−2.平均粒子径
上記構造色粒子1〜構造色粒子12をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像して得た画像中から任意に選定した100個の粒子について、コア部の粒子径(粒子の長手方向の長さbと、それに対する短手方向の長さaとの平均値(a+(b/2))を実測し、それらの平均値を、その構造色粒子の平均粒子径とした。
2−3.CV値
上記構造色粒子1〜構造色粒子12をそれぞれSEMで撮像して得た画像中から任意に選定した300個の粒子について、コア部の粒度分布の標準偏差σおよび平均粒子径Dを求めて、(σ/D)×100(%)とした値を、その構造色粒子のCV値としたである。
2−4.シェル部の膜厚
上記構造色粒子1〜構造色粒子9をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像して得た画像中から任意に選定した100個の粒子のシェル部の膜厚を実測し、それらの平均値を、その構造色粒子のシェル部の膜厚とした。
3.加飾体の形成
以下の手順により、構造色粒子1〜構造色粒子12からなる粒子構造体がバインダーで保持された加飾体1〜13を作製した。
3−1.加飾体1〜加飾体8
遠心分離により30質量%に精製した構造色粒子1〜構造色粒子8のそれぞれを含有する分散液を用意し、30gの上記分散液と、10gのポリエチレングリコール#400ジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−400、屈折率:1.47)と、0.1gのBASF社製、IRGACURE 2959(「IRGACURE」は同社の登録商標)と、を混合して、構造色粒子を含む組成液を得た。
得られた組成液を、基材としての王子製紙株式会社製、POD128gグロスコート(坪量:128g/m)上にワイヤーバーで均一に塗布し精置して、溶媒を蒸発させた。その後、ポリエチレングリコール#400ジアクリレートを塗布し、アイグラフィックス社製のメタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力:120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で0.5J/cmの光を照射してポリエチレングリコール#400ジアクリレートを硬化させ、加飾体1〜加飾体8を得た。
3−2.加飾体9
上記構造色粒子として構造色粒子1を用い、上記ポリエチレングリコール#400ジアクリレートをエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−BPE−10、屈折率:1.52)に変更した以外は加飾体1と同様にして、加飾体9を得た。
3−3.加飾体10〜加飾体13
上記構造色粒子として構造色粒子9〜12を用いた以外は加飾体1と同様にして、加飾体10〜13を得た。
加飾体1〜加飾体13における、構造色粒子の番号、消衰係数、屈折率、コア部の材料、平均粒子径およびCV値、ならびにシェル部の膜厚、ならびにバインダーの材料および屈折率を、表1に示す。なお、表1中、バインダーの材料欄における「A−400」はポリエチレングリコール#400ジアクリレートを、「A−BPE−10」はエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートを、それぞれ表す。
Figure 2018002929
4.加飾体の評価
加飾体1〜加飾体13を、以下の基準により評価した。
4−1.ピーク波長
三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所社製、GCMS−4)を用いて、加飾体1〜加飾体13のそれぞれに光を入射したときの正反射角での反射光の分光反射スペクトルを測定した。分光反射スペクトルは、入射光の入射角を−85°〜85°の範囲で1°ごとに変えて、400〜700nmの波長範囲で測定した。なお、入射角及び正反射角は、それぞれ測定対象の表面の法線に対する入射光及び正反射光の角度である。いずれの加飾体から得られた分光反射スペクトルにも明確なピークが1つ見られた。上記ピークが見られた波長を、その加飾体のピーク波長とした。
4−2.反射率
三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所社製、GCMS−4)を用いて、加飾体1〜加飾体13のそれぞれに白色光を入射したときの正反射角での反射率(%)を測定した。なお、入射角及び正反射角は、それぞれ測定対象の表面の法線に対する入射光及び正反射光の角度である。
4−3.色味
加飾体1〜加飾体13の色味を目視で評価した。
加飾体1〜加飾体13の評価結果を表2に示す。
Figure 2018002929
消衰係数が0.1以下であり、かつ、屈折率が1.7以上であるコア部と、ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下のシェル部と、を含むコアシェル型の構造色粒子からなる粒子構造体を含む加飾体1〜加飾体9は、バインダーで保持しても反射率が35%以上と高く、かつ鮮やかな色味が観察された。
一方で、構造色粒子のコア部の材料の380〜780nmの光に対する屈折率が1.7未満である加飾体10は、反射率が低く、不鮮明な構造色しか観察されなかった。また、構造色粒子がシェル部を有しない加飾体11および加飾体13は、おそらくは散乱光が多く生じたため、構造色が白っぽくなり不鮮明であった。また、構造色粒子のコア部の材料の消衰係数が0.1未満である加飾体12は、おそらくは生じる干渉光が少ないため、構造色が黒っぽくなり不鮮明であった。
[実施例2]
実施例2では、上述した構造色粒子を含むトナーを作製して、このトナーを用いて形成した画像から観察される構造色の反射率および鮮やかさを評価した。
1−1.熱可塑性樹脂の合成
三ツ口フラスコに30質量部のコハク酸、33質量部の1,2−プロパンジカルボン酸、15質量部のエチレングリコール、18質量部のプロピレングリコール、および4質量部のポリエチレングリコール(重量平均分子量600)を投入した後、触媒として0.5質量部のテトラブトキシチタネートをさらに添加した。減圧操作で上記三ツ口フラスコ内の空気を減圧して窒素ガスで不活性雰囲気に置換した後、生成する水を留去しながら、上記三ツ口フラスコ内を230℃で5時間撹拌した。その後、空冷して、減圧を解除して反応を停止させて、ポリエステル樹脂を得た。
1−2.第1乳化液を調製する工程
