JP2017507105A - 繊維強化セメント複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、様々な建築用途及び関連する用途で幅広い利用可能性が見出される繊維強化セメント複合材料の製造方法に関する。複合材料は、望ましい性能特性を有する複合材料を提供するために、セルロース繊維材料を含有する。特に、セルロース繊維材料の少なくとも一部は表面強化パルプ繊維を含み、これは最終的な複合材製品の特性を向上させるのみならず、材料の加工特性も望ましく向上させる。繊維強化セメント複合材料の製造方法は、セメント組成物を準備する工程と、セルロース繊維材料を準備する工程とを含む。本方法は、更に、セメント組成物とセルロース繊維材料とをブレンドしてセメント複合材料を形成することを含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は2014年2月21日に出願された米国仮特許出願No.61/942,708の優先権を主張するものであり、これは本明細書に完全に記載されているかのように本明細書に援用される。
本発明は、繊維セメント中での表面強化パルプ繊維(SEPF)の使用に関する。本発明は、繊維セメント中で表面強化パルプ繊維を使用するとセメント板の製造特性及び仕上がり特性が向上することを根拠とする。
繊維セメント板は、外装サイディング、トリム、内装天井タイル、及びタイル下地板などの、幅広い建築用途で使用されている。北米におけるこれら製品の製造業者としては、James Hardie Co. (HardiePanel, HardieBacker)、CertainTeed Corporation (Weatherboard)及びNichiha (Nichiboard)が挙げられる。
繊維セメントは、セメントと軟材セルロース長繊維との混合物から作られる。セルロース繊維は板の製造及び最終製品強度の両方において重要な役割を果たす。製造工程においては、叩解された繊維は、コンクリートマトリックスの硬化及び形成を可能にするための、セメント粒子の捕捉及び保持に役立つ。最終製品では、長繊維は、板の取り扱い、設置、及び設置後の耐久性に必要とされる柔軟性及び靭性を付与する。
木材パルプ繊維等のパルプ繊維は、例えば、パルプ、紙、板紙、生物繊維複合材(例えば繊維セメント板、繊維強化プラスチック等)、吸収性製品(例えばフラッフパルプ、ハイドロゲル等)、セルロース由来の特殊化学製品(例えば酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、及び他の製品を含む様々な製品で使用されている。パルプ繊維は、硬材(例えば、カシ、ゴムノキ、カエデ、ポプラ、ユーカリ、アスペン、カバノキ等)、軟材(例えばトウヒ、マツ、モミ、アメリカツガ、サザンパイン、アメリカスギ等)、及び非木材(例えばケナフ、アサ、ワラ、バガス等)を含む様々な木材種から得ることができる。パルプ繊維の特性は、紙などの最終的な最終製品の特性、中間製品の特性、及び製品を製造するために使用される製造工程の性能(例えば抄紙機の生産力及び製造コスト)に影響を与え得る。パルプ繊維は、様々な特性を獲得させるために数多くの方法で加工することができる。いくつかの既存の工程では、複数のパルプ繊維は最終製品の中に配合される前に叩解される。叩解条件によっては、叩解工程は繊維の長さを大幅に減少させる可能性があり、ある用途に関しては望ましくない量の微細繊維を生じさせる可能性があり、またあるいは最終製品、中間製品、及び/または製造工程に悪影響を及ぼし得る形で繊維に影響を与える可能性がある。例えば、微細繊維は、濾水を遅らせ、保水性を高め、また製紙工程でのウエットエンドの薬品消費量を増加させる可能性があり、これらはいくつかの工程及び用途において望ましくない場合があることから、いくつかの用途においては微細繊維の生成は不都合である場合がある。
木材パルプ中の繊維は、典型的には、パルプ、紙、板紙、生物繊維複合材(例えば繊維セメント板、繊維強化プラスチック等)、吸収性製品(例えば、フラッフパルプ、ハイドロゲル等)、セルロース由来の特殊化学製品(例えば、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、及び同様の製品に加工される前に、0.5〜3.0mmの範囲の長さ加重平均繊維長を有している。叩解工程及び他の処理工程によって、パルプ繊維の長さを短くすることができる。従来の叩解技術では、通常は繊維を1回だけ、一般的にはわずか2〜3回、比較的低いエネルギー(例えば硬材繊維に対して約20〜80kWh/t)を使用して、及び硬材繊維に対して約0.4〜0.8Ws/mの比エッジ荷重を使用して、リファイナーに通すことで、典型的な上質紙が製造される。
本発明は、様々な建築用途及び関連する用途で幅広い利用可能性が見出される繊維強化セメント複合材料の製造方法に関する。複合材料は、望ましい性能特性を有する複合材料を提供するために、セルロース繊維材料を含有する。特に、セルロース繊維材料の少なくとも一部は表面強化パルプ繊維を含み、これは最終の複合材製品の特性を向上させるのみならず、材料の加工特性も望ましく向上させる。
本発明において、繊維強化セメント複合材料の製造方法は、セメント組成物を準備する工程と、セルロース繊維材料を準備する工程とを含む。本方法は、更に、セメント組成物とセルロース繊維材料とをブレンドしてセメント複合材料を形成することを含む。上で述べたように、セルロース繊維材料は、プロセス及び最終の複合材製品をよりよくするために、有利なことには表面強化パルプ繊維を含む。本発明の1つの態様では、表面強化パルプ繊維はセルロース繊維材料の約1〜10重量%を占める。別の態様では、セルロース繊維材料は増加したBauer−McNett長繊維フラクションを示す。
本発明の別の態様では、セルロース繊維材料は、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、少なくとも10%の長さ加重平均繊維長(LWAFL)の増加を示す。セルロース繊維材料は、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、所定の濾水度CSF(カナダ標準濾水度)値に到達するために、相対的に少ない叩解エネルギーを必要とする。
本方法において、表面強化パルプ繊維は少なくとも約0.3mmの長さ加重平均繊維長と、少なくとも約10m/gの平均流体力学的比表面積を有しており、表面強化パルプ繊維の数は絶乾基準で少なくとも12,000繊維/mgである。本発明の別の態様では、表面強化パルプ繊維は、フィブリル化による表面強化の前の繊維の長さ加重平均繊維長の少なくとも60%である長さ加重平均繊維長を有し、フィブリル化前の繊維の平均比表面積よりも少なくとも4倍大きい平均流体力学的比表面積を有する。別の態様では、表面強化パルプ繊維は少なくとも約300kWh/tのエネルギー入力で叩解される。
これらの及び他の実施形態は、以降の発明を実施するための形態に、より詳細に示されている。
本発明の1つの非限定的な実施形態にかかる紙製品を製造するためのシステムを示すブロック図である。 本発明の1つの非限定的な実施形態にかかる、第2のリファイナーを含む紙製品を製造するためのシステムを示すブロック図である。
本発明は、様々な建築用途及び関連する用途で幅広い利用可能性が見出される繊維強化セメント複合材料の製造方法に関する。複合材料は、望ましい性能特性を有する複合材料を提供するためにセルロース繊維材料を含有する。特に、セルロース繊維材料の少なくとも一部は表面強化パルプ繊維を含み、これは最終の複合材製品の特性を向上させるのみならず、材料の加工特性も望ましく向上させる。
本発明において、繊維強化セメント複合材料の製造方法は、セメント組成物を準備する工程と、セルロース繊維材料を準備する工程とを含む。本方法は、更に、セメント組成物とセルロース繊維材料とをブレンドしてセメント複合材料を形成することを含む。上で述べたように、セルロース繊維材料は、プロセス及び最終の複合材製品をよりよくするために、有利なことには表面強化パルプ繊維を含む。本発明の1つの態様では、表面強化パルプ繊維はセルロース繊維材料の約1〜10重量%を占める。別の態様では、セルロース繊維材料は増加したBauer−McNett長繊維フラクションを示す。
