JP2017532274A - フレキシブル薄型ガラスの切断において高エッジ強度を生み出す方法および装置 - Google Patents

フレキシブル薄型ガラスの切断において高エッジ強度を生み出す方法および装置 Download PDF

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Abstract

ガラスにレーザビームを適用してレーザをガラスに対して切断ラインに沿って連続的に動かすことにより、厚さ約0.3mm以下のガラスシートで所望の最終形状を切断する。レーザは円形形状のものであり、またガラスで破断を伝播させるために冷却流体がガラスの温度を少なくとも減少させるよう、レーザの適用と同時に冷却流体を適用する。この方法は、ガラスの切断エッジのB10エッジ強度が少なくとも約300MPaになるように、(i)レーザのエネルギー密度、(ii)切断ラインに沿った、ガラスに対するレーザの速度、(iii)冷却流体の流量、および(iv)切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するステップを含む。

Description

関連出願の説明
本出願は、その内容が引用され、その全体が参照することにより本書に組み込まれる、2014年8月20日に出願された米国仮特許出願第62/039667号の優先権の利益を米国特許法第119条の下で主張するものである。
本開示は、フレキシブル薄型ガラスの切断において高エッジ強度を生み出す方法および装置に関する。
フレキシブルプラスチック基板を切断する従来の製造技術が既に開発されているが、この場合のプラスチック基板は、1以上のポリマー膜と共に積層されたプラスチックベースの材料を採用したものである。こういった積層構造は、主にその比較的低いコストと明らかに信頼できる性能のために、光起電(PV)装置、有機発光ダイオード(OLED)、液晶ディスプレイ(LCD)、およびパターン化薄膜トランジスタ(TFT)エレクトロニクスに関連する、フレキシブルパッケージングにおいて一般的に使用されている。前述のフレキシブルプラスチック基板は広く使われるようになったが、それでもなおこれらの基板は、少なくとも水分バリアの提供と極薄構造の提供に関して、不十分な特性を呈している(実際に構造は、プラスチック材料の性質により比較的厚い)。
従って当技術では、特に基板が水分バリアを提供するべきであり、また基板が自由な形の形状に成形される場合に、例えばPV装置、OLED装置、LCD、TFTエレクトロニクス等において使用されるフレキシブル基板を製造するための新たな方法および装置が必要である。
本開示は、比較的薄型のフレキシブルガラスシート(おおよそで、約0.05mmから約0.3mm、好適には約0.075mmから約0.250mmの間)を採用し、かつこのガラスシートを、真っ直ぐな部分だけではなく湾曲した部分を含み得る、自由な形のラインに沿って切断するものに関する。
フレキシブルガラス基板は、今日使用されている既存のフレキシブルプラスチック基板を上回るいくつかの技術的利点を提供する。1つの技術的利点は、電子機器の屋外用途における主要な劣化機構である水分または気体バリアとして優れた働きをする、ガラス基板の能力である。別の利点は、パッケージ基板の1以上の層を減少させるまたは排除することによる、最終的な製品の全体のパッケージサイズ(厚さ)および質量を減少させる、フレキシブルガラス基板での可能性である。より薄い(本書で述べる厚さの)フレキシブル基板を求める要求が電子ディスプレイ産業において増加しているため、製造業者らは、適切なフレキシブル基板を提供するためにいくつかの課題に直面している。
PV装置、OLED装置、LCD、TFTエレクトロニクス等のためのフレキシブルガラス基板の製造における重要な課題は、比較的大きい薄型ガラスシートのソースを、種々の寸法および形状を有するより小さい個別の基板に、厳しい寸法公差、優れたエッジ品質、さらに高エッジ強度で切断することである。実際には望ましい製造要件は、場合によっては半径が変化する(例えば、丸みを帯びた角部のための)少なくともいくつかの丸みを帯びたおよび/または湾曲した区域を切断ラインが含む場合に、この切断ラインを妨害することなく、ソースガラスシートからガラスの部分を連続的に切断すること、また例えば、おおよそで少なくとも約300MPaから約500MPa、好適には少なくとも約400〜500MPa、より好適には少なくとも約450MPaの、非常に優れたエッジ強度およびエッジ品質を生み出すことである。
不規則な(自由な形の)形状の連続的な切断のための既存の機械的技術は、(罫書きホイールでの)罫書きと機械的割断(または折割)を提供するものであるが、このような機械的技術によって達成されるエッジ品質および強度は、精度が要求される多くの用途にとって十分なものではない。実際に、機械的罫書きおよび割断の手法では、ガラス粒子および製造不良が発生し、これにより製造工程の歩留まりが減少し、また製造サイクル時間が増加している。
1以上の本書における実施形態によれば、レーザ切断技術を採用して薄型ガラスシートを所望の形状に切断する。レーザを使用するガラス切断技術は既知であるが、本書で論じる厚さの薄型フレキシブルガラスの切断は、特に厳しい寸法公差および高エッジ強度が必須の製造目標である場合、かなりの課題を呈する。従来のレーザ罫書きおよび機械的割断プロセスは、厚さが約0.3mm未満、特に0.05mmから0.3mmの範囲のガラスシートでは、信頼性を持って採用することは略不可能である。実際に、約0.3mm未満のガラスシートは比較的薄い形状のためにシートの剛性が非常に低く(すなわちシートは柔軟である)、レーザ罫書きおよび折割切断プロセスは、熱座屈、機械的変形、気流、内部応力、ガラスの反り、および多く他の因子によって容易に悪影響を受ける。
対照的に本書における実施形態では、事実上任意の軌道に沿って、ソースガラスシートからの自由な形の形状のワンステップの完全分離を達成する、所望形状の極薄(0.05mm〜0.3mm)フレキシブルガラスをもたらすレーザ切断技術が示される。