30gの上記構造色粒子1の分散液(30質量%に精製)、30gの水溶性モノマーとしてのポリエチレングリコール#400ジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−400)、0.3gの光重合開始剤としてのBASF社製、IRGACURE 2959、および39.7gの水を混合して第1の水相液を作製した。さらに、30gの上記コア組成液、47gの溶媒としての酢酸エチル、8gの第1の乳化剤としての花王株式会社製、レオドールAO−15V(「レオドール」は同社の登録商標)、15gの上記ポリエステル樹脂、1.2gの離型剤としてのパラフィンワックスを混合した後、10分間超音波を照射してO/Wエマルションを形成し、第1乳化液を得た。
1−3.第2乳化液を調製する工程
セパラブルフラスコ中で792gの純水に第2の乳化剤としての8gの阪本薬品工業社製、SYグリスター MSW−7Sを溶解して第2の水相液を調整した。撹拌翼で撹拌されている上記第2の水相液に80gの上記第1乳化液を滴下してW/O/Wエマルションを形成し、第2乳化液を得た。
1−4.分離する工程
上記第2乳化液からエバポレーターにより有機溶剤成分を除去した後、メンブレンフィルターを用いてろ過し、粒子を得た。光学顕微鏡で確認したところ、得られた粒子の平均粒子径は30μmであった。さらに得られたトナー粒子を24時間常温乾燥することでトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の平均粒子径は9μmであった。
1−5.外添剤を付与する工程
乾燥させたトナー粒子に、1質量%の疎水性シリカ(数平均一次粒子径:12nm)および0.3質量%の疎水性チタニア(数平均一次粒子径:20nm)を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナーを得た。
1−6.現像剤の製造
100質量部の磁性粒子としてのフェライト粒子と5質量部のシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用で上記フェライト粒子の表面に上記共重合体樹脂によるコート層を形成させて、体積基準のメジアン径が50μmであるキャリアを得た。
なお、キャリアの体積基準のメジアン径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「シンパティック社製、ヘロス(HELOS)」により測定した。
上記トナーに対して、トナーの濃度が6質量%となる量の上記のキャリアを添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社製)によって回転速度45rpmで30分間混合して、現像剤を製造した。
2.画像形成
上記現像剤を、市販のカラー複合機(コニカミノルタ社製、bizhub PRO C6500(「bizhub」は同社の登録商標)に装填して、記録媒体としての王子製紙社製、POD128gグロスコート(坪量:128g/m)上に、トナー付着量が4g/mのベタ画像を出力した。その後、出力画像に対してLEDの紫外線ランプ(株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション製、LTD100)からの露光面照度1、200mW/cmに集光したUV光の照射が始まるように照射し、画像を固定化させた。
実施例1における加飾体の評価と同様に、上記得られた画像を評価したところ、ピーク波長は540nmであり、反射率は41%であり、目視により鮮やかな緑が観察された。
[実施例3]
実施例3では、上述した構造色粒子を含むインクジェット用インクを作製して、このインクジェット用インクを用いて形成した画像から観察される構造色の反射率および鮮やかさを評価した。
20gの上記構造色粒子1の分散液(30質量%に精製)、溶媒としての56gの水、それぞれ有機溶剤としての5gのエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、5gの1,3−ブタンジオールおよび10gのプロピレングリコール、ならびにピニング剤(ゲル化剤)としての4gのパルミチン酸デキストリンを混合して、インクジェット用インク1を得た。インクジェット用インク1の粘度は6mPa・sだった。
20gの上記構造色粒子1の分散液(30質量%に精製)、それぞれ光重合性化合物としての20gのトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルA−DCP)、20gのポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社、NKエステルA−400)、35gのフェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートPO−A(「ライトアクリレート」は同社の登録商標))、光重合開始剤としての1gのBASF社製、IRGACURE 2959、ならびにピニング剤(ゲル化剤)としての4gのパルミチン酸デキストリンを混合して、インクジェット用インク2を得た。インクジェット用インク2の粘度は11mPa・sだった。
なお、インクジェット用インク1およびインクジェット用インク2の粘度は、振動式粘度計(セコニック社製、VISCOMATEMODEL VM−10A)を用いて測定した。測定温度は25℃とし、振動子を液体に浸漬してから、1分後の測定値をそれぞれのインクの粘度とした。
上記インクジェット用インクを搭載したピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、フィルム基材(有限会社シィーアールディー製、ソフトアクリルSA−00)の表面に、上記インクジェット用インクによるベタ画像を形成した。上記インクジェット記録装置は、インクタンク、インク供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、およびピエゾ型のインクジェットヘッドを、インクが流通する上流側から下流側に向けて、この順で有していた。また上記インクジェットヘッドは、液滴量14pl、印字速度0.5m/sec、射出周波数10.5kHz、印字率100%となる条件で駆動して、インク組成物の液滴を吐出させた。
実施例1における加飾体の評価と同様に、上記得られた画像を評価したところ、インクジェットインク1でピーク波長は540nmであり、反射率は45%であり、目視により鮮やかな緑が観察された。また、インクジェットインク2ではピーク波長は540nmであり、反射率は43%であり、目視により鮮やかな緑が観察された。
