JP2017503173A - 基質タンパク質のタンパク質分解を検出及びモニターするためのシステム及び方法 - Google Patents

基質タンパク質のタンパク質分解を検出及びモニターするためのシステム及び方法 Download PDF

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Abstract

フィブリンクロット、細胞外マトリックス、及びコラーゲンマトリックスなどの基質タンパク質のタンパク質分解を検出及びモニターするための装置及び方法が提供される。該装置及び方法は、一般に、合成基質タンパク質中の電気活性種又はエラクトマーにより発生される、拡散限界電気化学的電流の測定を含む。該装置及び方法は、種々の実施形態において、試料のタンパク質分解活性、及びさらに具体的には線維素溶解活性及びコラゲナーゼ活性を検出及びモニターするべく適用される。該装置及び方法は、一般に、心臓血管及び腫瘍学的症状のモニタリング及び診断において利用される。

Description

本開示は一般的に、電気化学的検査のための分析機器及び方法に関する。具体的には開示は、タンパク質性基質のタンパク質分解の電気化学的検出に関する。より具体的には、内在性であろうと合成であろうと、フィブリンクロット、細胞外マトリックス、及び類似のコラーゲン若しくは関連するタンパク質ベースのマトリックスを含む、タンパク質性基質のタンパク質分解を検出するための新規な装置及び方法が提供される。
基質タンパク質は、とりわけ、組織機能、組織再生、損傷治癒、及び止血に重要である。例えば、多くの真核細胞は、細胞に構造支持、細胞及び組織同一性、並びに自己分泌、傍分泌、及び接触分泌特性を提供するタンパク質の細胞外マトリックスにより被覆されており、したがってマトリックスは正常な組織機能に必要である。損傷治癒においては、分子及び細胞事象のカスケードが、最初に血液損失の防止である止血をもたらす。フィブリンは、止血及び損傷治癒において極めて重要な役割を果たすが、その理由は、フィブリンが、複雑な反応カスケードによって、架橋されたタンパク質性基質(クロット)を形成するからであり、その最終段階は、トロンビンによるモノマーフィブリノーゲンの変換であって、架橋されたフィブリンポリマーを形成し、それはしばしばクロットと称される。
止血におけるその役割に加えて、フィブリン形成は、数多くの病理及び炎症状態に共通である。例えば、フィブリン沈着(血栓形成)は、アテローム性動脈硬化症、リウマチ様関節炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、心筋梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症、自己免疫性ニューロパシー、肉芽腫性疾患、寄生虫感染症、及び同種移植片拒絶と関連付けられる。また、血栓形成が神経変性性疾患において役割を果たすという証拠もある。同様に、コラゲナーゼが浸潤癌において重要な役割を果たしており、これにおいてコラゲナーゼは、健康な組織の細胞外マトリックスを分解して、原発腫瘍細胞がその原発環境を離脱し、その後に離れた組織に侵入して、遠隔転移を形成できるようにする。
興味深いことに、細胞外マトリックス及びフィブリンクロットなどの基質タンパク質は、典型的には動的であり、即ち、マトリックスは病理的プロセス又は正常な生理的プロセスの一部として形成されかつ分解され得る。実際、止血はフィブリンクロット形成と、酵素又はプラスミンを含む凝固因子による、これらのクロットのタンパク質分解性分解(線維素溶解)との間の平衡の維持と見なされ得る。
血餅(血栓)などの基質タンパク質の形成を検出又はモニターするための方法は、例えば、血液凝固、例えば、プロトロンビン時間、トロンビン凝固時間を測定するための方法、又はフィブリノーゲン検査のためのクラウス法を含み、また、かかる凝固試験を携帯用のポイントオブケア方式で実施可能な市販のデバイスがある。しかしながら、線維素溶解を検出又はモニターするための検査は、一般に、専門の検査室での天然のフィブリンクロットに対する複雑な方法、例えば血栓弾性率測定(TEM)に限定され、ポイントオブケア又はフィールド診断には適用できない。別のアプローチは、比色又は蛍光による検出方法を用いるが、これらはあまりに高価で複雑であり、さらに試料の色又は濁度によって負に影響され、それ故、適時かつ高感度の線維素溶解の検出及びモニタリングには有効ではない。
それ故、基質タンパク質のタンパク質溶解を検出及び/又はモニターするための、新規で改良された装置及び方法が必要である。とりわけ、例えば線維素溶解、又はコラーゲン、細胞外マトリックス、若しくは他の類似の基質タンパク質の分解などの、タンパク質分解活性を検出及びモニターする電気化学的及び関連分析技術は、医療及び健康のための価値ある診断及びモニタリングツールを提供し得る。
本開示の目的は、それ故、内在性又は合成の基質タンパク質の、生理学的及び病理学的に関連したタンパク質分解活性を検出及びモニターするための、新規で改良されたシステム及び方法を提供することである。本開示のさらなる目的は、線維素溶解、又はコラーゲン及び細胞外マトリックスの分解などの、タンパク質分解活性の検出及びモニタリングを可能にする、新規で改善されたシステム及び方法を提供することである。
1つの実施形態によれば、基質タンパク質のタンパク質分解を検出又はモニターするための装置であって、(i)合成基質タンパク質と、(ii)作用電極と、及び(iii)対電極とを含んでなり、これにおいて、合成基質タンパク質は、各電極の少なくとも一部と接触しており、ここで、第1及び第2の電気活性種が、合成基質タンパク質に接触して供給されており、これにおいて、試料への暴露に際し、第1の電気活性種により作用電極において拡散限界電気化学的電流が発生され、また第2の電気活性種により対電極において対向電流が発生され、そして拡散限界電気化学的電流が測定され、測定値が合成基質タンパク質のタンパク質分解のレベルの指標である、該装置が提供される。
別の実施形態では、合成基質タンパク質は、フィブリンクロット、血餅、多血小板血漿クロット、ゼラチン、コラーゲンマトリックスの1つであり、該基質は支持体の上、中、又は周囲に形成される。なお別の実施形態では、作用電極は対電極よりも大きい。さらなる実施形態では、第1及び第2の電気活性種は、反対の酸化状態にある同じ分子である。
特定の実施形態では、第1の電気活性種aは、本明細書に定義及び開示された通りのエラクトマー(elactomer)である。1つの実施形態では、エラクトマーはポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリペプチド、ポリアミン、及びそれらの誘導体の1つである。別の実施形態では、第2の電気活性種は、低分子電気活性種であり、第2の電気活性種の拡散係数は、エラクトマーのものと異なる。なお別の実施形態では、第1及び第2の電気活性種の相対濃度は、基本的に、作用電極における全電流が第1の電気活性種により発生され、第2の電気活性種にはよらずに発生されるよう決定される。さらなる実施形態では、第1の電気活性種はPEG−Fc(Fc−CO−NH−(CHCHO)n−NH−CO−Fc)であり、第2の電気活性種はルテニウム(III)ヘキサミン(Ru(NH 3+)である。
1つの実施形態では、試料は血液、血漿、間質液、他の体液の1つ、及び既知のタンパク質分解活性をもつ対照試料である。
別の実施形態では、装置はさらに、予め決められた式又は方法論を用いて拡散限界電流の測定値を分析するべく適合された、データプロセシングユニットを含んでなり、これにより基質タンパク質のタンパク質分解の指標となる結果を生じる。なお別の実施形態では、装置はさらに、拡散限界電流の前記測定値を出力するべく適合された出力ユニットを含んでなり、その結果がタンパク質分解の指標となる。さらなる実施形態では、データプロセシングユニット及び出力ユニットの1つが、モバイルデバイス又はモバイルアプリの1つである。
1つの実施形態では、対電極はさらに、参照電極及び補助電極を含んでなる。
別の実施形態では、試料のタンパク質分解活性を検出又はモニターするための方法であって、(i)タンパク質分解活性に供される合成基質タンパク質基材を提供することであって、合成基質タンパク質は作用電極及び対電極と接触していること、(ii)第1及び第2の電気活性種を、合成基質タンパク質に接触して供給すること、(iii)合成基質タンパク質を試料に対し暴露し、これによって、第1の電気活性種により作用電極において拡散限界電気化学的電流が、また第2の電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)拡散限界電気化学的電流を測定することであり、測定値が試料中のタンパク質分解活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法が提供される。
さらなる実施形態によれば、試料中の線維素溶解活性を検出又はモニターするための方法であって、(i)合成フィブリンストリップを提供することであり、ストリップはその上に印刷された作用電極と対電極とを有していること、(ii)エラクトマー及び低分子電気活性種を、合成基質タンパク質と接触させて供給すること、(iii)フィブリンストリップを試料に対し暴露し、これによって、エラクトマーにより作用電極において拡散限界電気化学的電流が、また低分子電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)拡散限界電気化学的電流を測定することであり、測定値が試料中の繊維素溶解活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法が提供される。
別の実施形態によれば、試料のコラゲナーゼ活性を検出又はモニターするための方法であって、i)ゼラチンストリップを提供することであり、ストリップはその上に印刷された作用電極と対電極とを有していること、(ii)エラクトマー及び低分子電気活性種を、合成基質タンパク質と接触させて供給すること、(iii)前記ゼラチンストリップを試料に対し暴露し、これによって、エラクトマーにより作用電極において拡散限界電気化学的電流が、また低分子電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)拡散限界電気化学的電流を測定することであり、測定値が試料中のコラゲナーゼ活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法が提供される。