本発明の別の態様では、セルロース繊維材料は、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、少なくとも10%の長さ加重平均繊維長(LWAFL)の増加を示す。セルロース繊維材料は、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、所定の濾水度CSF(カナダ標準濾水度)値に到達するために、相対的に少ない叩解エネルギーを必要とする。
本方法において、表面強化パルプ繊維は少なくとも約0.2mmの長さ加重平均繊維長と、少なくとも約10m/gの平均流体力学的比表面積を有しており、表面強化パルプ繊維の数は絶乾基準で少なくとも12,000繊維/mgである。本発明の別の態様では、表面強化パルプ繊維は、フィブリル化による表面強化の前の繊維の長さ加重平均繊維長の少なくとも60%である長さ加重平均繊維長を有し、フィブリル化前の繊維の平均比表面積よりも少なくとも4倍大きい平均流体力学的比表面積を有する。別の態様では、表面強化パルプ繊維は少なくとも約300kWh/tのエネルギー入力で叩解される。
表面強化パルプ繊維(SEPF)は、セルロース系繊維セメント板の製造及び性能を補助し、向上させるための複数の特有の利点を示す。これらにはプロセスに関する向上と、最終製品に関する向上の両方が含まれる。
・最終製品の非常に大きいLWAFLによる、最終製品のより大きな靭性。
SEPFは、現在専ら使用されている従来の長繊維軟材の約6%を置き換える添加剤として使用されるであろう。そのような混合物中では、これはブレンド物のCSFを下げるであろう。これは、ひいてはHatschek法で目標とされる望ましい濾水度に到達させるためにより少ない叩解しか必要としないであろう。ブレンド物の叩解が少ないと、より大きな割合で長繊維が保存されるであろう。これらの長繊維は、必要とされる靭性及び柔軟性を有するセメント板をもたらす。
我々の結果は、6%のSEPFブレンド物、450CSFまでの共叩解で、従来の100%軟材完全紙料と比較してBauer−McNett長繊維フラクション(+4、+14)において17.6%の増加を示した。
未叩解の北洋漂白軟材クラフト(NBSK)は、約2.60mmのFQA LWAFLを有している。SUNY ESFで試験した2012年5月の完全紙料の試料は、483CSFまで叩解された100%のSWD、Escher−Wyssが2.08mmのLWAFLを有していたことを示している。475CSFまで共叩解された6%のSEPFを有する試料は、2.33mmのLWAFLを有していた。これは100%SWDの対照と比較して0.25mmまたは12%の繊維長の増加である。
より長い繊維は、製造時に高密度まで加圧されない板に特に有用である。密度を高くすると強度が向上するが、板が脆くなり、取扱時に損傷を受けやすくなり、また釘打ちが困難になる。
・必要とされる濾水度目標に到達させるための総叩解エネルギーの低減
繊維セメント板の初回のラボ試験では、様々な完全紙料のEscher−Wyss叩解エネルギーが測定された。6%SEPFブレンド物によって叩解エネルギーの26%の節約がもたらされた。
必要とされる叩解量を減らすことには、リファイナーのメンテナンスの削減及びより長いリファイナープレート寿命という利益も存在するであろう。
・繊維コストの削減
SEPFブレンド物の増加した繊維長のメリットがない製品では、軟材繊維の量を減らし、より短くより低コストなセルロース繊維で置き換えることで、繊維コストが削減されるであろう。
・セメント粒子の保持時間の増加
セメント板の形成時、セメント粒子は繊維セメント板を流れ出て、Hatschek機の水系に入り得る。これは、工程を洗浄するための操業の停止を要する、工程中のコンクリート詰まりを形成する場合がある。フリーのセメント粒子が廃液系に入って潜在的な環境問題を引き起こす可能性もある。SEPFの強化された表面特性により、セメント粒子の捕捉及び保持に関する繊維セメントマットの能力が向上し、その結果生産性が向上し、またメンテナンス及び環境問題が削減される。
セメント複合材料の形成のためにSEPFを使用すると、相反する繊維の特性の釣り合いを望ましく取ることができると考えられる。他方で、繊維長を維持することは、セメント複合材料で使用される場合に繊維の強化作用特性を向上させる役割を果たすことから望ましい。また他方で、高いパルプの濾水度はプロセス時の排水を促進する(より高い濾水度値はより速い排水に対応する)。しかし、セメント複合材料の形成時に過剰に排水されるとセメント粒子の望ましくない脱水が生じる場合があり、これは、セメント粒子の硬化を開始する性質の観点からは、プロセスに再導入することは容易にはできない。
かくして、SEPFの使用により、繊維の高度にフィブリル化した性質及び大きい表面積がセメント粒子の保持のために望ましく機能しながらも、また複合材料の製造時に必要な排水を可能にしながらも、望ましい繊維長が維持される。
特に、次の工程で使用するためのSEPFの移送は、従来のポンプを用いてSEPF材料をブレンドすること(すなわち混合物の形成)によって促進することができる。従来のパルプと共に約10〜30重量%のSEPFが含まれるブレンド物を形成し、効率的なSEPFの輸送及び使用を行いやすくするために、その後それらをベールまたは板状材料に形成することができる。
実験結果
1.未漂白の軟材及び硬材のEscher Wyss(E−W)叩解
2.ラボスケール、試験条件T1及びT5、8%の総繊維含量で製造されたセメント板
Figure 2017507105
・26%の総叩解エネルギーの減少
○繊維長(SUNY ESFで試験)
・未叩解NBSK、742CSF −2.60mm
・483CSFまで叩解した100%NBSK E−W −2.08mm
・475CSFまで共叩解した6%SEPF、94%未叩解NBSK −2.33mm
Figure 2017507105
Figure 2017507105
Figure 2017507105
Figure 2017507105
本発明の複数の実施形態は、以降の説明から明らかになるであろうように、概して、表面強化パルプ繊維、表面強化パルプの製造、利用、及びに供給のための方法、表面強化パルプ繊維が配合された製品、並びに表面強化パルプ繊維が配合された製品の製造、利用、及びに供給のための方法に関する。表面強化パルプ繊維は、下に規定されているような必要とされる特性を示す程度までフィブリル化され、高度にフィブリル化されたものとして特徴付けることができる。様々な実施形態では、本発明の表面強化パルプ繊維は、従来の叩解された繊維と比較して繊維長が大幅に減ることなく、またフィブリル化時に多量の微細繊維を生成することなく、かなり大きい表面積を有する。このような表面強化パルプ繊維は、本明細書で述べるような、パルプ、紙、及び他の製品の製造に有用であり得る。
本発明の実施形態かかる、表面強化され得るパルプ繊維は、硬材及び軟材を含む様々な木材の種類由来とすることができる。本発明のいくつかの実施形態において使用することができる硬材パルプ繊維の非限定的な例としては、カシ、ゴムノキ、カエデ、ポプラ、ユーカリ、アスペン、カバノキ及び当業者に公知の他の繊維を含むが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態において使用することができる軟材パルプ繊維の非限定的な例としては、トウヒ、マツ、モミ、アメリカツガ、サザンパイン、アメリカスギ及び当業者に知られている他の繊維が挙げられるが、これらに限定されない。パルプ繊維は、化学的供給源(例えばクラフト法、亜硫酸法、ソーダパルプ化法等)、機械的供給源(例えば、サーモメカニカル法(TMP)、さらし化学サーモメカニカル法(BCTMP)等)、またはこれらの組み合わせから得てもよい。パルプ繊維はまた、リネン、綿、バガス、麻、わら、ケナフなどの非木材繊維由来であってもよい。パルプ繊維は、リグニン含量及び他の不純物が様々な程度であるように、漂白または部分的に漂白されてもよく、また無漂白にされてもよい。いくつかの実施形態では、パルプ繊維は再生繊維または使用済み繊維であってもよい。
