本開示は、LOX1結合タンパク質を提供する。一部の態様において、本開示は、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体であるLOX1活性のアンタゴニストを提供する。関連する核酸、LOX1結合タンパク質を含む組成物、及びLOX1結合タンパク質の作製方法もまた提供される。例えば、対象のアテローム性動脈硬化症、血栓症、冠動脈疾患(CAD)、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症又は癌などのLOX1結合タンパク質関連疾患又は病態の改善、及び診断用途において、LOX1結合タンパク質を使用する方法が更に提供される。
本開示がより容易に理解し得るものとなるように、初めに特定の用語を定義する。更なる定義は、詳細な説明の全体を通じて示される。
I.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。用語「a」(又は「an」)、並びに用語「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同義的に用いられ得る。
用語「約」は、本明細書では、近似的に、〜の辺り、大まかに、〜前後、という意味で用いられる。用語「約」が数的な値又は範囲と併せて用いられるとき、それは、示される数的な値又は範囲の上下に境界を広げることによって当該の値又は範囲を改変する。概して、用語「約」は、本明細書では、記載される値又は範囲から10%の変動分だけ上下に数的な値又は範囲を改変するように用いられる。
更に、「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示と解釈されなければならない。従って、用語「及び/又は」は、「A及び/又はB」などの表現で用いられるとき、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの表現で用いられるとき、以下の態様:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を包含することが意図される。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei−Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
単位、接頭語、及び記号は、その国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載する。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することにより有され得る本開示の様々な態様の限定ではない。従って、以下に直ちに定義する用語は、本明細書を全体として参照することによってより完全に定義される。
態様が「〜を含む(comprising)」という言葉を伴い記載される場合は常に、「〜からなる(consisting of)」及び/又は「〜から本質的になる(consisting essentially of)」の用語で記載される他の点では類似の態様もまた提供される。
アミノ酸は、本明細書では、IUPAC−IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨するその一般的に知られる三文字記号又は一文字記号によって参照される。同様に、ヌクレオチドは、その一般的に認められた一文字コードによって参照される。
用語「LOX1」及び「レクチン様酸化低密度リポタンパク質受容体1」は、本明細書では同義的に使用され、LOX1及び/又はLOX1の生物学的に活性な断片を指す。3つのhLOX1アイソフォームのcDNA及びアミノ酸配列が、GenBank受託番号:NP_002534.1、NP_001166103.1、及びNP_001166104.1(これらの各々は、本明細書において全体として参照により援用される)にて提供される。
用語「阻害する」、「遮断する」、「低減する」、及び「抑制する」は、本明細書では同義的に使用され、活性の完全な遮断を含めた、生物学的活性の統計的に有意な任意の低下を指す。例えば、「阻害」は、LOX1生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の低下を指し得る。従って、例えば、細胞表面LOX1を発現する細胞(例えば、内皮細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、及び血小板)における且つLOX1リガンド(例えば、oxLDL、CRP及びAGE)の存在下でのLOX1媒介性シグナル伝達経路に対する効果を記述するために用語「阻害」又は「抑制」が適用されるとき、これらの用語は、LOX1結合タンパク質、例えば抗LOX1抗体が、細胞におけるLOX1媒介性の誘導シグナル伝達を統計的に有意なレベルで(例えば、0.05以下のp値で)低下させる能力を指す。一部の態様において、LOX1媒介性シグナル伝達経路は、RhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBから選択されるメンバーである。更なる態様において、阻害又は遮断されるLOX1媒介性の生物学的活性は、プログラム細胞死(即ちアポトーシス)である。更なる実施形態において、低下、阻害又は遮断されるLOX1媒介性の生物学的活性は、LOX1媒介性のカスパーゼ8、カスパーゼ9の増加、及び/又はBAX活性の低下である。細胞表面LOX1を発現する細胞は、天然に存在する細胞(例えば、ヒト内皮細胞、平滑筋細胞、及びマクロファージ)、細胞株由来の細胞又はLOX1をコードする核酸を宿主細胞に導入することによって産生される組換え細胞であってもよい。
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「抗体」又は「免疫グロブリン」には、全抗体及びその任意の抗原結合断片又は単鎖が含まれる。典型的な抗体は、ジスルフィド結合によって相互に接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略する)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は1つのドメインClを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FW)と呼ばれるより保存された領域が間に散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性(hypervariablity)領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番、即ち、FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4に並んだ3つのCDRと4つのFWとを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子に結合するのを媒介することができる。本開示の例示的抗体には、典型的な抗体、scFv、及びそれらの組み合わせ(例えばscFvが典型的な抗体の重鎖及び/又は軽鎖のいずれかのN末端に(例えばペプチド結合を介するか、又は化学的リンカーを介して)共有結合的に連結しているか、又は典型的な抗体の重鎖及び/又は軽鎖にインターカレートしている)が含まれる。
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位によってタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組み合わせなどの標的を認識してそれに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し得る。用語「抗体」には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はその抗体断片が含まれる。
用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片など)、単鎖Fv(scFv)突然変異体、少なくとも2つのインタクトな抗体から作成される二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を、その抗体が所望の生物学的活性を呈する限りにおいて包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称されるそれらの重鎖定常ドメインのアイデンティティに基づき、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかであり得る。異なる免疫グロブリンクラスは異なる周知のサブユニット構造及び三次元配置を有する。抗体はネイキッドであっても、又は毒素、放射性同位元素等の他の分子とコンジュゲートしていてもよい。
用語「生殖細胞系列化」は、抗体中の特定の位置にあるアミノ酸を、生殖細胞系列に見られるのと同じ位置に存在するそれらのアミノ酸に復帰突然変異させることを意味する。
用語「抗原結合抗体断片」又は「LOX1結合抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を指し、且つインタクトな抗体の相補性決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、一本鎖抗体(例えば、ScFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。本開示は、LOX1結合抗体断片であって、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、又は一本鎖抗体分子である抗体断片を更に提供する。
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これはポリクローナル抗体と対照的であり、ポリクローナル抗体は典型的には、種々の抗原決定基に対する種々の抗体を含む。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトな及び完全長のモノクローナル抗体、並びに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子の両方を包含する。更に、「モノクローナル抗体」は、限定はされないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物によることを含め、幾つもの方法で作製されたかかる抗体を指す。
用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えばマウス)配列を含むように操作された、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はハムスター)のCDRの残基によって相補性決定領域(CDR)の残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FW)残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種の抗体の対応する残基に置き換えられる。
ヒト化抗体は、Fvフレームワーク領域内及び/又は置き換えられた非ヒト残基の範囲内のいずれかにおける更なる残基の置換によって更に修飾することにより、抗体の特異性、親和性、及び/又は能力を精緻化し、最適化することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含む一方で、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部分も含み得る。ヒト化抗体の作成に用いられる方法の例は、米国特許第5,225,539号明細書又は同第5,639,641号明細書に記載されている。
抗体の「可変領域」は、単独の、或いは組み合わせでの、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FW)からなる。各鎖のCDRはFW領域によって且つ他方の鎖のCDRと近接して一体に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには少なくとも2つの技法がある:(1)異種間配列多様性に基づく手法(即ち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda Md.));及び(2)抗原抗体複合体の結晶学的調査に基づく手法(Al−lazikani et al.,J.Molec.Biol.273:927−948(1997))。加えて、当該技術分野では、CDRの決定にこれらの2つの手法の組み合わせが時に用いられることもある。
Kabat付番方式は、概して、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)を参照するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,Md.(1991)(本明細書において参照により援用される))。Kabatにあるようなアミノ酸位置の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,Md.(1991)における抗体編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される付番方式を指す。この付番方式を使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又はそこへの挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろに単一のアミノ酸挿入(Kabatによるときの残基52a)及び重鎖FW残基82の後ろに挿入残基(例えば、Kabatによるときの残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。
所与の抗体について、Kabatの残基付番は、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアラインメントすることにより決定し得る。代わりにChothiaは、構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番したとき、Chothia CDR−H1ループの末端はループの長さに応じてH32〜H34の間で変わる(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためである;35Aも35Bも存在しない場合、このループは32で終わる;35Aのみが存在する場合、このループは33で終わる;35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協案に相当し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアに用いられている。
IMGT(ImMunoGeneTics)もまた、CDRを含めた免疫グロブリン可変領域用の付番方式を提供している。例えば、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55−77(2003)(本明細書において参照により援用される)を参照のこと。IMGT付番方式は、5,000個を超える配列のアラインメント、構造データ、及び超可変ループの特徴付けに基づいたもので、あらゆる種の可変領域及びCDR領域の容易な比較が可能である。IMGT付番スキーマによれば、VH−CDR1は26〜35位にあり、VH−CDR2は51〜57位にあり、VH−CDR3は93〜102位にあり、VL−CDR1は27〜32位にあり、VL−CDR2は50〜52位にあり、及びVL−CDR3は89〜97位にある。
本明細書全体を通じて用いられるとおり、記載されるVH CDR配列は古典的Kabat付番位置に対応し、即ちKabat VH−CDR1は31〜35位にあり、VH−CDR2は50〜65位にあり、及びVH−CDR3は95〜102位にある。VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3もまた古典的Kabat付番位置、即ち、それぞれ24〜34位、50〜56位及び89〜97位に対応する。
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、又は当該技術分野において公知の任意の技法を用いて作製された、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、インタクトな又は完全長の抗体、その断片、及び/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えばマウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する1つの哺乳動物種(例えば、マウス、ラット等)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域が、当該の種における免疫応答の誘導を回避するため、別の種(通常はヒト)に由来する抗体の配列と相同である。
用語「TM」又は「TM突然変異体」は、その突然変異を有する抗体のエフェクター機能(例えば、ADCC)の低下をもたらすIgG1定常領域における突然変異を指す。TM突然変異体は、IgG1の重鎖に導入された、エフェクターヌルヒトIgG1をもたらす3つの突然変異L234F/L235E/P331Sの組み合わせ(EU付番 Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Washington,D.C.)を含む。
用語「YTE」又は「YTE突然変異体」は、ヒトFcRnとの結合の増加をもたらし、且つその突然変異を有する抗体の血清中半減期を改善するIgG1 Fcにおける突然変異を指す。YTE突然変異体は、IgG1の重鎖に導入された、3つの突然変異M252Y/S254T/T256Eの組み合わせ(EU付番 Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Washington,D.C.)を含む。米国特許第7,658,921号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。YTE突然変異体は、野生型バージョンの同じ抗体と比較したとき抗体の血清中半減期が約4倍増加することが示されている(Dall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.281:23514−24(2006))。米国特許第7,083,784号明細書(参照により全体として本明細書に援用される)も参照のこと。
用語「LOX1結合タンパク質」、「抗LOX1抗体」、又は「LOX1に特異的に結合する抗体」は、抗体がLOX1の標的化において治療剤又は診断試薬として有用となるような十分な親和性でLOX1に結合する能力を有する抗LOX1抗体などのLOX1結合タンパク質を指す。無関係の非LOX1タンパク質に対する抗LOX1抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(登録商標)(分析物として組換えLOX1を使用し且つリガンドとして抗体を使用するか、又はその逆)、結合平衡除外アッセイ(KINEXA(登録商標))、又は当該技術分野において公知の他の結合アッセイによって計測するとき、LOX1に対するこの抗体の結合の約10%未満である。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、解離定数(KD)が≦1nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦10pM、又は≦1pMであるか、又は一部の例では、KDが約150pM〜約600pM又は約400pM〜約600pMの完全長抗体又はLOX1結合抗体断片である。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、解離定数(KD)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM、又は≦0.1pMであるか、又は一部の例では、KDが約150pM〜約600pMの完全長抗体又はLOX1結合抗体断片である。
「アンタゴニスト」又は「遮断」LOX1結合タンパク質は、LOX1の生物学的活性を阻害し又は低下させるものである。一部の態様において、アンタゴニストLOX1結合タンパク質は、LOX1がoxLDL、AGE、及び/又はCRPに結合する能力を阻害する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、LOX1がoxHDL、HSP60、白血球及び/又は活性化血小板に結合する能力を阻害する。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、LOX1の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。望ましくは、LOX1生物学的活性は10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%低下する。詳細な態様では、LOX1結合タンパク質は、完全長抗体又はLOX1結合抗体断片などの抗LOX1抗体である。更なる態様において、抗LOX1抗体はLOX1の生物学的活性を10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%阻害し又は低下させる。
「結合親和性」は、概して、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に指示がない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、概して解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含めた、当該技術分野において公知の一般的な方法によって計測することができる。低親和性抗体は、概して抗原との結合が遅く、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、概して抗原と速やかに結合し、結合したまま長く留まる傾向がある。結合親和性を計測する種々の方法が当該技術分野において公知であり、本開示の目的上、そのいずれを用いてもよい。
「効力」は、通常は、特に指定されない限りnM又はpM単位のIC50値として表される。IC50は抗体分子の阻害濃度中央値である。機能アッセイでは、IC50は、生物学的反応をその最大値の50%低下させる濃度である。リガンド結合試験では、IC50は、受容体結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。IC50は当該技術分野において公知の手段によって計算することができる。
参照抗体と比較したときの本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)の効力の向上倍数は、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、又は少なくとも約180倍又はそれ以上であり得る。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、分泌Igが特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合して、それらの細胞傷害性エフェクター細胞による抗原担持標的細胞への特異的結合及び続く細胞毒による標的細胞の死滅が可能となる形態の細胞傷害性を指す。標的細胞の表面に対する特異的高親和性IgG抗体は細胞傷害性細胞を「武装」するものであり、かかる死滅に絶対的に必要である。標的細胞の溶解は細胞外であって、直接的な細胞間接触に必要であり、補体は関与しない。抗体に加えて、抗原担持標的細胞に特異的に結合する能力を有するFc領域を含む他のタンパク質、具体的にはFc融合タンパク質は、細胞媒介性細胞傷害性を達成可能であると考えられる。簡単にするため、Fc融合タンパク質の活性によって生じる細胞媒介性細胞傷害性は、本明細書ではADCC活性とも称される。
「単離されている」LOX1結合タンパク質(例えば、その抗原結合断片、変異体、及び誘導体を含めたLOX1抗体)、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、天然には見られない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離ポリペプチド(例えば、完全長抗体及びLOX1結合抗体断片を含めた抗LOX1抗体)、ポリヌクレオチド、ベクター、ポリヌクレオチド類、ベクター類、細胞又は組成物には、もはや天然に見られる形態ではなくなる程度まで精製されているものが含まれる。一部の態様において、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」は、診断、予後判定、又は治療が所望される任意の対象、特に哺乳類対象が意図される。哺乳類対象には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、クマなどを含めた、ヒト、家畜、農業動物、競技動物、及び動物園動物が含まれる。
用語「医薬組成物」は、活性成分(例えば、本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質)の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態の、且つ組成物が投与されるであろう対象にとって許容できない毒性の追加的な成分を含有しない調製物を指す。かかる組成物は無菌であり得る。
抗LOX1抗体などのLOX1結合タンパク質、又は別の治療剤の「有効量」又は「薬学的に有効な量」は、具体的に記載される目的の実施に十分な量である。「有効量」は、記載される目的に関連して、実験的に常法で決定することができる。本開示は、LOX1及び/又は低下したHDL媒介性シグナル伝達に関連する疾患及び病態を治療、予防又は改善する治療薬を提供する。これらの疾患及び病態には、例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌が含まれる。
語句「標識」は、本明細書で使用されるとき、「標識」抗体を作成するため抗体に直接又は間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識はそれ自体検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的改変を触媒することができる。
「治療している」又は「治療」又は「治療すること」又は「改善している」又は「改善すること」などの用語は、(1)診断された疾患又は病態に関連する病態を治癒し、減速させ、減少させ、及び/又はその進行を止める治療的処置、及び(2)標的の疾患又は病態の発症を防止し及び/又は遅延させる予防的又は防御的処置の両方を指す。従って、治療を必要としている者には、疾患又は病態を既に有する者;疾患又は病態を発症するリスクがある者;及び疾患又は病態を予防すべき者が含まれる。特定の態様において、対象が、例えば、疾患又は病態に関連する症状の全面的な、部分的な、又は一過性の改善又は消失を示す場合に、その対象は、本明細書に提供される方法による「治療」が成功している。かかる疾患又は病態には、例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌が含まれる。
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上の「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド分子」、又は「ポリヌクレオチド配列」を含むことができ、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、且つDNA(ゲノム又はcDNA)及びRNAを含む。核酸はデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによってポリマー中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体など、修飾ヌクレオチドを含み得る。前出の説明は、RNA及びDNA(ゲノム又はcDNA)を含め、本明細書において言及されるあらゆるポリヌクレオチドに適用される。
用語「ベクター」は、宿主細胞において1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、且つ一部の態様では発現する能力を有するコンストラクトを意味する。ベクターの例としては、限定はされないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に関連するDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などのある種の真核細胞が挙げられる。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して同義的に使用される。ポリマーは線状又は分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含むことができ、及び非アミノ酸がそれに割り込むことができる。これらの用語はまた、天然に又は介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。また、この定義の範囲内には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸等を含む)、並びに当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。この開示のポリペプチドは抗体に基づくため、特定の態様においてポリペプチドは単鎖又は会合鎖として存在し得ることが理解される。
2つ以上の核酸又はタンパク質の文脈における用語「同一」又はパーセント配列「同一性」は、いかなる保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部として考慮することなく、最大の一致となるように(必要であればギャップを導入して)比較及びアラインメントしたときに同じであるか、又は同じである特定の割合のヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェア若しくはアルゴリズムを使用するか、又は目視検査によって計測することができる。アミノ酸又はヌクレオチド配列のアラインメントを得るために使用し得る様々なアルゴリズム及びソフトウェアが当該技術分野において公知である。
配列アラインメントアルゴリズムのかかる非限定的な例の一つは、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.90:5873−5877(1993)において改良されたとおりの、NBLAST及びXBLASTプログラム(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1991))に導入されているKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264−2268(1990)に記載されるアルゴリズムである。特定の態様において、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997)に記載されるとおりのギャップ付きBLASTを使用することができ、BLAST−2、WU−BLAST−2(Altschul et al.,Methods in Enzymology 266:460−480(1996))、ALIGN、ALIGN−2(Genentech,South San Francisco,California)又はMegalign(DNASTAR)が、配列のアラインメントに使用し得る更なる公的に利用可能なソフトウェアプログラムである。特定の態様において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定される(例えば、NWSgapdna.CMP行列並びに40、50、60、70、又は90のギャップ加重及び1、2、3、4、5、又は6の長さ加重を使用する)。特定の代替的な態様では、Needleman及びWunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))のアルゴリズムを組み込むGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定することができる(例えば、BLOSUM 62行列又はPAM250行列のいずれか、並びに16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ加重及び1、2、3、4、5の長さ加重を使用する)。或いは、特定の態様において、ヌクレオチド又はアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Myers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS,4:11−17(1989))を使用して決定される。例えば、パーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用して、且つ残基テーブルを含むPAM120、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して決定することができる。当業者は、特定のアラインメントソフトウェアによる最大限のアラインメントに適切なパラメータを決定することができる。特定の態様では、アラインメントソフトウェアのデフォルトパラメータが使用される。
特定の態様において、第1のアミノ酸配列と第2の配列アミノ酸とのパーセント配列同一性「X」は、100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメントにおいて(目視検査又は特定の配列アラインメントプログラムによってアラインメントしたとき)同一のマッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、及びZは、第2の配列中にある残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列より長い場合、第2の配列に対する第1の配列のパーセント同一性は、第1の配列に対する第2の配列のパーセント同一性より高くなる。