別の実施形態によれば、試料からの拡散限界電気化学的電流の測定は、ベースラインの指標であり、方法はさらに、第2の合成基質タンパク質を第2の試料に対し暴露すること、及び第2の試料からの拡散限界電気化学的電流測定することを含んでなる。ベースラインと第2の測定値との間の差異が、この実施形態によるタンパク質分解活性における変化の指標である。
種々の実施形態において、測定はクロノアンペロメトリ、ポテンシャルステップボルタンメトリ、直線掃引ボルタンメトリ、サイクリックボルタンメトリ、方形波ボルタンメトリ、ステアケースボルタンメトリ、アノーディック又はカソーディックストリッピングボルタンメトリ、吸着ストリッピングボルタンメトリ、交流ボルタンメトリ、回転電極ボルタンメトリ、方形波又は微分パルスボルタンメトリ、及びクロノクーロメトリの1つに基づく。
別の実施形態では、測定は、交流又は多重直流パルスに基づき実施される。なお別の実施形態では、測定は電気化学インピーダンス分光法に基づいており、これによれば、周波数領域における変化が試料中のタンパク質分解活性のレベルの指標である。
本開示の一実施態様に従い、(A)金電極の表面の電子顕微鏡写真、スケールバーは20μm;(B)電極表面に1xPBS(リン酸緩衝生理食塩水:137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM リン酸水素二ナトリウム、2mM リン酸二水素カリウム、pH7.4)中の2%フィブリンクロットをもつ金電極の表面の電子顕微鏡写真、スケールバーは20μm;(C)電極表面に0.1×PBS(13.7mM NaCl、0.27mM KCl、1mM リン酸水素二ナトリウム、0.2mM リン酸二水素カリウム、pH7.4)中の2%フィブリンクロットをもつ金電極の表面の電子顕微鏡写真、スケールバーは10μm;(D)多数の電極を備えたセンサチップの画像、を表す図である。 別の実施形態に従い、(A)ブランク金電極、表面上にフィブリンクロットをもつ金電極、プラスミンとの7分間のインキュベーション後の、フィブリンクロットをもつ金電極についての、電流対時間のプロット;(B)金電極、フィブリンクロットをもつ金電極、及びプラスミンとの7分間のインキュベーション後の、フィブリンクロットをもつ金電極の、電流応答を示す表;(C)金電極上でフィブリンクロットにプラスミンを添加した後の時間にわたる電流の増加;及び(D)2%フィブリノーゲン及び1単位のトロンビンを用いて形成された、金電極上に形成された15μlクロットに、87nMプラスミンを添加した後の時間にわたる電流の増加、を表す図である。 別の実施形態に従い、(A)3つの電極を含んでなる、本開示のシステムの一部であり、これにおいて電極は、孔径約30μmのワットマングレード113フィルタ紙の5×5mmストリップ中に形成された、フィブリンクロットと接触している;(B)ヒトフィブリンクロットを含有しかつKFe(CN)で含浸されたフィルタ紙のストリップ;(C)フィブリンクロット及びKFe(CN)で含浸され、かつ印刷された金電極を備えたセンサチップに取付けられたフィルタストリップ、を表す図である。測定装置(この場合にはポテンシオスタット)への電気的接触のためのプローブチップ、及び参照銀線電極が見られる。 別の実施形態に従い、(A)PBS又は10mM フェリシアニド(Fe(CN))を加えたPBSを用いたワットマングレード113フィルタ紙のサイクリックボルタンモグラム;(B)10mM Fe(CN)存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットについての電流対時間のプロット、及び10mM Fe(CN)及びプラスミン存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットについての電流対時間のプロット;(C)10mM Fe(CN)存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットについての電流対時間のプロット;(D)10mM Fe(CN)及びプラスミン存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットについての電流対時間のプロット、を表す図である。 別の実施形態に従い、(A)PBS又は50mM フェリシアニド(Fe(CN)6)を加えたPBSを用いたワットマングレード113フィルタ紙ストリップのサイクリックボルタンモグラム;(B)PBS及び50mM Fe(CN)の存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙についての電流対時間のプロット;(C)プラスミンの存在下及び非存在下における、50mM Fe(CN)を加えたPBSの存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットのサイクリックボルタンモグラム;(D)プラスミンの存在下及び非存在下における、PBS及び50mM Fe(CN)6の存在下での、ワットマングレード113フィルタ紙中の0.2%フィブリンクロットの電流対時間のプロット;(E)プラスミンの存在下(青)及び非存在下(赤)におけるフィブリンクロットのサイクリックボルタンモグラム(走査速度=0.1V/秒);(F)プラスミンの存在下(赤)及び非存在下(青)におけるフィブリンクロットの電流対時間(i−t)応答(電位=−50mV);(G)プラスミンの存在下(青)及び非存在下(赤)におけるフィブリンクロットのリニアスキャンボルタンモグラム(走査速度=0.1V/秒)、を表す図である。 1つの実施形態による、タンパク質性基質又はヒドロゲルの孔内又は孔を横切る低分子電気活性種の拡散(上)と対比された、タンパク質性基質又はヒドロゲルの孔内又は孔を横切るポリマー電気活性種又はエラクトマーの拡散(下)、を表す図である。 別の実施形態による、ゼラチンマトリックス/ヒドロゲルを横切るPEGポリマーの拡散の、直線掃引ボルタンメトリ(LSV)スキャンを表す図である。 別の実施形態による、ゼラチンマトリックス/ヒドロゲルを横切るPEGポリマーの拡散の、クロノアンペロメトリ(CA)スキャンを表す図である。
I.定義
本明細書においては、別に定義されない限り、本開示において参照された種々の用語は、当業者によって理解される、その確立された意味をもつものとする。明確にするため、以下の用語は、本開示の目的のため以下の通り定義される。
本出願において用いる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数のものを含む。例えば、用語「マトリックス」又は「タンパク質性基質」はまた、それぞれ複数形のマトリックス又はタンパク質性基質も含む。文脈上別段の解釈を要するか、又は特に反対に述べられない限り、本明細書で単数の整数、ステップ、又は要素として引用された本発明の整数、ステップ、又は要素は、明らかに単数形及び複数形双方の引用された整数、ステップ、又は要素を包含する。
「約」により、基準となる測定値、分量(quantity)、レベル、活性、値、数、頻度、パーセント、ディメンション、サイズ、量(amount)、重量、又は長さに対し、10,9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%程度まで変化する、測定値、分量(quantity)、レベル、活性、値、数、頻度、パーセント、ディメンション、サイズ、量(amount)、重量、又は長さが意味される。
本明細書で用いる場合、用語「生体試料」とは、被験者からの、抽出、未処理、処理、希釈、又は濃縮され得る試料を指す。生体試料は、全血、血清、血漿、唾液、尿、汗、腹水、腹腔液、滑液、羊水、脳脊髄液、組織生検、リンパ液、間質液などの生体液を包含し得る。いくつかの実施形態では、生体試料は血液を含んでなる。
本明細書全体及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈上別段の解釈を要しない限り、用語「含んでなる(comprise)」、及びその変形、例えば「comprises」又は「comprising」は、述べられた整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップのグループを包含するが、しかしいかなる他の整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップのグループも排除しないことを意味するものと理解されよう。
本明細書で用いる場合、用語「電気活性種」は、酸化又は還元され得、かつ1つ以上の電子を移動させ得る物質として定義される。電気活性種は、電気化学的分析における試薬であり、タンパク質性基質のタンパク質分解の間接的な測定を提供する。一般に、「電気活性種」は、水の電気分解に必要な電位より低い電位において、水溶液中で還元又は酸化し、これによって、水の電気分解が有意なファラデー電流を発生しない条件下で活性をもつ。
本明細書で用いる場合、用語「エラクトマー」は、電気活性ポリマー、又はポリマー電気活性種を意味する。エラクトマーは、本開示のいくつかの実施形態による電気活性種であり、例えばポリエチレングリコール類(PEGs)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミン、ポリペプチド、及びそれらの適当な誘導体を含む、種々の電気活性ポリマーを指す。低分子電気活性種と比較されたエラクトマーの一例が、図6に示されている。
本明細書で用いる場合、用語「レドックス対」とは、異なる酸化数をもつ化学物質からなる2つの共役する種を指す。高い酸化数をもつ種の還元は、低い酸化数を持つ種を産生する。代わりに、低い酸化数をもつ種の酸化は、高い酸化数をもつ種を産生する。
本明細書で用いる場合、用語「タンパク質分解」とは、タンパク質のより小さいポリペプチドへの分解、及び結果として生じるタンパク質線維の分解を指す。分解は、酵素的又は化学的メカニズムに起因する、ペプチド結合の切断により生じ得る。分解は、同種又は異種タンパク質の間の架橋の切断により生じ得る。タンパク質分解は結果として、タンパク質の個々のアミノ酸への分解を生じ得る。
