詳細な説明
定義
本開示は、その適用において、本明細書中に記載される方法および組成物の詳細に限定されない。また、本明細書中で使用される表現法および用語法は、説明目的であって、限定として見なされるべきでない。
本明細書中で使用されるとき、冠詞「a」および「an」は、一つまたは一つより多い(例えば、少なくとも一つの)、その冠詞の文法上の対象物のことを指す。
「約」および「およそ」は、計測された量に対して、その計測値の性質または精度を考慮に入れて、通常、許容され得る程度の誤差を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、代表的には、10%以内、より代表的には5%以内である。
本明細書中で使用されるとき、障害(例えば、本明細書中に記載されるような障害)を処置するのに有効な化合物または組み合わせ物の量、「治療有効量」、「有効量」または「有効なコース」とは、被験体を処置する際、または障害(例えば、本明細書中に記載されるような障害)を有する被験体を治療する際、軽減する際、緩和する際もしくは改善する際の、被験体に対する単回投与または複数回投与において、そのような処置の非存在下において予測されるものを超えて有効な、化合物または組み合わせ物の量のことを指す。
用語「薬学的に許容され得る」は、本明細書中で使用されるとき、本明細書中に記載される化合物(例えば、式(I)の化合物)とともに被験体に投与され得るものであって、その薬理学的活性を損なわず、治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与されたとき無毒性である、化合物またはキャリア(例えば、賦形剤)のことを指す。
上で明示されたように、本化合物のある特定の実施形態は、塩基性官能基(例えば、アミノまたはアルキルアミノ)を含むことがあるので、薬学的に許容され得る酸と薬学的に許容され得る塩を形成することが可能である。用語「薬学的に許容され得る塩」は、この点において、本明細書中に開示される化合物の比較的無毒性の無機酸付加塩および有機酸付加塩のことを指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製においてインサイチュで調製され得るか、または遊離塩基の形態の精製された本発明の化合物を好適な有機酸もしくは無機酸と別々に反応させ、そのようにして形成された塩を単離することによって調製され得る。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Bergeら(1977)“Pharmaceutical Salts”,J Pharm Sci 66:1−19を参照のこと)。
他の場合において、本明細書中に開示される化合物は、一つまたはそれより多くの酸性官能基を含むことがあるので、薬学的に許容され得る塩基と薬学的に許容され得る塩を形成することが可能である。用語「薬学的に許容され得る塩」は、これらの場合において、本明細書中に開示される化合物の比較的無毒性の無機塩基付加塩および有機塩基付加塩のことを指す。これらの塩は、同様に、それらの化合物の最終的な単離および精製においてインサイチュで調製され得るか、または遊離酸の形態の精製された化合物を好適な塩基(例えば、薬学的に許容され得る金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩)、アンモニアまたは薬学的に許容され得る有機第一級、第二級もしくは第三級アミンと別々に反応させることによって調製され得る。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩を形成するために有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。
用語「処置する」または「処置」は、本明細書中で使用されるとき、被験体、例えば、障害(例えば、本明細書中に記載されるような障害)、障害の症候または障害の素因を有する被験体に、その障害を治療するか、治癒するか、軽減するか、緩和するか、変化させるか、矯正するか、回復させるか、改善するかまたはその障害に影響する目的で、ある化合物を単独でまたはさらなる作用物質との併用で適用することまたは投与することを指す。
本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むと意図されている。例示的なヒト被験体としては、障害、例えば、本明細書中に記載される障害を有するヒト被験体が挙げられる。本発明の「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、非哺乳動物(例えば、ニワトリ、両生類、爬虫類)および哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、家畜化された動物および/または農業上有用な動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなどが含まれる。
用語「アンタゴニスト」および「阻害剤」は、例えば、TRPA1などのイオンチャネルの活性を抑止するために生物学的活性を低下させるまたは抑制する作用物質のことを指すために交換可能に使用される。TRPA1阻害剤には、本明細書中に開示される構造特性および/または機能特性の任意の組み合わせを有する阻害剤が含まれる。
阻害または処置の主題の方法に関して、例えばTRPA1アンタゴニストの「有効量」とは、所望の投与レジメンの一部として適用されたとき、所望の臨床的または機能的な結果をもたらす、調製物中のそのアンタゴニストの量のことを指す。理論に拘束されるものではないが、本発明の方法において使用するためのTRPA1アンタゴニストの有効量には、TRPA1チャネルの一つまたはそれより多くのインビトロまたはインビボ機能を低下させるのに有効なTRPA1アンタゴニストの量が含まれる。例示的な機能としては、膜分極(例えば、あるアンタゴニストは細胞の脱分極を妨げ得る)、イオン流入、細胞内のイオン濃度、外向き電流および内向き電流が挙げられるが、これらに限定されない。TRPA1機能に拮抗する化合物には、TRPA1のインビトロまたはインビボでの機能活性に拮抗する化合物が含まれる。特定の機能活性が、インビトロアッセイにおいてごく容易に観察可能であるとき、ある化合物がそのインビトロアッセイにおいてTRPA1の機能を阻害する能力は、その化合物の活性に対する合理的な代用として役立つ。ある特定の実施形態において、有効量は、TRPA1媒介性の電流を阻害するのに十分な量および/またはTRPA1媒介性のイオン流入を阻害するのに十分な量である。
用語「水和物」は、本明細書中で使用されるとき、水と親化合物との結合によって形成される化合物のことを指す。
用語「予防する」は、ある症状、例えば、局所再発(例えば、疼痛)、ある疾患、例えば、がん、症候群の複合体、例えば、心不全または他の任意の病状に関して使用されるとき、当該分野において十分理解されているものであり、その用語には、その組成物を投与されていない被験体と比べて、ある被験体における、ある病状の症候の発生頻度を減少させるか、またはある病状の症候の発生を遅延させる組成物の投与が含まれる。したがって、がんの予防には、例えば、統計的および/または臨床的に有意な量の、例えば、未処置のコントロール集団と比べたときの予防的処置を受けた患者集団における検出可能ながんの成長の数の減少、および/または未処置のコントロール集団と比べて処置された集団における検出可能ながんの成長の出現の遅延が含まれる。感染症の予防には、例えば、未処置のコントロール集団と比べて処置された集団におけるその感染症の診断数の減少、および/または未処置のコントロール集団と比べて処置された集団におけるその感染症の症候の発生の遅延が含まれる。疼痛の予防としては、例えば、未処置のコントロール集団と比べて処置された集団における被験体が経験した痛覚の大きさの減少あるいは痛覚の遅延が挙げられる。
用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下において、本発明の治療的に活性な作用物質に変換される化合物を包含すると意図されている。プロドラッグを作製するための通常の方法は、所望の分子をもたらすために生理学的条件下において加水分解される選択された部分を含めることである。他の実施形態において、プロドラッグは、宿主動物における酵素活性によって変換される。
用語「溶媒和物」は、本明細書中で使用されるとき、溶媒和によって形成される化合物(例えば、溶媒分子と溶質の分子またはイオンとの組み合わせによって形成される化合物)のことを指す。
用語「TRPA1」、「TRPA1タンパク質」および「TRPA1チャネル」は、本願全体にわたって交換可能に使用される。これらの用語は、WO2007/073505の配列番号1、配列番号3もしくは配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むイオンチャネル(例えば、ポリペプチド)、またはその等価なポリペプチドもしくは機能的な生理活性のフラグメントのことを指す。ある特定の実施形態において、その用語は、配列番号1、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなるか、またはそのアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドのことを指す。TRPA1には、TRPA1の機能を保持し、かつ(i)配列番号1、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列の全部または一部;(ii)1個〜約2、3、5、7、10、15、20、30、50、75個またはそれより多い保存的アミノ酸置換を含む、配列番号1、配列番号3または配列番号5に示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号1、配列番号3または配列番号5と少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列;および(iv)それらの機能的フラグメントを含む、ポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドには、配列番号1、配列番号3または配列番号5のホモログ、例えば、オルソログおよびパラログも含まれる。
組成物の「鏡像体過剰率」または「%鏡像体過剰率」は、下記に示される方程式を用いて算出され得る。下記に示される例では、組成物は、90%の一方のエナンチオマー、例えば、Sエナンチオマー、および10%の他方のエナンチオマー、すなわち、Rエナンチオマーを含む。
ee=(90−10)/100=80%
したがって、90%の一方のエナンチオマーおよび10%の他方のエナンチオマーを含む組成物は、80%の鏡像体過剰率を有するといわれる。
組成物の「ジアステレオ過剰率」または「%ジアステレオ過剰率」は、下記に示される方程式を用いて算出され得る。下記に示される例では、組成物は、90%の一つのジアステレオマーおよび10%の別のジアステレオマーを含む。
de=(90−10)/100=80%
したがって、90%の一つのジアステレオマーおよび10%の他のジアステレオマーを含む組成物は、80%のジアステレオ過剰率を有するといわれる。
化学的な定義
本明細書の様々な箇所において、本発明の化合物の置換基は、群または範囲として開示される。本発明は、そのような群および範囲のメンバーの各々およびそれらのメンバーのすべての個別の部分組み合わせを含むと明確に意図されている。例えば、用語「C1−6アルキル」は、メチル、エチル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキルおよびC6アルキルを個別に開示していると明確に意図されている。
変数が1回より多く出現する本発明の化合物の場合、各変数は、その変数を定義しているマーカッシュ群から選択される異なる部分であり得る。例えば、ある構造が、同じ化合物上に同時に存在する二つのR基を有すると記載される場合;その二つのR基は、Rについて定義されたマーカッシュ群から選択される異なる部分であり得る。
明確にするために別個の実施形態の文脈において記載される本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることがさらに認識される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載される本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の好適な部分組み合わせで提供され得る。
本明細書中で使用されるとき、「アルキル」は、別段述べられない限り、それ単独でまたは別の置換基の一部として、直鎖または分枝鎖を意味し、必要に応じて指定される数の炭素原子を有し得る(すなわち、C1−C6は、1〜6個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルの同族体および異性体などのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「アルキレン」とは、二価のアルキル、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−および−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、「アルケニル」は、少なくとも一つの二重結合を含み、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖(すなわち、C2−C6アルケニル)であり得る。アルケニル基の例としては、エテニル(すなわち、ビニル)、プロパ−1−エニル(すなわち、アリル)、ブタ−1−エニル、ペンタ−1−エニル、ペンタ−1,4−ジエニルなどのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「アルコキシ」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ基(すなわち、C1−C6アルコキシ)であり得る。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシまたはヘキシルオキシなどのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「アルキニル」は、少なくとも一つの三重結合を含み、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖(すなわち、C2−C6アルキニル)であり得る。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「アミノ」または「アミン」とは、NH2ラジカル基のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、「アリール」とは、6〜12個の炭素原子を有し、単一の環または共に縮合しているかもしくは共有結合的に連結された複数の環(例えば、1〜二つの環)であり得る、多価不飽和芳香族炭化水素部分(すなわち、C6−C12アリール)のことを指す。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルおよび4−ビフェニルが挙げられる。
本明細書中で使用されるとき、「シクロアルキル」とは、炭素および水素だけを含み、飽和または部分不飽和であり得る、単環式または多環式ラジカルのことを指す。シクロアルキル基には、3〜10個の環原子を有する基(すなわち、C3−C10シクロアルキル)が含まれる。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロセプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニルなどのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「ハロ」または「ハロゲン」は、別段述べられない限り、独立してまたは別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。用語「ハロゲン化物」は、それ単独で、または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の原子のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、一つもしくはそれを超えるハロ基またはそれらの組み合わせで置換された、アルキルおよびアルコキシの構造を含み得る。例えば、用語「フルオロアルキル」および「フルオロアルコキシ」には、それぞれ、そのハロがフッ素である、ハロアルキルおよびハロアルコキシ基が含まれる。
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロアルキル」は、炭素以外の原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、リンまたはそれらの組み合わせから選択される一つまたは複数の骨格鎖原子を有する必要に応じて置換されるアルキルを含み得る。鎖の中の炭素の数を指す数値の範囲、例えば、C1−C6ヘテロアルキルが与えられることがあり、それは、この例では1〜6個の炭素原子を含む。例えば、−CH2OCH2CH3ラジカルは、「C3」ヘテロアルキルと称される。その分子の残りの部分に対する接続は、そのヘテロアルキル鎖の中のヘテロ原子または炭素のいずれかを介し得る。
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロアリール」とは、窒素、酸素および硫黄から選択される一つまたは複数の環ヘテロ原子を含み、単環式または二環式の環系であり得る、5〜14員の芳香族ラジカル(例えば、C2−C13ヘテロアリール)のことを指す。自由原子価を有する原子から一つの水素原子を除去することによって、名称が「−イル(−yl)」で終わる一価のヘテロアリールラジカルから得られる二価のラジカルは、対応する一価のラジカルの名称に「−イデン(idene)」を付け加えることによって命名され、例えば、二つの接着点を有するピリジル(pyridyl)基は、ピリジリデン(pyridylidene)である。N含有「複素環式芳香族」部分またはN含有「ヘテロアリール」部分とは、その環の骨格原子の少なくとも一つが窒素原子である芳香族基のことを指す。多環式ヘテロアリール基は、縮合していてもよいし、縮合していなくてもよい。ヘテロアリールラジカルにおけるヘテロ原子は、必要に応じて酸化される。一つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、必要に応じて四級化される。ヘテロアリールは、その環の任意の原子を介して、その分子の残りの部分に付着される。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル(フラニル)、キノリル、イソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロアルキル」は、2〜12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1〜6個のヘテロ原子を含む安定した3〜18員の非芳香族の単環式、二環式または三環式の複素環ラジカルであり得る。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4−ピペリドニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1−オキソ−チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−チオモルホリニルなどのような基が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、−OHのことを指す。
本明細書中で使用されるとき、「シアノ」とは、−CNのことを指す。
本明細書中で使用されるとき、「ニトロ」とは、−NO2のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、用語「置換される」は、有機化合物の許容できるすべての置換基を含むと企図される。ある広い態様において、許容できる置換基には、有機化合物の非環式および環式の分枝状および非分枝状の炭素環式および複素環式の芳香族および非芳香族の置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール(これらのいずれのそれ自体もさらに置換され得る))ならびにハロゲン、カルボニル(例えば、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボキシルまたはホルミル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオカルボキシレートまたはチオホルメート)、アミノ(例えば、−N(Rb)(Rc)(ここで、RbおよびRcの各々は、独立してHまたはC1−C6アルキルである))、シアノ、ニトロ、−SO2N(Rb)(Rc)、−SORdおよびS(O)2Rd(ここで、Rb、RcおよびRdの各々は、独立してHまたはC1−C6アルキルである)が含まれる。例証的な置換基としては、例えば、上記の本明細書中に記載される置換基が挙げられる。許容できる置換基は、適切な有機化合物に対して、一つまたはそれを超え、同じであり得るか、または異なり得る。本発明の目的で、窒素などのヘテロ原子は、それらのヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書中に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容できる置換基を有し得る。本発明は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容できる置換基によって限定されないと意図されている。
「置換」または「〜で置換される」は、そのような置換が、置換された原子および置換基の許される原子価に一致したものであり、その置換によって、安定した化合物、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に起こさない安定した化合物がもたらされるという暗黙の条件を含むと理解される。
省略形Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msは、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。当該分野の通常の技量を有する有機化学者が利用する省略形のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に見られる;このリストは、通常、Standard List of Abbreviationsと題された表に提示される。前記リストに含まれる省略形および当該分野の通常の技量を有する有機化学者が利用するすべての省略形が、参照により本明細書に援用される。
上に記載された化合物の企図される等価物には、別途それに対応するものであって、同じ一般的な特性(例えば、TRPA1活性を阻害する能力)を有する化合物が含まれ、ここで、その化合物の有効性に悪影響を及ぼさない、置換基の一つまたはそれより多くの単純な変更が行われている。一般に、本発明の化合物は、例えば下記に記載されるような一般的な反応スキームに図示される方法またはそれらの変法によって、容易に入手可能な出発物質、試薬および従来の合成手順を用いて、調製され得る。これらの反応において、本来公知であり本明細書中では言及されないバリアントを使用することも可能である。
本発明の目的で、化学元素は、元素周期表,CASバージョン,Handbook of Chemistry and Physics,67th Ed.,1986−87の表紙裏に従って特定される。また、本発明の目的で、用語「炭化水素」は、少なくとも一つの水素および一つの炭素原子を有する許容できるすべての化合物を含むと企図される。ある広い態様において、その許容できる炭化水素には、置換または非置換であり得る、非環式および環式の分枝状および非分枝状の炭素環式および複素環式の芳香族および非芳香族の有機化合物が含まれる。
化合物
TRPA1の阻害が有益である障害の処置において有用であり得る化合物が、本明細書中に記載される。そのような障害は、本明細書中に記載される。
上記化合物には、式(I)の化合物
が含まれ、式中、
R1は、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニルまたはC1−C6アルキニルであり;
R2は、一つまたは複数のR5基で必要に応じて置換される、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニルまたはC1−C6アルキニルであり;
R3は、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニルまたはC1−C6アルキニルであり;
R4は、一つまたは複数の位置において1〜4個のR6基で必要に応じて置換される、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、ニトロ、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、チオイル、スルホニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであり;
R5は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、ホスホネート、カルボキシル、エーテル、アルキルチオ、ハロアルキルおよびシアノであり;
R6は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド(alkehyde)、エステル、複素環、芳香環または芳香族複素環、ハロアルキルおよびシアノである。
いくつかの実施形態において、R1は、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。いくつかの実施形態において、R1は、Hである。
いくつかの実施形態において、R2は、HまたはC1−C6アルキル、例えば、−CH3、−CD3または−CHF2である。
いくつかの実施形態において、R1およびR2の各々は、独立して、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。いくつかの実施形態において、R1およびR2の各々は、独立して、−CH3であり、R3は、Hである。
いくつかの実施形態において、R3は、Hである。いくつかの実施形態において、R3は、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。
いくつかの実施形態において、R1およびR2およびR3の各々は、独立して、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物
である。
いくつかの実施形態において、R1およびR2およびR3の各々は、独立して、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。
いくつかの実施形態において、請求項1に記載の式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物
である。
いくつかの実施形態において、R1およびR2およびR3の各々は、独立して、C1−C6アルキル、例えば、−CH3である。
いくつかの実施形態において、R4は、ヘテロシクリル、例えば、4〜8員環である。いくつかの実施形態において、そのヘテロシクリルは、窒素原子を介して連結される。いくつかの実施形態において、R4は、置換ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択される。
いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択され、mは、1である。
いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択される。
いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択され、mは、1である。
いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択される。
いくつかの実施形態において、mは、0である。いくつかの実施形態において、mは、1である。
いくつかの実施形態において、R6は、アルキル、ハロアルキルまたはシアノ、例えば、アルキルまたはハロアルキル、例えば、−CF3である。
いくつかの実施形態において、R4は、以下の群
から選択される。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(II)の化合物
であり、式中、
nは、0〜4の整数であり;
mは、0〜4の整数から選択される。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIa)の化合物
であり、式中、
nは、0〜4の整数であり;
mは、0〜4の整数から選択される。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIb)の化合物
であり、式中、
nは、0〜4の整数であり;
mは、0〜4の整数から選択される。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、以下の群