「保存的アミノ酸置換」は、一つのアミノ酸残基が、同様の側鎖を有する別のアミノ酸残基に置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含め、当該技術分野において定義されている。例えば、チロシンに対するフェニルアラニンの置換は保存的置換である。特定の態様において、本開示のLOX1結合タンパク質の配列における保存的置換が、置換されたアミノ酸配列を含有するタンパク質とLOX1との結合を無効にすることはない。抗原結合性を消失させないヌクレオチド及びアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180−1 187(1993);Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10):879−884(1999);及びBurks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412−417(1997)を参照)。
用語「エピトープ」は、本明細書で使用されるとき、本開示のLOX1結合タンパク質(例えば抗体)との結合能を有するLOX1、例えば、ヒトLOX1(hLOX1)又はサルLOX1(例えばM.シノモルグス(M.cynomolgus))のタンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体エピトープと非立体エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は失われるが、後者に対する結合は失われない点で区別される。かかるLOX1結合タンパク質は、標準的な抗原結合又は活性アッセイにおいて、例えば配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列、又は配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体と交差競合する能力(例えば、その結合を統計的に有意な形で競合的に阻害する能力)に基づき同定することができる。
LOX1結合タンパク質(例えば抗体)は、それがLOX1に対する参照分子の結合をある程度遮断する程度にLOX1に結合する場合に、LOX1との結合に関して参照分子と「競合する」と言われる。タンパク質がLOX1との結合に関して競合する能力は、例えば競合ELISAアッセイを含めた、当該技術分野において公知の任意の方法により決定することができる。本明細書で使用されるとき、LOX1結合タンパク質は、LOX1に対する参照分子の結合を、例えば、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%だけ競合的に阻害すると言うことができる。
II.LOX1結合タンパク質
本開示は、LOX1と特異的に結合するLOX1結合タンパク質を提供する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は抗体(例えば、完全長LOX1抗体、抗原結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)である。更なる態様において、抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はその抗体断片である。特定の態様において、LOX1抗体は完全長抗体である。
一部の態様において、LOX1抗体はLOX1結合抗体断片である。一部の態様において、LOX1結合抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ダイアボディ、又は一本鎖抗体分子である。更なる態様において、LOX1抗体は、Fd、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、V−NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD−Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、又はscFv−Fcである。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、VH及びVLを含む抗体である。一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)は、重鎖定常領域又はその断片を更に含む。一部の態様において、この抗体は、(a)ヒトIgA定常領域、又はその断片;(b)ヒトIgD定常領域、又はその断片;(c)ヒトIgE定常ドメイン、又はその断片;(d)ヒトIgG1定常領域、又はその断片;(e)ヒトIgG2定常領域、又はその断片;(f)ヒトIgG3定常領域、又はその断片;(g)ヒトIgG4定常領域、又はその断片;及び(h)ヒトIgM定常領域、又はその断片からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常領域を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)は、ADCC活性が低下した、又は低下するように突然変異した重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。詳細な態様では、LOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)は、エフェクター機能を低下させる突然変異を含むIgG1重鎖定常領域を含む。一部の態様において、IgG1定常領域は234、235及び331位(これらの位置の付番はKabatにあるとおりのEUインデックスに従う)に突然変異を含む。更なる態様において、IgG1定常領域は、エフェクターヌルヒトIgG1をもたらす三重突然変異L234F/L235E/P331S(TM)(これらの位置の付番はKabatにあるとおりのEUインデックスに従う)を含む。一部の態様において、IgG1定常領域は、上記に定義の節で開示したとおりの、三重突然変異の突然変異体YTEを含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、三重突然変異TM及び三重突然変異YTEの両方を含むIgG1定常領域を含有する抗体である。
特定の態様において、重鎖定常領域又はその断片、例えば、ヒトIgG定常領域又はその断片は、野生型IgG定常ドメインと比べて1つ以上のアミノ酸置換を含むことができ、ここで修飾されたIgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加した半減期を有する。例えば、IgG定常ドメインは、251〜257位、285〜290位、308〜314位、385〜389位、及び428〜436位(アミノ酸位置の付番はKabatに示されるとおりのEUインデックスに従う)にアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。特定の態様において、IgG定常ドメインは、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はスレオニン(T)によるKabat252位のアミノ酸の置換、スレオニン(T)によるKabat254位のアミノ酸の置換、セリン(S)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、又はスレオニン(T)によるKabat256位のアミノ酸の置換、ロイシン(L)によるKabat257位のアミノ酸の置換、プロリン(P)によるKabat309位のアミノ酸の置換、セリン(S)によるKabat311位のアミノ酸の置換、スレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、又はセリン(S)によるKabat428位のアミノ酸の置換、アルギニン(R)、セリン(S)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、又はグルタミン(Q)によるKabat433位のアミノ酸の置換、又はトリプトファン(W)、メチオニン(M)、セリン(S)、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、又はチロシンによるKabat434位のアミノ酸の置換のうちの1つ以上を含み得る。より具体的には、IgG定常ドメインは、チロシン(Y)によるKabat252位のアミノ酸の置換、スレオニン(T)によるKabat254位のアミノ酸の置換、及びグルタミン酸(E)によるKabat256位のアミノ酸の置換を含め、野生型ヒトIgG定常ドメインと比べてアミノ酸置換を含有し得る。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)は、(a)ヒトIgκ定常ドメイン;及び(b)ヒトIgλ定常ドメインからなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)は、エフェクターヌルヒトIgG1をもたらす三重突然変異L234F/L235E/P331S(「IgG−TM」)を含有するヒト重鎖IgG1定常ドメインとヒト軽鎖λ定常ドメインとを含む。
本開示は、本明細書に開示される参照VH又はVLと比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有するVH及び/又はVLを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、表1に示すとおりのVH及び/又はVLを有する。
表1に例示的LOX−1結合タンパク質を提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号4の参照VH配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVH配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号4のVHを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号33の参照VL配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVL配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号33のVLを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVH−CDR1、配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含むVHから選択されるVH;及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1、配列番号31のアミノ酸配列を有するVL−CDR2、及び配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含むVLから選択される軽鎖VLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
本開示はまた、本明細書に開示される参照VH及びVL LOX1結合タンパク質と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を各々有するVH及びVL配列を含む単離LOX1結合タンパク質も提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号4、19〜28、又は29を含むVH、及び配列番号33、36、又は37を含むVLを有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号1のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2が配列番号5のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号14のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号30のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号31のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号32のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計18個以下の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の)アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1は配列番号30のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2は配列番号31のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3は配列番号32のアミノ酸配列を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
本開示はまた、本明細書に開示される参照VH配列と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)及び/又は本明細書に開示される参照VL配列(例えば、表1、図4又は図5に開示されるVH及びVL配列)と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む単離LOX1結合タンパク質も提供する。更なる態様において、本開示は、配列番号4と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVH及び/又は配列番号33と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVLを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(b)配列番号29のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(c)配列番号41のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVL;及び(d)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号70のアミノ酸配列を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLと少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)及び少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(b)配列番号20のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(c)配列番号21のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(d)配列番号22のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(e)配列番号23のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(f)配列番号24のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(g)配列番号25のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(h)配列番号26のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(i)配列番号27のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号37のアミノ酸配列を有するVL;(j)配列番号28のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号37のアミノ酸配列を有するVL;(k)配列番号48のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号65のアミノ酸配列を有するVL;(l)配列番号49のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号66のアミノ酸配列を有するVL;(m)配列番号50のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号67のアミノ酸配列を有するVL;(n)配列番号51のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号65のアミノ酸配列を有するVL;(o)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号68のアミノ酸配列を有するVL;(p)配列番号52のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号67のアミノ酸配列を有するVL;(q)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号69のアミノ酸配列を有するVL;(r)配列番号53のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVL;及び(s)配列番号41のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLと少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVH及び少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2及び配列番号1のアミノ酸配列を有するVH−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVLH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVL−CDR3及び配列番号31のアミノ酸配列を有するVL−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号1と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR1、配列番号2、5〜12又は13と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR2、又は配列番号3、14〜17又は18と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVH−CDRを含む。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号30と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR1、配列番号31と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR2、又は配列番号32、34、又は35と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVL−CDRを含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号41の参照VH配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVH配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号41のVHを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号58の参照VL配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVL配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号58のVLを含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号38のアミノ酸配列を有するVH−CDR1、配列番号39、42又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号40、44〜46又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含むVHから選択されるVH;及び配列番号55又は59のアミノ酸配列を有するVL−CDR1、配列番号56又は60のアミノ酸配列を有するVL−CDR2、及び配列番号57、61〜63、又は64のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含むVLから選択される軽鎖VLを含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号41、48〜53、又は54の配列を含むVH、及び配列番号58、65〜69、又は70の配列を含むVLを有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号38のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2が配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号44のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号60のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号61のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号38のアミノ酸配列を有し、(b)VH−CDR2が配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号40のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号56のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号57のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1は配列番号38のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2は配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3は配列番号40のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1は配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2は配列番号56のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3は配列番号57のアミノ酸配列を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号42又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39、42、又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39、42、又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を有するVH−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVLH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質を提供する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3及び配列番号56のアミノ酸配列を有するVL−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号56を有するVL−CDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号56又は60を有するVL−CDR2、及び配列番号55又は59のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号38と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR1、配列番号39、42又は43と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR2、又は配列番号40、44〜46又は47と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVH−CDRを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号55又は59と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR1、配列番号56又は60と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR2、又は配列番号57、61〜63又は64と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVL−CDRを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、表1、図4又は図5に記載されるとおりの一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR3及びVL−CDR3を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、表1、図4又は図5に記載されるとおりの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、G F D P E D HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Q K F Q G(Gly Phe Asp Pro Glu Asp HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Gln Lys Phe Gln Gly)(式中、HX1はGly、Trp、Tyr、又はPheであり;HX2はGlu、Thr、Gln、Ser、Lys、又はAlaであり;HX3はThr、Tyr、Ile、又はAsnであり;HX4はIle、Ala、Arg、又はHisであり;HX5はTyr、Val、Thr、Leu、又はGlnであり、及びHX6はAla、Asp、Gly、Ser、又はHisである)のアミノ酸配列(配列番号71)を有するVH−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、HX7 HX8 G HX9 HX10 HX11 HX12 G V R G W D Y Y Y G M D V(HX7 HX8 Gly HX9 HX10 HX11 HX12 Gly Val Arg Gly Trp Asp Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val Trp)(式中、HX7はPro、Ser、又はValであり;HX8はAsn、Thr、Trp、又はAspであり;HX9はGln、Arg、又はThrであり;HX10はGln又はHisであり;HX11はGly又はGlnであり;HX12はLys又はGlyである)のアミノ酸配列(配列番号72)を有するVH−CDR3を含む。
他の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、Q S Y D S LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6(Gln Ser Tyr Asp Ser LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6)(式中、LX1はSer又はMetであり;LX2はLeu、Tyr、又はHisであり;LX3はSer又はArgであり;LX4はGly、Ala、又はアミノ酸無しであり;LX5はTrp又はPheであり;及びLX6はVal、Gly、又はAlaである)のアミノ酸配列(配列番号73)を有するVL−CDR3を含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1はアミノ酸配列:E L S M H(配列番号1)を含み;(b)VH−CDR2はアミノ酸配列:G F D P E D HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Q K F Q G(式中、HX1は、G、W、Y及びFからなる群から選択され、HX2は、E、T、Q、K、A、及びSからなる群から選択され、HX3は、T、Y、I、及びNからなる群から選択され、HX4は、I、A、R及びHからなる群から選択され、HX5は、Y、V、T、L及びQからなる群から選択され、及びHX6は、A、D、G、S及びHからなる群から選択される)(配列番号71)を含み;(c)VH−CDR3はアミノ酸配列:HX7 HX8 G HX9 HX10 HX11 HX12 G V R G W D Y Y Y G M D V(式中、HX7は、P、S及びVからなる群から選択され、HX8は、N、W、D、及びTからなる群から選択され、HX9は、Q、R及びTからなる群から選択され、HX10は、Q及びHからなる群から選択され、HX11は、G及びQからなる群から選択され、及びHX12は、K及びGからなる群から選択される)(配列番号72)を含み;(d)VL−CDR1はアミノ酸配列:T G S S S N I G A G Y D V H(配列番号30)を含み;(e)VL−CDR2はアミノ酸配列:G N S N R P S(配列番号31)を含み;及び(f)VL−CDR3はアミノ酸配列:Q S Y D S LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6(式中、LX1は、M及びSからなる群から選択され、LX2は、L、Y及びHからなる群から選択され、LX3は、S及びRからなる群から選択され、LX4は、A及びGからなる群から選択されるか又は省略され(アミノ酸無し)、LX5は、W及びFからなる群から選択され、及びLX6は、V、G及びAからなる群から選択される)(配列番号73)を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、G HX1 S HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 D S V K G(Gly HX1 Ser HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 Asp Ser Val Lys Gly)(式中、HX1はIle又はValであり;HX2はTrp又はLeuであり;HX3はAsn又はGlnであり;HX4はSer又はGluであり;HX5はGly、Leu、又はProであり;HX6はSer、Tyr、又はAspであり;HX7はIle、Thr、又はArgであり;HX8はGly又はTyrであり;HX9はTyr又はMetであり;及びHX10はAla又はAspである)のアミノ酸配列(配列番号74)を有するVH−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、E G HX11 W N Y D A HX12 D HX13(Glu Gly HX11 Trp Asn Tyr Asp Ala HX12 Asp HX13)(式中、HX11はAsn又はSerであり;HX12はPhe又はLeuであり;及びHX13はIle又はValである)のアミノ酸配列(配列番号75)を有するVH−CDR3を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、T G T S LX1 D V G G Y N Y V S(Thr Gly Thr Ser LX1 Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser)(式中、LX1はSer又はAsnである)のアミノ酸配列(配列番号76)を有するVL−CDR1を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、D V S LX2 R P S(Asp Val Ser X4 Arg Pro Ser)(式中、LX2はAsn又はLysである)のアミノ酸配列(配列番号77)を有するVL−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 S T N W V(LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 Ser Thr Asn Trp Val)(式中、LX3はSer、Leu、Met、又はAlaであり;LX4はSer、Gly、又はGlnであり;LX5はTyr、Arg、Ser、又はGlyであり;LX6はThr又はMetであり;LX7はSer、Trp、Gly、又はValであり;及びLX8はSer又はArgである)のアミノ酸配列(配列番号78)を有するVL−CDR3を含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1はアミノ酸配列:D Y A M H(配列番号38)を含み;(b)VH−CDR2はアミノ酸配列:G HX1 S HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 D S V K G(式中、HX1は、I及びVからなる群から選択され、HX2は、W及びLからなる群から選択され、HX3は、N及びQからなる群から選択され、HX4は、S及びEからなる群から選択され、HX5は、G、L及びPからなる群から選択され、HX6は、S、Y及びDからなる群から選択され、HX7は、I、T及びRからなる群から選択され、HX8は、G及びYからなる群から選択され、HX9は、M及びYからなる群から選択され、及びHX10は、A及びDからなる群から選択される)(配列番号74)を含み;(c)VH−CDR3はアミノ酸配列:E G HX11 W N Y D A HX12 D HX13(式中、HX11は、N及びSからなる群から選択され、HX12は、F及びLからなる群から選択され、及びHX13は、I及びVからなる群から選択される)(配列番号75)を含み;(d)VL−CDR1はアミノ酸配列:T G T S LX1 D V G G Y N Y V S(式中、LX1は、N及びSからなる群から選択される)(配列番号76)を含み;(e)VL−CDR2はアミノ酸配列:D V S LX2 R P S(式中、LX2は、N及びKからなる群から選択される)(配列番号77)を含み;及び(f)VL−CDR3はアミノ酸配列:LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 S T N W V(式中、LX3は、L、M、A及びSからなる群から選択され、LX4は、S、Q及びGからなる群から選択され、LX5は、Y、S、G及びRからなる群から選択され、LX6は、T及びMからなる群から選択され、LX7は、S、W、G及びVからなる群から選択され、及びLX8は、S及びRからなる群から選択される)(配列番号78)を含む。