本明細書で用いる場合、用語「電極」は、これを介して電位が測定され得る電気伝導体を意味する。電極はまた、電流のコレクタ及び/又はエミッタも意味し得る。好ましくは、電極は固体であり、かつ導電性金属を含んでなる。好ましい導電性金属は、インジウム・スズ酸化物などの合金、導電性炭素、又は貴金属、例えば金、銀、パラジウム、又は白金を包含する。電極はまた、ワイヤ又はマイクロワイヤでもあり得、或いは用語「電極」はワイヤ又はマイクロワイヤの集合体を記載し得る。
II.種々の実施形態の成分及び態様
1.タンパク質性基質
本発明のタンパク質性基質は、当該技術分野において既知の任意の基質タンパク質であり得る。用語「タンパク質性基質」及び「基質タンパク質」は、本明細書で用いる場合、互換性がある。様々な実施形態によれば、基質タンパク質は、細胞外マトリックスのように天然に存在し得、或いは、例えば血液の凝固又はフィブリノーゲンに対するトロンビンの作用により、天然に形成され得る。いくつかの実施形態では、合成タンパク質性基質は、インビトロで形成される。いくつかの実施形態では、タンパク質性基質は、自発的にマトリックスを形成する1つ以上のタンパク質から形成される。いくつかの実施形態では、タンパク質性基質は、タンパク質と、1つ以上のポリアニオン及び/又は架橋剤との反応により形成される。いくつかの実施形態では、タンパク質性基質はフィブリノーゲンをトロンビンと接触させることにより形成される。他の実施形態では、タンパク質性基質はコラーゲンマトリックス(例えば、I型コラーゲン分子の、天然の又は再構築された凝集)である。
生体液は、いくつかの薬剤と反応されて基質タンパク質を形成し得る。生体液は、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、涙、唾液、乳、粘液、痰、腹腔液であり得る。或いはまたかかる液体は、合成により調製された組成物、例えば組織培養培地であり得、タンパク質、合成ポリマー、タンパク質上に検出されるアミン、スルフヒドリル、カルボキシル若しくはヒドロキシル等の官能基をもつポリマー、アミン末端ポリエチレングリコール、アミン末端ポリエーテル、又はそれらの混合物を含有する組織培養培地であり得る。基質タンパク質の調製における使用に適したタンパク質の非限定的な例は、フィブリノーゲン、フィブリン、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンを包含する。かかるマトリックスを作製するための方法は、当該技術分野において周知である。
いくつかの実施形態では、基質タンパク質は、細胞、脂質、炭水化物、糖、塩などの、非タンパク質成分を含んでなる。
基質タンパク質は一般に、電気活性種の拡散を大いに阻害する。物理学的観点からは、タンパク質性基質中のタンパク質線維が相互作用して、非常に高い動的粘度(例えば、>2Pas)をもつ多孔性の粘弾性物質を形成する。アインシュタイン−ストークスの式から、拡散係数Dは、
[式中、ηは動的粘度である]によって示される。マトリックス中のタンパク質線維が、タンパク質分解により分解されると、マトリックスの多孔度は増加し、粘度は減少し、拡散定数が増加する。
タンパク質性基質は、機械的又は物理的処理に供され得る。機械的処理は、圧縮又は押出しを含み得る。
いくつかの実施形態では、タンパク質性基質は、酸化又は還元されて、荷電種を形成可能な電気活性種を含んでなる。電気活性種の非限定的な例は、フェリシアニド、フェロシアニド、デカメチルフェロセン(DMFc)、1,1´−ジメチルフェロセン(DiMFc)、及び7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、フェロセンカルボン酸、ルテニウムヘキサミンを包含する。
特定の実施形態では、タンパク質性基質は、脱水に供される。これらの実施形態では、タンパク質性基質は、検査下で試料(例えば生体試料)と接触された場合、適宜に再水和される。脱水は、酸素含有雰囲気(例えば、空気)中で、又は不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で実施され得る。望ましくは、脱水は、凍結乾燥(即ち、フリーズドライング)、加熱脱水(例えば、室温で)、浸透、濾過、及び遠心分離から選択される。脱水後、タンパク質性基質は、望ましくは低い含水率、例えば約7.5%未満、約2%未満、約1%未満の含水率を有する。
いくつかの実施形態では、タンパク質性基質はフィブリンクロット、PRPクロット、又は血餅であり、試料中のタンパク質分解活性は、少なくとも一部はプラスミンにより提供される。別の実施形態では、タンパク質性基質はコラーゲンであり、試料中のタンパク質分解活性は、少なくとも一部は1つ以上のコラゲナーゼ(例えば、MMP−1、MMP−8、MMP−13、MMP−18などの、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP))により提供される。
タンパク質性基質は、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、又はロボットピペッティングなどの、当業者に既知の通常法を用いて、電極(例えば、作用電極)に付着されるか、又は電極上に形成され得る。
2.タンパク質性基質支持体
種々の実施形態において、タンパク質性基質用の及びそれに関連した支持体もまた提供される。支持体は、多孔質支持体であり得る。支持体の孔が実質的に相互連結し、及び/又は支持体の体積中に延在し得ることが理解されよう。別の実施形態では、孔は実質的に非連結であり、かつ支持体の体積中に延在し得る。好ましくは、タンパク質性基質の少なくとも一部は、孔中に含有される。多孔質支持体の例示的な例は、吸着剤、フィルタ紙、フィルタ膜、焼結ガラス、ポリ(フッ化ビニリデン)膜、及びゲルを包含する。本発明のタンパク質性基質含有固体支持体は、それらが、固体支持体及びタンパク質性基質の、一方及び好ましくは双方の孔径及び孔容積に、より強い一貫性をもって大量に製造され得、そのことがアッセイ間又はアッセイ内の信頼度及び一貫性を適切に改善することから、特に有利である。
特定の実施形態においては、固体支持体は多孔性である。例示的な多孔質固体支持体は。タンパク質性基質の孔径よりも実質的に大きい直径の孔を含んでなる構造を有する。例えば、少なくとも約5.0μm、少なくとも約10.0μmの孔、また、大きい孔は電気活性種の拡散に対する抑制性が低いことから、適切には20μm以上である。
いくつかの実施形態では、固体支持体はさらに、酸化又は還元されて荷電種を形成可能な電気活性種(例えば、フェリシアニド、フェロシアニド、デカメチルフェロセン(DMFc)、1,1´−ジメチルフェロセン(DiMFc)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、フェロセンカルボン酸、ルテニウムヘキサミンなど)を含んでなる。
タンパク質性基質含有固体支持体は、機械的又は物理的処理に供され得る。機械的処理は、圧縮又は押出しを含み得る。代表的な物理的処理は、脱水(例えば、凍結乾燥、加熱脱水など)、及び照射(例えば、光)を包含する。機械的又は物理的処理は、無菌条件下に適宜に実施される。
特定の実施形態では、固体支持体は脱水に供され、それにより実質的に脱水型の固体支持体が得られる。これらの実施形態では、固体支持体は、検査下で試料(例えば生体試料)と接触された場合、適宜に再水和される。脱水は、酸素含有雰囲気(例えば、空気)中で、又は不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で実施され得る。望ましくは、脱水は、凍結乾燥(即ち、フリーズドライング)、加熱脱水(例えば、室温で)、浸透、濾過、及び遠心分離から選択される。脱水後、固体支持体は、望ましくは低い含水率、例えば約7.5%未満、約2%未満、約1%未満、又は約0.5%未満の含水率を有する。固体支持体の脱水は、タンパク質性基質の劣化を低減すること、及び貯蔵寿命を改善することを含む、いくつかの利点を有する。それはまた、推定上のプロテアーゼ含有試料と、タンパク質性基質との、それを通した試料の毛管流又は「吸上げ」による、より良好な、又はより効果的な接触を可能にする。
いくつかの実施形態では、固体支持体は、接着剤による接着又は熱接着などの、当業者に既知の通常法を用いて、電極(例えば、作用電極)に取付けられる。
3.合成フィブリンクロット
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示された方法、システム、及びキットにおいて適用されるタンパク質性基質として、合成フィブリンクロットが提供される。1つの実施形態によれば、フィブリンクロット又は「メッシュ」は:
(a)フィブリノーゲン含有材料を含んでなる、第1の成分を提供すること;
(b)フィブリノーゲンをフィブリンクロットに変換する物質を含んでなる、第2の成分を提供すること;
(c)第1の成分を第2の成分と組合せること及び混合することにより、フィブリンクロット含有材料を形成すること;及び(d)フィブリンクロット含有材料を、電極の少なくとも一部と接触させること、
を含んでなるプロセスにより調製される。
第1の成分は、少なくとも約2mg/mL、少なくとも約5mg/mL、又は少なくとも約10mg/mLのフィブリノーゲン、望ましくは少なくとも約15mg/mL、例えば約20mg/mLから約250mg/mLまで、又は約20mg/mLから約150mg/mLまでのフィブリノーゲンを含んでなる、フィブリノーゲン含有溶液を適宜に含んでなる。
第2の成分は、トロンビンを含んでなる溶液を適宜に含んでなる。トロンビン含有溶液の一体積が、第1の成分と接触されて、約1000IU/mL未満、約200IU/mL未満、約100IU/mL未満、約50IU/mL未満、約20IU/mL未満、約10IU/mL未満、又は約1IU/mL未満の最終トロンビン濃度/活性を提供する。トロンビンは、活性又は不活性型であり得、そしてトロンビンが不活性型(例えば、例として照射又は光により活性化され得るトロンビン(=光活性化型トロンビン))である場合、一般に、活性型のトロンビンより大量のものがトロンビンの試料を凝固するのに必要であることが、当該技術分野において周知である。トロンビンは、組換え若しくは合成、又は天然起源、即ちヒト又は動物の血漿由来であり得る。