本発明の様々な実施形態にかかる表面強化パルプ繊維は、例えば長さ、比表面積、長さの変化、比表面積の変化、表面特性(例えば表面活性、表面エネルギー等)、微細繊維の割合、排水特性(例えばショッパーリーグラ)、クリル測定(フィブリル化)、吸水特性(例えば保水値、ウィッキング速度等)、及びこれらの様々な組み合わせを含む、様々な特性及び特性の組み合わせによって特徴付けることができる。以下の記載は特性の様々な組み合わせのそれぞれを明確に特定していないかもしれないが、表面強化パルプ繊維の様々な実施形態が、本明細書に記載されている1つ、1つより多く、または全ての特性を保持していてもよいことが理解されるべきである。
本発明のいくつかの実施形態は、複数の表面強化パルプ繊維に関する。いくつかの実施形態では、複数の表面強化パルプ繊維は少なくとも約0.2mm、好ましくは少なくとも約0.25mmの長さ荷重平均繊維長を有し、最も好ましくは約0.3mmの長さであり、表面強化パルプ繊維の数は絶乾基準で少なくとも12,000/mgである。本明細書において、「絶乾基準」とは、試料が105.℃に設定されたオーブン中で24時間乾燥されることを意味する。一般的に、繊維長が長いほど、繊維及びそのような繊維が配合された得られる製品の強度は大きい。このような実施形態の表面強化パルプ繊維は、例えば製紙用途において有用である場合がある。本明細書において、長さ加重平均長は、LDA02 Fiber Quality AnalyzerまたはLDA96 Fiber Quality Analyzer(それぞれカナダ、オンタリオ州、ホークスベリーのOp Test Equipment,Inc.製)を使用し、Fiber Quality Analyzerに添付の取扱説明書に規定されている正しい手順に従って測定される。本明細書において、長さ加重平均長(L.sub.W)は、式
L.sub.W=.SIGMA.n.sub.iL.sub.i.sup.2/.SIGMA.n.sub.iL.sub.i
に従って計算される。ここでiはカテゴリー(またはビン)番号(例えば、1、2、…N)を指し、n.sub.iはi.sup.番目のカテゴリー中の繊維数を指し、L.sub.iはi.sup.番目カテゴリー中の輪郭長−−ヒストグラムの階級中央の長さを指す。
上述したように、本発明の表面強化パルプ繊維の1つの態様は、フィブリル化後の繊維の長さの維持である。いくつかの実施形態では、複数の表面強化パルプ繊維は、フィブリル化前の繊維の長さ加重平均長の少なくとも60%の長さ加重平均長を有することができる。いくつかの実施形態にかかる複数の表面強化パルプ繊維は、フィブリル化前の繊維の長さ加重平均長の少なくとも70%の長さ加重平均長を有することができる。長さ維持率の決定においては、複数の繊維の長さ加重平均長はフィブリル化の前と後の両方で(上述の通り)測定することができ、そしてその値は以下の式を用いて比較することができる。
L.sub.W(前)−L.sub.W(後)/L.sub.W(前)
本発明の表面強化パルプ繊維は、有利なことには製紙等のいくつかの用途に有用となり得る大きい流体学的比表面積を有する。いくつかの実施形態では、本発明は複数の表面強化パルプ繊維であって、繊維が少なくとも約10m/g、より好ましくは少なくとも約12m/gの平均流体学的比表面積を有する、複数の表面強化パルプ繊維に関する。実例として、典型的な未叩解の製紙用繊維は、2m.sup.2/gの流体学的比表面積を有するであろう。本明細書において、流体学的比表面積は、http://www.tappi.org/Hide/Events/12PaperCon/Papers/12PAP116.aspxで入手可能な、Characterizing the drainage resistance of pulp and microfibrillar suspensions using hydrodynamic flow measurements,N. Lavrykova−Martain及びB. Ramarao、TAPPI’s PaperCon 2012 Conferenceに規定されている手順(これは参照により本明細書に援用される)に従って測定される。
本発明の1つの利点は、表面強化パルプ繊維の流体学的比表面積が、フィブリル化前の繊維のものより著しく大きいことである。いくつかの実施形態では、複数の表面強化パルプ繊維は、フィブリル化前の繊維の平均比表面積より少なくとも4倍大きい、好ましくはフィブリル化前の繊維の平均比表面積より少なくとも6倍大きい、最も好ましくはフィブリル化前の繊維の平均比表面積より少なくとも8倍大きい、平均流体学的比表面積を有することができる。そのような実施形態の表面強化パルプ繊維は、例えば製紙用途において有用であり得る。一般的に、流体学的比表面積は表面活性のよい指標であるため、本発明の表面強化パルプ繊維はいくつかの実施形態では良好な結合性及び保水性を有することが期待でき、また補強用途でよく機能することが期待できる。
上述のように、いくつかの実施形態では、本発明の表面強化パルプ繊維は、有利なことには繊維長を維持しながらも、増加した流体学的比表面積を有する。流体学的比表面積の増加は、これらに限定するものではないが、用途に応じて、さらなる繊維結合の付与、水または他の物質の吸収、有機物の保持、より高い表面エネルギー、及びその他を含む、数多くの利点を有し得る。
本発明の複数の実施形態は、複数の表面強化パルプ繊維であって、複数の表面強化パルプ繊維は、少なくとも約0.2mmの長さ加重平均繊維長と少なくとも約10m/gの平均流体学的比表面積を有し、表面強化パルプ繊維の数が絶乾基準で少なくとも12,000/mgである、複数の表面強化パルプ繊維に関する。好ましい実施形態においては、複数の表面強化パルプ繊維は、少なくとも約0.25mmの長さ加重平均繊維長と少なくとも約12m/gの平均流体学的比表面積を有し、表面強化パルプ繊維の数は絶乾基準で少なくとも12,000/mgである。最も好ましい実施形態においては、複数の表面強化パルプ繊維は、少なくとも約0.3mmの長さ加重平均繊維長と少なくとも約12m/gの平均流体学的比表面積を有し、表面強化パルプ繊維の数は絶乾基準で少なくとも12,000/mgである。このような実施形態の表面強化パルプ繊維は、例えば繊維セメント用途において有用であり得る。
本発明の表面強化パルプ繊維を得るためのパルプ繊維の叩解では、いくつかの実施形態は好ましくは微細繊維の生成を最小化する。本明細書において、用語「微細繊維」は、0.2mm以下の長さを有するパルプ繊維を指すために使用される。いくつかの実施形態では、表面強化パルプ繊維は、40%未満、より好ましくは22%未満の長さ加重微細繊維値を有し、20%未満が最も好ましい。そのような実施形態の表面強化パルプ繊維は、例えば製紙用途において有用となり得る。本明細書において、「長さ荷重微細繊維値」は、LDA02 Fiber Quality AnalyzerまたはLDA96 Fiber Quality Analyzer(それぞれカナダ、オンタリオ州、ホークスベリーのOp Test Equipment,Inc.製)を使用し、Fiber Quality Analyzerに添付の取扱説明書に規定されている正しい手順に従って測定される。本明細書において、長さ加重微細繊維の割合は、式
長さ加重微細繊維の%=l00×SIGMA.n.sub.iL.sub.i/L.sub.T
に従って計算される。ここで、nは0.2mm未満の長さを有する繊維の数を指し、L.sub.iは微細繊維の階級中央の長さを指し、L.sub.Tは総繊維長を指す。
好ましい実施形態において、本発明の表面強化パルプ繊維は、多数の微細繊維が生成する不利益なしに、長さと比較的大きい比表面積の維持という利点を同時に提供する。更に、様々な実施形態によれば、複数の表面強化パルプ繊維は比較的低い微細繊維の割合も有しながらも、1つ以上の上述した他の特性(例えば、長さ加重平均繊維長、平均流体学的比表面積の変化、及び/または表面活性特性)も同時に有することができる。いくつかの実施形態では、そのような繊維は、それらが含まれる製品の強度保持または強度改善をしながらも、排水に対する悪影響を最小限にすることができる。
表面強化パルプ繊維の他の有利な特性は、繊維が他の製品に加工される場合に特徴付けることができ、表面強化パルプ繊維の製造方法の説明に続いて以下に記載する。