またはその薬学的に許容され得る塩から選択される。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、以下の群
またはその薬学的に許容され得る塩から選択される。
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約100℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記式(I)の化合物は、約125℃、約150℃、約175℃もしくは約180℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記式(I)の化合物は、約180℃〜約205℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記式(I)の化合物は、約190℃〜約200℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記式(I)の化合物は、約190℃〜約196℃の範囲内の融点を有する。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の式(I)の化合物は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理において生成される。いくつかの実施形態において、固体結晶形(例えば、無水固体結晶形)の式(I)の化合物は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理の後のさらなる処理(例えば、真空処理、例えば、1日間の−80℃)において生成される。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の式(I)の化合物(例えば、好適な溶媒、例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせによるスラリー処理、および必要に応じてその後のさらなる処理、例えば、真空処理、例えば、1日間の−80℃において生成される)は、約100℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の式(I)の化合物は、約125℃、約150℃、約175℃もしくは約180℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の式(I)の化合物は、約180℃〜約205℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の式(I)の化合物は、約190℃〜約200℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の式(I)の化合物は、約190℃〜約196℃の範囲内の融点を有する。
いくつかの実施形態において、前記式(I)の化合物は、
またはその薬学的に許容され得る塩であり、これは、本明細書中で化合物2、実施例2または実施例2の化合物と称される。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の化合物2(例えば、A形)は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理において生成される。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、A形)は、2θに関して表現される特徴的なピークを、以下の角度:約7.67°、約12.52°、約13.49°および約19.31°のうちの一つ以上に含む粉末X線回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、A形)は、図1に示されているような特徴的なピークを有する。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理の後のさらなる処理(例えば、真空処理、例えば、1日間の−80℃)において生成される。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、2θに関して表現される特徴的なピークを、以下の角度:約9.78°、約12.98°、約19.20°および約19.67°のうちの一つ以上に含む粉末X線回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、図2に示されているような特徴的なピークを有する。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約100℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約125℃、約150℃、約175℃もしくは約180℃に等しいかまたはそれより高い融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約180℃〜約205℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約190℃〜約200℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約190℃〜約196℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態において、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、図3に示されているような示差走査熱量測定トレースを有する。
いくつかの実施形態において、固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理の後のさらなる処理(例えば、真空処理、例えば、1日間の−80℃)において生成され、ここで、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、約150℃に等しいかまたはそれより高い融点を有し、2θに関して表現される特徴的なピークを、以下の角度:約9.78°、約12.98°、約19.20°および約19.67°のうちの一つ以上に含む粉末X線回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、好適な溶媒(例えば、エタノール、水またはそれらの組み合わせ)によるスラリー処理の後のさらなる処理(例えば、真空処理、例えば、1日間の−80℃)において生成され、ここで、前記固体結晶形の化合物2(例えば、無水固体結晶形の化合物2、例えば、B形)は、185℃〜約205℃の範囲内の融点を有し、2θに関して表現される特徴的なピークを、以下の角度:約9.78°、約12.98°、約19.20°および約19.67°のうちの一つ以上に含む粉末X線回折パターンを有する。
本発明のある特定の実施形態は、式(I)の化合物を含む精製された薬学的調製物を含む。いくつかの実施形態において、その薬学的調製物は、別のジアステレオマーに対して約55%に等しいかまたはそれより高い(例えば、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%または約99.5%)ジアステレオ過剰率の一つのジアステレオマーを含む。いくつかの実施形態において、その薬学的調製物は、別のジアステレオマーに対して約95%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の一つのジアステレオマーを含む。いくつかの実施形態において、その薬学的調製物は、別のジアステレオマーに対して約99%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の一つのジアステレオマーを含む。
いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、約10%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を含む。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、約0.1%、約0.05%、約0.01%もしくは約0.001%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を含む。いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、水分(例えば、水)を実質的に含まない。
いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、式(I)の化合物を含み、ここで、その化合物は、
またはその薬学的に許容され得る塩であり、これは、本明細書中で化合物2、実施例2または実施例2の化合物と称される。
いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、式(I)の化合物(ここで、その化合物は化合物2である)またはその薬学的に許容され得る塩を含み、その調製物は、約99%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の化合物2を有する。いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、式(I)の化合物(ここで、その化合物は化合物2である)またはその薬学的に許容され得る塩を含み、その調製物は、約0.1%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を有する。いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、式(I)の化合物(ここで、その化合物は化合物2である)またはその薬学的に許容され得る塩を含み、その調製物は、約99%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の化合物2および約0.1%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を有する。
いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、2θに関して表現される特徴的なピークを以下の角度:約7.67°、約12.52°、約13.49°および約19.31°のうちの一つまたは複数の角度に含む粉末X線回折パターンを有する固体結晶形の化合物2(例えば、A形)を含み、その調製物は、約99%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の化合物2および約0.1%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を有する。
いくつかの実施形態において、上記薬学的調製物は、185℃〜約205℃の範囲内の融点ならびに2θに関して表現される特徴的なピークを以下の角度:約9.78°、約12.98°、約19.20°および約19.67°のうちの一つまたは複数の角度を含む粉末X線回折パターンを有する固体結晶形の化合物2(例えば、B形)を含み、その調製物は、約99%に等しいかまたはそれより高いジアステレオ過剰率の化合物2および約0.1%に等しいかまたはそれより低い水分含有率(例えば、含水率)を有する。
式(I)の化合物には、本明細書中に記載される障害の処置、例えば、疼痛の処置につながるまたはそれらの処置をもたらす、経口投与または非経口(例えば、静脈内)投与に適した水溶解度を有する分子が含まれる。いくつかの実施形態において、その化合物は、経口投与に適した組成物に製剤化される。本明細書中に記載される式(I)の化合物のTRPA1イオンチャネルを阻害する際の効力は、実施例33の方法を用いて計測された。表14は、例示的な化合物のTRPA1阻害のインビトロにおける効力(実施例33の方法によって計測されたもの)を開示している。
式(I)の好ましい化合物には、実施例33の方法によって得られる、約100nM未満(好ましくは、約75nM未満、より好ましくは、約25nM未満)のIC50値でTRPA1イオンチャネルを阻害する化合物が含まれる。
式(I)の化合物は、TRPA1イオンチャネルを阻害し得る。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、本明細書中に記載される障害(例えば、疼痛)を治療的に有効な様式で処置するために経口的または非経口的(例えば、静脈内)薬学的組成物の一部として投与され得る。
本明細書中に開示されるある特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体として存在し得る。本発明は、cis−およびtrans−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物ならびにそれらの他の混合物をはじめとしたそのようなすべての化合物が本発明の範囲内に入ると企図する。例えば、一つのキラル中心が、ある分子に存在する場合、本発明は、ラセミ混合物、鏡像異性的に濃縮された混合物および実質的に鏡像異性的またはジアステレオ異性的に純粋な化合物を含む。その組成物は、例えば、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超または99%超の単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーを含み得る。さらなる不斉炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在し得る。そのような異性体のすべてならびにそれらの混合物が、本発明に含められると意図されている。
本明細書中に記載される化合物は、そのような化合物を構成している一つまたは複数の原子において、非天然の比率の同位体原子も含み得る。例えば、それらの化合物は、放射性同位体、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)で放射標識され得る。本明細書中に開示される化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか放射性でないか関係なく、本発明の範囲内に包含されると意図されている。例えば、重水素化化合物および13Cを組み込んだ化合物は、本発明の範囲内に包含されると意図されている。
本明細書中に開示されるある特定の化合物は、非溶媒和の形態、ならびに水和された形態を含む溶媒和の形態で存在し得る。一般に、溶媒和の形態は、非溶媒和の形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。本明細書中に開示されるある特定の化合物は、複数の結晶形または非晶質型で存在し得る。一般に、すべての物理的形態が、本発明によって企図される用途に対して等価であり、本発明の範囲内に包含されると意図されている。
薬学的組成物
式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩などの本明細書中に記載される化合物を含む薬学的組成物は、本明細書中に記載される障害、例えば、被験体(例えば、ヒトおよび動物)におけるTRPA1イオンチャネルの阻害に応答性である障害を処置するためまたは回復させるために使用され得る。
薬学的組成物中の式(I)の化合物の量および濃度、ならびに被験体に投与される薬学的組成物の量は、臨床的に妥当な因子、例えば、被験体の医学的に関連性のある特徴(例えば、年齢、体重、性別、他の病状など)、薬学的組成物における化合物の溶解度、化合物の効力および活性、ならびに薬学的組成物の投与様式に基づいて選択され得る。投与経路および投与レジメンに関するさらなる情報については、読者は、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),Pergamon Press 1990のVolume5のChapter25.3を参照する。
本明細書中に開示される化合物は、単独で投与されることが可能であるが、その化合物を薬学的製剤として投与することが好ましく、その薬学的製剤では、その化合物は、一つまたは複数の薬学的に許容され得る賦形剤またはキャリアと組み合される。本明細書中に開示される化合物は、ヒトまたは獣医学において使用するための任意の好都合な方法で投与するために製剤化され得る。ある特定の実施形態において、薬学的調製物中に含められる化合物は、それ自体で活性であり得るか、または例えば、生理学的環境において、活性な化合物に変換されることが可能なプロドラッグであり得る。
句「薬学的に許容され得る」は、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症なしに人間および動物の組織と接触して使用するのに適したものであって、合理的なベネフィット/リスク比に見合っていて、適切な医学的判断の範囲内である、化合物、材料、組成物および/または剤形のことを指すために本明細書中で使用される。
薬学的に許容され得るキャリアの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ろう;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)シクロデキストリン、例えば、Captisol(登録商標);および(22)薬学的製剤において使用される他の無毒性で適合性の物質が挙げられる。
薬学的に許容され得る酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
固形剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)は、一つもしくはそれを超える薬学的に許容され得るキャリア、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下のうちのいずれかを含み得る:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;(3)湿潤剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土;(9)潤滑剤、例えば(such a)、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;および(10)着色剤。
液体剤形には、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれ得る。液体剤形は、活性成分に加えて、当該分野において通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。
懸濁剤は、活性な化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物を含み得る。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、活性な化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ろう、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物を含み得る。
散剤および噴霧剤は、活性な化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物を含み得る。噴霧剤は、通例の噴射剤、例えば、クロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンをさらに含み得る。
製剤は、単位剤形で都合よく提供されることがあり、薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単回投与形態を作製するためにキャリア材料と組み合わされ得る活性成分の量は、処置される宿主、特定の投与様式に応じて変動し得る。単回投与形態を作製するためにキャリア材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量であり得る。通常、100パーセントのうち、この量は、約1パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは、約5パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは、約10パーセント〜約30パーセントの範囲であり得る。
本明細書中に開示される薬学的組成物の錠剤および他の固形剤形(例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤)は、必要に応じて刻み目がつけられ得るか、またはコーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティングおよび製薬分野において周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供する様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の持続放出または制御放出をもたらすようにも製剤化され得る。それらは、例えば、細菌保持フィルターで濾過することによって、または使用の直前に滅菌水もしくは他の何らかの滅菌された注射可能な媒質に溶解され得る滅菌された固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。これらの組成物は、必要に応じて不透明化剤も含んでもよく、消化管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で、活性成分だけを放出するかまたは活性成分を優先的に放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。活性成分は、適切な場合には、一つまたは複数の上記賦形剤とともに、マイクロカプセルの形態でも存在し得る。
本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチおよび吸入剤が挙げられる。活性な化合物は、薬学的に許容され得るキャリアおよび必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤または噴射剤と滅菌条件下で混合され得る。
本明細書中に開示される製剤は、デバイスを介して送達され得る。例示的なデバイスとしては、カテーテル、ワイヤー、ステントまたは他の腔内デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な送達デバイスとしては、パッチ、包帯、マウスガードまたは咀嚼器も挙げられる。経皮パッチは、身体への本明細書中に開示される化合物の制御された送達をもたらすという追加の利点を有する。そのような剤形は、化合物を適切な媒質に溶解するかまたは分散することによって作製され得る。吸収促進剤は、皮膚を横断した化合物の流入を増加させるために使用され得る。そのような流入の速度は、律速膜を提供することまたは化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散することのいずれかによって制御され得る。
眼科用製剤、眼軟膏、滴剤、液剤などもまた、本発明の範囲内であると企図される。
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって達成され得る。そして、その薬物の吸収速度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る溶解速度に依存する。あるいは、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、その薬物を油性ビヒクルに溶解するかまたは懸濁することによって達成される。
注射可能なデポー型は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにおいて主題化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製され得る。薬物放出の速度は、薬物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤は、薬物を体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに捕捉することによっても調製される。
本明細書中に開示される化合物が、医薬品としてヒトおよび動物に投与されるとき、それらは、それ自体で、または例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容され得るキャリアとともに含む薬学的組成物として、投与され得る。
上記製剤は、局所的に、経口的に、経皮的に、経直腸的に、経膣的に、非経口的に、鼻腔内に、肺内に、眼内に、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、髄腔内に、嚢内に、眼窩内に、心臓内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、表皮下に、関節内に、嚢下に、クモ膜下に、脊髄内に、胸骨内に、または吸入によって、投与され得る。
一つの具体的な実施形態は、TRPA1媒介性の電流を1マイクロモル濃度またはそれ未満のIC50で阻害する作用物質および経口的に許容され得る薬学的キャリアを含む、シロップ剤、エリキシル剤(elixer)、懸濁剤、噴霧剤、舐剤、チュアブル舐剤、散剤およびチュアブル錠剤からなる群から選択される、水性の液体または口の中で溶ける固体の形態の、経口投与のための鎮咳性組成物である。そのような鎮咳性組成物は、抗ヒスタミン剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、H3阻害剤、β−アドレナリン受容体アゴニスト、キサンチン誘導体、α−アドレナリン受容体アゴニスト、マスト細胞安定剤、去痰薬ならびにNK1、NK2およびNK3タキキニン受容体アンタゴニストからなる群から選択される、咳、アレルギーまたは喘息症候を処置するための一つまたは複数のさらなる作用物質を含み得る。
なおも別の実施形態は、TRPA1媒介性の電流を1マイクロモル濃度またはそれ未満のIC50で阻害する作用物質を含む、肺送達または経鼻送達のためのエアロゾル薬学的組成物を含む定量エアロゾルディスペンサーである。例えば、それは、定量吸入器、乾燥粉末吸入器またはエアジェット噴霧器であり得る。
投与量
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物および投与様式に対して、その患者にとって毒性でなく、所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変動し得る。
選択される投与量レベルは、使用される本明細書中に開示される特定の化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、症状、全般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野における周知の同様の因子をはじめとした種々の因子に依存し得る。
当該分野における通常の技能を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、その医師または獣医師は、薬学的組成物において使用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまでその投与量を徐々に増加させ得る。
通常、本発明の化合物の好適な1日量は、治療効果をもたらすのに有効な最も低い用量である、その化合物の量であり得る。そのような有効量は、一般に、上に記載された因子に依存し得る。通常、被験体に対する本明細書中に記載される化合物の静脈内、脳室内、鞘内および皮下の用量は、約0.0001〜約100mg/キログラム体重/日の範囲であり得る。例えば、その用量は、1〜50、1〜25または5〜10mg/kgであり得る。通常、被験体に対する本明細書中に記載される化合物の経口量は、約1〜約1,000mg/日(例えば、約5〜約500mg/日の範囲であり得る。
所望であれば、活性な化合物の有効な1日量は、その日のうちに適切な間隔で、必要に応じて単位剤形で、別々に投与される2、3、4、5、6またはそれを越える分割量で投与されてもよい。
処置方法
本明細書中に記載される化合物は、本明細書中に記載される障害を処置するためまたは予防するために使用され得る。例えば、TRPA1阻害活性を有する化合物が、TRPA1に関連する疾患または症状の症候を予防、処置または軽減するために本明細書中で提供される。式(I)の化合物または一つもしくはそれを超える式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、本明細書中に記載される障害、症状または疾患、例えば、TRPA1の阻害によって処置可能なものを処置するために投与され得る。例えば、式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む薬学的組成物は、周術期の鎮痛薬として、例えば、経度から中程度の急性術後痛の管理および中程度から重度の急性疼痛の管理においてオピオイド鎮痛薬の補助剤として、有用である。治療有効量の式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、式(I)の化合物を含む薬学的組成物の1回またはそれを超える個別投与を含む臨床的に安全かつ有効な様式で、疼痛の処置のために患者に投与され得る。さらなる例示的な方法としては、末梢糖尿病性ニューロパシー(PDN)および化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の処置が挙げられる。例えば、治療的に有効な用量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む薬学的組成物は、被験体における疼痛を処置するために、1日またはそれを超える日数の処置期間にわたって1日あたり複数回(例えば、BID)、それを必要とする被験体に投与され得る(例えば、静脈内)。式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、肺の症状、例えば、閉塞性疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(例えば、寒冷誘発性喘息、運動誘発性喘息、アレルギー誘発性喘息および職業性喘息)および咳を処置するためまたは回復させるためにも使用され得る。