いくつかの実施形態では、合成フィブリンクロットは、電気活性種(例えば、KFe(CN))の拡散を実質的に阻害する孔径を有する。非限定的な例では、フィブリンクロットの孔径は、約100ナノメートル(nm)未満、約5.0nm未満、約2.0nm未満であり、かつ適切には1.0nm以下である。
フィブリンクロット含有材料は、その範囲内に、「剥き出し」のフィブリンクロット、並びに多孔質固体支持体に含有されるか、さもなければ多孔質固体支持体にアソシエートしたものを包含する。本発明における使用に許容される支持体は、幅広く異なり得、かつ合成若しくは天然、有機若しくは無機、可撓性又は非可撓性であり得る。代表的な支持体は、織及び不織ウェブ(例えば、繊維状ウェブ)、微細孔線維、及び微細孔膜、並びに粒状若しくはビーズ状支持体などの、ポリマー支持体を含む。織及び不織ウェブは、表面の規則的又は不規則的な物理的構造を有し得る。
例示的な多孔質固体支持体は、フィブリンクロットの孔径よりも大きい孔径を含んでなる構造を有する。例えば孔径は、少なくとも約1.0マイクロメータ(μm)、少なくとも約5.0μm、少なくとも約10.0μmであり、また、大きい孔は電気活性種の拡散に対する抑制性が低いことから、適切には20μm以上である。多孔質支持体の非限定的な例は、フィルタ紙、焼結ガラス、ポリ(フッ化ビニリデン)膜、粒子又はビーズ支持体、例えばアガロース、親水性ポリアクリレート、ポリスチレン、鉱物酸化物、及びセファロースを包含する。
適宜に、フィブリンクロット含有材料(例えば、剥き出しの、又は多孔質固体支持体に含有されるか、さもなければ多孔質固体支持体にアソシエートしたもの)は、機械的又は物理的処理に供される。機械的処理は、圧縮又は押出しを含み得る。代表的な物理的処理は、脱水(例えば、凍結乾燥、加熱脱水など)、及び照射(例えば、光)を包含する。機械的又は物理的処理は、無菌条件下に適宜に実施される。
特定の実施形態では、フィブリンクロット含有材料は、酸化又は還元されて、荷電種(例えば、フェリシアニド、フェロシアニド、デカメチルフェロセン(DMFc)、1,1´−ジメチルフェロセン(DiMFc)、及び7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)など)を形成可能な電気活性種を含んでなる。
いくつかの実施形態では、フィブリンクロット含有材料は、脱水に供される。これらの実施形態では、フィブリンクロット含有材料は、検査下で試料(例えば生体試料)と接触された場合、適宜に再水和される。脱水は、酸素含有雰囲気(例えば、空気)中で、又は不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で実施され得る。望ましくは、脱水は、凍結乾燥(即ち、フリーズドライング)、加熱脱水(例えば、室温で)、浸透、濾過、及び遠心分離から選択される。脱水後、フィブリンクロット含有材料は、適宜に、低い含水率、例えば約7.5%未満、約2%未満、約1%未満、又は約0.5%未満の含水率を有する。特定の実施形態では、フィブリンクロット含有材料は、凍結乾燥に供されて、フィブリンクロットを含有する乾燥又は実質的に乾燥した多孔質支持体を調製するようにする。
フィブリンクロット含有材料(例えば、剥き出しの、又は多孔質固体支持体に含有されるか、さもなければ多孔質固体支持体とアソシエートしたもの)は、当業者に周知の通常法を用いて電極に取付けられる。
4.基質タンパク質のタンパク質分解の検出
いくつかの実施形態によれば、基質タンパク質のタンパク質分解は、ボルタンメトリを含む電気化学的方法により検出される。ボルタンメトリは、典型的には電気分解のメカニズムを調べるべく使用される技術であるが、本明細書に開示されたように、タンパク質性基質のタンパク質分解の検出又はモニタリングにおいて、とりわけタンパク質分解に対する応答において応用される。この検出においては、様々な形状のボルタンメトリが使用され得る;これらの形態は、方形波ボルタンメトリ、ステアケースボルタンメトリ、アノーディック又はカソーディックストリッピングボルタンメトリ、吸着ストリッピングボルタンメトリ、交流ボルタンメトリ、回転電極ボルタンメトリ、方形波又は微分パルスボルタンメトリ、クロノアンペロメトリ、クロノクーロメトリ、又は電流対時間を包含する。本開示の方法及びシステムの代表的な実施形態では、ポテンシャルステップボルタンメトリ、直線掃引ボルタンメトリ、及びサイクリックボルタンメトリが利用される。ピーク電流、又は定常電流、又は全電荷移動のいずれかが、測定変数として使用され得る。
これらのタイプのボルタンメトリの各々において、電圧又は一連の電圧が、作用電極として知られる電極に適用され、流れる対応電流がモニターされる。典型的には、作用電極は電気活性種、例えばフェリシアニド(Fe(CN) 3−)に接触し電位が印加されて、電気活性種への、及び電気活性種からの電荷の移動を促進し、それにより電流が発生する。第2の電極は、電気分解セルの他半分として作用する。第2の電極の役割は、電子を供給するか又は取去り、それにより溶液中の電気的中性を維持することである。作用電極において、既知の標準に比較した電位の正確な推定が必要な場合には、第2の電極は2つの別々の電極、参照電極と補助電極との間で分割され得る。参照電極は、既知の還元電位をもつ半電池であり、作用電極の電位の測定及び制御における参照として作用し、電流は通過させない。補助電極は、作用電極において観測された電流のバランスをとるのに必要な電流を通過させる。
したがって、ボルタンメトリによる電気分解測定に必要な要素は、少なくとも2つの電極、溶媒、バックグラウンド電解質、及び電気活性種である。2つの電極は、典型的には、電解質と電気活性種とを含んでなる溶媒に接触する。
いくつかの実施形態では、基質タンパク質は、作用電極の少なくとも一部と接触するか、又は作用電極の少なくとも一部の上に存在して、作用電極へ、又は作用電極から電荷を移動させるための、電気活性種の作用電極への移動度又は拡散が損なわれるか又は妨げられるようにする。別の実施形態では、基質タンパク質は、第2の電極の少なくとも一部の上に存在して、作用電極によって加えられるか又は除去される電荷のバランスをとるその能力が損なわれるか又は妨げられる。さらなる実施形態では、基質タンパク質は、作用電極及び第2の電極の少なくとも一部上に存在する。これらの実施形態では、電位の印加時に測定される電流は、基質タンパク質の不在時に比較して変更される。したがって、基質タンパク質がタンパク質分解薬剤と、例えばかかる薬剤又はかかる薬剤の含有が推定される試料を溶媒に添加するか、又は基質タンパク質に直接添加することにより接触されると、基質タンパク質の分解が起こる。基質タンパク質がタンパク質分解されると、電位の印加時に測定される電流もまた変化し、それにより基質タンパク質の分解の、定性的及び/又は定量的な、検出及び/又はモニタリングが可能となる。
バックグラウンド電解質は、塩化ナトリウムの水溶液などの電気化学的に不活性な塩である。いくつかの実施形態では、生理学的溶液(0.9%塩化ナトリウム)は、バックグラウンド電解質として使用され得る。電気活性種は、典型的には低い濃度(0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、又は0.1M)で存在する。電気活性種は、例えばフェリシアニド(Fe(CN) 3−)であり得る。
電気活性種は、酸化又は還元されて、荷電種を形成できる。即ち電気活性種は、レドックス対、例えばフェリシアニドが電気活性種である場合には、フェリシアニド(Fe(CN) 3−)/フェロシアニド(Fe(CN) 4−)レドックス対、を形成する。電気活性種は、電圧の印加時に作用電極上で酸化又は還元され、したがって作用電極中に電気化学的電流を引き起す。いくつかの実施形態では、電気活性種は可逆的な酸化又は還元を受ける。電気活性種は、好ましくは化学的に安定である。
1つの実施形態によれば、ポテンシャルステップボルタンメトリが用いられ、これにおいて印加電圧は、1つの値(V1)から別の値(V2)へ切替えられるか、又はステップされる。結果として得られる電流は、それ故時間の関数として測定される。例えば、フェリシアニドを反応物として用いると、電圧範囲は典型的には、V1において(Fe(CN) 3−)の還元が熱力学的に不利となるように設定される。第2の電圧(V2)は、電極表面に近い任意の(Fe(CN) 3−)が生成物(Fe(CN) 4−)へ還元されるように選択される。
ポテンシャルステップボルタンメトリでは、電流は、電圧の切換え(ステップ)の直後に上昇し、そして次に時間とともに減少する。このことが起こるのは、電圧ステップ以前は、(一定した組成をもつ)電極は電解液中の電気活性種と接触しているが、しかしながらひとたび電圧ステップが起これば、電気活性種(例えば、(Fe(CN) 3−))が生成物(Fe(CN) 4−)へ変換されて電流が流れるからである。反応が継続するためには、さらなる電気活性種(例えば、(Fe(CN) 3−)が電極に近づかねばならない。このことは典型的には、溶液中で、電気活性種の濃度勾配に依存する拡散によって起こる。それ故、さらなる電気活性種の表面への供給、及びそれ故電流の流れは、電気活性種の拡散フラックスに依存する。
電気分解が継続するにつれ、電気活性種は電極のより遠方から拡散し、それ故、濃度勾配は低下し、したがって電極表面への電気活性種の供給もまた低下し、結果として電流は減少する。
電流は、式:
[式中、iは、電流であり、nは、反応において移動される電子のmol数であり、Fは、ファラデー定数(96,484Cmol−1)であり、Aは、電極面積であり、kredは、電子移動の速度定数であり、cbulkは、電気活性種の全濃度であり、tは、時間であり、かつDは、電気活性種の拡散定数である]を用いて計算され得る。
電流は、電気活性種のバルク濃度に関係づけられ、これは還元種と酸化種とを合わせた濃度である。ステップボルタンメトリはそれ故、電気活性種の拡散係数の推定を可能にする。結果として、電気活性種の拡散がタンパク質性基質の存在により影響を及ぼされる実施形態では、例えばタンパク質性基質のタンパク質分解に起因する拡散係数の変化の推定を用いて、タンパク質性基質のタンパク質分解を検出およびモニターすることができる。