本発明の複数の実施形態は、表面強化パルプ繊維を製造するための方法にも関する。本発明の方法で使用される叩解技術は、有利なことには表面積量を同様に増加させながらも、繊維の長さを維持することができる。好ましい実施形態では、このような方法はまた微細繊維の量も最小化し、及び/またはいくつかの実施形態において表面強化パルプ繊維を含有する製品の強度(例えば、紙製品の引張強度、スコットボンド強度、湿紙強度)を向上させる。
1つの実施形態において、表面強化パルプ繊維を製造するための方法は、1.3mm以下のバー幅と2.5mm以下の溝幅を有する1対のリファイナープレートを含む機械リファイナーに未叩解のパルプ繊維を導入することと、リファイナーに対するエネルギー消費量が少なくとも300kWh/tに達するまで繊維を叩解して表面強化パルプ繊維を製造することとを含む。当業者はリファイナープレートに関するバー幅と溝幅の寸法を熟知している。追加的な情報を求める程度に、Christopher J. Biermann, Handbook of Pulping and Papermaking(第2版、1996年)、p.145が参照され、これは参照により本明細書に援用される。好ましい実施形態では、プレートは1.0mm以下のバー幅と1.6mm以下の溝幅を有し、またリファイナーに対するエネルギー消費量が少なくとも300kWh/tに達するまで繊維が叩解されることで表面強化パルプ繊維が製造され得る。最も好ましい実施形態では、プレートは1.0mm以下のバー幅と1.3mm以下の溝幅を有し、またリファイナーに対するエネルギー消費量が少なくとも300kWh/tに達するまで繊維が叩解されることで表面強化パルプ繊維が製造され得る。本明細書で使用されており、また当業者に理解されるように、本明細書のエネルギー消費量または叩解エネルギーへの言及では、「/トン」または「毎トン」がリファイナーを通過するパルプの絶乾基準でのトンを指すという理解の下、kWh/tの単位が使用される。いくつかの実施形態では、繊維はリファイナーに対するエネルギー消費量が少なくとも650kWh/tに達するまで叩解される。複数の繊維は、本発明の表面強化パルプ繊維に関して本明細書で記載されている特性の1つ以上をこれらが有するまで叩解され得る。以下でより詳細に記載されているように、当業者は特定の種類の木材繊維については300kWh/tよりも大幅に大きい叩解エネルギーが必要とされる場合があること、及びパルプ繊維に対して望ましい特性を付与するのに必要とされる叩解エネルギーの量もまた様々な場合があることを認識しているであろう。
1つの実施形態では、未叩解のパルプ繊維は、1対のリファイナープレートを有する機械リファイナーまたは一連のリファイナーに導入される。未叩解のパルプ繊維は、例えば本明細書に記載の様々な工程(例えば機械的、化学的等)由来の硬材パルプ繊維、または軟材パルプ繊維、または非木材パルプ繊維等の、本明細書に記載されているいずれのパルプ繊維も含むことができる。更に、未叩解のパルプ繊維またはパルプ繊維源は、ベール状またはスラッシュ状で供給されてもよい。例えば、1つの実施形態では、ベール状のパルプ繊維源は、約7〜約11%の水分と約89〜約93%の固形分とを含んでいてもよい。同様に、例えば、パルプ繊維のスラッシュ供給物は、1つの実施形態では、約95%の水分と約5%の固形分とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、パルプ繊維源はパルプ乾燥機で乾燥されなかった。
本発明のいくつかの実施形態に従う表面強化パルプ繊維を製造するために使用することができるリファイナーの非限定的な例としては、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナー、シングルディスクリファイナー、マルチディスクリファイナーまたはコニカルリファイナーとディスクリファイナーとの組み合わせが挙げられる。ダブルディスクリファイナーの非限定的な例としては、Beloit DD 3000、Beloit DD 4000またはAndritz DO リファイナーが挙げられる。コニカルリファイナーの非限定的な例としては、Sunds JC01、Sunds JC02、及びSunds JC03リファイナーが挙げられる。
運転条件だけでなく叩解プレートの設計も、表面強化パルプ繊維のいくつかの実施形態を製造する上で重要である。バー幅、溝幅、及び溝深さは、リファイナープレートを特徴付けるために使用されるリファイナープレートのパラメーターである。通常、本発明の様々な実施形態における使用のための叩解プレートは、微細な溝付けで特徴付けることができる。このようなプレートは、1.3mm以下のバー幅と2.5mm以下の溝幅を有する場合がある。このようなプレートは、いくつかの実施形態では、1.3mm以下のバー幅と1.6mm以下の溝幅を有する場合がある。いくつかの実施形態では、このようなプレートは1.0mm以下のバー幅と1.6mm以下の溝幅を有する場合がある。このようなプレートは、いくつかの実施形態では、1.0mm以下のバー幅と1.3mm以下の溝幅を有する場合がある。1.0mm以下のバー幅と1.6mm以下の溝幅を有する叩解プレートは、超微細叩解プレートと呼ばれる場合もある。このようなプレートは、Aikawa Fiber Technologies(AFT)からFINEBAR.RTM.という商標名で入手可能である。このような微細に溝付けされたプレートは、適切な運転条件下で、繊維長を維持し、また微細繊維の生成を最小化すると同時に、パルプ繊維上のフィブリルの数を増加(すなわち、フィブリル化を増加)させることができる。従来のプレート(例えば、1.3mm超のバー幅及び/または2.0mm超の溝幅)、及び/または不適切な運転条件は、パルプ繊維中の繊維の切断を著しく増加させる可能性があり、及び/または望ましくない量の微細繊維を生じさせる可能性がある。
リファイナーの運転条件もまた、表面強化パルプ繊維のいくつかの実施形態の製造において重要となる場合がある。いくつかの実施形態では、表面強化パルプ繊維は、最初は未叩解のパルプ繊維を、エネルギー消費量が少なくとも約300kWh/tに達するまでリファイナー(群)に通して再循環させることによって製造することができる。表面強化パルプ繊維は、最初は未叩解のパルプ繊維を、いくつかの実施形態ではエネルギー消費量が少なくとも約450kWh/tに達するまでリファイナー(群)に通して再循環させることによって製造することができる。いくつかの実施形態では、繊維をエネルギー消費量が約450〜約650kWh/tに達するまでリファイナー内を再循環させることができる。いくつかの実施形態では、リファイナーは約0.1〜約0.3Ws/mの比エッジ荷重で運転することができる。他の実施形態では、リファイナーは約0.15〜約0.2Ws/mの比エッジ荷重で運転することができる。いくつかの実施形態では、表面強化パルプ繊維を製造するために、約0.1Ws/m〜約0.2Ws/mの比エッジ荷重が使用され、約450〜約650kWh/tのエネルギー消費量に到達させられる。比エッジ荷重(またはSEL)は、正味の印加電力を回転速度とエッジ長の積で割った商を指すと当業者に理解される用語である。SELは、叩解の強度を示すために使用され、ワット秒/メートル(Ws/m)として表される。
以下でより詳細に記載するように、当業者は、特定の種類の木材繊維については400kWh/tを大幅に超える叩解エネルギーが必要とされる場合があること、及びパルプ繊維に望ましい特性を付与するために必要とされる叩解エネルギーの量もまた変わる場合があることを認識しているであろう。例えば、南洋材混合硬材繊維(例えばカシ、ゴムノキ、ニレ等)は、約450〜650kWh/tの叩解エネルギーを必要とする場合がある。一方で、北洋硬材繊維は南洋硬材繊維よりも粗くないため、北洋硬材繊維(例えばカエデ、カバノキ、アスペン、ブナノキ等)は、約350〜約500kWh/tの叩解エネルギーを必要とする場合がある。同様に、南洋軟材繊維(例えばマツ)は、更に大きい叩解エネルギーを必要とする場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態にかかる南洋軟材繊維の叩解は、大幅に大きくなる場合がある(例えば少なくとも1000kWh/t)。