TRPA1受容体の媒介に関係する疾患の処置の当業者は、本明細書中以後に提示される試験の結果から式(I)の化合物の治療有効量を決定することができる。通常、本発明の化合物の好適な1日量は、治療効果をもたらすことができる最も低い用量である、化合物の量であり得る。そのような有効量は、一般に様々な因子に依存し得る。一般に、患者に対する本発明の化合物の経口、舌下、直腸、静脈内、局所的、経皮的、吸入および脳室内の用量は、約0.0001〜約100mg/キログラム体重/日の範囲であり得る。例えば、その用量は、1〜50、1〜25または5〜10mg/kgであり得る。例えば、治療的に有効な用量は、処置される患者の体重1kgあたり、約0.001mg/kg〜約50mg/kg、より好ましくは、体重1kgあたり約0.01mg/kg〜約10mg/kgであり得ることが企図される。その日のうちに適切な間隔で2またはそれを超える分割用量で治療的に有効な用量を投与することが適切であることがある。前記分割用量は、単位剤形として、例えば、その各々が、単位剤形一つあたり約0.1mg〜約1000mg、より詳細には、約1〜約500mgの活性成分を含む単位剤形として、製剤化され得る。
正確な投与量および投与頻度は、当業者に周知であるように、使用される特定の式(I)の化合物、処置される特定の症状、処置される症状の重症度、特定の患者の年齢、体重および全般的な身体的症状、ならびにその患者が摂取している可能性がある他の薬物適用に依存する。さらに、前記「治療有効量」は、処置される患者の応答および/または本発明の化合物を処方している医師の評価に応じて、減少し得るかまたは増加し得る。ゆえに、本明細書中の上で述べた有効な1日量の範囲は、単なるガイドラインである。当該分野における通常の技能を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
本明細書中に記載される化合物または組成物での処置に適した例示的な障害を下記に提供する。
疼痛
TRPA1の調節において有用な式(I)の化合物は、哺乳動物、特に、ヒトにおける疼痛の処置および/または予防に適した鎮痛医薬品の製剤化において使用され得る。TRPA1の内因性の活性化物質は、組織損傷、炎症および代謝ストレスをはじめとした多くの病理学的な症状において産生される。本発明の化合物および薬学的組成物は、神経因性疼痛を含むTRPA1の活性化に起因する疼痛を処置するために投与され得る。関連性のある神経因性疼痛の症状としては、有痛性糖尿病性ニューロパシー、化学療法誘発性末梢神経障害、腰痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛および複合性局所性疼痛症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中に提供される組成物および方法は、炎症および炎症性疼痛の処置の処置に関連して使用され得る。そのような障害としては、関節リウマチ、変形性関節症、顎関節症が挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される組成物および方法は、頭痛、例えば、片頭痛を処置するために使用され得る。
開示される化合物は、内臓痛および炎症の処置においても有用であり得る。関連性のある疾患としては、膵炎、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病、子宮内膜症、骨盤痛およびアンギナが挙げられる。
本明細書中に開示される化合物が使用され得るさらなる例示的な疼痛適応症としては、顎関節症、癌性疼痛(基礎疾患または処置のいずれかに起因するもの)、火傷痛、口腔内痛、癌の処置に起因する口腔内痛、挫滅および損傷誘発性疼痛、切開痛、骨痛、鎌状赤血球症痛、線維筋痛症ならびに筋骨格痛が挙げられる。TRPA1は、癌関連疼痛(例えば、Trevisanら、Cancer Res(2013)73(10):3120−3131を参照のこと);術後痛(例えば、Weiら、Anasthesiology(2012)117:137−148を参照のこと);病理学的疼痛(例えば、Chenら、Pain(2011)152:2549−2556を参照のこと);および化学的損傷に関連する疼痛(例えば、Macphersonら、J Neurosci(2007)27(42):11412−11415を参照のこと)に関与すると示された。
痛覚過敏(例えば、機械的痛覚過敏(mechanical hyperalegsia)、冷痛覚過敏(cold hyperalegsia))または疼痛に対する高感度(例えば、急性、慢性)。多種化学物質過敏症は、呼吸器の症候および頭痛を含む多臓器の症候を伴う、化学物質への曝露に関係する障害である。
異痛症(例えば、皮膚異痛症、例えば、頭部、頭部外)は、正常には疼痛を誘発しない刺激、例えば、温度刺激または物理的刺激に起因する疼痛であり、通常の有痛性の刺激に対する極端な過度の反応のことを一般に指す痛覚過敏とは異なる。
片頭痛
TRPA1の調節において有用な式(I)の化合物は、哺乳動物、特に、ヒトにおける片頭痛の処置および/または予防に適した医薬品の製剤化において使用され得る。TRPA1活性化物質への曝露は、感受性集団において片頭痛の引き金を引くと示された。そのような活性化物質としては、ウンベルロン、ニトログリセリン、たばこの煙およびホルムアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明のTRPA1アンタゴニストは、慢性と急性の両方の片頭痛の処置に対して著しい潜在的資質のある治療薬である。
炎症性疾患および炎症性障害
本明細書中に提供される組成物および方法はまた、炎症性疾患の処置に関連して使用され得る。これらの疾患としては、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、多発性硬化症などの神経炎症性疾患、および免疫系の障害が挙げられるが、これらに限定されない。TRPA1は、膵臓痛および膵臓の炎症に関与すると示された(例えば、Schwartzら、Gastroenterology(2011)140(4):1283−1291を参照のこと)。
末梢神経障害、例えば、糖尿病性ニューロパシー(例えば、有痛性糖尿病性ニューロパシー)は、ニューロンの構成要素と炎症の構成要素の両方が関わる特定の症状である。機構的な理論に拘束されるものではないが、本発明のTRPA1アンタゴニストは、糖尿病性ニューロパシーを含むがこれに限定されない末梢神経障害の処置において有用であり得る。末梢神経障害の処置(例えば、炎症の減少)における使用に加えて、主題の阻害剤は、末梢神経障害に関連する疼痛の減少においても有用であり得る。TRPA1は、ニューロパシーおよび神経因性疼痛に関与すると示された(例えば、Weiら、Anesthesiology(2009)111:147−54;Koivistoら、Pharmacol Res(2011)65:149−158を参照のこと)。
神経原性炎症は、ニューロンの過剰興奮性によって、炎症の引き金を引くペプチドが放出されたとき、生じることが多い。これらのペプチドには、サブスタンスPおよびCGRPが含まれる。
TRPA1を阻止すると、ニューロンの活動が低下し得、ゆえに神経原性炎症が阻止され得る。例えば、気道における神経原性炎症は、喘息およびアレルギー性鼻炎の症候をもたらし得、また、硬膜における神経原性炎症は、片頭痛を媒介し得る。
膵炎
膵炎は、膵臓の炎症である。膵臓は、胃の後ろにあり、十二指腸に近接した大きな腺である。正常には、消化酵素は、小腸に到達するまで活性にならず、小腸において食物の消化を開始する。しかし、これらの酵素が、膵臓の内側で活性になる場合、膵臓自体の「消化」を開始する。TRPA1は、膵臓痛および膵臓の炎症に関与すると示された(例えば、Schwartzら、Gastroenterology(2011)140(4):1283−1291を参照のこと)。
急性膵炎は、通常、以下に限らないが、胆石またはアルコール乱用が原因である。急性膵炎は、通常、数日間継続し得る上腹部の疼痛から始まる。その疼痛は、重度であることがあり、絶えず続くことがある。その疼痛は、腹部に孤立することもあるし、背部および他の領域に到達することもある。時折、一部の患者では、その疼痛は、突発性であり、激烈である。他の場合、または他の患者では、その疼痛は、食後に悪化する軽度の疼痛として始まる。急性膵炎を有する人は、重症に見えることが多く、非常に体調が悪いことが多い。他の症候としては、腹部の膨張および圧痛、悪心、嘔吐、発熱ならびに頻脈が挙げられ得る。急性膵炎の重度の症例は、脱水および低血圧を引き起こすことがあり、臓器不全、内出血または死亡にすら至ることがある。
急性膵炎の発作において、アミラーゼおよびリパーゼの血中濃度は、少なくとも3倍上昇することが多い。グルコース、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよび重炭酸塩の血中濃度も変化することがある。
現行の処置は、その発作の重症度に依存する。処置は、一般に、生命維持に必要な身体の機能を補助するように、疼痛を管理するように、および合併症を予防するようにデザインされる。通常数日間で回復する急性膵炎であっても、発作中の疼痛管理が必要になることが多い。本明細書中に開示される化合物は、急性膵炎に関連する疼痛を緩和するために使用され得る。
慢性膵炎は、膵臓に対する損傷が続く場合に発症し得る。消化酵素が膵臓および近くの組織を攻撃し、破壊すると、慢性膵炎が生じて、瘢痕および疼痛を引き起こす。慢性膵炎は、アルコール依存症、または膵管が封鎖されるか、損傷をうけるかもしくは狭くなることによって引き起こされ得る。さらに、遺伝的因子がこの疾患に影響するとみられ、ある特定の症例では、特定できる原因がない(いわゆる特発性膵炎)。
慢性膵炎を有するほとんどの人が、腹痛を有する。その疼痛は、飲食すると悪化することがあるか、背部にまで広がることがあるか、または絶えず続いて何もできない状態になることがある。他の症候としては、悪心、嘔吐、体重減少および脂肪便が挙げられる。
疼痛の緩和は、慢性膵炎の処置の第一段階である。いったんその疼痛が管理されると、高炭水化物および低脂肪の食事計画が導入される。損傷した膵臓からの酵素産生の減少を補うことを助けるために、膵酵素が使用され得る。時折、血糖を制御するために、インスリンまたは他の薬物が必要とされる。
疼痛は、通常、薬物治療を用いて管理されるが、疼痛を緩和するために手術が必要になることもある。手術は、拡大した膵管から排出するためまたはひどく損傷した膵臓の部分を10除去するために必要であり得る。
疼痛は、慢性膵炎とともに現れることが多い。例えば、疼痛は、アルコール性慢性膵炎を有する患者のおよそ75%、遅発性特発性慢性膵炎を有する患者の50%および早発性特発性慢性膵炎を有する患者の100%に存在する(DiMagno,Gastroenterology(1999)116(5):1252−1257)。
疼痛を有する少数の患者が、外科的または内視鏡的な処置が比較的容易である、容易に特定可能な病変を有する。他の患者では、疼痛は、種々の原因に起因すると考えられることが多く、その原因としては、膵臓内の圧力の上昇、虚血および線維症が挙げられる。しかしながら、理論に拘束されるものではないが、これらの現象は、その疼痛の根本原因でない可能性がある。むしろ、疼痛は、神経周膜への損傷およびその後の炎症のメディエーターおよび産物に対する神経の曝露によって誘導されるニューロンの感作の背景に起因し得る。
慢性膵炎を有する患者における有効な疼痛管理の重要性を考えると、有痛性の症候を処置するためのさらなる治療が重要かつ有用である。本明細書中に開示される化合物は、慢性膵炎に関連する疼痛を管理するために使用され得;それらは、慢性膵炎を有する患者を管理するために、単独でまたは治療的な処置の計画全体の一部として使用され得る。例えば、それらの化合物は、慢性膵炎を有する患者を管理するようにデザインされた治療レジメンの一部として、膵酵素および/またはインスリンとともに投与され得る。
癌の処置は、有痛性であるだけでなく、健康な組織にさえも有毒であり得る。いくつかの化学療法剤は、有痛性ニューロパシーを引き起こし得る。したがって、本明細書中に開示される化合物は、ニューロパシーを引き起こす癌の処置に関連する疼痛および/または炎症の処置に対して著しい潜在的資質のある治療薬であり得る。
プロスタグランジンの主な機能は、胃粘膜を保護することである。細胞増殖において重大な役割を果たす、ヒトの胃細胞における細胞内のカルシウムレベルの調節が、この機能に含められる。その結果として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)によるプロスタグランジンの阻害は、胃細胞におけるカルシウム流入を阻害し得る(Kokoskaら(1998)Surgery(St Louis)124(2):429−437)。炎症を最も効果的に緩和するNSAIDは、最も大きな胃腸損傷ももたらす(Canadian Family Physician,5 January 1998,p.101)。したがって、特定の細胞型においてカルシウムチャネルを独立して調節する能力は、抗炎症治療のそのような副作用を軽減することを助け得る。さらにまたはあるいは、本明細書中に開示されるTRPA1阻害性化合物の投与は、NSAIDと組み合わせて使用されてもよく、ゆえに、低投与量のNSAIDを用いた疼痛緩和が促進される。
TRPA1は、慢性膵炎における継続中の侵害受容を媒介し得;膵炎における急性から慢性の炎症および痛覚過敏への変換に関わり得る。TRPA1は、例えば、鼻および口の粘膜ならびに呼吸器の裏打ちにおける、刺激作用および灼熱感も媒介し得る。
ニューロパシー
TRPA1の過活性は、有毒なカルシウム過負荷に至り得るので、TRPA1アンタゴニストは、糖尿病、化学的損傷、化学療法、スタチンなどの薬、HIV/AIDS、ファブリー病、ビタミン欠乏症、シャルコー・マリー・トゥース病(Marie−Charcot Tooth disease)などの遺伝性多発ニューロパシー、および外傷に関連するニューロパシーの予防においても有用性を有する。筋萎縮性側索硬化症などの末梢神経変性疾患もまた、TRPA1アンタゴニストによる処置に適用できることがある。
肺疾患および咳
本明細書中に提供される組成物および方法は、肺疾患の処置にも関連して使用され得、その肺疾患としては、喘息(運動誘発性喘息、アトピー性喘息、アレルギー性喘息を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、細気管支炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、閉塞性細気管支炎(ポップコーン肺(popcorn worker lung))、ジアセチル、ホルムアルデヒドおよび他の刺激物質への曝露を含む化学物質への曝露に起因する疾患が挙げられるが、これらに限定されない。これらの症状には、結核、拘束性肺疾患(石綿沈着症、放射線線維症、過敏性肺臓炎、乳児呼吸窮迫症候群、特発性肺線維症、特発性間質性(idiopathic interstial)肺炎、サルコイドーシス、好酸球性肺炎、リンパ管平滑筋肉腫症、肺ランゲルハンス細胞組織球増殖症および肺胞タンパク症を含む);気道感染症(上気道感染症(例えば、感冒、静脈洞炎、扁桃炎、咽頭炎および喉頭炎)および下気道感染症(例えば、肺炎)を含む);悪性(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、腺癌、扁平上皮癌、大細胞未分化癌腫、カルチノイド、中皮腫、肺の転移性がん、転移性生殖細胞がん、転移性腎細胞癌)であるか良性(例えば、肺過誤腫、先天性奇形、例えば、肺分画症および肺先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM))であるかを問わず、呼吸器腫瘍;胸膜腔疾患(例えば、蓄膿および中皮腫);ならびに肺血管疾患、例えば、肺塞栓、例えば、血栓塞栓症および空気塞栓症(医原性)、肺動脈高血圧症、肺水腫、肺出血、肺胞への血液漏出をもたらす肺の毛細血管に対する炎症および損傷も含まれる。処置され得る他の症状としては、呼吸機構に影響する障害(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸、中枢性睡眠時無呼吸、ギラン・バレー(Guillan−Barre)症候群および重症筋無力症)が挙げられる。
本化合物は、咳(痰の産生を伴うかまたは伴わない)、喘息に関連する咳、インフルエンザに関連する咳、咳血(coughing blood)(喀血)、病因不明の咳、アレルギー誘発性咳および化学物質への曝露に起因する咳を処置するため、減少させるためまたは予防するためにも有用であり得る。
皮膚科障害
かゆみを引き起こすいくつかの作用物質は、TRPA1を直接活性化するか、またはTRPA1の下流に結合する受容体の活性化を介して活性化する。本明細書中に提供される組成物および方法は、かゆみの処置に関連しても使用され得る。適応症としては、外来性の化学物質への曝露によって引き金が引かれる症状、例えば、接触皮膚炎、ウルシ皮膚炎、リンパ腫を含む癌に起因するかゆみ、クロロキンなどの薬剤によって引き起こされるかゆみ、反応性の薬物代謝産物に起因するかゆみまたは皮膚乾燥に起因するかゆみが挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる例示的な適応症としては、アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、湿疹、異汗性湿疹、口腔内潰瘍、おむつかぶれが挙げられる。
かゆみ
かゆみ、すなわち急性そう痒は、例えば、環境中の有害物質に対する警告によって、重要な防御機能を発揮するが、例えば、数多くの皮膚障害、全身性障害および神経系障害を併発する消耗性の症状でもあり得る。かゆみのいくつかの形態は、それらが、例えば抗ヒスタミン剤による処置に感受性であるとき、ヒスタミンシグナル伝達によって媒介される。しかしながら、ほとんどの病態生理学的なかゆみの症状は、抗ヒスタミン剤処置に対して非感受性である。本発明の化合物および薬学的組成物は、かゆみを処置するために投与され得る。
アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚の慢性のかゆみおよび炎症性障害である。重度のADを有する患者は、アトピーマーチとしても知られる、喘息およびアレルギー性鼻炎を発症し得る。発疹およびそう痒症は、アトピー性疾患に関連し得る。例えば、ADおよび乾癬における、慢性のかゆみには;粗暴なひっかき行動などの病態生理学的特徴、例えば湿疹に由来する広範な上皮性過形成、腎不全、肝硬変、神経系障害、一部の癌が含まれる。
アレルギー性接触皮膚炎は、炎症および持続性のそう痒症に付随する一般的な皮膚疾患である。
本明細書中に開示されるような方法は、皮膚浮腫、ケラチノサイト過形成、神経成長、白血球浸潤および抗ヒスタミン剤抵抗性のひっかき行動を阻害し得る。本明細書中に開示されるような方法は、例えば、外来性の刺激物、例えば、ハプテン、オキサゾロン、ウルシオール(例えば、ツタウルシ由来)に対するアレルギー反応を阻害し得る。
疾患モデルおよび損傷モデル
TRPA1機能に拮抗する化合物は、前述の損傷、疾患、障害または症状のいずれかの予防および処置において有用であり得る。それらの有効性は、これらの化合物の活性のインビトロアッセイに加えて、一つまたは複数の動物モデルにおいて容易に試験され得る。疼痛を調べるための動物モデルが数多く存在する。様々なモデルが、損傷、疾患または他の症状に起因する疼痛を刺激するために様々な作用物質または手順を用いる(例えば、Blackburn−Munro(2004)Trends in Pharmacol Sci(2004)25:299−305(例えば、表1、3または4)を参照のこと)。次いで、チャレンジされた動物の行動特性が観察され得る。それらの動物において疼痛を減少させ得る化合物または手順は、試験化合物または手順の非存在下のチャレンジされた動物の行動特性とそれらの存在下のチャレンジされた動物の行動特性とを比較して観察することによって、容易に試験され得る。
慢性疼痛を調べるために用いられる例示的な行動試験としては、自発痛、異痛症および痛覚過敏の試験が挙げられる。同書。自発痛を評価するために、姿勢、歩行、侵害防御機構の徴候(例えば、足を舐めること、過剰なグルーミング、過剰な探索行動、損傷した身体部分の防御および自傷)が観察され得る。誘発された疼痛を計測するために、熱への曝露後の行動反応が調べられ得る(例えば、熱傷モデル)。
疼痛の例示的な動物モデルとしては、Trevisanモデルに記載されているモデル、ならびにストレプトゾトシン誘発有痛性糖尿病性ニューロパシー、ボルテゾミブ(bortexomib)誘発末梢神経障害およびオキサリプラチン誘発末梢神経障害を含むKoivistoの参考文献;Chungモデル、部分神経損傷(spared nerve injury)モデル、カラギナン(carageenan)誘発痛覚過敏モデル、フロイント完全アジュバント誘発痛覚過敏モデル、熱傷モデル、ホルマリンモデルおよびBennettモデルが挙げられるが、これらに限定されない。
Trevisanの参考文献では、化学療法誘発性末梢神経障害モデルは、ボルテゾミブまたはオキサリプラチンでの処置によるマウスにおけるCIPN表現型の(if)誘導を含む(Trevisanら、Cancer Res(2013)73:3120−3131)。TRPA1の阻害剤による動物の処置は、種々の侵害受容性試験のいずれか、例えば、フォンフレイヘア(Von Frey hair)試験、ホットプレート試験、寒冷刺激、化学的痛覚過敏またはロータロッド試験を用いて評価され得る。
Koivistoの参考文献における末梢糖尿病性ニューロパシー(PDN)のモデルは、ストレプトゾトシンを用いてラットにおいて真性糖尿病(DM)を誘導すること、およびTRPA1アゴニストの足底内注射によって誘導される軸索反射を評価することを含む(Koivistoら、Pharmacol Res(2011)65:149−158)。TRPA1を阻害する化合物による処置は、皮膚軸索反射のDM誘発性減弱の低減について評価され得る。
神経因性疼痛のChungモデル(炎症なし)は、一つまたは複数の脊髄神経の結紮を含む(例えば、Chungら、Methods Mol Med(2004)99:35−45;Kim and Chung,Pain(1992)50:355−363を参照のこと)。脊髄神経の結紮は、熱痛覚過敏、冷感異痛および継続した疼痛をはじめとした種々の行動変化を動物にもたらす。結紮された動物に、TRPA1に拮抗する化合物を投与することにより、それらの化合物がこれらの結紮誘導性の行動変化を減少させるかをそれらの化合物の非存在下において観察されるものと比較して評価することができる。
カラギナン誘発痛覚過敏およびフロイント完全アジュバント(CFA)誘発痛覚過敏は、炎症性疼痛のモデルである(例えば、Walkerら、J Pharmacol Exp Ther(2003)304:56−62;McGaraughtyら、Br J Pharmacol(2003)140:1381−1388;Honoreら、J Pharmacol Exp Ther(2005)314:410−421を参照のこと)。カラギナンまたはCFAをチャレンジされた動物に、TRPA1に拮抗する化合物を投与することにより、それらの化合物が寒冷過敏症、機械的過敏症または熱過敏症を減少させるかをそれらの化合物の非存在下において観察されるものと比較して評価することができる。さらに、TRPA1機能に拮抗する化合物が寒冷過敏症および/または機械的過敏症を減少させる能力もまた、これらのモデルにおいて評価され得る。代表的には、カラギナン誘発痛覚過敏モデルは、急性炎症性疼痛を模倣すると考えられており、CFAモデルは、慢性疼痛および慢性炎症性疼痛を模倣すると考えられている。
炎症性疼痛の例示的なモデルとしては、足底内ブラジキニン注射のラットモデルが挙げられる。簡潔には、動物のベースラインの熱感度を、ハーグリーブス装置において評価する。次いで、TRPA1遮断剤を全身投与する。続いて、ブラジキニンを足に注射し、痛覚過敏を発症させる。次いで、次の数時間にわたって複数の時点において、熱逃避潜時を計測する(Chuangら、2001;Valeら、2004)。
炎症は、疼痛に対する重要な要因であることが多い。したがって、抗炎症薬として作用する化合物を特定することが有用である。神経活動を低下させる多くの化合物は、神経原性炎症も妨げる。炎症を直接計測するために、ラットの足の体積を、足容積測定装置を用いて評価し得る。ベースラインの測定値を得た後、カラギナンをその足に注射し得、ビヒクルまたは薬物で処置された動物における体積を数時間にわたってモニターし得る。足の腫脹を減少させる薬物は、抗炎症性であると考えられる。
片頭痛は、著しい疼痛および正常なタスクを完了できないことを伴う。片頭痛のモデルがいくつか存在し、それらのモデルには、ラット神経原性炎症モデル(例えば、Buzziら、Br J Pharmacol(1990)99:202−206を参照のこと)およびBursteinモデル(例えば、Strassmanら、Nature(1996)384:560−564を参照のこと)が含まれる。
Bennettモデルは、慢性疼痛を再現するために長期の足の虚血を用いる(例えば、Xanthosら、J Pain(2004)5:S1を参照のこと)。これにより、術後痛を含む慢性疼痛、複合性局所性疼痛症候群および反射性交感神経性ジストロフィーに対する動物モデルが提供される。長期の虚血は、動物の行動変化を誘導し、その行動変化としては、機械的刺激に対する痛覚過敏、寒冷に対する感度、疼痛行動(例えば、足を振り動かすこと、舐めることおよび/またはかばうこと)および痛感過敏が挙げられる。チャレンジされた動物に、TRPA1に拮抗する化合物を投与することにより、それらの化合物が、これらの行動のいずれかまたはすべてを減少させるかをそれらの化合物の非存在下において観察されたときと比較して評価することができる。同様の実験が、術後痛を模倣するために使用され得る熱傷モデルまたはUV熱傷モデルにおいて行われ得る。
神経因性疼痛のさらなるモデルとしては、脊髄損傷に基づく中枢性疼痛モデルが挙げられる。慢性疼痛は、脊髄損傷を誘導することによって、例えば、外科的に露出させた脊髄の領域におもりを落とすことによって(例えば、落錘モデル)、生じさせる。脊髄損傷はさらに、脊髄を挫滅するかもしくは圧迫することによって、神経毒を送達することによって、光化学物質を用いて、または脊髄を半側切除することによって、誘導され得る。
神経因性疼痛のさらなるモデルとしては、末梢神経損傷モデルが挙げられる。例示的なモデルとしては、神経腫モデル、Bennettモデル、Seltzerモデル、Chungモデル(L5またはL5/L6のいずれかにおける結紮)、坐骨神経凍結剥離術(sciatic cryoneurolysis)モデル、下尾幹(inferior caudal trunk)切除モデルおよび坐骨の炎症性神経炎モデルが挙げられるが、これらに限定されない。同書。
特定の疾患に関連する神経因性疼痛の例示的なモデルもまた利用可能である。糖尿病および帯状疱疹は、神経因性疼痛を伴うことが多い二つの疾患である。急性帯状疱疹エピソードの後でさえ、一部の患者は、帯状疱疹後神経痛に苦しみ続け、数年間続く持続痛を経験し続ける。帯状疱疹によって引き起こされる神経因性疼痛および/または帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹後神経痛モデル(PHN)において調べられ得る。糖尿病性ニューロパシーは、糖尿病マウスモデル、ならびに化学的に誘導される糖尿病性ニューロパシーのモデルにおいて調べられ得る。
上で概要を述べたように、癌性疼痛は、任意のいくつかの原因を有することがあり、例えば、化学療法剤または腫瘍浸潤に関係する癌性疼痛を調べるための動物モデルが数多く存在する。トキシン関連癌性疼痛の例示的なモデルとしては、ビンクリスチン誘発末梢神経障害モデル、タキソール誘発末梢神経障害モデルおよびシスプラチン誘発末梢神経障害モデルが挙げられる。腫瘍浸潤によって引き起こされる癌性疼痛の例示的なモデルは、癌浸潤疼痛モデル(CIP)である。同書。
原発性および転移性の骨癌は、甚だしい疼痛を伴う。骨癌疼痛のモデルがいくつか存在し、それらのモデルには、マウス大腿骨癌疼痛モデル(FBC)、マウス踵骨癌疼痛モデル(CBC)およびラット脛骨骨癌モデル(TBC)が含まれる。同書。