別の実施形態によれば、直線掃引ボルタンメトリ(LSV)が使用され、これにおいて、固定された電位範囲が適用されるが、電圧は下限(V1)から上限(V2)まで走査される。直線掃引ボルタンメトリの特性は、電子移動反応の速度、電気活性種の化学反応性、及び電圧走査速度を含む、多くの因子に依存する。
LSVにおいては、電圧がより還元性の値に掃引されると、電流が流れ始め、最終的にはピークに達した後降下する。電極表面では、電子移動の速度は電圧掃引速度に比較して速く、電極表面では熱力学により予想されるものと実質的に同一の平衡が確立される。電圧がV1から最初に掃引されると、表面における平衡が変化し始め、電流が流れ始める。電圧がその最初の値からさらに掃引されると、平衡がシフトしてより多くの電気活性種が還元されることから、電流は上昇する。電流のピークは、拡散層が電極上に充分に成長して、電極への電気活性種のフラックスが、電流が低下し始めるときネルンストの式によって要求されるものを満たすのに充分に速くない場合に生じる。ネルンストの式は、電気化学的セルの電圧と、セルの成分の1つの濃度との間の関係を、以下のように記載する:
Ecell=E0cell−(RT/nF)lnQ
[式中、Ecellは、1つの電極に電位を印加した後のセル電位であり、E0cellは、電位を印加する前のセル電位であり、Rは、気体定数(8.31(ボルト−クーロン)/(mol−K)であり、Tは、温度(K)であり、nは、電気化学反応において交換された電子のmol数(mol)であり、Fは、ファラデー定数(96,484Cmol−1)であり、Qは反応商(平衡濃度よりもむしろ初濃度を用いた平衡表示)である]。
電極表面上の拡散層のサイズは、用いる電圧走査速度に依存して異なるであろう。遅い電圧走査では、拡散層は、速い走査に比較して電極からより遠くへ成長するであろう。結果として、遅い走査速度では、電極表面へのフラックスは、速い速度におけるものよりもかなり小さい。電流は、電極へ向かうフラックスに比例することから、電流の大きさは遅い走査速度では低く、速い速度では高くなるであろう。
用語「リニアスキャン」は、電圧が単一の「順」方向に一定の走査速度で変化される走査であり、例えば、1.4Vの走査範囲を提供するための、Ag/AgClに対する−0.7Vから0.7Vまでの走査として定義される。リニアスキャンは、電位における一連の漸進的変化により近似され得る。増加が時間的に非常に緊密に近接して起こる場合、それらは連続的なリニアスキャンに相当する。したがって、リニア変化に近似した電位変化を印加することは、リニアスキャンと見なされ得る。
リニアスキャンの間、作用電極における電流が測定され、一方作用電極における電位は、一定速度で時間とともに直線的に変化する。走査範囲、例えば約−0.5Vから約+0.5Vまで、約−1.0Vから約+1.0Vまでは、典型的には電気活性種のレドックス対の還元及び酸化状態をカバーしており、一方の状態(例えば、還元型)から他方(例えば、酸化型)への変換が起こる。
いくつかの実施形態では、電圧は少なくとも約10mV/sec、又は少なくとも約50mV/sec、又は少なくとも約100mV/sec、又は少なくとも約150mV/sec、又は少なくとも約200mV/sec、又は少なくとも約500mV/sec、又は少なくとも約1000mV/sec、又は少なくとも約2000mV/secの速度で変化する。
さらなる実施形態によれば、サイクリックボルタンメトリ(CV)が用いられる。電圧が、2つの値の間で一定速度のサイクリック方式(サイクリックスキャン)で掃引又は走査されるとはいえ、CVはLSVに非常に類似しているが、しかしながら、ここで、電圧がV2に達すると、走査は逆転され、電圧はV1に戻し掃引される。順方向の掃引は、電気活性種が還元される場合にLSV実験で見られたものと同じ応答を生じる。走査が逆転されると、還元された電気活性種は酸化され、電流の流れが逆転される。
用語「サイクリックスキャン」とは、リニアの順方向の走査と、リニアの逆方向の走査との組み合わせを指し、ここで走査範囲は、レドックス対の酸化及び還元ピークを含む。例えば、約−1.0Vから約+1.0Vまで、そして約−1.0Vまで戻すサイクリック方式で電位を変化させることは、フェリシアニド/フェロシアニドレドックス対のためのサイクリックスキャンの一例であり、走査範囲内に酸化及び還元ピークの双方が含まれる。
5.ポリマー電気活性種(エラクトマー)
一般に、基質タンパク質は、単相の粘弾性系として見なされ得る。しかしながら、いくつかの実施形態によるある基質タンパク質は、2相系と考えられ、これは、第1の相としてポリマー骨格を含んでなり、それが第2相としての液体中に含浸されている。第1相のポリマー骨格は、剛性又は弾性であり得、第2相の液体は、水又は他の適当な溶媒であり得る。かかるマトリックスはまた、いくつかの実施形態により、また関連技術分野との整合性から、ヒドロゲルとも称される。
ヒドロゲルを通した電気活性種の拡散は、複雑なプロセスであり、システムの動的粘度によって全体的に容易にモデルすることはできない。かかる多孔質ヒドロゲルにおいて、拡散定数(D)に影響を及ぼす因子は、多孔度(ヒドロゲルに占める溶媒の割合、どのくらいの空間が拡散に利用可能であるかの指標)、収斂度(孔壁との相互作用により、溶媒が孔中にいかにしっかりと秩序化されているかの指標)、くねり度(孔のジオメトリがいかに拡散に影響を及ぼすかの指標)、及びマトリックスとの相互作用度(スカフォードとの弱い結合及びワンデルワールス相互作用がいかにDに影響を及ぼすかの指標)である。
例えば、(i)ヒドロゲルが非常に高い多孔度をもつ場合、(ii)電気活性種がタンパク質分子と相互作用しないか、又は弱い結合を形成しない場合、(ii)孔中の水がフリーの溶液中と同程度の秩序化をもつ場合、及び(iv)孔のくねり度が低い場合、電気活性種は、溶媒自体における拡散に極めて近い拡散係数をもって細孔系に渡り拡散する。
1つの実施形態では、本開示においてエラクトマーと称される新規な電気活性種が提供される。エラクトマーは、それ自体ポリマーであり、いくつかの実施形態により、ヒドロゲルの多孔度を高感度で測定するために利用され得る。かかる測定は、制限なくクロノアンペロメトリ及びリニアスキャンボルタンメトリを含む電気化学的技術を用いて、拡散限界電気化学的電流を測定することにより実施される。基質タンパク質がタンパク質分解により分解される状況では、マトリックスの多孔度はタンパク質分解の関数として増大し、エラクトマーは、特定の実施形態によりタンパク質分解を測定するべく使用され得る。
ポリマー電気活性種又はエラクトマーの拡散は、エラクトマーのポリマースカフォードとの絡み合い、エントロピー的孔閉じ込め効果、及び/又は立体障害効果に起因して、低分子又はイオン電気活性種のものよりもヒドロゲルの多孔度に対しより感受性がある。
1つの実施形態では、エラクトマーは、フェロセン(derivitized)ポリエチレングリコール(PEG)を含む。フェロセン及びその誘導体は、電気活性有機化合物であり、確立された有機化学プロセスに基づき、より大きい分子の誘導体化に使用され得る。例えば、塩化フェロセノイル(フェロセン−カルボン酸の塩化アシル)は、第一級アミンに対し高い反応性があり、第一級アミンをもつ大きい分子を有効に誘導体化するべく使用され得る。
フェロセンはそれ自体、高度に疎水性であり、それ自体では水溶液中で容易に可溶化されない。対照的に、PEGは高度に親水性のポリマーであり、生物学的応用に非常に適合性があり、タンパク質変性又は凝集を引き起すことなく、タンパク質性基質中に良好に混合される。
1つの実施形態によれば、分子量( )を有するホモ二官能性アミノPEGは、双方のアミノ基において塩化フェロセノイルで修飾され得、得られた生成物は赤外分光法により確認され得る。末端に第一級アミノ基をもつホモ二官能性PEGを用いることの利点は、得られた分子がなお高度に親水性であって、水溶液中に容易に溶解することである。フェロセンが、ポリマー中の内部のモノマー基上の側鎖成分として添加され得る別のアプローチは、高度に(derivitized)された疎水性分子を得る結果となる。
別の実施形態では、エラクトマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリレート、ポリサッカライド例えばデキストラン、ポリアミン、ポリペプチド、又はタンパク質を含む、他の水溶性高分子から、同様に誘導され得る。
6.電気活性種の組成物
いくつかの実施形態では、クロノアンペロメトリ測定法が、他のボルタンメトリ測定法と同様に、本開示の方法及びシステムにおいて用いられる。当業者に既知のように、クロノアンペロメトリ測定法は、医療診断において、例えば、グルコースレベル測定において使用されてきており、これにおいて、特定の時点における電気化学的電流が測定される。単純化及び低コストのため、これらの測定法はしばしば、参照電極のない2電極セルにおいて実施されてきた。こうしたセットアップでは、電位は2つの電極を横切って印加され、電流は作用電極において測定される。電気的中性を維持するためには、それ故、大きさの等しい電流が他方の(対)電極に供給されることとなる。
本開示の1つの実施形態によれば、本明細書で議論された他の技術の中でもクロノアンペロメトリを用いて、基質タンパク質中の拡散限界電流を測定して、マトリックスの多孔性及び粘性、並びにそのタンパク質分解を測定する場合には、充分なレベルの電流が対電極(CE)に供給されて、作用電極(WE)に提供された電流が拡散限界であり、システムを通した全電流が対電極において制約されないようにする。いくつかの実施形態では、WEはCEよりも有意に大きく、より多くのWE面積が試料(例えば、血液又は間質液)に対し暴露されて、強いシグナルが測定されるようにする。コットレル式に基づき、より小さいCE面積はCE電流を制限することとなり、このことは、CE(C0)における、より大きい反応物濃度によるか、又はCE反応物(D)のより速い拡散によるかのいずれかによって打消される必要がある。
いくつかの実施形態では、上記の必要条件は、それぞれWEにおいて酸化(還元)を、そしてCEにおいて還元(酸化)を受ける、反対の酸化状態にある同一の電気活性種によって対処される。これらの実施形態によれば、CE反応の反応物を表す酸化(還元)型の濃度は、WEにおける反応物を表す還元(酸化)型よりも実質的に高い。このことは、充分な電流がCEにおいて提供されていることを保証する。