新たな方法論および装置は、レーザ(例えばCO2レーザビーム)と、同時に提供される冷却流体(例えば、例として空気などの気体)とによって、ソースガラスシートにおける亀裂の伝播を実現する。亀裂の開始は、例えば機械的な工具または別のレーザを用いて達成され、また好適には所望の切断ラインの外縁の外側に配置される。この方法論および装置は、厚さが0.3mm未満、例えば約0.05mmから0.3mmの間、および/または約0.075mmから0.250mmの間の、薄型および極薄のガラスシートに適用された場合に特に望ましい結果を達成する。特に、より薄いガラスシートの切断が可能であり、またより厚いガラスシート(すなわち、約0.3mm超)の切断も可能であるが約0.3mm未満のガラスシートで達成されるエッジ強度の結果を依然として得るためには、特定のパラメータを調整することが必要になり得る。さらに、この方法論および/または装置は、2点曲げ試験による測定で、少なくとも約300MPaから約500MPa、好適には少なくとも約400〜500MPa、より好適には少なくとも約450MPaの、エッジの強度および品質を達成する。
本書における実施形態の利点としては、(i)非常に優れた寸法安定性、(ii)清浄なままで真っ直ぐな切断エッジ、(iii)湾曲したエッジでの低損傷エッジ、(iv)高エッジ強度、(v)たとえあったとしても低いエッジ劣化および/または部品劣化、(vi)清浄度の向上、(vii)完成した部品のロバスト性および/または完全性の増加、(viii)非常に要求が厳しい顧客の要件を満たすおよび/または超えること、(ix)処理による表面損傷を排除する非接触方法論の提供が挙げられる。
他の態様、特徴、および利点は、添付の図面と共に本書の説明から当業者には明らかであろう。例えば種々の特徴は、以下の態様において明記されるように、任意の組合せで組み合わせてもよいし、また全て組み合わせてもよい。
第1の態様によれば方法が提供され、この方法は、
ソースガラスシートを支持し、所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを画成するステップ、
ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用して、このレーザビームをガラスシートに対して切断ラインに沿って連続的に動かし、切断ラインの位置でガラスシートの温度を上昇させるステップ、
切断ラインに沿ってガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体がガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、レーザビームの適用と同時に冷却流体を適用するステップ、
ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)レーザビームのエネルギー密度、(ii)切断ラインに沿った、ガラスシートに対するレーザビームの速度、(iii)冷却流体の流量、および(iv)切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するステップ、および、
ガラスシートから不用のガラスを分離して、所望の形状を得るステップ、
を含む。
第2の態様によれば、ガラスシートが、(i)厚さ約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)厚さ約0.075mm〜約0.250mmの間、のうちの一方である態様1の方法が提供される。
第3の態様によれば、エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様2の方法が提供される。
第4の態様によれば、エネルギー密度が、レーザビームの出力レベル(J/s)を、切断ラインに沿ったガラスシートに対するレーザビームの速度(mm/min)で割ったものになるように定義されることを特徴とする態様3の方法が提供される。
第5の態様によれば、切断ラインに沿ったガラスシートに対するレーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様2から4のいずれか1つの方法が提供される。
第6の態様によれば、切断ラインに沿った、ガラスシートに対するレーザビームの速度が≦1100mm/minであり、かつアレスト性異常の数が<1である、態様5の方法が提供される。
第7の態様によれば、冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm(L/min)、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様2から4のいずれか1つの方法が提供される。
第8の態様によれば、流体が空気である態様7の方法が提供される。
第9の態様によれば、切断ラインの最小曲率半径が、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様2から8のいずれか1つの方法が提供される。
第10の態様によれば、レーザビームの直径が、(i)約1mmから約4mmの間、および(ii)2mm、のうちの一方である態様1から9のいずれか1つの方法が提供される。
第11の態様によれば、冷却流体がガラスシートに向けてレーザビームの周りに環状に導かれる、態様1から10のいずれか1つの方法が提供される。
第12の態様によれば、ガラスシートを所望の形状に切断する装置が提供され、この装置は、
所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを含んでいるガラスシートを、支持するように動作する、支持台、
ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用するように動作する、レーザ光源であって、このレーザビームをガラスシートに対し切断ラインに沿って連続的に動かして、切断ラインの位置でガラスシートの温度を上昇させる、レーザ光源、
切断ラインに沿ってガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体がガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、レーザビームの適用と同時に冷却流体を適用するように動作する、冷却流体源、
ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)レーザビームのエネルギー密度、(ii)切断ラインに沿った、ガラスシートに対するレーザビームの速度、(iii)冷却流体の流量、および(iv)切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するように動作する、コントローラ、
を備えている。
第13の態様によれば、ガラスシートが、(i)厚さ約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)厚さ約0.075mm〜約0.250mmの間、のうちの一方である態様12の装置が提供される。
