JP2017525807A - ラクチドブロックコポリマーおよび製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ラクチドブロックコポリマーの製造法、ラクチドブロックコポリマーおよび上記ラクチドブロックコポリマーを含む物品に関する。特に、本発明は、改善されたラクチドブロックコポリマーに関し、それは、残留量の第一のラクチドモノマーを含む上記第一のラクチドモノマーのポリマーを用意すること、反対のキラリティーの第二のモノマーの第一の量を添加しそして重合すること、次いで上記第二のモノマーの第二の量を添加しそして重合することにより得られ得る。得られたラクチドブロックコポリマーは一般に、高い融点(例えば190〜250℃)を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、ラクチドブロックコポリマーの製造方法、ラクチドブロックコポリマーおよび、上記ラクチドブロックコポリマーを含む物品に関する。
バイオベースのポリマーは、石油由来の物質の代替物として興味深い。バイオベースのポリマーは、その多数の寿命末期オプション、例えば分解性、および再生可能資源から得られ得るという事実のために、魅力的である。ポリラクチドまたはPLAとしても知られるポリ乳酸は、工業的堆肥化条件下で分解され得るポリマーとして特に注目を引いている。さらに、ポリ乳酸を製造するための原料(例えば乳酸またはラクチド)は、農業産業由来の糖から得られ得る。
ポリ乳酸は、魅力的な特性、例えば高い剛性、および溶融加工されて例えば繊維、フィルムおよび射出成形品にされ得るという事実を有する。しかし、通常使用されるポリ乳酸は一般に、低い耐熱性および低い靭性という欠点を有し、それは、汎用ポリマーとしてのその実際的用途を少なくする。
高められた熱耐性を示すポリ乳酸等級のための研究が続けられている。ポリ乳酸の融点が、いわゆるステレオコンプレックスの形成によって約130〜180℃から約190〜250℃に高められ得ることが先に示されている。ステレオコンプレックスは、互いに反対のキラリティ―のポリ乳酸ホモポリマーの相互作用、すなわち、乳酸(またはラクチド)のL−エナンチオマーのポリマー(PLLAとも言う)と乳酸(またはラクチド)のD−エナンチオマーのポリマー(PDLAとも言う)との間の相互作用によって形成される結晶構造である。原則として、PLA物品の耐熱性は、PLAから作られた製品へと結晶化度が付与されるならば、またPLAがそのようなステレオコンプレックス微結晶を含むならば、かなり有意に高められ得る。有意な量のステレオコンプレックス微結晶の存在は、物質が使用され得るところの温度の窓を増加させる。
PLLAとPDLAとのブレンドは、ステレオコンプレックスPLA(本明細書では、ステレオコンプレックスブレンドとも言う)を形成することが知られている。しかし、そのようなPLAブレンドにおいて高いステレオコンプレックス含量を得ることは容易でない。一般に、複数の高分子量ポリマーを均質に混合することは非常に難しく、また、特別の装置(例えば、(二軸)押出機およびバッチ混練機)、特別の混合条件(例えば、十分に規定された押出パラメータ)をしばしば必要とし、また、添加剤、例えば相溶化剤、核形成剤および/または連鎖延長剤の使用を必要とするかもしれない。さらに、PLLAとPDLAのブレンドはしばしば、ホモポリマーの結晶とステレオコンプレックスの結晶の混合物への溶融加工の後に再結晶する傾向にある。
PLLAとPDLAとのステレオコンプレックスブレンドに代わるものが、PLLAとPDLAとのステレオブロックコポリマー(ステレオブロックPLAとしても知られる)である。そのようなブロックコポリマーは、互いに反対のキラリティーの乳酸モノマー(またはラクチドモノマー)に由来する繰り返し単位を有する2の異なる型のポリマーブロック、一般的にはL−乳酸(またはL−ラクチド)のポリマーブロックとD−乳酸(またはD−ラクチド)のポリマーブロックを有する。上記の異なるポリマーブロックは、同一のマクロ分子において互いに共有結合しており、したがって極めて近接している。したがって、互いに反対のキラリティーのポリマーブロック間でステレオコンプレックス結晶構造を形成するために、ブレンドする必要がない。さらに、そのようなブロックコポリマーは、ステレオコンプレックスブレンドから達成される結晶よりも小さい結晶を形成し得る。より小さい結晶は、特定の利点、例えば改善された結晶化速度および、フィルム用途における好ましい光学特性を有し得る。
PLAの最も一般的な製造に関して、ステレオブロックコポリマーは、乳酸モノマーまたはラクチドモノマーを重合することによって製造され得る。ラクチドは、乳酸の環状ジエステルである。ラクチドモノマーは、エナンチオピュアの形態、すなわちL−ラクチドおよびD−ラクチド(これらはそれぞれ、L−乳酸およびD−乳酸のジエステルである);L−ラクチドとD−ラクチドとの混合物であるラセミ形態;およびメソメリック型、すなわちDL−ラクチド(これは、1のD−乳酸分子と1のL−乳酸分子のジエステルであり、メソ−ラクチドとも言う)で存在する。
ラクチドモノマーの重合が一般に好ましい。なぜならば、それは、開環反応を介して生じ、それは、乳酸の直接の重縮合の場合にはかなり困難であるところの高分子量ポリマーの製造を許すからである。
ラクチド重合は、溶液で(重合溶媒の存在下で)または溶融状態で(重合溶媒の実質的に不存在下で)行われ得る。溶融状態での重合は溶融重合とも言われ、環境、コストおよび安全性の理由から、一般に好ましい。その主な理由は、溶媒の必要性を排除し、そして溶媒の除去および処分に関係する問題を排除するからである。
ブロックコポリマーの製造に関して、いくつかの方法が文献に記載されている。
例えば、国際公開第2008/057214号および同第2009/045881号ならびにFukushimaら、Macromolecular Biosciences, 2005, vol. 5, pages 21-29は、ポリL−ラクチド(PLLA)とポリD−ラクチド(PDLA)を独立に用意し、PLLAとPDLAを混合してブレンドを形成し、その後、上記ブレンド中のPLLAとPDLAを反応させることを記載している。そのような方法は、上述したように、PDLAポリマーとPLLAポリマーをブレンドするという問題がある。PLLAおよびPDLAのオリゴマーの直接の重縮合はまた、得られ得る分子量の点で制限される。さらに、示唆された固体状態での必要とされる重合時間は非常に長い(数十時間)。さらに、そのような方法は、PDLAとPLLAの別個の製造および精製を必要とし、それは、上記方法の複雑性を増す。さらに、PLLAとPDLAを反応させるためのこれらの文献に記載された特定の方法はまた、いくつかの欠点を有する。国際公開第2008/057214号は、PLLAポリマーとPDLAポリマーのエステル交換を含む方法を記載している。この方法は、一般にあまり制御されず、また、溶融分解現象をかなり生じる。国際l公開第2009/045881号は、イソシアネートを使用する連鎖延長法を記載している。そのような連鎖延長法は、より高い分子量では困難性が増し、また、健康および安全性上の有意な危険を有する化学物質を使用する。
米国特許出願公開第2012/101248号明細書および同第2010/004404号明細書ならびに欧州特許出願公開第2098551号明細書は、第一のエナンチオピュアなラクチドモノマーを重合して第一のポリマー状ラクチド(PLLAまたはPDLA)を与え、次いで反対のキラリティーの第二のエナンチオピュアなラクチドモノマーを先に形成されたPLLAまたはPDLAの存在下で重合して2の異なるポリマーブロック、すなわちPLLAブロックおよびPDLAブロックを有するブロックコポリマーを形成することを記載している。
そのような方法に関係する問題は、第一のポリマー状ラクチド中に存在する残留量のラクチドモノマーが、ステレオコンプレックス形成の速度および得られるブロックコポリマーの融点に悪影響を及ぼすことである。
欧州特許出願公開第2098551号明細書に示唆されているように、この問題の解決は、第一のポリマー状ラクチド中に低含量の残留モノマーを有することであり、それは、過剰のラクチドモノマーの除去工程の存在下または不存在下で達成され得る。第一のポリマー状ラクチド中の残留モノマーの量は、好ましくは0〜5質量%であると記載されている。
同様に、米国特許出願公開第2010/004404号明細書は、未反応ラクチドモノマーを減圧下で除去することを記載している。除去後の第一のポリマー状ラクチドにおけるラクチドモノマー含量は、0重量%以上かつ1重量%未満であると記載されている。