一部の態様において、本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質の一組のCDRは、抗体フレームワーク領域又は当該技術分野において公知の他のタンパク質スキャフォールド内に提供される。例示的抗体フレームワーク領域としては、生殖細胞系列フレームワーク領域、例えば、重鎖の抗体フレームワーク領域についてVH1−24(DP−5)、JH6、VH3−09(DP−31)、及びJH3、並びに軽鎖の抗体フレームワーク領域についてVλ1e(DPL−8)、Vλ2a2(DPL−11)、及びJL3及び/又は当業者に周知の任意の好適なフレームワーク領域が挙げられる。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、生殖細胞系列フレームワークである重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)由来の1つ以上のフレームワーク領域を含有する。重鎖ドメインのフレームワーク領域は、VH1−24(DP−5)、JH6、VH3−09(DP−31)、JH3フレームワーク及び/又は当該技術分野において周知の任意の好適なフレームワーク領域若しくはタンパク質スキャフォールドから選択され得る。軽鎖のフレームワーク領域は、Vλ1e(DPL−8)、Vλ2a2(DPL−11)、及びJL3フレームワーク、及び/又は当該技術分野において周知の任意の好適なフレームワーク領域若しくはタンパク質スキャフォールドから選択され得る。1つ以上のCDRが本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質(例えば、表1、図4又は図5に示されるLOX1結合タンパク質)から選ばれ、好適なフレームワーク及び/又はタンパク質スキャフォールドに組み込まれてもよい。
更なる態様において、本開示は、それぞれ配列番号4及び配列番号33のVH及びVLを含む抗体と同じLOX1エピトープに結合する単離LOX1結合タンパク質を提供する。
他の態様において、本開示は、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体とLOX1に対する結合に関して競合するか、又は交差競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。詳細な態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号4のVH及び配列番号33のVLを含む抗体がLOX1に結合するのを競合的に阻害することが可能である。
また、配列番号29のVH及び配列番号33のVLを含むLOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)よりも高い親和性でLOX1に結合することのできるLOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質も提供される。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本開示は、それぞれ配列番号41及び配列番号58のVH及びVLを含む抗体と同じLOX1エピトープに結合する単離LOX1結合タンパク質を提供する。
他の態様において、本開示は、配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体とLOX1に対する結合に関して競合するか、又は交差競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。詳細な態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号41のVH及び配列番号58のVLを含む抗体がLOX1に結合するのを競合的に阻害することが可能である。
また、配列番号54のVH及び配列番号70のVLを含む完全長抗体よりも高い親和性でLOX1に結合することのできるLOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質も提供される。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、本明細書に提供される抗LOX1抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はそれらの任意の組み合わせである。一部の態様において、抗LOX1抗体は、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、dsFv断片、scFv断片、又はsc(Fv)2断片である。
本開示は、種を超えてLOX1分子に結合することのできるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの単離抗LOX1抗体)を提供する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質はヒトLOX1(hLOX1)及びカニクイザルLOX1(cynoLOX1)に結合する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質はヒトLOX1(hLOX1)及びウサギLOX1に結合する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、hLOX1、cynoLOX1及びウサギLOX1に結合する。本明細書に提供される特定の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体)はLOX1(例えば、hLOX1、cynoLOX1及び/又はウサギLOX1)に特異的に結合し、且つCLEC−7A、CLEC−1A、CLEC−4L、CLEC−1B、SR−A1及び/又はSR−B3の1つ以上に結合しない。例えば、図3、図6及び図7を参照のこと。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、単離抗LOX1抗体又はその(or thereof))はヒトIgG1 TM突然変異重鎖を更に含み、ここで重鎖可変領域(VH)は、参照アミノ酸配列の配列番号4、19〜28又は29と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、単離抗LOX1抗体又はその(or thereof))はヒトIgG1 TM突然変異重鎖を更に含み、ここで重鎖可変領域(VH)は、参照アミノ酸配列の配列番号41、48〜53又は54と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、及び任意選択で重鎖定常領域又はその断片に加えて、軽鎖定常領域又はその断片を含む。特定の態様において、軽鎖定常領域はκλ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ定常領域又はヒトλ定常領域である。ある具体的な態様において、軽鎖定常領域はヒトκ定常領域である。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、ヒトκ定常領域を含有する軽鎖可変領域(VL)を有し、例えばVLは、参照アミノ酸配列の配列番号33、36、又は37と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。特定の態様において、本開示は、ヒトIgG1 TM突然変異重鎖及びヒトκ軽鎖を更に含むLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を提供し、ここで重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ、配列番号4及び配列番号33;配列番号29及び配列番号33;配列番号41及び配列番号58;又は配列番号54及び配列番号70を含む。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、ヒトκ定常領域を更に含む軽鎖可変領域(VL)を有し、例えば軽鎖は、参照アミノ酸配列の配列番号58、65〜69又は70と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含み得る。特定の態様において、本開示は、ヒトIgG1 TM突然変異重鎖及びヒトκ軽鎖を更に含むLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を提供し、ここで重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ、配列番号41及び配列番号58、配列番号48及び配列番号65、配列番号49及び配列番号66、配列番号50及び配列番号67、又は配列番号53及び配列番号58を含む。
一部の態様において、本開示は、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などの単離LOX1結合タンパク質を提供し、ここでLOX1結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する:(a)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ1、2及び/又は3又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、LOX1に対するoxLDL、C反応性タンパク質(CRP)及び/又は終末糖化産物(AGE)の結合を低減し、又は阻害する;(b)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のRhoA/Rac1、一酸化窒素(NO)、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達を低下させ、又は阻害する;(c)本明細書に開示されるアッセイを含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のカスパーゼ−8、カスパーゼ−9、及び/又はBAX活性を低下させ、又は阻害する;(d)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ1、2及び/又は3又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、一塩基多型K167Nを有するLOX1に結合する;(e)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ4又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDLインターナリゼーションを低減し、又は阻害する;(f)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ5又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDL誘導性LOX1シグナル伝達を低減し、又は阻害する;(g)BIACORE又はKinExAによって決定するとき約150pM〜約600pM(例えば約400pM)の解離定数(KD)でLOX1に結合する;(h)BIACOREによって決定するとき約1×105M-1s-1〜約6×106M-1s-1(例えば約5×105M-1s-1)のKon速度でLOX1に結合する;及び(i)BIACOREによって決定するとき約1×10-4s-1〜約3×10-4s-1(例えば約2.3×10-4s-1)のKoff速度でLOX1に結合する。
特定の態様では、本明細書に記載されるLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)によってLOX1生物学的活性を遮断すると、アテローム性動脈硬化症が低減され、及び/又はアテローム性動脈硬化症に関連する1つ以上の病態が軽減される。詳細な態様において、LOX1アンタゴニスト(例えば抗LOX1抗体又はその断片)は、LOX1の媒介によるアテローム硬化病変の発症、冠動脈疾患、脳卒中、虚血、梗塞、末梢血管疾患、再灌流、傷害、又はアテローム性動脈硬化症の発症に関連する他の臨床症状を阻害し、又は軽減する。
特定の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1、例えば、ヒトLOX1(hLOX1)及び/又はカニクイザルLOX1(cynoLOX1)、及びその抗原断片に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき10-6M未満、又は10-7M未満、又は10-8M未満、又は10-9M未満、又は10-10M未満、又は10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満、又は10-15M未満の解離定数又はKDで特異的に結合することができる。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynoLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき約1×10-8M〜約1×10-10M未満のKDで結合することができる。
別の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1に対し、1×10-3s-1未満、又は2×10-3s-1未満のKoffで結合することができる。他の態様において、LOX1結合タンパク質はLOX1に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、又は10-10s-1未満のKoffで結合する。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき1〜10×10-4s-1のKoffで結合することができる。
別の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1、例えばヒトLOX1(h LOX1)及び/又はカニクイザルLOX1に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、又は少なくとも108M-1s-1、又は少なくとも109M-1s-1の会合速度定数又はkon速度で結合することができる。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき約1×105M-1s-1〜約20×105M-1s-1のkon速度で結合することができる。
上述のとおり、LOX1と結合するVH及び/又はVLアミノ酸配列を含有するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、本明細書に示される配列(例えば、表1、図4又は図5を参照)と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。一部の態様において、LOX1と結合する1つ又は複数のVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて15個以下の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。一部の態様において、LOX1と結合する1つ又は複数のVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて8個以下の(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。更なる態様において、LOX1と結合するVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて5個以下の(例えば、1、2、3、4又は5個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。あるVH領域又はVL領域と特定のパーセント類似性を有するか、又は1つ以上の置換、欠失及び/又は挿入(例えば保存的置換)を有するVH及びVL領域を含有するLOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)は、本明細書に記載されるVH及び/又はVL領域をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的又はPCR媒介性突然変異誘発)と、続くLOX1との結合に関するコードされた改変抗体の試験、及び任意選択で、本明細書に記載される機能アッセイ又は保持機能を試験するため常法で改良し得る当該技術分野において公知のアッセイを用いた保持機能に関する試験によって得ることができる。
抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質のLOX1に対する親和性又はアビディティは、当該技術分野において公知の任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はラジオイムノアッセイ(RIA)、又は動態学(例えば、KINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)解析)を用いて実験的に決定することができる。直接結合アッセイ並びに競合的結合アッセイフォーマットは、容易に用いることができる。(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody−Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書に記載される方法を参照)。特定の抗体抗原相互作用についての計測される親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で計測された場合には変動し得る。従って、親和性及び他のLOX1結合パラメータ(例えば、KD又はKd、Kon、Koff)の計測は、LOX1結合タンパク質及びLOX1と、本明細書に記載される緩衝液などの、当該技術分野において公知のとおりの標準緩衝液との標準溶液で行われる。
本開示は、本明細書に記載されるとおりの(例えば、表1、図4又は図5を参照)抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質を更に提供し、この抗体は異種薬剤にコンジュゲートされている。特定の態様において、薬剤は、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物学的反応修飾物質、医薬品、リンホカイン、異種抗体又は抗体断片、検出可能標識、又はポリエチレングリコール(PEG)である。ヘテロコンジュゲートLOX1結合タンパク質については、本明細書の他の部分で更に詳細に考察する。
特定の態様では、LOX1結合タンパク質は抗LOX1抗体でない。タンパク質標的に高親和性で結合する非抗体ポリペプチドを同定及び作製する種々の方法が当該技術分野において公知である。例えば、Skerra,Curr.Opin.Biotech.18:295−304(2007)、Hosse et al.,Protein Science 15:14−27(2006)、Gill et al.,Curr.Opin.Biotechnol.17:653−658(2006)、Nygren,FEBS J.275:2668−76(2008)、及びSkerra,FEBS J.275:2677−83(2008)(これらの各々は、全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。特定の態様では、ファージディスプレイ技術を用いてLOX1結合タンパク質を同定/作製することができる。特定の態様では、ポリペプチドは、アンキリン、プロテインA、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサスリピートドメイン、及びチオレドキシンからなる群から選択されるタイプのタンパク質スキャフォールドを含む。
LOX1結合タンパク質と同じエピトープに結合するタンパク質
特定の態様において、本開示は、本明細書に開示される1つ以上のLOX1結合タンパク質(例えば、表1、図4又は図5を参照)と同じエピトープに結合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を提供する。用語「エピトープ」は、本明細書で使用されるとき、本開示の抗体との結合能を有する標的タンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体エピトープと非立体エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は失われるが、後者に対する結合は失われない点で区別される。かかる抗体は、標準的な抗原結合又は活性アッセイにおいて、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体、及び/又は配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体と交差競合する能力(例えば、その結合を統計的に有意な形で競合的に阻害する能力)に基づき同定することができる。
本開示はまた、本明細書に開示される単離LOX1結合タンパク質(例えば、表1、図4又は図5を参照)と同じエピトープに結合する抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質も提供する。
ある試験LOX1結合タンパク質が、例えば、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体及び/又は配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体の結合を阻害する能力から、その試験LOX1結合タンパク質がLOX1との結合に関して当該の抗体と競合し得ることが実証される;かかるLOX1結合タンパク質は、非限定的な理論によれば、その競合相手のLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)とLOX1上の同じ又は関連する(例えば、構造的に類似した、又は空間的に近接した)エピトープに結合することができる。一態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体とLOX1上の同じエピトープに結合する。別の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体とLOX1上の同じエピトープに結合する。
一態様において、本開示は、LOX1との結合に関して配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体と競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。別の態様において、本開示は、LOX1との結合に関して配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体と競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。
IV.LOX1結合タンパク質の活性
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する:(a)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ1、2及び/又は3又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、LOX1に対するoxLDL、C反応性タンパク質(CRP)及び/又は終末糖化産物(AGE)の結合を低減し、又は阻害する;(b)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のRhoA/Rac1、一酸化窒素(NO)、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達を低下させ、又は阻害する;(c)本明細書に開示されるアッセイを含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のカスパーゼ−8、カスパーゼ−9、及び/又はBAX活性を低下させ、又は阻害する;(d)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ1、2及び/又は3又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、一塩基多型K167Nを有するLOX1に結合する;(e)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ4又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDLインターナリゼーションを低減し、又は阻害する;(f)本明細書に開示されるアッセイ(例えば、実施例10、アッセイ5又は実施例11を参照)を含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDL誘導性LOX1シグナル伝達を低減し、又は阻害する;(g)BIACORE又はKinExAによって決定するとき約150pM〜約600pM(例えば約400pM)の解離定数(KD)でLOX1に結合する;(h)BIACOREによって決定するとき約1×105M-1s-1〜約6×106M-1s-1(例えば約5×105M-1s-1)のKon速度でLOX1に結合する;及び(i)BIACOREによって決定するとき約1×10-4s-1〜約3×10-4s-1(例えば約2.3×10-4s-1)のKoff速度でLOX1に結合する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、LOX1を発現する細胞のLOX1媒介性シグナル伝達を抑制し、阻害し、又は低減することができる。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、例えば本明細書に記載されるとおりの細胞ベースのアッセイを用いて計測するとき、RhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達経路のLOX1媒介性活性化を約500pM未満、約450pM未満、約450pM未満、約350pM未満、約300pM未満、約250pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約75pM未満、約100nM未満、約75nM未満、約50nM未満、約30nM未満、約20pM未満、約10nM未満、又は約5nM未満のIC50で抑制し、阻害し、又は低減することができる。
特定の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、LOX1を発現するカニクイザル内皮細胞、平滑筋細胞、及び/又はマクロファージにおけるRhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達経路のカニクイザルLOX1媒介性活性化を約700pM、約550pM、約500pM、約300pM、約250pM、約220pM、約100pM、約1pM、約0.1、約1nM、約10nM、約20nM、約30nM、約50nM又は約100nMのIC50で抑制し、阻害し、又は低減することができる。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、LOX1を発現するカニクイザル内皮細胞、平滑筋細胞、及び/又はマクロファージにおけるカニクイザルLOX1媒介性活性化を約1nM〜約500pMのIC50で抑制し、阻害し、又は低減することができる。
更なる態様において、アンタゴニストLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、LOX1を発現する内皮細胞、平滑筋細胞、及び/又はマクロファージにおいて、例えば本明細書に記載されるとおりの細胞ベースのアッセイを用いて計測するときのRhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達経路のヒトLOX1媒介性活性化を約300pM、約250pM、約100pM、約55pM、約44pM、約1pM、約0.1pM、約100nm、約50nm 約44nM、約10nM、又は約3nMのIC50で抑制し、阻害し、又は低減することができる。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、oxLDLに対するLOX1結合を阻害し又は低減する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、複数のLOX1リガンドに対するLOX1結合を阻害し又は低減する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、oxLDL及びAGEに対するLOX1結合を阻害し又は低減する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、oxLDL及びCRPに対するLOX1結合を阻害し又は低減する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、oxLDL、AGE及びCRPに対するLOX1結合を阻害し又は低減する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、oxLDL、CRP、ホスファチジルセリン、進行AGE、スモールデンスリポタンパク質(sdLDL)、酸化HDL、N4−オキソノナノイルリジン(ONL)、熱ショックタンパク質(hsp、例えばHSP60)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、血小板、白血球及び/又はアポトーシス細胞に対するLOX1結合を阻害し又は低減する。1つ以上のリガンドに対するLOX−1結合の阻害又は低減を計測する方法には、本明細書の実施例に記載されるもの及び当該技術分野において公知の任意の他の好適な方法が含まれる。
V.抗LOX1抗体の調製
特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体などの抗LOX1抗体である。
モノクローナル抗LOX1抗体は、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)によって記載されるものなどの、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法を用いて、上記に記載したとおりマウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を免疫し、免疫抗原に特異的に結合するであろう抗体のリンパ球による産生を誘発する。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫後、リンパ球を単離し、好適な骨髄腫細胞株と例えばポリエチレングリコールを使用して融合してハイブリドーマ細胞を形成し、これらの細胞は次に、融合していないリンパ球及び骨髄腫細胞を選択によって除き得る。次に、免疫沈降、イムノブロッティングによるか、又はインビトロ結合アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定するとき、hLOX1などのLOX1を特異的に標的化するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準方法を用いたインビトロ培養(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)、或いは動物における腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。次にモノクローナル抗体は、上記にポリクローナル抗体について記載したとおり、培養培地又は腹水から精製することができる。
或いは、抗LOX1モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるとおりの組換えDNA方法を用いて作製することもできる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT−PCRによるなどして、成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から単離し、従来の手順を用いてそれらの配列を決定する。次に、重鎖及び軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを好適な発現ベクターにクローニングし、これを、他の場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Per.C6細胞、又は骨髄腫細胞(例えばNS0細胞)などの宿主細胞にトランスフェクトすると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が作成される。また、組換え抗LOX1モノクローナル抗体は、記載されるとおり、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリからも単離することができる(McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991))。