第14の態様によれば、エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様13の装置が提供される。
第15の態様によれば、エネルギー密度が、レーザビームの出力レベル(J/s)を、切断ラインに沿ったガラスシートに対するレーザビームの速度(mm/min)で割ったものになるように定義されることを特徴とする態様14の装置が提供される。
第16の態様によれば、切断ラインに沿ったガラスシートに対するレーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様13から15のいずれか1つの装置が提供される。
第17の態様によれば、切断ラインに沿ったガラスシートに対するレーザビームの速度が≦1100mm/minになるように制御され、かつアレスト性異常の数が<1である、態様16の装置が提供される。
第18の態様によれば、冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様13から17のいずれか1つの装置が提供される。
第19の態様によれば、流体が空気である態様18の装置が提供される。
第20の態様によれば、切断ラインの最小曲率半径が、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御される態様13から19のいずれか1つの装置が提供される。
第21の態様によれば、レーザビームの直径が、(i)約1mmから約4mmの間、および(ii)2mm、のうちの一方である態様12から20のいずれか1つの装置が提供される。
第22の態様によれば、冷却流体がガラスシートに向けてレーザビームの周りに環状に導かれる、態様12から20のいずれか1つの装置が提供される。
説明のために現在の好適な形態を図面に示すが、本書で開示および説明される実施形態は、図示の正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
本書で開示される1以上の切断方法論および装置を用いて製造された、薄型ガラス基板の上面図 図1のガラス基板を製造することができるソースガラスシートの上面図 ガラスシートからガラス基板を切断するために使用され得る装置の概略図 レーザビームのエネルギー密度とガラス基板の圧縮ハックルとの間の関係のプロット レーザビームの速度とガラス基板の圧縮ハックルとの間の関係のプロット 冷却流体の流量と、その結果生じたガラス基板の圧縮ハックルとの間の関係のプロット ガラスシートの上方から適用される冷却流体の機械的影響の局所的側面図 切断ラインの半径と、その結果生じたガラス基板の圧縮ハックルとの関係を示したプロット レーザプロセスを用いて切断されたガラス基板のエッジ強度、特に破壊可能性対最大応力を示したプロット 機械的プロセスを用いて切断されたガラス基板のエッジ強度、特に破壊可能性対最大応力を示したプロット
図面を参照すると、図1には本書で開示される1以上の切断方法論および装置を用いて製造された、薄型ガラス基板10の上面図が示されている。図面では、同様の要素を同じ番号で示す。ガラス基板10のいくつかの特性は、本書の開示を考慮するときに重要である。第1にガラス基板10(およびガラス基板10が切断されるソースガラスシート)は、(i)約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)約0.075mm〜約0.250mmの間の厚さを有する、薄いおよび/または極薄いものである。亀裂伝播に関連するエッジ欠陥の最小化および高強度などの、本書で論じられる有利なエッジ特性は、これらの厚さで得られるが、ガラス基板10は上記の範囲よりも薄いおよび/または厚いものでもよい。他の厚さおよび/またはガラス組成では論じられるいくつかのパラメータ(エネルギー密度、切断速度、冷却流体流量、および/または曲率半径)を調整することが必要になり得るが、依然として望ましい結果が得られる。第2にガラス基板10は、1以上の曲率半径を有する、例えば少なくとも1つの湾曲部分を含む、また実際には複数の湾曲部分を含む可能性もある、自由な形の形状と考えることができる。例えば図示のガラス基板10は4つの丸みを帯びた角部を有しているが、例えば丸みを帯びた角部、鋭利な角部、真っ直ぐな面取りした角部などを混合して有する、任意の他の形状を採用してもよい。第3にガラス基板10は、薄いソースガラスシートから所望の形状が得られる、ワンステップの完全分離切断方法論によって形成されるよう意図されている。
さらなる議論の対象になるガラス基板10の別の特性は、切断エッジの品質および強度である。特にエッジ強度は、基板が2点曲げ試験を受けた場合、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つとなる。2点曲げ試験は、Suresh Gulati他による「薄型ガラス基板の2点曲げ(Two Point Bending of Thin Glass Substrate)」と題される論文、Society for Information Display(SID)2011年ダイジェスト(Digest)、p.652〜654において説明されているように実行した。このような高エッジ強度と比較的薄型のガラス基板10との組合せは、これまで得られていなかった。
ここで図2〜3を参照すると、図1のガラス基板10を製造することができるソースガラスシート20の上面図と、ガラスシート20からガラス基板10を切断するために使用され得る装置の概略図が夫々示されている。本書で開示される新たな方法論および装置は、レーザ(例えばCO2レーザビーム)と、同時に提供される冷却流体(例えば、空気などの気体)とを用いてソースガラスシートに亀裂を伝播させることにより、ガラス基板10の切断を実現する。一般にこのように配置することで、ガラスシート20からガラス基板10を分離するべく、所望の切断ラインに沿ってソースガラスシート20に制御された亀裂伝播をもたらす。亀裂の開始、伝播、および終了を実行するための方法論および装置のより詳細な議論は、本説明において後に提供する。