これらの文献に記載されているように、ラクチドモノマーの量を十分低く保つために、精製または除去工程が必要である。そのような工程は、ラクチドブロックコポリマーの製造法、特に工業規模での製造法の費用および複雑性を増す。例えば、ラクチドが蒸発除去される場合には、大きくかつ高価な減圧システムが必要であり、それはさらに、高い溶融温度で作動し、このことは同時に分解を生じる。他方、沈殿法は、多量の溶媒および非溶媒を必要とし、それらの使用に関連する高いコストおよび危険(例えば、引火性)を伴う。そのような除去工程が行われないと、第一のポリマー状ラクチド中のラクチドモノマーの残留量は、反応の熱力学的平衡故に、必ず0重量%超である。例えば、典型的な反応温度(例えば180〜240℃)で、ラクチドモノマーの残留量は、典型的に4%超であり得る。モノマーのポリマーへの高い転化率が達成され、そして第一のポリマー状ラクチド中の残留モノマーの量が比較的低いとしても、記載された方法では、残留モノマーが、第二のモノマーによって形成されたブロック内にランダムに分布され、その結果、低下されたエナンチオマー純度を有するブロックを生じる。これは、ステレオコンプレックス形成に悪影響を及ぼし、その結果、ラクチドブロックコポリマーの融点および結晶化特性に悪影響を及ぼす。
本発明の目的は、高い分子量および高い融点を有するポリ乳酸およびその製造法を提供することである。
本発明者らは、上記問題を有しない、そのようなポリ乳酸を製造する改善された方法を今見出した。特に、本発明者らは、改善されたラクチドブロックコポリマーが、残留量の第一のラクチドモノマーを含む上記第一のラクチドモノマーのポリマーを用意すること、反対のキラリティーの第二のモノマーの第一の量を添加しそして重合すること、次いで上記第二のモノマーの第二の量を添加しそして重合することによって得られ得ることを今見出した。得られるラクチドブロックコポリマーは一般に、高い融点(例えば190〜250℃)を有する。
本明細書に記載された方法は、第一のポリマー状ラクチド中の残留量の第一のラクチドモノマーを除去する必要性を排除する。さらに、本発明の方法は、最終のラクチドブロックコポリマーの構造のより良好な制御を許す。特に、そのような方法によって、第一のラクチドモノマーのポリマー中に存在する残留量のモノマーが、第一の量の第二のラクチドモノマーと反応して、第一のモノマーと第二のモノマーのコポリマーブロックを形成する。第二の量の第二のモノマーが次いで、実質的に低下された量の第一のラクチドモノマーを有する、第二のモノマーのポリマーブロックを形成する。それによって、ラクチドモノマーの分布が制御され、そして、第二のモノマーのポリマーブロックのエナンチオマー純度が一般に高められる。本発明者らはまた、中間のコポリマーブロックの存在が、ラクチドブロックコポリマーの融点に悪影響を及ぼさないことを見出した。それどころか、本明細書に記載された方法によって得られるラクチドブロックコポリマーの融点は、例えば残留量の第一のラクチドモノマーを含む第一のポリマー状ラクチドが第二のラクチドモノマーと単一の工程で反応されるところのラクチドブロックコポリマーと比較されるとき、さらにより高い。コポリマーブロックはサイズが変わり得、また、特定の用途に適合され得る。
従って、本発明のいくつかの局面は、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーから触媒の存在下での溶融重合によってラクチドブロックコポリマーを製造する方法に関する。ここで、上記第一のラクチドモノマーおよび第二のラクチドモノマーは互いに異なりかつL−ラクチドおよびD−ラクチドから選択され、上記方法は、下記工程:
a.第一のラクチドモノマーを重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーと残留量の第一のラクチドモノマーを含む第一の重合混合物を与えること、
b.第一の量の第二のラクチドモノマーを第一の重合混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第二の重合混合物を与えること、
c.第二の量の第二のラクチドモノマーを第二の重合混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックと、第二のラクチドモノマーのポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第三の重合混合物を与えること
を含む。
図1は、比較例2のDSCサーモグラフを示す。 図2は、実施例1のラクチドブロックコポリマーのDSC走査のグラフを示す。
本明細書で定義されたラクチドブロックコポリマーは、2の異なるラクチドモノマー(L−ラクチドおよびD−ラクチド)に由来する繰り返し単位を有する、構成上異なる(ブロックである)ポリマー状断片を含むラクチドポリマーである。上記ラクチドブロックコポリマーでは、隣接するブロックが、ラクチドモノマーの型およびモノマーの分布に関して異なる組成を有する。すなわち、上記ラクチドブロックコポリマーは、L−ラクチドのポリマーブロックと、D−ラクチドのポリマーブロックと、L−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックとを有する。
本明細書で使用されるモノマー状ラクチドという用語は、ラクチドモノマー(すなわちL−ラクチドモノマーまたはD−ラクチドモノマー)を指す。本明細書で使用されるポリマー状ラクチドという用語は、ラクチドモノマーに由来する(すなわち、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドに由来する)オリゴマーおよびポリマーを指す。
本明細書に記載された、ラクチドブロックコポリマーを製造する方法は、触媒の存在下で行われる溶融重合法である。
溶融重合は、重合が溶融状態で生じるような条件で行われる重合である。これは、半応物および反応生成物が溶融状態にあることを意味する。適する重合条件を選択することは、当業者の範囲内である。適する重合温度は、下記で工程a)、b)およびc)の重合を説明するときに詳細に説明される。他の条件、例えば反応器の型ならびに反応器における圧力および容積は、上記重合反応に重要でない。しかし、そのような他の条件は、重合温度を選択するときに当業者によって考慮され得る。
溶融重合は有利には、溶媒の実質的に不存在下で行われ得る。反応物(例えば、ラクチドモノマーおよびポリマー状ラクチド)が互いに溶融状態で反応され得るので、反応物が反応するために反応物を溶媒に溶解する必要がない。所望するならば、少量の溶媒が上記方法に存在し得る。例えば、触媒または更なる重合添加剤のための溶媒として添加され得る。上記方法は、重合混合物が、反応混合物に存在するモノマー状ラクチドおよびポリマー状ラクチドの合計量に対して0〜5重量%、特に2重量%未満、特に1重量%未満、さらに特に0.5重量%未満の溶媒を含む状況を包含することが意図される。
ラクチドモノマーの重合は、開環重合機構を介して行われる。ラクチドの開環重合を行うために適する触媒は、当該分野において知られている。
いくつかの実施形態では、ラクチドは、下記式:
(M)(X, X . . . X
(式中、Mは、元素周期律表の2、4、8、9、10、12、13、14および15族の金属から選択され、(X, X . . . X)は独立に、アルキル、アリール、オキシド、カルボキシレート、ハライド、アルコキシド、アルキルエステルの群から選択され、mは1〜6の範囲の整数であり、nは1〜6の範囲の整数であり、mおよびnの値は、金属イオンの酸化状態に依存する)の触媒の存在下で重合され得る。
2族の中では、MgおよびCaの使用が好ましい。4族の中では、Ti、ZrおよびHfの使用が挙げられ得る。8族の中では、Feの使用が好ましい。12族の中では、Znの使用が好ましい。13族の中では、Al、Ga、InおよびTiの使用が挙げられ得る。14族の中では、Snの使用が好ましい。15族の中では、SbおよびBiの使用が好ましい。一般に、4、14および15族の金属の使用が好ましい。Mが、Sn、Zr、Hf、Zn、BiおよびTiから選択されるのが好ましい。Snに基づく触媒の使用が特に好ましくあり得る。
ハライドに関して、ハロゲン化スズ、例えばSnCl、SnBr、SnClおよびSnBrが挙げられ得る。オキシドに関して、SnOおよびPbOが挙げられ得る。アルキルエステルの群の中で、オクトエート(例えば、2−エチルヘキサノエート)、ステアレートおよびアセテートが挙げられ得る。特に、Sn−オクトエート(Sn(II)ビス2−エチルヘキサノエートとして、または簡単にスズオクトエートとしても知られる)、スズステアレート、ジブチルスズジアセテート、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、スズ(2−エチルヘキサノエート)、ビスマス(2−エチルヘキサノエート)、スズトリアセテート、ナトリウム(2−エチルヘキサノエート)、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレートおよび亜鉛ステアレートが挙げられ得る。
他の適する化合物は、テトラフェニルスズ、Sbトリス(エチレングリコキシド)、アルミニウムアルコキシドおよび亜鉛アルコキシドを包含する。
触媒の適切な量を選択することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、重合中の触媒濃度は典型的に、モノマーとポリマーの総量に対する触媒の総重量割合に基づいて、少なくとも25ppm、より特に少なくとも50ppmであり得る。より多くの量も使用され得、例えば、触媒濃度が少なくとも100ppmであり得る。触媒濃度は一般に、高々1000ppm、特に高々500ppmであり得る。