完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体をコードする1つ又は複数の核酸は、更に、組換えDNA技術を用いた幾つもの異なる方法で修飾して、代替的な抗体を作成することができる。一部の態様では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインを、(1)キメラ抗体を作成するため例えばヒト抗体のそれらの領域に置換するか、又は(2)融合抗体を作成するため非免疫グロブリンポリペプチドに置換することができる。一部の態様では、定常領域をトランケートするか、又は取り除くことにより、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作成される。可変領域の部位特異的又は高密度突然変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性等を最適化することができる。
特定の態様において、抗LOX1結合タンパク質は、完全長抗hLOX1抗体及びhLOX1結合ヒト抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体などのヒトLOX1に結合する。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技法を用いて直接調製することができる。インビトロで免疫されるか、又は標的抗原に対する抗体を産生する免疫個体から単離された不死化ヒトBリンパ球を作成することができる(例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemer et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991);及び米国特許第5,750,373号明細書を参照)。
また、例えば、Vaughan et al.,Nat.Biotech.,14:309−314(1996)、Sheets et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.95:6157−6162(1998)、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991))に記載されるとおり、ファージライブラリから抗LOX1ヒト抗体(例えば、LOX1結合ヒト抗体断片)を選択することもでき、ここで当該のファージライブラリはヒト抗体を発現する。抗体ファージライブラリの作成及び使用に関する技術はまた、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;及び同第7,264,963号明細書;及びRothe et al.,J.Mol.Biol.376(4):1182−200(2008)(これらの各々は、全体として参照により本明細書に援用される)にも記載される。
親和性成熟戦略及びチェインシャッフリング戦略(Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)(参照により全体として本明細書に援用される))が当該技術分野において公知であり、高親和性抗LOX1ヒト抗体の作成に用いることができる。
一部の態様において、LOX1抗体(完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体など)は、ヒト化抗体であってもよい。非ヒト又はヒト抗体のエンジニアリング、ヒト化又はリサーフェシング方法もまた用いることができ、当該技術分野において公知である。ヒト化されるか、リサーフェシングれるか、又は同様にエンジニアリングされた抗体は、非ヒト、例えば、限定はされないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又は他の哺乳動物である供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と称されることの多い残基によって置き換えられ、インポート残基は、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変、定常又は他のドメインから取られる。かかるインポートされた配列を用いて、当該技術分野において公知のとおり、免疫原性を低減し、又は結合性、親和性、on速度、off速度、アビディティ、特異性、半減期、若しくは任意の他の好適な特性を低減し、増強し、若しくは変更することができる。一般に、LOX1結合への影響としては、CDR残基が直接、且つ最も実質的に関与する。従って、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持する一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列はヒト又は他のアミノ酸に置き換えることができる。
抗LOX1抗体はまた、任意選択で、抗原LOX1に対する高親和性及び他の有利な生物学的特性を保持しつつエンジニアリングされたヒト化抗体、リサーフェシング抗体、エンジニアリング抗体又はヒト抗体であってもよい。この目標を達成するため、任意選択で、ヒト化(又はヒト)又はエンジニアリングLOX1抗体、例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体、例えば、リサーフェシング抗体を、親配列、エンジニアリングされた配列、及びヒト化された配列の三次元モデルを使用した親配列及び様々な概念的ヒト化産物及びエンジニアリング産物の分析プロセスによって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者は精通している。選択した候補免疫グロブリン配列の推定上の三次元立体構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の見込まれる役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがLOX1などのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、コンセンサス配列及びインポート配列からフレームワーク(FW)残基を選択して組み合わせることにより、1つ又は複数の標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特性を実現することができる。
本開示の抗LOX1抗体のヒト化、リサーフェシング又はエンジニアリングは、限定はされないが、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,639,641号明細書、5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;同第4,816,567号明細書、同第7,557,189号明細書;同第7,538,195号明細書;及び同第7,342,110号明細書;国際出願PCT/US98/16280号明細書;PCT/US96/18978号明細書;PCT/US91/09630号明細書;PCT/US91/05939号明細書;PCT/US94/01234号明細書;PCT/GB89/01334号明細書;PCT/GB91/01134号明細書;PCT/GB92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット;国際公開第90/14424号パンフレット;国際公開第90/14430号パンフレット;及び欧州特許第229246号明細書(これらの各々は、そこに引用される文献を含め、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものを含めた任意の公知の方法を用いて実施することができる。
アンタゴニストヒト抗LOX1抗体また、免疫時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全レパートリーを産生する能力を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいても作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;及び同第5,661,016号明細書に記載されている。
特定の態様において、抗LOX1抗体はLOX1結合抗体断片である。抗体断片の作製については、様々な技法が公知である。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化によって得られている(例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Meth.24:107−117(1993);Brennan et al.,Science 229:81(1985))。特定の態様において、LOX1結合抗体断片は組換えで作製される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は、いずれも大腸菌(E.coli)又は他の宿主細胞で発現させて、そこから分泌させることができ、このようにしてこれらの断片を大量に作製することが可能である。かかるLOX1結合抗体断片はまた、上記で考察した抗体ファージライブラリから単離することもできる。LOX1結合抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるとおりの線状抗体であってもよい。抗体断片の他の作製技法が当該技術分野において公知である。
本開示によれば、LOX1に特異的な一本鎖抗体の産生に、当該技術分野において公知の技法を適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照)。加えて、Fab発現ライブラリの構築に、LOX1に対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ有効な同定を可能にする方法を適合させることができる(例えば、Huse et al.,Science 246:1275−1281(1989)を参照)。抗LOX1結合抗体断片は、限定はされないが:(a)抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2断片;(b)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab断片、(c)抗LOX1抗体をパパイン及び還元剤で処理することによって生成されるFab断片、及び(d)Fv断片を含め、当該技術分野において公知の技法によって作製することができる。
特定の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、LOX1抗体(完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体など)は、その血清中半減期が増加するように修飾することができる。これは、例えば、LOX1結合タンパク質の適切な領域の突然変異によってLOX1結合タンパク質にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことによるか、又は次にはいずれかの末端若しくは中央で(例えば、DNA又はペプチド合成によって)LOX1結合タンパク質に融合するペプチドタグにそのエピトープを組み込むことによるか、又はYTE突然変異によって達成し得る。LOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体などのLOX1抗体)の血清中半減期を増加させる他の方法、例えば、PEGなどの異種分子とのコンジュゲーションが、当該技術分野において公知である。
ヘテロコンジュゲートLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)もまた、本開示の範囲内にある。ヘテロコンジュゲートLOX1結合タンパク質は、2つの共有結合的につながったタンパク質で構成される。かかるタンパク質は、例えば、免疫細胞を望ましくない細胞に標的化させることが提案されている(例えば、米国特許第4,676,980号明細書を参照)。ヘテロコンジュゲートLOX1結合タンパク質は、架橋剤が関わる方法を含めた、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製し得ることが企図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか、又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を構築することができる。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートが挙げられる。
本明細書に提供されるとおりの完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体などの修飾抗LOX1抗体は、抗体とLOX1との会合をもたらす任意の種類の可変領域を含み得る。この点で、可変領域は、LOX1抗原に対する体液性応答を生じ且つ免疫グロブリンを生成するように誘導することのできる任意の種類の哺乳動物のものを含み、又はそれに由来することができる。従って、抗LOX1抗体の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカク等)又はルピナス起源のものであり得る。一部の態様において、修飾抗LOX1抗体の可変領域及び定常領域は、両方ともにヒトのものである。他の態様において、適合性抗体(通常は非ヒト供給源に由来する)の可変領域は、分子の結合特性が向上し、又は免疫原性が低下するようにエンジニアリングし、又は特異的に調整することができる。この点で、本開示に係る有用な可変領域は、インポートされたアミノ酸配列を含めることによってヒト化するか、又は他の形で改変することができる。
特定の態様では、抗LOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)の重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインが、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、及び/又は部分的フレームワーク領域置換及び配列変更によって改変される。CDRは、フレームワーク領域の由来である抗体と同じクラス又は更にはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRは異なるクラスの抗体、特定の態様では異なる種の抗体に由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すために、全てのCDRをドナー可変領域の完全なCDRに置き換える必要はない。むしろ、抗原結合部位の活性の維持に必要な残基を移しさえすれば十分である。米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書及び同第5,693,762号明細書に記載される説明を所与とすれば、免疫原性が低下した機能性抗体を得ることは、ルーチンの実験を実施することによるか、或いは手探り試験によって、十分に当業者の能力の範囲内にある。
可変領域の改変にも関わらず、当業者は、本開示の修飾抗LOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)が、天然の又は改変されていない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較したときに腫瘍局在化の増加又は血清中半減期の低下などの所望の生化学的特性がもたらされるように、定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部が欠失しているか、又は他の形で改変されている抗体を含むことを理解するであろう。一部の態様において、修飾抗LOX1抗体の定常領域はヒト定常領域を含み得る。定常領域の修飾には、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換が含まれ得る。即ち、本明細書に開示される修飾抗LOX1抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)のうちの1つ以上及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)に対する改変又は修飾を含み得る。一部の態様において、修飾抗LOX1抗体は、1つ以上のドメインが部分的又は完全に欠失している定常領域を含み得ることが企図される。一部の態様において、修飾抗LOX1抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれたドメイン欠失コンストラクト又は変異体を含み得る(ΔCH2コンストラクト)。一部の態様において、削除された定常領域ドメインは、典型的には欠けている定常領域によって付与される分子柔軟性の一部を提供する短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)に置き換えることができる。
その構成に加えて、当該技術分野では、定常領域が幾つかのエフェクター機能を媒介することが知られている。例えば、補体のC1成分が抗体に結合すると、補体系が活性化される。補体の活性化は細胞病原体のオプソニン化及び溶解に重要である。補体の活性化はまた炎症反応も刺激し、また、自己免疫性の過敏症にも関与し得る。更に、抗体はFc領域を介して細胞に結合し、ここでは抗体Fc領域上のFc受容体部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。IgG(γ受容体)、IgE(η受容体)、IgA(α受容体)及びIgM(μ受容体)を含め、異なる抗体クラスに特異的なFc受容体が幾つもある。抗体が細胞表面上のFc受容体に結合すると、抗体被覆粒子の貪食及び破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、又はADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、胎盤通過及び免疫グロブリン産生の制御を含めた幾つもの重要且つ多様な生物学的反応が惹起される。
特定の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は改変されたエフェクター機能を有し、ひいてはそれが、投与される抗LOX1抗体の生物学的プロファイルに影響を及ぼす。例えば、定常領域ドメインを(点突然変異又は他の手段によって)欠失又は不活性化させると、循環中の修飾抗体のFc受容体結合が低下し得る。他の場合に、定常領域を修飾すると、補体結合が調節され、ひいてはコンジュゲートした細胞毒の血清中半減期及び非特異的な会合が低下し得る。定常領域の更に他の修飾を用いると、抗原特異性又は抗体柔軟性の増加による局在化の増進を可能にするジスルフィド結合又はオリゴ糖部分を除去することができる。同様に、本開示における定常領域に対する修飾は、十分に当業者の範囲内にある周知の生化学的又は分子工学的技法を用いて容易に作製することができる。
一部の態様において、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質は、1つ以上のエフェクター機能を有しないLOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体)である。例えば、一部の態様において、抗LOX1抗体は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有しない。特定の態様において、抗LOX1抗体はFc受容体及び/又は補体因子に結合しない。特定の態様において、抗LOX1抗体はエフェクター機能を有しない。
一部の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、CH3ドメインがそれぞれの修飾抗体のヒンジ領域に直接融合するようにエンジニアリングされる。他のコンストラクトでは、ヒンジ領域と修飾CH2及び/又はCH3ドメインとの間にペプチドスペーサーが挿入される。例えば、適合性コンストラクトを発現させることができ、ここではCH2ドメインが欠失しており、且つ残りのCH3ドメイン(修飾又は非修飾)が5〜20アミノ酸のスペーサーでヒンジ領域に結合している。かかるスペーサーを加えると、例えば、定常ドメインの調節エレメントが空いて利用可能なままであること、又はヒンジ領域が柔軟なままであることが確実になり得る。ある場合には、アミノ酸スペーサーが免疫原性で、且つコンストラクトに対する望ましくない免疫応答を誘導すると分かる。従って、特定の態様では、修飾抗LOX1の所望の生化学的品質を維持するため、コンストラクトに加えられる任意のスペーサーは比較的免疫原性が低いか、又は更には完全に省かれてもよい。
定常領域ドメイン全体の欠失に加えて、抗LOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、定常領域における数個の又は更には単一のアミノ酸の部分的欠失又は置換によって修飾することができる。例えば、CH2ドメインの選択範囲における単一アミノ酸の突然変異が、Fc結合を実質的に低下させるには且つそれによることで十分であり得る。同様に、エフェクター機能(例えば、補体C1Q結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインを完全に又は部分的に欠失させることができる。定常領域のかかる部分欠失により、対応する定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能はインタクトなまま残しておきながら、アンタゴニスト抗LOX1抗体の選択された特性(例えば、血清中半減期)を向上させることができる。更に、本明細書に提供される抗LOX1抗体の定常領域は、得られるコンストラクトのプロファイルを強化する1つ以上のアミノ酸の突然変異又は置換によって修飾することができる。この点で、修飾抗LOX1抗体の構成及び免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を破壊することが可能である。本開示はまた、エフェクター機能の低下若しくは増加又はより多くの細胞毒、標識若しくは炭水化物部分に対する結合部位の提供などの望ましい特性を増強するため、定常領域に1つ以上のアミノ酸の付加を含む抗LOX1抗体も提供する。かかる態様では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入又は反復することが望ましい場合もある。
本開示はまた、本明細書に開示される抗LOX1抗体(例えば、マウス、キメラ、ヒト化及びヒトLOX1結合タンパク質)と構造が実質的に相同な及び/又は1つ以上の機能が類似している変異体及び均等物にも関する。これらの変異体は、例えば、保存的アミノ酸残基置換突然変異を含み得る。当該技術分野において一般に理解されているとおり、保存的アミノ酸残基置換とは、アミノ酸残基を同じ一般クラス内の別の残基で置換すること、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、又はある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸によって置換することを指す。保存的アミノ酸置換によって意味されるものは、当該技術分野において公知である。
本明細書に提供される抗LOX1抗体などのLOX1結合タンパク質は、通常はタンパク質の一部でない追加的な化学的部分を含むように誘導体化することができる。かかる誘導体化部分は当該技術分野において公知であり、例えば、LOX1結合タンパク質の溶解度、生物学的半減期、バイオアベイラビリティを向上させ、且つその他、安定性、製剤化及び/又は治療特性を向上させる働きをし得る。かかる部分についての非包括的な概説は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)を参照することができる。
VI.LOX1結合タンパク質をコードする核酸及びその発現
本開示は、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体を含めたLOX1結合タンパク質(例えば、表1、図4又は図5に記載されるものを参照)をコードする核酸分子を提供する。本明細書に開示される核酸分子は、RNAの形態であっても、又はDNAの形態であってもよい。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ;二本鎖又は一本鎖であってもよく、一本鎖の場合にはコード鎖又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。特定の態様において、核酸分子は単離されている。更なる態様において、核酸分子は実質的に純粋である。一部の態様において、核酸はcDNAであるか、又はcDNAに由来する。一部の態様において、核酸は組換え産生される。
一部の態様において、核酸分子は、宿主細胞又はインビトロでのコード配列の発現を制御する制御配列に作動可能に連結されたLOX1結合タンパク質コード配列を含む。詳細な態様では、コード配列はcDNAである。本開示はまた、宿主細胞又はインビトロでのコード配列の発現を制御する制御配列に作動可能に連結されたLOX1結合タンパク質コード配列を含む核酸分子を含むベクターにも関する。
一部の態様において、核酸分子は、同じリーディングフレームにおいて異種ポリヌクレオチド配列に融合した成熟LOX1結合タンパク質のコード配列を含む。一部の態様において、異種ポリヌクレオチド配列は、LOX1コード核酸分子で形質転換された宿主細胞からの発現タンパク質の分泌を促進するリーダーペプチド配列をコードする。リーダー配列を含むタンパク質はプレタンパク質と称され、そのリーダー配列が宿主細胞によって切断されると成熟形態のポリペプチドが形成され得る。宿主細胞における組換えタンパク質の分泌を促進するかかるリーダーペプチド配列及びその使用は、概して当該技術分野において公知である。更なる態様において、異種ポリヌクレオチド配列は、例えば、組換え発現したLOX1結合タンパク質の精製を促進し、そのタンパク質安定性及び/又は治療若しくは診断特性を追加し又は向上させる働きをし得る追加的な5’及び/又は3’アミノ酸残基をコードする。
一部の態様において、本開示は、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー又はシーケンシングプライマーとしての使用に十分なcDNA分子などの単離核酸を提供する。
特定の態様において、本開示は、軽鎖可変領域(VL)をコードする単離核酸分子を提供し、ここでVLは、それぞれ配列番号30;配列番号31;又は配列番号32、34又は35と同一であるか、又はそれに対してVL−CDRの1つ以上に合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換を有するVL−CDR1、VL−CDR2、及びVL−CDR3アミノ酸配列を含む。他の態様において、本開示は、軽鎖可変領域(VL)をコードする単離核酸分子を提供し、ここでVLは、それぞれ配列番号55又は59;配列番号56又は60;又は配列番号57、61〜63又は64と同一であるか、又はそれに対してVL−CDRの1つ以上に合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換を有するVL−CDR1、VL−CDR2、及びVL−CDR3アミノ酸配列を含む。
本開示は、重鎖可変領域(VH)をコードする単離核酸分子を更に提供し、ここでVHは、それぞれ配列番号1;配列番号2、5〜12又は13;及び配列番号3、14〜17又は18と同一であるか、又はそれに対してVH−CDRの1つ以上に合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換を有するVH−CDR1、VH−CDR2、及びVH−CDR3アミノ酸配列を含む。他の態様において、本開示は、重鎖可変領域(VH)をコードする単離核酸分子を提供し、ここでVHは、それぞれ配列番号38;配列番号39、42又は43;及び配列番号40、44〜46又は47と同一であるか、又はそれに対してVH−CDRの1つ以上に合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換を有するVH−CDR1、VH−CDR2、及びVH−CDR3アミノ酸配列を含む。
本開示は、軽鎖可変領域(VL)をコードするcDNAなどの単離核酸を更に提供し、ここでVLは、配列番号33、配列番号36、及び配列番号37からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様において、単離核酸分子は軽鎖可変領域(VL)をコードし、ここでVLは、参照アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
更に、本開示は、重鎖可変領域(VH)をコードする単離核酸分子を提供し、ここでVHは、配列番号4、19〜28及び29からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様において、単離核酸分子は重鎖可変領域(VH)をコードし、ここでVHは、参照アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
特定の態様において、本開示は、LOX1に特異的に結合するLOX1結合タンパク質(例えば、表1、図4又は図5に示されるLOX−1結合タンパク質)をコードする核酸分子又は核酸分子の組み合わせを提供する。更に、本明細書に記載されるとおりの、cDNAなどの核酸分子(nucleic molecule)又は核酸分子の組み合わせを含むベクターが提供される。好適なベクターは本明細書の他の部分に記載され、当該技術分野において公知である。
特定の態様において、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ配列番号4及び配列番号33、配列番号23及び配列番号36、又は配列番号27及び配列番号37をコードする参照核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。詳細な態様において、単離LOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)は、それぞれ配列番号4及び配列番号33をコードする核酸配列によってコードされる。
本開示は、軽鎖可変領域(VL)をコードするcDNAなどの単離核酸を更に提供し、ここでVLは、配列番号58、65〜69及び70からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様において、単離核酸分子は軽鎖可変領域(VL)をコードし、ここでVLは、参照アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本開示はまた、重鎖可変領域(VH)をコードする単離核酸分子も提供し、ここでVHは、配列番号41、48〜53及び54からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様において、単離核酸分子は重鎖可変領域(VH)をコードし、ここでVHは、参照アミノ酸配列と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
特定の態様において、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ配列番号54及び配列番号70、配列番号41及び配列番号58、配列番号48及び配列番号65、配列番号49及び配列番号66、配列番号50及び配列番号67、又は配列番号53及び配列番号58をコードする参照核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。詳細な態様において、単離LOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)は、それぞれ配列番号41及び配列番号58をコードする核酸配列によってコードされる。
一部の態様において、単離核酸は、表1、図4又は図5に示される一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR3及びVL−CDR3を含むLOX1結合タンパク質をコードする。一部の更なる態様において、単離核酸は、表1、図4又は図5に示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むLOX1結合タンパク質をコードする。
上記に記載したとおりの核酸分子組成物において、VHをコードする核酸及びVLをコードする核酸は単一のベクターに存在してもよく、又は別個のベクター上にあってもよい。従って、本開示は、上記に記載される核酸分子組成物又は核酸分子の組み合わせを含む1つ以上のベクターを提供する。
ある場合には、上記に記載したとおりのVH及びVLをコードするポリヌクレオチド組成物は、LOX1、例えばヒト及びカニクイザルLOX1に特異的に結合する抗体(LOX1結合抗体断片を含む)をコードすることができる。一部の態様において、ポリヌクレオチド組成物は、それぞれ配列番号4及び配列番号33のVH及びVLを含む抗体又は抗原結合断片と同じエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。他の態様において、ポリヌクレオチド組成物は、それぞれ配列番号41及び配列番号58のVH及びVLを含む抗体又は抗原結合断片と同じエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。一部の更なる態様において、ポリヌクレオチド組成物は、表1、図4又は図5に示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むLOX1結合タンパク質と同じエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。