プロセスの最初の段階として、(前述した厚さの)ソースガラスシート20を適切な支持構造102上で支持し、さらに、閉じたパターンを確立する、ガラス基板10の所望の最終形状を囲む自由な形の切断ライン(図2の点線)を画成する。支持構造102は、レーザ切断のための位置にガラスシート20を移動させること、次いで(切断プロセスが完了した後に)さらなる処理のためにガラス基板10を移動させることを、可能にするように構成され得る。この目的のために支持構造102は、個別の空気孔および真空孔を備えた市販されている加圧/真空テーブルなどの、エアベアリング機構を含み得る。支持構造102は、(i)ガラスシート20およびガラス基板10の輸送のための、エアベアリングモード、および(ii)レーザ切断の際にガラスシート20を保持するための、エアベアリングと真空を組み合わせたモードを提供することができる。
エアベアリングモードは、ガラスシート20の1以上の夫々の部分に、冷却流体62およびレーザビーム60とは反対側のガラスシート20の面(下面)から、切断ラインに少なくとも近接して、ただし好適には、はるかに大きいエリアに亘って、支持流体を適用することによって特徴付けられる。エアベアリングの支持流体は、表面の多孔性と様々な圧力および流量の流体源(図示なし)とを使って、支持構造102の表面から送出される。エアベアリングモードは、レーザビーム60がガラスシート20の温度を上昇させ、かつ冷却流体62が支持流体とは対向する形で導かれると、ガラスシート20を支持構造102のテーブル表面から離すよう付勢するように動作する。エアベアリングおよび真空モードは、(上で論じた)正の流圧と、ガラスシート20に対する負の流圧および流れとの両方を実現するものであり、それによりガラスシート20を支持構造102の表面に対して特定の浮揚高さで付勢したり、また保持したりする。
最初の亀裂がガラスシート20上で短い長さで開始されると、続いて前述したレーザ切断技術を用いてこれを伝播させる。一般にガラスシート20は、機械的罫書き機器、例えば罫書きホイールを用いて、開始ライン(最初の亀裂)の位置で罫書きされる。あるいは、レーザを用いて亀裂または傷の開始点を形成して、説明されるレーザ技術で伝播させてもよい。亀裂の開始および続く亀裂の伝播の重要性を認識するために、レーザ切断技術に関するより詳細な議論を最初に提供する。
レーザビーム60を使用してガラスシート20の局所的エリアを加熱し、次いで冷却流体62を用いてそのエリアを、結果として得られる温度勾配によって一時的な引張応力を生成するよう急速冷却する。前述の最初の亀裂(開始ライン)は、ガラスシート20の表面に小さい最初の傷を生じさせることにより生成され、これを次いで、レーザビーム60を用いた局所的ゾーンの加熱と、冷却流体62により生み出される急冷作用を用いたそのゾーンの冷却とにより伝播させて、割れ目(亀裂)へと変形させる。このプロセスの際に生成される引張応力σは、α×E×ΔTに比例し、ここでαはガラスシート20の線熱膨張係数、Eはガラスシート20の弾性係数、さらにΔTは(レーザによる)加熱および(流体による)冷却により生成された、ガラスシート20の表面の温度差である。引張応力は、ガラスシート20の分子結合よりも高くなるように制御される。所与のα×Eの引張応力に対し、レーザビーム60を用いてガラスシート20をより高い温度へと加熱することで、σを増加させることができる。説明される方法では、割れ目の深さがガラスシート20の厚さに等しい、フルボディガラス分離(切断)を使用する。
レーザビーム60は、レーザエネルギー供給源64と、折り返し光学素子66と、集束光学素子68とを用いて実装され得る。ガラスシート20へのレーザビーム60の適用を開始ライン(最初の亀裂)の位置で始めると、亀裂の伝播が始まる。ガラスシート20に対し切断ラインに沿ってレーザビーム60を連続的に動かして、切断ラインの位置でガラスシート20の温度を(好適には実質的に一貫した温度へと)上昇させる。前述の引張応力を誘起して切断ラインに沿ってガラスシート20に亀裂(すなわち破断または割れ目)を伝播させるべく、冷却流体62がガラスシート20に温度差を生じさせるようレーザビーム60に対して同時に冷却流体62を(ノズル70を用いて)適用する。ガラスシート20に対するレーザビーム60およびノズル70の動きは、レーザおよびノズルを静止したシートに対して動かすもの、静止したレーザおよびノズルに対してシートを動かすもの、または上記搬送機構の両方の組合せを含むものなど、任意の既知の搬送機構によって実現することができる。
レーザビームのサイズ、レーザビームの形状、および冷却流体の送出、の特定の組合せが、亀裂の開始、伝播、および終了に好ましい形で影響を与える。この意図される組合せを理解するために、従来のレーザビーム構成の簡潔な議論を提供する。特に従来の構成は、種々の寸法の細長いレーザビームと、これに続く冷却流体とを含み、このとき冷却流体の供給源は、細長いレーザビームに対して、位置をずらした直線関係(追跡する構成)で位置付けられる。この従来の配置(細長いレーザビームと、冷却剤の追跡)は、真っ直ぐなレーザ切断(または罫書き)にとっては非常に効率的であるが、これでは亀裂伝播の方向を変えることができず、従って湾曲した亀裂伝播は不可能である。湾曲した自由な形のレーザ切断は、円い形状のレーザビーム60を、(冷却剤供給源のノズル70を用いて達成される)環状、円形、リング状の冷却剤流体62で囲んで用いることで達成することができる。円形のレーザビーム60と環状の冷却剤ゾーン62とを合わせたものは、いかなる既定のまたは固有の向きも示さないため、これを用いて亀裂を任意の方向に(いかなる複雑なビーム成形技術も用いる必要なく、あるいはノズル70の移動のためにいかなる追加の動作軸も提供する必要なく)伝播させることができる。
レーザパワー64の供給源はCO2レーザ機構を用いて実装され得るが、例えばファイバレーザ、Nd:YAGレーザ、または他のレーザ系など、他の実装も可能である。使用されるレーザ系のタイプは、切断される材料の組成および特性に合うものとすることができる。レーザが、基板内に広く存在している応力(基板内のこの応力は、自然に存在しているものでもよいし、あるいは例えば化学的または熱的強化によって生じたものでもよい)に打ち勝つのに十分な熱応力を誘起できるものであれば、基板を切断することができる。二酸化炭素レーザは10.6μmの波長で動作し、これはディスプレイタイプのガラス、例としてニューヨーク州コーニング所在のコーニング社から入手可能なコーニング(登録商標)コードEAGLE XG(登録商標)ガラスなど、例えば無アルカリのアルミノホウケイ酸ガラスに対してよく機能する。一般に、本書で開示される直径を有するレーザビーム60を用いると、亀裂伝播に関連するエッジ欠陥を最小化する(ビーム直径が小さくなればなるほど、不安定な亀裂伝播ゾーンが小さくなる)、また小さい直径のビームを用いた場合でさえ適度に高速の切断スピードを維持し、比較的短い処理時間および高スループットをもたらすなど、特定の有利な効果が可能となる。