疼痛のさらなるモデルは、ホルマリンモデルである。カラギナンモデルおよびCFAモデルと同様に、ホルマリンモデルは、刺激物質を動物の皮内または腹腔内に注射することを含む。ホルムアルデヒドの37パーセント溶液であるホルマリンの注射が、足の皮内注射に対して最もよく使用される作用物質である(ホルマリン試験)。0.5〜15パーセントのホルマリン溶液(通常、約3.5%)を前足または後足の背側または足底の表面に注射することにより、注射後約60分間にわたって強度が上昇して低下する二相性の有痛反応がもたらされる。代表的な反応としては、足を上げること、なめること、かじることまたは振り動かすことが挙げられる。これらの反応は、侵害受容性であると考えられる。その反応の初期段階(初期相としても知られる)は、3〜5分間続き、おそらく、侵害受容器の直接的な化学的刺激に起因する。この後に、動物が侵害受容を示唆する行動をほとんど示さない10〜15分間が続く。この反応の第2段階(後期相としても知られる)は、ホルマリン注射の約15〜20分後に始まり、20〜40分続き、はじめに侵害受容行動の数と頻度の両方が増加し、ピークに達し、次いで、減少する。これらの侵害受容行動の強度は、使用されたホルマリンの濃度に依存する。第2段階は、炎症現象が起きている感作の期間を含む。ホルマリン注射に対する二つの反応相は、ホルマリンモデルを、侵害受容性かつ急性炎症性の疼痛を調べるための適切なモデルにする。それは、いくつかの点において、神経因性疼痛もモデル化し得る。
TRPA1機能に拮抗する化合物は、慢性疼痛の前述のモデルのいずれかに加えて、急性疼痛の一つまたは複数のモデルにおいて試験され得る(例えば、Valenzanoら(2005)Neuropharmacology 48:658−672を参照のこと)。化合物が、慢性疼痛のモデルにおいて試験されるのか、急性疼痛のモデルにおいて試験されるのか、またはその両方において試験されるのかに関係なく、これらの研究は、通常、例えば、マウス、ラットまたはモルモットにおいて実施される(がこれらに限られない)。さらに、化合物は、疼痛のインビトロアッセイを提供する様々な細胞株においても試験され得る。
疼痛に対する処置を求めている多くの個体は、内臓痛に苦しんでいる。内臓痛の動物モデルとしては、炎症性子宮痛のラットモデル(例えば、Wesselmannら、Pain(1997)73:309−317を参照のこと)、過敏性腸症候群を模倣するための消化管へのカラシ油の注射(例えば、Kimballら(2005)Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,288(6):G1266−73を参照のこと)、過活動膀胱または膀胱炎を模倣するための膀胱へのカラシ油の注射(例えば、Riazimand(2004),BJU Int 94:158−163を参照のこと)が挙げられる。TRPA1化合物の有効性は、苦悶、胃腸の炎症または膀胱の興奮性の減少によって評価され得る。
咳を処置するためのTRPA1アンタゴニストの有効性を試験するために、意識下モルモットの咳モデルを用いる実験が、容易に実施され得る(例えば、Tanaka and Maruyama(2003)J Pharmacol Sci 93:465−470;McLeodら(2001)Br J Pharmacol 132:1175−1178を参照のこと)。簡潔には、モルモットは、マウスおよびラットなどの他のげっ歯類とは異なり、実際に咳をするので、モルモットは、咳に対する有用な動物モデルとして役立つ。さらに、モルモットの咳は、咳をしている動物の姿勢、挙動および外観に関して、ヒトの咳によく似ているとみられる。
咳を誘導するために、意識下のモルモットを、クエン酸またはカプサイシンなどの誘導物質に曝露する。咳の数を数えることによって、その動物の反応を計測する。咳抑制剤、例えば、TRPA1を阻害する化合物の有効性は、その作用物質を投与し、その作用物質が、クエン酸、カプサイシンまたは他の類似の咳誘導物質への曝露によって誘発される咳の数を減少させる能力を評価することによって、計測され得る。このように、咳の処置において使用するためのTRPA1阻害剤は、容易に評価され、特定され得る。
さらなる咳モデルには、無意識のモルモットモデルも含まれ得る(例えば、Rougetら(2004)Br J Pharmacol 141:1077−1083を参照のこと)。前述のモデルのいずれかが、咳をすることが可能な他の動物との使用に対して適合され得る。咳をすることが可能な例示的なさらなる動物としては、ネコおよびイヌが挙げられる。
本発明の化合物は、複数の喘息モデルにおいて試験され得る。一つの例は、マウスオバルブミン喘息モデルである(例えば、Caceres AIら、Proc Natl Acad Sci USA.(2009)106(22):9099−104を参照のこと)。このモデルでは、オバルブミンを2週間にわたって数回、腹膜腔内に注射する。第3週の間のいつかにおいて、動物を鼻腔内オバルブミンでチャレンジし、気道過敏、炎症および炎症性サイトカイン産生を計測し得る。化合物は、このモデルのチャレンジ期の間に投与する。Trpa1ノックアウトマウスは、Caceresらによって報告されたような上記モデルに取って代わり得る。
喘息の大型動物モデルの例である、Abraham,W.M.らに記載されているような意識下のアレルギー性ヒツジモデルを用いて、抗原誘発性の後期喘息反応に対する化合物の効果を評価してもよい(Abraham WM.,Am J Respir Crit Care Med(2000)162(2):603−11)。簡潔には、ベースラインの気道反応性を、喘息を誘導するためにAscaris suum抽出物を噴霧投与する前の意識下のヒツジにおけるプレチスモグラフによって計測する。ベースラインの記録を記録した後、動物へのAscaris suumの噴霧投与によってチャレンジする。抗原感受性を、ベースラインからの肺気流抵抗の減少によって測定する。いったん動物が抗原感受性を示したら、試験化合物が投与され得、気道反応性の変化を評価するために、さらなる肺気流抵抗の記録が記録され得る。ウマおよびビーグル犬のモデルも時折用いられる。
さらなるモデルとしては、Raemdonckら(Raemdonck Kら、Thorax(2012)Jan;67(1):19−25)に記載されているような喘息のBrown NorwayラットモデルおよびC57BL/6Jマウスモデルが挙げられ得る。簡潔には、Brown NorwayラットおよびC57BL/6Jマウスを感作し得、エアロゾル送達のオバルブミンでチャレンジし得る。全身プレチスモグラフを読むことによって計測される肺機能の低下によって、感受性が確認されたら、本発明の化合物が投与され得る。喘鳴を含む呼吸窮迫の視覚的徴候および可聴の徴候も存在することがある。
皮膚炎
皮膚疾患のマウスモデルが、現在、複数存在する。例えば、Liuらは、オキサゾロンおよびウルシオールによって誘発される複数の接触皮膚炎(contact dermatis)モデルを報告した(例えば、Liu Bら、FASEB J.(2013)27(9):3549−63を参照のこと)。簡潔には、Trpa1ノックアウトマウスに、オキサゾロンまたはウルシオールの局所投与を行うことにより、皮膚炎およびかゆみの反応を誘導する。耳のパンチを採取し、未処置の耳と比べて、チャレンジされた領域を計測することによって、表皮の厚さも計測され得る。インビボ処置化合物は、オキサゾロン(ozazolone)またはウルシオールによる処置の前または後に動物に化合物を投与することによって、測定され得る。ひっかき行動は、観察チャンバーの上に位置するビデオカメラによって記録される。処置群を把握していない観察者が、30分間にわたって、動物がひっかき行動に費やす時間を記録する。
かゆみを誘発する乾燥皮膚の代替のマウスモデルは、Wilsonらによって報告されたように(Wilson SRら、J Neurosci(2013)33(22):9283−94)、それらのマウスへのアセトン、エーテルおよび水の投与を含む。このモデルでは、処置される領域を剃毛し、マウスの観察される領域、例えば、頬または尾側の背中にアセトンおよびエーテルの局所投与を1日2回行う。処置化合物のインビボ有効性は、アセトンおよびエーテルの投与の前または後にそれらの動物に化合物を投与することによって、測定され得る。ひっかき行動は、20分間にわたってカメラによって記録され、処置群を把握していない観察者によって数量化される。
さらに、そう痒症は、かゆみを引き起こす作用物質の直接的な注射によって誘導され得る。これらの作用物質の例は、Akayimo and Carstens,2013に見られ得る。いくつかの例は、クロロキン(Wilsonら、2011)、胆汁酸、TSLP(Wilsonら、2013)およびIL−31(Cevikbasら、2014)である。通常、規定の期間におけるひっかき行動の発作は、処置群を把握していない観察者(observed)によって記録される。
失禁のげっ歯類モデルが数多く存在する。これらには、神経損傷、尿道インピンジメント(urethral impingement)および炎症によって誘導される失禁のモデルが含まれる。尿道インピンジメントのモデルとしては、ラット膀胱流出妨害モデル(例えば、Pandita,RK,and Andersson KE.J Urol(1999)162:943−948を参照のこと)が挙げられる。炎症性モデルには、膀胱へのカラシ油の注射が含まれる。
失禁の処置におけるTRPA1阻害剤化合物の有効性を試験するために、様々な濃度の化合物(例えば、低濃度、中濃度および高濃度)が、外科的な部分的な膀胱排出口閉塞(BOO)の後のラットに投与され得る。様々な用量のTRPA1阻害性化合物の有効性は、賦形剤のみが投与されたコントロール(シャムコントロール)と比較され得る。有効性はさらに、アトロピンなどのポジティブコントロールが投与されたラットと比較され得る。アトロピンは、BOOモデルにおける部分的な膀胱排出口閉塞の後の膀胱の過活動を減少させると予想される。BOOモデルにおいて化合物を試験するとき、化合物は、膀胱または尿道に直接投与され得る(例えば、カテーテルによって)か、または化合物は、全身投与され得る(例えば、経口的に、静脈内に(intraveneously)、腹腔内になど)ことに注意されたい。
膵臓(pancreatitic)痛のラットモデルがいくつか報告されている(Lu,2003,Anesthesiology 98(3):734−740;Winstonら(2003)Journal of Pain 4(6):329−337)。Luらは、ラットにおいて二塩化ジブチルスズ(dibutylin dichloride)の全身送達によって膵炎を誘導した。ラットは、7日間の間に、腹部のフォンフレイフィラメント刺激後の引っ込め(withdrawal)事象の増加および熱刺激後の引っ込め潜時の短縮を示した。これらの動物において誘導された疼痛状態は、脊髄における高レベルのサブスタンスPも特徴とした(Luら、2003)。このモデルにおいてTRPA1阻害剤の有効性を試験するために、二塩化ジブチルスズの送達の後またはその送達と同時にTRPA1阻害剤が投与され得る。コントロール動物には、キャリアまたは公知の鎮痛剤が投与され得る。疼痛の兆候が計測され得る。TRPA1阻害剤の有効性は、TRPA1阻害剤を投与された動物において観察された疼痛の兆候を、TRPA1阻害剤を投与されなかった動物の疼痛の兆候と比較することによって評価され得る。さらに、TRPA1阻害剤の有効性は、公知の疼痛医薬の有効性と比較され得る。
侵害受容行動を計測する手段としてのフォンフレイフィラメント試験の有効性は、L−アルギニンの全身投与によって膵炎を誘導することによっても示されたL−アルギニンの全身投与によって(Winstonら、2003)。TRPA1阻害剤の有効性は、L−アルギニンの全身投与によって誘導される膵炎の後に同様に試験され得る。
Luらは、覚醒時の自由行動ラットにおける留置カニューレによる膵臓の急性侵害刺激を用いた膵臓痛に対する直接的な行動アッセイも報告した。これらのアッセイは、ブラジキニンの膵臓内注入に応答して、ケージを横断すること、立ち上がること、および後肢を伸長することを含んだ。D−APV(NMDA受容体アンタゴニスト)またはモルヒネのみの鞘内投与は、このモデルにおいて、内臓痛の行動を部分的に減少させた。両方の組み合わせが、疼痛行動をベースラインにまで減少させた。TRPA1阻害剤の有効性は、この系において同様に試験され得る。
前述の動物モデルのいずれもが、膵炎に関連する疼痛の処置におけるTRPA1阻害剤の有効性を評価するために使用され得る。その有効性は、無処置コントロールまたはプラセボコントロールと比較され得る。さらにまたはあるいは、有効性は、一つまたは複数の公知の疼痛緩和医薬と比較して評価され得る。
一般的な手順
すべての反応を、不活性雰囲気下、通常、窒素下において行った。すべての非水性反応を、無水溶媒を用いて行った。すべての反応物を、マグネチックスターバーまたは吊り下げ式機械撹拌のいずれかを用いて撹拌した。すべての飽和抽出溶液を水性であると仮定する(例えば、飽和NH4Cl)。すべての乾燥剤が無水である。乾燥剤による有機溶液の乾燥は、その乾燥剤が濾過によってその有機溶液から除去されたこと意味する。クロマトグラフィーは、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーのことを指す。分取薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレート上で行った。反応混合物の濃縮は、減圧下での濃縮および回転蒸発器の使用を意味する。最終生成物の乾燥は、高真空条件下での乾燥を意味する。超音波処理は、超音波浴の使用を意味する。すべての1H−NMRデータを400MHzにおいて得た。質量スペクトルは、陽イオンモードで得られ、別段示されない限り、プロトン化種MH+として報告される。
省略形
DCM ジクロロメタン
DIC N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA N,N’−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EA 酢酸エチル
Ether ジエチルエーテル
h 時間
HOAc 酢酸
HOAT 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
LAH 水素化アルミニウムリチウム
MeOH メタノール
min 分
n−BuLi n−ブチルリチウム
NMP N−メチルピロリジノン
Pd/C 活性炭担持パラジウム、通常、10%パラジウムの負荷量
PE 石油エーテル
RT 室温
TBAI ヨウ化テトラブチルアンモニウム
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
TLC 薄層クロマトグラフィー
THF テトラヒドロフラン
合成中間体の調製
調製1 (2S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸
工程1 (R)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート
DCM(300mL)中の、(R)−メチル2−ヒドロキシプロパノエート(30g,0.28mol)およびTEA(80mL,0.56mol)の溶液を、0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(33.6mL,0.42mol)を0℃において1時間にわたって滴下した。その混合物を、10〜20℃において1.5時間撹拌した。得られた混合物を氷水(100mL)でクエンチした。有機層を分離し、水(2×50mL)およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、粗生成物(R)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート(50g,95.2%)を赤煉瓦色の油状物として得て、それを精製せずに使用した。
工程2 (2S)−メチル2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラ−ヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパノエート
18℃のDMF(2.2L)中の、1,3−ジメチル−3,4,5,7−テトラヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(112g,0.62mol)およびK2CO3(171g,1.24mol,2eq)の懸濁液に、(R)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート(226g,1.24mol)を加えた。その混合物を18℃において一晩撹拌し;次いで、それを飽和NH4Cl(2L)でクエンチした。得られた混合物をDCMで抽出した(3×1L)。合わせた有機相を水(5×500mL)およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をDCMに溶かし、6N HClで抽出した(2×200mL)。合わせた水相をDCMで逆抽出した(2×50mL)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮することにより、所望の生成物を薄茶色の油状物として得て(65g,39.3%)、それをさらに精製せずに使用した。MH+267。
工程3 (2S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸
ジオキサン(400mL)中の(2S)−メチル2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラ−ヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパノエート(39g,145mmol)の溶液に、6N HCl(200mL)を加えた。その混合物を3時間還流し、室温に冷却し、次いで、濃縮することにより、ジオキサンおよび水相の大部分を除去した。残渣を水(70mL)においてトリチュレートし(triturated)、濾過した。固体を濾過により回収することにより、表題の生成物を得た(17.3g,ee:99%*)。濾液を濃縮乾固し、残渣を、DCM/MeOH(40/1〜15/1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、さらなる生成物を得た(3.2g,ee:95%*)。総収率は、55.1%であった。1H NMR (DMSO−d6) δ 13.28 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 5.47 (q, J = 7.4 Hz, 1H), 3.44 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 1.76 (d, J = 7.4 Hz, 3H). MH+ 253.
*キラルHPLCの詳細:Chiralcel ADカラム,250*4.6mm,10um。移動相:ヘキサン(0.1%TFA)/IPA(0.1%TFA)70/30。
調製2 5,5−ジメチルピロリジン−2−オン塩酸塩
工程1 メチル4−メチル−4−ニトロペンタノエート
ジオキサン(3mL)中の2−ニトロプロパン(5.06g,56.84mmol)の溶液に、Triton B(0.55mL,40%水溶液)を加えた。その反応物を70℃に加温し、アクリル酸メチル(4.78g,55.58mmol)を滴下した。滴下後、その反応物を100℃において4時間加熱した。その反応物をRTに冷却し、1N HCl(2mL)を加え、得られた混合物をEAと水とに分割した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、粗生成物(10g,100%)を油状物として得た。1H NMR (CDCl3) δ 3.68 (s, 3H), 2.35−2.31 (m, 2H), 2.27−2.23 (m, 2H), 1.60 (s, 6H).
工程2 5,5−ジメチルピロリジン−2−オン
MeOH(30mL)中のNiCl2六水和物(0.67g,2.86mmol)の溶液に、NaBH4(0.33g,8.57mmol)を少しずつ加えた。その反応物を0.5時間にわたって超音波処理し;次いで、メチル4−メチル−4−ニトロペンタノエート(1.0g,5.77mmol)を滴下した。さらなるNaBH4(0.66g,17.14mmol)を少しずつ加えた。得られた混合物を室温において一晩撹拌した。その混合物をセライトで濾過し、濾液を4分の1の体積に濃縮した。残渣をDCMと飽和NaHCO3とに分割した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、粗生成物(0.35g,53.7%)を油状物として得た。MH+114。
工程3 5,5−ジメチルピロリジン−2−オン塩酸塩
THF(8mL)中のLAH(121mg,3.18mmol)の懸濁液に、5,5−ジメチルピロリジン−2−オン(0.3g,2.65mmol)を加え、その反応物を60℃において一晩加熱した。その反応物を0℃に冷却し、水(0.2mL)に続いて15%NaOH(0.2mL)で慎重にクエンチした。その混合物をセライトで濾過した。濾液に濃塩酸(Concentrated hydrochloride acid)を加えた。この混合物を濃縮することにより、粗生成物(0.2g,75.5%)を白色固体として得て、それを精製せずに使用した。MH+100。
調製3 2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程1 5−ブロモ−2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)ピリミジン
DMF(20mL)中の、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(2.3g,11.9mmol)およびK2CO3(6.6g,47.6mmol)の溶液に、RTのDMF(4mL)中の2,2−ジメチルピロリジン(2.26g,16.7mmol)の溶液を加えた。得られた反応混合物を50℃において2日間撹拌した。その反応物を、撹拌しながら氷水に注ぎ込んだ。沈殿物を回収することにより、粗5−ブロモ−2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)ピリミジン(2.3g,76.6%)を淡黄色固体として得て、それをいかなるさらなる精製も行わずに次の工程のために使用した。MH+256。
工程2 2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリミジン
1,4−ジオキサン(320mL)中の、5−ブロモ−2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)ピリミジン(17.6g,68.9mmol)と、ビス(ピナコラト)ジボロン(24.5g,96.5mmol)と、KOAc(13.5g,0.14mol)との混合物に、Pd(PPh3)2Cl2(2.4g,3.45mmol)を加えた。その混合物を80℃において20時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、氷水に注ぎ込み、EAで抽出した(4×200mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、黒っぽい残渣を得た。その残渣を、PE/EA(40:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリミジン(2工程で11.5g,49%)を黄色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 8.58 (s, 2H), 3.69 (m, 2H), 1.92 (m, 4H), 1.55 (s, 6H), 1.33 (s, 12H).
工程3 2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
1,4−ジオキサン(140mL)中の2−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリミジン(9.5g,31mmol)の混合物に、4−アミノ−2−クロロピリミジン(4.5g,34.5mmol)および2M K2CO3(20.4mL,40.7mmol)を加えた。その橙色の混合物からN2を用いて脱気し;次いで、Pd(PPh3)4(3.65g,3.1mmol)を加えた。その反応物を80℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、水に注ぎ込み、EtOAcで抽出した(3×150mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EA(1:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、化合物2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(8.96g,>100%)を黄色固体として得た。MH+271。
調製4 (S)−2−(2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン
工程1 (S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン
DMF(200mL)中の、(S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン塩酸塩(40g,0.23mol)と、K2CO3(94.6g,0.68mol)と、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(48g,0.25mol)との混合物を、100℃において24時間撹拌し、次いで、N1,N2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(4mL)を加え、その反応物をさらに2時間撹拌することにより、過剰な5−ブロモ−2−クロロピリミジンを消費した。その反応物を水(400mL)でクエンチし、EAで抽出した(3×500mL)。合わせた有機相を10%LiCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EA(50:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、(S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(50g,74%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 8.54 (s, 2H), 4.90−4.94 (m, 2H), 3.56−3.58 (m, 2H), 2.02−2.16 (m, 4H). MH+ 296.
工程2 (S)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸
THF(400mL)中の、(S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(50g,0.17mol)およびホウ酸トリイソプロピル(44.4g,0.23mol)の溶液を−78℃に冷却し、n−BuLi(105mL,ヘキサン中2.4M)を滴下した。その反応物を−78℃において2時間撹拌した。その反応物を水(150mL)でクエンチし、RTに加温した。その反応物を濃縮することにより、水相を残した。その水相をエーテルで抽出することにより(2×50mL)、不純物を除去した(水層中に生成物)。6N HClを用いてpHを5に調整し、次いで、それをEAで抽出した(3×100mL)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮することにより、(S)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(45g,定量的収量)をオフホワイトの固体として得た。MH+262。
工程3 (S)−2−(2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン
ジオキサン(105mL)および水(35mL)中の、(S)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(9.5g,36.4mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(4.3g,33.1mmol)と、Na2CO3(7.0g,66.2mmol)との混合物に、Pd(PPh3)4(3.8mg,3.31mmol)を加えた。その混合物を、窒素を用いて脱気し、次いで、110℃において3時間撹拌した。その反応物を冷却し、セライトで濾過した。濾液をEA(300mL)および水(150mL)で分離した。有機相をブライン(100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCM/MeOH(100:1〜80:1〜70:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、(S)−2−(2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン(8g,78%)を白色固体として得た。1H−NMR (CDCl3) δ 9.16 (s, 2H), 8.13−8.14 (d, J = 10 Hz, 1H), 6.97 (s, 2H), 6.34−6.35 (d, J = 6 Hz, 1H), 5.09−5.13 (m, 1H), 3.67−3.72 (m, 2H), 2.06−2.21 (m, 4H). MH+ 311.