更なる態様において、本開示は、上記に提供される1つ又は複数の核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供し、ここで宿主細胞は、一部の例では、LOX1に特異的に結合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を発現することができる。かかる宿主細胞は、本明細書に提供されるとおりのLOX1結合タンパク質の作製方法において利用することができ、ここでこの方法は、(a)宿主細胞を培養するステップと、(b)宿主細胞から発現したLOX1結合タンパク質を単離するステップとを含む。
本開示はまた、LOX1結合タンパク質の発現能を有する宿主細胞又はハイブリドーマを好適な条件下で培養するステップを含むLOX1結合タンパク質の作製方法も提供し、任意選択で、宿主細胞又はハイブリドーマから分泌されたLOX1結合タンパク質の単離方法を提供する。加えて、本開示は、本開示の方法を用いて宿主細胞又はハイブリドーマからの分泌後に単離されたLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を更に提供する。
特定の態様において、ポリヌクレオチドは、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列と同じリーディングフレームにおいて融合した1つ又は複数の成熟LOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗体及びLOX1結合抗体断片などのLOX1抗体)の1つ又は複数のコード配列を含む。例えば、マーカー配列は、pQE−9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグであってもよく、それにより細菌宿主の場合にマーカーに融合した成熟ポリペプチドの精製が提供され、又はマーカー配列は、哺乳類宿主(例えば、COS−7細胞)を使用するときには、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグであってもよい。
抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片などのLOX1結合タンパク質をコードする核酸変異体もまた提供される。核酸変異体は、コード領域、非コード領域、又は両方に改変を含み得る。一部の態様において、核酸変異体は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じるものの、コードされるポリペプチドの特性又は活性は改変しない改変を含む。一部の態様において、核酸変異体は、遺伝子コードの縮重に起因するサイレント置換によって作製される。核酸変異体は、種々の理由で、例えば、特定の宿主用にコドン発現を最適化するため(ヒトmRNAのコドンを大腸菌(E.coli)などの細菌宿主が選好するものに変更するため)作製され得る。本明細書に記載される核酸を含むベクター及び細胞もまた提供される。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗体及びLOX1結合抗体断片などの抗LOX1抗体)をコードする核酸配列は、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用した化学合成によって構築される。かかるオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づき設計し、宿主細胞の選好に基づきコドンを最適化することができる。標準方法を常法で適用して、LOX1結合タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成することができる。
アセンブル後(合成、部位特異的突然変異誘発又は別の方法による)、LOX1結合タンパク質をコードする核酸配列は、常法で、所望の宿主におけるLOX1結合タンパク質の発現に適切な制御配列に作動可能に連結することができる。一部の態様において、LOX1結合タンパク質をコードする核酸配列は、発現ベクターに挿入され、且つ所望の宿主におけるタンパク質の発現に適切な制御配列に作動可能に連結される。宿主におけるトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを達成するため、遺伝子は、選択の発現宿主において機能性の転写及び翻訳発現制御配列に作動可能に連結し、又はそれと関連付けることができる。
特定の態様では、組換え発現ベクターを使用して、抗LOX1抗体又はLOX1結合抗体断片などのLOX1結合タンパク質をコードするDNAを増幅し及び発現させる。組換え発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来する好適な転写又は翻訳調節エレメントに作動可能に連結された、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗体及びLOX1結合抗体断片などの抗LOX1抗体)のポリペプチド鎖をコードする合成の又はcDNA由来のDNA断片を有する複製可能なDNAコンストラクトである。転写単位は、概して、以下に更に詳細に記載するとおり、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する1つ又は複数の遺伝エレメント、例えば転写プロモーター又はエンハンサーと、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される構造又はコード配列と、(3)適切な転写及び翻訳開始及び終結配列との集合を含む。かかる調節エレメントは、転写を制御するためオペレーター配列を含み得る。一般に複製起点によって付与される宿主における複製能、及び形質転換体の認識を促進する選択遺伝子が、更に組み込まれ得る。DNA領域は、それらが機能上互いに関係しているとき、作動可能に連結している。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現する場合、そのポリペプチドのDNAに作動可能に連結している;プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合、コード配列に作動可能に連結している;又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にするような位置にある場合、コード配列に作動可能に連結している。酵母発現系での使用が意図される構造エレメントは、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。或いは、組換えタンパク質がリーダー配列又は輸送配列なしに発現する場合、タンパク質はN末端メチオニン残基を含み得る。この残基は、任意選択で、後に発現した組換えタンパク質から切断されて、最終的なタンパク質を提供し得る。特定の態様において、本開示は、任意選択で1つ以上の担体、希釈剤、賦形剤、又は他の添加剤を更に含む、上記又は本明細書の他の部分に記載するとおりの核酸又はベクターを含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。
また、本明細書に開示される核酸分子又はcDNA分子及び/又はベクターで形質転換された宿主細胞も提供される。本開示はまた、制御配列に作動可能に連結され、且つ任意選択でベクターに挿入された本開示の1つ又は複数の核酸分子で形質転換された宿主細胞も提供する。一部の態様において、宿主細胞は哺乳類宿主細胞である。更なる態様において、哺乳類宿主細胞は、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。他の態様において、宿主細胞はハイブリドーマである。
加えて、本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質をコードする核酸を発現する宿主細胞は、LOX1結合タンパク質を産生するハイブリドーマである。
更なる態様において、本開示は、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を作製する方法であって、本明細書に開示される形質転換宿主細胞又はハイブリドーマをLOX1結合タンパク質の産生に好適な条件下で培養するステップを含む方法を提供する。本開示は、任意選択で、宿主細胞又はハイブリドーマから分泌されたLOX1結合タンパク質を単離することを提供する。本開示はまた、任意選択で、この方法を用いて作製されるLOX1結合タンパク質、及びLOX1結合タンパク質と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供する。
発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存することになる。幅広い種類の発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、pCR 1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体を含めた大腸菌(E.coli)由来のプラスミドなど、公知の細菌プラスミドが挙げられ、また、M13及び繊維状一本鎖DNAファージなど、より広い宿主域のプラスミドも挙げられる。
LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の発現に好適な宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下にある原核生物、酵母、昆虫又は高等真核生物細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば大腸菌(E.coli)又はバチルス属(bacilli)が含まれる。高等真核生物細胞には、以下に記載するとおりの哺乳類起源の樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系もまた用いることができる。抗体作製を含めたタンパク質作製方法に関する更なる情報については、例えば、米国特許出願公開第2008/0187954号明細書、米国特許第6,413,746号明細書及び同第6,660,501号明細書、及び国際公開第04009823号パンフレット(これらの各々は本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)を参照することができる。
種々の哺乳類又は昆虫細胞培養系もまた、組換えLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の発現に有利に用いることができる。哺乳類細胞における組換えLOX1結合タンパク質の発現を実施してもよく、なぜならかかるタンパク質は概して正しく折り畳まれ、適切に修飾され、且つ完全に機能性であるためである。好適な哺乳類宿主細胞株の例としては、HEK−293及びHEK−293T、Gluzman(Cell 23:175(1981))によって記載されるサル腎細胞のCOS−7株、及び他の細胞株、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa及びBHK細胞株が挙げられる。哺乳類発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、発現のため遺伝子に連結した好適なプロモーター及びエンハンサー、及び他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列、例えば、必須リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与・受容部位、及び転写終結配列などを含み得る。昆虫細胞における異種タンパク質産生用のバキュロウイルス系が、Luckow and Summers,BioTechnology 6:47(1988)によってレビューされている。
形質転換宿主又はハイブリドーマによって産生されるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、任意の好適な方法によって精製することができる。かかる標準方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度差、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法によるものが含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザ被覆配列及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付加すると、適切なアフィニティーカラムに通過させることによる容易な精製が可能となり得る。単離されたLOX1結合タンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学などの技法を用いて物理的に特徴付けることもできる。
例えば、組換えLOX1結合タンパク質を培養培地に分泌する系からの上清を、初めに市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮し得る。この濃縮ステップの後、濃縮物を好適な精製マトリックスに適用し得る。或いは、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックス又は基質を用いてもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース又はタンパク質精製において一般的に用いられる他のタイプであってもよい。或いは、陽イオン交換ステップが用いられてもよい。好適な陽イオン交換体としては、スルホプロピル基又はカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスが挙げられる。最後に、疎水性RP−HPLC媒体、例えばペンダントメチル基又は他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)ステップを用いて、LOX1結合タンパク質を更に精製することができる。様々に組み合わせた前述の精製ステップの一部又は全てを常法的に用いて、均一な組換えLOX1結合タンパク質を提供することもできる。
細菌培養物で産生された組換えLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、例えば、細胞ペレットからの初期抽出と、続く1つ以上の濃縮、塩析、水溶性イオン交換又はサイズ排除クロマトグラフィーステップによって単離することができる。最終精製ステップには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いた微生物細胞は、凍結融解サイクル処理、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含めた、任意の好都合な方法によって破壊することができる。
完全長抗体及び抗原結合抗体断片などの標的結合タンパク質を精製するための当該技術分野において公知の方法としてはまた、例えば、米国特許出願公開第2008/0312425号明細書、同第2008/0177048号明細書、及び同第2009/0187005号明細書(これらの各々は本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものも挙げられる。
VII.治療用LOX1結合タンパク質を使用した治療方法
LOX1、LOX1活性、及び/又はLOX1発現に関連する疾患を有する対象を治療するためのLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の使用方法が提供される。LOX1発現の検出方法は当該技術分野において公知であり、限定はされないが、PCR法、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISAなどが挙げられる。
更なる態様において、本開示は、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質、例えば、抗LOX1抗体又はその断片)と薬学的に許容可能な担体とを含有する医薬組成物を提供する。一部の態様において、本開示は、薬剤として使用するための、LOX1結合タンパク質と薬学的に許容可能な担体とを含有する医薬組成物を提供する。本開示はまた、LOX1、LOX1活性、LOX1発現及び/又は低下したHDL媒介性シグナル伝達に関連する疾患又は病態を治療し、予防し、及び/又は改善するための医薬組成物の使用も提供する。一部の態様において、本明細書に提供される医薬組成物を使用して治療される疾患又は病態は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び/又は癌である。
一部の態様では、医薬組成物が、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)と、薬学的に許容可能な担体とを含有し、更に、標識基又はエフェクター基を含む。本明細書で使用されるとき、「標識」は、スクリーニングでの検出を可能にするため付加される1つ以上のエレメント、同位元素、又は化学的化合物を指す。標識は概して3つのクラスに分類される:(a)同位体標識(これは放射性同位体又は重同位体であり得る)、(b)小分子標識(これには、蛍光色素及び比色定量色素、又は他の標識方法を可能にするビオチンなどの分子が含まれ得る)、及び(c)免疫標識(これは、抗体によって認識される融合パートナーとして組み込まれたエピトープであり得る)。「標識基」は任意の検出可能標識を指す。一部の態様において、標識基は、潜在的な立体障害を低下させるためスペーサー(例えばペプチドスペーサー)を介してLOX1結合タンパク質にカップリングされる。標識は化合物に任意の位置で組み込むことができ、タンパク質発現中にインビトロ又はインビボで組み込むことができる。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野において公知であり、提供される方法の実施に用いることができる。更なる態様において、標識基は、同位体標識、磁気標識、酸化還元活性部分、光学色素、ビオチン化基及び二次レポーターによって認識されるポリペプチドエピトープからなる群から選択される。一部の態様において、標識基は、緑色蛍光タンパク質又はその誘導体(例えば、高感度GFP、青色蛍光タンパク質又はその誘導体(例えば、EBFP(高感度青色蛍光タンパク質)、EBFP2、Azurite、mKalama1、シアン蛍光タンパク質又はその誘導体(例えば、ECFP(高感度シアン蛍光タンパク質)、Cerulean、CyPet)、黄色蛍光タンパク質又はその誘導体(例えば、YFP、Citrine、Venus、YPet)などの蛍光タンパク質である。一部の態様において、ポリペプチドエピトープは、ビオチンシグナル伝達ペプチド、ヒスチジンペプチド(his)、ヘマグルチニン(HA)、Flag、金結合ペプチドから選択されるメンバーである。更なる態様において、エフェクター基は、放射性同位元素、放射性核種、毒素、治療薬及び化学療法剤からなる群から選択される。
更なる態様において、エフェクター基は、放射性同位元素、放射性核種、毒素、治療薬及び化学療法剤からなる群から選択される。
以下の考察では、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)による診断方法並びに様々な疾患及び病態の治療、予防及び/又は改善方法を述べる。一部の態様において、LOX1結合タンパク質はヒト抗体、マウス抗体、又はヒト化抗体である。
一態様において、本開示は、LOX1に関連する疾患若しくは病態を有するか、又はそうした疾患若しくは病態を発症するリスクがある対象にLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を投与するステップを含む、疾患又は病態の治療、予防又は改善を提供する。別の態様において、治療は、対象から単離された組織又は細胞へのLOX1結合タンパク質の投与を含み、ここで対象は、LOX1に関連する疾患若しくは病態を有するか、又はそうした疾患若しくは病態を発症するリスクがある。
本開示はまた、対象のアテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌に関連する疾患又は病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の態様において、本方法は、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は単独で、又は併用療法として投与される。
本開示はまた、対象のLOX1活性を低減し又は阻害する方法及び/又はHDL媒介性シグナル伝達を刺激し又は増加させる方法も提供する。一部の態様において、本方法は、それを必要としている対象(例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び/又は癌と診断された対象)に有効量のLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を投与するステップを含む。
加えて、アテローム性動脈硬化症を治療し、予防し、及び/又は改善する方法が提供される。一部の例では、本方法は、アテローム性動脈硬化症を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)を投与される対象は、アテローム性動脈硬化症を発症するリスクがある。一部の態様において、対象はアテローム生成促進病態を有する。更なる態様において、アテローム生成促進病態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、高血圧、高血糖、心不全、血管外傷、臓器移植、脂質異常症(例えば高脂血症)、炎症(例えば慢性炎症及びエンドトキシン誘導炎症)及び/又は細菌感染症である。また、アテローム性動脈硬化症を軽減する方法も提供される。一部の例では、本開示は、対象のアテローム性動脈硬化症を軽減する方法であって、アテローム性動脈硬化症を有する対象にLOX1結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供する。
また、血栓症を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供される。一部の例では、本方法は、血栓症を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、血栓症を発症するリスクがある。一部の態様において血栓症は動脈血栓症である。更なる態様において、血栓症は深部静脈血栓症である。
本開示はまた、冠動脈疾患(CAD)又はCADに関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、CADを有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、CADを発症するリスクがある。一部の態様において、対象はアテローム生成促進病態を有する。更なる態様において、アテローム生成促進病態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、高血圧、高血糖、心不全、血管外傷、臓器移植、脂質異常症(例えば高脂血症)、炎症(例えば慢性炎症及びエンドトキシン誘導炎症)及び/又は細菌感染症である。
本開示はまた、虚血又は虚血に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、虚血を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、虚血を発症するリスクがある。一部の態様において、対象は心筋虚血を有する。他の態様において、対象は心筋虚血を発症するリスクがある。更なる態様において、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、高血圧、高血糖、心不全、血管外傷、臓器移植、脂質異常症(例えば高脂血症)、炎症(例えば慢性炎症及びエンドトキシン誘導炎症)及び/又は細菌感染症を有する。
また、梗塞又は梗塞に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供される。一部の例では、本方法は、梗塞を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、梗塞を発症するリスクがある。一部の態様において、対象は心筋梗塞を有する。他の態様において、対象は心筋梗塞を発症するリスクがある。更なる態様において、対象は、虚血、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、高血圧、高血糖、心不全、血管外傷、臓器移植、脂質異常症(例えば高脂血症)、炎症(例えば、慢性炎症及びエンドトキシン誘導炎症)及び/又は細菌感染症を有する。
本開示はまた、急性冠症候群(ACS)又はACSに関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、ACSを有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、ACSを発症するリスクがある。一部の態様において、対象は、sLOX血清レベルの上昇又はLOX1活性の上昇を有する。更なる態様において、対象はアテローム性動脈硬化症を有する。
本開示はまた、脳卒中又は脳卒中に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、脳卒中を起こしたことがある対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、脳卒中を起こすリスクがある。一部の態様において、対象は、sLOX血清レベルの上昇又はLOX1活性の上昇を有する。更なる態様において、対象はアテローム性動脈硬化症を有する。
また、再灌流傷害又は再灌流傷害に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供される。一部の例では、本方法は、再灌流傷害を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、再灌流傷害を発症するリスクがある。一部の態様において、対象は手術を受ける予定である。他の態様において、対象は手術を受けたことがある。一部の態様において手術は移植又は冠動脈バイパス術である。更なる態様において、患者は心筋虚血再灌流傷害を有するか、又はそれを発症するリスクがある。更なる態様において、本方法は、心筋傷害を軽減し、コラーゲン蓄積を軽減し、血清CK−MB及びMDAを低減し、心筋細胞サイズを低減し、白血球浸潤を低減し、及び/又は心機能不全を低減する(例えば、LVPを低減してLVEDPを増加させる)。更なる態様において、本方法は、心一回拍出量、左室内径短縮率、及び/又は駆出分画を増加させる。
本開示はまた、再狭窄又は再狭窄に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、再狭窄を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、再狭窄を発症するリスクがある。一部の態様において、対象は手術を受ける予定である。他の態様において、対象は手術を受けたことがある。一部の態様において、手術は血管内手技である。更なる実施形態において、手術は、血管手術、心臓手術又は血管形成術である。更なる態様において、手技は移植又は冠動脈バイパス術である。更なる態様において、治療、予防、及び/又は改善される再狭窄は、ステント内再狭窄又は血管形成術後再狭窄である。
更なる態様において、本開示は、末梢血管疾患(PVD)又はPVDに関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法を提供する。一部の例では、本方法は、PVDを有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中にある)を投与するステップを含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質を投与される対象は、PVDを発症するリスクがある。一部の態様において、対象はsLOX血清レベルの上昇又はLOX1活性の上昇を有する。更なる態様において、対象はアテローム性動脈硬化症を有する。
本開示はまた、炎症又は炎症に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、炎症を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。更なる態様において、対象は慢性炎症を有する。一部の態様において、対象はoxLDLa及び/又はsLOX血清レベルの上昇及び/又はLOX1活性の上昇を有する。更なる態様において、対象はアテローム性動脈硬化症を有する。
本開示はまた、子癇前症又は子癇前症に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法も提供する。一部の例では、本方法は、子癇前症又は子癇を有する対象にLOX1結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される医薬組成物中の抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。更なる態様において、対象は高血圧及び大量の尿タンパクを有する。一部の態様において、対象はoxLDL及び/又はsLOX血清レベルの上昇及び/又はLOX1活性の上昇を有する。更なる態様において、対象は、足、脚及び/又は手の腫脹を有する。
更なる態様において、本開示は、対象のアテローム性動脈硬化プラークを安定させる方法を提供する。一部の例では、本方法は、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。一部の態様において、本方法は、プラークにおけるRhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達経路のシグナル伝達を低減する。他の態様において、本方法は、プラークにおけるアポトーシスを低下させる。更なる態様において、本方法は、プラークにおけるカスパーゼ8、カスパーゼ9及び/又はBAX活性を低下させて、及び/又はBCL−2活性を増加させる。他の態様において、本方法は、プラークによって産生される接着分子又はサイトカインレベルを低下させる。更なる態様において、本方法は、プラークによるE−セレクチン、P−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1、MCP1及び/又はCD40/CD40L発現を低下させる。更なる態様において、本方法は、アテローム性動脈硬化プラークサイズ又は形成、アテローム性動脈硬化プラークにおけるマクロファージ集積及び/又はMMP(例えば、MMP9)発現を低下させる。更なる態様において、本方法はプラークの進展低下又は退縮をもたらす。
また、対象の血管緊張の低下を低減する方法も提供される。一部の例では、本方法は、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。一部の態様において、本方法は血管緊張の低下を低減する。更なる態様において、本方法は、HDLによって駆動される一酸化窒素(NO)産生(抗体が内皮NO産生を刺激する能力)を調節することによって対象の血管緊張の低下を低減する。
加えて、対象の血管緊張を向上させる方法が提供される。一部の例では、本方法は、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。
一部の態様において、本開示は、高血糖又は高血圧に関連する病態を治療し、予防し、及び/又は改善する方法を提供する。一部の例では、本方法は、高血糖又は高血圧を有する対象にLOX1結合タンパク質を投与するステップを含む。
加えて、癌を治療し、予防し、及び/又は改善する方法が提供される。一部の例では、本開示は、対象の癌を治療し、予防し、及び/又は改善する方法であって、癌を有する対象にLOX1結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供する。一部の態様において、対象は、乳癌、結腸癌、卵巣癌、黒色腫、子宮頸癌、肺癌、子宮癌、腎癌、及び膵癌からなる群から選択される癌を有する。
また、腫瘍細胞の増殖、移動又は浸潤を阻害する方法も提供される。一部の例では、本開示は、LOX1活性をアンタゴナイズする方法であって、LOX1を発現する腫瘍細胞にLOX1結合タンパク質を接触させるステップを含む方法を提供する。一部の態様において、腫瘍細胞は、乳癌、結腸癌、卵巣癌、黒色腫、子宮頸癌、肺癌、子宮癌、腎癌、及び膵癌からなる群から選択される癌のものである。一部の態様において、腫瘍細胞は癌株のものである。
本開示は、加えて、血管新生を低減し、又は阻害する方法を提供する。一部の態様において、血管新生を低減し、又は阻害する方法は、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。一部の態様において、対象は、病的血管新生に関連する病態を有する。更なる態様において、本開示は、血管新生を阻害する方法であって、LOX1を発現する細胞にLOX1結合タンパク質を接触させるステップを含む方法を提供する。一部の態様において、細胞は内皮細胞である。更なる態様において、内皮細胞は冠血管内皮細胞である。一部の態様において、本方法はインビトロで実施される。他の態様において、本方法はインビボで実施される。
加えて、LOX1活性を遮断し、又は低減する方法が提供される。一部の態様において、本開示は、LOX1活性を遮断する方法であって、LOX1とoxLDL、AGE、及び/又はCRPなどのLOX1リガンドとの間の相互作用を低減し、又は阻害するLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む方法を提供する。一部の態様において、LOX1は、内皮細胞、マクロファージ、平滑筋血管細胞及び/又は血小板の表面上に発現する。一部の態様において、細胞は冠血管内皮細胞などの内皮細胞である。更なる態様において、細胞は、血管平滑筋細胞、マクロファージ、又は血小板である。他の態様において、細胞はアテローム性動脈硬化組織の一部である。一部の態様において、本方法はインビボで実施される。他の態様において、本方法はインビトロで実施される。一部の態様において、遮断又は低減されるLOX1活性はoxLDLの結合及び/又は取込み(例えばインターナリゼーション)である。更なる態様において、遮断又は低減されるLOX1活性は、p38(MAPK)、p44/42MAPK、プロテインキナーゼC(PKC)、プロテインキナーゼB(PKB)、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)、転写因子NF−KB及び/又はAP1シグナル伝達経路の誘導である。更なる態様において、遮断又は低減されるLOX1活性はアポトーシスの誘導である。更なる実施形態において、アポトーシスの誘導はカスパーゼ−9、カスパーゼ−3及び/又はBcl−2によって媒介される。更なる態様において、遮断又は低減されるLOX1活性は、LOX1を発現する内皮細胞におけるPDFGのA鎖及びB鎖及び/又はヘパリン結合性EGF様タンパク質(HB−EGF)の発現である。一部の態様において、遮断又は低減されるLOX1活性は、LOX1に対するoxLDLの結合によって誘導されるLOX1活性である。