図4〜7を参照し、切断プロセス中にいくつかの処理パラメータの1以上を制御すると、得られるガラス基板10の切断エッジの品質に、特にエッジ強度に、かなり効果があることが分かった。実際には、少なくとも約300MPaから約500MPa以上の非常に高いエッジ強度を達成するためには、1以上の処理パラメータの制御が重要である。処理パラメータとしては、(i)レーザビーム60のエネルギー密度、(ii)切断ラインに沿った、ガラスシート20に対するレーザビーム60の速度、(iii)冷却流体62の流量、および(iv)切断ラインの最小曲率半径が挙げられる。以下のパラメータに関する議論は、「コーニング」「EAGLE XG」無アルカリディスプレイガラスでの実験に基づく。特定のパラメータの実際の値は異なるガラス組成物で若干変わり得るが、その操作は、他のガラスタイプ、例えば他のブランドの無アルカリディスプレイガラス、より一般的なディスプレイガラス、および他の目的のためのガラスに、類似した効果および結果をもたらす。
図4を参照すると、レーザビーム60のエネルギー密度は、ガラス基板10のエッジ品質に著しい影響を与えることが分かった。検査するべき考えられるエッジ品質特性の中で、レーザビーム60のエネルギー密度と圧縮ハックルとの間の関係を綿密に検査した。図4は、Y軸に沿って圧縮ハックルの深さを(マイクロメートル、以下「μm」で)示し、X軸に沿ってレーザビーム60のエネルギー密度(J/mm)を示したプロットである。圧縮ハックルは分離プロセスの際に生じ、レーザビーム60から適用されたエネルギーによる、ガラスシート20内の歪みまたは反りの量に直接関連している。レーザビーム60のエネルギーは極薄ガラスシートに応力を加え、この応力がガラスシート20内に反りを生じさせる(正弦曲線的特性を呈する)。上で論じたように亀裂の伝播には、下部から上部までガラスシート20の厚さを通る、伝播方向における引張応力が必要である。この現象は、その部分を分離または切断するためにガラスシート20の底面の引張応力を利用するが、さらにガラスシート20の上面に圧縮応力を加え、それにより圧縮ハックルが生成される。レーザエネルギーによって加えられる応力が大きければ大きいほど、より多くの圧縮ハックルを呈する。従って、適用されるレーザエネルギーと結果として得られるエッジ品質との間には、一定のバランスがある。
適用されるレーザエネルギーの制御は、レーザビーム60により生成されるレーザパワーと、切断ラインに沿ったガラスシート20に対するレーザビーム60の速度とに依存する。この関係はエネルギー密度と称される。いくつかのサンプルで、エネルギー密度の特定の影響を測定する実験を、直径2.5mm(固定)のガウシアンスポットのレーザビームを用いて行った。エネルギー密度は以下のように計算した。エネルギー密度(J/mm)=レーザパワー(J/s)/速度(mm/s)。レーザビーム60のエネルギー密度を制御することによる影響は図4のプロットを観察すると理解することができ、ここではより低いエネルギー密度402が、より高いエネルギー密度404に比べて、圧縮ハックルが著しく少なく、またハックル深さの大きさのばらつきが少ないことを示している。エネルギー密度の制御および/または最適化は、前述のエッジ強度の目標を達成するために、他の調整努力に先立って最初に行われるべきであると考えられる。
上記に基づき、レーザビーム60のエネルギー密度の制御は、本書で意図されている非常に高いエッジ強度を達成するために綿密に検討されるべきである。例えば、本書で意図されているガラスシート20の厚さに関連して、エネルギー密度は、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されるべきである。
上述したように、ガラスシート20に対するレーザビーム60の速度は、エネルギー密度の計算(従ってエッジ品質)の重要パラメータである。速度パラメータは、切断ラインに沿った亀裂の伝播を管理するために、また亀裂の性能を最適化するために、さらに最終的には優れたエッジ強度を確実にするために、調整されるべきである。実験中に急激な亀裂の伝播が認められた場合、切断プロセスにおいて、エッジにおける(圧縮ハックルなどの)アレスト、さらには破壊さえ、引き起こすと考えられている。このようなアレストは管理することが難しく、速度などの動作の適切な制限を決定するために厳密な実験が必要である。
図5は、切断プロセス中に起こる(圧縮ハックルなどの)いくつかのアレスト性異常と、速度との関係を示したプロットである。このプロットは、Y軸上の異常発生数と、X軸上のレーザビーム60の速度(mm/min)とによって特徴付けられる。実験は、速度の変化を繰り返す毎に、レーザパワーを調整することによってエネルギー密度を一定にして行われた。アレストはこのデータ内で、比較的速い速度で見られた。急激な亀裂も、この高速のときに認められた。アレストは、極めて弱いエッジを生み出し、また切断経路に所望の寸法公差外となる凹凸を生じさせ得るため、全く望ましくない。
上記に基づき、ガラスシート20に対するレーザビーム60の速度の制御は、本書で意図されている非常に高いエッジ強度を達成するために綿密に検討されるべきである。例えば、本書で意図されているガラスシート20の厚さに関連して、切断ラインに沿ったガラスシート20に対するレーザビーム60の速度は、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されるべきである。
上述したように、エッジ強度への冷却流体62の流量の影響も、重要な考慮事項である。これに関して図6および7を参照する。図6は、冷却流体62の流量と、その結果生じた圧縮ハックルとの間の関係のプロットである。圧縮ハックルの深さ(μm)がY軸に沿って示されており、また流量(1分当たりのリットル、すなわちlpm)がX軸に示されている。ハックルの深さは、光学的顕微鏡を用いて20倍拡大で測定され、ガラスの上面(レーザ入射)から、応力破断線が延びている点までの距離として定義する。単位は典型的には、直接のμmでの測定結果として定義されるが、基板の厚さの一定の割合として定義することも可能である。図7は、ガラスシート20の上方から適用される冷却流体62と、ガラスシート20の下方から適用されるエアベアリングの流体流(および場合によっては真空)との影響に関する、局所的側面図である。