触媒として、Sn(II)−ビス(2−エチルヘキサノエート)(スズオクトエートとも言う)を使用するのが好ましくあり得る。なぜならば、この物質は、市販されており、典型的な純度レベルおよび室温および反応温度で液体であると共に、溶融されたモノマー状およびポリマー状ラクチドに可溶であるからである。
本明細書に記載された触媒は、一般に非ステレオ選択性である。
所望ならば、溶融重合が、(上記触媒の他に)助触媒の存在下で行われ得る。助触媒は、重合速度をさらに増加させる化合物である。適切な助触媒は、当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第6,166,169号明細書が参照される。この文献は、下記式:
(Y)(R, R . . . R
(式中、Yは周期律表の15又は16族から選択される元素であり、(R, R . . . R)は、アルキル、アリール、オキシド、ハロゲニド、オキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、フェノキシド、アミノアリールおよびチオアリールの化合物類の少なくとも1から独立して選択される置換基であり、qは1〜6の範囲の整数であり、pは1〜6の範囲の整数である)の助触媒を記載している。
存在するならば、助触媒は一般に、触媒の量と同じオーダーの量で、例えば50:1〜1:50の触媒対助触媒のモル比で使用され得る。
助触媒は好ましくは、リン化合物、特にP(R)(R、RおよびRは独立して、アリールおよびアルキル基から選択され、P(Ph)が特に好ましい。適する触媒は、例えば、米国特許第6,166,169号明細書に記載されたものを包含する。
一般に、重合開始剤がまた使用され得る。開始剤は、たいていは分子量制御剤として作用するが、また、重合速度を高める。適する開始剤は、例えば、単官能性および多官能性の求核試薬、例えばアルコール、アミンおよびスルフィドを包含する。当業者に知られているように、開始剤の選択は、得られるポリマー(例えばブロックコポリマー)の連鎖トポロジー(chain topology)を決定するだろう。例えば、開始剤としての1−ヘキサノール(単官能性アルコール)は、1の成長する鎖を有する直鎖ポリラクチドを結果し、一方、開始剤ペンタエリスリトール(4官能性アルコール)は、4アームの星型マクロ分子を形成する。さらに、ポリマー構造の開始剤がまた使用され得る。こうして、(開始剤に由来する)化学的に異なるブロックをポリラクチドブロックコポリマーに組み入れることができる。これは、特定の官能性を有するポリラクチドブロックコポリマーを提供するために望ましくあり得る。アルコール官能性ポリマー開始剤は、ポリブタジエン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリジメチルシロキサンおよびポリブチレンスクシネートまたはポリブチレンスクシネート−コ−アジペートを包含するが、これらに限定されない。
重合は、助触媒および開始剤以外の重合添加剤、例えば酸化防止剤、ホスフェート、エポキシ化植物油および可塑剤の存在下で行われ得る。
上記触媒と一緒に使用され得る適切な助触媒、開始剤または他の重合添加剤を選択することは、当業者の範囲内である。
本明細書に記載された方法は、バッチ法、半連続法または連続法で行われ得る。特に、本明細書に記載された方法は、バッチ法または連続法であり得る。連続法が好ましくあり得、上記方法が工業的規模で行われるべき場合には特にそうである。
本明細書に記載された方法においてラクチドの溶融重合を行うために適する適切な装置および構成を選択することは、当業者の範囲内である。一例として、方法が、単一の反応器で、またはいくつかの反応器(例えば直列に連結されたもの)で行われ得る。適する反応器は、例えば、連続的に撹拌されるタンク、連続的静的混合反応器、ループ反応器およびプラグフロー反応器を包含し得る。例えば国際公開第2010/012770号が参照され、上記文献は、連続混合反応器およびそれに続くプラグフロー反応器の使用を記載している。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーから得られる。上記第一のラクチドモノマーおよび第二のラクチドモノマーは互いに異なりかつL−ラクチドおよびD−ラクチドから選択される。L−ラクチドモノマーおよびD−ラクチドモノマーは商業的に入手可能であり、または、それぞれL−乳酸およびD−乳酸から公知の方法によって製造され得る。
本明細書に記載された方法において使用されるラクチドモノマーは一般に、実質的に純粋なL−ラクチドおよび実質的に純粋なD−ラクチドである。本明細書で使用される実質的に純粋とは、L−ラクチドモノマーまたはD−ラクチドモノマーの源が一般に、少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、最も特に少なくとも99.5重量%のL−ラクチドおよびD−ラクチド含量を有することを意味する。
特に、上記L−ラクチドモノマーまたはD−ラクチドモノマーは、高々1重量%の他のラクチドモノマー(例えば、異なるキラリティーを有するラクチドモノマーまたはメソラクチド)を含有し得る。これはまた、異なるキラリティーのモノマーまたはメソラクチドが実質的に不存在であるので、本明細書に記載された方法において使用されるラクチドモノマーは一般に、実質的にエナンチオマー的に純粋である(エナンチオピュアである)ことを意味する。
好ましい実施形態では、高品質のラクチドが使用される。高品質のラクチドは、本明細書において、低い遊離酸含量および低い水分量を有するラクチドモノマーとして定義される。
本明細書に記載された方法において使用されるラクチドモノマーは好ましくは、1kgのラクチドモノマーに対する遊離酸の当量に基づいて、高々50ミリ当量/kg(meq/kg)、好ましくは高々20meq/kg、最も好ましくは高々10meq/kgの遊離酸含量を有する。ラクチドモノマーサンプルの遊離酸含量は、例えばTitrino 736装置を使用して、ジクロロメタンおよびメタノール中の0.01MのCHOKによる滴定によって決定され得る。
本明細書に記載された方法において使用されるラクチドモノマーは好ましくは、高々2000ppm、好ましくは高々500ppm、より好ましくは高々300ppmまたは高々200ppm、より好ましくは高々100ppmの水分量を有する。ラクチドの水分量は、典型的なカール・フィッシャー滴定によって決定され得る。
高品質のラクチドの使用は、より高い重合速度およびより良好な平均分子量制御を伴って、上記製造法をより経済的にするので、好ましい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された方法において使用されるラクチドモノマーが、それぞれ少なくとも99重量%のL−ラクチドおよびD−ラクチド含量、高々10meq/kgの遊離酸含量および高々300ppmの水分量を有し得る。
本明細書に記載された方法において使用され得る市販のラクチドモノマーは、L−ラクチド PURALACT(登録商標)LおよびD−ラクチドPURALACT(登録商標)Dを包含し、両方共Corbion Purac(オランダ国)から入手可能である。
本明細書に記載された方法は、第一のラクチドモノマーを重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーと残留量の第一のラクチドモノマーを含む第一の重合混合物を与えること(工程a)を含む。
上記第一のラクチドモノマーは、L−ラクチドモノマーおよびD−ラクチドから選択される。
上述したように、ラクチドの溶融重合は知られており、適する重合条件を選択することは当業者の範囲内である。
工程a)の重合は、モノマー状ラクチドおよびポリマー状ラクチドが溶融形態である温度で行われる。典型的には、重合が、110〜275℃、特に130〜250℃の温度で行われ得る。幾つかの実施形態では、工程a)の重合が、110〜230℃、特に150〜180℃の温度で行われ得る。
ラクチドモノマーは、溶融形態で反応器に添加され得、または、固体形態で反応器に添加され、そしてそこで溶融され得る。
重合触媒は一般に、ラクチドモノマーに、それがすでに溶融された後に添加され得る。上述した重合添加剤(特に、助触媒および開始剤)は、上記触媒の前または後にラクチドモノマーに添加され得る。
重合触媒(および任意の重合添加剤)は、任意の適する形態で、例えば固体形態または液体形態(例えば溶液または懸濁物)でラクチドモノマーに添加され得る。適する形態を選択することは、当業者の範囲内である。
触媒のタイプおよび量に関して、上述されたものが参照される。
第一の重合混合物中の第一のラクチドモノマーの残留量は一般に、第一の重合混合物の重量に対して、1〜20重量%、特に2〜10重量%、より特に3〜6重量%であり得る。いくつかの実施形態では、残留する第一のラクチドモノマーの比較的低い量(例えば2〜6重量%)は、最終のラクチドブロックコポリマーの融点を有利にさらに高め得るので、好ましくあり得る。いくつかの実施形態では、残留する第一のラクチドモノマーの比較的高い量(例えば6〜10重量%)は、最終生成物により多い量のアモルファス物質を与え得るので、好ましくあり得る。そのとき、これは、可塑剤または他の添加剤との組み合わせにおいて加工を容易にし得る。