加えて、LOX1活性レベル又はLOX1発現レベル(例えばsLOX1血清タンパク質レベル)の増加に関連する病理学的病態におけるLOX1活性を遮断し、又は低減する方法が提供される。一部の例では、本方法は、LOX1活性又はLOX1発現レベル(例えばsLOX1血清タンパク質レベル)が増加している対象にLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を投与するステップを含む。一部の態様において、病理学的病態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、高血圧、高血糖、心不全、血管外傷、移植、脂質異常症(高脂血症)、炎症(例えば、慢性炎症及びエンドトキシン誘導炎症)又は細菌感染症である。一部の態様において、対象は、上昇したOxLDLの血清レベルを有する。一部の態様において、対象は、上昇したOxLDL、15リポキシゲナーゼ変性LDL、15リポキシゲナーゼ変性HDL、糖化酸化LDL、リゾホスファチジルコリンステラーゼ(lysophosphatidylcholinesterase)(LPC)及び/又はパルミチン酸の血清レベルを有する。更なる態様において、対象は、上昇したTNFα、IL1、インターフェロンγ、LPS(リポ多糖)、CRP、アンジオテンシンII、エンドセリンI、及び/又はAGEの血清レベルを有する。更なる態様において、対象は、上昇した可溶性LOX1(sLOX1)の血清レベルを有する。一部の態様において、対象はLOX1遺伝子に一塩基多型(SNP)を有する。一部の態様において、LOX1遺伝子のSNPはLOX1 K167N変異体である。
また、高密度リポタンパク質(HDL)活性を作動させ、又は増加させる方法も提供される。一部の態様において、本開示は、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を、それを必要としている対象に投与することによってHDL活性を増加させ、又は作動させる方法を提供する。一部の態様において、増加させるHDL活性はHDL媒介性内皮NO産生の促進である。一部の態様において、増加させるHDL活性は内皮細胞のNFKBシグナル伝達活性の阻害である。一部の態様において、増加させるHDL活性は、内皮細胞修復の促進である。一部の態様において、増加させるHDL活性は炎症の低減である。
また、臨床試験手順の一環として血液又は組織中のタンパク質レベル(例えば、LOX1レベル)を診断的にモニタして、それにより例えば所与の治療レジメンの有効性を判定するための、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質などのLOX1結合タンパク質の使用も提供される。例えば、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体)を検出可能な物質にカップリングすることにより、検出を促進することができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例としては、nプトアビジン(nptavidin)/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ;及び好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。
VIII.医薬組成物及び投与方法
本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質を調製して、それを必要としている対象に投与する方法は当業者に公知であり、又は当業者によって容易に決定される。LOX1結合タンパク質の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入によるもの又は局所であり得る。用語の非経口は、本明細書で使用されるとき、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、又は腟内投与を含む。これらの投与形式の全てが、明らかに本開示の範囲内にあるものとして企図されるが、投与形式の別の例を挙げれば、注射用、詳細には静脈内若しくは動脈内注射又は点滴用の溶液であり得る。通常、好適な医薬組成物は、緩衝液(例えば酢酸塩、リン酸塩又はクエン酸塩緩衝液)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意選択で安定剤(例えばヒトアルブミン)等を含み得る。本明細書の教示と適合性のある他の方法では、本明細書に提供されるとおりのLOX1結合タンパク質は、アテローム性動脈硬化症(atheroslerosis)又は腫瘍の臓器及び/又は部位に直接送達し、それにより治療剤への罹患組織の曝露を増加させることができる。一態様において、投与は、例えば吸入又は鼻腔内投与によって気道に直接である。
本明細書で考察するとおり、LOX1結合タンパク質は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌などのLOX1媒介性疾患及び病態のインビボ治療に薬学的に有効な量で投与することができる。この点で、本開示のLOX1結合タンパク質は、投与が促進され且つ活性薬剤の安定性が増進するように製剤化され得ることは理解されるであろう。本開示における医薬組成物は、生理食塩水、非毒性緩衝液、保存剤などの薬学的に許容可能な非毒性の無菌担体を含み得る。本願の目的上、コンジュゲートした又はコンジュゲートしていないLOX1結合タンパク質の薬学的に有効な量とは、LOX1との有効な結合を達成し、且つ利益を達成する、例えば疾患若しくは病態の症状を改善したり、又は物質若しくは細胞を検出したりするのに十分な量を意味する。本明細書に開示される治療法における使用に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.)16th ed.(1980)に記載されている。
本明細書に提供される特定の医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液剤又は液剤を含めた許容可能な剤形で経口投与することができる。特定の医薬組成物はまた、鼻エアロゾル又は吸入によって投与することもできる。かかる組成物は、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを増強する吸収促進剤、及び/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
単一の剤形を作製するため担体材料と組み合わせることのできるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の量は、治療対象及び詳細な投与方法に応じて変わり得る。本組成物は、単一用量、複数用量として、又は決められた期間にわたって注入で投与することができる。投薬レジメンもまた、最適な所望の反応(例えば、治療的又は予防的反応)がもたらされるように調整することができる。
本開示の範囲に従い、LOX1結合タンパク質は、前述の治療方法において治療効果を生じさせるのに十分な量でヒト又は他の対象に投与することができる。本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質は、公知の技法に従いLOX1結合タンパク質を従来の薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせることによって調製される従来の剤形で、かかるヒト又は他の動物に投与することができる。薬学的に許容可能な担体又は希釈剤の形態及び特性は、それと組み合わせる活性成分の量、投与経路及び他の周知の変動要因に左右される。1つ以上の異なるLOX1結合タンパク質を含むカクテルもまた使用することができる。
「治療有効用量又は治療有効量」又は「有効量」とは、治療すべき疾患又は病態を有する対象の治療に関して投与時に好ましい治療応答をもたらすLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の量が意図される。
アテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌などのLOX1媒介性疾患又は病態を治療するためのLOX1結合タンパク質組成物の治療有効用量は、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態、対象がヒトか、それとも動物か、投与される他の薬物療法、及び治療が予防的か、それとも治療的かを含めた多くの異なる要因に応じて変わる。通常、対象はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物もまた治療され得る。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するため、当業者に公知の常法を用いてタイトレーションすることができる。
本明細書で使用されるとき、LOX1結合タンパク質の投与によって特定の疾患又は病態の症状を改善するとは、永久的か、それとも一時的か、持続性か、それとも一過性かに関わらず、LOX1結合タンパク質の投与に帰することのできる、又はそれに関連付けることのできる何らかの軽減を指す。
少なくとも1つのLOX1結合タンパク質、例えば抗体又は結合断片の投与量は、本開示を踏まえれば、過度の実験を行うことなく当業者によって容易に決定される。少なくとも1つのLOX1結合タンパク質の投与方法及びそれぞれの量に影響を与える要因には、限定はされないが、疾患の重症度、疾患歴、並びに治療を受ける個体の年齢、身長、体重、健康、及び体調が含まれる。同様に、LOX1結合タンパク質の投与量は、投与方法、及び対象がこの薬剤の単回投与を受けるか、それとも複数回投与を受けるかに依存することになる。
本開示はまた、例えば、HDL活性を向上させる医薬の製造、並びにアテローム性動脈硬化症、血栓症、CAD、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、炎症(例えば慢性炎症)、血管新生、子癇前症及び癌を治療し、予防し、及び/又は改善する方法における抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質の使用も提供する。
併用療法
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)は、1つ以上の他の療法と併用して投与される。かかる療法には、更なる治療剤並びに他の医学的介入が含まれる。本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質と併用して投与することのできる例示的治療剤としては、限定はされないが、血小板阻害薬、抗凝固薬、降圧薬、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、HMG CoAレダクターゼ阻害薬(スタチン)、エゼチミブ、フィブラート系薬(例えば、ゲムフィブロジル(Gemifibrozil)及びフェノフィブラート)、Zetia、胆汁酸捕捉剤、硝酸塩、及び血栓溶解剤が挙げられる。
様々な態様において、LOX1結合タンパク質は、外科手技の前、その最中、及び/又はその後に対象に投与される。一部の態様において、手術は血管内手技である。更なる実施形態において、手術は、血管手術、心臓手術又は血管形成術である。更なる態様において、手技は移植又は冠動脈バイパス術である。
IX.診断法
本開示は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、冠動脈疾患(CAD)、虚血(例えば心筋虚血)、梗塞(例えば心筋梗塞)、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、再灌流傷害、再狭窄、末梢血管疾患、高血圧、心不全、炎症、血管新生、子癇前症及び癌などのLOX1媒介性疾患及び病態の診断において有用な診断方法を更に提供し、これには、個体からの組織又は血清などの体液におけるLOX1(sLOX1を含む)タンパク質の発現レベルの計測、及び計測した発現レベルと正常組織又は体液における標準LOX1発現レベルとの比較が関わり、ここで標準と比較した発現レベルの増加が、本明細書に提供されるとおりの完全長抗LOX1抗体及び抗原結合抗体断片など、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質によって治療可能な障害の指標となる。
抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)など、本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質は、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を用いた生物学的試料中のLOX1タンパク質レベルのアッセイに使用することができる(例えば、Jalkanen,et al.,J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanen et al.,J.Cell Biol.105:3087−3096(1987)を参照のこと)。LOX1タンパク質発現の検出に有用な他の抗体ベースの方法としては、イムノアッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、又はウエスタンブロッティングが挙げられる。
「LOX1タンパク質の発現レベルをアッセイする」とは、第1の生物学的試料中のLOX1タンパク質レベルを直接(例えば、絶対タンパク質レベルを決定又は推定することによる)、或いは相対的に(例えば、第2の生物学的試料中の疾患関連ポリペプチドレベルと比較することによる)、定性的又は定量的に計測又は推定することが意図される。第1の生物学的試料中のLOX1タンパク質発現レベルを計測又は推定して標準LOX1タンパク質レベルと比較することができ、この標準は、障害を有しない個体から得た第2の生物学的試料から取られるか、又は障害を有しない個体集団の平均レベルによって決定される。当該技術分野では理解されるであろうとおり、一旦「標準」LOX1タンパク質レベルが分かれば、それを比較用の標準として繰り返し使用することができる。
「生物学的試料」とは、潜在的にLOX1を発現する個体、細胞株、組織培養物、又は他の細胞供給源から得られる任意の生物学的試料が意図される。哺乳動物から組織生検及び体液を得る方法は、当該技術分野において公知である。
X.LOX1結合タンパク質を含むキット
本開示は、好適な包装内にあるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)と、本明細書に記載される方法の実施に使用し得る文書とを含むキットを更に提供する。
文書には、以下の情報:使用説明書、臨床試験の考察、副作用一覧、科学文献、添付文書資料、臨床試験結果、及び/又はそれらの要約などのうちの任意のものが含まれ得る。文書は、組成物の活性及び/又は利点を指示又は確立し、及び/又は用量決定、投与、副作用、薬物相互作用、又は医療ケア提供者に有用な他の情報を記載し得る。かかる情報は、様々な試験、例えば、インビボモデルが関わる実験動物を使用した試験及び/又はヒト臨床試験に基づく試験の結果に基づき得る。キットは、別の療法(例えば、別の薬剤)及び/又は当該の他の療法(例えば、当該の他の薬剤)に関する情報を提供する働きをする上記に記載されるものなどの文書を更に含み得る。
特定の態様において、キットは、1つ以上の容器に少なくとも1つの精製されたLOX1結合タンパク質を含む。一部の態様において、キットは、全ての対照、アッセイの実施についての指図、並びに結果の分析及び発表に必要な任意のソフトウェアを含め、検出アッセイの実施に必要及び/又は十分な全ての構成要素を含む。
XI.イムノアッセイ
LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体及びLOX1結合断片、その変異体、又は誘導体)は、当該技術分野において公知の任意の方法によって免疫特異的結合に関してアッセイすることができる。使用することのできるイムノアッセイとしては、限定はされないが、いくつか例を挙げれば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技法を用いる競合及び非競合アッセイシステムが挙げられる。かかるアッセイは常法であり、当該技術分野において公知である(例えば、Ausubel et al.,eds,(1994)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.,NY)Vol.1(参照により全体として本明細書に援用される)を参照のこと)。
本明細書に提供されるLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はLOX1結合断片、その変異体、又は誘導体)は、免疫蛍光法、免疫電子顕微鏡法又は非免疫学的アッセイのように、LOX1又はその保存された変異体若しくはペプチド断片のインサイチュー検出のため組織学的に用いることができる。インサイチュー検出は、対象から組織学標本を採取し、且つ標識LOX1結合タンパク質を生物学的試料上に重ねてそれに標識LOX1結合タンパク質を適用することにより達成することができる。かかる手順を用いることにより、LOX1、又は保存された変異体若しくはペプチド断片の存在のみならず、被験組織におけるその分布もまた決定することが可能である。本開示を用いることにより、当業者は、かかるインサイチュー検出を実現するため、多種多様な組織学的方法の任意のもの(染色手順など)を変更し得ることを容易に理解するであろう。
LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)の所与のロットの結合活性は、当該技術分野において公知の方法により決定することができる。当業者は、ルーチンの実験を用いて各決定に有効且つ最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
単離LOX1結合タンパク質の結合特性の決定に好適な方法及び試薬は当該技術分野において公知であり、及び/又は市販されている。かかる動態学的分析用に設計された機器及びソフトウェアは市販されている(例えば、BIACORE(登録商標)、BIAevaluation(登録商標)ソフトウェア、GE Healthcare;KINEXA(登録商標)ソフトウェア、Sapidyne Instruments)。
特に指示されない限り、本開示の実施には、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術が用いられ、それらは当該分野の技術の範囲内にある。かかる技法は、文献に十全に説明されている。例えば、Sambrook et al.,ed.(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al.,ed.(1992)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Springs Harbor Laboratory,NY);D.N.Glover ed.,(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al.米国特許第4,683,195号明細書;Hames and Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins,eds.(1984)Transcription And Translation;Freshney(1987)Culture Of Animal Cells(Alan R.Liss,Inc.);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press)(1986);Perbal(1984)A Practical Guide To Molecular Cloning;the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,(Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al.,eds.,Methods In Enzymology,Vols.154 and 155;Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Academic Press,London);Weir and Blackwell,eds.,(1986)Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);及びAusubel et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Baltimore,Md.)を参照のこと。
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck,ed.(1995)Antibody Engineering(2nd ed.;Oxford Univ.Press)に記載される。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al.,eds.(1995)Protein Engineering,A Practical Approach(IRL Press at Oxford Univ.Press,Oxford,Eng.)に記載される。抗体及び抗体−ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff(1984)Molecular Immunology(2nd ed.;Sinauer Associates,Sunderland,Mass.);及びSteward(1984)Antibodies,Their Structure and Function(Chapman and Hall,New York,N.Y.)に記載される。加えて、当該技術分野において公知の、具体的には記載されない免疫学の標準方法が、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Stites et al.,eds.(1994)Basic and Clinical Immunology(8th ed;Appleton & Lange,Norwalk,Conn.)及びMishell et al.,(eds)(1980)Selected Methods in Cellular Immunology(W.H.Freeman & Co.,NY)にあるとおり、一般に用いられる。
免疫学の一般原理について記載する標準的な参考文献としては、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Klein(1982)J.,Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination(John Wiley & Sons,NY);Kennett et al.,eds.(1980)Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyzes(Plenum Press,NY);Campbell(1984)“Monoclonal Antibody Technology”in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,ed.Burden et al.,(Elsevere,Amsterdam);Goldsby et al.,eds.(2000)Kuby Immunnology(4th ed.;H.Freemand & Co.);Roitt et al.(2001)Immunology(6th ed.;London:Mosby);Abbas et al.(2005)Cellular and Molecular Immunology(5th ed.;Elsevier Health Sciences Division);Kontermann and Dubel(2001)Antibody Engineering(Springer Verlan);Sambrook(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press);Lewin(2003)Genes VIII(Prentice Hall2003);Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press);Dieffenbach et al.,(2003)PCR Primer(Cold Spring Harbor Press)が挙げられる。
以下の例は、限定としてではなく、例示として提供される。
本開示の態様は、以下の非限定的な例を参照することによって更に定義され得る。これらの例は、本開示の特定の抗体の調製及び本開示の抗体の使用方法を詳細に記載するものである。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく材料及び方法の両方に対して多くの変更を行い得ることは明らかであろう。
実施例1.抗LOX1 scFv抗体の単離及び同定
成人未処置ドナーの骨髄に由来する、繊維状ファージM13ベースのファージミドベクターにクローニングした大規模単鎖Fv(scFv)ヒト抗体ライブラリを選択に使用した(Hutchings,C.,Generation of Naive Human Antibody Libraries,in Antibody Engineering,R.Kontermann and S.Dubel,Editors.2001,Springer Laboratory Manuals,Berlin.p.93)。本質的に以前記載があるとおり(Vaughan et al.,Nat.Biotechnol.14:309(1996))、このファージディスプレイライブラリから組換え哺乳類発現ヒトLOX1(R&D Systems)に対する一連の反復選択サイクルでLOX1特異的scFv抗体を単離した。このプロトコルの異なるバリエーションから幾つかの抗原特異的scFvを得た一方、親クローンLOX514(配列番号29(VH)及び配列番号33(VL);本明細書では「LOX10514」とも称される)及びLOX696(配列番号54(VH)及び配列番号70(VL);本明細書では「LOX10696」とも称される)を以下のとおり単離した:10μg/ml ヒトLOX1をMAXISORP(商標)プレート(Nunc)上に固定化し、ファージディスプレイライブラリと共にインキュベートした。一連の洗浄サイクルで未結合のファージを洗い落とした。抗原上に保持されているファージ粒子を溶出し、細菌に感染させて、次の選択ラウンド用にレスキューした。このようにして3ラウンドの選択を行った。ラウンド2及びラウンド3選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。細菌ペリプラズムにおいてScFvを発現させて、実施例10、アッセイ1に記載するとおりのヒトLOX1:oxLDL結合アッセイにおいてそれらの阻害活性に関してスクリーニングした。
粗ペリプラズム抽出物としてのスクリーニングヒット、即ちLOX1:oxLDL相互作用に対する阻害効果を示したscFvクローンをDNAシーケンシングに供した(Vaughan et al.,Nat.Biotechnol.14:309(1996)、及びOsbourn et al.,Immunotechnology 2:181(1996))。ユニークなscFvを再び細菌で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製し(国際公開第01/66754号パンフレットの実施例3に記載されるとおり)、上記のアッセイで精製scFvの希釈系列を試験することによってIC50値を決定した。
最も強力なscFvクローンを、本質的にPersic et al.,Gene 187:9(1997)に記載されるとおり、但し以下の修正を加えて、全免疫グロブリンG1三重突然変異体(IgG1−TM、突然変異L234F、L235E及びP331Sを組み込むヒトIgG1 Fc配列)抗体フォーマットに変換した。CHO細胞での使用を促進し、且つエピソーム複製を可能にするため、発現ベクターにOriP断片を含めた。ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有するベクターにVHドメインをクローニングして、哺乳類細胞で全IgG1−TM重鎖を発現させた。同様に、ヒト軽鎖定常ドメイン及び調節エレメントの発現用ベクターにVLドメインをクローニングして、哺乳類細胞で全IgG軽鎖を発現させた。IgGを得るため、重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをCHO哺乳類細胞にトランスフェクトした。IgGを発現させて、培地中に分泌させた。回収されたものをプールしてろ過し、プロテインAクロマトグラフィーを使用してIgGを精製した。適切なサイズのセラミックプロテインA(BioSepra)のカラムに培養上清をロードし、50mMトリス−HCl pH8.0、250mM NaClで洗浄した。0.1M クエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用して、結合したIgGをカラムから溶出し、トリス−HCl(pH9.0)を添加することによって中和した。溶出した材料をNap10カラム(Amersham、#17−0854−02)を使用してPBSで緩衝液交換し、IgGの濃度を分光光度法でIgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を使用して決定した(Mach et al.,Anal Biochem,200:74(1992))。精製したIgGを凝集及び分解に関してSEC−HPLCを使用して、及びSDS−PAGEによって分析した。
実施例2−抗LOX1抗体は、マルチリガンド結合、oxLDLインターナリゼーション及びoxLDL誘導シグナル伝達を阻害する
精製したIgGについて、実施例10、アッセイ1、2及び3に記載されるとおり、LOX1に結合する酸化低密度リポタンパク質(「oxLDL」)、ウシ血清アルブミンの終末糖化産物(「AGE−BSA」)及びC反応性タンパク質(「CRP」)を特異的に阻害するそれらの能力を試験した。LOX10514及びLOX10696を含む幾つもの単離クローン、及び市販のマウス抗LOX1抗体(23C11)について、LOX1に対するoxLDL、AGE−BSA及びCRP結合を遮断するそれらの能力を試験した。図1A、図1B及び図1Cに代表的なプロットを示し、それぞれoxLDL、AGE−BSA及びCRP結合のLOX514及びLOX696による阻害が示される。これらの抗体が交差反応し、LOX1 SNP K167Nに対して機能活性を有したことを確認するため、LOX1 SNP K167Nに対するoxLDL結合を遮断するそれらの能力に関して抗体を試験した。LOX1 SNP K167N(GenBank受託番号AB102861)は、当初虚血性心疾患患者群に発見された天然に存在するヒトLOX1変異体であり、心筋梗塞リスクの増加に関連すると考えられている。例えば、Tatsuguchi et al.,Biochem Biophys Res Commun.28;303(1):247−50(2003)を参照のこと。代表的なプロットを図1Dに示し、LOX514及びLOX696が両方ともにLOX1 SNP K167N変異体に対するoxLDL結合を遮断することが示される。結合の阻害に加え、LOX10514及びLOX10696を含めた幾つもの単離クローンについて、LOX1発現細胞に対するoxLDLインターナリゼーション(実施例10、アッセイ4に記載されるとおり)及びoxLDL誘導性LOX1シグナル伝達(実施例10、アッセイ5に記載されるとおり)を遮断するそれらの能力を試験した。図2A及び図2Bに代表的なプロットを示し、それぞれoxLDLインターナリゼーション及びシグナル伝達の阻害が示される。これらの試験の結果を表2に要約する。
これらの結果は、(1)oxLDL、AGE−BSA及びCRPに対するLOX1結合の抗体LOX514及びLOX696による特異的阻害;(2)LOX514及びLOX696が両方ともに共通のLOX1 SNP K167N変異体と機能的に交差反応すること;(3)LOX514及びLOX696がoxLDLインターナリゼーションを阻害すること;及び(4)LOX514及びLOX696がoxLDL誘導性LOX1シグナル伝達を阻害することを実証している。
実施例3−抗LOX1抗体の種交差反応性及びヒト関連ファミリーメンバーのパネルと比べたヒトLOX1に対する特異性