ノズル70は、(i)レーザビーム60に対して正確な向きおよび位置に冷却流体62を適用し(ガラスシート20を局所的に冷却し、局所的応力を増幅させ、さらに亀裂を伝播させる)、さらに(ii)(レーザビーム60からの熱によって生じるガラスシート20の座屈に対抗するように)ガラスシート20の上面に機械的な力を加える、二重の役割を提供する。図7に示されているように、冷却流体62の流れは、ガラスシート20の変形に局所的な影響を及ぼすようなやり方で作用し得る。例えばガラスシート20の上方からの冷却流体62の流量を制御すると、(i)(比較的低い流量で)切断ゾーンにおけるガラスシート20の座屈にいくらか対抗することができ、(ii)(より高い流量で)切断ゾーンにおいてガラスシート20を相対的に平坦化することができ、および/または(iii)(さらに高い流量で)窪みゾーン120を提供することができる。
この二元的機能(冷却および機械的圧力)は、圧縮ハックルを減少させエッジ強度を増加させるための、切断プロセスのさらなる細かい調整を可能にすることができる。例えば冷却流体62の流量を増加させると、圧縮応力を減少させることができ、これは高品質の高強度エッジの生成に役立つ。留意すべきは、レーザビーム60に対するノズル70の位置はガラスシート20の厚さおよび組成に依存することであり、これは冷却および機械的力を正確な位置に適用して、分離を最大にしかつ伝播中の亀裂の挙動を管理するのに重要である。
上記に基づき、冷却流体62の流量の制御は、本書で意図されている非常に高いエッジ強度を達成するために綿密に検討されるべきである。例えば、本書で意図されているガラスシート20の厚さに関連して、冷却流体62の流量は、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御されるべきである。上記の冷却流体の流量は、空気を冷却流体とした場合のものであり、他の冷却流体での流量の実際の数値は、空気に対するその固有熱容量{熱流束/(質量と温度変化との積)、すなわちC=Q/(m・ΔT)に関し、ここでCは固有熱容量、Qは熱流束、mは質量、さらにΔTは温度変化}に基づいて若干異なり得る。例えば、冷却流体が空気よりも高い固有熱容量を有していた場合には、所与の流量の空気で生み出されるものに類似したガラス切断応力プロファイルを生成するべくガラスに同じ温度変化をもたらすためには、例えばより小さい流量を用いることなどによる、より少ない量のこの流体が必要になるであろう。ただし都合のよいことに、空気を使用すると、液体冷却で生じ得るガラス上の染みを最小限に抑えることができる。自由な形のラインを切断する場合、使用されるノズルのタイプ(および流量)は、直線のみを切断するためのものとは異なる。自由な形のラインを切断するためには、環状のノズルが有利であり、また任意の湾曲部分に対する気流は、有利なものは、直線部分を切断するためのものとは異なる。
上述したように、切断ラインの任意の湾曲部分の半径の、エッジ強度への影響も、重要な考慮事項である。これに関して、切断ラインの半径がエッジ品質およびプロセス性能に著しい影響を与えることを示したプロットである、図8を参照する。このプロットは、Y軸上の圧縮ハックル深さ(μm)と、X軸上の半径(mm)とによって特徴付けられる。アール部の切断は、方向が変わること、また直線切断プロセスの際には通常わずかなものである変動応力場を通って切断することといった、その本質のために、さらなるエネルギーとより限定された速度とを必要とする、動的なプロセスである。図8のデータは、切断ラインの曲率半径が小さくなればなるほど、予期される圧縮ハックルの深さが深くなることを示している。半径寸法に対する切断パラメータ(エネルギー密度、速度、および冷却流体流量)を決定するプロセスは、直線の切断に関するものと類似しているが、特定の設定点は、特に半径が比較的小さくなると著しく異なり得、またはるかに敏感になり得る。
上記に基づき、切断ラインの所与の部分に対する曲率半径の制御は、本書で意図されている非常に高いエッジ強度を達成するために綿密に検討されるべきである。例えば、本書で意図されているガラスシート20の厚さに関連して、切断ラインの最小曲率半径は、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御される。
いくつかの実験を、本書で意図されている厚さの範囲内(例えば、100μm)のガラスシート20で、上で論じたパラメータを用いて行った。得られたガラス基板10のエッジ強度を測定し、図9にプロットした。このプロットは、Y軸に沿った破壊可能性(%)と、X軸に沿った最大応力(MPa)とによって特徴付けられる。従ってエッジ強度を、ワイブル分布のB10値として表現する(95%の信頼度で、最適化したレーザプロセスで生成された部分の90%がB10強度の大きさを超えることを意味する)。図から分かるように、統計的にかなりの数のサンプルが450〜500MPaの範囲内のエッジ強度を示している。4つのデータセット(三角形、ダイヤモンド、円形、および正方形)の夫々で、B10値は300MPaを上回った。円形および正方形の各データセットでは、B10は500MPa以上である。これらのサンプルは、さらに最小のエッジ欠陥(例えば、欠け、アレスト、および圧縮ハックル)を示した。これに比較して図10は、図9に関連して上述したものに類似するガラスおよび形状パラメータを用いた、機械的切断プロセス(罫書きおよび折割)に対するプロットである。図10から分かるように、機械的切断プロセスでは、たった約225MPaのB10エッジ強度値しか生み出されない。
本書の本開示を、特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は本書における実施形態の原理および用途の単なる実例となるものであることを理解されたい。従って、この実例となる実施形態の多くの改変を作製することができ、また本出願の精神および範囲から逸脱することなく他の配置が考案され得ることを理解されたい。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
方法において、
ソースガラスシートを支持し、所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを画成するステップ、
前記ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用して、該レーザビームを前記ガラスシートに対して前記切断ラインに沿って連続的に動かし、前記切断ラインの位置で前記ガラスシートの温度を上昇させるステップ、