ラクチドモノマーの残留量は、公知の方法によって決定され得る。例えば、重合混合物中のポリマー状ラクチドからモノマー状ラクチドを分離する沈殿法によって決定され得る。例えば、第一の重合混合物(ポリラクチドおよびラクチドモノマーを含む)のサンプルが、既知量のジクロロメタン(内部標準を含む)に溶解され得る。重合混合物のポリラクチド画分が、上記ジクロロメタン溶液を過剰量の5/95のアセトン/ヘキサンに導入することによる沈殿によって除去され得る。30分の沈殿後に、ポリラクチド画分が、0.45μmフィルター上での濾過によって除去され得る。残りの溶液が次いで、気液クロマトグラフィーを使用して分析されて、サンプル中のラクチドモノマーの量を決定することができる。
上述したように、本明細書に記載された方法は、第一の重合混合物を、残留ラクチドモノマーを除去する工程に付す必要がない(例えば、脱蔵(devolatilization)工程を必要としない)。したがって、本明細書に記載された方法におけるいくつかの実施形態では、第一の重合混合物について、すなわち工程a)と工程b)との間で、残留する第一のラクチドモノマーを除去する工程(例えば脱蔵工程)が行われない。
重合混合物を、残留ラクチドモノマーを除去する工程に付すことなしに(例えば、脱蔵工程を行うことなしに)、あり得る最も少ない量の残留ラクチドモノマーを有する第一の重合混合物を与えることが好ましくあり得る。当業者が知っているように、最も少ない量の残留ラクチドモノマーは、重合がその熱力学的平衡に達成するとき(それは、反応が行われる温度によって決定される)に達成される。ラクチド溶融重合反応の熱力学を考慮すると、100%の転化は決して達成されない。重合反応が平衡に達するとき、ラクチドモノマーの残留量は一定のままであろう。重合がその熱力学的平衡に達する時点は、したがって、上述した重合の間に残留ラクチドモノマーの量をモニターすることによって決定され得る。熱力学的平衡において得られる残留ラクチドモノマーの実際の量は、最終反応混合物の温度に依存する。一例として、熱力学的平衡における残留モノマーの量は一般に、本明細書で言及された典型的な溶融重合温度において、2〜10重量%、特に3〜6重量%であり得る。
より多い量の残留モノマーを有する重合混合物は、重合を完了に到達させないことにより達成され得る。本明細書に記載された方法では、これは好ましくは、ある量の異なるキラリティーのラクチドモノマー(第二のラクチドモノマー)を重合混合物に添加することによって行われ得、そして下記で詳述する工程b)が続いて行われ得る。
工程a)の重合時間は、ポリマー状ラクチドを含む重合混合物中の第一のラクチドモノマーの目標とする残留量に、言い換えると、目標とする転化率に依存し得る。例えば、少ない量の残留ラクチドモノマーが望ましいならば、重合は、完了に達する(すなわちその熱力学的平衡に達する)ことを許され得る。目標とする転化率に達する時点に影響し得る要素は、例えば、重合条件、重合触媒および、連続法では反応器中の滞留時間を包含する。
一例として、工程a)の重合時間は、10分〜8時間、特に20分〜6時間、より特に30分〜5時間、さらには1時間〜4時間、例えば約2時間であり得る。
工程a)の第一のラクチドモノマーのポリマーおよび残留量の第一のラクチドモノマーを含む第一の重合混合物は、続く工程b)およびc)が行われ得る場所とは異なる場所で得られ得る。例えば、第一の重合混合物は、L−ラクチドまたはD−ラクチドの市販のラクチドポリマーであり得、それは、その製造のために使用されたラクチドモノマーの残留量を有する。
本明細書に記載された方法は、第一の量の第二のラクチドモノマーを第一の重合混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第二の重合混合物を与えること(工程b)を含む。
第二のラクチドモノマーは、D−ラクチドおよびL−ラクチドから選択され、第一のラクチドモノマーとは異なるキラリティーを有する。例えば、第一のラクチドモノマーがL−ラクチドである場合には、第二のラクチドモノマーがD−ラクチドであり、第一のラクチドモノマーがD−ラクチドである場合には、第二のラクチドモノマーがL−ラクチドである。
第二のラクチドの上記第一の量は、残留量の第一のラクチドと反応し、そして第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックを与える犠牲量として作用する。こうして、その後のラクチドポリマーブロック内の残留量の第一のラクチドモノマーの分布が制御され、そして最小にされ得る。
第二の重合混合物中の残留する第一のラクチドモノマーの低下された量を考慮すると、第一の重合混合物中の残留量の第一のラクチドモノマーの大部分は、工程b)で得られるコポリマーブロック内に分布される。特に、残留する第一のラクチドモノマーの実質的に全てが、工程b)で形成されたコポリマーブロック内に分布され得る。本明細書で使用される実質的に全てとは、第一のラクチドモノマーの残留量の90〜100重量%、特に少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%が上記コポリマーブロック内に分布されることを意味する。従って、工程c)で得られた第二のラクチドモノマーのポリマーブロックは一般に、第一のラクチドモノマーに由来する繰り返し単位の非常に低下された量(あるならば)を有し、その結果、高められたエナンチオマー純度を有する第二のラクチドモノマーのポリマーブロックを生じる。
本明細書に記載された方法において第二のラクチドモノマーの第一の量は、ラクチドブロックコポリマーの製造のために使用されるラクチドモノマーの総量に対して、1〜50重量%、特に2〜30重量%、より特に3〜20重量%、さらには5〜10重量%であり得る。一般に、第二のラクチドモノマーの第一の量が多いほど、工程b)で得られるコポリマーブロックは大きい。いくつかの実施形態では、コポリマーブロックのサイズを最小にするために、比較的少ない量の第二のラクチドモノマー(例えば1〜10重量%)が好ましくあり得る。小さいコポリマーブロックは、最終のラクチドブロックコポリマー中のステレオコンプレックス結晶の量を有利に増加し得る。いくつかの実施形態では、比較的多い量の第二のラクチドモノマー(例えば5〜50重量%または10〜30重量%)が好ましくあり得、これは、比較的大きいコポリマーブロックを結果する。比較的大きいポリマーブロックは、上記物質の加工処理および最終の機械的特性において利点を有し得る。
一般に、第二のラクチドモノマーの第一の量が、第一のラクチドモノマーの残留量より多いのが好ましい。上述したように、第二のラクチドモノマーの第一の量が、第一のラクチドモノマーの残留量より多いとき、第一のラクチドモノマーの実質的に全て、好ましくは全てが、工程b)で形成されたコポリマーブロック内に分布されるだろう。
いくつかの実施形態では、第一のラクチドモノマーの残留量に対する第二のラクチドモノマーの第一の量が、50:1〜1:1(重量/重量)、特に25:1〜1:1、特に10:1〜1:1、特に5:1〜1:1、さらには2:1〜1:1、さらには1.75:1〜1:1であり得る。
第一の量の第二のラクチドモノマーは一般に、(上述したように)所望の転化が工程a)において達せられると第一の重合混合物に添加される。
任意的に、追加の量の触媒、助触媒、開始剤または他の重合添加剤が、第一の量の第二のラクチドモノマーの添加の前に、添加と一緒にまたは添加の後に添加され得る。触媒、助触媒、開始剤および他の重合添加剤の種類および量に関して、上述されたものが参照される。
第一の量の第二のラクチドモノマーは、添加の任意の適するやり方で、例えば単一添加でまたは数回の添加で、第一の重合混合物に添加され得る。
単一添加は、第一の量の全部を反応器に全て一緒にまたはある時間(例えば1分〜1時間、5〜30分間または10〜20分間)にわたって連続的に添加することによりバッチ法で行われ得る。第一の量の第二のラクチドモノマーがある時間にわたって連続的に添加されるときには、傾斜型(gradient)コポリマーブロックが得られ得る。
単一添加は、第一の量の全部を単一の添加点で一定の流速でまたは増加する流速で添加することにより連続法で行われ得る。
数回の添加は、第一の量の第二のラクチドモノマーのいくつかの画分を反応器に不連続的に逐次添加で添加することによりバッチ法で行われ得る。例えば、第一の量の第一の画分が添加され、そして重合された後に、第一の量の第二の画分が添加され得る。一例として、ある画分と次の画分との間の時間は、1分〜1時間、5〜30分間または10〜20分間であり得る。上記第一の量のラクチドは、増加する量で添加され得る。すなわち、ある画分は、次の画分より少量であり得る。