叩解エネルギーは、リファイナーを一回通過させる際に供給すべき叩解エネルギーの量及び必要とされる通過回数に応じて、様々な方法で供給することもできる。いくつかの実施形態では、いくつかの方法で使用されるリファイナーを、複数回の通過または複数個のリファイナーが所定の叩解エネルギーを提供するために必要とされるように、1回の通過当たりの叩解エネルギーが低い状態で(例えば、100kWh/t/回以下)運転してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1台のリファイナーは50kWh/t/回で運転することができ、450kWh/tの叩解を付与するために、パルプ繊維をリファイナーに合計9回通して再循環させることができる。いくつかの実施形態では、叩解エネルギーを付与するために、複数のリファイナーを直列に設けることができる。
繊維を1個のリファイナーに通して再循環させることによって、パルプ繊維が必要とする叩解エネルギーに達するいくつかの実施形態では、望ましい程度にフィブリル化させるために、パルプ繊維をリファイナーに少なくとも2回通して循環させてもよい。いくつかの実施形態では、望ましい程度にフィブリル化させるために、パルプ繊維をリファイナーに約6〜約25回通して循環させてもよい。パルプ繊維は、バッチ処理での再循環によって、1台のリファイナーの中でフィブリル化することができる。
いくつかの実施形態では、パルプ繊維は連続プロセスを使用して1台のリファイナーの中でフィブリル化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、このような方法は、リファイナーから複数の繊維を連続的に除去することであって、除去した繊維の一部が表面強化パルプ繊維であることと、更に叩解するために取り除いた繊維の約80%超を再循環させて機械リファイナーに戻すこととを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、更に叩解するために、取り除いた繊維の約90%超を再循環させて機械リファイナーに戻すことができる。このような実施形態では、リファイナーに導入した未叩解繊維の量と、再循環しない繊維から取り除いた繊維の量は、あらかじめ定められた繊維の量がリファイナーを連続的に通過するように制御することができる。言い換えると、いくらかの量の繊維がリファイナーに関する再循環ループから取り出されることから、リファイナーを通して循環させる繊維の望ましい量を維持するために、対応する量の未叩解の繊維をリファイナーに添加する必要がある。特定の特性(例えば長さ加重平均繊維長、流体学的比表面積等)を有する表面強化パルプ繊維の製造をし易くするためには、通過回数が増えるにつれて処理時に通過毎の叩解強度(すなわち比エッジ荷重)を減らす必要があるであろう。
他の実施形態では、望ましい程度にフィブリル化させるために、2台以上のリファイナーを連続して配置してパルプ繊維を循環させることができる。本発明にかかる表面強化パルプ繊維を製造するために、複数のリファイナーの様々な配置を用いることが可能なことが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、同じ叩解プレートを使用し、同じ叩解パラメーター(例えば通過毎の叩解エネルギー、比エッジ荷重等)で稼働する複数のリファイナーを、連続して配置させることができる。複数のこのような実施形態では、繊維をリファイナーのうちの1台に1回だけ通過させてもよく、及び/またはリファイナーのうちの別の1台に複数回通過させてもよい。
1つの例示的な実施形態においては、表面強化パルプ繊維を製造するための方法は、1.3mm以下のバー幅及び2.5mm以下の溝幅を有する1対のリファイナープレートを含む第1の機械リファイナーに未叩解のパルプ繊維を導入することと、第1の機械リファイナー中で繊維を叩解することと、1.3mm以下のバー幅及び2.5mm以下の溝幅を有する1対のリファイナープレートを含む少なくとも1台の追加的な機械リファイナーに繊維を移送することと、少なくとも1台の追加的な機械リファイナーの中でリファイナーに関する総エネルギー消費量が少なくとも300kWh/tに達するまで繊維を叩解して表面強化パルプ繊維を製造することとを含む。いくつかの実施形態では、繊維を第1の機械リファイナーに通して複数回再循環させることができる。いくつかの実施形態では、繊維を追加的な機械リファイナーに通して複数回再循環させることができる。いくつかの実施形態では、繊維に2台以上の機械リファイナーを複数回再循環させることができる。
複数のリファイナーを利用して表面強化パルプ繊維を製造する方法のいくつかの実施形態では、第1の機械リファイナーを比較的微細さが少ない最初の叩解工程を与えるために使用することができ、それに続く1台以上のリファイナーを本発明の実施形態にかかる表面強化パルプ繊維を得るために使用することができる。例えば、最初の、比較的微細さが少ないフィブリル化を繊維に与えるために、このような実施形態における第1の機械リファイナーを、従来の叩解プレート(例えば1.0mm超のバー幅及び1.6mm以上の溝幅)を使用して従来の叩解条件下(例えば0.25Ws/mの比エッジ荷重)で運転することができる。1つの実施形態では、第1の機械リファイナー中で与えられる叩解エネルギーの量は、約100kWh/t以下とすることができる。第1の機械リファイナーの後、次いで超微細叩解プレート(例えば1.0mm以下のバー幅及び1.6mm以下の溝幅)を使用し、本発明のいくつかの実施形態に従う表面強化パルプ繊維を製造するのに十分な条件下(例えば0.13Ws/mの比エッジ荷重)で稼働する1台以上の後続のリファイナーに、繊維を供給してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、切断エッジ長さ(CEL)は、従来の叩解プレートを使用した叩解と超微細叩解プレートを使用した叩解との間で、叩解プレート間の差異に依存して増加し得る。切断エッジ長さ(またはCEL)は、バーエッジ長さと回転速度の積である。上で説明したように、必要とされる叩解エネルギーに到達させるために繊維をリファイナーに複数回通過させるまたは再循環させることができ、及び/または、必要とされる叩解エネルギーに到達させるために複数のリファイナーを使用することができる。
1つの例示的な実施形態においては、表面強化パルプ繊維を製造するための方法は、1.0mm超のバー幅及び2.0mm以上の溝幅を有する1対のリファイナープレートを含む第1の機械リファイナーに未叩解のパルプ繊維を導入することを含む。第1の機械リファイナーの中での繊維の叩解は、いくつかの実施形態では比較的微細さが少ない最初の叩解を繊維に与えるために使用することができる。第1の機械リファイナーの中で繊維を叩解した後、繊維は1.0mm以下のバー幅及び1.6mm以下の溝幅を有する1対のリファイナープレートを含む少なくとも1台の追加的な機械リファイナーに移送される。表面強化パルプ繊維を製造するために、少なくとも1台の追加的な機械リファイナーの中で、リファイナーに関する総エネルギー消費量が少なくとも300kWh/tに達するまで繊維を叩解することができる。いくつかの実施形態では、繊維を第1の機械リファイナーに複数回通して再循環させる。いくつかの実施形態では、繊維を1台以上の追加的な機械リファイナーに複数回通して再循環させる。
本明細書に記載の様々な方法に関して、いくつかの実施形態では、パルプ繊維を低濃度(例えば3〜5%)で叩解することができる。当業者は、絶乾繊維と水との合計量に対する絶乾繊維の比率を参照するための濃度を理解するであろう。つまり、例えば3%の濃度は100mLのパルプ懸濁液中に3gの絶乾繊維が存在することを示しているであろう。
表面強化パルプ繊維を製造するためのリファイナーの運転に関する他のパラメーターは、当業者公知の技術を用いて容易に決定することができる。同様に、当業者は、本発明の表面強化パルプ繊維を製造するために、様々なパラメーター(例えば総叩解エネルギー、通過1回あたりの叩解エネルギー、通過回数、リファイナーの数及び種類、比エッジ荷重等)を調整することができる。例えば、いくつかの実施形態において、望ましい特性を有する表面強化パルプ繊維を得るためには、叩解強度、または複数回通過させる系を使用して通過毎に繊維に与えられる叩解エネルギーは、リファイナーを通過する回数が増加するにつれて徐々に減らされるべきである。