調製5 (R)−2−(2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン
表題の化合物を、調製4の方法を用いて調製した。MH+311
調製6 (2S)−2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸
工程1 (2S)−メチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパノエート
50℃のDMF(150mL)中の、1−メチル−3,4,5,7−テトラヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(6.904g,41.5mmol)およびK2CO3(5.734g,41.5mmol)の懸濁液に、(R)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート(5.818g,32.0mmol)を加えた。その反応物を50℃において一晩撹拌し、次いで、飽和NH4Cl(2L)でクエンチした。得られた混合物をEAで抽出した(3×200mL)。合わせた有機相を水(5×500mL)およびブラインで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(0〜3%MeOH:DCM)によって精製することにより、表題の生成物を白色固体として得た(1.649g,20%)。MH+253。
工程2 (2S)−2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸
ジオキサン(3mL)中の(2S)−メチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパノエート(96.9mg,0.38mmol)の混合物に、6N HCl(2mL)を加えた。その反応物を3時間還流し、室温に冷却し、濃縮することにより、白色固体の生成物を得た(92mg,100%);MH+239。
調製7 (S)−2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸
工程1 (S)−メチル2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエート
RTのDMF(2ml)中の(2S)−メチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパノエート(600mg,2.38mmol)の溶液に、ナトリウム2−クロロ−2,2−ジフルオロアセテート(508mg,3.33mmol)に続いてCs2CO3(229mg 3.81mmol)を加えた。その反応物を60℃で12時間加熱した。その反応物をRTに冷却し、冷水で希釈し、EAで2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、MeOH:DCM(0〜3%)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、(S)−メチル2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエート(164mg,23%)を無色の油状物として得た。MH+303。
工程2 (S)−2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸
ジオキサン(1mL)中の(S)−メチル2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエート(64mg,0.21mmol)の混合物に、6N HCl(1mL)を加えた。その反応物を3時間還流し、RTに冷却し、次いで、濃縮した。沈殿物を回収することにより、白色固体の生成物を得た(61mg,100%)。MH+289。
調製8 2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程1 5−ブロモ−2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン
密封チューブに、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(450mg,2.3mmol)、3,3−ジフルオロアゼチジン塩酸塩(275.1mg,2.1mmol)、K2CO3(589.3mg,4.3mmol)およびDMF(3mL)を投入した。そのチューブを密封し、130℃において2時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、水(4mL)に注ぎ込んだ。固体を濾過により回収し、乾燥することにより、5−ブロモ−2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン(300mg,51.4%)を白色固体として得た。MH+250。
工程2 (2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
THF(6mL)中の、5−ブロモ−2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン(300mg,1.2mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(0.4mL,1.8mmol)の溶液に、n−BuLi(0.6mL,ヘキサン中2.4M,1.5mmol)を−78℃において滴下した。その混合物を−78℃において2時間撹拌した。その反応物を水でクエンチし、RTに加温した。溶媒を濃縮し、残留水層をエーテルで抽出した(2×10mL)。水層を、1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×10mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、生成物(170mg,65.6%)を白色固体として得た。MH+216。
工程3 2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
1,4−ジオキサン(5mL)および水(1mL)中の、(2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(170.0mg,0.8mmol)と、4−アミノ−2−クロロピリミジン(102.4mg,0.8mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(56.2mg,0.08mmol)とNa2CO3(167.5mg,1.6mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、90℃において一晩撹拌した。得られた混合物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機相を分離し、水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をエーテルに溶解した。不溶性残渣を濾過によって除去し、濾液を濃縮することにより、2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(130mg,62.3%)を白色固体として得た。MH+265。
調製9 2−クロロ−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド
DMF(2mL)中の2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(60mg,0.2mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(0.03mL,0.34mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTで2時間撹拌し、次いで、それをEAに注ぎ込んだ。この有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−クロロ−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(50mg,64.7%)を黄色固体として得た。MH+341。
調製10 (2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
工程1 5−ブロモ−2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン
密封チューブに、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(633.3mg,3.3mmol)、4,4−ジフルオロピペリジン塩酸塩(472.8mg,3.0mmol)、K2CO3(829.3mg,6.0mmol)およびDMF(4mL)を投入した。そのチューブを密封し、130℃において2時間撹拌し;次いで、それをRTに冷却し、水(5mL)に注ぎ込んだ。固体の沈殿物を回収し、乾燥することにより、5−ブロモ−2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン(640mg,77%)を白色固体として得た。MH+278。
工程2 (2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
THF(8mL)中の、5−ブロモ−2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン(640mg,2.3mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(0.8mL,3.5mmol)の溶液に、n−BuLi(2mL,ヘキサン中2.4M,1.5mmol)を−78℃において滴下した。その混合物を−78℃において2時間撹拌した。この反応物を水でクエンチし、RTに加温した。その反応物を濃縮し、残留水性混合物をエーテルで抽出した(2×10mL)。水相を、1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×10mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、(2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(420mg,74.8%)を白色固体として得た。MH+244。
調製11 2−クロロ−N−(2−クロロピリミジン−4−イル)アセトアミド
4−アミノ−2−クロロピリミジン(2.0g,15.4mmol)とDMF(25mL)との混合物に、2−クロロアセチルクロリド(0.03mL,0.34mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTにおいて一晩撹拌し、次いで、それをEAに注ぎ込んだ。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCMを用いてトリチュレートし、固体を回収することにより、2−クロロ−N−(2−クロロピリミジン−4−イル)アセトアミド(1.3g,20.5%)を黄色固体として得た。MH+206。
調製12 N−(2−クロロピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド
DMF(20mL)中の、2−クロロ−N−(2−クロロピリミジン−4−イル)アセトアミド(1.1g,5.4mmol)と、1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(966.3mg,5.4mmol)と、K2CO3(1.1g,8.1mmol)と、TBAI(198.2mg,0.5mmol)との混合物を、90℃において10分間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、次いで、EAで希釈した。得られた混合物を水、飽和NH4Clおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をDCMから再結晶することにより、N−(2−クロロピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−アセトアミド(1.3g,69.4%)を白色固体として得た。MH+350。
調製13 3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン塩酸塩
工程1 3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン
AcOH(30mL)中の3−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(2.3g,20.5mmol)の混合物に、DMAP(150mg)およびベンジルアミン(2.2mL,20.5mmol)を加えた。その混合物を100℃において40時間撹拌し;次いで、RTに冷却した。その反応物を濃縮し、残渣をEAに溶解した。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EA(8:1〜5:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(3.7g,89.6%)を白色固体として得た。MH+202。
工程2 3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン
THF(30mL)中の3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(2.0g,10.0mmol)の溶液に、LAH(1.5g,40.0mmol)を加えた。得られた混合物を、4時間加熱還流し、次いで、それを0℃に冷却した。その冷たい反応混合物を飽和NH4Clで慎重にクエンチし、次いで、濾過した。濾液を濃縮することにより、表題の化合物(1.5g,86.7%)を透明の油状物として得た。MH+174。
工程3 3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン塩酸塩
MeOH(20mL)中の、3−ベンジル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(1.3g,7.5mmol)と、10%Pd/C(130mg)と、濃HCl(0.63mL,7.5mmol)との混合物を、水素雰囲気(バルーン)下のRTにおいて18時間撹拌した。その反応物をセライトで濾過し、濾液を濃縮することにより、表題の化合物(850mg,95%)を白色固体として得た。MH+84
調製14 2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程1 3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン
密封チューブに、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(671.7mg,3.5mmol)、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン塩酸塩(416.7mg,3.5mmol)、K2CO3(967.5mg,7.0mmol)およびDMF(4mL)を投入した。そのチューブを密封し、130℃において2時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、冷水(4mL)に注ぎ込んだ。形成した固体を回収し、乾燥することにより、3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(480mg,57.4%)を白色固体として得た。MH+240。
工程2 (2−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
THF(6mL)中の、3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(480mg,2.0mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(0.7mL,3.0mmol)の溶液に、n−BuLi(1.1mL,ヘキサン中2.4M,2.6mmol)を−78℃において滴下した。その反応物を−78℃において2時間撹拌し、次いで、それを水でクエンチし、RTに加温した。その反応物を濃縮し、水性残渣をエーテルで抽出した(2×20mL)。水層を分離し、1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、表題の生成物(200mg,48.5%)を白色固体として得た。MH+206。
工程3 2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
1,4−ジオキサン(5mL)および水(1mL)中の、(2−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(150.0mg,1.2mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(237.9mg,1.2mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(86.0mg,0.1mmol)と、Na2CO3(245.9mg,2.3mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、80℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機相を分離し、水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をエーテルに溶解した。不溶性残渣を濾過により除去し、濾液を濃縮することにより、2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(100mg,33.8%)を白色固体として得た。MH+255。
調製15 N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−クロロアセトアミド
DMF(2mL)中の2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(40mg,0.2mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(0.02mL,0.3mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTにおいて2時間撹拌し、次いで、EAに注ぎ込んだ。有機層を水およびブラインで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−クロロアセトアミド(50mg,96.2%)を黄色固体として得た。MH+329。
調製16 2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程1 5−ブロモ−2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(pyramidine)
密封チューブに、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(441.4mg,2.3mmol)、3−(トリフルオロメチル)ピロリジン塩酸塩(402.6mg,2.1mmol)、K2CO3(635.8mg,4.6mmol)およびDMF(3mL)を投入した。そのチューブを密封し、130℃において2時間撹拌し;次いで、それを水(4mL)に注ぎ込んだ。固体を回収し、乾燥することにより、5−ブロモ−2−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)ピリミジン(500mg,73.7%)を白色固体として得た。MH+296。
工程2 (2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
THF(6mL)中の、5−ブロモ−2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(500mg、1.7mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(0.6mL,2.5mmol)の溶液に、n−BuLi(0.9mL,ヘキサン中2.4M,2.2mmol)を−78℃において滴下した。その混合物を−78℃において2時間撹拌し、次いで、水でクエンチし、RTに加温した。その反応物を濃縮し、水性残渣をエーテルで抽出した(2×20mL)。水層を1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、表題の生成物(320mg,72.3%)を白色固体として得た。MH+260。
工程3 2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
1,4−ジオキサン(5mL)および水(1mL)中の、(2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(320.0mg,1.2mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(158.1mg,1.2mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(86.0mg,0.1mmol)と、Na2CO3(260.0mg,2.5mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をエーテルに溶解した。不溶性残渣を濾過により除去し、濾液を濃縮することにより、2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(200mg,52.6%)を白色固体として得た。MH+311。
調製17 2−クロロ−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド
DMF(2mL)中の2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(93mg,0.3mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(0.04mL,0.45mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTにおいて2時間撹拌し、次いで、EAに注ぎ込んだ。有機相を水およびブラインで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−クロロ−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(100mg,86.4%)を黄色固体として得た。MH+387。
調製18 2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン
工程1 2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸
THF(5mL)中の、5−ブロモ−2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン(550mg,1.95mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(383mg,2.74mmol)の溶液に、n−BuLi(1.1mL,ヘキサン中2.4M)を−78℃において滴下した。その反応物を−78℃において2時間撹拌した。その反応物を水(5mL)でクエンチし、RTに加温した。その反応物を濃縮し、水性残渣をエーテルで抽出した(2×2mL)。水層を、1N HClを用いてpH5に調整し、EAで抽出した(3×5mL)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(450mg,93.7%)をオフホワイトの固体として得た。MH+248。
工程2 2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン
ジオキサン(10mL)中の、2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(450mg,1.82mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(213mg,1.65mmol)と、飽和Na2CO3(2.5mL)との混合物に、Pd(PPh3)2Cl2(58mg,0.08mmol)を加え、窒素を用いて3回脱気した。その反応物を90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、セライトで濾過した。濾液をEAで抽出した(2×4mL)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:アセトン(3:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン(350mg,71.4%)を白色固体として得た。MH+297。
調製19 2−クロロ−N−(2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−イル)アセトアミド
DMF(2mL)中の2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−アミン(100mg,0.34mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(0.045mL,0.51mmol)を0℃において滴下した。その混合物を室温において2時間撹拌し、次いで、EAに注ぎ込んだ。有機相を水およびブラインで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−クロロ−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(70mg,56%)を黄色油状物として得た。MH+373.1。
調製20 2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン
(2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(142mg,0.58mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(68.5mg,0.53mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(37.3mg,0.05mmol)と、K2CO3(146.8mg,1.06mmol)と、1,4−ジオキサン(3mL)と、水(0.5mL)との混合物を、窒素を用いて脱気し、90℃において2時間撹拌した。得られた混合物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機層を分離し、水およびブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCM/MeOH(50:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(15mg,10%)を白色固体として得た。MH+293。
調製21 (S)−2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン
工程1 (S)−5−ブロモ−2−(2−メチルピペリジン−1−イル)ピリミジン
DMF(20mL)中の5−ブロモ−2−クロロピリミジン(1.41g,7.35mmol)の溶液に、(S)−2−メチルピペリジン(800mg,8.08mmol)およびK2CO3(1.52g,11.03mmol)を加えた。その反応物をRTにおいて一晩撹拌した。その反応物を氷水に注ぎ込み、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EA(80:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、表題の生成物(1.07g,56.9%)を白色固体として得た。MH+240。
工程2 (S)−2−(2−メチルピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸
THF(20mL)中の、(S)−5−ブロモ−2−(2−メチルピペリジン−1−イル)ピリミジン(1.07g,4.2mmol)およびホウ酸トリイソプロピル(1.1g,5.87mmol)の溶液に、n−BuLi(5.25mL,ヘキサン中1.6M,8.4mmol)を−70℃において滴下した。その反応物を−70℃において3時間撹拌し、次いで、水でクエンチした。その反応物を濃縮し、水性残渣をエーテルで抽出した(2×20mL)。水相を1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、表題の生成物(900mg,96%)を白色固体として得て、それを精製せずにそのまま使用した。MH+222。
工程3 (S)−2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン
1,4−ジオキサン(10mL)および水(2.5mL)中の、(S)−2−(2−メチルピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(752mg,3.4mmol)と、4−アミノ−2−クロロピリミジン(400mg,3.09mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(216.0mg,0.3mmol)と、Na2CO3(655mg,6.18mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、80℃において2時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EA(20mL)と水(15mL)とに分割した。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をエーテルに溶解した。不溶性残渣を濾過により除去し、濾液を濃縮することにより、(S)−2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(682mg,81.8%)を白色固体として得た。MH+271。
調製22 (S)−2−クロロ−N−(2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド
DMF(8mL)中の(S)−2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(400mg,1.48mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(0.17mL,2.24mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTにおいて一晩撹拌し、次いで、氷水に注ぎ込み、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、所望の生成物(510mg,99%)を黄色のシロップ状物として得た。MH+347。
調製23 2−クロロ−N−(2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(LJ−262−64)
DMF(5mL)中の2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(400mg,1.48mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(251mg,2.22mmol)を0℃において滴下した。RTにおいて一晩撹拌した後、その反応混合物をEAと水とに分割した。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−クロロ−N−(2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(500mg,97.4%)を黄色固体として得た。MH+347。
調製24 (S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン
工程1 (S)−2−(2−メチルピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸
THF(70mL)中の、(S)−5−ブロモ−2−(2−メチルピロリジン−1−イル)ピリミジン(7g,30.8mmol,WO2013/023102に記載されている方法を用いて調製したもの)およびホウ酸トリイソプロピル(8.12g,43.2mmol)の溶液に、n−BuLi(28.9mL,ヘキサン中1.6M,46.3mmol)を−70℃において滴下した。その反応物を−70℃において3時間撹拌し;次いで、それを水でクエンチした。その反応物を濃縮し、水性残渣をエーテルで抽出した(2×20mL)。水層を1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、表題の生成物(4.8g,75.3%)を白色固体として得た。MH+208。
工程2 (S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン
1,4−ジオキサン(40mL)および水(10mL)中の、(S)−2−(2−メチルピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−イルボロン酸(2.53g,12.23mmol)と、4−アミノ−2−クロロピリミジン(1.44g,11.12mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(432.0mg,0.6mmol)と、Na2CO3(2.35g,22.24mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、80℃において2時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をエーテルに溶かした。不溶性残渣を濾過により除去し、濾液を濃縮することにより、(S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(1.5g,54%)を白色固体として得た。MH+257。
調製25 (S)−2−クロロ−N−(2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド
DMF(5mL)中の(S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(256mg,1mmol)の溶液に、2−クロロアセチルクロリド(170mg,1.5mmol)を0℃において滴下した。RTにおいて一晩撹拌した後、その反応混合物をEAと水とに分割した。有機層を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、(S)−2−クロロ−N−(2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(280mg,84.1%)を黄色固体として得た。MH+333。
調製26 2−クロロ−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
DMF(15mL)中の(S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(800mg,3.12mmol)の溶液に、2−クロロプロパノイルクロリド(0.33mL,3.43mmol)を0℃において滴下した。その反応物をRTにおいて一晩撹拌した。その反応物を氷水に注ぎ込み、EAで抽出した(3×20mL)。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物を、PE:EA(5:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、2−クロロ−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド(600mg,56%)を粘稠性の油状物として得た。MH+347。
調製27 2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸
3−メチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(15g,90mmol)と、K2CO3(13.73g,99mmol)と、DMF(451mL)と、2−クロロ酢酸エチル(9.62mL,90mmol)との混合物を、90℃において0.5時間加熱した。その反応物をRTに冷却し、水(450mL)を加えた。その撹拌溶液に、水(100mL)におけるLiOH(4.32g,181mmol)を加えた。その反応物をRTにおいて1時間撹拌した。その反応物を、6N HClを用いてpH4に調整した。形成した沈殿物を回収し、乾燥することにより、2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸(18,670g,92%)を白色粉末として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 13.51 (s, 1 H), 8.01 (s, 1 H), 5.03 (s, 2 H), 3.36 (s, 3 H).
調製28 2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸
工程1 tert−ブチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテート
DMF(200mL)中の、1−メチルキサンチン(9.049g,54.4mmol)および炭酸カリウム(8.258g,59.8mmol)の溶液に、tert−ブチル2−ブロモアセテート(8.03mL,54.4mmol)を滴下した。その反応物を90℃において1時間撹拌し、室温に冷却した。その混合物を水に注ぎ込み、HCl(6N,aq.)を用いてpH4に酸性化した。次いで、その混合物をEAで抽出した(200mL×3)。合わせた有機層を水(200mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物を、MaOH:DCM(2:100)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、tert−ブチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテート(6.539g,43%)を黄色固体として得た。MH+281。
工程2 tert−ブチル2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテート
RTのDMF(20.66mL)中のtert−ブチル2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテート(1.158g,4.13mmol)の溶液に、K2CO3(0.857g,6.20mmol)およびヨードメタン−D3(0.334mL,5.37mmol)を加えた。その反応物を65℃において2時間加熱した。さらなるヨードメタン−D3(0.2当量)を加え、加熱を1時間続けた。その反応物をRTに冷却し、水で希釈し、EAで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(0〜100%EA:ヘキサン)によって精製することにより、tert−ブチル2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテートを得た(1.35g,不純)。MH+298。その不純生成物をさらに精製せずに使用した。
工程3 2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸
DCM(27.2mL)中のtert−ブチル2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセテート(1.35g,4.54mmol)の溶液をTFA(18.16mL)で処理した。その反応物をRTにおいて2時間撹拌した。その反応物を濃縮することにより、油状物を得て、それを精製せずに使用した。MH+242。
調製29 2’−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程1 3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン
密封チューブに、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(748.5mg,3.9mmol)、6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン塩酸塩(604.6mg,3.9mmol)、K2CO3(1.1g,7.8mmol)およびNMP(3mL)を投入した。その混合物を130℃において3時間撹拌し;次いで、それをRTに冷却し、水(4mL)に注ぎ込んだ。固体を濾過により回収し、真空下で乾燥することにより、3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(1.0g,93.2%収率)を白色固体として得た。MH+276。
工程2 (2−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸
THF(20mL)中の、3−(5−ブロモピリミジン−2−イル)−6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(1.1g,4.1mmol)および(i−PrO)3B(1.4mL,6.2mmol)の溶液に、n−BuLi(3.9mL,ヘキサン中1.6M,6.2mmol)を−78℃において滴下した。その反応物を−78℃において2時間撹拌し;次いで、それを水でクエンチし、RTに加温した。溶媒を減圧下で除去し、水層をエーテルで洗浄した(2×50mL)。次いで、水層を、1N HClを用いてpH6に調整し、EAで抽出した(3×50mL)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、2−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(700mg,72.6%収率)を白色固体として得た。
工程3 2’−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
1,4−ジオキサン(5mL)および水(1mL)中の、(2−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(241.0mg,1.0mmol)と、2−クロロピリミジン−4−アミン(129.0mg,1.0mmol)と、Pd(PPh3)4(57.8mg,0.05mmol)と、K2CO3(276.4mg,2.0mmol)との混合物を脱気し、N2で3回パージした。その反応物を、撹拌しながら3時間、90℃において加熱した。得られた混合物をRTに冷却し、EAに注ぎ込んだ。有機相を分離し、水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCM:MeOH(50:1)で溶出するクロマトグラフィーで精製することにより、2’−(6,6−ジフルオロ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(210mg,72.3%収率)を白色固体として得た。MH+291。
調製30 (2R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸
工程1 (S)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート
DCM(100mL)中の、(S)−メチル2−ヒドロキシプロパノエート(12.379g,119mol)およびTEA(17.4mL,125mol)の溶液を0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(12.4mL,125mol)を0℃において1時間にわたって滴下した。その混合物を20℃において1.5時間撹拌した。得られた混合物を氷水(100mL)でクエンチした。有機層を分離し、水(2×50mL)およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮することにより、粗生成物(S)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート(20.940g,97%)を茶色油状物として得て、それを精製せずに使用した。
工程2 (R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸
RTのDMF(500mL)中の、1,3−ジメチル−3,4,5,7−テトラヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(4.588g,25.5mol)およびK2CO3(7.038g,51mol,2eq)の懸濁液に、(s)−メチル2−(メチルスルホニルオキシ)プロパノエート(6.953g,38.2mol)を加えた。その混合物をRTにおいて一晩撹拌し、次いで、飽和NH4Clでクエンチした。得られた混合物をDCMで抽出した(3×300mL)。合わせた有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。茶色油状残渣(8.633g)をジオキサン(10mL)に溶解した。その溶液に、6N HCl(aq.10mL)を加えた。その混合物を2時間還流し、RTに冷却し、次いで、濃縮することにより、ジオキサンおよび水相の大部分を除去した。残渣を、MeOH/DCM(0〜10%)で溶出するクロマトグラフィーで精製することにより、(R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(6.015g,93.6%収率)を白色固体として得た。
式(I)の化合物の合成
実施例1 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
DCM(72mL)中の、2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(4.2g,15.5mmol)と、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(3.56g,14.1mmol)との混合物に、HOAT(1.92g,14.1mmol)をRTにおいて加えた。その反応物を0℃に冷却し、ピリジン(2.23g,28.2mmol)およびDIC(2.67g,21.2mmol)を加えた。その反応物を25〜28℃に加温し、一晩撹拌した。その反応混合物を0.5N HClでクエンチした。その混合物をn−ヘキサンに滴下し、形成した沈殿物を回収し、MeOHで洗浄することにより、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド(3g,19%)を得た。1H NMR (CDCl3) δ 9.78 (s, 1H), 9.14 (s, 2H), 8.54 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.76 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.83 (q, J = 7.2 Hz 1H), 3.77 (m, 2H), 3.63 (s, 3H), 3.50 (s, 3H), 1.96 (m, 7H), 1.60 (s, 6H). ).
実施例2 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド(化合物2)
DCM(48mL)中の、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(2.44g,9.67mmol)と、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(3.3g,10.6mmol)との混合物に、HOAT(1.3g,9.67mmol)をRTにおいて加えた。その混合物を0℃に冷却した。ピリジン(1.5g,19.3mmol)を30分間にわたって滴下した後、DIC(1.8g,14.5mmol)を滴下した。その反応物を35℃において16時間撹拌し;次いで、それをDCM(100mL)で希釈した。その混合物を飽和NH4Cl(50mL,0℃に予冷したもの)およびブラインで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、まずEA:PE(3:2)で溶出し、次いで、DCM:MeOH(30:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製し、次いで、EtOHを用いて再結晶することにより、表題の化合物(4.5g,78%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.46 (s, 1H), 9.22 (s, 2H), 8.66 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.81 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.82 (q, J = 7.2 Hz 1H), 5.12 (t, 1H), 3.70 (m, 2H), 3.47 (s, 3H), 3.16 (s, 3H), 2.10 (m, 4H), 1.88 (d, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 545. ジアステレオ過剰率(de):99%*.
*キラルHPLC法の条件:カラム:CHIRALPAK IB,150*4.6mm,5μm;移動相:A:ヘキサン(HPLCグレード);B:EtOH(HPLCグレード);流速:0.8mL/分;勾配:25分間の30%B。結果:所望のジアステレオ異性体(S)の保持時間は、14.16分であり、他方の異性体(R)は、9.66分である。
実施例3 (R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
EtOH中の実施例2からの再結晶後の母液を濃縮した。残渣をキラル分取HPLC精製にかけることにより、(R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミドを白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.48 (s, 1H), 9.25 (s, 2H), 8.69 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.83 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.81 (q, J = 7.2 Hz 1H), 5.13 (t, 1H), 3.71 (m, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 2.14 (m, 4H), 1.88 (d, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 545. de: 99%.*
*キラルHPLC法の条件:カラム:CHIRALPAK IB、150*4.6mm,5μm;移動相:A:ヘキサン(HPLCグレード);B:EtOH(HPLCグレード);流速:0.8mL/分;勾配:25分間の30%B。
実施例4 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((R)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
表題化合物を、実施例2の方法を用いて調製することにより、白色固体を得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.46 (s, 1H), 9.25 (s, 2H), 8.70 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.83 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.81 (q, J = 7.2 Hz 1H), 5.14 (t, 1H), 3.67 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.14 (s, 3H), 2.10 (m, 4H), 1.86 (d, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 545. de 98%*
*キラルHPLC法の条件:カラム:CHIRALPAK IB、150*4.6mm,5μm;移動相:A:ヘキサン(HPLCグレード);B:EtOH(HPLCグレード);流速:0.8mL/分;勾配:25分間の30%B。
実施例5 (S)−2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
DCM(2mL)中の、(2S)−2−(1−メチル−2,6−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−プリン−7(2H)−イル)プロパン酸(90.4mg,0.38mmol)と、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(119mg,0.38mmol)との混合物に、HOAT(104mg,0.76mmol)をRTにおいて加えた。その反応物を0℃に冷却した。ピリジン(91mg,1.15mmol)を滴下した後、DIC(97mg,0.77mmol)を滴下した。その反応物を20℃において16時間撹拌し;次いで、それをDCM(10mL)で希釈した。その混合物を飽和NH4Clおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCM:MeOH(30:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、表題の生成物(83g,41%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.94 (s, 1H), 11.44 (s, 1H), 9.25 (s, 2H), 8.71 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.84 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.78 (q, J = 7.2 Hz 1H), 5.14 (t, 1H), 3.71 (m, 2H), 3.12 (s, 3H), 2.20 (m, 4H), 1.84 (d, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 531.
実施例6 (S)−2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
DCM(1mL)中の、(S)−2−(3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(61mg,0.21mmol)と、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(310mg,0.21mmol)との混合物に、HOAT(57mg,0.42mmol)をRTにおいて加えた。その混合物を0℃に冷却した。ピリジン(50mg,0.63mmol)を滴下した後、DIC(53mg,0.42mmol)を滴下した。その反応物を20℃において16時間撹拌し、次いで、DCM(10mL)で希釈した。その混合物を飽和NH4Clおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣をDCM:MeOH(30:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、生成物(45.6mg,37%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.49 (s, 1H), 9.25 (s, 2H), 8.70 (s, 1H), 8.39 (s, 1H), 7.86 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 5.82 (q, J = 8 Hz 1H), 5.14 (t, 1H), 3.74 (m, 2H), 3.16 (s, 3H), 2.22 (m, 4H), 1.87 (d, J = 8 Hz, 3H). MH+ 581.
実施例7 N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド
DMF(3mL)中の、2−クロロ−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(50.0mg,0.1mmol)と、K2CO3(41.5mg,0.3mmol)と、1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(26.5mg,0.1mmol)と、TBAI(5.6mg,0.01mmol)との混合物を、90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAで希釈した。有機相を水、飽和NH4Cl溶液およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取TLC(DCM/MeOH=30:1)によって精製することにより、N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド(4.0mg,5.6%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.48 (s, 1H), 9.26 (s, 2H), 8.73 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.83 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 4.60 (t, J = 12.2 Hz, 4H), 3.46 (s, 3H), 3.19 (s, 3H). MH+ 485.1.
実施例8 N−(2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド
1,4−ジオキサン(3mL)および水(0.5mL)中の、N−(2−クロロピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド(87.3mg,0.3mmol)と、Pd(PPh3)4(28.9mg,0.03mmol)と、(2−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ボロン酸(66.9mg,0.3mmol)と、NaHCO3(21.0mg,0.3mmol)との混合物を、窒素を用いて脱気し、90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAで希釈した。有機相を分離し、水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取TLC(DCM/MeOH=30:1)によって精製することにより、N−(2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド(8.0mg,6.2%)を白色固体として得た。1H−NMR (DMSO−d6) δ 11.44 (s, 1H), 9.23 (s, 2H), 8.71 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.81 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 4.05 − 3.97 (m, 4H), 3.46 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 2.06 (dd, J = 12.5, 6.6 Hz, 4H). MH+ 513.1.