前記切断ラインに沿って前記ガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体が前記ガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、前記レーザビームの適用と同時に前記冷却流体を適用するステップ、
前記ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)前記レーザビームのエネルギー密度、(ii)前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度、(iii)前記冷却流体の流量、および(iv)前記切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するステップ、および、
前記ガラスシートから不用のガラスを分離して、所望の形状を得るステップ、
を含むことを特徴とする方法。
実施形態2
前記ガラスシートが、(i)厚さ約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)厚さ約0.075mm〜約0.250mmの間、のうちの一方であることを特徴とする実施形態1記載の方法。
実施形態3
前記エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態2記載の方法。
実施形態4
前記エネルギー密度が、前記レーザビームの出力レベル(J/s)を、前記切断ラインに沿った前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度(mm/min)で割ったものになるように定義されることを特徴とする実施形態3記載の方法。
実施形態5
前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態2から4いずれか1項記載の方法。
実施形態6
前記切断ラインに沿った前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が≦1100mm/minであり、かつアレスト性異常の数が<1であることを特徴とする実施形態5記載の方法。
実施形態7
前記冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態2から4いずれか1項記載の方法。
実施形態8
前記流体が空気であることを特徴とする実施形態7記載の方法。
実施形態9
前記切断ラインの最小曲率半径が、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態2から8いずれか1項記載の方法。
実施形態10
前記レーザビームの直径が、(i)約1mmから約4mmの間、および(ii)2mm、のうちの一方であることを特徴とする実施形態1から9いずれか1項記載の方法。
実施形態11
前記冷却流体が前記ガラスシートに向けて前記レーザビームの周りに環状に導かれることを特徴とする実施形態1から10いずれか1項記載の方法。
実施形態12
ガラスシートを所望の形状に切断する装置において、
所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを含んでいる前記ガラスシートを、支持するように動作する、支持台、
前記ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用するように動作する、レーザ光源であって、前記レーザビームを前記ガラスシートに対し前記切断ラインに沿って連続的に動かして、前記切断ラインの位置で前記ガラスシートの温度を上昇させる、レーザ光源、
前記切断ラインに沿って前記ガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体が前記ガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、前記レーザビームの適用と同時に前記冷却流体を適用するように動作する、冷却流体源、
前記ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)前記レーザビームのエネルギー密度、(ii)前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度、(iii)前記冷却流体の流量、および(iv)前記切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するように動作する、コントローラ、
を備えていることを特徴とする装置。
実施形態13
前記ガラスシートが、(i)厚さ約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)厚さ約0.075mm〜約0.250mmの間、のうちの一方であることを特徴とする実施形態12記載の装置。
実施形態14
前記エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態13記載の装置。
実施形態15
前記エネルギー密度が、前記レーザビームの出力レベル(J/s)を、前記切断ラインに沿った前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度(mm/min)で割ったものになるように定義されることを特徴とする実施形態14記載の装置。
実施形態16
前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態13から15いずれか1項記載の装置。
実施形態17
前記切断ラインに沿った前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が、≦1100mm/minになるように制御され、かつアレスト性異常の数が<1であることを特徴とする実施形態16記載の装置。
実施形態18
前記冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態13から17いずれか1項記載の装置。
実施形態19
前記流体が空気であることを特徴とする実施形態18記載の装置。
実施形態20
前記切断ラインの最小曲率半径が、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする実施形態13から19いずれか1項記載の装置。
実施形態21
前記レーザビームの直径が、(i)約1mmから約4mmの間、および(ii)2mm、のうちの一方であることを特徴とする実施形態12から20いずれか1項記載の装置。