エラクトマーが基質タンパク質において使用される別の実施形態では、しかしながら、CE電流制限問題に対処する上記のアプローチは、実際的でない。高い分子量の故に、基質タンパク質中に反対の酸化状態にある有意に過剰なエラクトマーをもつことは、ポリマーの総質量を大いに増大し得、この場合エラクトマー自体が、材料の増大とマトリックスの粘度及び多孔度のゆがみとを引き起し、それにより測定を妨害し得る。
それ故、別の実施形態では、WEにおける拡散限界電流の測定のためのエラクトマーである第1の電気活性種と、CEにおいて充分な対向電流を供給するための低分子電気活性種である第2の電気活性種とを含んでなる、混合電気活性種の組成物が提供される。第1の電気活性種は、本明細書ではまた、作用電気活性種(WES)とも称され、一方第2の電気活性種はまた、対電気活性種(CES)とも称される。この実施形態によれば、過剰の低分子CESは、全体のポリマー含有量又はマトリックスの粘度を増大させることはない。さらに、その低い分子量に起因して、CEにおけるCESは高い拡散係数をもち、これはコットレル式に従ってより高い電流を生じる結果となる。結果としてCESは、双方の電気活性種が同じ拡散率をもつ状況に比較して、この実施形態によるWESに対し有意に過剰に供給されることはない。
WES及びCESは反対の酸化状態であることから、それらは、それらの標準酸化還元電位及び濃度(活性)に基づき、ネルンスト式に至るまで互いに酸化/還元し得る。このことは結果として、最初に与えられたものと反対の酸化状態にある、かなりの量のCESを生じ得る。このことは、今度は、対応する電流を作用電極において発生し得、WESからのシグナルを妨害し得る。それ故、この実施形態によれば、WES及びCES、並びにそれらの相対濃度は、WEにおける殆ど〜基本的に全ての電流が、WESにより発生され、そしてCESでは殆ど〜基本的に全く発生されないことを保証する方法で測定される。WES及びCESの作用の特定の例は、以下の実施例IIにおいて明らかにされる。
III.様々な実施形態によるシステム及び方法
1.タンパク質分解を検出及びモニターするための方法
様々な実施形態において、特にタンパク質分解による、タンパク質性基質の分解を検出及び/又はモニターするための方法が提供される。更には、試料のタンパク質分解活性、例えば、試料のfibrinoytic活性、又はコラゲナーゼ活性を検出及び/又はモニターするための方法が提供される。
方法は、典型的には、第1の電極、第2の電極、及び電気活性種を含んでなる電解液を提供することを含んでなり、これにおいて、タンパク質性基質は、少なくとも第1の電極の少なくとも一部の上に、又はその少なくとも一部と接触して配置される。電解液を通して電位が印加されると、電流が発生される。電位が変更されると、電流もまた変更され、電圧の関数としての電流の変化が、いくつかの時点において測定される。例えばタンパク質分解に起因してタンパク質性基質が分解されると、電圧の関数としての電流の変化は、何らマトリックスの分解が起きていないベースライン又は対照測定に比較して変更されるであろう(典型的には電荷対電流)。典型的には、タンパク質性基質の密度は、電気活性種の拡散を激しく阻害する。例えば線維素溶解に起因するタンパク質性基質の分解は、マトリックスの密度を低減し、典型的には架橋の程度を低減し、したがって効果的な動的粘度低下が、マトリックス又はマトリックスを含んでなる多孔質支持体中の明らかな拡散係数の増加をもたらし、したがって電気化学的電流における変化を可能にする。
「ベースライン」は、対照測定であり、いくつかの実施形態では、それに対し試験試料が比較され得る、正常な電流測定である。それ故、試料に、マトリックス分解において、ベースラインレベルに比較して測定可能な増加があるか、減少があるか、又は実質的に何ら変化しないかが、対照又はベースラインの電流測定に比較して決定され得る。一つの態様においては、ベースラインレベルは、被験者にタンパク質分解活性、とりわけ線維素溶解活性がないことの指標であり得る。それ故、電流測定のベースラインレベルに関連して用いられる用語「タンパク質分解活性」とは、典型的には、被験者又は被験者の集団からの試料の不在下、又は、正常なタンパク質分解活性及び/又は線維素溶解活性をもつと考えられる、被験者又は被験者の集団からの試料の存在下のいずれかにおいて確立された、ベースラインレベルを指す。別の実施形態では、ベースラインは、被験者からの以前の試料から確立され得、それ故被験者のタンパク質分解活性は、時間をかけてモニターされ得、及び/又は、所与の治療若しくは薬物の効果が、時間をかけて評価され得る。
ベースラインを確立するための方法は、好ましくは、被験者からの試料を評価するために用いられるものと同じ方法である。1つの実施形態では、ベースラインレベルは、評価されるべき試料と同じ試料タイプを用いて確立される。
1つの実施形態では、ベースラインは、被験者から得られた自己由来の対照試料において確立される。即ち試料は、評価されるべき試料がそれから得られた同じ被験者から得られる。対照試料は、好ましくは評価されるべき試料と同じ試料タイプである。
方法は、被験者又は被験者試料からの試料におけるタンパク質分解活性を、例えば、ポテンシャルステップボルタンメトリ、直線掃引ボルタンメトリ、又はサイクリックボルタンメトリなどの、当該技術分野において既知の任意のボルタンメトリ法を用いて検出又はモニターすることを含む。タンパク質分解活性は、異常なタンパク質分解活性をもつ被験者から正常な被験者を識別するべく、予め決められたか又は参考の電荷対電流測定値に比較され得る。
ボルタンメトリ法は、同じタンパク質性基質を用いて、例えば10〜180秒間の、測定間の待機時間を用いて繰り返され得る。この時間の間に、タンパク質分解反応、例えばプラスミン線維素溶解反応が継続され得て、各時点において電流応答が先の測定値に比較して変更されることとなり、典型的にはより顕著となるであろう。例えば、最初(t=0)の電流に対する10秒、30秒、60秒、又は180秒の電流シグナルの比率が、測定パラメータとして使用され得る。この方法においては、他のパラメータ(有効電極表面積、WES濃度、多孔質支持体変動性)の強い影響は、それらが2つの時点間では変化しないように内部コントロールされる。唯一の変数は、タンパク質分解、例えば線維素分解などの、タンパク質性基質の分解の程度である。
タンパク質性基質は、電極上に直接形成され得る。別法として、タンパク質性基質を、溶液中又は表面上に形成し、続いて少なくとも1つの電極をマトリックスと接触して配置するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質性基質は、少なくとも一部は多孔質支持体において形成され、そして少なくとも1つの電極がマトリックスと接触して配置される。例えば、マトリックスは、フィブリノーゲンなどのタンパク質の溶液を多孔質支持体に適用すること、及び次にポリアニオン、架橋剤、又は付加的なタンパク質、例えばトロンビンを、支持体に適用することにより形成されて、マトリックスの形成を促進し得る。多孔質支持体は、次いで電極の少なくとも一部に適用されるか、又は電極が支持体中に挿入され得る。
1つの実施形態では、その表面の少なくとも一部の上に配置された基質タンパク質をもつ少なくとも1つの電極が、タンパク質分解活性をもつことが推定される試料中に挿入され得る。
別の実施形態では、電極はタンパク質性基質と接触され、ボルタンメトリ測定が行われるが、これは、典型的には電圧の関数としての電流の変化の測定である(例えば、電荷対電流)。これに続き、試料が多孔質支持体上に適用され、さらなるボルタンメトリ測定が実施され、これにおいて、試料の適用の前後に取られた測定値の間の差異が、タンパク質分解活性を有する試料の指標である。
試料は、体液、排出物、又は分泌物などの生体試料であり得る。例えば試料は、唾液、血液、血漿、血清、又は間質液からなる群より選択されてもよい。
試料は、疾患又は症状をもつ被験者から入手され得る。いくつかの実施形態では、疾患又は症状は、フィブリン沈着に関連し得る。これらの疾患又は症状は、深部静脈血栓症、肺塞栓症、腎疾患、肥厚性ケロイド瘢痕、冠動脈塞栓、転移、炎症、汎発性血管内凝固、アテローム性動脈硬化症、リウマチ様関節炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性ニューロパシー、肉芽腫性疾患、寄生虫感染症、及び同種移植片拒絶を含み得る。
別の実施形態では、試料は、上記の疾患又は症状において使用される治療法又は治療レジメンなどの、治療薬又は治療レジメンの投与前、投与中、又は投与後に、被験者から入手され得る。かかる実施形態では、試料は、タンパク質性基質を分解する被験者の能力に対する治療薬又は治療レジメンの効果を検出又はモニターするための手段としての、本明細書に記載されたようなボルタンメトリ測定に供される。例えば、タンパク質性基質がフィブリンクロットである場合、方法は、被験者の線維素溶解活性に対する治療薬又は治療レジメンの効果を検出又はモニターするべく使用され得る。
さらなる実施形態においては、支持体上のゼラチンマトリックスが、ストリップとして形成され、ここで、ゼラチン分解酵素(ゼラチナーゼ、コラゲナーゼ、又はマトリックスメタロプロテアーゼとしても知られる)を含有する血液又は間質液試料が添加される。マトリックスのタンパク質分解を確保することは、マトリックスの多孔性を増大し、全体的な有効粘度を低減し、結果としてDが増大し、したがって拡散限界電気化学的電流が増大する。
この実施形態のコラーゲンタンパク質分解検出法は、予後及び予防の双方を目的として、癌転移をモニターするべく、様々な実施形態により適用され得る。コラゲナーゼは、浸潤癌において重要な役割を果たしており、これにおいて、それらは健康な組織において細胞外マトリックスを分解して、原発腫瘍細胞がその原発性の環境を脱出し、続いて離れた組織に侵入して遠隔転移を形成することを可能にする。
末梢血及び身体の特定の局所におけるコラゲナーゼ活性は、人によって異なる。例えば、組織再構築を要する損傷修復などの別のプロセスが、細胞外マトリックスの分解に関連づけられる。本明細書に記載された検出法は、血液及び間質液などの他の体液中のコラゲナーゼ活性の、簡単で高感度でかつ便利なモニタリングを、種々の実施形態により提供する。さらなる議論については、以下の実施例IIを参照のこと。重要なことには、特定の個人における、コラゲナーゼ活性の時間をかけた持続的な増加が、浸潤癌の存在の可能性を知らせる合図となり、そしてさらなる診断検査及びオンタイムの適切な療法を可能にする。