数回の添加は、第一の量の第二のラクチドモノマーのいくつかの画分を反応器の種々の箇所で、例えばプラグフロー反応器の長さにわたって分布された幾つかの箇所で添加することにより連続法で行われ得る。第一の量の第二のモノマーのいくつかの画分が、一定の流速でまたは増加する流速で添加され得る。第一の量の第二のモノマーはまた、増加する量で連続法で添加され得る。例えば、ある画分が第一の重合混合物に添加されるところの流速が、次の画分が添加されるところの流速より小さくあり得る。
第一の量の第二のラクチドモノマーの添加様式は一般に、コポリマーブロック内における残留量の第一のラクチドモノマーの分布に影響を及ぼす。例えば、第二のラクチドモノマーが単一添加で第一の重合混合物に添加されるならば、第一のラクチドモノマーは一般に、コポリマーブロック内にランダムに分布され得る。すなわち、上記コポリマーブロックがランダムコポリマーである。第一の量の第二のラクチドモノマーが増加する量で添加される、例えば数回の添加にわたってまたは増加する流速で単一添加を使用して添加されるならば、コポリマーブロック内における第一のラクチドモノマーの存在が一般に、コポリマーブロックの長さにわたって漸次に減少し得る。すなわち、上記コポリマーブロックが傾斜型コポリマーである。
第二のラクチドモノマーは、第一の重合混合物に任意の適する形態で添加され得る。例えば、第二のラクチドモノマーは、溶融された形態で添加され得る。すなわち、第二のラクチドモノマーは、重合混合物への添加の前に溶融され得る。第二のラクチドモノマーが溶融される温度は、重合温度より低くあり得る。あるいは、第二のラクチドモノマーは、固体形態で添加され、そして重合混合物中で溶融され得る。
上述したように、ラクチドの溶融重合は、当該技術分野において知られており、適する重合条件を選択することは当業者の範囲内である。
工程b)の重合は、モノマー状ラクチドとポリマー状ラクチドが溶融形態である温度で行われる。典型的には重合が、110〜275℃、特に130〜250℃の温度で行われ得る。いくつかの実施形態では、工程b)の重合が、110〜230℃、特に150〜180℃の温度で行われ得る。
工程b)の重合時間は、種々の要素、例えば重合条件、重合触媒、所望の転化率および重合生成物の特性に依存し得る。好ましくは、工程b)の重合が、完了に達するまで(すなわち、熱力学的平衡に達するまで)行われ得る。重合がその熱力学的平衡に達する時点は、工程a)について上述したように決定され得る。
一例として、工程b)の重合時間は、1分〜5時間、特に5分〜2時間、特に15分〜1時間であり得る。
本明細書に記載された方法は、第二の量の第二のラクチドモノマーを第二のポリマー混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックと、第二のラクチドモノマーのポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第三の重合混合物を与えること(工程c)を含む。
工程c)のラクチドモノマーは、工程b)で使用されたラクチドモノマーと同じである。例えば、第一の量のL−ラクチドが、工程b)において添加されそして重合され、次いで、第二の量のL−ラクチドが、工程c)において添加されそして重合される。第一の量のD−ラクチドが工程b)で添加されそして重合されるならば、第二の量のD−ラクチドが工程c)において添加されそして重合される。
第二のラクチドモノマーの第二の量は、ラクチドブロックコポリマーの製造のために使用されるラクチドモノマーの総量に対して1〜50重量%、特に5〜50重量%、特に25〜50重量%であり得る。一般に、第二のラクチドモノマーの第二の量が多いほど、工程c)で得られるポリマーブロックは大きい。
一般に、第二のラクチドモノマーの第二の量が、第二のラクチドモノマーの第一の量より多いのが好ましくあり得る。それによって、最終のラクチドブロックコポリマーにおいて、第二のラクチドモノマーのポリマーブロックが一般に、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックより大きくあり得る。その結果、一般に、より多い量のステレオコンプレックス結晶が、最終のラクチドブロックコポリマー中に形成するだろう。
いくつかの実施形態では、ラクチドブロックコポリマーの製造で使用される第一のラクチドの総量に対する第二のラクチドの総量(第一の量および第二の量を考慮に入れる)が、5:1〜1:5(重量/重量)、特に2.5:1〜1:2.5、より特に1:1であり得る。
工程b)において所望の転化(例えば完了)が達成されると、第二の量の第二のラクチドが一般に第二の重合混合物に添加される。
任意的に、第二の量の第二のラクチドモノマーの添加の前に、添加と一緒にまたは添加の後に、追加量の触媒、助触媒、開始剤または他の重合添加剤が添加され得る。触媒、助触媒、開始剤および他の重合添加剤に関して上述されたものが参照される。
第二の量の第二のラクチドモノマーが、添加の任意の適するやり方で、例えば単一添加でまたは数回の添加で、第二の重合混合物に添加され得る。第二のラクチドモノマーは、任意の適する形態で第二の重合混合物に添加され得る。工程b)に関して第一の量の第二のモノマーのための添加のやり方および形態に関して上述したものがここでも当てはまる。
上述したように、ラクチドの溶融重合は当該技術分野で知られており、適切な重合条件を選択することは当業者の範囲内である。
工程c)の重合は、モノマー状ラクチドおよびポリマー状ラクチドが溶融形態である温度で行われる。典型的には、重合が、110〜275℃、特に130〜250℃の温度で行われ得る。いくつかの実施形態では、工程c)の重合が、160〜250℃、特に180〜220℃の温度で行われ得る。
いくつかの実施形態では、工程a)およびb)の重合が、工程c)の重合温度より低い温度で行われる。
工程c)の重合時間は、種々の要素、例えば重合条件、重合触媒、転化率および重合生成物の特性に依存し得る。好ましくは、工程c)の重合が、完了に達する(すなわちその熱力学的平衡に達する)まで行われ得る。重合がその熱力学的平衡に達する時点は、工程a)のために上述したように決定され得る。
一例として、工程c)の重合時間は、10分〜8時間、特に20分〜6時間、より特に30分〜5時間、さらには1〜4時間、例えば約2時間であり得る。
一般に、所与の組の重合条件下で、重合時間が長いほど、ラクチドブロックコポリマーの分子量はより高く、またモノマー状ラクチドのポリマー状ラクチドへの転化率はより高い。10分未満の重合時間は、十分な転化および/または所望の分子量をもたらさない可能性がある。8時間より長い重合時間は一般に、(熱力学的平衡故に)転化を改善せず、さらには、一般にポリマーの有意な量の熱分解を生じ、通常は変色および分子量の低下を伴う。
工程c)で得られた第三の重合混合物は、本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーを含み、一般に、残留量の第二ラクチドモノマーを含み得る。一般に、第三の重合混合物の主要成分は、本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーである。例えば、工程c)で得られた第三の重合混合物は、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、より特に少なくとも98重量%、さらには少なくとも99重量%のラクチドブロックコポリマーを含み得る。
上記ラクチドブロックコポリマーを含む第三の重合混合物は、その最終用途に直接使用され得、または使用の前に、例えばその純度を高める、その安定性を高めるおよびその色を改善するために、1またはいくつかの処理に付され得る。
いくつかの実施形態では、第三の重合混合物が脱揮工程に付されて、溶融されたポリマーまたは固体ポリマーから揮発物、特に未反応のモノマーを除去し得る。揮発物は一般に、高められた温度(例えば180〜275℃)で減圧下(例えば真空下)で除去される。脱揮工程後に、ラクチドモノマーは一般に、2重量%未満、特に1重量%未満、さらには0.5重量%未満、さらには0.3重量%未満の量で存在し得る。脱揮器の例は、押出機、特に二軸押出機、ワイパード膜式蒸発器、流下膜式蒸発器、回転式脱揮器、回転式ディスク脱揮器、遠心脱揮器、フラットプレート脱揮器および、特定の分配器を含む静的膨張チャンバー、例えば欧州特許出願公開第1800724号明細書に記載された脱揮技術を包含する。
本明細書に記載された方法において、工程c)の後に脱揮工程を行うことは、ポリマー中の有意な量のラクチドモノマーの存在が、ポリマーの機械的特性および加工動作に悪影響を及ぼし得るので、好ましくあり得る。例えば、脱揮工程は、ラクチドブロックコポリマーの長期安定性をさらに改善し得る。
あるいはまたは追加的に(脱揮工程の前または同時に)、第三の重合混合物は、安定化工程に付され得る。上記安定化工程は、第三の重合混合物を安定化剤(例えば解重合、変色、分子量低下および一般の分解に対するラクチドブロックコポリマーの安定性を増加する化合物)で処理することを含む。適する安定化剤の例は、例えば、有機過酸化物、有機ヒドロパーオキシド、フェノール性酸化防止剤、ホスファイト、ラジカルスカベンジャー、連鎖延長剤、触媒不活化剤、エンドキャッピング剤(例えば無水コハク酸)およびそれらの混合物を包含する。酸化防止剤、有機過酸化物およびホスファイトが安定化剤として好ましくあり得、適用される触媒がスズ(II)に基づく触媒である場合には特にそうである。