本発明の表面強化パルプ繊維の様々な実施形態は、様々な最終製品に配合することができる。本発明の表面強化パルプ繊維のいくつかの実施形態は、これらがいくつかの実施形態で配合される最終製品に好ましい特性を付与することができる。このような製品の非限定的な例としては、パルプ、紙、板紙、生物繊維複合材(例えば繊維セメント板、繊維強化プラスチック等)、吸収性製品(例えばフラッフパルプ、ハイドロゲル等)、セルロース由来の特殊化学品(例えば酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)及び他の製品が挙げられる。当業者は、特に繊維の特性に基づいて、表面強化パルプ繊維を配合し得る他の製品を見極めることができる。例えば、表面強化パルプ繊維の比表面積(及びそれによる表面活性)を増加させることによって、ほぼ同じ総繊維量を用いても複数の最終製品の強度特性(例えば乾燥引張強度)を有利に増加させることができ、及び/または、いくつかの実施形態では最終製品の重量基準でより少ない繊維を用いても最終製品に同等な強度特性を付与することができる。
以降で更に論じる物理的特性に加えて、特定の用途においては、本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維を使用することによって、特定の製造上の利点を有することができ、及び/または、コストを削減することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、本発明にかかる複数の表面強化パルプ繊維を紙製品に配合することによって(すなわち、高コストの繊維を低コストの表面強化パルプ繊維に置き換えることによって)、完成紙料中の繊維の総コストを低減することができる。例えば、典型的には、より長い軟材繊維はより短い硬材繊維よりもコストがかかる。いくつかの実施形態では、本発明にかかる表面強化パルプ繊維が少なくとも2重量%配合された紙製品は、紙強度を維持し、抄紙機の走行性を維持し、処理性能を維持し、そして印刷性能を向上させながらも、よりコストがかかる軟材繊維の約5%の除去をもたらすことができる。本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維が約2〜約8重量%配合された紙製品は、いくつかの実施形態では紙強度を維持し、印刷性能を向上させながらも、よりコストがかかる軟材繊維の約5%〜約20%の除去をもたらすことができる。本発明にかかる表面強化パルプ繊維を約2〜8重量%配合することは、いくつかの実施形態においては、実質的に表面強化パルプ繊維なしに同様の方法で製造した紙製品と比較した場合に、紙の製造コストを大きく下げるのに役立ち得る。
本発明の表面強化パルプ繊維を使用することができる1つの用途は紙製品である。本発明の表面強化パルプ繊維を使用した紙製品の製造においては、紙の製造に使用する表面強化パルプ繊維の量が重要となり得る。例えば、限定するものではないが、いくらかの量の表面強化パルプ繊維を使用することは、排水等の潜在的悪影響を最小限にしつつ、紙製品の引張強度を増加及び/または湿紙強度を増加させる利点を有する場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約2重量%(紙製品の総重量基準)超の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約4重量%超の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約15重量%未満の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約10重量%未満の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約2〜約15重量%の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品は約4〜約10重量%の表面強化パルプ繊維を含む場合がある。いくつかの実施形態では、紙製品に使用される表面強化パルプ繊維は、実質的にまたは完全に硬材パルプ繊維を含む場合がある。
いくつかの実施形態では、本発明の表面強化パルプ繊維が紙製品に配合される場合、置換することができる軟材繊維の相対量は使用される表面強化パルプ繊維の量の約1〜約2.5倍(紙製品の総重量基準)であり、置換の残部が従来の方式で叩解した硬材繊維由来である。言い換えると、そしてある非限定的な例として、従来の方法で叩解した軟材繊維の約10重量%は、約5重量%の表面強化パルプ繊維(1重量%の表面強化パルプ繊維当たり2重量%の軟材繊維の置換と想定)と、約5重量%の従来の方式で叩解した硬材繊維とによって置き換えることができる。いくつかの実施形態では、このような置換は紙製品の物理的特性を損なうことなしに起こり得る。
物理的特性に関しては、本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維は、紙製品の強度を向上させることができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態にかかる複数の表面強化パルプ繊維を紙製品に配合すると、最終製品の強度を向上させることができる。いくつかの実施形態では、本発明にかかる表面強化パルプ繊維が少なくとも5重量%配合された紙製品は、製造量を向上させながらも、より大きな湿紙強度及び/または乾燥強度を生じさせることができ、高速における抄紙機の走行性を向上させることができ、及び/または処理性能を向上させることができる。いくつかの実施形態では、本発明にかかる表面強化パルプ繊維を約2〜約10重量%配合することは、実質的に本発明にかかる表面強化パルプ繊維なしで同じ方法で製造した同様の製品と比較した場合に、紙製品の強度及び性能を大幅に向上させるのに役立ち得る。
別の例として、約2〜約8重量%の本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維が、約5〜約20重量%減の軟材繊維と共に配合された紙製品は、軟材繊維を有し、表面パルプ繊維を有さない同様の紙製品と同程度の湿紙引張強度を有することができる。本発明にかかる複数の表面強化パルプ繊維が配合された紙製品は、いくつかの実施形態では少なくとも150mの湿紙引張強度を有することができる。いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態にかかる、少なくとも5重量%の表面強化パルプ繊維と10%重量減の軟材繊維とが配合された紙製品は、少なくとも166mの湿紙引張強度(濃度30%で)を有することができる。本発明にかかる表面強化パルプ繊維を約2〜約8重量%配合すると、実質的に表面強化パルプ繊維なしで同様の方法で製造された紙製品と比較した場合に、紙製品の湿紙引張強度を向上させることができ、その結果、表面強化パルプ繊維を含有する紙製品のいくつかの実施形態は、より少ない軟材繊維で望ましい湿紙引張強度を有することができる。いくつかの実施形態では、紙製品に本発明の表面強化パルプ繊維を少なくとも2重量%配合すると、不透明度、空隙率、吸収性、引張エネルギー吸収量、スコットボンド/インターナルボンド及び/または印刷特性(例えばインク密度印刷斑点、光沢斑点)を含む(これに限定されない)様々な実施形態における他の特性を向上させることができる。
別の例として、いくつかの実施形態では、本発明にかかる複数の表面強化パルプ繊維が配合された紙製品は、望ましい乾燥引張強度を有することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも5重量%の表面強化パルプ繊維が配合された紙製品は、望ましい乾燥引張強度を有することができる。本発明にかかる表面強化パルプ繊維が約5〜約15重量%配合された紙製品は、望ましい乾燥引張強度を有することができる。いくつかの実施形態では、本発明にかかる表面強化パルプ繊維を約5〜約15重量%配合すると、実質的に表面強化パルプ繊維なしに同様の方法で製造された紙製品と比較した場合に、紙製品の乾燥引張強度を向上させることができる。
いくつかの実施形態では、本発明の表面強化パルプ繊維を少なくとも約5重量%配合すると、これらに限定するものではないが、不透明度、空隙率、吸収性、及び/または印刷特性(例えばインク密度印刷斑点、光沢斑点等)を含む、様々な実施形態における他の特性を向上させることができる。