2.タンパク質分解を検出及びモニターするためのシステム及び装置
いくつかの実施形態では、基質タンパク質分解の検出及び/又はモニタリングにおける使用のための装置が提供される。装置は、典型的には少なくとも電極と、タンパク質性基質とを含んでなり、かつそれは、臨床及び医療用デバイス、又はホームユースモニタリングデバイスとして、種々の実施形態において利用され得る。いくつかの実施形態では、装置はポイントオブケアデバイス又は健康モニタリングツールとして提供される。マトリックスは、典型的には、電極の少なくとも一部と接触している。
いくつかの実施形態では、マトリックスは、例えば電極又はその一部を、少なくとも1つのタンパク質、少なくとも1つのポリアニオン、及び/又は少なくとも1つの架橋剤を含んでなる溶液と接触して配置して、マトリックスを電極上に形成するようにすることにより、電極上に直接形成され得る。別法として、マトリックスは、電極を、マトリックスを形成することとなる成分を含んでなる溶液、例えばフィブリノーゲンとトロンビンとの溶液、又は血液試料の溶液と接触して配置することにより、電極上に形成され得る。
いくつかの実施形態では、前述の方法を実施するため、タンパク質性基質のタンパク質分解の検出及び/又はモニタリングを実施するためのシステムが提供される。いくつかの実施形態では、かかる検出及びモニタリングは、ボルタンメトリ技術を用いて実施される。この実施形態によるシステムは、作用電極、対電極、電流測定ユニット、コントロールユニット、データ記憶ユニット、及びデータプロセシングユニットを含む、ボルタンメトリ分析のための手段を含んでなる。対電極は、参照電極と補助電極とを含み得る。一つの態様では、作用電極及び/又は対電極は、少なくとも部分的にフィブリンクロットなどのタンパク質性基質で被覆され得る。
1つの実施形態では、作用電極は典型的には、当該技術分野において既知の、又は市販の電位源などの、制御可能な可変電位源により供給される、第1電位に接続される。電流測定ユニットは、作用電極と対電極との間の電流の流れを記録するべく配置され、電流測定ユニットにより測定された電流は、基質タンパク質のタンパク質分解の指標として使用される。1つの実施形態では、電流測定ユニットは、測定された電流を表す出力を発生させる電流増幅器を含んでなる。
コントロールユニットは、典型的には、第2電位、作用電極、及び対電極をコントロールして、予め決められた時間に電流測定ユニットから電流値を読取るべく配置される。サイクリックボルタンメトリを用いる方法では、コントロールサイクルは、第2電位をセットすること、作用電極及び対電極をコントロールすること、及び電流測定ユニットから電流値を読取ることを含んでなる。コントロールユニットは、コントロールソフトウェアがそこに格納されるメモリユニットか、又は外部のプロセスコントロールシステムによりコントロールされるコントロールインターフェースを含み得る。
第2電位は、典型的には、当該技術分野において既知の、又は市販の電位源などの、対電極(又は、対電極が参照電極及び補助電極を含んでなる場合には、補助電極)に接続された、制御可能な可変電位源により供給される。データ記憶ユニットは、記録された電流値を記憶する。1つの実施形態では、市販の記憶回路を含んでなる。プロセシングユニットは、予め決められた数学モデルを用いて、記憶された電流値を分析するべく使用される。分析の結果は、ディスプレイなどにより、図4及び図5に示されたボルタンモグラム又は電流対時間のプロットのように提示される。
1つの実施形態では、作用電極、対電極、電流測定ユニット、及びコントロールユニットは、測定された電流値を内部又は外部のデータ記憶及びプロセシングユニットに出力するべく配列された、単一のデバイスとして一体化される。コントロールユニットは、外付けのデータ記憶及びプロセシングユニットにより、外部でコントロールされ得る。したがって、フィールド使用及びポイントオブケア使用が可能な、タンパク質性基質のタンパク質分解を検出又はモニターするための、安価で多用性のシステムが意図される。
いくつかの実施形態では、フィブリンクロット、コラーゲンマトリックス、又はゼラチンなどの、特定のタンパク質性基質のタンパク質分解を検出又はモニターするため、様々な実施形態のシステムがデザインされる。これらの実施形態では、システムは好ましくは完全に一体化され、即ち、タンパク質性基質、作用電極、対電極、電流測定ユニット、コントロールユニット、データ記憶ユニット、及びプロセシングユニットは、1つのデバイスとして一体化される。デバイスは、分析からの結果を出力するべく配列され得る。
種々の実施形態によれば、データプロセシングユニット及び出力ユニットは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組合せの1つである。いくつかの実施形態では、データプロセシングユニット及び出力ユニットは、スマートフォンデバイスなどのモバイルデバイスから実装され、またモバイルデバイスとして組込まれる。別の実施形態では、データプロセシングユニット及び出力ユニットは、制限なくIOSフォン、アンドロイドフォン、及び類似のスマートフォンデバイスを含む、1つ以上のスマートフォンデバイスに適合するモバイルアプリとして組込まれる。
さらなる実施形態によれば、データプロセシング及び出力ユニットは、クラウド、他の有線若しくは無線の通信網、又は他の遠隔通信手段を介して、測定装置に接続される。
別の実施形態では、上述の方法を実施するためのキットも提供される。典型的には、本発明の方法を実行するためのキットは、方法を実施するために必要な全ての試薬を含有する。例えば、1つの実施形態では、キットは、タンパク質性基質を含んでなる支持体、又は支持体と、フィブリノーゲン及びトロンビンの溶液などの基質タンパク質を支持体上に形成するのに必要な試薬とを含んでなり得る。キットはまた:(1)少なくとも1つの電極、(2)少なくとも1つの電気活性種、(3)少なくとも1つの電解液、(4)少なくとも1つの塩、及び(5)既知のレベルのタンパク質分解活性をもつ少なくとも1つの対照試料、の任意の1つ以上を含んでなり得る。
キットはまた、本発明に従って基質タンパク質のタンパク質分解を定性的又は定量的に検出又はモニターするためにキットを使用するための、印刷された指示書も特徴とする。
3.ACベースボルタンメトリ及び分光技術に基づく代替のシステム及び方法
別の実施形態では、基質タンパク質中のエラクトマーの阻害された拡散が、交流(AC)又は多重DCパルスに基づく他の測定技術の使用を可能にする。これらの実施形態では、エラクトマー反応物は、電圧極性又は振幅が変わるたびに電極表面から前後に拡散し、それにより拡散距離を有効に延長し、かつ初期状態の又はタンパク質分解されたマトリックスにおける拡散係数の差異を誇張し得る。
多重パルスボルタンメトリでは、電気化学反応を可能にする大きさの電圧パルス(作用パルス)は、何ら反応が起きないパルス(休止パルス)と交互に起こる。休止パルスの間、エラクトマー反応物は、消費されることなく電極表面に向けて拡散し、一方エラクトマー生成物は、電極から遠くへ拡散する。測定量は、作用電圧の第nパルスにおけるファラデー電流である。
高速拡散電気活性種及び低周波数についての限界条件として、電極表面濃度の完全な平衡が起こり得、バルク濃度(C0)のどんな小さな変化が観察されても修正されて、測定電流は実質的にパルスごとに同じである。低速拡散電気活性種及び高周波数を用いた反対の場合には、電極表面ではいかなる回復も起こらず、クロノアンペロメトリで観測される減衰に似て、パルスごとに電流は減少する。この技術の最高の感度は、これら2つの限界条件の間で達成され得、いくつかの実施形態により実験的に決定され得る。
さらなる実施形態によれば、本開示の方法及びシステムにおいて、電気化学インピーダンス分光法(EIS)などの分光技術が用いられる。この実施形態によれば、拡散係数における変化は、周波数領域において観測され得る。周波数ベースの測定は、振幅ベースの測定よりも、一般に感度及び精度が高く、したがってこの実施形態によるシステム及び方法にさらなる利益を提供する。
作用電極表面への、及び作用電極表面からの拡散という同じ物理的現象が、本明細書で記載されたパルス技術と同様に、EISに適合する。しかしながら、この実施形態においては、測定の過程で周波数が変更される。特定の拡散定数には、特定の周波数があり、ここでの拡散の阻害は、ファラデー電流に、ワールブルグインピーダンスとしても知られる電圧波形の最大の遅れを引き起こす。1つの実施形態による周波数領域測定においては、この周波数がピーク位相の遅れに対応し得、拡散係数の目安であり得、それ故マトリックス中のタンパク質分解の程度であり得る。
IV.実施例
以下の記載は、特定の実施形態の例として提供されるものであり、本開示の種々の実施形態の範囲を制限するためのものではない。
実施例1.タンパク質分解のボルタンメトリ測定
ヒトフィブリノーゲン及びヒトトロンビンのストック溶液を混合して、10μLの最終溶液(2%フィブリノーゲン+0.1Uのトロンビン最終濃度)を得、これをボルテックス処理して直ちに5×5mmのフィルタ紙ストリップ(Whatman No.4、大孔径、粒子保持能:30〜40μm)に適用した。紙ストリップの孔内にフィブリンクロットが形成され、紙ストリップを室温で2時間乾燥させた。フィブリノーゲン濃度に起因して、クロットの孔径は、フィルタ紙の孔よりも小さい。
ストリップ−クロットを、0.2%ツイーン20を含有する50mM KFe(CN)の溶液で含浸し自然乾燥させた。ストリップは平板型印刷電極(金又は導電性炭素のいずれか)を含有するチップに取付けられた。オプションの銀線が、参照電極としてストリップに取付けられた(図3C)。ストリップは、2mM ヒトプラスミンを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で再水和される。血漿のないPBSが対照として用いられる。ストリップに対し電気化学的検査を実施し、KFe(CN)からKFe(CN)への還元により上昇する電気化学的電流を測定した。電流応答(図5E、F、G)は、いくつかのパラメータ:電位、電極面積、KFe(CN)濃度、及び拡散係数、の関数である。