第三の重合混合物は、安定化剤を第三のポリマー状混合物と、例えば重合温度と同じオーダーの温度で混合することによって安定化化合物で処理され得る。これは、スタティックミキサー、押出機または、その少なくとも1が非常に粘性である物質を混合する他の慣用の方法によって行われ得る。
第三の重合混合物(脱揮および/または安定化工程に付されたものまたは付されていないもの)はまた、固化されて固体中間生成物を形成し得る。固化の間または固化の後に、第三の重合混合物は、当該技術分野で公知のやり方で、粒子、例えばビーズ、チップまたは他のペレット化されたもしくは粉末化された生成物に転化され、次いで末端使用者に販売され得る。上記中間生成物は、次いで、その最終用途のためにさらに加工処理され得る。
いくつかの局面において、本発明はさらに、L−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックによって分離された、L−ラクチドのポリマーブロックおよびD−ラクチドのポリマーブロックを有するラクチドブロックコポリマーに関する。そのようなラクチドブロックコポリマーは、本明細書に記載された方法によって得られ得る。
本明細書で使用されるD−ラクチドのポリマーブロックおよびL−ラクチドのポリマーブロックは、それぞれD−ラクチドおよびL−ラクチドに由来する繰り返し単位から本質的に成るポリマーの断片を指す。一般に、L−ラクチドまたはD−ラクチドのポリマーブロックは、それぞれL−ラクチドおよびD−ラクチドのホモポリマーとみなされ得る。L−ラクチドまたはD−ラクチドのポリマーブロックは一般に、反対のキラリティーのラクチドに由来する繰り返し単位を、上記ポリマーブロックの総量に対して1重量%未満、特に0.75重量%未満、さらには0.5重量%未満含む。
本明細書で使用されるL−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックは、L−ラクチドとD−ラクチドの両方に由来する繰り返し単位から本質的に成るポリマーの断片を指す。L−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックは一般に、L−ラクチドに由来する繰り返し単位に対するD−ラクチドに由来する繰り返し単位(またはその逆)の重量比が、1:1〜1:25である。本明細書に記載されたコポリマーブロックは一般に、ブロックコポリマーの総重量に対して1〜50重量%、特に2〜30重量%、特に3〜20重量%、さらには5〜10重量%であり得る。本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーにおいて、L−ラクチドのポリマーブロック、D−ラクチドのポリマーブロックおよびL−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックの重量は合計で100重量%になる。
本明細書に記載されたコポリマーブロックは、ランダムコポリマーまたは傾斜型コポリマーであり得る。ランダムコポリマーでは、L−ラクチドおよびD−ラクチドに由来する繰り返し単位が、コポリマーブロックにランダムに分布されている。傾斜型コポリマーでは、L−ラクチドおよびD−ラクチドに由来する繰り返し単位の分布が、主な単位が一方のラクチドモノマーから他方のラクチドモノマーへの、例えばL−ラクチドからD−ラクチドへの、またはその逆の漸次変化を示す。特に、ポリマー状L−ラクチドのブロックとポリマー状D−ラクチドのブロックを分離する傾斜型コポリマーブロックは一般に、ポリマー状L−ラクチドのブロックからポリマー状D−ラクチドのブロックへの方向に、主たるL−ラクチドから主たるD−ラクチドへの漸次変化を有する。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは一般に、第一のラクチドモノマーに由来する繰り返し単位の第二のラクチドモノマーに対する比が、90:5〜5:90(重量/重量)、特に70:30〜30:70、より特に60:40〜40:60であり得る。一例として、50:50の比が挙げられ得る。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは一般に、5K/分の加熱速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるとき、190℃以上、195〜250℃、特に200〜230℃、さらには205〜225℃の融点を有し得る。溶融ピークは、標準法ASTMD3418に記載された示差走査熱量測定(DSC)によって測定され得る。例えば、DSCは、TA Instruments Q2000上で行われ得、そして5 K/分の加熱および冷却速度が使用され得る。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは、DSCによって測定されるとき、1より多い溶融ピークを有し得る。これは、例えばステレオコンプレックスおよびホモポリマーの両方の微結晶がブロックコポリマー生成物中に存在する場合であり得る。ステレオコンプレックスおよびホモポリマーの微結晶の混合物は、例えば、L−ラクチドに由来する繰り返し単位のD−ラクチドに由来する繰り返し単位に対する比が非常に高い(例えば95:5)ならば、得られ得る。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは一般に、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFiP)中での光散乱検出を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるとき、30,000〜200,000g/mol、特に40,000〜175,000g/mol、より特に50,0000〜150,000g/molの絶対重量平均分子量(Mw)を有し得る。
本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)(多分散指数(PDI)としても知られる)は、1.0〜3.0、特に1.2〜2.5、より特に1.5〜2.0であり得る。
絶対分子量パラメータMn、Mwおよび多分散指数(PDI)は、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として使用し、光散乱を使用して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定され得る。特に、Viscotek GPC Mx VE2001システムが、溶媒としての0.02MのCFCOOKを有するヘキサフルオロイソプロパノール(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールまたはHFiPとしても知られる)を用いて0.7mL/分の流速で使用され得る。直列に連結された2のPSS PFG分析リニアカラム(M、300x8.00mm、7µm)が、サイズ排除カラムとして使用され得る。
本明細書に記載された(特に本明細書に記載された方法で得られた)ラクチドブロックコポリマーは有利には、良好な特性、特に、高い融点(例えば、上述したように190〜250℃)(これは、多くの用途において有用にする)を有する。
従って、本発明は、本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーを含む物品、好ましくは成形品に関する。本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは、比較的高い温度、例えば他のバイオプラスチック(例えばホモポリ乳酸)ならば軟化または溶融し得る温度(例えば60〜200℃)に耐えることが要求される用途において特に有用であり得る。
本明細書に記載された(例えば、本明細書に記載された方法で得られた)ラクチドブロックコポリマーは、その最終用途のために、当該技術分野で公知の手段によってさらに加工処理され得る。さらなる加工処理は、例えば押出、射出成形、射出延伸ブロー成形、ブロー成形、フィルムキャスティング、インフレーション成形、熱成形、発泡または紡糸によって行われ得る。一般に、さらなる加工処理が行われて、有用な物品(例えば成形品)、例えばフィルム、シート、繊維、クロス、不織布、医療用品(例えば、徐放性薬物デリバリーシステム)、包装(例えば、飲食物のための容器、例えばボトル、バッグおよびラッピング)、ケータリング用品(例えば、カトラリー、カップ、皿およびボウル)、農業資材、園芸資材、漁業資材、土木建築資材、文房具、電気および電子部品(例えば包装材)、自動車部品などを形成し得る。
所望ならば、本明細書に記載されたラクチドブロックコポリマーは、添加剤、例えば、酸化防止剤、核形成剤、フィラー(例えば、鉱物フィラー、ガラスまたは天然繊維)、加工所剤(例えば滑剤、可塑剤、離型剤)、光安定剤(例えば、UV安定剤またはUV吸収剤)、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、抗菌−抗真菌剤、着色剤(例えば、染料および顔料)、または当業者に知られている他のポリマー添加剤と混合され得る。