本発明の構造色粒子によれば、彩度が高く、かつ明度も高いため鮮やかな色味の構造色を観察可能な粒子構造体を形成することができる。そのため、本発明は、構造色によって色調を表示するハードコピー関する技術の進展および普及に貢献することが期待される。
100 構造色粒子
110 構造色粒子のコア部
120 構造色粒子のシェル部
200 加飾体
210 粒子構造体
220 バインダー
230 基材
400 トナー
410 水溶性モノマー
415 粒子構造体
420 光重合開始剤
430 トナーのコア部
430a 定着したトナーのコア部
430b バインダー
440 トナーのシェル部
440a 定着樹脂
600 画像形成装置
610 像保持体
620 帯電部
630 潜像形成部
640 現像部
650 転写部
651 転写ベルト
652 転写ローラー
653 二次転写ローラー
660 定着部
670 光照射部
680 記録媒体供給部
681 給紙カセット
682 ピックアップローラー
683 給紙ローラー
684 給紙ローラー
685 給紙ローラー
686 レジストローラー
690 記録媒体排出部
691 排紙ローラー

Claims (18)

  1. 構造色を観察可能な粒子構造体を形成可能な粒子において、
    コア部と、
    ポリドーパミンまたはその誘導体から形成される、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下のシェル部と、を含み、
    波長380nm以上780nm以下の光に対する消衰係数が0.1以下であり、かつ、波長380nm以上780nm以下の光に対する屈折率が1.7以上である、粒子。
  2. 前記コア部の平均粒子径は100nm以上500nm以下である、請求項1に記載の粒子。
  3. 前記コア部の粒子径の変動係数(CV値)は10.0%以下である、請求項1または2に記載の粒子。
  4. 前記コア部は、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムからなる群から選択される1または複数の材料を主成分として含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子が少なくとも部分的に配列してなるアモルファス構造の粒子構造体を含む、加飾体。
  6. 波長380nm以上780nm以下の光に対する吸光度が0.01以下のバインダーをさらに含む、請求項5に記載の加飾体。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子、および溶媒を含む、インク組成物。
  8. ピニング剤をさらに含み、かつ、前記組成物の80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下である、請求項7に記載のインク組成物。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子と溶媒とを混合する工程を含む、インク組成物の製造方法。
  10. 前記混合する工程において、さらにピニング剤を混合する、請求項9に記載のインク組成物の製造方法。
  11. 請求項7または8に記載のインク組成物、または請求項9または10に記載の方法で製造したインク組成物、を基材の表面に付着させる工程を含む、画像形成方法。
  12. 前記インク組成物は、ピニング剤を含み、
    前記付着させる工程は、インクジェットヘッドのノズルから前記インク組成物を吐出して前記基材の表面に着弾させる工程である、請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子を含むトナー。
  14. 水溶性モノマー、光重合開始剤および前記粒子を含む、流動性のコア部と、
    熱可塑性樹脂を含むシェル部と、
    を含む、請求項13に記載のトナー。
  15. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子を含有する第1の水相液と、熱可塑性樹脂および第1の乳化剤を含有する油相液と、を混合して、油中水(W/O)型エマルションである第1乳化液を調製する工程と、
    前記第1乳化液と、第2の乳化剤を含有する第2の水相液と、を混合して、水中油中水(W/O/W)型エマルションである第2乳化液を調製する工程と、
    前記第2乳化液をから粒子状のトナーを分離する工程と、
    を含む、トナーの製造方法。
  16. 前記第1の水相液は、水溶性モノマーおよび光重合開始剤をさらに含有する、請求項15に記載のトナーの製造方法。
  17. 像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電部と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写部と、熱圧力の印加により前記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる定着部と、を備える画像形成装置を用いる画像形成方法において、
    前記像保持体の表面を帯電する工程と、
    帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する工程と、
    請求項13に記載のトナー、または請求項15に記載の方法で製造したトナーで、前記静電潜像をトナー像として現像する工程と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する工程と、
    熱圧力の印加により前記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる工程と、
    を含む画像形成方法。
  18. 前記画像形成装置は、活性光線の照射により前記定着したトナー像を硬化させる光照射部をさらに備え、
    前記トナーは、水溶性モノマー、光重合開始剤および前記粒子を含む、流動性のコア部と、熱可塑性樹脂を含むシェル部と、を含み、
    前記方法は、活性光線の照射により前記定着したトナー像を硬化させる工程をさらに含む、
    請求項17に記載の画像形成方法。
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