実施例9 (S)−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド
DCM(3mL)中の、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(57mg,0.23mmol)と、2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(50mg,0.19mmol)との混合物に、HOAT(31mg,0.23mmol)をRTにおいて加えた。その反応物を0℃に冷却し、次いで、ピリジン(30mg,0.38mmol)をゆっくり滴下した後、DIC(36g,0.29mmol)を滴下した。その反応物をRTに加温し、次いで、30℃に加温し、18時間撹拌した。その反応物を水で抽出した後、飽和NH4Clで抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取HPLC(DCM/MeOH=30:1)によって精製することにより、(S)−N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド(10mg,9%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.51 (s, 1H), 9.26 (s, 2H), 872 (d, 1H),. 8.35 (s, 1H), 7.86 (d, 1H), 5.81 (q, 1H), 4.60 (t, 4H), 3.47 (s, 3H), 3.17(s, 3H), 1.81(d, 3H). MH+ 499.
実施例10 N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド
DMF(3mL)中の、N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−クロロアセトアミド(50.0mg,0.16mmol)と、K2CO3(44.3mg,0.32mmol)と、1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(28.0mg,0.16mmol)と、TBAI(5.9mg,0.02mmol)との混合物を、90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAで希釈した。有機相を水、飽和NH4Clおよびブラインで抽出し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取TLC(DCM/MeOH=25:1)によって精製することにより、N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド(2.0mg,2.9%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.41 (s, 1H), 9.17 (s, 2H), 8.68 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 3.87 (d, J = 11.5 Hz, 2H), 3.59 (s, 2H), 3.51 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 0.82 (m, 3H), 0.18 (s, 1H). MH+ 475.
実施例11 2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)
DMF(3mL)中の、2−クロロ−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(100.0mg,0.26mmol)と、K2CO3(53.7mg,0.39mmol)と、1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(46.6mg,0.26mmol)と、TBAI(9.7mg,0.03mmol)との混合物を、90℃において一晩撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAで希釈した。有機相を水、飽和NH4Clおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取TLC(DCM/MeOH=30:1)によって精製することにより、2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(4.0mg,2.9%)を白色固体として得た。1HNMR (DMSO−d6) δ 11.42 (s, 1H), 9.22 (s, 2H), 8.70 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 3.91 (dd, J = 11.7, 8.1 Hz, 1H), 3.77 (s, 1H), 3.72 − 3.61 (m, 2H), 3.46 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 2.35 − 2.29 (m, 1H), 2.14 (dd, J = 12.9, 7.3 Hz, 1H), 2.00 (d, J = 7.9 Hz, 1H). MH+ 531.
実施例12 N−(2’−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセトアミド
DMF(2mL)中の、2−クロロ−N−(2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−イル)アセトアミド(70mg,0.19mmol)と、K2CO3(51.9mg,0.38mmol)と、1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(34.2mg,0.19mmol)と、TBAI(11.2mg,0.019mmol)との混合物を、50℃において2時間撹拌した。その反応物をRTに冷却し、EAで希釈した。有機相を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。MeOHを用いてトリチュレートした粗生成物を濾過し、乾燥することにより、表題の生成物2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イル)−N−(2−(2−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)ピリミジン−4−イル)アセトアミド(7.0mg,5.6%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 9.22 (s, 2H), 8.71 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.81 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.83 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 4.39−4.44 (m, 2H), 4.12 − 4.17 (m, 2H), 3.76 − 3.78 (m, 1H), 3.45 (s, 3H), 3.21 (s, 3H). MH+ 517.
実施例13 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
DCM(3mL)中の、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(85mg,0.34mmol)と、2’−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(100mg,0.34mmol)との混合物に、HOAT(46mg,0.34mmol)をRTにおいて加えた。その反応物を0℃に冷却した。続けて、ピリジン(54mg,0.68mmol)およびDIC(64mg,0.51mmol)をゆっくり滴下した。その反応物を30℃に加温し、18時間撹拌した。その反応物を水(5mL)および飽和NH4Cl(5mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EA(1:1)で溶出するクロマトグラフィーによって精製することにより、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)アゼチジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド(60mg,33.3%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6,) δ 11.49 (s, 1H), 9.22 (s, 2H), 8.70 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.84 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 5.81 (q, J = 8.0 Hz 1H), 4.42 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.13−4.17 (m, 2H), 3.75−3.78 (m, 1H), 3.45 (s, 3H), 3.18(s, 3H), 1.87(d, J = 8.8 Hz , 3H), MH+ 531.
実施例14 (S)−N−(2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド
DCM(3mL)中の、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(50mg,0.2mmol)および2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(58mg,0.2mmol)の溶液に、HOAT(27mg,0.2mmol)をRTにおいて加えた。その反応物を0℃に冷却した。続けて、ピリジン(32mg,0.4mmol)、次いで、DIC(38mg,0.3mmol)をゆっくり滴下した。その反応物を18時間、30℃に加温した。その反応物を水(5mL)および飽和NH4Cl(5mL)で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。残渣を、PE:EtOAc(1:1)で溶出する分取TLCによって精製することにより、(S)−N−(2’−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド(15mg,14.3%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6,) δ 9.22 (s, 2H), 8.70 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.83 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.81 (q, J = 6.8 Hz 1H), 4.02 (t, J = 5.6 Hz, 4H), 3.54 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 2.01−2.10 (m, 4H), 1.87(d, J = 6.8 Hz , 3H). MH+ 527.2.
実施例15 (2S)−N−(2’−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド
表題化合物を、実施例14の方法に従って20.7%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.42 (s, 1H), 9.16 (s, 2H), 8.66 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.79 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.81 (q, J = 7.2 Hz 1H), 3.86 (d, J = 11.2 Hz, 2H), 3.57 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 3.41 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 1.86 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 1.70 (t, J = 3.6 Hz, 2H), 0.75−0.80 (m, 1H), 0.15−0.18 (m, 1H). MH+ 489.
実施例16 (2S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
表題化合物を、実施例14の方法に従って39.1%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.46 (s, 1H), 9.22 (s, 2H), 8.69 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.81 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.82 (q, J = 7.2 Hz, 1H), 3.88−3.94 (m, 1H), 3.69−3.78 (m, 1H), 3.62−3.67 (m, 2H), 3.50 (s, 3H), 3.43−3.49 (m, 1H), 3.20 (s, 3H), 2.30−2.35 (m, 2H), 2.12−2.17(m, 1H), 1.87 (t, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 545.2.
実施例17 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド
DMF(8mL)中の1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(208mg,1.16mmol)の溶液に、K2CO3(320mg,2.32mmol)および(S)−2−クロロ−N−(2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド(400mg,1.16mmol)を加えた。その反応物をRTにおいて1時間撹拌し;次いで、氷水に注ぎ込んだ。固体沈殿物を回収し、MeOHを用いてトリチュレートすることにより、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド(220mg,45.5%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.38 (s, 1H), 9.17 (s, 2H), 8.68 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 5.36 (s, 2H), 5.12−5.14 (m, 1H), 4.67−4.71 (m, 1H), 3.45 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.00 (t, J = 12 Hz, 1H), 1.57−1.75 (m, 5H), 1.22−1.40 (m, 1H), 1.19 (d, J = 8 Hz, 3H). MH+ 491.
実施例18 2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2,2−ジメチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド
表題化合物を、実施例17の方法を用いて43.1%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (CDCl3) δ 9.59 (s, 1H), 9.19 (s, 2H), 8.60 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.77 (s, 2H), 5.18 (s, 2H), 3.77 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.64 (s, 3H), 3.47 (s, 3H), 1.94−1.98 (m, 4H), 1.604 (s, 6H). MH+ 491.
実施例19 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)アセトアミド
表題化合物を、実施例17の方法を用いて46.7%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.38 (s, 1H), 9.18 (s, 2H), 8.68 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 5.37 (s, 2H), 4.32 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 3.54−3.68 (m, 2H), 3.47 (s, 3H), 3.20 (s, 3H), 1.71−2.11 (m, 4H), 1.24 (d, J = 6.4 Hz, 3H). MH+ 477.
実施例20 2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
DMF(8mL)中の1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオン(312mg,1.73mmol)の溶液に、K2CO3(477mg,3.46mmol)、2−クロロ−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド(600mg,1.73mmol)を加えた。その反応物をRTにおいて1時間撹拌し;次いで、氷水に注ぎ込んだ。固体沈殿物を回収し、MeOHで洗浄することにより、2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド(130mg,16%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.43 (s, 1H), 9.18 (s, 2H), 8.67 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.78 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.82 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.31 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 3.53−3.68 (m, 2H), 3.46 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 1.71−2.19 (m, 7H), 1.23 (d, J = 6.4 Hz, 3H). MH+ 491.
実施例21 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
実施例20からのジアステレオ異性生成物混合物を、キラルカラム*を用いる超臨界流体クロマトグラフィーによって分離することにより、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミドを無色の液体として得た(保持時間6.0分)。MH+491。
*キラルHPLC分離条件 Chiral Technologies(West Chester,PA)製の2.1×25.0cm ChiralPak IC、50%の超臨界二酸化炭素および50%のDCM:ヘキサン:イソプロパノールの2:1:1混合物を用いる、80mL/分の流速。
実施例22 (R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
実施例20からのジアステレオ異性生成物混合物を、キラルカラム*を用いる超臨界流体クロマトグラフィーによって分離することにより、(R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミドを無色の液体として得た(保持時間4.8分)。MH+491。
*キラルHPLC分離条件 Chiral Technologies(West Chester,PA)製の2.1×25.0cm ChiralPak IC、50%の超臨界二酸化炭素および50%のDCM:ヘキサン:イソプロパノールの2:1:1混合物を用いる、80mL/分の流速。
実施例23 2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−メチルピペリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
表題の生成物を、調製26および実施例20の方法を用いて28.3%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (CDCl3) δ 9.73 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 9.17 (s, 2H), 8.56 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 7.6 Hz, 1H) 7.79 (d, J = 4 Hz, 1H), 5.76 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 3.60 (s, 3H), 3.47 (s, 3H), 3.02 (t, J = 12 Hz, 1H), 1.90 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.48−1.78 (m, 6H), 1.23 (d, J = 6.4 Hz, 3H). MH+ 505.
実施例24 (S)−2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド
(S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−アミン(249mg,0.971mmol)、2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸(436mg,1.943mmol)およびEDC(745mg,3.89mmol)をピリジン(2.43mL)に加えた。その反応物をRTにおいて2日間撹拌した。その反応物を濃縮し、残渣をクロマトグラフィーによって精製することにより、(S)−2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド(50mg,11%)を無色の液体として得た。MH+463。
実施例25 N−{2−[2−((2S)−2−メチルピロリジニル)ピリミジン−5−イル]ピリミジン−4−イル}−2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ(1,3,7−トリヒドロプリン−7−イル))アセトアミド
2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)酢酸(0.200g,0.829mmol)と、(S)−2’−(2−メチルピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(0.213g,0.829mmol)と、EDC(0.318g,1.658mmol)との混合物を、RTにおいてピリジン(4.15mL)に溶解した。その反応物を一晩撹拌し、次いで、水で希釈した。その反応物をEAで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をクロマトグラフィーによって精製することにより、N−{2−[2−((2S)−2−メチルピロリジニル)ピリミジン−5−イル]ピリミジン−4−イル}−2−(1−メチル−3−メチル−d3−2,6−ジオキソ(1,3,7−トリヒドロプリン−7−イル))アセトアミド(66.1mg 17%)を無色の液体として得た。MH+480。
実施例26 ((2S)−N−(2−(2−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ピリミジン(pyramidin)−5−イル)チアゾール−4−イル)−2−(3−メチル−2,6−ジオキソ−1−(2−オキソブチル)−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパンアミド
表題化合物を、実施例14の方法を用いて8%の収率で白色固体として調製した。1H NMR (DMSOd6) δ 11.47 (s, 1H), 9.20 (s, 2H), 8.69 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.35 (s, 1H), 7.82(d, J = 5.1 Hz, 1H), 5.83 (s, 1H), 4.01 (d, J = 12.0 Hz, 2H), 3.87 (d, J = 11.0 Hz, 2H), 3.46 (s, 3H), 3.18(s, 3H), 2.71 (d, J = 11.5 Hz, 2H), 1.87 (d, J = 6.6 Hz, 3H). MH+ 525.
実施例27 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)アセトアミド
THF(10mL)中の、2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)アセチルクロリド(250mg,0.97mmol)と、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(332mg,1.07mmol)との混合物に、0℃においてDIPEA(0.509mL,2.92mmol)を加えた。その反応物をRTにおいて18時間撹拌し、次いで、24時間還流した。その混合物をRTに冷却し、水(75mL)で希釈し、EAで抽出した(50mL×3)。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣を分取TLC(100%EAで溶出する)によって精製することにより、表題化合物(17mg,3.3%)を白色固体として得た。1H NMR (CDCl3) δ 9.6 (brd s, 1H), 9.26 (s, 2H), 8.61 (d, J = 4 Hz, 1H), 7.96−7.8 (m, 1H), 7.75 (s, 1H), 5.22−5.06 (m, 3H), 5.12 (t, 1H), 3.89−3.75 (m, 2H), 3.62 (s, 3H), 3.46 (s, 3H), 2.35−2.22 (m, 2H), 2.18−2.04 (m, 2H). MH+ 531.
実施例28 (R)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((R)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミド
表題化合物を、実施例2の方法を用いて調製することにより、表題化合物を白色固体として得た。1H NMR (DMSO−d6) δ 11.46 (s, 1H), 9.22 (s, 2H), 8.66 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.81 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.82 (q, J = 7.2 Hz 1H), 5.12 (t, 1H), 3.70 (m, 2H), 3.47 (s, 3H), 3.16 (s, 3H), 2.10 (m, 4H), 1.88 (d, J = 7.2 Hz, 3H). MH+ 545
実施例29 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−イル)プロパンアミドのプロセススケールの合成
工程1 (R)−メチル2−(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)プロパノエート
窒素雰囲気下の50Lの反応容器に、塩化メチレン(30L)を投入し、撹拌した。(R)−乳酸メチル(1.44kg,13.83mol)を加えた後、2,6−ルチジン(1.56kg,14.56mol)を加えた。その撹拌混合物を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−5〜5℃に冷却した。蠕動ポンプを用いて、内部温度を−5〜5℃に維持しつつ、その反応容器にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.9kg,13.83mol)を慎重に投入した。この添加には、1時間超が必要であった。添加が完了した後、温度を0〜5℃に維持しつつ、その反応物をさらに1時間撹拌した。その反応物を脱イオン水(10L)で慎重にクエンチし、激しい撹拌を1分間続けた。撹拌を停止し、相を分離させた。反応容器をアセトン(2×10L)、次いで、塩化メチレン(2×10L)で連続的に浄化しつつ、生成物を含む下(塩化メチレン)層を保持容器に移した。中間体のトリフレートを精製せずにそのまま使用した。
工程2 メチル(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエート
R−メチル2−(((トリフルオロメチル)スルホニル)−オキシ)プロパノエートの塩化メチレン生成物溶液を、清浄になった50Lの反応容器に戻し、混合物を窒素雰囲気下に置いた。その混合物を撹拌しながら、ドライアイス/アセトン浴を用いて0〜5℃に冷却した。冷却中に、テオフィリン(2.0kg,11.1mol)をその反応容器に投入した。内部温度を10℃未満に維持しつつ、その反応容器に、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(1.34kg,11.66mol)を、蠕動ポンプを介してゆっくり加えた。添加が完了した後、反応温度を0〜10℃で維持しつつ、その反応物を少なくとも1時間撹拌した。30分後に採取されたアリコートをHPLCによって試験し、その反応が完了したことを確かめた。その反応容器に氷冷0.2N HCl(10L)を加えることにより、反応をクエンチした。その混合物を1〜2分間激しく撹拌した。撹拌を停止し、相を分離させた。下の塩化メチレン生成物層を保持容器に移した。上の水層を取り出し、廃棄した。下の塩化メチレン層をその反応容器に戻し、それを1〜2分間激しく撹拌しながら、5%NaHCO3水溶液(10L)で抽出した。撹拌を停止し、相を分離させた。下の生成物層を保持容器に移した。上の水層を取り出し、廃棄した。下の塩化メチレン層を反応容器に戻し加えた。脱イオン水(10L)をその反応容器に加えた。その混合物を1分間激しく撹拌した。撹拌を停止し、相を分離させた。下の生成物層を保持容器に移した。上の水層を取り出し、廃棄した。塩化メチレン生成物を含む溶液をロータリーエバポレーターに移し、その塩化メチレンの大部分が蒸留されるまで、真空下で濃縮したところ(浴温度30〜40℃)、粗メチル(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエートが黒っぽい粘稠性のシロップ状物として残った。サンプルのHPLC解析によって、生成物およびその純度を確かめた。
工程3 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸
メチル(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパノエート(7.16kg,工程1および2の二つのバッチからの粗シロップ状物)をロータリーエバポレーターのバルブ(bulb)に移した。真空を適用し、塩化メチレンがそれ以上蒸留されなくなるまで、そのバルブを30〜40℃の浴温度で回転させた。別個に、3N HCl水溶液(32L,4.5当量,4kgのテオフィリンに基づく)を調製した。ロータリーエバポレーターのバルブからの残渣を50Lの反応容器に移した。そのバルブを少量の3N HClですすぐことにより、すべての粗エステルを取り出してその反応容器に移し、残りの3N HClをその反応容器に投入した。その反応混合物を70〜75℃において少なくとも16時間加熱した。16時間後の反応物の状態を、少量のアリコートのHPLC解析によって確認し、エステルの量が酸生成物に対して10%未満であったら、完了したと見なした。その混合物を、少なくとも16時間、撹拌しながら室温に冷却した。生成物をブフナー漏斗上に回収し、固体を氷冷脱イオン水で洗浄した(2×2L)。混合物が自由流動性の固体になるまで、固体を真空漏斗上で一晩乾燥した(2.95Kg)。粗生成物は、HPLC解析によると93.8%純粋であった。
粗(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸の一部(1kg)を22Lの反応容器に投入した。その反応容器に脱イオン水(9L,9体積)を加え、撹拌を開始した。そのスラリーを95℃に加熱し、すべての固体が溶解するまでその温度で保持した。その高温の混合物に、250mLの脱イオン水中の40g(4重量%)のNorite(登録商標)活性炭のスラリーを加え、撹拌を90〜95℃において1時間続けた。その高温の混合物を、22Lの容器からガラスマイクロファイバーフィルターを備えた濾過用漏斗を通して清浄な50Lの反応容器に慎重に移した。このプロセスを、1kgの上記粗酸を用いてさらに2回繰り返し、毎回、同じ50Lの反応容器に濾過した。その反応容器を、撹拌しながら30℃未満に冷却した。固体を濾過し、生成物を氷冷脱イオン水で洗浄した(2×2L)。生成物を、その濾過用漏斗上で少なくとも12時間乾燥し、次いで、それを真空オーブンに移し、一定重量になるまで乾燥することにより、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸を得た(2.25kg)。精製された生成物は、HPLCによると99.31%純粋であり、キラルHPLCによると100%の鏡像異性体純度を有した。テオフィリン出発物質に基づくと、純粋な(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸の全収率は、42.4%であった。
工程4 (S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン
機械的撹拌、還流冷却器、窒素入口、熱電対および外付けマントルヒーターが備え付けられた反応容器に、(S)−2−トリフルオロメチルピロリジン(1598g,11.49mol)、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(2000g,10.34mol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(9L)を投入した。その撹拌混合物を50℃に加温した。その混合物が、溶液になったら、ジイソプロピルエチルアミン(1633g,12.64mol)を加え、その反応温度を120℃に上げた。HPLCによるとその反応が完了するまで、その反応物を24〜48時間撹拌した。その反応物を70℃以上に冷却し、内容物を、水(90L)を含む第2の撹拌容器に移した。この混合物を撹拌し、20℃に冷却し、次いで、さらに5〜10℃に冷却し、この温度において2時間保持した。固体生成物を濾過により回収し、冷水で洗浄した(3×5L)。生成物を50℃の真空下で一定重量になるまで乾燥することにより、(S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(2898g,94.6%)を、HPLCによると約99%純粋な薄茶色固体として得た。
工程5 (S)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン
機械的撹拌、還流冷却器、窒素入口、熱電対および外付けマントルヒーターが備え付けられた反応容器に、ジオキサン(8L)を投入し、静かな撹拌を開始した。その反応物に、(S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(1600g,5.40mol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(2058g,8.11mol)および酢酸カリウム(1059g,10.81mol)を投入した。さらなるジオキサン(17L)を加え、その混合物に窒素ガスを通した。その反応物にビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド触媒(113.7g,0.161mol)を加えた。その混合物に窒素をなおも通しながら、その反応物を加熱した。反応温度が50℃に達したら、混合物に窒素を通さなかった。しかしながら、窒素雰囲気を維持し、冷却器を通じて排出した。反応温度を95〜100℃に上げて、約16〜24時間後にHPLC解析がその反応が完了したことを示すまで、この温度で維持した。その反応物を60℃以上に冷却し、38体積の水を含む反応容器に蠕動ポンプを介して移した。移送ラインを0.25〜1.50体積のジオキサンですすいだ。生成物の結晶化を促進するために適切であるとき、その反応容器にさらなる水を加えた。その混合物を10±5℃に冷却し、少なくとも1時間保持した。生成物をブフナー漏斗に回収し、冷水で洗浄し(3×2体積)、一定重量が達成されるまで、50〜60℃の真空下で乾燥した。(S)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジンを薄茶色固体,1964gとして得た。この固体は、12.7%の水を含み、HPLCによって測定したとき、およそ96%の純度であった。収率は、1715g,91.4%であると推定された。その材料は、残留水の除去なしで、さらなる反応に適していた。
工程6 (S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン
工程5からの湿った(S)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(1964g)を含水率についてアッセイし、化学量論をしかるべく調整した(1715g,5.0mol)。マントルヒーター、熱電対コントローラー、窒素入口、メカニカルスターラーおよび還流冷却器が備え付けられた反応容器にジオキサン(16L)を加えた。化合物(S)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(1715g,5.0molに補正された)、4−アミノ−2−クロロピリミジン(648g,5mol)および炭酸ナトリウム(962g,9.08mol)をその反応容器に加えた。さらなるジオキサン(8L)を加える。その溶液に窒素ガスを約30〜60分間通して、冷却器から排出させた。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(230g 0.2mol)を加え、ジオキサン(1L)を用いて残留触媒を反応容器にすすぎ入れた。加熱を開始し、混合物が約50℃に達するまで、窒素バブリングを続けた。この時点において、窒素チューブを溶液の表面より上に引き上げたが、窒素窒素(nitrogen the nitrogen)雰囲気を維持して、冷却器から排出させた。温度を85〜90℃に上げ、HPLCによって測定したとき、その反応が完了するまで(1〜4時間)、維持した。その反応物を60n℃以上に冷却し、温度を維持しつつ、水(18L)を加えた。その反応混合物を、高温の状態でGF−Bガラス繊維紙で濾過してフィルターボトルに入れた。濾液を温かいまま反応容器に移し、必要に応じて1:1ジオキサン/水(0.5〜3L)ですすぎ、反応容器のジャケット温度を45℃に設定した。次いで、その反応容器に水(36L)を移し、加えている間、温度を維持した。その混合物を5±5℃にゆっくり冷却し、結晶化を最大にするために必要なとき、その反応容器にさらなる水を加えた。温度を少なくとも2時間、5±5℃で維持し、その後、生成物をブフナー漏斗に回収し、冷水で洗浄した(3×3.5L)。一定重量が達成されるまで、生成物を50〜60℃の真空下で乾燥することにより、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(1073g,70%)をオフホワイトの固体として得た。
この粗生成物の一部(754g,2.43mol)を3N HCl(15L)でスラリー化し、濾過することにより、不純物を除去した。その酸性溶液をMTBE(4L))およびヘプタン(4L)で抽出した。これらの有機抽出物を廃棄して処分した。その酸性溶液を、50%水酸化ナトリウムを用いてpH9〜10に塩基性化した。その混合物を冷却し、沈殿物を濾過により回収した。固体を冷水で洗浄し、真空下で乾燥することにより、オフホワイトの固体,695g,92%回収率を得た。この材料中の残留パラジウムは、782ppmであった。この生成物を50%アセトニトリル水溶液(8L)から再結晶した。その混合物を冷却し、生成物を濾過により回収し、冷溶媒ですすぎ、真空下で乾燥することにより、401.7g(最初の754gの53%)のオフホワイトの固体を得て、それは、この時点で181ppmの残留パラジウムを含んでいた。このオフホワイトの固体をTHFに溶解し、パラジウムスカベンジャーSiliCycle(登録商標)SiliaMetS(登録商標)Thiol樹脂(25g)で処理した。溶媒を除去することにより、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミンを白色固体として得て(390g,97%回収率)、それは、HPLCによると97%超純粋であり、10ppm未満の残留パラジウムを含んでいた。
工程7 (S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミド
撹拌機、窒素入口および冷却器を備えた100Lの反応容器に、ジクロロメタン(20L)、(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)プロパン酸(1.0kg,3.96mol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(14.5mL,0.2mol)を加えた。さらなるジクロロメタン(10L)を加え、撹拌混合物を10〜15℃に冷却した。温度を25℃未満に維持しつつ、塩化オキサリル(1.51kg,11.9mol)をゆっくり加えた。その反応物を25℃において30〜60分間撹拌した。窒素をブリードしながら真空下のその反応物から溶媒を蒸留し、必要に応じて反応容器のジャケット温度を35℃に上げた。さらなるジクロロメタン(20L)を加え、その反応物から溶媒を再度蒸留した。ジクロロメタンの添加および蒸留を繰り返した。テトラヒドロフラン(10L)を加え、これにより、白色からベージュのスラリーが得られた。その反応物に、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(1.07kg,3.45mol)を加え、その添加容器をテトラヒドロフラン(1.5L)ですすいで反応混合物に入れた。その反応物を≦0℃に冷却し、2,6−ルチジン(0.964L,8.28mol)を加え、反応温度を5℃未満に維持した。HPLCによってその反応が完了したと考えられるまで、その反応物を約0℃において撹拌した(約2%の(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミンが残っていた)。約14時間後、反応温度を15℃未満に維持しつつ、その反応物を0.2N HCl(40L)および水(20L)で慎重にクエンチした。固体生成物を回収し、脱イオン水で2回洗浄した。固体を、一定重量になるまで、50〜60℃の真空下で乾燥することにより、1,473g(78%)の(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミドを得た。この生成物材料を、同様の反応からの1,435gの生成物と合わせ、2%エタノール水溶液(86.8L)から再結晶することにより、2,250gの精製された(S)−2−(1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−プリン−7(6H)−イル)−N−(2’−((S)−2−(トリフルオロ−メチル)ピロリジン−1−イル)−2,5’−ビピリミジン−4−イル)プロパンアミドをオフホワイトの固体として得た。
実施例30 (S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジンからの(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミンのテレスコーピング合成
ジオキサン(17.25L)が投入された反応容器に、(S)−5−ブロモ−2−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリミジン(1500g,5.066mol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(1937g,7.628mol)および酢酸カリウム(998g,10.17mol)を加える。さらなるジオキサン(6.25L)を加え、30〜60分間静かに撹拌しながら、その混合物に窒素ガスを通した。ビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド触媒(107g,0.152mol)を、ジオキサンですすぎながら(0.5L)加え、その反応物を50℃に加熱した。この時点において、その混合物に窒素を通さなかったが、窒素雰囲気を維持し、冷却器から排出させた。反応温度をさらに95〜100℃に上げ、HPLC解析によって示されるとき、その反応が完了するまで(約24時間)、この温度を維持した。
次いで、その反応物を60℃に冷却し、4−アミノ−2−クロロピリミジン(623g,4.81mol)、炭酸ナトリウム(975g,9.2mol)および水(7.5L)を加えた。その溶液に窒素ガスを約30〜60分間通し、冷却器から排出させた。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(129g 0.11mol)を加え、残留触媒をジオキサン(0.5L)ですすいで反応容器に入れた。加熱を再開し、混合物が約50℃に達するまで、窒素バブリングを続けた。この時点において、窒素チューブを溶液の表面より上に引き上げたが、窒素雰囲気を維持して、冷却器から排出させた。温度を85〜90℃に上げ、HPLCによって測定したとき、その反応が完了するまで(1〜24時間)、維持した。60℃以上に冷却した後、その温度を維持しつつ、水(15L)を加え、その反応混合物をGF−Bガラス繊維紙で濾過してフィルターボトルに入れた。濾液を温かいまま反応容器に移し、必要に応じて1:1ジオキサン/水(0.5〜3L)ですすぎ、反応容器のジャケット温度を45℃に設定した。水(42L)を反応容器に加え、その混合物を5±5℃にゆっくり冷却した。結晶化を最大にするために必要なとき、その反応容器にさらなる水を加え、温度を少なくとも2時間、5±5℃で保持した。次いで、生成物をブフナー漏斗に回収し、冷水で洗浄し(3×3.5L)、次いで、一定重量が達成されるまで、50〜60℃の真空下で乾燥することにより、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミン(1266g,70%)をオフホワイトの固体として得た。この生成物を、実施例29(工程7)に記載されたように精製することにより、(S)−2’−(2−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)−[2,5’−ビピリミジン]−4−アミンを、記載された純度と同様の純度で得た。
本発明の化合物の特徴付け
本発明の化合物は、本明細書中ではそれらのそれぞれの実施例の番号によって言及される。例えば、実施例1に記載された方法によって生成された化合物は、「実施例1の化合物」、「実施例1」または「化合物1」と称され得る。三つすべての名称が、本明細書中で交換可能に使用され得る。
実施例31 式(I)の化合物のスラリー処理から得られる固体結晶形の特徴付け
本発明のある特定の化合物は、溶媒または溶媒の組み合わせ(例えば、水、エタノールまたはそれらの組み合わせ)の中でのスラリー処理後に溶媒和結晶形を生成した。例えば、化合物2は、室温においてエタノール、または最大3%の水を含むエタノール水溶液混合物においてスラリー化したとき、本明細書中でA形と称される溶媒和物結晶形を生成した。そのスラリーから得られた固体結晶性生成物を、粉末X線回折(XRPD)を用いてインデックスすることにより、単位格子を定義した(図1)。XPRDピーク実測値を下記の表1に列挙する。
表1 エタノールスラリーから得られた固体結晶形の化合物2(A形)の粉末X線回折ピーク実測値
スラリー処理から得られた式(I)の化合物の結晶を乾燥すると、別の多形を生成することができた。例えば、97%エタノール/3%水におけるスラリー処理から得られた化合物2の結晶の真空処理(−80℃で1日間)によって、本明細書中でB形と称される、安定した無水固体結晶形が生成された。この得られた結晶形を、XRPD、偏光顕微鏡法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)および動的蒸気収着(DVS)ならびにDVS後のXRPDをはじめとした種々の方法を用いて特徴づけた。
図2は、化合物2の無水固体結晶形のサンプルのXRPDパターンを示しており、ピークの実測値を下記の表2に列挙する。このサンプルのインデックスの成功は、それが単一の結晶相から構成されていることを示唆する。この固体結晶形を周囲条件において3ヶ月間貯蔵した後、そのサンプルを再度XRPD解析に供した。得られたXRPDパターンは、図2に示されている元のインデックスされたパターンと合致した。
表2 エタノールスラリー由来の無水固体結晶形の化合物2(B形)の粉末X線回折ピークの実測値
示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)も無水固体結晶形の化合物2(B形)に対して行った;得られたデータを図3および図4に示す。DSCは、48.5℃にピーク最大値を有する小さい広範な吸熱を示し、これは、しばしば揮発事象を示す;しかしながら、TGAには、対応する重量減少事象が存在しない。48.5℃における広範な吸熱は、貯蔵中のサンプル中に吸収された水が存在することを示唆する可能性があり、これは、水分収着(DVS)データと一致する。DSCは、185.4℃に開始すると算出される広範な吸熱も示し、その吸熱は、おそらく融解事象に対応し、0.1%の重量という小幅なTGA重量減少と一致することから、そのサンプルが、少量の未同定の揮発性成分を含み得ることが示唆される。
無水固体結晶形の化合物2(B形)の動的蒸気収着(DVS)解析も行った。得られた等温線プロットは、図5に示されており、5%相対湿度(RH)の平衡状態において0.2%の重量減少の後、無視できるヒステリシスを伴う2.7%の重量の可逆的な吸着/脱着を示す。この挙動に基づくと、B形は、可変性の水和物であるとみられ、その水和物中の含水量は、周囲の相対湿度に依存する。まとめると、XRPD、DSC、TGAおよびDVSデータはすべて、B形が、乾燥すると無水になる、結晶性の可変性の水和物材料であることと一致する。
エタノールまたはエタノール水溶液混合物から得られた化合物2の結晶は、長く細い針状晶を形成する。そのような結晶性材料のXRPDパターンは、優先配向の現象によって複雑になることが多く、それは、主に2次元で整列する結晶に起因する。したがって、再結晶されたサンプルから得られる式(I)の化合物、例えば、化合物2のXRPDパターンは、上に記載されたスラリー実験から得られるものと異なって見える。粒径を減少させると、優先配向アーチファクトの規模が減少し得ることが知られている。図6は、エタノールから再結晶され、乾燥された固体結晶形の化合物2(B形)の、10ミクロン未満のd90値に微粒子化する前(薄灰色の線)および後(暗灰色の線)のXRPDパターンの例を示している。
実施例32 式(I)の化合物の動力学的溶解度の計測
参照により本明細書中に援用されるKerns,E.H.,J Pharm Sci(2001)90:1838−1858において概要が述べられ、下記に記載される手順を用いて、式(I)の化合物の溶解度を試験した。式(I)の化合物に対する溶解度についてのデータは、この方法によって得られ、表3に含められた。以下のカラム寸法:4.6×30mm,3.5μmを有するXbridge Shield RP18カラムを用いるHPLCによって、クロマトグラフィーデータを得た。移動相は、0.1%(v/v)で加えられたトリフルオロ酢酸(MPC)を含む脱イオン水(MPA)およびHPLCグレードのアセトニトリル(MPB)からなった。移動相の流速は、2.5mL/分であり、カラムおよびサンプリングの操作は、外界温度で行われた。UV検出は、280nmに設定した。溶解度の測定のために使用されたすべてのサンプルに対して、使用された移動相の勾配は、表4に示されているとおりである。
表3 選択された式(I)の化合物に対する例示的な溶解度:
式(I)の化合物の解析用のサンプルは、式(I)の化合物の原液を緩衝液に入れることによって、%v/v=1/19(すなわち、190μLの緩衝液に10μLの原液)で調製された。三つの緩衝液系を調製した:5%デキストロース水溶液中の50mM酢酸ナトリウムから調製されたpH4.0、1:1の比の滅菌された注射用水と5%デキストロース水溶液における75mMリン酸ナトリウムから調製されたpH7.4、および1:2の比の滅菌された注射用水と5%デキストロース水溶液における50mM炭酸水素ナトリウムから調製されたpH9.0。それらのサンプルを、300rpmのマイクロプレート振盪機上で外界温度において24時間インキュベートした。インキュベーションの後、それらのサンプルを、外界温度において5分間13k rpmで遠心した。得られた上清(supernantant)をHPLC解析のために抽出した。
表4 溶解度測定のために使用された移動相の勾配
例えば、本発明の化合物は、許容され得るレベルの薬物が治療標的に到達するのを可能にし得る。
化合物2の微粒子化された製剤の溶解度を、McIlvainクエン酸−リン酸緩衝液レシピ(0.2M Na2HPO4および0.1Mクエン酸)をpH2.2から8.64まで用いてさらに評価した。サンプルを30時間撹拌し、サンプリングし、遠心し、UPLCによって解析した。最も高い溶解度は、pH8.6および3.1において見られたが、pHの効果は、0.2〜1.3mg/mlの範囲であり狭かった。結果を図10に示す。
絶食時模擬腸液(fasted−state simulated intestinal fluid)(FaSSIF)アッセイにおいても溶解度を測定した。簡潔には、化合物2をFaSSIF媒質(胆汁酸塩、NaOH(0.420g)、NaH2PO4(3.438g)、NaCl(6.186g)、25℃においてpHを6.5にし、1Lの体積にした)に加え、30時間撹拌し、サンプリングし、遠心し、UPLCによって解析した。このFaSSIFモデルにおける溶解度は、1.19mg/mlであると測定された。
溶解度を、模擬胃腸液(SGF)(25℃においてHCl 0.1N)においてさらに評価した。簡潔には、化合物を30時間撹拌し、サンプリングし、遠心し、UPLCによって解析した。SGFにおける溶解度は、1.05mg/mlであると見出された。これらの研究の結果は、化合物2の溶解度が、媒質のpHに有意に依存しないが、胆汁酸塩の存在に基づいて、溶解度がいくらか上昇し得ることを示唆する。
通常のリンガー液における溶解度についても、本発明の化合物を試験した。簡潔には、化合物の標準的な範囲の体積の10mM DMSO原液を通常のリンガー液(145mM NaCl、4.5mM KCl、2mM CaCl
2、1mM MgCl
2、10mM HEPES、10mMグルコース;室温においてpH7.4)に溶解することによって、化合物の溶解度を測定した。室温における40分間のボルテックスおよびインキュベーションの後、溶液を濾過し、アセトニトリルでクエンチし、液体クロマトグラフィーによって解析した。検量線と比較することによって、溶解限度を測定した。溶解限度は、31.3μM超と測定された。溶解度は、試験された最後の二つの希釈度の間に観察された増加が、2倍超である場合、「超」として報告される。表5は、試験された化合物に対して得られた値を示している。
表5 通常のリンガー液における式(I)の化合物の溶解度
ヒト、ラット、イヌおよびカニクイザルの血漿タンパク質への化合物2の結合を、平衡透析アプローチを用いて試験した。この方法では、遊離化合物を、タンパク質が結合した化合物から半透膜の透析によって分離する。1μMの濃度において、化合物2は、ヒト血漿タンパク質に対して98.5%の結合、ラット血漿タンパク質に対して95.3%の結合、イヌ血漿タンパク質に対して94.5%の結合およびカニクイザル血漿タンパク質に対して98.0%の結合を示した(表6)。
1μMの濃度においてタンパク質の結合を試験した。ヒト、カニクイザル、イヌおよびラットのプールされたK2EDTA血漿を解凍し、4℃、2000×gにおいて10分間遠心することにより、微粒子を除去し;上清の上部における任意の脂質を吸引によって除去した。その血漿を、使用する前に10分間、37℃に加温した。試験化合物を、ポリプロピレンプレート内の2mlの血漿に入れて、1μMという最終濃度にした。加えられた血漿の三つ組の400μlアリコートを、Thermo RED透析ユニットに移し、600μlのPBS緩衝液に対して透析した。そのREDデバイスを、Boekel Jitterbug 130000を用いて静かに振盪しながら37℃においてインキュベートし;また、プレートを光から保護した。6時間の透析の後、三つ組の50μlアリコートをREDプレートから取り出し、必要に応じて、PBS緩衝液またはブランク血漿のいずれかとマトリックスを合致させ、内標準を含む4体積のACNでクエンチした。次いで、抽出されたサンプルを4℃、2000×gにおいて5分間遠心した。上清(50μl)を取り出し、100μlの水で希釈した後、LC/MS/MSバイオ分析を行った。
表6 化合物2およびワルファリンと血漿タンパク質との結合の比較
アルブミンおよび血漿の存在下のIC50阻止の変化も調べた。薬物の薬理学的効果は、未結合の血漿レベルと相関すると仮定され、これは、「遊離薬物仮説」として公知である。この研究の目的は、生理的に妥当な濃度のアルブミンおよび血漿の存在下の化合物2によるヒトTRPA1(hTRPA1)の阻止に対するIC50の変化を推定することであった(表7を参照のこと)。技術的な問題に起因して、ヒト型のTRPA1を用いて、すべての種におけるタンパク質の結合を評価した。del Camino,D.ら、J Neurosci 74(2010)30:15165に記載されているようなホールセルパッチクランプ法を用いて、ヒト血漿(hPlasma)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ラット血漿(rPlasma)、ラット血清アルブミン(RSA)、イヌ血漿およびヒツジ血清アルブミン(sheepSA)をはじめとした様々な種由来の1%(w/v)血清アルブミンまたは25%(v/v)血漿の存在下において、カラシ油中の活性成分であるアリルイソチオシアネート(AITC)による活性化時のhTRPA1を通過する電流を計測した。化合物2を、DMSO中の10mM原液からDMSO中の10および100μMにさらに希釈し、次いで、リンガー液に、表7および表8において言及される濃度に希釈した。