本明細書に記載された方法によって、アモルファス(傾斜型)ブロックと、sc−PLAに結晶化し得るブロックの両方を有するブロックコポリマーを合成することができるという追加の利点を有する。傾斜型ブロックの使用がないと、これは達成され得ない。
本発明を、下記実施例によってさらに例示するが、本発明は、下記実施例にまたは下記実施例によって限定されない。
材料
Corbion Purac(オランダ国)から得られた、99重量%の純度のPuraLact(登録商標)L(CAS# 4511−42−6)およびPuraLact(登録商標)D(CAS# 95−96−5)がそれぞれ、L−ラクチドモノマーおよびD−ラクチドモノマーとして使用された。
Sigmaから得られた、約95%の純度のスズオクトエート(CAS# 301−10−0)が、触媒として使用された。上記触媒は、Acrosから得られた、99%の純度のトルエン(CAS# 108−88−3)中の10%溶液として使用された。
開始剤として、Acrosから得られた、99%の純度の1,4−ブタンジオール(CAS# 110−63−4)および、Acrosから得られた、99%の純度の2−エチル−1−ヘキサノール(CAS# 104−76−7)が使用された。
触媒不活性化剤として、Adeka Palmaroleから得られたモノおよびジステアリルホスフェート(ADK Stab AX−71)の混合物が使用された。
トリフェニルホスフィン(CAS# 603−35−0)が、安定化剤として、ACROSから受け取ったまま(99%純度)使用された。
一般方法
ポリラクチドサンプル中の残留ラクチドの量が沈殿法によって決定されて、重合混合物中のポリマー状ラクチドからモノマー状ラクチドを分離し得る。第一の重合混合物(ポリラクチドおよびラクチドモノマーを含む)のサンプルが、既知量のジクロロメタン(内部標準を含む)中に溶解される。重合混合物のポリラクチド画分が次いで、上記ジクロロメタン溶液を過剰量の5/95のアセトン/ヘキサン溶媒混合物中に導入することにより沈殿によって除去される。30分の沈殿後に、ポリマー画分が、0.45μmフィルター上での濾過によって除去される。残りの溶液が次いで、気液クロマトグラフィーを使用して分析されて、サンプル中のラクチドモノマーの量を決定する。
絶対分子量パラメータMn、Mwおよび多分散指数(PDI)が、特に断らない限り、光散乱検出を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定された。特に、Viscotek GPC Mx VE2001システムが、溶媒としての0.02MのCFCOOKを有する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(ヘキサフルオロイソプロパノールまたはHFiPとしても知られる)を用いて0.7mL/分の流速で使用された。使用されたサイズ排除カラムは、直列に連結された2のPSS PFG分析リニアカラム(M、300x8.00mm、7μm)であった。重合混合物のサンプルの20〜25mgが20mlのクリンプキャップバイアル中に秤量され、そして17グラムのHFiPがそれに添加された。得られた懸濁物が、室温で少なくとも16時間振とうされた。16時間後に、1mlのサンプルがPVDF 0.45μmフィルターによって濾過され、2mlのバイアルに移され、そして分析のためにGPCシステムに注入された。
モノマー状ラクチドおよびポリマー状ラクチドの光学純度が、乳酸メチルのキラルガスクロマトグラフィー(GC)分解能に頼って、破壊的メチル化によって評価された。R−乳酸メチルとS−乳酸メチル(それぞれ、D−ラクチドとL−ラクチドに由来する)の比が、サンプルの立体化学的純度を決定する。
ラクチドサンプルの遊離酸含量が、Titrino 736装置を使用して、ジクロロメタンおよびメタノール中の0.01MのCHOKによる滴定によって決定された。
溶融ピークの解析が、示差走査熱量測定(DSC)によりラクチドブロックコポリマーの熱転移を決定することにより行われた。DSCは、例えばTA Instruments Q2000上で行われ得る。そのために、3〜7mgのポリマー状ラクチドサンプルが、T−zero気密パン中に秤量された。使用された加熱および冷却速度は、5K/分であった。
比較例1:立体化学的に純粋なポリ(L−ラクチド)の製造
2Lのステンレス鋼の反応器に窒素雰囲気で、520gのL−ラクチドが添加され、そして130℃への昇温下で溶融させた。次いで、1.26gの2−エチル−1−ヘキサノールが、注射器を使用して上記反応器に添加された。次いで、重合が、触媒としてのトルエン中の10%スズオクトエート溶液の0.73gの添加により開始され、そして反応器の温度が180℃に達した。触媒の添加は、t=0とされた。重合を撹拌下で進行させるとともに、分析のために反応混合物のアリコートが採取された。120分の重合後に、転化が熱力学的平衡に達して、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)および4.0重量%の残留量のL−ラクチドモノマーを含む重合混合物を与えた。反応混合物を安定化させるために、0.5gのADK Stab AX−71が上記反応器に添加され、そして20分間ブレンドされた。
反応器の全内容物が次いでオフロードされ、そして、反応生成物がcmの大きさの顆粒に切断された。これらの顆粒が、130℃および5mbarで16時間の脱気工程に付された。最終生成物が、HPiP中で光散乱検出を使用してGPCによって決定されるとき、M=65.000g/molの絶対分子量を有した。L−ラクチドモノマーの残留量は1.0重量%であった。示差走査熱量測定(DSC)は、上記ポリマーが、176℃の第一の加熱走査中に融点を有することを示した。冷却すると、サンプルが102℃で結晶化ピークを示し、続く再加熱が、100℃での低温結晶化ピークおよび170℃での融点を示した。これは、高い分子量の、立体化学的に純粋なポリ(L−ラクチド)ですら、(下記の比較例2および実施例1および2によって例示された)ステレオブロックPLAおよびステレオコンプレックスブレンドPLAのものよりはるかに低い融点を有することを明らかに示した。
比較例2:ポリ(L−ラクチド)とポリ(D−ラクチド)のステレオコンプレックスブレンドの製造
PLA樹脂の完全なステレオコンプレックスブレンドを作る試みにおいて、48.5重量%のポリ(L−ラクチド)(M=208kg/mol、ポリスチレンに対してクロロホルム中で測定)と48.5重量%のポリ(D−ラクチド) (M=141kg/mol、ポリスチレンに対してクロロホルム中で測定)が、Berstorff ZE 25(CL)同方向二軸押出機(L/D=40)(3000rpm)を使用して、3重量%のタルク(Luzenac A10XC)とコンパウンドされた。押出機の温度ゾーンは、供給ゾーンでの20℃から混合ゾーンでの215℃へ、ダイヘッドでの205℃へと変わった。ストランドペレット化、乾燥および結晶化の後に、DSCが、約210〜240℃でのステレオコンプレックス溶融ピークに加えて、約170〜175℃での両方のホモポリマーの溶融ピークの存在を示した。明らかに、ステレオコンプレックス−PLA(sc−PLA)への選択的結晶化は達成されなかった。比較例2のDSCサーモグラムを図1に示す。グラフのライン(A)は、DSC走査の第一の加熱曲線を示し、ライン(B)は、DSC走査の冷却曲線を示し、ライン(C)はDSC走査の第二の加熱曲線を示す。
実施例1:本発明に従うラクチドブロックコポリマーの製造
2Lのステンレス鋼の反応器に窒素雰囲気で、760gのL−ラクチドが添加され、そして130℃への昇温下で溶融させた。次いで、2.03gの2−エチル−1−ヘキサノール(開始剤として)および0.177gのトリフェニルホスフェート(安定剤として)が注射器を使用して上記反応器に添加された。次いで、重合が、触媒としてのトルエン中の10%スズオクトエート溶液の1.09gの添加により開始され、そして反応器の温度が180℃に達した。触媒の添加は、t=0とされた。重合を撹拌下で進行させるとともに、分析のために反応混合物のアリコートが採取された。90分の重合後に、転化が熱力学的平衡に達して、ポリマー状L−ラクチド(PLLA)および約4重量%の残留量のL−ラクチドモノマーを含む重合混合物を与えた。サンプルが分析(PLLA−ブロック)のために採取された。次いで、136.4gの量のD−ラクチドが1回で上記重合混合物に添加され、そして、同じ温度(180℃)で重合させた。20分後に、得られた第二の重合混合物のサンプルが分析(PLLA−コポリマージブロック)のために採取された。650gの追加量のD−ラクチドが上記重合混合物に添加されるとともに、上記混合物の温度が190℃に上げられた。分析のために第一のL−ラクチドブロックの形成中に除去されたサンプルの量を考慮して、添加されたD−ラクチドの追加量は、1:1のPLLAブロック対PDLAブロック比が得られるように選択された。重合をさらに120分間進行させた。反応が、触媒不活性化剤としての1.2gのADK Stab AX−71の添加により停止され、そして15分間ブレンドされた後に、バッチ全体をオフロードした。最後に、バッチが減圧オーブン中に一晩置かれた(130℃、5mbar)。