実施例2.クロノアンペロメトリに用いたCES及びWES
クロノアンペロメトリ測定に用いたWES及びCESの前述の混合組成物を参照のこと。一例として、上記で議論されたFc−PEGエラクトマーにおいては、電気活性Fc成分は、+0.641Vの標準的な電極電位E0を有し、エラクトマー自体は、アミド結合のパイ電子のため、さらに高いE0を有する(測定されたE0は+0.7V〜0.75Vの範囲)。WESの還元型がWEにおける測定に使用されれば、酸化に対するこの高い抵抗(他の一般に使用される電気活性種に比較して)が、多数の酸化性CESに対し耐性を提供する。それにもかかわらず、上記に議論されたように、CESの過剰な濃度の故に、弱い酸化剤をCESとして用いて、WESが主にその還元型で存在するようにすることは有利である。
したがって、一例として、適切なCESはルテニウム(III)ヘキサミン、Ru(NH 3+であり、これは+0.1Vの標準的な電極電位E0を有する。ネルンスト式に基づき、2mM 還元型PEG−FcWESと、8mM Ru(NH 3+CESとを含んでなるWES−CES組成物は、3%未満のWESを酸化することとなる。過剰のCESは、その高い拡散率と相まって、充分な電流を対電極において提供し、システムを通した全電流が、WE表面に対するエラクトマーWESの拡散によってのみ制限されるようにする。CESの別の例は、酸化型のFe(CN) 3+である。
組成物、CES−WES混合物を、予め加熱された20%ゼラチン溶液へ添加し、2つのスクリーン印刷された炭素電極を含有する試験ストリップ上に被着させる。試料セルに暴露される電極の大きさは、WE 1.79x1.3mm、CE 0.6x1.3mmである。ゼラチンのない別の試験ストリップを対照として調製する。0.8マイクロリットルの生理緩衝食塩水をストリップに添加し、ストリップをリニアスキャニングボルタンメトリ及びクロノアンペロメトリでアッセイした。結果は、それぞれ図7及び8に示され、ゼラチンを含有するストリップの、対照に対して阻害された拡散限界電流を示している。
クロノアンペロメトリ測定から、有効拡散係数(D)が、コットレル式を用いて計算される。対照ストリップでは、Dは5.15x10−6cm/sであり、これは水溶液中の5kDaの分子の拡散に準じる。ゼラチンストリップでは、有効拡散係数は30倍低い1.56x10−7cm/sであった。Dにおけるこのような大幅な差異は、エラクトマーWESの使用なくしては達成され得ない。
2014年1月1日出願の米国特許出願第14/145,986号、及び2014年1月21日出願の中国特許出願第201410028684.6号は、その記載全体が参考として本明細書に援用される。
本明細書に提供された種々の実施形態の記載は、種々の図面及び実施例を含め、例示を目的としたものであり、本発明及びその種々の実施形態を制限するものではない。

Claims (24)

  1. 基質タンパク質のタンパク質分解を検出又はモニターするための装置であって、(i)合成基質タンパク質と、(ii)作用電極と、(iii)対電極とを含んでなり、これにおいて、前記合成基質タンパク質は、各々の前記電極の少なくとも一部と接触しており、ここで、第1及び第2の電気活性種が、前記合成基質タンパク質に接触して供給されており、かつこれにおいて、試料への暴露に際し、前記第1の電気活性種により作用電極において拡散限界電気化学的電流が発生され、また前記第2の電気活性種により対電極において対向電流が発生され、前記拡散限界電気化学的電流が測定され、かつ前記測定値が前記合成基質タンパク質のタンパク質分解のレベルの指標である、該装置。
  2. 前記合成基質タンパク質が、フィブリンクロット、血餅、多血小板血漿クロット、ゼラチン、コラーゲンマトリックスの1つであり、かつこれにおいて前記基質が支持体の上か、中か、又は周囲に形成される、請求項1に記載の装置。
  3. 前記作用電極が前記対電極よりも大きい、請求項1に記載の装置。
  4. 前記第1及び第2の電気活性種が、反対の酸化状態にある同じ分子である、請求項1に記載の装置。
  5. 前記第1の電気活性種がエラクトマーである、請求項1に記載の装置。
  6. 前記エラクトマーが、ポリエチレングリコール類(PEGs)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びそれらの誘導体の1つである、請求項5に記載の装置。
  7. 前記第2の電気活性種が、低分子電気活性種であり、かつここで、前記第2の電気活性種の拡散係数が、前記エラクトマーのものと異なる、請求項6に記載の装置。
  8. 前記第1及び第2の電気活性種の相対濃度が、基本的に、作用電極における全電流が第1の電気活性種によって発生され、かつ第2の電気活性種にはよらずに発生されるよう決定される、請求項7に記載の装置。
  9. 前記第1の電気活性種がPEG−Fc(Fc−CO−NH−(CHCHO)n−NH−CO−Fc)であり、かつ前記第2の電気活性種がルテニウム(III)ヘキサミン(Ru(NH 3+)である、請求項1に記載の装置。
  10. 前記試料が血液、血漿、間質液、他の体液の1つ、及び既知のタンパク質分解活性をもつ対照試料である、請求項1に記載の装置。
  11. 予め決められた式又は方法論を用いて拡散限界電流の前記測定値を分析するべく適合された、データプロセシングユニットをさらに含んでなり、これにより前記基質タンパク質のタンパク質分解の指標となる結果を生じる、請求項1に記載の装置。
  12. 拡散限界電流の前記測定値及びタンパク質分解の指標である前記結果を出力するべく適合された出力ユニットをさらに含んでなる、請求項11に記載の装置。
  13. 前記データプロセシング及び出力ユニットの1つが、モバイルデバイス又はモバイルアプリの1つである、請求項11に記載の装置。
  14. 前記対電極がさらに、参照電極及び補助電極を含んでなる、請求項1に記載の装置。
  15. 試料のタンパク質分解活性を検出又はモニターするための方法であって、(i)前記タンパク質分解活性に供される合成基質タンパク質基材を提供することであって、前記合成基質タンパク質は作用電極及び対電極と接触していること、(ii)第1及び第2の電気活性種を、前記合成基質タンパク質に接触して供給すること、(iii)前記合成基質タンパク質を前記試料に対し暴露し、これによって、前記第1の電気活性種により作用電極において拡散限界電気化学的電流が、また前記第2の電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)前記拡散限界電気化学的電流を測定することであり、前記測定値が前記試料中のタンパク質分解活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法。
  16. 前記測定が、クロノアンペロメトリ、ポテンシャルステップボルタンメトリ、直線掃引ボルタンメトリ、サイクリックボルタンメトリ、方形波ボルタンメトリ、ステアケースボルタンメトリ、アノーディック又はカソーディックストリッピングボルタンメトリ、吸着ストリッピングボルタンメトリ、交流ボルタンメトリ、回転電極ボルタンメトリ、方形波又は微分パルスボルタンメトリ、及びクロノクーロメトリの1つに基づく、請求項15に記載の方法。
  17. 前記測定が、交流及び多重直流パルスの1つに基づき実施される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記測定が、電気化学インピーダンス分光法に基づいており、これにおいて、周波数領域における変化が前記試料中の前記タンパク質分解活性のレベルの指標である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記試料が、血液、血漿、間質液、他の体液の1つ、及び既知のタンパク質分解活性をもつ対照試料である、請求項15に記載の方法。
  20. 前記第1の電気活性種がエラクトマーであり、かつ、前記第2の電気活性種が低分子電気活性種である、請求項15に記載の方法。
  21. 前記第1の電気活性種がPEG−Fc(Fc−CO−NH −(CHCHO)n−NH−CO−Fc)であり、かつ前記第2の電気活性種がルテニウム(III)ヘキサミン(Ru(NH 3+)である、請求項15に記載の方法。
  22. 前記測定が、ベースラインの指標であり、前記方法がさらに、第2の前記合成基質タンパク質を第2の試料に対し暴露すること、及び第2の前記拡散限界電気化学的電流を測定することを含んでなり、前記第2の測定値と前記ベースラインとの間の差異が、タンパク質分解活性における変化の指標である、請求項15に記載の方法。
  23. 試料の線維素溶解活性を検出又はモニターするための方法であって、(i)合成フィブリンストリップを提供することであり、前記ストリップはその上に印刷された作用電極と対電極とを有していること;(ii)エラクトマー及び低分子電気活性種を、前記フィブリンストリップと接触させて供給すること、(iii)前記フィブリンストリップを前記試料に対し暴露し、これによって、前記エラクトマーにより作用電極において拡散限界電気化学的電流が、また前記低分子電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)前記拡散限界電気化学的電流を測定することであり、前記測定値が前記試料中の繊維素溶解活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法。
  24. 試料のコラゲナーゼ活性を検出又はモニターするための方法であって、(i)ゼラチンストリップを提供することであり、前記ストリップはその上に印刷された作用電極と対電極とを有すること、(ii)エラクトマー及び低分子電気活性種を供給すること、(iii)前記ゼラチンストリップを前記試料に対し暴露し、これによって、前記エラクトマーにより作用電極において前記拡散限界電気化学的電流が、一方前記低分子電気活性種により対電極において対向電流が発生されること、及び(iv)前記拡散限界電気化学的電流を測定することであり、前記測定値が前記試料中のコラゲナーゼ活性のレベルの指標であること、を含んでなる該方法。
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