複数の表面強化パルプ繊維を含有するこのような製品のいくつかの実施形態においては、特定の特性の向上は、いくつかの実例では、含まれている表面強化パルプ繊維の量を超えて比例的な場合がある。言い換えると、そして例として、いくつかの実施形態では、紙製品が約5重量%の表面強化パルプ繊維を含有している場合には、それに伴う乾燥引張強度の増加は5%を大幅に超える場合がある。
上で記載した紙製品に加えて、いくつかの実施形態においては、本発明にかかる複数の表面強化パルプ繊維が配合されたパルプは、これらに限定するものではないが、向上した表面活性または強化ポテンシャル、より少ない総叩解エネルギーでのより大きいシート引張強度(すなわち向上した紙強度)、向上した吸水性及び/またはその他等の、向上した特性を有することができる。
別の例として、いくつかの実施形態では、約1〜約10重量%の表面強化パルプ繊維を含有する中間パルプ及び紙製品(例えばフラッフパルプ、紙用の強化パルプ、ティッシュ用の市販パルプ、紙用の市販パルプ等)は、向上した特性を示すことができる。中間パルプ及び紙製品の向上した特性の非限定的な例としては、向上した湿紙引張強度、同等な湿紙引張強度、向上した吸収性及び/またはその他を挙げることができる。
別の例として、いくつかの実施形態では、表面強化パルプ繊維を含有する中間紙製品(例えば、ベールパルプシートまたはロール等)は、最終製品の性能及び特性を不釣り合いなほどに向上させることができ、少なくとも1重量%の表面強化パルプ繊維がより好ましい。いくつかの実施形態では、中間紙製品は1〜10重量%の表面強化パルプ繊維を含有することができる。このような中間紙製品の向上した特性の非限定的な例としては、向上した湿紙引張強度、同等な湿紙引張強度でのより良好な排水特性、同様な硬材対軟材比率での向上した強度、及び/またはより高い硬材対軟材比率での同等の強度を挙げることができる。
本発明のいくつかの実施形態にかかる紙製品の製造では、本発明の表面強化パルプ繊維は、従来の紙の製造プロセスにおけるスリップストリームとして供給することができる。例えば、本発明の表面強化パルプ繊維を、従来の叩解プレートを使用して従来の条件下で叩解した硬材繊維のストリームと混合することができる。その後、硬材パルプ繊維の混合ストリームを軟材パルプ繊維と混合し、従来技術を用いて紙を製造するために使用することができる。
本発明の他の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態にかかる複数の表面強化パルプ繊維を含有する板紙に関する。本発明の実施形態にかかる板紙は、いくらかの量の本発明の表面強化パルプ繊維を含有することを除いては、当業者に公知の技術を用いて製造することができ、少なくとも2%の表面強化パルプ繊維がより好ましい。いくつかの実施形態では、板紙は、約2%〜約3%の本発明の表面強化パルプ繊維を使用することを除いては、当業者に公知の技術を用いて製造することができる。
本発明の他の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態にかかる複数の表面強化パルプ繊維を含有する生物繊維複合材(例えば繊維セメント板、繊維強化プラスチック等)にも関する。本発明の繊維セメント板は、本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維を配合することを除いては、当業者に公知の技術を用いて通常製造することができ、少なくとも3%の表面強化パルプ繊維がより好ましい。いくつかの実施形態では、本発明の繊維セメント板は、約3%〜約5%の本発明の表面強化パルプ繊維を使用することを除いては、当業者に公知の技術を用いて通常製造することができる。
本発明の他の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態にかかる複数の表面強化パルプ繊維を含有する吸水性物質にも関する。そのような吸水性物質は、本発明のいくつかの実施形態にかかる表面強化パルプ繊維を使用して、当業者に公知の技術を用いて製造することができる。そのような吸水性物質の非限定的な例としては、フラッフパルプ及びティッシュ用のパルプが挙げられるが、これらに限定されない。
図1は、本発明の表面強化パルプ繊維を含有する紙製品を製造するために使用することができるシステムの、1つの例示的な実施形態を示している。未叩解の硬材繊維を例えばパルプベースの形態で含む未叩解リザーバー100は、一時的リザーバー102と連結されており、これは選択的な閉回路接続でフィブリル化リファイナー104と連結されている。上で述べたように、特定の実施形態においては、フィブリル化リファイナー104は、本明細書に記載の表面強化パルプ繊維を製造するために適切なパラメーターで設定されたリファイナーである。例えば、フィブリル化リファイナー104は、1.0mmのバー幅と1.3mmの溝幅をそれぞれ有する1対の叩解ディスクを有し、比エッジ荷重が約0.1〜0.3Ws/mであるデュアルディスクリファイナ−とすることができる。一時的リザーバー102とフィブリル化リファイナー104との間の閉回路は、繊維が必要とされる回数リファイナー104を通って循環するまで、例えばエネルギー消費量が約400〜650kWh/tに達するまで、維持される。
出口ラインは、フィブリル化リファイナー104から貯蔵リザーバー105に伸びており、このラインは、繊維が十分な回数リファイナー104を通って循環するまで閉じたままである。貯蔵リザーバー105は、従来法で叩解した繊維を製造するために従来のパラメーターで設定された従来のリファイナー110から出る流れと接続する。いくつかの実施形態では、貯蔵リザーバー105は使用されず、フィブリル化リファイナー104が従来のリファイナー110から出る流れと接続する。
特定の実施形態では、未叩解の繊維の単一の供給源(例えば、硬材繊維の単一の供給源)が叩解工程とフィブリル化工程の両方で使用されるように、従来のリファイナー110は未叩解リザーバー100にも接続される。別の実施形態では、異なる未叩解リザーバー112が、従来の叩解繊維を得るために従来のリファイナー110と接続される。この場合、リザーバー100、112の両方がその中に同様の繊維または異なる繊維を含んでいてもよい。
システムの異なる要素間のすべての接続は、必要な場所で接続を選択的に閉じるためのバルブ(図示せず)または他の好適な装置に加えて、必要に応じて、その間にある流れを押し出すためのポンプ(図示せず)または他の好適な装置も含んでいてもよいことが理解される。また、追加的なリザーバー(図示せず)を、システムの一連の要素の間に設置してもよい。
使用及び特定の実施形態によれば、未叩解の繊維は、例えば、上述した叩解プレートを通して、例えば約0.1〜0.3Ws/mなどの比較的低い比エッジ荷重(SEL)がかけられる機械的叩解工程に導入される。示されている実施形態では、これは未叩解の繊維をリザーバー100から一時的リザーバー102へ、その後フィブリル化リファイナー104と一時的リザーバー102との間で循環させることによって行われる。機械的叩解工程は、例えば約450〜650kWh/tの比較的高いエネルギー消費量に達するまで続けられる。示されている実施形態では、これは、繊維がリファイナー104を「n」回通過するまで、繊維をフィブリル化リファイナー104と一時的リザーバー102との間を再循環させることによって行われる。1つの実施形態ではnは少なくとも3であり、またいくつかの実施形態では6〜25であってもよい。nは、例えば本明細書に記載されている示された範囲及び/または値の範囲内の特性(例えば長さ、長さ加重平均、比表面積、微細繊維等)を有する表面強化パルプ繊維を得るために選択することができる。
表面強化パルプ繊維の流れは、その後、フィブリル化リファイナー104を出て貯蔵リザーバー105に至る。表面強化パルプ繊維の流れは貯蔵リザーバー105を出て、これはその後、製紙用の原料組成物を得るために、従来のリファイナー110内で叩解された従来の叩解繊維の流れに添加される。原料組成物中の表面強化パルプ繊維と従来の叩解された繊維との比率は、製造される紙に適切な特性を付与できるであろう表面強化パルプ繊維の最大比率によって制限される場合がある。1つの実施形態では、原料組成物の繊維含量の約4〜15%が表面強化パルプ繊維によって形成される(すなわち、原料組成物中に存在する繊維の約4〜15%が表面強化パルプ繊維である)。いくつかの実施形態では、原料組成物中に存在する繊維の約5〜約10%が表面強化パルプ繊維である。表面強化パルプ繊維の他の比率は本明細書に記載されており、また使用可能である。