その後の化合物2の投入は、hTRPA1の用量依存的および可逆的な遮断をもたらした。25%(v/v)ヒト血漿(hPlasma)の存在下において、hTRPA1電流は、95±2nMのIC50で阻止され、これは、血清の非存在下のIC50よりも14倍高い(表8を参照のこと)。ラット血漿(rPlasma)およびラット血清アルブミン(RSA)の存在下のhTRPA1において行われた実験は、化合物2によってそれぞれ68±8nMおよび95±9nMの阻止の効力がもたらされたことから、ヒト血漿で観察されたものと同様の程度のタンパク質結合が示唆される。化合物2による阻止に対するIC50は、イヌ血漿の存在下においていくらか高かった(221±54nM)。1%(w/v)ヒツジ血清アルブミン(SheepSA)の存在下において、hTRPA1電流は、70±10nMのIC50で阻止された。化合物2による阻止と洗浄における逆転の両方が、2〜3分以内に完了した。これらの実験は、より多くの遊離薬物が標的と相互作用するのに利用可能であるので、化合物2が、以前に特定された化合物よりも低い血漿レベルにおいて薬理学的効果を発揮し得ることを示唆している。
IC
50のシフトが血漿の存在下において観察されることに基づくと、化合物2が、試験された四つの種の血漿タンパク質に対して90〜97%の範囲で有意な結合を示すと結論づけられ得る。これは、同様の効力の過去の化合物にまさる改善に相当する。
表7 アルブミンおよび血漿における化合物2 hTRPA1 IC
50測定
表8 様々な哺乳動物起源のhTRPA1に対する化合物2のIC
50の測定
代謝安定性
式(I)の化合物の代謝安定性を、標準的な肝ミクロソームアッセイによって測定した。簡潔には、DMSOに溶解した試験される化合物をヒト、イヌまたはラットの肝ミクロソームに加えることによって、代謝安定性を試験した。1μMの試験化合物という開始濃度でアッセイを行った。37℃においてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼ(NADPH)再生成分を加えることによって、その反応を惹起し、その時点において、直ちにアリコートを氷冷アセトニトリル/メタノール/水溶液中でクエンチした。反応混合物を、振盪機上において37℃でインキュベートし、さらなるアリコートを7、15、30および60分後に採取した。クエンチおよび遠心分離の後、サンプルをHPLC/MS/MSにおいて解析した。結果を下記の表9、表10および表11に示す。
表9 ヒト肝ミクロソームにおける化合物の半減期および肝クリアランス
表10 イヌ肝ミクロソームにおける化合物の半減期および肝クリアランス
表11 ラット肝ミクロソームにおける化合物の半減期および肝クリアランス
バイオアベイラビリティ
ラットにおける初期バイオアベイラビリティ研究を、本発明の化合物の溶液を用いて行った。化合物を、適切な賦形剤における溶液として経口投与によって送達した。製剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4%DMSO、10%Solutol HS−15および86%水または4%DMSO、5%Tween、25%Cremophor EL。目標濃度は、代表的には、1mg/mLであり、経口胃管栄養法によって非絶食ラットに投与した。絶対的バイオアベイラビリティは、非静脈内の用量補正された曲線下面積(AUC)を静脈内の用量補正されたAUCで除算した値である。経口経路(PO)によって投与された薬物に対するFを算出するための式を以下に示す。
%F=AUC PO×用量IV/AUC IV×用量PO
試験された化合物に対するラットのそれぞれのバイオアベイラビリティを表12に示す。
表12 非絶食ラットにおける化合物のバイオアベイラビリティ
さらなる研究を、微粒子化された化合物2を用いてラット、イヌ(ビーグル)およびカニクイザルにおいて行った。動物に、1mg/mLという目標濃度で注射用水中の0.5%メチルセルロースにおける懸濁液として製剤化された、10mg/kgの経口量の化合物を投与し、ラットまたは絶食イヌにおいては経口胃管栄養法によって、および絶食カニクイザルにおいては経口送達によって、10mL/kgの用量体積を投与した。これらの研究におけるラットに対する%Fは、85%であり、イヌに対しては36%であり、サルに対しては19%であった。図11は、これらの種に対する薬物動態学的プロファイルを示している。
化合物2のバイオアベイラビリティを特徴づけるために、いくつかのインビボ研究を行った。化合物2の
Sprague−Dawleyラットにおいて、10mg/kg〜1000mg/kgの単回の経口量の化合物2を一連の実験において比較した。これらの研究において使用された化合物2は、エタノールから再結晶され、微粒子化された。曲線下面積(AUC)および最大血漿濃度(Cmax)に基づく曝露量は、用量とともに1000mg/kgまで増加した。
三つの研究をイヌ(ビーグル)において行った。一つの研究では、3匹の絶食イヌに、10mg/kgの微粒子化された化合物2の懸濁液を胃管栄養法によって投与した。血液サンプルを、投与前ならびに投与の0.25、0.50、1、2、4、6、8、12および24時間後にこれらのイヌから回収した。血液サンプルを解析して、LC/MS/MSによって化合物2の血漿レベルを測定した。その後の研究では、10、100、300、600または1000mg/kgの用量レベルで絶食イヌに投与された、微粒子化された化合物2(エタノールから再結晶されたもの)の懸濁液の単回の経口投与後に薬物動態学的(PK)パラメータを測定した。血液サンプルを、投与前ならびに投与の0.5、1、2、4、8、12、24および48時間後に採取し、解析して、化合物2の血漿レベルを測定した。AUCおよびCmaxに基づく曝露量は、用量とともに600mg/kgまで増加した。
化合物2の懸濁製剤のPKプロファイルおよびバイオアベイラビリティを測定するために、三つの研究を絶食カニクイザルにおいて行った。3頭のサルに、10mg/kgの微粒子化された化合物2を含む懸濁液を経口胃管栄養法によって投与した。投与前ならびに投与の0.25、0.50、1、2、4、6、12および24時間後に、サルから採血した。化合物2の血漿レベルをLC/MS/MSによって測定した。より高レベルの化合物2を経口懸濁液として絶食サルに投与したときのPKプロファイルを評価するために、さらなる研究を行った。投与前および投与の24時間後まで、血液サンプルを回収した。300mg/kgの化合物2を投与されたサルからは、さらに48時間後の血液サンプルを回収した。化合物2の血漿レベルをLC/MS/MSによって測定した。AUCおよびCmaxに基づく曝露量は、用量とともに1000mg/kgまで増加した。
化合物2のカプセル製剤および懸濁製剤のPKパラメータを比較するために、別の研究を行った。すべてのサルに、250mgの化合物2を投与した。二つの群にカプセル製剤を投与した:一つの群は絶食であり、もう一つの群は、自由に摂食可能であった。懸濁製剤を投与する動物には、経鼻胃管を用いて投与し、絶食させた。図12に見られ、下記の表13に要約されるように、カプセル製剤は、懸濁剤よりも高いバイオアベイラビリティに関連するとみられたが、数字上の差は小さかった。カプセル製剤のPKプロファイルを、絶食サルと摂食サルの両方において比較したとき、化合物2のカプセルのバイオアベイラビリティは、絶食サルにおいて数値的に高かった。
表13 化合物2:カプセル製剤および懸濁製剤のPKパラメータの比較
実施例33 TRPA1イオンチャネルの阻害を計測するための方法
参照により本明細書中に援用されるdel Caminoら、J Neurosci(2010)30(45):15165−15174に概要が述べられ、下記に要約されている手順を用いて、表14に示されているデータ表に提供されているヒトTRPA1のインビトロ阻害を計測することによって示されたように、式(I)の化合物は、TRPA1チャネルを阻害する。TRPA1の阻害に対するデータは、この方法によって、示されている式(I)の化合物に対して得られ、関連性のあるデータが下記の表14に含められている。すべての電流が、EPC−9およびEPC−10増幅器ならびにPatchmasterソフトウェア(HEKA)を用いて、ホールセル配置で記録された。パッチピペットは、1.5〜3Mの抵抗を有し、直列抵抗の最大75%が補償された。標準的なピペット溶液は、140mM CsAsp、10mM EGTA、10mM HEPES、2.27mM、20 MgCl2、1.91mM CaCl2および最大0.3mM Na2GTPからなり、pHは、CsOHで7.2に調整された。さらに、145mM CsCl、10mM HEPES、10mM EGTAおよび最大0.3mM Na2GTPおよび1mM MgCl2を含む溶液(CsOHでpH7.2に調整)が使用され得る。標準的な浴溶液は、150mM NaCl、10mM HEPES、10mMグルコース、4.5mM KCl、1mM EGTA、3mM MgCl2を含み、pHは、NaOHで7.4に調整した。いくつかの場合では、EGTAの代わりに2mM CaCl2を加え、MgCl2の濃度を1mMに低下させた。
−60mVにおいて連続的に記録するか、または電圧ランプを4秒ごとに0mVの保持電位から適用することによって、データを収集した。連続的な記録は、400Hzにおいて行い、提示のために10Hzにおいてオフラインでデジタル的にフィルタリングした。電圧ランプを400msにわたって−100mVから100mVまで適用し、データを10kHzにおいて収集し、302.9kHzにおいてフィルタリングした。内向き電流および外向き電流を、それぞれ−80mVおよび80mVにおけるランプから解析した。液体接合部電位補正は用いなかった。
重力送りの連続的な局所灌流システムを用いて、溶液を切り替えた。迅速な温度変化を達成するために、二つの温度制御システムおよび灌流システムを同時に使用した。22℃に等しいかまたはそれより高い温度の場合、Warner Instrumentsのバイポーラ温度コントローラー(TC−344B)およびインラインヒーター(SHM−8)を使用した。22℃未満の温度の場合、Warner Instrumentsの温度コントローラー(CL−100)および熱冷却モジュール(TCM−1)を使用した。サーミスター(Warner Instruments,TA−29)を用いて温度を確認し、記録された細胞における温度は、記録された温度の+/−2℃以内であると推定された。
表14は、上に記載されたインビトロアッセイから得られたデータを示している。ホールセルパッチ配置におけるヒトTRPA1(「hTRPA1」)に対する式(I)の化合物のアンタゴニスト作用を、上に記載されたインビトロアッセイプロトコルを用いて評価した。
表14 ヒトTRPA1に対する式(I)の化合物のアンタゴニスト作用
実施例34 寒冷過敏症に対する効果
本発明の実施形態は、炎症性疼痛の処置において効果的であり得る。化合物2を、CFA誘発性疼痛試験法によって試験した。化合物2を、経口投与(PO)のために、4%DMSO、10%Solutol、86%DWI,pH5.9中の透明の溶液として製剤化した。
簡潔には、0.1mLのフロイント完全アジュバント(CFA)を右後足に投与することによって、後足を低温に対して感作する(異痛症(allodynic))。3日後、CFAを注射された足を動物が持ち上げるのに要した時間を、注射されていない正常な左後足と比べて、記録する。動物を低温プレート(1℃)の表面上に置き、その動物が、ひるむかまたは足をプレートから持ち上げることによって不快感を示した瞬間に操作者は試験を停止する(足引っ込め潜時、すなわちPWL)。組織損傷を回避するために、最大カットオフ時間は、5分とする。異痛症である動物(最初の三つの疼痛行動に対する平均PWLは、CFAを注射された後足に対しては<150秒:正常な足とCFAを注射された足との間に約≧50%の差)をこの研究に含め、続いて、処置群にランダム化する。翌日、盲検条件下においてそれらの動物に投薬する。1〜2時間の前処置時間の後、投与後のPWLの記録を再度取る。薬物処置動物におけるPWLを、ビヒクルを投与された動物と比較することによって、薬物処置の有効性を評価する。
図7および表15に示されているように、化合物2は、0.3〜10mg/kgの経口量の投与後、寒冷過敏症を弱めた。正の比較物質TRPA1アンタゴニストである化合物Aもまた、足底内注射によって送達された150mg/kgという高用量において、寒冷過敏症を低減した。重要なことには、経口的に送達されたビヒクル(4%DMSO、10%Solutol、86%DWI)は、投与前のベースラインの測定値と比べて、足引っ込め潜時に対して影響を及ぼさなかった。
表15 様々な経口投与量の化合物2による寒冷過敏症の減弱
表16は、化合物2および化合物Aの平均血漿レベルを要約している。化合物2の用量にほぼ比例した曝露量が、試験された用量範囲全体にわたって観察された。化合物2の血漿結合の減少は、化合物Aと比べて、被験体に対する化合物2のバイオアベイラビリティの改善を示唆している。
表16 化合物2および化合物Aの血漿レベル
ビヒクル群と処置群との間に行動の差は無かった(表17を参照のこと)。しかしながら、正の比較物質である化合物Aで処置された5/10匹の動物において嗜眠/動作緩慢が顕著であったことから、化合物2は、有意な鎮静作用を誘導しないことが実証された。
表17 化合物2の投与時の動物の行動の検査
開示された方法を用いて、化合物4も試験した。化合物4を、0.5%メチルセルロース中の懸濁液として製剤化し、表18に示される用量で投与した。
表18 様々な経口投与量の化合物4による寒冷過敏症の減弱
さらなる研究において、本発明の化合物を、低用量において炎症性疼痛の処置に対する有効性について試験した。上に開示された方法を用いて、化合物2を0.1〜1mg/kg POの範囲で投与した。正の比較物質TRPA1アンタゴニストである化合物Aも、150mg/kg IPの用量で試験した。化合物2を、10ml/kgの投与体積での経口投与(PO)のための、4%DMSO、10%Solutol、86%DWI,pH5.9中の透明の溶液として製剤化した。経口薬物送達は、20ゲージの1.5インチ経口胃管栄養針および5cc注射器を用いて達成された。試験の2時間前に、摂食ラットに、0.03、0.1、0.3もしくは1mg/kgの化合物2またはビヒクルの単回の経口胃管栄養を投与した。
表19および図13に見られるように、化合物2は、0.1、0.3および1mg/kg POで投与されたとき、足引っ込め潜時を計測することによってアッセイされたとき、CFA誘発性の寒冷過敏症の有意な逆転を示した。0.03mg/kgの用量レベルは、統計学的に有意な効果を発揮しなかった。正の比較物質であるプロトタイプのTRPA1アンタゴニスト化合物Aもまた、150mg/kg IPで投与されたとき、寒冷過敏症の有意な逆転を示した。
表19 化合物2によるCFA誘発性寒冷過敏症の逆転
要約すると、これらの研究は、本発明の化合物が、経口投与後に、炎症性疼痛の処置において効果的であるという潜在性を有することを示唆している。
実施例35 ホルマリンモデル
化合物2を、Dubuissonら、Pain(1977)Dec;4(2):161−74が報告したホルマリン誘発疼痛試験において試験した。Dubuissonらは、ラットおよびネコにおいて疼痛および痛覚消失を評価するための方法を報告した。簡潔には、希ホルマリン(50μLの3%ホルマリン)を、ラットの後足の足底表面に注射する。その動物を、直ちに観察領域(標準的なPlexiglassラットケージ)に戻し、その時点において、その動物が二つの異なる相において疼痛行動(ひるむ、注射された足/脚を舐める、噛む)を示すのに費やした時間を、訓練された観察者が記録する。初期相(I相:0〜5分)は、ホルマリンおよび機能的TRPA1による求心性線維の直接的な活性化に依存する有意な構成要素を有すると考えられる(McNamaraら、2007)。特定の研究において疼痛行動を数えるのに関与する個体は、処置群を把握していない。
研究者は、ラットのホルマリンモデルにおいて、疼痛行動に対する1、3および10mg/kgでの化合物2の経口投与を研究した。化合物2を、4%DMSO、10%Solutol HS15、86%WFI中の溶液として調製した。ビヒクル(4%DMSO、10%Solutol、86%WFI)、または1、3もしくは10mg/kgの化合物2を、足底内ホルマリンの1時間前に動物に経口投与した。図14は、最初の2分(左)において観察された疼痛行動の持続時間または研究時間全体;5分にわたる疼痛行動の持続時間(右)を示している。(1群あたりn=8)(*=p<0.05、**=p<0.01、***p<0.001:片側T検定)
化合物2の経口投与は、表20および図14に見られるように、3および10mg/kgにおけるホルマリンモデルの1相において侵害受容応答を有意に減少させた。ビヒクルで処置された動物と比べて、1mg/kgの化合物2で処置された動物は、足底内ホルマリン投与後の0〜2分において疼痛行動の持続時間を約14%減少させたが、この減少は、統計学的に有意ではなかった。3および10mg/kg POの用量において、化合物2は、ビヒクルで処置された動物と比べて、ホルマリン誘発疼痛行動を、0〜2分において、それぞれ約72%および約89%有意に減少させた。
疼痛行動の持続時間の同様の減少が、化合物2を用いたとき、ホルマリン投与後の0〜5分において観察された。1mg/kg POにおいて、化合物2は、疼痛行動を約14%減少させたが、ビヒクルで処置された動物と比べて統計的有意性に達しなかった。化合物2は、3および10mg/kg POにおいて、ホルマリン誘発疼痛行動の持続時間をそれぞれ約46%および約60%有意に減少させた。
表20 ホルマリンモデルを用いたとき、経口投与された化合物2の用量反応
疼痛行動の持続時間の減少は、化合物1を用いたときも、ホルマリン投与後の0〜5分において観察された。ラットの静脈内に送達された1mg/kgおよび3mg/kgでは、化合物1は、表21および図15に示されているようにホルマリン誘発疼痛行動の持続時間を減少させた。
表21 ホルマリンモデルを用いたときの静脈内に投与された化合物1の用量反応
疼痛行動の持続時間の減少は、化合物4を用いたときも、ホルマリン投与後の0〜5分において観察された。ホルマリンアッセイについて上に記載された方法を用いて、化合物4を、4%DMSO;5%Tween−80;20%Cremophor EL;および71%WFI中の溶液として製剤化し、ラットに経口胃管栄養法によって投与した。化合物4は、表22に示されているように、ホルマリン誘発疼痛行動の持続時間を減少させた。
表22 ホルマリンモデルを用いたときの経口投与された化合物4の用量反応
ホルマリンアッセイについて上に記載された方法を用いて、化合物4を、0.5%メチルセルロース中の懸濁液として製剤化し、ラットに経口胃管栄養法によって投与した。化合物4は、表23に示されているように、ホルマリン誘発疼痛行動の持続時間を減少させた。
表23 ホルマリンモデルを用いたときの経口投与された化合物4の用量反応
応答の持続性も調べた。化合物2を、4%DMSO、10%Solutol HS15および86%WFI中の溶液として調製した。10mg/kgの経口量の化合物2またはビヒクル(PO)でラットを処置した。図8は、ホルマリン注射の前の30分〜6時間の10mg/kg POの化合物2の経口投与製剤による前処置が、ホルマリン媒介性疼痛行動の持続時間を有意に減少させたことを示している。
ビヒクルで処置された動物と比べて、10mg/kg POにおける経口での化合物2の15分間〜6時間の前処置は、ホルマリン注射の0〜2分後のホルマリン誘発疼痛行動の持続時間を約30〜87%減少させ、疼痛行動の減少の最大値は、表24に示されているように、2時間の前処置群において観察された。
表24 ホルマリンモデルを用いたときの化合物2の経口投与における疼痛反応の持続時間
化合物2を、Abraham,W.M Pulm Pharmacol Ther(2008)21:743−754に開示されている方法に従って、アレルギー性気管支収縮および気道過敏のヒツジモデルにおいても試験した。Ascaris suumをチャレンジされたアレルギーヒツジは、肺抵抗(RL)の実質的な二相性の増加を示す。最初の4時間は、初期喘息反応(EAR)と考えられ;次の4時間(4〜8時間目)は、後期喘息反応(LAR)であると考えられる。気道反応性(AHR)を評価するために、緩衝液後の値(post−buffer value)に対して肺抵抗を400%増加させる累積カルバコール用量(PC400)(呼吸単位(breath units)を単位とする)を用量反応曲線から算出した。1呼吸単位は、1%w/vカルバコール溶液の1呼吸と定義された。チャレンジ前のPC400を、投薬開始の1〜3日前に得た。
化合物2を、6mg/mlの濃度において0.5%メチルセルロースに懸濁された微粒子化粉末として製剤化し、30mg/kgという用量で4日間にわたって1日1回、毎日ほぼ同じ時間に経口投与した。ヒツジに、30mg/kgの化合物2を4日間にわたって毎日、経口投与した。化合物2の最後の投与の2時間後に、ヒツジをアレルゲン(Ascaris)チャレンジに供した。各ヒツジを腹臥位で拘束し、頭を固定化した後、鼻腔からの局所麻酔を行った。バルーンカテーテルを、一方の鼻孔を通って下部食道に進めた。各ヒツジに、カフ付き気管内チューブを他方の鼻孔を通して挿管した。気管圧および胸腔内圧を、それぞれその気管内チューブおよびバルーンカテーテルを用いて測定した。経肺圧、すなわち、気管圧と胸腔内圧との差を、差圧変換カテーテルシステムを用いて計測した。気管内チューブの遠位末端を呼吸気流計に接続することによって、RLを測定した。5〜10呼吸のデータをコンピュータに収集し、それを用いてRLを算出した。化合物2による処置を開始する前にAscarisでチャレンジされた同じヒツジからのデータを用いて、ベースライン値を確立した。コントロール試験および薬物試験に対する症状のモニタリングは、同一であった。
チャレンジの当日であり、化合物2の最後の投与の2時間後に、Ascaris suumのエアロゾル(82,000タンパク質窒素単位/mL)を、噴霧器を用いて生成し、Harvardレスピレーターを用いてヒツジに送達した。チャレンジの1時間前、Ascarisチャレンジの直後およびその後8時間にわたって1時間ごとに、RLを測定した。チャレンジから4時間後までは、EARであると考えられ、4〜8時間後は、LARであると考えられる。
AHRに対して悪影響を及ぼすコリン作動性アゴニストであるエアロゾル化されたカルバコールもヒツジにチャレンジした。RLを400%増加させたカルバコール濃度(PC400)(呼吸単位を単位とする)の測定を、化合物2投与なしのAscarisチャレンジの24時間後(ヒストリカルベースライン)または化合物2の最後の投与の24時間後に行った。
図16は、ベースライン(コントロール)レベルおよび化合物2(30mg/kg)による処置後のヒツジにおける抗原によって誘発された応答を示している。化合物2は、ピーク初期気道反応に影響しなかった。しかしながら、化合物2は、後期気道反応を劇的に減弱した(85%保護)。コントロール試験では、平均後期気道反応は、126±4.7%であったのに対して、処置試験では、平均LARは、わずか19±2.3%(P=0.002)であった。
図17は、肺抵抗の400%増加を誘導するカルバコールの濃度に相当する気道過敏の測定値であるPC400に対する化合物2(30mg/kg)の作用をさらに示している。
要約すると、化合物2による処置は、気道過敏を、Ascaris suumをチャレンジされていないヒツジにおいて観察されたレベルと同様のレベルにまで低下させた。
実施例36 薬学的プロファイル
本発明の化合物は、有意な薬物/薬物相互作用を有しない可能性があり、このことは、その投与が複数の薬剤を摂取している患者にとって好ましくする。
化合物2がヒトCYP450酵素を阻害する能力を評価した。化合物1および化合物2を、標準的なP450Cyp阻害発光アッセイにおいて試験した。結果を下記の表25に示す。
表25 化合物1および2によるCYP450酵素の阻害
化合物2は、試験された七つのアイソザイムに対して10μMにおいて最大37%というヒトCYP450酵素の最大の阻止を達成した;これらの値は、算出されたIC50値が、>10μMであり得ることを示唆している(表26)。
化合物2をフェノタイピングするCYP450反応を、選択的CYP450阻害剤の存在下および非存在下において試験物質をヒト肝ミクロソームとともにインキュベートすることによって行った。代謝半減期は、ケトコナゾールを除くいずれのCYP450阻害剤によっても有意に影響されなかったことから、化合物2のインビトロ代謝が主にCYP3A4アイソザイムを必要とすることが示唆される(図9)。
表26 化合物2および適切な参照化合物による10μMにおけるCYP450阻害
*1μMアッセイ濃度
実施例37 イヌにおける肝毒性安全性プロファイル
ビヒクル(脱イオン水における0.5%メチルセルロース[400cps])中の化合物2を、雄および雌の非ナイーブビーグル犬の三つの群に、5日間連続して1日1回、胃管栄養法によって経口投与した。各群に、一つの用量レベルを投与した。用量レベルは、各群に対して300、600および1000mg/kgであった。同時のコントロール群には、類似のレジメンでビヒクルを投与した。用量体積は、すべての群に対して10ml/kgであった。肝毒性または胆管損傷を表す、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferease)[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphastase)[ALP]およびガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ[GGT]の血清バイオマーカーを介して、肝毒性(Hepatoxicity)を計測した。表27は、示された各用量レベルのイヌにおける化合物2が、300mg/kgの用量以下まで血清バイオマーカーを上昇させなかったことを示している。
表27 ビーグル犬における化合物2の肝毒性安全性プロファイル
図18は、化合物2が、正常範囲を超えて血清バイオマーカーレベルを有意に上昇させないことをさらに実証している。図19は、化合物2が、ビヒクルに対する%差異によって示されるとき、ベースライン測定値を超えて血清バイオマーカーレベルを有意に上昇させなかったことを実証している。
実施例38 ラットにおける肝毒性安全性プロファイル
ビヒクル(0.5%メチルセルロース[400cps])中の化合物2を、Charles River Laboratoriesからのsprague−dawleyラットの三つの群に、最低28日間連続して1日1回、胃管栄養法によって経口投与した。各群に一つの投与量レベルを投与した。投与量レベルは、各群に対して30、100および300mg/kg/日であった。同時のコントロール群には、類似のレジメンでビヒクルを投与した。用量体積は、すべての群に対して10ml/kgであった。肝毒性または胆管損傷を表す、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アルカリホスファターゼ[ALP]およびガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ[GGT]の血清バイオマーカーを介して、肝毒性を計測した。表28は、示された各用量レベルのラットにおける化合物2が、300mg/kgの用量以下まで血清バイオマーカーを上昇させなかったことを示している。
表28 ラットにおける化合物2の肝毒性安全性プロファイル
図20は、化合物2が、正常範囲を超えてレベルを有意に上昇させないことをさらに実証している。図21は、化合物2が、ビヒクルに対する%差異によって示されるとき、ベースライン測定値を超えてレベルを有意に上昇させなかったことを実証している。
実施例39 サルにおける肝毒性安全性プロファイル
ビヒクル(0.5%メチルセルロース,400cps)中の化合物2を、カニクイザルの四つの群に、28または29日間連続して1日1回、経鼻胃管挿管によって投与した。各群に、一つの用量レベルを投与した。投与量レベルは、1群あたり10、30、100および300mg/kg/日であった。同時のコントロール群には、類似のレジメンでビヒクルを投与した。用量体積は、すべての群に対して10ml/kgであった。肝毒性または胆管損傷を表す、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アルカリホスファターゼ[ALP]およびガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ[GGT]の血清バイオマーカーを介して、肝毒性を計測した。表29は、示された各用量レベルのサルにおける化合物2が、300mg/kgの用量以下まで血清バイオマーカーを上昇させなかったことを示している。
表29 カニクイザルにおける化合物2の肝毒性安全性プロファイル
図22は、化合物2が、正常範囲を超えてレベルを有意に上昇させないことをさらに実証している。図23は、化合物2が、ビヒクルに対する%差異によって示されるとき、ベースライン測定値を超えてレベルを有意に上昇させなかったことを実証している。
均等物
本明細書に引用された特許、特許出願および刊行物の各々およびすべての開示は、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。本発明は、具体的な態様に照らして開示されてきたが、本発明の他の態様およびバリエーションが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく他の当業者によって工夫され得ることは明らかである。添付の請求項は、そのような態様および等価なバリエーションのすべてを含むと解釈されるように意図されている。
参照により本明細書中に援用されると言われるいずれの特許、刊行物または他の開示材料も、全部または一部において、援用される材料が、既存の定義、陳述または本開示に示される他の開示材料と矛盾しない程度にだけ、本明細書中に援用される。したがって、必要な限り、本明細書中に明示的に示されるような本開示は、参照により本明細書中に援用されるいずれの矛盾する材料にも取って代わる。
本発明は、その好ましい実施形態に照らして特に示され、説明されてきたが、添付の請求項によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態の中において形態および詳細の様々な変更が行われ得ることが当業者によって理解されるだろう。