分析結果が、第三のかつ最終の重合混合物(PLLA−コポリマー−PDLAトリブロック)がM=83,000g/mol(PDI=1.74)および0.7%の残留ラクチドモノマーを有したことを示した。DSCが第一の加熱曲線における208℃での溶融ピークおよび第二の加熱曲線における210℃での溶融ピークを示した。実施例1のラクチドブロックコポリマーのDSC走査を図2に示す。グラフのライン(A)がDSC走査の第一の加熱曲線を示し、ライン(B)がDSC走査の冷却曲線を示し、ライン(C)がDSC走査の第二の加熱曲線を示す。ブロックコポリマーが、溶融され(第一の加熱曲線の間)、固化され、そして再溶融された(第二の加熱曲線の間)後に、第二の加熱曲線においてステレオコンプレックス溶融ピークのみをなおも示すことは注目すべきである。
実施例2:本発明に従うラクチドブロックコポリマーの製造
ラクチドブロックコポリマーが、実施例1に関して上述したように製造された。ただし、PLLAブロックおよびコポリマーブロックを含む第二の重合混合物は、第二のラクチドの単一添加によっては製造されなかった。その代わりに、3つに分けたD−ラクチドが使用されて第二の重合混合物を製造した。さらに、二官能性開始剤が使用され、こうしてペンタブロックコポリマー(PDLA−コポリマー−PLLA−コポリマー−PDLA)を効率的に合成した。そのために、実施例1と同一の容器において、760gのL−ラクチドが、溶融後に、2.4gのブタンジオールによる開始およびトルエン中のスズオクトエートの10重量%溶液の1.16gによる触媒作用で重合された。重合は、180℃で180分間行われ、その時点でL−ラクチドの残留量は5.0%であった。同じ反応温度で、D−ラクチドの3つのバッチ(50g、20gおよび5g)が5分間隔で上記反応混合物に添加された。最後の5gのバッチの添加後に、重合が20分間行われて、第二の重合混合物を与えた。次いで、615gの最終量のD−ラクチドが上記反応混合物に添加されて、最終ブロックコポリマーを含む第三の重合混合物を作った。反応混合物の温度が同時に210℃に上げられた。2時間の重合の後に、1.57gのADK Stab AX−71が添加されて反応を停止した。反応器の内容物がオフロードされ、そして実施例1に記載されたように脱気に付された。最終のブロックコポリマーは、M=51.000g/molの絶対分子量を有した。DSCサーモグラムは、198℃での融点の存在を示し、また冷却後の再溶融が約199℃でのステレオブロック溶融ピークを再び示した。
得られたブロックコポリマーは、立体化学的に純粋なPLLAよりも有意に高い融点を有し、また、PDLAとPLLAのブレンドと比べて、ホモポリマー溶融ピークを示さない。これは、ステレオコンプレックスPLAへの選択的結晶化を確認する(比較例1および2)。観察された融点は、実施例1のラクチドブロックコポリマーより低い。これは恐らく、二官能性開始剤の使用に由来するコポリマー構造の違いおよび/または第二のラクチドモノマーの添加様式の違い故である。
この実施例は、最終のラクチドブロックコポリマーの特性が、例えば開始剤の種類および/または添加様式を選択することにより、本発明の方法によって調整され得ることを示す。
実施例3:実施例1の最終生成物から射出成形された試験片の製造
実施例1の最終生成物が83℃で4時間乾燥された。次いで、この混合物が、窒素雰囲気下で、標準PE−軸および、ISO527−2に従う試験サンプル(ダンベル試験片タイプ1BA)のためのホットランナー金型を備えたDEMAG Ergotech NC IV 25−80コンパクト射出成形装置を使用して成形された。シリンダ温度は、40/170/220/220/220であり、冷却時間は140℃の金型温度で35sであった。
20℃および50%相対湿度で1週間のコンディショニングの後に、試験棒が、ISO norm ISO 527−1に従う機械的分析に付された。結果を下記表1に示す。それは、使用されたブロックコポリマー物質により、硬い引張棒が、145℃の高い熱変形温度(HDT−B)によって反映される高い耐熱性を伴って得られ得たことを明らかに示す。
Figure 2017525807

Claims (16)

  1. 第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーから触媒の存在下での溶融重合によってラクチドブロックコポリマーを製造する方法であって、上記第一のラクチドモノマーおよび第二のラクチドモノマーは互いに異なりかつL−ラクチドおよびD−ラクチドから選択され、上記方法は、下記工程:
    a.第一のラクチドモノマーを重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーと残留量の第一のラクチドモノマーを含む第一の重合混合物を与えること、
    b.第一の量の第二のラクチドモノマーを第一の重合混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第二の重合混合物を与えること、
    c.第二の量の第二のラクチドモノマーを第二の重合混合物に添加し、そして得られた混合物を重合して、第一のラクチドモノマーのポリマーブロックと、第一のラクチドモノマーと第二のラクチドモノマーのコポリマーブロックと、第二のラクチドモノマーのポリマーブロックとを有するコポリマーを含む第三の重合混合物を与えること
    を含む、上記方法。
  2. 工程a)において、第一の重合混合物中の第一のラクチドモノマーの残留量が、第一の重合混合物の重量に対して1〜20重量%、特に2〜10重量%、より特に3〜6重量%である、請求項1に記載の方法。
  3. 工程b)において、第二のラクチドモノマーの第一の量が、上記ラクチドブロックコポリマーの製造のために使用されるラクチドモノマーの総量に対して1〜50重量%、特に2〜30重量%、より特に3〜20重量%、さらには5〜10重量%である、請求項1または2に記載の方法。
  4. バッチ法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 連続法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 工程a)、b)およびc)の重合が、110〜275℃、特に130〜250℃の温度で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程a)およびb)の重合が、工程c)の重合温度より低い温度で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 工程a)およびb)の重合が、110〜230℃、特に150〜180℃の温度で行われ、および/または工程c)の重合が、160〜250℃、特に180〜220℃の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 工程c)の第三の重合混合物に安定化剤を添加することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 工程c)の第三の重合混合物を脱揮工程に付すことをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. L−ラクチドとD−ラクチドのコポリマーブロックで分離された、LラクチドのポリマーブロックおよびD−ラクチドのポリマーブロックを有するラクチドブロックコポリマー。
  12. 上記コポリマーブロックが、上記ブロックコポリマーの総重量に対して1〜50重量%、特に2〜30重量%、より特に3〜20重量%、さらには5〜10重量%である、請求項11に記載のブロックコポリマー。
  13. 上記コポリマーブロックが、ランダムコポリマーまたは傾斜型コポリマーである、請求項11または12に記載のブロックコポリマー。
  14. 示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるとき、190℃以上、特に195〜250℃、特に200〜230℃、より特に205〜225℃の溶融ピークを有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
  15. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ヘキサフルオロイソプロパノール中でのGPC)によって光散乱検出を用いて測定されるとき、30,000〜200,000g/モルの絶対重量平均分子量(Mw)を有する、請求項11〜14のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
  16. 請求項11〜15のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む物品、好ましくは成形品。
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