様々なLOX1種オルソログとの抗ヒトLOX1抗体の交差反応性をscFv結合ELISAによって評価した。N末端又はC末端Flagタグ及びヒスチジンタグを有するヒト(Uniprot:P78380)、マウス(Uniprot:Q9EQ09)、ラット(Uniprot:O70156)、ウサギ(Uniprot:Q9XTA8)及びカニクイザルLOX1の細胞外ドメインコンストラクトを設計し、Gatewayデスティネーションベクター(Invitrogen)にクローニングした。次にコンストラクトをタンパク質発現用の哺乳類HEK293 EBNA細胞にトランスフェクトした。次にタンパク質を標準的なアフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィー精製にかけた。簡潔に言えば、ヒト(HisFlag)−LOX1、カニクイザルLOX1−(FlagHis)、マウスLOX1−(FlagHis)、ラットLOX1−(FlagHis)及びウサギLOX1−(FlagHis)を、それぞれPBS緩衝液中10、10、5、5及び5μg/mLでMAXISORP(商標)プレートにコーティングした。かかる濃度を用いた効率的な抗原コーティングは、初めに市販の抗ヒトLOX1抗体(Hycultからの23C11)又は抗His抗体(Perkin Elmerからのユウロピウム標識されたもの)を使用したELISAによって確かめた。3%粉乳を含有するPBSでウェルをブロックした後、PBS+3%粉乳中の精製抗LOX1 scFvを、コーティングされた種々の抗原と共に1時間インキュベートした。結合したscFv分子を、100ng/mLの二次ユウロピウム標識抗Mycタグ抗体(Perkin Elmer)を使用して検出した。340nm励起及び615nm発光を使用してプレートの蛍光を読み取った。10μg/mLでコーティングしたウシ血清アルブミン(New England Biolabs)に関して非特異的結合を決定した。
図3Aに示すとおり、LOX514(「LOX10514」)及びLOX696(「LOX10696」)はヒト及びカニクイザルLOX1に結合するが、マウス、ラット又はウサギLOX1オルソログには結合しない。マウスLOX1との抗体交差反応性の欠如は、これらの種間のC型レクチンドメインにわたる低い相同性(ヒトとマウスとの間で約62%の同一性)を考えると、意外ではない。
他のヒトC型レクチン及びスカベンジャー受容体関連分子に対する抗ヒトLOX1抗体分子の特異性を、実施例10、アッセイ6に記載されるとおりIgG結合ELISAによって評価した。図3Bに示すとおり、LOX514(「LOX10514」)及びLOX696(「LOX10696」)はヒトLOX1のみに結合し、ヒトCLEC−7A、CLEC−1A、CLEC−4L、CLEC−1B、SR−A1及びSR−B3には結合しない。この結果は、LOX1に対するLOX514及びLOX696の特異性を実証している。
実施例4−LOX514の標的CDRランダム化及び組換えによる効力最適化抗LOX1 scFv抗体の単離及び同定
親和性ベースのファージ選択を用いてLOX514を最適化した。記載されるとおりの標準的な分子生物学的技術を用いた可変重鎖(VH)相補性決定領域2又は3(VH−CDR2又はVH−CDR3)又は可変軽鎖(VL)相補性決定領域3(VL−CDR3)のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発により、LOX514 scFv配列に由来する大規模scFvライブラリを作成した(Clackson,T.and Lowman,H.B.Phage Display−A Practical Approach,2004.Oxford University Press)。これらのライブラリを親和性ベースのファージディスプレイ選択に供することにより、ヒトLOX1に対する親和性がより高い変異体を選択した。これらは、oxLDL及び他のLOX1リガンドに対するLOX1結合の阻害活性の向上を示すものと思われた。選択は、本質的に以前記載があるとおり実施した(Thompson et al.,J Mol Biol.256(1):77−88,(1996))。端的には、溶液中の組換えビオチン化ヒトLOX1(EZ LINK(商標)スルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo/Pierce、製品:21335)を使用した遊離アミンを介したビオチン化)と共にscFv−ファージ粒子をインキュベートした。次に抗原に結合したScFvを、製造者の推奨に従い、ストレプトアビジンでコーティングされた常磁性ビーズ(DYNABEADS(登録商標)M−280)上に捕捉した。次に選択されたscFv−ファージ粒子を以前記載されたとおりレスキューし(Osbourn et al.,Immunotechnology,2(3):181−96,(1996))、漸減濃度のビオチン化ヒトLOX1(典型的な例は、4ラウンドで50nM〜20pMであり得る)の存在下でこの選択プロセスを繰り返した。
CDR標的選択アウトプットからの代表的な複数の個別scFvについて粗scFv含有ペリプラズム抽出物を調製し、実施例10、アッセイ7に記載されるとおり、親抗体LOX514に対するエピトープ競合HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光)アッセイフォーマットでスクリーニングした。スクリーニングヒット、即ち、親LOX514と比較したとき阻害効果の有意な向上を示したscFv変異体をDNAシーケンシングに供し、可変重鎖CDR2又はCDR3及び可変軽鎖ライブラリCDR3アウトプットからのユニークな変異体を精製scFvとして生じさせ、試験した。次に一部のscFvを選択し、更なる特徴付けのためIgG1−TMに変換した。この手法に従い得られる最適化LOX514抗体の典型的な例としては、LX5140011、LX5140014、LX5140016及びLX5140038(表1又は図4に記載されるとおり)が挙げられる。
更なる向上を生じさせるため、ヒトLOX1に対する親LOX514の結合を阻害する能力を有する多数のscFv変異体を含むCDRランダム化選択アウトプットを組み換えて、ランダムに対になった個別にランダム化されたVH CDR2配列とVH又はVL CDR3配列とを含むクローンのライブラリを形成した。
組換えVH2/VH3又はVH2/VL3ライブラリからエピトープ競合HTRF(登録商標)アッセイで代表的な複数の個別scFvの粗scFv含有ペリプラズム抽出物を調製した。スクリーニングヒット、即ち親scFv及び組換え前に生じたリードと比較したとき阻害効果の有意な向上を示したscFv変異体をDNAシーケンシングに供し、精製scFvとしてユニークな組換え変異体を作製し、試験した。次に最も活性の高いscFvを選択し、更なる特徴付けのためIgG1 TMに変換した。これらの組換えライブラリから得られる最適化LOX514抗体の典型的な例は、LX5140092、LX5140093、LX5140094、LX5140108及びLX5140110(表1又は図4に記載されるとおり)であった。
LOX514系統からの選択抗体に関する最適化した重鎖のアミノ酸配列のアラインメントを図4Aに示す。LOX514系統からの選択抗体に関する最適化した軽鎖のアミノ酸配列のアラインメントを図4Bに示す。
実施例5−LOX696に由来する効力最適化抗LOX1 scFv変異体の単離及び同定
初めに、本質的に欧州特許第494955号明細書、米国特許第5658754号明細書及びHanes et al(Thompson et al.,J.Mol.Biol.256(1):77−88(1996))によって記載されるとおり、親和性ベースのリボソームディスプレイ選択を用いてLOX696を最適化した。
記載されるとおりの標準的な分子生物学的技術を用いて、可変重鎖(VH)相補性決定領域2又は3(VH−CDR2又はVH−CDR3)又は可変軽鎖(VL)相補性決定領域3(VL−CDR3)のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によってLOX696 scFv配列に由来するリボソームディスプレイフォーマットの大規模scFvライブラリを作成した(Thompson et al.,J.Mol.Biol.256(1):77−88(1996))。DNAレベルでは、mRNAへの効率的な転写のため5’末端にT7プロモーターを付加した。mRNAレベルでは、コンストラクトは原核細胞リボソーム結合部位(シャイン−ダルガノ配列)を含有した。単鎖の3’末端の終止コドンを取り除き、新生scFvポリペプチドとリボソームとの間のスペーサーとして働くようにM13バクテリオファージgIII(遺伝子III)の一部分を付加した(Thompson et al.,J.Mol.Biol.256(1):77−88(1996))。
ライブラリを親和性ベースのリボソームディスプレイ選択に供することにより、ヒトLOX1に対する親和性がより高い変異体を選択した。これらは、oxLDL及び他のLOX1リガンドに対するLOX1結合の阻害活性の向上を示すものと思われた。RIBOMAX(商標)大規模RNA産生システム(T7)(Promega)を製造者のプロトコルに従い使用し、且つ無細胞翻訳系を使用して、scFvをインビトロで発現させた。産生されたscFv抗体−リボソーム−mRNA(ARM)複合体を、ビオチン化ヒトLOX1(EZ LINK(商標)スルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo/Pierce、製品:21335)を使用した遊離アミンを介したビオチン化)を含む溶液中でインキュベートした。特異的に結合した三次複合体(LOX1:ARM)を、製造者の推奨に従い(Dynal)ストレプトアビジンでコーティングされた常磁性ビーズ(DYNABEADS(登録商標)M−280)上に捕捉し、一方で未結合のARMは洗い落とした。次に、結合したscFvをコードするmRNAを逆転写−PCR(RT−PCR)によって回収した。得られた集団に対して漸減濃度のビオチン化ヒトLOX1(4ラウンドで1μM〜最小2nM)で更なる選択ラウンドのため選択プロセスを繰り返し、それによりLOX1に対して親和性がより高いクローンをエンリッチした。選択ラウンド2、3及び4からのアウトプットをscFvとして細菌発現用のpCantab6(1)にサブクローニングし、実施例4に記載されるとおりのLOX696エピトープ競合(実施例10、アッセイ7を参照)において向上したクローンをペリプラズム抽出物として同定した。
LOX696 CDRランダム化リボソームディスプレイアウトプット又は変異体に基づき二代目ファージディスプレイライブラリを構築した。合計4個のライブラリを、(1)両方ともにラウンド2のアウトプットであるVH CDR2配列をVL CDR3配列と組み換えることにより;(2)製造者の推奨に従いDIVERSIFY(商標)PCRランダム突然変異誘発キット(BD Biosciences)を使用して組換えVH CDR2×VL CDR3ライブラリ(上記参照)に対して追加のエラープローンPCRを実施して、更なる配列多様性を取り込むことにより;(3)等モル比の初期リボソームディスプレイライブラリ+LOX696の親scFv DNAに由来する9個のscFv DNAヒットのプールを鋳型として使用して上記に記載したとおりのエラープローンPCRを用いてscFv配列全体に対してランダム突然変異誘発を行うことにより;(4)等モル比の初期リボソームディスプレイVL CDR3ライブラリ+LOX696の親scFv DNAに由来する6個のscFv DNAヒットのプールを鋳型として使用してGallop MA et al.,J Med Chem,37(9):1233−51(1994)に記載されるとおりVH CDR3全体に対してソフトランダム化を行うことにより作成した。
漸減濃度のビオチン化LOX1(典型的には4ラウンドで100nM〜2pM)を使用して、実施例4に記載されるとおりファージディスプレイ選択を実施した。異なる二代目ライブラリから代表的な複数の個別scFvの粗scFv含有ペリプラズム抽出物を調製し、エピトープ競合HTRF(登録商標)(実施例10、アッセイ7に記載されるとおり)で試験した。最大の結合競合をもたらしたscFv変異体を再びシーケンシングし、試験のため実施例1にあるとおり精製scFvを調製した。それらの二代目ライブラリからの最も強力なscFvを、後の例に記載するとおりの更なる特徴付けのためIgG1 TMフォーマットに変換した。
これらの二代目ライブラリから得られる最適化LOX696抗体の典型的な例としては、LX6960067_ngl1、LX6960071_ngl1、LX6960073_ngl1、LX6960086_ngl1、LX6960094_ngl1、LX6960101_ngl1、LX6960102_ngl1及びLX6960116_ngl1(表1又は図5に記載されるとおり)が挙げられる。
LOX696系統からの選択抗体に関する最適化したVHのアミノ酸配列のアラインメントを図5Aに示す。LOX696系統からの選択抗体に関する最適化したVLのアミノ酸配列のアラインメントを図5Bに示す。
実施例6−IgG1−TMとしての抗LOX1抗体の生殖細胞系列化及び安定性エンジニアリング
LOX514 VH及びVLのアミノ酸配列をVBASEデータベースの既知のヒト生殖系列配列とアラインメントし(Tomlinson,I.,VBASE.1997,MRC Centre of Protein Engineering,Cambridge,UK)、配列類似性によって最も近縁の生殖細胞系列を同定した。VHドメインについては、これはVH1−24(DP−5)及びJH6であり、VLドメインについては、これはVλ1−e(DPL−8)及びJL3であった。これらの2つのアラインメントにおける違いは1つのみで、重鎖のフレームワーク4に位置した。当該の単一の残基(R105−Kabat付番)は標準的な分子生物学によるIgG変換プロセスの間に生殖細胞系列残基(Q)に復帰しており、これはつまり、LOX514系統からの全ての最適化したIgGが事実上生殖細胞系列化されたフォーマットで産生されたことを意味する。加えて、重鎖N96D突然変異誘発(mutatagenesis)(Kabat付番)を実施して、LX5140092及びLX5140093の両方のCDR3における潜在的なN−アミド分解モチーフを取り除いた。変異体は、それぞれ、LX5140092_N>D及びLX5140093_N>Dと命名した(表1又は図4を参照)。LX5140092_N>D及びLX5140093_N>Dの重鎖及び軽鎖アミノ酸配列のアラインメントを、それぞれ図4A及び図4Bに提供する。
同様に、LOX696抗体の生殖細胞系列分析もまた実施した。最も近縁の生殖細胞系列が、重鎖についてVH3−09(DP−31)及びJH3並びに軽鎖についてVλ2a2(DPL−11)及びJL3と同定された。Vernier残基を除き(Foote,et al.,J Mol.Biol.,224:487(1992))、合計5つの違い(全てVH内):フレームワーク1に2つ、フレームワーク3に1つ及びフレームワーク4に2つが見出された。最適化LOX696 IgG1−TM配列の違いを、V89を除いて標準的な分子生物学的技術によって最も近縁の生殖細胞系列残基に復帰させた:Q1E、Q6E、R105Q及びT108M。加えて、重鎖G82bS突然変異誘発(Kabat付番)を実施して、生殖細胞系列化LX6960073_glのフレームワーク3にある潜在的なN−アミド分解モチーフを取り除いた(表1又は図5を参照)。この変異体はLX6960073_G82bS_glと命名した(表1又は図5を参照)。非生殖細胞系列化LX6960073_ngl1、生殖細胞系列化LX6960073_gl及びLX6960073_G82bS_glについての重鎖及び軽鎖アミノ酸配列のアラインメントを、それぞれ図5A及び図5Bに提供する。
実施例7−最適化抗LOX1抗体の特異性及び種交差反応性
他のヒトC型レクチン及びスカベンジャー受容体関連分子に対するIgG1−TMとしての最適化抗ヒトLOX1抗体の特異性をIgG結合ELISA(実施例10、アッセイ7に記載されるとおり)によって評価した。関連分子のパネルには、ヒトCLEC−7A(デクチン−1)、ヒトCLEC−1A、ヒトCLEC−4L(DC−SIGN)、ヒトCLEC−1B(CLEC−2)、ヒトSR−A1及びヒトSR−B3(CD36)が含まれた。ヒトLOX1もまた、結合に関する陽性対照としてコーティングした。以下の最適化抗体を試験した:LX5140108、LX5140110、LX5140092_N>D、LX5140093_N>D、LX6960073_gl及びLX6960073_G82bS_gl。試験する抗体パネルにアイソタイプヒトIgG1−TM対照抗体NIP228を含めて、非特異的バックグラウンドレベルを決定した。
図6に示すとおり、全ての最適化抗LOX1抗体がヒトLOX1に結合するが、ヒトCLEC−7A、CLEC−1A、CLEC−4L、CLEC−1B、SR−A1又はSR−B3には結合せず、従って、ヒトLOX1に対するLX5140108、LX5140110、LX5140092_N>D、LX5140093_N>D、LX6960073_gl及びLX6960073_G82bS_glの特異性を実証している。
様々なLOX1種オルソログに対する抗ヒトLOX1抗体の交差反応性をIgG結合ELISA(実施例10、アッセイ7に記載されるとおり)によって評価した。簡潔に言えば、PBS緩衝液中5μg/mLのヒト(HisFlag)−LOX1、カニクイザルLOX1−(FlagHis)、マウスLOX1−(FlagHis)、ラットLOX1−(FlagHis)及びウサギLOX1−(FlagHis)をMAXISORP(商標)プレートにコーティングした。3%粉乳を含有するPBSでブロックした後、ブロッキング緩衝液中10μg/mLの精製抗LOX1 IgG1−TMを、コーティングされた種々の抗原と共にインキュベートした。100ng/mLの二次ユウロピウム標識抗ヒトIgG抗体(Perkin Elmer)を使用して、結合したIgG分子を検出した。340nm励起及び615nm発光を使用してプレートの蛍光を読み取った。同様に5μg/mLでコーティングしたCD86 FlagHis抗原上の非特異的結合を決定した。以下の最適化LOX1抗体並びに陰性対照としてのNIP228ヒトIgG1−TMを試験した:LX5140108、LX5140110、LX5140092_N>D、LX5140093_N>D、LX6960073_gl及びLX6960073_G82bS_gl。図7Aに示すとおり、試験した全ての抗体(LX5140108、LX5140110、LX5140092_N>D、LX5140093_N>D、LX6960073_gl及びLX6960073_G82bS_gl)がヒト及びカニクイザルLOX1に結合するが、マウス又はラットLOX1タンパク質には結合しない。それらの抗体の一部(LX5140108、LX5140110及びLX5140092_N>D)はまた、ウサギLOX1にも結合するが、蛍光カウントがより小さいことによって示されるとおり、その程度はヒト又はカニクイザルLOX1に対するよりも低い。
最適化抗LOX1 IgG1−TM抗体LX5140108、LX5140110及びLX6960073_G82bS_glについて、ヒトLOX1とカニクイザルLOX1との間の更なる交差反応性の特徴付けを競合ELISAによって実施した。
簡潔に言えば、PBS中0.125μg/mLのビオチン化ヒトLOX1をストレプトアビジンプレート(Abgene)にコーティングした。3%粉乳を含有するPBSでブロックした後、ブロッキング緩衝液中12.5ng/mLの精製抗LOX1 IgG1−TMを競合相手のヒト又はカニクイザルLOX1タンパク質と共にコインキュベートした。LX5140108及びLX5140110については400nM及びLX6960073_G82bS_glについては2μMで開始して、ブロッキング緩衝液中の競合相手の1:3タイトレーションを使用した。100ng/mLの二次ユウロピウム標識抗ヒトIgG抗体(Perkin Elmer)を使用して、結合した抗LOX1 IgG分子を検出した。340nm励起及び615nm発光を使用してプレートの蛍光を読み取った。
以下の図7B及び表3に示すとおり、3つ全ての最適化抗LOX1 IgG1−TM(LX5140108、LX5140110及びLX6960073_G82bS_gl)がカニクイザルLOX1と競合し、ヒトLOX1競合のIC50の5倍以内のIC50を呈することから、抗LOX1抗体LX5140108、LX5140110及びLX6960073_G82bS_glのカニクイザル交差反応性が強力であることが実証される。
実施例8−BIACORE(商標)及びKinExA(商標)によって決定するときのhLOX1に対する最適化抗LOX1抗体の親和性
組換えヒト及びカニクイザルオルソログLOX1細胞外ドメイン(ECD)に対する抗LOX1抗体の親和性を、Biacoreによるリアルタイム相互作用モニタリングを用いて37℃で(ヒト及びカニクイザルについて)、及びKinExAを用いて平衡状態で(ヒトLOX1親和性計測について)決定した。
Biacoreアッセイでは、組換えプロテインG+プロテインGによって捕捉された抗LOX1抗体をCM5チップ表面にアミン連結を介して固定化し、表面に流したLOX1オルソログの会合及び解離プロファイルを収集した。アッセイは、IFC温度を37℃に設定し、且つ試料コンパートメントは周囲温度のままとして実施した。実験は全て、IFCを一定の30ul/分で通過するHBSEPランニング緩衝液で実施した。毎回LOX1適用の終了時に、結合した抗体及び抗体複合体を10mMグリシン pH1.5の2回の40秒パルスによってプロテインGから剥がし取った。プロテインG表面に捕捉される抗LOX1抗体の量は、第一に物質移動制限が回避され、第二に正確なモデル化に十分な解離を観察し得ることが確実となるように調整した。LOX1相互作用物の濃度範囲は、抗体の飽和から検出可能な結合無しに至るまでの全結合範囲を観察し得ることを確実にするのに十分であった。データは、BiaEval評価ソフトウェアを使用して、抗体のみのプロファイルのダブルリファレンスサブトラクション後に解析した。
溶液中平衡アッセイは単一濃度の抗LOX1抗体で実施し、ここで組換えヒトLOX1 ECDのタイトレーションは、抗体濃度の100倍高い濃度から100倍低い濃度まで行った。遊離抗体濃度は、続いて蛍光標識ヒトFc特異的プローブによって検出した占有されていない抗体の捕捉により決定した。表4は、観察された速度定数及び全体的な親和性を詳述する。
実施例9 最適化抗LOX1抗体は、マルチリガンド結合、oxLDLインターナリゼーション及びoxLDL誘導シグナル伝達の阻害を実証する
精製IgGについて、LOX1に対するoxLDL、AGE−BSA及びCRP結合を特異的に阻害するそれらの能力を試験した(実施例10;アッセイ 1、2及び3を参照)。LX5140110及びLX6960073_G82bS_glを含む幾つかの単離クローンについて、LOX1に対するoxLDL、AGE−BSA及びCRP結合を遮断するそれらの能力を試験した。図8A、図8B及び図8Cに代表的なプロットを示し、それぞれoxLDL、AGE−BSA及びCRP結合のLX5140110及びLX6960073_G82bS_glによる阻害が示される。これらの抗体がLOX1 SNP K167Nに対して交差反応し、機能活性を有したことを確認するため、これらの抗体について、LOX1 SNP K167Nに対するoxLDL結合を遮断するそれらの能力を試験した。代表的なプロットを図8Dに示し、LX5140110及びLX6960073_G82bS_glが両方ともにLOX1 SNP K167N変異体に対するoxLDL結合を遮断することが示される。結合の阻害に加え、LX5140110及びLX6960073_G82bS_glを含む幾つかの単離クローンについて、LOX1発現細胞に対するoxLDLインターナリゼーション(実施例10、アッセイ4を参照)及びoxLDL誘導性LOX1シグナル伝達(実施例10、アッセイ5を参照)を遮断するそれらの能力を試験した。図8A及び図8Fに代表的なプロットを示し、それぞれoxLDLインターナリゼーション及びoxLDL誘導性LOX1シグナル伝達のLX5140110及びLX6960073_G82bS_glによる阻害が示される。これらの試験の結果を表5に要約する。
これらの結果は、oxLDL、AGE−BSA及びCRPに対するLOX1結合の抗体LX5140110及びLX6960073_G82bS_glによる特異的マルチリガンド阻害、並びにLX5140110及びLX6960073_G82bS_glが両方ともに共通のLOX1 SNP K167N変異体と機能的に交差反応し、oxLDLインターナリゼーション及びoxLDL誘導性LOX1シグナル伝達を阻害することを実証している。
実施例10 アッセイ及び方法
実施例1〜9に記載する実験においては、以下の材料及び方法を使用した。
材料
ドキシサイクリン塩酸塩(Sigma #D9891−1G);カルボキシH2DCFDA(MolecularProbes #C400);ヘキスト染色(MolecularProbes #33342);AGE−BSA(Biovision #2221−10);PBS(Gibco # 14190);組換えC反応性タンパク質(R&D #1707−CRCF);BSA 30%(SIGMA #A9576);Lightning Linkビオチンコンジュゲーションキット(Innova Biosciences #704−0010);DyLight 649 NHSエステル(Thermo Scientific #46416);Cypher 5EモノNHS;エステル(GE healthcare #PA15401);HBSS(1×)(GIBCO #14025);Corning 384セル;Bind blackアッセイプレート(Corning Costar #3683);Delfia増強溶液(Perkin Elmer #4001−0010);ユウロピウムストレプトアビジン(Perkin Elmer #1244−360);0.5mL Zeba脱塩カラム(Pierce #89883);CHO−TREx(Invitrogen #R718−07);oxLDL(Intracel #RP049);DiI−oXLDL(Intracel #RP−173);抗LOX1抗体(Biovision #3659);ヘキスト染色(MolecularProbes #33342);PBS(Gibco #14190);成長培地:Hams:F12−GlutaMax−I(Gibco #31765−027);添加物10%ウシ胎仔血清(Invitrogen #16000−044);ブラストサイジン(Invitrogen # 46−1120);ゼオシン(Invitrogen #R25001);リポフェクタミン(Invitrogen #11668−019);ドキシサイクリン塩酸塩(Sigma #D9891−1G)。
試薬修飾
oxLDLのCypher 5E標識
ox−LDL(1mg/mL)のpHを、1/10容積の0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液を使用してpH8.5に調整し、製造者キットの説明書に従い40:1のタンパク質:色素のモル比でoxLDLを標識した(室温、暗所で1時間)。製造者の指示に従い(GE healthcareのCypher 5EモノNHSエステル)Zebaスピンカラムを使用して未反応の色素を取り除き、PBSで緩衝液交換した。標識したタンパク質は暗所で4℃に保った。計算上、95%超のタンパク質が回収され、考慮すべき希釈係数はないものと仮定する。
oxLDL及びAGE−BSAのDyLight 649標識
ox−LDL又はAGE−BSA(1mg/mL)のpHを、1/10容積の0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液を使用してpH8.5に調整し、製造者の指示に従い(Thermo ScientificのDyLight 649 NHSエステル、室温、暗所で1時間)標識した。製造者の指示に従いZebaスピンカラムを使用して未反応の色素を取り除き、PBSで緩衝液交換した。計算上、95%超のタンパク質が回収され、考慮すべき希釈係数はないものと仮定する。
ヒト抗LOX1抗体のDylight 649標識
ヒト抗LOX1抗体(1mg/mL)のpHを、1/10容積の0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液を使用してpH8.5に調整し、製造者の指示に従い(Thermo ScientificのDyLight 649 NHSエステル、室温、暗所で1時間)標識した。製造者の指示に従いZebaスピンカラムを使用して未反応の色素を取り除き、PBSで緩衝液交換した。計算上、95%超のタンパク質が回収され、考慮すべき希釈係数はないものと仮定する。
CRPのビオチン標識
C反応性タンパク質CRP(R&D systems;担体不含)を4mg/mLの濃度となるように蒸留水中に再構成し、Lightning−Link(商標)ビオチンコンジュゲーションキット(タイプA)に同梱されるキットの指示に従いビオチン化した。
ヒトLOX1 CHO−TREX細胞株3A9
ヒトLOX1遺伝子(NM 002543)を使用して組換えプラスミドpcDNA4/TO−LOX1(pAM2037)を作成し、これはGeneartによって合成され、引き渡された。5’末端にAfl II制限部位及びコザック配列を付加し、及び3’末端にEcoRI制限部位を付加したLOX1遺伝子を合成した。次に、lipfectamine2000を使用して、テトラサイクリンリプレッサーを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−TREx細胞)にpAM2037をトランスフェクトした。CHO−TRExは、テトラサイクリン(Tet)リプレッサーの遺伝子を有するpcDNA6/TRを含有するCHO−K細胞株であり、Tetリプレッサーが、pcDNA4/TOにクローニングされた遺伝子の発現を遮断する。これらの細胞をテトラサイクリンで処理すると、抑制が解除され、LOX1遺伝子が発現することになる。
トランスフェクトした細胞混合集団をFACS機を使用して96ウェルプレートに分取し、各ウェルに単一の細胞を得た。10μg/mlブラストサイジンでpcDNA6/TRを選択し、pcDNA4TO−LOX1プラスミドの選択に300μg/mlのゼオシン、及び維持用に200μg/mlを使用した。個々の細胞を増殖し、ハイコンテント分析手法を用いて細胞によって取り込まれる蛍光を定量化することにより、DiI標識oxLDLを結合してインターナライズする能力によって安定クローンを選択した。数継代の成長にわたるDiI−oxLDLの取込み及び安定性に関して1つのクローンを選択した。Biovisionからの抗LOX1特異抗体を使用した免疫染色によってLOX1タンパク質表面発現を確かめた。LOX1タンパク質の機能活性は、CHO−TREx−LOX1細胞におけるoxLDL取込み及びoxLDL媒介性ROS反応の発生によって実証された。
アッセイ1及び2−LOX1:oxLDL及びLOX1:AGE−BSA結合アッセイ
飽和結合曲線
DyLight 649標識oxLDL及びAGE−BSA(1mg/mL)の両方をHBSS中に1:50希釈し、16ポイントの1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでトリプリケートでタイトレーションした。全結合の決定については、全てのウェルに10μLのHBSSを添加し、続いて10μLのヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞を添加した(ウェル当たり4000細胞)。非特異的結合の決定については、10μLのHBSSを10μLの非標識oxLDL(1mg/mL)に置き換えた。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った;カラー<0.4及びFL1<5600。平均非特異的結合シグナルから平均全結合シグナルをサブトラクトし、得られた結合等温線をPrism Graphpadソフトウェアでワンサイト特異的結合アルゴリズムを用いてプロットすることにより、特異的結合を決定した。KDが決定された計算値濃度を、続くハイスループットスクリーニング及び抗体競合実験に使用した。
抗hLOX1モノクローナル抗体の評価
CHO TREX細胞上に発現するLOX1受容体との結合に関する抗LOX1抗体とDyLight 649標識リガンド(oxLDL;AGE−BSA)との間の競合を、以下のとおり実施した。
競合抗体はいかなる前希釈もなしに使用し、24ポイントのアッセイ緩衝液(HBSS)中の1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでデュプリケートでタイトレーションした(ウェル当たり10μL)。抗体が入った全てのウェルにDylight 649標識リガンド(それぞれのKD濃度)を添加し(ウェル当たり10μL)、続いてヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞(10μL中ウェル当たり4000細胞)又はK167N SNPトランスフェクトCHO TREX細胞を添加した。
アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った;カラー<0.4及びFL1<5600。GRAPHPAD(商標)Prism バージョン5(GraphPad Inc、California)で4パラメータロジスティック方程式を使用してデータを分析し、見かけのIC50値を決定した。Y=Bottom+(Top−Bottom)/(1+10^((Log IC50−X)*HillSlope))(式中、Xは濃度の対数であり、Yは%特異的結合である)。IC50は、特異的結合の50%阻害を生じさせる試料濃度である。
アッセイ3−LOX1:CRP結合アッセイ
飽和結合曲線
384ウェルNunc Maxisorpプレートの表面上にPBS中3μg/mLの濃度のLOX1(R&D systems)を4℃で一晩固定化した(ウェル当たり25μL)。翌日、アッセイプレートをPBS(カルシウム及びマグネシウム不含)で12回洗浄した。ビオチン化CRPのワーキング溶液をPBS/0.1%BSA/0.01%tween20中20μg/mL(769nM)で調製し、16ポイントの1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでトリプリケートでタイトレーションした(ウェル当たり12.5μL)。更なる12.5μLのアッセイ緩衝液(PBS/0.1%BSA/0.01%tween20中)を各ウェルに添加し、アッセイプレートを室温で2時間インキュベートした。このプレートをPBS/0.01%Tween 20で16回洗浄し、続いて50μLのユウロピウム標識ストレプトアビジン(1:1000希釈)を添加した。アッセイプレートを室温で更に1時間インキュベートし、続いてPBS/0.01%Tween 20で16回洗浄した。100μL/ウェルのDELFIA増強溶液を添加することによりプレートを発色させ、Wallac Victor Vプレートリーダーで工場出荷時インストール済みのDELFAユウロピウムプロトコルを使用して読み取った。得られた結合等温線をPrism Graphpadソフトウェアでワンサイト特異的結合アルゴリズムを使用してプロットした。見かけのKDが決定された計算値濃度を、続くハイスループットスクリーニング及び抗体競合実験に使用した。
抗ヒトLOX1モノクローナル抗体の評価