叩解された繊維と表面強化パルプ繊維との貯蔵組成物は、その後、当業者に公知の技術を使用して紙を形成することができる工程である、残りの製紙工程に移すことができる。
図2は、フィブリル化リファイナー104が、連続して配置された2台のリファイナー202、204で置き換えられた、図1に示されている例示的な実施形態の変形例を示す。この実施形態では、第1のリファイナー202は比較的微細さが小さい最初の叩解工程を与え、第2のリファイナー204は、表面強化パルプ繊維が得られるように引き続き繊維を叩解する。図2に示されているように、繊維が必要とされる回数リファイナー204を通って循環するまで、例えば望ましいエネルギー消費量に到達するまで、繊維を第2のリファイナー204内に再循環させることができる。あるいは、繊維を第2のリファイナー204内に再循環させないで、第2のリファイナー204の後に追加的なリファイナーを連続して配置して更に繊維を叩解してもよく、必要であればいずれのこのようなリファイナーも再循環ループを含むことができる。図1には示されていないが、第1のリファイナー202のエネルギー出力及び最初の叩解段階において繊維にかけられる必要とされるエネルギー次第では、いくつかの実施形態には、繊維を第2のリファイナー204に移す前に第1のリファイナー202に通して再循環させることが含まれていてもよい。リファイナーの数、再循環の使用の可能性、及び表面強化パルプ繊維を得るためのリファイナーの配置に関する他の決定は、利用可能な製造スペースの量、リファイナーのコスト、製造業者が既に所有している任意のリファイナー、リファイナーの潜在的エネルギー出力、リファイナーに必要とされるエネルギー出力、及び他の要因を含む多くの要因に依存する場合がある。
ある非限定的な実施形態では、第1のリファイナー202は、1.0mmのバー幅と2.0mmの溝幅をそれぞれ有する1対の叩解ディスクを使用することができる。第2のリファイナー204は、1.0mmのバー幅と1.3mmの溝幅をそれぞれ有する1対の叩解ディスクを有することができる。このような実施形態では、総エネルギー消費量が約80kWh/tに達するまで、0.25Ws/mの比エッジ荷重で、第1のリファイナー内で繊維を叩解することができる。その後、総エネルギー消費量が約300kWh/tに達するまで、0.13Ws/mの比エッジ荷重で叩解及び再循環することができる第2のリファイナー204に、繊維を移すことができる。
図2に示されているシステム実施形態の残りの工程及び特徴は、図1のものと同じとすることができる。
総則
逆の指示がない限り、本明細書に記載されている数値パラメーターは、本発明によって得ることが求められている望ましい特性によって変化し得る近似値である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなしに、報告されている有効数字の数を踏まえて、及び通常の端数処理方法を適用することによって、それぞれの数値パラメーターを少なくとも解釈するべきである。
本発明の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるものの、具体的な実施例で示されている数値はできる限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。更に、本明細書に開示されている全ての範囲はその中に含まれるいかなる部分範囲も包含することを理解すべきである。例えば、「1〜10」と表現された範囲は、最小値の1と最大値の10との間(及びこれらを含む)に含まれるいかなる部分範囲も、すなわち、最小値の1以上(例えば1〜6.1)で始まり、最大値の10以下(例えば5.5〜10)で終わる全ての部分範囲も、含むとみなすべきである。加えて、「本明細書に援用される」として言及されているいずれの参照文献も、その全体が包含されているものとして理解される。
更に、本明細書で使用されている単数形「a」「an」及び「the」は、明示的に明確に1つの指示対象に限定にしていない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。
2014年2月27日に公開された米国特許出願No.2014/0057105は、参照により本明細書に援用される。
本明細書が、本発明の明確な理解に関係する発明の態様を説明していることが理解されるべきである。当業者に明白であり、それゆえ本発明のより深い理解への助けとはならないであろう本発明の特定の態様は、本明細書の記載を簡潔にするために提示されていない。本発明は特定の実施形態に関して説明されているが、本発明は開示されている具体的な実施形態に限定されず、添付の請求項によって規定される本発明の趣旨及び範囲内にある変更を網羅することが意図されている。
実験結果
1.未漂白の軟材及び硬材のEscher Wyss(E−W)叩解
2.ラボスケール、試験条件T1及びT5、8%の総繊維含量で製造されたセメント板
Figure 2017507105
・26%の総叩解エネルギーの減少
○繊維長(SUNY ESFで試験)
・未叩解NBSK、742CSF −2.60mm
・483CSFまで叩解した100%NBSK E−W −2.08mm
・475CSFまで共叩解した6%SEPF、94%未叩解NBSK −2.33mm
Figure 2017507105
Figure 2017507105
Figure 2017507105
Figure 2017507105

Claims (8)

  1. セメント組成物を準備する工程と、
    セルロース繊維材料を準備する工程と、
    前記セメント組成物と前記セルロース繊維材料をブレンドしてセメント複合材料を形成する工程と、を含む繊維強化セメント複合材料の製造方法であって、
    前記セルロース繊維材料が表面強化パルプ繊維を含む前記方法。
  2. 前記表面強化パルプ繊維が前記セルロース繊維材料の約1〜10重量%を占める、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  3. 前記セルロース繊維材料が増加したBauer−McNett長繊維フラクションを示す、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  4. 前記セルロース繊維材料が、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、少なくとも10%の長さ加重平均繊維長(LWAFL)の増加を示す、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  5. 前記セルロース繊維材料が、表面強化パルプ繊維がないセルロース繊維材料と比較して、所定の濾水度CSF(カナダ標準濾水度)値に到達するために、相対的に少ない叩解エネルギーを必要とする、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  6. 前記表面強化パルプ繊維が少なくとも約0.3mmの長さ加重平均繊維長と、少なくとも約10m/gの平均流体力学的比表面積を有しており、表面強化パルプ繊維の数が絶乾基準で少なくとも12,000繊維/mgである、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  7. 前記表面強化パルプ繊維が、フィブリル化による表面強化の前の前記繊維の長さ加重平均繊維長の少なくとも60%である長さ加重平均繊維長を有し、フィブリル化前の前記繊維の平均比表面積よりも少なくとも4倍大きい平均流体力学的比表面積を有する、請求項1に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
  8. 前記表面強化パルプ繊維が少なくとも約300kWh/tのエネルギー入力で叩解される、請求項12に記載の繊維強化セメント複合材料の製造方法。
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