実施形態22
前記冷却流体が前記ガラスシートに向けて前記レーザビームの周りに環状に導かれることを特徴とする実施形態12から20いずれか1項記載の装置。
10 薄型ガラス基板
20 ソースガラスシート
60 レーザビーム
62 冷却流体
64 レーザエネルギー供給源
70 ノズル
102 支持構造

Claims (12)

  1. 方法において、
    ソースガラスシートを支持し、所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを画成するステップ、
    前記ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用して、該レーザビームを前記ガラスシートに対して前記切断ラインに沿って連続的に動かし、前記切断ラインの位置で前記ガラスシートの温度を上昇させるステップ、
    前記切断ラインに沿って前記ガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体が前記ガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、前記レーザビームの適用と同時に前記冷却流体を適用するステップ、
    前記ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)前記レーザビームのエネルギー密度、(ii)前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度、(iii)前記冷却流体の流量、および(iv)前記切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するステップ、および、
    前記ガラスシートから不用のガラスを分離して、所望の形状を得るステップ、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記ガラスシートが、(i)厚さ約0.05mm〜約0.3mmの間、および(ii)厚さ約0.075mm〜約0.250mmの間、のうちの一方であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  5. 前記切断ラインに沿った前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が≦1100mm/minであり、かつアレスト性異常の数が<1であることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 前記冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
  7. 前記切断ラインの最小曲率半径が、(i)少なくとも約2mm、(ii)少なくとも約3mm、(iii)少なくとも約4mm、および(iv)少なくとも約5mm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
  8. ガラスシートを所望の形状に切断する装置において、
    所望の最終形状を画成するパターンを確立する自由な形の切断ラインを含んでいる前記ガラスシートを、支持するように動作する、支持台、
    前記ガラスシートに円形形状のレーザビームを適用するように動作する、レーザ光源であって、前記レーザビームを前記ガラスシートに対し前記切断ラインに沿って連続的に動かして、前記切断ラインの位置で前記ガラスシートの温度を上昇させる、レーザ光源、
    前記切断ラインに沿って前記ガラスシートで破断を伝播させるために冷却流体が前記ガラスシートの温度を少なくとも減少させるよう、前記レーザビームの適用と同時に前記冷却流体を適用するように動作する、冷却流体源、
    前記ガラスシートの切断エッジのB10エッジ強度が、少なくとも約300MPaから約500MPa、少なくとも約400〜500MPa、および、より好適には少なくとも約450MPa、のうちの少なくとも1つになるように、(i)前記レーザビームのエネルギー密度、(ii)前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度、(iii)前記冷却流体の流量、および(iv)前記切断ラインの最小曲率半径、のうちの少なくとも1つを制御するように動作する、コントローラ、
    を備えていることを特徴とする装置。
  9. 前記エネルギー密度が、(i)約0.015J/mm未満、(ii)約0.014J/mm未満、(iii)約0.013J/mm未満、(iv)約0.012J/mm未満、(v)約0.011J/mm未満、(vi)約0.010J/mm未満、(vii)約0.009J/mm未満、および(viii)約0.008J/mm未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項8記載の装置。
  10. 前記切断ラインに沿った、前記ガラスシートに対する前記レーザビームの速度が、(i)約2000mm/min未満、(ii)約1900mm/min未満、(iii)約1800mm/min未満、(iv)約1700mm/min未満、(v)約1600mm/min未満、(vi)約1500mm/min未満、(vii)約1400mm/min未満、(viii)約1300mm/min未満、(ix)約1200mm/min未満、(x)約1100mm/min未満、および(xi)約1000mm/min未満、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項8または9記載の装置。
  11. 前記冷却流体の流量が、(i)少なくとも約60lpm、(ii)少なくとも約70lpm、(iii)少なくとも約80lpm、(iv)少なくとも約90lpm、(v)少なくとも約100lpm、(vi)少なくとも約110lpm、(vii)少なくとも約120lpm、(viii)少なくとも約130lpm、および(ix)少なくとも約140lpm、のうちの少なくとも1つになるように制御されることを特徴とする請求項8から10いずれか1項記載の装置。
  12. 前記レーザビームの直径が、(i)約1mmから約4mmの間、および(ii)2mm、のうちの一方であることを特徴とする請求項8から11いずれか1項記載の装置。
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