組換えヒトLOX1との結合に関する抗体とビオチン標識CRPとの間の競合を以下のとおり実施した:384ウェルNunc Maxisorpアッセイプレートの表面上にPBS中3μg/mLの濃度のLOX1(R&D systems)を4℃で一晩固定化した(ウェル当たり25μL)。翌日、アッセイプレートをPBS(カルシウム及びマグネシウム不含)で12回洗浄した。競合抗体はいかなる前希釈もなしに使用し、24ポイントのアッセイ緩衝液(PBS/0.1%BSA/0.01%tween20)中1+1系列希釈を使用して384ウェル希釈プレートでデュプリケートでタイトレーションした(ウェル当たり30μL)。次に、抗体が入った全てのウェルにビオチン標識CRP(KD濃度でウェル当たり30μL)を添加した。次に、384MiniTrak液体ハンドリングロボットを使用して、試料(50μL)を希釈プレートから、固定化した組換えヒトLOX1を含むアッセイプレートに移した。プレートを室温で2時間インキュベートした。このプレートをPBS/0.01%Tween 20で16回洗浄し、続いて50μLのユウロピウム標識ストレプトアビジン(1:1000希釈)を添加した。アッセイプレートを室温で更に1時間インキュベートし、続いてPBS/0.01%Tween 20で16回洗浄した。100μL/ウェルのDELFIA増強溶液を添加することによりプレートを発色させて、Wallac Victor Vプレートリーダーで工場出荷時インストール済みのDELFAユウロピウムプロトコルを使用して読み取った。GRAPHPAD(商標)Prism バージョン5(GraphPad Inc、California)で4パラメータロジスティック方程式を使用してデータを分析し、見かけのIC50値を決定した。Y=Bottom+(Top−Bottom)/(1+10^((Log IC50−X)*HillSlope))(式中、Xは濃度の対数であり、Yは%特異的結合である)。IC50は、特異的結合の50%阻害を生じさせる試料濃度である。
アッセイ4−LOX1:oxLDLインターナリゼーションアッセイ
飽和結合曲線
Cypher 5E標識oxLDL(1mg/mLで40:1モル比)をHBSS中に1:50希釈し、16ポイントの1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでトリプリケートでタイトレーションした。全結合の決定については、全てのウェルに10μLのHBSSを添加し、続いて10μLのヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞を添加した(ウェル当たり4000細胞)。非特異的結合の決定については、10μLのHBSSを10μLの非標識oxLDL(1mg/mL)に置き換えた。
アッセイプレートを37℃で1時間インキュベートした。インターナリゼーションが代謝的に活性なプロセスであったことを実証するため、全ての試薬を4℃に保つ並行実験を実施した。インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った;カラー<0.4及びFL1<5600。平均非特異的結合シグナルから平均全結合シグナルをサブトラクトし、得られた結合等温線をPrism Graphpadソフトウェアでワンサイト特異的結合アルゴリズムを用いてプロットすることにより、特異的結合を決定した。KDが決定された計算値濃度を、続くハイスループットスクリーニング及び抗体競合実験に使用した。
抗hLOX1モノクローナル抗体の評価
LOX1受容体を発現するCHO TREX細胞におけるインターナリゼーションに関する抗LOX1抗体とCypher5E標識ox−LDLとの間の競合を以下のとおり実施した。
競合抗体はいかなる前希釈もなしに使用し、24ポイントのアッセイ緩衝液(HBSS)中1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでデュプリケートでタイトレーションした(ウェル当たり10μL)。抗体が入った全てのウェルにDylight 649標識リガンド(それぞれのKD濃度)を添加し(ウェル当たり10μL)、続いてヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞(10μL中ウェル当たり4000細胞)又はK167N SNPトランスフェクトCHO TREX細胞を添加した。
アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った。カラー<0.4及びFL1<5600。GRAPHPAD(商標)Prism バージョン5(GraphPad Inc、California)で4パラメータロジスティック方程式を使用してデータを分析し、見かけのIC50値を決定した。Y=Bottom+(Top−Bottom)/(1+10^((Log IC50−X)*HillSlope))(式中、Xは濃度の対数であり、Yは%特異的結合である)。IC50は、特異的結合の50%阻害を生じさせる試料濃度である。
アッセイ5−組換えCHO−LOX1細胞におけるROS誘導
細胞の調製
実験実施の24時間前に、1μg/mL(最終濃度)のドキシサイクリンでヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞を誘導した。実験当日、細胞をスクラップし、1200rpmで5分間遠心した。上清を廃棄し、細胞ペレットを50mLのPBS中に再懸濁し、1200rpmで5分間遠心した。この手順を2回繰り返した。上清を廃棄し、細胞ペレットを5mLのHBSS中に再懸濁した。トリパンブルー排除法を用いて血球計算器で細胞をカウントした。合計4×105細胞となるように細胞の数を調整した。細胞は使用時まで氷上で保った。
飽和結合曲線
Cypher 5E標識oxLDL(1mg/mLで40:1のモル比)をHBSS中に1:50希釈し、16ポイントの1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでトリプリケートでタイトレーションした。全結合の決定については、全てのウェルに10μLのHBSSを添加し、続いて10μLのヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞を添加した(ウェル当たり4000細胞)。非特異的結合の決定については、10μLのHBSSを10μLの非標識oxLDL(1mg/mL)に置き換えた。
アッセイプレートを37℃で1時間インキュベートした。インターナリゼーションが代謝的に活性なプロセスであったことを実証するため、全ての試薬を4℃に保つ並行実験を実施した。
インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った;カラー<0.4及びFL1<5600。
平均非特異的結合シグナルから平均全結合シグナルをサブトラクトし、得られた結合等温線をPrism Graphpadソフトウェアでワンサイト特異的結合アルゴリズムを用いてプロットすることにより、特異的結合を決定した。KDが決定された計算値濃度を、続くハイスループットスクリーニング及び抗体競合実験に使用した。
CHO−TREx−LOX1トランスフェクト細胞を7000細胞/ウェル(培地+10%FCS(テトラサイクリン不含)中100μl/ウェル)でアッセイプレートに播種し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、ドキシサイクリンをウェル当たり50ng/mlの最終濃度で添加することによりLOX発現を誘導し、プレートを37℃、95%O2/5%CO2雰囲気で一晩インキュベートした。各スクリーニング実験につき3つの別個のプレートを調製し、抗LOX抗体は、1プレートにつき1つのレプリケートとしてトリプリケートで実行した。翌日、この抗体を別個の希釈プレートにおいて2倍濃縮溶液として温細胞培養培地中に系列希釈することにより、抗LOX1抗体を調製した。アッセイプレートから培地を全て取り除き、アッセイプレートの各ウェルに抗LOX1抗体の希釈系列(2倍濃縮溶液)の25μLアリコートを添加し、95%O2/5%CO2雰囲気において37℃で20分間インキュベートした。これに続いてウェル当たり25μLのoxLDL(25μg/mlの固定最終濃度)を添加し、プレートを95%O2/5%CO2において37℃で60分間インキュベートした。
次にウェルを1×100μlの温HBSS/Ca/Mgで慎重に洗浄し、その後50μl/ウェルのカルボキシ−H2DCFDA(温HBSS/Ca/Mg中1.5μM)を添加して、アッセイプレートを30分間インキュベートした。カルボキシ−H2DCFDAとのインキュベーションの最後の5分間に、ウェル中に既にあるカルボキシ−H2DCFDAに温HBSS/Ca/Mg中10μl 50μg/mlヘキストを添加することによって細胞を温HBSS/Ca/Mg中ヘキスト染色(8.3μg/mlの最終濃度)で対比染色した。
次にアッセイプレートを温HBSS+Ca/Mgで2回洗浄し、直ちにArrayscanハイコンテントプレートリーダー(ThernoFischerScientific、Cellomics)でXF53−ヘキスト(Ch1)及びXF53−FITC(Ch2)セッティングを使用して読み取った。画像解析のため、Compartemental BioApplicationアルゴリズムを使用し、ROSプローブによって生じた蛍光をCircSpotAvgIntensityパラメータによって定量化した。競合データ、及び得られたIC50をプロットし、ExcelFit v.5.1で4パラメータロジスティックモデル(モデル903)を使用したシグモイド用量反応ワン・サイト・ゼロモデルを用いて計算した。
アッセイ6−LOX1特異性ELISA
以下の表9に掲載されるLOX1及びLOX1関連分子に対し、IgG特異性ELISAを本質的に以下のとおり実施した。MAXISORB(商標)(NUNC)プレートをPBS中5μg/mLの抗原でコーティングして4℃で一晩インキュベートし、但しヒトSR−B3については10μg/mLを使用した。プレートをPBSで3回洗浄し、200μL/ウェルブロッキング緩衝液(PBS+3%粉乳)で1時間ブロックした。プレートをPBSで3回洗浄した後、IgGをブロッキング緩衝液中0.2μg/mLに希釈し、50μL/ウェルで添加し、1時間インキュベートした。次にプレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、検出試薬(抗ヒトIgGλ軽鎖ペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma A5175、0.23μg/mLに希釈)又はκ軽鎖(Sigma A7164、0.8μg/mLに希釈))を添加し(ブロッキング緩衝液中50μL/ウェル)、プレートを1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、50μL/ウェルのTMBを添加し、プレートを5〜15分間発色させた。50μL/ウェル 0.1M H2SO4で反応をクエンチし、ENVISION(商標)プレートリーダー、又は同様の機器において450nmでプレートを読み取った。
アッセイ7−エピトープ競合
LOX514及びLOX696を、上記でタンパク質修飾の節に記載したとおりDyLight 649で標識し、リガンド結合アッセイと並行したハイスループットスクリーニング及びプロファイリングの両方の競合分子として使用した。標識抗体は、より高い親和性の非標識抗体が競合し難くなるように、そのそれぞれのKD濃度を上回る幾つかの濃度で使用した。
DyLight 649標識LOX514及びLOX696のK D の決定
Dylight 649標識ヒト抗LOX1抗体をHBSSに1:50希釈し、16ポイントの1+1系列希釈を使用して384ウェルプレートでトリプリケートでタイトレーションした。全結合の決定については、全てのウェルに10μLのHBSSを添加し、続いて10μLのヒトLOX1トランスフェクトCHO TREX細胞を添加した(ウェル当たり4000細胞)。非特異的結合の決定については、10μLのHBSSを10μLの非標識ヒト抗LOX1抗体(1mg/mL)に置き換えた。
アッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。
インキュベーション後、Applied Biosystems 8200細胞検出システム(FMATプレートリーダー)で422のPMT1セッティングを使用し、最小カウントを10に設定してプレートを読み取った;カラー<0.4及びFL1<5600。
平均非特異的結合シグナルから平均全結合シグナルをサブトラクトし、得られた結合等温線をPrism Graphpadソフトウェアでワンサイト特異的結合アルゴリズムを用いてプロットすることにより、特異的結合を決定した。抗体は計算値KD濃度に上乗せした倍数で使用した。
実施例11−抗LOX1抗体が組織培養物及びヒト血管における内皮脂質取込み、細胞シグナル伝達及び一酸化窒素恒常性に及ぼす効果
LOX1受容体は、OxLDLの特異的ライゲーション及びインターナリゼーションと、続く複数の細胞内シグナル伝達カスケードの活性化により、アテローム生成過程の近因の一つとして働く。例えば、Twigg et al.,Cardiol Res Pract.2012:632408(2012)を参照のこと。内皮細胞におけるLOX1受容体の活性化は、一部にはアルギナーゼ2の上方制御に誘導されるROS産生の増加及び一酸化窒素(NO)シグナル伝達の障害を含めた内皮機能不全に寄与する。(例えば、Ryoo et al.,Atherosclerosis 214(2):279−287(2011)、Ryoo et al.,Circ Res.102(8):923−932(2008);及びRyoo et al.,Circ Res.99(9):951−60(2006)を参照のこと。加えて、LOX1受容体活性化が、サイトカイン産生及び接着分子発現の増加を伴う血管壁の炎症過程の惹起及び永続化につながる。従ってLOX1受容体の生物学的阻害薬が開発されれば、アテローム生成過程の発達を減弱する有効な方法となる可能性が高い。ここで、本発明者らは、LX5140110がヒト大動脈内皮細胞(HAEC)によるOxLDLの取込みを用量依存的に遮断することを実証する。加えて、LX5140110は、LOX1依存的であることが以前実証された過程であるアルギナーゼ2の活性化を防ぐ。更に、LX5140110は、Ox−LDL依存的なNO産生の低下及びスーパーオキシド(ROS)産生の増加を防ぐ。加えて、本発明者らは、NFkBルシフェラーゼレポーターコンストラクトを使用して、LX5140110がNFkB(アテローム発生における主要な炎症調節因子)の活性化を有意に減弱させることを実証する。例えば、Pamukcu et al.,Thrombosis Res.128(2):117−23(2011)を参照のこと。最後に、LX5140110抗体は、内皮細胞の関門機能において決定的に重要な過程である接着斑キナーゼ(FAK)のリン酸化及び活性化を防ぐ。従って、本発明者らは、内皮の活性化につながり且つアテローム発生を惹起及び促進する幾つものLOX1依存的過程をLX5140110が遮断することを明らかにする。次には、これらの実験の結果を考察する。
A.LX5140110はHAECにおけるOxLDLの取込みを遮断する(図9A)
方法:
Alexa Fluor−568とのOxLDLコンジュゲーション
500マイクロリットルのヒト酸化LDL(1mg/ml、Intracel、Frederick、Maryland)を、製造者のプロトコルに従いAlexafluor−568タンパク質標識キット(MolecularProbes、Eugene、Oregon)を使用してAlexafluor−568で標識した。簡潔に言えば、OxLDLを0.1M 重炭酸塩(pH8.3)中のAlexafluor−568と共に室温で1時間インキュベートした。次にAlexafluor−568コンジュゲートOxLDLを精製樹脂カラムで精製した。
HAECによるAlexa Fluor−568コンジュゲートOxLDLの取込み
フィブロネクチンがコーティングされた(10μg/ml)カバーガラス上にHAECを血清含有培地中8時間播種した後、18時間血清飢餓状態にした。
次に細胞を、0、0.5、1、5、又は10nMのLX5140110((「514」)又は10nMの対照抗体NIPと共に無血清培地で1時間インキュベートした。抗体を新鮮な無血清培地で完全に洗い落とした後、取込みのため、培地に約50ng/mlのAlexaFluor568−OxLDLを1時間添加した。次に細胞を3%パラホルムアルデヒド(Sigma)中0.5%Triton X−100(Fisher Scientific)で2分間透過処理し、続いて3%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。固定した細胞をフルオレセインファロイジン(Life Technologies、Grand Island、NY)及びDAPI(Life Technologies)で標識し、落射蛍光Nikon TE−200顕微鏡で観察した。Volocityソフトウェア(PerkinElmer、Lexington、MA)を備えたRolera EMCCDカメラ(QImaging、Vancouver、カナダ)で画像をキャプチャした。Volocityソフトウェアによって、HAEC細胞内部のAlexafluor−568コンジュゲートOxLDL赤色蛍光粒子(0.1μm2より小さいサイズの粒子は除外)をカウントすることにより、画像を更に分析した(画像は示さず)。各組につき約12枚の画像を取得し、各細胞の平均Alexafluor−568コンジュゲートOxLDL赤色蛍光粒子数を分析した。用量反応データは図9Aに示す(細胞当たりの小胞の数と標準偏差(standard derivation))。図9Aに示すとおり、5nM又は10nM LX5140110はHAECによるOxLDL取込みを有意に阻害した(それぞれp=0.0003又はp=0.0002)。
B.LX5140110はHAECのNFkBシグナル伝達を減弱させる(図9B)
方法:NFκB−ルシフェラーゼとGFPとを共発現したHAECのコンフルエントな6ウェルプレートを24時間血清飢餓状態にした後、それらを以下の条件に供した(数字は図9B中のバーを左から右に示す):1.対照;2.OxLDL単独(50μg/ml);3.OxLDL+LX5140110(「514」)(10nM);4.OxLDL+NIP(対照抗体)(10nM)。
抗体の1時間後にOxLDL(50μg/ml)を添加した。更に8時間、OxLDLとインキュベーションした。細胞を溶解させて、ルシフェラーゼ活性アッセイ(Promega)に供し、FlexStation3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)でルミネセンスを決定した。簡潔に言えば、HAECをPromega 5×溶解緩衝液で溶解させて、各ウェルに50μlのPromega基質が入った白色プレートに上清をプレーティングした。トランスフェクションの48時間後、20mM トリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%NP40、1%デオキシコール酸ナトリウム、1mM Na3VO4、2.5mMピロリン酸ナトリウム、1mM β−グリセロリン酸塩、1μg/mLロイペプチン、及び1:1000希釈のプロテアーゼ阻害薬カクテル(Sigma)からなる氷冷改変溶解緩衝液中に細胞を溶解させた。ローディング緩衝液を2倍の最終濃度となるように添加し、5分間沸騰させ、3分間スピンして、ゲルにロードした。GFP蛍光を正規化対照として使用した。各群につきN=5;*はP<0.05を示す(未処理対照との比較);#はP<0.05を示す(OxLDL+0nM ab 514(LX5140110)との比較。図9Bに示すとおり、10mM LX5140110の添加によってHAECにおけるOxLDL依存的NFkBシグナル伝達が有意に低下したが、NIP(対照抗体)では低下しなかった。これは、LX5140110が、LOX−1受容体の下流であることが十分に確立されているシグナル伝達経路であるLOX1依存的NFkB活性化を阻害する能力を有することを示唆している。例えば、Zhao W,et al.,“Lipopolysaccharide induced LOX−1 expression via TLR4/MyD88/ROS activated p38MAPK−NF−κB pathway.”Vascul Pharmacol.(2014)を参照のこと。
C.LX5140110はHAECにおけるアルギナーゼの活性化を阻害する(図9C)
方法:HAECのコンフルエントな6ウェルプレートを24時間血清飢餓状態にした後、それらを以下の条件に供した(数字は図9C中のバーを左から右に示す):1.対照;2.OxLDL(50μg/ml);3.OxLDL+LX5140110(「514」)(1nM);4.OxLDL+LX5140110(「514」)(3nM);5.OxLDL+LX5140110(「514」)(10nM);6.OxLDL+NIP(10nM)。抗体を添加して1時間後に、OxLDL(50μg/ml)中でHAECを更に3時間インキュベートした。細胞を溶解させて、α−イソニトロソプロピオフェノンを使用した尿素アッセイを用いてアルギナーゼ活性を決定した。簡潔に言えば、溶解緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5、0.1mM EDTA及びプロテアーゼ阻害薬)と共に4℃で30分間インキュベートし、14,000×g、4℃で20分間遠心した後、抽出細胞ライセートの上清を調製した。次に上清を150mM L−アルギニンと共に37℃で1時間インキュベートした。1時間後、400μlの酸性溶液混合物(H2SO:H3PO4:H2O 1:3:7)を使用して反応を停止させ、次に25μl 9%α−イソニトロソプロピオフェノン(100%EtOH中)を添加し、95℃で30分間加熱し、10分後に540nmで読み取った。各群につきN=3;*は、未処理対照と比較したときP<0.05であることを示す;#は、0nM 抗体514(LX5140110)と比較したときP<0.05であることを示す。図9Cに示すとおり、3nM又は10nM LX5140110を加えると、HAECのOxLDL依存的アルギナーゼ活性が用量依存的に有意に低下したが、10nM NIP(対照抗体)では低下しなかった。これは更に、最近になって血管内皮のLOX−1にカップリングすることが示された下流シグナル伝達経路であるアルギナーゼ2のLOX1依存的活性化がLX514110によって阻害されることを示唆している。例えば、Ryoo et al.,Atherosclerosis 214:279−87(2011)を参照のこと。
D.LX5140110は一酸化窒素産生のOxLDL依存的低下を遮断する(図9D)
方法:DAF蛍光を使用してNO産生を決定した。簡潔に言えば、NOを計測するため、白色96ウェルプレート(ThermoLabsystems)にHAEC細胞をウェル当たり約5×104細胞の密度でプレーティングし、一晩血清飢餓状態にした(1%血清)。細胞は7つの実験群で調べた(数字は図9D中のバーを左から右に示す):1.対照;2.OxLDL(50μg/ml);3.OxLDL+LX5140110(「514」)(0.5nM);4.OxLDL+LX5140110(「514」)(1nM);5.OxLDL+LX5140110(「514」)(5nM);6.OxLDL+LX5140110(「514」)(10nM);7.OxLDL+NIP(10nM)。抗体を添加して1時間後に、OxLDL(50μg/ml)中でHAECを24時間インキュベートした。次に培地を取り除き、DAF−FM DA(5μM)を含有するEBM2培地に37℃で細胞を37℃で30分間置いた。次に培地を新鮮培地に交換し、細胞を更に20分間インキュベートした後、FlexStation3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)において励起495nm及び発光515nmで全蛍光を計測した。eNOSによってNOが産生されたことを確認するため、NOS阻害薬L−NAMEを対照として使用した(データは示さず)。各群につきN=5;*は、P<0.05であることを示す(未処理対照との比較)。図9Dに示すとおり、5nM又は10nM LX5140110を加えると、HAECの一酸化窒素産生のOxLDL依存的低下が用量依存的に有意に阻害されたが、10nM NIP(対照抗体)では阻害されなかった。
E.LX5140110はROS産生のOxLDL依存的増加を遮断する(図9E及び図9F)
方法:ルミノール類似体L−012を使用してスーパーオキシド産生を決定した。スーパーオキシド(ROS)を計測するため、白色TC処理96ウェルプレート(ThermoLabsystems)にHAEC細胞をウェル当たり約5×104細胞の密度でプレーティングし、一晩血清飢餓状態にした(1%血清)。7つの試験集団は以下のとおりであった(数字は図9E中のバーを左から右に示す):1.対照;2.OxLDL(50μg/ml);3.OxLDL+LX5140110(「514」)(0.5nM);4.OxLDL+LX5140110(「514」)(1nM);5.OxLDL+LX5140110(「514」)(5nM);6.OxLDL+LX5140110(「514」)(10nM);7.OxLDL+NIP(10nM)。抗体を添加して1時間後に、OxLDL(50μg/ml)中でHAECを24時間インキュベートした。次に培地を取り除き、400μMのルミノール類似体L−012(Wako)を含有するフェノール不含DMEM(Sigma)中で細胞を37℃で最低20分間更にインキュベートした後、アゴニストを添加した。FlexStation3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用してルミネセンスを経時的に定量化した。スーパーオキシドスカベンジャーSOD(5mM)とコインキュベートすることによって活性酸素種に対するL−012の特異性を確認したところ、これにより対照又はOxLDL刺激条件下で生じたルミネセンスは事実上検出不能なレベルであった(図9Fを参照のこと)。従ってL−012のルミネセンスから定量化した相対発光単位(RLU)が、スーパーオキシド産生の変化を示す。スーパーオキシドがeNOSによって産生されたことを確認するため、NOS阻害薬L−NAMEを対照として使用した。各群につきN=5。図9E及び図9Fに示されるとおり、0.5nM、1nM、5nM又は10nM LX5140110を加えると、HAECのOxLDL依存的ROS産生が阻害されたが、10nM NIP(対照抗体)では阻害されなかった。従って、LX5140110は、LOX−1活性化及びアルギナーゼ2の下流活性化を妨げることにより、OxLDL媒介性eNOSアンカップリング、及び続くROS産生の増加を妨げる。例えば、Ryoo et al.,Atherosclerosis 214:279−87(2011)を参照のこと。
F.LX5140110は接着斑キナーゼ(FAK)、Y397のOxDL媒介性リン酸化を遮断する(図9G及び図9H)
方法:5%血清を含むECM培地(ScienCell、Carlsbad、CA)でHAECを1日培養した後、18時間血清飢餓状態にした。次にLX5140110又は対照抗体NIPを図9Gに示す濃度で細胞に添加し、1時間インキュベートした。細胞を新鮮培地で洗浄して抗体を取り除いた後、それらを50μg/mlのOxLDLと共に1時間インキュベートした。細胞を氷冷PBS緩衝液で洗浄し、次に、改変RIPA緩衝液(PBS中0.1%DOC、0.1% Trition X−100、2mM EDTA、1mM PMSF、2mMバナジン酸ナトリウム、20mg/mlロイペプチン、及び20mg/mlアプロチニン)を使用してタンパク質を抽出した。細胞ライセートを15,000×g、4℃で10分間遠心することにより清澄化した。次にタンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイ(Pierce、Rockford、IL)によって定量化した。10μgのタンパク質ライセートを2×レムリー試料緩衝液と混合し、沸騰させ、次に4〜15%勾配ポリアクリルアミドゲルを使用したSDS−PAGEに供し、続いてニトロセルロース膜に転写してウエスタンブロッティングを行った。
図9G及び図9Hに記載する実験で使用した一次抗体には、抗pY397−FAK(ウサギポリクローナル、Life Technologies、Grand Island、NY)及び抗GAPDH(マウスモノクローナル、Novus Biologicals、Littleton、CO)が含まれる。西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウス及び抗ウサギ二次抗体は、ICN Biochemicals,Inc.(Costa、Mesa、CA)から入手した。
スチューデントt検定を用いることにより、対照細胞、OxLDL処理細胞、及び抗体プレインキュベート細胞におけるTyr397上のFAKリン酸化の差を分析した。p値は図9Hに提供し、全てのデータについて0.05未満のp値で有意性(*)が存在するものと見なした。これらの図は標準誤差バーを含む。HAECにおけるTyr397のFAKリン酸化及びGAPDHの発現の変化を示す代表的なブロットを図9Gに示し、一方、GAPDH発現に対して正規化したTyr397におけるFAKリン酸化(pY397−FAK)のパーセンテージ増加率の定量化を図9Hに示す。これらの結果は、5nM又は10nM LX5140110を加えると、HAECにおけるTyr397のOxLDL依存媒介性FAKリン酸化が有意に阻害されたが、10nM NIP(対照抗体)では阻害されなかったことを実証している。*は、P<0.05であることを示す(未処理対照との比較);#は、0nM LX5140110(514)と比較したときP<0.05であることを示す。このデータは、細胞間及び細胞−マトリックス間接着を含めた内皮細胞骨格機能を調節して、続いて内皮関門機能に効果を及ぼす過程であるLOX−1依存的FAKリン酸化のOxLDL媒介性誘導が、LX5140110によって阻害されることを示唆している。
G.LOX1は、HAECにおけるOxLDLシグナル伝達に関与する主要な受容体である(図9I、図9J及び図9K)
方法:LOX1 shRNAアデノウイルスの構築:
pAdBLOCK−iTキット(Life Sciences)を使用して、Ad−shNontargetedコードウイルス及びAd shLOX1コードウイルスを作成した。簡潔に言えば、標的化されなかったオリゴヌクレオチド、及びヒトLOX1の他の標的化する5’UTR領域をLife Sciencesの専売のソフトウェアで設計し、pU6−ENTRにクローニングした。使用した配列は以下のとおりであった。非標的化:Top、5’−CAC CGA TGG ATT GCA CGC AGG TTC TCG AAA GAA CCT GCG TGC AAT CCA TC−3’(配列番号79);Bottom、5’−AAA AGA TGG ATT GCA CGC AGG TTC TTT CGA GAA CCT GCG TGC AAT CCA TC−3’(配列番号80)。LOX1sh:Top、5’−CAC CGC TTC ACT CTC TCA TTC TTA GCG AAC TAA GAA TGA GAG AGT GAA GC−3’(配列番号81);Bottom、5’−AAA AGC TTC ACT CTC TCA TTC TTA GTT CGC TAA GAA TGA GAG AGT GAA GC−3’(配列番号82)。
得られたpU6−sh−Nontargeted及びpU6−LOX1shRNAプラスミドについて、HAEC細胞による一過性トランスフェクション実験で機能を試験した。最大の阻害を示すコンストラクトをpAD/BLOCK−iTDEST(Invitrogen)と組み換えて、pAd−Nontargeted及びAd−shLOX1を作成した。Milliporeキットを使用してウイルスを増幅し、精製し、濃縮した。
HAECにおけるOxLDLシグナル伝達にLOX1が不可欠であることを確認するため、ヒトLOX1遺伝子の5’UTR領域を標的とする干渉低分子ヘアピンRNA(shRNA)(LOX1shRNA)を発現するウイルスベクターを使用してLOX1 RNA発現を阻害した。簡潔に言えば、60パーセントコンフルエントのHAECを25MOI(感染多重度、病原性の尺度)のLOX1shRNA発現アデノウイルス(「LOX1−shRNA」又は「Ad−LOX−1shRNA」)で形質導入した。24時間後、培地を、NFKB−LUCをコードするウイルスを含有する低血清培地(1%)に交換した。ウイルス形質導入の翌日、細胞を50μg/mLのOxLDLで処理し、更に8時間インキュベートし、続いて化学発光によってルシフェラーゼ活性を計測した。次に細胞ライセートを抗Lox−1抗体又は抗GAPDH抗体によるイムノブロッティングに供した。図9J及び図9Kに示されるとおり、LOX1shRNAを加えるとLOX1タンパク質発現が有意に低下し(例えば、図9Jのレーン1及び2と比較したときのレーン3を参照のこと)、LOX1shRNAがHAECのLOX1発現を有効に阻害したことが確認された。加えて、図9Iに示されるとおり、AdshLOX1は、OxLDL及び対照の非標的shRNA(Ad−NTsh)コンストラクトとインキュベートした細胞と比較して、HAECのOxLDL媒介性NFkBシグナル伝達を有意に阻害した。*はP<0.05を示す(未処理対照との比較);#は、OxLDL+Ad−NTshと比較したときのP<0.05を示す。
LOX1受容体シグナル伝達に関与し且つ本明細書に開示される抗LOX1抗体(例えばLX5140110を含む;「514 Ab」)によって遮断されるシグナル伝達経路の概要を図10に示す。
具体的な態様についての前述の説明は、本開示の概略的な本質を十全に明らかにするものであるため、他の者は、当該分野の技術の範囲内にある知識を適用することにより、過度の実験を行うことなく、本開示の概略的な概念から逸脱することなく、容易にかかる具体的な態様を改良し、及び/又は様々な適用に適合させることができるであろう。従って、かかる適合及び改良は、本明細書に提供される教示及び指針に基づけば、開示される態様の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書における表現法又は用語法は、限定ではなく、説明を目的としていることが理解されるべきであり、本明細書の用語法又は表現法は当業者によって教示及び指針を踏まえて解釈されるべきである。
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文書が各々、あらゆる目的から参照によって援用されることを個々に示されたものとするのと同程度に、あらゆる目的から全体として参照により援用される。